JP2576022B2 - 多座標フィーラ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、多座標フィーラ装置
（ｍｕｌｔｉｐｌｅ ｃｏｏｒｄｉｎａｔｅｆｅｅｌｅ
ｒ ａｐｐａｒａｔｕｓ）に関する。この装置は、ハウ
ジングと、このハウジングから軸方向に突出するととも
にその自由端にフィーラボールを形成したフィーラアー
ムにして、軸方向に移動自在にハウジング内に保持され
るとともに、ハウジングプレートに形成されたリングシ
ートである球形継手により所定の最大角度まで全方向に
回転可能にハウジングに支持された前記フィーラアーム
と、前記球形継手ヘッドに保持されるとともに戻しばね
の力に抗してハウジング内で軸方向に摺動するスライド
にしてその摺動量を示す指示装置に連結された前記スラ
イドとを含み、フィーラアームが軸方向に変位すると、
前記継手ヘッドが、リングシートから持ち上がるように
構成している。

【０００２】

【従来の技術】このような多座標フィーラ装置は、数値
制御により、工作物のフライス加工をする場合のゼロ点
調整用として特に有用である。このためには、フィーラ
装置を機械のスピンドル中に締め付け、工作物の基準フ
ィーラ縁部までそのフィーラボールで駆動する。指示装
置がそのゼロ位置にくると、各座標の原点が得られ、フ
ライス盤をこのゼロ点に合わせて調整できる。

【０００３】ドイツ連邦共和国公開特許公報（ＤＥ−Ｏ
Ｓ）第４１００３２３号のはじめの部分に記載されたこ
の種の公知フィーラ装置では、継手ヘッドは支持アーム
と第二の球継手によりスイベル円板に保持され、このス
イベル円板は一方で軸足によりスリーブ状のスライダの
内肩の部分でハウジングの周縁部に軸方向に保持され、
他方では第三の球形継手により支持されている。したが
って、この場合には、三個の球形継手と一つの傾斜継手
を必要とし、このため精度にも影響し、また比較的コス
ト高の機構を必要とする。引っ張りばねを使用すること
により確かに継手部の間隙は無くなるが、この結果装置
の動きは固くなる。更に、フィーラアームが回転した姿
勢になると継手ヘッドに作用する力学上の関係により、
継手ヘッドの中心が正規の位置からずれて、必然的に測
定誤差を生じる危険がある。

【０００４】

【発明の概要】発明によれば上記問題点は解決される。
すなわち本明細書の導入部説明による多座標フィーラ測
定装置では、フィーラアームのフィーラボールの軸方向
および半径方向の測定ストロークを大きく設計しても、
単純な構造のもとで所望の精度と機能が得られる。

【０００５】本発明の構成によれば継手ヘッドは球形体
構造とし、この継手ヘッドに傾斜円板（ｔｉｌｔｉｎｇ
ｄｉｓｋ）を取付け、スライドがスライドの軸方向
に、傾斜円板の球形周縁部を傾斜自在に支持し、前記傾
斜円板は継手ヘッドの外側へ半径方向に張り出して継手
ヘッドの曲率中心を含む平面まで延びている。

【０００６】したがって、本発明による多座標フィーラ
装置においては、フィーラアームは傾斜円板を使ってス
ライドに直接保持されるので保持系統中には中間継手が
必要でなく、フィーラボールの動きはスライドへ直接伝
達される。なお、継手ヘッドの外側、すなわち継手ヘッ
ド用のリングシートの半径方向に傾斜円板が突出してい
るため、フィーラアームのレバー動作やフィーラアーム
にかかる圧力により継手ヘッドに作用する回転モーメン
トが生じると、傾斜円板上の測定用スライドの戻しばね
の力の方向がスライドの軸線から偏心するから、傾斜円
板が回転した姿勢になると、前記回転モーメントに対し
て逆モーメントが生じる。この結果継手ヘッドの曲率中
心、従ってフィーラアームの実際の回転軸がずれること
なく、継手ヘッドはリングシート内で安定位置を占め
る。なお、本発明によれば、スライドの戻しばねは比較
的強度が低くてよく、装置の精度を低下させずにフィー
ラ装置の操作が容易になる。

【０００７】継手ヘッド４を形成する球形の曲率中心
が、傾斜円板８の周縁部２１の軸方向の中央部を含む平
面内にあるという特徴点により、傾斜角が比較的大きく
ても、傾斜する際に、傾斜円板とこれを取り巻くハウジ
ング壁との間の隙間や、スライドと傾斜円板との間の接
触点が半径方向にずれる変位量を小さな値に保てるはず
である。

