JP2548067C - - Google Patents

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JP2548067C
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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は産業用車両の走行用、駆動用部品等に用いられる高靭性、高強度を有
し、かつ焼入れ性、被削性に優れた低合金鋼に関するものである。 【0002】 【従来技術】 産業用車両の走行用、駆動用部品としてトラツクリンク、クランクシャフト、
ステアリングナツクル等がある。例えば図2および図3に示す大型トラツクリン
ク1は最小断面が25mm以上の大断面を有するものであって、熱間鍛造によって
成形されたのち、切削加工により一対のブツシュ孔2が仕上げられ、この一対の
ブツシュ孔2にワツシャ3を介してブツシュ4を圧入し、かつブツシュ4にピン
5を挿入固定してチエン状をなし、ついでボルト6およびナツト7によってシュ
ー8に取付けるもので、トラツクリンクとシューとは一体的に回転し産業車両を
走行させるものである。 この車両用部品には走行時に高い曲げ応力、捩り、引張りおよび圧縮繰り返し
応力などの負荷が加わるものであって、このような走行用、駆動用部品に用いる
鋼に対して高い靭性と強度を有し、かつ大断面を有する前記部品の芯部まで焼入
れ組織とするため優れた焼入れ性を有していることが要求される。 また、産業用車両は−50℃以下の寒冷地においても作業をするものであるか
ら、極低温域においても前記特性があまり低下することがなく、特に低温靭性に
優れていることが要求される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 従来、前記のような特性が要求される産業用車両の走行用、駆動用部品に用い
る鋼として、SNCM431などのニツケル・クロム・モリブデン鋼が使用され
ているが、SNCM431はNiを1.8%含有することによって低温靭性につ
いては優れている反面、1.8%のNiを含有することによって熱間鍛造後の焼
きなましに長時間を要し、かつ、被削性が劣るとともに、多量のNiを含有する
ことによって高価な鋼となっていた。 また、SNCM431などの従来鋼は、焼入れに際してマルテンサイトを主体
とする組織となり、焼入れ時に大きな変態応力、熱応力が加わることによって焼
き割れが発生し易いので、従来は水焼入れを行うことができず、油焼入れを施し
ていた。しかし、油焼入れにおいては、焼入れ油の管理を十分に行わないと焼入
れ硬さがバラツクという欠点があり、例えば劣化した焼入れ油を使用して焼入れ を行うと、被焼入れ材の各部分において冷却速度が変化することによって、焼入
れ組織がマルテンサイトとベイナイトとが不均一に分布した組織となり、焼入れ
硬さにバラツキが生じるとともに、所望の硬さが得られないという問題があった
さらに、油焼入れにおいては十分な焼入れ硬さが得られないため、従来焼入れに
際して高温で焼入れを行い、かつ焼きもどしにおいては低温もどしを施さなけれ
ばならず、油焼入れ材は靭性が低いものとなり、従来トラツクリンクにおいては
、使用中にブッシュ孔付近に割れが発生するという問題があった。 【0005】 【課題を解決するための手段】 本発明は、従来鋼のSNCM431などのニツケル・クロム・モリブデン鋼に
比して、焼入れ硬さ、焼きもどし硬さは同等もしくはそれ以上の硬さを有し、引
張り強さ、靭性においては従来鋼より優れ水焼入れを可能とした高靭性低合金鋼
