JP2553522B2 - 医療用チユ−ブ及びその製造方法 - Google Patents

医療用チユ−ブ及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、医療用チューブ及びその製造方法に関し、
更に詳しくは血液適合性に優れた医療用チューブ、特に
人工血管に適したチューブ及びその製造方法に関する。
[従来技術及びその問題点] 従来、熱可塑性高分子化合物からなる医療用チューブ
の製造方法としては、高分子化合物を加熱溶融して押出
す方法(以下「溶融押出し法」という)、丸棒状の型の
上に必要な厚さのポリマー層が形成されるまでポリマー
溶液を繰り返しディッピングする方法(以下「ディップ
法」という)及び環状オリフィスから高分子化合物の溶
液を押出し、環状オリフィスの中央から内部凝固液を押
出しつつ全体を外部凝固液に浸す方法(特開昭60−1881
64号公報)が知られている。
しかしながら、これらの方法で再現性よく血液適合性
を長期に亘って示す医療用チューブを得ることができ
ず、殊に6mm以下の内径を有する人工血管で満足に使用
できる製品はまだない。
即ち、溶融押出し法により得たチューブは、平滑な内
外面を形成し、チューブの壁全体が緻密な構造となり任
意に制御することができない。また当然のことながら、
縫合時の針のとおりが悪いという実用上大きな問題点が
ある。このようなチューブを血液や周囲の組織との長期
にわたる適合性を要求される人工血管のような用途に適
用すると、ポリウレタンやポリウレタンウレアのように
抗血栓性の優れた材料を用いても望ましい成績を得られ
ない。即ち、移植期間が長くなると、経時的に石灰化が
おこり結果としてその周辺に血栓が多量に生成してしま
う。また、このような平滑な内面を持ったチューブを人
工血管として使用した時には、生体側の血管の断端から
伸びる内膜組織が人工血管の内面に安定に生着せずに剥
離を起こすので、その部分で流れの乱りが発生して血栓
を生じ、再びそれが組織化することにより内膜の肥厚が
起ることが知られている。
ディップ法では、寸法の制度が低く肉厚にムラができ
る上に壁の構造が多層状となり任意に再現性よく制御す
ることができない。即ち、ディップ毎に型上に塗布され
たポリウレタン溶液の溶媒蒸発を均一にコントロールす
ることができないため構造に均一性を欠き、信頼性の高
い製品を得ることができない。
特開昭60−188164号公報記載の方法は本質的に高分子
化合物の溶液の凝固を内外に両面から行うことに特徴を
有しているが、従来の中空繊維膜の製造方法と何等変わ
りがなく、チューブ内側と外側とから凝固が進むので両
面にスキン層を持つ物しかできない。また、この方法で
は、凝固がチューブが変形を起こさぬような状態まで進
むのに長時間を要するので、形態安定性の悪い内径の大
きなチューブを製造しようとすると、引き取りの過程で
変形や凝固のムラが起こりやすく、実際には径が1〜2m
mをこえると成形チューブはいびつになってしまうとい
う欠点がある。
また、内径7mm以下の人工血管では、生体血管との接
合性が重要であり、物性の微妙な制御が開存成績の向上
のために不可欠である。殊に縫合の際に生体血管と人工
血管の内面同志がスムースにつながるための適当な柔軟
性が必要である。更に縫合針の通りがよいことが縫合性
を高め、開存成績に大きな影響をもつ。即ち、吻合性が
よいことは、生体血管との連結部分の流路を好ましい形
状にするためにきわめて重要である。また、人工血管は
半永久的に使用されるので、1日10万回以上の血圧によ
る拍動負荷に壁膜が耐えねばならぬことは勿論のこと、
応力集中点となる縫い目が徐々に拡張したり裂けたりし
ないことが基本的に必要な性質である。
ポリ四フッ化エチレンをチューブ状に成形した後、延
伸して微細な繊維状構造を持たせた人工血管が従来から
使用されているが、これらはポリエステル繊維を編織し
たチューブにヒダをつけた人工血管に比べて抗血栓性は
改良されているが、針の通りが悪く、針穴からの出血が
起る等の問題がある上に、生体血管との接合性に改善の
余地がある。
人工血管のうち、殊に7mm以下、とり分け6mm以下の内
径ではその開存成績は臨床的に満足に使用できる物は存
在しなかった。前記のポリ四フッ化エチレンを多孔質に
した物が限られた用途に使われているにすぎず、1年以
上の開存率は不満足な成績であるため、より開存性の優
れた人工血管の開発が望まれている。開存成績向上のた
めには、素材の抗血栓性を改善することがまず必要不可
欠である。更に人工血管として必要な前記の力学的性質
を付与しなければならない。次に長期の開存性に優れた
管壁の構造を保持していなければならない。先に述べた
ように緻密な構造の人工血管は長期にわたる開存状態を
維持できないことは実験的に多くのデータで示されてい
る。殊に内面に成長する内膜が安定に保持されず、成長
と血流や屈曲による剥離が繰返されている。とり分け生
体血管との連結部分ではパンヌスの異常な成長が起こっ
たり、これが血流の乱れの原因となって血栓が成長し、
徐々に組織化して吻合部の狭搾にいたる。内膜の安定な
生着のためには、内面にスキン層がなく1〜100、好ま
しくは3〜20ミクロンの直径を持つへこみがあり、か
つ、このへこみが管壁内部の空胞まで貫通していること
が好ましい。従って、このような少くとも内面にスキン
層を持たない構造を有する人工血管は、公知の環状オリ
フィスを用いて内外両面から凝固させる方法では作るこ
とができない。
この問題点を回避するための方法として、例えば、特
開昭60−188165号が提案されている。即ち、溶液中の造
孔剤を混在させて成形した後、これを何等かの方法で除
去することにより、内面に緻密なスキン層の生じるのを
防止する方法である。しかしながら、この方法では工程
が極めて複雑になるのみならず、血管の有孔性が高くな
