JP2563730B2 - パルスco2レーザを用いた方向性電磁鋼板の鉄損改善方法 - Google Patents

パルスco2レーザを用いた方向性電磁鋼板の鉄損改善方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鉄損特性、磁歪特性に優
れた方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特にパルスCO
2 レーザビーム照射によってその磁気特性を大幅に改善
する処理方法係わる。
【0002】
【従来技術】従来、電磁鋼板の鉄損値を改善する方法と
して、多くの手段が提唱されてきており、中でも特公昭
57ー2252号公報に開示されているレーザビーム照
射による鉄損特性の改善方法は、その改善効果の大き
さ、ならびに非接触加工であることに起因する信頼性の
高さや制御性の良さから広く実用に供されている。この
方法はレーザビームを照射することによって生ずる熱衝
撃波の反力によって方向性電磁鋼板の磁区を細分化する
ことにより、ヒステリシス損失の増加を抑えたまま渦電
流損失の低下を図るものであり、上記特許公報に続いて
多くの方法が開示されてきたが、全てレーザビームの照
射条件としてはエネルギ密度EであるJ/cm2 の次元
で整理されていた。
【0003】しかるにレーザビームと物質との相互作用
条件は単にレーザビームのエネルギ密度Eのみによって
規定することはできない。すなわちエネルギ密度Eは、
パルスレーザビームの場合、パルスピークパワー密度P
とパルス半値幅Wの積によって定義されるものである
が、同一のエネルギ密度Eに対しても種々のパルスピー
クパワー密度Pとパルス半値幅Wの組合せが存在し得
る。また連続波レーザビームの場合は、エネルギ密度E
は1秒間に照射されたパワー密度P′によって規定され
るので、この場合にも複数のレーザパワー密度とレーザ
ビーム走査速度の組合せが存在し得る。図6は、開発社
刊、小林昭著「レーザ加工」(1976)p39に示さ
れたレーザエネルギとパルス幅によるレーザ加工の分類
を示したものであり、図6のごとく同一のエネルギに対
しても、パルス幅を短くしてゆくことによって加工現象
は物質の加熱のみの状況から溶融、蒸発へと現象が変化
することが示されている。さらに、パルスレーザビーム
と連続波レーザビームの間では、加工現象により大きな
相違があることが明記されている。したがって、電磁鋼
板の鉄損改善処理方法としてレーザエネルギ密度Eのみ
で条件を規定することは甚だ不確定な要素を含むもので
ある。
【0004】次にレーザビームと物質との相互作用条件
は上記のレーザ特性以外にも、物質によるレーザビーム
の吸収率によっても大きく左右される。光吸収率を決定
する要因は、被加工物である鋼板の表面粗さ、温度、鋼
板表面の皮膜の吸収特性、ならびにレーザ波長である。
表面粗さ、表面温度を一定にした場合の電磁鋼板表面で
のレーザパワー吸収特性の波長依存性の測定結果の一例
を図7に示す。工業的に一般に利用されているレーザは
主としてYAGレーザとCO2 レーザであり、れらの代
表的な発振波長は1.06μmと10.6μmである。
この2つの波長に対する電磁鋼板の吸収率を比較する
と、YAGレーザの1.06μmでは35〜40%の吸
収率があるのに比べて、CO2 レーザの10.6μmで
は5〜10%の吸収率と非常に低く前者の1/4〜1/
5に過ぎない。これに基づいてレーザのエネルギが鋼板
に投入されるので、その加熱、溶融、蒸発現象の変化は
大きく、レーザビームの波長による吸収率の依存性を無
視することはできない。しかるに特公昭59ー5368
4号公報等においてはレーザ発振器としてはQスイッチ
ング可能なルビーレーザ、YAGレーザ、あるいはCO
2 レーザ、Arレーザ、COレーザなどの連続発振レー
ザ等任意のレーザを使用することができると開示されて
いる。
【0005】以上のごとく、従来技術においてはレーザ
ビームと鋼板の相互作用に重大な影響を及ぼす要因であ
るレーザビームのピークパワー密度P、パルス幅W、発
振波長λを何等規定していない。
【0006】次に、従来までに用いられてきたレーザ発
振器についてその問題点について説明する。電磁鋼板の