を提供するものである。 即ち、本発明者らの研究によれば、従来の含Ni鋼においては水焼入れを施し
た場合に焼き割れが発生するのは、該含Ni鋼はオーステナイト領域が広いため
、焼入れ時にほぼマルテンサイト一相の組織となることと、C量が高いことが相
俟って、水焼入れ時に大きな変態応力、熱応力が被焼入れ材に加わることによっ
て発生することを見出した。そこで本発明においては、変態応力を緩和するため
にマルテンサイトの析出を抑制し、焼入れ後の組織をマルテンサイトとベイナイ
トの混合組織とするため、Niの含有を不純物量程度に止め、Moを必要量含有
させることによって水焼入れが可能な鋼としたものである。また本発明において
は、水焼入れが可能となったことによって十分な焼入れ硬さが得られ、従来鋼に
比べて低い温度で焼入れができ、かつ高温で焼きもどしができるため、水焼入れ
を施した従来鋼に比して優れた靭性を有する鋼を提供することができる。さらに
本発明によれば、必要に応じて適量のV、Nbを1種または両方含有せしめるこ
とにより強度と靭性をさらに向上させ、またS、Pbを1種又は両方含有せしめ
ることにより、鋼の被削性をも向上させることができる等、高靭性、高強度を有
し、かつ優れた焼入れ性、被削性を有する産業用車両の走行用、駆動用部品に適
した高靭性低合金鋼を提供するものである。 【0006】 請求項1に記載の第1発明鋼は、重量比にしてC:0.32〜0.40%,S
i:0.15〜0.65%,Mn:0.65〜1.20%, Cr:0.90〜
2.00%,Mo:0.36〜0.49%を含有し、残部Feならびに不純物元
素からなり、組織が焼もどしマルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合組織か
らなり、水焼入れ時に焼き割れが無く、高靭性、高強度でかつ、優れた焼入れ性
を有するものである。また請求項2に記載の第2発明鋼は第1発明鋼の化学成分
のほかに、V:0.05〜0.30%、Nb:0.05〜0.30%のうち1種
または2種を含有し結晶粒を微細化することによって低温靭性をさらに向上させ
たものである。請求項3に記載の第3発明鋼は、第1発明鋼の化学成分のほかに
、S:0.035%以下,Pb0.15%以下のうち1種ないし2種を含有させ
ることによって被削性を改善したものである。 本発明鋼は上記各成分範囲の鋼に焼入れ、焼もどしを施すことによって焼もど
しマルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合組織を得たものであって、従来鋼
のSNCM431の焼入れ焼もどし組織に比して同等またはそれ以上の強度を保
持しながら、より優れた靭性を有する組織である。 【0007】 【作用】 本発明鋼の成分の作用は次のとおりである。 Cは、0.32〜0.40%を含有させることにより、産業車両の走行用、駆
動用部品として鋼に要求される強度を確保する。 Siは、0.15〜0.65%を含有させることにより、製鋼中に、脱酸作用
を有するとともに、鋼の地質に固溶して素地の強度を向上し、さらに焼もどし軟
化抵抗を有する。 Mnは、0.65〜1.20%を含有することにより、製鋼中にSiと同様に
脱酸作用を有し、かつ鋼の焼入れ性を向上させる。 Crは、0.90〜2.0%を含有させることにより、Mnと同様に鋼の焼入
れ性を高め、かつ炭化物を形成して耐摩耗性を向上させる。 Moは、0.36〜0.49%を含有させることにより、本発明の鋼の変態応 力を緩和し、水焼入れを可能とする優れた焼入れ性と、靭性および焼もどし軟化
抵抗を高め、さらに微細な炭化物を生成して耐摩耗性を向上させる。 VおよびNbは、いずれか一方または両者をそれぞれ0.05〜0.30%含
