JP2568415B2 - 分配型燃料噴射ポンプ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は分配型燃料噴射ポンプに関するものである。

〔従来の技術とその問題点〕

ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプとして、回転お
よび往復動するプランジャによりエンジンの各気筒に燃
料を加圧分配する形式のものが知られている。

この形式の燃料噴射ポンプにおいて、排気ガス対策、
燃費や出力の維持・向上のため燃料の高圧化と短期間噴
射化が要求されており、プランジャ径を大きくしてプラ
ンジャ室の断面を広げることは高圧化の要求に答える一
つの対策である。しかしこれだけでは短期間噴射化には
対応できない。

そこでこの種ポンプに関し、実開昭54−155016号公報
や実開昭60−162268号公報において、プランジヤのカツ
トオフポートの外周側端に拡張された浅いカツトオフス
リットを形成し、コントロールスリープの制御縁が臨ん
だ瞬間から燃料を高速で排出する方法（ラピッドスピル
化）が提案されている。

この方法は、スリット幅を大きくすることでスピル速
度を増加し、燃料切れを良くする方法であるが、プラン
ジャ室から盲穴を経てカットオフスリットに到るまでの
燃料の流れについては考慮が払われていない。このた
め、プランジヤ径の太径化、噴射量の増大、高送油率化
が進められたときに、カットオフスリットに到るまでの
圧力損失が大きく、しかも浅いスリツトで絶対流量が少
ないため、的確な高圧・短期間噴射を達成できないとい
う問題があった。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明は前記のような問題点を解消するために創案さ
れたもので、その目的とするところは、プランジヤ室で
燃料に与えられたエネルギのロスが少なく、滑らかに迅
速にスピルを行え、高圧・短期間噴射が可能な分配型燃
料噴射ポンプを提供することにある。

この目的を達成するため本発明は、回転および往復動
するプランジヤを有し、該プランジヤが上端外周に複数
のインレットスリットを有し、中心に加圧室と通ずる盲
穴を有し、該盲穴の中間にバレルのアウトレットポート
と通じるアウトレットスリットが分岐され、先端に外周
のコントロールスリーブで開閉される制御通路を分岐し
た形式のものにおいて、前記制御通路が、盲穴軸線に対
し鈍角に傾斜した斜状ポートと、これに続き前記斜状ポ
ートの径よりも大きな幅寸法と前記斜状ポートの径と近
似する深さ寸法の制御スリットとを備えている構成とし
たものである。

〔実 施 例〕

以下本発明の実施例を添付図面に基いて説明する。

第１図は本発明による分配型燃料噴射ポンプの一実施
例を示し、第２図は要部を拡大して示し、第３図と第４
図は紙面に対し右半分に従来のプランジヤ構造を、左半
分に本発明のプランジヤ構造を示している。

第１図において、１はハウジング、２はハウジング１
の端部に固定されたハイドロリックヘツドである。３は
ドライブシャフト、４は該ドライブシャフト３により回
転されるカムディスク、５はプランジヤであり、カムデ
イスク４と一体的に連結し、カムディスク４がローラア
ッセンブリ６のローラ6aと転接することにより、１回転
につきエンジンの気筒数に応じて複数回往復動されるよ
うになつている。

７はバレルであり、前記ハイドロリックヘツド２に内
挿され、固定プラグ９により固定されており、バレル７
の中心穴7aに前記プランジヤ５が摺動自在に内挿され、
固定プラグ９の下面と中心穴7aとで加圧室８を形成して
いる。

前記バレル７には１つのインレットポート7bが設けら
れ、該インレットポート7bはハイドロリックヘツド２に
穿設した吸入路2aに連通され、ハイドロリックヘツド２
に取付けたマグネットバルブ10により開閉されるように
なっている。

前記プランジヤ５には上端部外周に気筒数分のインレ
ットスリット5aが形成され、中心には加圧室８に開孔す
る盲穴5bが穿設されている。該盲穴5bの軸線方向中間に
は、プランジヤ５の外周面に開口する単一のアウトレッ
トスリット5cが形成され、これに対応する位置のバレル
７には気筒数分のアウトレットポート7cが形成され、各
アウトレットポート7cはハイドロリックヘツド２に穿設
されたそれぞれの吐出通路2bを介してデリバリバルブア
ツセンブリ11に到っている。

