JP2024076523A - 熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物 - Google Patents

熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2024076523A
JP2024076523A JP2022188090A JP2022188090A JP2024076523A JP 2024076523 A JP2024076523 A JP 2024076523A JP 2022188090 A JP2022188090 A JP 2022188090A JP 2022188090 A JP2022188090 A JP 2022188090A JP 2024076523 A JP2024076523 A JP 2024076523A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
flame retardant
mass
parts
thermoplastic polyurethane
polyurethane elastomer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022188090A
Other languages
English (en)
Inventor
斗彌 小林
彰朗 田村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shin Etsu Polymer Co Ltd
Original Assignee
Shin Etsu Polymer Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shin Etsu Polymer Co Ltd filed Critical Shin Etsu Polymer Co Ltd
Priority to JP2022188090A priority Critical patent/JP2024076523A/ja
Publication of JP2024076523A publication Critical patent/JP2024076523A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】モリブデン酸塩難燃剤を含み、優れた難燃性と引張強さを示し、さらに耐水性にも優れた熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物を提供する。【解決手段】熱可塑性ポリウレタンエラストマー、モリブデン酸塩難燃剤、リン系難燃剤、及びカルボジイミド化合物を含む熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物であって、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対し、前記モリブデン酸塩難燃剤を20質量部超50質量部以下、前記リン系難燃剤を15質量部超50質量部以下、前記カルボジイミド化合物を0.3質量部以上の割合で含む、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物に関する。
熱可塑性エラストマーは、ゴム的性質を有し、柔軟性に優れるため、加硫ゴムや塩化ビニル樹脂の代替として、自動車部品、電子・電気機器部品、フィルム等の成形品材料や、通信ケーブル、電線等の被覆材等に広く使用されている。これら成形品材料や被覆材等には、難燃性が求められる場合がある。
従来、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の難燃性を高める目的で難燃剤が配合されることがある。例えば特許文献1には、ヒンダードアミン系難燃剤とフォスフィン系難燃剤を個別に熱可塑性ポリウレタンエラストマーに混合し、その後、各混合物を統合して目的の組成物を得る製造方法が開示されている。この製造方法によれば、機械的物性に優れた組成物が得られる。
特開2021-080313号公報
ケーブルを被覆する樹脂組成物の難燃試験として、UL 1581 VW-1やUL 1581 Cable Flame Test規格が評価基準とされることがある。樹脂組成物に多量の難燃剤を配合すれば難燃性は向上するが、ケーブルを被覆するための引張強さ等の機械的物性が低下する懸念がある。さらに、機械的物性を維持しつつ優れた耐水性を付与することは困難であった。
本発明者らは、樹脂組成物にモリブデン酸塩難燃剤を配合すると、難燃性の向上効果は低いものの、引張強さの維持が容易であることに着目し、モリブデン酸塩難燃剤と併用したときに、引張強さを維持しつつ、難燃性を高められる別の難燃剤を探索した。さらに、これらの難燃剤の効果を損なわずに、優れた耐水性を付与することを鋭意検討した。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、モリブデン酸塩難燃剤を含み、優れた難燃性と引張強さを示し、さらに耐水性にも優れた熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物を提供する。
[1] 熱可塑性ポリウレタンエラストマー、モリブデン酸塩難燃剤、リン系難燃剤、及びカルボジイミド化合物を含む熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物であって、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対し、前記モリブデン酸塩難燃剤を20質量部超50質量部以下、前記リン系難燃剤を15質量部超50質量部以下、前記カルボジイミド化合物を0.3質量部以上の割合で含む、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