処理のためには、先ず時間幅の短いパルスで発振可能な
QスイッチYAGレーザが用いられてきた。YAGレー
ザは通常、音響光学素子をQスイッチ素子として用いる
ことにより、パルス幅がおよそ100nsec前後の短
パルスQスイッチ発振を行うことができる。しかし、音
響光学素子で共振器のQ値を制御する場合、レーザビー
ムの平均出力(パルスエネルギ×パルス繰り返し周波
数)はおよそ100W程度が上限である。この条件下で
処理に必要なパルスピーク出力を確保するためには、パ
ルス繰り返し周波数としては10kHz程度が限界とな
る。鋼板幅がおよそ1mの電磁鋼板を数10m/分の速
度で処理するためには、鋼板の幅を10〜30分割し、
それぞれの領域に1台ずつのレーザを設けなくてはなら
ない。したがって処理ラインには10〜30台のレーザ
が設置されることになり、この内の1台でも不調を来し
た場合には、処理を中断しなくてはならなくなる。ここ
で一般のYAGレーザの励起には連続波アークランプが
用いられ、その寿命は標準的には1000時間であり、
さらにレーザ発振器の共振器用光学部品の寿命もあるた
め、一定のメンテナンス周期を考慮しなくてはならな
い。このメンテナンス頻度はレーザ発振器の台数が多く
なるほど高くなるため、処理ラインの定常的動作ならび
に信頼性の確保の意味で大きな問題点を抱えていた。
【0007】これに対して平均出力の高出力化の観点で
は、CO2 レーザはYAGレーザを大幅に凌いでおり、
平均出力数kWまでは容易に得られる。実際に特開昭5
9ー23822号公報の実施例には、連続発振CO2
ーザを用いた例が開示されている。CO2 レーザでは1
台で高出力が実現できることから、処理に要するレーザ
発振器の台数は1〜3台に減少させることができるの
で、処理ラインの信頼性の改善には大きな効果があっ
た。しかしながらその発振形態は連続波であることから
前記のごとくレーザ加工現象は大幅に異なり、十分な渦
電流損失の減少のためにはYAGレーザによる処理の条
件に比べて過大な入熱条件を要求し、その結果ヒステリ
シス損失がかえって劣化し全鉄損改善が充分に行えない
こと、磁歪特性が劣化し鉄心として使用する場合に騒音
が問題になる等の問題点を抱えている。
【0008】さらに電磁鋼板のレーザ処理においては、
それに先だって数μm厚のシリカ、フォルステライトを
主成分とする絶縁皮膜を施す。この皮膜はYAGレーザ
の発振波長(1. 06μm)に対しては殆ど吸収を示さ
ないが、CO2 レーザの発振波長(10. 59μm)に
対しては大きな吸収を示す。その結果、CO2 レーザで
の処理においては、若干の膜厚変動が鋼板に到達するレ
ーザパワー密度に大きく影響するため、処理特性に変動
を来す問題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、方向
性電磁鋼板の鉄損特性を改善する方法において、従来の
YAGレーザでの出力制約に起因する処理工程の低信頼
性や、従来のCO2 レーザの連続波発振形態に起因する
鉄損改善特性の限界等の種々の問題点を解決し、高い信
頼性と高い鉄損改善特性を同時に併せ持つレーザ処理工
程を実現できる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明は、表面に絶縁
皮膜を施した方向性電磁鋼板に圧延方向にほぼ直角にレ
ーザビームを走査・照射しその鉄損を改善する方法にお
いて、レーザ発振器としてパルス半値幅が10nsec
以上、1μsec以下の初期スパイクを持ち、さらに1
00nsec以上、10μsec以下のパルステイルを
有するパルスQスイッチCO2 レーザを用い、パルスピ
ーク部の光強度密度が1×105 〜1×108 W/cm
2 の領域とし、集光したレーザビームが直径1mm以下
のほぼ円形もしくは圧延方向径が1mm以下で走査方向
長さが5mm以下のほぼ楕円形状になるようレーザビー
ムを集光照射することを第一の特徴とし、第二に絶縁皮
膜のレーザパワーの透過特性を測定し、それを透過する
レーザビーム強度が一定になるようにレーザ出力を制御
するか、もしくはレーザ発振波長を9.1μm〜11μ
mの範囲で可変することにより、磁気特性の改善を10
%以上と高い値で、連続稼働にて安定に実現し得るパル
