JP2546729Y2 - タワークレーンクライミング用治具 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、タワークレーンのク
ライミング作業時に使用する治具に関するものである。
特にタワークレーンのマストをせり揚げる際、そのマス
トを建造中の建物の梁に乗せ掛け、固定させる場合に使
用する治具に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】高層建築物などの建設に、タワークレー
ンが用いられていることは周知である。ところで、この
タワークレーンには、主柱部、すなわちマストをテレス
コープ型に構成し、このマストを伸縮させたり、あるい
はマストにクレーンブームを搭載した旋回体と、この旋
回体をマストに沿って上下昇降させる昇降装置とを組み
付け、この昇降装置を作動して、前記クレーンブームを
搭載した旋回体をいわゆるセルフクライミングさせて高
くしていくように構成したものがある。

【０００３】ちなみに、図４に示すのは、ベース受け架
台１ａを有するマスト１と、クレーンブーム２を搭載し
た旋回体３、すなわちクレーンを搭載した旋回体３と、
この旋回体３をマスト１に沿って上下させる昇降装置４
との主要構成部からなる一般的なセルフクライミング式
のタワークレーンの概略構造を示す側面図である。この
タワークレーンにおいて、昇降装置４は、上部昇降フレ
ーム４ａと、下部昇降フレーム４ｂとによって構成さ
れ、その上部昇降フレーム４ａと、下部昇降フレーム４
ｂとの間には、油圧駆動により伸縮作動する昇降機構
（図示略）が組み込まれている。そして、上部昇降フレ
ーム４ａは、マスト１に外挿されたガイドマスト１ｂを
介して前記旋回体３と一体に構成され、上部昇降フレー
ム４ａと、下部昇降フレーム４ｂとを交互にマスト１に
係合させるとともに、前記昇降機構を作動させることに
より、旋回体３を尺取虫の要領で、クライミングさせる
ように構成されている。

【０００４】そこで、このクレーンの高さ、すなわち旋
回体３の位置をさらに高くする場合は、前記昇降装置４
を構成する上部昇降フレーム４ａと、マスト１のベース
受け架台１ａを建造中の建物５の梁５ａに乗せかけて、
マスト１自体をせり揚げてクレーン高さを上昇させるよ
うにしている。図５以下図６、図７、図８は、そのマス
ト１自体をせり揚げ操作する場合の手順を示すものであ
る。以下、その手順を図面に基づいて説明する。

【０００５】まず、昇降装置４の上部昇降フレーム４ａ
を、建造中の建物５の梁５ａ、具体的には、図５に示す
ように最上層の梁５ａに固定させる。ついで、下部昇降
フレーム４ｂを上昇させてマスト１をせり揚げる。そし
て数回下部昇降フレーム４ｂを上下させ、いわゆる尺取
虫の要領でマスト１をせり揚げる。マスト１のベース受
け架台１ａが、図６に示すように、建物５の第２層の梁
５ｂの高さまでせり揚げたところで、そのベース受け架
台１ａを梁５ｂに固定させる。

【０００６】マスト１のベース受け架台１ａを梁５ｂに
固定させたのち、昇降装置４の上部昇降フレーム４ａ
と、下部昇降フレーム４ｂとを交互に上下操作し、マス
ト１に沿って旋回体３をクライミングさせる。図７はそ
の状態を示す側面図である。図８は、さらに旋回体３を
マスト１の最上位までせり揚げた状態を示すものであ
る。

【０００７】ところで、マスト１をせり上げる際には、
前記図５および図６で説明したように、昇降装置４の上
部昇降フレーム４ａと、マスト１のベース受け架台１ａ
とを建造中である建物５の梁５ａないし５ｂ上に、それ
ぞれ一時的に固定させる必要がある。すなわちマスト１
を垂直状態に保って梁５ａ、５ｂ上に固定させる必要が
ある。

【０００８】そこで、従来は、どのようにして固定させ
ていたかと言うと、まず、上部昇降フレーム４ａを梁５
ａ上に固定させる場合は、図９に示す要領で固定させて
いた。すなわち、上部昇降フレーム４ａの下に、Ｈ形鋼
材等をもって構成した受けフレーム６を配設し、この受
けフレーム６の左右両端部を、梁５ａ上に配設したフレ
ーム受け枕７（図面には簡略のため右側のみを示す）に
乗せ掛ける要領で固定させるようにしていた。すなわち
受けフレーム６と、フレーム受け枕７との２つの治具を
用いて固定させていた。その際、梁５ａ上に設置したフ
レーム受け枕７に対する受けフレーム６の両端部を芯出
しする必要から、言葉を換えていえば、マスト１を垂直
状態に、しかもマスト位置を偏心させることなく、乗せ
掛けるため、従来は、図示のように、受けフレーム６の
両端に、チェンブロック８の複数基を連結し、この複数
基のチェンブロック８を操作することにより、受けフレ
ーム６を前後左右に移動調節して芯出し、ないし位置の
調節を行っていた。

