JP2583188Y2 - 椅子の座席と背凭の傾動装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は椅子の座席と背凭の傾動
装置に関し、更に詳しくは、座席の後傾動に追従させて
背凭を座席に対し後傾動させることができる傾動装置の
改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば実公昭５６−４９４８７号、実開
昭５８−１５９９５４号、実公昭６３−４８２０５号等
には、座席を後傾動させることができる椅子の傾動装置
が開示されている。これらの傾動装置は、脚体の上端部
に固着された支持枠と、この支持枠に対し支軸を介して
後傾動可能に枢着された後部座席支持体と、この後部座
席支持体の前端に連結された前部座席支持体とを有して
いる。そして、支持枠と後部座席支持体とを連結する支
軸には後部座席支持体の後傾動に捻り反発力を付与する
ためのトーションバーが組み込まれており、その初期捻
り量は操作ノブの操作により調整可能となっている。こ
れらの、座席傾動装置においては、トーションバーを組
み込んでいる支軸が脚体の上端部の直前に配置されてい
るため、後部座席支持体が後ろに傾動したときに前部座
席支持体が固定若しくは前傾動されることにより、着座
者の大腿部が上方に大きく持ち上げられることを防止し
ている。

【０００３】一方、実開平５−２１２２号公報には、座
席および背凭を後傾動させることができる椅子の傾動装
置が開示されている。この傾動装置は、後端部が脚体の
上端部に固定された支持枠と、前端部が支持枠の前端部
に前支軸を介して後傾動可能に枢着された座席支持体
と、座席支持体の後端部に後支軸を介して枢着された背
凭支持体と、座席支持体の後傾動に追従して背凭支持体
が座席支持体に対し後傾動するように一端および他端が
支持枠と背凭支持体の前端部とにそれぞれ軸着された連
結アームとを備えている。この従来装置においては、座
席支持体および背凭支持体の後傾動に捻り反発力を付与
するために、座席支持体の後端部の後支軸にトーション
バーが組み込まれており、このトーションバーはその捻
り反発力を操作ノブの操作により調整可能となってい
る。さらに、支持枠の前端部と背凭支持体の前端部とに
ガスばねの両端部がそれぞれ軸着されており、このガス
ばねの弁を調整レバーで開閉操作することにより背凭支
持体の傾斜角度を調整できるものとなっている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】上述した前者の座席傾
動装置の場合、後部座席支持体の前端が支軸の前方に一
しており、後部座席支持体の後傾動時にその前端が上昇
動するため、着座者の大腿部が持ち上がるという欠点を
十分に解消することができない。また、後部座席支持体
が後傾動する際に、前部座席支持体が固定若しくは前傾
動されるため、それらの上面に装着されるクッション部
材に引張り等の無理な力が加わり、その寿命が短くなる
という欠点がある。また、着座者の上体の重心が支軸の
真上近傍に位置したときには、支軸に組み込まれている
トーションバーに対し着座者の上体の体重による捻りト
ルクが発生しないため、後部座席支持体の後傾動および
トーションバーの捻り反発力によるクッション性が得ら
れないことになり、着座者に不快感を与える。さらに、
トーションバーの捻り反発力を調整するための調整ハン
ドルが後部座席支持体の後端部近傍若しくは脚体の近傍
に位置するので操作しずらいという欠点がある。

【０００５】一方、上述した後者の座席および背凭の傾
動装置においては、支持枠と座席支持体とを連結する前
支軸が座席支持体の前端部に配置されているので、座席
支持体の後傾動時にその前端が上昇する問題を解消でき
るが、トーションバーは座席支持体と背凭支持体とを連
結する後支軸に組み込まれており、トーションバーの初
期捻り量を調整するための操作ノブが座席支持体の前端
部下方に配置されているため、操作ノブとトーションバ
ーとの間に梃子等の伝達機構が必要であり、構造が複雑
化する原因となっている。