スCO2 レーザを用いた方向性電磁鋼板の鉄損改善方法
である。
【0011】
【作用】以下に本発明を詳細に説明する。図1は、本発
明によるパルスCO2 レーザを用いた方向性電磁鋼板の
鉄損改善方法において、本発明の主たる構成要素である
QスイッチCO2 レーザ共振器の構成と、その出力パル
スの電磁鋼板への照射光学系の構成を示したものであ
る。レーザ放電部2は、CO2 レーザ媒質であるレーザ
ガスに連続的に放電励起によってエネルギを供給する部
分であり、レーザ共振器を構成する全反射鏡としてのグ
レーティング3と全透過窓4によって大気と遮断されて
いる。なお、グレーティング3は発振波長を選択するた
めに用いられている。大気中に設置された出力鏡7と全
透過窓4との間には、共焦点テレスコープ5と回転チョ
ッパ6によって構成されるQスイッチング装置が設置さ
れる。回転チョッパ6は一定間隔でレーザビームを透過
させるスリットを有し、レーザ光軸上にスリットが来た
時にのみ共振器の性能指数であるQ値が上昇することで
Qスイッチングが実現される。ここで、CO2 レーザの
回転チョッパによるQスイッチングの場合、YAGレー
ザにおいて問題となった音響光学素子による平均出力上
限が原理的に無いことから、高平均出力化が可能であ
り、1kW以上の平均出力が得られている。これは、典
型的なQスイッチYAGレーザの10台分以上の出力値
である。QスイッチCO2 レーザ共振器から取り出され
たパルスレーザビーム1はポリゴンミラー8による回転
スキャナーによって電磁鋼板10の板幅方向に走査さ
れ、平面全反射鏡11で反射して放物面鏡9によって集
光された後、電磁鋼板10に照射される。
【0012】図2は、パルス繰り返し周波数12kHz
でQスイッチ発振した場合の、QスイッチCO2 レーザ
のパルス波形を示したものである。初期スパイク部はQ
スイチレーザ特有のジャイアントパルス発振部であり、
その半値幅は放電励起強度、レーザ共振器長、パルス繰
り返し周波数によって逐次変化するがその範囲は10n
sec以上、1μsec以下である。さらにこのQスイ
ッチCO2 レーザパルは初期スパイク後に長いテイル部
分を伴っている。これは、主としてレーザ媒質中に含ま
れるN2 の励起分子からCO2 分子のレーザ上準位への
衝突によるエネギ移剰によって発振しているレーザパル
スの一部である。このテイル部の最大長さは衝突エネル
ギ移剰の時定数によって決定され、およそ10μsec
である。これは、YAGレーザには無いQスイッチCO
2 レーザに特有のパルステイルである。なお、回転チョ
ッパを用いたQスイッチングにおいては、レーザ光透過
スリットの幅を適宜変更することによりパルステイル長
を短くすることが可能である。
【0013】Qスイッチ発振時のパルス繰り返し周波数
の最大値は、共振器Q値の上昇後、Qスイッチパルス発
振に至るまでの遅延時間と、共振器Q値が低い間にレー
ザ上準位へエネルギが蓄積される時間の兼ね合いによっ
て決定されるが、一般の連続波発振CO2 レーザを用い
てQスイッチ発振させる場合、100kHz程度までの
周波数が実現可能である。なお、これより周波数を下げ
てゆく場合、レーザ上準位の寿命(レーザガス組成、圧
力に依存するがおよそ50μsec)に相当する20k
Hz程度のパルス繰り返し周波数までの領域では、パル
スエネルギとパルス繰り返し周波数はおよそ反比例の関
係、すなわち一定のレーザ平均出力が得られる。
【0014】以上に示したようなQスイッチパルスCO
2 レーザビームを方向性電磁鋼板に照射した場合の、鉄
損特性改善に関して以下に詳細に説明する。先ず、初期
スパイク部のパルスピークパワー密度が鉄損特性に及ぼ
す影響について、レーザビームの集光径を約800μm
の一定値としてパルスピーク出力を逐次変化させてその
特性を調査した。その結果、初期スパイク部のパルス半
値幅が10nsec〜1μsecのQスイッチCO2
ーザパルスの場合、ピークパワー密度が1×105 〜1
×108 W/cm2 の領域であれば、渦電流損の十分な
低下があり、かつヒテリシス損失の増加が見受けられな
いことが判明した。なお、ピークパワー密度が1×10
5 W/cm2 より小さい場合、渦電流損失の低下が見ら
れずレーザ照射の効果があまりないこと、またピークパ