【０００９】また、マスト１の下端部、すなわちベース
受け架台１ａを梁５ｂ上に固定させる場合も、前記上部
昇降フレーム４ａを固定させる場合とほぼ同様な要領で
固定させていた。図１０は、その固定要領を示す正面図
である。なお、この場合、ベース受け架台１ａは、図示
のように前後左右に、Ｈ形鋼からなるアーム１ｃをそれ
ぞれ張り出しているため、この４本のアーム１ｃを梁５
ｂ上に配設したフレーム受け枕７にそれぞれ乗せ掛ける
要領で固定させていた。もちろんこの際の芯出し、ない
し位置決めも、前記上部昇降フレーム４ａの場合と同様
に、複数のチェンブロック８を用いて行っていた。

【００１０】

【考案が解決しようとする課題】以上説明したように、
従来において、マスト１をせり揚げ、そのせり揚げたマ
スト１を建物５側の梁５ａ、５ｂ上に乗せ、芯出しを行
い垂直状態に固定させるための作業には、いちいちチェ
ンブロック等を用いるなどの、きわめて煩雑な作業があ
り、そのため全体のクライミング作業にかなりの時間が
掛かり、工期等の長期化を招くといった問題点があっ
た。この考案は、このようなクライミング作業に要する
手間を省力し、かつ時間短縮を可能とする特殊なクライ
ミング用治具を提供することを目的とするものである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成する手段
として、この考案は、次のような芯出し機能を有するク
ライミング用治具を構成したことにある。下端部にベー
ス受け架台を有するマストと、このマストにクレーンを
搭載した旋回体と、旋回体をマストに沿って昇降させる
上部昇降フレームと、下部昇降フレームからなる昇降装
置とを装備したタワークレーンであって、前記マストを
クライミングさせるため、前記昇降装置の上部昇降フレ
ームと、前記マストのベース受け架台とを建物の梁上
に、受けフレームおよびフレーム受け枕からなる治具を
用いて固定させるに際し、前記受けフレームおよびフレ
ーム受け枕との間に、傾斜摺動面を有するガイドプレー
トの１対を、その傾斜摺動面が左右対称となるようにし
て対設してガイド治具を設け、このガイド治具の左右ガ
イドプレート間に、前記受けフレームないしフレーム受
け枕を挟み込むようにして乗せ掛け、ないし落とし込ま
せることによって調芯機能を発揮させて固定することが
できるように構成したことにある。

【００１２】

【作用】この考案は、前記したように、傾斜摺動面を有
する１対のガイドプレートからなるガイド治具を介し
て、受けフレームないしフレーム受け枕を梁上に固定さ
せるようにしているので、従来のようにチェンブロック
等によって位置決め作業を行う必要がない。

【００１３】

【実施例】さらに、図面に示す実施例に基づいて、この
考案の構成、作用を具体的に説明する。図１は、昇降装
置４を構成する上部昇降フレーム４ａを梁５ａ上に乗せ
掛け固定させる場合を示す。まず先に説明したように、
上部昇降フレーム４ａを梁５ａ上に乗せ掛け固定させる
場合、上部昇降フレーム４ａの下に、２つの治具、すな
わち受けフレーム６と、あらかじめ梁５ａ上に墨出して
配置したフレーム受け枕７を介して固定させることは従
来通りである。

【００１４】この考案は、この受けフレーム６と、フレ
ーム受け枕７との２つの治具の間に、位置決め機能、別
の言葉で言えば、調芯機能をもったガイド治具１１を介
在させて固定させるものである。この実施例でガイド治
具１１は、図示のように、Ｈ形鋼を素材とし、その両端
部の上面に、傾斜摺動面１２を形成したガイドプレート
１３および１３の１対を、それぞれ傾斜摺動面１２およ
び１２が左右対称となるようにして対設して構成してい
る。

【００１５】なお、この図面で示す実施例では、受けフ
レーム６の左右両端部の下面にも、前記ガイド治具１１
に対設した傾斜摺動面１２を有するガイドプレート１３
および１３の１対をそれぞれ対設させて取り付け、双方
が咬み合う形で乗せ掛けられ、左右および前後方向が同
時に規制されるように構成している。また実施例では、
その組み立て手順として、まずガイド治具１１の下面
に、具体的には、ガイド治具１１の両端部の下面に、そ
れぞれフレーム受け枕７を取り付ける。そして梁５ａ上
の墨出しした位置に、まずフレーム受け枕７を配置す
る。ついで、上部昇降フレーム４ａの下面に取り付けた
受けフレーム６を、昇降装置４を操作し、すなわち上部
昇降フレーム４ａを降下させ、ガイド治具１１上に乗せ
掛ける手順をもって組み立てるようにしている。

