JP2024038072A - ボルシクリブ多形、並びにそれを作製する方法及び使用する方法 - Google Patents

ボルシクリブ多形、並びにそれを作製する方法及び使用する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本開示は、ボルシクリブ遊離塩基及び様々なボルシクリブ塩を含むボルシクリブの結晶固体形態、ボルシクリブの結晶固体形態を含有する医薬組成物、並びにボルシクリブの結晶固体形態を含む医薬組成物を投与することによって病状又は障害を治療するための方法を提供する。【解決手段】ボルシクリブ遊離塩基、又は、1,5-ナフタレンジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ジベンゾイル-L-酒石酸、エタンスルホン酸、ゲンチジン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、オルトリン酸、硫酸、及びp-トルエンスルホン酸から選択される酸に相当する対イオンを含むボルシクリブ塩、を含む、ボルシクリブの結晶形態を提供する。【選択図】図1

Description

本開示は、CDK阻害剤ボルシクリブの新規な多形、並びにそれを作製する方法及び使用する方法を提供する。
様々な薬物を含むある特定の化学化合物は、多形形態で存在する場合がある。多形形態は、一般に、異なる物理的特性を有する異なる結晶形態を意味するが、溶媒和物又は水和物、及びアモルファス形態を含む場合もある(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use,
ICH Harmonised Tripartite Guideline, Specifications: Test Procedures and Acceptance Criteria for New Drug Substances and New Drug Products: Chemical Substances, Q6A, version dated 6 October 1999)。多形形態における相違は、薬物性能、生体利
用度、安定性などを含む薬物の品質及び性能に影響を与え得る。融点の特定、赤外線分光分析(IR)、X線回折、熱分析(DSC、TGAなど)、ラマン分光分析、光学顕微鏡、及びNMRを含む様々な物理化学的測定及び技術が、多形の探索及び識別に用いられ得る。
本開示は、ボルシクリブの多形、例えば結晶形態を提供する。いくつかの実施形態では、多形は、遊離塩基のボルシクリブを含む。いくつかの実施形態では、多形は、1,5-ナフタレンジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ジベンゾイル-L-酒石酸、エタンスルホン酸、ゲンチジン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、オルトリン酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸などから選択される酸に相当する対イオンを含むボルシクリブ塩を含む。
1つの実施形態では、本開示は、7.30°±0.2°、13.58°±0.2°、14.06°±0.2°、15.18°±0.2°、15.66°±0.2°、17.50°±0.2°、18.94°±0.2°、19.54°±0.2°、22.22°±0.2°、23.38°±0.2°、24.10°±0.2°、24.98°±0.2°、25.94°±0.2°、27.26°±0.2°、28.50°±0.2°、及び32.82°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態を提供する。いくつか実施形態では、結晶形態は、マロン酸ボルシクリブを含む。
1つの実施形態では、本開示は、5.06°±0.2°、6.42°±0.2°、9.34°±0.2°、10.14°±0.2°、12.30°±0.2°、13.66°±0.2°、14.14°±0.2°、15.82°±0.2°、17.02°±0.2°、19.74°±0.2°、20.38°±0.2°、21.82°±0.2°、22.66°±0.2°、24.62°±0.2°、25.78°±0.2°、26.58°±0.2°、28.66°±0.2°、及び29.98°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態を提供する。いくつか実施形態では、結晶形態は、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブを含む。
1つの実施形態では、本開示は、4.94°±0.2°、6.78°±0.2°、9.34°±0.2°、10.94°±0.2°、12.70°±0.2°、13.38°±0.2°、14.90°±0.2°、15.66°±0.2°、17.54°±0.2°、18.82°±0.2°、22.02°±0.2°、23.98°±0.2°、24.
78°±0.2°、25.30°±0.2°、26.66°±0.2°、及び29.98°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態を提供する。いくつか実施形態では、結晶形態は、リン酸ボルシクリブを含む。
1つの実施形態では、本開示は、6.86°±0.2°、12.66°±0.2°、13.58°±0.2°、14.74°±0.2°、15.98°±0.2°、19.38°±0.2°、23.94°±0.2°、24.78°±0.2°、及び25.94°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態を提供する。いくつか実施形態では、結晶形態は、シュウ酸ボルシクリブを含む。
1つの実施形態では、本開示は、9.02°±0.2°、10.50°±0.2°、11.06°±0.2°、12.30°±0.2°、12.82°±0.2°、13.90°±0.2°、14.82°±0.2°、15.30°±0.2°、15.94°±0.2°、17.26°±0.2°、19.34°±0.2°、20.62°±0.2°、22.18°±0.2°、22.86°±0.2°、24.58°±0.2°、25.42°±0.2°、25.86°±0.2°、27.38°±0.2°、及び28.66°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態を提供する。いくつか実施形態では、結晶形態は、ナパジシル酸ボルシクリブを含む。
1つの実施形態では、本開示は、ボルシクリブの結晶無水物の結晶形態を提供する。1つの実施形態では、本開示は、ボルシクリブの結晶水和物の結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、本明細書で述べるボルシクリブの結晶形態及び医薬的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、患者の疾患を治療する方法を提供し、方法は、本明細書で述べるボルシクリブの結晶形態を含む組成物の治療有効量を患者に投与することを含み、疾患は、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、B細胞リンパ増殖性疾患、B細胞性急性リンパ性白血病、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、バーキット白血病、ホジキン病、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、若年性骨髄単球性白血病、有毛細胞白血病、マスト細胞白血病、マスト細胞症、骨髄増殖性疾患(MPD)、骨髄増殖性腫瘍、真性多血症(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病(BCR-ABL1-陽性)、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、末梢神経系(PNS)の原発性多巣性リンパ腫、胸腺癌、脳癌、神経膠芽腫、肺癌、扁平上皮癌、皮膚癌(例:黒色腫)、眼癌、網膜芽細胞腫、眼球内黒色腫、口腔及び中咽頭癌、膀胱癌、胃癌、胃癌、膵癌、乳癌、子宮頚癌、頭頚部癌、腎癌、腎癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、直腸結腸癌、骨癌(例:転移性骨癌)、食道癌、精巣癌、婦人科癌、甲状腺癌、類表皮癌、AIDS関連癌(例:リンパ腫)、ウイルス誘発子宮頚癌(ヒトパピローマウイルス)、上咽頭癌(エプスタインバーウイルス)、カポジ肉腫、原発性体液性リンパ腫(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)、肝細胞癌(B型肝炎ウイルス及びC型肝炎ウイルス)、T細胞白血病(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)、皮膚の良性過形成、再狭窄、良性前立腺肥大、腫瘍血管新生、慢性炎症性疾患、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化、炎症性腸疾患、乾癬、湿疹、及び強皮症などの皮膚疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性、血管腫、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、嚢炎、脊椎関節炎、ぶどう膜炎、ベーチェット病、リウマチ性多発筋痛症、巨細胞性動脈炎、サルコイドーシス、川崎病、若年性特発性関節炎、化膿性汗腺炎、シェーグレン症候群、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎
、クローン病、ループス、並びにループス腎炎から成る群より選択される。
1つの実施形態では、本開示は、患者の過剰増殖性疾患を治療する方法を提供し、方法は、本明細書で述べるボルシクリブの結晶形態を含む組成物の治療有効量を患者に投与することを含み、過剰増殖性疾患は、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、B細胞リンパ増殖性疾患、B細胞性急性リンパ性白血病、及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症から成る群より選択される。
1つの実施形態では、本開示は、患者の血液癌を治療する方法を提供し、方法は、本明細書で述べるボルシクリブの結晶形態を含む組成物の治療有効量を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、血液癌は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性リンパ腫(ALL)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)から成る群より選択される。
1つの実施形態では、本開示は、患者の血液癌を治療するための組成物を提供し、組成物は、本明細書で述べるボルシクリブの結晶形態及び医薬的に許容される賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、血液癌は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性リンパ腫(ALL)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)から成る群より選択される。
1つの実施形態では、本開示は、ボルシクリブHClの結晶形態、又はボルシクリブ遊離塩基の結晶形態を提供し、各々、図1のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とする。
1つの実施形態では、本開示は、図2の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図4のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図8の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図11の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図12A及び図12Bの1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図14の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図18の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図22の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図26の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図29の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一
致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図32の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図36の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図40の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図45の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図49の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図53の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図57の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図61の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図65の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図69の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図73の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図77の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図81の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図82の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブHClの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図85及び図142のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするボルシクリブ遊離塩基の結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図89のH-NMRスペクトルと実質的に一致するH-NMRスペクトルを特徴とするボルシクリブ遊離塩基の結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図90及び図91の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするマロン酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図94のH-NMRスペクトル(Mao1)と実質的に一致するH-NMRスペクトルを特徴とするマロン酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図96及び図97の1又は複数のX線回折パターンと
実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするジベンゾイル-L-酒石酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図100のH-NMRスペクトル(DiTr1)と実質的に一致するH-NMRスペクトルを特徴とするジベンゾイル-L-酒石酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図102及び図103の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするリン酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図106のH-NMRスペクトル(Pho1)と実質的に一致するH-NMRスペクトルを特徴とするリン酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図108の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするシュウ酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図111のH-NMRスペクトル(Oxa)と実質的に一致するH-NMRスペクトルを特徴とするシュウ酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図113及び図114の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするナパジシル酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図117のH-NMRスペクトル(Nds1a)と実質的に一致するH-NMRスペクトルを特徴とするナパジシル酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図118の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするエシル酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図120のH-NMRスペクトル(Esy1)と実質的に一致するH-NMRスペクトルを特徴とするエシル酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図121の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とする1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図123及び図124の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とする安息香酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図126の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするベシル酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図128及び図129の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするゲンチジン酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図131の1又は複数のX線回折パターンと実質的に
一致するX線回折パターンを特徴とする臭化水素酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図133及び図134の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするマレイン酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図136及び図137の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とする硫酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
1つの実施形態では、本開示は、図139及び図140の1又は複数のX線回折パターンと実質的に一致するX線回折パターンを特徴とするトルエンスルホン酸ボルシクリブの結晶形態を提供する。
本発明の上述の概要、さらには以下の詳細な記述は、添付の図面と合わせて読むことでより良く理解される。
図1は、ボルシクリブHClの5つの異なるバッチのHR粉末回折パターンと、過去の試験で記録された形態1の粉末パターンとの比較を示す。下から上向きに:形態1-参照、#1694M-1401、#1694M-1301、#1694M-1201、#P1446A-05_EN027、及び#P1446A-05_EN017。橙色領域は、バッチ1694M-1201及びP1446A-05_EN027中の結晶不純物に帰属され得る回折ピークを強調し、一方灰色領域は、バッチ1694M-1301でのみ検出された結晶相を強調して示す。 図2は、ボルシクリブHClの5つのバッチのDSC曲線を示す(昇温速度10℃/分)。溶融/分解に関連する吸熱イベントが、263℃付近で見られた。バッチ1694M-1401(赤色)、P1446A-05_EN027(黒色)、1694M-1201(緑色)、P1446A-05_EN017(紫色)、及び1694M-1301(青色)。 図3は、ボルシクリブHClの5つのバッチのTGA分析を示す(昇温速度10℃/分)。分解前の質量減少は、0.3~0.6%で変動した。分解は250℃付近で開始した。バッチP1446A-05_EN017(茶色)、P1446A-05_EN027(紫色)、1694M-1201(緑色)、1694M-1301(青色)、及び1694M-1401(赤色)。 図4は、スクリーニングの出発物質である形態1、バッチ1694M-1301のボルシクリブHClの高スループットXRPDを示す。 図5は、バッチ1694M-1301のボルシクリブHClのDSC曲線を示す(昇温速度10℃/分)。Tpeak263.4℃での吸熱イベントは、化合物の溶融/分解に帰属され得る。 図6は、出発物質であるバッチ1694M-1301のボルシクリブHClのTGMS分析を示す(昇温速度10℃/分)。分解前に0.3%の質量減少が観察された。分解は250℃付近で開始し、熱流シグナルでの吸熱イベントを伴っていた。 図7は、出発物質であるバッチ1694M-1301のボルシクリブHCLのLCMS分析を示す。APIに相当するピークは、6.3分間の保持時間を有し(図7A)、陽イオンの質量スペクトルは、m/zが470.1(M+H)のイオンを示した(図7B)。 図8は、高圧試験で用いた形態1のボルシクリブHClのHR XRPDの比較を示す。下から上向きに:形態1-参照、実験ID Gen13(10トン、1分間、RT)、実験ID Gen14(10トン 10分間、RT)、実験ID Gen15(10トン、1分間、80℃)、及び実験ID Gen16(10トン、10分間、80℃)。 図9は、乳鉢と乳棒で約5分間にわたって手作業で粉砕したサンプルのリートベルト解析を示し、バックグラウンドラインに基づくアモルファス部分の計算を含む。黒色線は、得られた粉末パターンを表し、赤色は、計算値であり、灰色線は、両者間の差異である。下部にある青色の棒線は、フィットした格子(fitted cell)のピーク位置を示す。紫色線は、算出されたサンプルのアモルファス部分を表す(10±2%)。 図10は、Retchグラインダーを30Hzで5分間用いて粉砕したサンプルのリートベルト解析を示し、バックグラウンドラインに基づくアモルファス部分の計算を含む。黒色線は、得られた粉末パターンを表し、赤色は、計算値であり、灰色線は、両者間の差異である。下部にある青色の棒線は、フィットした格子のピーク位置を示す。紫色線は、算出されたサンプルのアモルファス部分を表す(7±2%)。 図11は、出発物質と比較した、凍結乾燥によって得た固体のXRPDを重ね合わせて示す。下から上向きに:形態1、出発物質;MeOH/水(90/10 体積/体積)から得た形態2、1,4-ジオキサン/水(90/10 体積/体積)から得たAm、及びTHF/水(90/10 体積/体積)から得たAm。 図12A及び図12Bは、スクリーニング時に識別された独特の形態のHT-XRPDを示す(下から上向きに);図12A:形態1 出発物質、1,4-ジオキサン中の熱サイクルから得た形態2(実験ID TCP15)、IPA中の熱サイクルから得た形態3(実験ID TCP13)、RTでTHF中での溶媒平衡から得た形態4(実験ID SLP30)、1,4-ジオキサン中の熱サイクルから得た形態5(実験ID TCP8)、50℃で水中での溶媒平衡から得た形態6(低い結晶性)(実験ID SLP65)、1,2-ジメトキシエタン中の熱サイクルから得た形態7(実験ID TCP5)、アセトンからの蒸発結晶化から得た形態8(実験ID ECP34)、DMF中での冷却結晶化から、周囲条件で乾燥した固体から得た形態9(実験ID PSM60)、DMF中での冷却結晶化から、真空乾燥した固体から得た形態10(実験ID PSM60);図12B:DMA中での冷却結晶化から、周囲条件で乾燥した固体から得た形態11(実験ID PSM59)、アセトニトリル/水 90/10(体積/体積)中での熱サイクルから母液の蒸発後に得た形態12(実験ID TCP20 ML)、エタノール中での冷却結晶化から得た形態13(実験ID PSM52)、アセトニトリル/水 90/10(体積/体積)中での熱サイクルから得た形態14(実験ID TCP20)、DMF/1,4-ジオキサンから溶液中への蒸気拡散から得た形態15(実験ID VDL8)、DMSOからの蒸発結晶化から得た形態16(実験ID ECP18)、TFE/ヘプタンによる貧溶媒添加から得た形態17、DMF/酢酸イソプロピルによる貧溶媒添加から、周囲条件で乾燥した固体から得た形態18、メタノール/ジイソプロピルエーテル 20/80からの蒸発結晶化から得た形態19、及びAAC後に形態10から変換した後に得た形態20。 図13は、熱サイクル実験における温度プロファイルを示す。 図14は、AACへの曝露前後における、エタノール中での溶媒平衡実験から得た物質(実験ID SLP19)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図15は、形態1(実験ID SLP19)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。0.2%の質量減少は、おそらく残留溶媒又は水分に関連するものと思われる。 図16は、形態1(実験ID SLP19)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。吸熱イベントが見られ、おそらく溶融及び分解に関連するものと思われる。 図17は、形態1(実験ID SLP19)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図18は、AACへの曝露前後における、1,4-ジオキサン/水 95/5中での熱サイクル実験から得た物質(実験ID TCP2)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図19は、形態2(実験ID TCP15)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。5.4%の総質量減少は、溶媒の喪失(0.3分子のジオキサンに等しい)と関連している。 図20は、形態2(実験ID TCP15)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。溶媒の喪失に関連する2つのブロードな吸熱イベントが見られた。165℃の小さい吸熱イベントは、形態1への遷移の可能性があり、なぜなら、259℃で見られる小さい吸熱イベントが、形態1の溶融と一致しているからである。 図21は、形態2(実験ID TCP5)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図22は、AACへの曝露前後における、IPA/水 95/5中での熱サイクル実験から得られ(実験ID TCP13)、周囲条件及び真空下で乾燥した物質のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図23は、形態3(実験ID TCP13)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。13.2%の質量減少は、溶媒の喪失に関連する。 図24は、形態3(実験ID TCP13)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。ブロードな吸熱イベントが見られ、おそらく溶媒の喪失に関連するものと思われる。259℃に非常に小さい吸熱が見られたが、溶媒の喪失後、おそらく物質全体はアモルファスとなったものと思われる。 図25は、形態3(実験ID TCP13)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図26は、THF中での溶媒平衡実験から得た物質(実験ID SLP30)の、周囲条件で乾燥(紫色)及び真空下で乾燥(青色)及びAACへの曝露後(緑色)におけるHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図27は、形態4(実験ID SLP30)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。4.3%の質量減少は、溶媒の喪失に関連する。それに続く発熱及び吸熱イベントは、それぞれ、再結晶及び溶融/分解に帰属された。 図28は、形態4(実験ID SLP30)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。溶媒の喪失に関連する3つのブロードな吸熱イベントが見られた。続いて、217℃で発熱再結晶イベント、吸熱溶融(260℃)、及び分解イベント。 図29は、実験ID SLP30から得た固相のXRPDを重ねて示す(下から上向きに):形態4a(周囲条件で乾燥した固体)、形態4(真空乾燥した固体)、及び140℃までのサイクルDSC実験後に得た形態4b。 図30は、形態4に対する155℃までのサイクルDSC実験後に得た固体のTGMS分析を示す。 図31は、形態4(実験ID SLP30)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図32は、AACへの曝露前後における、1,4-ジオキサン中での熱サイクル実験から得られ(実験ID TCP8)、周囲条件及び真空下で乾燥した物質のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図33は、形態5(実験ID TCP8)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。9.4%の総質量減少は、溶媒の喪失に関連する。 図34は、形態5(実験ID TCP8)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。おそらく溶媒の喪失に関連するものと思われるブロードな吸熱イベントが見られ、続いて259℃に小さい吸熱が、及び分解イベントが見られた。 図35は、形態5(実験ID TCP8)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図36は、AACへの曝露前後における、水中での溶媒平衡実験から得られ(実験ID SLP65)、周囲条件及び真空下で乾燥した物質のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図37は、形態6(実験ID SLP65)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。2.1%の質量減少は、水の喪失に関連する。 図38は、形態6(実験ID SLP65)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。水の喪失に関連するブロードな吸熱イベントが151℃で見られた。220℃より高温での熱イベントは、分解プロセスに関連する。 図39は、形態6(実験ID SLP65)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図40は、AACへの曝露前後における、1,2-ジメトキシエタン中での熱サイクル実験から得た物質(実験ID TCP5)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図41は、形態7(実験ID TCP5)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。2.0%の質量減少は、おそらく溶媒の喪失及び/又は水に関連するものと思われる。 図42は、形態7(実験ID TCP5)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。おそらく溶媒の喪失に関連するものと思われる吸熱イベントが見られ、続いて発熱再結晶イベント、並びに形態1の溶融及び分解が見られた。 図43は、155℃までのサイクルDSC後における形態7のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。2.3%の質量減少は、おそらく水の喪失に関連するものと思われる。 図44は、形態7(実験ID TCP5)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図45は、AACへの曝露前後における、メタノール/アセトン 75/25中での蒸発実験から得た物質(実験ID ECP34)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図46は、形態8(実験ID ECP34)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。5.3%の質量減少は、おそらく溶媒の喪失及び/又は水に関連するものと思われる。 図47は、形態8(実験ID ECP34)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。おそらく溶媒の喪失に関連するものと思われるブロードな吸熱イベントが見られ、続いて溶融に関連する可能性のある小さい吸熱イベントが見られた。 図48は、形態8(実験ID ECP34)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図49は、AACへの曝露前後における、N,N-ジメチルホルムアミド中での冷却結晶化実験から得られ(実験ID PSM60)、周囲条件及び真空下で乾燥した固体のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図50は、形態10(実験ID PSM60)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。20.8%の質量減少は、溶媒の喪失に関連する。 図51は、形態10(実験ID PSM60)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。おそらく溶媒の喪失に関連するものと思われる吸熱イベントが見られ、続いて、形態1の溶融に関連する第二の吸熱イベントが見られた。 図52は、形態10(実験ID PSM60)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図53は、AACへの曝露前後における、N,N-ジメチルアセトアミド中での冷却結晶化実験から得た物質(実験ID PSM59)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図54は、形態11(実験ID PSM59)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。9.1%の質量減少は、おそらく溶媒の喪失に関連するものと思われる。 図55は、形態11(実験ID PSM59)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。2つの吸熱イベントが見られ、それぞれ、おそらく溶媒の喪失及び形態1の溶融に関連するものと思われる。 図56は、形態11(実験ID PSM59)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図57は、AACへの曝露前後における、ACN/水 90/10中での熱サイクル実験の母液から得た物質(実験ID TCP20_ML)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図58は、形態12(実験ID TCP20_ML)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。5.9%の質量減少は、溶媒の喪失に関連する。 図59は、形態12(実験ID TCP20_ML)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。25~180℃に見られる吸熱イベントは、おそらく溶媒の喪失に関連するものと思われ、一方255℃に見られる小さい吸熱イベントは、形態1の溶融に関連する可能性がある。 図60は、形態12(実験ID TCP20_ML)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図61は、AACへの曝露前後における、エタノール中での冷却蒸発結晶化実験から得た物質(実験ID PSM52)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図62は、形態13(実験ID PSM52)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。6.3%の質量減少は、おそらく溶媒の喪失又は水に関連するものと思われる。 図63は、形態13(実験ID AS5、AAC後)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。おそらく溶媒の喪失に関連するものと思われるいくつかのブロードな吸熱イベントが見られ、続いて形態1の溶融に関連する小さい吸熱イベントが見られた。 図64は、形態13(実験ID PSM52)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図65は、AACへの曝露前後における、ACN/水 90/10中での熱サイクル実験から得られ(実験ID TCP20)、周囲条件及び真空下で乾燥した固体のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図66は、形態14(実験ID TCP20)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。2.5%の質量減少は、おそらく溶媒の喪失に関連するものと思われる。 図67は、形態14(実験ID TCP20)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。2つの吸熱イベントが見られた。 図68は、形態14(実験ID TCP20)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図69は、AACへの曝露前後における、N,N-ジメチルホルムアミド/1,4-ジオキサン中での液体中への蒸気拡散実験から得た物質(実験ID VDL8)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図70は、形態15(実験ID VDL8)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。13.2%の質量減少は、溶媒の喪失に関連する。 図71は、形態15(実験ID VDL8)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。2つの吸熱イベントが見られ、それぞれ、おそらく溶媒の喪失及び形態1の溶融に関連するものと思われる。 図72は、形態15(実験ID VDL8)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図73は、AACへの曝露前後における、DMSO中での蒸発実験から得た物質(実験ID ECP18)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図74は、形態16(実験ID ECP18)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。16.6%の質量減少は、溶媒の喪失に関連する。 図75は、形態16(実験ID ECP18)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。2つの吸熱イベントが見られ、それぞれ、おそらく溶媒の喪失及び形態1の溶融に関連するものと思われる。 図76は、形態16(実験ID ECP18)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図77は、AACへの曝露前後における、TFE/ヘプタン中での貧溶媒実験から得られ(実験ID AS3)、周囲条件及び真空下で乾燥した物質のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図78は、形態17(実験ID AS3)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。16.9%の質量減少は、溶媒の喪失に関連する。 図79は、形態17(実験ID AS3)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。3つの吸熱イベントが見られ、おそらく溶媒の喪失に関連するものと思われる。257℃での最後の吸熱は、形態1の溶融に関連するものであった。 図80は、形態17(実験ID AS3)のHPLCクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積パーセント)で6.3分に出現した。 図81は、AACへの曝露前後における、DMF/酢酸イソプロピル中での貧溶媒実験から得られ(実験ID AS7)、周囲条件及び真空下で乾燥した固体のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図82は、AACへの曝露前後における、メタノール/ジイソプロピルエーテル 20/80中での蒸発実験から得た物質(実験ID ECP45/PSM13)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図83は、形態19(実験ID ECP45/PSM13)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。4.5%の質量減少は、おそらく溶媒の喪失に関連するものと思われ、続いて発熱再結晶イベント、及び形態1の吸熱溶融イベントが見られた。 図84は、ボルシクリブ(遊離塩基)の分子構造を示し、遊離塩基は、pK 6.46の塩基性部位を有する。 図85は、出発物質である形態Aのボルシクリブ遊離塩基の高スループットXRPDを示す。 図86は、出発物質であるボルシクリブ遊離塩基のDSC曲線を示し(昇温速度10℃/分)、小さい吸熱イベントが99℃で見られ、続いて214℃に小さい吸熱イベント、及び225℃で最終的な溶融が見られる。 図87は、出発物質であるボルシクリブ遊離塩基のTGMSデータを示し(昇温速度10℃/分)、分解の前に0.3%の質量減少が見られ、分解は240℃付近で開始し、質量減少は、おそらく残留溶媒/水分に関連するものと思われ、分解の開始は、MSデータで確認し、熱流シグナルは、220℃付近での溶融に起因する吸熱イベントを示した。 図88は、出発物質であるボルシクリブ遊離塩基のHPLC分析を示し、遊離塩基に相当するピークは、6.1分の保持時間を有し、99.3%の化学純度(面積%)を示した。 図89は、出発物質であるボルシクリブ遊離塩基のH-NMRスペクトルを示す。 図90は、(下から上向きに)形態A出発物質、マロン酸参照、エタノールから得たMao1(実験ID SSm53)、及びTHFから得たMao2(実験ID SSm20)のXRPDパターンを示す。 図91は、AAC前後におけるMao1(実験ID SSm53)のXRPDパターンを示し、出発物質及びマロン酸を参照として示す。 図92は、マロン酸及びエタノールから得たMao1(実験ID SSm53)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、0.2%の質量減少が、140℃付近での溶融/分解開始前に見られる。 図93は、マロン酸及びエタノールから得たMao1(実験ID SSm53)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示し、溶融/分解に起因する吸熱イベントが、180℃のピーク温度で見られた。 図94は、出発物質(上側)と比較したマロン酸及びエタノールから得たMao1(実験ID SSm53、下側)のH-NMRスペクトルを示す。 図95は、マロン酸及びエタノールから得たMao1(実験ID SSm53)のHPLCクロマトグラムを示す。 図96は、(下から上向きに)形態A出発物質、ジベンゾイル-L-酒石酸参照、エタノールから得たDiTr1(実験ID SSm46)、及びTHFから得たDiTr1+DiTr2混合物(実験ID SSm13)のXRPDパターンを示す。 図97は、AAC前後におけるDiTr1(実験ID SSm46)のXRPDパターンを示し、出発物質及びジベンゾイル-L-酒石酸を参照として示す。 図98は、エタノール中のジベンゾイル-L-酒石酸から得たDiTr1(実験ID SSm46)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、0.9%の質量減少が、180℃付近での溶融/分解開始前に見られる。 図99は、エタノール中のジベンゾイル-L-酒石酸から得たDiTr1(実験ID SSm46)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示し、207℃のピーク温度での分解プロセスの前に、小さい吸熱イベントが172℃で見られた。 図100は、出発物質(上側)と比較したジベンゾイル-L-酒石酸及びエタノールから得たDiTr1(実験ID SSm46、下側)のH-NMRスペクトルを示す。 図101は、ジベンゾイル-L-酒石酸及びエタノールから得たDiTr1(実験ID SSm46)のHPLCクロマトグラムを示す。 図102は、(下から上向きに)形態A出発物質、アセトンから得たPho1(実験ID SSm81)、及びTHFから得た結晶性の低いPho2(実験ID SSm15)のXRPDパターンを示す。 図103は、AAC前後におけるPho1(実験ID SSm81)のXRPDパターンを示し、出発物質及びリン酸を参照として示す。 図104は、アセトン中のリン酸で得たPho1(実験ID SSm81)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、1.9%の質量減少が、溶融前の25~160℃で見られ、熱分解は、200℃付近で開始した。 図105は、アセトン中のリン酸で得たPho1(実験ID SSm81)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。 図106は、出発物質(上側)と比較したリン酸及びアセトンから得たPho1(実験ID SSm81、下側)のH-NMRスペクトルを示す。 図107は、リン酸及びアセトンから得たPho1(実験ID SSm81)のHPLCクロマトグラムを示す。 図108は、AAC前後におけるOxa1(実験ID SSm12)のXRPDパターンを示し、出発物質及びシュウ酸を参照として示す。 図109は、THF中のシュウ酸で得たOxa1(実験ID SSm12)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、1.4%の質量減少が、25~100℃で、1.9%の第二の質量減少が、100~150℃で見られ、160℃よりも高温での質量減少は、この塩の分解に関連する。 図110は、THF中のシュウ酸で得たOxa1(実験ID SSm12)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示し、最初の2つの吸熱イベントは、溶媒/水の喪失に起因するものであり、一方213℃付近のブロードな吸熱イベントは、この塩の分解に関連する。 図111は、出発物質(上側)と比較したシュウ酸及びTHFから得たOxa1(実験ID SSm12、下側)のH-NMRスペクトルを示す。 