JP2024513520A - 心筋細胞及び組成物ならびにそれらの生産方法 - Google Patents

心筋細胞及び組成物ならびにそれらの生産方法 Download PDF

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Abstract

本書では、成熟した心筋細胞を生成する方法、及び成熟した心筋細胞を含む組成物が開示される。また、本書では、休止心筋細胞の成熟を増進する方法、及び成熟した休止心筋細胞を含む組成物も開示される。本書では、未熟心筋細胞から成熟した心筋細胞を生産する方法が開示される。当該方法は、例えば、パルス培養または定常状態培養のような二次元培養または三次元培養などの培養下で、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と未熟心筋細胞を接触させることを含む。【選択図】図1

Description

関連出願との相互参照
本出願は、2021年4月11日に出願された米国仮出願第63/173,489号の利益を主張する。上記の出願の全教示は、参照により本書に組み込まれる。
ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)から心筋細胞を生産する現行の分化プロトコルは、心筋トロポニンTの発現によって判定して高純度の心筋細胞集団を生成することが可能である。しかし、これらの心筋細胞は未熟なままであり、胎児の状態によりよく類似し、成体心筋細胞と比較して最大収縮力が低く、アップストローク速度が遅く、ミトコンドリア機能が未熟である。未熟心筋細胞は、サルコメア構造がさほど組織化されておらず、十分な収縮力が得られないだけでなく、成体動物モデルに供給すると生命を脅かす可能性のある心室性不整脈をもたらす自動性またはペースメーカー様の活動を示すため、iPSC由来心筋細胞の未熟さは、心疾患のための心筋細胞細胞療法の臨床応用に対する大きな障壁となり得る。発達中、心筋細胞は、胎児の増殖状態から、出生後により成熟しているが休止している状態への移行を起こす。心筋細胞を休止状態に導くことにより、分化中の心筋細胞の成熟を増進するための改良された方法が必要とされている。
数ある用途の中でもとりわけ細胞療法及びスクリーニングに使用するための、成熟した心筋細胞を生成するための方法またはプロトコルが必要とされている。いくつかの実施形態では、心筋細胞を休止状態に導くことにより、心筋細胞の成熟が増進され得る。
本書では、未熟心筋細胞から成熟した心筋細胞を生産する方法が開示される。当該方法は、例えば、パルス培養または定常状態培養のような二次元培養または三次元培養などの培養下で、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と未熟心筋細胞を接触させることを含む。
また、本書では、心筋細胞の休止を誘導する方法も開示される。当該方法は、例えば、パルス培養または定常状態培養のような二次元培養または三次元培養などの培養下で、心筋細胞成熟因子と老化心筋細胞を接触させ、それにより、休止心筋細胞に移行するように老化心筋細胞を誘導することを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子は、p53上方制御因子を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子は、mTORインヒビターを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子は、p53上方制御因子及び/またはmTORインヒビターを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子は、セノリティック、MDM2インヒビター、及び/またはmTORインヒビターを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子は、セノリティック、MDM2インヒビター、mTORインヒビター、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子は、nutlin-3a、ケルセチン、Torin1、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子は、nutlin-3a、ケルセチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子は、nutlin-3a及び/またはケルセチンを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子は、nutlin-3a、ケルセチン、及び/またはTorin1を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子をパルス処置または連続処置によって未熟心筋細胞と接触させる。
いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞は、iPS細胞、ES細胞、T細胞、または線維芽細胞に由来する。いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞は胎児心筋細胞に類似する。
いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞が拍動を開始した後に、未熟心筋細胞を少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と接触させる。いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞が拍動を開始した1~3日後に、未熟心筋細胞を少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と接触させる。
いくつかの実施形態では、成熟した心筋細胞は、未熟心筋細胞と比較して、1つ以上の成熟遺伝子の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、1つ以上の成熟遺伝子は、TNNI3、TNNT2、MYH6、MYH7、NPPB、HCN4、CACNA1c、SERCA2a、PPARGC1、KCNJ2、REST、RyR、及びSCN5aからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、成熟した心筋細胞は、未熟心筋細胞と比較して、1つ以上のサルコメアタンパク質の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、1つ以上のサルコメアタンパク質は、TNNT2、TNNI3、MYH6、及びMYH7からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、成熟した心筋細胞は、未熟心筋細胞と比較して、1つ以上のイオンチャネル遺伝子の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、1つ以上のイオンチャネル遺伝子は、KCNJ2、HCN4、SCN5a、RYR2、CACNA1c、及びSERCA2aからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、成熟した心筋細胞は、未熟心筋細胞と比較して、REST及び/またはGATA4の発現増加を呈する。
いくつかの実施形態では、成熟した心筋細胞は、未熟心筋細胞と比較して、減少した拍動速度を呈する。いくつかの実施形態では、成熟した心筋細胞は、-70mV以下の静止膜電位、毎分40拍未満の自発拍動速度、及び/または200V/秒を超えるアップストローク速度を呈する。いくつかの実施形態では、成熟した心筋細胞は、電気的、収縮性、及び/または代謝的に成熟した心筋細胞である。
また、本書では、本書で開示される方法のいずれかによって生産された非自然発生の心筋細胞も開示される。
いくつかの実施形態では、非自然発生の心筋細胞は、未熟心筋細胞と比較して、1つ以上の成熟遺伝子の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、1つ以上の成熟遺伝子は、TNNI3、TNNT2、MYH6、MYH7、NPPB、HCN4、CACNA1c、SERCA2a、PPARGC1、KCNJ2、REST、RyR、及びSCN5aからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、非自然発生の心筋細胞は、未熟心筋細胞と比較して、1つ以上のサルコメアタンパク質の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、1つ以上のサルコメアタンパク質は、TNNT2、TNNI3、MYH6、及びMYH7からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、非自然発生の心筋細胞は、未熟心筋細胞と比較して、1つ以上のイオンチャネル遺伝子の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、1つ以上のイオンチャネル遺伝子は、KCNJ2、HCN4、SCN5a、RYR2、CACNA1c、及びSERCA2aからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、非自然発生の心筋細胞は、TNNT2、TNNI3、KCNJ2、及びp53のうちの1つ以上の発現増加を呈する。
いくつかの実施形態では、非自然発生の心筋細胞は、未熟心筋細胞と比較して、減少した拍動速度を呈する。いくつかの実施形態では、非自然発生の心筋細胞は、-70mV以下の静止膜電位、毎分40拍未満の自発拍動速度、及び/または200V/秒を超えるアップストローク速度を呈する。いくつかの実施形態では、非自然発生の心筋細胞は、電気的、収縮性、及び/または代謝的に成熟した心筋細胞である。
本書では、処置の方法であって、それを必要とする対象に、本書に記載される非自然発生の心筋細胞を含む組成物を投与することを含む、方法が開示される。また、本書では、処置の方法であって、それを必要とする対象に、本書に記載される1つ以上の非自然発生の心筋細胞の単離集団を使用して生産された医薬組成物を投与することを含む、方法も開示される。また、本書では、心臓の病態を処置するための薬品の製造における組成物の使用であって、処置が、それを必要とする対象への薬品の投与を含み、組成物が、本書に記載される非自然発生の心筋細胞を少なくとも1つ含む、使用も開示される。
いくつかの実施形態では、対象は、心室性不整脈、減少した収縮期心機能、慢性心不全、先天性心疾患、もしくは他の心疾患を有するか、またはその発症リスクを持つ。
また、本書では、未熟心筋細胞から成熟した心筋細胞を生産する方法も開示される。当該方法は、nutlin-3a、ケルセチン、Torin1、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と未熟心筋細胞を接触させることを含む。
いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、nutlin-3a、ケルセチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、成熟した心筋細胞は三次元培養で生産される。いくつかの実施形態では、成熟した心筋細胞は二次元培養で生産される。いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞をパルス処置によって少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と接触させる。いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞を連続処置によって少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と接触させる。
本発明の実施には、特に断りのない限り、当業者が備えている技能の範囲内にある、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換え核酸(例えばDNA)技術、免疫学、及びRNA干渉(RNAi)の従来技法が典型的に用いられる。これらの技法のうち特定のものの非限定的な説明は、次の公表文献に見出される:Ausubel, F., et al., (eds.), Current Protocols in Molecular Biology、Current Protocols in Immunology、Current Protocols in Protein Science、及びCurrent Protocols in Cell Biology、すべてJohn Wiley & Sons, N.Y.、2008年12月版、Sambrook, Russell, and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, 2001、Harlow, E. and Lane, D., Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, 1988、Freshney, R.I., “Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique”, 5th ed., John Wiley & Sons, Hoboken, NJ, 2005。治療用薬剤及びヒト疾患に関する非限定的な情報は、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 11th Ed., McGraw Hill, 2005, Katzung, B. (ed.) Basic and Clinical Pharmacology, McGraw-Hill/Appleton & Lange、第10版(2006年)または第11版(2009年7月)に見出される。遺伝子及び遺伝性障害に関する非限定的な情報は、McKusick, V.A.: Mendelian Inheritance in Man. A Catalog of Human Genes and Genetic Disorders. Baltimore: Johns Hopkins University Press, 1998(第12版)またはより最近のオンラインデータベース:Online Mendelian Inheritance in Man、OMIM(商標)、McKusick-Nathans Institute of Genetic Medicine,Johns Hopkins University(Baltimore,MD)及びNational Center for Biotechnology Information,National Library of Medicine(Bethesda,MD)、2010年5月1日付け、ワールドワイドウェブURL:ncbi.nlm.nih.gov/omim/、ならびに動物種(ヒト及びマウス以外)の遺伝子、遺伝性疾患、及び形質のデータベースであるOnline Mendelian Inheritance in Animals(OMIA)(omia.angis.org.au/contact.shtml)に見出される。本書で言及されるすべての特許、特許出願、及び他の公表文献(例えば科学論文、書籍、ウェブサイト、及びデータベース)は、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書と組み込まれた参考文献のいずれかとの間に矛盾がある場合には、本明細書(組み込まれた参考文献に基づき得るその補正を含む)が優先するものとする。特に断りのない限り、本書では、当技術分野で受け入れられている標準的な用語の意味が使用される。本書では、様々な用語の標準的な略語が使用される。
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面を含む本特許または特許出願公開の写しは、要請及び必要手数料の支払いに応じて当局によって提供される。
懸濁培養下で電気的に成熟したiPSC-CMを作出するための提唱の概略図を提供する。 nutlin-3aが、TNNT2+iPSC-CMのパーセンテージを増加させることを示す。 nutlin-3aが、TNNT2の平均蛍光強度(MFI)を増加させることを示す。 nutlin-3aが、TNNI3+の割合(%)を増加させることを示す。 nutlin-3aが、TNNI3の平均蛍光強度を増加させることを示す。 nutlin-3aが、Kir2.1を発現するTNNT2+iPSC-CMのパーセンテージを増加させることを示す。 nutlin-3aが、Kir2.1の平均蛍光強度(MFI)を増加させることを示す。 nutlin-3aが、p53+TNNT2+iPSC-CMの割合(%)を増加させることを示す。 nutlin-3aが、フローサイトメトリーによるTNNI3及びp53の平均蛍光強度を増加させることを示す。 ケルセチンが、Kir2.1を発現するTNNT2+iPSC-CMの割合(%)を増加させることを示す。 ケルセチンが、Kir2.1の平均蛍光強度(MFI)を増加させることを示す。 ケルセチンが、p53+TNNT2+iPSC-CMの割合(%)を増加させることを示す。 ケルセチンが、フローサイトメトリーによるp53のMFIを増加させることを示す。 ケルセチンが、生細胞のパーセンテージを減少させるが、心筋細胞のパーセンテージを増加させることを示す。Aは、生細胞のパーセンテージを示す。Bは、生細胞中のTNNT2+細胞のパーセンテージを示す。定量化はフローサイトメトリーによる。一元配置ANOVAにより**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 ケルセチンが、PPARGC1aの発現を増加させることを示す。Kruskal-Wallis検定により****p<0.0001。 nutlin-3aによるp53の上方制御がTNNI3発現を増進し、Torin1との相乗効果を有することを示す。心筋細胞成熟の提唱される機構を示す概略図を提供する。T3、トリヨードサイロニン。DMSOは、ジメチルスルホキシドを示し、mTORは、ラパマイシン機構的標的を示し、TNNT2+BJRiPS-CMは、心筋型トロポニンT2陽性のBJ線維芽細胞由来RNA誘導性多能性幹細胞由来心筋細胞を示す。 nutlin-3aによるp53の上方制御がTNNI3発現を増進し、Torin1との相乗効果を有することを示す。拍動発生から約2日後に開始して、ビヒクル(DMSO)処置、nutlin-3a(10μmol/L)での24時間の処置、Torin1(200nmol/L)での7日間の処置、またはTorin1(200nmol/L)とnutlin-3a(Torin1処置の最初の24時間に10μmol/L)による7日間の同時処置を行った後の、G0期、G1期、またはS/G2/M期におけるTNNT2+BJRiPS-CMのパーセンテージを示す細胞周期分析を示す。各群n=3。2元配置ANOVAとTukey多重比較検定によりP<0.05、***P<0.001、****P<0.0001。DMSOは、ジメチルスルホキシドを示し、mTORは、ラパマイシン機構的標的を示し、TNNT2+BJRiPS-CMは、心筋型トロポニンT2陽性のBJ線維芽細胞由来RNA誘導性多能性幹細胞由来心筋細胞を示す。 nutlin-3aによるp53の上方制御がTNNI3発現を増進し、Torin1との相乗効果を有することを示す。拍動発生から約2日後に開始して、コントロール(DMSO)、nutlin-3aÅ約24時間(10μmol/L)、Torin1Å約7日間(200nmol/L)、またはTorin1Å約7日間(200nmol/L)+nutlin-3a(10μmol/L)で24時間の処置を行ったBJRiPS由来心筋細胞ライセートからの、MDM2、p53、TNNI3、及びβ-チューブリンの代表的なウエスタンブロットを提供する(nutlin-3aは、Torin1処置の最初の24時間のみ投与した)。処置の最終日に採取された細胞、BJRiPS-CM。DMSOは、ジメチルスルホキシドを示し、mTORは、ラパマイシン機構的標的を示し、TNNT2+BJRiPS-CMは、心筋型トロポニンT2陽性のBJ線維芽細胞由来RNA誘導性多能性幹細胞由来心筋細胞を示す。 nutlin-3aによるp53の上方制御がTNNI3発現を増進し、Torin1との相乗効果を有することを示す。ウエスタン分析によるp53バンドのデンシトメトリーを示す。2元配置ANOVAとTukey多重比較検定により**P<0.01、条件ごとにn=3。DMSOは、ジメチルスルホキシドを示し、mTORは、ラパマイシン機構的標的を示し、TNNT2+BJRiPS-CMは、心筋型トロポニンT2陽性のBJ線維芽細胞由来RNA誘導性多能性幹細胞由来心筋細胞を示す。 nutlin-3aによるp53の上方制御がTNNI3発現を増進し、Torin1との相乗効果を有することを示す。ウエスタン分析によるTNNI3バンドのデンシトメトリーを示す。2元配置ANOVAとTukey多重比較検定によりP<0.05、**P<0.01、条件ごとにn=3、BJRIPS-CM。DMSOは、ジメチルスルホキシドを示し、mTORは、ラパマイシン機構的標的を示し、TNNT2+BJRiPS-CMは、心筋型トロポニンT2陽性のBJ線維芽細胞由来RNA誘導性多能性幹細胞由来心筋細胞を示す。 Torin1+/-Nutlin-3aが、2D培養においてTNNT2発現を増加させることを示す。これは、心筋細胞のミトコンドリアがより成熟していることを示唆する。FACS N=3/群、MitoTracker Red CMXRosフローサイトメトリー、1元配置ANOVAとTukeyの多重比較検定。 Torin1+/-Nutlin-3aが、2D培養においてミトコンドリア膜分極を増加させることを示す。これは、心筋細胞のミトコンドリアがより成熟していることを示唆する。FACS N=3/群、MitoTracker Red CMXRosフローサイトメトリー、1元配置ANOVAとTukeyの多重比較検定。 2D培養におけるNutlin-3a処置がスーパーオキシドシグナルの平均蛍光強度を増加させることを示す。活性酸素種は心筋細胞の成熟を制御し得る。FACS、n=3/群。 Torin1+Nutlin-3a処置が、3D懸濁培養で分化したiPSC心筋細胞におけるTNNT2純度(A)及びTNNT2発現(B)を増加させることを示す。心筋細胞分化の10日目から開始して、3D懸濁培養下の細胞に、24時間おきに1時間のパルス処置を2日間行った。フローサイトメトリーからのデータ、各群n=3。 Torin1処置が、人工多能性幹細胞(iPSC)由来心筋細胞(CM)の細胞休止を増加させることを示す。特記なき限り、拍動発生から約2日後に開始して7日間のTorin1処置を行う、分化プロトコルの概略図を提供する。DMSO、ジメチルスルホキシド;IWP-4、Wnt産生インヒビター4;RI、ROCK(Rho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ)インヒビター(Y-27632);RPMI、Roswell Park Memorial Institute 1640培地。 Torin1処置が、人工多能性幹細胞(iPSC)由来心筋細胞(CM)の細胞休止を増加させることを示す。ベースライン、ならびにTorin1(200nM)によるiPSC由来CM、BJRiPS-CMの単回処置の30分後、及び2、4、10、24、及び48時間後の、phospho-S6及びphospho-Aktのウエスタン分析を提供する。DMSO、ジメチルスルホキシド;IWP-4、Wnt産生インヒビター4;RI、ROCK(Rho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ)インヒビター(Y-27632);RPMI、Roswell Park Memorial Institute 1640培地。 Torin1処置が、人工多能性幹細胞(iPSC)由来心筋細胞(CM)の細胞休止を増加させることを示す。分化中の12ウェルプレートのウェル当たりの細胞数を示す。Torin1処置は、CM拍動発生のおよそ2日後である9日目に開始した。BJRiPS-CM、時点ごとに各群n=3。DMSO、ジメチルスルホキシド;IWP-4、Wnt産生インヒビター4;RI、ROCK(Rho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ)インヒビター(Y-27632);RPMI、Roswell Park Memorial Institute 1640培地。 Torin1処置が、人工多能性幹細胞(iPSC)由来心筋細胞(CM)の細胞休止を増加させることを示す。フローサイトメトリーによる生細胞集団中のTNNT2+CMのパーセンテージを示す(Gibco iPS-CM、条件ごとにn=3、一元配置ANOVAによるn.s.)。DMSO、ジメチルスルホキシド;IWP-4、Wnt産生インヒビター4;RI、ROCK(Rho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ)インヒビター(Y-27632);RPMI、Roswell Park Memorial Institute 1640培地。 Torin1処置が、人工多能性幹細胞(iPSC)由来心筋細胞(CM)の細胞休止を増加させることを示す。拍動発生から約2日後に開始して7日間、Torin1(10nM、50nM、もしくは200nM)またはビヒクルコントロール(0.02%DMSO)で処置した後のiPSC由来心筋細胞における、選択された休止マーカー(TP53、RB1、RBL2(p130)、CDKN1a(p21)、CDKN1b(p27)、CDKN2a(p16)及びHES1)ならびに増殖マーカー(MKI67、CCNA1、CCNB1、CCNC1、CCND1、CDK3、及びE2F1)のqPCRを示す。条件ごとにn=3、各遺伝子についてコントロールと比較するためのHolm-Sidak法を用いた多重t検定によりp<0.05、****p<0.001、BJRiPS-CM。DMSO、ジメチルスルホキシド;IWP-4、Wnt産生インヒビター4;RI、ROCK(Rho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ)インヒビター(Y-27632);RPMI、Roswell Park Memorial Institute 1640培地。 Torin1処置が、人工多能性幹細胞(iPSC)由来心筋細胞(CM)の細胞休止を増加させることを示す。コントロール、10nM Torin1処置細胞、または200nM Torin1処置細胞、Gibco iPS-CMにおけるG0期、G1期、及びS/G2/M期を区別するためにHoechst 33342及びPyronin Yで染色されたiPSC由来CMの代表的なフローサイトメトリープロットを提供する。DMSO、ジメチルスルホキシド;IWP-4、Wnt産生インヒビター4;RI、ROCK(Rho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ)インヒビター(Y-27632);RPMI、Roswell Park Memorial Institute 1640培地。 Torin1処置が、人工多能性幹細胞(iPSC)由来心筋細胞(CM)の細胞休止を増加させることを示す。拍動発生から約2日後に開始して1週間にわたるTorin1処置(200nM)後のG期、G期またはS/G/M期におけるTNNT2+心筋細胞のパーセンテージを示す。条件ごとにn=3、二元配置ANOVAとTukeyの多重比較検定により***p<0.001、****p<0.0001、Gibco iPS-CM。DMSO、ジメチルスルホキシド;IWP-4、Wnt産生インヒビター4;RI、ROCK(Rho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ)インヒビター(Y-27632);RPMI、Roswell Park Memorial Institute 1640培地。 Torin1処置が、人工多能性幹細胞(iPSC)由来心筋細胞(CM)の細胞休止を増加させることを示す。拍動発生から約2日後に開始して1週間にわたる0.02%DMSO処置に続いて10%FBSまたは無血清コントロールを与えた後のコントロールCMにおける、G期、G期またはS/G/M期におけるTNNT2+CMのパーセンテージを示す。各群n=3、二元配置ANOVAとSidakの多重比較検定により**p<0.01、Gibco iPSC-CM。DMSO、ジメチルスルホキシド;IWP-4、Wnt産生インヒビター4;RI、ROCK(Rho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ)インヒビター(Y-27632);RPMI、Roswell Park Memorial Institute 1640培地。 Torin1処置が、人工多能性幹細胞(iPSC)由来心筋細胞(CM)の細胞休止を増加させることを示す。拍動発生から約2日後に開始して1週間にわたるTorin1処置(200nM)に続いて10%FBSまたは無血清コントロールを与えた後の、G期、G期またはS/G/M期におけるTNNT2+CMのパーセンテージを示す。各群n=3、二元配置ANOVAとSidakの多重比較検定により**p<0.01、Gibco iPSC-CM。DMSO、ジメチルスルホキシド;IWP-4、Wnt産生インヒビター4;RI、ROCK(Rho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ)インヒビター(Y-27632);RPMI、Roswell Park Memorial Institute 1640培地。 Torin1処置が、サルコメア遺伝子の発現を増加させ、iPSC由来心筋細胞の収縮性を増進することを示す。拍動発生から約2日後に開始して7日間、Torin1(10nM、50nM、もしくは200nM)またはビヒクルコントロール(0.02%DMSO)で処置した後のiPSC由来心筋細胞における、選択されたサルコメア遺伝子(MYH6、MYH7、TNNT2、TNNI3)のqPCRを提供する。条件ごとにn=3、二元配置ANOVAとTukeyの多重比較検定によりp<0.05、****p<0.001、BJRiPS-CM。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 Torin1処置が、サルコメア遺伝子の発現を増加させ、iPSC由来心筋細胞の収縮性を増進することを示す。拍動発生から約2日後に開始して7日間のTorin1処置後のTNNT2及びTNNI3の代表的なウエスタンブロット分析を提供する。β-チューブリンはローディングコントロールとして示されている。Gibco iPS-CM。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 Torin1処置が、サルコメア遺伝子の発現を増加させ、iPSC由来心筋細胞の収縮性を増進することを示す。TNNT2+細胞のTNNT2-Alexa Fluor 647の平均蛍光強度を示す。条件ごとにn=3、一元配置ANOVAとTukeyの多重比較検定により**p<0.01、****p<0.0001、Gibco iPS-CM。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 Torin1処置が、サルコメア遺伝子の発現を増加させ、iPSC由来心筋細胞の収縮性を増進することを示す。拡張期及び収縮期のMTFの概略的な側面図と共に、拡張期及び収縮期のMTFの代表的な画像を提供する。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 Torin1処置が、サルコメア遺伝子の発現を増加させ、iPSC由来心筋細胞の収縮性を増進することを示す。拍動発生から約2日後に開始して7日間Torin1(200nM)またはビヒクルで処置したiPSC由来心筋細胞、BJRiPS-CMを播種した筋薄膜(MTF)の代表的な力対時間プロットを提供する。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 Torin1処置が、サルコメア遺伝子の発現を増加させ、iPSC由来心筋細胞の収縮性を増進することを示す。筋薄膜を使用して定量化された相対最大収縮力を示す(コントロールに対して正規化されている)。各群n=8~9、BJRiPS-CM(2バッチ)及びGibco iPS-CM(1バッチ)の3バッチを組み合わせたKruskal-Wallis検定により**p<0.01。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 Torin1処置が、サルコメア遺伝子の発現を増加させ、iPSC由来心筋細胞の収縮性を増進することを示す。Torin1(200nM×7日)での処置ありまたはなしの心筋細胞を示す代表的な免疫染色画像を提供する。青=DAPI、緑=α-アクチニン、黄=F-アクチン、マゼンタ=TNNT2、BJRiPS-CM、スケールバー=10μm。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 Torin1処置が、サルコメア遺伝子の発現を増加させ、iPSC由来心筋細胞の収縮性を増進することを示す。コントロール(n=13細胞)及びTorin1処置BJRiPS-CM(n=17細胞)のサルコメア長を示し、n.sは対応のないt検定による。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 Torin1処置が、サルコメア遺伝子の発現を増加させ、iPSC由来心筋細胞の収縮性を増進することを示す。DMSO×7日間(コントロール)、DMSO×7日間に続いて10%ウシ胎仔血清(FBS)×2日間、Torin1(200nM)×7日間、またはTorin1(200nM)×7日間に続いて10%FBS×2日間の処置後のTNNT2+細胞のTNNT2-Alexa Fluor 647の平均蛍光強度を示す。