JP2523256B2 - 難燃性粘着テ―プまたはシ―ト及びその製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、自動車ハーネス結束用
粘着テープのように難燃性を要求される個所に適用可能
な難燃性粘着テープまたはシート及びその製造方法に係
り、特に、難燃性に優れかつ高温に曝されたときに有害
な物質を放出することのない難燃性粘着テープまたはシ
ート及びその製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】粘着テープまたはシートの難燃剤として
は、難燃効果に優れかつ比較的安価な材料として、これ
まで、デカブロモジフェニルエーテルが最も広く用いら
れてきた。この難燃剤は溶剤に不溶性であり、粘着剤中
に微粒子状に分散して用いられる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、デカブ
ロモジフェニルエーテルは、難燃性には優れているが、
高温に曝された時に有害なブロモダイオキシンを生じる
ことが知られている。従って、このような有害物質を生
じることのない難燃剤が望まれるが、デカブロモジフェ
ニルエーテルに代わる優れた難燃剤を見出すことはかな
り困難であり、優れた難燃性を発現する代替難燃剤の使
用技術の開発が強く望まれていた。

【０００４】本発明の目的は、上記従来技術の有してい
た課題を解決して、難燃性に優れ、しかも高温に曝され
た時に有害な物質を放出することのない難燃性粘着テー
プまたはシート及びその製造方法を提供することにあ
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的は、基材に粘着
剤組成物を塗工してなる粘着テープまたはシートの製造
において、粘着剤組成物に、放射線反応性二重結合を有
する高分子化合物を少なくとも１種類と、上記放射線反
応性二重結合を有する高分子化合物と架橋反応性を有す
る難燃剤を少なくとも１種類とを含有させ、該粘着剤組
成物を基材に塗工し、次いで、該粘着剤組成物に放射線
を照射して、上記高分子化合物と上記難燃剤とを架橋さ
せることを特徴とする難燃性粘着テープまたはシート及
びその製造方法とすることによって達成することができ
る。

【０００６】すなわち、難燃剤を含有する物質が高温に
曝された時に、難燃剤に起因するダイオキシンのような
有害物質を生じさせることがなくかつ優れた難燃性を保
持させたいという要求は、このような有害物質に変換す
ることのない化学的構造を有する難燃剤を使用し、か
つ、該難燃剤が高温下に曝されても散逸しないように固
定することによって達せられる。また、粘着テープまた
はシートにあっては、粘着剤を構成する高分子化合物と
して、ポリイソプレン結合、ポリブタジエン結合等の反
応性二重結合を有する合成ホモポリマー、ブロックコポ
リマーまたは天然ゴム等の反応性高分子エラストマーを
少なくとも一種類用い、また、ジフェニルエーテルのよ
うな有害物質に変化する可能性のある構造を持たず、か
つ、架橋反応性の難燃剤を粘着剤に配合し、該粘着剤に
架橋剤を添加して上記エラストマーと上記難燃剤とを架
橋させること、あるいは、上記粘着剤に放射線を照射し
て上記エラストマーと難燃剤とを架橋させることによっ
て上記課題を解決することができる。

【０００７】

【作用】環境に著しい被害を及ぼすダイオキシンすなわ
ち 2,3,7,8‐テトラクロロジベンゾ‐p‐ジオキシンに
構造が類似するブロモダイオキシンすなわちポリブロモ
ジベンゾジオキシンやポリブロモジベンゾフランは生物
に対する毒性が強く、環境汚染物質に挙げられている。
デカブロモジフェニルエーテル及びその同族体の各種ポ
リブロモジフェニルエーテルは高温で一部酸化されてブ
ロモダイオキシンやポリブロモベンゾフランを生じる。
これらの有害物質の生成はジフェニルエーテル構造に起
因するもので、無公害難燃性粘着テープを製造するに
は、このような構造を持たない難燃剤を使用しなければ
ならない。しかしながら、良く知られているように、デ
カブロモジフェニルエーテルは難燃性能が優れていて、
これに代わる高性能難燃剤を探すことは容易ではない。

【０００８】臭素化合物の難燃剤としての働きは、高温
で生成した臭素ラジカルによる酸素の捕捉によるもので
あるから、母材の燃焼時に有効に利用できる臭素の量が
多いほど難燃剤の効果は大きい。多くの低分子量有機化
合物は高温においてそれ自体蒸散するかあるいは分解し
て蒸散するため、単に混合して練り込んだだけではその
多くが消失する。大部分の難燃剤は低分子化合物であ
り、従って、これを有効に利用するためには蒸散を防ぐ
処置が必要となる。粘着テープ類を構成する粘着剤の主
成分は高分子化合物であるから、難燃剤を何らかの手段
で該高分子化合物に結合することができれば、高温にお
ける消失が少なく、難燃効果が向上することが期待でき
る。

【０００９】粘着剤として天然ゴム、イソプレンゴム、
ブタジエンゴム等の二重結合を有するエラストマーをベ
ースとするものを使用し、これに反応性の難燃剤を配合
してから両者を架橋させることによって難燃剤がエラス
トマーにグラフトして難燃剤が強く固定される。この架
橋反応は、架橋剤を添加し加熱することによって起すこ
ともでき、放射線を照射して起すこともできる。

【００１０】上記の性能を有する難燃剤としては、例え
ば、臭素置換ビスフェノールA 骨格にエポキシ基やアク
リル基等の反応性基を結合させたものがある。このよう
な難燃剤はベンゾジフランやジベンゾジオキシンに変化
することがなく、かつ、放射線照射によって容易に天然
ゴム、イソプレンゴム等の二重結合部分にグラフト結合
する。

