JP2543999Y2 - 構造用集成材 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この考案は、複数の木製ラミナを集成接着してなる集
成材に係わり、特に、木造建築物の梁や柱等の構造部材
として用いて好適な構造用集成材に関するものである。

「従来の技術およびその課題」 多数の木製ラミナを集成接着してなる集成材は、従来
より各種分野で広く用いられているが、近年において
は、比較的大規模な木造建築物の構造部材すなわち梁や
柱としても用いられるようになってきている。

しかしながら、従来における集成材の構造特性、特に
剪断特性は必ずしも充分とはいえないものであり、した
がって、集成材を大規模建築物の梁や柱等の構造部材と
して用いる場合には大断面とせざるを得ない、という問
題がある。

この考案は上記の事情に鑑みてなされたもので、小断
面であっても充分な剪断特性を有し、梁や柱等の構造部
材として用いて好適な構造用集成材を提供することを目
的としている。

「課題を解決するための手段」 第１の考案は、木造建築物の梁や柱等の構造部材とし
て用いられる構造用集成材であって、複数の木製ラミナ
が集成接着されてなるラミナ積層体の外層部に、炭素繊
維等の高剛性繊維の長繊維をそのラミナ積層体の長さ方
向と交差する方向にかつラミナ積層体の全周を覆った状
態でラミナ積層体の全長にわたって配することにより高
強度化され、これら長繊維を介して全周に、長繊維が配
設されたラミナ積層体を保護する燃え代ラミナが、前記
長繊維を挟み込むように接着されてなることを特徴とし
ている。

第２の考案は、木造建築物の梁や柱等の構造部材とし
て用いられる構造用集成材であって、複数の木製ラミナ
が集成接着されてなるラミナ積層体の外層部に、炭素繊
維等の高剛性繊維の長繊維をそのラミナ積層体の長さ方
向と同じ方向及び長さ方向と交差する方向にかつラミナ
積層体の全周を覆った状態でラミナ積層体の全長にわた
って配することにより高強度化され、これら長繊維を介
して全周に、長繊維が配設されたラミナ積層体を保護す
る燃え代ラミナが、前記長繊維を挟み込むように接着さ
れてなることを特徴としている。

「作用」 第１の考案の集成材は、ラミナ積層体の長さ方向と交
差する方向にかつ全周を覆った状態で配された高強度繊
維もしくは高剛性繊維の長繊維によって、ラミナ積層体
の全周にて、外力等によって生じる剪断ひび割れの発生
およびその進展が阻止され、したがって剪断特性が向上
したものとなる。

また、長繊維が、ラミナ積層体の全周を覆って設けら
れ、これら長繊維を介して燃え代ラミナが、全周に接着
されているので、あらゆる方向からの剪断荷重に対して
補強されたものとなり、さらに、燃え代ラミナによって
長繊維が確実に保護される。

第２の考案の集成材は、ラミナ積層体の長さ方向と同
じ方向及び長さ方向と交差する方向にかつ全周を覆った
状態で配された高強度繊維もしくは高剛性繊維の長繊維
によって、ラミナ積層体の全周にて、外力等によって生
じる曲げ変形、剪断ひび割れの発生およびその進展が阻
止され、したがって曲げ特性および剪断特性が向上した
ものとなる。

また、長繊維が、ラミナ積層体の全周を覆って設けら
れ、これら長繊維を介して燃え代ラミナが、全周に接着
されているので、あらゆる方向からの剪断荷重に対して
補強されたものとなり、さらに、燃え代ラミナによって
長繊維が確実に保護される。

「実施例」 以下、この考案の実施例を図面を参照して説明する。

まず、第１図ないし第３図を参照して第１実施例を説
明する。

この第１実施例の集成材Ｂは、梁として用いられるも
のであるが、この第１実施例の集成材Ｂは、第１図、第
２図に示されるように、複数枚（図示の例では10枚）の
ラミナ11が上下に積層されてなるラミナ積層体12の外側
に、化粧と燃え代を兼ねた燃え代ラミナ13がそれぞれ接
着されたものとなっている。そして、上記のラミナ積層
体12に対して繊維布14が全周にわたって巻き付けられる
ことによって、繊維布14がラミナ積層体12を形成してい
る各ラミナ11と最外層の燃え代ラミナ13との間に挟み込
まれて接着された構成となっている。