るという本質的な欠陥を伴う。即ち、管壁全体が多孔質
になるため血漿の浸出が起こり、セローマのような合併
症が予後を悪くしてしまう。同様の現像は前記のポリ四
フッ化エチレンの人工血管でも頻繁に発生し、ひいては
感染症をひき起こし再移植を余儀なくされることは周知
の事実である。更に血球成分の管壁からの漏れが起きぬ
ような造孔剤を使用すれば、人工血管内面での組織の安
定な生着が望めないことはいうまでもない。
人工血管としては、内面に内膜の安定な生着を促すよ
うに管壁の内部まで貫通した穴を有し、かつ、外面には
血球は勿論、血漿をも通さないような緻密な構造を持っ
ていることが望ましい。このような構造を加うるに、力
学的に充分な強度と、初期血栓を少量にとどめ得る本質
的な抗血栓性、更に長期に生体に移植されても強い組織
反応の原因となったり生分解による劣化を起こさない材
料で形成されることが必要である。
本発明者らは前述した従来の医療用チューブの欠点を
解消するため、鋭意研究を重ねた結果、血液適合性に優
れた医療用チューブ、とり分け開存性に優れた人工血管
の製造に成功し、本発明を完成するに至った。
[発明の構成] 本発明の医療用チューブは、高分子化合物からなる単
層の医療用チューブであって、該チューブを構成する管
壁の内部組織が多孔質であり、空胞を構成する空胞壁が
多数連続して繋がった状態に構成され、該空胞の大きさ
は任意の断面における最大径の空胞の径(l)が該管壁
の厚み(d)に対して、0.005d≦l≦0.9dであり、該管
壁の内面が該空胞壁が連続して繋がったものから構成さ
れ、該管壁の内面にスキン層が存在しないことを特徴と
する医療用チューブが挙げられる。前記空胞壁は前記空
胞に比べて充分小さい孔を多数有する多孔質のものであ
ることが好ましく、このような構成は後述の湿式法によ
る製造方法を用いて凝固させることによって得られる。
本発明の医療用チューブにおいて空胞を構成する空胞壁
は0.01μ〜30μの細かい孔を存在するミクロなスポンジ
状の構造をなしているので、細胞が生育し易くて治癒効
果も高い。
本発明の医療用チューブは、特殊な内部組織を有し、
それと異質のスキン構造を有さないので、優れたコンプ
ライアンス(力学的順応性)と、優れた生体適合性と、
生育内皮の安定化とを達成することができる。このよう
にして本発明は用いた材料本来の力学的特性、例えば強
度及び耐疲労性保持し、移植後、経時的塑性変形を生じ
ず、また内部組織に緻密な部分が存在する従来の医療用
チューブの剛直さがなく、優れた力学的特性、コンプラ
イアンス及び細胞生成安定性を併せもつ医療用チューブ
を初めて提供し得たものである。
本発明の医療用チューブのうち、これを構成する管理
の内部組織の全体に亘って、空胞を構成する空胞壁が多
数連続して繋がった状態に構成されたものでは、該空胞
の大きさは任意の断面における最大径の空胞の径(l)
が該管壁の厚み(d)に対しては、好ましくは、 0.005 d≦l≦0.9 d の関係にあり、更に好ましくは、 0.01 d≦l≦0.8 d の関係にある。なお、lが0.9 dを超えると、実用的
見地からみて力学的強度が低くて臨床使用に不安を生
じ、lが0.005 d未満では、好ましいコンプライアン
スが得られない。
本発明に医療用チューブのいまひとつの特長は縫合性
が極めてよいことである。縫合性の良否はしばしば移植
血管の開存性に影響し、縫合状態が悪いとそこに血流の
乱れを生じて血栓生成の引金となり、このために移植血
管の閉塞をもたらす。本発明の如く、チューブを高分子
化合物で構成し、管壁の内部組織の多孔質とすることに
よって、適度の伸びと組織の柔軟性とが相まって縫合針
が通り易くて縫合し易くなり、スムースに宿主血管に吻
合させることができる。
興味のあることは、管壁の内部組織が多孔質である人
工血管は縫合部から裂けることはなく、前記内部組織に
緻密部を含む従来のポリウレタン系人工血管のように縫
合した縫目から亀裂が生じる欠点が完全に解消されてい
る。また縫合した縫目から血液が漏れることもないのは
興味ある現象であり、これは本来のポリウレタン等の弾
性に加えて、空胞を構成する多数の空胞壁の幾重にも及
ぶ開孔効果によるものと思われる。
本発明の医療用チューブを宿主血管に吻合させると、
その内部組織が両者で互いに連続した空胞組織となるた
めに、吻合部からの細胞の侵入が容易であって、極めて
吻合部治癒性に優れ、また血管を構成する管壁の内面に
スキン層がないために、内皮細胞の生育に適していて生
体化も早く、このことは本発明の医療用チューブが極め
て優れた長期開存性を有する原因であろうと思われる。
本発明の医療用チューブを構成する管壁の断面におけ
る空胞の分布において、外面に近い程空胞の大きさが小
さくなるように構成すると、縫合部から漏血を少くする
ことができて手術成績を著しく向上させることができ
る。これは本発明の医療用チューブの製造時に、凝固を
外面からのみ行わせることによって達成される。
本発明に用いる高分子化合物は、血液や組織との適合
性に優れた物質、即ち急性及び慢性の毒性、発熱性、溶
血性を持たず、長期に亘って移植しても周囲の組織に炎
症を惹起しないポリマーである。このようなポリマーと
しては、例えばポリハロゲン化ビニル,ポリスチレン及
びその誘導体、ポリオレフィン系重合体、ポリエステル
系縮合体、セルロース系高分子、ポリウレタン系高分
子、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系高分子などが挙
げられる。勿論これらを相互に含む共重合体や混合物で
もよい。力学的性質や生体内での安定性、更に、抗血栓
性の面から見て、これらの中で好ましいのは、ポリウレ
タン系のものである。その具体例としては、ポリウレタ
ン、ポリウレタンウレア、これらとシリコーンポリマー