【００１６】図２は、受けフレーム６と、梁５ａ上に配
置されたフレーム受け枕７との間に、ガイド治具１１を
介在させて、双方を固定させ組み立てを完了した状態を
示す固定部の正面図で、１４は、フレーム受け枕７に対
するガイド治具１１の結合用ボルトであり、１５は、ガ
イド治具１１に対する受けフレーム６の結合用ボルトで
ある。

【００１７】次に図３は、マスト１の下端部、すなわち
ベース受け架台１ａを梁５ｂ上に乗せ掛け固定させた場
合の状態を示す固定部の側面図である。なお、この場合
は、図１０で示したように、ベース受け架台１ａは、Ｈ
形鋼からなるアーム１ｃを左右前後に張り出しているた
め、このアーム１ｃのそれぞれを直接、梁５ｂ上に配設
したフレーム受け枕７上に乗せ掛け、固定させるように
した。そのため図示のように、フレーム受け枕７の上面
に、傾斜摺動面１２を形成した１対のガイドプレート１
３および１３を、その傾斜摺動面１２および１２が対称
となるようにして対設し、フレーム受け枕７と、いわゆ
るガイド治具とを兼用させた構成とした。

【００１８】したがってフレーム受け枕７をあらかじめ
墨出しした梁５ｂ上の位置に配置し、その上にマスト１
のベース受け架台１ａを降下させ、具体的にはベース受
け架台１ａより張り出したアーム１ｃを乗せ掛けること
により、自動的にベース受け架台１ａが位置決めされて
セットされるように構成した。すなわち、せり揚げたマ
スト１が垂直状態で、しかも偏心することなく建物側の
梁上に固定される構成となっている。

【００１９】

【考案の効果】この考案によるタワークレーンのクライ
ミング用治具は、以上実施例を通して説明したように構
成したので、せり揚げたマストを所定高さ位置に固定さ
せるに際し、従来のようにチェンブロック等を用いて位
置決め作業を行う必要がない。そのため次のような効果
を発揮することができる。 （１）マストのせり揚げ固定作業が効率的に展開され
る。その結果、高層建築物等の建設の工期短縮に役立
つ。 （２）ガイド治具としての構成は、きわめて単純で、し
かも位置決めないし調芯機能を有するため、せり揚げら
れたマストは、自動的に垂直に保持される。その結果、
タワークレーンとして建造中の建物により安全に組み込
まれることになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案によるガイド治具を用いてタワークレ
ーンの上部昇降フレームを建造中の梁に乗せ掛け固定さ
せる方法を示す説明図である。

【図２】受けフレームと、梁上に配置したフレーム受け
枕との間に、この考案のガイド治具を介在させ、双方を
固定させた状態を示す固定部の正面図である。

【図３】マストのベース受け架台を、梁上に乗せ掛け固
定させた状態を示す固定部の正面図である。

【図４】セルフクライミング式のタワークレーンの構造
を示す側面図である。

【図５】タワークレーンのマストをせり揚げるため、タ
ワークレーンの昇降装置における上部昇降フレームを建
造中の梁上に乗せ掛け、固定し、昇降装置を作動してマ
ストをせり揚げている状態を示す側面図である。

【図６】せり揚げたマストの下端部におけるベース受け
架台を建造中の梁上に乗せ掛けた状態を示す側面図であ
る。

【図７】マストに組み付けられているクレーンを搭載し
た旋回体を昇降装置を作動して尺取虫の要領でクライミ
ングさせている状態を示す側面図である。

【図８】クレーンを搭載した旋回体をマストの最上部ま
でクライミングさせた状態を示す側面図である。

【図９】昇降装置における上部昇降フレームを建造中の
梁に乗せ掛け、固定させるための作業手順を示す説明図
である。

【図１０】マストの下端部におけるベース受け架台を建
造中の梁に乗せ掛け固定させるための作業手順を示す説
明図である。

【符号の説明】

１ マスト １ａ ベース受け架台 ２ ブーム ３ 旋回体 ４ 昇降装置 ４ａ 上部昇降フレーム ４ｂ 下部昇降フレーム ５ 建物 ５ａ、５ｂ 梁 ６ 受けフレーム ７ フレーム受け枕 ８ チェンブロック １１ ガイド治具 １２ 傾斜摺動面 １３ ガイドプレート １４、１５ 結合用ボルト

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ベース受け架台を有するマストと、この
   マストに、クレーンを搭載した旋回体と、旋回体をマス
   トに沿って昇降させる上部昇降フレームと、下部昇降フ
   レームとからなる昇降装置とを装備したタワークレーン
   であって、 前記マストをクライミングさせるため、前記昇降装置の
   上部昇降フレームと、前記マストのベース受け架台と
   を、それぞれ建物の梁上に受けフレームと、フレーム受
   け枕からなる治具を用いて固定させるに際し、前記受け
   フレームおよびフレーム受け枕との間に、傾斜摺動面を
   有するガイドプレートの一対を、その傾斜摺動面が左右
   対称となるようにして配設してなるガイド治具を介在さ
   せて固定するように構成したことを特徴とするタワーク
   レーンクライミング用治具。