[2] 前記モリブデン酸塩難燃剤及び前記リン系難燃剤以外のその他の難燃剤をさらに含み、前記モリブデン酸塩難燃剤、前記リン系難燃剤及び前記その他の難燃剤の合計の含有量が、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、40~80質量部である、[1]に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
[3] 前記リン系難燃剤が有機リン系化合物を含む、[1]又は[2]に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
[4] 前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーが、エラストマーの分子鎖中にカーボネート結合を複数有するカーボネート系熱可塑性ポリウレタンエラストマーである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
[5] UL 1581 VW-1およびUL 1581 Cable Flame Testの要件を満たす難燃性を有する、[1]~[4]の何れか一項に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
[6] JIS K 6251:2010に規定された5号ダンベル形の試験片を構成したとき、JIS K 7161-2:2014に従って測定した引張強さが25MPa以上である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
[7] 前記試験片を80℃の温水に168時間浸した後の引張強さが、前記温水に浸す前の引張強さを基準として、±30%以内の変化率である、[6]に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
[8] 熱可塑性ポリウレタンエラストマー、モリブデン酸塩難燃剤、リン系難燃剤、及びカルボジイミド化合物を含む熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の製造方法であって、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対し、前記モリブデン酸塩難燃剤を20質量部超50質量部以下、前記リン系難燃剤を15質量部超50質量部以下、前記カルボジイミド化合物を0.3質量部以上の割合で配合し、これらを170℃以上で混錬することを含む、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の製造方法。
[8]によれば、170℃以上で混錬したときにも熱劣化が生じにくく、引張強さが充分に維持され、さらに耐水性にも優れた目的の熱可塑性ポリウレタンエラストマーが得られる。
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、モリブデン酸塩難燃剤とリン系難燃剤を所定の割合で含むので、難燃性と引張強さが優れる。さらに配合したカルボジイミド化合物は他の難燃剤の特性を損なうことなく、耐水性を付与することができる。
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で示す数値範囲の下限値及び上限値はその数値範囲に含まれるものとする。
≪熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物≫
本発明の第一態様は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、モリブデン酸塩難燃剤、リン系難燃剤、及びカルボジイミド化合物を含む熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物(TPU組成物)である。
本態様のTPU組成物は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)100質量部に対し、モリブデン酸塩難燃剤を20質量部超50質量部以下、リン系難燃剤を15質量部超50質量部以下、前記カルボジイミド化合物を0.3質量部以上の割合で含む。この割合で含むと本発明の効果が充分に得られる。
本態様のTPU組成物において、TPU100質量部に対して、モリブデン酸塩難燃剤の含有量は、20質量部超40質量部以下が好ましく、20質量部超35質量部以下がより好ましく、20質量部超30質量部以下がさらに好ましい。
上記の好ましい範囲であると、本発明の効果がより一層確実に得られる。
本態様のTPU組成物において、TPU100質量部に対して、リン系難燃剤の含有量は、16~45質量部が好ましく、17~42質量部がより好ましく、18~38質量部がさらに好ましく、19~35質量部が特に好ましい。
上記の好ましい範囲であると、本発明の効果がより一層確実に得られる。
本態様のTPU組成物において、TPU100質量部に対して、カルボジイミド化合物の含有量は、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1.2質量部以上がさらに好ましく、1.5質量部以上が特に好ましい。
上記下限値に対する上限値は、目安として5質量部以下、4質量部以下、3質量部以下が挙げられる。