とのブレンド物又は相互侵入網目構造を有するものが挙
げられる。また、これらには、セグメント化ポリウレタ
ン又はポリウレタンウレア、主鎖中にポリジメチルシロ
キサンを含むもの、ハード、ソフトセグメントにフッ素
を含むものを包含する。生分解を受けにくいという点
で、ポリエーテル型のポリウレタン又はポリウレタンウ
レアがポリエステル型よりも好ましい。
前記ポリウレタン等のポリエーテルセグメントを構成
するポリエーテルとしてはポリテトラメチレンオキシド
が最も好ましいが、その他のポリアルキレンオキシド
(但しアルキレンの炭素数は2及び/又は3)も好まし
い。かかるポリアルキレンオキシドの具体例としては、
ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチ
レンオキシド−プロピレンオキシド共重合体又はブロッ
ク共重合体がある。また同一主鎖中にポリテトラメチレ
ンオキシドセグメントとポリアルキレンオキシド(但し
アルキレンの炭素数は2及び/又は3)とを含む親水性
と力学的特性とを兼ねそなえたポリウレタンを用いても
よい。このポリウレタンは抗血栓性、生体適合性が群を
抜いて優れており、本発明者らの見出した新しいタイプ
の生体適合性のよいポリウレタンである。
これらのソフトセグメントを形成するポリエーテルの
分子量は通常400〜3,000の範囲であり、好ましくは450
〜2,500、更に好ましくは500〜2,500の範囲であり、中
でも最も優れたポリエーテルセグメントは分子量800〜
2,500、特に分子量1,300〜2,000のポリテトラメチレン
オキシド鎖である。このポリエーテルソフトセグメント
の分子量が3,000を越えると、ポリウレタン人工血管の
機械的性質が劣悪となり、400未満では人工血管として
成形しても固すぎて使用できない。
ポリウレタンの合成は、両末端水酸基の上述のポリエ
ーテルを、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネー
ト、トルイジンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘ
キシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソ
シアネートなど公知のポリウレタン合成に用いるジイソ
シアネートと反応させて末端イソシアネートのプレポリ
マーをつくり、これをエチレンジアミン、プロピレンジ
アミン、テトラメチレンジアミンなどのジアミンや、エ
チレングリコール、プロピレングリコール、ブタジオー
ルのようなジオールの鎖延長する定法を用いて合成して
もよい。
本発明の医療用チューブは、該チューブを構成する管
壁の内部組織が多孔質であり、かつ該管壁の内面にはス
キン層が存在しないので、本来の生体適合性に加えて、
組織が柔らかく、このため極めて縫合し易く、その結
果、吻合部にパンヌスが発生せず、また優れたコンプラ
イアンスが付与されるため、人工血管として用いた場合
に、心臓の拍動に伴って適度に弾性変形して宿主血管に
対する血液の刺激を緩和し、更にこの血管の内面にスキ
ン層がなくて空胞の中に細胞が侵入し易いため治癒性に
も優れ、このため内径が6mm以下で長期開存性の優れた
人工血管への道を開いたものである。
本発明の医療用チューブは、例えば、次のようにして
製造することができる。
即ち、円形のオリフィスから断面円形の剛体の芯棒を
押し出すことにより、該オリフィスと該芯棒との間隙ス
リットより高分子化合物の溶液を該芯棒の全周表面に流
延するように押し出し、該芯棒を凝固浴に導き該芯棒の
周りに該高分子化合物を凝固させた後、該芯棒をとり出
すことにより製造することができる。
成形に使用する溶液は、成形温度での粘度が5ポアズ
以上になるように設定することが好ましい。該粘度が5
ポアズ未満であると管壁の内部に巨大な空泡が生成して
強度が低下する。また成形の過程で肉厚のムラができや
すくなる。10ポアズ以上になると成形条件に対する制約
が少なくなるのでより好ましい。
一方、高粘度側の制約は殆んどなく、溶液の流動性が
なくても充分成形できる。公知の環状ノズルを使用する
中空繊維の製造方法で成形する場合には到底困難な5000
ポアズ程度の溶液でもきわめて容易に成形できるのが本
発明の製造方法の大きな特徴である。しかし、溶液の脱
泡が比較的簡単にできることが生産上から望まれるた
め、好ましくは3000ポアズ以下、より好ましくは2000ポ
アズ以下にする。
本発明の製造方法において、高分子化合物の溶液に用
いる溶剤は、それぞれの物質に対して公知の溶剤を容易
に選択することが可能であるが、製品への残留を避ける
ためと工程のコストの点から、水溶性の溶液が有利であ
る。かかる溶剤としては、例えばジメチルホルムアミ
ド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N
−メチル−2−ピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロ
フラン、アセトンなどが挙げられる。また本発明の製造
方法においては、溶液は必ずしも良好な溶解状態になく
てもよい。このため、貧溶剤や尿素などの膨潤剤を多量
に混合・使用することができる。このことは本発明の目
的たる医療用チューブ、とり分け人工血管の製造にとっ
てきわめて有利である。即ち、溶剤系を幅広く選択する
ことにより、特に造孔剤を使用する等の煩雑な工程なし
に容易にポロシティー(有孔度)を幅広く変化させるこ
とが可能である。
本発明の製造方法において、芯として用いる剛体の棒
は、溶液に溶解せず、凝固浴に導くまでの間形状が容易
に変化しない物質から作られる。耐腐食性も求められる
のでステンレススチール、鋼や真鍮にクロームメッキや