条件ごとにn=3、一元配置ANOVAとSidakの多重比較検定によりp<0.01、**p<0.0001、UCSD-CM。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 Torin1が、iPSC由来心筋細胞の酸素消費速度及びミトコンドリア分極を増加させることを示す。Seahorse Mito Stress Testによって評価された、ベースラインに対して正規化された平均酸素消費速度の時間に応じたプロファイルを提供する。白丸=コントロール(n=70ウェル)、黒四角=Torin1(69ウェル、200nM×7日;アッセイ前に24~48時間にわたってSeahorseプレートに再プレーティングされたBJRiPS-CM)、2つの独立した実験からのデータを組み合わせたもの。DMSO、ジメチルスルホキシド;FCCP、2-[2-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ヒドラジニリデン]-プロパンジニトリル。 Torin1が、iPSC由来心筋細胞の酸素消費速度及びミトコンドリア分極を増加させることを示す。最大OCR、呼吸予備力、及び非ミトコンドリアOCRに対する、コントロール(白バー、n=70ウェル)対黒バー(白バー、n=69ウェル)のベースラインに対して正規化された酸素消費速度を示す。二元配置ANOVAとSidakの多重比較検定によりp<0.05、***p<0.001、BJRiPS-CM。DMSO、ジメチルスルホキシド;FCCP、2-[2-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ヒドラジニリデン]-プロパンジニトリル。 Torin1が、iPSC由来心筋細胞の酸素消費速度及びミトコンドリア分極を増加させることを示す。拍動発生から約2日後に開始して7日間、Torin1(200nM)またはビヒクルコントロール(0.02%DMSO)で処置した後のBJRiPS-CMの、Mitotracker Green FMの平均蛍光強度を示す。対応のないt検定によりp<0.05、各群n=3、BJRiPS細胞株。DMSO、ジメチルスルホキシド;FCCP、2-[2-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ヒドラジニリデン]-プロパンジニトリル。 Torin1が、iPSC由来心筋細胞の酸素消費速度及びミトコンドリア分極を増加させることを示す。拍動発生から約2日後に開始して7日間、Torin1(200nM)またはビヒクルコントロール(0.02%DMSO)で処置した後のBJRiPS-CMの、ミトコンドリア(ND1)対核(B2M)DNA比を示す。対応のないt検定によりp<0.05、各群n=3、BJRiPS細胞株。DMSO、ジメチルスルホキシド;FCCP、2-[2-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ヒドラジニリデン]-プロパンジニトリル。 Torin1が、iPSC由来心筋細胞の酸素消費速度及びミトコンドリア分極を増加させることを示す。拍動発生から約2日後に開始して7日間、Torin1(200nM)またはビヒクルコントロール(0.02%DMSO)で処置した後のBJRiPS-CMにおける、赤色蛍光と緑色蛍光のMitoProbe JC-1相対比を示しており、アッセイはTorin1処置の最終日に実行した。各群n=6、Kruskal-Wallis検定により**p<0.01。DMSO、ジメチルスルホキシド;FCCP、2-[2-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ヒドラジニリデン]-プロパンジニトリル。 Torin1が、iPSC由来心筋細胞の酸素消費速度及びミトコンドリア分極を増加させることを示す。拍動発生から約2日後に開始して7日間、Torin1(10nM、50nM、もしくは200nM)またはビヒクルコントロール(0.02%DMSO)で処置した後のBJRiPS-CMの、選択された脂肪酸代謝関連遺伝子(PPARGC1a(PGC1α)、CD36、SLC27A1(FATP1)、SLC27A6(FATP6)、及びLPIN1)またはグルコース代謝関連遺伝子(GLUT1、GLUT4、PFK、及びPYGM)のqPCRを提供する。二元配置ANOVAとTukeyの多重比較検定によりp<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、各群n=3。DMSO、ジメチルスルホキシド;FCCP、2-[2-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ヒドラジニリデン]-プロパンジニトリル。 Torin1処置が、選択されたイオンチャネルの発現を増加させ、活動電位プロファイルのピーク立ち上がり時間及びダウンストローク速度を増加させることを示す。拍動発生から約2日後に開始して7日間、Torin1(10nMもしくは200nM)またはビヒクルコントロール(0.02%DMSO)で処置した後のiPSC由来心筋細胞の、選択されたイオンチャネル(KCNJ2、CACNA1c、RY2、ATP2a2、SCN5a、HCN4)のqPCRを提供する。各群n=3、二元配置ANOVAとTukeyの多重比較検定によりp<0.05、****p<0.001、BJRiPS株。 Torin1処置が、選択されたイオンチャネルの発現を増加させ、活動電位プロファイルのピーク立ち上がり時間及びダウンストローク速度を増加させることを示す。拍動発生から約2日後に開始して7日間のTorin1処置後のKir2.1(KCNJ2によってコードされる)の平均蛍光強度のフローサイトメトリー分析を提供する。各群n=3、対応のないt検定によりp<0.01、BJRiPS株。 Torin1処置が、選択されたイオンチャネルの発現を増加させ、活動電位プロファイルのピーク立ち上がり時間及びダウンストローク速度を増加させることを示す。Torin1処置ありまたはなしの心筋細胞の自発拍動速度を示す。条件ごとにn=6~10ウェル、一元配置ANOVAとTukeyの多重比較検定によりp<0.05、***p<0.001。 Torin1処置が、選択されたイオンチャネルの発現を増加させ、活動電位プロファイルのピーク立ち上がり時間及びダウンストローク速度を増加させることを示す。CyteSeerソフトウェアによって自動的に行われた細胞セグメンテーションを示す代表的画像を提供する。青=Hoechst染色、緑=FluoVolt。Fluovoltデータについては、コントロールn=531細胞、Torin1 n=315細胞、対応のないt検定による分析。 Torin1処置が、選択されたイオンチャネルの発現を増加させ、活動電位プロファイルのピーク立ち上がり時間及びダウンストローク速度を増加させることを示す。Torin1処置心筋細胞がコントロールと比較してより延長されたプラトー期を有することを表す代表的な活動電位プロファイルを示す。CTD25(カルシウム過渡の25%の期間、または最大振幅から25%低下する期間)、CTD75(カルシウム過渡の75%の期間、または最大振幅から75%低下する期間)、T75-25(電圧が最大の75%から25%まで減衰するのにかかる時間)。 Torin1処置が、選択されたイオンチャネルの発現を増加させ、活動電位プロファイルのピーク立ち上がり時間及びダウンストローク速度を増加させることを示す。ピーク立ち上がり時間(ミリ秒)、****p<0.0001、UCSD-CMを示す。 Torin1処置が、選択されたイオンチャネルの発現を増加させ、活動電位プロファイルのピーク立ち上がり時間及びダウンストローク速度を増加させることを示す。ダウンストローク速度(ミリ秒)、****p<0.0001、UCSD-CMを示す。 Torin1処置が、選択されたイオンチャネルの発現を増加させ、活動電位プロファイルのピーク立ち上がり時間及びダウンストローク速度を増加させることを示す。CTD25時間(ミリ秒)、n.s.、UCSD-CMを示す。 Torin1処置が、選択されたイオンチャネルの発現を増加させ、活動電位プロファイルのピーク立ち上がり時間及びダウンストローク速度を増加させることを示す。CTD75時間(ミリ秒)、p<0.05、UCSD-CMを示す。 Torin1処置が、選択されたイオンチャネルの発現を増加させ、活動電位プロファイルのピーク立ち上がり時間及びダウンストローク速度を増加させることを示す。T75-25時間(ミリ秒)、***p<0.001、UCSD-CMを示す。 Torin1がp53発現を増加させ、効果がピフィスリン-αによって阻害されることを示す。拍動発生から約2日後に開始して7日間、0(DMSO)、10、50、または200nMのTorin1で処置された、Gibco iPS-CMライセートからのp53、phospho-53、p21(CDKN1a)、GATA4、NKX2.5、及びβ-チューブリンの代表的なウエスタンブロットを提供する。細胞は処置の最終日に採取した。 Torin1がp53発現を増加させ、効果がピフィスリン-αによって阻害されることを示す。拍動発生から約2日後に開始して、ビヒクル(DMSO、ジメチルスルホキシド)処置、ピフィスリン-α(10μM)での1週間の処置、Torin1(200nM)での7日間の処置、またはピフィスリン-α(10μM)及びTorin1(200nM)による7日間の同時処置を行った後の、G、G期またはS/G/M期におけるTNNT2+BJRiPS-CMのパーセンテージを示す細胞周期分析を提供する。各群n=3、二元配置ANOVAとTukeyの多重比較検定によりp<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 Torin1がp53発現を増加させ、効果がピフィスリン-αによって阻害されることを示す。拍動発生から約2日後に開始して7日間、コントロール(DMSO)、Torin1(200nM)、ピフィスリン-α(10μM)、またはTorin1(200nM)+ピフィスリン-α(10μM)で処置された、BJRiPS由来心筋細胞ライセートからのp53、TNNI3、p21、及びβ-チューブリンの代表的なウエスタンブロットを提供する。細胞は処置の最終日に採取した。 Torin1がp53発現を増加させ、効果がピフィスリン-αによって阻害されることを示す。ウエスタン分析によるTNNI3バンドのデンシトメトリーを示す。各群n=3、二元配置ANOVAとTukeyの多重比較検定により**p<0.01、BJRiPS-CM。 Torin1ありまたはなしで処置された後に、10%ウシ胎仔血清(FBS)ありまたはなしで処置された細胞、Gibco iPS-CMを比較する、PanCancer Pathways PanelからのNanoString遺伝子発現分析を示す。細胞周期経路遺伝子の教師なし階層的クラスタリングを示す。QC、クオリティコントロール。 Torin1ありまたはなしで処置された後に、10%ウシ胎仔血清(FBS)ありまたはなしで処置された細胞、Gibco iPS-CMを比較する、PanCancer Pathways PanelからのNanoString遺伝子発現分析を示す。タンパク質代謝経路遺伝子の教師なし階層的クラスタリングを示す。QC、クオリティコントロール。 Torin1ありまたはなしで処置された後に、10%ウシ胎仔血清(FBS)ありまたはなしで処置された細胞、Gibco iPS-CMを比較する、PanCancer Pathways PanelからのNanoString遺伝子発現分析を示す。細胞周期経路遺伝子の差次的遺伝子発現分析(コントロール+FBS対コントロール)を示すボルケーノプロットを提供する。 Torin1ありまたはなしで処置された後に、10%ウシ胎仔血清(FBS)ありまたはなしで処置された細胞、Gibco iPS-CMを比較する、PanCancer Pathways PanelからのNanoString遺伝子発現分析を示す。細胞周期経路遺伝子の差次的遺伝子発現分析(コントロール対Torin1)を示すボルケーノプロットを提供する。 Torin1ありまたはなしで処置された後に、10%ウシ胎仔血清(FBS)ありまたはなしで処置された細胞、Gibco iPS-CMを比較する、PanCancer Pathways PanelからのNanoString遺伝子発現分析を示す。細胞周期経路遺伝子の差次的遺伝子発現分析(Torin1+FBS対Torin1)を示すボルケーノプロットを提供する。 Torin1ありまたはなしで処置された後に、10%ウシ胎仔血清(FBS)ありまたはなしで処置された細胞、Gibco iPS-CMを比較する、PanCancer Pathways PanelからのNanoString遺伝子発現分析を示す。タンパク質代謝経路遺伝子の差次的遺伝子発現分析(コントロール+FBS対コントロール)を示すボルケーノプロットを提供する。 Torin1ありまたはなしで処置された後に、10%ウシ胎仔血清(FBS)ありまたはなしで処置された細胞、Gibco iPS-CMを比較する、PanCancer Pathways PanelからのNanoString遺伝子発現分析を示す。タンパク質代謝経路遺伝子の差次的遺伝子発現分析(コントロール対Torin1)を示すボルケーノプロットを提供する。 Torin1ありまたはなしで処置された後に、10%ウシ胎仔血清(FBS)ありまたはなしで処置された細胞、Gibco iPS-CMを比較する、PanCancer Pathways PanelからのNanoString遺伝子発現分析を示す。タンパク質代謝経路遺伝子の差次的遺伝子発現分析(Torin1+FBS対Torin1)を示すボルケーノプロットを提供する。 非解離細胞における増殖の評価を提供する。心筋細胞を12ウェルプレートで分化させた後、元のプレートで固定及び染色して、解離しても生存する細胞の選択の可能性を最小限に抑えた。Ki67/TNNT2/DAPIまたはphospho-H3/TNNT2/DAPIで染色された細胞の代表的な画像を提供する。スケールバー=100μm。青=DAPI、黄=Ki67、緑=pH3、マゼンタ=TNNT2。DMSO、ジメチルスルホキシド。 非解離細胞における増殖の評価を提供する。心筋細胞を12ウェルプレートで分化させた後、元のプレートで固定及び染色して、解離しても生存する細胞の選択の可能性を最小限に抑えた。コントロール(n=1088細胞)対Torin1処置細胞(n=837細胞)におけるKi67+またはKi67-である総DAPI/TNNT+心筋細胞のパーセンテージを表す円グラフを提供する。カイ二乗分析により****p<0.0001。DMSO、ジメチルスルホキシド。 非解離細胞における増殖の評価を提供する。心筋細胞を12ウェルプレートで分化させた後、元のプレートで固定及び染色して、解離しても生存する細胞の選択の可能性を最小限に抑えた。コントロール(n=962細胞)対Torin1処置細胞(n=779細胞)におけるpH3+またはpH3-である総DAPI/TNNT+心筋細胞のパーセンテージを表す円グラフを提供する。DMSO、ジメチルスルホキシド。 市販のヒト胎児及び成人の心臓RNAのベンチマークサンプルと比較した、選択された遺伝子(TNNT2)のqPCR分析を提供する。各群N=6~12で、2~4つの独立した実験からのデータを組み合わせた。Kruskal-Wallis検定によりp<0.05、**p<0.01、BJRiPS-CM。垂直線は、生物学的複製物の欠如により、胎児及び成人の心臓RNAが統計分析に含まれなかったことを示す(両方とも、商業的ベンダーから購入した単一チューブからのものであった)。生物学的複製物の欠如のため、胎児及び成人の心臓RNAについてエラーバーは示されていない。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 市販のヒト胎児及び成人の心臓RNAのベンチマークサンプルと比較した、選択された遺伝子(TNNI3)のqPCR分析を提供する。各群N=6~12で、2~4つの独立した実験からのデータを組み合わせた。Kruskal-Wallis検定によりp<0.05、**p<0.01、BJRiPS-CM。垂直線は、生物学的複製物の欠如により、胎児及び成人の心臓RNAが統計分析に含まれなかったことを示す(両方とも、商業的ベンダーから購入した単一チューブからのものであった)。生物学的複製物の欠如のため、胎児及び成人の心臓RNAについてエラーバーは示されていない。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 市販のヒト胎児及び成人の心臓RNAのベンチマークサンプルと比較した、選択された遺伝子(PPARGC1a)のqPCR分析を提供する。各群N=6~12で、2~4つの独立した実験からのデータを組み合わせた。Kruskal-Wallis検定によりp<0.05、**p<0.01、BJRiPS-CM。垂直線は、生物学的複製物の欠如により、胎児及び成人の心臓RNAが統計分析に含まれなかったことを示す(両方とも、商業的ベンダーから購入した単一チューブからのものであった)。生物学的複製物の欠如のため、胎児及び成人の心臓RNAについてエラーバーは示されていない。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 市販のヒト胎児及び成人の心臓RNAのベンチマークサンプルと比較した、選択された遺伝子(RYR2)のqPCR分析を提供する。各群N=6~12で、2~4つの独立した実験からのデータを組み合わせた。Kruskal-Wallis検定によりp<0.05、**p<0.01、BJRiPS-CM。垂直線は、生物学的複製物の欠如により、胎児及び成人の心臓RNAが統計分析に含まれなかったことを示す(両方とも、商業的ベンダーから購入した単一チューブからのものであった)。生物学的複製物の欠如のため、胎児及び成人の心臓RNAについてエラーバーは示されていない。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 市販のヒト胎児及び成人の心臓RNAのベンチマークサンプルと比較した、選択された遺伝子(KCNJ2)のqPCR分析を提供する。各群N=6~12で、2~4つの独立した実験からのデータを組み合わせた。Kruskal-Wallis検定によりp<0.05、**p<0.01、BJRiPS-CM。垂直線は、生物学的複製物の欠如により、胎児及び成人の心臓RNAが統計分析に含まれなかったことを示す(両方とも、商業的ベンダーから購入した単一チューブからのものであった)。生物学的複製物の欠如のため、胎児及び成人の心臓RNAについてエラーバーは示されていない。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 市販のヒト胎児及び成人の心臓RNAのベンチマークサンプルと比較した、選択された遺伝子(CACNA1c)のqPCR分析を提供する。各群N=6~12で、2~4つの独立した実験からのデータを組み合わせた。Kruskal-Wallis検定によりp<0.05、**p<0.01、BJRiPS-CM。垂直線は、生物学的複製物の欠如により、胎児及び成人の心臓RNAが統計分析に含まれなかったことを示す(両方とも、商業的ベンダーから購入した単一チューブからのものであった)。生物学的複製物の欠如のため、胎児及び成人の心臓RNAについてエラーバーは示されていない。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 市販のヒト胎児及び成人の心臓RNAのベンチマークサンプルと比較した、選択された遺伝子(TP53)のqPCR分析を提供する。各群N=6~12で、2~4つの独立した実験からのデータを組み合わせた。Kruskal-Wallis検定によりp<0.05、**p<0.01、BJRiPS-CM。垂直線は、生物学的複製物の欠如により、胎児及び成人の心臓RNAが統計分析に含まれなかったことを示す(両方とも、商業的ベンダーから購入した単一チューブからのものであった)。生物学的複製物の欠如のため、胎児及び成人の心臓RNAについてエラーバーは示されていない。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 市販のヒト胎児及び成人の心臓RNAのベンチマークサンプルと比較した、選択された遺伝子(CDKN1a(p21))のqPCR分析を提供する。各群N=6~12で、2~4つの独立した実験からのデータを組み合わせた。Kruskal-Wallis検定によりp<0.05、**p<0.01、BJRiPS-CM。垂直線は、生物学的複製物の欠如により、胎児及び成人の心臓RNAが統計分析に含まれなかったことを示す(両方とも、商業的ベンダーから購入した単一チューブからのものであった)。生物学的複製物の欠如のため、胎児及び成人の心臓RNAについてエラーバーは示されていない。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 市販のヒト胎児及び成人の心臓RNAのベンチマークサンプルと比較した、選択された遺伝子(GATA4)のqPCR分析を提供する。各群N=6~12で、2~4つの独立した実験からのデータを組み合わせた。Kruskal-Wallis検定によりp<0.05、**p<0.01、BJRiPS-CM。垂直線は、生物学的複製物の欠如により、胎児及び成人の心臓RNAが統計分析に含まれなかったことを示す(両方とも、商業的ベンダーから購入した単一チューブからのものであった)。生物学的複製物の欠如のため、胎児及び成人の心臓RNAについてエラーバーは示されていない。DMSO、ジメチルスルホキシド;TBP、TATA結合タンパク質。 異なる期間のTorin1処置の評価を提供する。分化8~11日目、8~15日目、9~11日目、9~16日目、11~14日目、または11~18日目の、コントロール(DMSOビヒクル)または200nMのTorin1で処置した後のTNNT2-AlexaFluor647の平均蛍光強度を示す。各群n=3、コントロールと比較するための一元配置ANOVAとDunnettの多重比較検定によりp<0.05。 異なる期間のTorin1処置の評価を提供する。分化8~11日目、8~15日目、9~11日目、9~16日目、11~14日目、または11~18日目の、コントロール(DMSOビヒクル)または200nMのTorin1で処置した後のKir2.1(細胞外)の平均蛍光強度を示す。各群n=3、コントロールと比較するための一元配置ANOVAとDunnettの多重比較検定によりp<0.05、**p<0.01、****p<0.0001。
ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)から心筋細胞を生産する現行の分化プロトコルは、心筋トロポニンTの発現によって判定して高純度の心筋細胞集団を生成することが可能である。しかし、これらの心筋細胞は未熟なままであり、胎児の状態によりよく類似し、成体心筋細胞と比較して最大収縮力が低く、アップストローク速度が遅く、ミトコンドリア機能が未熟である。iPSC由来心筋細胞の未熟さは、心疾患のための心筋細胞細胞療法の臨床応用に対する大きな障壁となり得る。発達中、心筋細胞は、胎児の増殖状態から、出生後により成熟しているが休止している状態への移行を起こす。ラパマイシン機構的標的(mTOR)シグナル伝達経路は、栄養素の感知及び成長において重要な役割を果たす。
Wnt経路を調節する小分子を使用して、iPSC株から心筋細胞を分化させた。いくつかの実施形態では、p53の上方制御因子を様々な時点で使用し、成熟したiPSC由来心筋細胞の収縮的特性、代謝的特性、及び電気生理学的特性を定量化した。いくつかの実施形態では、mTOR経路のインヒビターを様々な時点で使用した。いくつかの実施形態では、p53シグナル伝達を阻害するために、小分子インヒビターを使用した。いくつかの実施形態では、二次元または三次元の培養培地で心筋細胞を分化及び/または成熟させる。
本開示の諸態様は、少なくとも1つの幹細胞から心筋細胞(本書では、非自然発生の心筋細胞、非天然心筋細胞、休止心筋細胞、または成熟した心筋細胞という)を生成するための組成物、方法、キット、及び薬剤、ならびに、細胞療法、アッセイ、及び様々な処置方法で使用するための、これらの組成物、方法、キット、及び薬剤によって生産された成熟心筋細胞または休止心筋細胞に関する。
本書に記載される方法に従って生成される、in vitroで生産された心筋細胞は、多くの利点を示す。例えば、それらは電気的に成熟しており(例えば、減少した自動性を呈する)、収縮性が成熟しており、代謝的に成熟している。さらに、生成される心筋細胞は、細胞療法(例えば、追加の及び/または機能的な心筋細胞を必要とする対象への移植)及び研究のための新しいプラットフォームを提供し得る。
定義
便宜上、本書の明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲で用いられる特定の用語をここに収載する。別途定義されない限り、本書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
本書で使用される場合、「体細胞」という用語は、生殖系列細胞とは異なり、生物の体を形成するあらゆる細胞を指す。哺乳動物では、生殖系列細胞(「配偶子」としても知られている)は、受精中に融合して接合体と呼ばれる細胞を作る***及び卵子であり、そこから哺乳動物の胚全体が発生する。***及び卵子、それらを作る細胞(生殖母体)、ならびに未分化幹細胞を除く、哺乳動物の体内の他のすべての細胞型は体細胞型であり、内臓、皮膚、骨、血液、及び結合組織はすべて、体細胞で構成されている。いくつかの実施形態では、体細胞は「非胚性体細胞」であり、これは、胚に存在しないか、または胚から得られず、in vitroでそのような細胞の増殖から生じない体細胞を意味する。いくつかの実施形態では、体細胞は「成体体細胞」であり、これは、胚もしくは胎児以外の生物に存在するか、もしくは当該生物から得られる細胞、またはin vitroでそのような細胞の増殖から生じる細胞を意味する。
本書で使用される場合、「成体細胞」という用語は、胚発生後に全身に見られる細胞を指す。
「始原細胞」または「前駆細胞」という用語は、本書では互換的に使用され、分化によって生じ得る細胞と比べてより原始的な細胞表現型を有する(すなわち、完全に分化した細胞よりも発生経路または進行に沿った初期の段階にある)細胞を指す。始原細胞は、著しい、または非常に高い増殖能も有することが多い。始原細胞は、発生経路に応じて、また細胞が発達し分化する環境に応じて、複数の異なる分化細胞型を生じることもあれば、単一の分化細胞型を生じることもある。
「表現型」という用語は、実際の遺伝子型に関係なく、特定のセットの環境条件及び因子の下で細胞または生物を定義する、1つまたは複数の総合的な生物学的特徴を指す。
本書で使用される「多能性」という用語は、2つ以上の分化細胞型に分化する能力、好ましくは3つすべての生殖細胞層に特徴的な細胞型に分化する能力を持つ細胞を指す。多能性細胞は主に、例えばヌードマウス奇形腫形成アッセイを使用して、2つ以上の細胞型、好ましくは3つすべての胚葉に分化する能力によって特性解析される。多能性は胚性幹(ES)細胞マーカーの発現によっても証明されるが、好ましい多能性検査は、3つの胚葉の各々の細胞に分化する能力の実証試験である。このような細胞を単に培養すること自体が、それらを多能性にするわけではないことに留意されたい。また、再プログラムされた多能性細胞(例えば、本書における用語の定義のとおりのiPS細胞)は、培養下では概して限られた回数の***しかできない初代細胞の親に比べて、成長能を損失することなく継代を延長できるという特徴を有する。
本書で使用される場合、「iPS細胞」及び「人工多能性幹細胞」という用語は互換的に使用され、例えば、1つ以上の遺伝子の強制発現を誘導することにより、非多能性細胞から、典型的には成体体細胞から、人工的に導出された(例えば、誘導された、または完全な逆転による)、多能性幹細胞を指す。
本書で使用される「幹細胞」という用語は、増殖して、多数の母細胞を生成する能力を有する始原細胞をさらに生じさせることが可能である未分化細胞を指し、母細胞は、分化した、または分化可能な娘細胞を生じさせることができる。娘細胞自体を誘導して増殖させ、後に1つ以上の成熟細胞型へと分化する後代を生産すると共に、親の発生能を持つ1つ以上の細胞を保持することもできる。「幹細胞」という用語は、特定の状況下で、より特殊化または分化した表現型に分化する能力または可能性を有し、特定の状況下で、実質的に分化することなく増殖する能力を保持する、始原細胞のサブセットを指す。一実施形態では、幹細胞という用語は、自然発生の母細胞であって、その子孫(後代)が、分化によって、例えば、胚細胞及び組織の進行的多様化で生じるように、完全に個別の特徴を獲得することによって、しばしば異なる方向に特殊化する、母細胞を広く指す。細胞分化は、典型的には多くの細胞***を通じて生じる複雑なプロセスである。分化細胞は、自らが多分化能性細胞などに由来する多分化能性細胞に由来し得る。これらの多分化能性細胞の各々を幹細胞とみなすことができるが、各々が生じさせ得る細胞型の範囲は大きく異なり得る。一部の分化細胞は、より大きな発生能を持つ細胞を生じさせる能力も有する。このような能力は天然の場合もあれば、様々な因子での処置によって人工的に誘導される場合もある。多くの生物学的事例において、幹細胞は、2つ以上の異なる細胞型の後代を生産し得ることから「多分化能性」でもあるが、このことは「幹細胞性」の要件ではない。自己再生は、幹細胞の定義における他の古典的部分であり、本文書で使用されるように不可欠である。理論上、自己再生は、2つの主要な機構のいずれかによって生じ得る。幹細胞は非対称的に***して、一方の娘が幹細胞状態を保持し、他方の娘が何らかの異なる他の特異的機能及び表現型を発現することがある。あるいは、集団中の幹細胞の一部が2つの幹細胞へと対称的に***することで、集団中の一部の幹細胞が全体として維持される一方で、集団中の他の細胞は分化した後代のみを生じさせることがある。形式的には、幹細胞として始まった細胞は、分化した表現型に向かって進み得るが、その後「逆転」して幹細胞表現型を再発現する可能性があり、これは当業者がしばしば「脱分化」または「再プログラム」または「逆分化」という用語である。本書で使用される場合、「多能性幹細胞」という用語は、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、胎盤幹細胞などを含む。
本書で使用される場合、「休止」または「細胞休止」とは、栄養素の欠乏によって引き起こされ、適切な刺激に応答して細胞周期に再び入る能力を特徴とする細胞の静止状態を指すために使用される。休止細胞は、代謝活性及び転写活性を保持する。細胞は、G、深いG、及び、細胞周期への復帰を引き起こす刺激に対する細胞の応答性が高い、より浅い休止状態であるGalert状態への移行期間を含め、様々な深さの休止状態を有し得る。休止心筋細胞は、p16及びp130を含む1つ以上の休止マーカーの発現を呈し得る。
「内因性心筋細胞」または「内因性の成熟した心筋細胞」という用語は、本書では、成熟した心筋細胞を指すために使用される。成熟した心筋細胞は、電気的成熟、収縮性成熟、及び/または代謝的成熟を呈し得る。心筋細胞の表現型は、当業者にはよく知られており、例えば、自発的に拍動する能力、心筋トロポニン、TNNT2、TNNI3、ミオシン重鎖、MYH6、MYH7、リアノジン受容体(RyR)、ナトリウムチャネルタンパク質SCN5a、カリウム電位依存性チャネルKCNJ2、ATP2A2、PPARGC1a、Cx43などのマーカーの発現に加え、サルコメアが組織化されていること、桿状細胞を有すること、及びT細管を有することなど、独特の形態学的特徴を含む。
本書で使用される場合、「心筋細胞」、「非自然発生の心筋細胞」、「非天然心筋細胞」、「休止心筋細胞」、及び「成熟した心筋細胞」はすべて、本書で開示される方法によって生産される心筋細胞を指す。心筋細胞は、心室型、心房型、及び/または結節型の心筋細胞、あるいは心筋細胞の混合集団であり得る。心筋細胞は、自発的に拍動する能力、電気的に成熟していること、代謝的に成熟していること、収縮性が成熟していること、1つ以上の遺伝子マーカー(例えばTNNI3、TNNT1、MYH6、MYH7、KCNJ2、RyR、及びREST)の適切な発現を呈すること、1つ以上の休止マーカー(例えばp16及びp130)の適切な発現を呈すること、適切な形態学的特徴(例えば桿状細胞及び組織化されたサルコメア)を呈すること、及び培養下の増大可能性を含むがこれらに限定されない、内因性心筋細胞と共通し得る1つ以上の特徴を呈し得る。しかし、非自然発生の心筋細胞は、遺伝子発現に基づく差異を含め、本書に記載されるような内因性心筋細胞と同一ではなく、内因性心筋細胞から区別可能である。
「心筋細胞マーカー」という用語は、限定されるものではないが、内因性心筋細胞において特異的に発現または存在する、タンパク質、ペプチド、核酸、タンパク質及び核酸の多型、スプライスバリアント、タンパク質または核酸の断片、エレメント、ならびに他の分析物を指す。例示的な心筋細胞マーカーは、心筋トロポニンT(TNNT2)、心筋トロポニンI(TNNI3)、カリウムチャネルKCNJ2、リプレッサーエレメント1サイレンシング転写因子(REST)、リアノジン受容体(RyR)、ナトリウムチャネル(SCN5a)、及びYang et al.Circ.Res.2014;114(3):511-23に記載されているものを含むが、これらに限定されない。
本書で使用される「未熟心筋細胞」という用語は、未熟である(例えば電気的、代謝的、及び/または収縮性)心筋細胞を意味する。未熟心筋細胞は、自動性またはペースメーカー様の活動を示し、高い静止膜電位及び遅いアップストローク速度を有し、さほど組織化されていないサルコメア構造、及び低い最大収縮力を有し、T細管を有せず、主に(酸化的リン酸化ではなく)解糖を通じてエネルギーを獲得し、休止状態ではなく老化状態であり得る。
本書で使用される場合、「増殖」という用語は、細胞の成長及び***を意味する。いくつかの実施形態では、細胞に関して本書で使用される「増殖」という用語は、ある期間にわたって数が増加し得る細胞群を指す。