有させることにより、鋼に、炭窒化物を生成するとともに結晶粒を微細化し、強
度と靭性を向上させる。 Sは、0.035%以下を含有させることにより、鋼中にMnSを生成して被
削性を改善する。Pbは、0.15%以下を含有させることにより、鋼中におい
て単独あるいは化合物を形成し、切削時に切欠き効果と、潤滑作用により切削抵
抗を減少させて工具寿命、切屑の破砕性を著しく改善する。 【0008】 【実施例】 本発明鋼は、重量比にしてC:0.32〜0.40%, Si:0.15〜
0.65%,Mn:0.65〜1.20%,Cr:0.90〜2.00%, M
o:0.36〜0.49%を含有し、残部Feならびに不純物元素からなり組織
が焼もどしマルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合組織からなり、水焼入れ
時に焼き割れが無く、高靭性、高強度でかつ、優れた焼入れ性を有する高靭性低
合金鋼である。これにV:0.05〜0.30%,Nb:0.05〜0.30%
のうち1種または2種を含有し結晶粒を微細化することによって低温靭性をさら
に向上させたものであり、あるいはこれにS:0.035%以下、Pb:0.1
5%以下を含有させることによって被削性を改善したものである。 【0009】 本発明鋼の成分限定理由について説明する。 Cは、産業車両の走行用、駆動用部品として要求される強度を確保するに必要
な元素であって、所望の硬さを得るためには少くとも0.32%以上のCを含有
させる必要があり、下限を0.32%とした。しかし0.40%を超えて含有さ
せると靭性が低下するとともに熱処理によって歪が発生し易くなるので上限を0
.40%とした。 Siは、脱酸作用を有するとともに地質に固溶して素地の強度を向上し、さら
に焼きもどし軟化抵抗を有する元素であって、これらの効果を得るには0.15 %以上含有させる必要があり下限を0.15とした。しかし必要以上のSiを含
有させると被削性が損なわれるので上限を0.65%とした。 MnはSiと同様に脱酸剤として用いられ、かつ焼入れ性を向上させる元素で
あって、大型トラツクリンクのような大断面を有する走行用部品においても芯部
まで焼入れ組織とするためには0.65%以上含有させる必要があり、下限を0
.65%とした。しかし必要以上に含有させると水焼入れにおいて割れが発生し
易くなるので、上限を1.20%とした。 Crは、Mnと同様に焼入れ性を高め、かつ炭化物を形成して耐摩耗性を向上
させる元素であって、走行用部品として必要な焼入れ性と耐摩耗性を得るには、
0.90%以上含有させる必要があり、下限を0.90%とした。しかし多く含
有させると炭化物が粗大化し、かつ硬い炭化物が生成し、かえって焼入れ性と耐
摩耗性を損なうので、上限を2.0%とした。 【0010】 Moは、本発明鋼の変態応力を緩和し、水焼入れを可能とする優れた焼入れ性
と、靭性および焼もどし軟化抵抗を高め、さらに微細な炭化物を生成して耐摩耗
性を向上させる、本発明においては最も重要な元素であって、これらの効果を得
るには少くとも0.36%以上含有させる必要があり、下限を0.36%とした しかし必要以上に多く含有させるとベイナイトノーズが後退し、水焼入れ時に
焼き割れが発生し易くなり、かつMoは高価な元素であるので、上限を0.49
%とした。 VおよびNbは、炭窒化物を生成するとともに結晶粒を微細化し、強度と靭性
を向上させる元素であって、これらの効果を得るには0.05%以上含有させる
必要があり下限を0.05%とした。しかしVおよびNbはともに0.30%を
超えて含有させても効果の向上が小さいので、上限を0.30%とした。 Sは、MnSを生成して被削性を改善する元素であって、Pbは、鋼中におい