テフロン加工を施した物が特に好ましい。
その全周表面に溶液が流延された状態で押し出された
芯棒は、直接、又は一定の乾式部を通過した後、凝固浴
に導かれる。
即ち、円形のオリフィスと芯棒との間隙スリットより
吐出される高分子化合物の溶液が直接水系凝固浴中に吐
出される湿式凝固と乾式部を経てから水系凝固浴に導入
される乾湿式凝固のいずれでも適用可能である。
公知の中空繊維膜の紡糸方法を人工血管のような径と
肉厚の大きなものに適用した場合には、内外両面から迅
速な凝固作用を与えないと形状を好ましい状態に保持す
ることが困難である。従って、内外両面から強固な凝固
作用を及ぼすような条件はチューブの安定な製造に不可
欠であるが、これは人工血管として望ましい構造を作る
上で大きな障害となる。即ち、内外面の表面に管壁内部
よりも緻密な構造を形成してしまう。
本発明の製造方法により、これらの欠点が解決され
た。即ち、内部に存在する剛体が周囲の溶液を安定に保
持する役目を果すので、外面からの凝固のみで形状、寸
法の均一なチューブを再現性よく作ることが可能となっ
た。
更に外面からの凝固速度を緩慢にしても成形上問題な
く、充分時間をかけて凝固させることができる。
本発明の方法では、凝固条件を幅広く変化させること
ができるので成形の自由度が大きく、種々の構造の成形
品を作り得る。
凝固浴に、例えば、溶剤、貧浴剤、塩などを加えるこ
とにより、内外面共、又は、外面の構造を幅広く変化さ
せることができる。
また、芯として用いる剛体の表面エネルギーを材質の
選定や、テフロン、シリコーンなどのコーティング等の
手段によって変化させ、抗血栓性に影響を与えるミクロ
な性質のみならず、形態学的な表面状態をも変化させる
ことができる。
本発明の製造方法の際立った特徴の一つは乾湿式凝固
を行ったときに乾式部の通過時間を極めて厳密に制御で
きることである。殊にこの乾式部の通過時間を0.01〜数
10秒という短い時間にも正確に制御できる。このことは
成形チューブの外壁構造を均一にする点で極めて重要
で、従来公知のディップ法と大きく異なる点である。
以上の理由から、積極的に乾式部を設けることが好ま
しく、この場合、乾式区間での高分子化合物の溶液の表
面における流れを利用してスムーズに外面を容易に得る
ことができる。最適な乾式部の長さは主として溶液の粘
度と溶剤の揮発性とによって決められるが、通常5〜30
0mmの範囲が望ましい。5mm未満では、前記の整面効果が
不充分となる。300mmを越えると、溶液の流下が起こ
り、偏肉や長さ方向に厚さが徐々に変化したものが得ら
れるようになる。更に、高分子化合物の溶液に揮発性の
高い溶剤が含まれる場合には、表面から蒸発が進み、結
果として表面が露点に到ることがあり、微少な水滴が凝
縮する等の現象が現れ、環境条件の厳密な制御が必要と
なる。
以上の理由から乾式部の長さは、好ましくは20〜200m
mの範囲にある。
芯棒が乾式部を通過する再の押し出し速度は、通常1
〜300mm/秒であり、好ましくは5〜200mm/秒、更に好ま
しくは10〜100mm/秒の範囲である。押し出し速度が300m
m/秒を越えると、後処理工程で残留応力による歪が現れ
る傾向にあり、1mm/秒未満では、雰囲気の温湿度や溶剤
濃度によって外表面の構造がばらつく原因となる。
凝固浴は、溶剤を除去するために、相溶性の優れたも
のを使用することが好ましい。殊に安全性、コストの面
から水が好ましい。必要に応じて、メタノール、エタノ
ール、イソプロパノール変性アルコールなどの低級アル
コール等を用いてもよい。いずれにしても、溶剤の完全
な除去のために、最終的に水と置換できる溶剤が凝固系
に用いられることが好ましい。例えば、水を凝固浴に用
いた場合には、一般的に外面から内面に向かう程、疎な
構造となったものが得られ、内面は、内側からの凝固が
全く作用しないので、異質の緻密性を生ずることなく内
膜が薄く安定に保持されるのに必要な1〜100μm程度
の前述の粗面構造を与える。この凹みは内部の空隙まで
貫通し、内膜の安定化に寄与する。
得られた凝固成形物は、充分に溶剤を除去した後、風
乾又は強制乾燥後、滅菌するか、湿潤状態のまま、生理
食塩水と置換し、オートクレーブやγ線で滅菌してもよ
い。
ポリウレタン、ポリウレタンウレアを用いるときに
は、多孔質構造が好ましいコンプライアンス(C)を与
えることができるが、これを次式: (式中、V0は内圧50mmHgのときの測定血管の内容積、△
Pは内圧が50mmHgから150mmHgまで変化したときの変化
分100mmHg、△Vは内圧が50mmHgから150mmHgまで変化し
たときに増加した測定血管の内容積である。) で定義した値で示すとき65%を越えると、長期埋植後に
は、繰り返し、血圧の応力を受けるために徐々に不可逆
的な内腔の拡張を引き起こす。また、この値が低すぎる
場合、特に1%未満では、宿主血管側に異常な拡張をも
たらす結果、吻合部付近に乱流が生じて吻号部内膜の肥
厚の要因となる。
従って、前記コンプライアンスが、通常1〜65%、好
ましくは3〜20%、更に好ましくは3〜10%になるよう
に予め押し出しの厚みと溶液のポリマー濃度を定めるこ
とが好ましい。
また、予め、芯棒にポリエステルのメッシュのような
補強材を被せた後に本発明の方法を実施し前記補強材を
内部に包埋させてもよい、予め、芯棒に他の素材を薄く
コーティングした後、本発明の方法を実施してもよい。
[発明の実施例] 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、
これらの実施例は、本発明の範囲を何ら制限するもので
はない。
なお、以下に示した(%)は特にことわりのない場合
は、全て重量%を示す。
実施例 1 分子量1650の両末端水酸基のポリテトラメチレングリ