細胞個体発生の文脈において、形容詞の「分化された」または「分化している」は、「分化細胞」が比較対象の細胞よりも発生経路をさらに進んだ細胞であることを意味する相対的な用語である。したがって、幹細胞は、系統が限定された前駆細胞(中胚葉幹細胞など)に分化することができ、次にこの前駆細胞は、経路をさらに進んだ他の種類の前駆細胞(心筋細胞前駆細胞など)に、そして最終段階の分化細胞に分化することができ、この最終段階の分化細胞は、特定の組織型で特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持することもあれば保持しないこともある。
本書で使用される「薬剤」という用語は、小分子、核酸、ポリペプチド、ペプチド、薬物、イオンなどであるがこれらに限定されない任意の化合物または物質を意味する。「薬剤」は、限定されるものではないが、合成及び自然発生のタンパク質性実体及び非タンパク質性実体を含む、任意の化学物質、実体、または部分であり得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、核酸、核酸アナログ、タンパク質、抗体、ペプチド、アプタマー、核酸のオリゴマー、アミノ酸、または炭水化物であり、これは、限定されるものではないが、タンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマー、ならびにそれらの修飾形及び組み合わせなどを含む。特定の実施形態では、薬剤は、化学部分を有する小分子である。例えば、化学部分には、非置換または置換のアルキル、芳香族、またはヘテロシクリル部分が含まれ、これには、マクロライド、レプトマイシン、及び関連する天然産物またはそれらのアナログが含まれる。化合物は、所望の活性及び/または特性を有することが分かっているものでもよいし、多様な化合物のライブラリから選択されてもよい。
本書で使用される場合、「接触させる」という用語(すなわち、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を成熟因子または成熟因子の組み合わせと接触させること)は、分化培地及び/または薬剤と細胞とを一緒にin vitroでインキュベートすること(例えば、培養下の細胞に成熟因子を加えること)を含むことを意図する。いくつかの実施形態では、「接触させる」という用語は、対象において自然に起こり得る、本書で開示される化合物への細胞のin vivo曝露(すなわち、自然の生理学的プロセスの結果として起こり得る曝露)を含むことを意図しない。本書に記載される実施形態でなされるような、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を成熟因子と接触させるステップは、任意の好適な様式で行われ得る。例えば、細胞は三次元培養で処置され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、心筋細胞の形成を促進する条件で処置される。本開示は、成熟した心筋細胞の形成を促進するあらゆる条件を企図する。成熟した心筋細胞の形成を促進する条件の例は、限定されるものではないが、低付着組織培養プレート、スピナーフラスコ、アグリウェル(aggrewell)プレートにおける懸濁培養を含む。いくつかの実施形態において、本発明者らは、成熟した心筋細胞が培地中で安定したままであることを観察した。いくつかの態様では、細胞の解離及び再プレーティングの前に、血清(例えば熱失活ウシ胎仔血清)が加えられる。
成熟因子(例えば心筋細胞成熟因子)と接触させる細胞は、細胞を安定化させるため、または細胞をさらに分化もしくは成熟させるために、他の分化薬剤などの別の薬剤または環境と、同時に、またはその後に接触させてもよいことが理解される。
同様に、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と接触させた後、少なくとももう1つの心筋細胞成熟因子と接触させてもよい。いくつかの実施形態では、細胞を少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と接触させ、その接触は時間的に分離しているが、いくつかの実施形態では、細胞を少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と実質的に同時に接触させる。いくつかの実施形態では、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、または少なくとも10種の心筋細胞成熟因子と細胞を接触させる。
本書で言及される「細胞培養培地」という用語(本書では「培養培地」または「培地」ともいう)は、細胞の生存能を維持して増殖を支持する栄養素を含有する、細胞培養用の培地である。細胞培養培地は、塩(複数可)、バッファー(複数可)、アミノ酸、グルコースまたは他の糖(複数可)、抗生物質、血清または血清代替物、及び他の成分、例えばペプチド成長因子などのいずれかを、適切な組み合わせで含有し得る。特定の細胞型に通常使用される細胞培養培地は、当業者には公知である。
「細胞株」という用語は、単一の祖先細胞あるいは規定の祖先細胞集団及び/または実質的に同一の祖先細胞の集団から典型的に導出された、大部分が同一または実質的に同一の細胞の集団を指す。細胞株は、長期間(例えば、数か月、数年、無制限の期間)にわたって培養下に維持されているか、または維持できる可能性がある。細胞株は、細胞に無制限の培養寿命を与える自発的または誘導性の形質転換プロセスを経た可能性がある。細胞株には、そのようなものとして当技術分野で認識されているすべての細胞株が含まれる。細胞株の個々の細胞の少なくともいくつかの特性が互いと比べて異なり得るように、細胞が時間の経過と共に変異を獲得し、場合によっては後成的変化を獲得することは理解されるであろう。いくつかの実施形態では、細胞株は、本書に記載される心筋細胞を含む。
「外因性」という用語は、天然源以外の細胞または生物に存在する物質を指す。例えば、「外因性核酸」または「外因性タンパク質」という用語は、ある核酸またはタンパク質が通常見出されないか、またはより少ない量で見出される細胞または生物などの生物学的システムに、人の手が関与するプロセスによって導入された、当該核酸またはタンパク質を指す。ある物質が、細胞またはその物質を受け継ぐ細胞の祖先に導入された場合、その物質は外因性とみなされる。これに対し、「内因性」という用語は、生物学的システムにとって天然の物質を指す。
本書で使用される「遺伝子修飾」または「エンジニアリングされた」細胞という用語は、人の手が関与するプロセスによって外因性核酸が導入された細胞(またはその核酸の少なくとも一部を受け継いだそのような細胞の子孫)を指す。核酸は、例えば、細胞にとって外因性の配列を含有する場合もあり、天然配列(すなわち、細胞に天然に見出される配列)だが非自然発生の構成の配列(例えば、異なる遺伝子からのプロモーターに連結されたコード領域)、または天然配列の改変バージョンなどを含有する場合もある。核酸を細胞に移入するプロセスは、任意の好適な技法によって達成され得る。好適な技法には、リン酸カルシウムまたは脂質を介したトランスフェクション、エレクトロポレーション、及びウイルスベクターを使用した形質導入または感染が含まれる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドまたはその一部分が細胞のゲノムに組み込まれる。核酸は、その後ゲノムから除去または切除されていてもよいが、ただし、そのような除去または切除により、未修飾であるがその他の点では同等の細胞と比べて細胞内に検出可能な変化が生じることを条件とする。遺伝子修飾という用語は、修飾されたRNA(例えば、合成の修飾されたRNA)を細胞に直接導入することを含むことを意図していることを理解されたい。そのような合成の修飾されたRNAには、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼによる急速な分解を防止し、RNAに対する細胞の自然免疫またはインターフェロン応答を回避するまたは低減させるための修飾が含まれる。修飾は、例えば、(a)末端修飾、例えば5’末端修飾(リン酸化、脱リン酸化、共役、逆位結合など)、3’末端修飾(共役、DNAヌクレオチド、逆位結合など)、(b)塩基修飾、例えば、修飾塩基、安定化塩基、不安定化塩基、または広いレパートリーのパートナーと塩基対を形成する塩基、または共役塩基による置換、(c)糖修飾(例えば2’位または4’位における糖修飾)または糖の置換、及び(d)ホスホジエステル結合の修飾または置換を含むヌクレオシド間結合修飾を含むが、これらに限定されない。そのような修飾が翻訳を妨げる(すなわち、例えばウサギ網状赤血球in vitro翻訳アッセイにおいて、修飾がない場合と比べて翻訳の50%以上の低減をもたらす)場合、その修飾は、本書に記載される方法及び組成物に好適ではない。
「発現」という用語は、RNA及びタンパク質の生産、そして場合によってはタンパク質の分泌に関与する細胞プロセスを指し、該当する場合、例えば、転写、翻訳、フォールディング、修飾、及びプロセシングを含むがこれらに限定されない。「発現産物」には、遺伝子から転写されたRNA、及び遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られるポリペプチドが含まれる。
本書で使用される「単離された」または「部分的に精製された」という用語は、核酸またはポリペプチドの場合、その天然源に見出される核酸もしくはポリペプチドと共に存在する、及び/または、細胞によって発現されたとき、もしくは分泌ポリペプチドの場合には分泌されたとき、核酸もしくはポリペプチドと共に存在することになる、少なくとも1つの他の成分(例えば核酸またはポリペプチド)から分離された核酸またはポリペプチドを指す。化学的に合成された核酸もしくはポリペプチド、またはin vitro転写/翻訳を使用して合成されたものは、「単離された」とみなされる。
本書で使用される「単離細胞」という用語は、その細胞が最初に発見された生物から取り出された細胞、またはこのような細胞の子孫を指す。場合により、細胞は、in vitroで、例えば他の細胞の存在下で培養されたものである。場合により、細胞は、後に第2の生物に導入されるか、または細胞(またはその由来細胞)の単離源となった生物に再導入される。
本書で使用される細胞の単離集団に関する「単離集団」という用語は、混合型または不均質の細胞集団から取り出され分離された細胞集団を指す。いくつかの実施形態では、単離集団は、細胞の単離源または濃縮源となった不均質の集団と比較して実質的に純粋な細胞集団である。
特定の細胞集団に関する「実質的に純粋」という用語は、総細胞集団を構成する細胞を基準として少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%純粋である細胞集団を指す。すなわち、心筋細胞の集団に関する「実質的に純粋」または「本質的に精製された」という用語は、本書における用語によって定義される心筋細胞ではない細胞を、約20%未満、より好ましくは約15%、10%、8%、7%未満、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%未満、または1%未満含有する細胞集団を指す。いくつかの実施形態では、本発明は、心筋細胞の集団を増大させる方法を包含し、ここで、増大した心筋細胞の集団は、心筋細胞の実質的に純粋な集団である。
「濃縮する」または「濃縮された」という用語は、本書では互換的に使用され、ある種類の細胞の収量(画分)が、出発培養物または調製物中のその種類の細胞の画分よりも少なくとも10%増加することを意味する。
「再生」または「自己再生」または「増殖」という用語は、本書では互換的に使用され、幹細胞が、長期間、及び/または何か月から何年にもわたって、同じ非特殊化細胞型に***することにより、自らを再生する能力を指すために使用される。場合によっては、増殖は、単一細胞が2つの同一の娘細胞に繰り返し***することによる細胞の増大を指す。
「調節する」という用語は、当技術分野でのその使用と一致するように使用され、すなわち、関心対象のプロセス、経路、または現象において、質的または量的な変化、改変、または修飾を引き起こすまたは容易にすることを意味する。そのような変化は、限定されるものではないが、プロセス、経路、または現象の異なる構成要素または分岐の相対的な強度または活性の増加、減少、または変化であり得る。「モジュレーター」とは、関心対象のプロセス、経路、または現象において、質的または量的な変化、改変、または修飾を引き起こすまたは容易にする薬剤である。
本書で使用される「DNA」という用語は、デオキシリボ核酸と定義される。
本書で使用される「マーカー」は、細胞の特徴及び/または表現型を記述するために使用される。マーカーは、関心対象の特性を含む細胞の選択のために使用され得る。マーカーは特定の細胞によって異なる。マーカーは、特定の細胞型の細胞またはその細胞型によって発現される分子の特徴であり、形態学的特徴か、機能的特徴か、生化学的(酵素的)特徴かを問わない。好ましくは、そのようなマーカーはタンパク質であり、より好ましくは、当技術分野で利用可能な抗体または他の結合分子のエピトープを有する。しかし、マーカーは、タンパク質(ペプチド及びポリペプチド)、脂質、多糖、核酸及びステロイドを含むがこれらに限定されない、細胞に見出される任意の分子からなり得る。形態学的特徴または形質の例は、形状、サイズ、及び核対細胞質比を含むが、これらに限定されない。機能的特徴または形質の例は、特定の基質に接着する能力、特定の色素を組み込むまたは排除する能力、特定の条件下で移動する能力、及び特定の系統に沿って分化または脱分化する能力を含むが、これらに限定されない。マーカーは、当業者にとって利用可能な任意の方法によって検出され得る。マーカーは、形態学的特徴の非存在、またはタンパク質、脂質などの非存在である場合もある。マーカーは、ポリペプチドの有無及び他の形態学的特徴の独特の特徴のパネルの組み合わせであってもよい。
「選択マーカー」という用語は、発現されると、細胞傷害性もしくは細胞増殖抑制性の薬剤への耐性(例えば抗生物質耐性)、栄養素の原栄養性、またはタンパク質を発現する細胞と発現しない細胞とを区別するための基礎として使用できる特定のタンパク質の発現など、選択可能な表現型を細胞に付与する、遺伝子、RNA、またはタンパク質を指す。蛍光タンパク質もしくは発光タンパク質、または基質に作用して有色、蛍光性もしくは発光性の物質を生成する酵素など、その発現が容易に検出できるタンパク質(「検出マーカー」)は、選択マーカーのサブセットを構成する。多能性細胞において通常選択的または排他的に発現される遺伝子に固有の発現コントロールエレメントに連結された選択マーカーの存在により、多能性状態に再プログラムされた体細胞を識別及び選択することが可能になる。ネオマイシン耐性遺伝子(neo)、ピューロマイシン耐性遺伝子(puro)、グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、アデノシンデアミナーゼ(ada)、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(PAC)、ハイグロマイシン耐性遺伝子(hyg)、多剤耐性遺伝子(mdr)、チミジンキナーゼ(TK)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、及びhisD遺伝子など、種々の選択マーカー遺伝子が使用され得る。検出マーカーには、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色、サファイア、黄色、赤色、オレンジ、及びシアン蛍光タンパク質、ならびにこれらのいずれかのバリアントが含まれる。ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼまたはウミシイタケルシフェラーゼ)などの発光タンパク質も有用である。当業者には明らかなように、本書で使用される「選択マーカー」という用語は、遺伝子または遺伝子の発現産物、例えば、コードされたタンパク質を指し得る。
いくつかの実施形態では、選択マーカーは、それを発現しない細胞、または有意に低いレベルでそれを発現する細胞と比べて、それを発現する細胞に増殖及び/または生存の利点を付与する。このような増殖及び/または生存の利点は、典型的に、細胞が特定の条件すなわち「選択的条件」下で維持される場合に生じる。効果的な選択を確実にするためには、マーカーを発現しない細胞が増殖せず、及び/または生存せず、集団から排除されるか、またはその数が集団のごく一部にまで低減するような条件下で、十分な期間にわたり、細胞集団を維持することができる。増殖及び/または生存の利点を付与するマーカーを発現しない細胞の大部分または全体を排除するように選択的条件下で細胞集団を維持することによって、当該マーカーを発現する細胞を選択するプロセスを、本書では「正の選択」といい、当該マーカーは、「正の選択に有用」であると言われる。負の選択及び負の選択に有用なマーカーも、本書に記載される特定の方法の関心対象である。そのようなマーカーの発現は、マーカーを発現しない細胞または有意に低いレベルでそれを発現する細胞と比べて、マーカーを発現する細胞に増殖及び/または生存の不利点を付与する(または、別の見方をすると、マーカーを発現しない細胞は、マーカーを発現する細胞と比べて増殖及び/または生存の利点を有する)。したがって、マーカーを発現する細胞は、選択的条件下で十分な期間維持すると、細胞集団から大部分または全体が排除され得る。
「対象」及び「個体」という用語は、本書では互換的に使用され、細胞の取得源になり得る動物、及び/または本書に記載される細胞を用いた予防的処置を含む処置が提供される動物、例えばヒトを指す。ヒト対象などの特定の動物に特異的な感染、病態、または病状の処置については、対象という用語は、その特定の動物を指す。本書で互換的に使用される「非ヒト動物」及び「非ヒト哺乳動物」には、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、及び非ヒト霊長動物などの哺乳動物が含まれる。「対象」という用語は、哺乳動物、爬虫類、両生類、及び魚類を含むがこれらに限定されない任意の脊椎動物も包含する。しかし、対象は、ヒト、または、飼育哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウマなど、もしくは畜産哺乳動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタなどのような他の哺乳動物などの哺乳動物であることが有利である。
単離細胞に適用される「処置する」、「処置すること」、「処置」などという用語は、細胞を任意の種類のプロセスもしくは条件にさらすこと、または細胞に任意の種類の操作もしくは作業を行うことを含む。対象に適用される場合、「処置する」、「処置すること」、「処置」などという用語は、個体に内科的または外科的な配慮、ケア、または管理を提供することを指す。その個体は通常、疾病もしくは傷害を有するか、または集団の平均的メンバーと比べて疾病になるリスクが高く、そのような配慮、ケア、または管理を必要とするものである。これには、対象が、疾患の少なくとも1つの症状の低減または疾患の向上、例えば有益なまたな所望の臨床結果を呈するように、有効量の組成物を対象に投与することが含まれ得る。本発明では、有益なまたは所望の臨床結果は、検出可能か検出不能にかかわらず、1つ以上の症状の軽減、疾患の程度の減弱、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患進行の遅延または緩徐化、病状の改善または緩和、及び寛解(部分的か完全かを問わない)を含むが、これらに限定されない。処置は、処置を受けない場合の予測生存期間と比較した生存期間の延長を指す場合もある。したがって、処置は病態を向上させ得るが、疾患の完全な治癒でなくてもよいことは、当業者には認識されている。「処置」という用語には予防が含まれる。処置を必要とする者には、ある病態(例えば、筋肉の障害または疾患)の診断を既に受けた者だけでなく、遺伝的感受性または他の要因により病態を発症する可能性が高い者も含まれる。
「組織」という用語は、一緒に特定の特殊機能を果たす特殊化細胞の群または層を指す。「組織特異的」という用語は、特定の組織からの細胞源を指す。
「減少」、「低減した」、「低減」、「減少」または「阻害する」という用語はすべて、本書では、統計的に有意な量の減少を広く意味するように使用される。しかし、疑義を避けるために付言すると、「低減した」、「低減」または「減少」または「阻害する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の減少、または最大100%で100%を含む減少(すなわち、参照サンプルと比較して存在しないレベル)、または参照レベルと比較して10~100%のあらゆる減少を意味する。
「増加した」、「増加」または「増進する」または「活性化する」という用語はすべて、本書では、統計的に有意な量の増加を広く意味するように使用される;疑義を避けるために付言すると、「増加した」、「増加」または「増進する」または「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、または最大100%で100%を含む増加、または参照レベルと比較して10~100%のあらゆる増加、または少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、または参照レベルと比較して2倍から10倍の間もしくはそれを超えるあらゆる増加を意味する。
「統計的に有意」または「有意に」という用語は、統計的有意性を指し、概して、マーカーの濃度が正常より2標準偏差(2SD)以上低いことを意味する。この用語は、差異があることの統計的な証拠を指す。これは、帰無仮説が実際には真である場合に帰無仮説を棄却する決定を下す確率と定義される。この決定は、多くの場合、p値を使用して行われる。
本書で使用される、「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、本発明に必須である組成物、方法、及びそれらのそれぞれの構成要素(複数可)に関して使用されるが、必須か否かを問わず不特定の要素を含むことについて制限されない。
本書で使用される「から本質的になる」という用語は、所定の実施形態に必要な要素を指す。この用語は、該当する本発明の実施形態の基本的及び新規または機能的な特徴(複数可)に著しく影響しない追加要素の存在を許容する。
「からなる」という用語は、実施形態の説明に挙げられていない要素を除外する、本書に記載される組成物、方法、及びそれらのそれぞれの構成要素を指す。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈により別段明記されていない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法(the method)」への言及には、本書に記載される種類の、及び/または本開示を読むことなどにより当業者に明らかとなる、1つ以上の方法及び/またはステップが含まれる。
幹細胞
幹細胞は、有糸細胞***によって自らを再生する能力を保持し、多岐にわたる特殊化された細胞型へと分化し得る細胞である。哺乳動物幹細胞には、大別して、胚盤胞に見られる胚性幹(ES)細胞、及び成体組織に見られる成体幹細胞という2つの種類がある。発生中の胚において、幹細胞は、特殊化された胚組織のすべてに分化することができる。成体生物では、幹細胞及び始原細胞が身体の修復系として機能し、特殊化細胞を補充するが、さらに、血液、皮膚、または腸組織などの再生器官の正常な代謝回転を維持する。多能性幹細胞は、3つの胚葉のいずれに由来する細胞にも分化することができる。
特定の実施形態は、心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)またはその前駆細胞を生産するための幹細胞の使用に関して以下に記載されるが、本書に記載される例示的なプロトコルと同様のプロトコルを使用して少なくとも1つの心筋細胞をもたらすために、幹細胞の代わりに、または幹細胞と共に、生殖細胞を使用することもできる。好適な生殖細胞は、例えば、最終月経期間から約8~11週間後に採取されたヒト胎児材料中に存在する原始生殖細胞から調製することができる。例示的な生殖細胞調製方法は、例えば、Shamblott et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726, 1998及び米国特許第6,090,622号に記載されている。
ヒト胚性幹細胞(hESC)またはマウス胚性幹細胞(mESC)などのES細胞は、事実上無限の複製能力と、ほとんどの細胞型に分化する可能性とを備えており、原理上、臨床療法用の分化細胞を生成するための無制限の出発材料を提供する(stemcells.nih.gov/info/scireport/2006report.htm,2006)。ES細胞の考えられる応用の1つは、まず、例えばhESCから心臓始原細胞を生産し、次いで、心臓始原細胞を少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞へとさらに分化させ、次いで、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)へとさらに分化させることによって、心不全(例えば慢性心不全)の細胞置換療法のための新しい心筋細胞を生成することである。
hESC細胞は、例えば、Cowan et al. (N Engl. J. Med. 350:1353, 2004)及びThomson et al. (Science 282:1145, 1998)に記載されており、他の霊長動物からの胚性幹細胞、アカゲザル幹細胞(Thomson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:7844, 1995)、マーモセット幹細胞(Thomson et al., Biol. Reprod. 55:254, 1996)、及びヒト胚生殖(hEG)細胞(Shamblott et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726, 1998)も、本書で開示される方法において使用され得る。mESCは、例えば、Tremml et al. (Curr Protoc Stem Cell Biol. Chapter 1:Unit 1C.4, 2008)に記載されている。幹細胞は、例えば、単能性、全能性、多分化能性、または多能性であり得る。いくつかの例では、少なくとも1つの胚層、または3つすべての胚層の派生物である後代を生産することができる霊長動物起源の任意の細胞が、本書で開示される方法において使用され得る。
特定の例において、ES細胞は、例えば、Cowan et al. (N Engl. J. Med. 350:1353, 2004)、及び米国特許第5,843,780号、及びThomson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:7844, 1995に記載されているように単離され得る。例えば、hESC細胞は、Thomson et al.(米国特許第6,200,806号、Science 282:1145, 1998、Curr. Top. Dev. Biol. 38:133 ff., 1998)及びReubinoff et al, Nature Biotech. 18:399, 2000に記載されている技法を使用して、ヒト胚盤胞細胞から調製することができる。hESCと同等の細胞型には、例えばWO01/51610(Bresagen)に概説されているような、原始外胚葉様(EPL)細胞などの多能性派生物が含まれる。hESCは、ヒトの着床前胚から取得することもできる。あるいは、in vitro受精(IVF)胚を使用することもできるし、1細胞のヒト胚を胚盤胞期まで増大させることもできる(Bongso et al., Hum Reprod 4: 706, 1989)。胚は、G1.2及びG2.2培地で胚盤胞期まで培養される(Gardner et al., Fertil. Steril. 69:84, 1998)。透明帯が、プロナーゼ(Sigma)に短時間曝露することにより、発生した胚盤胞から除去される。内部細胞塊は免疫手術によって単離でき、免疫手術では、胚盤胞をウサギ抗ヒト脾臓細胞抗血清の1:50希釈物に30分間曝露し、次いでDMEMで5分間の洗浄を3回行い、モルモット補体の1:5希釈物(Gibco)に3分間曝露する(Solter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72:5099, 1975)。DMEMでさらに2回洗浄した後、溶解した栄養外胚葉細胞を穏やかなピペッティングによって無傷の内部細胞塊(ICM)から除去し、ICMをmEFフィーダー層上にプレーティングする。9~15日後、1mM EDTAを含むカルシウム不含かつマグネシウム不含のリン酸緩衝食塩水(PBS)への曝露、ディスパーゼもしくはトリプシンへの曝露、またはマイクロピペットを用いた機械的解離のいずれかによって、内部細胞塊由来の増殖物を凝集塊に解離させ、次いで、新鮮な培地中のmEFに再プレーティングすることができる。未分化の形態を有する成長中のコロニーをマイクロピペットで個別に選択し、機械的に解離させて凝集塊にし、再プレーティングすることができる。ES様の形態は、明らかに高い核対細胞質比及び顕著な核小体を有する密なコロニーと特徴付けられる。得られたhESCはその後、1~2週間ごとに、例えば、手短なトリプシン処理、ダルベッコPBS(2mM EDTA含有)への曝露、IV型コラゲナーゼ(約200U/mL;Gibco)への曝露、またはマイクロピペットによる個々のコロニーの選択により、慣例的に分割され得る。いくつかの例では、約50~100細胞の凝集塊サイズが最適である。mESC細胞は、例えば、Conner et al. (Curr. Prot. in Mol. Biol. Unit 23.4, 2003)に記載されている技法を使用することで調製することができる。
胚性幹細胞は、霊長動物種のメンバーの胚盤胞から単離することができる(米国特許第5,843,780号、Thomson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:7844, 1995)。ヒト胚性幹(hES)細胞は、Thomson et al.(米国特許第6,200,806号、Science 282:1145, 1998、Curr. Top. Dev. Biol. 38:133 ff., 1998)及びReubinoff et al, Nature Biotech. 18:399, 2000に記載されている技法を使用して、ヒト胚盤胞細胞から調製することができる。hES細胞と同等の細胞型には、WO01/51610(Bresagen)に概説されているような、原始外胚葉様(EPL)細胞などの多能性派生物が含まれる。
あるいは、いくつかの実施形態は、hES細胞は、ヒトの着床前胚から取得することもできる。あるいは、in vitro受精(IVF)胚を使用することもできるし、1細胞のヒト胚を胚盤胞期まで増大させることもできる(Bongso et al., Hum Reprod 4: 706, 1989)。胚は、G1.2及びG2.2培地で胚盤胞期まで培養される(Gardner et al., Fertil. Steril. 69:84, 1998)。透明帯が、プロナーゼ(Sigma)に短時間曝露することにより、発生した胚盤胞から除去される。内部細胞塊は免疫手術によって単離され、免疫手術では、胚盤胞をウサギ抗ヒト脾臓細胞抗血清の1:50希釈物に30分間曝露し、次いでDMEMで5分間の洗浄を3回行い、モルモット補体の1:5希釈物(Gibco)に3分間曝露する(Solter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72:5099, 1975)。DMEMでさらに2回洗浄した後、溶解した栄養外胚葉細胞を穏やかなピペッティングによって無傷の内部細胞塊(ICM)から除去し、ICMをmEFフィーダー層上にプレーティングする。
9~15日後、1mM EDTAを含むカルシウム不含かつマグネシウム不含のリン酸緩衝食塩水(PBS)への曝露、ディスパーゼもしくはトリプシンへの曝露、またはマイクロピペットを用いた機械的解離のいずれかによって、内部細胞塊由来の増殖物を凝集塊に解離させ、次いで、新鮮な培地中のmEFに再プレーティングする。未分化の形態を有する成長中のコロニーをマイクロピペットで個別に選択し、機械的に解離させて凝集塊にし、再プレーティングする。ES様の形態は、明らかに高い核対細胞質比及び顕著な核小体を有する密なコロニーと特徴付けられる。得られたES細胞はその後、1~2週間ごとに、手短なトリプシン処理、ダルベッコPBS(2mM EDTA含有)への曝露、IV型コラゲナーゼ(約200U/mL;Gibco)への曝露、またはマイクロピペットによる個々のコロニーの選択により、慣例的に分割される。約50~100細胞の凝集塊サイズが最適である。
いくつかの実施形態では、ヒト胚性生殖(hEG)細胞は、原始内胚葉細胞に分化させるために本書で開示される方法において使用され得る多能性幹細胞である。使用されるhEG細胞は、最終月経期間の約8~11週間後に採取されたヒト胎児材料中に存在する原始生殖細胞から調製することができる。好適な調製方法は、Shamblott et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726, 1998及び米国特許第6,090,622号に記載されており、これは、参照によりその全体が本書に組み込まれる。
