JP2542166Y2 - 自動車用リヤシートのリクライニング構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】自動車用リヤシートのリクライニ
ング構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】バックレストを該バックレストに固定さ
れたヒンジ部材によりシートクッションに固定された回
動軸まわりに回動可能に支持すると共に、バックレスト
の側面上部に操作レバーの操作により出没可能なピンを
設け、該ピンをバックレスト側方の車体側部材に設けた
傾斜角度調整位置の複数の調整孔に選択嵌装することに
よりバックレストの傾斜角度を調整し得るようにした装
置は既に開発されている（例えば実開昭６１−４５８４
６号公報参照）。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】上記の従来装置ではバ
ックレストの側面上部には操作レバーの操作により出没
可能なピンを設け、バックレスト側方の車体側部材には
上記ピンが嵌装される複数の調整孔を備えた傾斜角度調
整装置を取付けなければならず、傾斜角度調整装置が大
型化せざるを得ないと言う課題を有していた。

【０００４】本考案は２段階にしか調整できないが極め
て簡単な機構からなる自動車用リヤシートのリクライニ
ング構造を提供することを目的とするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本考案は、バックレスト
の上部をリヤバルクヘッド等の車体側部材に回動可能に
軸着し下部を前後方向に移動させることによりバックレ
ストの傾斜角度を変え得るようにした自動車用リヤシー
トのリクライニング装置において、バックレスト下部の
前後位置移動装置を、前後通路と該前後通路の前端部よ
り下降する縦通路とからなりシートクッションの側面後
部或は車体側部材に取付けられたＬ字状のスリットと、
上端部がバックレストの下部に回動可能に軸着され下端
部に上記Ｌ字状のスリット内を摺動するピンを備えたリ
クライニングレバーと、一端部がバックレストに係止さ
れ他端部が上記リクライニングレバーの中央部近傍に係
止された反転スプリングとから構成し、リクライニング
レバーのピンがＬ字状のスリットの縦通路の下端部近傍
にありバックレスト下部が後方位置にあるバックレスト
直立状態と上記リクライニングレバーのピンがＬ字状の
スリットの前後通路の後端部にありバックレスト下部が
前方位置にあるリクライニング状態との間の移行途中に
て上記反転スプリングがデッドポイントを越えて反転す
るようにしたことを第１の特徴とし、上記において、バ
ックレストの後面とリヤバルクヘッド等の車体側部材と
の間に、バックレストを後方に移動させるよう付勢する
付勢スプリングを設けたことを第２の特徴とするもので
ある。

【０００６】

【作用】上記により、バックレストが傾斜しているリク
ライニング状態のとき、リクライニングレバーを前方に
引張りリクライニングレバーの下端部に設けたピンをＬ
字状のスリットの前後通路中を前方に移動させ、該ピン
が前後通路の最前部に位置する折曲部に達したとき、上
記リクライニングレバーの前方への引張り力を保持した
ままバックレストを後方に押すと、上記リクライニング
レバーが反転スプリングの付勢力に抗して反時計回り方
向に回動しつつピンがＬ字状のスリットの縦通路を下降
し、該降下中に反転スプリングはデッドポイントを乗り
越えてリクライニングレバーを反時計回り方向に回動さ
せる付勢力に切換わるので、該付勢力によりバックレス
トの下部は後方即ちリヤバルクヘッド側に押しつけら
れ、バックレストは直立状態を保持する。

【０００７】次にバックレストが直立状態に保持されて
いるとき、バックレストの下部又はリクライニングレバ
ーを引張ると、リクライニングレバーは反転スプリング
の反時計回り方向の付勢力に抗して時計回り方向に回動
し、該リクライニングレバーの下端部に設けたピンがＬ
字状のスリットの縦通路中を上昇し、その上昇の間に反
転スプリングはデッドポイントを乗り越えてリクライニ
ングレバーを時計回り方向に回動させる付勢力に切換
り、リクライニングレバーの下端部のピンがＬ字状のス
リットの縦通路の最上部に位置する折曲部に達したと
き、上記バックレストの下部を後方へ押すことにより、
リクライニングレバーのピンは上記Ｌ字状のスリットの
前後通路中を後方へ移動し、後端部に達したところでバ
ックレストが傾斜したリクライニング状態に保持され
る。

【０００８】又、バックレストの後面とリヤバルクヘッ
ド等の車体側部材との間に、該バックレストを後方に移
動させるよう付勢する付勢スプリングを設けることによ
り、反転スプリングの付勢力を補い、バックレストのリ
クライニング状態から直立状態，直立状態からリクライ
ニング状態への移行がスムースに行われると共に、リク
ライニング状態及び直立状態をより安定に保持すること
ができる。

