JP2628106B2 - アポトーシス調整剤 - Google Patents

アポトーシス調整剤

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JP2628106B2
JP2628106B2 JP5502141A JP50214192A JP2628106B2 JP 2628106 B2 JP2628106 B2 JP 2628106B2 JP 5502141 A JP5502141 A JP 5502141A JP 50214192 A JP50214192 A JP 50214192A JP 2628106 B2 JP2628106 B2 JP 2628106B2
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哲 中井
公徳 相原
仁美 森
道明 富永
正一 足立
弘之 市川
聖司 赤松
史郎 齋藤
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Otsuka Pharmaceutical Co Ltd
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Otsuka Pharmaceutical Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、新しいアポトーシス調整剤に関する。
背景技術 本発明のアポトーシス調整剤は、下記一般式(1)で
表わされるカルボスチリル誘導体(以下「化合物
(1)」という)及びその塩から選ばれる少なくとも1
種を有効成分とするものである。
(1)一般式 〔式中Rはフェニル環上に置換基として低級アルコキシ
基を有することのあるベンゾイル基を示す。カルボスチ
リル骨格の3位と4位との炭素間結合は一重結合又は二
重結合を示す。〕 上記化合物(1)及びその製法については、例えば特
公平1−43747号公報に記載されており、これが強心剤
として有用であることも公知である。
本発明者は、上記化合物(1)につき、更に研究を続
けた結果、これがその有している上記公知作用からは予
想困難な制癌作用、細胞の分化誘導能等を始めとするア
ポトーシス調整(抑制乃至促進)作用を有していること
を見い出した。
しかして従来より、細胞死は2つのタイプのメカニズ
ムにより起こるとされている。そのひとつは壊死と呼ば
れてきた古典的細胞死である。これは形態学的には、ミ
トコンドリアの著しい膨化、細胞質の膨化、核の変性と
それに続く細胞の崩壊及び自己融解により特徴付けら
れ、受動的及び偶発的に生じる。組織壊死は、細胞に対
する物理的外傷や化学的毒物等により一般に認められ
る。
もうひとつのタイプはアポトーシス(プログラムされ
た細胞死)と呼ばれる(Kerr,J.F.R.and Wyllie,A.H.,B
r.J.Cancer,265,239(1972))。これは生理学上の種々
の条件下に起こるとされている。その形態学的特徴とし
ては、周囲の細胞との接触の欠乏、細胞質の濃縮化、エ
ンドヌクレアーゼの活性に関連したクロマチンの凝縮及
び核凝縮、核の分節化等を挙げることができ、更に細胞
表面の微絨毛の消失、細胞表面の平滑化(細胞表面の水
疱形成:membrance blebbing)等も観察され、またエン
ドヌヌクレアーゼ活性により、DNAのヌクレオソーム単
位が180〜200塩基長のDNAに断片化する現象も観察さ
れ、アポティック体の細胞の最終断片は隣接する細胞に
より貧食される機構として論じられている(Duvall,E.a
nd Wyllie,A.H.,Immunology Today,(4),115−119
(1986):Science,245,301−305(1989))。上記ウイ
リーはまたグルココルチコイドにより誘発される胸腺細
胞のアポトーシスが、細胞内のエンドヌクレアーゼの活
性化を伴うことを報告している(Wyllie,A.H.,Nature,2
84,555−556(1986))。エンドヌクレアーゼ活性によ
りアポトーシスを受ける細胞のDNAは、オリゴヌクレオ
チドレベルまで断片化され、これはアガロースゲル電気
泳動を行なうことにより容易に確認できる。
上記アポトーシスとは、発生や分化や組織のターンオ
ーバーの過程でみられる、予めプログラムされた細胞死
であると考えられる(Wyllie,A.H.,et al.,Int.Rev.Cyt
ol.,68,251−306(1980))。
また、胸腺細胞ではカルシウムイオノファでカルシウ
ム濃度を上昇させたり、cAMP濃度を上昇させたりする
と、上記アポトーシスに特徴的なDNAの断片化が促進さ
れる(Wyllie,A.H.,et al.,J.Pathol.,142,67−77(198
4))ことから、アポトーシスのメカニズムに、カルシ
ウムイオンやcAMPの関与が推測されている。更にレチノ
イン酸やカルシウムイオノファにより分化誘導されるHL
−60細胞のアポトーシスが、上記の例として報告されて
いる。(Martin,S.J.,et al.,J.Immunol.,145,1859−18
67(1990):Martin,S.J.,et al.,Clin.Exp.Immunol.,7
9,448−453(1990))。
上記アポトーシスは、胚発生過程や正常の細胞回転の
盛んな細胞(例えば肝、副腎皮質、前立腺等)にみられ
る生理的細胞死から、グルココルチコイド処理、サイト
トキシック−T細胞による細胞障害、ホルモン依存性組
織の萎縮、放射線照射、NK細胞、キラー細胞、腫瘍壊死
因子(TNF)、リンホトキシン(LT)等のサイトカイン
類等によっても誘導されると報告されている(Wyllie,
A.H.,et al.,Int.Rev.Cytol.,68,251(1980):Duvall,
E.and Wyllie,A.H.,Immunology Today,,115−119(19
86):Sellins,K.S.,et al.,J.Immunol.,139,3199(198
7):Yamada,T.,et al.,Int.J.Radiat.Biol.,53,65(198
8):Wyllie,A.H.,Nature,284,555(1980):Schmid,D.
S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,83,1881−1885(1
986):John,C.,et al.,J.Immunol.,129(4),1782−17
87(1982):Howell,D.M.,et al.,J.Immunol.,140,689−
692(1988):Gillian.B.,et al.,Eur.J.Immunol.,17,68
9−693(1987))。その他に、ある種の抗体、例えば抗
CD3抗体、抗APO−I抗体、抗Fas抗体等(Trauth,B.C.,e
t al.,Science,245,301−305(1989):Smith,C.A.,et a
l.,Nature,337,181−184(1989):Tadakuma,T.,et al.,
Eur.J.Immunol.,20,779(1990))でもアポトーシスが
誘導され、悪性腫瘍での自然退縮(中村保夫他、臨床皮
膚科,35(4),289−295(1981))の所見においても
アポトーシスが確認されている。
一方、上記アポトーシスを抑制するものとしては、RN
A合成阻害剤であるアクチノマイシンD(Actinomycin
D)、蛋白合成阻害剤であるサイクロヘキシミド(Cyclo
heximide)、カルシウムイオン(Ca2+)キレート剤等が
報告されており、その他に免疫抑制剤であるサイクロス
ポリンA、造血系サイトカイン(IL−3、GM−CSF、G
−CSF等)、IL−2、bcl−2遺伝子産物等もアポトーシ
スを抑制すると報告されている(Cohen,J.J. J.Immuno
l.,132,38(1984):Wyllie,A.H.,et al.,J.Pathol.,14
2,67(1984):Shi,Y.,et al.,Nature,339,625(1989):
Williams,G.T.,et al.,Nature,343,76(1990):Nielo,
M.A.,J.Immunol.,143,4166(1989):Vaux,D.L.,et al.,
Nature,335,1440(1988))。但し、上記シクロヘキシ
ミドは急性白血病細胞に、アクチノマイシンDは小腸陰
窩細胞に、両者がHL−60細胞にそれぞれアポトーシスを
