JP2541334Y2 - 婦人科診断実習モデル - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、模型子宮が種々の形態
をとることができ、幅広い症例についての診断実習が可
能な婦人科診断実習モデルに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】産婦人科に関連した医学教育、助産婦等
の教育などにおいて、腹部触診あるいは内診により局所
所見を正確に把握することは不可欠である。しかしなが
ら、臨床の場において患者を診察しつつ学生等の教育、
実習を実施することは、患者の人権に関わるため極めて
困難である。そこで従来から産婦人科に関連した医学模
型を使用して前記教育、訓練を実施することが行なわれ
てきた。しかしながら従来の模型は、成人女性の標本的
な人体解剖の模型であったり、或いは材質的に硬い材料
で作った模型であったりして人体の柔かさからかけ離れ
たもので腹部触診や内診等の実習は不可能であった。異
常模型についても特定の症例に対するものであるので、
内容が限られるとともに、正常形態との比較が不可能で
あった。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】本考案の課題は、以上
の欠点を改善し、模似表皮、皮下組織、模似骨盤等生体
に近似した材料を使用し、腹部触診、内診の実習のでき
る婦人科診断実習模型を提供するにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本考案の要旨は、軟質の
表皮部材、女性腰部の皮下組織を模した形状の軟質発泡
体からなる皮下部材および女性の腰部骨格を模した形状
の硬質の骨格部材を具備した模型基体と子宮、卵管およ
び卵巣を模した軟質で弾性のある生殖器模型とからなる
婦人科診断実習モデルであって、前記生殖器模型はその
子宮部、卵管部および卵巣部の少なくとも一つが正常あ
るいは異常に対応する複数の形態をとることができると
ともに、生体に対応する所定位置で前記模型基体に係
止、離脱自在であることを特徴とする婦人科診断実習モ
デルである。すなわち、本考案は生体に近似した材料と
構造から成る正常あるいは異常の生殖器模型を交換式と
し、これにより腹部からの触診を可能にし、また、正常
と異常の模型を交換することによって内診腹部触診によ
る婦人科診断の実習を効果的に行えるようにしたのであ
る。更に、異常の生殖器模型は、柔い弾力性のある大き
さの可変可能な袋状である場合、その空気量を変更する
ことによって異常状態に対応する複数の形態を採ること
ができ、これにより多種の模擬症例を作ることが可能と
なり、その結果、その実習効果をより一層高めることが
できる。以下、本考案を図面を参照して具体的に説明す
る。図１において、模型基体１は表皮部材２、皮下部材
３および骨格部材４を具備した全体として女性腰部の内
外組織を模した模型である。模型基体１は少なくとも女
性の下腹部、外生殖器、膣部および背側部からなる組織
を含むものであり、かつその内部に腹腔部７が形成され
ている。

【０００５】表皮部材２は皮下部材３を包み込んでお
り、生体表皮に近似した触感を与えるため、軟質の材
料、例えば（イ）エチレン・プロピレンゴム等のオレフ
ィン系ゴム、低密度ポリエチレン、軟質ポリ塩化ビニ
ル、アクリル酸エステルの共重合体等のアクリル系ゴ
ム、ポリウレタン系ゴム、シリコ−ンゴムなどの適度の
弾性のあるゴム類や軟質合成樹脂類からなるフィルムあ
るいはシ−ト、（ロ）織布、メリヤス、不織布等に合成
ゴム類、軟質合成樹脂類等を含浸させた伸縮性のある布
地などから形成されている。

【０００６】皮下部材３は少なくとも下腹部、外生殖
器、膣部および背側部を含む女性腰部の皮下組織の形状
を模している。皮下部材３の膣部６はその腹腔７との連
通部６ａが交換用模型体５を所定位置で自在に係止、離
脱できるようになっている。

