JP2583623B2 - 防音二重床構造および床パネル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、防音二重床構造および床パネルに関し、詳
しくはコンクリート床スラブ等からなる床下地上に複数
の床パネル材が適宜高さの支持脚体を介して並置されて
なる二重床の防音構造、及び該二重床の防音構造に用い
られる床パネルに関する。

（従来の技術） 上記二重床或いは床パネルとしては、主として中高層
のビルやマンション等の床に採用されており、床パネル
材の下面に該床パネル材を支持するレベル調節可能な複
数の支持脚体を備えた床パネルがコンクリート床スラブ
等からなる床下地上に上記支持脚体を介して並置される
ことになり、上記床パネル材の下方に床下空間が形成さ
れる置床構造及び床パネルが知られている。

そして、このような二重床構造や床パネルは、床下地
上面の不陸を支持脚体により吸収できるため床下地を平
滑化する手間が不要であるという利点、及び床パネル材
の下方に床下空間が水平方向に連続しているため床下地
上面での配管、配線工事が容易であるという利点を有し
ているので、上記の中高層建築物で広く採用されてい
る。

（発明が解決しようとする課題） しかるに、上記二重床構造や床パネルにおける床パネ
ル材の上面に床衝撃力が作用し、該床パネル材の振動に
よって床下空間の空気が振動した場合、該床下空間が水
平方向に連続しているため、床下空間の空気振動は水平
方向に拡散して広い範囲に伝達される。

このため、上記の二重床構造や床パネルにおいては、
階上で発生した床衝撃音が階下へ大きな衝撃音となって
伝達されることになり、防音性能が十分でないという問
題がある。

上記に鑑み、本発明は、防音性に優れた二重床構造及
び床パネルを簡易に得られるようにすることを目的とす
る。

（課題を解決するための手段） 前記の目的を達成するため、請求項（１）及び（２）
の発明は、床パネル材の下面に所定高さを有し下方が開
口した箱状体又は筒状体を設けて床下空間を仕切ること
により該床下空間での空気振動の拡散を防止するもので
ある。

具体的に請求項（１）の発生が講じた解決手段は、コ
ンクリート床スラブ等からなる床下地上に複数の床パネ
ル材がレベル調節可能な複数の支持脚体を介して並置さ
れ、上記床パネル材の下方に床下空間が形成されてなる
防音二重床構造を対象とし、上記床パネル材の下面に、
上記床下空間高さの３分の１以上で且つ該床下空間高さ
より低い高さを有し下方が開口している箱状体又は筒状
体が設けられている構成とするものである。

また、請求項（２）の発明が講じた解決手段は、床パ
ネル材の下面に該床パネル材を支持する複数の支持脚体
を備えてなり、コンクリート床スラブ等からなる床下地
上に上記床パネル材の下方に床下空間が形成されるよう
に上記支持脚体を介して並置される床パネルを対象と
し、上記床パネル材の下面に上記床下空間高さの３分の
１以上で且つ該床下空間高さより低い高さを有し下方が
開口している箱状体又は筒状体が設けられている構成と
するものである。

（作用） 請求項（１）及び（２）の構成により、床パネル材の
下面に、床下空間高さの３分の１以上で且つ該床下空間
高さより低い高さを有し下方が開口している箱状体又は
筒状体が設けられているため、床下空間での空気振動は
箱状体又は筒状体の壁部によって反射されるので、空気
振動は床下空間を水平方向へ拡散し難く、また箱状体又
は筒状体の内部における空気振動は壁部によって反射を
繰返すことになり、振動エネルギーを消耗して短時間で
減衰する。この場合、箱状体又は筒状体はその高さが床
下空間高さより低く且つ下方が開口しているため、床パ
ネル材の上面に床パネル材を曲げ変形させるような大き
な床衝撃力が加わっても、箱状体又は筒状体の内部空気
が閉空間となることがなく太鼓現象が生じない。

また、箱状体或いは筒状体の下端と床下地上面との間
に空間が形成されるため、床パネル材に加わる床衝撃力
が直接床下地に伝播されないと共に、箱状体や筒状体が
床下地上の配管や配線の邪魔になることがない。