誘導する報告(Martin,S.J.,et al.,J.Immunol.,145,18
59−1867(1990)がある。逆にサイクロヘキシミドは、
X線照射前に存在し、X線照射により増加したリンパ球
系腫瘍細胞のアポトーシスを抑制し、アクチノマイシン
Dが上記アポトーシスを増加させる旨の報告もあり、ア
ポトーシスの抑制又は促進には、細胞の種類や条件、そ
の他の機序の関与も示唆されている(五十嵐忠彦ら、日
本血液学会誌、51(2),144(1988))。いずれにせ
よ、細胞の分化、増殖、成熟がアポトーシスと密接な関
係にあり、之等細胞の分化、増殖等に関与する作用を有
する物質がアポトーシスにも関係すると考えられてい
る。
また最近、アポトーシスに関連する治療法として、抗
Apo−I抗体による癌の治療も試みられている。骨髄異
形成症候群(MDS)の内で、汎血球減少が主体である不
応性貧血(RA)及び鉄芽球性貧血(RARS)では、造血細
胞の分化誘導剤としてのレチノイン酸や活性型ビタミン
D3と、血小板産生細胞の過剰アポトーシスを抑制するア
ポトーシス調整剤としてのGM−CSFやIL−3の併用が望
ましく、また同MDSの内、芽球の増殖が優勢なRAEBや該R
AEBの移行期(RAEB−t)では、上記レチノイン酸や活
性型ビタミンD3が、造血細胞の芽球への分化を誘導する
分化誘導剤として、またエトポジド(etoposide)やア
クラルビシン(aclarubicin)が芽球の増殖を抑制(ア
ポトーシス促進)するアポトーシス調整剤として、それ
ぞれ働くとされている(Shibuya,T.,J.Clinical and Ex
perimental Medicine,160(5),319−323(1992))。
また、ムラカミらは抗赤血球自己抗体を発現している
トランスジェニックマウスの約半数が自己のトレランス
の消失により自己免疫疾患を発症するとし、正常マウス
のような自己抗原と自己抗体産生細胞の反応によるアポ
トーシス誘導による自己抗体産生細胞の除去能の欠如に
よると報告している(Murakami,M.,et al.,Nature,357,
77−80(1992))。
ワタナベ−フクナガらはMRLlpr/lprマウスにおいて
は、アポトーシスに関与するFas分子に異常があり、胸
腺における自己反応性T細胞のネガティブセレクション
(アポトーシス)機構がうまく作動せず、その結果自己
免疫疾患が発症すると示唆している(Watanabe−Fukuna
ga,R.,et al.,Nature,356,314−317(1992))。
モンタニエらは、HIV−感染患者からのTリンパ球抽
出物中には、DNAのアポプテッイックなバンドが観察さ
れ、この現象は無症候群のHIV感染患者の90%、AIDSとA
RC患者の100%に観察され、アポトーシスの誘導がHIV感
染患者においても亢進していると報告している(Montag
nier,L.,et al.,Sixieme Colloque des Cent Gardes,9
−17(1991))。
ニワトリ発生期の細胞死において、ニワトリ胚にNGF
(nerve growth factor:神経細胞の神経節で細胞の肥大
と神経繊維の伸長を促進する蛋白質)を前投与すると、
この発生過程の神経細胞死は完全に抑制され(Hamburge
r,V.,et al.,J.Neurosci.,,60(1981))、逆にNGFに
対する抗体を投与すると、幼若な交感神経細胞の約90%
が失われてしまうと報告されている(Levi−Montalchin
i,R.and Booker,B.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,46,384
(1960))。
クラークは自然に起こる神経細胞死を3つのタイプに
区別し、その中のタイプIの形態学的特徴がアポトーシ
スと一致し、更に成長因子除去による細胞死ではタイプ
Iの細胞死が起こり、DNAの断片化も起ることから、こ
れをアポトーシスと考えている(Clark,P.G.H.,Anat Em
bryol.,181,195(1990):J.Neurosci.,,60(1981):P
roc.Natl.Acad.Sci.,USA,46,384(1960):Rawson,C.L.,
et al.,J.Cell.Biol.,113,671(1991))。
エドワーズらはNGFにより交感神経細胞のプログラム
死を抑制できると報告しており、アポトーシスがNGFに
より抑制できると考えられる(Edwards,S.N.,et al.,J.
Neurochemistry,57(6),2140−2143(1991))。
フィッシャーらの報告によれば、老化して学習障害を
持ったラットにNGFを投与すると、アルツハイマー病で
障害を受けることが知られている前脳基底野コリン作動
性神経細胞に該NGFが作用して、学習障害の回復がみら
れる(Fischer,W.,et al.,Nature,329,65(1987):Bard
e Y−A,Neuron,2,1525(1989):Hatanaka,H.,Develop B
rain Res.,30,47(1986):Hatanaka,H.,et al.,Develop
Brain Res.,39,85(1988))。畠中らは上記NGFが分
化、成熟、生存維持、老化の防止に有効で、神経細胞の
障害に対する保護回復作用、脳の老化に伴う神経疾患、
特にアルツハイマー病での神経細胞死の防止作用を示す
可能性を示唆している(畠中寛、代謝、28,891−899(1
991))。
更に薬剤耐性ウィルス性肝炎の肝障害においては、薬
剤又はウィルス感染により、直接的又は免疫的機序を介
するアポトーシス亢進が、肝障害に関与していると考え
られている(Bursh,W.,et al.,TiPS,13,245−251(199
2))。
一方、肝臓ではマイトジェンによって肝細胞が増殖
し、過形成状態をもたらすことが知られており、この状
態は肝細胞の脱落壊死、即ちアポトーシスにより正常化
される(Kerr,J.F.et al.,Br.J.Cancer,26,239−257(1
972))。該アポトーシスは肝臓において、過形成肝、
過形成性結節及び肝癌等で認められており(Columbano,
A.,et al.,Lab.Invest.,52,670−675(1985):Columban
o,A.et al.,Am.J.Pathol.,116,441−446(1984))、ケ
ラーらはアポトーシスは炎症や線維増殖を伴わないと述
べている(Kerr,J.F.,et al.,Lancet,2,827−828(197
9))。之等のことから、急性及び慢性肝炎に対してア
ポトーシスを抑制することができれば、之等肝炎の治療
が可能と考えられる。また慢性肝炎が肝硬変、肝癌に移
行していく過程では、上記アポトーシスは抑制状態にあ
り、これがサイトトキシックT細胞による肝細胞の炎症
に続く線維化、肝硬変へと進展するものと考えられ、該
アポトーシスを促進させることができれば、肝炎の抑制
及び肝硬変への進展が防止できると考えられる。
発明の開示 本発明によれば、化合物(1)及びその塩類から選ば
れる少なくとも1種を有効成分として含有するアポトー
シス調整剤が提供される。
本発明アポトーシス調整剤は、アポトーシス調整能を
有しており、この作用に基づいて、例えば前述したよう
に、制癌剤、抗レトロウイルス剤、自己免疫疾患治療
剤、血小板減少症治療剤、アルツハイマー病治療剤、肝
炎、肝硬変等の肝疾患治療剤、癌転移抑制剤等として、
医薬品分野で有効である。
上記化合物(1)を表わす一般式において、フェニル
環上に置換基として低級アルコキシ基を有することのあ
るベンゾイル基としては、ベンゾイル、2−メトキシベ
ンゾイル、3−メトキシベンゾイル、4−メトキシベン
ゾイル、2−エトキシベンゾイル、3−エトキシベンゾ
イル、4−エトキシベンゾイル、4−イソプロポキシベ
ンゾイル、4−ヘキシルオキシベンゾイル、3,4−ジメ
トキシベンゾイル、3,4−ジエトキシベンゾイル、3,4,5
−トリメトキシベンゾイル、2,5−ジメトキシベンゾイ
ル等等のフェニル環上に置換基として炭素数1〜6の直
鎖又は分枝状のアルコキシ基を1〜3個有することのあ
るベンゾイル基を例示できる。
本発明において有効成分として用いる上記化合物
(1)中、特に好ましいものとしては、例えば6−[4
−(3,4−ジメトキイベンゾイル)−1−ピペラジニ
ル]−3,4−ジヒドロカルボスチリル及びその塩を例示
できる。
上記有効成分化合物は、通常の酸を用いて容易に薬理
的に許容される塩を形成させ得、之等の塩も遊離形態の