【０００７】皮下部材３は女性腰部の皮下組織に近似し
た触感を与えるため、例えばポリウレタンフォ−ム、フ
ォ−ムラバ−等の軟質発泡体から形成されている。

【０００８】骨格部材４は少なくとも骨盤および恥骨を
含む女性の腰部骨格を模していて、皮下部材３内に埋設
されている。その材料は木材、金属、合成樹脂（例えば
ＡＢＳ樹脂、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、硬
質ポリ塩化ビニル、硬質ウレタン樹脂、ポロシロキサン
等）などの硬質材料から選択することができる。

【０００９】骨格部材４は図１に示すように生体骨格に
類して各構成骨に分離して構成することもでき、またそ
の一部あるいは全体を一体化したものとすることもでき
る。

【００１０】生殖器模型５は全体が正常な組織に近似し
た硬さ、触感を与えるため、軟質で弾性のある材料、例
えばエチレン・プロピレンゴム等のオレフィン系ゴム、
アクリル酸エステルの共重合体等のアクリル系ゴム、ポ
リウレタン系ゴム、シリコ−ンゴムなどのゴム類で形成
されている。

【００１１】生殖器模型５は子宮部５ａ、卵管部５ｂお
よび卵巣部５ｃからなり、それらの少なくとも一つが正
常あるいは異常（即ち病的症状）に対応する複数の形態
をとることができる。異常形態には、例えば図２、図３
に示すように、子宮部５ａ、卵管部５ｂおよび卵巣部５
ｃの少なくとも一つが肥大したものがある。図２−１は
正常、図２−２および図２−３は子宮筋腫（肥大部５
ａ’、５ａ’’）を示し、また図３−１は右卵管部５
ｂ’の肥大（例えば蓑疱性卵管留水腫）、図３−２は左
卵巣５ｃ’の肥大（例えば卵巣蓑腫）をそれぞれ示して
いる。異常の程度は一般にピンポン玉大から新生児の頭
部大までの範囲にある。各々一対ある卵管部５ｂおよび
卵巣部５ｃについては、それぞれの左右いずれか一方が
異常の場合あるいは左右両方が異常の場合を症例に応じ
て適宜に選択できるものとする。

【００１２】正常、異常に対応する複数の形態をとりう
る本考案の生殖器模型５は、肥大を伴う異常について
は、空気、水等の流体を送るポンプ９を備え、それを
子宮部５ａ、卵管部５ｂおよび卵巣部５ｃの少なくとも
一つ、さらに卵管部５ｂおよび卵巣部５ｃについてはそ
れぞれ左右の少なくとも一方に接続し、それらの内部に
流体を送って膨張、肥大させることができるようにする
か、または正常な形態をもつ模型と、症例に応じた異
常形態を有する（例えば肥大した）一つあるいは複数の
模型との組合せからなるものとする。上記の場合は図
３および図４に例示されており、図３−１はポンプ９が
右卵管部５ｂ’に接続されていて、空気等により肥大し
た形態を示し、図３−２および図４は左卵巣部５ｃ’が
ポンプ９と接続されて肥大した形態を示す。このの場
合は、ポンプ９による流体の送り出し量を調節すること
によって肥大の程度を、正常の場合を含めて実質上任意
に変更することができる。また図２は上記の場合を示
し、図２−２は軽度の肥大（５ａ’）、図２−３は高度
の肥大（５ａ’’）の例である（図２−１は正常）。
の場合にも、多様な症例のうち必要とされる種々の肥大
度を有する異常形態の模型を組み合わせることにより、
幅広い症例に対する教育、実習を行なうことができる。
さらに本考案の生殖器模型５は肥大のみならず他の異常
な形態をとることもできるものであり、したがって本考
案が婦人科診断の教育、実習の面で寄与するところは大
きい。

【００１３】生殖器模型５は、模型基体に所定位置で係
止できるようになっている。この係止、離脱は既知の手
段によって行なうが、一般には交換用模型５の所定位置
の外径を膣部６の腹腔部７との連通部６ａの口径にほぼ
等しいかそれよりやや大きくしておく。その際生殖器模
型５の係止位置外周に凹溝を設けることにより位置決め
し易くすることができる。この係止、離脱は皮下部材
３、生殖器模型５の材質がともに軟質であるため、容易
に行なうことができる、生殖器模型５の交換は腹腔部７
から行なう。