さらに、床パネル材の下面に箱状体や筒状体が設けら
れているため、床パネル材の剛性が向上するので、床衝
撃力を受けたときの床パネル材の曲げ変形量が小さい。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図及び第２図は本発明の一実施例に係る防音二重
床構造Ａ及び床パネルＢを示し、該防音二重床構造Ａ
は、コンクリート床スラブ等からなる床下地１の上に複
数の矩形状の床パネル材２が複数の支持脚体３を介して
並置され、床パネル材２の上面に捨張り材４を介して床
仕上げ材５が敷設されており、床下地１と床パネル材２
との間に床下空間６が形成されてなるものであり、ま
た、上記床パネルＢは床パネル材２の下面に支持脚体３
が設けられてなるものである。

床仕上げ材５としては木質フロア材やカーペット材等
を適宜使用でき、また、捨張り材４としては合板等を適
宜使用できる。

床パネル材２としては、合板やパーティクルボード等
の木質板、木質セメント板或いは金属製成形パネル等を
用いることができ、その上に敷設される捨張り材４、床
仕上げ材５及び床上荷重を支持できる程度の剛性を有し
ておれば適宜選択可能である。

支持脚体３は、床下地１の上面に載置される円錐台状
の弾性体3aと、該弾性体3aに立設された高さ調節用の調
節ボルト3bと、床パネル材２に埋設され調節ボルト3bが
螺着されたナット3bとを有し、調節ボル3bを回転するこ
とによりレベル調節が可能である。

尚、支持脚体３は、床パネル材２と必ずしも一体でな
くてもよく、床パネル材２を鋼製根太や木材ブロックを
介して上記支持脚体３で支持させた構造であってもよ
い。

本実施例の特徴として、背が低く且つ下方が開口して
いる有底の箱状体７が、その底部7aにおいて床パネル材
２の下面にビス止めされている。

箱状体７の材質としては、合成樹脂、厚紙、木質材、
金属材、無機質材、木質セメント複合材、繊維板や繊維
マットの繊維質材料等を適宜選択して用いることがで
き、床下空間６での空気振動を反射して拡散を防止し得
る程度の面密度を有しておればよい。箱状体７の床パネ
ル材２への取付強度については、床パネル材２に加わる
衝撃力によって箱状体７が脱落しない程度でよく、取付
方法についても上記のビス止めのほか接着剤による接着
等適宜のものでよい。

箱状体７の横断面の形状としては四角形或いは円形等
適宜のものでよいが、箱状体７の高さとしては次のよう
に設定することが好ましい。

すなわち、箱状体７の高さの上限としては、床面に衝
撃力が加わり、床パネル材２が撓んでも箱状体７の下端
が床下地１の上面に当接しない程度の空間例えば10mm以
上の空間が、箱状体７下端と床下地上面１との間に形成
されるようにすることが好ましい。また、床下地１上に
配管や配線等が設けられる場合には、これらの配管や配
線に箱状体７の下端が当接しないよう、箱状体７下端と
床下地上面１との間に20〜50mm程度の空間を設けておく
ことが好ましい。

また、箱状体７の高さの下限としては床下空間６の高
さの３分の１以上であることが好ましい。その理由は以
下の通りである。すなわち、第５図は、床下空間６の高
さが100mmの場合において、箱状体７下端と床下地１上
面との間隔であるクリアランスと軽量床衝撃音レベルと
の関係を示したものであって、同図から明らかなよう
に、クリアランスが100mmから67mmまでの間ではクリア
ランスが小さくなるにつれて床衝撃音レベルのLL値も急
激に小さくなるためであり、また、クリアランスを67mm
より小さくすると上記LL値が55以下になるためである。

また、クリアランスを67mmより小さくするとLL値が55
以下になる理由については次のように解釈される。すな
わち、第２図に示すように、床下空間６のうちの３分の
１以上の上層部を箱状体７の壁部7bで仕切ると、床パネ
ル材２の上面に矢印（イ）で示すように床衝撃力が加わ
っても、床衝撃力に伴う空気振動は箱状体７の壁部7bに
反射される。このため、箱状体７の内部で発生した空気
振動が矢印（ロ）で示すように箱状体７の外部へ脱出し
たり、或いは箱状体７の外部で発生した空気振動が矢印
（ハ）で示すように箱状体７の内部へ進入したりし難い
ので、空気振動が床下空間６を水平方向へ拡散し難くな
るためである。