図112は、シュウ酸及びTHFから得たOxa1(実験ID SSm12)のHPLCクロマトグラムを示す。 図113は、(下から上向きに)形態A出発物質、1,5-ナフタレンジスルホン酸参照、エタノールから得たNds1a、固相(実験ID SSm35)、アセトンから得たNds1b、固相(実験ID SSm68)、エタノールから得たNds2、液相(実験ID SSm35)、THFから得たNds3(実験ID SSm2)、THFから得たNds4、固相(実験ID SSm3)、及びAAC後にNds2の変換によって得たNds5(SSm68液相、AAC後)のXRPDパターンを示す。 図114は、AAC前後におけるNds1a(実験ID SSm35)のXRPDパターンを示し、出発物質及び1,5-ナフタレンジスルホン酸を参照として示す。 図115は、エタノール中の1,5-ナフタレンジスルホン酸で得たNds1a(実験ID SSm35)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、残留溶媒/水に起因する1.1%の質量減少が、25~100℃で見られ、分解は、250℃付近で開始した。 図116は、エタノール中の1,5-ナフタレンジスルホン酸で得たNds1a(実験ID SSm35)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示し、残留溶媒の喪失と関連する一連の小さいブロードな吸熱イベントが、25~100℃で見られた。 図117は、出発物質(上側)と比較した1,5-ナフタレンジスルホン酸及びエタノールから得たNds1a(実験ID SSm35、下側)のH-NMRスペクトルを示す。 図118は、(下から上向きに)形態A出発物質、THF中のエタンスルホン酸から得たEsy1又は形態D(実験ID SSm16)、エタノールの蒸発後にシュウ酸から得た形態D(実験ID SSm44、液相)、及びエタノール中のリン酸で得た形態D(実験ID SSm48)のXRPDパターンを示す。 図119は、THF中のエタンスルホン酸で得たEsy1/形態D(実験ID SSm16)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、溶媒又は水に起因する4.6%の質量減少が、25~200℃で見られ、分解は、250℃付近で開始した。 図120は、出発物質(上側)と比較したエタンスルホン酸及びTHFから得たEsy1/形態D(実験ID SSm16、下側)のH-NMRスペクトルを示す。 図121は、AAC前後におけるTHFから得たXin1(実験ID SSm19)のXRPDパターンを示し、出発物質及び1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を参照として示す。 図122は、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸及びTHFで得たXin1(実験ID SSm19)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、溶媒の喪失及び分解の開始に関連する12%の質量減少が、25~200℃で見られる。 図123は、(下から上向きに)形態A出発物質、安息香酸参照、アセトンから得たBen2(実験ID SSm63)、及びTHFから得たMao2(実験ID SSm20)のXRPDパターンを示す。 図124は、AAC前後におけるBen2(実験ID SSm63)のXRPDパターンを示し、出発物質及び安息香酸を参照として示す。 図125は、安息香酸及びエタノールで得たBen2(実験ID SSm63)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示す。 図126は、AAC前後におけるTHFから得た固体(実験ID SSm10)のXRPDパターンを示し、出発物質及びベンゼンスルホン酸を参照として示す。 図127は、ベンゼンスルホン酸及びTHFから得たBes1(実験ID SSm10)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、THFの喪失に起因する8.1%の質量減少が、25~180℃で見られ、続いて230℃付近での分解が見られる。 図128は、(下から上向きに)形態A出発物質、ゲンチジン酸参照、THFから得たGen1(実験ID SSm21)、及びエタノールから得たGen2_lc(固相)(実験ID SSm54)のXRPDパターンを示す。 図129は、AAC前後におけるGen1(実験ID SSm21)のXRPDパターンを示し、出発物質及びゲンチジン酸を参照として示す。 図130は、ゲンチジン酸及びTHFから得たGen1(実験ID SSm21)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、9.2%の質量減少が、25~200℃で見られ、続いて熱分解が見られる。 図131は、AAC前後におけるHBr1(実験ID SSm34)のXRPDパターンを示し、出発物質及び臭化水素酸を参照として示す。 図132は、臭化水素酸及びエタノールで得たHBr1(実験ID SSm34)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、5.9%の質量減少が、熱流シグナル中のいくつかの吸熱イベントを伴って見られ、熱分解は、240℃付近に見られる。 図133は、(下から上向きに)形態A出発物質、マレイン酸参照、THFから得たMae1(実験ID SSm14)、及びTHFから得たMae2(実験ID SSm47)のXRPDパターンを示す。 図134は、AAC前後におけるMae1(実験ID SSm14)のXRPDパターンを示し、出発物質及びマレイン酸を参照として示す。 図135は、マレイン酸及びTHFで得たMae1(実験ID SSm14)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、溶媒/水の喪失に起因する3.4%の質量減少が、25~110℃で見られ、続いて分解が見られる。 図136は、(下から上向きに)形態A出発物質、エタノール及び1モル当量の硫酸から得たSul1(実験ID SSm37)、エタノール及び0.5モル当量の硫酸から得たSul2(実験ID SSm38、固相)、THF及び0.5モル当量の硫酸中の実験の母液から得たSul3(実験ID SSm5、液相)、及びTHF及び1モル当量の硫酸から得たSul4(SSm4)のXRPDパターンを示す。 図137は、AAC前後におけるSul1(実験ID SSm37)のXRPDパターンを示し、出発物質を参照として示す。 図138は、エタノール中の1モル当量の硫酸で得たSul1(実験ID SSm37)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、2.4%の質量減少が、25~120℃で、5.8%が120~200℃で見られ、続いて240℃よりも高い温度で分解が見られる。 図139は、(下から上向きに)形態A出発物質、p-トルエンスルホン酸参照、THFから得たTos1(実験ID SSm8)、エタノールから得たTos2(実験ID SSm41)、及びAAC曝露時のTos1の変換によって得たTos1+Tos3(実験ID SSm8、AAC後)のXRPDパターンを示す。 図140は、AAC前後におけるTos2(実験ID SSm41)のXRPDパターンを示し、出発物質及びp-トルエンスルホン酸を参照として示す。 図141は、p-トルエンスルホン酸及びエタノールで得たTos2(実験ID SSm41)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、エタノールに起因する4.6%の質量減少が、25~110℃で見られ、続いて分解が見られる。 図142は、(下から上向きに)形態A出発物質、エタノールから得た形態B(実験ID SSm66)、及びTHFから得た形態C(実験ID SSm33)のXRPDパターンを示す。 図143は、エタノール中のコントロールサンプルから得た形態B(実験ID SSm66)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、残留溶媒に起因する0.3%の少量の質量減少が、溶融前に見られた。 図144は、THF中のグルタミン酸による実験の母液から得た形態C(実験ID SSm17、液相)のTGMS分析(昇温速度10℃/分)を示し、THFに起因する2.6%の質量減少が、25~200℃で見られ、続いて分解が見られる。 図145は、ME-522の半シュウ酸塩の分子構造を示す。遊離塩基の分子量は、469.8g/molである。 図146は、下から上向きに、シュウ酸、シュウ酸二水和物、Oxa1(プロジェクトS18128から)、及びOxa2(出発物質)によるHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図147は、Oxa2(出発物質)に対するリートベルト解析のグラフによる図を示す。黒色線は、収集したデータを表し、赤色線は、計算による粉末パターンであり、灰色線は、両者間の差異である。下部にある青色の棒線は、フィットした格子のピーク位置を示す。縦方向の線は、指数付けされていない結晶不純物に関連する回折ピークを示す。 図148は、Oxa2(出発物質)のTGMSサーモグラム(昇温速度10℃/分)を示す。1.1%の質量減少が、40~100℃に記録された。 図149は、Oxa2(出発物質)のDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。単一のブロードな吸熱イベントが、Tpeak218.5℃に見られた。 図150は、Oxa2(出発物質)のUPLC-MS分析を示す。APIに相当するピークは、1.2分の保持時間を有し、陽イオンスペクトルは、m/zが470.2[M+H]のイオンを示し、APIの分子質量469.8g/molと一致していた。この表は、API及び未識別不純物の保持時間、ピーク面積、並びにピーク高さを示す。 図151は、Oxa2(SM、下側)、Oxa1(S18128から、実験ID:SSm12、中央)、及び遊離塩基(S18128から、上側)の、DMSO-d(下側)中で測定したH-NMRスペクトルを示す。スペクトルの下部に記載の文字は、APIの分子構造中の水素に対応している。 図152は、Oxa2(出発物質)のDVS等温線プロットを示し、図中、質量の変化をRHの関数としてプロットしている。まず、RH40%~95%の収着プロファイルを適用し(赤色ひし形)、続いてRH95%~RH0%の脱着プロファイルを適用した(青色四角)。最後に、RHを開始値の40%に設定した(緑色三角)。 図153は、水の少量のアリコートをOxa2(出発物質)に添加した後に得た懸濁液の写真を示す。 図154は、アセトン/水(50/50、体積/体積)中の出発物質を凍結乾燥することによって調製したME-522シュウ酸塩(実験ID:QSA8)のHT-XRPDパターンを示す。 図155は、凍結乾燥後に得たアモルファスのシュウ酸塩(実験ID:QSA8)のTGMSサーモグラム(昇温速度10℃/分)を示す。3.2%の質量減少が、40~140℃に記録された。 図156は、凍結乾燥後に得たアモルファスのシュウ酸塩(実験ID:QSA8)のDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。185~230℃のブロードな吸熱イベントに加えて、3つの吸熱イベントが25~140℃に検出された。 図157は、ME-522遊離塩基(プロジェクトS128128からのSM、下側)、アモルファスME-522シュウ酸塩(実験ID:QSA8、中央)、及びME-522 Oxa2(本発明のプロジェクトS18128AからのSM、上側)の、DMSO-d中で測定したH-NMRスペクトルを示す。 図158は、ME-522シュウ酸塩に対して行った多形スクリーニング時に見られた形態のHT-XRPDディフラクトグラムを示す(下から上向きに):Oxa1、Oxa1e、Oxa2、Oxa3、Oxa1+Oxa4、Oxa5、Oxa6、及びOxa7。 図159は、熱サイクル実験の温度プロファイルを示す。 図160は、Oxa1の形態及びこれらの形態が互いに関連している様子の模式的な概要を示す。すべてのOxa1形態は、半シュウ酸塩/半水和物である。Oxa1d及びOxa1eは、構造中に存在する非化学量論的な溶媒及び水を有している。左から右に向かって、単位格子サイズは、溶媒及び水の除去によって小さくなる。得られる最も乾燥した形態(すなわち、Oxa1a)であっても、APIの1分子あたりおよそ0.24当量の非化学量論的な水を含有していた。 図161は、単結晶X線回折によって特定されたOxa1d(左側)、Oxa1c(中央)、及びOxa1a(右側)の[100]方向に沿って見た結晶充填及びH結合スキームを示す。分子a及びb(図175で分類)を、それぞれ緑色及び青色で示す。オキサレートジアニオンを赤色で示し、橙色は、化学量論的水分子(APIカチオン1に対して0.5)を強調して示している。溶媒/水分子を収容することができるキャビティを、Oxa1dに対する左の画像中に強調して示す。Oxa1dでは、キャビティ中にエタノールが存在していた。Oxa1c及びOxa1aでは、キャビティ中には水が存在していた(紫色の球で示すように)。単位格子のサイズは、左から右に向かって減少する。 図162は、Oxa1形態のHT-XRPDパターンを重ねて示し、下から上向きに:Oxa1、Oxa1a、Oxa1b、Oxa1c、Oxa1d、及びOxa1eである。 図163は、Oxa1(実験ID:SSm12、プロジェクトS18128)に対するリートベルト解析のグラフによる図を示す。黒色線は、収集したデータを表し、赤色は、計算による粉末パターンであり、灰色線は、両者間の差異である。下部にある青色の棒線は、フィットした格子のピーク位置を示す。 図164は、実験ID:TCP29で得た物質のHT-XRPDパターンを重ねて示し、下から上向きに:Oxa1e(周囲条件で乾燥)、Oxa1(真空乾燥)、及びOxa1(40℃/RH75%で2日間後)である。 図165は、Oxa1(実験ID:TCP29)のTGMSサーモグラム(昇温速度10℃/分)を示す。5.6%の質量減少が、40~140℃で記録された。 図166は、Oxa1(実験ID:TCP29)のDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。25~160℃の3つの吸熱イベントは、おそらく水/溶媒の喪失に関連するものと思われる。209~230℃のブロードな吸熱イベントは、塩の熱分解に関連する。 図167は、Oxa1(実験ID:TCP29)のUPLC-MS分析を示す。APIに相当するピークは、1.2分の保持時間を有し、陽イオンスペクトルは、m/zが470.2[M+H]のイオンを示し、APIの分子質量469.8g/molと一致していた。この表は、API及び未識別不純物の保持時間、ピーク面積、並びにピーク高さを示す。 図168は、Oxa1(実験ID:TCP29、下側)、Oxa1(S18128から、実験ID:SSm12、中央)、及びME-522遊離塩基(S18128から、上側)の、DMSO-d(下側)中で測定したH-NMRスペクトルを示す。 図169は、Oxa1aの[100]方向に沿った結晶充填及びH結合スキームを示す。分子a及びb(図175で分類)を、それぞれ緑色及び青色で示す。オキサレートジアニオンを赤色で示し、橙色は、化学量論的水分子(APIカチオン1に対して0.5)を強調して示しており、一方対称的に独立した(非化学量論的)水分子を、紫色の丸で示す。 図170は、単結晶データからのシミュレーションであるOxa1aのX線粉末パターンを示す。 図171は、Oxa1bに対するリートベルト解析のグラフによる図を示す。黒色線は、収集したデータを表し、赤色線は、計算によるXRPDパターンであり、灰色線は、両者間の差異である。下部にある青色の棒線は、フィットした格子のピーク位置を示す。 図172は、Oxa1cの[100]方向に沿った結晶充填及びH結合スキームを示す。分子a及びb(図175で分類)を、それぞれ緑色及び青色で示す。オキサレートジアニオンを赤色で示し、橙色は、化学量論的水分子(APIカチオン1に対して0.5)を強調して示し、紫色の丸は、対称的に独立した(非化学量論的)水分子を表す。 図173は、Oxa1cの非対称単位を示し、2つのME-522カチオンが、オキサレートアニオン及び水分子と一緒に見出された。間隙水分子も識別されたが、分かりやすくするために省略した。分かりやすくするために、原子の番号付与スキームは、オキサレートアニオン及び水分子に対してのみ示す。青色の破線は、ジアニオン、カチオン、及び水の間の分子間水素結合を示す。 図174は、単結晶データからのシミュレーションであるOxa1cのX線粉末パターンを示す。 図175は、Oxa1dで見出される分子構造、及び2つの対称的に独立したカチオンに対する原子の番号付与スキームを示す。左の画像は、cifファイル中でaと命名されているカチオンを示し、一方右の画像は、カチオンbを示す。 図176は、Oxa1dの[100]方向に沿った結晶充填及び水素結合スキームを示す。分子a及びb(図175で分類)を、それぞれ緑色及び青色で示す。オキサレートジアニオンを赤色で示し、橙色は、化学量論的水分子(APIカチオン1に対して0.5)を強調して示し、桃色は、対称的に独立した(非化学量論的)水分子を表し、紫色は、エタノール分子を表す。 図177は、単結晶データからのシミュレーションであるOxa1dのX線粉末パターンを示す。 図178は、実験ID:TCP29で得た物質のHT-XRPDパターンを重ねて示し、下から上向きに:Oxa1(真空乾燥)、Oxa1e(周囲条件で乾燥)、Oxa1(40℃/RH75%で2日間後)、及びOxa1d(単結晶データから作成)である。 図179は、出発物質から得たOxa2(下側)、2-プロパノールから得たOxa2(実験ID:TCP18、中央)、及びAAC曝露後に2-プロパノールから得たOxa2(実験ID:TCP18、上側)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。出発物質において、矢印で示すように、約6.6°2θに他にはない回折ピークが識別された。 図180は、Oxa2(実験ID:TCP18)のTGMSサーモグラム(昇温速度10℃/分)を示す。2.1%の質量減少が、40~140℃で記録された。 図181は、Oxa2(実験ID:TCP18)のDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。Tpeak99℃での小さい吸熱イベントに続いて、Tpeak214℃でのブロードな吸熱が存在した。 図182は、Oxa2(実験ID:TCP18)のUPLC-MS分析を示す。APIに相当するピークは、1.2分の保持時間を有し、陽イオンスペクトルは、m/zが470.2[M+H]のイオンを示し、APIの分子質量470.2g/molと一致していた。この表は、API及び未識別不純物の保持時間、ピーク面積、並びにピーク高さを示す。 図183は、遊離塩基(S18128のSM、下側)、Oxa2(実験ID:TCP18、中央)、及びOxa2(SM、S18128A)の、DMSO-d中で測定したH-NMRスペクトルを示す。積分値及びピーク値は、Oxa2(実験ID:TCP18、中央)に適用される。1.05ppmのダブレットシグナルは、2-プロパノールのCH基に相当する。 図184は、2-プロパノール/水(90/10、実験ID:TCP30)から得た固体からのHT-XRPDパターンを重ねて示す。下から上向きに:Oxa3a(周囲条件で乾燥)、Oxa1+Oxa4(真空乾燥)、及びOxa3b(AAC後)。 図185は、Oxa1(実験ID:TCP29、下側)及びOxa1+Oxa4(実験ID:TCP30、上側)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図186は、Oxa5(実験ID:SSm2、下側)及びAACに1日曝露した後の同じ物質(上側)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図187は、クロロホルムから得た物質(実験ID:TCP21)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。下側のパターンは、Oxa6(真空乾燥)を示し、上側のパターンは、Oxa3(真空乾燥、AAC後)である。 図188は、エタノール中での熱サイクル実験から得たOxa7(実験ID:TCP23)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。下側のパターンは、真空乾燥したサンプルを示し、一方上側のパターンは、AAC(40℃/RH75%、2日間)に掛けた後の同じサンプルのものである。 図189は、Oxa7(実験ID:TCP23)のTGMSサーモグラム(昇温速度10℃/分)を示す。3.4%の質量減少が、40~140℃で記録された。 図190は、Oxa7(実験ID:TCP23)のDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。85℃及び154℃での2つの小さい吸熱イベントに続いて、Tpeak214℃でのブロードな吸熱イベントが存在した。 図191は、Oxa7(実験ID:TCP23)のUPLC-MS分析を示す。APIに相当するピークは、1.2分の保持時間を有し、陽イオンスペクトルは、m/zが470.2[M+H]のイオンを示し、APIの分子質量470.2g/molと一致していた。この表は、API及び未識別不純物の保持時間、ピーク面積、並びにピーク高さを示す。 図192は、遊離塩基(S18128のSM、下側)及びOxa7(実験ID:TCP23、上側)の、DMSO-d(下側)中で測定したH-NMRスペクトルを示す。1.1及び1.2ppmのトリプレットシグナル、さらには3.5及び4.0ppmのカルテットシグナルは、それぞれ、エタノールのCH及びCH基に相当する。 図193は、ME-522のモノリン酸塩の分子構造を示す。遊離塩基の分子量は、469.8g/molである。 図194は、Pho1(プロジェクトS18128、下側)、Pho2(プロジェクトS18128、中央)、及びPho3(出発物質、本発明のプロジェクトS18128B、上側)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図195は、Pho3(出発物質)に対するリートベルト解析のグラフによる図を示す。黒色線は、収集したデータを表し、赤色線は、計算による粉末パターンであり、灰色線は、両者間の差異である。下部にある青色の棒線は、フィットした格子のピーク位置を示す。縦方向の線は、指数付けされていない結晶不純物に関連する回折ピークを示す。 図196は、Pho3(出発物質)のTGMSサーモグラム(昇温速度10℃/分)を示す。5.4%の質量減少が、40~160℃で記録された。 図197は、Pho3(出発物質)のDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。Tpeak246℃のブロードな吸熱イベントに加えて、いくつかの吸熱イベントが200℃までに見られた。 図198A及び図198Bは、Pho3(出発物質)のcDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。最初の実験(図198A)では、物質を170℃に加熱し、室温に冷却した。物質をHT-XRPDで分析した後、化合物を再度170℃に加熱し、室温に冷却し、最後に300℃に加熱した(図198B)。 図198A及び図198Bは、Pho3(出発物質)のcDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。最初の実験(図198A)では、物質を170℃に加熱し、室温に冷却した。物質をHT-XRPDで分析した後、化合物を再度170℃に加熱し、室温に冷却し、最後に300℃に加熱した(図198B)。 図199は、受け取ったPho3、及びcDSC後に得た結晶性の低い(pc)物質のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図200は、Pho3(出発物質)のUPLC-MS分析を示す。APIに相当するピークは、1.2分の保持時間を有し、陽イオンスペクトルは、m/zが470.2[M+H]のイオンを示し、遊離塩基の分子質量469.8g/molと一致していた。この表は、API及び未識別不純物の保持時間、ピーク面積、並びにピーク高さを示す。 図201は、Pho3(SM、下側)、ME-522遊離塩基(S18128から、中央)、及びPho1(S18128から、上側)の、DMSO-d中で測定したH-NMRスペクトルを示す。スペクトルの下部に記載の文字は、APIの分子構造中の水素原子に対応している。 図202は、Pho3(出発物質)のDVS等温線プロットを示し、図中、質量の変化をRHの関数としてプロットしている。まず、RH40%~95%の収着プロファイルを適用し(赤色ひし形)、続いてRH95%~0%の脱着プロファイルを適用した(青色四角)。最後に、RHを開始値の40%に設定した(緑色三角)。 図203は、アセトン/水(50/50、体積/体積)中の出発物質を凍結乾燥することによって調製したME-522リン酸塩(実験ID:QSA8)のHT-XRPDパターンを示す。 図204は、凍結乾燥によって得たアモルファスリン酸塩(実験ID:QSA8)のTGMSサーモグラム(昇温速度10℃/分)を示す。3.0%の質量減少が、40~160℃で記録された。 図205は、凍結乾燥によって得たアモルファスリン酸塩(実験ID:QSA8)のDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。200~270℃のブロードな吸熱イベントに加えて、3つの吸熱イベントが、25~150℃に検出された。 図206は、アモルファスME-522リン酸塩(実験ID:QSA8、下側))、ME-522 Pho3(SM、中央)、及びME-522遊離塩基(プロジェクトS128128からのSM、上側)の、DMSO-d中で測定したH-NMRスペクトルを示す。 図207は、ME-522リン酸塩に対する本発明の試験で見られた形態のHT-XRPDディフラクトグラムを示す。下から上向きに:Pho1、Pho3、Pho4、Pho5、Pho6、Pho7、Pho8、及びPho9。 図208は、熱サイクル実験の温度プロファイルを示す。 図209は、Pho1(実験ID:TCP23、真空乾燥)及びPho1(実験ID:TCP23、AAC後に真空乾燥)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図210は、Pho1(実験ID:TCP23)のTGMSサーモグラム(昇温速度10℃/分)を示す。1.4%の質量減少が、40~120℃で記録された。 図211は、Pho1(実験ID:TCP23)のDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。200℃のシャープな吸熱及び217~259℃のブロードな吸熱に加えて、80℃までにブロードな吸熱イベントが見られた。 図212A及び図212Bは、Pho1(実験ID:TCP23)のcDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。最初の実験(図212A)では、物質を140℃まで加熱し、室温まで冷却した。物質をHT-XRPDで分析した後、第一のcDSCサイクルから得た化合物を、第二のcDSCサイクルで、再度140℃に加熱し、室温に冷却し、最後に300℃に加熱した(図212B)。 図213は、cDSC前後におけるPho1(実験ID:TCP23)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図214は、Pho1(実験ID:TCP23)のUPLC-MS分析を示す。APIに相当するピークは、1.2分の保持時間を有し、陽イオンスペクトルは、m/zが470.2[M+H]のイオンを示し、APIの分子質量469.8g/molと一致していた。この表は、API及び未識別不純物の保持時間、ピーク面積、並びにピーク高さを示す。 図215は、Pho1(実験ID:TCP23、下側)及びME-522遊離塩基(S18128から、上側)の、DMSO-d中で測定したH-NMRスペクトルを示す。 図216は、Pho1(実験ID:TCP23)のDVS等温線プロットを示し、図中、質量の変化をRHの関数としてプロットしている。まず、RH40%~95%の収着プロファイルを適用し(赤色ひし形)、続いてRH95%~RH0%の脱着プロファイルを適用した(青色四角)。最後に、RHを開始値の40%に設定した(緑色三角)。 図217は、少量の水をPho1(実験ID:TCP23)の固体サンプルに添加した後に得た物質の写真を示す。 図218は、Pho2(実験ID:SSm15、プロジェクトS18128から)のHT-XRPDパターンを示す。 図219は、エタノールからの冷却結晶化によって得た固体(実験ID:SSm2)からのHT-XRPDパターンを重ねて示す。下から上向きに:Pho3(周囲条件で乾燥)及びPho1(真空乾燥)。 図220は、1,2-ジメトキシエタン中での熱サイクルによって得た物質(実験ID:TCP16)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。下から上向きに:Pho4(周囲条件で乾燥)、Pho1(真空乾燥)、及びPho4(AAC後に周囲条件で乾燥)。 図221は、アセトン中での熱サイクルによって得た物質(実験ID:TCP19)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。下から上向きに:Pho5(周囲条件で乾燥)、Pho1+ピーク(真空乾燥)、及びPho8(AAC後に周囲条件で乾燥)。 図222は、TBMEから得た低い結晶性の(pc)物質(実験ID:TCP26)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。下から上向きに:Pho6(周囲条件で乾燥)、Pho6(真空乾燥)、アモルファス物質(AAC後に周囲条件で乾燥)、及びアモルファス物質(AAC後に真空乾燥)。 図223は、Pho6(実験ID:TCP26)のTGMSサーモグラム(昇温速度10℃/分)を示す。3.6%の総質量減少が、30~180℃で記録された。 図224は、Pho6(実験ID:TCP26)のDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。昇温時、143℃までの3つの吸熱イベントに続いて、146℃に発熱イベントが存在した。続いて、176℃での吸熱に続いて、211~267℃にブロードな吸熱が存在した。 図225は、Pho6(実験ID:TCP26)のUPLC-MS分析を示す。APIに相当するピークは、1.2分の保持時間を有し、陽イオンスペクトルは、m/zが470.2[M+H]のイオンを示し、遊離塩基の分子質量469.8g/molと一致していた。この表は、API及び未識別不純物の保持時間、ピーク面積、並びにピーク高さを示す。 図226は、遊離塩基(S18128のSM、下側)及びPho6(実験ID:TCP26、上側)の、DMSO-d中で測定したH-NMRスペクトルを示す。1.12ppmのシグレットシグナルは、TBMEの3つのCH基のプロトンを表している。 図227は、2-プロパノール/水(90/10 体積/体積;実験ID:TCP30)中での熱サイクル実験から得たPho7のHT-XRPDパターンを重ねて示す。下から上向きに、XRPDパターンは、周囲条件乾燥サンプル、真空乾燥物質、AAC曝露後(40℃/RH75%、2日間)の周囲条件乾燥サンプル、及びAAC曝露後(40℃/RH75%、2日間)の真空乾燥物質を表す。さらなる回折ピークを矢印で示す。 図228は、Pho7(実験ID:TCP30)のTGMSサーモグラム(昇温速度10℃/分)を示す。4.0%の質量減少が、25~180℃で記録された。 図229は、Pho7(実験ID:TCP30)のDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。200℃までにいくつかの吸熱及び発熱イベントが検出され、それに続いて、213~261℃にブロードな吸熱イベントが検出された。 図230は、Pho7(実験ID:TCP30)のUPLC-MS分析を示す。APIに相当するピークは、1.2分の保持時間を有し、陽イオンスペクトルは、m/zが470.2[M+H]のイオンを示し、遊離塩基の分子質量469.8g/molと一致していた。この表は、API及び未識別不純物の保持時間、ピーク面積、並びにピーク高さを示す。 図231は、遊離塩基(S18128のSM、下側)及びPho7(実験ID:TCP30、上側)の、DMSO-d中で測定したH-NMRスペクトルを示す。1.06ppmのダブレットシグナルは、2-プロパノールの2つのCH基のプロトンを表している。 図232は、アセトン中での熱サイクル実験から得た物質(実験ID:TCP19)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。下から上向きに:Pho5(周囲条件で乾燥)、Pho1+ピーク(真空乾燥)、Pho8(AAC後に周囲条件で乾燥)、及びPho8+ピーク(AAC後に真空乾燥)。 図233は、THFからの冷却結晶化実験(実験ID:SSm1)によって得たPho9(周囲条件で乾燥)及びPho1+Pho4(真空乾燥)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図234は、ME-522遊離塩基の分子構造を示す(MW469.8g/mol)。 図235は、ME-522塩酸塩(本試験のために受け取った出発物質)、S18128で実施した塩形成実験のために受け取ったME-522遊離塩基、及びHCl塩の遊離塩基への変換から得たME-522遊離塩基(実験ID GEN4)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図236A及び図236Bは、HCl変換から回収した遊離塩基(実験ID GEN4)のTGA(図236A)及びTGMS(図236B)分析(昇温速度10℃/分)を示す。熱分解(240℃よりも高い温度で見られた)の前に3.3%の質量減少が見られた。 図237は、HCl塩からの変換後に得た遊離塩基(実験ID:GEN4)のDSC曲線(昇温速度10℃/分)を示す。水の喪失に起因する1つのブロードな吸熱イベントが、25~70℃に記録された。160~182℃に記録された発熱/吸熱イベントは、再結晶イベントに起因し得る。続いて、217℃に小さい吸熱イベントが見られ、続いてシャープな吸熱イベントが226℃に見られた。 図238は、HCl塩からの変換後に得た遊離塩基(実験ID:GEN4)のUPLC-MSクロマトグラムを示す。APIピークが、100%の化学純度(面積%)で1.2分に出現した。質量スペクトル中の470.2m/zの分子ピークは、正に荷電した種[M+H]に相当し得る(API MW:469g/mol)。 図239は、過去のプロジェクトのために受け取ったME-522遊離塩基(緑色線)及び本試験で作製したME-522遊離塩基(実験ID GEN4、赤色線)のH-NMRスペクトル(500MHz、DMSO-d)を重ねて示す。 図240は、THF/水/アセトン(32.5/32.5/35、体積/体積/体積)中の1当量のマロン酸を含有する遊離塩基溶液を凍結乾燥することによって調製したME-522マロン酸塩(実験ID GEN8)のHT-XRPDパターンを示す。 図241A及び図241Bは、凍結乾燥後に得たアモルファスマロン酸塩(実験ID GEN8)のTGA(図241A)及びTGMS(図241B)分析(昇温速度10℃/分)を示す。熱分解(120℃よりも高い温度で見られた)の前に、3.6%の質量減少が見られた。 図242は、凍結乾燥後に得たマロン酸塩(実験ID GEN8)のUPLC-MSクロマトグラムを示す。APIピークが、99.8%の化学純度(面積%)で1.2分に出現した。質量スペクトル中の470.2m/zの分子ピークは、正に荷電した種[M+H]に相当し得る(API MW:469g/mol)。 図243は、本試験でこれまでに得たME-522遊離塩基(実験ID GEN4、緑色線)、過去の試験で見出されたME-522マロン酸塩(Mao1)(S18128、実験 SSm53)、及び凍結乾燥で得たME-522マロン酸塩(実験ID GEN8、赤色線)のH-NMRスペクトル(500MHz、DMSO-d)を重ねて示す。2.85ppmに見られるケミカルシフトは、マロン酸に相当する。残留THFに相当するさらなる共鳴シフトが見られた(3.60及び1.76ppm)。 図244は、ME-522マロン酸塩に対して行った多形スクリーニング時に見られた形態のHT-XRPDディフラクトグラムを示す(下から上向きに):Mao1、Mao3、Mao4、及びMao5。 図245は、熱サイクル実験の実験条件を示す。ME-522マロン酸塩のスラリーを、純溶媒及び溶媒混合物中で調製し、Crystal16(商標)反応器中に入れて、図245に記載の熱プロファイルに掛けた。温度プロファイルの後、析出した固体を周囲条件及び真空下で乾燥し、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露前後で、HT-XRPDによって分析した。母液を溶解度の特定に用いた。続いて、溶液を真空下で乾燥し、得られた乾燥固体をXRPDで分析した。 図246は、AACへの曝露前(下側のパターン)及び曝露後(上側のパターン)における、THF中で行った熱サイクル実験で得たMao1(実験ID TCP7)のXRPDパターンを示す。 図247は、THF中で行った熱サイクル実験で得たME-522 Mao1(実験ID TCP7)に対するリートベルト解析(Rietveld, 1969)のグラフによる図を示す。黒色線は、得られた粉末パターンを表し、赤色線は、計算によるパターンであり、灰色線は、両者間の差異である。下部にある青色の棒線は、フィットした格子のピーク位置を示す(格子パラメータ、さらには原子位置は、試験S18128で報告した単結晶データから得た)。 図248A及び図248Bは、THF中で行った熱サイクル実験で得たMao1(実験ID TCP7)のTGA(図248A)及びTGMS(図248B)分析(昇温速度10℃/分)を示す。160℃付近で開始している溶融/分解の前に、0.7%の質量減少が見られる。この質量減少は、MSシグナルに基づいて、残留水に帰属され得る。 図249は、THF中で行った熱サイクル実験で得たMao1(実験ID TCP7)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。溶融/熱分解に起因する吸熱イベントが、181.1℃のピーク温度で見られた。 図250は、アモルファスマロン酸塩(実験ID GEN8、上側)と比較した、THF中で行った熱サイクル実験で得たMao1(実験ID TCP7、下側)のH-NMRスペクトルを示す。 図251は、THF中で行った熱サイクル実験で得たMao1(実験ID TCP7)のUPLCクロマトグラムを示す。APIの化学純度は、99.4%(面積%)であった。 図252A及び図252Bは、THF中で行った熱サイクル実験で得たMao1(実験ID TCP7)に対して行ったDVS分析から得た質量の変化(図252A)及び等温線プロット(図252B)を示す。DVS分析は、RH40%~95%での1つの収着サイクル、RH95%~0%での1つの脱着サイクル、及びRH0%~40%での収着サイクルから構成した。ステップあたりの重量平衡は、最小で1時間又は最大で6時間での、dm/dt<0.0002に設定した。 図252A及び図252Bは、THF中で行った熱サイクル実験で得たMao1(実験ID TCP7)に対して行ったDVS分析から得た質量の変化(図252A)及び等温線プロット(図252B)を示す。DVS分析は、RH40%~95%での1つの収着サイクル、RH95%~0%での1つの脱着サイクル、及びRH0%~40%での収着サイクルから構成した。ステップあたりの重量平衡は、最小で1時間又は最大で6時間での、dm/dt<0.0002に設定した。 図253は、水の少量のアリコートをMao1の固体に添加した後に得た懸濁液の写真を示す。 図254は、スケールアップ実験から得たMao1(実験ID:Ssm4)のHT-XRPDパターン、及びXRPD分析に用いた物質の画像を示す。 図255は、THF中でのスケールアップ冷却結晶化実験で得たME-522 Mao1(実験ID Ssm4)に対するリートベルト解析(Rietveld, 1969)のグラフによる図を示す。黒色線は、得られた粉末パターンを表し、赤色線は、計算によるパターンであり、灰色線は、両者間の差異である。下部にある青色の棒線は、フィットした格子のピーク位置を示す(格子パラメータ、さらには原子位置は、試験S18128で報告した単結晶データから得た)。 図256A及び図256Bは、THF中でのスケールアップ冷却結晶化実験で得たMao1(実験ID Ssm4)のTGA(図256A)及びTGMS(図256B)分析(昇温速度10℃/分)を示す。160℃付近で開始している溶融/分解の前に、0.08%の質量減少が見られた。 図257は、THF中で行ったスケールアップ冷却結晶化実験で得たMao1(実験ID Ssm4)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。溶融/熱分解に起因する吸熱イベントが、182.4℃のピーク温度で見られた。 図258は、遊離塩基化スケールアップ実験から得たME-522遊離塩基(実験ID:GEN10、上側)及びTHFからの冷却結晶化実験から得たMao1(実験ID:Ssm4)のH-NMRスペクトル(500MHz、DMSO-d)を重ねて示す。 図259は、THF中で行ったスケールアップ冷却結晶化実験で得たMao1(実験ID Ssm4)のUPLCクロマトグラムを示す。APIの化学純度は、100%(面積%)であった。主ピークに関連する質量は、470.3m/zであり、正に荷電した種[M+H]に相当する。 図260は、シクロヘキサン中で行った熱サイクル実験後に得たアモルファス固体(実験ID TCP3)及びTCP3で得たアモルファス固体のAACへの曝露後のMao4(上側のパターン)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図261A及び図261Bは、TCP3で得たアモルファス固体(シクロヘキサンから)のAACへの曝露後に得たMao4のTGA(図261A)及びTGMS(図261B)分析(昇温速度10℃/分)を示す。水に起因する3.5%の質量減少が、40~150℃の温度範囲で見られた(API:マロン酸:水 1:1:1.1)。 図262は、TCP3で得たアモルファス固体(シクロヘキサンから)のAACへの曝露後に得たMao4のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。水の喪失に帰属されるブロードな吸熱イベントが、25~100℃に見られ、続いて溶融/熱分解に起因する吸熱イベントが、ピーク温度177.1℃で見られた。 図263は、TCP3で得たアモルファス固体(シクロヘキサンから)のAACへの曝露後に得たMao4のUPLC-MSクロマトグラムを示す。APIの化学純度は、98.5%(面積%)であった。 図264は、実験ID TCP7からのMao1(上側)と比較した、TCP3で得たアモルファス固体(シクロヘキサンから、実験ID TCP3、下側)のAACへの曝露後に得たMao4のH-NMRスペクトルを示す。 図265A及び図265Bは、TCP3で得たアモルファス固体(シクロヘキサンから)のAACへの曝露後に得たMao4に対して実施したDVS分析から得た質量の変化(図265A)及び等温線プロット(図265B)分析を示す。DVS分析は、RH40%~95%での1つの収着サイクル、RH95%~0%での1つの脱着サイクル、及びRH0%~40%での収着サイクルから構成した。サンプルを、各相対湿度値で1時間にわたってインキュベートした。 図265A及び図265Bは、TCP3で得たアモルファス固体(シクロヘキサンから)のAACへの曝露後に得たMao4に対して実施したDVS分析から得た質量の変化(図265A)及び等温線プロット(図265B)分析を示す。DVS分析は、RH40%~95%での1つの収着サイクル、RH95%~0%での1つの脱着サイクル、及びRH0%~40%での収着サイクルから構成した。サンプルを、各相対湿度値で1時間にわたってインキュベートした。 図266は、Mao4(実験ID TCP3、AAC後)及びDVS測定後に回収したMao1(上側のパターン)のHT-XRPDパターンを示す。 図267は、メタノール中で行った熱サイクル実験から回収した母液の蒸発結晶化後に得たMao5(実験ID TCP6_ML)及びAACへの曝露後に得たMao4(上側のパターン)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。 図268A及び図268Bは、メタノール中で行った熱サイクル実験から回収した母液の蒸発結晶化後に得たMao5(実験ID TCP6_ML)のTGA(図268A)及びTGMS(図268B)分析(昇温速度10℃/分)を示す。水に起因する1.5%の質量減少が、40~100℃の温度範囲で見られた(1.5%の水は、マロン酸塩1分子あたり0.5分子の水に相当する)。 図268A及び図268Bは、メタノール中で行った熱サイクル実験から回収した母液の蒸発結晶化後に得たMao5(実験ID TCP6_ML)のTGA(図268A)及びTGMS(図268B)分析(昇温速度10℃/分)を示す。水に起因する1.5%の質量減少が、40~100℃の温度範囲で見られた(1.5%の水は、マロン酸塩1分子あたり0.5分子の水に相当する)。 図269は、メタノール中で行った熱サイクル実験から回収した母液の蒸発結晶化後に得たMao5(実験ID TCP6_ML)のDSC分析(昇温速度10℃/分)を示す。水の喪失に帰属されるブロードな吸熱イベントが、90~130℃に見られ、続いて再結晶に起因すると思われる発熱イベントが、135.4℃に見られた。176.1℃に吸熱イベントが記録された。 図270は、メタノール中で行った熱サイクル実験から回収した母液の蒸発結晶化後に得たMao5(実験ID TCP6_ML)のUPLC-MSクロマトグラムを示す。APIの化学純度は、99.2%(面積%)であった。 図271は、シュウ酸ボルシクリブの構造中における非対称単位の含有物に対する、50%の確率レベルでの熱振動楕円体の図を原子ラベリングスキーム(atomic labeling scheme)と共に示す。水素結合は、細い破線で描かれている。分子は、それらが構造中で取る適正な相対的配向で示される。 図272は、シュウ酸ボルシクリブの構造中の水素結合を示す。O3-H3…O13i、O8-H8…O1Wii、及びO1W-H1WA…O14iiiの相互作用が、図271に示される構造ブロックを架橋している。原子ラベル中に文字Aがある原子は、対称操作i:-x+2,y-0.5,-z+1、によって発生し、文字Bは、対称操作ii:-x+1,y+0.5,-z+1、を示し、文字Cは、対称操作iii:x-1,y,z、に対応する。表示は、図271と同じである。炭素及び2-ペンタノンに結合した水素原子は、分かりやすくするために省略した。水素結合は、細い破線で描かれている。 図273は、シュウ酸ボルシクリブの構造の、結晶学的a-、b-、及びc-軸(それぞれ、パネルA、B、及びC)に沿った投影による充填プロット(packing plots)を示す。水素結合は、細い破線で描かれている。パネルAは、溶媒チャネルを示し、それは、結晶学的a軸に沿って延びている。炭素に結合した水素原子は、分かりやすくするために省略した。 図274は、シュウ酸ボルシクリブの構造に対するシミュレーションによる粉末ディフラクトグラムを示す。 図275は、リン酸ボルシクリブの結晶学的に独立した2つの分子に対する、50%の確率レベルでの熱振動楕円体の図を原子ラベリングスキームと共に示す。水素結合は、細い破線で描かれ、分かりやすくするために溶媒分子は省略した。分子は、それらの適正な相対的配向では示さず、最大限に分かりやすくするための配向とした。図276は、2つのターゲット分子、2つのホスフェート対イオン、及び溶媒を含む非対称単位のすべての含有物を、すべて適正な相対的配向で示す。 図276は、リン酸ボルシクリブの構造中における非対称単位の含有物を原子ラベリングスキームと共に示す。個々の部分はすべて、それらが結晶構造中で取る適正な相対的配向である。水素結合は、細い破線で描かれ、3つの半占有溶媒分子(half occupied solvent molecules)は、白抜きの線で描かれている。 図277は、O13-H13…015、017-H17…011、014-H14…016i、及びO18-H18…012iiの水素結合が、リン酸イオンを連結して結晶学的b軸に沿って延びる無限鎖としている様子を示す。原子ラベル中に文字Aがある原子は、対称操作i:x,y+1,z、によって発生し、文字Bは、対称操作ii:x,y-1,z、を示す。水素結合は、細い破線で描かれている。 図278は、水素結合O3-H3…011、08-H8…012、09-H9…010、01-H1A…015iii、N1-H1…013iii、及びN2-H2…017ivが、図277に示すホスフェート鎖にボルシクリブ分子を連結する様子を示す。図277の表示に対して垂直であるホスフェート鎖に沿った投影図が示される。原子ラベル中に文字Aがある原子は、対称操作i:x,y+1,z、によって発生し、文字Bは、対称操作ii:x,y-1,z、を示し、文字Cは、対称操作iii:-x+2,y-0.5,-z+1、であり、Dは、対称操作iv:-x+2,y-0.5,-z+1、である。水素結合は、細い破線で描かれ、古典的な水素結合に関与しない水素原子及び溶媒分子は、分かりやすくするために省略した。 図279は、O1T-H1T…016、O1U-H1U…016、O6-H6…01Siv、及びO6-H6…01Uvの水素結合を介して超分子フレームワーク中に溶媒分子を統合する様子を示す。仮想上の水素位置H1SXは、O1S-H1S…015の水素結合を可能とするが、この位置は、H6上の対称同等物の水素原子(ここではH6Fとして示される)と衝突する。原子ラベル中に文字Eがある原子は、対称操作-x+1,y-1.5,-z+1によって発生し、文字Fは、対称操作-x+1,y-0.5,-z+1を示す。水素結合は、細い破線で描かれている。 図280は、リン酸ボルシクリブイソプロピルアルコール溶媒和物の構造の、結晶学的a-、b-、及びc-軸(それぞれ、パネルA、B、及びC)に沿った投影による充填プロットを示す。溶媒分子の役割をより良く示すために、溶媒の炭素原子は橙色で描かれている。水素結合は、細い破線で描かれている。パネルA及びBは、溶媒チャネルがホスフェート鎖に対して平行に延びる様子を示す。水素結合に関与しない水素原子は、分かりやすくするために省略した。 図281は、リン酸ボルシクリブイソプロピルアルコール溶媒和物の構造に対するシミュレーションによる粉末ディフラクトグラムを示す。 図282は、ボルシクリブマロン酸塩の分子構造を示す。 図283は、マロン酸ボルシクリブ結晶の偏光下でのマイクロ写真(倍率10×)を示す。 図284は、マロン酸ボルシクリブのカチオン-アニオン対に対する分子構造、及び原子の番号付与スキームを示す。 図285は、マロン酸ボルシクリブの[010]方向に沿った結晶充填及び水素結合スキームを示す。ボルシクリブカチオンは、緑色で表され、一方マロネートアニオンは、赤色である。淡青色線は、水素結合を表す。 図286は、単結晶データに基づいたFWHM=0.28°でのシミュレーションによる粉末パターン(黒色)を、実験ID SSm53のマロン酸塩に対して得たHT-XRPDパターン(赤色)と比較して示す。 図287は、ボルシクリブHClの固体特性評価で識別された様々な溶媒中における多形の安定性を示す表を示す。 図288は、ボルシクリブ(ME-522)のターゲットとする生成物属性の限定されない例を示す。 図289は、様々な酸対イオンの形態、結晶性、及び安定性を比較する初期塩スクリーニングの結果を示す。 図290は、多形の数、残留溶媒パーセント、ゲル化、及び水溶解度(mg/mL)を比較する二次塩スクリーニングの結果を示す。 図291は、図288に示される生成物属性に関連する、ボルシクリブのHCl塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、及びリン酸塩の特性を示す。 図292は、ボルシクリブのHCl塩とマロン酸塩とを比較する、イヌのPK試験のクロスオーバーデザインを示す。 図293は、ボルシクリブのHCl塩とマロン酸塩とを比較するイヌのクロスオーバーPK試験の、前処理群及び投与された塩の形態の各組み合わせに対する変動性分析を示す。 図294は、各イヌ及びPKパラメータに対して算出されたマロン酸塩/HCl塩の比を示す。 図295は、雄のビーグル犬に対する単一用量のクロスオーバー経口投与後の、ボルシクリブの血漿中濃度対時間を示す。 図296A~図296Dは、ロット番号20-00022-01、20-00026-01、及び20-00062-01のマロン酸ボルシクリブのXRPDパターンを示す。 図296A~図296Dは、ロット番号20-00022-01、20-00026-01、及び20-00062-01のマロン酸ボルシクリブのXRPDパターンを示す。 図297は、VÅNTEC-500面積検出器の技術的仕様を示す。 図298は、Lynxeye検出器の技術的仕様を示す。