化合物と同様に有効成分化合物として用いることができ
る。上記酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸等
の無機酸及び酢酸、p−トルエンスルホン酸、エタンス
ルホン酸、シュウ酸、マレイン酸、フマール酸、クエン
酸、コハク酸、安息香酸等の有機酸を例示できる。
本発明アポトーシス調整剤の有効成分である化合物
(1)は、通常、一般的な医薬製剤の形態で用いられ
る。かかる製剤は通常使用される充填剤、増量剤、結合
剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤あ
るいは賦形剤を用いて調製される。この医薬製剤として
は各種の形態が治療目的に応じて選択でき、この代表的
なものとして錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、
顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤
等)、点眼剤等が挙げられる。
錠剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分
野で従来公知のものを広く使用でき、例えば乳糖、白
糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸
カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦
形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブ
ドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチ
ルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カ
リウム、ポリビニルピロリドン糖の結合剤、乾燥デンプ
ン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン
末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシ
エチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナ
トリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳
糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素
添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウ
リル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デン
プン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナ
イト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステ
アリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑
沢剤等が例示できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮
を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被
錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠と
することができる。
丸剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分
野で従来公知なるものを広く使用でき、例えばブドウ
糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリ
ン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント
末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナランカン
テン等の崩壊剤等が例示できる。
坐剤の形態に成形するに際しては、担体として従来公
知のものを広く使用でき、例えばポリエチレングリコー
ル、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエス
テル類、ゼラチン、半合成グリセライド等を挙げること
ができる。
注射剤として調製される場合には、液剤及び懸濁剤は
殺菌され、且つ血液と等張であるのが好ましく、これら
液剤、乳剤及び懸濁剤の形態に成形するに際しては、希
釈剤としてこの分野において慣用されているものを全て
使用でき、例えば水、エチルアルコール、プロピレング
リコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリ
オキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレ
ンソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げることができ
る。尚、この場合等張性の溶液を調製するに充分な量の
食塩、ブドウ糖あるいはグリセリンを医薬製剤中に含有
せしめてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛
化剤等を添加してもよい。
更に本発明アポトーシス調整剤中には必要に応じて着
色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を
含有せしめてもよい。
上記医薬製剤中に含まれる有効成分化合物の量は、特
に限定されず広範囲に適宜選択されるが、通常全組成物
中1〜70重量%、好ましくは1〜30重量%含まれる量と
するのが適当である。
上記医薬製剤の投与方法は特に制限はなく、各種製剤
形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等に
応じて決定される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、
乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合には経口投与され
る。また注射剤の場合には単独であるいはブドウ糖、ア
ミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更に
は必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔
内投与される。坐剤の場合には直腸内投与され、点眼剤
の場合には目に適用される。
上記医薬製剤の投与量は用法、患者の年齢、性別その
他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常
有効成分である化合物(1)の量は1日当り体重1kg当
り約0.5〜30mgとするのがよい。また、投与単位形態中
に有効成分を約10〜1000mg含有させるのがよい。
本発明アポトーシス調整剤は、その有するアポトーシ
ス調整能や細胞の分化誘導能等に基づいて、各種疾患に
適用でき、所望の薬理効果を期待できる。該適用疾患と
しては、より具体的には、例えば癌、AIDS、ARC(AIDS
関連疾患)、ATL(成人T細胞白血病:Adult T−cell le
ukemia)、毛様細胞性白血病(Hairy cell leukemi
a)、脊髄症(HAM/TSP)、呼吸器障害(HAB/HABA)、関
節症(HAAP)、ブドウ膜炎(HAU)等のHTLV−I関連疾
患、自己免疫疾患、例えばSLE(全身性エリテマトーデ
ス)、慢性関節リウマチ(RA)等の膠原病、潰瘍性大腸
炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、突発性
血小板減少性紫斑病(Idiopathic Thrombocytopenic Pu
rapura:ITP)、自己免疫性溶血性貧血、重症筋無力症、
橋本病、インスリン依存型(I型)糖尿病等を例示でき
る。また血小板減少を伴う各種の疾患、例えば骨髄異形
成症候群、周期性血小板減少症、再生不良性貧血、突発
性血小板減少症、汎発性血管内凝固症等にも、本発明ア
ポトーシス調整剤が適用できる。更に本発明調整剤は、