上記の好ましい範囲であると、本発明の効果がより一層確実に得られる。
本態様のTPU組成物は、さらにその他の難燃剤を含むことが好ましい。ここで、その他の難燃剤とは、モリブデン酸塩難燃剤及びリン系難燃剤以外の難燃剤を指す。その他の難燃剤としては、特にメラミン系難燃剤が好ましい。
その他の難燃剤をモリブデン酸塩難燃剤及びリン系難燃剤とともに含有することにより、引張強さを維持しつつ、難燃性をより一層高めることができる。
さらに、特筆すべきこととして、メラミン系難燃剤とカルボジイミド化合物を併せて含有すると、本態様のTPU組成物の耐水性がより一層向上することが挙げられる。
本態様のTPU組成物において、TPU100質量部に対して、その他の難燃剤の含有量は、5~40質量部が好ましく、10~35質量部がより好ましく、15~30質量部がさらに好ましい。
上記の好ましい範囲であると、本発明の効果がより一層確実に得られる。
本態様のTPU組成物において、モリブデン酸塩難燃剤、リン系難燃剤及びその他の難燃剤の合計の含有量は、TPU100質量部に対して、40~80質量部が好ましく、50~75質量部がより好ましく、55~70質量部がさらに好ましい。
上記の好ましい範囲であると、本発明の効果が更により一層確実に得られる。
<熱可塑性ポリウレタンエラストマー(略称:TPU)>
本態様のTPUとしては、ハードセグメントブロックとソフトセグメントブロックとを繰り返し単位とするブロック共重合体が好ましい。
ハードセグメントブロックは、少なくともジイソシアネートとジオール類とが反応して形成されたウレタン結合を有することが好ましい。
ジイソシアネートとしては、例えば1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、トリレンジイソシアネート(TDI)、トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート等が挙げられる。
ジオール類としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
ソフトセグメントブロックは、少なくともジイソシアネートとポリオールとが反応して形成されたウレタン結合を有することが好ましい。
ジイソシアネートとしては、ハードセグメントブロックの説明において先に例示したジイソシアネート等が挙げられる。
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、ジオール類とジカルボン酸との縮合重合により得られるポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合により得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。
ジオール類としては、ハードセグメントブロックの説明において先に例示したジオール類等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ジカルボン酸とグリコールとの縮合重合により得られるポリエーテルポリオール;ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、ポリエステルポリオールの説明において先に例示したジカルボン酸等が挙げられる。
グリコールとしては、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、ジオール類とカーボネート類との反応により得られるポリカーボネートポリオール;ポリカプロラクトンポリオールとポリヘキサメチレンカーボネートとの共重合体等が挙げられる。
ジオール類としては、ハードセグメントブロックの説明において先に例示したジオール類等が挙げられる。
カーボネート類としては、例えばエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。
TPUは、エステル系TPU、エーテル系TPU、カーボネート系TPUに分類することができる。ここで、エステル系TPUはエラストマーの分子鎖中にエステル結合を複数有するTPUであり、エーテル系TPUはエラストマーの分子鎖中にエーテル結合を複数有するTPUであり、カーボネート系TPUはエラストマーの分子鎖中にカーボネート結合を複数有するTPUである。エラストマーの分子鎖中に含まれる上記結合は、TPUの合成時に使用したポリオールが有する結合に由来する。
本態様においては、引張強さが優れることからカーボネート系TPUが好ましい。
本態様のTPU組成物に含まれるTPUは、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
本態様のTPU組成物の難燃性を高めつつ引張強さの向上を図る観点から、TPU100質量部のうち、カーボネート系TPUの含有割合は、50質量部以上100質量部以下が好ましく、70質量部以上100質量部以下がより好ましく、90質量部以上100質量部以下がさらに好ましい。
ここで、TPU100質量部のうち、カーボネート系TPU以外の残部は、エステル系TPU及びエーテル系TPUから任意に選択することができる。
本態様のTPU組成物の引張強さを高める観点から、TPU組成物の総質量に対するTPUの含有量は、50質量%以上が好ましい。また、各難燃剤を添加することを考慮して、前記含有量は、50~80質量%が好ましく、50~70質量%がより好ましく、50~65質量%がさらに好ましい。
<モリブデン酸塩難燃剤>
本態様のモリブデン酸塩難燃剤は、モリブデン(VI)のオキソアニオンを含む化合物、すなわちモリブデン酸の塩を含む化合物、を含有する難燃剤である。