コールを4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートと
反応させて両末端イソシアネートのプレポリマーとし、
これをブタンジオールで鎖延長してポリウレタンを合成
した。合成したポリウレタンはテトラヒドロフラン−エ
タノール系で再沈殿を3回繰返して精製した。この精製
ポリウレタンをジメチルアセトアミドに溶解して18.3%
の溶液とした。
直径10mmの円形オリフィスから、上記オリフィスと同
心となるように精密に設定された外径8mmのステンレス
の棒を一定速度で押し出し、この押し出されるステンレ
ス棒とオリフィスとの均一な間隙からこの棒の全周表面
に前記ポリウレタン溶液が流延するように前記溶液を均
一に押し出してこの棒を30℃の水中に導き、凝固させ
た。この場合、芯ばステンレス棒であるから凝固は外側
からのみ生じる。3時間後、この棒をとり出し、更に流
水中に一夜つけて充分に脱溶剤した。このようにして凝
固したポリウレタンチューブをステンレス棒から剥離し
て風乾した。
得られたポリウレタンチューブは乳白色の多孔質構造
をもち、その管壁の断面は空胞を構成する空胞壁が多数
連続して繋がった状態となっていた。管壁の厚みは0.7m
mであり、管壁の内径は風乾時に若干の収縮が生じて7mm
であった。このようにして得られたポリウレタン人工血
管の管壁の内面には異質のスキン層は存在せず、また管
壁の内面には空胞が開口して直接露光していることはな
く、従って管壁の内面はこの人工血管の内部組織中の空
胞壁の場合と同様の細かい孔が存在するミクロなスポン
ジ構造をなしていた。そして走査型電子顕微鏡で200倍
に拡大して観察した処、管壁の内面はこの人工血管の内
部組織中の空胞壁と物理的な構造が実質的に同一であっ
て、両者の間には差異は認められなかった。この人工血
管の管壁の内面は空胞が管壁の内面に開口して直接露出
している場合に生ずると思われる血流の渦巻きを生じな
い構造であった。また空胞は大きめの気泡からなり、管
壁の外面付近では比較的小さくなっていた。またコンプ
ライアンス値は45%であった。この実施例によって得ら
れたポリウレタンチューブの中に水を満たし、この水を
120mmHgの陽圧に保った。人工透析の体外血液循環に用
いるカニューレ(針径1.5mm)を上記チューブの15cmの
長さに亘ってランダムの位置に150回穿刺を繰返し、水
漏れの状態を調べた。150回に及ぶ穿刺にもかかわら
ず、著しい水漏れは認められなかった。
実施例 2 実施例1と全く同様の実験を、本例では外径4mmのス
テンレス棒を用いて行った。この結果、管壁の内径3.2m
m、管壁の厚み0.5mmで、空胞を構成する空胞壁が多数連
続して繋がった状態に管壁の内部組織が構成されたコン
プライアンス(C=64%)のチューブが得られた。
本例によるチューブの管壁の内面は、実施例1による
チューブの場合と同様に、前記空胞壁が連続して繋がっ
たものから構成され、この内面にはスキン層(より緻密
な層)は存在しなかった。
このチューブを人工血管として用いて、雑種成犬の腸
骨動脈及び大腿動脈に端−端縫合で移植した。吻合は適
度の柔軟性とコンプライアンス(39%)があって極めて
容易であり、また縫合部からの出血がなかった。同じ条
件で6例の動物実験を行ったが、移植血管はいずれも16
ヶ月後でもなお開存していた。
実施例 3 分子量1650の両末端水酸基のポリテトラメチレングリ
コールを4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートと
反応させて両末端イソシアネートのプレポリマーとし、
これをブタンジオールで鎖延長してポリウレタンを合成
した。合成したポリウレタンはテトラヒドロフラン−エ
タノール系で再沈殿を3回繰返して精製した。この精製
ポリウレタンをジメチルアセトアミドに溶解して20.0%
の溶液とした。
直径10mmの円形オリフィスから、上記オリフィスと同
心となるように精密に設定された外径7mmのステンレス
の棒を一定速度で押し出し、この押し出されるステンレ
ス棒とオリフィスとの均一な間隙からこの棒の全周表面
に前記ポリウレタン溶液が流延するように前記溶液を均
一に押し出してこの棒を20℃の水中に導き、凝固させ
た。この場合、芯はステンレス棒であるから凝固は外側
からのみ生じる。10時間後、この棒をとり出し、更に流
水中に一夜つけて充分に脱溶剤した。このようにして凝
固したポリウレタンチューブをステンレス棒から剥離し
て風乾した。
得られたポリウレタンチューブは乳白色の多孔質構造
をもち、その管壁の断面は空胞を構成する空胞壁が多数
連続して繋がった状態となっていた。管壁の厚みは1.1m
mであり、管壁の内径は風乾時の若干の収縮が生じて6.5
mmであった。このようにして得られたポリウレタン人工
血管の管壁の内面には異質のスキン層は存在せず、また
管壁の内面には空胞が開口して直接露出していることな
く、従って管壁の内面はこの人工血管の内部組織中の空
胞壁の場合と同様の細かい孔が存在するミクロなスポン
ジ構造をなしていた。そして走査型電子顕微鏡で200倍
に拡大して観察した処、管壁の内面はこの人工血管の内
部組織中の空胞壁と物理的な構造が実質的に同一であっ
て、両者の間に差異は認められなかった。この人工血管
の管壁の内面は空胞が管壁の内面に開口して直接露出し
ている場合に生ずると思われる血流の渦巻きを生じない
構造であった。また空胞は大きめの気泡からなり、管壁
の外面付近では比較的小さくなっていた。またコンプラ
イアンス値は25%であった。この実施例によって得られ
たポリウレタンチューブの中に水を満たし、この水を27
5mmHgの陽圧に保ったが管壁からの水漏れは認められな
かった。
実施例 4 実施例3と全く同様の実験を、本例では外径4.5mmの
ステンレス棒を用いて行った。この結果、管壁の内径4.