C型、A型、B型、F型等の各種の肝炎、アルツハイマ
ー病、アルツハイマー型老年痴呆症、心筋炎、ARDS(成
人呼吸急迫症候群)感染症、肝硬変、前立腺肥大症、子
宮筋腫、気管支喘息、動脈硬化症、各種先天性奇形症、
腎炎、老人性白内障、慢性疲労症候群(Chronic Fatigi
u Syndrome)、筋ジストロフィー(Myotonic dystroph
y)等の各種疾患にも適応可能である。
本発明アポトーシス調整剤は、例えば制癌剤として用
いる場合、その投与により、癌細胞を分化させた後又は
分化させることなく直接に、アポトーシスの誘導を促進
又は抑制でき、かくして制癌作用を発揮する。またこの
場合、本発明調整剤は、その製剤形態及び投与経路にか
かわらず、例えばこれを癌の化学療法剤として知られて
いる他の各種の制癌剤や放射線療法と併用することがで
きる。かくして、本発明の有効成分化合物は優れた制癌
効果を奏し得るため、併用する他の制癌剤の効果を一層
助長し、相乗効果を発揮させることができる。従って、
併用する制癌剤を通常用いられる量よりかなり少量とす
る場合でも、充分な癌治療効果が得られ、これにより併
用制癌剤の副作用の軽減化をはかることができる。かか
る化学療法剤としては、例えば5−フルオロウラシル
(5−FU、協和発酵工業株式会社製)、マイトマイシン
(Mitomycin−C、同上社製)、フトラフール(FT−20
7、大鵬薬品工業株式会社製)、エンドキサン(Endoxa
n、塩野義製薬株式会社製)、トヨマイシン(Toyomici
n、武田薬品工業株式会社製)等を例示できる。
本発明アポトーシス調整剤は、これを血小板減少症治
療に用いる場合、例えばRAやRARS等のMDS患者では、そ
の投与により細胞の分化誘導促進作用と共にアポトーシ
ス抑制作用が発揮され、かくして造血細胞の増殖を刺激
し、正常な分化、成熟を起こさせ得る。また、RAEBやRA
EB−t等のMDS患者では、本発明調整剤の投与により芽
球を分化が誘導されると共に、芽球の増殖が抑制され、
かくして成熟細胞の増殖を起こさせ得る。また本発明調
整剤は、巨核球前駆細胞や巨核球細胞に作用して、その
分化、成熟を促進させることにより、血小板産生の促進
作用も期待できる。
本発明アポトーシス調整剤を上記血小板減少症治療に
用いる場合は、これは従来公知の血小板増加剤等の他の
医薬品と併用でき、これにより之等併用薬剤の効果を助
長し、従って併用剤量をかなり少量としても充分な治療
効果を奏し得、副作用の軽減化をはかり得る場合があ
る。
本発明調整剤は、アルツハイマー病の治療及び予防剤
としても有用である。この場合、例えば古典的なアルツ
ハイマー病やアルツハイマー型老年痴呆症患者におい
て、本発明調整剤はアポトーシスの抑制によりNGF様作
用を示し、かくして上記治療及び予防効果を発揮する。
またこの場合、本発明製剤は従来公知の脳循環改善剤や
脳代謝改善剤等のアルツハイマー病治療剤と併用するこ
とができ、之等の効果を助長し、之等による副作用を軽
減できる場合がある。
更に本発明調整剤は、アポトーシスを制御することに
より、薬剤性及びウィルス性肝炎患者における肝炎の治
療乃至肝細胞の線維化防止を行ない得、従って肝硬変予
防剤として利用することができる。
図面の簡単な説明 図1は、後記薬理試験例1に記載のアポトーシス調整
効果試験におけるDNAの断片化の結果を示す写真であ
る。
図2は、後記薬理試験例5に記載のM12メラノーマ細
胞の増殖抑制効果試験の結果を示すグラフである。
図3は後記薬理試験例8に記載の自己免疫疾患に対す
る延命効果試験の結果を示すグラフである。
図4〜図7は後記薬理試験例9に記載の血小板減少改
善効果試験の結果を示す写真である。
図8は後記薬理試験例10に記載の自己免疫疾患治療効
果試験の結果を示す写真である。
図9及び図10は後記薬理試験例11に記載のPC12細胞に
対する効果試験の結果を示す写真である。
図11は後記薬理試験例12に記載の肝不全に対する効果
試験の結果を示すグラフである。
図12は後記薬理試験例13に記載のB16メラノーマ細胞
の実験肺転移モデルに対する効果試験の結果を示すグラ
フである。
発明を実施するための最良の形態 以下に、本発明アポトーシス調整剤の製剤例及びアポ
トーシス調整剤有効成分化合物につき行なった薬理試験
結果を挙げる。
製剤例1 6−〔4−(3,4−ジメトキシベンゾイル)−1−ピペ
ラジニル〕−3,4−ジヒドロカルボスチリル 150g アビセル(商標名,旭化成(株)製) 40g コーンスターチ 30g ステアリン酸マグネシウム 2g ヒドロキシプロピルメチルセルロース 10g ポリエチレングリコール−6000 3g ヒマシ油 40g メタノール 40g 上記有効成分化合物、アビセル、コーンスターチ及び
ステアリン酸マグネシウムを混合研磨後、糖衣R10mmの
キネで打錠する。得られた錠剤をヒドロキシプロピルメ
チルセルロース、ポリエチレングリコール−6000、ヒマ
シ油及びメタノールからなるフィルムコーティング剤で
被覆を行ない、フィルムコーティング錠を製造する。
製剤例2 6−〔4−(3,4−ジメトキシベンゾイル)−1−ピペ
ラジニル〕−3,4−ジヒドロカルボスチリル 150.0g クエン酸 1.0g ラクトース 33.5g リン酸二カルシウム 70.0g プルロニックF−68 30.0g ラウリル硫酸ナトリウム 15.0g ポリビニルピロリドン 15.0g ポリエチレングリコール(カルボワックス1500) 4.5g ポリエチレングリコール(カルボワックス6000) 45.0g コーンスターチ 3.0g 乾燥ラウリル硫酸ナトリウム 3.0g 乾燥ステアリン酸マグネシウム 3.0g エタノール 適量 上記有効成分化合物、クエン酸、ラクトース、リン酸
二カルシウム、プルロニックF−68及びラウリル硫酸ナ
トリウムを混合する。
上記混合物をNo.60スクリーンにて篩別し、ポリビニ
ルピロリドン、カルボワックス1500及びカルボワックス
6000を含むアルコール性溶液で湿式粒状化する。必要に
応じてアルコールを添加し、粉末をペースト状塊にす
る。コーンスターチを添加し、均一な粒子が形成される
まで混合を続ける。No.10スクリーンを通過させ、トレ
イに入れ、100℃のオーブンで12〜14時間乾燥する。乾
燥粒子をNo.16スクリーンで篩別し、乾燥ラウリル硫酸
ナトリウム及び乾燥ステアリン酸マグネシウムを加え、
混合し、打錠機で所望の形状に圧縮成形する。
上記芯部をワニスで処理し、タルクを散布して湿気の
吸収を防止する。芯部の周囲に下塗り層を被覆する。内
服用のために充分な回数のワニス被覆を行なう。錠剤を
完全に丸く且つ滑らかにするために、更に下塗り層及び
平滑被覆を適用する。所望の色合が得られるまで着色被
覆を行なう。乾燥後、被覆錠剤を磨いて均一な光沢の錠
剤を調製する。
以下に示す供試化合物を用い、下記の薬理試験を行な
った。
〔供試化合物〕
1. 6−〔4−(3,4−ジメトキシベンゾイル)−1−
ピペラジニル〕−3,4−ジヒドロカルボスチリル 2. 6−〔4−(3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−
1−ピペラジニル〕−3,4−ジヒドロカルボスチリル 3. 7−〔4−(3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−
1−ピペラジニル〕−3,4−ジヒドロカルボスチリル 4. 7−〔4−(3,4−ジメトキシベンゾイル)−1−
ピペラジニル〕−3,4−ジヒドロカルボスチリル 5. 6−〔4−(4−エキシベンゾイル)−1−ピペラ
ジニル〕−3,4−ジヒドロカルボスチリル 6. 5−〔4−(3,4−ジメトキシベンゾイル)−1−
ピペラジニル〕−3,4−ジヒドロカルボスチリル 7. 6−〔4−(3,4−ジメトキシベンゾイル)−1−
ピペラジニル〕カルボスチリル 8. 8−〔4−(3,4−ジメトキシベンゾイル)−1−
ピペラジニル〕−3,4−ジヒドロカルボスチリル 薬理試験例1 アポトーシス調整効果試験 CMK細胞を10%牛胎児血清含有RPMI1640培地中にて1
×105個/mlの濃度に調整した後、これに化合物1を30μ
g/mlの濃度で加えて、37℃で2日間及び4日間培養フラ
スコ中にて培養した。尚、コントロールとして溶媒のみ
を加えたものを同様にして培養した。
培養フラスコから細胞を取出し、4℃で10分間200×
Gで遠心分離した。ペレットを低張緩衝液(10mMトリス
塩酸、1mM EDTA及び0.2%トリトンX100、pH7.5)に溶解