本発明の好ましい実施形態が本明細書で示され、記載されるが、そのような実施形態は、単なる例として提供されるものであり、それ以外に本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の実践にあたって、記載される本発明の実施形態に対する様々な別の選択肢が用いられ得る。
定義
特に他の定めのない限り、本明細書で用いられるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で参照されるすべての特許及び刊行物は、その全内容が参照により援用される。
「固体形態」の用語は、結晶遊離塩基及び結晶塩を含む結晶固体形態又は相を意味し得る。
本明細書で用いられる場合の「共投与」、「共投与する」、「組み合わせて投与される」、及び「組み合わせて投与する」の用語は、対象に2つ以上の剤を、両方の剤及び/又はそれらの代謝物が対象中に同時に存在するように投与することを包含する。共投与は、別々の組成物の同時投与、別々の組成物の異なる時間での投与、又は2つ以上の剤が中に存在する組成物の投与、を含む。
「有効量」又は「治療有効量」の用語は、疾患の治療を含むがこれに限定されない意図する適用を引き起こすのに充分である、本明細書で述べる化合物又は化合物の組み合わせの量を意味する。治療有効量は、意図する適用(生体外又は生体内)、又は治療される対象及び疾患の状態(例:対象の体重、年齢、及び性別)、疾患状態の重篤度、投与の方法などに応じて様々であってよく、当業者であれば容易に判断することができる。この用語はまた、ターゲット細胞に特定の応答(例:CDK阻害)を誘導することになる用量にも適用される。具体的な用量は、選択される特定の化合物、従うべき投与レジメン、化合物が他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、投与対象の組織、及び化合物が運ばれる物理的送達システムに応じて様々となる。
「QD」、「qd」、又は「q.d.」の用語は、1日1回、を意味する。「BID」、「bid」、又は「b.i.d.」の用語は、1日2回、を意味する。「TID」、「tid」、又は「t.i.d.」の用語は、1日3回、を意味する。「QID」、「qid」、又は「q.i.d.」の用語は、1日4回、を意味する。
「治療的効果」は、この用語が本明細書で用いられる場合、上記で述べた治療的有益性及び/又は予防的有益性を包含する。予防的効果は、疾患若しくは病状の発現の遅延若しくは除去、疾患若しくは病状の症状の発症の遅延若しくは除去、疾患若しくは病状の進行の減速、停止、若しくは反転、又はこれらのいずれかの組み合わせを含む。
「医薬的に許容される塩」の用語は、フマル酸、マレイン酸、リン酸、L-酒石酸、エシル酸、ベシル酸、臭化水素酸、塩酸、クエン酸、ゲンチジン酸、シュウ酸、硫酸などの対イオンを含む様々な有機及び無機の対イオンから誘導される塩を意味する。医薬的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸と共に形成されてよい。
「医薬的に許容されるキャリア」又は「医薬的に許容される賦形剤」は、あらゆるすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤を含むことを意図している。従来のいずれの媒体又は剤も、活性成分と不適合性でない限りにおいて、本発明の治療組成物でのその使用が考慮される。補助的活性成分も、記載の組成物中に組み込まれてよい。
「生体内」の用語は、対象の体内で発生するイベントを意味する。
「生体外」の用語は、対象の体外で発生するイベントを意味する。生体外アッセイは、生細胞又は死細胞が用いられる細胞ベースのアッセイを包含し、及び無処置の細胞が用いられない細胞を用いないアッセイも包含し得る。
「顆粒外の(extragranular)」の用語は、顆粒の外部にある物質を意味し、例えば、
顆粒(造粒プロセスによって形成された多成分圧縮体)に添加され、顆粒と物理的に混合されたが、顆粒内には含有されていない物質である。
「顆粒内の(intragranular)」の用語は、顆粒(造粒プロセスによって形成された多
成分圧縮体)内に存在する物質を意味する。顆粒は、湿式造粒(すなわち、水分又は水蒸
気、熱、溶融、凍結、発泡、及び他のプロセスを用いて製造される)又は乾式造粒などのプロセスによって形成されてよい。
「酸味剤」の用語は、酸性度を高める物質を意味する。
「透過」又は「透過モード」の用語は、粉末X線回折と合わせて用いられる場合、透過(デバイ-シェラーとも称される)サンプリングモードを意味する。「反射」又は「反射モード」の用語は、粉末X線回折と合わせて用いられる場合、反射(ブラッグ-ブレンターノとも称される)サンプリングモードを意味する。
特に断りのない限り、本明細書で示される化学構造は、1又は複数の同位体濃縮原子の存在のみが異なる化合物を含むことを意図している。例えば、1若しくは複数の水素原子がジュウテリウム若しくはトリチウムで置き換えられた化合物、又は1若しくは複数の炭素原子が13C若しくは14C濃縮炭素によって置き換えらえた化合物は、本発明の範囲内である。
本明細書において、分子量又は化学式などの物理的又は化学的特性を例とする記載に範囲が用いられる場合、範囲のすべての組み合わせ及びサブ組み合わせ、並びにそこに含まれる具体的実施形態が含まれることを意図している。数値又は数値範囲に言及する場合における「約」又は「およそ」の用語の使用は、言及される数値又は数値範囲が、実験上の変動(又は統計的な実験誤差)の範囲内での近似値であり、したがって、数値又は数値範囲は、例えば記載された数値又は数値範囲の1%~15%で変動し得ることを意味する。「含んでいる(comprising)」の用語(及び「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」又は「有する(having)」又は「含んでいる(including)」などの関連する用語)は、例えば、記載される特徴「から成る」又は「から本質的に成る」いずれかの物質の組成物、方法、又はプロセスの実施形態などの実施形態を含む。
本明細書で用いられる場合、「エナンチオマー純度」とは、パーセントで表される、他のエナンチオマーに対する特定のエナンチオマーの存在の相対量を意味する。例えば、(R)-又は(S)-異性体配置を有する可能性のある化合物がラセミ混合物として存在する場合、エナンチオマー純度は、(R)-又は(S)-異性体のいずれかに対して約50%である。その化合物が、ある異性体を他方に対して支配的に有する場合、例えば80%の(S)-異性体及び20%の(R)-異性体の場合、(S)-異性体に対するこの化合物のエナンチオマー純度は、80%である。化合物のエナンチオマー純度は、いくつかの方法で特定することができ、限定されないが、キラル支持体を用いたクロマトグラフィ、偏光回転の旋光測定、ランタニド含有キラル複合体若しくはPirkle試薬が挙げられるがこれらに限定されないキラルシフト試薬を用いた核磁気共鳴分光法、又はモッシャー酸などのキラル化合物を用いた化合物の誘導体化後のクロマトグラフィ若しくは核磁気共鳴分光法、が挙げられる。
好ましい実施形態では、エナンチオマー富化組成物は、その組成物のラセミ混合物よりも、単位質量あたりの治療的有用性に関して高い効力を有する。エナンチオマーは、キラル高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)並びにキラル塩の形成及び結晶化を含む当業者に公知の方法によって混合物から単離することができ、又は好ましいエナンチオマーを、不斉合成によって調製することができる。例えば、Jacques, et al., Enantiomers, Racemates and Resolutions, Wiley Interscience, New York, 1981;Eliel, Stereochemistry of Carbon Compounds, McGraw-Hill, NY, 1962;及びEliel and Wilen, Stereochemistry of Organic Compounds, Wiley-Interscience, New York, 1994、を参照されたい。
「エナンチオマー富化」及び「非ラセミ」の用語は、本明細書で用いられる場合、あるエナンチオマーの重量パーセントが、ラセミ組成物のコントロール混合物中のそのあるエ
ナンチオマーの量よりも大きい組成物を意味する(例:重量基準で1:1よりも大きい)。例えば、(S)-エナンチオマーのエナンチオマー富化製剤は、少なくとも75重量%など又は少なくとも80重量%など、(R)-エナンチオマーに対して50重量%を超える(S)-エナンチオマーを有する化合物の製剤を意味する。いくつかの実施形態では、富化は、80重量%を大きく超えて、「実質的にエナンチオマー富化の」又は「実質的に非ラセミの」製剤を提供してよく、これらの意味するところは、一方のエナンチオマーを他方のエナンチオマーに対して、少なくとも90重量%など又は少なくとも95重量%など、少なくとも85重量%有する組成物の製剤である。「エナンチオマー的に純粋な」又は「実質的にエナンチオマー的に純粋な」の用語は、単一のエナンチオマーを少なくとも98%含み、反対のエナンチオマーは2%未満である組成物を意味する。
「部分」とは、分子の特定のセグメント又は官能基を意味する。化学部分は、多くの場合、分子中に組み込まれた又は分子に付加された、認識されている化学実体である。
「互変異性体」は、互変異性化によって相互変換する構造的に異なる異性体である。「互変異性化」は、異性体化の一形態であり、プロトトロピー互変異性化又はプロトン移動互変異性化を含み、酸-塩基化学のサブセットと見なされる。「プロトトロピー互変異性化」又は「プロトン移動互変異性化」は、結合次数の変化、多くの場合単結合と隣接する二重結合との交換を伴うプロトンの移動が関与する。互変異性化が可能である場合(例:溶液中)、互変異性体の化学平衡に達することが可能である。互変異性化の例は、ケト-エノール互変異性化である。ケト-エノール互変異性化の具体例は、ペンタン-2,4-ジオン及び4-ヒドロキシペンタ-3-エン-2-オン互変異性体の相互変換である。互変異性化の別の例は、フェノール-ケト互変異性化である。異なる互変異性化状態での固体形態の形成は、「デスモトロピー」として知られ、そのような形態は、「デスモトロープ」として知られる。
本発明の組成物はまた、例えば多形、偽多形、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形(無水物を含む)、及び立体配座多形、さらにはこれらの混合物を含む、式(1)の結晶形態も含む。「結晶形態」、「形態」、及び「多形」は、特定の結晶形態が言及されていない限りにおいて、例えば多形、偽多形、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形(無水物を含む)、及び立体配座多形、さらにはこれらの混合物を含む、化合物のすべての結晶形態を含むことを意図している。
「溶媒和物」とは、1又は複数の溶媒分子と物理的に会合している化合物の結晶相を意味する。1又は複数の水分子と物理的に会合している化合物の結晶相は、「水和物」と称される。
「アモルファス形態」とは、長い範囲の結晶秩序を持たない化合物、又は化合物の塩若しくは分子複合体の形態を意味する。
ボルシクリブ
ボルシクリブは、例えば、その全内容が参照により本明細書に援用される米国特許第7,271,193号、同第7,915,301号、同第8,304,449号、同第7,884,127号、及び同第8,563,596号に記載されているCDK阻害剤である。
Figure 2024038072000002
いくつかの実施形態では、ボルシクリブは、(+)-トランス-2-(2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシメチル-1-メチルピロリジン-3-イル)-クロメン-4-オンを意味する。いくつかの実施形態では、ボルシクリブは、2-(2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-((2R,3S)-2-ヒドロキシメチル-1-メチルピロリジン-3-イル)-4H-クロメン-4-オンを意味する。
結晶形態
一実施形態では、本開示は、ボルシクリブの結晶固体形態を提供する。一実施形態では、本開示は、ボルシクリブ遊離塩基の結晶固体形態を提供する。一実施形態では、本開示は、ボルシクリブ塩の結晶固体形態を提供する。本開示は、ボルシクリブの多形、例えば結晶形態を提供する。いくつかの実施形態では、多形は、遊離塩基のボルシクリブを含む。いくつかの実施形態では、多形は、1,5-ナフタレンジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ジベンゾイル-L-酒石酸、エタンスルホン酸、ゲンチジン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、オルトリン酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸などから選択される酸に相当する対イオンを含むボルシクリブ塩を含む。
本明細書で述べるいずれの結晶形態も、X線回折によって特性決定可能である。いくつかの実施形態では、X線回折とは、X線粉末回折を意味する。いくつかの実施形態では、X線回折は、透過モード又は反射モードを用いて測定されてよい。一実施形態では、本明細書のいずれの実施形態のX線回折パターンも、透過モードで測定される。一実施形態では、本明細書のいずれの実施形態のX線回折パターンも、反射モードで測定される。本技術分野では、X線粉末回折パターンが、測定条件(設備、サンプル調製、又は用いられる機器など)に応じて1又は複数の測定誤差を含んで得られ得ることは公知である。特に、X線粉末回折パターンの強度が、測定条件及びサンプル調製に応じて変動し得ることは一般的に知られている。例えば、X線粉末回折の分野の当業者であれば、ピークの相対的強度が、試験下のサンプルの方向に応じて、並びに用いられる機器の種類及び設定に基づいて変動し得ることを認識するであろう。当業者であればまた、反射の位置が、回折計内に置かれたサンプルの精密な高さ、サンプル表面の平面性、及び回折計のゼロ点校正によって影響を受け得ることも認識するであろう。したがって、当業者であれば、本明細書で提示される回折パターンデータが、絶対的なものとして解釈されるべきではなく、本明細書で開示されるものと実質的に同じ粉末回折パターンを提供するいずれの結晶形態も、本開示の範囲内に含まれることは理解されるであろう。さらなる情報としては、Jenkins and Snyder, Introduction to X-Ray Powder Diffractometry, John Wiley & Sons, 1996、を
参照されたい。
異なる結晶形態は、非結晶形態と比較して驚くべき利点を提供する場合があり、改善された熱力学的安定性、溶解速度の向上、胃及び胃環境中での改善された性能(より高いpHへの変化時における溶液からの析出の回避又は低減を含む)、哺乳類における改善された曝露、及び薬物を患者に適する最終製品に調合するためのより優れた加工性を含む。
1つの実施形態では、本開示は、以下から選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられるマロン酸ボルシクリブの結晶形態、及び/又はマロン酸ボルシクリブの多形結晶形態(Mao1)を提供する。
Figure 2024038072000003
いくつかの実施形態では、各ピークは、独立して、±0.1°、±0.2°、又は±0.3°の変動を含み得る。
1つの実施形態では、本開示は、以下から選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられるシュウ酸ボルシクリブの結晶形態、及び/又はシュウ酸ボルシクリブの多形結晶形態(Oxa1)を提供する。
Figure 2024038072000004
いくつかの実施形態では、各ピークは、独立して、±0.1°、±0.2°、又は±0.3°の変動を含み得る。
1つの実施形態では、本開示は、以下から選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられるリン酸ボルシクリブの結晶形態、及び/又はリン酸ボルシクリブの多形結晶形態(Pho1)を提供する。
Figure 2024038072000005
いくつかの実施形態では、各ピークは、独立して、±0.1°、±0.2°、又は±0.3°の変動を含み得る。
1つの実施形態では、本開示は、7.30°±0.2°、13.58°±0.2°、14.06°±0.2°、15.18°±0.2°、15.66°±0.2°、17.50°±0.2°、18.94°±0.2°、19.54°±0.2°、22.22°±0.2°、23.38°±0.2°、24.10°±0.2°、24.98°±0.2°、25.94°±0.2°、27.26°±0.2°、28.50°±0.2°、及び32.82°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態を提供する。いくつかの実施形態では、X線回折パターンは、上記のピークの群から選択される少なくとも1つのピーク、少なくとも2つのピーク、少なくとも3つのピーク、少なくとも4つのピーク、少なくとも5つのピークなどを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、マロン酸ボルシクリブを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、水和マロン酸ボルシクリブを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、無水マロン酸ボルシクリブを含む。
1つの実施形態では、本開示は、5.06°±0.2°、6.42°±0.2°、9.34°±0.2°、10.14°±0.2°、12.30°±0.2°、13.66°±0.2°、14.14°±0.2°、15.82°±0.2°、17.02°±0.2°、19.74°±0.2°、20.38°±0.2°、21.82°±0.2°、22.
66°±0.2°、24.62°±0.2°、25.78°±0.2°、26.58°±0.2°、28.66°±0.2°、及び29.98°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態を提供する。いくつかの実施形態では、X線回折パターンは、上記のピークの群から選択される少なくとも1つのピーク、少なくとも2つのピーク、少なくとも3つのピーク、少なくとも4つのピーク、少なくとも5つのピークなどを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、水和ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、無水ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブを含む。
1つの実施形態では、本開示は、4.94°±0.2°、6.78°±0.2°、9.34°±0.2°、10.94°±0.2°、12.70°±0.2°、13.38°±0.2°、14.90°±0.2°、15.66°±0.2°、17.54°±0.2°、18.82°±0.2°、22.02°±0.2°、23.98°±0.2°、24.78°±0.2°、25.30°±0.2°、26.66°±0.2°、及び29.98°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態を提供する。いくつかの実施形態では、X線回折パターンは、上記のピークの群から選択される少なくとも1つのピーク、少なくとも2つのピーク、少なくとも3つのピーク、少なくとも4つのピーク、少なくとも5つのピークなどを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、リン酸ボルシクリブを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、水和リン酸ボルシクリブを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、無水リン酸ボルシクリブを含む。
1つの実施形態では、本開示は、6.86°±0.2°、12.66°±0.2°、13.58°±0.2°、14.74°±0.2°、15.98°±0.2°、19.38°±0.2°、23.94°±0.2°、24.78°±0.2°、及び25.94°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態を提供する。いくつかの実施形態では、X線回折パターンは、上記のピークの群から選択される少なくとも1つのピーク、少なくとも2つのピーク、少なくとも3つのピーク、少なくとも4つのピーク、少なくとも5つのピークなどを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、シュウ酸ボルシクリブを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、水和シュウ酸ボルシクリブを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、無水シュウ酸ボルシクリブを含む。
1つの実施形態では、本開示は、9.02°±0.2°、10.50°±0.2°、11.06°±0.2°、12.30°±0.2°、12.82°±0.2°、13.90°±0.2°、14.82°±0.2°、15.30°±0.2°、15.94°±0.2°、17.26°±0.2°、19.34°±0.2°、20.62°±0.2°、22.18°±0.2°、22.86°±0.2°、24.58°±0.2°、25.42°±0.2°、25.86°±0.2°、27.38°±0.2°、及び28.66°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態を提供する。いくつかの実施形態では、X線回折パターンは、上記のピークの群から選択される少なくとも1つのピーク、少なくとも2つのピーク、少なくとも3つのピーク、少なくとも4つのピーク、少なくとも5つのピークなどを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、ナパジシル酸ボルシクリブを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、水和ナパジシル酸ボルシクリブを含む。いくつか実施形態では、結晶形態は、無水ナパジシル酸ボルシクリブを含む。
医薬組成物
一実施形態では、本発明は、ボルシクリブ遊離塩基の結晶形態を含む医薬組成物を提供
する。一実施形態では、本発明は、ボルシクリブ塩の結晶形態を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、典型的には、活性成分として、治療有効量のボルシクリブ、又はその医薬的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、若しくは誘導体の固体形態を提供するように調合される。所望される場合、医薬組成物は、その医薬的に許容される塩、及び1若しくは複数の医薬的に許容される賦形剤、不活性固体希釈剤及び充填剤を含むキャリア、希釈剤、浸透促進剤、可溶化剤、又はアジュバントを含有する。医薬組成物は、本明細書で述べる酸味剤を含有してもよい。
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中に提供される、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の濃度は、独立して、例えば、医薬組成物の総質量又は体積に対して、重量/重量、重量/体積、又は体積/体積基準で、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、又は0.001%未満である。一実施形態では、ボルシクリブの固体形態は、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中に提供される、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の濃度は、独立して、医薬組成物の総質量又は体積に対して、重量/重量、重量/体積、又は体積/体積基準で、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19.75%、19.50%、19.25%、19%、18.75%、18.50%、18.25%、18%、17.75%、17.50%、17.25%、17%、16.75%、16.50%、16.25%、16%、15.75%、15.50%、15.25%、15%、14.75%、14.50%、14.25%、14%、13.75%、13.50%、13.25%、13%、12.75%、12.50%、12.25%、12%、11.75%、11.50%、11.25%、11%、10.75%、10.50%、10.25%、10%、9.75%、9.50%、9.25%、9%、8.75%、8.50%、8.25%、8%、7.75%、7.50%、7.25%、7%、6.75%、6.50%、6.25%、6%、5.75%、5.50%、5.25%、5%、4.75%、4.50%、4.25%、4%、3.75%、3.50%、3.25%、3%、2.75%、2.50%、2.25%、2%、1.75%、1.50%、125%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、又は0.001%超である。一実施形態では、ボルシクリブの固体形態は、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の濃度は、独立して、医薬組成物の総質量又は体積に対して、重量/重量、重量/体積、又は体積/体積基準で、およそ0.0001%~およそ50%、およそ0.001%~およそ40%、およそ0.01%~およそ30%、およそ0.02%~およそ29%、およそ0.0
3%~およそ28%、およそ0.04%~およそ27%、およそ0.05%~およそ26%、およそ0.06%~およそ25%、およそ0.07%~およそ24%、およそ0.08%~およそ23%、およそ0.09%~およそ22%、およそ0.1%~およそ21%、およそ0.2%~およそ20%、およそ0.3%~およそ19%、およそ0.4%~およそ18%、およそ0.5%~およそ17%、およそ0.6%~およそ16%、およそ0.7%~およそ15%、およそ0.8%~およそ14%、およそ0.9%~およそ12%、又はおよそ1%~およそ10%の範囲内である。一実施形態では、ボルシクリブの固体形態は、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの濃度は、独立して、医薬組成物の総質量又は体積に対して、重量/重量、重量/体積、又は体積/体積基準で、およそ0.001%~およそ10%、およそ0.01%~およそ5%、およそ0.02%~およそ4.5%、およそ0.03%~およそ4%、およそ0.04%~およそ3.5%、およそ0.05%~およそ3%、およそ0.06%~およそ2.5%、およそ0.07%~およそ2%、およそ0.08%~およそ1.5%、およそ0.09%~およそ1%、およそ0.1%~およそ0.9%の範囲内である。一実施形態では、ボルシクリブの固体形態は、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの量は、独立して、3.0g、2.5g、2.0g、1.5g、1.0g、0.95g、0.9g、0.85g、0.8g、0.75g、0.7g、0.65g、0.6g、0.55g、0.5g、0.45g、0.4g、0.35g、0.3g、0.25g、0.2g、0.15g、0.1g、0.09g、0.08g、0.07g、0.06g、0.05g、0.04g、0.03g、0.02g、0.01g、0.009g、0.008g、0.007g、0.006g、0.005g、0.004g、0.003g、0.002g、0.001g、0.0009g、0.0008g、0.0007g、0.0006g、0.0005g、0.0004g、0.0003g、0.0002g、又は0.0001g以下である。一実施形態では、固体形態
いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の量は、独立して、0.0001g、0.0002g、0.0003g、0.0004g、0.0005g、0.0006g、0.0007g、0.0008g、0.0009g、0.001g、0.0015g、0.002g、0.0025g、0.003g、0.0035g、0.004g、0.0045g、0.005g、0.0055g、0.006g、0.0065g、0.007g、0.0075g、0.008g、0.0085g、0.009g、0.0095g、0.01g、0.015g、0.02g、0.025g、0.03g、0.035g、0.04g、0.045g、0.05g、0.055g、0.06g、0.065g、0.07g、0.075g、0.08g、0.085g、0.09g、0.095g、0.1g、0.15g、0.2g、0.25g、0.3g、0.35g、0.4g、0.45g、0.5g、0.55g、0.6g、0.65g、0.7g、0.75g、0.8g、0.85g、0.9g、0.95g、1g、1.5g、2g、2.5、又は3g超である。一実施形態では、ボルシクリブの固体形態は、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の各々は、幅広い用量範囲にわたって有効である。例えば、成人のヒトの治療の場合、用量は、独立して、0.01~1000mg、0.5~100mgの範囲であり、1日あたり1~50mg、1日あたり2~40mg、及び1日あたり5~25mgが、用いられ得る用量の例である。厳密な用量は、投与の経路、化合物が投与される形態、治療されるべき対象の性別及び年齢、治療されるべき対象の体重、並びに担当医師の選択及び経験に応じて異なることになる。一実施形態では、ボルシクリブの固体形態は、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
選択される実施形態では、本発明は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、及び経口投与に適する医薬賦形剤を含有する経口投与用の医薬組成物を提供する。一実施形態では、ボルシクリブの固体形態は、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
選択される実施形態では、本発明は:(i)本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含む、有効量のボルシクリブ、及び(ii)経口投与に適する医薬賦形剤、を含有する経口投与用の固体医薬組成物を提供する。選択される実施形態では、組成物はさらに、(iii)有効量の別の活性医薬成分も含有する。一実施形態では、ボルシクリブの固体形態は、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
選択される実施形態では、医薬組成物は、経口摂取に適する液体医薬組成物であってもよい。経口投与に適する本発明の医薬組成物は、粉末として、又は顆粒、水性若しくは非水性液体中の溶液又は懸濁液、水中油型エマルジョン、又は油中水型エマルジョンで各々が所定量の活性成分を含有するカプセル、サシェ、若しくは錠剤などの別個になった剤形、又は液体、又はエアロゾルスプレーとして提供することができる。本発明の医薬組成物は、再構成用の粉末、経口摂取用の粉末、瓶(瓶に入った粉末又は液体など)、経口溶解フィルム、ロゼンジ、ペースト、チューブ、ガム、及びパックも含む。そのような剤形は、調剤の方法のいずれによって調製されてもよいが、方法はすべて、活性成分を、1又は複数の必要な成分を構成するキャリアと一緒にする工程を含む。一般に、組成物は、活性成分を液体キャリア又は微細に粉砕した固体キャリア又はその両方と均一且つ密接に混合し、その後、必要に応じて所望の体裁に生成物を成形することによって調製される。例えば、錠剤は、所望に応じて1又は複数の付属成分と共に、圧縮又は成形によって調製することができる。圧縮錠剤は、バインダー、滑沢剤、不活性希釈剤、及び/又は界面活性剤若しくは分散剤などであるがこれらに限定されない賦形剤と所望に応じて一緒に混合した粉末又は顆粒などの易流動性形態の活性成分を、適切な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末化合物の混合物を、適切な機械で成形することによって作製することができる。
本発明はさらに、水がいくつかの化合物の分解を促進し得ることから、無水の医薬組成物及び剤形も包含する。例えば、医薬の分野では、経時での調合剤の保存期間又は安定性などの特性を特定する目的での長期的な保存のシミュレーション手段として、水が添加され得る(例:5%)。本発明の無水の医薬組成物及び剤形は、無水又は低水分含有量の成分、及び低水分又は低湿度条件を用いて調製することができる。ラクトースを含有する本
発明の医薬組成物及び剤形は、製造、包装、及び/又は保存の過程で水分及び/又は湿度と実質的な接触が予想される場合、無水とされ得る。無水医薬組成物は、その無水の性質が維持されるように調製及び保存され得る。したがって、無水組成物は、水への曝露を防止することが公知である物質を用い、それらを適切な調合キットに含むことができるように、包装され得る。適切な包装材の例としては、限定されないが、密封シールされたホイル、プラスチックなど、ユニットドーズ容器、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられる。
本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の各々は、従来の医薬的配合技術に従って、医薬キャリアとの密接な混合物として組み合わせられ得る。キャリアは、投与のために所望される製剤の形態に応じて、広く様々な形態を取り得る。経口剤形のための組成物の調製において、経口液体製剤(懸濁液、溶液、及びエリキシールなど)又はエアロゾルの場合、キャリアとして、例えば水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤などの通常の医薬媒体のいずれが用いられてもよく、又は経口固体製剤の場合、デンプン、糖、マイクロ結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、流動促進剤、バインダー、及び崩壊剤などのキャリアが、いくつかの実施形態ではラクトースを用いることなく、用いられてよい。例えば、適切なキャリアとしては、固体経口製剤では、粉末、カプセル、及び錠剤が挙げられる。所望される場合、錠剤は、標準的な水性又は非水性の技術によってコーティングされてもよい。
医薬組成物及び剤形での使用に適するバインダーとしては、限定されないが、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、若しくは他のデンプン、ゼラチン、アカシアなどの天然及び合成ガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末化トラガント、グアーガム、セルロース及びその誘導体(例:エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、及びこれらの混合物が挙げられる。
本明細書で開示される医薬組成物及び剤形で用いられる適切な充填剤の例としては、限定されないが、タルク、炭酸カルシウム(例:顆粒又は粉末)、微結晶セルロース、粉末化セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、及びこれらの混合物が挙げられる。
崩壊剤は、水性環境に曝露された場合に崩壊する錠剤を提供するために、本発明の組成物で用いられ得る。崩壊剤の量が多過ぎる場合、瓶の中で崩壊する錠剤が製造され得る。少な過ぎると、崩壊を起こすのに不充分であり得るため、剤形からの活性成分の放出の速度及び程度が変動し得る。したがって、少な過ぎも多過ぎもせず、活性成分の放出を有害に変動させない充分な量の崩壊剤が、本明細書で開示される化合物の剤形の形成に用いられ得る。用いられる崩壊剤の量は、調合剤の種類及び投与のモードに基づいて変動してよく、当業者であれば容易に認識可能であり得る。約0.5~約15重量パーセントの崩壊剤、又は約1~約5重量パーセントの崩壊剤が、医薬組成物中に用いられてよい。本発明の医薬組成物及び剤形を形成するために用いられ得る崩壊剤としては、限定されないが、カンテン、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、他のデンプン、アルファ化デンプン、他のデンプン、クレイ、他のアルギン、他のセルロース、ガム、又はこれらの混合物が挙げられる。
本発明の医薬組成物及び剤形を形成するために用いられ得る滑沢剤としては、限定され
ないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽質鉱油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例:ラッカセイ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル(ethylaureate)、カンテン、又はこれらの混合物が挙げられる。さらなる滑沢剤としては、例えば、サイロイド(syloid)シリカゲル、合成シリカの凝固エアロゾル、ケイ化微結晶セルロース、又はこれらの混合物が挙げられる。滑沢剤は、所望される場合、医薬組成物の約1重量パーセント未満の量で添加されてよい。
水性懸濁液及び/又はエリキシールが経口投与のために所望される場合、その中の必須活性成分は、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、及びこれらの様々な組み合わせなどの希釈剤と一緒に、様々な甘味剤又は香味剤、着色物質又は染料と、及びそのように所望される場合は乳化剤及び/又は懸濁剤と組み合わされてよい。
錠剤は、未コーティングであってよく、又は消化管での崩壊及び吸収を遅延することで長期間にわたる持続的作用を得るために、公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質が用いられ得る。経口使用のための調合剤は、硬質ゼラチンカプセルとして提供することもでき、この場合、活性成分は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又はカオリンを例とする不活性固体希釈剤と混合され、又は軟質ゼラチンカプセルとして提供することもでき、この場合、活性成分は、水、又はラッカセイ油、液体パラフィン、若しくはオリーブ油を例とする油媒体と混合される。
本発明の医薬組成物及び剤形を形成するために用いられ得る界面活性剤としては、限定されないが、親水性界面活性剤、親油性界面活性剤、及びこれらの混合物が挙げられる。すなわち、親水性界面活性剤の混合物が用いられてもよく、親油性界面活性剤の混合物が用いられてもよく、又は少なくとも1つの親水性界面活性剤及び少なくとも1つの親油性界面活性剤の混合物が用いられてもよい。
非イオン性両親媒性化合物の相対的親水性及び疎水性を特性評価するために用いられる実験パラメータは、親水性-親油性バランス(「HLB」値)である。適切な親水性界面活性剤は、一般に、少なくとも10のHLB値を有してよく、一方適切な親油性界面活性剤は、一般に、約10以下のHLB値を有してよい。HLB値が低い界面活性剤ほど、親油性又は疎水性であり、油中での溶解度が大きくなり、一方HLB値の高い界面活性剤ほど、親水性であり、水溶液中での溶解度が大きくなる。一般に、HLB値が約10よりも大きい化合物、さらには、HLBスケールが一般的には適用されないアニオン性、カチオン性、又は双性イオン性化合物が、親水性界面活性剤と見なされる。同様に、親油性(すなわち、疎水性)界面活性剤は、HLB値が約10以下の化合物である。しかし、界面活性剤のHLB値は、工業用、医薬用、及び化粧用エマルジョンの調合を可能とするために一般的に用いられる、単なる概略的なガイドである。
親水性界面活性剤は、イオン性であっても、又は非イオン性であってもよい。適切なイオン性界面活性剤としては、限定されないが、アルキルアンモニウム塩;フシジン酸塩;アミノ酸、オリゴペプチド、及びポリペプチドの脂肪酸誘導体;アミノ酸、オリゴペプチド、及びポリペプチドのグリセリド誘導体;レシチン及び水素化レシチン;リゾレシチン及び水素化リゾレシチン;リン脂質及びその誘導体;リゾリン脂質及びその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキルサルフェートの塩;脂肪酸塩;ドクサートナトリウム;アシルラクチレート;モノ-及びジ-グリセリドのモノ-及びジ-アセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノ-及びジ-グリセリド;モノ-及びジ-グリセリドのクエン酸
エステル;並びにこれらの混合物が挙げられる。
上述の群の中で、イオン性界面活性剤としては、例えば、レシチン、リゾレシチン、リン脂質、リゾリン脂質、及びこれらの誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキルサルフェートの塩;脂肪酸塩;ドクサートナトリウム;アシルラクチレート;モノ-及びジ-グリセリドのモノ-及びジ-アセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノ-及びジ-グリセリド;モノ-及びジ-グリセリドのクエン酸エステル;並びにこれらの混合物が挙げられる。
イオン性界面活性剤は、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、PEG-ホスファチジルエタノールアミン、PVP-ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸の乳酸エステル(lactylic esters of fatty acids)、ステアロイル-2-ラクチレート、ステアロイルラクチレート、スクシニル化モノグリセリド、モノ/ジグリセリドのモノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ/ジグリセリドのクエン酸エステル、コリルサルコシン、カプロエート、カプリレート、カプレート、ラウレート、ミリステート、パルミテート、オレエート、リシノリエート、リノーリエート、リノレネート、ステアレート、ラウリルサルフェート、テラセシルサルフェート(teracecyl sulfate)、ドクセート、ラウ
ロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、並びにこれらの塩及び混合物のイオン化形態であってよい。
親水性非イオン性界面活性剤としては、限定されないが、アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルマクロゴルグリセリド;ポリエチレングリコールアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリエチレングリコールアルキルフェノールなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノール;ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステル及びポリエチレングリコール脂肪酸ジエステルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオールと、グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸、及びステロールから成る群の少なくとも1つのメンバーとの親水性エステル交換生成物;ポリオキシエチレンステロール、その誘導体、及びその類似体;ポリオキシエチル化ビタミン及びその誘導体;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;及びこれらの混合物;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオールと、トリグリセリド、植物油、及び水素化植物油から成る群の少なくとも1つのメンバーとの親水性エステル交換生成物、が挙げられ得る。ポリオールは、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、又はサッカリドであってよい。
他の親水性非イオン性界面活性剤としては、限定されないが、PEG-10ラウレート、PEG-12ラウレート、PEG-20ラウレート、PEG-32ラウレート、PEG-32ジラウレート、PEG-12オレエート、PEG-15オレエート、PEG-20オレエート、PEG-20ジオレエート、PEG-32オレエート、PEG-200オレエート、PEG-400オレエート、PEG-15ステアレート、PEG-32ジステアレート、PEG-40ステアレート、PEG-100ステアレート、PEG-20ジラウレート、PEG-25グリセリルトリオレエート、PEG-32ジオレエート、PEG-20グリセリルラウレート、PEG-30グリセリルラウレート、PEG-20グリセリルステアレート、PEG-20グリセリルオレエート、PEG-30グリセリルオレエー