0mm、管壁の厚み0.5mmで、空胞を構成する空胞壁が多数
連続して繋がった状態に管壁の内部組織が構成されたコ
ンプライアンス(C=19%)のチューブが得られた。
本例によるチューブの管壁の内面は、実施例3による
チューブの場合と同様に、前記空胞壁が連続して繋がっ
たものから構成され、この内面にはスキン層(より緻密
な層)は存在しなかった。
このチューブを人工血管として用いて、雑種成犬の腸
骨動脈及び大腿動脈に端−端縫合で移植した。
市販のテフロン製の人工血管に比べて針のとおり及び
宿主血管との密着性がよく、術後針穴及び吻合部からの
出血は1000単位の全身ヘパリン化下にて全くみられなか
った。3例を用いた実験において全例18ヶ月経過後良好
な開存性を示した。
参考例 1 実施例1で用いたポリウレタン溶液を用い、これをギ
アポンプを用いて環状ノズル(溶液出口の寸法は内径3m
m、外径5mm)から約40cm/分で押し出し、同時に環状に
押し出される溶液の内側中央から予め脱泡した水を吐出
した。水の吐出量はポリウレタン溶液の押し出し量の1.
2倍であった。この水を内側に包含して押し出された線
状体を直ちに水中に導いてポリウレタンを管状に凝固さ
せ、更に1時間そのまま放置した。
このようにして得られたチューブは、内径が約3mm、
外径が約4.2mmであり、内側と外側の両側から凝固した
ので、管壁の内面及び外面の両方にこの管壁の内部組織
とは異質でこれによりも緻密なスキン層が存在してい
た。これは既述の実施例1、2で得たチューブとは異な
る際立った特徴であり、実施例1、2で得たチューブは
管壁の内面にスキン層がなくて外面のみに薄いスキン層
を有していた。そして本参考例のチューブは管壁の断面
の様相が実施例2とよく似たスポンジ様の構造を示して
いた。本参考例のチューブを用いて、実施例2と全く同
じ条件で雑種成犬に移植を行った。移植血管4例のうち
の3例は1ヶ月後、1例は3ヶ月後に閉塞した。
犬を犠牲死させて、腎臓の剖検を行った結果、腎の毛
細血管に閉塞がみられた。同様な剖検を実施例2の犬で
行っても腎臓は異常にみられなかった。
参考例 2 実施例3で用いたポレウレタン溶液を用い、これをギ
アポンプを用いて環状ノズル(溶液出口の寸法は内径3m
m、外径5mm)から押し出し、同時に環状に押し出される
溶液の内側中央から水を吐出した。水の吐出量はポレウ
レタン溶液の押し出し量の1.2倍であった。この水の内
側に包含して押し出された線状体を直ちに水中に導いて
ポリウレタンを環状に凝固させ、更に1時間をそのまま
放置した。
こうして得られたチューブは、内径が約3.3mm、外径
が約4.8mmであり、内側と外側の両側から凝固したの
で、管壁の内面及び外面の両方にこの管壁の内部組織と
は異質でこれよりも緻密なスキン層が存在していた。こ
れは既述の実施例3、4で得たチューブとは異なる際立
った特徴であり、実施例3、4で得たチューブは管壁の
内面にスキン層がなくて外面のみに薄いスキン層を有し
ていた。そして本参考例のチューブは管壁の断面の様相
が実施例4とよく似たスポンジ様の構造を示していた。
管の横断面を調べたところ、偏平化しており直交する2
つの内径X,YはX/Y=1.30の関係にあった。本参考例のチ
ューブを用いて、実施例4と全く同じ条件で雑種成犬に
移植を行った。移植血管2例のうちの1例は3ヶ月後に
閉塞し、他の1例は2ヶ月後に犠牲死の上、観察したと
ころ、吻合部に約1mmのパンヌスがみられ、その周囲に
多量の新しい血栓が生じていた。
実施例 5 分子量1890の両末端水酸基のポリテトラメチレングリ
コールと4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ
ートとから常法によって両末端イソシアネート基のプレ
ポリマーをつくり、これをエチレンジアミンで鎖延長を
行って、ポリウレタンウレアを合成した。これをジメチ
ルホルムアミド−エタノール系で再沈殿を3回行って精
製した。
このポリウレタンウレアをジメチルホルムアミドに溶
解して濃度20%の溶液とした。外径5mmのステンレス棒
を直径7.2mmの円形オリフィスの中から同心的に押し、
この押し出されるステンレス棒とオリフィスとの間の均
一な間隙からこの棒の全外周囲に上記ポリウレタンウレ
ア溶液が流延するように前記溶液を均一に押し出し、ポ
リウレタン溶液の流出速度とステンレス棒の押し出し速
度とを一致させてこれを10℃の水中に導入した。この押
し出されたポリウレタンチューブの凝固は外側、即ち外
面から緩慢に行われ、約30分後には白色のポリウレタン
膜がステンレス棒の周囲に生成した。これを一昼夜放置
して凝固を完成させ、更に流水中で20時間浸漬してジメ
チルホルムアミドを完全に除いた。得られたポリウレタ
ンウレアチューブをステンレス棒から剥離して室温で風
乾した。
このポリウレタンウレアチューブの乾燥後の内径は3.