後、4℃で10分間、13000×Gにて遠心分離した。上清
を採取後、50%イソプロピルアルコール−0.5M NaCl中
にて、−20℃で一晩放置し、得られた沈殿物を4℃で10
分間、13000×Gで遠心分離後、上清をすて、乾燥し
た。次に10mMトリス塩酸−1mM EDTA(pH7.4)溶液に再
懸濁させ、最終濃度が0.1mg/mlの濃度になるように上清
にRNaseを添加し、37℃で1時間インキュベートした。
更に、1×106細胞数に相当する量のサンプルに対し
て、15mM EDTA、2%SDS、50%グリセロール及び0.05%
ブロモフェニルブルーを含有するローディング緩衝液
を、サンプルの1/5容量加え、65℃で10分間インキュベ
ートした。
得られたサンプルにつき、電気泳動を1.5%アガロー
スゲル中で100Vで100分間行なった。またDNAをエチジウ
ムブロマイドで染色した。
得られた結果を図1に示す。
図中、両サイドのレーンはそれぞれマーカー(マーカ
ー1=120、600及び1350bp、マーカー2=72、420及び9
30bp)であり、左から2番目のレーンが化合物1添加2
日後を、左から3番目のレーンはコントロール2日後
を、左から4番目のレーンは化合物1添加4日後を、ま
た左から5番目のレーンはコントロール4日後をそれぞ
れ示す。
該図より、化合物1の添加によれば、DNA断片の表出
が電気泳動上に時間依存的に表れることが明らかであ
り、このことから、化合物1はCMK細胞に対して、アポ
トーシスを促進していることが判る。
薬理試験例2 癌細胞増殖抑制効果試験 (1)ヒト前骨髄性白血病細胞(HL−60)の調整 ヒト前骨髄性白血病細胞(HL−60)は、ガロ(Robert
Gallo)らにより樹立されたヒト白血病細胞株で、その
細胞の性質は文献〔Gallo,R.C.,et al.,Blood,54,713
(1979)〕に記載されており、アメリカンタイプカルチ
ャーコレクション(ATCC)に「ATCC No.CCL−240」なる
寄託番号で受託されている。
上記HL−60は、FCS(牛胎児血清、ギブコ社)10%添
加RPMI−1640培地(ギブコ社)で1×105個/mlに調整し
た。
(2)ヒト胃癌細胞株(KATO−III)の調整 上記(1)と同様な培地で、1×105個/mlに調整し
た。
(3)供試化合物の調整 供試化合物1は、酢酸で溶解後、上記(1)と同様な
培地で希釈し、2N−NaOHで中和した後、100μg/ml、10
μg/ml及び1.0μg/mlの濃度に調整した。
(4)ギムザ染色液の調整 ギムザ試薬(メルク社)をリン酸緩衝液(pH6.4)
で、50〜100倍に希釈し、ギムザ染色液とした。
(5)エステラーゼ染色液の調整 ナフトールAS・Dクロロアセテート法によるエステラ
ーゼ染色用試薬(武藤化学社)を用いた。
(6)抗CD33モノクローナル抗体My9の調整 未熟な顆粒球に特異的に反応するモノクローナル抗体
My9(コールター社)は、1バイアル当り0.5mlの蒸留水
を添加し、溶解後使用した。
(7)結果 a)上記(1)で調整したHL−60に、上記(3)で調整
した供試化合物を最終濃度10μg/ml及び1.0μg/mlにな
るようにそれぞれ添加し、12穴培養プレート(コースタ
ー社)を用い、37℃,5%炭酸ガス培養器中で3〜4日培
養した。コントロールとしては、供試化合物無添加の培
地を用いた。培養後、各穴の細胞浮遊液を取り、0.2%
トリパンブルー含有リン酸緩衝液と混合し、顕微鏡下に
未染色の生細胞数を計測し、その結果から生細胞数1×
105個/mlに再調整し、同様な方法で培養を続けた。
27日目及び33日目のHL−60に対する細胞増殖抑制効果
を表1に示した。
また上記(2)で調整したKATO−IIIについても同様
に培養し、24日目及び33日目のKATO−IIIに対する細胞
増殖抑制効果を表2に示した。
表1及び表2より、腫瘍細胞は、供試化合物の濃度に
依存して、増殖が抑制されることが明らかである。
b)HL−60の分化 上記(1)で調整したHL−60を、a)で用いたのと同
様に培養し、27日目の細胞をスライドグラス上に添加し
ギムザ染色を行なった後、顕微鏡下で形態学的観察を行
なった所、供試化合物を添加した場合には、供試化合物
無添加の場合と比較して、形態学的変化として顆粒を持
つ細胞に分化していることが認められた。またナフトー
ルAS・Dクロロアセテート法によるエステラーゼ染色の
結果からも、HL−60の70〜85%が顆粒球に分化している
ことが認められた。
c)抗CD33モノクローナル抗体My9との反応性 上記(1)で調整したHL−60を、a)で用いたのと同
様に培養し、27日目の細胞を1×106個/mlに調整し、そ
の100μlと蛍光標識(FITC)したMy9の10μlとを反応
させた後フローサイトメトリー法で測定し、その陽性率
を表3に示した。
表3より、供試化合物添加の場合、HL−60の未分化な
細胞が減少し、分化した細胞の比率が多くなったことを
認めた。
以上の結果より、本発明の有効成分化合物には、腫瘍
細胞への増殖抑制効果及び分化誘導能が認められた。
薬理試験例3 分化誘導性試験 (8)モノクローナル抗体FH−6の調整 シアリルLeXを認識するモノクローナル抗体FH−6に
蛍光標識(FITC)し、本発明有効成分化合物とFH−6と
の反応性を、以下の通り、フローサイトメトリー法で検
討した。
(9)モノクローナル抗体FH−6との反応性 上記(1)で調整したHL−60に、上記(3)で調整し
た供試化合物を最終濃度1.0μg/ml及び10μg/mlになる
ようにそれぞれ添加し、37℃、5%炭酸ガス培養器中で
2時間培養した。その後細胞数を1×106個/mlに調整
し、その100μlと蛍光標識したFH−6の10μlとを反
応させ、フローサイトメトリー法で測定し、その陽性率
を表4に示した。
以上の結果より、本発明有効成分化合物の添加で、HL
−60の細胞表面からシアル酸が減少していることが認め
られた。このことは、HL−60が分化し、シアリダーゼ活
性が高まったことを示している。
薬理試験例4 ヒト前骨髄性白血病細胞(HL−60)に対する効果 HL−60を10%FCS添加RPMI−1640培地にて37℃、5%C
O2下で培養し、細胞濃度を5×104個/mlになるように調
製した。
次に、6穴のマイクロプレート(コースター社製)の
各穴に各供試化合物を30μg/ml含む上記培地をそれぞれ
添加した後、37℃、5%CO2下で3日間培養した。尚コ
ントロール群として、上記培地のみを添加して同様に培
養する群を設けた。培養後、各培養細胞浮遊液をエッペ
ンドルフチューブに取り、0.2%トリパンブルー含有リ
ン酸緩衝液で染色した後、生細胞数を血球計算盤にて計
測した。
上記細胞を1×107個/mlに調製し、その100μlにフ
ルオレセインイソチアネート(FITC)標識抗ヒトCD11b
抗体(Mol、コールター社製)5μlを添加し、氷上で3
0分間暗所にて反応させた。反応後、0.1%BSA(牛血清
アルブミン、シグマ社製)含有PBS(リン酸緩衝液、日
水製薬社製)で2回洗浄し、最終的に500μlに懸濁さ
せた後、フローサイトメトリー法により、プロファイル
II(コールター社製)にて蛍光強度を測定した。
その結果を表5及び表6に示す。
之等各表より各供試化合物を用いた群ではいずれも細
胞増殖抑制効果が認められ、CD11b発現の増加により、
顆粒球、単球・マクロファージ系への分化誘導を促進し
ていることが認められた。
薬理試験例5 M12メラノーマ細胞の増殖抑制効果試験 この試験は1群10匹のBalb/cヌードマウスを用いて実
施した。
試験開始日(0日目)にM12メラノーマ細胞の2×106
個を、試験群マウスに移植した。腫瘍容量が100mm3に達
した時、試験群マウスに供試化合物1の10mg/kg/日を経
口投与した。上記投与は25日目から55日目まで30回行な
った。腫瘍細胞移植後、腫瘍の径をキャピラリーを用い
て毎日測定した。腫瘍容量は下式により計算した。
腫瘍容量(mm3)=(長径)×(短径)×1/2 結果を図2に示す。
尚、図2には、対照群(コントロール、供試化合物無
投与)マウスの同結果を併記する。また図中*はスチュ
ーデンツTテストによる有意差p<0.05を示す。図2よ
り、供試化合物の投与により、M12メラノーマ細胞の増
殖を有意に抑制できることが判る。
薬理試験例6 ATL感染細胞の増殖抑制効果試験 供試化合物として化合物1を用い、以下の薬理試験を
行なった。
(a)ヒト末梢血急性リンパ性白血病細胞(Molt−4)
の調製 ヒト末梢血急性リンパ性白血病細胞(Molt−4)〔J.