そして、盲穴5bの先端にはプランジヤ５の外周すなわ
ちポンプ室12に通じる制御通路5dが形成されている。こ
の制御通路5dは、プランジヤ５の外周に摺動自在に嵌め
られたコントロールスリーブ13により開閉されるように
なつており、コントロールスリーブ13は周知のようにカ
バナレバーアッセンブリ14のボールピン14aにより係合
され、コントロールスリーブ13の位置の変化により燃料
噴射量の増減（有効ストローク）を得るようになつてい
る。

本発明の特徴は前記制御通路5dを含む盲穴5bの構造に
あり、該制御通路5dはプランジヤ外周に開口する制御ス
リット50とこれに通じる斜状ポート51からなっている。

詳しく説明すると、まず、制御スリット50は、第３図
に示すごとく従来の制御スリット500と同位置に形成さ
れるが、第３図の左半部に示すように幅寸法が斜状ポー
ト51よりも大きく、かつ深さH₁が斜状ポート51の径に近
似するような寸法となっている。これは第３図の右半部
に示す従来の制御スリット500の深さh₁に比べて約２倍
というように深い。また、制御スリット50は従来の制御
スリット500のように浅い溝501が形成されず、全体が一
様の深さとなっている。

そして、従来のものにおいては、盲穴5bの先端520が
少なくとも制御スリット500の端壁に到り、そこから直
角状の制御ポート510が制御スリット500に到っていた
が、本発明では、盲穴5bの先端52は制御スリット50の１
組の端壁53,54の間の位置で止まり、この位置から前記
制御スリット50の底55および軸線方向後方側の端壁53に
またがるように、盲穴軸線に対し所要の鈍角の傾斜角度
α（たとえば120度）で斜状ポート51が穿設されてい
る。前記斜状ポート51は少なくとも２個、好ましくは４
個形成される。

なお、盲穴5bの上端すなわち加圧室８と通過する開孔
は、従来では第４図右側に示すように、深さh₂、直径ｄ
のきわめて浅い面取り部560が形成されているだけであ
ったが、本発明はこの領域に、たとえば深さH₂が前記深
さh₂の約３倍以上、直径Ｄが前記直径ｄの約1.5倍以上
のごとき大きくラツパ状に拡大した入口部56を形成して
いる。

なお必要に応じアウトレットスリット5cと盲穴5bを結
ぶ通路も斜状ポートとしてもよい。

〔実施例の作用〕

実施例の動作と作用を説明する。

プランジヤ５はドライブシャフト３により回転され、
カムディスク４により往復運動される。プランジヤ５の
下降行程では、バレル７のインレットポート7bとプラン
ジヤ５のインレツトスリツト5aが連通したときにポンプ
室12内の燃料がプランジヤ内に吸入され、プランジヤ５
の上昇とともに加圧室８で圧縮高圧化される。

噴射行程においては、カムディスク４とともにプラン
ジヤ５が廻され、インレツトスリツト5aがバレル７のイ
ンレツトポート7bを塞いだときに噴射が開始され、ほぼ
同時にバレル７のアウトレットポート7cにプランジヤ５
のアウトレツトスリット5cが合致し、高圧化された燃料
はハイドロリックヘッド２の吐出通路2bに圧送され、デ
リバリバルブスプリングおよび噴射パイプ内の残圧に打
ち勝つことによりデバリバルブが開弁することで噴射パ
イプを経てインジェクタに圧送され、エンジンの燃焼室
に噴射される。

そしてプランジヤ５が上昇ストロークエンドに到り、
制御通路5dがコントロールスリーブ13の制御縁13aと出
会うことによりプランジヤ内の燃料はポンプ室12に戻さ
れ、これによる圧力の低下でデリバリバルブ11は閉弁
し、圧送が終了する。ここで、燃料噴射切れをよくする
には、前記加圧室８から制御通路5dを経て流出される間
の燃料の流れ形態が良好でなければならない。