なお、上記のように床下空間６のうちの３分の１以上
の上層部を仕切ると防音効果は向上するが、特に床下空
間６のうちの２分の１の上層部を仕切ると防音効果は著
しく向上する。

以上の如く、床パネル材２の下面に箱状体７が設けら
れているため、床下空間６の空気振動は水平方向に拡散
しようとする際、箱状体７の壁部7aによって反射される
が、空気振動は壁部7aによって反射される毎に振動エネ
ルギーを消耗しながら減衰するので、床下空間６の騒音
は速やかに低減する。従って、箱状体７の材質として、
金属板等のように音響を反射しやすい高密度材料を用い
ると、床下空間６の空気振動が横方向に透過拡散するこ
とがなくなり、騒音を一層速やかに低減させることがで
きる。

箱状体７の横断面の大きさとしては次のように設定す
ることが好ましい。すなわち、床パネル材２と同一若し
くはこれより小さいものであれば特に限定されるもので
はないが、床下空間６における空気振動の拡散範囲を小
さくするため、横断面が正方形の場合には900mm×900mm
程度以下の大きさが好ましい。

また、箱状体７の横断面を450mm×450mm程度以下の正
方形にしておくと、箱状体７の壁部7aが空気振動を効果
的に反射すると共に、125〜500Hzの空気振動に対する反
射減衰が速やかに行われる。従って、このような大きさ
の横断面にすると、空気振動の拡散が効果的に防止され
ると共に、壁部7bでの反射による緩衝作用によって吸音
されるので、床衝撃音を効果的に減衰させることができ
る。

第３図は上記実施例の第１変形例を示し、該第１変形
例においては、背が低く無底の筒状体８が２個のＬ字状
の取付部材8aにより床パネル材２の下面に取り付けられ
ている。

この筒状体８においても横断面の形状は四角形或いは
円形等適宜のものでよく、その材質、高さ及び横断面の
大きさについても箱状体７の場合と同様である。

第４図は上記実施例の第２変形例を示し、該第２変形
例においては、箱状体７の壁部7aの内周面に吸音材９が
配設されている。なお、図示はしていないが、上記第１
変形例における筒状体８の壁部8aの内周面に吸音材９を
配設してもよい。

吸音材９の材質としては多孔質吸音材が好ましく、具
体的にはグラスウールマット、ロックウールマット、合
成繊維マット、パルプと合成繊維とよりなる混合マット
等の繊維質マット、又は、発泡プラスチック板や発泡無
機質板等の発泡体が好ましい。

このように箱状体７の壁部7a或いは筒状体８の壁部8a
の内周面に吸音材９を貼着すると、空気振動が壁部7a或
いは8aの内周面に当たって反射する際に吸音材９により
吸収されるため、床下空間６での騒音は速やかに低減す
る。

なお、吸音材９を壁部7a或いは8aの内周面及び外周面
のいずれか一方或いは両方に設けてもよいが、吸音材９
を上記変形例のように内周面に設けると、箱状体７或い
は筒状体８の内部空間における空気振動の反射を利用し
て効果的に吸音できると共に、取扱時に吸音材９が壁部
7bで保護されて損傷し難いので取扱が容易である。

また、前記実施例、第１変形例及び第２変形例に代え
て、１枚の床パネル材２の下面に箱状体７或いは筒状体
８を複数個設けてもよい。

さらに、筒状体８を支持脚体３を囲むように床パネル
材２の下面に取り付けてもよい。このようにすると、支
持脚体３の振動に伴う空気振動の拡散を防止でき、隣接
する支持脚体３への振動伝播を防止できるため防音性能
が向上する。

以下、本発明を評価するために行なった軽量床衝撃音
の遮音性能テストについて説明する。

まず、具体例１として第１図に示す防音二重床構造を
準備した。すなわち、厚さ:30mmのパーティクルボード
よりなる床パネル材２の上に、厚さ:12mmの合板よりな
る捨張り材４を介して厚さ:12mmの木質フロアよりなる
床仕上げ材５が敷設され、床パネル材２の下方に高さ:1
00mmの床下空間６が形成された二重床構造を準備し、床
パネル材２の下面に高さ:80mmの箱状体７を設けた。