モリブデン酸塩難燃剤としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸炭酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム等のモリブデン酸塩が挙げられる。
本態様のモリブデン酸塩難燃剤は、上記のようなモリブデン酸塩が他の無機化合物と複合体(complex)を形成しているものも含む。その他の無機化合物としては、例えば、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物が挙げられる。
上記の中でも、モリブデン酸亜鉛又はモリブデン酸カルシウムを含むモリブデン酸塩難燃剤が好ましい。
本態様のTPU組成物中のモリブデン酸塩難燃剤は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
<リン系難燃剤>
本態様のリン系難燃剤は、モリブデン酸塩難燃剤及びメラミン系難燃剤に該当せず、リン原子を含む化合物からなる難燃剤である。リン系難燃剤は、リン酸から誘導される官能基又はポリリン酸鎖を有するものが好ましい。リン系化合物は、リン酸部位の縮合の有無で大別することができる。
非縮合型としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート等の非ハロゲンリン酸エステル;トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステルが挙げられる。
縮合型としては、芳香族縮合リン酸エステル、脂肪族縮合リン酸エステルが挙げられる。
芳香族縮合リン酸エステルとしては、例えば、リン酸基が有する水酸基の水素原子をフェニル基が置換したリン酸エステル部位を複数有する公知の化合物が挙げられる。
脂肪族縮合リン酸エステルとしては、例えば、リン酸基が有する水酸基の水素原子を脂肪族炭化水素基が置換したリン酸エステル部位を複数有する公知の化合物が挙げられる。
ここで、脂肪族縮合リン酸エステルは芳香族基を有しないものとする。
リン系難燃剤の中でも、難燃性を高めつつ引張強さを充分に維持させる観点から、リンを含む有機化合物からなる有機リン系化合物が好ましく、縮合型リン系難燃剤がより好ましく、脂肪族縮合リン酸エステルがさらに好ましい。
本態様のTPU組成物中のリン系難燃剤は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
<その他の難燃剤>
その他の難燃剤として、例えばメラミン系難燃剤、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、等が挙げられる。
本態様のTPU組成物において、カルボジイミド化合物と併用することによりその耐水性がより一層向上するので、メラミン系難燃剤が好ましい。
<カルボジイミド化合物>
本態様のカルボジイミド化合物は、カルボジイミド基(-N=C=N-)を有する化合物である。その分子構造は、カルボジイミド基が環構造の一部を構成した環状カルボジイミドであってもよいし、カルボジイミド基が環構造の一部を構成しない非環状カルボジイミドであってもよい。なお、非環状カルボジイミドは、カルボジイミド基以外の部位が環構造を構成していてもよく、例えば、芳香環を分子内に有していてもよい。
また、分子内に含まれるカルボジイミド基の数は1つでもよいし、2つ以上でもよい。
本態様のカルボジイミド化合物の分子量は、TPU組成物中に分散させることが容易であり、耐水性の効果が充分に発揮されることから、1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。
本態様のTPU組成物中のカルボジイミド化合物は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
<メラミン系難燃剤>
本態様のメラミン系難燃剤は、モリブデン酸塩難燃剤及びリン系難燃剤に該当せず、メラミン又はメラミン誘導体を含む化合物、或いは、メラミン又はメラミン誘導体から誘導される官能基を含む化合物からなる難燃剤である。
メラミンを含む化合物としては、例えば、メラミンシアヌレート(シアヌル酸メラミン)等のメラミンを含む有機塩が挙げられる。
メラミン誘導体としては、例えば、メラム(C11)、メレム(C10)が挙げられる。これらのメラミン誘導体は塩として含まれることによりメラミン系難燃剤を構成することができる。
メラミンから誘導される官能基としては、例えば、メラミン、メラム又はメレムが有する任意の水素原子の1つが除かれた1価の基が挙げられる。
メラミン系難燃剤の中でも、本態様のTPU組成物の難燃性を高めつつ引張強さを充分に維持させる観点から、メラミンシアヌレートが好ましい。
本態様のTPU組成物中のメラミン系難燃剤は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
本発明において、リン系難燃剤及びメラミン系難燃剤と、モリブデン酸塩難燃剤とを区別する意味で、モリブデン酸塩を含む難燃剤は、たとえリン原子又はメラミンから誘導される官能基を含んでいても、リン系難燃剤及びメラミン系難燃剤に該当せず、モリブデン酸塩難燃剤に該当するものとする。
本発明において、リン系難燃剤とメラミン系難燃剤を区別する意味で、メラミンから誘導される官能基を含む難燃剤は、たとえリン原子を含んでいても、リン系難燃剤に該当せず、メラミン系難燃剤に該当するものとする。
<その他の任意成分>