て単独あるいは化合物を形成し、切削時に切欠き効果と、潤滑作用により切削抵
抗を減少させて工具寿命、切屑の破砕性を著しく改善する元素である。しかし、
SおよびPbは、その含有量が多くなると機械的性質を損なうものであるから、
Sは0.035%、Pb:0.15%とその上限を規制した。 【0011】 表1は、本発明による高靭性低合金鋼の実施例の化学成分を、対比した比較鋼
の化学成分とともに記載した表であって、供試鋼の鋼は前記第1発明鋼、
は前記第2発明鋼、C鋼、D鋼は前記第3発明鋼であり、比較鋼のうち、W鋼は
SNCM431に基く鋼、Xは本発明鋼に比較し、Moの含有量の低いSCM4
30に基く鋼、Y鋼は本発明におけるCおよびMo含有量の下限以下の量のC、
Moを添加した比較鋼、Z鋼は本発明におけるMn、Moの含有量の下限以下の
量のMn、Moを添加した比較鋼である。なお、本発明鋼のA〜鋼および比較
鋼のX〜Z鋼の欄に記載のNi量は、通常電気炉溶解において不純物として含有
されるNi量を示したものである。 また本発明中A鋼、B鋼およびC鋼と比較鋼のW〜Z鋼の欄に記載のS量も同
様に電気炉溶解において不純物として含有されるS量である。 【0012】 【表1】 【0013】 上記表1に記載の化学成分を有する鋼を鋳造後、圧延比50以上で直径50mm
に熱間圧延を施して供試鋼とし、これに焼入れ、焼もどし処理を行い、焼入れ時
焼もどし時の硬さ、引張り強さ、伸び、絞り、シャルピー衝撃値などの機械的性
質を測定した。その結果を表2に示す。なお焼入れ、焼もどし温度は、比較鋼中
従来鋼であるW鋼については、従来技術に基いて880℃に加熱して油焼入れを
行い、次いで480℃で焼もどし処理を行い、本発明鋼および残りの比較鋼につ
いては、850℃に加熱して水焼入れを行い、次いで560℃で焼もどし処理を
行った。なお、本発明の焼入れ焼きもどし後の組織は、全て焼もどしマルテンサ
イトと焼もどしベイナイトの混合組織であった。ここで本発明鋼および比較鋼中
のX鋼、Y鋼およびZ鋼の焼入れ時の冷却速度は29℃/sec、W鋼の焼入れ時
の冷却速度は、5℃/secであった。また引張り強さ、伸び、絞りについては、
JIS4号試験片を用いて測定し、衝撃値はJIS3号試験片を用いて測定した
【0014】 【表2】 【0015】 表2から明らかなように、本発明鋼は、焼入れ硬さがHB475〜495、焼
もどし硬さがHB363〜377の範囲内に、引張り強さが115〜124kg・
f/mm2の範囲内に、伸びが12.4〜15.8の範囲内に、絞りが41.9
46.3の範囲内に、シャルピー衝撃値が7.7〜10.1kg・f−m/cm2
範囲内にあるのに対し、従来鋼のW鋼(SNCM431)は880℃で焼入れ、
480℃で焼もどしという高温焼入れ、低温焼もどしを施した結果、焼入れ硬さ
はHB485、焼もどし硬さはHB370であり、引張り強さは119kg・f/
mm2と強度については優れているが、シャルピー衝撃値については6.9kg・f
−m/cm2と靭性については低い。 また、比較鋼中の従来鋼であるX鋼(SCM430)およびその他の比較鋼で
あるY鋼およびZ鋼は850℃で水焼入れ、560℃で焼もどしを施した結果焼
入れ硬さはHB385〜446、焼もどし硬さHB297〜342とW鋼に比べ
て低く、かつ、引張り強さについても72〜101kg・f/mm2とW鋼に比べて
低く、前記W鋼や本発明鋼に比べて強度についても劣っている。 前記の従来鋼、比較鋼に対して本発明鋼であるA〜鋼はいずれも850℃と
いう低い温度で水焼入れし、かつ560℃という高い温度で焼もどしを施しても
焼入れ硬さはHB475〜495、焼もどし硬さはHB363〜377と、1.