手短に述べると、生殖***を処理して、脱凝集した細胞を形成する。EG成長培地は、DMEM、4500mg/L D-グルコース、2200mg/L mM NaHCO、15%ES適格ウシ胎仔血清(BRL)、2mMグルタミン(BRL)、1mMピルビン酸ナトリウム(BRL)、1000~2000U/mLヒト組換え白血病阻害因子(LIF、Genzyme)、1~2ng/mLヒト組換えbFGF(Genzyme)、及び10μMフォルスコリン(10%DMSO中)である。96ウェル組織培養プレートを、5000radのγ線照射で失活した、LIF、bFGFまたはフォルスコリンを含まない改変EG成長培地で3日間培養したフィーダー細胞(例えばSTO細胞、ATCC番号CRL1503)のサブコンフルエント層で調製し、約0.2mLの初代生殖細胞(PGC)懸濁液を各ウェルに加える。EG成長培地中で7~10日後に最初の継代を行い、各ウェルを、照射済みSTOマウス線維芽細胞を用いて事前に調製した24ウェル培養皿の1つのウェルに移す。典型的には7~30日または1~4継代後、EG細胞と一致する細胞形態が観察されるまで、培地を毎日交換しながら細胞を培養する。
特定の例において、幹細胞は、本書で開示される方法に従って少なくとも1つの心筋細胞成熟因子に曝露される前に未分化(例えば、特定の系統に傾倒していない細胞)であり得るが、他の例では、本書に記載される少なくとも1つの心筋細胞成熟因子(複数可)の曝露前に、幹細胞を1つ以上の中間細胞型に分化させることが望ましい場合がある。例えば、幹細胞は、胚または成体起源の分化細胞からそれらを区別するために使用され得る未分化細胞の形態学的、生物学的、または物理的な特徴を示し得る。いくつかの例では、未分化細胞は、二次元の顕微鏡視野において、高い核/細胞質比及び顕著な核小体を有する細胞のコロニーとして現れる場合がある。幹細胞は、それ自体でもよく(例えば、未分化細胞が実質的に存在しない)、または分化細胞の存在下で使用されてもよい。特定の例において、幹細胞は、幹細胞が成長でき、場合により分化できるように、好適な栄養素、及び場合により他の細胞の存在下で培養され得る。例えば、幹細胞の成長を助けるために、胚性線維芽細胞または線維芽細胞様細胞が培養物中に存在し得る。線維芽細胞は、幹細胞の成長の一段階で存在し得るが、必ずしもすべての段階で存在するとは限らない。例えば、線維芽細胞は、第1の培養段階で幹細胞培養物に添加され、その後の1つ以上の培養段階では幹細胞培養物に添加されなくてもよい。
本発明のすべての態様で使用される幹細胞は、任意の種類の組織(例えば、胎児もしくは胎児前の組織などの胚組織、または成体組織)に由来する任意の細胞であり得、この幹細胞は、適切な条件下で異なる細胞型の後代、例えば、3つの胚層(内胚葉、中胚葉、及び外胚葉)の少なくとも1つのすべての派生物を生産できるという特徴を有する。これらの細胞型は、確立された細胞株の形態で提供されてもよいし、または初代胚組織から直接取得され、分化のために直ちに使用されてもよい。NIHヒト胚性幹細胞レジストリに収載されている細胞、例えばhESBGN-01、hESBGN-02、hESBGN-03、hESBGN-04(BresaGen,Inc.);HES-1、HES-2、HES-3、HES-4、HES-5、HES-6(ES Cell International);Miz-hES1(MizMedi Hospital-Seoul National University);HSF-1、HSF-6(University of California、San Francisco);及びH1、H7、H9、H13、H14(Wisconsin Alumni Research Foundation(WiCell Research Institute))が含まれる。いくつかの実施形態では、成熟した心筋細胞への化学誘導分化に使用されたヒト幹細胞または多能性幹細胞の供給源は、ヒト胚の破壊を伴わなかった。
別の実施形態では、幹細胞は、固形組織を含む組織から単離され得る。いくつかの実施形態では、組織は、皮膚、脂肪組織(fat tissue)(例えば、脂肪組織(adipose tissue))、筋肉組織、心臓組織または心組織である。他の実施形態では、組織は、例えば、臍帯血、胎盤、骨髄、または軟骨であるが、これらに限定されない。
関心対象の幹細胞には、Thomson et al. (1998) Science 282:1145に記載されているヒト胚性幹(hES)細胞、他の霊長動物由来の胚性幹細胞、例えばアカゲザル幹細胞(Thomson et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:7844)、マーモセット幹細胞(Thomson et al. (1996) Biol. Reprod. 55:254)、及びヒト胚生殖(hEG)細胞(Shambloft et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726, 1998)によって例示される、様々な種類の胚細胞も含まれる。中胚葉幹細胞及び他の初期心臓原性細胞など(Reyes et al. (2001) Blood 98:2615-2625、Eisenberg & Bader (1996) Circ Res. 78(2):205-16などを参照のこと)、系統が決定された幹細胞も関心対象である。幹細胞は、任意の哺乳動物種、例えばヒト、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、齧歯動物、例えばマウス、ラット、ハムスター、霊長動物などから取得され得る。いくつかの実施形態では、本書で開示される方法及び組成物で使用された多能性細胞の供給源のために、ヒト胚は破壊されなかった。
ES細胞は、特定の分化系統に傾倒していない場合、未分化とみなされる。このような細胞は、胚または成体起源の分化細胞からそれらを区別する形態学的特徴を示す。未分化ES細胞は、当業者によって容易に認識され、典型的に、二次元の顕微鏡視野において、高い核/細胞質比及び顕著な核小体を有する細胞のコロニーとして現れる。未分化ES細胞は、未分化細胞の存在を検出するためのマーカーとして使用され得る遺伝子を発現し、そのポリペプチド産物は、負の選択のためのマーカーとして使用され得る。例えば、各々が参照により本書に組み込まれている、米国特許出願第2003/0224411号A1、Bhattacharya (2004) Blood 103(8):2956-64、及び上掲のThomson(1998)を参照されたい。ヒトES細胞株は、段階特異的胚性抗原(SSEA)-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、及びアルカリホスファターゼを含む、未分化の非ヒト霊長動物ES細胞及びヒトEC細胞を特徴付ける細胞表面マーカーを発現する。SSEA-4エピトープを有するグロボ系糖脂質GL7は、SSEA-3エピトープを有するグロボ系糖脂質GbSへのシアル酸の付加によって形成される。したがって、GL7は、SSEA-3及びSSEA-4の両方に対する抗体と反応する。未分化ヒトES細胞株はSSEA-1について染色されなかったが、分化細胞はSSEA-Iについて強く染色された。未分化形態のhES細胞を増殖させる方法は、WO99/20741、WO01/51616、及びWO03/020920に記載されている。
内皮幹細胞、筋肉幹細胞、及び/または神経幹細胞の好適な供給源からの細胞の混合物は、当技術分野で公知の方法により、哺乳動物ドナーから採取され得る。好適な供給源は造血微小環境である。例えば、循環末梢血、好ましくは可動化(すなわち動員)されたものが、対象から取り出され得る。あるいは、自家移植を受けるヒト患者などの哺乳動物から骨髄が取得され得る。いくつかの実施形態では、幹細胞は、例えば、参照により全体が本書に組み込まれている米国特許第7,390,484号及び同第7,429,488号で開示されているCytoriのCELUTION(商標)SYSTEMを使用して、対象の脂肪組織から取得され得る。
いくつかの実施形態では、ヒト臍帯血細胞(HUCBC)が、本書で開示される方法において有用である。ヒトUBC細胞は、造血始原細胞及び間葉始原細胞の豊富な供給源として認識されている(Broxmeyer et al., 1992 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4109-4113)。これまで、臍帯及び胎盤血は、乳児の誕生時に通常廃棄される廃棄物と考えられていた。臍帯血細胞は、移植可能な幹細胞及び始原細胞の供給源として、また悪性疾患(すなわち、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び神経芽細胞腫)ならびにファンコーニ貧血及び再生不良性貧血などの非悪性疾患の処置のための骨髄再増殖細胞の供給源として使用されている(Kohli-Kumar et al., 1993 Br. J. Haematol. 85:419-422、Wagner et al., 1992 Blood 79;1874-1881、Lu et al., 1996 Crit. Rev. Oncol. Hematol 22:61-78、Lu et al., 1995 Cell Transplantation 4:493-503)。HUCBCの明確な利点は、胎児細胞に非常によく似たこれらの細胞の未熟な免疫であり、これは、宿主による拒絶反応のリスクを有意に低減させる(Taylor & Bryson, 1985 J.Immunol. 134:1493-1497)。ヒト臍帯血には、間葉原細胞及び造血始原細胞、ならびに組織培養で増大させることができる内皮細胞前駆細胞が含まれている(Broxmeyer et al., 1992 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4109-4113、Kohli-Kumar et al., 1993 Br. J. Haematol. 85:419-422、Wagner et al., 1992 Blood 79;1874-1881、Lu et al., 1996 Crit. Rev. Oncol. Hematol 22:61-78、Lu et al., 1995 Cell Transplantation 4:493-503、Taylor & Bryson, 1985 J. Immunol. 134:1493-1497、Broxmeyer, 1995 Transfusion 35:694-702、Chen et al., 2001 Stroke 32:2682-2688、Nieda et al., 1997 Br. J. Haematology 98:775-777、Erices et al., 2000 Br. J. Haematology 109:235-242)。臍帯血中の造血始原細胞の総含有量は骨髄と同等かそれを超えており、さらに、増殖性の高い造血細胞は、HUCBCでは骨髄中よりも8倍高く、CD14、CD34、及びCD45などの造血マーカーを発現する(Sanchez-Ramos et al., 2001 Exp. Neur. 171:109-115、Bicknese et al., 2002 Cell Transplantation 11:261-264、Lu et al., 1993 J. Exp Med. 178:2089-2096)。
別の実施形態では、多能性細胞は、循環末梢血などの造血微小環境中の、好ましくは、哺乳動物の末梢血、臍帯血、骨髄、胎児肝臓、または卵黄嚢の単球画分からの細胞である。幹細胞、特に神経幹細胞は、髄膜を含む中枢神経系に由来することもある。
別の実施形態では、多能性細胞は、胚様体中に存在し、手短なプロテアーゼ消化によりES細胞を採取し、未分化ヒトESCの小さな凝集塊を懸濁培養下で成長させることによって形成される。分化は馴化培地の除去によって誘導される。得られた胚様体は、半固体基質上にプレーティングされる。分化細胞の形成は、約7日後付近から約4週間後付近に観察され得る。胚様体または同様の構造を部分的に解離して細胞凝集体をもたらすことにより、幹細胞のin vitro培養物から、生存能があり分化している細胞が選択される。凝集体中の細胞間の接触を実質的に維持する方法を使用して、表現型の特徴について関心対象の細胞を含む凝集体が選択される。
代替的な実施形態では、幹細胞は、体細胞または分化細胞に由来する幹細胞などの再プログラムされた幹細胞であり得る。そのような実施形態では、脱分化幹細胞は、例えば、新生細胞、腫瘍細胞、及びがん細胞、あるいは人工多能性幹細胞またはiPS細胞などの誘導された再プログラム細胞であり得るが、これらに限定されない。
クローニング及び細胞培養
本書に記載される技術において使用され得る分子遺伝子学及び遺伝子エンジニアリングのための例示的な方法は、例えば、最新版のMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Sambrook et al., Cold Spring Harbor)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Miller & Calos eds.)、及びCurrent Protocols in Molecular Biology(F. M. Ausubel et al. eds., Wiley & Sons)に見出すことができる。細胞生物学、タンパク質化学、及び抗体の技法は、例えば、Current Protocols in Protein Science(J. E. Colligan et al. eds., Wiley & Sons)、Current Protocols in Cell Biology(J. S. Bonifacino et al., Wiley & Sons)、及びCurrent protocols in Immunology(J. E. Colligan et al. eds., Wiley & Sons.)に見出すことができる。遺伝子操作用の例示的な試薬、クローニングベクター、及びキットは、例えば、BioRad、Stratagene、Invitrogen、ClonTech、及びSigma-Aldrich Coから商業的に取得され得る。
好適な細胞培養法は、例えば、最新版のCulture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique(R. I. Freshney ed., Wiley & Sons)、General Techniques of Cell Culture(M. A. Harrison & I. F. Rae, Cambridge Univ. Press)、及びEmbryonic Stem Cells: Methods and Protocols(K. Turksen ed., Humana Press)に見出すことができる。好適な組織培養用品及び試薬は、例えば、Gibco/BRL、Nalgene-Nunc International、Sigma Chemical Co.、及びICN Biomedicalsから市販されている。
多能性幹細胞は、当業者が、分化を促進することなく増殖を促進する培養条件を使用して、継続的に培養下で繁殖させることができる。例示的な血清含有ES培地は、80%のDMEM(例えばKnock-Out DMEM、Gibco)、20%の規定のウシ胎仔血清(FBS、Hyclone)または血清代替物(WO98/30679)のいずれか、1%の非必須アミノ酸、1mMのL-グルタミン、及び0.1mMのβ-メルカプトエタノールを用いて作製される。使用直前に、ヒトbFGFを4ng/mLまで添加する(WO99/20741、Geron Corp.)。従来、ES細胞は、フィーダー細胞、典型的には胚組織または胎児組織に由来する線維芽細胞の層で培養される。
あるいは、多能性SCは、フィーダー細胞がなくても未分化状態で維持することができる。フィーダーフリー培養の環境には、好適な培養基質、特にMATRIGEL(登録商標)(ゼラチン状タンパク質混合物)またはラミニンなどの細胞外マトリックスが含まれる。典型的に、酵素消化は、細胞が完全に分散する前に停止する(コラゲナーゼIVを用いる場合は約5分)。次いで、約10~2,000細胞の凝集塊をさらに分散させることなく基質上に直接プレーティングする。
心筋細胞の生成
本開示の諸態様は、心筋細胞(例えば、成熟した休止心筋細胞)の生成に関する。概して、本書で開示される方法に従って生産された心筋細胞は、電気的に成熟していること(例えば、減少した自動性を呈すること)、収縮性が成熟していること、及び代謝的に成熟していることを含むがこれらに限定されない、機能的な成熟した休止心筋細胞のいくつかの特長を示す。
心筋細胞は、幹細胞または多能性細胞を所望の分化段階まで分化させるための任意の好適な培養プロトコルまたは一連の培養プロトコルに従って生産され得る。いくつかの実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞は、少なくとも1つの多能性細胞を心筋細胞またはその前駆細胞に分化させるのに好適な期間及び条件で、少なくとも1つの多能性細胞を培養することによって生産される。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、未熟心筋細胞を老化状態から休止状態に移行させ、それにより、心筋細胞の成熟を増進することによって生産される。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は、心筋細胞の実質的に純粋な集団である。いくつかの実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞の集団は、多能性細胞または分化細胞の混合物を含む。いくつかの実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞の集団は、胚性幹細胞または多能性細胞またはiPS細胞を実質的に含まないか、または全く含まない。
いくつかの実施形態では、線維芽細胞などの体細胞を、例えば組織生検として、例えば皮膚生検などとして対象から単離し、人工多能性幹細胞へと再プログラムし、さらに分化させて、本書に記載される組成物及び方法で使用するための心筋細胞またはその前駆細胞を生産することができる。いくつかの実施形態では、線維芽細胞などの体細胞を、当業者に公知の方法によって培養下に維持し、いくつかの実施形態では繁殖させ、その後、本書で開示される方法によって心筋細胞へと変換する。
いくつかの実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞を、当業者に公知の方法によって培養下に維持し、いくつかの実施形態では繁殖させ、その後、本書で開示される方法によって心筋細胞へと変換する。
さらに、心筋細胞またはその前駆細胞、例えば未熟心筋細胞は、任意の哺乳動物種のものでよく、非限定的な例には、マウス、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヒトの細胞が含まれる。明確かつ簡潔にするために、本書における方法の説明は哺乳動物心筋細胞またはその前駆細胞に言及しているが、本書に記載される方法のすべてが他の細胞型の心筋細胞またはその前駆細胞に容易に適用され得ることは理解されるはずである。いくつかの実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞は、ヒト個体に由来する。
本開示の諸態様には、未熟な老化心筋細胞が関わる。本書で使用される未熟心筋細胞は、任意の供給源に由来することができ、または任意の好適なプロトコルに従って生成することができる。いくつかの態様では、多能性幹細胞、例えばiPSCまたはhESCは、未熟心筋細胞に分化する。いくつかの態様では、未熟心筋細胞は、さらに成熟して、成熟した心筋細胞となる。いくつかの実施形態では、参照により本書に組み込まれているLian et al.(Nat Protoc. 2012;8(1): 162-175)に記載されている分化プロトコルを使用して、多能性幹細胞を未熟心筋細胞に分化させる。いくつかの実施形態では、Lianによって説明された分化プロトコルを、本書に記載されるように修正した。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞を1つ以上の小分子と接触させてWnt経路を操作し、それにより、多能性幹細胞を未熟心筋細胞へと分化させる。いくつかの態様では、1つ以上の小分子は、CHIR99021及びIWP4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞の集団を第1のWnt経路モジュレーター(例えばCHIR99021)と接触させ、次いで第2のWnt経路モジュレーター(例えばIWP4)と接触させる。
本開示の諸態様には、心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)が関わる。本書で使用される心筋細胞は、任意の供給源に由来することができ、または任意の好適なプロトコルに従って生成することができる。いくつかの態様では、老化心筋細胞(例えば、未熟心筋細胞)は、休止心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)へと誘導される。細胞休止は、心筋細胞の成熟を容易にし得る。いくつかの態様では、未熟心筋細胞を成熟するように誘導して、成熟した心筋細胞にする。
いくつかの態様では、本開示は、心筋細胞の休止を誘導する(例えば、心筋細胞を休止状態に移行させる)方法を提供する。特定の態様では、心筋細胞の休止の誘導は、心筋細胞の成熟を増進する。いくつかの実施形態では、心筋細胞における細胞周期制御因子の発現を上方制御することにより、心筋細胞を休止状態に移行させる。特定の実施形態では、心筋細胞におけるp53の発現を上方制御することにより、心筋細胞を休止状態に移行させる。p53の発現は、心筋細胞において、p53のアクチベーターと心筋細胞を接触させることによって上方制御され得る。いくつかの実施形態では、p53のアクチベーターは、小分子である。特定の実施形態では、p53のアクチベーターは、Torin1である。特定の実施形態では、p53のアクチベーターは、Torin1ではない。いくつかの実施形態では、p53のアクチベーターは、MDM2のインヒビターである。特定の実施形態では、p53のアクチベーターは、nutlin-3aである。いくつかの実施形態では、p53のアクチベーターは、セノリティックである。特定の実施形態では、p53のアクチベーターは、ケルセチンである。いくつかの実施形態では、p53のアクチベーターは、2つ以上の薬剤の組み合わせである。
いくつかの実施形態では、mTORシグナル伝達を阻害し、p53の発現を上方制御することにより、心筋細胞を休止状態に移行させる。いくつかの実施形態では、p53の発現を上方制御し、mTORシグナル伝達を阻害しないことにより、心筋細胞を休止状態に移行させる。いくつかの態様では、mTORシグナル伝達は、心筋細胞において、mTORC1及びmTORC2のインヒビターと心筋細胞を接触させることによって阻害され得る。いくつかの実施形態では、mTORC1及びmTORC2のインヒビターは、Torin1である。いくつかの実施形態では、mTORC1及びmTORC2のインヒビターは、Torin1ではない。特定の実施形態では、心筋細胞を単一の薬剤と接触させることによって、p53発現が上方制御され、mTORシグナル伝達が阻害される。特定の実施形態では、単一の薬剤はTorin1である。他の実施形態では、単一の薬剤はTorin1ではない。
いくつかの態様では、本開示は、未熟心筋細胞から成熟した(例えば電気的に成熟した、収縮性の成熟した、及び/または代謝的に成熟した)心筋細胞を生成する方法を提供し、当該方法は、心筋細胞の休止を誘導すること(すなわち、心筋細胞を休止状態すなわち成熟状態に向かって移行させること)を含む。いくつかの実施形態では、p53発現を上方制御することにより、心筋細胞を休止状態(例えば成熟状態)に向かって移行させる。p53のアクチベーター(例えばnutlin-3aまたはケルセチン)と未熟心筋細胞を接触させることにより、心筋細胞を休止状態に向かって移行させてもよい。いくつかの実施形態では、p53発現を上方制御し、mTORシグナル伝達を下方制御することにより、心筋細胞を休止状態(例えば成熟状態)に向かって移行させる。いくつかの実施形態では、p53発現を上方制御し、mTORシグナル伝達を下方制御しないことにより、心筋細胞を休止状態に向かって移行させる。いくつかの実施形態では、未熟な老化心筋細胞をTorin1と接触させることにより、心筋細胞を休止状態に向かって移行させる。いくつかの実施形態では、未熟な老化心筋細胞をTorin1ではない薬剤と接触させることにより、心筋細胞を休止状態に向かって移行させる。
いくつかの態様では、本開示は、未熟心筋細胞から成熟した(例えば電気的に成熟した、収縮性の成熟した、及び/または代謝的に成熟した)心筋細胞を生成する方法を提供し、当該方法は、p53アクチベーター及び/またはmTORのインヒビターを含む少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と、未熟心筋細胞を含む細胞集団を接触させて、集団中の少なくとも1つの未熟心筋細胞が心筋細胞に成熟すること(例えばin vitro成熟)を誘導することを含む。いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞を含む細胞集団を、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子(例えばp53アクチベーター及び/またはmTORインヒビター)と接触させる。いくつかの態様では、mTORの阻害と組み合わせてp53発現を上方制御して、幹細胞に由来する心筋細胞の成熟を増進する。いくつかの態様では、mTORを阻害せずにp53発現を上方制御して、幹細胞に由来する心筋細胞の成熟を増進する。
本開示は、未熟心筋細胞が老化状態から休止状態に移行することを促す(例えば、心筋細胞へと分化及び/または成熟させる(例えば単独で、または別の心筋細胞成熟因子(例えばmTORインヒビター)と組み合わせて))、あらゆるp53アクチベーターの使用を企図する。いくつかの実施形態では、p53アクチベーターは、p53発現の上方制御因子である。p53の上方制御は、総p53タンパク質及びリン酸化p53タンパク質の増加を含み得る。p53アクチベーターまたは上方制御因子の例には、小分子、核酸、アミノ酸、代謝産物、ポリペプチド、抗体及び抗体様分子、アプタマー、大環状分子、ならびに他の分子が含まれる。いくつかの態様では、p53の上方制御因子は、MDM2インヒビターである。特定の態様では、p53の上方制御因子は、nutlin-3aである。いくつかの態様では、p53の上方制御因子は、セノリティックである。特定の態様では、p53の上方制御因子は、ケルセチンである。いくつかの態様では、p53の上方制御因子は、Torin1である。いくつかの態様では、p53の上方制御因子は、Torin1ではない薬剤である。いくつかの態様では、p53の上方制御因子は、mTORインヒビターではない薬剤である。いくつかの態様では、p53の上方制御因子は、nutlin-3a及びTorin1の組み合わせである。いくつかの態様では、p53の上方制御因子は、nutlin-3a及びケルセチンの組み合わせである。いくつかの態様では、p53の上方制御因子は、nutlin-3a、ケルセチン、及びTorin1の組み合わせである。
いくつかの態様では、本開示は、未熟心筋細胞から成熟した(例えば電気的に成熟した、収縮性の成熟した、及び/または代謝的に成熟した)心筋細胞を生成する方法を提供し、当該方法は、mTORインヒビターを含む少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と、未熟心筋細胞を含む細胞集団を接触させて、集団中の少なくとも1つの未熟心筋細胞が心筋細胞に成熟すること(例えばin vitro成熟)を誘導することを含む。いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞を含む細胞集団を、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子(例えばmTORインヒビター、PI3Kインヒビター、またはAktインヒビター)と接触させる。いくつかの態様では、幹細胞に由来する心筋細胞の成熟を増進するために、PI3K/Akt/mTOR経路を操作する(例えば阻害する)。
本開示は、未熟心筋細胞が心筋細胞に分化及び/または成熟することを促す(例えば単独で、または別の心筋細胞成熟因子(例えばp53上方制御因子)と組み合わせて)、あらゆるmTORインヒビターの使用を企図する。いくつかの実施形態では、mTORは、mTORC1及び/またはmTORC2を含む。いくつかの実施形態では、mTORインヒビターは、mTORC1及び/またはmTORC2のインヒビターである。いくつかの実施形態では、mTORインヒビターは、4E-BP1のリン酸化を阻害する。4E-BP1のリン酸化を阻害すると、酸化的リン酸化経路の制御に影響が及び得る。4E-BP1のリン酸化を阻害すると、p21が分解され、それにより、p53が上方制御され得る。酸化的リン酸化経路のモジュレーターの非限定的な例には、4EGI-1、JR-AB2-011(mTORC2インヒビター)、AICAR(AMPKアクチベーター)、メトホルミン(AMPKアクチベーター及びmTORC1/2インヒビター)、及びHLM006474(E2Fインヒビター)が含まれる。いくつかの実施形態では、mTORインヒビターは、4E-BP1及びリボソームタンパク質S6のリン酸化を阻害する。いくつかの実施形態では、mTORインヒビターは、Torin1、Torin2、ラパマイシン、エベロリムス、及び/またはテムシロリムスを含む。特定の実施形態では、未熟心筋細胞を含む細胞集団をTorin1と接触させて、集団中の少なくとも1つの未熟心筋細胞が心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)に成熟することを誘導する。いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞を含む細胞集団をTorin2と接触させて、集団中の少なくとも1つの未熟心筋細胞が心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)に成熟することを誘導する。
いくつかの実施形態では、接触は、1つ以上の心筋細胞成熟因子を含む培養培地で、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を維持することによって行われ得る。いくつかの実施形態では、接触は、1つ以上の心筋細胞成熟因子を含む二次元(2D)培養培地で、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を維持することによって行われる。他の実施形態では、接触は、1つ以上の心筋細胞成熟因子を含む三次元(3D)培養培地で、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を維持することによって行われる。いくつかの態様では、1つ以上の心筋細胞成熟因子は、パルス処置により培養培地(例えば2Dまたは3D培養培地)に適用される。いくつかの実施形態では、パルス処置は、1~24時間、5~18時間、または10~12時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、パルス処置は、1時間以上にわたって行われる。いくつかの実施形態では、パルス処置は、24時間以下にわたって行われる。いくつかの実施形態では、パルス処置は、1~5日間または2~3日間にわたって行われる。一実施形態では、パルス処置は、既定の時間で既定の期間にわたって2~3日間行われ、それにより、概日周期が模倣される。いくつかの態様では、1つ以上の心筋細胞成熟因子は、連続処置によって培養培地(例えば2Dまたは3D培養培地)に適用される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞は、遺伝子エンジニアリングされ得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞は、本書で開示される1つ以上の心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)のマーカーを発現するように、例えば、TNNI3、KCNJ2、REST/NRSF、Ryr、及びSCN5aから選択される少なくとも1つのポリペプチド、またはそれと実質的に相同のアミノ酸配列、またはそれらの機能的断片もしくは機能的バリアントを発現するように、遺伝子エンジニアリングされ得る。
未熟心筋細胞またはその前駆細胞がin vitro条件下で維持される場合、従来の組織培養条件及び方法を使用することができ、これらは当業者には公知である。様々な細胞の単離及び培養の方法は、十分に当業者の能力の範囲内にある。
本開示の方法では、少なくとも1つの心筋細胞またはその前駆細胞は、概して、標準的な温度条件、pH、及び他の環境条件下で、例えば組織培養プレート中の接着細胞として、または5~10%のCOを含む雰囲気中37℃で三角フラスコにおける3D培養下で、培養することができる。細胞及び/または培養培地は、本書に記載されるような心筋細胞への変換を達成するために適切に改変される。
特定の例において、心筋細胞成熟因子は、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を少なくとも1つの心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)へと分化させるために、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を、本書に記載される有効量の心筋細胞成熟因子に曝露または接触させることにより、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞の分化を誘導するために使用され得る。いくつかの態様では、未熟心筋細胞を心筋細胞成熟因子に曝露または接触させることは、連続的に行われるか、または他の態様では、パルス処置によって行われる。
