JP2582178Y2 - スピーカーの指向特性を改善する拡散器 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、スピーカー特に中・高
音用のスピーカーの指向特性を改善するための拡散器に
関する。

【０００２】

【従来の技術】スピーカーから出た音の波は、周波数が
低いうちは球面状に広がって行くが、周波数が高くなる
につれスピーカーの正面だけに集中され、周囲に広がら
なくなる。図６は、市販されている機種の指向特性パタ
ーンの１例を示しているが、周波数が高くなるにつれ正
面軸上（０°）を外れるにつれ急激に音圧レベルが低下
しており、背面には殆ど届かないことが判る。そして、
指向性が強くなればなる程、部屋の中で反射した間接音
が入らなくなり、スピーカー前面に居る人の耳に入る音
は、スピーカーからの直接音だけになって、生演奏と比
較してどぎつく、鋭いギスギスした不快な音になってし
まう。また、指向性が強いと、音が１個所だけに集中
し、音質のバランスが悪くなると共に、ステレオ演奏で
は位置によってステレオ効果が格段に相違し、ステレオ
効果が得られる位置が非常に限定される。そのため、従
来のコーン型スピーカーでは、ほぼ一様な強さの音が得
られる範囲は、スピーカーの中心から６０度位までとさ
れている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】本考案は、従来の中、
高音用スピーカーの持つ前記問題点を解決しようとする
もので、音の指向性を無くし、生演奏に近い音が再現で
き、どの位置に居てもステレオ効果が得られるスピーカ
ーの拡散板を得ることを目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記課題を本考案のスピ
ーカーの指向特性を改善する拡散器は、スピーカーの前
方に設置して、音を拡散してスピーカーの指向特性を改
善するための拡散器であって、中心部に開口を１つ有し
外方に円錐状に広がる逆漏斗状に形成された拡散板と、
該拡散板の開口がスピーカーの中心線上に位置して取付
けることができるように該拡散板を支持する支持部材と
からなることを特徴とする構成を採用することによって
解決することができた。

【０００５】

【作用】拡散板の中心の開口がスピーカーの中心軸線上
に位置するように、拡散器をスピーカーのバッフル板に
取付けることにより、スピーカーからの音は、拡散板が
逆漏斗状となっているため、拡散板の裏面に当り反射し
て全周に拡散すると共に、中央の間隙を通過して前方に
も拡がる。その際、拡散板の漏斗の角度を適宜選択する
ことによって音の広がり具合を調節でき、開口部の大き
さを調節することによって音波の直進する音と反射して
拡散する音の割合を任意に調節することができ、状況に
応じて最適条件に設定することができる。それ故、音の
指向性が解消されて無指向性となり、生演奏に近い音が
得られる。そして、スピーカーを左右に置くだけで何処
ででもステレオ効果が得られ、従来のステレオ方式のよ
うにリスニグポジションを選ぶ必要がない。

【０００６】

【実施例】以下、本考案の実施例および比較例を図面に
基づいて説明する。図１〜図３は、従来からあるスピー
カーの指向特性を改善する拡散器の第１比較例を示して
いる。図中、１が拡散器であり、拡散板２及び該拡散板
を支持してスピーカー前面に取付ける支持部材３から構
成されている。支持部材３は図示のように一対のアング
ル材で構成され、該アングル材の立上り部分に拡散板取
付調整用長孔５が形成されている。拡散板２は、音の波
長の長さ以上の幅を有する一対の矩形板で形成され、そ
の側面に取付用ボルト７が突設され、拡散板取付用長孔
５に嵌合してナットで締め付けることによって、基部で
直線状の間隙８を有して外方に向けて断面Ｖ字状に広が
るように支持部材に対向して取付けることができる。拡
散板は、取付用ボルト７を取付調整用長孔５に沿って移
動させることによって間隙８の幅が調節でき、また拡散
板２を取付調整ボルトを支点として回動させることによ
って、その角度が自在に調整できる。なお、拡散板の幅
は、波長の長さ以上であれば良い。