【０００６】したがって、本考案の目的は、座席支持体
の前端を大きく上昇させることなく、座席支持体を後傾
動させることができるとともに、座席の後傾動に追従さ
せて背凭を座席に対し後傾動させることができ、しか
も、座席支持体および背凭支持体の後傾動に対するトー
ションバーの捻り反発力を容易に調整することができる
構造の簡単な椅子の座席と背凭の傾動装置を提供するこ
とにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本考案は、後端部が脚体の上端部に固着された支持
枠と、支持枠の前端部に固着した前支軸と、前支軸を介
して前端部が支持枠に対し後傾動可能に枢着された座席
支持体と、座席支持体の後端部に後支軸を介して枢着さ
れた背凭支持体と、座席支持体の後傾動に追従して背凭
支持体が座席支持体に対し後傾動するように両端が支持
枠と背凭支持体の前端部とにそれぞれ軸着された連結ア
ームとを備えた椅子の座席と背凭の傾動装置において、
前支軸を中空軸として該前支軸内にトーションバーを挿
入し、該トーションバーの一端を前支軸の一端部に固定
するとともに、該トーションバーの他端に固定した外筒
体に突設したレバーの先端に調整ハンドルのねじ部を螺
合し、該ねじ部の先端を座席支持体の下面に当接したこ
とを特徴とする。

【０００８】上記構成の傾動装置において、好ましく
は、支持枠の前端と背凭支持体の前端との間に、座席支
持体および背凭支持体の後傾動により圧縮されるコイル
ばねが設けられる。

【０００９】さらに好ましくは、支持枠の前端と背凭支
持体の前端とに伸縮杆の前後端に取り付けたブラケット
がそれぞれ軸着され、コイルばねは伸縮杆に外挿されて
前後ブラケット間に保持される。

【００１０】

【作用】上記構成の椅子の座席と背凭の傾動装置におい
ては、支持枠と座席支持体と背凭支持体と連結アームと
が四節リンクを構成しているので、座席支持体が後傾動
すると背凭支持体が座席支持体の動きに連動して後傾動
する。座席支持体と支持枠とは座席支持体の前端部に配
置された前支軸を介して互いに連結されているので、座
席支持体が後傾動するときにその前端部が大きく上昇す
ることはない。したがって、座席支持体の後傾動時に着
座者の大腿部が大きく持ち上げられることを防止でき
る。また、トーションバーを内設した前支軸は座席支持
体の前端部にあり、通常の使用状態では着座者の上体の
重心位置が前支軸の真上近傍に位置することはないの
で、何れの着座位置でも座席支持体の後傾動とトーショ
ンバーの捻り反発力によるクッション性を確保すること
ができる。さらに、座席支持体および背凭支持体に捻り
反発力を与えるトーションバーは座席支持体と支持枠と
を連結する前支軸内に設けられており、このトーション
バーの捻り反発力を調整するための調整ハンドルはトー
ションバーに固定した外筒体より後方に突設されたレバ
ーの先端に螺合して座席支持体の下面に当接しているの
で、調整ハンドルの操作部が座席の前端部近傍且つ座席
支持体の下面近傍に位置し、その操作が容易であるとと
もに、調整ハンドルとトーションバーとの連結構造を簡
素化することができる。

【００１１】支持枠の前端と背凭支持体の前端との間に
座席支持体および背凭支持体の後傾動により圧縮される
コイルばねを設けた場合、座席支持体および背凭支持体
の後傾動に対する弾性反発力をトーションバーとコイル
ばねとで分担保持することができるので、捻りばね定数
の小さいトーションバーを用いることが可能となり、調
整ハンドルによるトーションバーの捻り反発力の調整を
軽い力で容易に行うことができるようになる。