【０００８】継手ヘッドの外側へ傾斜円板が比較的長く
張り出すとともにハウジング寸法が小さい場合でもフィ
ーラの自由傾斜角度があまり小さくならないようにする
ためには、継手ヘッドの半径方向外側に延びる傾斜円板
の一部をリングシートに対向する側面で円錐状としても
よく、この円錐の仮想頂点を、スライドに向き合う位置
に配置するようにすればよい。

【０００９】スライドには傾斜円板の直径と等しい直径
の支持円板を設け、この支持円板が傾斜円板に載るよう
にするのが好ましい。支持円板はスライド軸上に取り付
ければよく、この軸によりスライドはハウジング内に摺
動可能に保持されるとともに、この軸と戻しばねとが係
合する。なお、カップリング部材をスライド軸に設け
て、スライドの変位量をフィーラ装置の指示装置に伝え
ることもできる。

【００１０】付記すると、この指示装置は、スライドと
機械的に連結した指針型ダイヤルゲージであっても構わ
ない。また、この指示装置として、光電式または誘導式
に結合された指示装置を設けてもよい。

【００１１】測定用スライドと組合せた戻しばねの他
に、引っ張りばねを用いてスライドと継手ヘッドとに張
りを与え、その回転した姿勢から軸方向へ傾斜アームが
戻り易くすることができる。

【００１２】フィーラボールの中心とフライス盤スピン
ドル軸とを正確に整合するには、従来の多座標フィーラ
装置を使い、四個の調整ねじを使って、継手ヘッドから
定距離にある測定用スライドの軸方向を調節すればよ
い。ただし、本発明を採用すれば、リングシートを取付
けたハウジングプレートを、圧力リングとカップねじを
使ってハウジングの軸方向に締め付け、周縁部にクリア
ランスをもたせて圧力リング内に保持し、更にてこ噛み
合わせ用の環状溝を外方に形成させて上記の調整を行う
ことができる。したがって、適当な工具、例えばスロッ
トねじ回しを使えば、リングシート付きハウジングプレ
ートを使って、継手ヘッドを、半径方向の範囲内でこじ
り出して、スピンドル軸に対するフィーラボールの偏心
をなくすことができる。この場合、半径方向のフィーラ
ポールの偏心度はフィーラ装置に締結したフライス盤を
回転させているとき、フィーラボールに取り付けたダイ
ヤルゲージを使って確かめることができ、この後ハウジ
ングプレートは、圧力リングに対して、つまりハウジン
グに向けて、真値が得られるまで対応の半径方向に移動
させる。このような調整をする場合、圧力リングを緩め
る必要がない。その理由は、カップねじの力で摩擦結合
するので、フィーラ装置を通常使用する際、ハウジング
プレートを安定位置を保てるからである。この調整効果
は特に本発明のフィーラ装置構成で得られるが、従来の
その他の多座標フィーラ装置を利用しても構わない。

【００１３】フィーラアームと継手ヘッドとは一体製作
としてもよいが、できればフィーラアームは取り替え可
能とし同一フィーラ装置用として長さの異なるフィーラ
アームが使えるようにしておくとよい。したがって、好
ましくは円錐形チャックをハウジングの対向側の継手ヘ
ッドに形成して、このチャック内で好ましくは対応円錐
軸を使ってフィーラアームを取り替え可能に固定する。
この円錐結合はその互換性が優れていること、したがっ
て精密な調整を必要としないことから特に好適である。
なお、この円錐形の座により、締結したフィーラが緩む
のを防げる。この発明の要旨は一般にこの種の多座標フ
ィーラ装置で実施できるが、もっと長いフィーラアーム
でも本発明の支持具を使えば、取り替え可能に使用でき
る。その理由は、フィーラアームが回転姿勢にあるとき
継手ヘッドに作用するとともにフィーラアームの長さが
長くなるにつれて大きくなる上記の回転モーメントが、
傾斜円板を介して継手ヘッドに働く逆モーメントで平衡
がとれるからである。

【００１４】概要を示す図面から理解できる二つの実施
例に基づき本発明を以下に説明する。

【００１５】

【実施例】 図１に示す多座標フィーラ装置（Ｍｕｌｔ
ｉｐｌｅ ｃｏｏｒｄｉｎａｔｅ ｆｅｅｌｅｒａｐｐ
ａｒａｔｕｓ）は、自由端にフィーラボール３ａを具備
したフィーラアーム３を有し、このフィーラアームはハ
ウジング１中のスライド６に保持され、このスライド６
の移動量は、カップリング部材１４を介してダイヤルゲ
ージ１３（変位指示装置）に伝達されゲージ表示され
る。