したがって、本書には、本書に記載される方法によって作製された細胞及び組成物が含まれる。心筋細胞成熟因子の正確な量及び種類は、未熟心筋細胞またはその前駆細胞の数、所望の分化段階、及びそれまでに行われた分化段階の数に応じて異なり得る。
特定の例において、心筋細胞成熟因子は有効量で存在する。本書で使用される場合、「有効量」とは、未熟心筋細胞またはその前駆細胞の集団中の細胞の少なくとも10%または少なくとも20%または少なくとも30%が心筋細胞に分化するために存在すべき化合物の量を指す。
さらなる例において、心筋細胞成熟因子は、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞の培養培地に存在してもよいし、あるいは、心筋細胞成熟因子は、成長のある段階において少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞に添加されてもよい。
いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞が拍動を開始した後に、未熟心筋細胞を心筋細胞成熟因子(例えばmTORインヒビター及び/またはp53上方制御因子)と接触させる。いくつかの態様では、未熟心筋細胞は、心筋細胞成熟因子と接触させる前に、1~5日間、1~4日間、1~3日間、1~2日間、1日間、2日間、3日間、4日間、または5日間にわたって拍動している。いくつかの態様では、未熟心筋細胞は、心筋細胞成熟因子と接触させる前に、1~40日間、2~35日間、3~30日間、4~25日間、5~20日間、7~35日間、14~30日間、または21~28日間にわたって拍動している。いくつかの態様では、未熟心筋細胞が拍動を開始していなければ、未熟心筋細胞を心筋細胞成熟因子(例えばmTORインヒビター及び/またはp53上方制御因子)と接触させない。
いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞がトロポニンT(TNNT2)及びミオシン重鎖6(MYH6)を発現し始めた後に、未熟心筋細胞を心筋細胞成熟因子(例えばmTORインヒビター及び/またはp53上方制御因子)と接触させる。いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞がトロポニンT(TNNT2)、トロポニンI(TNNI3)、ミオシン重鎖6(MYH6)、及びミオシン重鎖7(MYH7)を発現し始めた後に、未熟心筋細胞を心筋細胞成熟因子(例えばmTORインヒビター及び/またはp53上方制御因子)と接触させる。
少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞がin vitro条件下で維持される場合、従来の組織培養条件及び方法を使用することができ、これらは当業者には公知である。様々な細胞の単離及び培養の方法は、十分に当業者の能力の範囲内にある。
いくつかの態様では、分化プロトコルの0日目に、多能性幹細胞をRPMI+B27で培養し、GSK3インヒビター/WNTアクチベーター(例えばCHIR99021)と接触させる。プロトコルの2日目に、WNTアクチベーター(例えばCHIR99021)を除去する。プロトコルの3日目にWNTインヒビター(例えばIWP4)を添加し、5日目にWNTインヒビター(例えばIWP4)を除去する。7日目にインスリンを培養物に添加し、2~3日ごとに培地を交換する。11日目にmTORインヒビター(例えばTorin1)を添加し、18日目まで培養下に維持する。分化プロトコルの完了時に、成熟した心筋細胞が培養培地から取得される。
いくつかの態様では、分化プロトコルの0日目から2日目に、多能性幹細胞をRPMI+B27で培養し、GSK3インヒビター/WNTアクチベーター(例えばCHIR99021)と接触させる。プロトコルの2日目から4日目に、WNTインヒビター(例えばIWP4)を添加する。7日目にインスリンを培養物に添加し、2~3日ごとに培地を交換する。拍動が起こったら、拍動発生からおよそ2日後に開始して7日間、Torin1で心筋細胞を処置した。代替的な態様では、拍動が起こったら、拍動発生からおよそ2日後に開始して5日間、Torin1ではない心筋細胞成熟因子(例えばnutlin-3a及び/またはケルセチン)で心筋細胞を処置した。処置が完了したら、培地をRPMI/B27/インスリンに戻し、2~3日ごとに培地を交換して維持した。分化プロトコルの完了時に、成熟した心筋細胞が培養培地から取得される。
いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞またはその前駆細胞から心筋細胞を取得するための分化プロトコルは、二次元培養系で行われる。いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞またはその前駆細胞から心筋細胞を取得するための分化プロトコルは、三次元培養系で(例えば、3Dバイオリアクターシステムを使用して)行われる。
本開示の諸態様には、内因性の成熟した心筋細胞と形態及び機能が類似するにもかかわらず天然の心筋細胞とは異なる心筋細胞を生成することが関わる。いくつかの実施形態では、心筋細胞の形態は、内因性心筋細胞の形態に類似する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は休止している。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、休止マーカー(例えばp16、p53、及びp130)の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、増殖マーカー(例えばサイクリンC1、E2F1、及びKi67)の発現減少を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、インヒビターE2F因子(例えばE2F3b-8)の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、刺激性E2F因子(例えばE2F1-3a)の発現減少を呈する。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は成熟している。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、サルコメアタンパク質(例えばTNNT2、TNNI3、MYH6、及び/またはMYH7)の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、胎児心筋細胞または未熟心筋細胞と比較して、減少した拍動速度を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、イオンチャネル(例えばKCNJ2、HCN4、SCN5a、RYR2、CACNA1c、及び/またはSERCA2a(ATP2a2))の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、脳ナトリウム利尿ペプチドの発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、核転写因子(例えばREST/NRSF、GATA4、TBX20、BRG1、YAP、ERBB2、PITX2、MEIS1、ATA4、Nkx2-5、TBX5、NFAT、TEAD、HAND、CHF1、FoxO3/FoxO4、CHF1/Hey2、CHF1/Hey2、FoxO1、Mef2C、SRF、p53、NFkB、及びそれらの組み合わせ)の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、酸化的リン酸化経路制御因子(例えばPGC1-α)の発現増加を呈する。
本開示の方法を使用した少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞の変換または成熟による心筋細胞の生成には、複数の利点がある。まず、本開示の方法により、個体に特異的であり、個体と遺伝的に適合する細胞である自家心筋細胞を生成することができる。概して、自家細胞は、免疫拒絶反応の対象となる可能性が非自家細胞よりも低い。これらの細胞は、例えば、個体の体細胞(例えば線維芽細胞)を人工多能性状態に再プログラムし、次いで多能性細胞を培養して、多能性細胞の少なくとも一部を少なくとも1つの未熟心筋細胞または前駆細胞に分化させた後に、in vitroで少なくとも1つの未熟心筋細胞が心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)に成熟することを誘導することによって取得された心臓始原細胞など、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞に由来する。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞の取得源となる対象は、ヒト対象などの哺乳動物対象である。いくつかの実施形態では、対象は、心臓障害を患っている。いくつかの実施形態では、対象は、慢性心不全を患っている。いくつかの実施形態では、対象は、心室性不整脈を患っている。そのような実施形態では、対象の心臓障害(例えば心不全)を処置する方法において、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を、本書に記載される方法によってex vivoで心筋細胞に分化させ、次いで、細胞の採取源となった対象に投与することができる。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞は、対象内に(in vivoで)存在し、本書で開示される方法によってin vivoで心筋細胞になるように変換される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を心筋細胞にin vivoで変換することは、本書に記載される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、またはそれ以上の心筋細胞成熟因子を含む組成物を対象に投与することによって達成され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を心筋細胞にin vivoで変換することは、本書に記載される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの心筋細胞成熟因子を含む組成物を対象に投与することによって達成され得る。
心筋細胞
いくつかの実施形態では、本開示は、成熟した心筋細胞を提供する。本書で開示される心筋細胞は、天然の心筋細胞の多くの顕著な特徴を共有するが、特定の態様(例えば遺伝子発現プロファイル)において異なる。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、非天然または非自然発生のものである。本書で使用される場合、「非天然」または「非自然発生」とは、心筋細胞が、特定の態様において、天然に存在する心筋細胞、すなわち天然心筋細胞と著しく異なることを意味する。しかし、これらの顕著な差異は、典型的には、心筋細胞が特定の機能的差異を呈する結果となり得る構造的特徴に関連していることを理解されたい。例えば、心筋細胞の遺伝子発現パターンが天然心筋細胞とは異なっても、心筋細胞は天然心筋細胞と同様の様式で挙動するが、特定の機能は天然心筋細胞と比較して変化(例えば向上)している場合がある。
本開示の心筋細胞は、正常な心筋細胞の機能にとって重要である天然心筋細胞の独特の特徴の多くを共有する。成熟した心筋細胞の特徴は、Yang et al. Circ.Res. 2014;114(3):511-23に記載されている。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は休止している。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、休止状態で代謝活性及び転写活性を保持する。いくつかの実施形態では、休止状態は、心筋細胞の成熟を容易にする。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、p16、p53、及びp130を含む特定の休止マーカーを発現するか、または上昇したレベルで(すなわち、コントロールと比較して)発現する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、Ki67、サイクリンC1、及びE2F1などの増殖マーカーを発現しないか、または低減したレベルで(すなわち、コントロールと比較して)発現する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、阻害性E2F因子(例えばE2F3b、E2F4、E2F5、E2F6、E2F7、及びE2F8)の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、刺激性E2F因子(例えばE2F1、E2F2、及びE2F3)の発現減少を呈する。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は、電気的に成熟した心筋細胞である。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、減少した自動性を呈する。天然の成熟した成人の心筋細胞は、自然に毎分20~30回拍動する。いくつかの態様では、本書に記載される心筋細胞は、より遅い固有拍動速度を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、毎分15~35回、毎分15~20回、または毎分30~35回拍動する。特定の実施形態では、心筋細胞は、毎分40拍未満の自発拍動速度を呈する。より遅い固有拍動速度は、減少した自動性を示唆する可能性があり、減少した自動性を有する(すなわち、自発的に拍動する原動力が減少している)心筋細胞は、細胞療法における不整脈のリスクを減少させ得る。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は、収縮性の成熟した心筋細胞である。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、収縮タンパク質(例えばサルコメア収縮タンパク質)のRNA及びタンパク質発現の増加を呈する(すなわち、未熟心筋細胞と比較した場合)。いくつかの態様では、心筋細胞は、心筋トロポニンT(TNNT2)、心筋トロポニンI(TNNI3)、ミオシン重鎖タンパク質6(MYH6)、及びミオシン重鎖タンパク質7(MYH7)のうちの少なくとも1つのRNA及びタンパク質発現の増加を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、用量依存的様式で(例えば、未熟心筋細胞をmTORインヒビターで処置した際に)タンパク質のRNA発現の増加を呈する。1つ以上のサルコメアタンパク質の発現増加は、心筋細胞の収縮性を増進し得る。いくつかの態様では、心筋細胞は、TNNI3の全体的な含有量または量の増加を呈し、いくつかの態様では、遅骨格型のTNNI3に対するTNNI3の含有量または量の増加を呈する。いくつかの態様では、心筋細胞は、MYH6含有量またはタンパク質に対するMYH7含有量またはタンパク質の増加を呈する(例えば、ヒトにおいて)。いくつかの実施形態では、心筋細胞におけるTNNI3発現は、未熟心筋細胞と比較して、ほぼ5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、または15倍増加する。いくつかの態様では、心筋細胞の収縮性は、細胞の運動を測定することによって(例えば、1つ以上のイメージング法を使用して)測定され得る。収縮性を定量化するためには、心筋細胞の収縮に伴って曲がる軟質基質が、1つ以上のイメージング法と併せて使用され得る。いくつかの態様では、心筋細胞は、未熟心筋細胞と比較して、増加した収縮性を有する。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は、代謝的に成熟した心筋細胞である。いくつかの態様では、心筋細胞は、未熟心筋細胞と比較して、増加した代謝活性を有する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、未熟心筋細胞と比較して、増加した酸素消費速度及び/または細胞外酸性化速度を有する。代謝的成熟は、Seahorse mitoストレス代謝アッセイ(Agilent)を使用して定量化され得る。このアッセイは、ミトコンドリア機能に影響を与える1つ以上の化合物(例えば小分子化合物)に応答した酸素消費速度及び細胞外酸性化速度を測定するために使用され得る。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は、内因性の成熟した心筋細胞の形態に類似する形態を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、桿状細胞を形成する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、組織化されたサルコメア構造を呈する。いくつかの態様では、平均サルコメア長は、1.0~4.0μm、1.5~3.5μm、または2.0~3.0μmである。いくつかの態様では、平均サルコメア長は、約1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、2.5μm、2.6μm、2.7μm、2.8μm、2.9μm、または3.0μmである。
いくつかの態様では、心筋細胞は、成熟したイオンチャネル発現プロファイルを呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、増加したイオンチャネル発現を呈する(すなわち、未熟心筋細胞と比較して)。イオンチャネル発現は、KCNJ2、HCN4、SCN5a、RYR2、CACNA1c、またはSERCA2a(ATP2a2)のうちの1つ以上について増加し得る。いくつかの態様では、心筋細胞におけるKCNJ2発現は、用量依存的様式で(例えば、2Dまたは3D培養において未熟心筋細胞を1つ以上の心筋細胞成熟因子で処置した際に)増加する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、SCN5a、KCNJ2、及びRYR2の発現増加を呈する(すなわち、未熟心筋細胞と比較して)。いくつかの実施形態では、心筋細胞の静止膜電位は、-70~-150mV、-75~-125mV、-80~-100mV、または-85~-95mVの範囲内である。いくつかの実施形態では、心筋細胞の静止膜電位は、約-85mV、-86mV、-87mV、-88mV、-89mV、-90mV、-91mV、-92mV、-93mV、-94mV、または-95mVである。特定の実施形態では、心筋細胞の静止膜電位は、-70mV未満かそれと等しい。いくつかの実施形態では、心筋細胞のアップストローク速度は、150~350V/秒、175~325V/秒、200~300V/秒、または225~275V/秒の範囲内である。いくつかの実施形態では、心筋細胞のアップストローク速度は、約200V/秒、210V/秒、220V/秒、230V/秒、240V/秒、250V/秒、260V/秒、270V/秒、280V/秒、290V/秒、または300V/秒である。特定の実施形態では、心筋細胞のアップストローク速度は200V/秒を超え、例えば約250V/秒である。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は、転写因子(例えば核転写因子)の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、1つ以上の転写因子の発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、ニューロン限定サイレンサー因子としても知られる核転写因子リプレッサーエレメント1サイレンシング転写因子(REST)の発現増加を呈する(すなわち、未熟心筋細胞と比較した場合)。いくつかの態様では、RESTの発現は、HCN4の発現を抑制する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、用量依存的様式で(例えば、2Dまたは3D培養において未熟心筋細胞を1つ以上の心筋細胞成熟因子で処置した際に)RESTの発現増加を呈する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、REST/NRSF、GATA4、TBX20、BRG1、YAP、ERBB2、PITX2、MEIS1、ATA4、Nkx2-5、TBX5、NFAT、TEAD、HAND、CHF1、FoxO3/FoxO4、CHF1/Hey2、CHF1/Hey2、FoxO1、Mef2C、SRF、p53、NFkB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される転写因子の発現増加を呈する。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は、酸化的リン酸化経路制御因子の発現増加を呈する(すなわち、未熟心筋細胞と比較した場合)。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、酸化的リン酸化経路制御因子PGC1-α(PPARGC1a)の発現増加を呈する。成熟した心筋細胞では、エネルギーの導出が解糖から酸化的リン酸化に切り替わる。PGC1αの上方制御は、酸化的リン酸化に関連する経路を増進し得る。いくつかの実施形態では、代謝は主に、脂肪酸から、例えば脂肪酸のβ酸化から(例えば、解糖の代わりに)起こる。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は、脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の発現増加を呈する(すなわち、未熟心筋細胞と比較した場合)。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、ナトリウム利尿ペプチドB(NPPB)の発現増加を呈する。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は、増加したミトコンドリア含有量を呈する(すなわち、未熟心筋細胞と比較した場合)。例えば、心筋細胞では、ミトコンドリアの長さが増加し、ミトコンドリア膜電位が増加し得る。いくつかの実施形態では、ミトコンドリアは、体積で心筋細胞の約5~70%、10~60%、15~50%、または20~40%を占める。いくつかの態様では、ミトコンドリアは、結晶様格子パターンで心筋細胞全体に分布している。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は、約0.15~2.5メートル/秒、0.2~2.0メートル/秒、0.25~1.5メートル/秒、または0.3~1.0メートル/秒の伝導速度を有する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0メートル/秒の伝導速度を有する。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は、TNNT2、TNNI3、MYH7、MYH6、KCNJ2、HCN4、SCN5a、RYR2、CACNA1c、SERCA2a(ATP2a2)、NPPB(BNP)、REST、及びPPARGC1a(PGC1a)からなる群から選択される、内因性の成熟した心筋細胞に特徴的な少なくとも1つのマーカーを発現する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、TNNT2、TNNI3、KCNJ2、REST、RyR、及びSCN5aからなる群から選択される、内因性の成熟した心筋細胞に特徴的な少なくとも1つのマーカーを発現する。
本発明は、心筋細胞の由来となる出発細胞によって限定されることを意図していないため、心筋細胞は、in vitroで任意の出発細胞から分化する。例示的な出発細胞は、限定されるものではないが、未熟心筋細胞またはその任意の前駆細胞、例えば心臓始原細胞、多能性幹細胞、胚性幹細胞、及び人工多能性幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、in vitroで、再プログラムされた細胞、部分的に再プログラムされた細胞(すなわち、人工多能性細胞とその由来となった体細胞との間の中間状態で存在するように部分的に再プログラムされた線維芽細胞などの体細胞)、または分化転換細胞から分化する。いくつかの実施形態では、本書で開示される心筋細胞は、in vitroで、未熟心筋細胞またはその前駆細胞から分化し得る。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、in vitroで、未熟心筋細胞、心臓始原細胞、及び多能性幹細胞からなる群から選択される前駆細胞から分化する。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は、胚性幹細胞及び人工多能性幹細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、心筋細胞または心筋細胞の由来となる多能性幹細胞は、ヒトのものである。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、ヒトのものである。
いくつかの実施形態では、心筋細胞は、遺伝子修飾されていない。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、細胞の遺伝子修飾がない天然心筋細胞と共通する特徴を取得する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、遺伝子修飾されている。
いくつかの態様では、本開示は、本書に記載される心筋細胞を含む細胞株を提供する。いくつかの実施形態では、心筋細胞を凍結し、解凍し、継代することができる。心筋細胞は、有意な形態学的変化を伴わずに少なくとも5回継代することができる。
本開示の諸態様は、本書に記載される方法に従って生産された心筋細胞の単離集団に関する。いくつかの実施形態では、心筋細胞の集団は、本書に記載される少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と少なくとも1つの未熟心筋細胞を接触させることによって生産される。
本開示の諸態様には、本書に記載される細胞(例えば心筋細胞)の単離集団を含むマイクロカプセルが関わる。マイクロカプセルは当技術分野でよく知られている。マイクロカプセルの好適な例は、文献に記載されている(例えば、Orive et al., “Application of cell encapsulation for controlled delivery of biological therapeutics”, Advanced Drug Delivery Reviews (2013), dx.doi.org/10.1016/j.addr.2013.07.009、Hernandez et al., “Microcapsules and microcarriers for in situ cell delivery”, Advanced Drug Delivery Reviews 2010;62:711-730、Murua et al., “Cell microencapsulation technology: Towards clinical application”, Journal of Controlled Release 2008;132:76-83、及びZanin et al., “The development of encapsulated cell technologies as therapies for neurological and sensory diseases”, Journal of Controlled Release 2012;160:3-13)。マイクロカプセルは、種々の手段で製剤することができる。例示的なマイクロカプセルは、外側アルギン酸塩膜で覆われたポリカチオン層に包囲されたアルギン酸塩コアを含む。ポリカチオン膜は、安定性及び生体適合性を付与する半透膜を形成する。ポリカチオンの例は、限定されるものではないが、ポリ-L-リジン、ポリ-L-オルニチン、キトサン、ラクトース修飾キトサン、及び光重合生体材料を含む。いくつかの実施形態では、アルギン酸塩コアは、例えば、RGD配列(アルギニン、グリシン、アスパラギン酸)と共有結合したオリゴペプチドを有するアルギン酸塩コアを含む足場を生産するために修飾される。いくつかの実施形態では、アルギン酸塩コアは、例えば、増進した安定性を持つ化学酵素的にエンジニアリングされたアルギン酸塩を有する共有結合で強化されたマイクロカプセルを生産するために修飾される。いくつかの実施形態では、アルギン酸塩コアは、例えば、アクリレート官能化リン脂質のin-situ重合によって構築される膜模倣フィルムを生産するために修飾される。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、エピメラーゼを使用して酵素的に修飾されたアルギン酸塩から構成される。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、マイクロカプセル膜の隣接する層の間に共有結合を含む。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、フェノール部分と結合したアルギン酸塩を含むサブシーブサイズのカプセルを含む。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、アルギン酸塩アガロースを含む足場を含む。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、アルギン酸塩に封入される前にPEGで修飾される。いくつかの実施形態では、心筋細胞などの細胞の単離集団は、光反応性リポソーム及びアルギン酸塩に封入される。マイクロカプセルに用いられるアルギン酸塩は、PEG、キトサン、PES中空繊維、コラーゲン、ヒアルロン酸、デキストランとRGD、EHD及びPEGDA、PMBV及びPVA、PGSAS、アガロース、アガロースとゼラチン、PLGA、ならびにこれらの多層実施形態を含むがこれらに限定されない、他の好適な生体材料で置き換えられ得ることを理解されたい。
いくつかの実施形態では、本書に記載される方法に従って生産された心筋細胞の集団を含む組成物は、機械的デバイスの機能的構成要素として使用することもできる。例えば、デバイスには、細胞集団の通過を防止し、それらをデバイス内に保持する半透膜の後ろに、心筋細胞の集団(例えば、未熟心筋細胞またはその前駆細胞の集団から生産されたもの)が含まれ得る。デバイスの他の例としては、心臓患者への埋め込み用、または体外療法用に企図されるものが挙げられる。
本開示の諸態様には、本書に記載される心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)の単離集団を含むアッセイが関わる。いくつかの実施形態では、アッセイは、成熟した心筋細胞の運命を促進または阻害する1つ以上の候補薬剤を識別するために使用され得る。いくつかの実施形態では、アッセイは、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞から心筋細胞への分化を促進する1つ以上の候補薬剤を識別するために使用され得る。いくつかの実施形態では、アッセイは、老化状態にある未熟心筋細胞から休止状態にある成熟した心筋細胞への移行を促進する1つ以上の候補薬剤を識別するために使用され得る。
本開示は、疾患(例えば、心不全、または心臓関連障害)を患っている個体から抽出または単離された細胞に由来するiPS細胞から、本書に記載される方法に従って心筋細胞が生成され、これらの心筋細胞が、疾患を有しない健康な個体の正常な心筋細胞と比較して、疾患の(例えば後成的及び/または遺伝的な)マーカーとして有用であり得る、当該心筋細胞と正常心筋細胞との間の差異が識別される方法を企図する。いくつかの実施形態では、心筋細胞が、心不全を患っている個体から取得され、正常な心筋細胞と比較され、次いで、心筋細胞がiPS細胞に再プログラムされ、iPS細胞が、心不全を患っている個体から取得された心筋細胞には存在するが正常な心筋細胞には存在しない遺伝的及び/または後成的マーカーについて分析されて、マーカーが識別される(例えば、心不全前)。いくつかの実施形態では、患者に由来するiPS細胞及び/または心筋細胞は、薬剤(例えば、心不全表現型に寄与する遺伝子を調節することができる薬剤)をスクリーニングするために使用される。
心筋細胞の存在の確認及び識別
老化心筋細胞の存在と比較した休止心筋細胞の存在を確認するためには、当業者にとって一般的な任意の手段を使用することができる。本書に記載される少なくとも1つの心筋細胞成熟因子への曝露による少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞の分化によって生産された、成熟した心筋細胞などの心筋細胞の存在を確認するためには、当業者にとって一般的な任意の手段を使用することができる。