Minowada,et al.,J.Natl.Cancer Inst.,49,891−895(1
972):ATCC CRL1582〕を、10%FCS(牛胎児血清、ギブ
コ社製)添加RPMI−1640培地(ギブコ社製)で1×105
個/mlに調製し、ATLウイルス非感染細胞とした。
(b)ヒト成人T細胞白血病細胞(5S)の調製 ヒト成人T細胞白血病細胞(5S)を、10%FCS(ギブ
コ社製)添加RPMI−1640培地(ギブコ社製)で1×105
個/mlに調製し、ATLウイルス感染細胞とした。
(c)供試化合物の調製 化合物1を塩酸に溶解後、上記と同培地で希釈し、2N
NaOHで中和後、1μg/ml、10μg/ml及び30μg/mlの各
濃度に調製して利用した。
(d)薬理試験 24穴培養プレート(ヌンク社製)の各ウェルに、上記
(a)及び(b)で調製した各細胞を入れ、これに上記
(c)で調製した供試化合物を添加(最終濃度1μg/m
l、10μg/ml及び30μg/ml)し、37℃、5%炭酸ガス培
養器中で4日間培養した。コントロール(対照)として
は、供試化合物無添加の培地を用いた。上記培養終了
後、各ウェルの細胞浮遊液をとり、生細胞数を計測し
た。
その結果を表7に示す。
表7より、本発明有効成分化合物(化合物1)は、AT
LVウイルス非感染細胞に対しては影響を与えることな
く、ATL感染細胞に対して1μg/mlの濃度より、強力に
その増殖を抑制する効果を奏することが明らかである。
薬理試験例7 抗レトロウイルス活性の試験 (a)ヒトトランスフォーム正常T細胞(MT−4)の調
製 ヒトトランスフォーム正常T細胞(MT−4)〔Nagum
o,T.and Hoshino,H.,Jpn.J.Cancer Res.,79,9−11(18
8)〕を、10%FCS(ギブコ社製)添加RPMI−1640培地
(ギブコ社製)で2×105個/mlに調製した。
(b)供試化合物の調製 化合物1を塩酸に溶解後、上記と同培地で希釈し、2N
NaOHで中和後、1μg/ml、10μg/ml、30μg/ml及び100
μg/mlの各濃度に調製して利用した。
(c)薬理試験 12穴培養プレート(コースター社製)の各ウェルに、
上記(a)で調製した各細胞及び上記(b)で調製した
供試化合物(最終濃度1μg/ml、10μg/ml、30μg/ml及
び100μg/ml)を入れ、更に、HIV浮遊液50μl/ウェルを
添加して各ウェル細胞を感染させ、37℃、5%炭酸ガス
培養器中で3日間培養した。コントロール(対照)とし
ては、供試化合物無添加の培地を用いた。上記培養終了
後、各ウェルの細胞浮遊液をとり、生細胞数を計測し
た。
次いで、上記各ウェルの細胞浮遊液を遠心分離(1500
rpm×5分間)し、培養上清750μlを得た。
上記で得られた培養上清750μlをエッペンドルフチ
ューブ(1.8ml)に入れ、更に4M NaClとPEG−6000(シ
グマ社製)を加え、0℃で2時間反応させてウィルスを
沈降させ、遠心分離(15000rpm×20分間)により該ウイ
ルス沈降物を得た。この沈降物に溶液I〔50%グリセリ
ン(和光純薬社製)、25mMトリス・塩酸(pH7.5)、50m
M KCl、0.025%トリトンX−100(シグマ社製)及び5mM
DTT(シグマ社製)〕と溶液II〔0.9%トリトンX−100
(シグマ社製)及び1.5M KCl〕を加え、0℃で30分間要
して溶解させた。得られたウイルス溶解液10μlに5mg/
ml BSA(牛血清アルブミン:シグマ社製)、1Mトリス・
塩酸、100mM DTT(シグマ社製)、1M KCl、10mMポリA
(シグマ社製)、0.15mM TTP(シグマ社製)、200mM Mg
Cl2、0.15mMオリゴdT(NEN社製)及び〔3H〕−TTP(NEN
社製)を加え、37℃で1時間反応させた。反応後、直ち
に氷中に入れて反応を停止させ、フィルター(DE−81 F
ilter;ワットマン社製)に全量をスポットして乾燥し
た。乾燥後、0.5M Na2HPO4で3回洗浄し、エタノール中
ですすぎ落として乾燥させ、膜上のDNA中に取り込まれ
た〔3H〕−TTPの放射能活性を液体シンチレーションカ
ウンターで計測して、これを逆転写酵素活性(単位:cp
m)として求めた。
上記で求められた生細胞数(×104個)及び逆転写酵
素活性(cpm)の結果を表8に示す。
表8より、本発明有効成分化合物(化合物1)は、30
μg/ml及び100μg/mlの用量で、細胞増殖の抑制ととも
に逆転写酵素活性を強力に抑制することが判った。
上記薬理試験例6及び薬理試験例7の結果から、本発
明に有効成分として利用する化合物は、強力な抗レトロ
ウイルス活性を有することが明らかである。
薬理試験例8 自己免疫疾患モデル動物に対する効果 W/BF1:(NZW×BXSB)F1マウスは、自然発症自己免疫
疾患マウスであり、ループス腎炎だけでなく、高血圧症
と心筋梗塞を高頻度に合併するモデル動物である〔Han
g,L.M.,et al.,J.Exp.Med.,154,216−221(1981)]。
また、加齢とともに抗血小板抗体が出現し著しい血小板
減少が認められ、ITPのモデル動物でもある〔Oyaizu,
N.,et al.,J.Exp.Med.,167,2017−2077(1988)〕。該
モデルは生後8ケ月以内に90%以上は心筋梗塞または腎
不全で死亡することが報告されている〔池原進,代謝,
増刊号,26,169−176(1989)〕。
W/BF1:(NZW×BXSB)F1マウスに対する延命効果及び
血球、抗血小板抗体への本発明の化合物1投与による効
果を検討した。
W/BF1:(NZW×BXSB)F1マウスは、14週齢(紀和実験
動物社より購入)より使用した。各実験には、1群10匹
のマウスを使用した。
上記各群のマウスには、通常この種のマウスに与える
餌料(オリエンタル酵母社製)及び水を与えた。
化合物1(ロットNo.9D87M)は、0.5%カルボキシメ
チルセルロース(CMC:Carboxy Methyl Cellulose;セロ
ゲン社製)溶液に懸濁して実験に供した。該化合物1を
マウス体重1kg当り、100mg/kg/日及び300mg/kg/日で14
週齢より投与を開始し、20週齢まで6週間、5投2休で
強制経口投与した。また、コントロール群として無投与
群を設けた。
(1)観察項目は、延命作用として14週齢から20週齢ま
での生死数を観察し、統計学的処理は、無投与群を対照
にGeneralised Wilcoxon testにより有意差を検定し
た。その結果を第3図に示す。
該図中、縦軸は、生死数のパーセント(%)、横軸は
週齢(14週齢から20週齢)を示す。
該図より化合物1の100mg/kg/日投与群では、20週齢
まで死亡例が認められなかった。また、300mg/kg/日投
与群では、18週齢時に2匹の死亡が観察された。無投与
群は、17週齢で2匹、18週齢で1匹、19週齢で3匹の死
亡が確認され、本発明有効成分化合物(化合物1)によ
る自己免疫疾患モデルマウスに対する延命効果が確認さ
れた。
(2)血球分析は、14、16、18、20週齢に眼底採血によ
り血液サンプルを採血し、自動血球分析装置(Coulter
JR;コールター社製)を用いて血球数(白血球数、赤血
球数、血小板数)の変動を測定した。また、白血球の分
画数(好中球数、リンパ球数)は血液塗末標本を作製
し、ライト・ギムザ染色後、測定した。統計学的処理
は、各採血日の無投与群を対照にスチューデントのtテ
スト(Student′s t−test)によって検定した。
その結果を表9に示す。
W/BF1マウスの血液学的特徴は前記池原の報告にある
ように加齢とともに白血球増多と血小板の減少が認めら
れる。白血球数は無投与群、化合物1投与群で加齢と共
に増加傾向が認められ、本発明有効成分化合物の影響は
認められなかった。血小板数については、無投与群で
は、14週齢(1144.5±121.3/mm3)より減少が認めら
れ、20週齢時においては14週齢時の約5分の1(228.0
±90.0/mm3)まで減少した。しかし、本発明有効成分化
合物(化合物1)300mg/kg/日投与群は、投与開始時よ
り血小板数の減少抑制効果が現われ、20週齢では(823.