本態様のTPU組成物には、必要に応じて、上述した以外の成分(任意成分)を含有してもよい。任意成分としては、例えば、溶剤、可塑剤、プロセスオイル等の軟化剤、タルク、カーボンブラック、炭酸カルシウム等の充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、加工安定剤、着色剤等の各種の添加剤が挙げられる。
本態様のTPU組成物の総質量に対する上記の任意成分の含有量は、本発明の効果を充分に得る観点から、20質量%以下が好ましく10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
<TPU組成物の製造方法>
本発明に係るTPU組成物を製造する方法は特に制限されず、各成分が組成物中で均一になるように、常法により混錬(混合)することにより得られる。
TPUと各難燃剤成分を混錬する方法としては、例えば、加圧ニーダーやバンバリーミキサー等を使用する方法が挙げられる。混合の際にはTPUの分解を防ぐ観点から、200℃以下の樹脂温度で混錬することが好ましい。一方、生産性向上のメリットがあることから、170℃以上で混錬することが好ましい。
<TPU組成物の形態>
本態様のTPU組成物の具体的な形態は、別の成形加工に供することが容易なペレット、ビーズ、粉体であってもよいし、プレス成形、射出成形、押出成形等の公知の成形法により成形された成形品であってもよい。
成形品としては、特に限定されず、例えば自動車部品、パーソナルコンピュータ、コピー機等の電子・電気機器部品(例えばキーボード、トナーシール材、クリーニングブレード等)、レインコート等のフィルム材、放水ホース材、時計用バンド、フィギュア(人間やキャラクター等の立体的な模型)、工具グリップ(ドライバーのハンドル等)等が挙げられる。
本発明の製造方法により得たTPU組成物の成形品は、難燃性だけでなく引張強さと耐水性にも優れるので、特に電線(ケーブル)を被覆する用途に有用である。
(引張強さ)
本態様のTPU組成物がJIS K 6251:2010に規定された5号ダンベル形の試験片を構成したとき、JIS K 7161-2:2014に従い測定した引張強さは、25MPa以上が好ましく、26MPa以上がより好ましく、27MPa以上がさらに好ましい。上限値は特に限定されず、柔軟性や伸び性とのバランスを考慮して、例えば45MPa程度が目安として挙げられる。
前記引張強さは、使用するTPUが本来有する引張強さと、各難燃剤の含有量によって調整することができる。
(耐水性)
前記試験片を80℃の温水に168時間浸した後の引張強さが、前記温水に浸す前の引張強さを基準として、±30%以内の変化率であることが好ましい。この浸水処理後においても上記の範囲内に変化率が収まれば、当該TPU組成物は耐水性が高いといえる。従って、上記変化率は±25%以内がより好ましく、±20%以内がさらに好ましく、±15%以内が特に好ましく、±10%以内が最も好ましい。
(難燃性)
本態様のTPU組成物は、UL 1581 VW-1およびUL 1581 Cable Flame Testのうち少なくとも一方の要件を満たす難燃性を有することが好ましい。
UL 1581 VW-1およびUL 1581 Cable Flame Testの要件を満たすか否かは、下記の試験方法を実施することにより確認することができる。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
表1~2に記載の原材料の詳細は次の通りである。
「カーボネート系TPU」はDICコベストロポリマー社製のパンデックスT-9280である。
「モリブデン酸塩(1)」はHuber社製のKEMGARD 911Cであり、モリブデン酸亜鉛・ケイ酸マグネシウムの複合体(Zinc Molybdate / Magnesium Silicate Complex)である。
「モリブデン酸塩(2)」はHuber社製のKEMGARD 911Aであり、モリブデン酸カルシウム亜鉛複合体(Calcium Molybdate Zinc Complex)である。
「リン系難燃剤」は帝人社製のファイヤーガードFCX-210であり、有機リン系化合物含有リン系難燃剤である。
「メラミン系難燃剤」は堺化学工業社製のSTABIACE MC-2010Nであり、メラミンシアヌレートである。
「カルボジイミド化合物(1)」は帝人社製のカルボジスタ TCC-NPであり、環状カルボジイミドである。
「カルボジイミド化合物(2)」は帝人社製のカルボジスタ TCC-FP20Mであり、環状カルボジイミドである。
「カルボジイミド化合物(3)」はラインケミー社製のStabaxol Pであり、非環状のカルボジイミド化合物である。
「カルボジイミド化合物(4)」はラインケミー社製のStabaxol P100であり、非環状のカルボジイミド化合物である。
「脂肪酸エステル系滑剤」は、エメリーオレオケミカルズ社製のロキシオールG-32である。
「ベヘン酸カルシウム」は日東化成工業社製のCS-7である。
「フェノール系酸化防止剤(1)」はADEKA社製のアデカスタブAO-60である。
「フェノール系酸化防止剤(2)」はADEKA社製のアデカスタブAO-80である。
「ヒンダードアミン系光安定剤」はADEKA社製のアデカスタブLA-63Pである。
「ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤」は城北化学工業社製のJF-77である。
「顔料マスターバッチ」はDICコベストロポリマー社製のウレタンブラック DN-20Aである。
<試験片の作成>
表1~2に記載の量(単位:質量部)で各材料を混合し、TPU組成物を調製した。
各試験例において、調製した配合物65gをラボプラストミル(東洋精機社製:型番:4C150、ローター:R30)に投入し、170℃設定で毎分50回転にて4分混錬した。
