JP2533572Y2 - 外羽根一体構造のスラッシュ靴中間品 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は外羽根一体構造のスラッ
シュ靴中間品に関する。

【０００２】

【従来の技術及び考案が解決しようとする課題】一般
に、紐付き靴やブーツ等として、漏水防止やハトメ取付
け用としての外羽根が設けられたスラッシュ靴が知られ
ている。この外羽根構造のスラッシュ靴は従来、靴本体
に別素材の外羽根を後から取り付けたものであるので、
これらを別途に成形し、縫着等によって縫合して組み立
てなければならず製造が極めて煩雑であるばかりでな
く、これらの成形形材を防水性のもので構成したとして
も縫い目等の結合部より靴内に水が浸透するという欠点
があった。

【０００３】上記の欠点を解消するために、外羽根を胛
被部材と共に靴本体と一体に形成した外羽根構造のスラ
ッシュ靴が提案された（実開昭５３−３４４４１号）。
この外羽根構造のスラッシュ靴は靴中間品において、靴
本体の胛被に相当する部分から履き口に至るまでの部分
を弛ませて成形し、その弛み部分を靴の左右な引き寄せ
て靴の外造に摘み出した形になるようにスキンを二重に
重ねて袋状の外羽根を形成してなるものである。

【０００４】しかしながらこの靴は、外羽根が二重構造
であるために余分なプラスチゾルを要するという問題が
あった。また外羽根は厚みが厚過ぎると内側に曲げ難く
使用に支障をきたし、内側に曲げ易い厚みに外羽根全体
の厚みを薄くしようとすると、二重構造の一枚々々のス
キンは極端に薄くなり、そのため強度的に弱くなってハ
トメ緊締の際に緊締箇所が裂ける等の欠点があった。ま
たこの靴は、スラッシュ成形の際は靴本体の胛被部分か
ら履き口までの部分を弛ませた形状に成形されるが、弛
ませ部を設けるための手段として該弛ませ部を設けるた
めの凸部が靴の前方に突出したモールドを用いた場合に
は、気泡が上記弛ませ部及び履き口付近に溜まってピン
ホールが発生し易いという欠点があり、また上記弛ませ
部を設けるための凸部が靴の内側に向かって入り込んだ
モールドを用いた場合には、脱型が困難となる等の欠点
があった。

【０００５】そこで本出願人らは、外羽根が一体片から
なる外羽根一体構造のスラッシュ靴を製造するためのモ
ールドを提案した（実開昭５５−１６７００号）。上記
のモールドによって得られるスラッシュ靴の中間品は、
外羽根を一体片として構成しており、そのため余分なプ
ラスチゾルを使用することもなくまた外羽根の厚みを薄
くしても該外羽根が破れたり裂けたりする虞れがないと
いうものである。

【０００６】しかしながら上記のスラッシュ靴中間品も
未だ履き口付近にピンホールが発生したものであり品位
的に必ずしも充分なものではなく、また靴製造の際の脱
型性にも難があった。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本考案は上記の点に鑑み
なされたもので、外羽根が曲がり易く且つ外羽根の強度
が強く破れたり裂けたりする虞れがなく、しかもピンホ
ールの発生がなく脱型が容易な外羽根一体構造のスラッ
シュ靴の中間品を提供することを目的とする。即ち、本
考案外羽根一体構造のスラッシュ靴中間品は、スラッシ
ュ成形によって胛部が一体に設けられており、完成品の
履き口部を構成する部位より上方にのみ開口部を有し、
該開口部以外は封鎖された足収容空間を有する袋状の靴
中間品本体の前記胛部両側部付近に、該胛部とは別の、
全体が中実構造の各１枚のハトメ補強用の略三角形の外
羽根が、該外羽根の略三角形の一辺によって構成される
基部全域で前記靴中間品本体と連接されて該靴中間品本
体と一体に設けられてなることを特徴とする。