3±24.5mm3)で無投与群(228.0±90.0/mm3)に対し有
意な抑制効果が認められた。また、赤血球数においても
同様な結果が得られた。
(3)W/BF1マウスには、オヤイズ(Oyaizu)らが血小
板減少の原因が抗血小板抗体の出現によって起こること
を報告しているが、上記(2)の如く、本発明化合物1
の投与によって血小板の減少が抑制されたことから、20
週齢時の抗血小板抗体を同定した。
抗血小板抗体の測定は、Balb/cマウスより採取した血
小板と20週齢まで投与したW/BF1血漿と共に30分間室温
でインキュベートし、2回洗浄後、FITC標識抗マウスIg
G(タゴ社製;コードNo.6250)と反応させて染色後、FA
CSアナライザー(EPICS−Profile II、コールター社
製)で解析した。陰性のコントロールは、Balb/cマウス
の血漿が98%陰性になるようにセットし、各検体のサン
プルの陽性率を求めた。
その結果を表10に示す。
該表において、N.Tは、測定時において死亡していた
ため測定不可を示し、数字は陽性率パーセント(%)を
示す。
該表より、無投与群では、陽性率が19.6±5.5%であ
ったのに対し、本発明有効成分化合物(化合物1)100m
g/kg/日投与群では、陽性率13.2±2.7%、300mg/kg/日
投与群では、陽性率10.7±2.2%と用量依存的な抗血小
板抗体の抑制が認められた。
W/BF1マウスは、前述の如くヒト慢性ITPの自然発症モ
デルマウスであり、生後3ケ月よりループス腎炎を発症
し、8ケ月以前に90%以上は心筋梗塞又は腎不全で死亡
するが、このマウスの治療方法としては正常のBalb/cマ
ウスの骨髄を移植することにより治療できることが報告
されている[Ikehara,S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA,82,2483−2487(1985);Yasumizu,R.,et al.,Proc.N
atl.Acad.Sci.USA,84,6555−6557(1987);Ikehara,S.,
et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,56,3306−53310(198
9)]。また、実際の臨床においても最も有効なITPの治
療は、現在の所骨髄移植とされている。
本発明有効成分化合物のカルボスチリル誘導体は、上
記(1)〜(3)の結果から判るようにW/BF1マウスに
対して有意な延命効果を示し、同時にこのマウスの血液
学的特徴である抗血小板抗体の出現による血小板減少を
も抑制することから、自己免疫疾患改善作用を持つこと
が判る。
薬理試験例9 血小板減少改善効果試験 1)供試化合物1の調製 化合物1を1N塩酸に溶解後、FCS(牛胎児血清、ギブ
コ社製)で希釈し、1mg/ml溶液を調製した。同溶液を10
%FCS添加RPMI−1640培地(フロー社製)に添加し、1N
−NaOHで中和した後、30μg/mlの濃度に調製して利用し
た。
2)CMK細胞の調製 CMK細胞は、サトウらによって急性巨核芽球性白血病
患者から樹立され、抗血小板抗体(抗糖タンパクII b/I
II a抗体、抗糖タンパクI b抗体、Plt−1抗体)と反応
し、また、細胞質内にα顆粒、血小板分離膜の形成が認
められる等巨核球様の性質を有することから巨核球の増
殖・分化の解析に用いられている〔Sato,T.,et al.,Ex
p.Hematol.,15,495(1987);Sunami,S.,et al.,Blood,7
0,368(1987);Komatsu,N.,et al.,Blood,74(1)42−
48(1989);Fuse,A.,et al.,British J.Haematology,7
7,32−36(1991);日本血液学会雑誌,53(2)294−2
95,317−318(1990)〕。
CMK細胞は、千葉大医学部小児科佐藤武幸先生より供
与を受け、5×104個/mlの細胞を10%FCS含有RPMI−164
0倍地中で培養し、4日毎に細胞数で継代した。
3)CMK細胞の血小板関連抗原発現に及ぼす化合物1の
影響 CMK細胞1×105個/mlを化合物1を30μg/ml含む10%F
CS含有RPMI−1640倍地中で4日間培養し、細胞表面の血
小板関連抗原の発現をFITC標識Plt−1抗体(コールタ
ー社製)を用いてフローサイトメトリー(フロー社製)
により測定した。また、化合物1を含まない培地のみを
溶媒対照とした。
細胞表面抗原の解析はCMK細胞1×106個/100μlをチ
ューブ(フィッシャー社製)に採り、FITC標識Plt−1
抗体を5μlを加えて4℃で30分間反応させた後、0.1
%牛血清アルブミン含有リン酸緩衝液で3回洗浄後、陽
性細胞率及び蛍光強度を測定した。
上記Plt−1抗体(コールター社製)は、血小板関連
抗原である糖タンパクII b/III aと認識する抗体で、CM
K細胞では、分化或いは成熟に伴って増加することが報
告されている〔Komatsu,N.,et al.,Blood,74(1)42−
48(1989)〕。
その結果を表11に示す。
該表より、使用したCMK細胞の約96%がPlt−1抗体で
認識される血小板関連抗原の陽性細胞であり、化合物1
の30μg/ml添加によっても陽性細胞率の変化は認められ
なかった。
しかしながら、細胞当りの抗原発現量を表す平均蛍光
強度を比較した場合、溶媒対照の平均蛍光強度を100%
とすると、化合物1を30μg/ml添加した細胞では191%
であり、化合物1添加によるCMK細胞表面上のPlt−1抗
体で認識される血小板関連抗原の発現量が約2倍に増加
したことが判る。
4)CMK細胞の形態観察 CMK細胞1×105個/mlを化合物1を含む10%FCS含有RP
MI−1640倍地中で4日間培養し細胞の形態を位相差写真
により観察した。また、一部の細胞を採り、サイトスピ
ン標本を作成後、ライトギムザ染色により細胞の形態を
観察した。
その結果を図4〜図7に示す。図4及び図6は、溶媒
対照を示し、図5及び図7は化合物1の30μg/ml投与に
よる細胞の位相差図及び染色図を示す。
該位相差図より、本発明の化合物1を30μg/ml添加し
た細胞では血小板産生過程様の細胞の断片化が認められ
た。また、染色図より本発明化合物1を添加した細胞で
は、細胞膜の発芽と核の分葉化が認められた。
上記の結果より、本発明の有効成分であるカルボスチ
リル誘導体は、CMK細胞表面上の血小板関連抗原の発現
量を増加させ、血小板産生過程様の細胞の断片化を起こ
し、更に細胞の細胞膜の発芽と核の分葉化を生ぜしめる
ことから、CMK細胞の分化或いは成熟を促進すると考え
られる。従ってこの特有な作用によって、巨核球前駆細
胞或いは巨核球細胞に作用してその分化、成熟を促進す
ることにより血小板の産生を促進し、血小板減少を改善
することが期待できる。
薬理試験例10 自己免疫疾患治療効果試験 この試験には雌性MRL/Mp−lprマウス(7週齢、日本
チャールズ・リバー社より購入)を19週齢より、1群5
匹ずつ使用した。
上記供試マウスは自己免疫疾患を自然発症するマウス
であり、その病態の特徴としては、ヒトSLE(Systemic
lupus erythematosus)様の免疫複合体糸球体腎炎、リ
ンパ腫、血管炎、多発性関節炎等が知られている(Theo
filopolos,A.and Dixon,F.J.,Adv.Immunology,37,269
(1985):Murphy,E.D.Roths,J.B.,Autocommunity and l
ymphoproliferation,Elsevier North Holland,New yor
k,207−221(1978):谷口吉弘、現代医療,21,131(19
89))。
化合物1投与群及びコントロール群(無処置群)の各
マウスには、マウス飼料(オリエンタル酵母社製)及び
水を与えた。
化合物1は0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC、
第一工業製薬社製)溶液に懸濁させて用いた。
化合物1をマウス体重1kg当り300mg/kg/日の量で19週