8%ものNiを含有する従来鋼であるW鋼と同等もしくはそれ以上の硬さを有す
るものであり、かつ引張り強さについても115〜124kg・f/mm2とW鋼以
上の優れた強度を有するものである。されに本発明鋼は高温もどしを施したこと
によりシャルピー衝撃値が7.7〜10.1kg・f−m/cm2と靭性についても
W鋼に比べて大幅に優れており、本発明鋼は高強度と高靭性を有するものである
ということができる。 【0016】 【表3】 【0017】 表3は、表1に示した供試鋼の焼入れ性について測定をした結果を示す。これ
らの測定値は前記熱間圧延片からジョミニー試験片を作製し、焼入れ端から1. 5mm、3mm、5mm、8mm、11mm、13mm、15mm、25mmの各距離の部分の硬
さを測定したものである。 表3から明らかなように、従来鋼であるX鋼および比較鋼であるY鋼、Z鋼が
従来鋼Wに比して焼入れ硬さが低いのに対して、本発明鋼であるA〜鋼はW鋼
と同等あるいはそれ以上の硬さを有することが明らかであり、本発明鋼は焼入れ
性についても優れていることがわかる。 次に図1に本発明鋼中のA鋼の低温靭性を、従来鋼のW鋼とともに測定した結
果を比較して示す。低温靭性はJIS4号試験片を作製し、20℃〜−80℃の
低温域での供試鋼のシャルピー衝撃値を測定したものである。 図1から明らかなように、従来鋼であるW鋼の−40℃におけるシャルピー衝
撃値が5.2kg・f−m/cm2であるのに対し、本発明鋼であるA鋼7.3kg
・f−m/cm2であって、W鋼に比して大幅に高くなっており、本発明鋼は低温
靭性についても優れていることがわかる。 【0018】 次に本発明鋼の被削性を、A鋼、C鋼、D鋼につき、従来鋼であるW鋼の被削
性と対比する。この対比試験は、前記各供試鋼について焼入れ、焼もどし処理を
施したものから、直径40mm、長さ10mmの素材を用意し、これに定盤上に固定
し、直径5mm、のSKH9ストレートドリルを用いて、回転数1140rpm、
推力30kg(重錘自由落下法)により、ドリル穿孔性を測定したものである。な
お表4には従来鋼であるW鋼のドリル穿孔性を100とした指数で示した。 【0019】 【表4】 【0020】 表4により明らかなように、本発明鋼はいずれも従来鋼であるW鋼に比して優
れた被削性を有しており、特に快削性元素であるS、Pbを含有せしめたC鋼お
よびD鋼は、W鋼に比して大幅に被削性を改善したものとなっている。 【0021】 【発明の効果】 本発明は産業車両の走行用、駆動用部品等に用いられる高靭性低合金鋼におい て、Cを、要求強度を確保するため、および靭性を低下させずかつ熱処理による
歪の発生を阻止する範囲の0.32〜0.40%、Siを、素地の強度を向上し
かつ焼もどし軟化抵抗を有せしめるため、および被削性を損なわない範囲の0.
15〜0.65%、Mnを、大断面を有する鍛造部品の芯部まで焼入れ組織とす
るため、および焼入れにあたり割れの発生を阻止する範囲の0.65〜1.20
%、Crを、大断面を有する鍛造部品の焼入れ性を得るとともに微細な炭化物を
形成して耐摩耗性を得るため、および前記炭化物を粗大化せしめない範囲の0.