【０００８】また本考案において、上記外羽根の縁部を
断面丸くしてなるのが好ましい。

【０００９】また本考案において、上記外羽根の厚み
を、該外羽根の靴中間品本体への付け根部を厚く、上端
側に向かって漸次薄くしてなるのが好ましい。

【００１０】また本考案において、上記外羽根の靴中間
品本体への付け根部において靴中間品本体の表面を断面
凹形状に形成してなるのが好ましい。

【００１１】

【実施例】以下、本考案の実施例を図面を参照して詳細
に説明する。図面は本考案の１実施例を示し、図１は本
考案外羽根一体構造のスラッシュ靴中間品の一例を示す
図である。

【００１２】本考案外羽根一体構造のスラッシュ靴中間
品１は図１に示すように、靴中間品本体２は、スラッシ
ュ成形により胛部が一体に設けられて構成されていて、
靴完成品の履き口部を構成する部位よりも上方にのみ開
口部を有し、該開口部以外は封鎖された足収容空間を有
する袋状形態を有している。そして、該靴中間品本体２
の胛部両側部付近即ち、胛部左右両側の、胛の中間部位
から足首の前に相当する部位までに亘る位置に、胛部と
は別の、左右一対のハトメ補強用の略三角形の外羽根
３、３が、該両外羽根の略三角形の一辺を基部として該
基部の全域でそれぞれ靴中間品本体２と連接されて、靴
中間品本体２に一体に設けられている。

【００１３】そして上記外羽根３、３から靴中間品本体
２に亘って、靴中間品本体２の胛の面に沿って一定間隔
でハトメ挿着部位を示すためのハトメ孔型４が設けら
れ、更に外羽根３、３及び靴中間品本体２には意匠５が
施されている。

【００１４】図２及び図３は外羽根３（、３）の形状を
説明するための図であり、図２は外羽根一体構造のスラ
ッシュ靴中間品１の要部における一部切欠斜視図、図３
は同上要部正面断面図である。図２に示すように、外羽
根３（、３）の縁部ａの断面を丸く形成すると脱泡性及
び脱型性が更によくなる。同様に縁部ｂの断面も丸くし
て角部ｃに丸みを設けると更に脱泡性及び脱型性かよく
なる。また図３に示すように、外羽根３、３の上端縁部
ａ側を薄くし、付け根部ｄ側に向かって漸次厚くなるよ
うに形成すると脱型性が向上する。

【００１５】また図３に示すように、該外羽根３、３の
互いに向き合う側の靴中間品本体への付け根部ｅが断面
凹形状に形成されていると、スラッシュ靴中間品１の両
外羽根を内側に折り曲げる際に折り曲げ易くでき、しか
も上記のようなスラッシュ靴中間品１を製造する際、脱
型する時に外羽根を損傷することがなく好ましい。

【００１６】本考案の外羽根一体構造のスラッシュ靴中
間品を製造するには、例えば靴型の中にポリ塩化ビニル
その他の合成樹脂、ゴムラテックス等従来公知のプラス
チゾルを注入し、モールドを加熱してプラスチゾルのモ
ールドに接した面が硬化してスキン層が形成されたらモ
ールド内の靴形状の硬化樹脂等を、上記モールド内にお
いてモールドと靴先端部の間に圧搾ガスを噴きかけて脱
型を補助しながらモールドから引き抜いて脱型して、外
羽根一体構造のスラッシュ靴中間品を得る。

【００１７】ここにおいて、靴中間品１成形用のモール
ドとしては、図３に示す靴中間品１の外羽根３、３に相
当する部分と靴中間品本体２の表面に相当する部分との
角度θが３０°以上であるような形状のモールドを用い
て成形すると、外羽根３、３と靴中間品本体２に対する
加熱効率が良くなり、そのためスキン層を短時間で厚く
形成することができるので、生産効率が向上できて好ま
しい。上記角度θは更に好ましくは３０°〜９０°であ
る。θが１２０°を超えると脱型性に悪影響を及ぼす。

【００１８】本考案を用いて完成品に加工するに当たっ
ては、通常、図１中の意匠５１の際と靴の履き口の下部
を図中一点鎖線に沿って裁断してＣ部を除去し、更に図
中二点鎖線に沿って裁断しＢ部及びＡ部を除去し、そし
て当初の外羽根３、３を含めたＤ部を全体として外羽根
として使用するように形成する。また、Ｃ部を除去した
後、二点鎖線に沿って裁断せず、Ｂ部及びＡ部を残して
胛被芯材として使用することもできる。或いはＣ部を除
去した後、二点鎖線に沿って裁断せず、Ａ部とＢ部の境
界に沿って裁断してＢ部を除去し、Ａ部のみを残して胛
被芯材として使用してもよい。