得られた混練物を1分以内に160℃設定の6インチロールにて1分間混錬し、0.5mm厚のシートを作成した。ここで作成したシートについて、ロールに通した方向(流れ方向)と、それに直交する方向を区別することができる。2枚のシートを準備し、各シートの流れ方向が互いに交差(クロス)した状態で重ねて、170℃にて4分間予熱した後、170℃、15MPaにて4分間加熱圧縮成形し、その後加圧したまま室温(25℃)までゆっくり冷却して、1mm厚のシート状の試験片を作製した。
<物性値:引張強さ>
試験片を23±1℃の環境に24時間静置した後、引張強さを測定した。
試験片をJIS K 6251:2010に規定された5号ダンベルにて打ち抜き、JIS K 7161-2:2014に従い測定した。結果を表1~2に示す。
引張強さが25MPa以上であるものを合格品と判定した。
<耐水性:浸水後の引張強さの変化>
試験片を80℃の温水に完全に水没させて168時間浸した後、引張強さを測定した。
具体的には、上述のJIS規格に従い測定した。
浸水前の引張強さ(上述の物性値)を基準とし、変化率が±30%以内であるものを合格品と判定した。結果を表1~2に示す。表中、「-」は未測定である。
<難燃性(1)>
UL 1581 Cable Flame Testの試験方法に従い、下記の試験用ケーブルの難燃性を評価した。
上記で作製した試験片を30mm×350mmの大きさに切り出し、短辺を2つ折りにした。これを80#の金網からなる直径10mmの円筒の外周に1重で巻き付けて、ホッチキスにて留めたものを試験用ケーブル(外形12mm、長さ350mm)とした。
上記試験方法に従い、試験用ケーブルを垂直に保持し、20度の角度でバーナーの炎をあて60秒着火、30秒休止を3回繰り返し、燃焼の程度を調べた。
上記試験方法に従い、残炎による燃焼が60秒を超えず、表示旗が25%以上燃損せず、落下物によって底部の外科用綿が燃焼しないものを合格品と判定した。
結果を表1~2に示す。合格品を「○」、不合格品を「×」で示した。
<難燃性(2)>
UL 1581 VW-1の試験方法に従い、下記の試験用ケーブルの難燃性を評価した。
上記で作製した試験片を30mm×350mmの大きさに切り出し、短辺を2つ折りにした。これを80#の金網からなる直径10mmの円筒の外周に1重で巻き付けて、ホッチキスにて留めたものを試験用ケーブル(外形12mm、長さ350mm)とした。
上記試験方法に従い、試験用ケーブルを垂直に保持し、20度の角度でバーナーの炎をあて15秒着火、15秒休止を5回繰り返し、燃焼の程度を調べた。
上記試験方法に従い、残炎による燃焼が60秒を超えず、表示旗が25%以上燃損せず、落下物によって底部の外科用綿が燃焼しないものを合格品と判定した。
結果を表1~2に示す。合格品を「○」、不合格品を「×」で示した。
本実施例では、上記の難燃性(1)及び難燃性(2)の両方に合格したものを最終的な合格品とした。
Figure 2024076523000001
Figure 2024076523000002
<評価>
本発明に係る実施例のTPU組成物にあっては、UL 1581 Cable Flame Testに準拠した模擬試験、及びUL 1581 VW-1に準拠した模擬試験の両方について合格することができた。ここで「模擬」と表記する理由は、試験用ケーブルの導電線が金網製の円筒であるためであり、試験方法自体は各規格に準拠している。従い、本発明に係るTPU組成物が銅線等を被覆したケーブルにおいても同様の結果が得られることは明らかである。
さらに、本発明に係るTPU組成物にあっては、耐水性も優れていた。特に、カルボジイミド化合物とともにメラミン系難燃剤を含む実施例1~4の耐水性の高さが顕著であった。
一方、比較例1では、カルボジイミド化合物の含有量が少ないため、充分な耐水性が得られなかった。また、比較例2では、モリブデン酸塩難燃剤及びリン系難燃剤の含有量が少ないため、難燃性が不合格であった。比較例3では、モリブデン酸塩難燃剤の含有量が少ないため、難燃性が不合格であった。比較例4では、リン系難燃剤の含有量が少ないため、難燃性が不合格であった。

Claims (7)

  1. 熱可塑性ポリウレタンエラストマー、モリブデン酸塩難燃剤、リン系難燃剤、及びカルボジイミド化合物を含む熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物であって、
    前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対し、前記モリブデン酸塩難燃剤を20質量部超50質量部以下、前記リン系難燃剤を15質量部超50質量部以下、前記カルボジイミド化合物を0.3質量部以上の割合で含む、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
  2. 前記モリブデン酸塩難燃剤及び前記リン系難燃剤以外のその他の難燃剤をさらに含み、前記モリブデン酸塩難燃剤、前記リン系難燃剤及び前記その他の難燃剤の合計の含有量が、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、40~80質量部である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
  3. 前記リン系難燃剤が有機リン系化合物を含む、請求項2に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