【００１２】

【実施例】以下、図面を参照して本考案の実施例につき
説明する。

【００１３】図１は本考案の一実施例に係る椅子の座席
と背凭の傾動装置の側面図であり、図２は傾動装置の正
面図であり、図３は傾動装置の動作を示す側面図であ
る。はじめに図１および図２を参照すると、椅子の座席
と背凭の傾動装置は、下端にキャスター（不図示）を備
えた脚体１と、後端部が脚体１の上端部に固着された支
持枠２と、支持枠２の前端部に固着した中空軸構造の前
支軸３と、前支軸３を介して前端部が支持枠２に対し後
傾動可能に枢着された座席支持体４と、座席支持体４の
後端部に後支軸５を介して枢着された背凭支持体６と、
座席支持体４の後傾動に追従して背凭支持体６が座席支
持体４に対し後傾動するように両端が支持枠２と背凭支
持体６の前端部とにそれぞれ支軸８，９を介して軸着さ
れた連結アーム７とを備えている。図示は省略するが座
席支持体４の上面および背凭支持体６の上部にはそれぞ
れクッション体が取り付けられる。

【００１４】図２に示すように、前支軸３の両端部は支
持枠２の両側方に突出しており、座席支持体４には前支
軸の両端部外周にそれぞれ回動可能に嵌合する軸受筒体
１０，１１が固着されている。そして、前支軸３内には
トーションバー１２が挿入されており、トーションバー
１２の一端は前支軸３の一端部（図２中左端部）に固定
されており、トーションバー１２の他端は前支軸３の他
端部外周に嵌合する軸受筒体１１の外周に回動可能に嵌
合した外筒体１３に固定されている。この外筒体１３に
は後方に突出するレバー１４が固設されており、レバー
１４の先端に形成されたねじ孔には調整ハンドル１５の
ねじ部１５ａが螺合しており、該ねじ部１５ａの先端が
前支軸３の後方で座席支持体４の下面に当接するように
配置されている。

【００１５】さらに、この実施例では、支持枠２の前端
と背凭支持体６の前端との間に座席支持体４および背凭
支持体６の後傾動により圧縮されるコイルばね１６が設
けられている。更に詳しく説明すると、この実施例で
は、支持枠２の前端には伸縮杆１７の前端に取り付けら
れた前ブラケット１８が支軸１９を介して軸着されてお
り、背凭支持体６の前端には伸縮杆１７の後端に取り付
けられた後ブラケット２０が連結アーム７を軸支する支
軸９を介して軸着されている。そしてコイルばね１６は
伸縮杆１７に外挿されて前後ブラケット１８，２０間に
保持されている。

【００１６】上記構成を有する椅子の座席と背凭の傾動
装置においては、支持枠２と座席支持体４と背凭支持体
６と連結アーム７とが四節リンクを構成しているので、
座席支持体４が後傾動すると背凭支持体６が座席支持体
４の動きに連動して後傾動する。そして座席支持体４と
支持枠２とは座席支持体４の前端部に配置された前支軸
３を介して互いに連結されているので、座席支持体４が
後傾動するときにその前端部が大きく上昇することはな
い。したがって、座席支持体４の後傾動時に着座者の大
腿部が大きく持ち上げられることを防止できる。

【００１７】また、トーションバー１２を内設した前支
軸３は座席支持体４の前端部にあり、通常の使用状態で
は着座者の上体の重心位置が前支軸３の真上近傍に位置
することはないので、何れの着座位置でも座席支持体４
の後傾動とトーションバー１２の捻り反発力によるクッ
ション性を確保することができる。

【００１８】さらに、座席支持体４および背凭支持体６
に捻り反発力を与えるトーションバー１２は座席支持体
４と支持枠２とを連結する前支軸３内に設けられてお
り、このトーションバー１２の捻り反発力を調整するた
めの調整ハンドル１５はそのねじ部１５ａがトーション
バー１２に固定された外筒体１３より後方に突設された
レバー１４の先端に螺合してその先端が座席支持体４の
下面に当接しているので、調整ハンドル１５が座席支持
体４の前端部近傍且つ座席支持体４の下面近傍に位置
し、その操作が容易であるとともに、調整ハンドル１５
とトーションバー１２との連結構造を簡素化することが
できる。

【００１９】さらに、上記実施例においては、支持枠２
の前端と背凭支持体６の前端との間に座席支持体４およ
び背凭支持体６の後傾動により圧縮されるコイルばね１
６を設けているので、座席支持体４および背凭支持体６
の後傾動に対する弾性反発力をトーションバー１２とコ
イルばね１６とで分担保持することができる。したがっ
て、捻りばね定数の小さいトーションバー１２を用いる
ことが可能となり、調整ハンドル１５によるトーション
バー１２の捻り反発力の調整を軽い力で容易に行うこと
ができるようになる。