燃料は加圧室８で強力な噴射エネルギーを付与される
が、加圧室８の断面積と盲穴5bの断面積には非常に大き
な差がある。従来においては、第４図右側の流線のごと
く盲穴5bの入口で燃料が急激に絞られ、ここでまず大き
な圧力損失が生じる。さらに、盲穴5bを流れた燃料は、
第３図右側の流線のように盲穴軸線と直角状の制御ポー
ト510で急激に屈曲され、一部が盲穴先端に衝突して戻
るため乱流状態が生じ、ここでも大きく噴射エネルギー
がロスされる。さらに制御ポート510は制御スリット500
の底に通じ、制御スリット500は浅くカットされた構造
であり、コントロールスリーブ13の制御縁13aが覗いた
ときの流線の屈曲度が強く、しかも開孔ボリュームの増
加割合が小さい。このため全体として燃料の流れ抵抗が
大きく、噴射量と送油率が増加したときのスピル特性が
悪いものとなる。

本発明においては、盲穴5bの入口部56が加圧室８に対
しラッパ状に大きく開口している。そのため燃料は急激
に絞られず、第４図左側のようになめらかな流線となっ
て盲穴5bに流れ、圧力損失が少ない。さらに、盲穴5bと
制御スリット50を結ぶ通路が盲穴軸線に対し鈍角に傾斜
した斜状ポート51となっている。このため盲穴5bを高速
で流れる燃料の流れ方向の変化が小さく、盲穴先端に衝
突反射される燃料流がほとんどない。したがって第３図
左側の矢印のようになめらかな流線となって制御スリッ
ト50に到る。

斜状ポート51の先端は制御スリット50の底壁55を含む
端壁53に通じており、制御スリット50は幅が斜状ポート
51の径よりも大きく、深さが斜状ポート51の径に近い寸
法になっている。このため、傾斜ポート51を通過した燃
料は急激に屈曲されること無く、コントロールスリーブ
13の制御縁13aと出会った瞬間から、滑らかにかつ開孔
ボリュームの急激な増加に追従して流出する。

〔発明の効果〕

以上説明した本発明によるときには、回転および往復
動するプランジヤを有し、該プランジヤが上端部外周に
複数のインレットスリットを有し、中心に加圧室を通ず
る盲穴を有し、該盲穴の中間にバレルのアウトレットポ
ートと通じるアウトレットスリットが分岐され、先端に
外周のコントロールスリーブで開閉される制御通路を分
岐した形式のものにおいて、制御通路が盲穴5bの軸線に
対し鈍角に傾斜した斜状ポート51と、これに続き前記斜
状ポートの径よりも大きな幅寸法と前記斜状ポートの径
と近似する深さ寸法の制御スリットとを備えているの
で、盲穴5bを高速で流れる燃料の流れ方向の変化が小さ
く、なめらかな流線となって大きな断面積の制御スリッ
ト50に到らせ、コントロールスリーブ13の制御縁13aと
出会った瞬間から滑らかにかつ開孔ボリュームの急激な
増加に追従してスピルすることができ、従って、加圧室
８で与えられた噴射エネルギーが有効に活用され、単位
時間当り多量の燃料をなめらかに速くスピルすることが
可能となり、高圧・短期間噴射の要求に答えることがで
きるというすぐれた効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明による分配型燃料噴射ポンプの一実施例
を示す部分切欠側面図、第２図は同じくその要部拡大
図、第３図は本発明の制御通路と従来の制御通路におけ
る燃料の流れを半部ずつ示す断面図、第４図は本発明と
従来の盲穴入口での燃料の流れを半部ずつ示す断面図で
ある。 ５……プランジヤ、5a……インレットスリット、5b……
盲穴、5c……アウトレットスリット、5d……制御通路、
７……バレル、7c……アウトレットポート、８……加圧
室、13……コントロールスリーブ、50……制御スリッ
ト、51……斜状ポート

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】回転および往復動するプランジヤを有し、
   該プランジヤが上端部外周に複数のインレットスリット
   を有し、中心に加圧室と通ずる盲穴を有し、該盲穴の中
   間にバレルのアウトレットポートと通じるアウトレット
   スリツトが分岐され、先端に外周のコントロールスリー
   ブで開閉される制御通路を分岐した形式のものにおい
   て、前記制御通路が、盲穴軸線に対し鈍角に傾斜した斜
   状ポートと、これに続き前記斜状ポートの径よりも大き
   な幅寸法と前記斜状ポートの径と近似する深さ寸法の制
   御スリットとを備えていることを特徴とする分配型燃料
   噴射ポンプ。