【０００９】

【実施例】図１は本考案を適用すべき自動車の後部斜視
図であって、１は自動車車体、２はリヤバルクヘッド、
３はリヤフロアの段差部、４は該リヤフロアの段差部３
に載置されたシートクッション５と上部が上記リヤバル
クヘッド２に回動可能に軸着され下部を前後位置移動装
置にて前後方向に移動し得るよう上記シートクッション
５に支持されたバックレスト６とからなるリヤシートで
ある。

【００１０】図２は本考案による前後位置移動装置の一
実施例を示すもので、リヤフロアの段差部３上に載置さ
れ図示しない固着手段にて固着されたシートクッション
５の後端部には、ハット型断面を有しその上面に前後通
路と該前後通路の前端部から下降する縦通路とからなる
Ｌ字状のスリット７ａを設けたシートクッション側ブラ
ケット７が取付けられ、バックレスト６は該バックレス
ト６の上部に設けた回動軸６ａが図示しない支持部材に
よりリヤバルクヘッド２に回動可能に軸着されると共
に、下端部にはハット型断面のバックレスト側ブラケッ
ト８が取付けられており、該バックレスト側ブラケット
８の上面には、下端部に上記シートクッション側ブラケ
ット７のＬ字状のスリット７ａ内を摺動するピン９ａを
備えたリクライニングレバー９の上端部が回動軸８ａに
て回動可能に取付けられている。

【００１１】１０は両端部が上記バックレスト側ブラケ
ット８と上記リクライニングレバー９とにそれぞれ係止
されたコイル状の反転スプリング、１１は両端部が上記
バックレスト側ブラケット８と上記リヤバルクヘッド２
とにそれぞれ係止されバックレスト側ブラケット８をリ
ヤバルクヘッド２側に引寄せる方向に付勢する付勢スプ
リング、１２は上記リクライニングレバー９のほぼ中央
部に取付けられた操作用バンドで、バックレスト６は上
部を回動軸６ａにより回動可能に支持され、下部を、反
転スプリング１０により該バックレスト６に対し時計回
り方向に付勢され下端に設けたピン９ａがシートクッシ
ョン側ブラケット７のＬ字状のスリット７ａの前後通路
の最後部に位置するリクライニングレバー９により支持
されると共に付勢スプリング１１により後方（図におい
て左方）に付勢されているので、図２に示すバックレス
トが傾斜したリクライニング状態を保持することができ
るようになっている。

【００１２】図３（Ａ），（Ｂ），（Ｃ）はバックレス
ト６を傾斜させたリクライニング状態からバックレスト
６を直立させた直立状態に移行させるための操作手順を
示すもので、図３（Ａ）に示すようにバックレスト６の
下端部が前方位置にあるリクライニング状態において、
操作用バンド１２を付勢スプリング１１に抗して前方
（図において右方）へ引張ると、リクライニングレバー
９は回動軸８ａを中心とした反時計回り方向に回動しよ
うとするが、該リクライニングレバー９の下端に取付け
られたピン９ａはシートクッション側ブラケット７に設
けられたＬ字状のスリット７ａの前後通路下面に規制さ
れているので、該ピン９ａは該前後通路中を前方へ移動
し、これにつれてバックレスト６の下端部を前方へ移動
させる。

【００１３】上記操作用バンド１２の前方（実線矢印方
向）への操作力によりバックレスト６の下端が前方に移
動し、バックレスト側ブラケット８に設けた回動軸８ａ
に軸着され反転スプリング１０により時計回り方向に付
勢されたリクライニングレバー９のピン９ａが、図３
（Ｂ）に示すように、シートクッション側ブラケット７
のＬ字状のスリット７ａの折曲部に来たとき、上記操作
用バンド１２に対する実線矢印方向の引張り力を保持し
たままバックレスト６を後方（点線矢印方向）に押し込
むと、リクライニングレバー９が反転スプリング１０の
付勢力に抗して反時計回り方向に回動しつつピン９ａが
シートクッション側ブラケット７のＬ字状のスリット７
ａの縦通路を下方に移動し、その下方移動の途中で反転
スプリング１０はそのリクライニングレバー９への係止
点９ｂが該反転スプリング１０のバックレスト側ブラケ
ット８への係止点８ｂとリクライニングレバー９のバッ
クレスト側ブラケット８への係止点８ａとを結ぶ直線上
にあるデッドポイントを越えて反転し、リクライニング
レバー９を反時計回り方向に回動しようとする付勢力に
切り換わり、図３（Ｃ）に示すように、リクライニング
レバー９のピン９ａはシートクッション側ブラケット７
のＬ字状のスリット７ａの縦通路中にあり前方向（右方
向）への移動が拘束されているので、上記リクライニン
グレバー９に働く反時計回り方向の付勢力によりバック
レスト６はリヤバルクヘッド２に当接した直立状態に保
持される。