その繊維布14は、両方向の長繊維が互いにほぼ直交す
る状態で織られて形成されたもので、この繊維布14は、
一方向の長繊維の向きがラミナ積層体12の長さ方向と交
差する方向に合致し、したがって他方向の長繊維の向き
が長さ方向と同じ方向に合致するような状態で配され、
かつ第３図に模式的に示すように、ラミナ積層体12の下
面において重ねられた状態で巻き付けられるようになっ
ている。

この第１実施例の集成材Ｂにおいては、繊維布14を形
成している長繊維のうち、ラミナ積層体12の長さ方向と
交差する方向に配された長繊維によって剪断特性が高め
られ、あわせて、ラミナ積層体12の上面および下面にお
いてその長さ方向と同じ方向に配された長繊維によって
曲げ変形が阻止され、したがって曲げ特性も高められた
ものとなっている。しかも、ラミナ積層体12の下面にお
いて繊維布14が重ねられているので、一般に大きな引張
力を受ける下部における長繊維の量が上部における長繊
維の量に比して倍増したものとなっており、このため曲
げ特性が十分に高められたものとなっている。

なお、この第１実施例において、ラミナ積層体12に対
する繊維布14の巻き付けは第４図に示すようにしても良
い。すなわち、繊維布14を２枚に分割し、それらをラミ
ナ積層体12の上面および下面においてそれぞれ重ねるよ
うにしてラミナ積層体12を両側から包み込むようにして
も良い。この場合、ラミナ積層体12の上面および下面の
双方において長繊維の量が倍増するから、曲げ荷重の方
向が限定されない場合において好適である。

さらに、上記の集成材Ｂでは予めメッシュ状に織られ
た繊維布14を用いたが、その変形例として第５図に示す
ものも考えられる。第５図に示す集成材B1は、まずラミ
ナ積層体12の上面および下面にラミナ積層体12の長さ方
向と同じ方向に直線状に長繊維15を配した後、ラミナ積
層体12の長さ方向と交差する方向に長繊維16を螺旋状に
巻き付けるようにしたものである。この場合、巻き付け
られた長繊維16によって剪断特性が高められるととも
に、ラミナ積層体12の上面、下面に配された長繊維15に
よって曲げ特性が高められることは上記の集成材Ｂと全
く同様である。なお、曲げ特性を高める必要のない場合
にあっては、上記の長繊維15を省略しても良い。また、
この場合において、長繊維16の巻き付けのピッチ（相互
間隔）はこの集成材B1に要求される強度等に応じて適宜
設定すれば良く、さらに、集成材B1の形態も適宜で良
い。

次に、第６図はこの考案の第２実施例を示すものであ
る。この第２実施例の集成材Ｃは柱として用いられるも
のであって、この集成材Ｃは、第６図に示されるよう
に、複数枚（図示の例では７枚）のラミナ21が集成接着
されてなるラミナ積層体22の外側に化粧と燃え代を兼ね
た燃え代ラミナ23が接着されたものとなっており、ラミ
ナ積層体22とそれらの燃え代ラミナ23との間に、それら
の長さ方向と交差する方向（この場合は水平方向）に長
繊維24が巻き付けられた構成となっている。この第２実
施例の集成材Ｃでは、それらの長繊維24によって剪断ひ
び割れの発生およびその進展が阻止され、したがって剪
断特性が高められたものとなっている。

さらに、第７図はこの考案の第３実施例を示すもので
あり、この第３実施例の集成材Ｄは、第２実施例の場合
と同様に柱として用いられるものであるが、第２実施例
における長繊維24に代えて、第１実施例の集成材Ｂの場
合と同様の繊維布25がラミナ積層体22に巻き付けられた
構成とされたものである。この場合、その繊維布25のう
ちのラミナ積層体22の長さ方向と交差する方向に配され
た長繊維によって剪断特性が高められるとともに、長さ
方向と同じ方向に配された長繊維により曲げ特性も同時
に高められるものとなっている。

「考案の効果」 以上で詳細に説明したように、この考案の構造用集成
材によれば、下記の効果を得ることができる。

第１の考案の構造用集成材は、ラミナ積層体の縦断層
内に高強度繊維もしくは高剛性繊維の長繊維をそのラミ
ナ積層体の長さ方向と交差する方向にかつラミナ積層体
の全長にわたって配して、それら長繊維をラミナ間に挟
み込んで接着してなるものであるので、それらの長繊維
によって剪断ひび割れの発生およびその進展が阻止さ
れ、小断面であっても十分な剪断特性を有する、という
効果を有し、したがって大規模木造建築物の梁や柱等の
構造部材として用いて好適である。