ワー密度が1×108 W/cm2より大きい場合、鋼板
表面に溶融痕が見られ、渦電流損失は低下するもののヒ
ステリシス損失がかえって増大し、さらに磁歪特性も劣
化することが判明した。したがって、ピークパワー密度
としては1×105 〜1×108 W/cm2 の領域に限
定される。
【0015】次に、レーザピークパワー密度はピーク出
力を一定として、レーザビームの集光形状を変化させて
も制御することができるので、レーザ出力を一定として
集光レンズの焦点距離を逐次変化させながら、磁気特性
改善効果を評価した。その結果、鋼板の圧延方向のレー
ザビーム径が1mmを超えると磁区細分化効果が著しく
劣化し、1mm以下とする必要があることがわかった。
これは、熱衝撃を与える部分が広くなり過ぎると、磁区
細分化が起こりにくくなるためと考えられる。なお、レ
ーザビーム走査方向のビーム径は、圧延方向ビーム径
程、厳密な制約が無いこともわかった。ここで、パルス
ピーク出力は近似的にはパルスエネルギと比例し、パル
スエネルギは前述のごとくパルス繰り返し周波数と反比
例するので、高いパルス繰り返し周波数で低めのピーク
出力を取り出し点状に集光することと、低いパルス繰り
返し周波数で高いピーク出力を取り出し線状(楕円形
状)に集光することは等価である。このような線状集光
はレーザビーム集光系に円柱鏡ないし円柱レンズを挿入
することによって実現できる。線状集光の場合のレーザ
ビーム走査方向の長さは、発振器から取り出し得るピー
ク出力と磁気特性改善に要求されるピークパワー密度に
よって決定され、その上限値は5mmである。
【0016】次に、QスイッチCO2 レーザパルスに特
有なパルステイル部分の磁気特性改善に及ぼす影響につ
いて説明する。パルステイル部分の長さは、前述のごと
く回転チョッパのスリット幅を変えることで制御でき
る。そこでパルステイル部分の長さを逐次変化させなが
らその磁気特性改善効果への影響を調べた。その結果、
パルステイル部分が全く無い場合と、100nsec以
上のパルステイルを含む場合とで磁気特性改善効果に明
確な差が存在し、パルステイルが有る方が大幅に鉄損改
善が起きることがわかった。後の実施例欄に示すよう
に、QスイッチYAGレーザによる鉄損改善に対しても
有意な差が存在しており、これが本発明によるQスイッ
チCO2 レーザを用いる最たる特徴の一つとなってい
る。なお、パルステイルによる効果は、テイル部分によ
る鋼板の後熱効果によって鉄損改善効果に差を生じさせ
ているものと考えられる。
【0017】前述のごとく従来技術のプロセスでは、方
向性電磁鋼板のレーザ処理に先立って絶縁皮膜処理が施
される。図3は、日本金属学会誌Vol.56,No.
5、p550に示されている絶縁皮膜の主成分であるフ
ォルステライト(Mg2 SiO 4) の赤外領域における光学
定数を基に、皮膜厚2μmの場合の赤外透過スペクトル
を計算した結果を示したものである。図3のごとくCO
2 レーザがフリーランニングモードで発振する波長であ
る10.59μm(10P20,944cm-1)近傍で
は、皮膜によるレーザパワーの吸収特性は大幅に変化す
る。図4は、各種のレーザ発振波長に対して皮膜厚を変
化させた場合のレーザパワー透過率の計算結果を示した
ものである。10.59μmの波長に対しては皮膜厚が
0.5μm変化しただけでレーザパワー透過率は10〜
20%程度も急激に変化することがわかる。このような
皮膜のレーザパワー透過率の変動の磁気特性改善効果に
及ぼす影響について調査したところ、鋼板に到達するレ
ーザパワーを一定に制御することで、レーザ照射効果を
ほぼ一定に保つことが出来ることがわかった。このよう
な制御は、レーザ出力を変化させる、もしくはレーザ発
振波長を変化させて皮膜による吸収率を変更することに
よって実現される。CO2 レーザの代表的な発振波長帯
は9.1μm〜11μmである。これに対応する波数領
域は900〜1100cm-1であり、図3および図4を
参照すると、皮膜による吸収率を実用的な範囲で制御出
来ることがわかる。方向性電磁鋼板の鉄損改善にあたっ
て、CO2 レーザを用いた従来技術では、絶縁皮膜厚の
変動によって鉄損特性改善効果にばらつきが発生してい