90〜2.0%を含有させるとともに、Moを、変態応力を緩和し、水焼入れを
可能とする焼入れ性と、靭性および焼もどし軟化抵抗を高め、さらに微細な炭化
物を生成して耐摩耗性を向上するため、およびベイナイトノーズが後退して水焼
入れ時に焼き割れが発生しない範囲の0.36〜0.49%を含有させ、高い量
のCの存在下において水焼入れ時に大きな変態応力、熱応力を被焼入れ材に加え
るNiを積極的に添加することなく、不純物量程度に止めたことにより、焼入れ
時の変態応力を緩和させて水焼入れを可能としたものであって、従来産業車両の
走行用、駆動用部品に用いられていたSNCM431に比して低い810〜88
0℃の温度に加熱し、この温度から水焼入れ等によって冷却速度25℃/sec
上で焼入れし、次いで540〜580℃という高い温度で焼もどしを行っても、
従来鋼と同等もしくはそれ以上の硬さおよび機械的性質を有し、靭性については
大幅に優れているという効果を有する。 【0022】 これに対し、比較鋼中のX鋼、およびY,Z鋼は、Niを不純物量程度しか含
有しないが、本発明鋼に比較してMo含有量が低く、さらにY鋼はC含有量、Z
鋼はMo含有量が低く、その結果、SNCM431であるW鋼に比較して、強度
、硬さが著しく劣っている 従って、本発明鋼は、従来鋼であるSNCM431
と同等以上の強度を確保しつつ、より優れた靭性を有する鋼であるといえる。 また本発明においては、さらに、V:0.05〜0.30%,Nb:0.05
〜0.30%の1種または2種を含有せしめることにより、炭窒化物を生成させ
るとともに結晶粒を微細化させ、これにより低温靭性をさらに向上せしめること
ができ、あるいはS:0.035%以下、Pb:0.15%以下のうちの1種又 は2種を含有せしめることにより、切削時の切欠き効果と潤滑作用により切削抵
抗を減少させ、被削性を向上させることができる。 さらに本発明鋼の焼もどしマルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合組織は
、C、Si、Mn、Cr、Moを前記所定の量含有する鋼を溶製後成形して、例
えば電気炉等の熱処理炉により810〜880℃に加熱し、水焼入れ等の手段に
より25℃/sec 以上の冷却速度で焼入れすることによりマルテンサイトとベイ
ナイトの混合組織が得られ、その後540〜560℃で焼もどしを施すことによ
り得られる組織であって、従来鋼であるSNCM431の場合のように、焼入れ
焼もどしを施した組織がマルテンサイトの一相組織ではないので、本発明鋼は優
れた靭性を有するとともに、マルテンサイトの析出が抑制されているため変態応
力が緩和されて焼割れの発生が少くされている鋼である。
【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の実施例の鋼と比較鋼の低温靭性を示す試験温度とシャルピー衝撃値と
の関係の線図 【図2】 本発明鋼の用途として適したトラツクリンクの分解図 【図3】 トラツクリンクの組立図 【符号の説明】 1トラツクリンク 2ブツシュ孔 4ブツシュ 5ピン 8シュー

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】重量比にして、C:0.32〜0.40%,Si:0.15〜0
    .65%,Mn:0.65〜1.20%,Cr:0.90〜2.00%,Mo:
    0.36〜0.49%を含有し、残部Feならびに不純物元素からなり、組織が
    焼もどしマルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合組織からなり、水焼入れ時
    に焼き割れが無く、高靭性、高強度でかつ、優れた焼入れ性を有することを特徴
    とする高靭性低合金鋼。 【請求項2】重量比にして、C:0.32〜0.40%,Si:0.15〜0.
    65%,Mn:0.65〜1.20%,Cr:0.90〜2.00%,Mo:
    .36〜0.49%と、さらにV:0.05〜0.30%,Nb:0.05〜0
    .30%のうち1種ないし2種を含有し、残部Feならびに不純物元素からなり
    、組織が焼もどしマルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合組織からなり、水
    焼入れ時に焼き割れが無く、高靭性、高強度でかつ、優れた焼入れ性を有する
    とを特徴とする高靭性低合金鋼。 【請求項3】重量比にして、C:0.32〜0.40%,Si:0.15〜0.
    65%,Mn:0.65〜1.20%,Cr:0.90〜2.00%,Mo:
    .36〜0.49%と、さらにS:0.035%以下、Pb:0.15%以下の
    うち1種ないし2種を含有し、残部Feならびに不純物元素からなり、組織が焼
    もどしマルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合組織からなり、水焼入れ時に
    焼き割れが無く、高靭性、高強度でかつ、優れた焼入れ性を有することを特徴と
    する高靭性低合金鋼。

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