【００１１】上記の架橋剤としてはエポキシ化合物、イ
ソシアネート化合物等種々のものが使用可能であり、ま
た、上記の放射線としては、紫外線、電子線、Ｘ線、γ
線等種々のものが使用可能であるが、使い易さや製品の
経時安定性を考慮すると、加速電圧が150kVから300kV程
度の低エネルギー電子線が最も適している。電子線の照
射は、難燃剤を配合した粘着剤を粘着テープ類の基材に
塗工した後、粘着剤の塗工面側あるいは基材側から行
う。照射線量は、難燃剤と粘着剤エラストマーとが架橋
し、かつ、粘着特性が低下しない範囲でなければなら
ず、一般には、30〜100kGy程度が適当である。

【００１２】

【実施例】以下、本発明の方法について実施例によって
具体的に説明する。なお、ここに示す実施例は本発明の
例示であって、本発明はこれらの内容に限定されるもの
ではない。

【００１３】

【実施例１】天然ゴム100重量部、石油樹脂系粘着付与
樹脂100重量部からなる粘着剤組成物に難燃剤としてテ
トラブロモビスフェノールA‐ジエポキシアクリレート1
50重量部、難燃助剤として三酸化アンチモン40重量部を
加えた組成物をニーダーで混練した後、厚さ200μmの綿
布に150μmの厚さに塗工して、粘着テープを作製した。
このテープに、粘着剤面側から加速電圧250kVの電子線
を30〜100kGyの範囲で照射して、難燃性粘着テープを作
製した。

【００１４】上記難燃性粘着テープについて、ステンレ
スに対する180°ピール力(粘着力)、及び、UL 規格(UL
510 FR)に準じてテープに炎を当てて燃焼させたときの
炎持続時間の測定を行った。結果を表１に示す。

【００１５】

【表１】

【００１６】

【実施例２】ポリイソプレンゴム75重量部、液状ポリイ
ソプレン25重量部、石油樹脂系粘着付与樹脂100重量部
からなる粘着剤組成物に、難燃剤としてテトラブロモビ
スフェノールA‐ジエポキシド100重量部、難燃助剤とし
て三酸化アンチモン40重量部を加えた組成物をニーダー
で混練した後、厚さ200μmの綿布に150μmの厚さに塗工
して粘着テープを作製した。このテープに粘着剤面側か
ら加速電圧250kVの電子線を30〜100kGyの範囲で照射し
て難燃性粘着テープを作製した。

【００１７】上記難燃性粘着テープについて、実施例１
の場合と同様にして、ステンレスに対する粘着力及び炎
持続時間の測定を行った。結果を表２に示す。

【００１８】

【表２】

【００１９】以上二つの実施例で得られた試料の何れに
ついても、高温に曝したときに、有害物質の放出は認め
られなかった。

【００２０】

【参考例１】ポリイソプレンゴム75重量部、液状ポリイ
ソプレン25重量部、石油樹脂系粘着付与樹脂100重量部
からなる粘着剤組成物に、難燃剤としてデカブロモジフ
ェニルエーテル88重量部、難燃助剤として三酸化アンチ
モン40重量部を加えた組成物をニーダーで混練りした
後、厚さ200μmの綿布に150μmの厚さに塗工して粘着テ
ープを作製した。このテープに粘着剤面側から加速電圧
250kVの電子線を30〜100kGyの範囲で照射して難燃性粘
着テープを作製した。

【００２１】上記難燃性粘着テープについて、実施例１
の場合と同様にして、ステンレスに対する粘着力及び炎
持続時間の測定を行った。結果を表３に示す。

【００２２】

【表３】

【００２３】

【発明の効果】以上述べてきたように、難燃性粘着テー
プまたはシート及びその製造方法を本発明構成のテープ
またはシート及びその製造方法とすることによって、従
来技術の有していた課題を解決して、難燃性に優れ、し
かも、高温に曝されたときに有害な物質を放出すること
のない難燃性粘着テープ及びシートの作製方法を提供す
ることができた。

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】基材に粘着剤組成物を塗工してなる粘着テ
   ープまたはシートにおいて、上記粘着剤組成物に反応性
   二重結合を有する高分子化合物を少なくとも１種類と、
   該反応性二重結合を有する高分子化合物と架橋反応性を
   有する難燃剤を少なくとも１種類とを含有させ、上記高
   分子化合物と難燃剤とを架橋させた構成からなることを
   特徴とする難燃性粘着テープまたはシート。
2. 【請求項２】上記反応性二重結合を有する高分子化合物
   が、ポリイソプレン結合、ポリブタジエン結合等の放射
   線反応性二重結合を有する合成ホモポリマー、ブロック
   コポリマーまたは天然ゴムの中から選ばれたエラストマ
   ーであり、上記架橋反応性を有する難燃剤が放射線架橋
   反応性の難燃剤であることを特徴とする請求項１記載の
   難燃性粘着テープまたはシート。
3. 【請求項３】基材に粘着剤組成物を塗工してなる粘着テ
   ープまたはシートの製造において、放射線反応性高分子
   化合物を少なくとも１種類と、該放射線反応性高分子化
   合物と放射線架橋反応性を有する難燃剤を少なくとも１
   種類含有する粘着剤組成物を基材に塗工し、次いで、上
   記粘着剤組成物に放射線を照射して上記放射線反応性と
   難燃剤とを架橋させることを特徴とする難燃性粘着テー
   プまたはシートの製造方法。
4. 【請求項４】上記放射線が加速電圧150kVから300kVまで
   の低エネルギー電子線であることを特徴とする請求項３
   記載の難燃性粘着テープまたはシートの製造方法。