たが、本発明によってCO2 レーザの発振波長可変性を
利用することで、逆にこのばらつきを抑えることが可能
となる。
【0018】なお、以上の本発明の説明においては、Q
スイッチCO2 レーザは連続波放電による連続波発振レ
ーザをQスイッチ動作させる例を示したが、本願発明者
等が特願平3ー42596号において提示したパルス放
電励起QスイッチCO2 レーザを用いてもよい。さらに
Qスイッチングの方式としては、回転チョッパを用いる
方式を提示したが、回転ミラー、ファブリペロエタロ
ン、電気光学素子等を用いるその他のQスイッチ方式を
適用したパルスQスイッチCO2 レーザを用いることも
可能である。
【0019】
【実施例】本発明によるパルスCO2 レーザを用いた方
向性電磁鋼板の鉄損改善方法を図1に示される構成を用
いて実施した。レーザ放電部2は連続波発振CO2 レー
ザの放電励起部分であり、フリーランニングモードで連
続波発振させた場合、ほぼTEM00モードで1.5kW
のレーザ出力を得る能力を有する。グレーティング3は
波長チューニング素子であり、150本/mmのブレー
ズがほどこされている。全透過窓4は波長10μm近傍
での無反射コーティングがほどこされたZnSe窓であ
る。共焦点テレスコープ5は同様なコーティングが施さ
れた焦点距離100mmのZnSeレンズ2枚によって
構成される。回転チョッパ6は12,000rpmで回
転する金属ブレードで、チョッパブレード上には50〜
500ケのスリットが導入されている。したがって、パ
ルス繰り返し周波数は10〜100kHzである。以上
の条件でレーザをフリーランニングモードで発振させた
場合の平均出力はおよそ600W強である。レーザ共振
器から取り出されたレーザビーム1はポリゴンミラー8
によって鋼板幅方向に350mmにわたって走査され
る。レーザビームは点集光の場合は、放物面鏡9によっ
て鋼板10の表面上で0.8mm直径のビームに集光さ
れ、線集光の場合は、さらに図示されない円柱レンズの
導入によって約0.8mm×5mmの線状ビームに集光
される。
【0020】[実施例1]パルス繰り返し周波数100
kHz、波長10. 59μmのレーザビームを点集光
し、初期スパイク部のパルス半値幅250nsec、パ
ルステイル2μsecのQスイッチCO2 レーザパルス
を、初期スパイク部のピークパワー密度を2×106
/cm2 としてレーザ光走査方向に0. 5mm間隔、鋼
板圧延方向に6mm間隔で照射した。また比較のため
に、パルステイルを伴わないQスイッチYAGレーザ光
を、その他の条件は上記と統一して照射を行い、さらに
連続波CO2 レーザも用いて、その最適照射条件である
パワー密度として3×105 W/cm2 でレーザ照射を
行った。これら3種の照射材における全鉄損値(W
17/50) の未照射材に対する改善割合を測定した結果を
図5に示す。図示のごとく、本発明によるQスイッチC
2 レーザによる照射材については鉄損改善率の平均値
が11%と他の2種の材料の鉄損改善率の平均値の8〜
10%に比べて、有意に大きな鉄損改善効果が得られる
ことが判明した。ここで鉄損改善率の1%の向上は、大
容量の変圧器鉄心に利用する場合、大幅な変圧器の効率
向上につながるため、実用上極めて大きな効果である。
さらに、磁束密度特性(B8 )を評価した結果、従来の
連続波CO2 レーザによる処理材では100ガウス以上
の劣化が観測されたことに対し、本発明によるQスイッ
チCO2 レーザによる照射材ではほとんど劣化が見られ
なかった。
【0021】[実施例2]パルス繰り返し周波数10k
Hz、波長10. 59μmのレーザビームを線集光し、
初期スパイク部のパルス半値幅200nsec、パルス
テイル2. 5μsecのQスイッチCO2 レーザパルス
を、他の条件は実施例1と同一として照射を行った。そ
の結果、図5と同等な鉄損改善効果が得られた。
【0022】[実施例3]フォルステライト膜厚が0.
5μm大きく、波長10. 59μmのレーザビームに対
する吸収率が10%大きい鋼材に対して、レーザ出力を
10%増加させて、実施例1と同一の条件でレーザビー
ム照射を行った。その結果、図5と同等な鉄損改善効果
が得られた。
【0023】[実施例4]フォルステライト膜厚が0.