【００１９】以上のようにして形成した靴中間品の加工
品に更にスゥェードや皮革、合成皮革若しくは合成樹脂
製のフィルムやシート等を貼着したり縫着したりし、ま
た更に意匠を施し、ハトメ孔型４の位置にハトメを挿着
して該ハトメの孔に紐を通す等、種々の加工を施して外
羽根構造の靴完成品とする。

【００２０】

【作用】次に、本考案の作用について説明する。図４、
図５は本考案の外羽根一体構造のスラッシュ靴中間品１
を製造する際の気泡の発生の仕方と、脱型の仕方につい
てそれぞれ説明するための図である。本考案外羽根一体
構造のスラッシュ靴中間品１を製造するにあたっては、
まずモールド内に塩ビ等従来公知のプラスチゾルを注入
する。この時殆どの気泡は上方に昇って最後には開放さ
れたプラスチゾルの注入口よりモールド外に放出され
る。しかし微細な気泡はプラスチゾルの粘度のために移
動できない場合がある。気泡の移動し難さの傾向は以下
の通りである。 プラスチゾルの粘度に関わらず、上側方向に対して密
閉されている部分は脱泡できない。 角部の隅は脱泡し難い（図４中ｐ₁ ）。 意匠が施されている箇所の微小な段差の隅は脱泡し難
い。 上側方向が開放されていても、オーバーハング状にな
っている部分は脱泡し難い（図４中ｔ）。 モールドの内表面積（又は長さ）が大きい程脱泡し難
い。そして図４において本考案（ａ）と従来品（ｂ）と
を比較すると、本考案（ａ）においては外羽根を略三角
形状としたため、従来品（ｂ）の角部ｐ₁ に相当する部
分がなく、また従来品におけるオーバーハング状部ｔに
は気泡が滞留するが、本考案（ａ）ではｐ₀ の部分でモ
ールド本体に開放されているため気泡が滞留しない。ま
た、本考案において外羽根の縁ｓ₀ は、従来品のｓ₁ よ
りも長さが短いため脱泡性に優れる。

【００２１】次に図５に基づいて、プラスチゾルを硬化
させた後の靴中間品１を脱型する場合について説明す
る。硬化した靴中間品１は図中矢印の方向に脱型させら
れるが、通常はモールド内において接触している面積が
大きい程摩擦抵抗が大きくなるので脱型性は悪く、また
矢印の方向に平行な長さが長い程摩擦抵抗が大きく脱型
性が悪い。また矢印の方向に対してモールドで塞がれた
形の縁部があると該縁部がモールドに引っ掛かって脱型
し難い。

【００２２】上記の点に照らして本考案（ａ）と従来品
（ｂ）とを比較すると、本考案は外羽根を靴中間品本体
の胛部付近のみに設けたものであって履き口付近にまで
は至っておらず、従来品よりも外羽根の面積が小さく又
長さも短いので、脱型に際して靴中間品１の表面と型内
壁との摩擦抵抗が少なく脱型が容易に行える。また本考
案においては、従来品の脱型方向をモールドで塞がれた
縁部ｔに相当する部分がなくモールドに引っ掛かること
がなく容易に脱型することができる。また靴中間品１を
無理に引き抜かなくても脱型できるので、靴中間品１に
無理な引っ張り力が掛からず破損する虞れがない。