【００１４】上記とは逆に図３（Ｃ）に示すようなバッ
クレスト６の直立状態から図３（Ａ）に示すようなバッ
クレスト６が傾斜したリクライニング状態に移行させる
ための操作手順は下記の通りである。

【００１５】即ち、図３（Ｃ）において操作用バンド１
２（又はバックレスト６の下部）を付勢スプリング１１
の後方（左方）への付勢力に抗して前方（右方）へ引張
ると、バックレスト６下端部の前方（右方）への移動に
伴い、リクライニングレバー９のピン９ａが図３（Ｃ）
に示す位置からやや下方に移動しつつリクライニングレ
バー９が時計回り方向に回動し、反転スプリング１０の
リクライニングレバー９への係止点９ｂが、該反転スプ
リング１０のバックレスト側ブラケット８への係止点８
ｂとリクライニングレバー９のバックレスト側ブラケッ
ト８への係止点８ａとを結ぶ直線上にあるデッドポイン
トを越えると、上記反転スプリング１０は反転し、リク
ライニングレバー９を時計回り方向に回動しようとする
付勢力が働き、該付勢力は上記操作用バンド１２の前方
（右方）への引張り力と共働してリクライニングレバー
９を時計回り方向へ回動させ、ピン９ａを図３（Ｂ）に
示すＬ字状のスリット７ａの折曲部まで引き上げる。

【００１６】この状態で操作用バンド１２の前方（右
方）への引張りを止めると、反転スプリング１０の時計
回り方向への付勢力および付勢スプリング１１の後方
（左方）への付勢力によりリクライニングレバー９のピ
ン９ａはＬ字状のスリット７ａの前後通路を後方（左
方）へ移動し、図３（Ａ）に示すようなバックレスト６
が傾斜したリクライニング状態に保持される。

【００１７】尚、上記実施例においてバックレスト６を
後方へ付勢する付勢スプリング１１は、反転スプリング
１０による付勢力を補い、バックレスト６のリクライニ
ング状態及び直立状態の保持をより安定させると共に、
リクライニング状態から直立状態へ、直立状態からリク
ライニング状態への移行動作の円滑化をはかるものであ
るが、本考案の基本的構成としては該付勢スプリング１
１は省略しても良く、該付勢スプリング１１を省略して
も充分本考案の所期の機能，効果を果たすことができ
る。付勢スプリング１１を省略した場合は、直立状態か
らリクライニング状態への移行途中において、図３
（Ｂ）の状態からバックレスト６の下部を後方へ押す操
作を加えるだけで、簡単に図３（Ａ）のリクライニング
状態とすることができる。

【００１８】以上のように、上部がリヤバルクヘッド２
に軸着されたバックレスト６の下部を前後に移動させる
前後位置移動装置として、前後通路と該前後通路の前端
部から下降する縦通路とからなるＬ字状のスリット７ａ
を備えたシートクッション側ブラケット７と、上端部が
バックレスト側ブラケット８に回動可能に軸着され下端
部に上記シートクッション側ブラケット７のＬ字状のス
リット７ａ内を摺動するピン９ａを備えたリクライニン
グレバー９と、一端部が上記バックレスト側ブラケット
８に係止され他端部が上記リクライニングレバー９の中
央部近傍に係止された反転スプリング１０と、後端部が
上記リクライニングレバー９の中央部近傍に固着された
操作用バンド１２とからなる簡単な機構を採用したこと
により、バックレスト６を直立させた直立状態とバック
レスト６を傾斜させたリクライニング状態とを選択し得
る簡略型リクライニング装置を低価格にて実現すること
ができる。