また、具体例２として具体例１と同様の二重床構造を
準備し、箱状体７の壁部7aの内周面に厚さ:25mm、密度:
32kg/m³、のグラスウールを貼着した。

さらに、比較例として第６図に示すような床構造、つ
まり具体例と同様、厚さ:30mmのパーティクルボードよ
りなる床パネル材ａの上に、厚さ:12mmの合板よりなる
捨張り材ｂを介して厚さ:12mmの木質フロアよりなる床
仕上げ材ｃが敷設され、床パネル材ａの下方に高さ:100
mmの床下空間ｄが形成された二重床構造を準備し、床下
地ｅ上に遮音板ｆとして厚さ:25mm、密度:64kg/m³、の
グラスウールマットを略全面に亘って敷設したものを準
備した。

具体例1,2及び比較例に対する遮音性能テストの結果
は第７図に示す通りであって、比較例の構造によるとJI
S−Ａ−1418による軽量床衝撃音の遮音性能はＬ−60で
あり、少し気になる程度のレベルであったのに対し、本
発明の具体例１の遮音性はＬ−55、具体例２の遮音性は
Ｌ−52という気にならないレベルであって、軽量床衝撃
音に対して具体例のものは比較例のものに比べて約５〜
8dB防音性能が優れていることが確認された。

（発明の効果） 以上説明したように、請求項（１）の発明によると、
床パネル材の下面に、床下空間高さの３分の１以上で且
つ該床下空間高さより低い高さを有し下方が開口してい
る箱状体又は筒状体が設けられているため、空気振動は
太鼓現象を生じることなく、箱状体又は筒状体の壁部に
よって反射されつつ減衰するので、床下空間での騒音は
速やかに低減される。また、箱状体又は筒状体の下端と
床下地の上面との間に空間が形成されるため、床パネル
材に加わる床衝撃力が直接床下地に伝わることがないと
共に、上記空間に配管や配線を設けることができるので
配管、配線工事が容易である。

このため、防音性に優れた防音二重床構造を簡易な施
工方法により得ることができる。

また、請求項（２）の発明によると、箱状体又は筒状
体が床パネル材下面に一体に設けられているので、上記
のように床パネル材下の空気振動の拡散が低減されると
共に、床パネル材全体の剛性が箱状体等で高められて曲
げ振動の小さい防音性に優れたものである。さらに、上
記箱状体又は筒状体を吸音材と組み合わせて形成してお
くと、吸音材の施工を床パネルの設置と同時にできるの
で吸音材の施工の手間が不要である。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は本発明の一実施例である防音二重床
構造及び床パネルを示し、第１図は断面図、第２図は部
分拡大断面図、第３図は上記防音二重床構造の第１変形
例を示す一部切截斜視図、第４図は上記防音二重床構造
の第２変形例を示す部分拡大断面図、第５図はクリアラ
ンスと軽量床衝撃音レベルとの関係を示す図、第６図は
従来構造としての比較例の断面図、第７図は具体例及び
比較例の軽量床衝撃音に対する遮音性能テスト結果を示
す図である。 Ａ…防音二重床構造 Ｂ…床パネル １…床下地 ２…床パネル材 ３…支持脚体 ４…捨張り材 ５…床仕上げ材 ６…床下空間 ７…箱状体 7a…壁部 ８…筒状体 8a…壁部 ９…吸音材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮本 英樹 大阪府大阪市北区中之島２丁目３番18号 大建工業株式会社内 (72)発明者 山口 稔 大阪府大阪市北区中之島２丁目３番18号 大建工業株式会社内

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】コンクリート床スラブ等からなる床下地上
   に複数の床パネル材がレベル調節可能な複数の支持脚体
   を介して並置され、上記床パネル材の下方に床下空間が
   形成されてなる防音二重床構造であって、上記床パネル
   材の下面に、上記床下空間高さの３分の１以上で且つ該
   床下空間高さより低い高さを有し下方が開口している箱
   状体又は筒状体が設けられていることを特徴とする防音
   二重床構造。
2. 【請求項２】床パネル材の下面に該床パネル材を支持す
   る複数の支持脚体を備えてなり、コンクリート床スラブ
   等からなる床下地上に上記床パネル材の下方に床下空間
   が形成されるように上記支持脚体を介して並置される床
   パネルであって、上記床パネル材の下面に上記床下空間
   高さの３分の１以上で且つ該床下空間高さより低い高さ
   を有し下方が開口している箱状体又は筒状体が設けられ
   ていることを特徴とする床パネル。