【００２３】

【考案の効果】以上説明した如く本考案外羽根一体構造
のスラッシュ靴中間品は、スラッシュ成形によって胛部
が一体に設けられており、完成品の履き口部を構成する
部位より上方にのみ開口部を有し、該開口部以外は封鎖
された足収容空間を有する袋状の靴中間品本体の前記胛
部両側部付近に、該胛部とは別の、全体が中実構造の各
１枚のハトメ補強用の略三角形の外羽根が、該外羽根の
略三角形の一辺によって構成される基部全域で前記靴中
間品本体と連接されて該靴中間品本体と一体に設けられ
て構成されているものであり、靴中間品本体はスラッシ
ュ成形によって胛部が一体に設けられており、完成品の
履き口部を構成する部位より上方にのみ開口部を有し、
該開口部以外は封鎖された足収容空間を有する袋状の、
胛部一体の構造を有するものであり、靴中間品とは別体
の胛部をあとから取り付けてなるというものではないの
で胛部下端に継ぎ目等による隙間がなく、従って該隙間
から水が侵入することがない。また、外羽根にハトメ孔
を開けた場合、該ハトメ孔から靴内部へ水が侵入すると
いうこともなく、防水性に優れている。また、外羽根を
あとから取り付けるという手間が掛からず製造工程を簡
略化できるという効果を有する。また上記スラッシュ靴
中間品は全体が中実構造の略三角形の外羽根を靴中間品
本体の胛部付近に設けたので脱泡性に優れ、外羽根の縁
部付近にピンホールが発生せず、品位の高いスラッシュ
靴中間品が得られると共に、脱型性に優れているため作
業効率が良好で製造が容易であるという効果を有する。
また外羽根は中実構造であるから強度が強く、ハトメ緊
締の際に破れたり裂けたりする虞れもない。また、外羽
根と胛部とは各々別々のものとして構成されているた
め、胛部を折り返して外羽根を構成するものに比較し
て、外羽根及び胛部の大きさを製品毎に安定した一定の
大きさのものとすることができ、製品の品位を向上でき
る効果を有する。

【００２４】また、外羽根の断面を丸くすると脱泡性及
び脱型性を更に向上することができるという効果を有す
る。

【００２５】また、外羽根の厚みを付け根から上端側に
向けて漸次薄く構成すると脱型性を更に向上することが
できるという効果を有する。

【００２６】また、外羽根の靴中間品本体への付け根部
において靴中間品本体の表面を断面凹形状に形成したの
で、スラッシュ靴中間品の両外羽根を内側に折り曲げる
際に折り曲げ易くでき、しかも脱型する時に外羽根を損
傷することなく上記のようなスラッシュ靴中間品を製造
することができるという効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案外羽根一体構造のスラッシュ靴中間品の
例を示す斜視図である。

【図２】外羽根一体構造のスラッシュ靴中間品１の要部
の一部切欠斜視図である。

【図３】外羽根一体構造のスラッシュ靴中間品１の要部
正面断面図である。

【図４】本考案の外羽根一体構造のスラッシュ靴中間品
１を製造する際の気泡の発生の仕方について説明するた
めの図である。

【図５】本考案の外羽根一体構造のスラッシュ靴中間品
１を製造する際の脱型の仕方について説明するための図
である。

【符号の説明】

１ 外羽根一体構造のスラッシュ靴中間品 ２ 靴中間品本体 ３ 外羽根 ４ ハトメ孔型 ５ 意匠

Claims (4)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 スラッシュ成形によって胛部が一体に設
   けられており、完成品の履き口部を構成する部位より上
   方にのみ開口部を有し、該開口部以外は封鎖された足収
   容空間を有する袋状の靴中間品本体の前記胛部両側部付
   近に、該胛部とは別の、全体が中実構造の各１枚のハト
   メ補強用の略三角形の外羽根が、該外羽根の略三角形の
   一辺によって構成される基部全域で前記靴中間品本体と
   連接されて該靴中間品本体と一体に設けられてなること
   を特徴とする外羽根一体構造のスラッシュ靴中間品。
2. 【請求項２】 外羽根の縁部を断面丸くしてなる請求項
   １記載の外羽根一体構造のスラッシュ靴中間品。
3. 【請求項３】 外羽根の厚みを、該外羽根の靴中間品本
   体への付け根部を厚く、上端側に向かって漸次薄くして
   なる請求項１又は２のいずれか１に記載の外羽根一体構
   造のスラッシュ靴中間品。
4. 【請求項４】 外羽根の靴中間品本体への付け根部にお
   いて靴中間品本体の表面を断面凹形状に形成してなる請
   求項１〜３のいずれか１に記載の外羽根一体構造のスラ
   ッシュ靴中間品。