  4. 前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーが、エラストマーの分子鎖中にカーボネート結合を複数有するカーボネート系熱可塑性ポリウレタンエラストマーである、請求項3に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
  5. UL 1581 VW-1およびUL 1581 Cable Flame Testの要件を満たす難燃性を有する、請求項1~4の何れか一項に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
  6. JIS K 6251:2010に規定された5号ダンベル形の試験片を構成したとき、JIS K 7161-2:2014に従って測定した引張強さが25MPa以上である、請求項5に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
  7. 前記試験片を80℃の温水に168時間浸した後の引張強さが、前記温水に浸す前の引張強さを基準として、±30%以内の変化率である、請求項6に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
JP2022188090A 2022-11-25 2022-11-25 熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物 Pending JP2024076523A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022188090A JP2024076523A (ja) 2022-11-25 2022-11-25 熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022188090A JP2024076523A (ja) 2022-11-25 2022-11-25 熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2024076523A true JP2024076523A (ja) 2024-06-06

Family

ID=91332895

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022188090A Pending JP2024076523A (ja) 2022-11-25 2022-11-25 熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2024076523A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI491672B (zh) 非鹵素難燃劑熱塑性聚胺基甲酸酯
JP2011508024A (ja) ハロゲン非含有難燃性熱可塑性ポリウレタン
KR101190971B1 (ko) 난연성이 우수한 전선피복용 친환경 난연 열가소성 코폴리에테르에스테르 엘라스토머 복합수지 조성물
CN115135720B (zh) 聚酯弹性体树脂组合物
KR101154462B1 (ko) 비할로겐 난연 열가소성 폴리에스테르 엘라스토머 복합수지조성물
WO2010039616A2 (en) Flame retardant thermoplastic elastomers
ES2691638T3 (es) Retardante de llama libre de halógeno de TPU con LOI muy alto
WO2014038595A1 (ja) 非ハロゲン系難燃性樹脂組成物および成形体
KR20160006265A (ko) 할로겐 방염 열가소성 폴리우레탄
JP6100596B2 (ja) 延伸用難燃ポリエステル樹脂組成物
JP7288840B2 (ja) 熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の製造方法
JP2024076523A (ja) 熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物
JP7291609B2 (ja) 熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物
CN111363340B (zh) 无卤环保阻燃热塑性聚氨酯弹性体组合物及其制备方法
JP2024076677A (ja) 熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物
WO2023080194A1 (ja) 熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物
EP3228661B1 (en) Non-halogenated thermoplastic resin composition and cable comprising same
KR101263986B1 (ko) 유연성과 반사율이 높은 친환경 난연성 열가소성 폴리에테르에스테르 엘라스토머 수지 조성물
KR20220053201A (ko) 열가소성 수지 조성물, 이의 제조방법 및 이로부터 제조된 성형품
JP2020041111A (ja) 熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物及び電線
JP6291193B2 (ja) 非ハロゲン系難燃性樹脂組成物、非ハロゲン系難燃性樹脂成形体、およびこれらの製造方法
KR101756724B1 (ko) 유연성과 난연성이 우수한 절연 전선케이블용 공중합체 조성물