いくつかの実施形態では、休止マーカーの存在は、休止状態を示す1つ以上のマーカーの存在または非存在を検出することによって行うことができる。いくつかの実施形態では、当該方法は、休止マーカーp16、p53、及び/またはp130の陽性発現を検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、当該方法は、増殖マーカーKi67、サイクリンC1、及び/またはE2Fの陰性発現を検出することを含み得る。
いくつかの実施形態では、心筋細胞マーカー、例えば化学的に誘導された心筋細胞の存在は、内因性心筋細胞を示す1つ以上のマーカーの存在または非存在を検出することによって行うことができる。いくつかの実施形態では、当該方法は、心筋細胞のマーカーの陽性発現(例えば存在)を検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、当該方法は、1つ以上のサルコメアタンパク質(例えば、心筋トロポニンT(TNNT2)、心筋トロポニンI(TNNI3)、ミオシン重鎖タンパク質6(MYH6)及びミオシン重鎖タンパク質7(MYH7))の陽性発現を検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、当該方法は、1つ以上のイオンチャネル(例えばKCNJ2、HCN4、SCN5a、RYR2、CACNA1c、及びSERCA2a(ATP2a2))の陽性発現を検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、当該方法は、脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の陽性発現を検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、当該方法は、1つ以上の転写因子(例えばREST)の陽性発現を検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、当該方法は、1つ以上の酸化的リン酸化経路制御因子(例えばPGC1-α(PPARGC1a))の陽性発現を検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、マーカーは、TNNT2、TNNI3及び/またはKCNJ2の検出用試薬などの試薬を使用して検出され得る。一態様では、本書における心筋細胞は、TNNI3及びKCNJ2を発現し、未熟心筋細胞を示す他のマーカーを有意なレベルで発現しない。一態様では、本書における心筋細胞は、TNNT2及びKCNJ2を発現し、未熟心筋細胞を示す他のマーカーを有意なレベルで発現しない。心筋細胞は、特定のマーカーの下方制御によって特徴付けられることもある。例えば、心筋細胞は、HCN4の統計的に有意な下方制御によって特徴付けられることがある。
マーカーのための試薬は、例えば、マーカーに対する抗体、または、RT-PCRもしくはPCR反応、例えば半定量的もしくは定量的なRT-PCRもしくはPCR反応のためのプライマーであり得る。このようなマーカーは、心筋細胞が生産されたかどうかを評価するために使用できる。抗体または他の検出試薬は、検出に使用するための標識、例えば放射線標識、蛍光標識(例えばGFP)または比色標識に結合させることができる。検出試薬がプライマーである場合、それは例えば凍結乾燥された乾燥調製物として、または溶液として供給され得る。
少なくとも1つの未熟心筋細胞の老化状態から休止状態への進行は、休止心筋細胞に特徴的なマーカーの発現を判定することによってモニタリングされ得る。いくつかのプロセスでは、特定のマーカーの発現は、マーカーの存在または非存在を検出することによって判定される。あるいは、特定のマーカーの発現は、マーカーが細胞培養物または細胞集団の細胞に存在するレベルを測定することによって判定され得る。特定のプロセスでは、休止心筋細胞に特徴的なマーカーの発現と、それの由来となった老化心筋細胞に特徴的なマーカーの有意な発現の欠如とが判定される。
少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞から心筋細胞への進行は、成熟した心筋細胞に特徴的なマーカーの発現を判定することによってモニタリングされ得る。いくつかのプロセスでは、特定のマーカーの発現は、マーカーの存在または非存在を検出することによって判定される。あるいは、特定のマーカーの発現は、マーカーが細胞培養物または細胞集団の細胞に存在するレベルを測定することによって判定され得る。特定のプロセスでは、成熟した心筋細胞に特徴的なマーカーの発現と、それの由来となった未熟心筋細胞またはその前駆細胞に特徴的なマーカーの有意な発現の欠如とが判定される。
未熟心筋細胞からの心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)の生産のモニタリングに関連して記載したように、当業者には一般的に知られている方法を使用してマーカー発現を測定するために、ブロット転写法及び免疫細胞化学などの定性的または半定量的な技法を使用することができる。あるいは、マーカー発現は、当技術分野でよく知られている方法による定量的PCRなどの技法を使用することにより、正確に定量することができる。さらに、細胞外マーカー含有量を測定するための技法、例えばELISAを利用してもよい。
本発明は、心筋細胞マーカーとして本書に列挙されるマーカーに限定されず、本発明には、細胞表面マーカーなどのマーカー、抗原、ならびにEST、RNA(マイクロRNA及びアンチセンスRNAを含む)、DNA(遺伝子及びcDNAを含む)、及びそれらの一部分を含む他の遺伝子産物も包含されると理解される。
心筋細胞の濃縮、単離、及び精製
本発明の別の態様は、成熟した心筋細胞と、成熟した心筋細胞の由来となった未熟心筋細胞またはその前駆細胞とを含む混合細胞集団のような、不均質の細胞集団からの心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)の集団の単離に関する。いくつかの態様では、休止心筋細胞の集団は、老化心筋細胞及び休止心筋細胞を含む混合細胞集団などの不均質の細胞集団から単離される。上述のプロセスのいずれかによって生産された心筋細胞の集団は、その由来となった未熟心筋細胞またはその前駆細胞には存在しない、心筋細胞に存在する任意の細胞表面マーカーを使用することによって、濃縮、単離及び/または精製され得る。このような細胞表面マーカーは、心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)に特異的なアフィニティータグともいう。心筋細胞に特異的なアフィニティータグの例は、心筋細胞の細胞表面には存在するが、他の細胞型(例えば未熟心筋細胞)には実質的に存在しない、ポリペプチドなどのマーカー分子に特異的な抗体、リガンド、または他の結合剤である。いくつかのプロセスでは、心筋細胞の細胞表面抗原に結合する抗体が、本書に記載される方法によって生産された、化学的に誘導された(例えば、本書に記載される少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と接触させることによって化学的に誘導された)心筋細胞の濃縮、単離または精製のためのアフィニティータグとして使用される。そのような抗体は公知であり、市販されている。
当業者であれば、心筋細胞の濃縮、単離及び/または精製のために抗体を使用するプロセスを容易に理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、心筋細胞を含む細胞集団と共に抗体などの試薬をインキュベートし、この細胞集団は、細胞間接着及び基質接着を低減させるために処置されたものである。次いで、細胞集団を洗浄し、遠心分離し、再懸濁する。いくつかの実施形態では、抗体が標識で既に標識されていなければ、細胞懸濁液を、一次抗体に結合することができるFITC共役抗体などの二次抗体と共にインキュベートする。次いで、心筋細胞を洗浄し、遠心分離し、バッファーに再懸濁する。次に、心筋細胞懸濁液を分析し、蛍光活性化セルソーター(FACS)を使用して選別する。抗体に結合した蛍光性の再プログラム細胞を未結合の非蛍光性細胞とは別に収集することにより、細胞懸濁液に存在する他の細胞、例えば未熟心筋細胞またはその前駆細胞から、心筋細胞が単離される。
本書に記載されるプロセスの別の実施形態では、心筋細胞を含む単離細胞組成物は、代替的な親和性ベースの方法を使用することによって、または心筋細胞に特異的な同じもしくは異なるマーカーを使用するさらなるラウンドの選別によって、さらに精製することができる。例えば、いくつかの実施形態では、FACS選別を使用して、TNNT2を単独で、もしくはKCNJ2の発現と共に発現するか、あるいは本書で開示される心筋細胞マーカーと共に発現する心筋細胞を、細胞集団におけるこれらのマーカーのうちの1つを発現しない細胞(例えば陰性細胞)から最初に単離する。いくつかの態様では、TNNI3及び/またはMYH7も、FACS選別用のマーカーとして、単独で、あるいはTNNT2及び/またはKCNJ2と組み合わせて使用される。第2のFACS選別、例えば、FACSを使用して陽性細胞を再度選別して、第1の選別とは異なるマーカーに対して陽性である細胞を単離することにより、細胞集団における再プログラムされた細胞が濃縮される。
代替的な実施形態では、ほとんどの未熟心筋細胞には存在するが心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)には存在しないマーカーについて陰性選別することによって細胞を分離するために、FACS選別が使用される。
本書に記載されるプロセスのいくつかの実施形態では、心筋細胞は、抗体を使用せずに蛍光標識され、その後、蛍光活性化セルソーター(FACS)を使用することによって非標識細胞から単離される。そのような実施形態では、上述の方法を使用して再プログラムされた細胞を標識するために、GFP、YFPをコードする核酸、またはルシフェラーゼをコードする遺伝子などの発現可能な蛍光マーカー遺伝子をコードする別の核酸が使用される。
ここで説明した手順に加えて、化学的に誘導された心筋細胞は、他の細胞単離技法によっても単離され得る。さらに、心筋細胞は、心筋細胞の選択的生存または選択的増大を促進する成長条件での連続継代培養の方法によって濃縮または単離することもできる。このような方法は、当業者にとって公知である。
本書に記載される方法を使用すると、濃縮、単離及び/または精製された心筋細胞集団を、未熟心筋細胞またはその前駆細胞(本書に記載される方法によって多能性幹細胞から分化させたもの)からin vitroで生産することができる。いくつかの実施形態では、好ましい濃縮、単離及び/または精製の方法は、ヒト多能性幹細胞またはヒト人工多能性幹(iPS)細胞から分化したヒトの未熟心筋細胞またはその前駆細胞からの、ヒト心筋細胞のin vitro生産に関する。そのような実施形態では、心筋細胞が、以前にiPS細胞から導出された未熟心筋細胞から分化する場合、心筋細胞は、iPS細胞を生成するための細胞の取得源となった対象にとって自家であり得る。
本書に記載される方法を使用すると、心筋細胞の単離細胞集団は、未熟心筋細胞または前駆細胞集団の化学的誘導前の細胞集団と比較して、心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)の含有量が少なくとも約1倍から約1000倍濃縮される。いくつかの実施形態では、心筋細胞の集団は、未熟心筋細胞または前駆細胞集団の化学的誘導前の細胞集団と比較して、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、50%、70%、80%、90%、1倍、1.1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍、またはそれ以上誘導されるか、増進するか、濃縮されるか、または増加する。
心筋細胞を含む組成物
本発明のいくつかの実施形態は、心筋細胞を含む細胞培養物または細胞集団などの細胞組成物であって、心筋細胞が少なくとも1つの未熟心筋細胞から導出されたものである、細胞組成物に関する。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、未熟心筋細胞を含む。
いくつかの実施形態では、細胞組成物は、休止心筋細胞を含み、休止心筋細胞は、少なくとも1つの老化心筋細胞から導出されたものである。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、老化心筋細胞を含む。
特定の実施形態によれば、化学的に誘導された心筋細胞は哺乳動物細胞であり、好ましい実施形態では、そのような心筋細胞はヒト心筋細胞である。いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞は、多能性幹細胞(例えばヒト多能性幹細胞)から導出されたものである。
いくつかの実施形態では、細胞組成物は、成熟した心筋細胞を含み、成熟した心筋細胞は、本書に記載される方法を使用して少なくとも1つの未熟心筋細胞から導出されたものである。例えば、細胞組成物は、未熟心筋細胞を1つ以上の心筋細胞成熟因子と接触させた、2Dまたは3D培養における未熟心筋細胞の培養から取得された、成熟した心筋細胞を含む。
本発明の他の実施形態は、本書で開示される方法によって生産された心筋細胞を含む単離細胞集団または細胞培養物などの組成物に関する。そのような実施形態では、心筋細胞は、心筋細胞集団中の総細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満を構成する。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞集団中の総細胞の約90%超を構成する心筋細胞の集団を含み、例えば、細胞集団中の総細胞の少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%、または少なくとも約100%が心筋細胞である。
本発明の特定の他の実施形態は、心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)と、心筋細胞の由来となった未熟心筋細胞またはその前駆細胞との組み合わせを含む、単離細胞集団または細胞培養物などの組成物に関する。いくつかの実施形態では、心筋細胞の由来となる未熟心筋細胞は、単離細胞集団または培養物中の総細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満を構成する。
本発明のさらなる実施形態は、本書に記載されるプロセスによって生産され、大部分の細胞型として化学的に誘導された心筋細胞を含む、単離細胞集団または細胞培養物などの組成物に関する。いくつかの実施形態では、本書に記載される方法及びプロセスは、少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、少なくとも約90%、少なくとも約89%、少なくとも約88%、少なくとも約87%、少なくとも約86%、少なくとも約85%、少なくとも約84%、少なくとも約83%、少なくとも約82%、少なくとも約81%、少なくとも約80%、少なくとも約79%、少なくとも約78%、少なくとも約77%、少なくとも約76%、少なくとも約75%、少なくとも約74%、少なくとも約73%、少なくとも約72%、少なくとも約71%、少なくとも約70%、少なくとも約69%、少なくとも約68%、少なくとも約67%、少なくとも約66%、少なくとも約65%、少なくとも約64%、少なくとも約63%、少なくとも約62%、少なくとも約61%、少なくとも約60%、少なくとも約59%、少なくとも約58%、少なくとも約57%、少なくとも約56%、少なくとも約55%、少なくとも約54%、少なくとも約53%、少なくとも約52%、少なくとも約51%、または少なくとも約50%の心筋細胞を含む、単離細胞培養物及び/または細胞集団を生産する。
別の実施形態では、単離細胞集団または細胞の組成物(または細胞培養物)は、ヒト心筋細胞を含む。他の実施形態では、本書に記載される方法及びプロセスは、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約24%、少なくとも約23%、少なくとも約22%、少なくとも約21%、少なくとも約20%、少なくとも約19%、少なくとも約18%、少なくとも約17%、少なくとも約16%、少なくとも約15%、少なくとも約14%、少なくとも約13%、少なくとも約12%、少なくとも約11%、少なくとも約10%、少なくとも約9%、少なくとも約8%、少なくとも約7%、少なくとも約6%、少なくとも約5%、少なくとも約4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%、または少なくとも約1%の心筋細胞を含む単離細胞集団を生産することができる。好ましい実施形態では、単離細胞集団はヒト心筋細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、細胞培養物または細胞集団中の心筋細胞のパーセンテージは、培養物中に残存するフィーダー細胞に関係なく計算される。
本発明のさらに他の実施形態は、心筋細胞と、その分化源または成熟源となった未熟心筋細胞またはその前駆細胞との混合物を含む、単離細胞集団または細胞培養物などの組成物に関する。例えば、約95個の未熟心筋細胞またはその前駆細胞ごとに少なくとも約5個の心筋細胞を含む細胞培養物または細胞集団が生産され得る。他の実施形態では、約5個の未熟心筋細胞またはその前駆細胞ごとに少なくとも約95個の心筋細胞を含む細胞培養物または細胞集団が生産され得る。さらに、未熟心筋細胞またはその前駆細胞に対する他の比率の心筋細胞を含む細胞培養物または細胞集団が企図される。例えば、約1,000,000個、または少なくとも100,000個、または少なくとも10,000個、または少なくとも1000個、または500個、または少なくとも250個、または少なくとも100個、または少なくとも10個の未熟心筋細胞またはその前駆細胞ごとに、少なくとも約1個の心筋細胞を含む組成物が生産され得る。
本発明のさらなる実施形態は、内因性心筋細胞の少なくとも1つの特徴を示すヒト心筋細胞などのヒト細胞を含む、細胞培養物または細胞集団などの組成物に関する。
本発明の好ましい実施形態では、心筋細胞の細胞培養物及び/または細胞集団は、非組換え細胞であるヒト心筋細胞を含む。そのような実施形態では、細胞培養物及び/または細胞集団は、組換えヒト心筋細胞を全く含まないか、または実質的に含まない。
心筋細胞成熟因子
本開示の諸態様には、例えば、未熟心筋細胞の成熟またはその前駆細胞から心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)への分化を誘導するために、未熟心筋細胞またはその前駆細胞を心筋細胞成熟因子と接触させることが関わる。「心筋細胞成熟因子」という用語は、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞から心筋細胞への変換を促進する、またはそれに寄与する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、例えば、本書に記載される方法に従って、多能性細胞(例えばiPSCまたはhESC)から未熟心筋細胞への分化を誘導する。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、例えば、本書に記載される方法に従って、未熟心筋細胞から心筋細胞への成熟を誘導する。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、休止心筋細胞に移行するように老化心筋細胞を誘導する。
概して、本書に記載される少なくとも1つの心筋細胞成熟因子は、本書で開示される方法に従って心筋細胞を生成するために、単独で、または他の心筋細胞成熟因子と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、本書に記載される、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、または少なくとも10種の心筋細胞成熟因子が、心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)を生成する方法において使用される。
いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)/Akt/mTOR経路のモジュレーター(例えばインヒビター)を含む。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、mTOR経路のインヒビターを含む。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、PI3K及び/またはAktのインヒビターを含む。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、小分子、核酸、アミノ酸、代謝産物、ポリペプチド、抗体及び抗体様分子、アプタマー、大環状分子、または他の分子を含む。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、Torin1、Torin2、ラパマイシン、エベロリムス、及びテムシロリムスからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、Torin1である。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、Torin2である。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、ラパマイシンである。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、エベロリムスである。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、テムシロリムスである。
いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、老化細胞のモジュレーターを含む。例えば、老化細胞のモジュレーターは、セノリティックであり得る。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、老化細胞を低減させ、特定の態様では排除する。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、フィセチン、ルテオリン、クルクミン、ゲルダナマイシン、タネスピマイシン、アルベスピマイシン、ピペルロングミン、FOXO4関連ペプチド、nutlin-3a、ウアバイン、プロスシラリジンA、ジゴキシン、ケルセチン、ダサチニブ、ナビトクラックス、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、心筋細胞成熟因子は、ケルセチンである。いくつかの態様では、ケルセチンは、p53及び/またはKir2.1の発現を増加させる。
いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、細胞周期制御因子p53のモジュレーター(例えば上方制御因子)を含む。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、p53の上方制御因子またはアクチベーターを含む。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、小分子、核酸、アミノ酸、代謝産物、ポリペプチド、抗体及び抗体様分子、アプタマー、大環状分子、または他の分子を含む。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、MDM2インヒビターである。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、RG7112、イダサヌトリン(idasanutlin)、AMG-232、APG-115、BI-907828、CGM097、シレマドリン(siremadlin)、ミラデメタン(milademetan)、nutlin-3a、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、MDM2インヒビター(例えばnutlin-3a)である。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、セノリティック(例えばケルセチン)である。
いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、Torin1、nutlin-3a、及びケルセチンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、Torin1である。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、nutlin-3aである。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、ケルセチンである。いくつかの実施形態では、p53は、nutlin-3a、ケルセチン、及びTorin1のうちの1つ以上を投与することによって(例えば相乗的に)上方制御される。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、Torin1ではない。いくつかの実施形態では、心筋細胞成熟因子は、mTORインヒビターではない。
組成物及びキット
本書には、本書に記載される心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞及び/または休止心筋細胞)を含む組成物が記載される。いくつかの実施形態では、組成物は、本書に記載される成熟因子及び/または細胞培養培地も含む。本書には、本書に記載される化合物を含む組成物(例えば、本書に記載される化合物のうちの1つ以上を含む細胞培養培地)も記載される。
また、本書には、本書で開示される方法を実施するため、及び本書で開示される心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞及び/または休止心筋細胞)を作製するためのキットも記載される。また、本書には、慢性心不全を処置し、心室性不整脈の発生率を低減させるためのキットも記載される。一態様では、キットは、少なくとも1つの未熟及び/または老化心筋細胞またはその前駆細胞、ならびに本書に記載される少なくとも1つの成熟因子を含み、場合により、キットは、本書に記載される方法を使用して(例えば2Dまたは3D培養を使用して)少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を成熟した心筋細胞の集団に変換するための説明書をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも2つの成熟因子を含む。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも3つの成熟因子を含む。いくつかの実施形態では、キットは、成熟因子の任意の組み合わせを含む。
いくつかの実施形態では、キット内の化合物は、水密または気密の容器で提供することができ、この容器は、いくつかの実施形態では、キットの他の構成要素を実質的に含まない。化合物は、2つ以上の容器で供給されてもよく、例えば、未熟及び/または老化心筋細胞、またはそれらの前駆細胞を誘導して、成熟した心筋細胞及び/または休止心筋細胞にするための、既定の数の反応、例えば1、2、3またはそれ以上の数の別個の反応のために十分な試薬を有する容器で供給されてもよい。成熟因子は、任意の形態、例えば液体形態、乾燥形態、または凍結乾燥形態で提供され得る。本書に記載される化合物(複数可)(例えば成熟因子)は、実質的に純粋及び/または無菌であることが好ましい。本書に記載される化合物(複数可)が液体溶液で提供される場合、液体溶液は、好ましくは水溶液であり、無菌水溶液が好ましい。本書に記載される化合物(複数可)が乾燥形態として提供される場合、再構成は概して、好適な溶媒の添加による。溶媒、例えば、滅菌水またはバッファーは、場合により、キットにおいて提供され得る。
いくつかの実施形態では、キットは、場合により、情報資料をさらに含む。情報資料は、本書に記載される方法及び/または本書に記載される方法のための本書に記載される化合物(複数可)の使用に関する、記述資料、説明資料、マーケティング資料、または他の資料であり得る。
キットの情報資料は、その説明または情報の内容において制限されない。一実施形態では、情報資料は、化合物の生産、化合物の分子量、濃度、有効期限、バッチまたは生産場所情報などに関する情報を含み得る。一実施形態では、情報資料は、化合物を投与する方法に関する。さらに、キットの情報資料は、その形態において制限されない。多くの場合、情報資料、例えば説明書は、印刷物、例えば印刷されたテキスト、図面、及び/または写真、例えばラベルまたは印刷されたシートで提供される。しかし、情報資料は、ブライユ点字、コンピュータ可読資料、ビデオ録画、または音声記録など、他のフォーマットで提供されてもよい。別の実施形態では、キットの情報資料は、キットの使用者が、本書に記載される化合物及び/または本書に記載される方法におけるその使用に関する確かな情報を取得することができる、連絡先情報、例えば、実際の所在地、電子メールアドレス、ウェブサイト、または電話番号である。当然ながら、情報資料は、任意の組み合わせのフォーマットで提供することもできる。
一実施形態では、情報資料は、本書に記載される方法を行うのに好適な様式で、例えば、好適な用量、剤形、または投与形式(例えば、本書に記載される用量、剤形、または投与形式)で、本書に記載される化合物(複数可)(例えば成熟因子)を(例えば、in vitroの細胞またはin vivoの細胞に)投与するための説明書を含み得る。別の実施形態では、情報資料は、好適な対象、例えば、本書に記載される障害を有するもしくはそのリスクを持つヒトなどのヒト、またはin vitroの細胞に、本書に記載される化合物(複数可)を投与するための説明書を含み得る。
本書に記載される化合物(複数可)に加えて、キットの組成物は、溶媒もしくはバッファー、安定剤、保存剤、香味剤(例えば苦味拮抗剤または甘味料)、香料、もしくは他の化粧成分、及び/または本書に記載される病態もしくは障害を処置するための追加の薬剤など、他の成分を含み得る。あるいは、他の成分は、キット内に、ただし本書に記載される化合物とは異なる組成物または容器に含まれていてもよい。そのような実施形態では、キットは、本書に記載される化合物(複数可)及び他の成分を混和するための、または本書に記載される化合物(複数可)を他の成分と共に使用するための説明書、例えば、2つの薬剤を投与前に組み合わせるための説明書を含み得る。
キットは、本書に記載される少なくとも1つの成熟因子を含有する組成物のための1つ以上の容器を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、組成物(複数可)及び情報資料のための別個の容器(例えば、2つの薬剤のための2つの別個の容器)、仕切り、またはコンパートメントを含み得る。例えば、組成物は、ボトル、バイアル、またはシリンジに収容することができ、情報資料は、プラスチックスリーブまたはパケットに収容することができる。他の実施形態では、キットの別個の要素が、単一の分割されていない容器に収容される。例えば、組成物は、ラベルの形態で情報資料が添付されたボトル、バイアル、またはシリンジに収容される。いくつかの実施形態では、キットは、複数(例えばパック)の個別容器を含み、その各々が、本書に記載される化合物の1つ以上の単位剤形(例えば、本書に記載される剤形)を含む。例えば、キットは、複数のシリンジ、アンプル、ホイルパケット、またはブリスターパックを含み、その各々が、本書に記載される化合物の単一単位用量を含む。キットの容器は、気密性、防水性(例えば、湿気の変化または蒸発に対して不浸透性)、及び/または遮光性であり得る。
キットは、場合により、組成物の投与に好適なデバイス、例えば、シリンジ、吸入器、ピペット、鉗子、計量スプーン、ドロッパー(例えば、点眼器)、スワブ(例えば、綿スワブまたは木製スワブ)、または任意のかかる送達デバイスを含む。好ましい実施形態では、デバイスは、例えば外科的挿入用にパッケージングされた医療用インプラントデバイスである。
キットには、本書に記載されるマーカーなどの心筋細胞のマーカーの検出のための成分、例えば、成熟した心筋細胞の検出のための試薬も含まれ得る。または、いくつかの実施形態では、キットは、成熟した心筋細胞の負の選択の目的のための心筋細胞のネガティブマーカーの検出用、またはこれらのネガティブマーカーを発現しない細胞(例えば心筋細胞)の識別用の試薬も含み得る。試薬は例えば、マーカーに対する抗体、または、RT-PCRもしくはPCR反応、例えば半定量的もしくは定量的なRT-PCRもしくはPCR反応のためのプライマーであり得る。このようなマーカーは、iPS細胞が生産されたかどうかを評価するために使用できる。検出試薬が抗体である場合、それは例えば凍結乾燥された乾燥調製物として、または溶液として供給され得る。抗体または他の検出試薬は、検出に使用するための標識、例えば放射線標識、蛍光標識(例えばGFP)または比色標識に結合させることができる。検出試薬がプライマーである場合、それは例えば凍結乾燥された乾燥調製物として、または溶液として供給され得る。
キットは、例えば陽性細胞型コントロールとして使用するための、同じ種類の未熟及び/または老化心筋細胞またはその前駆細胞に由来する成熟した心筋細胞及び/または休止心筋細胞などの心筋細胞を含み得る。
細胞の投与方法