6mm、管壁の厚みは0.6mmであり、この管壁の断面構造は
管壁の外面の薄いスキン層を除いてその全体が空胞を構
成する空胞壁が多数連続した構造を実質的にとってい
た。即ち、管壁の断面構造は、実施例1によるチューブ
の場合と同様に、前記スキン層を除いて、空胞を構成す
る空胞壁が多数連続して繋がった状態に構成され、その
内面の前記空胞壁が連続して繋がったものから成ってい
た。また本実施例の人工血管のコンプライアンス値は62
%であった。
このチューブは適度の柔らかさ、弾性及びコンプライ
アンスを有していて取扱い易かった。このチューブを人
工血管として用い、雑種成犬の大腿動脈−大腿静脈のバ
イパスとして移植する動静脈バイパス手術を行った。結
合方法は端側結合であり、バイパスの全長は20cmであっ
た。縫合性は極めて優れ、針も通り易くかつ縫合後に漏
血も認められなかった。本バイパスチューブは6ヶ月を
経てもなお開存していた。
実施例 6 分子量1890の両端末水酸基のポリテトラメチレングリ
コールと4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ
ートとから常法によって両末端イソシアネート基のプレ
ポリマーをつくり、これをエチレンジアミンで鎖延長を
行って、ポリウレタンウレアを合成した。これをジメチ
ルホルムアミド−エタノール系で再沈殿を3回行って精
製した。
このポリウレタンウレアをジメチルホルムアミドに溶
解して濃度33%の溶液(20℃における粘度4300ポアズ)
とした。外径5mmのステンレス棒を直径8.0mmの円形オリ
フィスの中から同心的に押し、この押し出されるステン
レス棒とオリフィスとの間の均一な間隙からこの棒の全
外周囲に上記ポリウレタンウレア溶液が流延するように
前記溶液を均一に押し出し、ポリウレタン溶液の流出速
度とステンレス棒の押し出し速度とを一致させてこれを
20℃の水中に導入した。この押し出されたポリウレタン
チューブの凝固は外側、即ち外面から緩慢に行われ、約
30分後には白色のポリウレタン膜がステンレス棒の周囲
に生成した。これを一昼夜放置して凝固を完成させ、更
に流水中で20時間浸漬してジメチルホルムアミドを完全
に除いた。得られたポリウレタンウレアチューブをステ
ンレス棒から剥離して室温で風乾した。
このポリウレタンウレアチューブの乾燥後の内径は4.
4mm、管壁の厚みは0.6mmであり、この管壁の断面構造は
管壁の外面の薄いスキン層を除いてその全体が空胞を構
成する空胞壁が多数連結した構造を実質的にとってい
た。即ち、管壁の断面構造は、実施例3によるチューブ
の場合と同様に、前記スキン層を除いて、空胞を構成す
る空胞壁が多数連続して繋がった状態に構成され、その
内面は前記空胞壁が連続して繋がったものから成ってい
た。また本実施例の人工血管のコンプライアンス値は25
%であった。
このチューブは適度の柔らかさ、弾性及びコンプライ
アンスを有していて取扱い易かった。このチューブを人
工血管として用い、雑種成犬の大腿動脈−大腿静脈のバ
イパスとして移植する動静脈バイパスの手術を行った。
結合方法は端側結合であり、バイパスの全長は20cmであ
った。縫合性は極めて優れ、針も通り易くかつ縫合後に
漏血も認められなかった。本バイパスチューブは6ヶ月
を経てもなお開存していた。
参考例 3 実施例1及び5で用いたポリウレタン及びポリウレタ
ンウレア溶液に、夫々外径4mm及び5mmのステンレス棒を
従来公知の方法で、即ちディップ−乾燥を10回以上繰返
して、夫々ポリウレタン及びポリウレタンウレアのチュ
ーブをつくった。
これらのチューブは透明感があり、前記各実施例のチ
ューブとは異なり、空胞を構成する空胞壁が多数連続し
て繋がった状態で管壁の内部組織が構成されていない
で、むしろ緻密な組織部分が多かった。チューブは固く
て弾性に乏しく、コンプライアンスに欠けるものであっ
た。
参考のため、この参考例3のチューブを既述の実施例
2、5の場合と同様に雑種成犬に移植したが、固くて弾
性に欠けるために縫合しにくく、また縫合後の針穴から
漏血がみられ、移植チューブは一週間以内に閉塞した。
参考例 4 実施例3及び6で用いたポリウレタン及びポリウレタ
ンウレア溶液に、夫々外径4mm及び5mmのステンレス棒を
従来公知の方法で、即ちディップ−乾燥を10回以上繰返
して、夫々ポリウレタン及びポリウレタンウレアのチュ
ーブをつくった。
これらのチューブは透明感があり、前記各実施例のチ
ューブとは異なり、空胞を構成する空胞壁が多数連続し
て繋がった状態に感壁の内部組織が構成されていない
で、むしろ緻密な組織部分が多かった。チューブは固く
て弾性に乏しく、コンプライアンスに欠けるものであっ
た。
参考のため、この参考例4のチューブを既述の実施例
4、6の場合と同様に雑種成犬に移植したが、固くて弾