齢より投与開始し、25週齢まで週5投2休で強制投与し
た(化合物1投与群)。
各群マウスにつき、尿蛋白量変化、リンパ腫径、耳介
の血管炎及び脱毛の有無を調べた。
その結果、化合物1投与群はコントロール群と対比し
て、尿蛋白量の上昇を抑制する傾向が認められた。また
リンパ腫径がコントロール群の9.0±0.8mmに比して7.8
±1.3mmとなっており、その肥大がやや抑制された。
上記血管炎、脱毛及びリンパ腫の程度を比較した結果
を図8に示す。
図より、化合物1投与群ではコントロール群に比して
血管炎及び脱毛の改善並びにリンパ腫径の縮少が認めら
れた。
以上の結果より、化合物1投与によれば、アポトーシ
ス調整作用に基づく自己免疫疾患改善作用が期待できる
ことが判る。
薬理試験例11 PC12細胞に対する効果試験 5%熱非働化(56℃、30分)ウマ血清と10%ウシ胎児
血清(FCS)を含むダルベッコ変法MEM(D−MEM)培地
で継代したPC12細胞を、コラーゲンでコートした直径35
mmプラスチックペトリディッシュに6×104細胞/3ml培
地の濃度で移植した。移植2日目に、種々の濃度の化合
物1、神経成長因子(NGF、和光純薬社製)及びFCSのそ
れぞれを含むD−MEM(コントロール)に交換し、その
それぞれにつき培養を続け、3日目の細胞の形態変化を
位相差顕微鏡により観察した。
その結果を図9及び図10に示す。
図9は上段がFCSのみ添加の対照群、下段が化合物1
の30μg/ml添加群であり、図より、上段に比して、下段
では典型的な形態変化である神経線維様突起の形成が観
察され、最も顕著な神経線維様突起形成はFCS0.3%共存
下(下段左)で観察されることが判る。共存FCS濃度を
更に高くすると形態の異なる細胞も出現する(下段中央
及び右)。かくして、全細胞の30〜50%に形態変化が誘
導された。
図10は上段がNGFのみ添加群(但し0.3%FCS共存下)
であり、下段が0.3%FCS存在下に化合物1の30μg/mlと
NGF(0〜30ng/ml)とを添加した群である。該図より、
上段に認められるNGF刺激による神経様突起の形成に加
えて、下段では化合物1とNGFの共存(但し0.3%FCS共
存下)によって、それらのそれぞれ単独よりも上記突起
の伸長が促進されていると認められた。
上記各図より、本発明の有効成分化合物1はアポトー
シス調整作用に基ずくNGF様の作用を示し、このことか
らアルツハイマー病の治療剤として有用であることが判
る。
薬理試験例12 肝不全に対する効果試験 雄性BALB/cマウス(7週齢、日本エスエルシー社より
購入)に、P.acnes加熱死菌(大阪市立大学医学部第3
内科、溝口先生より贈与)3mg/bodyを静脈内投与した。
その7日後に溶媒(0.5%CMC、第一工業製薬社製)投与
群、非投与群と共に、化合物1の10mg/kg又は100mg/kg
を経口投与した試験群を設けた。上記化合物1投与の1
時間後にLPS(Lipopoly saccharide、シグマ社製)の5
μg/bodyを静脈内投与して、急性肝障害を誘発させた。
上記各群マウスの生存率をLPS投与7日後まで観察し
た。
結果を図11に示す。
該図より、化合物1の10mg/kg投与群(試験群)の生
存率は30%で、化合物1の100mg/kg投与群(試験群)の
生存率は70%であった。これに対して非投与群の生存率
は0%、溶媒投与群では10%であった。このことから、
化合物1は、急性肝炎モデルに対して、用量依存的に優
れた延命効果を奏することが判り、かくしてアポトーシ
ス調整作用に基ずく肝炎治療剤として有効であると認め
られる。
薬理試験例13 B16メラノーマ細胞の実験肺転移モデルに対する効果試
験 2×106細胞のB16マウスメラノーマ細胞(Koren,S.an
d Fleischmann,W.R.,J.Interferon Reseach,,473−48
2(198)を、予め化合物1の3μg/ml又は10μg/mlを添
加するか無添加の10%FBS(ギブコ社製)添加イーグル
−MEM培地(日本製薬社製)に懸濁させた。75cm2のフラ
スコ(コーニング社製)にて5%炭酸ガス下に、37℃の
インキュベーター(ナショナルアプリアンス、モデル53
00(National appliancet,model 5300))で4日間培養
した。培養後、細胞をダルベッコPBS(-)(日水製薬社
製)溶液で洗浄し、0.05%トリプシン(フロー社製)溶
液を加えてフラスコから剥離した。1200回転で5分間遠
心分離(日立製作所製、05PR−22使用)して2回洗浄
後、0.2%トリパンブルー(和光純薬社製)溶液を加
え、血球計算板(No.J7796,KAYAGAKI WORKS)にて、生
細胞数を数え、ハンクス(Hank′s、フロー社製)溶液
にて細胞数を1.5×106個/mlに希釈調製した。
次に、上記で得られた処理細胞を、1群7匹のC57BL/
6マウス(7週齢、雌性、日本チャールズ・リバー社よ
り購入)の尾静脈から3×105個ずつ移植し、12日後に
マウスを頚椎脱臼して殺し、肺に転移したコロニー数を
計測した。
その結果を図12及び下記表12に示す。
上記図及び表より、3μg/mlの化合物1を含む培地で
培養した細胞を移植した群及び10μg/mlの化合物1を含
む培地で培養した細胞を移植した群のいずれにおいて
も、明らかに転移抑制効果が認められた。このことか
ら、本発明の有効成分化合物は、アポトーシス調整作用
に基ずいて、癌転移抑制剤として有用であることが判
る。
産業上の利用可能性 本発明アポトーシス調整剤は、その特有のアポトーシ
ス調整能、細胞分化誘導能に基づいて、癌の化学療法剤
として有効利用できる。また抗レトロウイルス効果によ
りAIDS、ARC、ATL等の関連疾患やHTLV−I関連疾患の治
療剤として、自己免疫疾患の延命効果により自己免疫疾
患治療剤として、血小板関連抗原の発現量の増加効果に
より血小板減少症治療剤として、NGF様効果によるアル
ツハイマー病治療剤として、肝不全の延命効果により肝
炎治療剤として、癌転移抑制効果による癌転移抑制剤と
して、それぞれ有効である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C07D 215/22 C07D 215/22 (31)優先権主張番号 特願平4 −100585 (32)優先日 平4(1992)3月25日 (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 市川 弘之 徳島県徳島市中通町3丁目11番地 (72)発明者 赤松 聖司 徳島県鳴門市***町川崎223―1 (72)発明者 齋藤 史郎 群馬県高崎市山名町2294―80

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 〔式中Rはフェニル環上に置換基として低級アルコキシ
    基を有することのあるベンゾイル基を示す。カルボスチ
    リル骨格の3位と4位との炭素間結合は一重結合又は二
    重結合を示す。〕 で表わされるカルボスチリル誘導体及びその塩から選ば
    れる少なくとも1種の化合物を有効成分として、薬理的
    に許容される担体と共に含有することを特徴とするアポ
    トーシス調整剤。
  2. 【請求項2】制癌剤として用いられる請求項1に記載の
    アポトーシス調整剤。
  3. 【請求項3】抗レトロウイルス剤として用いられる請求
    項1に記載のアポトーシス調整剤。
  4. 【請求項4】自己免疫疾患治療剤として用いられる請求
    項1に記載のアポトーシス調整剤。
  5. 【請求項5】血小板減少症治療剤として用いられる請求
    項1に記載のアポトーシス調整剤。
  6. 【請求項6】アルツハイマー病治療剤として用いられる
    請求項1に記載のアポトーシス調整剤。
  7. 【請求項7】肝疾患治療剤として用いられる請求項1に
    記載のアポトーシス調整剤。
  8. 【請求項8】癌転移抑制剤として用いられる請求項1に
    記載のアポトーシス調整剤。
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