ト、PEG-30グリセリルラウレート、PEG-40グリセリルラウレート、PEG-40パーム核油、PEG-50水素化ヒマシ油、PEG-40ヒマシ油、PEG-35ヒマシ油、PEG-60ヒマシ油、PEG-40水素化ヒマシ油、PEG-60水素化ヒマシ油、PEG-60トウモロコシ油、PEG-6カプレート/カプリレートグリセリド、PEG-8カプレート/カプリレートグリセリド、ポリグリセリル-10ラウレート、PEG-30コレステロール、PEG-25ファイトステロール、PEG-30ダイズステロール、PEG-20トリオレエート、PEG-40ソルビタンオレエート、PEG-80ソルビタンラウレート、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE-9ラウリルエーテル、POE-23ラウリルエーテル、POE-10オレイルエーテル、POE-20オレイルエーテル、POE-20ステアリルエーテル、トコフェリルPEG-100スクシネート、PEG-24コレステロール、ポリグリセリル-10-オレエート、Tween 40、Tween 60、スクロースモノステアレート、スクロースモラウレート、スクロースモノパルミテート、PEG 10-100ノニルフェノールシリーズ、PEG 15-100オクチルフェノールシリーズ、及びポロキサマーが挙げられる。
適切な親油性界面活性剤としては、単なる例として、脂肪アルコール、グリセロール脂肪酸エステル、アセチル化グリセロール脂肪酸エステル、低級アルコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ステロール及びステロール誘導体、ポリオキシエチル化ステロール及びステロール誘導体、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、糖エステル、糖エーテル、モノ及びジグリセリドの乳酸誘導体、並びにポリオールと、グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸、及びステロールから成る群の少なくとも1つのメンバーとの疎水性エステル交換生成物、油溶性ビタミン/ビタミン誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。この群の中で、好ましい親油性界面活性剤としては、グリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びこれらの混合物が挙げられる、又はポリオールと、植物油、水素化植物油、及びトリグリセリドから成る群の少なくとも1つのメンバーとの疎水性エステル交換生成物である。
一実施形態では、組成物は、本発明の化合物の良好な可溶化及び/又は溶解を確保するために、並びに本発明の化合物の析出を最小限に抑えるために、可溶化剤を含んでもよい。これは、注射用の組成物を例とする非経口用途のための組成物の場合に特に重要であり得る。可溶化剤はまた、親水性薬物及び/又は界面活性剤などの他の構成成分の溶解度を高めるために、又は組成物を安定な若しくは均質な溶液又は分散体として維持するために添加されてもよい。
適切な可溶化剤の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール及びその異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、トランスキトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び他のセルロース誘導体、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体などのアルコール並びにポリオール;テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール)又はメトキシPEGなどの平均分子量が約200~約6000であるポリエチレングリコールのエーテル;2-ピロリドン、2-ピペリドン、ε-カプロラクタム、N-アルキルピロリドン、N-ヒドロキシアルキルピロリドン、N-アルキルピペリドン、N-アルキルカプロラクタム、ジメチルアセタミド、及びポリビニルピロリドンなどのアミド並びに他の窒素含有化合物;プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、イプシロン-カプロラ
クトン及びその異性体、δ-バレロラクトン及びその異性体、β-ブチロラクトン及びその異性体などのエステル;並びにジメチルアセタミド、ジメチルイソソルビド、N-メチルピロリドン、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及び水などの本技術分野で公知の他の可溶化剤。
可溶化剤の混合物が用いられてもよい。例としては、限定されないが、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、ポリエチレングリコール200-100、グリコフロール、トランスキトール、ポリエチレングリコール、及びジメチルイソソルビドが挙げられる。特に好ましい可溶化剤としては、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、エチルアルコール、PEG-400、グリコフロール、及びプロピレングリコールが挙げられる。
含まれてよい可溶化剤の量は、特に限定されない。任意の可溶化剤の量は、生体許容量に限定される場合があり、それは、当業者によって容易に決定され得る。いくつかの状況では、例えば薬物の濃度を最大化するために、生体許容量よりも非常に過剰である量の可溶化剤を含むことが有利となる場合があり、過剰な可溶化剤は、蒸留又は蒸発などの従来の技術を用いて、患者へ組成物を提供する前に除去される。したがって、存在する場合、可溶化剤は、薬物及び他の賦形剤の合わせた重量に基づいて、10重量%、25重量%、50重量%、100重量%、又は約200重量%までの重量比であってよい。所望される場合、5%、2%、1%、又はさらにはそれ未満など、非常に少量の可溶化剤が用いられてもよい。典型的には、可溶化剤は、約1重量%~約100重量%の量で、より典型的には約5重量%~約25重量%の量で存在してよい。
組成物は、1又は複数の医薬的に許容される添加剤及び賦形剤をさらに含んでもよい。そのような添加剤及び賦形剤としては、限定されないが、粘着性低下剤(detackifiers)、消泡剤、緩衝剤、ポリマー、酸化防止剤、保存剤、キレート化剤、粘度調整剤、等張剤(tonicifiers)、香味剤、着色剤、臭気剤、乳白剤、懸濁剤、バインダー、充填剤、可
塑剤、滑沢剤、及びこれらの混合物が挙げられる。
加えて、加工の促進、安定性の向上、又は他の理由のために、医薬組成物に酸又は塩基が組み込まれてもよい。医薬的に許容される塩基の例としては、アミノ酸、アミノ酸エステル、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロカルサイト、水酸化マグネシウムアルミニウム、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)などが挙げられる。さらに、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノンスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、パラ-ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸などの医薬的に許容される酸の塩である塩基も適している。リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、及びリン酸二水素ナトリウムなどの多塩基酸の塩も用いられてよい。塩基が塩である場合、カチオンは、アンモニウム、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属など、都合の良い医薬的に許容されるいかなるカチオンであってもよい。例としては、限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、及びアンモニウムが挙げられ得る。
適切な酸は、医薬的に許容される有機又は無機酸である。適切な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸などが挙げられる。適切な有機酸の例としては、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノンスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラ-ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、及び尿酸が挙げられる。
用量及び投与計画
本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の投与量は、治療される哺乳類、障害又は病状の重篤度、投与の速度、化合物の動態、及び処方医師の裁量に応じて異なる。しかし、有効用量は、単一用量又は分割用量で、1日あたり体重1kgあたりに約0.001~約100mgの範囲内であり、約1~約35mg/kg/日などである。体重70kgのヒトの場合、これは、約0.05~約2.5g/日など、約0.05~7g/日の量となる。場合によっては、上記で述べた範囲の下限よりも低い用量レベルが、非常に適切であり得、一方いかなる有害な副作用も引き起こさないさらに多い用量が、例えばそのような多い用量を1日を通して投与するためのいくつかの小用量に分割することによって用いられる場合もあり得る。
選択される実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態は、単一用量で投与される。典型的には、そのような投与は、活性医薬成分を迅速に導入する目的で、静脈注射を例とする注射によって行われる。しかし、他の経路が適宜用いられてもよい。本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の単一用量は、急性病状の治療のために用いられてもよい。
選択される実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態は、複数用量で投与される。投与は、1日あたり約1回、2回、3回、4回、5回、6回、又は7回以上であってよい。投与は、1ヶ月に約1回、2週間ごとに1回、週1回、又は2日に1回であってよい。他の実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態は、1日あたり約1回~1日あたり約6回投与される。別の実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の投与は、約7日間未満にわたって継続される。なお別の実施形態では、投与は、約6日間、10日間、14日間、28日間、2ヶ月間、6ヶ月間、又は1年間超にわたって継続される。いくつかの場合では、継続的な投与は、必要な限り実現され、維持される。一実施形態では、ボルシクリブの固体形態は、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
本発明の活性医薬成分の投与は、必要な限り継続されてよい。選択される実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態は、1、2、3、4、5、6、7、14、又は28日間超にわたって投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩
多形を含むボルシクリブの固体形態は、28、14、7、6、5、4、3、2、又は1日未満にわたって投与される。選択される実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態は、例えば慢性的な影響の治療のために、長期にわたって継続的に投与される。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの有効用量は、約1mg~約500mg、約10mg~約300mg、約20mg~約250mg、約25mg~約200mg、約10mg~約200mg、約20mg~約150mg、約30mg~約120mg、約10mg~約90mg、約20mg~約80mg、約30mg~約70mg、約40mg~約60mg、約45mg~約55mg、約48mg~約52mg、約50mg~約150mg、約60mg~約140mg、約70mg~約130mg、約80mg~約120mg、約90mg~約110mg、約95mg~約105mg、約150mg~約250mg、約160mg~約240mg、約170mg~約230mg、約180mg~約220mg、約190mg~約210mg、約195mg~約205mg、又は約198~約202mgの範囲内である。いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の有効用量は、約25mg、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、又は約500mgである。いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の有効用量は、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、又は500mgである。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの有効用量は、約0.01mg/kg~約4.3mg/kg、約0.15mg/kg~約3.6mg/kg、約0.3mg/kg~約3.2mg/kg、約0.35mg/kg~約2.85mg/kg、約0.15mg/kg~約2.85mg/kg、約0.3mg~約2.15mg/kg、約0.45mg/kg~約1.7mg/kg、約0.15mg/kg~約1.3mg/kg、約0.3mg/kg~約1.15mg/kg、約0.45mg/kg~約1mg/kg、約0.55mg/kg~約0.85mg/kg、約0.65mg/kg~約0.8mg/kg、約0.7mg/kg~約0.75mg/kg、約0.7mg/kg~約2.15mg/kg、約0.85mg/kg~約2mg/kg、約1mg/kg~約1.85mg/kg、約1.15mg/kg~約1.7mg/kg、約1.3mg/kg mg~約1.6mg/kg、約1.35mg/kg~約1.5mg/kg、約2.15mg/kg~約3.6mg/kg、約2.3mg/kg~約3.4mg/kg、約2.4mg/kg~約3.3mg/kg、約2.6mg/kg~約3.15mg/kg、約2.7mg/kg~約3mg/kg、約2.8mg/kg~約3mg/kg、又は約2.85mg/
kg~約2.95mg/kgの範囲内である。いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の有効用量は、約0.35mg/kg、約0.7mg/kg、約1mg/kg、約1.4mg/kg、約1.8mg/kg、約2.1mg/kg、約2.5mg/kg、約2.85mg/kg、約3.2mg/kg、又は約3.6mg/kgである。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態は、1日1回(QD)5mg、10mg、12.5mg、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、及び500mgを含む1日1回(QD)10~400mgの用量で投与される。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態は、5mg、10mg、12.5mg、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、及び500mg BIDの用量を含む10~400mg BIDの用量で投与される。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態は、5mg、10mg、12.5mg、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、及び500mg TIDの用量を含む10~400mg TIDの用量で投与される。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の有効量は、単一用量又は複数用量のいずれかで、直腸内、頬側、鼻腔内、及び経皮経路を含む同様の効果を有する活性医薬成分の許容される投与モードのいずれかによって、動脈内注射、静脈内、腹腔内、非経口、筋肉内、皮下、経口、局所によって、又は吸入剤として、投与されてよい。
酸抑制剤の影響を克服するための医薬組成物
本明細書で述べる組成物及び方法は、酸抑制剤の影響を克服するために用いることができる。酸抑制剤は、哺乳類での弱酸性薬物の曝露を大きく制限し得る。Smelick, et al.,
Mol. Pharmaceutics 2013, 10, 4055-4062。酸抑制剤としては、オメプラゾール、エソ
メプラゾール、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、及びイラプラゾールなどのプロトンポンプ阻害剤;シメチジン、ラニチジン、及びファモチジンなどのH受容体アンタゴニスト;並びにアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムの炭酸水素塩、炭酸塩、及び水酸化物などの制酸剤、さらには制酸剤と胃液分泌機構をターゲットとする剤との混合物が挙げられる。酸抑制剤の影響を克服することは、癌、炎症性疾患、免疫疾患、及び自己免疫疾患の患者の治療において重要な課題であり、なぜなら、このような患者は、一般に、その病状に付随することが多い胃刺激のために酸抑制剤が共投与されるからであり、酸抑制剤は、北米及び西ヨーロッパにおいて最も一般的に処方される医薬の一種だからである。最近承認された経口癌治療薬は、pH依存性の溶解性を有しているため、酸抑制剤に関して、薬物同士の相互作用の可能性がある。癌患者の場合、全患者の20~33%が、何らかの形態の酸抑制剤を使用していると推計されている。膵臓癌又は胃腸癌などの特定の癌では、酸抑制剤の使用率は、患者の60~80%という高さである。Smelick, et al., Mol. Pharmaceutics 2013, 10, 4055-4062。
一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、及び酸味剤を含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びにフマル酸、酒石酸、アスコルビン酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、及びCarbopol 971P(カルボキシポリメチレン)から成る群より選択される酸味剤を含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びにフマル酸、コハク酸、D-酒石酸、L-酒石酸、ラセミ酒石酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸及びD-アラボアスコルビン酸とも称される)、アルギン酸、Protacid F 120 NM、Protacid AR
1112(Kelacid NFとも称される)、Carbomer 941(ポリアクリル酸)、及びCarbopol 971P(カルボキシポリメチレン)から成る群より選択される酸味剤を含む。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。一実施形態では、酸味剤は、顆粒外である。一実施形態では、酸味剤は、顆粒内である。
アルギン酸は、1-4グリコシド結合によってβ-D-マンヌロン酸(M)とα-L-グルコン酸(G)とが連結されたポリサッカリドポリマーである。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びにアルギン酸又はその塩である酸味剤を含み、この場合、アルギン酸又はその塩は、0.1~0.5、0.2~0.6、0.3~0.7、0.4~0.8、0.5~0.9、0.6~1.0、0.7~1.1、0.8~1.2、0.9~1.3、1.0~1.4、1.1~1.5、1.2~1.6、1.3~1.7、1.4~1.8、1.5~1.9、1.6~2.0、1.7~2.1、1.8~2.2、1.9~2.3、2.0~2.4、及び2.1~2.5から成る群より選択されるM/G比を呈する。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びにアルギン酸又はその塩である酸味剤を含み、この場合、アルギン酸又はその塩は、0.5未満、1.0未満、1.5未満、2.0未満、及び2.5未満から成る群より選択されるM/G比を呈する。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリ
ブ塩多形を含むボルシクリブ、並びにアルギン酸又はその塩である酸味剤を含み、この場合、アルギン酸又はその塩は、0.5超、1.0超、1.5超、2.0超、及び2.5超から成る群より選択されるM/G比を呈する。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びにアルギン酸又はその塩である酸味剤を含み、この場合、アルギン酸又はその塩は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、及び2.5から成る群より選択されるM/G比を呈する。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
M/G比、さらにはM基及びG基の分率、MM及びGGの「2連子」の分率、「3連子」(例:MGG)の分率、並びにM基及びG基のより長い配列の分率は、磁気共鳴(NMR)分光法(消化あり又はなし)及び質量分析法を含む当業者に公知の方法によって特定され得る。Larsen, et al., Carbohydr. Res., 2003, 338, 2325-2336。
一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びに1%~5%、5%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%の、及び30%~35%から成る群より選択される濃度(質量%)の酸味剤を含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びに1%~5%、5%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%の、及び30%~35%から成る群より選択される濃度(質量%)の酸味剤を含み、この場合、酸味剤は、フマル酸、コハク酸、D-酒石酸、L-酒石酸、ラセミ酒石酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸及びD-アラボアスコルビン酸とも称される)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、Protacid
F 120 NM、Protacid AR 1112(Kelacid NFとも称される)、及びCarbopol 971P(カルボキシポリメチレン)から成る群より選択される。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びに1%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、及び35%未満から成る群より選択される濃度(質量%)の酸味剤を含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びに1%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、及び35%未満から成る群より選択される濃度(質量%)の酸味剤を含み、この場合、酸味剤は、フマル酸、コハク酸、D-酒石酸、L-酒石酸、ラセミ酒石酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸及びD-アラボアスコルビン酸とも称される)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、Protacid F 120 NM、Protacid AR 1112(Kelacid NFとも称される)、及びCarbopol 971P(カルボキシポリメチレン)から成る群より選択される。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロ
ン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びに1%超、5%超、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、及び35%超から成る群より選択される濃度(質量%)の酸味剤を含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びに1%超、5%超、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、及び35%超から成る群より選択される濃度(質量%)の酸味剤を含み、この場合、酸味剤は、フマル酸、コハク酸、D-酒石酸、L-酒石酸、ラセミ酒石酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸及びD-アラボアスコルビン酸とも称される)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、Protacid F 120 NM、Protacid AR 1112(Kelacid NFとも称される)、及びCarbopol 971P(カルボキシポリメチレン)から成る群より選択される。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びに約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、及び約40%から成る群より選択される濃度(質量%)の酸味剤を含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、並びに約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、及び約40%から成る群より選択される濃度(質量%)の酸味剤を含み、この場合、酸味剤は、フマル酸、コハク酸、D-酒石酸、L-酒石酸、ラセミ酒石酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸及びD-アラボアスコルビン酸とも称される)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、Protacid F 120
NM、Protacid AR 1112(Kelacid NFとも称される)、及びCarbopol 971P(カルボキシポリメチレン)から成る群より選択される。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、及び顆粒外酸味剤を含み、この場合、顆粒外酸味剤は、フマル酸、コハク酸、D-酒石酸、L-酒石酸、ラセミ酒石酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸及びD-アラボアスコルビン酸とも称される)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、Protacid F 120 NM、Protacid AR 1112(Ke
lacid NFとも称される)、及びCarbopol 971P(カルボキシポリメチレン)、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、及び顆粒外酸味剤を含み、この場合、顆粒外酸味剤は、約15重量%~約33重量%の濃度のフマル酸である。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、及び顆粒外酸味剤を含み、この場合、顆粒外酸味剤は、約5重量%~約33重量%の濃度のアルギン酸又はその塩(アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸カリウムなど)である。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、及び顆粒外酸味剤を含み、この場合、顆粒外酸味剤は、約25重量%~約33重量%の濃度のL-酒石酸である。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、及び顆粒外酸味剤を含み、この場合、顆粒外酸味剤は、約20重量%~約50重量%の濃度のアスコルビン酸、及び約2.5重量%~約10重量%の濃度のCarbopol 971P(カルボキシポリメチレン)である。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、及び顆粒外酸味剤を含み、この場合、顆粒外酸味剤は、約5重量%~約15重量%の濃度のフマル酸、及び約15重量%~約33重量%の濃度のアルギン酸又はその塩である。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、及び顆粒外酸味剤を含み、この場合、顆粒外酸味剤は、約5重量%~約15重量%の濃度のL-酒石酸、及び約15重量%~約33重量%の濃度のアルギン酸である。
一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、及び酸味剤を含み、この場合、酸味剤は、フマル酸、マレイン酸、リン酸、L-酒石酸、クエン酸、ゲンチジン酸、シュウ酸、及び硫酸から成る群より選択される。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブ、及び酸味剤を含み、この場合、酸味剤は、フマル酸、マレイン酸、リン酸、L-酒石酸、クエン酸、ゲンチジン酸、シュウ酸、及び硫酸から成る群より選択され、並びに酸味剤は、本明細書で述べるいずれかの結晶形態中に含まれる塩の対イオンである。
一実施形態では、医薬組成物は、酸味剤に加えて、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの酸性微小環境への曝露を延長するための賦形剤を含む。一実施形態では、この賦形剤は、天然、合成、又は半合成由来のポリマーである。ポリマーは、酸性、アニオン性、若しくは非イオン性のモノマー、オリゴマー、若しくはポリマー、又は酸性、アニオン性、及び非イオン性のモノマー若しくはコポリマーの混合物を含有し得る。1つのバージョンでは、賦形剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、トコフェロールポリエチレンオキシドスクシネート(D-α-トコフェロールポリエチレングリコールスクシネート、TPGS、又はビタミンE TPGS)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレートとエチルアクリレートとのコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ゼラチン、トウモロコシデンプン、エンドウマメデンプン、修飾トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、修飾ジャガイモデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロース、クロスポビドン、コポビドン、ポリエチレングリ
コール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとポリエチレンオキシドとのコポリマーから成る群より選択される。適用可能である場合は、上述のポリマーのコポリマーが用いられてもよい。コポリマーは、ブロック、分岐鎖状、又は末端(terminal)コポリマーであってよい。一実施形態では、ポリマーは、溶解を延長するために、又は溶解全体を増加させるために、医薬組成物の崩壊、溶解、及び浸食を阻害する膨潤、結合、又はゲル化特性を呈する。一実施形態では、ポリマーを含めることによって、酸味剤単独での使用と比較して、溶解速度及び溶解の程度が増加する。1つの実施形態では、膨潤、結合、又はゲル化特性は、pH依存性であり、この場合、ポリマーは、あるpH又はpH範囲において、別のpHとは異なって膨潤、結合、又はゲル化を起こす。1つの実施形態では、これは、高いpHよりも低いpHでの溶解を減少させる場合があり、逆も同様である。別の実施形態では、これは、酸性、中性、又は塩基性のpHにおいて、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの同様の溶解をもたらす。これは、胃のpHに関わらず、同様の血漿中曝露をもたらす。
1又は複数の膨潤、ゲル化、又は結合賦形剤を含有する調合剤の溶解プロファイルは、1又は複数のpH値においてゼロ次、一次、若しくは二次の微分速度次数を、又は異なるpH値における異なる速度次数の混合を呈し得る。一実施形態では、医薬組成物は、溶解によって、一定のレベルの薬物を哺乳類の消化管へ提供する。本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブが吸収される場合、これは、ある期間にわたって薬物の持続的な血漿レベルをもたらし、同等用量の本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含む即放性調合剤ボルシクリブのtmaxを遅らせ、cmaxを低下させる。別の実施形態では、これは、胃のpHに関わらず、哺乳類中での同様の曝露をもたらす。
固形腫瘍癌、血液学的悪性疾患、炎症性疾患、自己免疫障害、免疫障害、及び他の疾患の治療方法
本明細書で述べる医薬組成物は、疾患を治療するための方法に用いることができる。好ましい実施形態では、それらは、過剰増殖性障害の治療に用いるためのものである。それらはまた、本明細書及び以下の段落で述べる他の障害の治療にも用いられ得る。
いくつかの実施形態では、本発明は、哺乳類において、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形若しくは本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの結晶固体形態の治療有効量を、又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形若しくは本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの結晶固体形態を含む医薬組成物の治療有効量を哺乳類に投与することを含む、過剰増殖性障害の治療方法を提供する。好ましい実施形態では、哺乳類は、ヒトである。いくつかの実施形態では、過剰増殖性障害は、癌である。好ましい実施形態では、癌は、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症から成る群より選択される。好ましい実施形態では、癌は、非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫など)、急性骨髄性白血病、胸腺癌、脳癌、肺癌、扁平上皮癌、皮膚癌、眼癌、網膜芽細胞腫、眼球内黒色腫、口腔及び中咽頭癌、膀胱癌、胃癌、胃癌、膵癌、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、頭部癌、頚部癌、腎癌、腎癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、直腸結腸癌、骨癌(例:転移性骨癌)、食道癌、精巣癌、婦人科癌、甲状腺癌、CNS、PNS、AIDS関連癌(例:リンパ腫及びカポジ肉腫)、子宮頚癌(ヒトパピローマウイルス)、B細胞リンパ増殖性疾患及び上咽頭癌(エプスタインバーウイルス)、カポジ肉腫及び原発性体液性リンパ腫(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)、肝細胞癌(B型肝炎ウ
イルス及びC型肝炎ウイルス)、並びにT細胞白血病(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)などのウイルス誘発性癌、B細胞性急性リンパ性白血病、バーキット白血病、若年性骨髄単球性白血病、有毛細胞白血病、ホジキン病、多発性骨髄腫、マスト細胞白血病、並びにマスト細胞症から成る群より選択される。選択される実施形態では、方法は、皮膚の良性過形成(例:乾癬)、再狭窄、又は前立腺の病状(例:良性前立腺肥大(BPH))などの非癌性過剰増殖性障害の治療に関する。いくつかの実施形態では、過剰増殖性障害は、炎症性障害、免疫障害、又は自己免疫障害である。いくつかの実施形態では、過剰増殖性障害は、腫瘍血管新生、慢性炎症性疾患、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化、炎症性腸疾患、乾癬、湿疹、及び強皮症などの皮膚疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性、血管腫、神経膠腫及び黒色腫、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、嚢炎、脊椎関節炎、ぶどう膜炎、ベーチェット病、リウマチ性多発筋痛症、巨細胞性動脈炎、サルコイドーシス、川崎病、若年性特発性関節炎、化膿性汗腺炎、シェーグレン症候群、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎、クローン病、ループス、並びにループス腎炎から成る群より選択される。一実施形態では、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含む、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
一実施形態では、上述の実施形態のいずれの方法も、酸抑制剤を哺乳類に投与する工程をさらに含む。一実施形態では、酸抑制剤は、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、及びイラプラゾールなどのプロトンポンプ阻害剤;シメチジン、ラニチジン、及びファモチジンなどのH受容体アンタゴニスト;並びにアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムの炭酸水素塩、炭酸塩、及び水酸化物などの制酸剤から成る群より選択される。
いくつかの実施形態では、本発明は、胸腺癌、脳癌(例:神経膠腫)、肺癌、扁平上皮癌、皮膚癌(例:黒色腫)、眼癌、網膜芽細胞腫、眼球内黒色腫、口腔癌、中咽頭癌、膀胱癌、胃癌、胃癌、膵癌、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、頭頚部癌、腎癌、腎癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、直腸結腸癌、結腸癌、食道癌、精巣癌、婦人科癌、卵巣癌、甲状腺癌、CNS癌、PNS癌、AIDS関連癌(例:リンパ腫及びカポジ肉腫)、ウイルス誘発性癌、及び類表皮癌などの癌の治療に用いるための、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、皮膚の良性過形成(例:乾癬)、再狭窄、又は前立腺(例:良性前立腺肥大(BPH))などの非癌性過剰増殖性障害の治療のための、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、骨髄増殖性疾患(MPD)、骨髄増殖性腫瘍、真性多血症(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病(BCR-ABL1-陽性)、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病、又はマスト細胞症などの障害の治療に用いるための、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態の医薬組成物を提供する。本発明はまた、腫瘍血管新生、関節リウマチなどの慢性炎症性疾患、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化、乾癬、湿疹、及び強皮症などの皮膚疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性、及び血管腫として顕在化し得る哺乳類における脈管形成又は血管新生に関連する疾患の治療に用いるための組成物も提供する。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリ
ブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態を含む組成物で固形腫瘍癌を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、膵癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、頭頚部癌を含む扁平上皮癌、又は血液癌を治療する方法を提供する。一実施形態では、本発明は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態と、ベンダムスチン、ベネトクラクス、ベムラフェニブ、アブラキサン、エナシデニブ、ポマリドミド、レナリドマイド、アザシチジン、デシタビン、低メチル化剤、ゲムシタビン、アルブミン結合パクリタキセル、リツキシマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、ボルテゾミブ、マリゾミブ、イキサゾミブ、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガレート、サリノスポラミドA、カルフィルゾミブ、ONX 0912、CEP-18770、MLN9708、エポキソミシン、又はMG13から成る群より選択される第二の剤との組み合わせを用いて、膵癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、頭頚部癌、結腸直腸癌、又は血液癌を治療するための方法を提供する。一実施形態では、本発明は、CDK阻害剤と、ベンダムスチン、ベネトクラクス、ベムラフェニブ、アブラキサン、エナシデニブ、ポマリドミド、レナリドマイド、アザシチジン、デシタビン、低メチル化剤、ゲムシタビン、アルブミン結合パクリタキセル、リツキシマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブとの組み合わせを用いて、膵癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、頭頚部癌、結腸直腸癌、又は血液癌を治療するための方法を提供し、本明細書で述べるある特定の方法において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、マリゾミブ、イキサゾミブ、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガレート、サリノスポラミドA、カルフィルゾミブ、ONX 0912、CEP-18770、MLN9708、エポキソミシン、又はMG13から選択され、この場合、CDK阻害剤は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態である。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態を含む組成物で固形腫瘍癌を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、膵癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、頭頚部癌を含む扁平上皮癌を治療する方法を提供する。一実施形態では、本発明は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態を用いて、膵癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、頭頚部癌、及び結腸直腸癌を治療するための方法を提供する。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態を含む組成物で、哺乳類における炎症性障害、免疫障害、又は自己免疫障害を治療する方法に関する。選択される実施形態では、本発明はまた、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボル
シクリブの固体形態を含む組成物で疾患を治療する方法にも関し、この場合、疾患は、腫瘍血管新生、慢性炎症性疾患、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化、炎症性腸疾患、乾癬、湿疹、及び強皮症などの皮膚疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性、血管腫、神経膠腫及び黒色腫、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、嚢炎、脊椎関節炎、ぶどう膜炎、ベーチェット病、リウマチ性多発筋痛症、巨細胞性動脈炎、サルコイドーシス、川崎病、若年性特発性関節炎、化膿性汗腺炎、シェーグレン症候群、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎、クローン病、ループス、並びにループス腎炎から成る群より選択される。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態を含む組成物で、哺乳類における過剰増殖性障害を治療する方法に関し、この場合、過剰増殖性障害は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ性白血病(SLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ホジキンリンパ腫、B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)、バーキットリンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症(WM)、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、又は骨髄線維症から成る群より選択されるB細胞血液学的悪性疾患である。いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ遊離塩基多形又は本明細書で述べるいずれかのボルシクリブ塩多形を含むボルシクリブの固体形態を含む組成物で、哺乳類における過剰増殖性障害を治療する方法に関し、この場合、過剰増殖性障害は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、DLBCL(活性化B細胞(ABC)サブタイプ及び胚中心B細胞(GCB)サブタイプを含む)、濾胞中心リンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、緩徐進行性非ホジキンリンパ腫、及び成熟B細胞ALLから成る群より選択される。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるボルシクリブの固体形態も、各々本明細書に記載されるマロン酸ボルシクリブ、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブ、リン酸ボルシクリブ、シュウ酸ボルシクリブ、及びナパジシル酸ボルシクリブから選択される。
いくつかの実施形態では、過剰増殖性障害は、CLLのサブタイプである。CLLのいくつかのサブタイプが同定されている。CLLは、多くの場合、白血病細胞における免疫グロブリン重鎖可変領域(IgV)の変異状態に応じて分類される。R. N. Damle, et al., Blood 1999, 94, 1840-47; T. J. Hamblin, et al., Blood 1999, 94, 1848-54。IgV変異を有する患者は、一般的に、IgV変異のない患者よりも長く生存する。ZAP70の発現(陽性又は陰性)も、CLLの同定に用いられる。L. Z. Rassenti, et al., N. Engl. J. Med. 2004, 351, 893-901。CpG3のZAP-70のメチル化も、例
えばパイロシークエンシングよるCLLの同定に用いられる。R. Claus, et al., J. Clin. Oncol. 2012, 30, 2483-91;J. A. Woyach, et al., Blood 2014, 123, 1810-17。C
LLはまた、Binet基準又はRai基準による疾患ステージによっても分類される。J. L. Binet, et al., Cancer 1977, 40, 855-64;K. R. Rai, T. Han, Hematol. Oncol.