性に欠けるために縫合しにくく、また縫合後の針穴から
漏血がみられ、移植チューブは一週間以内に閉塞した。
参考例 5 実施例6で用いた溶液を、参考例2で用いたのと同じ
環状ノズルから押し出し、内部には、同様に水を注入し
た。
溶液の粘度が高いために、背圧は8Kg/cm2まで上昇
し、得られたチューブの外側表面には、吐出斑がみら
れ、内径も3.0〜3.5mmの範囲で周期的な変化がみられ
た。
実施例 7 実施例3と同じ溶液を、同じノズルとステンレス棒を
用いて押し出し、200mmの乾式部を通過させた後、凝固
浴に導いた。
本例で得られたチューブの外面は、実施例3で得られ
たものに比べて外面の滑らかさが優れており、10cmの長
さのチューブを5mm刻みで横断して外径を測定したと
き、本例では、95%信頼区間が7.55〜7.67に対し、乾式
部を設けないものでは、7.43〜7.75とばらつきが大きか
った。
実施例 8 実施例3と同じ溶液を、同じノズルとステンレス棒を
用いて押し出し、100mmの乾式部を毎秒50mmの速度で通
過させた後、凝固浴に導いた。
一夜、流水浴中にて凝固させた後、芯棒を抜きとり、
沸騰水中で30分煮沸後、45℃で乾燥した。得られた人工
血管は、直管状で曲がりがなく、表面にはシワなどの変
形もなかった。
参考例 6 実施例8において、乾式部分を通過する速度を毎秒32
0mmとして、他はすべて同一条件で、乾燥した人工血管
を得た。これは、長さ方向に収縮し、外表面には、細か
なシワが多くみられた。
実施例 9 実施例3で用いたポリウレタンをジメチルアセトアミ
ドに溶解し、10%の溶液とした。この溶液を外径5mmの
予めポリエステルのメッシュをかぶせたステンレス棒
と、7mmのノズルを用いて、成形した。
ポリエステルメッシュは、ポリウレタン溶液で完全に
濡れて、断面内部に包埋されており、内外いずれの面に
も露出していなかった。
このチューブのコンプライアンス値は4%であり、50
0mmHgで1ヶ月内部より加圧しても不可逆的な形態変化
はみられなかった。
実施例10 実施例7と同じ条件で押し出した芯棒を飽和食塩水に
導き、一夜浸漬後、流水にて洗浄し、乾燥した。得られ
たチューブの外表面は、実施例7で得られたものに比べ
て著しく凹凸が少なく、5000倍の拡大像でも殆んど起伏
を認めなかった。
[発明の効果] 本発明によれば、優れた長期管保存性を有する医療用
チューブを提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08J 9/28 101 C08J 9/28 101

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高分子化合物からなる単層の医療用チュー
    ブであって、該チューブを構成する管壁の内部組織が多
    孔質であり、空胞を構成する空胞壁が多数連続して繋が
    った状態に構成され、該空胞の大きさは任意の断面にお
    ける最大径の空胞の径(l)が該管壁の厚み(d)に対
    して、0.005d≦l≦0.9dであり、該管壁の内面が該空胞
    壁が連続して繋がったものから構成され、該管壁の内面
    にスキン層が存在せず、外面にスキン層を有することを
    特徴とする医療用チューブ。
  2. 【請求項2】該単層の医療用チューブが、水不透性であ
    る特許請求の範囲第1項記載の医療用チューブ。
  3. 【請求項3】高分子化合物がポリウレタン及び/又はポ
    リウレタンウレアである特許請求の範囲第1項記載の医
    療用チューブ。
  4. 【請求項4】円形のオリフィスから断面円形の剛体の芯
    棒を押し出すことにより、該オリフィスと該芯棒との間
    隙スリットより高分子化合物の溶液を該芯棒の全周表面
    に流延するように押し出し、該芯棒を凝固浴に導き該芯
    棒の回りの該高分子化合物を凝固させた後、該芯棒をと
    り出すことを特徴とする、管壁の内部組織が多孔質であ
    り、空胞を構成する空胞壁が多数連続して繋がった状態
    に構成され、該空胞の大きさは任意の断面における最大
    径の空胞の径(l)が該管壁の厚み(d)に対して、0.
    005d≦l≦0.9dであり、該管壁の内面が該空胞壁が連続
    して繋がったものから構成され、該管壁の内面にスキン
    層が存在せず、外面にスキン層を有する医療用チューブ
    の製造方法。
  5. 【請求項5】高分子化合物がポリウレタン及び/又はポ
    リウレタンウレアである特許請求の範囲第4項記載の製
    造方法。
  6. 【請求項6】芯棒を凝固浴に導く直前に乾式部を通過さ
    せる特許請求の範囲第4項又は第5項記載の製造方法。
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