5μm大きく、波長10. 59μmのレーザビームに対
する吸収率が10%大きい鋼材に対して、レーザ波数を
948cm-1として、実施例1と同一の条件でレーザビ
ーム照射を行った。その結果、図5と同等な鉄損改善効
果が得られた。
【0024】
【発明の効果】以上に説明したごとく本発明によるパル
スCO2 レーザを用いた方向性電磁鋼板の鉄損改善方法
によれば、平均出力が従来のパルスQスイッチYAGレ
ーザに比べて大幅に大きいQスイッチCO2 レーザを用
いることから、処理工程の信頼性を大きく改善すること
ができ、また従来の連続波CO2 レーザに比べて全入熱
量を大幅に低減することで鉄損減少、磁歪特性の大きな
改善を実現できる利点を有する。
【0025】以下に、鉄損改善に関する具体的な効果の
試算結果を示す。本発明により図5の様に全鉄損改善率
で、従来の連続波CO2 レーザによる鉄損改善に対して
およそ3%の改善率向上が実現された。実施例で用いた
方向性電磁鋼板の全鉄損は約0. 84W/kgであるの
で、本発明により改善される全鉄損値△Wは0. 025
W/kgとなる。方向性電磁鋼板の最も一般的な用途は
送電用の柱状トランスであるが、この場合1kVAの電
力量当り2.0kgの電磁鋼板を必要とする。したがっ
て本発明により柱状トランスにおいて1kVAの電力に
対し約0.050Wの省エネルギが実現できる。現在電
力コストは20円/kWhr程度であり、力率を0.8
とすると、本発明により0. 05W/0. 8kW×20
円/kWh=1.26×10-3円/kWhrの電力コス
ト削減が可能となる。日本国内での総消費電力は年間6
000〜7000億kWhrであることから、本発明を
適用することで削減される電力コストは年間では1.2
6×10-3円/kWhr×6000〜7000億kWh
r/年=7.6〜8.8億円/年となり、本発明による
効果は非常に多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパルスCO2 レーザを用いた方向性電
磁鋼板の鉄損改善方法の一実施例の構成を示す模式図で
ある。
【図2】QスイッチCO2 レーザの発振波形の典型的な
測定結果例である。
【図3】皮膜厚2μmのフォルステライト膜の光透過特
性の赤外領域における波数依存性に関する測定結果に基
づく計算結果を示した図である。
【図4】各種のレーザ発振波長に対してフォルステライ
ト皮膜厚を変化させた場合のレーザパワー透過率の計算
結果を示した図である。
【図5】本発明と従来技術によるレーザ照射方法の違い
による全鉄損値(W17/50 )の未照射材に対する改善割
合を比較した結果を示した図である。
【図6】レーザエネルギとパルス幅によるレーザ加工の
分類を示した模式図である。
【図7】電磁鋼板表面でのレーザパワー吸収特性の波長
依存性の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
1:パルスレーザビーム 2:レーザ放電部 3:グレーティング 4:ZnSe全透過窓 5:共焦点テレスコープ 6:回転チョッパ 7:出力鏡 8:ポリゴンミラー 9:放物面鏡 10:電磁鋼板 11:平面全反射鏡
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉橋 敦史 神奈川県相模原市淵野辺5−10−1 新 日本製鐵株式会社 エレクトロニクス研 究所内 (72)発明者 矢持 啓介 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内 (72)発明者 向井 聖夫 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内 (72)発明者 佐藤 博彦 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に絶縁皮膜を施した方向性電磁鋼板
    に圧延方向にほぼ直角にレーザビームを走査・照射しそ
    の鉄損を改善する方法において、レーザ発振器としてパ
    ルス半値幅が10nsec以上、1μsec以下の初期
    スパイクを持ち、さらに100nsec以上、10μs
    ec以下のパルステイルを有するパルスQスイッチCO
    2 レーザを用い、パルスピーク部の光強度密度が1×1
    5 〜1×108 W/cm2 の領域とするように集光し
    たレーザビームが直径1mm以下のほぼ円形もしくは圧
    延方向径が1mm以下で走査方向長さが5mm以下のほ
    ぼ楕円形状になるようレーザビームを制御して照射する
    ことを特徴とするパルスCO2 レーザを用いた方向性電
    磁鋼板の鉄損改善方法。
  2. 【請求項2】 絶縁皮膜のレーザ光透過特性を測定し、
    それを透過するレーザ光強度が一定になるようにレーザ
    出力ないしレーザ発振波長を9. 1μm〜11μmに制
    御することを特徴とする請求項1記載のパルスCO2
    ーザを用いた方向性電磁鋼板の鉄損改善方法。
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