Clin. North Am. 1990, 4, 447-56。11q欠失、13q欠失、及び17p欠失などの他の一般的な変異は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)などの公知の技術を用いて評価することができる。一実施形態では、本発明は、ヒトにおけるCLLを治療する方法に関し、この場合、CLLは、IgV変異陰性CLL、ZAP-70陽性CLL、CpG3でZAP-70がメチル化されたCLL、CD38陽性CLL、17p13.1(17p)欠失を特徴とする慢性リンパ性白血病、及び11q22.3(11q)欠失を特徴とするCLLから成る群より選択される。
いくつかの実施形態では、過剰増殖性障害は、CLLであり、この場合、CLLは、リヒタートランスフォーメーションを受けたものである。リヒター症候群としても知られるリヒタートランスフォーメーションを評価する方法は、Jain and O’Brien, Oncology, 2012, 26, 1146-52に記載されている。リヒタートランスフォーメーションは、患者の5~10%に見られるCLLのサブタイプである。それは、CLLが高悪性度のリンパ腫に進行することを含み、一般に予後は悪い。
いくつかの実施形態では、過剰増殖性障害は、リンパ球増加症に対して感受性のある患者におけるCLL又はSLLである。一実施形態では、本発明は、ウイルス感染症、細菌感染症、原虫感染症、又は脾臓摘出後状態から成る群より選択される障害によって引き起こされるンパ球増加症を呈する患者において、CLL又はSLLを治療する方法に関する。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおけるウイルス感染症も、伝染性単核球症、肝炎、及びサイトメガロウイルスから成る群より選択される。一実施形態では、上述の実施形態のいずれにおける細菌感染症も、百日咳、結核、及びブルセラ症から成る群より選択される。
いくつかの実施形態では、過剰増殖性障害は、血液癌である。ある特定の実施形態では、血液癌は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性リンパ腫(ALL)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)などの白血病である。ある特定の実施形態では、血液癌は、B細胞リンパ腫又はT細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫である。B細胞リンパ腫としては、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、縦隔原発性B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、及び原発性中枢神経系リンパ腫が挙げられる。T細胞リンパ腫としては、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、くすぶり型慢性型、急性型、及びリンパ腫型のサブタイプがある成人T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外性ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、鼻型、I及びIIのサブタイプがある腸症関連腸管T細胞リンパ腫(EATL)、並びに未分化大細胞リンパ腫(ALCL)が挙げられる。
実施例
例1:多形スクリーニング-ボルシクリブHCl
本試験の目的は、ボルシクリブHClの多形の展望について調べ、さらなる開発のために最も適する形態を識別することであった。この目的のために、いくつかの結晶化法、並びに様々な溶媒及び溶媒混合物を用いて、広範な多形のスクリーニングを行った。ボルシクリブのアモルファス相をスクリーニング実験のための出発物質として用いて、偏りのない結晶化を起こさせた。
様々な溶媒及び溶媒混合物と共に異なる結晶化法を用いた。APIは、高い誘電率及び水素受容体の性質を有する溶媒中での溶解度が高く(DMF、DMSO、DMA、及びアルコール)、試験した他のすべての溶媒中では、APIの溶解度は低かった。多形スクリーニング実験のいくつかは、アモルファス相を出発物質として開始して、偏りのない結晶化を起こさせた。
特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、いくつかの結晶化実験から、1つの無水及び非溶媒和結晶相しか直接得られなかったものの(形態1)、このAPIは、非常の複雑な偽多形挙動を示して、20の新規な固体形態が識別されたものと考えられる。異なる形態の結晶化は、用いた溶媒だけでなく、結晶化法にも依存する。この理由のために、特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、異なる結晶化条件を用いた場合
に、さらに多くの溶媒和形態が存在する可能性があるものと考えられる。溶媒和形態のいくつかは、非化学量論的であり、異なる溶媒から得ることができる(等構造偽多形)。
特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、形態1は、本明細書で識別される独特の安定で非溶媒和及び無水形態であるものと考えられ、形態1が熱力学的に安定な形態であることが示唆される。現行の処理溶媒の混合物(メタノール、2-プロパノール、及びジイソプロピルエーテル)を調べる実験から、これらの溶媒混合物から析出する固相は、形態1であることが示されたが、但し、溶液の蒸発時は例外で、この場合は溶媒和形態が得られる。
ボルシクリブHClの20の独特の固体形態が識別され、その中の形態1は、非溶媒和無水形態であった(出発物質と同一であり、融点は260℃付近)。他の形態はすべて、溶媒和形態と思われた。脱溶媒時、これらの形態は、形態1に変換される(DSC曲線の260℃に見られる溶融イベントに基づいて)、又はアモルファスになると思われた。
現行の処理溶媒(メタノール、2-プロパノール、及びジイソプロピルエーテル)で行った実験では、スラリー変換又は冷却結晶化によって形態1が結晶化する結果となったが、溶液を蒸発させた場合は、溶媒和形態が回収された。
ボルシクリブHClのいくつかのバッチに対して行った分析特性評価から、XRPDによって、溶媒和形態に帰属される可能性がある小さい結晶相不純物が識別された。
本研究において、1つの無水非溶媒和結晶相のみが結晶化したが(形態1)、ボルシクリブは、非常に複雑な偽多形挙動を示した。異なる形態の結晶化は、用いた溶媒だけでなく、結晶化法にも依存する。溶媒和形態の多くは、非化学量論的であり、異なる溶媒から得ることができる(等構造偽多形)。
現行の処理溶媒の混合物(メタノール、2-プロパノール、及びジイソプロピルエーテル)を調べる実験から、これらの溶媒混合物から結晶化する固相は、形態1であることが示されたが、溶液の蒸発からは、溶媒和形態が得られる。したがって、ボルシクリブHClの製造時には、(微量の)溶媒和形態が形成するリスクが常に存在する。分析したバッチのいくつかで見られた相不純物の由来は、結晶化プロセス、ろ過、又は最終乾燥段階の過程での結晶化溶媒の蒸発に帰属され得る。
略語:AAC:加速劣化条件(40℃及びRH75%);Am:アモルファス;API:活性医薬成分;AS:貧溶媒添加実験の実験ID;DSC:示差走査熱量測定;ECP:蒸発実験の実験ID;HPLC:高速液体クロマトグラフィ;HR-XRPD:高解像度X線粉末回折;HT-XRPD:高スループットX線粉末回折;LCMS:液体クロマトグラフィ質量分析;MS:質量分析;PSM:冷却結晶化実験の実験ID;QSA:溶解度特定実験の実験ID;RH:相対湿度;RT:室温;SLP:溶媒平衡実験の実験ID;SM:出発物質;TCP:熱サイクル実験の実験ID;TGA:熱重量分析;TGMS:熱重量質量分析;VDL:蒸気拡散実験の実験ID;ACN:アセトニトリル;DMA:N,N-ジメチルアセトアミド;DMF:N,N-ジメチルホルムアミド;DMSO:ジメチルスルホキシド;IPA:2-プロパノール;MeOH:メタノール;TBME:tert-ブチルメチルエーテル;TFE:2,2,2-トリフルオロエタノール;THF:テトラヒドロフラン。
ボルシクリブHClの5つのバッチを、HR-XRPD(指数付けあり)、DSC、TGMS、及びLCMSを含む分析特性評価に用いた。結晶相の定量は、過去の試験から得たボルシクリブHClの形態1の単結晶データを用いたリートベルト解析によって記録された粉末パターンから行った。図1にXRPDパターンを重ねて示し、最終リートベルト
パラメータは、表1に示す。バッチはすべて形態1を含んでいた。1694M-1401及びP1446A-05_EN017のバッチは、純粋な形態1であった(他の結晶相は検出されなかった)。1694M-1301、1694M-1201、及びP1446A-05_EN027のバッチは、約1~2%の結晶不純物を含有していた。
Figure 2024038072000006
DSC曲線から、5つのバッチすべてが、開始温度257~258℃及びピーク温度263~264℃付近の吸熱イベントを示したことが示された(図2)。バッチのTGA分析から、残留溶媒/水分含有量が0.3~0.5%の変動であったことが分かった(図3)。分解は250℃付近で開始した。
APIの化学純度を、HPLC分析によって評価した。結果を表2にまとめて示す。HPLCアッセイに基づいて、化学純度は、すべてのバッチにおいて同等であった。バッチP1446A-05_EN017のHPLCクロマトグラムは、98.9%の面積%となった主ピーク中に小さいショルダーピークを示した。他のバッチは、100%の面積%となった1つのピークを示した。
Figure 2024038072000007
5つのバッチの特性評価から、熱挙動にも化学純度にも有意差は見られなかったが、XRPDにより、3つのバッチで2%未満の結晶不純物が示されたことが明らかとなった。
ボルシクリブHClのバッチ1694M-1301(およそ39グラム)を、多形スクリーニングのための出発物質として用いた。高スループットXRPD(HT-XRPD)を、参照の目的で図に示す。
DSC分析から、開始温度257℃及び263℃のTpeakである吸熱イベントが示
された(図5)。TGMS分析から、分解の前に、残留溶媒又は水分に起因する0.3%の質量減少が示された(図6)。分解は250℃付近で開始し、熱流シグナルでの吸熱イベントを伴っていた。
熱分析の結果から、出発物質(形態1)は、ボルシクリブHClの無水結晶相であることが示された。
APIの化学純度を、LCMS分析によって評価した。その結果から、固体の純度は100%(面積%)であったことが示された。陽イオンスペクトルは、イオン(M+H)に相当するm/zが470.1のイオンを示し、遊離塩基の分子質量469.8g/molと一致していた。
圧力下での形態1の物理的安定性を評価した。4つの実験を行った。約100mgのAPIを、打錠機(10トン、直径13mmのダイ)で、RTで1分間、RTで10分間、80℃で1分間、及び80℃で10分間にわたってプレスした。その後、サンプルをHR-XRPDによって分析した。XRPDパターンを図8に重ねて示す。すべてのサンプルが形態1を維持しており、固体の結晶性及び物理的外観に明確な変化はなく、形態1が、RT及び高温での圧力下で安定であることが示される。
ミリングプロセスの過程での形態1の物理的安定性を評価した。1つのサンプルを、1mm径のステンレス鋼球を用いたRetchグラインダーを用いて30Hzで5分間粉砕し、第二のサンプルを、乳鉢と乳棒で約5分間にわたって手作業で粉砕した。その後、これらのサンプルをHR-XRPDによって分析し、アモルファス含有量を算出した(出発物質が100%結晶であると仮定した)。手作業粉砕サンプルの結果を図9に示し、それは約10%のアモルファス含有量であった。機械粉砕サンプルの結果を図10に示し、それは約7%のアモルファス相を含有していた。他の結晶相は観察されなかった。
多形スクリーニング実験は、偏りのない結晶化を促進するために、アモルファス相で開始することが好ましい。したがって、アモルファスのボルシクリブHClを作製する試みを行った。APIの溶液を、メタノール/水の90/10、THF/水の90/10、及び1,4-ジオキサン/水の90/10で調製した。溶液を凍結乾燥し、得られた固体をHT-XRPDで分析した。実験の詳細は、20ページの§6.2.1に報告する。
凍結乾燥で得た固体のXRPDディフラクトグラムを、図11に示す。1,4-ジオキサン/水(90/10 体積/体積)及びTHF/水(90/10 体積/体積)から、アモルファス固体が回収された。メタノール/水(90/10 体積/体積)からは、出発物質とは異なる結晶固体が回収され、形態2と称した。
アモルファス物質を、TGMSで分析した。いずれのアモルファス固体も、約4%の溶媒を含有していた。1,4-ジオキサン/水は、凍結乾燥にとってより良好な溶媒混合物であることから、この溶媒系を、スクリーニング用のアモルファス物質の作製のために選択した。
溶解度試験
熱力学的溶解度を、振とうフラスコ法によって特定した。アモルファスAPIの懸濁液を、33の溶媒で調製した。続いて、固体を、24時間の連続撹拌下、RTで平衡化した。平衡化の後、母液の少量のアリコートをろ過し、HPLCで分析した。溶質の濃度を、APIの検量線に対して特定した。
溶解度値を、米国薬局方の分類(USP29)に従って、表3に順位付けして示す。APIは、DMA、DMF、及びDMSOには、400mg/mL超の溶解度で非常に可溶
性であった。APIは、アルコールに可溶性であった。長鎖アルコール中よりも短鎖アルコール中の方が溶解度が高く、すなわち、メタノール中の溶解度が230mg/mLであったのに対して、2-ブタノール中では10mg/mLであった。これら以外の溶媒ではすべて、溶解度は10mg/mL未満であった。これらの結果から、APIは、高い誘電率及び水素受容体の性質を有する溶媒中の方がより可溶性であることが示唆される。水ではゲルが形成された。
Figure 2024038072000008
多形スクリーニング
多形スクリーニングを、様々な溶媒及び溶媒混合物を用いた異なる結晶化技術を組み合わせることによって行った。
溶媒平衡実験を、RTで2週間と50℃で1週間との2つの温度で行った。懸濁液をアモルファスAPIで調製し、平衡時間の終了後、固体を母液から分離した。固体の一部分を、周囲条件で一晩乾燥してHT-XRPDで分析し、固体の第二の部分は、真空下(10mbar)、50℃で一晩乾燥した。
純溶媒からの蒸発結晶化実験を、RTでの溶媒平衡実験から、及び溶媒混合物からの飽和溶液から回収したろ過済み母液で設定した。母液を、周囲条件でゆっくり蒸発させ、続いて真空下、50℃でさらに乾燥した。
純溶媒からの冷却結晶化実験を、50℃で行った溶媒平衡実験から、及び溶媒混合物からの飽和溶液から回収したろ過済み母液で設定した。母液をゆっくり5℃まで冷却し、72時間にわたってエージングした。析出した固体を液相から分離し、真空下(10mbar)、50℃で一晩乾燥した。
熱サイクル実験による結晶化を、溶媒混合物中及び溶媒/水混合物中で行った。懸濁液をアモルファスAPIで調製し、5~50℃の間での3回の加熱及び冷却サイクルを含めた温度プロファイルに掛けた。
貧溶媒添加実験を、少量の(飽和)API溶液を20mLの貧溶媒に素早く添加することを意味する逆貧溶媒添加法に従って行った。
溶液中への蒸気拡散実験を、小バイアル中の溶解度が高かった溶媒によるAPIの飽和(に近い)溶液を用いて行った。開放バイアルを、2mLの貧溶媒を含有するそれよりも大きいバイアル中に入れた。バイアルをRTで2週間保存し、その後析出した固体を液体から分離した。
固体上への蒸気拡散を、アモルファスAPIを用いて行った。アモルファス固体を、室温で2週間にわたり、5つの異なる溶媒の蒸気に曝露した。アモルファスAPIを含有する1.5mLの開放HPLCバイアルを、2mLの溶媒を含有するそれよりも大きい容器中に入れた。
得られたすべての固体を、HT-XRPDで分析した。続いて、すべての固体を、加速劣化条件(40℃/RH75%、AAC)に、2日間にわたって曝露し、続いてHT-XRPDで再度分析した。
いくつかの新規なXRPDディフラクトグラムが、異なる結晶化条件から得られた。形態のリスト及び新規な形態が見出された結晶化条件を表4に示し、異なる形態の概要を以下に提示する。
出発物質と同一である形態1は、様々な溶媒及び結晶化法から見出された。形態1は、AACへの曝露時も安定であった。
形態2は、異なる種類の溶媒及び蒸気拡散法以外のほとんどすべての結晶化法から得られた安定な形態であった。
形態3は、ほとんどの場合、長鎖アルコール及びアルコール混合物中で行った実験で見られた。ほとんどの場合、形態3は、AACへの曝露時に不安定であり、形態13への変換が見られた。形態13が得られたのは、エタノール中での蒸発結晶化からの直接の結晶化による1回だけであった。
形態4及び形態5は、ほとんどの場合、純溶媒中での溶媒平衡及び熱サイクル実験で見
られ、AAC後は結晶性の低い形態である形態6に変換された。形態6は、水で形成されたゲルを乾燥することによっても得られた。
形態7は、RTでの溶媒平衡実験、及び1,2-ジメトキシエタン中での熱サイクルから得た。この形態は、AACへの曝露時も安定であった。
形態8は、ほとんどの場合、短鎖アルコール及びアルコール混合物で行った結晶化実験から回収した。形態8は、AACの過程で安定に維持された。
形態9は、DMFからのみ結晶化され、物理的に不安定であった。いくつかの固体形態の変換が見られた。DMF中で行った冷却結晶化実験からの真空乾燥固体は、形態10として識別した。形態10は、AACへの曝露後に形態20に変換された。形態20は、結晶化実験から直接見出されることはなかった。
形態11は、DMA中で行った実験から見出された不安定な形態であった。
形態12及び形態14は、アセトン/水及びアセトニトリル/水を用いた熱サイクル実験から見出された。両形態共にAACへの曝露時は安定であったが、形態12は、周囲条件下で乾燥した固体中で識別され、真空下の50℃で乾燥した場合に、形態14に変換された。
形態15は、DMF/1,4-ジオキサンからの溶液中への蒸気拡散から、及びメタノールからの冷却結晶化から得た。この形態は、AAC後に形態2に変換された。
形態16は、結晶化実験がDMSOを含む場合に常に得られ、AAC後に異なる形態に変換された。
形態17は、AAC後に形態13に変換される不安定な形態であり、TFE/ヘプタンによる貧溶媒添加実験から得た。
形態18は、DMF/酢酸イソプロピルを用いた貧溶媒実験から得られ、AACへの曝露時も安定に維持された。
形態19は、メタノール/ジイソプロピルエーテル(20/80)中での蒸発結晶化実験から得られ、AACの過程で安定であった。
Figure 2024038072000009
この試験中に見られた独特のXRPDディフラクトグラムを、図12A及び図12Bに示す。
新規な固体形態を、化合物の完全性及び形態の性質を確認するために、DSC、TGMS、及びHPLCでさらに分析した。各形態に対して、1つのサンプルをさらなる分析のために選択した。分析結果を本明細書で詳細に報告し、表5にまとめて示す。
結晶出発物質と同一である形態1は、結晶化実験から直接得られた唯一の非溶媒和無水形態であると思われた。他の形態はすべて、溶媒及び/又は水を含有していた。
形態7、10、16、及び19は、特定の溶媒から得たが、TGMS分析で見られた質量減少から、これらの形態が非化学量論的溶媒和物であることが示された。DSC分析で見られた熱イベントから、これらの形態の各々が、加熱時に形態1に変換され得ることが示された(260℃付近に見られる溶融イベントに基づいて)。
サイクルDSC実験を形態7に対して行って、無溶媒の形態を得ることができるかどうかを調べた。固体を、溶媒喪失の直後且つ第一の吸熱イベントの前である155℃まで加
熱した。155℃に加熱した後に得られた固体のXRPDは、実験前の固体のものと同じであった。乾燥固体に対するTGMS分析から、水の2.3%の質量減少が示された。おそらく、サンプルをDSCるつぼから取り出した後すぐに、固体が水を吸収したものと思われる。これらの結果から、形態7は1,2-ジメトキシエタン溶媒和及び/又は水和形態であり得ることが示唆される。
形態2、3、4、5、8、11、12、13、14、15、及び17は、異なる結晶化溶媒から得られた溶媒和形態であると思われたため、それらはおそらく、等構造溶媒和物であるものと思われる(異なる溶媒及び溶媒含有量で類似の結晶構造が得られる)。熱分析の結果から、形態3及び8は、脱溶媒時にアモルファスになることが示され、一方他の溶媒和形態は、形態1に変換され得ることが示された(260℃付近に見られる溶融イベントに基づいて)。
形態3及び8は、ほとんどの場合、アルコールから得られた。形態3は、多くの場合に形態13に変換され、このことは、形態13が水和形態又は混合溶媒和/水和物であり得ることを示唆している。
形態4は、いくつかの溶媒から得られた。形態4に対して行ったサイクルDSC実験から、形態7で見られたものに類似の挙動が示された。加熱固体のXRPDパターンは、形態4と僅かに異なっていた(形態4bと称する)。サイクルDSC後に回収された固体に対するTGMS分析から、約2%の質量減少が示され、このことは、固体が、周囲条件となった後すぐに水を吸着したことを示唆している。
形態12及び14は、アセトン/水及びアセトニトリル/水の混合物から得た。形態12は、真空乾燥すると形態14に変換された。固体サンプルを155℃(溶媒喪失の直後)まで加熱することによるさらなるサイクルDSC実験を、形態12及び14に対して行った。回収された固体の粉末パターンは、形態14に類似していた。サイクルDSC実験後に得られた固体に対するTGMS分析では、約1.9%の水を含有しており、このことは、形態14が溶媒和及び/又は水和形態であり得ることを示唆している。
形態6は、結晶性の低い形態であり、約0.5モル当量の水を含有していた。脱水後、固体はアモルファスとなった。
形態9及び18は、周囲条件で乾燥した固体でのみ識別され、真空乾燥すると他の形態に変換された。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、これらの形態は、おそらく準安定な溶媒和形態であると考えられる。
Figure 2024038072000010
物質及び方法
ボルシクリブHClの6つのバッチを提供した。各々250mgのバッチP1446A-05_EN017、P1446A-05_EN027、1694M-1201、1694M-1301、1694M-1401を、分析用だけに用い、39gのバッチ1694M-1301を、多形スクリーニングに用いた。他の化学物質は、Fisher Scientific、Sigma Aldrich、又はVWRから入手した。用いた化学物
質は、少なくとも研究グレードのものであり、HPLC移動相は、HPLCグレードであった。
アモルファス固体を作製する試みを行った。APIを標準的なHPLCバイアルに秤量し、溶媒のアリコートをAPIが溶解するまで添加した。この溶液を液体窒素中で凍結し、凍結乾燥機(Alpha 2-4 LD,Christ)を用いて高真空下に置いた。固体をさらに、真空下(10mbar)、50℃で24時間乾燥した。得られた固体を、HT-XRPDで分析した。実験条件及び結果を表6に示す。アモルファス物質をさらにTGMSで分析して、溶媒含有量を特定した。
実験ID Gen12のアモルファスバッチを、スクリーニング実験のための出発物質として用いた。溶液を1.8mLのガラスバイアルに分け、続いて凍結乾燥して、バイアルあたり約40mgのアモルファスAPIを得た。
Figure 2024038072000011
溶解度の特定
33の溶媒中での溶解度を特定した。1.8mLガラスバイアル中のアモルファス固体に、薄い懸濁液が得られるまで少量ずつある体積の溶媒を添加した(表7)。懸濁液を、RTで撹拌を継続しながら平衡化させた。24時間後、母液の少量のアリコートを取り、0.2μMのPTFEシリンジフィルターでろ過した。溶質の濃度をHPLC分析で特定した。アセトニトリル/水 25/75(体積/体積)中の2つの独立したストック溶液から検量線を作成した。
懸濁液の残りは、2週間にわたるRTでの溶媒平衡実験のために用いた。
Figure 2024038072000012
RT及び50℃での平衡実験
33の溶媒中で溶媒平衡実験を行った。約40mgのアモルファスAPIを含有するバイアルに、薄い懸濁液が得られるまで少量ずつ溶媒を添加した。懸濁液を、2週間にわたってRTで(表8)及び1週間にわたって50℃で(表9)撹拌を継続しながら平衡化させた。
平衡時間の後、固体を遠心分離で分離した。固体の一部分を回収し、96ウェルプレートに取り、周囲条件で一晩乾燥した。残りの固体は、真空下で一晩乾燥し(50℃及び10mbar)、続いて96ウェルプレートに取った。すべての固体をHT-XRPDで分析した。続いて、すべての固体を加速劣化条件に2日間にわたって曝露し(AAC、40℃/RH75%)、HT-XRPDで再度分析した。
Figure 2024038072000013
Figure 2024038072000014
蒸発結晶化実験
純溶媒からの蒸発結晶化実験では、RTでの溶媒平衡実験から回収した母液を用いた。溶媒混合物からの蒸発結晶化実験では、新たに懸濁液を調製した。
母液を、0.2μmのPTFEシリンジフィルターを用いてろ過した。溶液をバイアル(キャップ付き)に移し、周囲条件下に置いて、3日間にわたって溶媒を周囲条件でゆっくり蒸発させ、続いてすべての溶媒が蒸発するまで50℃で真空下に置いた。得られた固
体を、HT-XRPDで分析した。続いて、固体を、加速劣化条件(40℃/RH75%)に、2日間にわたって曝露し、HT-XRPDで再度分析した。
Figure 2024038072000015
Figure 2024038072000016
冷却結晶化実験
純溶媒からの冷却結晶化実験を、50℃での溶媒平衡実験から回収した母液を用いて行った。溶媒混合物からの冷却結晶化実験では、新たに懸濁液を調製した。
母液を、0.2μmのPTFEシリンジフィルターを用いて50℃でろ過した。溶液を標準的なHPLCバイアルに移し、Crystal16(商標)反応器中でゆっくり冷却した。溶液を、1℃/時間で5℃まで冷却し、5℃で72時間エージングした。析出した固体を遠心分離で分離し、真空下で一晩乾燥し(50℃/10mbar)、HT-XRPDで分析した。
析出が起こらなかった母液及び溶液は、周囲条件に置いて溶媒を蒸発させ、続いて真空下で蒸発させた。回収された固体を、HT-XRPDで分析した。
続いて、すべての固体をAACに2日間にわたって曝露し、HT-XRPDで再度分析した。
Figure 2024038072000017
Figure 2024038072000018
熱サイクル
選択された塩の多形挙動を、6つの溶媒中での熱サイクルによって評価した。(アモルファス)塩を入れたバイアルに、懸濁液が得られるまで溶媒のアリコートを添加した。実験の詳細は、表12に示す。
バイアルを、5~50℃の間での3回の熱サイクルを含む温度プロファイルに掛け、RTで2日間にわたってエージングした。図13を参照されたい。温度プロファイルの後、サンプルを真空下(10mbar)、RTで24時間乾燥した。サンプルを回収し、HT-XRPDで分析した。続いて、固体を、加速劣化条件(AAC、40℃/RH75%)に2日間にわたって曝露し、HT-XRPDで再度分析した。
Figure 2024038072000019
貧溶媒
貧溶媒添加実験を、逆貧溶媒添加法に従って行った。ボルシクリブHClの高濃縮溶液を、APIが良好に可溶性である溶媒中で調製した。溶液を、20mLの貧溶媒(APIが可溶性ではない)に、激しく撹拌しながら直ちに添加した。析出した固体を遠心分離で分離し、固体の一部分を回収し、周囲条件下で乾燥した。固体の残りの部分は、真空下(
10mbar)、50℃で24時間乾燥した。続いて、固体を、加速劣化条件(AAC、40℃/RH75%)に2日間にわたって曝露し、HT-XRPDで再度分析した。
Figure 2024038072000020
溶液中への蒸気拡散
ボルシクリブHClの飽和(に近い)溶液を、1.5mL又は8mLガラスバイアル中の溶媒におよそ50mgのAPIを溶解することによって調製した。エタノール及びTHF中ではAPIは完全には溶解しなかったため、これらの懸濁液をろ過して飽和溶液を得た。小バイアル中の溶液を、2mLの貧溶媒を含有するそれよりも大きいバイアル中に入れた(表14参照)。バイアルをRTで2週間保存し、その後析出した固体を液体から注意深く回収し、HT-XRPDで分析した。固体が析出しなかった場合は、溶媒を周囲条件下で蒸発させ、続いて真空下(10mbar/50℃)で蒸発させ、回収された固体をXRPDで分析した。続いて、すべての固体をAAC(40℃/RH75%)に曝露し、XRPDで再度分析した。
Figure 2024038072000021
固体上への蒸気拡散
固体上への蒸気拡散実験を、出発物質としてアモルファスのボルシクリブHClを用いて行った。約20mgのアモルファスAPI含有する小バイアルを、2mLの溶媒を含有するそれよりも大きいバイアル中に入れた(表15参照)。バイアルをRTで2週間保存し、その後固体をHT-XRPDで分析した。溶媒が小バイアル中にトラップされた場合、溶媒を真空下(10mbar/50℃)で蒸発させ、回収された固体をXRPDで分析した。続いて、すべての固体をAAC(40℃/RH75%)に曝露し、XRPDで再度分析した。
Figure 2024038072000022
X線粉末回折
XRPDパターンは、Crystallics T2高スループットXRPD装置を用いて得た。強度及び形状の変動に対して補正したVÅNTEC-500ガス面積検出器を備えたBruker D8 Discover General Area Detector Diffraction System(GADDS)にプレートを載せた(製品シート XRD 37、DOC-S88-EXS037V3、図297)。測定精度(ピーク位置)の較正は、NIST SRM1976標準(コランダム)を用いて行った。
データ収集は、XRPDパターンの最も特徴的な部分である1.5°~41.5°の2θ領域で単色CuKα線を用いて室温で行った。各ウェルの回折パターンを、2つの2θ範囲(第一フレームでは1.5°≦2θ≦21.5°、第二フレームでは19.5°≦2θ≦41.5°)で、各フレームの露光時間を45秒として収集した。バックグラウンドの除去又は曲線の平滑化は、XRPDパターンに適用しなかった。
XRPD分析時に用いたキャリア物質は、X線に対して透過性であり、バックグラウンドに対する寄与はごく僅かであった。
TGA/SDTA及びTGMS分析
結晶からの溶媒又は水の喪失に起因する質量減少を、TGMS分析で特定した。TGA/DSC 3+ STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)での昇温時にサンプル重量をモニタリングすることで、重量対温度曲線を得た。TGA/DSC 3+の温度較正は、インジウム及びアルミニウムを用いて行った。サンプル(およそ2mg)を100μLのアルミニウムるつぼに秤量し、密封した。シールにピンホールをあけ、TGA中、10℃/分の昇温速度で25から300℃までるつぼを加熱した。パージには、乾燥Nガスを用いた。
TGAサンプルから発生したガスを、Omnistar GSD 301 T2質量分析計(Pfeiffer Vacuum GmbH,Germany)で分析した。この
MSは、四重極質量分析計であり、0~200amuの範囲内の質量が分析される。
DSC分析
溶融特性は、熱流束型DSC3+ STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)で記録したDSCサーモグラムから得た。DSC3+は、インジウム(m.p.=156.6℃;δH=28.45J/g)及び亜鉛(m.p.=419.6℃;δH=107.5J/g)の小片を用いて、温度及びエンタルピーについて較正した。サンプル(およそ2mg)を、標準的な40μLのアルミニウムパンに密封し、ピンホールをあけ、DSC中、10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで加熱した。測定中は、流量50mL/分の乾燥Nガスを用いてDSC装置をパージした。
LCMS分析法
方法の名称:S18099_01;HPLCシステム:Agilent 1200;検出器1:264nmに設定したDAD;検出器2:陽イオンスキャンモードのHP1100 LC/MSD。
HPLC条件:オートサンプラー温度:15℃;カラム:Waters Sunfire C18(100×4.6mm;3.5μm);カラム温度:35℃;フローセル:経路長10mm;勾配:表16;移動相A:0.1%TFAの水溶液;移動相B:0.1%TFAのアセトニトリル溶液;流量:1.0ml/分。
Figure 2024038072000023
サンプル:濃度:およそ1mg/ml;溶媒:水:アセトニトリル:TFA(50:50:0.1 体積/体積/体積);注入量:5μL。
化合物の完全性は、クロマトグラムの「注入ピーク」以外の各ピーク面積と合計ピーク面積とから以下のようにして算出されるピーク面積パーセントとして表される。
Figure 2024038072000024
目的の化合物のピーク面積パーセントは、サンプル中の構成成分の純度の指標として用いられる。
形態1
エタノール中で行った溶媒平衡実験から、形態1が得られ、出発物質と比較した特性評価に用いた(実験ID SLP19)。形態1は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に安定であった。実験ID SLP19の物質の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図14に示す。形態1のTGMS分析(図15)は、25~220℃の温度範囲での0.2%の質量減少を示した。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、この質量減少は、おそらく残留溶媒又は水分に関連す
るものであったと考えられる。熱流曲線から、260℃付近で単一の吸熱イベントが見られており、特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、これは、溶融及び分解に関連するものと考えられる。形態1のDSC曲線(図16)において、259℃で単一の吸熱イベントが記録されており、特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、これはおそらく、形態1の溶融及び分解に関連するものと考えられる。図17に示す形態1のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態2
1,4-ジオキサン/水 95/5(体積/体積)で行った熱サイクル実験から、形態2が得られ、特性評価に用いた(実験ID TCP2)。形態2は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に安定であった。実験ID TCP2の物質の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図18に示す。形態2のTGMS分析(図19)は、25~150℃の温度範囲で5.4%の総質量減少を示した。この質量減少は、0.3モル当量の1,4-ジオキサンに等しい。形態2は、異なる種類の溶媒から見出され、特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、非化学量論的等構造溶媒和物であると考えられる。形態2のDSC曲線(図20)において、質量減少に関連する2つのブロードな吸熱イベントが、25~150℃に記録された。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、165℃の小さい吸熱イベントは、形態1への遷移であった可能性があり、なぜなら、259℃に小さい吸熱イベント(形態1の溶融と一致する)が見られたからである。図21に示す形態2のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態3
2-プロパノール/水 95/5(体積/体積)で行った熱サイクル実験から、形態3が得られ、特性評価に用いた(実験ID TCP2)。形態3は、周囲条件で乾燥し、真空で乾燥した固体から得られたが、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に不安定であり、形態3+13の混合物に変化した。周囲条件で乾燥し、真空で乾燥した実験ID TCP13の固体の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図22に示す。形態3のTGMS分析(図23)は、80~160℃の温度範囲での13.2%の質量減少を示し、これは、特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、熱流シグナル中の大きい吸熱イベント(Tpeak 103℃)に伴うIPAの喪失(1.3当量のIPA)に起因するものと考えられる。質量減少後に溶融イベントが見られておらず、このことは、特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、溶媒喪失後に物質がアモルファスとなったことを示唆している。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、形態3は、異なるアルコールから見出されたことから、非化学量論的等構造溶媒和物であると考えられる。形態3のDSC曲線(図24)において、103℃にブロードな吸熱イベントが記録されており、特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、これは、IPAの喪失に関連するものと考えられる。非常に小さい吸熱イベントが、形態1の溶融と一致する259℃に見られたが、物質全体は、溶媒喪失後はおそらくアモルファスであると思われる。図25に示す形態3のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態4
テトラヒドロフラン中で行った溶媒平衡実験から、形態4が得られ、特性評価に用いた(実験ID SLP30)。周囲条件下で乾燥した固体(形態4a)のパターンは、真空下で乾燥した固体(形態4)のパターンと僅かに異なっていた。形態4(a)は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に不安定であり、形態6に変換された。実験ID SLP30の固体の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図26に示す。形態4のTGMS分析(図27)は、25~160℃の温度範囲