【０００７】以上のように構成されたスピーカーの指向
特性を改善する拡散器１を図に示すようにスピーカー１
０のバッフル板１１に、間隙８の中心部がスピーカーの
中心軸線上に位置するように取付けて使用する。それに
より、スピーカーの発生する音は、図２に示すように、
拡散板２の裏面に当り反射して側方に拡散すると共に、
中央の間隙８を通過して前方にも拡がる。その際、拡散
板２の角度を調節することによって音の広がり具合を調
節できる。また、間隙量を調節するとによって音波の直
進する音と反射して拡散する音の割合を任意に調節する
ことができる。しかしながら、隙間の長さ方向の垂直方
向に対しては拡散板２への反射により音が拡散するが、
隙間の長さ方向に対しては音は拡散しないため、上下左
右全ての位置に対して指向性を解消することは出来な
い。

【０００８】図３及び図４は、本考案の実施例を示して
いる。本実施例の拡散器１９は、拡散板を逆漏斗状に形
成してあることを特徴とする。図中、２０は拡散板であ
り、図示のように逆漏斗状に形成され、中央部に開口２
１を有し、支持部材２３で支持されて、図に示すように
スピーカー２２のキャビネット２４に、前記間隙の中心
部がスピーカーの中心軸線上に位置するように取付けて
使用する。それにより、音は拡散板２０によって全周に
反射されると共に、開口から直進して前方に広がり、周
波数の高い音であっても、前後左右等距離で同じ音圧の
音が得られる。本実施例では、逆漏斗の傾斜角を４５°
にして音が直角に反射されるようにしてあるが、直進す
る音と広がる音の割合、及び広がる音の広がり具合が所
望の条件を満たすように、開口量及び漏斗の傾斜角度を
設定することによって、状況に応じた最も良い音を再現
することができる。なお、図のスピーカーにおいて、低
音はキャビネット２４の底部開口から出すようになって
いる。

【０００９】図５は、本考案の拡散板から開口を除いた
第２比較例の拡散器３０を示す。本比較例では、拡散板
３１は、開口を設けずに完全に円錐状に形成され、スピ
ーカー３３からの音を図示矢印のように全部円錐面で反
射させて全周に拡散するようになっているため、円錐の
軸方向と水平方向には音は拡散するが、円錐の軸方向の
スピーカーの前方には音は拡散しない。なお、３２は支
持部材である。

【００１０】

【考案の効果】本考案は、以上のように構成され、次の
ように格別な効果を奏する。スピーカーからの音は、漏
斗状の拡散板の裏面に当り反射して全周に拡がって拡散
すると共に、中央の開口を通過して前方に拡がり、高音
であっても指向性が解消されて無指向性となり、生演奏
に近い音が得られる。スピーカーを左右に響くだけで何
処ででもステレオ効果が得られ、従来のステレオ方式の
ようにリスニグポジションを選ぶ必要がない。構成が簡
単であり、従来のスピーカーに簡単に取り付けることが
でき、また安価に得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来のスピーカーの指向特性を改善する拡散器
の第１比較例を示し、（ａ）はスピーカーに取付けた状
態での側面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は平面図であ
る。

【図２】音の拡散状態を示す説明図である。

【図３】本考案の実施例のスピーカーに取付けた状態で
の平面図である。

【図４】図３のＡ−Ａの断面図である。

【図５】第２比較例のスピーカーに取付けた状態での正
面図である。

【図６】従来のトゥイーターの指向特性パターンを示す
線図である。

【符号の説明】

１、１９、３０ 拡散器 ２、２０、３１ 拡散板 ３、２３、３２ 支持部材 ８ 間隙 ２１ 開口 １０、２２、３３ スピーカー

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 スピーカーの前方に設置して、音を拡散
   してスピーカーの指向特性を改善するためのスピーカー
   の指向特性を改善する拡散器であって、中心部に開口を
   １つ有し外方に円錐状に広がる逆漏斗状に形成された拡
   散板と、該拡散板の開口がスピーカーの中心線上に位置
   して取付けることができるように該拡散板を支持する支
   持部材とからなることを特徴とするスピーカーの指向特
   性を改善する拡散器。