第２の考案の構造用集成材は、ラミナ積層体の縦断層
内に高強度繊維もしくは高剛性繊維の長繊維をそのラミ
ナ積層体の長さ方向と同じ方向及び長さ方向と交差する
方向にかつラミナ積層体の全長にわたって配して、それ
ら長繊維をラミナ間に挟み込んで接着してなるものであ
るので、それらの長繊維によって曲げ変形、剪断ひび割
れの発生およびその進展が阻止され、小断面であっても
十分な曲げ特性及び剪断特性を有する、という効果を有
し、したがって大規模木造建築物の梁や柱等の構造部材
として用いて好適である。

また、第１及び第２の考案の構造用集成材によれば、
長繊維をラミナ積層体の全周を覆った状態で配するとと
もに、この長繊維を介して燃え代ラミナを全周に接着さ
せたものであるので、長繊維によってあらゆる方向から
の剪断荷重に対して補強を行うことができ、さらに、全
周に設けた燃え代ラミナによって長繊維が配されたラミ
ナ積層体を火災等の火災から保護することができ、これ
により、火災によって長繊維が焼失することによる集成
材の大幅な強度ダウンを防止することができる。即ち、
燃え代ラミナによって長繊維を火災等の火災から確実に
保護して、高強度を維持させることができる。また、火
災によって表面が焦げたとしても、長繊維を挟み込むよ
うに接着された燃え代ラミナを取り換えるだけで、極め
て容易にラミナ積層体からなる構造部材を再生させるこ
とができ、極めて経済的である。また、全周が燃え代ラ
ミナによって覆われているので、木材ならではの装飾効
果を確実に得ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図はこの考案の第１実施例を示すもの
で、第１図は正面図、第２図は斜視図、第３図は繊維布
の巻き付けの形態を示す正面図である。第４図は繊維布
の巻き付けの形態の他の例を示す正面図である。第５図
は第１実施例の変形例を示す斜視図である。第６図はこ
の考案の第２実施例を示す斜視図である。第７図はこの
考案の第３実施例を示す斜視図である。 B,B1……集成材、11……ラミナ、12……ラミナ積層体、
13……燃え代ラミナ、14……繊維布、15,16……長繊
維、C,D……集成材、21……ラミナ、22……ラミナ積層
体、23……燃え代ラミナ、24……長繊維、25……繊維
布。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 中辻 照幸 東京都中央区京橋２丁目16番１号 清水 建設株式会社内 (72)考案者 藤崎 忠志 東京都中央区京橋２丁目16番１号 清水 建設株式会社内 (72)考案者 貫上 卓哉 東京都中央区京橋２丁目16番１号 清水 建設株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−551（ＪＰ，Ａ) 特開 昭49−61930（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−324（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−60609（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−226845（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−45629（ＪＰ，Ａ) 実開 昭61−128005（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭63−165021（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭55−47530（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭58−86340（ＪＰ，Ｕ)

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】木造建築物の梁や柱等の構造部材として用
   いられる構造用集成材であって、複数の木製ラミナが集
   成接着されてなるラミナ積層体の外層部に、炭素繊維等
   の高剛性繊維の長繊維をそのラミナ積層体の長さ方向と
   交差する方向にかつラミナ積層体の全周を覆った状態で
   ラミナ積層体の全長にわたって配することにより高強度
   化され、これら長繊維を介して全周に、長繊維が配設さ
   れたラミナ積層体を保護する燃え代ラミナが、前記長繊
   維を挟み込むように接着されてなることを特徴とする構
   造用集成材。
2. 【請求項２】木造建築物の梁や柱等の構造部材として用
   いられる構造用集成材であって、複数の木製ラミナが集
   成接着されてなるラミナ積層体の外層部に、炭素繊維等
   の高剛性繊維の長繊維をそのラミナ積層体の長さ方向と
   同じ方向及び長さ方向と交差する方向にかつラミナ積層
   体の全周を覆った状態でラミナ積層体の全長にわたって
   配することにより高強度化され、これら長繊維を介して
   全周に、長繊維が配設されたラミナ積層体を保護する燃
   え代ラミナが、前記長繊維を挟み込むように接着されて
   なることを特徴とする構造用集成材。