での4.3%の質量減少を示した。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、質量減少は、おそらくTHFの喪失(0.3当量のTHF)に関連するものであったと考えられる。質量減少後、220℃付近に発熱再結晶イベントが見られ、続いて260℃付近で溶融及び分解が見られた(形態1の溶融)。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、形態4は、異なる溶媒から得られたことから、非化学量論的等構造溶媒和物であると考えられる。形態4のDSC曲線(図28)において、3つの吸熱イベントが記録されており、このうちの最初の2つは、溶媒喪失の過程で発生している。溶媒喪失直後の温度の157℃に小さい吸熱イベントが見られる。発熱再結晶イベントが217℃に見られ、続いて260℃で溶融(形態1の溶融)及び分解が見られた。形態4の固体を140℃まで加熱する(溶媒除去後)サイクルDSC実験を行った。固体を回収してXRPD及びTGMSで分析し、類似のパターン(形態4b)及び2%の水含有量を示した。図31に示す形態4のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態5
1,4-ジオキサン中で行った熱サイクル実験から、形態5が得られ、特性評価に用いた(実験ID TCP8)。実験ID TCP8の周囲条件で乾燥した固体は、形態4a及び5の物理的混合物であった。真空乾燥した固体は、形態5であった。形態5は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に不安定であり、形態6に変化した。実験ID TCP8の固体の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図32に示す。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、形態5のTGMS分析(図33)は、25~160℃の温度範囲で、1,4-ジオキサンの喪失に起因する9.4%の総質量減少を示した(0.6モル当量の1,4-ジオキサン)ものと考えられる。質量減少は、2つの吸熱イベントを伴って2段階で発生した。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、この物質は、おそらく溶媒喪失後にアモルファスとなったものと考えられる。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、形態5は、ジオキサン及び2-メチルTHFによるサンプルから得られたことから、おそらく等構造溶媒和物であると考えられる。形態5のDSC曲線(図34)において、おそらく溶媒喪失に関連すると思われるブロードな吸熱イベントが、110℃に記録された。非常に小さい吸熱イベントが、形態1の溶融と一致する259℃に見られたが、おそらく、固体全体は、溶媒除去後にアモルファスとなったと思われる。図35に示す形態5のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態6
水中、50℃で行った溶媒平衡実験から、形態6が得られ、特性評価に用いた(実験ID SLP65)。形態6は、結晶性の低い物質であり、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に安定であった。実験ID SLP65の物質の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図36に示す。形態6のTGMS分析(図37)は、25~160℃の温度範囲での2.1%の質量減少を示した。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、質量減少は、おそらく水の喪失(0.6モル当量の水)に関連するものであり、物質は、加熱時の水の喪失後にアモルファスとなったものと考えられる。形態6は、水でのサンプルから、AACへの曝露後に得られた。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、形態6は、半水和物である可能性があると考えられる。形態6のDSC曲線(図38)において、水の喪失に関連するブロードな吸熱イベントが、151℃に記録された。220℃より高温で見られる熱イベントは、分解プロセスに関連する。図39に示す形態6のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態7
1,2-ジメトキシエタン中で行った熱サイクル実験から、形態7が得られ、特性評価に用いた(実験ID TCP5)。実験ID TCP5からの周囲乾燥及び真空乾燥のいずれの固体も、形態7であった。形態7は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に安定であった。実験ID TCP5の固体の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図40に示す。形態7のTGMS分析(図41)は、25~170℃の温度範囲での2.0%の質量減少を示した。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、質量減少は、おそらく1,2-ジメトキシエタンの喪失と関連し、水の喪失も関連している可能性があるものと考えられる(質量減少は、0.1モル当量の1,2-ジメトキシエタンに等しい)。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、この物質は、溶媒喪失後に再結晶化して形態1となったものと考えられる。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、形態7は、1,2-ジメトキシエタンによるサンプル中でしか見られなかったことから、おそらく非化学量論的ジメトキシエタン溶媒和物又は混合ジメトキシエタン溶媒和物/水和物であると考えられる。形態7のDSC曲線(図42)において、溶媒喪失に起因する弱いブロードな吸熱が、25~160℃に見られた。吸熱イベントが172℃に記録され、発熱再結晶イベントは216℃であり、続いて262℃に吸熱イベントが記録された(形態1の溶融)。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、おそらく形態7は、加熱時に形態1に変換されるものと考えられる。(安定な)非溶媒和形態が溶媒喪失後に得られるかどうかを見るために、形態7の固体に対してサイクルDSC実験を行った。155℃までのサイクルDSC実験後に回収された固体を、XRPD及びTGMSで分析した。XRPDパターンは同じであり、TGMS分析からは、2.3%の質量減少が見られた(特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、これはおそらく、吸着された水であったものと考えられる)(図43)。図44に示す形態7のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態8
メタノール/アセトン 75/25(体積/体積)で行った蒸発実験から、形態8が得られ、特性評価に用いた(実験ID ECP34)。形態8は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に安定であった。実験ID ECP34の物質の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図45に示す。形態8のTGMS分析(図46)は、25~130℃の温度範囲での5.3%の質量減少を示した。質量減少は、水及び/又はアセトンの喪失に関連していた(0.5当量のアセトン又は1.5当量の水)。熱流曲線から、質量減少と一致するブロードな吸熱イベントが見られた。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、形態8は、異なる溶媒からのサンプル中に見られたことから、おそらく非化学量論的等構造溶媒和物/水和物であると考えられる。形態8のDSC曲線(図47)において、おそらく溶媒喪失に関連すると思われるブロードな吸熱イベントが記録され、続いて溶融に帰属される可能性のある小さい吸熱イベントが147℃に見られた。図48に示す形態8のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態10(及び形態9)
N,N-ジメチルホルムアミド中で行った冷却結晶化実験から、形態10が得られ(真空下での乾燥後)、特性評価に用いた(実験ID PSM60)。周囲条件で乾燥した固体は、形態9であり、真空下で乾燥した固体は、形態10であった。形態9及び形態10は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に不安定であり、形態20に変化した。実験ID PSM60の固体の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図49に示す。形態10のTGMS分析(図50)は、25~200℃の温度範囲での20.8%の質量減少を示した。質量減少は、おそらくDMFの喪失(1.8モル当量のDMF)に関連するものであったと思われる。熱流曲線から、質量減少に起因する吸熱イベントが、80℃付近で見られ、第二の吸熱イベントが、250℃付近
で見られた(おそらく形態1の溶融と思われる)。形態10は、DMFからのサンプル中に見られたことから、非化学量論的DMF溶媒和物である。形態10のDSC曲線(図51)において、おそらく溶媒喪失に関連すると思われる吸熱イベントが、84℃に記録された。第二の吸熱イベントが、256℃に見られ、これはおそらく形態1の溶融に伴うものと思われる。図52に示す形態10のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態11
N,N-ジメチルアセトアミド中で行った冷却結晶化実験から、形態11が得られ、特性評価に用いた(実験ID PSM59)。形態11は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に不安定であり、形態2に変化した。さらに真空下、50℃で72時間乾燥すると、固体はアモルファスとなった。実験ID PSM59の物質の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図53に示す。形態11のTGMS分析(図54)は、25~230℃の温度範囲での9.1%の質量減少を示した。質量減少は、おそらくDMAの喪失(0.6モル当量のDMA)に関連するものであったと思われる。熱流曲線から、質量減少と一致するブロードな吸熱イベントが見られた。第二の吸熱イベントが、250℃付近に見られた(おそらく形態1の溶融と思われる)。形態11は、DMAからのサンプル中に見られたが、他の溶媒からは他の形態との混合物で見られる場合もあったため、おそらく非化学量論的等構造溶媒和物であると思われる。形態11のDSC曲線(図55)において、おそらく溶媒喪失に起因すると思われる吸熱イベントが、85℃に記録された。第二の吸熱イベントが、257℃付近に見られ、これは、形態1の溶融に帰属される。図56に示す形態11のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態12
アセトニトリル/水 90/10(体積/体積)で行った熱サイクル実験の母液の蒸発後に、形態12が得られ、特性評価に用いた(実験ID TCP20_ML)。形態12は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に安定であった。実験ID TCP20_MLの物質の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図57に示す。形態12のTGMS分析(図58)は、25~200℃の温度範囲での5.9%の質量減少を示した。質量減少は、おそらくアセトニトリルの喪失(0.8モル当量のアセトニトリル)に関連するものであったと思われる。熱流曲線から、質量減少に帰属されるブロードな吸熱イベントが見られた。分解は220℃付近で開始した。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、形態12は、アセトニトリル/水及びアセトン/水からの(穏やかに乾燥した)サンプル中に見られたことから、おそらく非化学量論的等構造溶媒和物であると考えられる。形態12のDSC曲線(図59)において、溶媒喪失に関連する吸熱イベントが25~180℃に記録され、形態1の溶融に帰属される可能性のある小さい吸熱イベントが255℃に見られた。図60に示す形態12のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態13
エタノール中で行った冷却蒸発結晶化実験から、形態13が得られ、特性評価に用いた(実験ID PSM52)。形態13は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に安定であった。実験ID PSM52の物質の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図61に示す。形態13のTGMS分析(図62)は、25~220℃の温度範囲での6.3%の質量減少を示した。利用できるサンプルの量が少なかったことから、質量減少の過程でその溶媒が放出されたかは明確ではない(6.3%は1.9当量の水に等しい)。形態13のDSC曲線(図63)において、質量減少に関連するいくつかのブロードな吸熱イベントが記録され(25~170℃の温度範囲)
、最後には、小さい吸熱イベントが258℃に見られた(形態1の溶融に起因する)。図64に示す形態13のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態14
アセトニトリル/水 90/10(体積/体積)で行った熱サイクル実験から、真空乾燥した固体中に形態14が得られ、特性評価に用いた(実験ID TCP20)。周囲条件で乾燥した固体は、形態12であり、真空下で乾燥した固体は、形態14であった。形態14は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に安定であった。実験ID TCP20の固体の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図65に示す。形態14のTGMS分析(図66)は、25~170℃の温度範囲での2.5%の少しずつの質量減少を示した。この質量減少は、0.3モル当量のアセトニトリルに等しい。熱流曲線から、質量減少の直後、165℃に吸熱イベントが見られた。250℃付近に見られる吸熱イベントは、おそらく形態1の溶融に関連すると思われる。形態14は、アセトニトリル/水及びアセトン/水からの厳しく乾燥したサンプル中に見られたことから、おそらく非化学量論的等構造溶媒和物であると思われる。形態14のDSC曲線(図67)において、吸熱イベントが172℃に記録され、小さい吸熱イベントが258℃に見られた(形態1の溶融に起因する)。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、おそらく形態14は、溶媒喪失後に形態1に変換されるものと考えられる。図68に示す形態14のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態15
N,N-ジメチルホルムアミド/1,4-ジオキサン中で行った液体中への蒸気拡散実験から、形態15が得られ、特性評価に用いた(実験ID VDL8)。形態15は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に不安定であり、形態2及び1の混合物に変化した。実験ID VDL8の固体の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図69に示す。形態15のTGMS分析(図70)は、25~220℃の温度範囲での13.2%の質量減少を示した。質量減少は、おそらくDMFの喪失(1モル当量のDMF)に関連するものであったと思われる。熱流曲線から、質量減少と一致する吸熱イベントが見られ(70℃)、続いて別の吸熱イベントが、250℃付近で見られた(形態1の溶融)。形態15は、ほとんどの場合DMFを用いた実験から得られたが、形態15は、他の溶媒から他の形態との混合物で見られる場合もあったため、おそらく等構造溶媒和物であると思われる。形態15のDSC曲線(図71)において、おそらく溶媒喪失に関連すると思われる吸熱イベントが、77℃に記録された。256℃での最後の吸熱は、形態1の溶融に相当する。図72に示す形態15のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態16
ジメチルスルホキシド中で行った蒸発実験から、形態16が得られ、特性評価に用いた(実験ID ECP18)。形態16は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に安定であった。実験ID ECP18の物質の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図73に示す。形態16のTGMS分析(図74)は、25~240℃の温度範囲での16.6%の質量減少を示した。質量減少は、おそらくDMSOの喪失(1.3当量のDMSO)に関連するものであったと思われる。熱流曲線から、質量減少と一致するブロードな吸熱イベントが見られた。最後の吸熱イベントが、250℃付近に見られ、おそらく形態1の溶融に関連すると思われる。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、形態16は、DMSOを含有するサンプル中に見出されたことから、非化学量論的DMSO溶媒和物であると考えられる。形態16のDSC曲線(図75)において、おそらく溶媒喪失に関連すると思われる吸熱イベントが、102
℃に記録された。256℃での最後の吸熱は、形態1の溶融に相当する。図76に示す形態16のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態17
2,2,2-トリフルオロエタノール/ヘプタン中で行った貧溶媒実験から、形態17が得られ、特性評価に用いた(実験ID AS3)。周囲乾燥及び真空乾燥のいずれの固体も、形態17であった。形態17は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に不安定であり、形態13に変化した。実験ID AS3の固体の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図77に示す。形態17のTGMS分析(図78)は、25~200℃の温度範囲での16.9%の質量減少を示した。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、質量減少はおそらく、段階的に放出された溶媒の喪失(16.9%は、1モル当量のヘプタン又はTFEに等しい)に関連するものであったと考えられる。熱流曲線から、質量減少と一致する3つの吸熱イベントが見られた。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、形態17は、おそらく化学量論的TFE又はヘプタン溶媒和物であると考えられる。形態17のDSC曲線(図79)において、おそらく溶媒喪失に関連すると思われる3つの吸熱イベントが、97、135、及び153℃に記録された。小さい吸熱イベントが、257℃に見られ、これは、形態1の溶融に起因する。図80に示す形態17のHPLCクロマトグラムから、化学純度100%(面積パーセント)のAPIの存在が明らかとなった。
形態18
N,N-ジメチルホルムアミド/酢酸イソプロピル中で行った貧溶媒実験から(実験ID
AS7)、形態18が、周囲条件で乾燥した固体中に得られた。真空下での乾燥中に、固体はアモルファスとなった。形態18は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露中に、低い結晶性となった。実験ID AS7の物質の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図81に示す。
形態19
メタノール/ジイソプロピルエーテル 20/80(体積/体積)で行った蒸発実験から、形態19が得られ、特性評価に用いた(実験ID ECP45/PSM13)。形態19は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に物理的に安定であった。実験ID ECP45/PSM13の物質の、AACへの曝露前後でのHT-XRPDパターンを、図82に示す。形態19のTGMS分析(図83)は、25~120℃の温度範囲での4.5%の質量減少を示した。質量減少は、おそらくジイソプロピルエーテル(0.23モル当量のジイソプロピルエーテル)に関連するものであったと思われる。熱流曲線から、質量減少と一致するブロードな吸熱イベントが見られた。溶媒喪失後、形態1への発熱再結晶イベントが見られ、続いて、形態1の溶融が見られる(250℃付近の吸熱)。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、形態19は、おそらく非化学量論的溶媒和物であると考えられる。
例2:多形スクリーニング-ボルシクリブ塩
本試験の目的は、ボルシクリブHClと比較して良好な及び/又は異なる物理化学的特性を有する別の選択肢としてのボルシクリブの塩を識別することであった。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、HCl塩は、複雑な偽多形挙動を有し、水性媒体中でゲル化し易いものと考えられる。本試験で提示する塩のスクリーニングは、25の酸性対イオンを含み、THF、エタノール、及びアセトン中での飽和溶液法に従って行った。
一般的略語:AAC:加速劣化条件(40℃及びRH75%);Am:アモルファス;
API:活性医薬成分;CI:対イオン;DSC:示差走査熱量測定;HPLC:高速液体クロマトグラフィ;HR-XRPD:高解像度X線粉末回折;HT-XRPD:高スループットX線粉末回折;LCMS:液体クロマトグラフィ質量分析;MS:質量分析;RH:相対湿度;RT:室温;SM:出発物質;SSm:塩スクリーニング実験の実験ID;TGA:熱重量分析;TGMS:熱重量質量分析;EtOH:エタノール;THF:テトラヒドロフラン。
出発物質の特性評価
薄黄色粉末として入手可能であるおよそ5グラムのボルシクリブ遊離塩基(図84)を用いた。参照の目的で、出発物質を、XRPD、DSC、TGMS、LCMS、及びH-NMRによって分析した。高スループットXRPD(HT-XRPD)分析により、出発物質の結晶性が確認された(図85)。結晶出発物質を、形態Aと称した。DSC分析(図86)は、99℃での小さい吸熱イベント、続いて214℃での第二の小さい吸熱イベント、及び225℃での最後の溶融を示した。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、これらの小さい吸熱イベントは、遊離塩基の多形が2つ以上存在し得ることを示唆しているものと考えられる。TGMS分析は(図87)、240℃付近での分解の前に、0.3%の質量減少を示した。この質量減少は、水に関連し、残留溶媒にも関連している可能性がある(100℃での小さい熱イベントの過程で放出)。熱流シグナルは、DSC曲線に類似し、215℃にシャープな吸熱イベントを示し、その後ボルシクリブ遊離塩基の溶融に帰属され得る熱分解を示した。遊離塩基の化学純度を、HPLC分析によって評価した(図88)。その結果から、固体の純度は99.3%(面積%)であったことが示された。参照の目的でH-NMRスペクトルを記録し、これを図89に示す。2.47ppmでのピーク(塩基性N原子と結合したCH基のプロトン)は、塩形成の場合に最も強い共鳴シフトを示す。特性評価の結果は、出発物質が非溶媒和無水固体形態であることを示した。
溶媒の選択
遊離塩基のおよその溶解度を、溶媒添加法によっていくつかの有機溶媒(表17)中で評価した。約5mgの遊離塩基に、溶媒のアリコートを、完全な溶解が見られるまで、又は1mg/mL未満の濃度に到達するまで添加した。2mLまでは100μLのアリコートを用い、続いて8mLまで1mLのアリコートを用いた。遊離塩基は、THFには可溶性であり、メタノール、エタノール、及びアセトンには少し可溶性であった。他の溶媒では、遊離塩基の溶解度は、10mg/mL未満であり、一方水の場合、ボルシクリブは実質的に不溶性であった。溶解度の結果に基づいて、いくつかの実施形態では、塩形成のために選択した結晶化溶媒は、THF、エタノール、及びアセトンであった。
Figure 2024038072000025
対イオン
塩スクリーニングに用いた酸性対イオンを、表18に挙げる。考え得る塩形態の命名には、対イオンの略語を用いた。対イオンは、1モル当量で用い、イオン化部位が2つある酸も、0.5モル当量で用いた。
Figure 2024038072000026
温度プロファイル
塩スクリーニング実験のための温度プロファイルを選択するために、溶液中の遊離塩基の熱安定性について試験した。遊離塩基の溶液を、THF、エタノール、及びアセトンで調製し、3つのバイアルに分割した。バイアルを、RTで24時間、並びに50℃及び80℃で1時間置いた。溶液を、HPLCで分析した。出発物質と比較して、化学純度に有意な違いは見られなかった。したがって、遊離塩基は、溶液中で熱的に安定であると考えた。
塩スクリーニング
塩スクリーニングを、飽和溶液法を用いて行った。遊離塩基の飽和溶液を、THF、エタノール、及びアセトン中、50℃で調製した。対イオン水溶液のアリコートを添加した結果、遊離塩基:対イオンの化学量論比1:1.1又は1:0.55を得た。
バイアルを、50℃で1時間インキュベートし、次に5℃までゆっくり冷却し、続いて
5℃で72時間にわたってエージングした。固体が析出した場合は、固体を分離し、真空下、50℃で乾燥した。すべての液相を、周囲条件で蒸発させ、続いて得られた固体を、真空下で乾固するまで乾燥させた。すべての得られた固体を、XRPDで分析した。続いて、固体を、加速劣化条件(40℃/RH75%、AAC)に、2日間にわたって曝露して、その物理的安定性を評価した。命名には、対イオンの略語を用い、その後に、純対イオンが見られた場合は「0」を、又は新規なXRPDパターンが得られた場合は数字を付した。例えば、純グルタミン酸の回収は、Glm0と命名し、1,2-エタンジスルホン酸による実験から得られた独特のXRPDパターンは、Edy1及びEdy2と命名する。非常に小さい相違のXRPDパターンは、例えばNds1a及びNds1bのように、1つの番号下にグループ化して、文字で区別した。遊離塩基が回収された場合は、固体は形態B又は形態Cとして分類した(それらは、出発物質の形態Aとは異なっていたからである)。
塩スクリーニングの結果を、表19にまとめる。塩形成の徴候は、用いた25のほとんどすべての対イオンで見られた(対イオンはアルファベット順に列挙する)。グルタミン酸で行った実験からだけは、遊離塩基と対イオンとの混合物が回収された。クエン酸及びグルコン酸では、アモルファス又は結晶性の低い固体だけが回収された。
臭化水素酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸、及び1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を用いた場合は、1つの結晶塩形態だけが得られた。他のすべての対イオンの場合は、3つの結晶化溶媒しか試験しなかったが、2つ以上の固体形態が識別された。ほとんどの固体は、ストレス条件への曝露時に物理的に安定であった。
Figure 2024038072000027
Figure 2024038072000028
マロン酸
マロン酸塩Mao1は、エタノールからの蒸発によって得られ、AACへの曝露時に物理的に安定であった。THF及びアセトンからは、結晶性の低い固体(Mao2)が得られ、その一部は、AACの過程でMao1に変換されたが、このことは、特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、Mao1がMao2よりも安定な塩であることを示唆している。Mao1を、DSC、TGMS、HPLC、及びH-NMRでさらに分析し、その結果を本明細書に記載する。HPLC及びH-NMRから、化合物の完全性が確認され、NMRスペクトルからは、遊離塩基:マロン酸の化学量論比1:1での塩形成が確認された。熱分析からは、塩が約0.2%の残留溶媒を含有することが明らかとなった。分解は140℃付近で開始し、一方吸熱溶融/分解イベントは、DSC曲線中、180℃に見られた。さらに、塩の溶解度を、水中及びpH6の0.2M リン酸緩衝液中、37℃で4時間のインキュベーションで特定した。水の場合、Mao1は、非常に微細な懸濁液を形成し、特定された溶解度は、4.4mg/mLであり、回収された固体は、依然としてMao1と同一であった。リン酸緩衝溶液中では、塩の解離が発生し、溶解度は、0.07mg/mLであった。塩は、最初は油状になる(oil out)と思われたが、約
20分後に黄色懸濁液が得られ、ゲル化や粘度の増加は見られなかった。
ジベンゾイル-L-酒石酸
エタノール中でのベンゾイル酒石酸での塩形成では、DiTr1の析出が得られ、一方THF及びアセトン中では、DiTr1及びDiTr2の混合物が形成された。固体は、AAC下で物理的に安定であった。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、DiTr2は、DiTr1との混合物中でしか見られないものと考えられる。DiTr1をさらに特性評価し、分析結果を本明細書で報告する。固体は、0.9%の残留溶媒を含
有し、180℃よりも高い温度で分解した。HPLC及びNMR分光分析から、化合物の完全性、化学量論的な2:1の遊離塩基:DiTrが確認されたため、DiTr1は、半ジベンゾイル酒石酸塩である。塩の溶解度を、水中及びpH6のリン酸緩衝液中で特定した。両媒体中において、溶解度は、約0.03~0.04mg/mLであった。塩は湿潤性が低く、水相との混合性が悪く、4時間のインキュベーション後に、DiTr1が回収された。両媒体中において、固体の色は変化せず、懸濁液は淡黄色のままであった。
オルトリン酸
リン酸を用いて、アセトンから結晶塩形態を得た。THF中で行った実験は、結晶性の低い固体(Pho2)が形成される結果となり、エタノールからは、遊離塩基形態(形態D)が回収された。すべての固相は、2日間にわたるAAC下で物理的に安定であった。結晶塩Pho1をさらに分析し、その特性評価について本明細書で述べる。TGMS分析から、25~160℃に、おそらく残留溶媒又は水分に起因すると思われる1.9%の質量減少が見られ、熱分解は、200℃付近で開始した。DSC曲線からは、溶融イベントが202℃に見られ、その直後に分解が見られた。化合物の完全性を、HPLC及びNMR分析で確認した。H-NMRスペクトルから、塩の形成が確認され、HPLCデータから、化学量論比は1:1と算出された。リン酸塩の溶解度を、水中及びpH6の0.2M リン酸緩衝液中、37℃で4時間後に特定した。約5mgの固体を用いて懸濁液を調製し、200μLの水の第一のアリコートを添加すると、油が形成された。800μLの体積まで水をさらに添加し、スパチュラで油を混合するだけで、透明な溶液が得られた(pH3.7)。したがって、正確な溶解度は特定されず、実際の溶解度は、5mg/mLよりも高い。油が形成はされたが、高い溶解度のために、ゲル化は見られなかった。リン酸緩衝液中では、溶解度は約0.03mg/mLであり、その後に回収された固体のXRPDから、緩衝溶液中で塩が解離したことが示された。
シュウ酸
シュウ酸では、1つの結晶塩形態Oxa1だけが見出された。この形態は、0.5又は1モル当量を用いた実験から得られた。Oxa1は、短期間のストレス条件下で物理的に安定であった。THF中の半モル当量のシュウ酸での実験から得た固体を特性評価に用い、本明細書に記載する。HPLC分析から、化合物の完全性が確認され、遊離塩基:シュウ酸の化学量論比1:0.5が特定され、このことは、特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、Oxa1が半シュウ酸塩であることを示唆している。熱分析及びH-NMRスペクトルから、固体が水を含有していることが分かった。TGMS分析は、2段階での3.2%の質量減少を示した。したがって、特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、半シュウ酸塩は、一水和物又は半水和物のいずれかであると考えられる(残留溶媒/水分を含有)。Oxa1の溶解度を、pH6の0.2M リン酸緩衝液中、37℃で4時間後に特定し、0.03mg/mLであった。塩は、緩衝液中で解離していた。水中で溶解度を特定する試みは、サンプルのろ過後に依然として非常に微細な粒子を観察可能であったことから、成功しなかった。懸濁液の残留固体は、Oxa1と同一であった。両媒体中において、懸濁液は明黄色であった。
1,5-ナフタレンジスルホン酸
1,5-ナフタレンジスルホン酸では、いくつかの形態が見られ、このことは、塩が多形/偽多形挙動を呈することを示唆している。しかし、Nds1aは、ほとんどの場合、析出によって得られ、一方蒸発によっては、Nds2が得られた。Nds1aは、2日間にわたるAACへの曝露時に安定であった。Nds1bは、Nds1aと同じパターンを有していたが、ピーク位置が僅かにシフトしていたため、Nds1bと称した。Nds1bは、加速劣化条件への曝露時にNds2に変換された。エタノール中の1モル当量の1,5-ナフタレンジスルホン酸による塩形成実験から得られたNds1aを、さらなる特性評価用に選択した。熱分析から、固体が1.1%の残留溶媒/水分を含有すること、並
びに塩の溶融及び分解が250℃付近で開始することが明らかとなった。H-NMRスペクトルから、遊離塩基:Ndsの化学量論比は、1:0.5と特定された。したがって、特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、Nds1aは、非溶媒和無水半ナパジシル酸塩であると思われる。水中及び0.2M リン酸緩衝液中、37℃で4時間後のNds1aの溶解度は、両媒体中において0.02mg/mLであった。水中の懸濁液は、白色であったが(pH3.4)、pH6の懸濁液は、黄色であった。残留固体はNds1aと同一であったことから、塩は、両媒体中において安定であった。
溶媒和塩
他の結晶塩(物理的に安定及び/又は限定的な多形挙動)を、熱分析で特性評価した。以下の酸(アルファベット順)による塩を識別した:1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、Xin1;安息香酸塩、Ben2;ベシル酸塩、Bes1;エシル酸塩、Esy1/形態D;ゲンチジン酸塩、Gen1;臭化水素酸塩、HBr1;マレイン酸塩、Mae1;硫酸塩、Sul1;トルエンスルホン酸塩、Tos2。これらの塩形態はすべて大量の溶媒を含有しており、溶融又は熱分解は、溶媒喪失の直後に見られた(表20)。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、この挙動は、いくつかの実施形態において、これらの固体が溶媒和物としてのみ安定であり、脱溶媒によって結晶非溶媒和塩形態に変換はされないことを示し得るものと考えられる。
Figure 2024038072000029
遊離塩基の多形形態
コントロールサンプル(対イオンなし)は、出発物質と異なる形態が回収される結果となった。エタノール及びアセトンからは、形態Bと称する同じ形態が得られ、THFから得られた固体は、形態Cと称した。形態Bは、220℃付近で溶融する非溶媒和形態であると思われた。形態Aで見られた熱流中の小さい吸熱イベント(100℃及び214℃)は存在せず、このことは、形態Bが形態Aよりも安定であることを示唆している。形態Cは、形態Bの溶融と一致する220℃で溶融する溶媒和形態であると思われた。
溶解度の評価
溶解度評価を、アリコート添加法に従って行い、目視で評価した。約5mgの遊離塩基を、8mLのガラスバイアル中に秤量した。2mLまでは100μLのアリコートを添加し、続いて8mLまで1mLのアリコートを添加した。実験条件を表21に記載する。加えて、水中での懸濁液を30分間にわたって60℃で加熱したが、溶解しなかった。
Figure 2024038072000030
熱安定性
ボルシクリブの溶液(0.2mg/mL)を、テトラヒドロフラン、エタノール、及びアセトン中で調製した。これらの溶液を、3つのバイアルに分割した。バイアルを、RTで24時間、並びに50℃及び80℃で1時間置いた。その後、溶液をHPLC分析によって測定した。実験条件及び結果を表22に示す。
Figure 2024038072000031
塩スクリーニング
塩スクリーニングを、飽和溶液法を用いて行った。遊離塩基の飽和溶液を、テトラヒドロフラン、エタノール、及びアセトン中、50℃で調製した(表23)。これらのストック溶液を、33のガラスバイアル(1.8mL)に分割した。L(+)-グルタミン酸は、固体として添加し、一方フマル酸及び1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸は、それぞれ0.3M及び0.4Mのエタノール溶液から添加した。他の対イオンはすべて、1M水溶液として添加し、その結果、遊離塩基:対イオンの化学量論比1:1.1又は1:0.55を得た。実験条件及び結果を表24に挙げる。
実験では、50℃で加熱し、続いて50℃から5℃まで冷却し、5℃で72時間エージングした。エージング時間後、固体が析出した場合は、固体を分離し、真空下、50℃で乾燥した。液相を、2日間にわたって周囲条件で、及び真空下、50℃で24時間にわたって蒸発させた。すべての得られた固体を、HT-XRPDで分析した。続いて、固体を、加速劣化条件(40℃/RH75%、AAC)に、2日間にわたって曝露し、HT-XRPDで再度分析した。
XRPDの命名には、対イオンの略語を用い、その後に、純対イオンが見られた場合は「0」を、又は新規なXRPDパターンが得られた場合は数字を付した。例えば、純グルタミン酸の回収は、Glm0と命名し、1,2-エタンジスルホン酸による実験から得ら
れた独特のXRPDパターンは、Edy1、Edy2と命名する。非常に小さい相違のXRPDパターンは、例えばNds1a及びNds1bのように、1つの番号下にグループ化して、文字で区別した。遊離塩基が回収された場合は、固体は形態B、C、D、又はEとして分類した(それらは、出発物質の形態Aとは異なっていたからである)。
Figure 2024038072000032
Figure 2024038072000033
Figure 2024038072000034
Figure 2024038072000035
Figure 2024038072000036
Figure 2024038072000037
塩の溶解度
5つの塩候補の溶解度を、pH6の0.2M リン酸緩衝液中及び水中で特定した。2
セットの溶解度実験を行った。溶解度実験の1つのセットでは、約1mgの塩を、1.8mLのガラスバイアル中に秤量し、直ちに1mLの媒体を添加した。第二のセットの溶解度実験では約5mgの塩を、標準的な1.8mLのHPLCバイアル中に秤量した。続いて、塩の溶解挙動について観察しながら、200μLの水性媒体のアリコートを最大1mLまで添加した。バイアルを、連続撹拌しながら37℃で平衡化させた(詳細は表25を参照)。4時間後、遠心分離で液体から固体を分離し、さらに液相を、0.2μMのPTFEフィルターを通してろ過して、いかなる粒子状物質も除去した。溶質の濃度をHPLC-DAD分析で特定した。アセトニトリル/水で調製したボルシクリブの2つの独立したストック溶液から、検量線を作成した。平衡時間の終了時にpHを記録した。