【００１６】ハウジング１の頂部には、フライススピン
ドルのチャック内にフィーラ装置をクランプするため
の、円筒形、好ましくは円錐形をしたクランプ軸１６が
設けられている。ハウジング１の下部には円筒型の下部
ハウジング２０（ｈｏｕｓｉｎｇ ｃｈａｍｂｅｒ）が
形成されており、この中で継手ヘッド４によって前記フ
ィーラアーム３が支持されている。継手ヘッド４は球形
で、継手ヘッドに対向するハウジングプレート２に形成
されたリングシート５に支持される。継手ヘッド４には
リングシート（ｒｉｎｇ ｓｅａｔ）５と対向する側に
傾斜円板８があり、この円板の軸方向に張り出した周縁
部２１が、スライド６の支持円板９に当接している。継
手ヘッド４を形成する球形の曲率中心は、傾斜円板８の
周縁部２１の軸方向の中央部を含む平面内にある。カッ
プ形状をした傾斜円板８はその全側面にわたって継手ヘ
ッド４の半径方向外側に突出し、その周縁部２１の直径
は、下部ハウジング２０の直径とほぼ同じで、両者の間
には僅かな隙間があり、下部ハウジング２０内で傾斜円
板８が傾斜できるようにしてある。なお、傾斜円板８
は、その周縁部２１に丸みをもたせてもよく、そうする
ことによって、周縁部２１と下部ハウジング２０の壁面
間の隙間を更に小さくして、傾斜円板８の軸方向の移動
を一層容易にすることができる。傾斜円板８のリングシ
ート５に対向する下部には、半径方向に張り出す円錐形
状の部分がある。傾斜円板８の外径と継手ヘッド４のボ
ール径との比は本実施例では約１．４であり、リングシ
ート５の径と継手ヘッド４のボール径との比は約０．８
５である。

【００１７】スライド６の支持円板９をスライドシャフ
ト１０の下端部に取り付ける。このシャフト１０は、下
部ハウジング２０の上側仕切壁２３を貫通し、更に上部
ハウジング２２を通過して、その上側仕切壁２４に達
し、仕切壁２３、２４内のスライド装置１１にガイドさ
れる。戻しばね７を上側仕切壁２４と、スライドシャフ
ト１０に取り付けたばね台１２間で引っ張り設置する。
更に引っ張りばね１５をスライド６と継手ヘッド間で緊
張させる。ばね台１２が、同時にダイヤルゲージ１３へ
の結合部１４となる。

【００１８】図１のフィーラ装置の初期位置では、フィ
ーラアーム３は装置の軸線と同心であり、傾斜円板８の
軸方向周縁部は支持円板９の下側周縁に当接する。した
がって、工作物の軸方向基準面を測定しようとする場合
は、戻しばね力に抗して継手ヘッド４、傾斜円板８、ス
ライド６とともにフィーラアーム３の軸方向変位のみが
行われる。しかし、ワークの横方向基準縁を測定する場
合、フィーラアームは継手ヘッド４の球の曲率中心を軸
として回転し、この結果傾斜円板８は、該曲率中心を軸
として傾斜することによって、スライド６の支持円板９
を上方に変位させ、戻しばね７と引っ張りばね１５の力
に抗して対応量だけスライド６を移動させる。これによ
り、フィーラボール３ａに力がかかると、この力の作用
面内にあるリングシート５の点を中心にして回転モーメ
ントが生じる。しかし、傾斜円板８はリングシート５の
半径方向外側に張り出し、したがって戻しぽね７と引っ
張りばね１５の力が傾斜円板８つまり継手ヘッド４に作
用する傾斜円板８上の実際の点はリングシート５の半径
方向外側にある。したがって、上記回転モーメントに対
抗する回転モーメントが生じる。したがって、継手ヘッ
ド４は曲率中心の位置を変えることなく定位置に留ま
り、継手ヘッドの軸方向変位もなくこの結果測定誤差も
生じない。

【００１９】継手ヘッド４の下部に円錐チャック１７が
形成され、この円錐チャック内で円錐軸１８を介してフ
ィーラアーム３が取り替え可能に固定される。円錐軸１
８の下方では、フィーラアームに突出フランジ２５が形
成され、この突出フランジ２５と円錐チャック１７間の
間隙にドライバを差込み、てことして利用することによ
り、フィーラアーム３を動かすことができる。

【００２０】一部拡大した図２の実施例は、図１の実施
例に準ずる。ただし図２では継手ヘッド４用のリングシ
ート５が形成されるハウジングプレート２は、ハウジン
グ１にねじ込んで固定されるねじ付き圧力リング２６内
を使用して、半径方向の隙間をもたせて保持される。カ
ップばね２７はハウジングプレート２とハウジング１間
に設ける。更に圧力リング２６とハウジングプレート２
との間に軸方向外側の環状ギャップ２８を設ける。この
結果ハウジングプレート２とリングシート５とをギャッ
プ２８に差し込む溝式ドライバーを使って半径方向に移
動させて、フィーラボール３ａにつけたダイヤルゲージ
を使って、フィーラ装置の軸に対するその偏心をなく
す。このフィーラ装置を通常使用する場合、カップばね
２７のスプリング力と、したがってハウジングプレート
２と圧力リング２６との間の摩擦による結合は圧力リン
グ２６を使って調節できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】多座標フィーラ装置の縦断面図である。