一実施形態では、本書に記載される細胞、例えば、成熟した心筋細胞の集団は移植可能であり、例えば、心筋細胞の集団は、対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、本書に記載される細胞、例えば、成熟した休止心筋細胞の集団は移植可能であり、例えば、心筋細胞の集団は、対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、心筋細胞の集団を投与される対象は、心筋細胞に分化させるために使用される多能性幹細胞の取得源となった対象と同じ対象である(例えば、自家細胞療法のため)。いくつかの実施形態では、対象は、異なる対象である。いくつかの実施形態では、対象は、慢性心不全を患っているか、または正常な対象である。例えば、移植用の細胞(例えば、心筋細胞の集団を含む組成物)は、移植に好適な形態であり得る。
当該方法は、細胞を、それを必要とする対象、例えば哺乳動物対象、例えばヒト対象に投与することをさらに含み得る。細胞の供給源は、哺乳動物、好ましくはヒトであり得る。細胞の供給源またはレシピエントは、非ヒト対象、例えば動物モデルでもよい。「哺乳動物」という用語には、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、ヤギ、ウマ、サル、イヌ、ネコ、及び好ましくはヒトを含む生物が含まれる。同様に、移植可能な細胞は、非ヒトトランスジェニック生物を含め、これらの生物のいずれから取得されてもよい。一実施形態では、移植可能な細胞は遺伝子エンジニアリングされており、例えば、細胞は外因性遺伝子を含むか、または内因性遺伝子を不活性化もしくは改変するように遺伝子エンジニアリングされている。
心筋細胞の集団を含む組成物は、埋め込み型デバイスを使用して対象に投与することができる。埋め込み型デバイス及び関連技術は当技術分野で公知であり、本書に記述される化合物または組成物の連続放出または徐放送達が望まれる場合の送達系として有用である。さらに、埋め込み型デバイス送達系は、化合物または組成物の送達の特定の点(例えば、局所的な部位、器官)を標的とするのに有用である。Negrin et al., Biomaterials, 22(6):563 (2001)。代替的な送達方法を用いる徐放技術も本発明では使用され得る。例えば、ポリマー技術、持続放出技法及び封入技法(例えばポリマー、リポソーム)に基づく徐放製剤も、本書に記述される化合物及び組成物の送達に使用され得る。
医薬組成物
対象に投与する場合、本書で開示される方法によって生産された細胞集団、例えば、心筋細胞の集団(少なくとも1つの未熟心筋細胞を少なくとも1つの成熟因子(例えば、本書に記載される任意の1つ、2つ、3つまたはそれ以上の成熟因子)と接触させることによって生産されたもの)は、例えば、薬学的に許容可能な組成物で対象に投与することができる。これらの薬学的に許容可能な組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体(添加剤)及び/または希釈剤と共に製剤された、上述のような成熟した心筋細胞の集団を治療有効量で含む。いくつかの態様では、これらの薬学的に許容可能な組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体(添加剤)及び/または希釈剤と共に製剤された、上述のような成熟した休止心筋細胞の集団を治療有効量で含む。
以下に詳細に記載するように、本発明の医薬組成物は、(1)経口投与、例えば、飲薬(水性または非水性の溶液または懸濁液)、ロゼンジ、糖衣錠、カプセル、丸剤、錠剤(例えば、口腔内、舌下、及び全身性吸収を標的とするもの)、ボーラス、粉末、顆粒、舌に適用するためのペースト、(2)非経口投与、例えば、無菌の溶液もしくは懸濁液、または持続放出性製剤としての、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または硬膜外注射によるもの、(3)局所適用、例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏、または制御放出性パッチもしくはスプレーとしてのもの、(4)膣内または直腸内投与、例えば、ペッサリー、クリーム、または泡としてのもの、(5)舌下投与、(6)眼への投与、(7)経皮的投与、(8)経粘膜的投与、または(9)経鼻的投与のために適合されたものを含む、固体または液体の形態での投与のために特別に製剤され得る。さらに、化合物は、薬物送達系を使用して患者に埋め込んだり、注射したりすることもできる。例えば、Urquhart, et al., Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 24: 199-236 (1984)、Lewis, ed. “Controlled Release of Pesticides and Pharmaceuticals” (Plenum Press, New York, 1981)、米国特許第3,773,919号、及び米国特許第353,270,960号を参照されたい。
ここで使用される「薬学的に許容可能な」という用語は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を起こさずに、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、化合物、材料、組成物、及び/または剤形を指す。
ここで使用される「薬学的に許容可能な担体」という用語は、ある器官または身体の部分から別の器官または身体の部分に対象化合物を運搬または輸送することに関わる、薬学的に許容可能な材料、組成物、またはビヒクル、例えば、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、製造用助剤(例えば、滑沢剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)、または溶媒封入材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合し、かつ患者に有害でないという意味において「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、(1)糖、例えば、ラクトース、グルコース、及びスクロース、(2)澱粉、例えば、トウモロコシ澱粉及び馬鈴薯澱粉、(3)セルロース、及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、及び酢酸セルロース、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク、(8)賦形剤、例えば、カカオバター及び坐剤用ワックス、(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油、(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール、(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール(PEG)、(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル、(13)寒天、(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム、(15)アルギン酸、(16)パイロジェンフリー水、(17)等張食塩水、(18)リンガー液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝液、(21)ポリエステル、ポリカーボネート、及び/またはポリ無水物、(22)増量剤、例えばポリペプチド及びアミノ酸、(23)血清成分、例えば血清アルブミン、HDL及びLDL、(24)C~C12アルコール、例えばエタノール、ならびに(25)医薬製剤に用いられる他の非毒性で適合性の物質が挙げられる。湿潤剤、着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、保存剤、及び抗酸化剤も、製剤中に存在し得る。「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容可能な担体」などといった用語は、本書では互換的に使用される。
細胞集団に関して本書で使用される「治療有効量」という語句は、あらゆる医学的処置に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比で、動物の細胞の少なくとも部分集団において何らかの所望の治療効果をもたらすために有効な、細胞集団中の該当する細胞、例えば成熟した心筋細胞、または本発明の成熟した心筋細胞を含む組成物の量を意味する。例えば、慢性心不全の少なくとも1つの症状、例えば収縮期心機能または心室性不整脈の発生などにおける、統計的に有意で測定可能な変化をもたらすのに十分である、対象に投与される成熟した心筋細胞の集団の量である。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内にある。概して、治療有効量は、対象の病歴、年齢、状態、性別、ならびに対象の医学的状態の重篤度及び種類、ならびに他の薬学的活性のある薬剤の投与によって変わり得る。
疾患または障害の「処置」、「防止」または「改善」とは、そのような疾患もしくは障害の発生を遅延させるもしくは防止すること、そのような疾患もしくは障害に関連する病態の進行もしくは重篤度を逆転すること、緩和すること、改善すること、阻害すること、緩徐化すること、または停止することを意味する。一実施形態では、疾患または障害の症状は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%緩和される。
本書で使用される場合、「投与する」という用語は、所望の効果が生じるように、所望の部位で組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路によって、組成物を対象に入れることを指す。本発明の方法に好適な投与経路には、局所投与及び全身投与の両方が含まれる。概して、局所投与では、投与された心筋細胞が対象の全身と比べて特定の位置により多く送達されることになるが、全身投与では、心筋細胞が本質的に対象の全身に送達されることになる。
化合物で処置された細胞を投与する文脈において、「投与すること」という用語には、対象におけるそのような細胞の移植も含まれる。本書で使用される場合、「移植」という用語は、少なくとも1つの細胞を対象に移植または移入するプロセスを指す。「移植」という用語には、例えば、自家移植(ある患者におけるある部位から細胞(複数可)を除去し、同じ患者における同じまたは別の部位に移すこと)、同種移植(同じ種のメンバー間の移植)、及び異種移植(異なる種のメンバー間の移植)が含まれる。
成熟した心筋細胞またはそれを含む組成物は、経口経路、または静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、気道投与(エアロゾル)、肺投与、経鼻投与、直腸投与、及び局所投与(口腔内投与及び舌下投与を含む)を含む非経口経路を含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知の任意の適切な経路によって投与され得る。
例示的な投与様式は、注射、注入、点滴注入、吸入、経口摂取、または局所適用を含むが、これらに限定されない。「注射」は、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、心室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、及び胸骨内の注射及び注入を含む。好ましい実施形態では、組成物は、静脈内注入または注射によって投与される。他の好ましい実施形態では、組成物は、細胞パッチを介して投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、三次元構造体(例えば、マトリックスまたは足場)を介して投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、微小組織を介して投与される。
本書において使用される場合、「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、霊長動物、齧歯動物、飼育動物、またはゲーム動物などの脊椎動物である。霊長動物としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク、例えばアカゲザルが挙げられる。齧歯動物としては、マウス、ラット、ヤマネズミ、フェレット、ウサギ、及びハムスターが挙げられる。飼育動物及びゲーム動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科の種(例えばイエネコ)、イヌ科の種(例えばイヌ、キツネ、オオカミ)、トリの種(例えばニワトリ、エミュー、ダチョウ)、及び魚類(例えばマス、ナマズ、及びサケ)が挙げられる。患者または対象としては、前述のもののうちの任意のサブセット(例えば上記のもののすべてであるが、1つ以上の群または種(ヒト、霊長動物、または齧歯動物など)を除外する)が挙げられる。本書に記載される態様の特定の実施形態において、対象は、哺乳動物、例えば霊長動物、例えばヒトである。「患者」及び「対象」という用語は、本書では互換的に使用される。「患者」及び「対象」という用語は、本書では互換的に使用される。対象は、オスまたはメスであり得る。
好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長動物、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物を、減少した収縮期心機能または心室性不整脈に関連する障害の動物モデルを表す対象として有利に使用することができる。さらに、本書に記載される方法及び組成物は、飼育動物及び/またはペットを処置するために使用され得る。
対象は、減少した収縮期心機能もしくは心室性不整脈を特徴とする障害と以前に診断されているか、またはそれを患っているもしくは有すると識別されているものであり得る。対象は、心不全(例えば慢性心不全)と以前に診断されているか、またはそれを有すると識別されている人物であり得る。いくつかの態様では、対象は、心臓関連の疾患もしくは障害と以前に診断されているか、またはそれを有すると識別されている人物であり得る。いくつかの態様では、対象は、先天性心疾患(例えば、収縮期心疾患または組織エンジニアリングの結果としての心疾患)と以前に診断されている人物であり得る。
本書に記載される態様のいくつかの実施形態では、当該方法は、対象を処置する前に、減少した収縮期心機能または心室性不整脈について対象を診断及び/または選択することをさらに含む。いくつかの態様では、当該方法は、対象を処置する前に、心臓関連の疾患または障害について対象を診断及び/または選択することをさらに含む。いくつかの態様では、当該方法は、対象を処置する前に、先天性心疾患について対象を診断及び/または選択することをさらに含む。
本書に記載される心筋細胞組成物は、機械的補助デバイス(例えば、心室回復を補助するために使用される心室補助デバイス(VAD)または体外膜型酸素供給(ECMO)システム)と組み合わせて、または心臓の血管再建を行うための心臓カテーテル手技(例えば、冠動脈のステント留置もしくはバルーン血管形成術、または外科的バイパス移植術)と組み合わせて投与され得る。本書に記載される心筋細胞組成物は、薬学的活性のある薬剤と組み合わせて対象に共投与することができる。例示的な薬学的活性のある化合物は、限定されるものではないが、Harrison’s Principles of Internal Medicine, 13th Edition, Eds. T.R. Harrison et al. McGraw-Hill N.Y., NY、Physicians’ Desk Reference, 50th Edition, 1997, Oradell New Jersey, Medical Economics Co.、Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Edition, Goodman and Gilman, 1990、United States Pharmacopeia, The National Formulary, USP XII NF XVII, 1990、最新版のGoodman and Oilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、及び最新版のThe Merck Indexに見出されるものを含み、これらのすべての完全な内容全体が、本書に組み込まれている。
心筋細胞を含む組成物及び/または薬学的活性のある薬剤は、同じ医薬組成物または異なる医薬組成物で(同時にまたは異なる時点で)対象に投与することができる。異なる時点で投与する場合、心筋細胞を含む組成物及び/または薬学的活性のある薬剤は、他方の投与から5分以内、10分以内、20分以内、60分以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、8時間以内、12時間以内、24時間以内に投与され得る。心筋細胞を含む組成物及び/または薬学的活性のある薬剤が、異なる医薬組成物で投与される場合、投与経路は異なり得る。いくつかの実施形態では、対象に、心筋細胞を含む組成物が投与される。他の実施形態では、対象に、薬学的活性のある薬剤を含む組成物が投与される。別の実施形態では、対象に、薬学的活性のある薬剤と混合された心筋細胞集団を含む組成物が投与される。別の実施形態では、対象に、心筋細胞集団を含む組成物と、薬学的活性のある薬剤を含む組成物とが投与され、投与は、実質的に同時か、または互いに続いて行われる。
心筋細胞集団を含む組成物の投与の毒性及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%致死用量)及びED50(集団の50%に治療上有効な用量)を判定するための、細胞培養物または実験動物における標準的薬学的手順により、決定することができる。大きな治療指数を呈する心筋細胞集団を含む組成物が好ましい。
心筋細胞集団を含む組成物の量は、いくつかの十分に確立された動物モデルを使用して試験され得る。
いくつかの実施形態では、細胞培養アッセイ及び動物実験から取得されたデータが、ヒトにおいて使用するための投与量範囲を策定する際に使用され得る。かかる化合物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内に収まる。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。
心筋細胞集団を含む組成物の治療上有効な用量は、細胞培養アッセイから最初に推定することもできる。あるいは、任意の特定の投与量の効果を好適なバイオアッセイによってモニタリングすることができる。
処置の期間及び頻度に関しては、処置が治療利益をもたらしているときを決定するために、また、投与量を増加させるべきか減少させるべきか、投与頻度を増加させるべきか減少させるべきか、処置を中止すべきか、処置を再開すべきか、または処置レジメンに他の改変を行うべきかを決定するために、対象をモニタリングするのは、当業者にとって一般的である。投薬スケジュールは、複数の臨床的要因に応じて週1回から日1回まで異なり得る。所望の用量は、一度に投与するか、または2~4の分割用量などの分割用量に分割して投与することができ、ある期間にわたって、例えば一日を通して適切な間隔で、または他の適切なスケジュールで投与することができる。このような分割用量は、単位剤形として投与することができる。いくつかの実施形態では、投与は長期にわたり、例えば、数週間または数か月にわたって日1回以上の用量である。投薬スケジュールの例は、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、もしくは6か月、またはそれ以上の期間にわたり、日1回、日2回、日3回、または日4回以上の投与である。
本発明の別の態様では、当該方法は、本書で開示される心筋細胞の単離集団の使用を提供する。本発明の一実施形態では、本書で開示される心筋細胞の単離集団は、処置を必要とする対象、例えば、心室性不整脈もしくは減少した収縮期心機能(例えば慢性心不全)を有するか、またはその発症リスクを持つ対象への移植に使用される医薬組成物の生産のために使用され得る。一実施形態では、心筋細胞の単離集団は、遺伝子修飾されていてもよい。別の態様では、対象は、心室性不整脈もしくは減少した収縮期心機能を有し得るか、またはそのリスクがあり得る。いくつかの実施形態では、本書で開示される心筋細胞の単離集団は、自家及び/または同種異系であり得る。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物であり、他の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
本発明の一実施形態は、慢性心不全を有する対象に、本書で開示される心筋細胞の集団を含む組成物の有効量を投与することを含む、対象の慢性心不全を処置する方法に関する。他の実施形態は、心室性不整脈を有する対象に、本書で開示される心筋細胞の集団を含む組成物の有効量を投与することを含む、対象の心室性不整脈を処置する方法に関する。さらなる実施形態において、本発明は、減少した収縮期心機能を有する対象に、本書で開示される心筋細胞の集団を含む組成物を投与することを含む、減少した収縮期心機能を処置する方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、先天性心疾患を有する対象に、本書で開示される心筋細胞の集団を含む組成物の有効量を投与することを含む、先天性心疾患を処置する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本書で開示される心筋細胞の集団は、任意の生理学的に許容可能な賦形剤で投与することができ、ここで、心筋細胞は、複製、増殖、及び/または生着に適切な部位を見出し得る。いくつかの実施形態では、本書で開示される心筋細胞の集団は、注射、カテーテルなどによって導入され得る。いくつかの実施形態では、本書で開示される心筋細胞の集団は、液体窒素温度で凍結して長期間保管することができ、解凍して使用することができる。凍結する場合、心筋細胞の集団は通常、10%DMSO、50%FCS、40%RPMI 1640培地または他の凍結保護溶液中で保管される。解凍されたら、本書で開示される心筋細胞の培養に関連する成長因子及び/またはフィーダー細胞の使用により、細胞を増大させることができる。
いくつかの実施形態では、本書で開示される心筋細胞の集団は、ヒトへの投与のために十分に滅菌された条件下で調製された等張性賦形剤を含む医薬組成物の形態で供給され得る。医薬製剤の一般的原理については、Cell Therapy: Stem Cell Transplantation, Gene Therapy, and Cellular Immunotherapy, by G. Morstyn & W. Sheridan eds, Cambridge University Press, 1996、及びHematopoietic Stem Cell Therapy, E. D. Ball, J. Lister & P. Law, Churchill Livingstone, 2000を参照されたい。本書で開示される心筋細胞の集団を含む組成物の細胞賦形剤及び任意の付随要素の選択は、投与に使用される経路及びデバイスに従って適合されることになる。いくつかの実施形態では、心筋細胞の集団を含む組成物には、心筋細胞の生着または機能的可動化を容易にする1つ以上の他の成分が含まれたり付随したりしてもよい。好適な成分としては、心筋細胞または相補的な細胞型の接着を支持または促進するマトリックスタンパク質が挙げられる。別の実施形態では、組成物は、再吸収性または生分解性のマトリックス足場を含み得る。
遺伝子療法は、細胞を改変して遺伝子産物を置き換えるか、組織の再生を容易にするか、疾患を処置するか、または対象への移植後の細胞の生存を向上させる(すなわち、拒絶反応を防止する)ために使用され得る。
本発明の一態様では、本書で開示される心筋細胞の集団は、全身または標的の解剖学的部位に投与するのに好適である。心筋細胞の集団は、例えば、対象の心臓内もしくはその近くに移植することができ、または動脈内投与もしく静脈内投与など(ただしこれらに限定されない)、全身投与することもできる。代替的な実施形態では、本発明の心筋細胞の集団は、静脈内及び動脈内投与、髄腔内投与、心室内投与、実質内、頭蓋内、大槽内、線条体内、及び黒質内投与を含む非経口投与を含むがこれらに限定されない、心臓系に移植するのに適切となる様々な手段で投与され得る。場合により、心筋細胞の集団は、免疫抑制性薬剤と併せて投与される。
いくつかの実施形態では、心筋細胞の集団は、個々の患者の臨床状態、投与の部位及び方法、投与の予定、患者の年齢、性別、体重、ならびに医師に知られている他の要因を考慮した、適正な医療行為に従って投与及び投薬され得る。そのため、本書での薬学的「有効量」は、当技術分野で公知のそのような考慮事項によって決定される。この量は、向上した生存率もしくはより迅速な回復、または症状の向上もしくは消失、ならびに適切な尺度として当業者によって選択される他の指標を含むがこれらに限定されない向上を達成するために有効でなければならない。心筋細胞の集団は、次の場所:診療所、臨床オフィス、救急診療部、病棟、集中治療室、手術室、カテーテル法特別室、及び放射線特別室で対象に投与され得る。
他の実施形態では、心筋細胞の集団は、後の移植/注入のために保管される。心筋細胞の集団の一部が後の適用のために保持され、一部が対象に直ちに適用されるように、心筋細胞の集団を2つ以上のアリコートまたは単位に分割してもよい。米国特許公開第2003/0054331号及び特許出願第WO03/024215号で開示され、その全体が参照により組み込まれているように、細胞バンクにおける細胞の全部または一部の中期から長期の保管も、本発明の範囲内にある。処理の終了時に、濃縮された細胞は、当業者に公知の任意の手段によってレシピエントに移入するために、シリンジなどの送達デバイスに装填され得る。
いくつかの実施形態では、心筋細胞の集団は、単独で、あるいは他の細胞、組織、組織断片、VEGFなどの成長因子、及び他の既知の血管新生性もしくは動脈原性の成長因子、生物学的活性のある化合物もしくは不活性化合物、再吸収性プラスチック足場、または集団の送達、有効性、忍容性、もしくは機能を増進することを意図した他の添加剤と組み合わせて適用され得る。いくつかの実施形態では、心筋細胞の集団はまた、構造的または治療的な目的の誘導のために細胞の機能を変更、増進、または補助するように、DNAを挿入すること、または細胞培養下に置くことによって改変され得る。例えば、幹細胞の遺伝子移入技法は、(Morizono et al., 2003、Mosca et al., 2000)で開示されているように当業者には公知であり、ウイルストランスフェクション技法、より具体的には(Walther and Stein, 2000)及び(Athanasopoulos et al., 2000)で開示されているアデノ随伴ウイルス遺伝子移入技法を含み得る。非ウイルスベースの技法を(Murarnatsu et al., 1998)で開示されているように行うこともできる。
別の態様では、いくつかの実施形態では、心筋細胞の集団は、血管新生促進成長因子(複数可)をコードする遺伝子と組み合わされ得る。抗アポトーシス因子または薬剤をコードする遺伝子も適用され得る。遺伝子(または遺伝子の組み合わせ)の付加は、アデノウイルス形質導入、「遺伝子銃」、リポソーム媒介形質導入、及びレトロウイルスまたはレンチウイルス媒介形質導入、プラスミドアデノ随伴ウイルスを含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の技術によって行われ得る。細胞は、形質導入を継続または開始できるように、経時的に細胞に遺伝子を放出及び/または提示することができる、担体材料を有する遺伝子送達ビヒクルと共に移植され得る。特に、細胞及び/または細胞を含む組織が、細胞及び/または組織の取得源となった患者以外の患者に投与される場合、移植片の拒絶反応を低減させ、好ましくは防止するために、細胞及び/または組織を受ける患者に1つ以上の免疫抑制性薬剤が投与され得る。本書で使用される場合、「免疫抑制性薬物または免疫抑制性薬剤」という用語は、正常な免疫機能を阻害または妨害する医薬品を含むことを意図する。本書で開示される方法で好適な免疫抑制性薬剤の例には、参照により本書に組み込まれている米国特許公開第2002/0182211号で開示されているような、CTLA4及びB7経路を介したT細胞とB細胞との結合を妨害する薬剤など、T細胞/B細胞共刺激経路を阻害する薬剤が含まれる。一実施形態では、免疫抑制性薬剤はシクロスポリンAである。他の例には、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン、及び抗胸腺細胞グロブリンが含まれる。一実施形態では、免疫抑制性薬物は、少なくとも1つの他の治療用薬剤と共に投与される。免疫抑制性薬物は、投与経路と適合する製剤で投与され、所望の治療効果を達成するのに十分な投与量で対象に投与される。別の実施形態では、免疫抑制性薬物は、本発明の心筋細胞に対する耐性を誘導するのに十分な時間にわたり、一時的に投与される。
有効量の心筋細胞集団を含む医薬組成物も、本発明によって企図される。これらの組成物は、有効な数の心筋細胞を、場合により、薬学的に許容可能な担体、添加剤または賦形剤と組み合わせて含む。本発明の特定の態様では、心筋細胞の集団は、滅菌食塩水中で移植を必要とする対象に投与される。本発明の他の態様では、心筋細胞の集団は、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)またはIsolyte S(pH7.4)中で投与される。無血清細胞培地の使用を含め、他のアプローチを使用してもよい。一実施形態では、心筋細胞の集団は、血漿またはウシ胎仔血清、及びDMSO中で投与される。特定の適応症では、対象への心筋細胞集団の全身投与が好ましい場合があるが、他の適応症では、疾患及び/または損傷組織の部位またはその付近での直接投与が好ましい場合がある。
いくつかの実施形態では、心筋細胞の集団は、場合により、対象への投与前の心筋細胞の集団の再構成または解凍(凍結されている場合)など、所望の目的のための説明書を備えた好適な容器にパッケージングされ得る。
成熟した心筋細胞の生産を増加させる心筋細胞成熟因子を識別する方法
本書には、心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)の生産を増加させる心筋細胞成熟因子または薬剤を識別する方法が記載される。特定の例では、ハイコンテントスクリーニング及び/またはハイスループットスクリーニングの方法が提供される。当該方法は、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を少なくとも1つの化合物(例えば、ライブラリ化合物または本書に記載される化合物)に曝露することと、化合物が少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞からの成熟した心筋細胞などの心筋細胞の生産を増加させるかどうかを判定することとを含む。本書に記載されるマーカーのうちの1つ以上を使用して、細胞を心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)として識別することができる。いくつかの例では、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞は、ライブラリへの曝露前に分化し得る。他の例では、2つ以上の化合物が、スクリーニングアッセイにおいて、個々にまたは一緒に使用され得る。さらなる例では、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞をマルチウェルプレートに配置してもよく、ライブラリの様々なメンバーをマルチウェルプレートの異なるウェルに配置することによって、化合物のライブラリをスクリーニングしてもよい。ライブラリのこのようなスクリーニングにより、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞から成熟した心筋細胞などの心筋細胞を生成することができる化合物を迅速に識別することができる。
本書には、心筋細胞(例えば休止心筋細胞)の生産を増加させる心筋細胞成熟因子または薬剤を識別する方法も記載される。特定の例では、ハイコンテントスクリーニング及び/またはハイスループットスクリーニングの方法が提供される。当該方法は、少なくとも1つの老化心筋細胞を少なくとも1つの化合物(例えば、ライブラリ化合物または本書に記載される化合物)に曝露することと、化合物が少なくとも1つの老化心筋細胞からの休止心筋細胞などの心筋細胞の生産を増加させるかどうかを判定することとを含む。本書に記載されるマーカーのうちの1つ以上を使用して、細胞を心筋細胞(例えば休止心筋細胞)として識別することができる。他の例では、2つ以上の化合物が、スクリーニングアッセイにおいて、個々にまたは一緒に使用され得る。さらなる例では、少なくとも1つの老化心筋細胞をマルチウェルプレートに配置してもよく、ライブラリの様々なメンバーをマルチウェルプレートの異なるウェルに配置することによって、化合物のライブラリをスクリーニングしてもよい。ライブラリのこのようなスクリーニングにより、少なくとも1つの老化心筋細胞から休止心筋細胞などの心筋細胞を生成することができる化合物を迅速に識別することができる。
いくつかの実施形態では、当該方法は、成熟した心筋細胞などの心筋細胞の集団を単離することをさらに含む(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、50%、75%またはそれ以上が対象細胞型である)。