【００１９】

【考案の効果】上記のように本考案によれば、バックレ
ストの上部をリヤバルクヘッド等の車体側部材に回動可
能に軸着し下部を前後方向に移動させることによりバッ
クレストの傾斜角度を変え得るようにした自動車用リヤ
シートのリクライニング装置において、バックレスト下
部の前後位置移動装置を、前後通路と該前後通路の前端
部から下降する縦通路とからなりシートクッションの側
面後部或は車体側部材に取付けられたＬ字状のスリット
と、上端部がバックレスト下部に回動可能に軸着され下
端部に上記Ｌ字状のスリット内を摺動するピンを備えた
リクライニングレバーと、一端部がバックレストに係止
され他端部が上記リクライニングレバーの中央部近傍に
係止された反転スプリングとから構成し、リクライニン
グレバーのピンがＬ字状のスリットの縦通路の下端部近
傍にありバックレスト下部が後方位置にあるバックレス
ト直立状態と、上記リクライニングレバーのピンがＬ字
状のスリットの前後通路の後端部にありバックレスト下
部が前方位置にあるリクライニング状態との間の移行途
中にて、上記反転スプリングがデッドポイントを越え反
転するようにしたことにより、リクライニング状態のと
きはリクライニングレバーを前方に引張りリクライニン
グレバーのピンがＬ字状のスリットの折曲部に来たとき
リクライニングレバーの前方への引張り力を保持したま
まバックレストを後方に押すと、ピンはＬ字状のスリッ
トの縦通路を下降する間に反転スプリングが反転して反
時計回り方向の付勢力に切換わりバックレストの下部を
後方に押してバックレスト直立状態を保持し、又バック
レスト直立状態のときリクライニングレバー又はバック
レストの下部を引張ると、バックレスト下部の前方への
移動に伴い、リクライニングレバーのピンがＬ字状のス
リットの縦通路を上昇する間に反転スプリングが反転し
て時計回り方向の付勢力に切換わるので、リクライニン
グレバーのピンがＬ字状のスリットの折曲部に来たとき
バックレストの下部を後方へ押してやることにより、リ
クライニングレバーのピンがＬ字状のスリットの前後通
路中を後方に移動して後端部に達し、該リクライニング
レバーがバックレスト後部を前方位置に支持し、バック
レストをリクライニング状態に保持することができるも
ので、構成の簡単なることと相俟って実用上多大なる効
果をもたらし得るものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案を適用すべき車体後部の斜視図である。

【図２】本考案の一実施例を示すリヤシートまわりの側
面図である。

【図３】本考案装置の作動態様を示す説明図で、（Ａ）
はバックレストが傾斜したリクライニング状態を示し、
（Ｂ）はリクライニング状態からバックレスト直立状態
への移行途中を示し、（Ｃ）はバックレスト直立状態を
示している。

【符号の説明】

１ 自動車車体 ２ リヤバルクヘッド ３ リヤフロアの段差部 ４ リヤシート ５ シートクッション ６ バックレスト ７ シートクッション側ブラケット ７ａ Ｌ字状のスリット ８ バックレスト側ブラケット ８ａ 回動軸 ８ｂ 係止点 ９ リクライニングレバー ９ａ ピン ９ｂ 係止点 １０ 反転スプリング １１ 付勢スプリング １２ 操作用バンド

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 バックレストの上部をリヤバルクヘッド
   等の車体側部材に回動可能に軸着し下部を前後方向に移
   動させることによりバックレストの傾斜角度を変え得る
   ようにした自動車用リヤシートのリクライニング装置に
   おいて、バックレスト下部の前後位置移動装置を、前後
   通路と該前後通路の前端部より下降する縦通路とからな
   りシートクッションの側面後部或は車体側部材に取付け
   られたＬ字状のスリットと、上端部がバックレストの下
   部に回動可能に軸着され下端部に上記Ｌ字状のスリット
   内を摺動するピンを備えたリクライニングレバーと、一
   端部がバックレストに係止され他端部が上記リクライニ
   ングレバーの中央部近傍に係止された反転スプリングと
   から構成し、リクライニングレバーのピンがＬ字状のス
   リットの縦通路の下端部近傍にありバックレスト下部が
   後方位置にあるバックレスト直立状態と上記リクライニ
   ングレバーのピンがＬ字状のスリットの前後通路の後端
   部にありバックレスト下部が前方位置にあるリクライニ
   ング状態との間の移行途中にて上記反転スプリングがデ
   ッドポイントを越えて反転するようにしたことを特徴と
   する自動車用リヤシートのリクライニング構造。
2. 【請求項２】 請求項１に記載の自動車用リヤシートの
   リクライニング構造において、バックレストの後面とリ
   ヤバルクヘッド等の車体側部材との間に、該バックレス
   トを後方に移動させるよう付勢する付勢スプリングを設
   けたことを特徴とする自動車用リヤシートのリクライニ
   ング構造。
3. 【請求項３】 請求項１又は２に記載の自動車用リヤシ
   ートのリクライニング構造において、リクライニングレ
   バーには、該リクライニングレバーを前方へ引張るため
   の操作用バンドが設けられていることを特徴とする自動
   車用リヤシートのリクライニング構造。