【図２】継手ヘッド保持部分の上記フィーラ装置の一部
縦断面図である。

【符号の説明】

１ ハウジング ２ ハウジンクプレート ３ フィーラアーム ３ａ フィーラボール ４ 継手ヘッド ５ リングシート ６ スライド ７ 戻しばね ８ 傾斜円板 ９ 支持円板 １０ スライドシャフト １１ スライド装置 １２ ばね台 １３ ダイヤルゲージ １４ カップリング １５ 引っ張りばね １６ クランプ軸 １７ 円錐軸 ２０ 下部ハウジング ２１ 周縁部 ２２ 上部ハウジング ２３ 下部仕切壁 ２４ 上部仕切壁 ２５ 突出フランジ ２６ 圧力リング ２７ カップばね ２８ 環状ギャップ

Claims (7)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ハウジング（１）と、 このハウジング（１）から軸方向に突出して、自由端に
   はフィーラボール（３ａ）を形成されるとともに軸方向
   に移動自在にハウジング（１）内に支持されたフィーラ
   アーム（３）にして、ハウジングプレート（２）に形成
   されたリングシート（５）と、前記フィーラアーム
   （３）に形成され前記リングシート上に回転保持される
   球形の継手ヘッド（４）とで形成される球形継手により
   予め設定された最大角度まで全方向に回動可能に保持さ
   れた前記フィーラアーム（３）と、 前記継手ヘッド（４）に保持されると共に戻しばね
   （７）の力に抗してハウジング（１）内で軸方向に摺動
   するスライド（６）とを設け、 前記スライド（６）の摺動量を示す変位指示装置（１
   ３）に前記スライド（６）を連結し、前記フィーラアー
   ム（３）が軸方向に変位すると前記継手ヘッド（４）が
   リングシート（５）から持ち上がるようにした装置にお
   いて、 前記継手ヘッド（４）が球体の一部からなり、前記継手
   ヘッド（４）の上部には傾斜円板（８）を設け、前記傾
   斜円板（８）がその円形の周縁部（２１）により傾斜可
   能に軸方向に前記スライド（６）に保持されるとともに
   継手ヘッド（４）から半径方向に張り出していて、継手
   ヘッド（４）の曲率中心が前記周縁部２１の含む平面内
   に位置することを特徴とする多座標フィーラ装置。
2. 【請求項２】 前記傾斜円板（８）の前記継手ヘッド
   （４）から半径方向に突出する部分を、前記リングシー
   ト（５）に対面する側で円錐形状とすることを特徴とす
   る請求項１に記載のフィーラ装置。
3. 【請求項３】 前記スライド（６）が、前記傾斜円板
   （８）の直径に合わせた直径を有する支持円板（９）を
   含み、前記傾斜円板（８）の軸方向に向いた前記傾斜円
   板（８）の周縁部（２１）が前記支持円板（９）に当接
   していることを特徴とする請求項１に記載のフィーラ装
   置。
4. 【請求項４】 前記支持円板（９）をスライドシャフト
   （１０）に取付けて、スライド装置（１１）により、ハ
   ウジング（１）内にて、前記スライドシャフト（１０）
   の部分でスライド（６）をガイドすることを特徴とする
   請求項３に記載のフィーラ装置。
5. 【請求項５】 前記スライド（６）と前記継手ヘッド
   （４）との間に、引っ張りばね（１５）を設けたことを
   特徴とする請求項１に記載のフィーラ装置。
6. 【請求項６】 リングシート（５）を収容しているハウ
   ジングプレート（２）を、圧力リング（２６）とカップ
   ばね（２７）を使ってハウジング（１）に締め付けると
   ともに円周方向に隙間を保って圧力リング（２６）中に
   保持し、レバー装置と係合させる外側環状ギャップ（２
   ８）を圧力リング（２６）とハウジングプレート（２）
   との間に設けることを特徴とする請求項１に記載のフィ
   ーラ装置。
7. 【請求項７】 前記継手ヘッド（４）のハウジング
   （１）に対向する側に円錐チャック（１７）を形成し、
   このチャック内に前記フィーラアーム（３）が円錐シャ
   フト（１８）により、交換可能に固定されることを特徴
   とする請求項１に記載のフィーラ装置。