【００１４】さらに生殖器模型５には子宮内膣部５ｄ
が、また皮下部材３には直腸部８が、それぞれ設けられ
ており、子宮内膣のゾンデ診や触診、直腸の直腸鏡や触
診についても教育、実習が可能である。また本考案で
は、生殖器模型５が前後反対に係止させることができる
ので、子宮後屈の状態を模すことができ、それについて
も教育、実習が可能である。

【００１５】本考案は特に婦人科診断実習モデルとして
膣鏡診、ゾンデ診、子宮鏡、腹膣鏡などによる診断、触
診の教育・実習に極めて有用であるが、また生殖器模型
を選定することにより妊娠中、産褥期等の子宮診断に利
用することができ、さらには直腸の内視鏡診断や触診、
腹部触診などの教育・実習にも利用できる。したがっ
て、婦人科診断実習モデルとして医学教育等の面で多大
な貢献をなすことができるものである。

【００１６】

【考案の効果】本考案は、以上のような構成を有するの
で、従来の実習モデルに比べて、下記のような顕著な効
果を奏するものである。即ち、 （１）生殖器模型がその子宮部、卵管部および卵巣部の
少なくとも一つが正常あるいは異常に対応する任意の形
態をとることができるため、肥大を伴うもの、肥大を伴
わないものを含めて実質上全ての症例についての幅広い
診断技法（内視鏡、触診等）の教育、実習を有効に行な
うことができる。 （２）生殖器模型の形態として正常、異常を適宜に選定
できるので、正常所見と異常所見との対比を含めた婦人
科診断についての総合的な教育、実習を行なうことがで
きる。 （３）表皮部材、皮下部材および生殖器模型がいずれも
生体に近似した軟質の材料から形成されているため、生
体と同様の触感で教育、実習することができ、診断時の
感覚を予め育成しておくことができる。 （４）生殖器模型が交換可能であり前後逆方向に容易に
係止させることができるため、子宮後屈についても教
育、実習することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１−１は正常形態の生殖器模型を係止した本
考案の断面図であり、図１−２は正面図である。

【図２】図２−１は正常形態の生殖器模型、図２−２は
やや軽度の子宮筋腫形態の生殖器模型、図２−３は高度
の子宮筋腫形態の生殖器模型をそれぞれ示す。

【図３】図３−１は右卵管部を流体で肥大させた生殖器
模型、図３−２は左卵巣部を流体で肥大させた生殖器模
型をそれぞれ示す。

【図４】左卵巣部を流体で肥大させた生殖器模型を係止
させた本考案の断面図である。

【符号の説明】

１ 模型基体 ２ 表皮部材 ３ 皮下部材 ４ 骨格部材 ５ 生殖器模型 ５ａ 子宮部 ５ａ’ 肥大子宮部 ５ａ’’肥大子宮部 ５ｂ 卵管部 ５ｂ’ 肥大卵管部 ５ｃ 卵巣部 ５ｃ’ 肥大卵巣部 ５ｄ 子宮内膣部 ６ 膣部 ６ａ 膣部と腹腔部との連通部 ７ 腹腔部 ８ 直腸部 ９ 流体ポンプ

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】女形腰部の形状を模した軟質の表皮部材、
   女性腰部の皮下組織を模した形状の軟質発泡体からなる
   皮下部材および女性の腰部骨格を模した形状の硬質の骨
   格部材を具備した模型基体と子宮、卵管および卵巣を模
   した軟質で弾性のある生殖器模型とからなる婦人科診断
   実習モデルであって、前記生殖器模型はその子宮部、卵
   管部および卵巣部の少なくとも一つが正常あるいは異常
   に対応する複数の形態をとることができるとともに、生
   体に対応する所定位置で前記模型基体に係止、離脱自在
   であることを特徴とする婦人科診断実習モデル。