いくつかの実施形態では、当該方法は、本書で開示される方法によって生産された心筋細胞を対象(例えば、慢性心不全を有する対象)に移植することをさらに含む。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、対象から取得された幹細胞に由来する。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、対象の親族など、対象とは異なるドナーからの幹細胞に由来する。
一態様では、本発明は、本書に記載される方法によって作製された、成熟した心筋細胞などの心筋細胞を特徴とする。別の態様では、本発明は、本書に記載される方法によって作製された心筋細胞を含む組成物を特徴とする。
別の態様では、本発明は、未熟心筋細胞またはその前駆細胞;本書に記載される少なくとも1つの心筋細胞成熟因子;ならびに心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)を生産するための未熟心筋細胞またはその前駆細胞及び少なくとも1つの心筋細胞成熟因子の使用に関する説明書を含むキットを特徴とする。いくつかの実施形態では、キットは、成熟した心筋細胞のマーカー、例えば本書に記載されるマーカーの検出用の成分、例えば心筋細胞成熟のマーカーの検出用の試薬、例えばマーカーに対する抗体;及び例えばコントロールとして使用するための成熟した心筋細胞をさらに含む。
一態様では、本発明は、未熟心筋細胞またはその前駆細胞から心筋細胞への分化を容易にする方法であって、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞を用意することと、幹細胞が少なくとも1つの成熟因子に曝露されたら、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞が心筋細胞(例えば、成熟した心筋細胞)に成熟または分化するように、少なくとも1つの心筋細胞成熟因子(例えば、本書に記載される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種またはそれ以上の心筋細胞成熟因子)を提供することとを含む、方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞は、哺乳動物由来である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞は、マウス由来またはヒト由来である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞は、胚性幹細胞(例えば、マウスまたはヒトの胚性幹細胞などの哺乳動物胚性幹細胞)の培養から導出される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの未熟心筋細胞またはその前駆細胞は、人工多能性幹細胞(例えば、マウスまたはヒトのiPs細胞などの哺乳動物iPs細胞)の培養から導出される。
いくつかの実施形態では、例えば、複数の未熟心筋細胞またはその前駆細胞を、本書に記載される心筋細胞成熟因子のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、またはそれ以上と接触させることにより、複数の未熟心筋細胞またはその前駆細胞を複数の成熟した心筋細胞に分化または成熟させる。
いくつかの実施形態では、例えば、複数の老化心筋細胞を、本書に記載される心筋細胞成熟因子のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、またはそれ以上と接触させることにより、複数の老化心筋細胞を複数の休止心筋細胞に成熟させる。
いくつかの実施形態では、複数の未熟心筋細胞またはその前駆細胞を、約1日、2日、4日、6日、8日、10日、12日、14日、16日、またはそれ以上にわたり、心筋細胞成熟因子に曝露する。いくつかの実施形態では、複数の未熟心筋細胞またはその前駆細胞を、約25nM、50nM、100nM、150nM、200nM、250nM、400nM、500nM、600nM、700nM、800nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、または10μMの濃度の心筋細胞成熟因子に曝露する。いくつかの実施形態では、複数の未熟心筋細胞またはその前駆細胞を、約250nM、400nM、500nM、600nM、700nM、または800nMの濃度の心筋細胞成熟因子に曝露する。いくつかの実施形態では、未熟心筋細胞またはその前駆細胞の約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、または約90%超が、成熟した心筋細胞に分化または成熟する。
前述の詳細な説明及び以下の実施例は、例示であるに過ぎず、本発明の範囲に対する制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。当業者には明らかとなる、開示された実施形態の様々な変更及び改変が、本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく行われ得る。さらに、特定されたすべての特許、特許出願、及び公表文献は、例えば、本開示に関連して使用され得る、そのような公表文献に記載された方法論を説明及び開示する目的で、参照により本書に明確に組み込まれる。これらの公表文献は、本出願の出願日以前の、それらの開示内容のためにのみ提供されている。この点に関するいかなる内容も、先行発明または何らかの他の理由により、本発明者らがかかる開示に先行する権利を持たないことを認めるものと解釈されてはならない。これらの文書の日付についてのすべての記述または内容についての表現は、本出願人に利用可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確さについての承認となるものではない。
実施例1:幹細胞由来心筋細胞の成熟のための老化抑制
背景:
慢性心不全を処置するための幹細胞アプローチには、収縮期心機能を向上させ、心室性不整脈の発生率を低減させるために、心室心筋細胞の生産が必要となる。しかし、胚性幹細胞または人工多能性幹細胞(それぞれESCまたはiPSC)に由来する心筋細胞は、現行の分化プロトコルを使用した場合、機能的に未熟なままである。これらの未熟心筋細胞は、成体動物モデルに供給すると生命を脅かす可能性のある心室性不整脈をもたらす自動性またはペースメーカー様の活動を示し、また、サルコメア構造がさほど組織化されておらず、十分な収縮力が得られない(1、2)。循環器疾患の処置への幹細胞由来療法の応用に成功するには、幹細胞由来心筋細胞の成熟のための改良された方法を開発することが必要である。
哺乳動物では出生時に著しい生理学的変化が起こる。これは、新生児が、すべての酸素及び栄養素を胎盤から導出することから、自発呼吸による酸素導出、及び経腸栄養による栄養素導出に適応するためである。これらの生理学的変化が心臓表現型を制御する基礎となる分子機構は依然として不明である。マウスでは、生後数日間、心筋細胞が心筋損傷後に再生する能力を保持する(3)。しかし、この期間を過ぎると、心筋細胞は細胞周期を脱して休止状態になる(4)。最近、ラパマイシン機構的標的(mTOR)経路の阻害により、細胞休止の誘導及び細胞老化の抑制を介して二次元(2D)培養下のiPSC-CMの成熟が向上することが特定された(5)。
細胞休止とは、栄養素の欠乏によって引き起こされ、適切な刺激に応答して細胞周期に再び入る能力を特徴とする静止状態である(6)。これに対し、細胞老化とは、DNA損傷、活性酸素種レベルの上昇、及び近傍細胞での炎症促進性表現型につながり得る老化関連分泌表現型(SASP)の発現を特徴とする、加齢表現型または疾患表現型に関連する不可逆的な細胞周期停止の状態である(7)。老化表現型を有するiPSC-CMは成熟度が低く、より成熟した心筋細胞で見られるサルコメアまたはイオンチャネルタンパク質の発現が低いことが判明した。インターロイキン-6(IL-6)などのSASPタンパク質はパラクリン作用によって近傍細胞に有害な影響を与える可能性があるため、セノリティック(老化細胞のアポトーシスを誘導する化合物)による老化細胞の除去が生存細胞の成熟を増進し得るかどうかを試験する。
発明の概要:
これまでに、後期分化中のTorin1によるmTORシグナル伝達の阻害により、細胞休止が誘導されると共に、心筋細胞の成熟が増進されることが示唆されている。さらに、休止深度が成熟を容易にする可能性があり、p53上方制御による休止の誘導がiPSC-CM成熟を容易にする可能性があることが示唆された。
予備データは、3D懸濁培養物からの老化細胞の除去によってもiPSC-CMの成熟が容易になり得ることを示唆している。セノリティックであるケルセチンは、老化腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し得る、リンゴなどの食物に見出されるフラボノールである(8)。予備データは、iPSC-CMをケルセチンで処置するとiPSC-CM成熟が増進し得ることを示唆している。
方法:
UCSD142i-86-1細胞株を使用して予備データを生成した。実験室での三次元培養に適合させた既報のプロトコル(9)に従って、UCSD142i-86-1細胞を心筋細胞に分化させた。拍動発生から2日後(分化9日目あたり)、心筋細胞をビヒクル(DMSO)または異なる濃度のケルセチンで様々な期間にわたって処置した。qPCR、ウエスタン、またはフローサイトメトリーのために、異なる時点で細胞を採取した。
予備的結果:
ケルセチンは、生細胞のパーセンテージを減少させるが、心筋細胞のパーセンテージを増加させる。
ケルセチン処置(200μM)は、フローサイトメトリーによって定量化して、2日間または5日間の処置で生細胞のパーセンテージを減少させる(図4A)。しかし、20または200μMのケルセチンによる2日間の処置は、心筋トロポニンT(TNNT2)陽性心筋細胞のパーセンテージを増加させ(図4B)、このことは、非心筋細胞の細胞死による心筋細胞の精製が生じることを示唆し得る。
ケルセチンは、3D培養下でKir2.1及びp53の発現を増加させる。
iPSC-CMのケルセチン処置は、内向き整流電流(IK1)を介した静止膜電位の維持において大きな役割を果たすイオンチャネルであるKir2.1の発現を増加させる(図3A~3D);低レベルでは、異常な膜脱分極により心室性不整脈のリスクが増加し得る(10、11)。さらに、ケルセチンはp53の発現を増加させ、これは休止の誘導を支持し得る。
ケルセチンはPPARGC1aの発現を増加させる。
200μMのケルセチンを3日間用いた処置により、ミトコンドリア発生の制御因子であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマコアクチベーター1A(PPARGC1a)のmRNA発現が有意に増加した(図5)。PPARGC1a活性化は心筋細胞成熟を刺激することができ(10)、ケルセチン処置細胞がより成熟した代謝表現型を有し得ることを示唆している。
要旨
まとめると、セノリティックであるケルセチンを使用して3D懸濁培養物から老化細胞を除去すると、Kir2.1及びPPARGC1aを含め、選択されたPSC-CM成熟マーカーの発現が増加する。これらの結果は、ケルセチンが生存iPSC-CMの成熟を向上させ得ることを示唆している。セノリティックを使用した老化細胞の除去は、移植前の培養下のiPSC-CMの成熟を容易にし得る。
参考文献:
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実施例2:幹細胞由来心筋細胞の電気的成熟
概略
循環器疾患は、依然として世界中の主な死因である。同種異系の多能性幹細胞PSC由来心筋細胞(PSC-CM)は、心不全を処置するための画一的な再生アプローチを提供する。しかし、ヒトPSC-CMを分化させる現行のプロトコルでは、おそらく高い静止膜電位(RMP)が原因となって生命を脅かす心室性頻拍(VT)のリスクを増加させ得る未熟心筋細胞が生成される。さらに、スケールアップを容易にするためには、2Dプロトコルを三次元(3D)懸濁培養に適合させる必要があり、この移行は些末ではない。本プロジェクトの目標は、-70mV以下のRMPを有する電気的に成熟したPSC由来心筋細胞を生成することが可能な3D懸濁培養プロトコルに2Dプロトコルを適合させることである。3D生成された心筋細胞の完全な表現型特性解析と併せてこのベンチマークを達成することは、この再生技術の大型動物実験ならびにその後の臨床応用及び商業化を進めるために必要である。
背景
急性心筋梗塞の後、ヒトの心臓はおよそ10億個以上の心筋細胞を失う(1)。同種異系のヒト多能性幹細胞由来心筋細胞(PSC-CM)は、心筋梗塞後の収縮期心不全患者を処置するための画一的な再生アプローチを提供し得る。しかし、未熟心筋細胞の送達は、生命を脅かす可能性のある不整脈である心室性頻拍(VT)のリスクを増加させるため、PSC-CMの不十分な成熟は、臨床応用に対する大きな障壁となり得る(2~4)。VTのリスク増加は、ほとんどのプロトコルで生成されたPSC-CMが未熟すぎて、PSC-CMが約-50mVから-60mVの比較的高い静止膜電位(RMP)を有するために起こると考えられている(これに対し、成体心室心筋細胞は約-90mVのRMPを有する)(5)。VTのリスクを回避するための戦略をまず開発する必要があるため、PSC-CMの不十分な電気的成熟は、臨床用途に向けたPSC-CMの開発における進歩を著しく妨げている。
様々な剛性の基質上での培養、長期培養(数か月)、電気的刺激または小分子とのインキュベーションなど、成熟を増進するための様々な戦略が研究されてきた(6~9)。3D懸濁培養下のPSC-CMで-70mV以下のRMPを達成すれば、臨床応用に対する大きな障壁が克服されるであろう。最近、単一の小分子Torin1によるラパマイシン機構的標的(mTOR)経路の阻害を介した細胞休止の誘導によって、ほんの2週間で同等のRMPを有する二次元(2D)培養下のPSC-CMを生成することができ(10)、成熟したPSC-CMを生産するのに2か月かかる他のプロトコルと比較して製造プロセスが大幅に簡略化されることが特定された(9)。
有意性
実行可能な治療オプションとして同種異系ヒトPSC-CMを使用する置換療法を開発するには、画一的利用のための適正製造規範を用いて多数のPSC-CMを培養する方法を開発しなければならない。2D培養の維持は労働集約的であり、バッチごとに有意なばらつきがある(11)。そのため、多くのグループが三次元(3D)バイオリアクターシステムでのPSCの維持及び分化に移行しており、このシステムは、スケールアップにより適しており、労働時間を短縮し、少量のサンプリングによってクオリティコントロールの向上が可能になる(12)。しかし、この2D培養から3D培養への移行は、異なる培養形状におけるmTORを含む様々なシグナル伝達経路の差次的制御により、細胞の表現型を変化させる(13)。この分野では、3Dで成熟したPSC-CMを効率的に生産する均一なプロトコルが未だ考案されていない。このような療法の臨床応用及び商業化が可能になるには、この課題を克服する必要がある。最近の予備データは、mTOR阻害が3D培養における成熟にごくわずかな影響しか及ぼさないことを示唆している。さらなる予備データは、3D培養において、p53を上方制御できる及び/または老化細胞を排除できる他の小分子が、PSC-CM成熟に対してより顕著な影響を及ぼし得ることを示唆している。
本プロジェクトの目的は以下の通りである。
1. nutlin-3aによるp53活性化が、in vitroでの3D培養におけるiPSC由来心筋細胞の電気的成熟を増進するかどうかを判定すること。
2. セノリティックであるケルセチンによる老化細胞の排除が、in vitroでの3D培養におけるiPSC由来心筋細胞の電気的成熟を増進するかどうかを判定すること。
予備研究
Nutlin-3aは、3D培養下でKir2.1及びp53の発現を増加させるが、Torin1はそれらの発現を増加させない。
Kir2.1は、内向き整流電流(IK1)を介した静止膜電位の維持において大きな役割を果たすイオンチャネルである;低レベルでは、異常な膜脱分極により心室性不整脈のリスクが増加し得る(10、11)。iPSC-CMのNutlin-3a処置は、Kir2.1の発現を増加させるが、Torin1処置は、Kir2.1の発現を増加させない(図2A~2H)。また、Nutlin-3aは、休止状態の誘導を支持し得るp53の発現を増加させるが、Torin1はp53の発現を増加させない(図2A~2H)。この予備データは、mTOR阻害が2D培養と比較して3D培養において有益な効果を有しないことを示唆しており、これはおそらく、mTOR活性を低減させる接触阻害によるものである(13)。
ケルセチンは、3D培養下でKir2.1及びp53の発現を増加させる。
iPSC-CMのケルセチン処置は、Kir2.1及びp53の両方の発現を増加させ(図3A~3D)、ケルセチンがiPSC-CMの電気的成熟及び休止を容易にし得ることの証拠を提供している。
研究計画
3D懸濁培養においてp53の活性化または老化細胞の排除を通じて電気的に成熟したヒトPSC-CMを生成することが可能な現行適正製造規範(cGMP)準拠プロトコルを開発することを提唱する。RMP≦-70mVのベンチマークを使用することで、不整脈の可能性を評価するための大型動物実験を進めるための現行プロトコルからの十分な改良を実証する。サルコメア、イオンチャネル及び代謝遺伝子のRNA及びタンパク質発現の評価、収縮性、電気生理学的特性、及び酸素消費速度の定量化を含む、完全な表現型の特性解析を行う。シェーカープラットフォームで三角フラスコを使用して、3D懸濁培養プロトコルを最適化した。本書に記載されるプロトコルは、PSC-CM拍動発生後に処置を開始することで、他のプロトコルを超えたさらなる成熟を促進し得る、他の分化プロトコルを補助するものとして機能し得る。
目的1の論拠
細胞休止とは、栄養素の欠乏によって引き起こされ、適切な刺激に応答して細胞周期に再び入る能力を特徴とする静止状態である(14)。これに対し、細胞老化とは、DNA損傷、活性酸素種レベルの上昇、及び近傍細胞での炎症促進性表現型につながり得る老化関連分泌表現型(SASP)の発現を特徴とする、加齢表現型または疾患表現型に関連する不可逆的な細胞周期停止の状態である(15)。老化表現型を有するiPSC-CMは成熟度が低く、より成熟した心筋細胞で見られるサルコメアまたはイオンチャネルタンパク質の発現が低いことが判明した。p53の上方制御は、休止状態を支持することによって発現成熟を増進し得る。3D懸濁培養においてp53アクチベーターであるnutlin-3aを使用することにより、電気的に成熟したヒト多能性幹細胞由来心筋細胞(PSC-CM)を生成することを提唱する。
目的2の論拠
インターロイキン-6(IL-6)などのSASPタンパク質はパラクリン作用によって近傍細胞に有害な影響を与える可能性があるため、セノリティックによる老化細胞の除去が生存細胞の成熟を増進し得るかどうかを試験する。セノリティックであるケルセチンは、老化腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し得る、リンゴなどの食物に見出されるフラボノールである(16)。ケルセチンが3D懸濁培養下で老化表現型の抑制によってiPSC-CMの電気的成熟を向上させ得るかどうかを評価する。
目的1及び2についての実験設計及び方法
PSC-CMを3D培養下でnutlin-3a(目的1)またはケルセチン(目的2)によって処置する。提唱される介入が成熟を向上させるかどうかを判定するために、iPSC-CMの収縮的特性、代謝的特性、及び電気的特性の特性解析を行う。細胞の電気的特性の完全な特性解析が焦点となる。これは、将来の研究でこれらのiPSC-CMが大型動物in vivoモデルに移植された場合に、提唱される介入が心室性不整脈のリスクを低減させ得るかどうかを理解するために重要になるであろう。
細胞株、分化及び処置。少なくとも2つの異なる起源細胞型(例えば、線維芽細胞由来または末梢血単核細胞由来のiPSC)で、男女両方のドナーからの少なくとも3つのヒト人工PSC(iPSC)株(DiPS 1016 SevA、Gibco、UCSD142i-86-1)を各実験に用いる。これにより、我々の所見が複数の細胞株でロバストであるという確信が得られるであろう。細胞株は、Harvard Stem Cell Institute iPSCコア施設から(DiPS 1016 SevA)、他の学術的細胞販売元から、確立された幹細胞バンク(UCSD142i-86-1株のWiCellなど)から、または商業的ベンダー(Gibco)から取得する。Lian et al(11)によって概説された分化プロトコルを使用する。この分化プロトコルは、2D培養及び3D培養の両方に首尾よく適合されている。心筋細胞の拍動発生後(分化の約7~9日目)、異なる時点及び濃度で、iPSC-CMをNutlin-3a(目的1)またはケルセチン(目的2)のいずれかで処置する。
心筋細胞の特性解析。提唱される介入がiPSC-CM成熟に影響するかどうかを評価するために、iPSC-CMの代謝的特性、収縮的特性、及び電気生理学的特性を定量化する。選択された代謝タンパク質(GLUT1-4、FATP1-6、PPARa、PPARg、PGC1a)、収縮タンパク質(TNNT2、TNNI3、MYH6、及びMYH7)、及びイオンチャネルタンパク質(KCNJ2、CACNA1c、SERCA2a、RYR2、及びHCN4)のmRNA発現をシングルセルRNAseqによって評価し、タンパク質発現をウエスタン分析によって評価する。ミトコンドリア膜分極はMitoTracker Red CMXRos(Thermo)によって定量化する。Seahorse XFe96 Analyzerを使用して、酸素消費速度(OCR)及び細胞外酸性化速度(ECAR)を評価する。2D培養下の収縮性は、ビデオベースの分析及び付随するMATLAB(登録商標)スクリプト(17)を使用して定量化する。カルシウム過渡は、Fluo-4(18)を使用して分析し、活動電位持続期間は、Valaキネティックイメージサイトメーター(KIC)(20)を使用したFluoVolt技術(19)を使用して分析する。パッチクランプ分析を行って、静止膜電位及びIK1を定量化する。
参考文献リスト
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Claims (72)

  1. 三次元培養において少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と未熟心筋細胞を接触させることを含む、前記未熟心筋細胞から成熟した心筋細胞を生産する方法。
  2. 前記少なくとも1つの心筋細胞成熟因子が、p53上方制御因子を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記少なくとも1つの心筋細胞成熟因子が、セノリティック、MDM2インヒビター、mTORインヒビター、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記少なくとも1つの心筋細胞成熟因子が、nutlin-3a、ケルセチン、Torin1、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記少なくとも1つの心筋細胞成熟因子が、nutlin-3a、ケルセチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記少なくとも1つの心筋細胞成熟因子が、nutlin-3aを含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記少なくとも1つの心筋細胞成熟因子が、ケルセチンを含む、請求項1に記載の方法。
  8. 前記少なくとも1つの心筋細胞成熟因子をパルス処置によって前記未熟心筋細胞と接触させる、請求項1に記載の方法。
  9. 前記少なくとも1つの心筋細胞成熟因子を連続処置によって前記未熟心筋細胞と接触させる、請求項1に記載の方法。
  10. 前記未熟心筋細胞がiPS細胞に由来する、請求項1に記載の方法。
  11. 前記未熟心筋細胞がES細胞に由来する、請求項1に記載の方法。
  12. 前記未熟心筋細胞がT細胞に由来する、請求項1に記載の方法。
  13. 前記未熟心筋細胞が線維芽細胞に由来する、請求項1に記載の方法。
  14. 前記未熟心筋細胞が胎児心筋細胞に類似する、請求項1に記載の方法。
  15. 前記未熟心筋細胞が拍動を開始した後に、前記未熟心筋細胞を前記少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と接触させる、請求項1に記載の方法。
  16. 前記未熟心筋細胞が拍動を開始した1~3日後に、前記未熟心筋細胞を前記少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と接触させる、請求項1に記載の方法。
  17. 前記成熟した心筋細胞が、未熟心筋細胞と比較して、1つ以上の成熟遺伝子の発現増加を呈する、請求項1に記載の方法。
  18. 前記1つ以上の成熟遺伝子が、TNNI3、TNNT2、MYH6、MYH7、NPPB、HCN4、CACNA1c、SERCA2a、PPARGC1、KCNJ2、REST、RyR、及びSCN5aからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
  19. 前記成熟した心筋細胞が、未熟心筋細胞と比較して、1つ以上のサルコメアタンパク質の発現増加を呈する、請求項1に記載の方法。
  20. 前記1つ以上のサルコメアタンパク質が、TNNT2、TNNI3、MYH6、及びMYH7からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
  21. 前記成熟した心筋細胞が、未熟心筋細胞と比較して、1つ以上のイオンチャネル遺伝子の発現増加を呈する、請求項1に記載の方法。
  22. 前記1つ以上のイオンチャネル遺伝子が、KCNJ2、HCN4、SCN5a、RYR2、CACNA1c、及びSERCA2aからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
  23. 前記成熟した心筋細胞が、未熟心筋細胞と比較して、REST及び/またはGATA4の発現増加を呈する、請求項1に記載の方法。
  24. 前記成熟した心筋細胞が、未熟心筋細胞と比較して、減少した拍動速度を呈する、請求項1に記載の方法。
  25. 前記成熟した心筋細胞が、-70mV以下の静止膜電位を呈する、請求項1に記載の方法。
  26. 前記成熟した心筋細胞が、毎分40拍未満の自発拍動速度を呈する、請求項1に記載の方法。
  27. 前記成熟した心筋細胞が、200V/秒を超えるアップストローク速度を呈する、請求項1に記載の方法。
  28. 前記成熟した心筋細胞が、電気的に成熟した心筋細胞である、請求項1に記載の方法。
  29. 前記成熟した心筋細胞が、収縮性の成熟した心筋細胞である、請求項1に記載の方法。
  30. 前記成熟した心筋細胞が、代謝的に成熟した心筋細胞である、請求項1に記載の方法。
  31. 前記成熟した心筋細胞が、電気的、収縮性、及び代謝的に成熟した心筋細胞である、請求項1に記載の方法。
  32. 請求項1~16のいずれか1項に記載の方法によって生産された非自然発生の心筋細胞。
  33. 前記非自然発生の心筋細胞が、未熟心筋細胞と比較して、1つ以上の成熟遺伝子の発現増加を呈する、請求項32に記載の非自然発生の心筋細胞。
  34. 前記1つ以上の成熟遺伝子が、TNNI3、TNNT2、MYH6、MYH7、NPPB、HCN4、CACNA1c、SERCA2a、PPARGC1、KCNJ2、REST、RyR、及びSCN5aからなる群から選択される、請求項33に記載の非自然発生の心筋細胞。
  35. 前記非自然発生の心筋細胞が、未熟心筋細胞と比較して、1つ以上のサルコメアタンパク質の発現増加を呈する、請求項32に記載の非自然発生の心筋細胞。
  36. 前記1つ以上のサルコメアタンパク質が、TNNT2、TNNI3、MYH6、及びMYH7からなる群から選択される、請求項35に記載の非自然発生の心筋細胞。
  37. 前記非自然発生の心筋細胞が、未熟心筋細胞と比較して、1つ以上のイオンチャネル遺伝子の発現増加を呈する、請求項32に記載の非自然発生の心筋細胞。
  38. 前記1つ以上のイオンチャネル遺伝子が、KCNJ2、HCN4、SCN5a、RYR2、CACNA1c、及びSERCA2aからなる群から選択される、請求項37に記載の非自然発生の心筋細胞。
  39. 前記非自然発生の心筋細胞が、TNNT2、TNNI3、KCNJ2、及びp53のうちの1つ以上の発現増加を呈する、請求項32に記載の非自然発生の心筋細胞。
  40. 前記非自然発生の心筋細胞が、未熟心筋細胞と比較して、減少した拍動速度を呈する、請求項32に記載の非自然発生の心筋細胞。
  41. 前記非自然発生の心筋細胞が、-70mV以下の静止膜電位を呈する、請求項32に記載の非自然発生の心筋細胞。
  42. 前記非自然発生の心筋細胞が、毎分40拍未満の自発拍動速度を呈する、請求項32に記載の非自然発生の心筋細胞。
  43. 前記非自然発生の心筋細胞が、200V/秒を超えるアップストローク速度を呈する、請求項32に記載の非自然発生の心筋細胞。
  44. 前記非自然発生の心筋細胞が、電気的に成熟した心筋細胞である、請求項32に記載の非自然発生の心筋細胞。
  45. 前記非自然発生の心筋細胞が、収縮性の成熟した心筋細胞である、請求項32に記載の非自然発生の心筋細胞。
  46. 前記非自然発生の心筋細胞が、代謝的に成熟した心筋細胞である、請求項32に記載の非自然発生の心筋細胞。
  47. 前記非自然発生の心筋細胞が、電気的、収縮性、及び代謝的に成熟した心筋細胞である、請求項32に記載の非自然発生の心筋細胞。
  48. 処置の方法であって、それを必要とする対象に、請求項32~47のいずれか1項に記載の非自然発生の心筋細胞を含む組成物を投与することを含む、前記方法。
  49. 前記対象が、心室性不整脈、減少した収縮期心機能、慢性心不全、先天性心疾患、もしくは他の心疾患を有するか、またはその発症リスクを持つ、請求項48に記載の方法。
  50. 処置の方法であって、それを必要とする対象に、請求項32~47のいずれか1項に記載の1つ以上の非自然発生の心筋細胞の単離集団を使用して生産された医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
  51. 前記対象が、心室性不整脈、減少した収縮期心機能、慢性心不全、先天性心疾患、もしくは他の心疾患を有するか、またはその発症リスクを持つ、請求項50に記載の方法。
  52. 心臓の病態を処置するための薬品の製造における組成物の使用であって、前記処置が、それを必要とする対象への前記薬品の投与を含み、前記組成物が、請求項32~47のいずれか1項に記載の非自然発生の心筋細胞を少なくとも1つ含む、前記使用。
  53. 前記対象が、心室性不整脈、減少した収縮期心機能、慢性心不全、先天性心疾患、もしくは他の心疾患を有するか、またはその発症リスクを持つ、請求項52に記載の使用。
  54. 心筋細胞の休止を誘導する方法であって、三次元培養において心筋細胞成熟因子と老化心筋細胞を接触させ、それにより、休止心筋細胞に移行するように前記老化心筋細胞を誘導することを含む、前記方法。
  55. 前記心筋細胞成熟因子が、p53の上方制御因子を含む、請求項54に記載の方法。
  56. 前記心筋細胞成熟因子が、mTORシグナル伝達経路インヒビターを含む、請求項54に記載の方法。
  57. 前記心筋細胞成熟因子が、p53の上方制御因子及びmTORインヒビターを含む、請求項54に記載の方法。
  58. 前記心筋細胞成熟因子が、セノリティックを含む、請求項54に記載の方法。
  59. 前記心筋細胞成熟因子が、MDM2インヒビターを含む、請求項54に記載の方法。
  60. 前記心筋細胞成熟因子が、Torin1、nutlin-3a、ケルセチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
  61. 前記心筋細胞成熟因子が、Torin1を含む、請求項54に記載の方法。
  62. 前記心筋細胞成熟因子が、Torin1及びnutlin-3aの組み合わせを含む、請求項54に記載の方法。
  63. 前記心筋細胞成熟因子が、nutlin-3aを含む、請求項54に記載の方法。
  64. 前記心筋細胞成熟因子が、ケルセチンを含む、請求項54に記載の方法。
  65. 前記心筋細胞成熟因子が、nutlin-3a及びケルセチンの組み合わせを含む、請求項54に記載の方法。
  66. 前記心筋細胞成熟因子が、Torin1ではない、請求項54に記載の方法。
  67. nutlin-3a、ケルセチン、Torin1、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と未熟心筋細胞を接触させることを含む、前記未熟心筋細胞から成熟した心筋細胞を生産する方法。
  68. 前記心筋細胞成熟因子が、nutlin-3a、ケルセチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項67に記載の方法。
  69. 前記成熟した心筋細胞が三次元培養で生産される、請求項67に記載の方法。
  70. 前記成熟した心筋細胞が二次元培養で生産される、請求項67に記載の方法。
  71. 前記未熟心筋細胞をパルス処置によって前記少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と接触させる、請求項67に記載の方法。
  72. 前記未熟心筋細胞を連続処置によって前記少なくとも1つの心筋細胞成熟因子と接触させる、請求項67に記載の方法。
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