Figure 2024038072000038
X線粉末回折
XRPDパターンは、Crystallics T2高スループットXRPD装置を用いて得た。強度及び形状の変動に対して補正したVÅNTEC-500ガス面積検出器を備えたBruker D8 Discover General Area Detector Diffraction System(GADDS)にプレートを載せた(製
品シート XRD 37、DOC-S88-EXS037V3、図297)。測定精度(ピーク位置)の較正は、NIST SRM1976標準(コランダム)を用いて行った。データ収集は、XRPDパターンの最も特徴的な部分である1.5°~41.5°の2θ領域で単色CuKα線を用いて室温で行った。各ウェルの回折パターンを、2つの2θ範囲(第一フレームでは1.5°≦2θ≦21.5°、第二フレームでは19.5°≦2θ≦41.5°)で、各フレームの露光時間を45秒として収集した。バックグラウンドの除去又は曲線の平滑化は、XRPDパターンに適用しなかった。
TGA/SDTA及びTGMS分析
結晶からの溶媒又は水の喪失に起因する質量減少を、TGA/SDTAで特定した。TGA/DSC 3+ STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)での昇温時にサンプル重量をモニタリングすることで、重量対温度曲線を得た。TGA/DSC 3+の温度較正は、インジウム及びアルミニウムを用いて行った。サンプル(およそ2mg)を100μLのアルミニウムるつぼに秤量し、密封した。シールにピンホールをあけ、TGA中、10℃/分の昇温速度で25から300℃までるつぼを加熱した。パージには、乾燥Nガスを用いた。
TGAサンプルから発生したガスを、Omnistar GSD 301 T2質量分析計(Pfeiffer Vacuum GmbH,Germany)で分析した。このMSは、四重極質量分析計であり、0~200amuの範囲内の質量が分析される。
DSC分析
溶融特性は、熱流束型DSC3+ STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)で記録したDSCサーモグラムから得た。DSC3+は、インジウム(m.p.=156.6℃;δH=28.45J/g)及び亜鉛(m.p.=419.6℃;δH=107.5J/g)の小片を用いて、温度及びエンタルピーについて較正した。サンプル(およそ2mg)を、標準的な40μLのアルミニウムパンに密封し、ピンホールをあけ、DSC中、10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで加熱した。測定中は、流量50mL/分の乾燥Nガスを用いてDSC装置をパージした。
プロトンNMR
DMSO-d中でのH-NMR分光分析を、化合物完全性の特性評価のために、及び塩の化学量論比を特定するために用いた。スペクトルは、標準的なパルスシーケンスを用いて、500MHz装置(Bruker BioSpin GmbH)上、室温で記録した(32スキャン)。データの処理は、ACD LabsのソフトウェアSpectrus Processor 2016.2.2(Advanced Chemistry
Development Inc. Canada)で行った。
LCMS分析法
方法の名称:S18099_01;HPLCシステム:Agilent 1200;検出器1:264nmに設定したDAD;検出器2:陽イオンスキャンモードのHP1100 LC/MSD。HPLC条件:オートサンプラー温度:15℃;カラム:Waters Sunfire C18(100×4.6mm;3.5μm);カラム温度:35℃;フローセル:経路長10mm;勾配:表26;移動相A:0.1%TFAの水溶液;移動相B:0.1%TFAのアセトニトリル溶液;流量:1.0ml/分。
Figure 2024038072000039
サンプル:濃度:およそ0.5mg/ml;溶媒:水:アセトニトリル:TFA(50:50:0.1 体積/体積/体積);注入量:5μL。
化合物の完全性は、クロマトグラムの「注入ピーク」以外の各ピーク面積と合計ピーク面積とから以下のようにして算出されるピーク面積パーセントとして表される。
Figure 2024038072000040
目的の化合物のピーク面積パーセントは、サンプル中の構成成分の純度の指標として用いられる。塩における遊離塩基:CIの化学量論比の算出は、面積(遊離塩基回収率)対サンプル重量に基づいた。サンプルの重量は、TGMS分析で見られた質量減少で補正した。
マロン酸塩、Mao1
マロン酸では、2つの異なるXRPDパターンが得られた。エタノール中での実験からは、結晶塩Mao1が得られた。アセトン及びTHFからは、結晶性の低い固体Mao2が回収された。2つの形態のXRPDパターンを図90に示す。結晶性及び物理的安定性に基づいて、Mao1を、さらなる特性評価のために選択した。図91には、2日間にわたるAACへの曝露前後におけるMao1の粉末パターンを提示する。Mao1のピークリストを表27に示す。安定な結晶マロン酸塩Mao1(実験ID SSm53)を、DSC、TGMS、HPLC、及び1H-NMR分析でさらに特性評価した。
Figure 2024038072000041
特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、Mao1のTGMS分析(図92)は、分解開始前の質量減少が僅かに0.2%であったことから、この形態が非溶媒和無水形態であることを示したものであると考えられる。分解は140℃付近で開始した。Mao1のDSC曲線(図93)は、溶融/分解に起因するピーク温度180℃の吸熱イベントを示した。Mao1に対して得られたプロトンNMRスペクトル(図94)により、塩のプロトン共鳴が出発物質と比較してシフトしていたことから、塩の形成が確認された。遊離塩基:マロン酸の特定された化学量論比は、1:1であった。Mao1に対して得られたHPLCクロマトグラム(図95)により、99.3%の化学純度(面積%)の化合物の完全性が確認された。
ジベンゾイル酒石酸塩、DiTr1
ジベンゾイル-L-酒石酸では、2つの異なるXRPDパターンが見られた。固体はエタノールから結晶化し、DiTr1が識別された。アセトン及びTHFからは、DiTr1及びDiTr2の混合物が回収された。2つの形態のXRPDパターンを図96に示す。DiTr1を、さらなる特性評価のために選択し、それは、2日間にわたるAACへの曝露時に物理的に安定であった(図97)。DiTr1のピークリストを表28に示す。純粋形態のDiTr1(実験ID SSm46)を、DSC、TGMS、HPLC、及びH-NMR分析でさらに特性評価した。
Figure 2024038072000042
特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、TGMS分析(図98)は、DiTr1が残留溶媒/水含有量0.9%の非溶媒和無水形態であることを示したものであると考えられる。この質量減少は、熱分解の開始前に見られた(180℃付近)。DiTr1のDSC曲線(図99)は、ピーク温度207℃の分解プロセスの前に、172℃に小さい吸熱イベントを示した。DiTr1のプロトンNMRスペクトル(図100)により、塩のプロトン共鳴が出発物質と比較してシフトしていたことから、塩の形成が確認された。遊離塩基:ジベンゾイル-L-酒石酸に対して特定された化学量論比は、1:0.5であった。DiTr1に対して得られたHPLCクロマトグラム(図101)により、95.7%の化学純度(面積%)の化合物の完全性が確認された。
リン酸塩、Pho1
リン酸では、2つの異なるXRPDパターンが見られた。アセトン中で行った実験からは、結晶塩Pho1が得られた。THFからは、結晶性の低い固体Pho2が回収された。2つの形態のXRPDパターンを図102に示す。Pho1は、高い結晶度で得られ、それは、2日間にわたるAACへの曝露時に物理的に安定であった(図103)。ピークリストを表29に示す。安定な結晶リン酸塩Pho1(実験ID SSm81)を、DSC、TGMS、HPLC、及び1H-NMR分析でさらに特性評価した。
Figure 2024038072000043
Pho1のTGMS分析は(図104)、おそらく水に関連すると思われる1.9%の質量減少を示した。溶融前の25~160℃に質量減少が見られた。熱分解は、200℃よりも高温で見られた。Pho1のDSC曲線(図105)は、202℃での溶融及び続いての分解の前に、一連の小さい熱イベント(水/溶媒の喪失に関連する)を示した。Pho1に対して得られたプロトンNMRスペクトル(図106)により、塩のプロトン共鳴が出発物質と比較してシフトしていたことから、塩の形成が確認された。Pho1に対して得られたHPLCクロマトグラム(図107)により、99.8%の化学純度(面積%)の化合物の完全性が確認された。塩の化学量論比を、クロマトグラフィの主ピークの面積(遊離塩基に帰属される)に基づいて特定し、それは、1:1の遊離塩基:リン酸であった。
シュウ酸塩、Oxa1
シュウ酸では、1つの結晶塩、Oxa1だけが見出された。この形態は、実験で用いたシュウ酸のモル当量とは無関係に識別された。Oxa1は、2日間にわたるAACへの曝露時に物理的に安定であった。Oxa1のXRPDを図108に示し、ピークリストを表30に示す。THFからシュウ酸の半モル当量で得た固体(実験ID SSm12)を、DSC、TGMS、HPLC、及び1H-NMR分析でさらに特性評価した。
Figure 2024038072000044
Oxa1のTGMS分析(図109)は、1.4%の質量減少を25~100℃に、1.9%の第二の質量減少を、100~150℃に示した。160℃よりも高温での質量減少は、この塩の分解に関連する。3.3%の総質量減少は、約1モル当量の水に相当する。したがって、塩は、残留溶媒/水による一水和物又は半水和物のいずれかである。Oxa1のDSC曲線(図110)は、溶媒又は水の喪失に関連する2つの吸熱イベントを25~130℃に示し、ピーク温度213℃のブロードな吸熱イベントは、塩の熱分解に帰属された。Oxa1に対して得られたプロトンNMRスペクトル(図111)により、塩のプロトン共鳴が出発物質と比較してシフトしていたことから、塩の形成が確認された。Oxa1に対して得られたHPLCクロマトグラム(図112)により、99.6%の化学純度(面積%)の化合物の完全性が確認された。塩の化学量論比の算出は、遊離塩基に帰属されるクロマトグラフィの主ピークに基づいた。遊離塩基:シュウ酸の化学量論比は、1:0.5であった。
ナパジシル酸塩、Nds1a
1,5-ナフタレンジスルホン酸では、いくつかの異なるXRPDパターンが得られた。エタノール中での実験から、結晶塩Nds1aが析出し、一方母液の蒸発後にNds2が得られた。アセトン及びTHFからは、他の形態が得られた。1,5-ナフタレンジスルホン酸による実験から得られた異なるXRPDパターンを、図113に示す。Nds1aは、結晶性が高く、2日間にわたるAACへの曝露時に物理的に安定であった(図114)。この理由から、Nds1a(実験ID SSm35)を、DSC、TGMS、HPLC、及び1H-NMR分析でさらに特性評価した。XRPDを図114に示し、ピークリストを表31に示す。
Figure 2024038072000045
特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、TGMS分析(図115)は、Nds1が、25~100℃の残留溶媒含有量1.1%の非溶媒和無水形態であることを示したものであると考えられる。分解は250℃付近で開始した。Nds1aのDSC曲線(図116)は、残留溶媒喪失に起因する一連の小さい吸熱イベントを、25~100℃
に示した。ピーク温度が280℃の吸熱イベントは、溶融/分解に起因するものであった。Nds1aに対して得られたプロトンNMRスペクトル(図117)により、塩のプロトン共鳴が出発物質と比較してシフトしていたことから、塩の形成が確認された。Nds1aに対して特定された遊離塩基:1,5-ナフタレンジスルホン酸の化学量論比は、1:0.5であった。
形態D/エシル酸塩、Esy1
エタンスルホン酸では、Esy1又は形態Dが得られた。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、リン酸及びシュウ酸による実験から同じXRPDパターンが見られており、その理由から、それは、塩ではなく遊離塩基の固体形態に帰属され得るものと考えられる。エタンスルホン酸、リン酸、及びシュウ酸による実験から得られた異なるXRPDパターンを、図118に示す。すべてのケースにおいて、いくつかの回折ピークに小さいシフトを伴う非常に類似した粉末パターンが得られた。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、THF中のエタンスルホン酸から得られたEsy1又は形態DのTGMS分析(図119)は、この形態がおそらく溶媒和形態又は水和形態であると思われることを示したものと考えられる。4.6%の質量減少が25~200℃に見られ、続いて分解は250℃付近で開始していた。Esy1/形態Dに対して得られたプロトンNMRスペクトル(図120)により、プロトン共鳴が出発物質と比較してシフトしていたことから、塩の形成が示唆される。遊離塩基:エタンスルホン酸の化学量論比は、特定することができなかった。
1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、Xin1
1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸では、3つすべての溶媒から、同じXRPDパターン、Xin1が得られた。Xin1は、AACへの曝露時に物理的に安定であり、図121には、2日間にわたるAACへの曝露前後におけるXin1の粉末パターンを提示する。安定な結晶マロン酸塩Xin1(実験ID SSm19)を、TGMSでさらに分析した。Xin1のTGMS分析は(図122)、25~200℃に12%の少しずつの質量減少を示した。質量減少は、THFの喪失、及び続いての分解に関連している。熱流シグナル中の160~180℃での吸熱イベントは、おそらく塩の解離/分解を示すと思われる。
安息香酸塩、Ben2
安息香酸では、3つの異なるXRPDパターンが得られた。THFからは、Ben1が得られ、エタノール及びアセトンからは、Ben2が得られた。Ben1は、2日間にわたるAACへの曝露時に物理的に不安定であり、Ben3に変換された。異なる形態のXRPDパターンは、ある程度の類似性を有し、図123に示す。図124には、2日間にわたるAACへの曝露前後におけるエタノールから得られたBen2(実験ID SSm63)の粉末パターンを提示する。エタノールから得られた安息香酸塩Ben2(実験ID SSm63)を、TGMSでさらに分析した。TGMS分析は(図125)、25~100℃に4.5%の質量減少を示し、続いて分解を示した。質量減少は、おそらくエタノール及び水に起因するものと思われる。熱流は、溶融/分解イベントに起因し得る吸熱イベントを、170℃付近に示した。
ベシル酸塩、Bes1
ベンゼンスルホン酸塩では、各溶媒から1つの塩、Bes1が得られた。Bes1は、AACへの曝露時に物理的に不安定で、結晶性が低くなり、おそらく塩の解離が発生したものと思われる。図126には、2日間にわたるAACへの曝露前後におけるTHFから得られたBes1(実験ID SSm10)の粉末パターンを提示する。THFから得られたべシル酸塩Bes1を、TGMSでさらに分析した。Bes1のTGMS分析は(図127)、直ちに8.1%の質量減少を示し(25~180℃)、続いて230℃付近で
分解を示した。べシル酸塩は、おそらく溶媒和形態であると思われ、非溶媒和形態としては不安定である。
ゲンチジン酸塩、Gen1
ゲンチジン酸では、2つの異なるXRPDパターンが得られた。THF中での実験からは、溶媒の蒸発後に結晶塩Gen1が得られた。アセトン及びエタノールからは、結晶性の低い固体、Gen2_lcが析出した。2つの形態のXRPDパターンを図128に示す。結晶性及び物理的安定性に基づいて、Gen1を、さらなる特性評価のために選択した。図129には、2日間にわたるAACへの曝露前後におけるGen1の粉末パターンを提示する。THFから得られた固体(実験ID SSm21)を、TGMS分析でさらに特性評価した。Gen1のTGMS分析は(図130)、25~200℃に9.2%の質量減少を示した。質量減少は、溶媒の喪失及び熱分解に関連している。熱流シグナル中の130℃付近で見られる吸熱イベントは、溶媒喪失に関連している可能性がある。
臭化水素酸塩、HBr1
エタノール中での臭化水素酸では、結晶塩HBr1が得られた。アセトン及びTHFからは、結晶性の低い/アモルファスの固体が回収された。結晶固体HBr1は、加速劣化条件への曝露時に物理的に不安定であり、HBr2に変換された。図131には、2日間にわたるAACへの曝露前後における固体の粉末パターンを提示する。臭化水素酸塩HBr1(実験ID SSm34)を、TGMS分析でさらに特性評価した。HBr1のTGMS分析は(図132)、エタノールの喪失に起因する5.9%の質量減少を示した。熱流シグナルは、質量減少に関連するいくつかの吸熱イベントを記録し、170℃の吸熱イベントは、おそらく溶融に関連するものと思われる。分解は240℃付近で開始した。この結果から、HBr1は、溶媒和塩であり、非溶媒和形態としては不安定であることが示唆される。
マレイン酸塩、Mae1
マレイン酸では、2つの異なるXRPDパターンが得られた。THF及びアセトン中での実験からは、純塩相Mae1が得られた。エタノールからは、Mae1とMae2との混合物が得られた。2つの形態のXRPDパターンを図133に示す。Mae1は、AAC時に物理的に安定であったが、Mae1とMae2との混合物は、Mae1に変換された。図134には、2日間にわたるAACへの曝露前後におけるMae1の粉末パターンを提示する。安定な結晶塩Mae1(実験ID SSm14)を、TGMSでさらに分析した。Mae1のTGMS分析(図135)は、おそらくTHF及び/又は水の喪失に起因すると思われる3.4%の質量減少を25~110℃に示し、続いて分解を示した。
硫酸塩、Sul1
硫酸による実験を、半モル当量及び1モル当量で行った。合計で4つの異なるXRPDパターンが見られた。Sul1及びSul4は、ほとんどの場合、1モル当量を用いた実験で見られ、Sul2は、半モル当量の硫酸を用いた実験でのみ見られた。しかし、固相にSul2が得られた実験の母液を蒸発させると、Sul1又はSul3のいずれかが得られた。硫酸による実験から得られた独特のXRPDパターンを、図136に示す。結晶性及び物理的安定性に基づいて、Sul1を、さらなる特性評価のために選択した。図137には、2日間にわたるAACへの曝露前後におけるSul1の粉末パターンを提示する。安定な結晶塩Sul1(実験ID SSm37)を、TGMS分析でさらに特性評価した。Sul1のTGMS分析は(図138)、25~120℃に2.4%の質量減少を、120~200℃に5.8%の質量減少を示し、このことは、塩が溶媒和形態であることを示唆している。分解は、240℃よりも高い温度で見られる。
トルエンスルホン酸塩、Tos2
p-トルエンスルホン酸では、実験から2つの異なるXRPDパターンが見られ、AAC後、第三の形態の出現が見られた。エタノール中での実験からは、結晶塩Tos2が得られた。アセトン及びTHFからは、結晶性の低い固体Tos1が回収された。トルエンスルホン酸による場合に見られた形態のXRPDパターンを図139に示す。図140には、2日間にわたるAACへの曝露前後におけるTos2の粉末パターンを提示する。安定な結晶トルエンスルホン酸塩Tos2(実験ID SSm41)を、TGMSでさらに特性評価した。Tos2のTGMS分析は(図141)、エタノールの喪失に起因する4.6%の質量減少を25~110℃に示し、直後に分解を示した。
遊離塩形態
コントロールサンプルからは、エタノール及びアセトン中で形態Bの形成が、THF中で形態Cの形成が得られた。遊離塩基のこの新規な多形形態は、2日間にわたるAACへの曝露時に物理的に安定であった。遊離塩基の形態のXRPDパターンを図142に示す。形態B及びCをTGMSで分析した。形態BのTGMS分析を図143に示し、形態Bが、220℃付近で溶融する非溶媒和無水形態であることが示された。分解は、250℃よりも高い温度で発生した。形態CのTGMS分析を図144に示し、形態Cはおそらく溶媒和形態であると思われることを示している。220℃付近での溶融の前に、2.6%の質量減少が見られる。分解は、250℃付近で見られる。
いくつかのボルシクリブ塩の概要
5つの塩候補に対する物理化学的特性評価及び溶解度試験の結果を、ボルシクリブの遊離塩基及びHCl塩と比較して表32にまとめて示す。特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、塩は、遊離塩基及びHCl塩と比較して溶解度が改善され、塩候補のいずれも、水性媒体中でゲルを形成しなかったものと考えられる。
Figure 2024038072000046
これらの選択された塩形成酸は、ジベンゾイル酒石酸を除くすべてが、医薬塩のリストに含まれている(Handbook of Pharmaceutical Salts: properties, selection and use;
P. Heinrich Stahl, Camille G. Wermuth; Wiley-VCH)。マロン酸、リン酸、シュウ酸
、及び1,5-ナフタレンジスルホン酸は、米国、欧州、及び日本で市販されている製品のものを用いる。
例3:シュウ酸ボルシクリブ
HCl塩に対して行ったこれまでの試験から、この物質が、複雑な偽多形挙動及び水性媒体中でゲルを形成する傾向を呈することが示された。この理由から、これまでの塩スク
リーニングでは、HCl塩よりも良好な物理化学的特性を有するボルシクリブの代替塩の単離について評価した。シュウ酸塩に対して、その多形挙動を評価するための固体形態のスクリーニングを行った。この目的のために、多形スクリーニングは、15の溶媒中での熱サイクル実験、さらには冷却結晶化実験を含むデザインとした。
受け取った物質は、Oxa2として分類されるボルシクリブシュウ酸塩であった。出発物質は、純度96%及びAPI:CI比1:1の無水塩であった。多形スクリーニング実験を、偏りのない結晶化を可能とするために、アモルファスのボルシクリブシュウ酸塩で開始した。本研究では、合計で7つのシュウ酸塩形態が識別された。Oxa1、Oxa2、及びOxa7を除く多形スクリーニングからのほとんどのシュウ酸塩形態は、真空下での乾燥時又は短期間のストレス条件への曝露時に不安定であった。Oxa1は、溶媒又は水分子を収容可能なキャビティを構造中に有する半シュウ酸塩/半水和物塩として同定された。いくつかのOxa1形態の結晶構造は、単結晶分析によって特定した。単位格子の寸法は、僅かに異なっており、溶媒又は水の量も、そのような構造に対して変動していた。Oxa7は、半シュウ酸塩水和物として同定された。Oxa7の結晶は、冷却結晶化では得られなかった。Oxa2(無水塩)は、多形スクリーニングの最も多くの場合で見られ、最も有望なシュウ酸塩形態として選択した。したがって、さらなる分析データをOxa2に対して得た。室温でのOxa2の水への溶解度は低く(<0.1mg/ml)、この物質は、中程度の吸湿性であった。水を添加すると、Oxa2は懸濁液となり、ゲルの形成は見られなかった。Oxa2の結晶は、冷却結晶化では得ることができなかった。
調べた実験条件内では、Oxa2は、シュウ酸塩の最も好ましい結晶形態であると思われた。しかし、Oxa2は、中程度に吸湿性であり、低い水溶性を示し、Oxa2の冷却結晶化は実現できなかった。加えて、多形スクリーニングによって、半シュウ酸塩形態及びモノシュウ酸塩形態の両方が得られ、このことは、所望される化学量論比の対イオンでのシュウ酸塩の製造において問題を引き起こし得る。ボルシクリブのリン酸塩及びマロン酸塩に対して行った並行多形スクリーニングに基づく。Mao1は、限定された多形性を呈する非吸水性の無水形態として識別された。この形態は、冷却結晶化によって高い収率で再現可能であった。
略語:
AAC 加速劣化条件(40℃及びRH75%で2日間)
Am アモルファス
API 活性医薬成分
DSC 示差走査熱量測定
DVS 動的蒸気収着
H-結合 水素結合
H-NMR プロトン核磁気共鳴
HR-XRPD 高解像度X線粉末回折
HT-XRPD 高スループットX線粉末回折
Lc 低結晶性
LCMS 液体クロマトグラフィ質量分析
MS 質量分析
ML 母液(液相)
MW 分子量
Pc 結晶性が悪い
QSA 凍結乾燥実験の実験ID
RF 応答因子
RH 相対湿度
RT 室温
SAS 溶解度特定実験の実験ID
SM 出発物質
SSR 固体研究
TCP 熱サイクル実験の実験ID
TGA 熱重量分析
TGMS 熱重量質量分析
TMS テトラメチルシラン
UPLC 超高速液体クロマトグラフィ
Wt% 重量パーセント
DME 1,2-ジメトキシエタン
DMSO-d 重水素化ジメチルスルホキシド
EtOH エタノール
IPA 2-プロパノール
Mao マロン酸塩
MeOH メタノール
Oxa シュウ酸塩
TBME tert-ブチルメチルエーテル
TFE 2,2,2-トリフルオロエタノール
THF テトラヒドロフラン
シュウ酸塩(図145)の多形挙動を、固体形態スクリーニングにおいて評価した。ボルシクリブシュウ酸塩の新規な結晶相を識別するために、及びさらなる調査に最良の形態を選択するために、15の溶媒を含む熱サイクルスクリーニングをデザインした。この試験は、以下のプロジェクト工程から成っていた:出発物質の特性評価;アモルファスシュウ酸塩の作製;15の溶媒中における熱力学的固体形態スクリーニング;新規な固体形態の分析特性評価。
29.13グラムのボルシクリブシュウ酸塩(バッチID:19-09333-01)を、結晶粉末(出発物質)として提供した。出発物質、Oxa1、シュウ酸二水和物、及びシュウ酸の高スループットXRPD(HT-XRPD)パターンを図146に示す。XRPDパターンの比較に基づくと、出発物質は、シュウ酸又はシュウ酸二水和物をまったく含有していなかった。塩スクリーニングで得た物質は、Oxa1として分類し、本試験で受け取った出発物質と比較すると、XRPDは異なっていた。本試験の出発物質は、Oxa2として分類した。
HR-XRPD分析を出発物質(Oxa2)に対して行った。リートベルト解析(図147)から、出発物質が、およそ1%の未識別不純物を含む結晶相であることが明らかとなった。
図148のTGMS分析は、40~100℃でおよそ1.1%の水が放出されたことを示し、これは、APIの1分子あたりおよそ0.3分子の水に相当する。180~240℃において、著しい質量減少によって示されるように、物質は熱分解を受けた。出発物質のDSC分析を図149に示す。単一のブロードな吸熱イベントが、218℃に見られた。APIの化学純度を、LCMS分析によって評価した(図150)。結果は、APIの純度が95.5%(面積%)であることを示した。陽イオンスペクトルは、正に荷電した種[M+H]に相当するm/zが470のイオンを示し、遊離塩基の分子質量と一致していた(すなわち、470g/mol)。LCMSアッセイ分析に基づいて、API:オキサレートの比は1:1である。図151は、Oxa2(出発物質)のH-NMRスペクトル及び分子構造を示す。全体として、分子の20個の水素原子のうちの17個を、スペクトル中のピークに帰属することができた。残りの3個の未検出の水素は、APIの2個のOH基及びNH基に相当する。ピロリジン基の11個の脂肪族水素は、2~4ppm
(グループa)に出現した。ベンゾピラン環上の2個の芳香族水素は、6~7pm(グループb)に出現し、一方ハロゲン化芳香族環の3個の芳香族水素は、さらに低磁場の8ppmに出現した(グループc)。12.8ppmの水素(d)は、おそらくアルコール基のうちの1つに属すると思われる。遊離塩基及びOxa1の両方のスペクトルと比較すると、出発物質のピロリジン基(a)及びベンゾピラン基(b)のNMRピークだけが、さらに低磁場にシフトした。動的蒸気収着(DVS)測定を、Oxa2(出発物質)に対して行った。図152に示されるように、この物質は、相対湿度(RH)の上昇と共に、次第に水を取り込んだ。25℃/RH80%では、水の取り込みは、およそ2.4%であり、これによって、この物質は中程度の吸湿性とされる(欧州薬局方吸湿性分類。25℃/RH80%での水の取り込みが:質量変化<0.2%の場合 - 非吸湿性;質量変化<2%且つ>0.2%の場合 - 僅かに吸湿性;質量変化<15%且つ2%の場合 - 中程度の吸湿性;質量変化>15%の場合 - 非常に吸湿性)。
DVS分析後、XRPDによって示されるように、Oxa2が回収された。Oxa2(出発物質)の室温における水への溶解度を、定性的溶解度特定によって特定した。Oxa2(出発物質)は、USP分類によると、水への溶解度が<0.1mg/mlであるため、室温において水へは実質的に不溶性であった。Oxa2(出発物質)に水を添加すると、この物質は均一な懸濁液となった。ゲル形成の徴候は見られなかった。
一般に、多形スクリーニングは、偏った結晶化を避けるために、アモルファス物質で開始することが好ましい。アモルファス物質は、異なる水/有機溶媒混合物からのOxa2(出発物質)の凍結乾燥によって作製した。多形スクリーニングのためのアモルファス物質を作製するために選択した条件は、アセトン/水(50/50、体積/体積)から出発物質を凍結乾燥することを含んでいた。凍結乾燥後、物質をHT-XRPDで分析して、得られた物質がアモルファスであることを確認した(図154)。アモルファス物質のTGMS分析に基づいて、残留溶媒含有量は、3.2%であった(図155)。図156のDSC曲線は、溶媒除去に関連し得る3つの吸熱イベントを、25~140℃に示している。185~230℃のブロードな吸熱イベントは、シュウ酸塩の熱分解の結果である。H-NMR分析から、シュウ酸塩の化学的同一性が、凍結乾燥後も維持されていたことが確認された(図157)。アモルファス物質のケミカルシフトは、出発物質のシュウ酸塩(Oxa2)に相当するものであったが、遊離塩基サンプルに対してシフトしていた。
凍結乾燥によって作製したアモルファスのボルシクリブシュウ酸塩を用いて、熱サイクル実験を開始した。選択された溶媒系において、懸濁液をRTで調製した。続いて、この混合物を温度プロファイルに掛けた。温度プロファイルの後、遠心分離によって固体を溶液から分離し、周囲条件及び高真空下で乾燥し、その後回収して、HT-XRPDで分析した。液相も高真空下で乾燥し、その後回収して、HT-XRPDで分析した。すべての固体をAAC(40℃/RH75%、2日間)に曝露した。
シュウ酸塩に対して行った多形スクリーニングで、合計で7つの塩形態が識別され、それらを、Oxa1、Oxa1e、Oxa2、Oxa3、Oxa4、Oxa6、及びOxa7と称した。Oxa1、Oxa2、及びOxa7は、真空乾燥(5mbar、18時間)及びAAC(40℃/RH75%、2日間)の両方への曝露時に物理的に安定であり、さらなる特性評価のために選択した。結果を表33にまとめて示す。
Oxa1は、過去のスクリーニング(S18128)で識別された塩形態であり、溶媒及び/又は水を収容可能なキャビティをその構造中に有する半シュウ酸塩/半水和形態として存在した。Oxa1eの場合、構造は、おそらくアセトン及び水を含有しているものと思われた。Oxa2は、多形スクリーニングにおいて最も多くの場合に得られたものであり、出発物質として得られた形態でもあった。2-プロパノールから得られたOxa2
(実験ID:TCP18)の分析から、物質のAPI:CI比が1:1であることが確認された。Oxa2は、AACへの曝露時に物理的に安定であった。
Oxa3は、2-プロパノール/水(90/10、体積/体積)から得られたが、高真空下での乾燥時に(5mbar、18時間)、Oxa1+Oxa4の混合物に変換された。いくつかの実験では、アモルファス物質は、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時にOxa3に変換された。実験ID:TCP21においてクロロホルムとの組み合わせで得られた固体は、最初はOxa6であったが、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時にOxa3に変換された。
Oxa4は、2-プロパノール/水(90/10、体積/体積)を含む熱サイクル実験(実験ID:TCP30)において、物質を真空下で乾燥した後(5mbar、18時間)に、Oxa1との混合物として得られた。
Oxa6は、クロロホルムを含む熱サイクル実験(実験ID:TCP21)で得られた。Oxa6は、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時にOxa3に変換されたことから、物理的に不安定であった。
Oxa7は、エタノールを含む熱サイクル実験(実験ID:TCP23)で得られた。Oxa7は、AAC(40℃/RH75%、2日間)及び真空条件(5mbar、18時間)のいずれへの曝露時も、物理的に安定であった。
Figure 2024038072000047
固体の特性評価
本試験で識別された固体形態の粉末回折パターンを、重ねて図158に提示する。様々な類似のOxa1形態(すなわち、Oxa1a~Oxa1e)を、図162に示す。
DSC、TGMS、UPLC、及びH-NMRを含む追加の分析データを、3つの物理的に安定な固体形態(Oxa1、Oxa2、及びOxa7)について得た。結果の概要を、以下及び表34に提示する。
シュウ酸塩形態に対して行った熱分析は、Oxa2が唯一の無水シュウ酸塩形態であることを示した。Oxa1は、そのキャビティ内に非化学量論的な水を含有する半シュウ酸塩/半水和物であり、一方Oxa1eは、Oxa1に類似の形態として識別されたが、構造中に非化学量論的量のエタノールを含んでいた。Oxa7は、水含有量が3.4%である半シュウ酸塩形態であると思われた。
UPLC分析から、すべてのシュウ酸塩形態が良好な化学純度(>96%、UPLC面積%)で得られたことが確認された。最も低い化学純度は、出発物質のOxa2で特定された(95.5%)。
異なるシュウ酸塩形態に対するH-NMRスペクトルは、遊離塩基に対して著しい共鳴シフトを示し、このことから、塩の形成が発生したことが確認された。すべてのスペク
トルを、過去のプロジェクトで用いた遊離塩基(SM、S18128)と、及び受け取ったシュウ酸塩出発物質(Oxa2)と比較した。
Figure 2024038072000048
冷却結晶化実験
固体特性評価に基づいて、Oxa2は、最も有望なシュウ酸塩形態であると思われた。したがって、追加の冷却結晶化実験を、Oxa2の結晶化を制御する試みとして行った。これらの実験は、3つの異なる結晶化溶媒で調製したボルシクリブ遊離塩基溶液(バッチ1694ER1201から)及び1.3当量の1M シュウ酸水溶液(API:CI比 1:1.3)を50℃で混合することによって開始した。続いて、冷却プロファイルを温度40℃に到達するまで適用し、そこでOxa2のシード結晶を添加した。続いて、溶液を5℃まで冷却した。
すべての冷却結晶化実験において、シード結晶は、溶液への添加後に溶解した。THFからは、冷却時に塩は析出しなかった。エタノールからは、72%の収率で新規な塩が単離され、Oxa5と称した。Oxa5は、AAC(40℃/RH75%)への曝露時に不安定であった。アセトンからは、Oxa1が40%の収率で得られた。
ボルシクリブマロン酸塩に対する多形スクリーニングは、新規な形態の偏りのない結晶化を促進するために、アモルファス相で開始した。本試験では、合計で7つの多形形態が識別され、そのうちのOxa1、Oxa2、及びOxa7は、真空乾燥時及びAAC時(40℃/RH75%、2日間)の両方で物理的に安定であると特定された。
Oxa1は、過去の塩スクリーニング(S18128)で得られ、本明細書において、水及び/又はプロセス溶媒を収容可能な構造的キャビティを呈する半シュウ酸塩/半水和物として識別された。結果として、Oxa1は、異なる立体配置を取ることができ、いくつかの異なる形態をもたらす(Oxa1a~Oxa1eと称する)。
Oxa7は、エタノールからのみ得られ、3.4%の残留水を有する半シュウ酸塩として同定された。しかし、エタノールからのシュウ酸塩の冷却結晶化は、Oxa5の結晶化
をもたらした。
Oxa2は、本スクリーニングで最も多くの場合に見出された結晶相であり、それは本試験で同定された唯一の無水結晶相であり、出発物質として受け取ったものである。
しかし、Oxa2は、中程度の吸湿性であり、室温では実質的に水に不溶性であった(溶解度<0.1mg/ml)。THF、エタノール、及びアセトンからOxa2を得るための冷却結晶化の試みは、Oxa2の代わりにOxa1及びOxa5が得られる結果となった。さらに、多形スクリーニングによって、半シュウ酸塩形態及びモノシュウ酸塩形態の両方が得られ、このことは、制御されたAPI:対イオンの化学量論比を有する塩の製造において問題を引き起こし得る。
アモルファスのボルシクリブシュウ酸塩の調製
多形スクリーニングは、偏りのない結晶化を促進するために、アモルファス相で開始することが好ましい。アモルファス物質の作製を、異なる有機/水混合物からOxa2(出発物質)を凍結乾燥することによって試みた(表35)。試験した最も極性のプロトン性溶媒(すなわち、水、MeOH/水、及びEtOH/水)では、物質は、20mg/mLの濃度では室温で溶解せず、これらの条件は、したがって、凍結乾燥には不適であった。アモルファス相は、物質を完全に溶解した実験での凍結乾燥後に得られた。アセトン/水(50/50)からの凍結乾燥によって得られた物質は、4.3%という最も少ない残留溶媒量のアモルファス相となり、これは、物質をRTで18時間にわたって高真空(5mbar)に掛けることによって、さらに低下させることができた(実験ID QSA3)。これらの条件を用いて、多形スクリーニングのためのアモルファス物質を作製した。API溶液を、アセトン/水 50/50で調製し(実験ID:QSA8)、18のバイアルに液体を分けた(liquid-dosed)。この溶液を液体窒素中で凍結し、凍結乾燥機(Alpha 2-4 LD,Christ)を用いて高真空下に置いた。溶媒を真空乾燥によって除去した。アモルファス物質のサンプル(実験ID:QSA8)を、参照として多形スクリーニングから取り、HT-XRPD、TGMS、及びH-NMRで分析した。
Figure 2024038072000049
定性的溶解度特定
Oxa2(出発物質)の水溶性を、定性的溶解度特定の手法で評価した。5.4mgのOxa2に、物質が溶解するまで水を50μlずつ添加した(実験ID:SAS1)。裸眼による目視検査を用いて、完全に溶解したかどうかを判断した。
7.5mlの水を添加した後、Oxa2は室温では水に溶解しなかった。懸濁液を50℃まで加熱すると、透明な溶液で示されるように、完全に溶解した。
熱サイクル実験
アモルファスのボルシクリブシュウ酸塩の懸濁液を、選択された溶媒系で調製した。約33mgのAPIを、室温で15の溶媒系と混合した(詳細は表36を参照)。続いて、混合物を、Crystal16(商標)装置に入れ、図159に示す温度プロファイルに掛けた。
温度プロファイルの後、遠心分離によって固体を液体から分離し、固相を周囲条件及び高真空下(5mbar)で乾燥し、その後回収して、HT-XRPDで分析した。液相を高真空下(5mbar)で乾燥し、回収された固体をHT-XRPDで分析した。次に、すべての固体を加速劣化条件(40℃/RH75%、2日間)に曝露し、続いてHT-XRPDで再度分析した。