【００２０】以上、図示実施例につき説明したが、本考
案は上記実施例の態様のみに限定されるものではない。
例えば、コイルばね１６を省略し、トーションバー１２
のみで座席支持体４および背凭支持体６の後傾動に弾性
反発力を付与するようにしてもよい。さらに、コイルば
ね１６の代わりに中空軸構造とした後支軸５内にトーシ
ョンバーを設け、その一端を後支軸５の一端に固定する
とともに他端を背凭支持体６に固定することにより、前
支軸３内のトーションバー１２と後支軸５内のトーショ
ンバーとで座席支持体４および背凭支持体６に弾性反発
力を付与してもよい。この場合、椅子の外観を簡素化す
ることができる。

【００２１】

【考案の効果】以上の説明から明らかなように、本考案
においては、座席支持体を支持する前支軸を座席支持体
の前端部に配置するとともに、座席支持体および背凭支
持体の後傾動に対し弾性反発力を与えるトーションバー
を前支軸内に設けているので、座席支持体の前端を大き
く上昇させることなく、座席支持体を後傾動させること
ができるとともに、座席の後傾動に追従させて背凭を座
席に対し後傾動させることができ、しかも、座席支持体
および背凭支持体の後傾動に対するトーションバーの捻
り反発力を容易に調整することができる構造の簡単な椅
子の座席と背凭の傾動装置を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す椅子の座席と背凭の傾
動装置の側面図である。

【図２】図１に示す傾動装置の正面図である。

【図３】図１に示す傾動装置の座席支持体および背凭支
持体を傾動させた状態を示す側面図である。

【符号の説明】

１ 脚体 ２ 支持枠 ３ 前支軸 ４ 座席支持体 ５ 後支軸 ６ 背凭支持体 ７ 連結アーム １２ トーションバー １３ 外筒体 １４ レバー １５ 調整ハンドル １５ａ ねじ部 １６ コイルばね １７ 伸縮軸 １８ 前ブラケット ２０ 後ブラケット

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) A47C 3/02 A47C 3/025 A47C 3/026

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 後端部が脚体（１）の上端部に固着され
   た支持枠（２）と、支持枠の前端部に固着した前支軸
   （３）と、前支軸を介して前端部が支持枠に対し後傾動
   可能に枢着された座席支持体（４）と、座席支持体の後
   端部に後支軸（５）を介して枢着された背凭支持体
   （６）と、座席支持体の後傾動に追従して背凭支持体が
   座席支持体に対し後傾動するように両端が支持枠と背凭
   支持体の前端部とにそれぞれ軸着された連結アーム
   （７）とを備えた椅子の座席と背凭の傾動装置におい
   て、 前支軸（３）を中空軸として該前支軸内にトーションバ
   ー（１２）を挿入し、該トーションバーの一端を前支軸
   の一端部に固定するとともに、該トーションバーの他端
   に固定した外筒体（１３）に突設したレバー（１４）の
   先端に調整ハンドル（１５）のねじ部（１５ａ）を螺合
   し、該ねじ部の先端を座席支持体（４）の下面に当接し
   たことを特徴とする椅子の座席と背凭の傾動装置。
2. 【請求項２】 支持枠（２）の前端と背凭支持体（６）
   の前端との間に、座席支持体（４）および背凭支持体
   （６）の後傾動により圧縮されるコイルばね（１６）を
   設けたことを特徴とする請求項１記載の椅子の座席と背
   凭の傾動装置。
3. 【請求項３】 支持枠（２）の前端と背凭支持体（６）
   の前端とに伸縮杆（１７）の前後端に取り付けたブラケ
   ット（１８，２０）をそれぞれ軸着し、伸縮杆に外挿し
   たコイルばね（１６）を前後ブラケット間に保持したこ
   とを特徴とする請求項２記載の椅子の座席と背凭の傾動
   装置。