Figure 2024038072000050
冷却結晶化実験
冷却結晶化によって、選択されたシュウ酸塩形態Oxa2を調製し、そのような実験の収率を評価するために、さらなる結晶化の試みを行った。行った3つの実験は、遊離塩基(プロジェクトS18128用に受け取ったもの、バッチ1694ER1201)の飽和溶液を、エタノール、THF、及びアセトン中、50℃で調製することから成っていた。ME-522の懸濁液を50℃で3時間インキュベートし、その後ろ過した。1mlの飽和溶液に、1.3当量のシュウ酸を、1Mのストック水溶液として添加した。実験条件を表37に記載する。
対イオンの添加後、溶液をCrystal16(商標)装置中で温度プロファイルに掛けた。50℃で30分後、溶液の温度を、10℃/時の冷却速度で低下させた。40℃の時点でOxa2のシード結晶を添加し、5℃の温度に到達するまで10℃/時の速度で冷却を継続した。最終温度(5℃)で18時間のエージングを最後に適用した。
温度プロファイルの後、遠心分離によって固体を溶液から分離し、周囲条件及び高真空下(5mbar)で乾燥し、その後回収して、HT-XRPDで分析した。固体を、AAC(40℃/RH75%、1日間)にも掛け、HT-XRPDで再度分析した。母液を蒸発させて、固体の重量に基づいて収率の評価を行った。
Figure 2024038072000051
分析方法
高スループットX線粉末回折
XRPDパターンは、Crystallics T2高スループットXRPD装置を用いて得た。強度及び形状の変動に対して補正したVÅNTEC-500ガス面積検出器を備えたBruker D8 Discover General Area Detector Diffraction System(GADDS)にプレートを載せた(製品シート XRD 37、DOC-S88-EXS037V3、図297)。測定精度(ピーク位置)の較正は、NIST SRM1976標準(コランダム)を用いて行った。
データ収集は、XRPDパターンの最も特徴的な部分である1.5°~41.5°の2θ領域で単色CuKα線を用いて室温で行った。各ウェルの回折パターンを、2つの2θ範囲(第一フレームでは1.5°≦2θ≦21.5°、第二フレームでは19.5°≦2θ≦41.5°)で、各フレームの露光時間を90秒として収集した。バックグラウンドの除去又は曲線の平滑化は、XRPDパターンに適用しなかった。XRPD分析時に用いたキャリア物質は、X線に対して透過性であり、バックグラウンドに対する寄与はごく僅かであった。
高解像度X線粉末回折
HR-XRPDデータは、D8 Advance回折計上、CuKα1線(1.54056Å)を用い、ゲルマニウムモノクロメーターでRTで収集した。回折データは、1.5~41.5°2θの2θ範囲で収集した。半導体LynxEye検出器での検出器スキャンは、ステップあたり0.016°を用い、4秒/ステップのスキャン速度で行った(DOC-M88-EXX95 V2-11.2007、図298)。サンプルを、長さ8mm、外径0.4mmのガラスキャピラリーで測定した。
計算
リートベルト計算では、格子パラメータ、結晶系、さらには原子位置を、単結晶ファイル(cif)から得た。Oxa1、Oxa1b、及びOxa2に対する結果を表38に示す。精密化の過程で、以下のパラメータを精密化した。
- 格子定数;
- バックグラウンド;
- 機器の形状;
- ゼロシフト;
- 吸収
原子位置も熱運動パラメータも全体プロセスの過程で精密化しなかった。以下のフィッティング基準を用いた:
・Yo,m及びYc,mは、それぞれ、データ点mでの実測データ及び計算データである。
・Mは、データ点の数である。
・Pは、パラメータの数である。
・wは、データ点mに対して与えられた重み付けであり、それは、計数統計においてw=1/σ(Yo,mで与えられ、σ(Yo,m)は、Yo,mの誤差である。
Figure 2024038072000052
Figure 2024038072000053
Figure 2024038072000054
単結晶回折
単結晶測定を、Nonius Kappa-CCD回折計で行った。データは296Kで収集した。構造を、SHELXT-2014/7(Sheldrick, G. M., 2008)による直接法を用いて解析した。構造を、SHELXL-2014/7(Sheldrick, G. M., 2008)を用い、完全行列最小二乗精密化法によって精密化した。
Figure 2024038072000055
Figure 2024038072000056
熱分析
TGA/SDTA及びTGMS分析
結晶からの溶媒又は水の喪失に起因する質量減少を、TGA/熱流で特定した。TGA/DSC 3+ STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)での昇温時にサンプル重量をモニタリングすることで、重量対温度曲線を得た。TGA/DSC 3+の温度較正は、インジウム及びアルミニウムを用いて行った。サンプル(およそ2mg)を100μLのアルミニウムるつぼに秤量し、密封した。シールにピンホールをあけ、特に断りのない限り、TGA中、10℃/分の昇温速度で25から300℃までるつぼを加熱した。パージには、乾燥Nガスを用いた。
TGAサンプルから発生したガスを、Omnistar GSD 301 T2質量分析計(Pfeiffer Vacuum GmbH,Germany)で分析した。このMSは、四重極質量分析計であり、0~200amuの範囲内の質量が分析される。
DSC分析
溶融特性は、熱流束型DSC3+ STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)で記録したDSCサーモグラムから得た。DSC3+は、インジウム(m.p.=156.6℃;δHf=28.45J/g)及び亜鉛(m.p.=419.6℃;δHf=107.5J/g)の小片を用いて、温度及びエンタルピーについて較正した。サンプル(およそ2mg)を、標準的な40μLのアルミニウムパンに密封し、ピンホールをあけ、特に断りのない限り、DSC中、10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで加熱した。測定中は、流量50mL/分の乾燥Nガスを用いてDSC装置をパージした。
プロトンNMR
DMSO-d中でのH-NMR分光法を用いて、化合物の完全性の特性評価を行った。スペクトルは、標準的なパルスシーケンスを用いて、500MHz装置(Bruker BioSpin GmbH)上、室温で記録した(32スキャン)。データの処理は、ACD LabsのソフトウェアSpectrus Processor 2016.2.2(Advanced Chemistry Development Inc. Canada)で行った。
DVS分析
固体物質の様々な形態の吸湿性(水分取り込み)の相違から、相対湿度増加時のそれらの相対的安定性の尺度が得られた。小サンプルの水分収着等温線が、Surface Measurement Systems (London,UK)からのDVS-1システムを用いて得られ、この装置は、数ミリグラムのサンプルで用いるのに適し、0.1μgの精度を有する。相対湿度を、25℃の一定温度の下、収着-脱着-収着の過程で変動させた(45-95-0-45%のRH)。ステップあたりの重量平衡は、最小で1時間
又は最大で6時間での、dm/dt<0.0002に設定した。その後、サンプルをHT-XRPDによって測定した。吸湿性は、欧州薬局方吸湿性分類に従って分類した。25℃/RH80%(24時間)での水の取り込みパーセントが:
・質量変化<0.2%の場合 - 非吸湿性
・質量変化>0.2%且つ<2%の場合 - 僅かに吸湿性
・質量変化>2%且つ<15%の場合 - 中程度の吸湿性
・質量変化>15%の場合 - 非常に吸湿性。
UPLC分析
Figure 2024038072000057
化合物の完全性は、クロマトグラムの「注入ピーク」以外の各ピーク面積と合計ピーク面積とから以下のようにして算出されるピーク面積パーセントとして表される。
Figure 2024038072000058
目的の化合物のピーク面積パーセントは、サンプル中の構成成分の純度の指標として用いられる。
UPLCアッセイ
UPLCアッセイにおいて、ボルシクリブ遊離塩基(プロジェクトS18128から)の溶液を、参照として測定し、そのピーク面積を、TGMSによって特定された溶媒の量を考慮に入れた後に、100%の回収率に帰属した。塩のサンプルを同じ方法で測定し、回収率%を、ここでも溶媒の量を考慮に入れることによって算出した。測定したすべての塩の場合において、<100%の回収率はAPIに帰属することができ、残りの回収率%は、対イオンに帰属することができ、そこからAPI:対イオンの比を特定することができた(表40)。
Figure 2024038072000059
新規な形態の特性評価
Oxa1シリーズ
Oxa1シリーズを、単結晶X線回折に基づいて、溶媒分子及び/又は水を収容可能なキャビティを有する半シュウ酸塩/半水和物結晶構造として特性評価した。図160は、異なるOxa1の形態が互いに関連している様子の概略を模式的に示す。
Oxa1a、Oxa1c、及びOxa1dの[100]方向に沿って見た結晶構造を図161に示す。Oxa1dでは、構造のキャビティ中にエタノール及び水が存在していたが、Oxa1c及びOxa1dでは、水だけが存在していた。
Oxa1a、Oxa1c、及びOxa1dの単位格子寸法は、乾燥前後での単結晶構造
データから特定し、一方Oxa1及びOxa1bの単位格子寸法は、HR-XRPDデータから得た(表41)。周囲条件下での溶媒及び水の除去時に、Oxa1構造の単位格子体積(V)は小さくなった。さらに、間隙溶媒/水の除去時に、単位格子寸法a及びb、並びに軸間角βは小さくなった一方で、単位格子寸法bは大きくなった。Oxa1形態のXRPDパターンを図162に重ねて示す。
Figure 2024038072000060
Oxa1
Oxa1を、ボルシクリブに対する塩スクリーニングにおける唯一のシュウ酸塩形態として得た(プロジェクトS18128)。そのスクリーニングからは、Oxa1は、1:0.55及び1:1.1の両方のAPI:CI比を用いて、THF、エタノール、及びアセトンからの冷却結晶化によって得ることができた。
高解像度XRPD(HR-XRPD)分析を、Oxa1に対して行った(実験ID:SSm12、プロジェクトS18128)。リートベルト解析(図163)から、Oxa1が、半シュウ酸塩/半水和物形態として存在する純結晶相であることが明らかとなった。類似の固体形態の単結晶分析に基づいて、Oxa1の結晶構造が、溶媒及び水分子を収容可能であるキャビティを含有するものと想定された。HR-XRPD分析からは、構造中に存在する間隙水の量は明らかではなかった。しかし、結晶構造が、Oxa1aよりも大きいがOxa1cよりは小さかったことから、Oxa1は、APIの1分子あたり0.24~0.9当量の間隙水を含有するものと想定することができる。
本スクリーニングにおいて、Oxa1は、高真空下(5mbar、18時間)での乾燥時に、アセトン/水から純相として得られた(実験ID:TCP29)。周囲条件で乾燥した物質は、Oxa1eとして分類し、これはおそらくOxa1と同じ構造を有すると思われるが、そのキャビティ中に残留アセトン及び水を有する。高真空後、間隙溶媒のほとんどは固体から除去され、HT-XRPDに基づいて(図164)、Oxa1が得られた。Oxa1は、2日間にわたるAAC(40℃/RH75%)への曝露時に安定に維持された。
Oxa1(実験ID:TCP29)の熱分析データは、プロジェクトS18128からのOxa1のデータに対応している。Oxa1(実験ID:TCP29)のTGMSデータを図165に示し、そこから、40~140℃での5.6%の総質量減少が明らかとなった。Oxa1は半水和物として分類されることから、およそ1.7%の質量減少は、化学量論水に帰属することができる。残りの3.9%の質量減少は、構造のキャビティ中に
存在し得る間隙水及びアセトンに帰属され得る。熱分解は約180℃で開始した。
Oxa1(実験ID:TCP29)のDSC曲線(図166)は、25~160℃に3つの吸熱イベントを示し、これらはおそらく、溶媒/水の喪失に関連するものと思われる。塩の熱分解は、209~230℃のブロードな吸熱イベントによって特徴付けられた。
Oxa1の化学純度を、LCMS分析によって評価した(図167)。結果は、API純度が99.3%(面積%)であり、したがって出発物質(すなわち、95.5%)よりも高かったことを示した。陽イオンスペクトルは、正に荷電した種[M+H]に相当するm/zが470のイオンを示し、遊離塩基の分子質量と一致していた(すなわち、470g/mol)。
図170は、Oxa1(実験ID:TCP29)のH-NMRスペクトルを、S18128からのOxa1(実験ID:SSm12)及びボルシクリブ遊離塩基と比較して示す。本スクリーニングで得られたOxa1のH-NMRスペクトルは、プロジェクトS18128で測定されたOxa1のスペクトルに対応している。Oxa1の得られたH-NMRスペクトルにより、塩のプロトン共鳴が遊離塩基と比較してシフトしていたことから、塩の形成が確認された。
Oxa1a
Oxa1aは、Oxa1dの単結晶を周囲条件でインキュベートすることによって得られた。Oxa1aの結晶構造は、Oxa1dと同じであったが、そのキャビティ中にエタノールは含んでいなかった(図169)。Oxa1aは、単結晶分析に基づいて、およそ0.24当量の非化学量論的間隙水分子を有する半シュウ酸塩/半水和物であると特定された。本試験で見出されたOxa1形態の中で、Oxa1a形態は、最も小さい単位格子寸法を呈した。Oxa1aのシミュレーションによる粉末パターンを、図170に示す。
Oxa1b
Oxa1bは、Oxa1cの単結晶をさらに周囲条件に曝露することによって得られた。Oxa1bの結晶構造は、Oxa1d(初期構造)と同じであると考えることができるが、そのキャビティ中にエタノールは含んでいない。Oxa1bは、Oxa1cと同じ形態であると思われるが、Oxa1bが、APIの1分子あたりおよそ0.24~0.9当量の間隙水を含む半シュウ酸塩/半水和物であると推定されたことから、Oxa1bと比べて非化学量論水が少ない。リートベルト解析(図171)から、Oxa1bが、測定可能な不純物をまったく含まない結晶相であることが明らかとなった。Oxa1bは、さらなる乾燥によってOxa1を介してOxa1aに変換される中間体であった。
Oxa1c
Oxa1cは、Oxa1d(エタノール溶媒和物)の単結晶を周囲条件でインキュベートすることによって得られた。Oxa1cの結晶構造は、Oxa1dと同じであったが、そのキャビティ中にエタノールは含んでいなかった。Oxa1aは、単結晶分析に基づいて(図172)、APIの1分子あたりおよそ1.7当量の間隙水分子をそのキャビティ中に含む半シュウ酸塩/半水和物であると特定された。Oxa1cの非対称の単位格子の図を、図173に示す。室温でさらに乾燥すると、Oxa1cは、中間体Oxa1b及びOxa1を介してOxa1aに変換された。Oxa1aの計算による粉末パターンを、図174に示す。
Oxa1d
Oxa1dは、還流溶液からの冷却によるエタノールからのOxa2(出発物質)の再結晶を通して、単結晶として得られた。単結晶データ分析に基づいて、Oxa1dは、A
PIの1分子あたり0.36当量の間隙エタノール及び0.25当量の間隙水分子をそのキャビティ中に含む半シュウ酸塩/半水和物構造として得られた。Oxa1dにおける2つの対称的に独立した分子の分子構造を、図175に示す。Oxa1dの[100]方向の結晶充填モチーフを、図176に示す。Oxa1dの計算による粉末パターンを、図177に示す。
Oxa1e
Oxa1e(実験ID:TCP29)は、アセトン/水(90/10)から得られ、その粉末パターンは、エタノール溶媒和物から測定した粉末パターンに類似している(Oxa1d、図178)。おそらくOxa1eは、構造のキャビティ内にアセトンが存在する半シュウ酸塩/半水和物として存在したものと思われる。Oxa1eは、高真空下での乾燥時及びAAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露後に、Oxa1に変換された。
Oxa2
出発物質は、Oxa2として同定され、多形スクリーニングで最も多くの場合に得られた形態であった。図179は、出発物質として、及び2-プロパノールからの結晶化(実験ID:TCP18)から得られたOxa2物質のHT-XRPDパターンを重ねて示す。出発物質のOxa2形態は、結晶不純物に関連する追加の回折ピークを有しており、一方多形スクリーニングから得たOxa2では、この不純物は検出されなかった。Oxa2は、AAC(40℃/RH75%)への曝露時及び高真空下(5mbar)での乾燥後に安定であった。
図180のTGMS分析は、40~140℃でおよそ2.1%の水が放出されたことを示し、これは、APIの1分子あたり0.6分子の水に相当する。水は、加熱時に少しずつ除去されたことから、未結合の非化学量論種として存在したものと思われる。180~240℃において、著しい質量減少によって示されるように、物質は熱分解を受けた。
Oxa2(実験ID:TCP18)のDSC分析を、図181に示す。小さい吸熱イベントが、99℃に見られた。199~232℃のブロードな吸熱イベントは、塩の熱分解に関連し得る。
Oxa2(実験ID:TCP18)の化学純度を、LCMS分析によって評価した(図182)。結果は、API純度が98.2%(面積%)であり、出発物質(95.5%)に対して増加していたことを示した。陽イオンスペクトルは、正に荷電した種[M+H]に相当するm/zが470のイオンを示し、遊離塩基の分子質量と一致していた(すなわち、470g/mol)。LCMSアッセイ分析に基づいて、Oxa2におけるAPI:オキサレートの比は、おそらく1:0.5であると思われ、このことは、出発物質(Oxa2)に対して得られたアッセイ結果を確認するものである。
図183は、Oxa2(実験ID:TCP18)のH-NMRスペクトルを、遊離塩基(出発物質、プロジェクトS18128)及びOxa2(出発物質、プロジェクトS18128A)と比較して示す。遊離塩基と比較して、Oxa2のNMRピークは低磁場にシフトしており、このことは、Oxa2が塩として単離されたことを確認するものである。Oxa2(実験ID:TCP18)のH-NMRスペクトルは、出発物質として得たOxa2と実質的に同じであった。1.05ppmの2-プロパノールのシグナルにより、固相中のAPI:2-プロパノール比は、1:0.04であり、これは、TGMS(図180)で見られたおよそ0.4%の質量減少に相当する。
Oxa3
2-プロパノール/水(90/10、実験ID:TCP30)から単離されて周囲条件
で乾燥した固体を、Oxa3として分類した。この物質は、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時は安定であったが、高真空(5mbar、18時間)への曝露時には、Oxa3は、Oxa1+Oxa4に変換された。
いくつかの実験では、アモルファス物質は、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時にOxa3に変換された。さらに、クロロホルムから得られた物質は(実験ID:TCP21)、最初はOxa6として得られたが、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時にOxa3に変換された。
Oxa4
本スクリーニングにおいて、Oxa4は、Oxa1との混合物としてのみ得ることができた(図185)。Oxa1+Oxa4混合物は、2-プロパノール/水(90/10、実験ID:TCP30)からのOxa3物質を高真空(5mbar、18時間)に曝露した後に得られた。
Oxa5
シュウ酸の1M水溶液との組み合わせた(1:1.3のAPI:CI比)エタノールからの遊離塩基の冷却結晶化(実験ID:SSm2)によって、Oxa5の結晶化を得た(図186)。HT-XRPDによって示されるように、Oxa5は、エタノール溶媒和物Oxa1dと異なっており、及びエタノールからの多形スクリーニングでられたOxa7(実験ID:TCP23)とも異なっていた。Oxa5を短期間のストレス条件(40℃/RH75%、1日間)に曝露し、物質をXRPDで再度分析した。40℃/RH75%での僅かに1日後、物質は異なる形態に変換された。Oxa5の不安定性を考えて、この物質はこれ以上調べなかった。
Oxa6
Oxa6は、クロロホルムから得られた塩形態であった(実験ID:TCP21)。HT-XRPDパターンによって示されるように(図187)、Oxa6は、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時にOxa3に変換された。
Oxa7
Oxa7は、エタノール中でのアモルファスのボルシクリブシュウ酸塩の熱サイクルによって得られた塩形態であった(実験ID:TCP23)。Oxa7は、高真空下での乾燥時及びAAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時に、物理的に安定に維持された。真空乾燥したOxa7サンプル(実験ID:TCP23)を、この形態のさらなる分析特性評価のために用いた。
図189のTGMS分析は、40~140℃でおよそ3.4%の水が放出されたことを示し、これは、APIの1分子あたりおよそ1.1分子の水に相当する。180~240℃において、著しい質量減少によって示されるように、物質は熱分解を受けた。
Oxa7のDSC分析を、図190に示す。2つの吸熱イベントが、85℃及び154℃に見られた。198~232℃のブロードな吸熱イベントは、塩の熱分解に関連し得る。
Oxa7の化学純度を、LCMS分析によって評価した(図191)。結果は、API純度が96.9%(面積%)であり、出発物質(95.5%)に対して僅かに増加していたことを示した。陽イオンスペクトルは、正に荷電した種[M+H]に相当するm/zが470のイオンを示し、遊離塩基の分子質量と一致していた(すなわち、470g/mol)。LCMSアッセイ分析に基づいて、API:オキサレートの比は、おそらく1:
0.5であったと思われる。
図192は、Oxa7のH-NMRスペクトルを、遊離塩基(出発物質、プロジェクトS18128)と比較して示す。遊離塩基と比較して、Oxa7のNMRピークは低磁場にシフトしており、このことは、Oxa7が塩として単離されたことを確認するものであった。1.07及び1.18ppmのエタノールシグナルにより、Oxa7のAPI:エタノール比は、およそ1:0.06であり、これは、TGMS(図189)で検出されたおよそ0.4%の残留溶媒に相当する。
例4:リン酸ボルシクリブ
受け取った物質は、Pho3として分類されるボルシクリブリン酸塩であった。Pho3は、純度95%の水和物であった。多形スクリーニング実験を、偏りのない結晶化を可能とするために、アモルファスのボルシクリブリン酸塩で開始した。本試験では、合計で9つのリン酸塩形態が識別された。Pho1は、AAC(40℃/RH75%、2日間)及び高真空(5mbar、18時間)の両方に対して物理的に安定であった唯一の形態であった。
多形スクリーニングにおいて、Pho1は最も多くの場合に得られた。さらに、本試験において、Pho1は、唯一の無水物形態として識別され、冷却結晶化によって得ることができた。しかし、Pho1は、中程度に吸湿性であり、水の添加によってゲルとなった。Pho1の室温での水への溶解度は、およそ8mg/mlであった。
略語:
AAC 加速劣化条件(40℃及びRH75%で2日間)
Am アモルファス
API 活性医薬成分
cDSC サイクル示差走査熱量測定
DSC 示差走査熱量測定
DVS 動的蒸気収着
H-NMR プロトン核磁気共鳴
HR-XRPD 高解像度X線粉末回折
HT-XRPD 高スループットX線粉末回折
LCMS 液体クロマトグラフィ質量分析
MS 質量分析
ML 母液(液相)
MW 分子量
Pc 結晶性が低い
QSA 凍結乾燥実験の実験ID
RF 応答因子
RH 相対湿度
RT 室温
SAS 溶解度特定実験の実験ID
SM 出発物質
SSm 塩形成実験の実験ID
SSR 固体研究
TCP 熱サイクル実験の実験ID
TGA 熱重量分析
TGMS 熱重量質量分析
TMS テトラメチルシラン
UPLC 超高速液体クロマトグラフィ
DME 1,2-ジメトキシエタン
DMSO-d 重水素化ジメチルスルホキシド
EtOH エタノール
IPA 2-プロパノール
Mao マロン酸塩
MeOH メタノール
Pho リン酸塩
t-BuOH tert-ブタノール
TBME tert-ブチルメチルエーテル
TFE 2,2,2-トリフルオロエタノール
THF テトラヒドロフラン
過去の研究から、HCl塩が複雑な偽多形挙動を呈すること、及びこの物質が水性媒体中でゲルを形成する傾向にあることが示された。フォローアップ試験において、塩スクリーニング(プロジェクトS18128)をME-522に対して行い、それによって、さらなる開発に適する候補としてマロン酸塩、シュウ酸塩、及びリン酸塩を選択した。本試験では、リン酸塩(図193)の多形挙動を、固体形態スクリーニングにおいて評価した。ボルシクリブリン酸塩の新規な結晶相を識別するために、及びさらなる調査に最良の形態を選択するために、15の溶媒を含む熱サイクルスクリーニングを設計した。
この試験は、以下のプロジェクト工程から成っていた:出発物質の特性評価;アモルファスリン酸塩の作製;15の溶媒中における熱力学的固体形態スクリーニング;新規な固体形態の分析特性評価。
28.89グラムのボルシクリブリン酸塩(バッチID:19-09334-01)を、結晶粉末(出発物質)として提供した。プロジェクトS18128からのPho1及びPho2、並びに本プロジェクトの出発物質の高スループットXRPD(HT-XRPD)パターンを、図194に示す。塩スクリーニング(S18128)で得た物質は、Pho1及びPho2として分類し、本試験で受け取った出発物質と比較すると、XRPDは異なっている。したがって、本試験の出発物質は、Pho3として分類した。Pho3は、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時に安定に維持された。
HR-XRPD分析を、出発物質(Pho3)に対して行った。リートベルト解析(図195)から、出発物質が、およそ5%の未識別不純物を含む結晶相であることが明らかとなった。
図196のTGMS分析は、40~160℃でおよそ5.4%の水が放出されたことを示し、これは、APIの1分子あたり1.8分子の水に相当する。200℃より上では、物質は、著しい質量減少によって示されるように、熱分解を受けた。
出発物質(Pho3)のDSC分析を、図197に示す。3つの吸熱イベントが30~165℃に記録され、これは、水及び可能性として他のプロセス溶媒の放出に関連し得る。197℃の吸熱イベントは、Pho3の溶融に関連し得るものであり、一方246℃のブロードな吸熱イベントは、熱分解を表す。
サイクルDSC(cDSC)を、出発物質(Pho3)に対して行って、Pho3が水の除去時に安定であるかどうかを特定した。出発物質のサンプルを170℃まで加熱し(図198A)、HT-XRPDによる分析のために冷却して室温に戻した。HT-XRPDの結果(図199)に示されるように、cDSC後に回収された物質は、結晶性の低いPho3の相であると特定された。このことは、Pho3中の水が、未結合の非化学量論水として存在していたことを示唆している。
cDSCプログラム後の物質を、別のcDSCプログラムに掛けたところ(図198B)、この場合も加熱時に、水の喪失に関連する2つの吸熱イベントを示した。このことは、cDSCによって乾燥した後、Pho3は周囲条件下で水を取り込むことを示している。
APIの化学純度を、LCMS分析によって評価した。結果は、APIの純度が94.8%(面積%)であることを示した。陽イオンスペクトルは、正に荷電した種[M+H]に相当するm/zが470のイオンを示し、遊離塩基の分子質量と一致していた(すなわち、469.8g/mol)。LCMSアッセイ分析から、Pho3におけるAPI:ホスフェートの比は、1:1.6であると推計された。
図201は、Pho3(出発物質)のH-NMRスペクトル及び分子構造を示す。全体として、分子の20個の水素原子のうちの17個を、スペクトル中のピークに帰属することができた。残りの3個の未検出の水素は、APIの2個のOH基及びNH基に相当する。ピロリジン基の11個の脂肪族水素は、2~4ppm(グループa)に出現した。ベンゾピラン環上の2個の芳香族水素原子は、6~7pm(グループb)に出現し、一方ハロゲン化芳香族環の3個の芳香族水素は、さらに低磁場の8ppm付近に出現した(グループc)。12.7ppmの水素(d)は、おそらくヒドロキシル基のうちの1つに属すると思われる。遊離塩基及びPho1の両方のスペクトルと比較すると、出発物質のピロリジン基(a)及びベンゾピラン基(b)のNMRピークだけが、さらに低磁場にシフトした。
動的蒸気収着(DVS)測定を、Pho3(出発物質)に対して行った。図202に示されるように、この物質は、相対湿度(RH)の上昇と共に、次第に水を取り込んだ。25℃/RH80%では、水の取り込みは、およそ6.9%であり、これによって、Pho3の分類は、中程度の吸湿性となった(欧州薬局方吸湿性分類。25℃/RH80%での水の取り込みパーセントが:質量変化<0.2%の場合 - 非吸湿性;質量変化<2%且つ>0.2%の場合 - 僅かに吸湿性;質量変化<15%且つ2%の場合 - 中程度の吸湿性;質量変化>15%の場合 - 非常に吸湿性)。DVS分析後、XRPDによって示されるように、Pho3が回収された。
一般に、多形スクリーニングは、偏った結晶化を避けるために、アモルファス物質で開始することが好ましい。アモルファス物質は、異なる水/有機溶媒混合物からのPho3(出発物質)の凍結乾燥によって作製した。
多形スクリーニングのためのアモルファスのボルシクリブリン酸塩は、アセトン/水(50/50)からの出発物質の凍結乾燥によって作製した。凍結乾燥後、物質をHT-XRPDで分析して、得られた物質がアモルファスであることを確認した(図203)。アモルファス物質のTGMS分析に基づいて(図204)、残留溶媒含有量は、3.0%であった。
図205のDSC曲線は、溶媒除去に関連し得る3つの吸熱イベントを、25~150℃に示している。200~270℃のブロードな吸熱イベントは、リン酸塩の熱分解に相当する。
H-NMR分析から、塩の化学的完全性が、凍結乾燥後も維持されていたことが確認された(図206)。アモルファス物質のケミカルシフトは、出発物質のリン酸塩(Pho3)に相当するものであったが、遊離塩基に対してシフトしていた。
凍結乾燥によって作製したアモルファスのボルシクリブリン酸塩を用いて、熱サイクル実験を開始した。選択された溶媒系において、懸濁液をRTで調製した。続いて、この混合物を温度プロファイルに掛けた。温度プロファイルの完了後、遠心分離によって固体を溶液から分離し、周囲条件下及び高真空下で乾燥し、その後回収して、HT-XRPDで分析した。液相も高真空下で乾燥し、その後回収して、HT-XRPDで分析した。すべての固体をAAC(40℃/RH75%、2日間)に曝露した。
リン酸塩に対して行った多形スクリーニングで、合計で6つの塩形態が識別され、それらを、Pho1、Pho4、Pho5、Pho6、Pho7、及びPho8と称した。結果を表42にまとめて示す。
Pho1は、多形スクリーニングで広く見られた塩であり、それは過去のスクリーニング(S18128)で識別された形態でもあった。いくつかの実験では、Pho1は、混合物として得られ、これらの実験のいくつかでは(例:実験ID:TCP19)、混合物は、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時に不安定であった。しかし、純Pho1は、真空乾燥(5mbar、18時間)後及びAAC(40℃/RH75%、2日間)後の両方で安定であった唯一の形態であった。
Pho4は、1,2-ジメトキシエタン及びTHF中での熱サイクル実験で得られ、1,4-ジオキサン、2-プロパノール、及びアセトン/水(90/10、体積/体積)中での熱サイクル実験では、Pho1との混合物として得られた。高真空(5mbar、18時間)への曝露時に、Pho4はPho1に変換された。
Pho5は、アセトン中での熱サイクル実験から得られた、周囲条件で乾燥した固体物質であった。Pho5は、AAC(40℃/RH75%、2日間)及び高真空(5mbar、18時間)への曝露時に、それぞれPho8及びPho1+ピークに変換されたため、不安定であった。
Pho6は、溶媒のクロロホルム、酢酸エチル、ギ酸エチル、及びt-ブチルメチルエーテル(TBME)からを含むいくつかの熱サイクル実験から、結晶性の低い固体物質として得られた。Pho6は、高真空(5mbar、18時間)への曝露後は安定に維持されたが、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時にはアモルファスとなった。
Pho7は、2-プロパノール/水(90/10、体積/体積;実験ID:TCP30)中でのアモルファスのボルシクリブリン酸塩の熱サイクルによって得られた塩形態であった。Pho7は、高真空下での乾燥時は物理的に安定に維持されたが、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露後は、物質に追加の回折ピークが見られた。
Pho8は、アセトン及びアセトニトリル中での熱サイクル実験から得られた、周囲条件で乾燥した物質をAAC(40℃/RH75%、2日間)へ曝露した後、結晶性の低い相として得られた。対応する真空乾燥した固体は、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露後、Pho8+ピークに変換された。
Figure 2024038072000061
冷却結晶化実験
ボルシクリブリン酸塩に対する多形スクリーニングから、リン酸塩形態の中でPho1が最も有望な候補であることが見出された。冷却結晶化実験を、Pho1の結晶化を制御する試みとして行った。これらの実験は、3つの異なる結晶化溶媒で調製したボルシクリブ遊離塩基溶液(バッチ1694ER1201から)及び1.1当量の純リン酸を、50℃で混合することによって開始した。続いて、この混合物を5℃まで冷却し、固体を単離し、XRPDで分析した。結晶化溶媒は、プロジェクトS18128で特定された遊離塩基の溶解度に基づいて選択した。
対イオンを添加すると、物質は直ちに析出し、3つすべての実験において、高密度の懸
濁液を得た。高密度のために、冷却時に懸濁液を適切に撹拌することはできなかった。実験後に回収された少量の液相から、収率が高いことが特定された(81~98%)。
THFからは、新規なリン酸塩形態が識別され、これをPho9として分類した。高真空下(5mbar、18時間)での乾燥時に、Pho9は、Pho1+Pho4の混合物に変換された。エタノールからは、Pho3が回収され、これは、高真空時(5mbar、18時間)にPho1に変換された。アセトンからは、Pho1が得られ、これは、高真空下(5mbar、18時間)での乾燥時に安定に維持された。
固体の特性評価
本試験で識別された固体形態の粉末回折パターンを、重ねて図207に提示する。Pho1、Pho6、及びPho7に対しては、これらの形態が、真空乾燥後(5mbar、18時間)に純相として得られたことから、DSC、TGMS、UPLC、及びH-NMRを含む追加の分析データを得た。これらの形態のAPI:CI比は、UPLCアッセイ法によって推計し、1.1~1.6の範囲内であった。異なるリン酸塩形態に対するH-NMRスペクトルは、遊離塩基に対して著しい共鳴シフトを示し、このことから、塩の形成が発生したことが確認された。各形態に対する分析データは、本明細書で提示されるが、結果の概要を、以下及び表43に提示する。
Pho1は、高純度(98.4%)で残留水が約1.4%である無水形態として識別された。この物質は200℃で溶融し、210℃で熱分解を起こした。その実質的に無水である性質、並びにAAC及び高真空の両方に対する物理的安定性のために、Pho1を、ボルシクリブの最も有望なリン酸塩形態として選択し、したがって、この物質に対する追加の分析データを得た。Pho1は、不定の湿度条件(RH0~95%)に対して安定であり、中程度の吸湿性として分類された。この物質は、水を添加するとゲルとなり、室温での水への溶解度は、およそ8mg/mlであった。
出発物質Pho3は、多形スクリーニングでは得られなかった。Pho3は、エタノールからの冷却結晶化実験(実験ID:SSm2)によって裏付けられるように、AAC(40℃/RH75%、2日間)に対しては物理的に安定であったが、高真空(5mbar、18時間)への曝露時は不安定であった。
Pho4及びPho5はいずれも、真空下での乾燥時に物理的に不安定であった。Pho6及びPho7は、残留プロセス溶媒を含有する水和物として識別され、これは、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時に不安定であった。Pho8は、AAC(40℃/RH75%、2日間)後にのみ得ることができ、一方Pho9は、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時に物理的に不安定であり、THFからの冷却結晶化によってのみ得ることができた。
Figure 2024038072000062
ボルシクリブリン酸塩に対する多形スクリーニングは、新規な形態の偏りのない結晶化を促進するために、アモルファス相で開始した。本試験では、合計で9つの多形形態が識別され、その中でPho1は、AAC(40℃/RH75%、2日間)及び高真空(5mbar、18時間)の両方に対して物理的に安定であった唯一の形態であった。多形スクリーニングにおいて、Pho1は最も多くの場合に得られた。さらに、Pho1は、表面に吸着された残留水を含有する無水形態であり得る。Pho1は、エタノールから(真空下での乾燥後)及びアセトンからの冷却結晶化によって得ることができた。これらの考察に基づいて、Pho1が、調べた実験条件内で最良のボルシクリブのリン酸塩形態であると判断した。しかし、選択されたPho1形態に対する追加のデータから、この物質が中程度の吸湿性であることが示された。水を添加すると、Pho1はゲルとなった。Pho1の室温での水への溶解度は、およそ8mg/mlであった。
28.89グラムのME-522(バッチID:19-09334-01)を、結晶粉末として提供した。冷却結晶化実験に用いた遊離塩基は、プロジェクトS18128、バッチ1694ER1201から取った。他の化学物質は、Sigma Aldrich、Fisher Scientific、又はVWRから購入した。化学物質は、少なくとも研究グレードのものであり、UPLC分析に用いた溶媒は、UPLCグレードであった。
多形スクリーニングは、偏りのない結晶化を促進するために、アモルファス相で開始することが好ましい。アモルファス物質の作製を、異なる有機/水混合物からPho3(出発物質)を凍結乾燥することによって試みた(表44)。
試験した最も極性のプロトン性溶媒(すなわち、水、MeOH/水、及びEtOH/水)では、物質は、20mg/mLの濃度では室温で溶解せず、これらの条件は、したがって、凍結乾燥には不適であった。
アモルファス相は、t-BuOH/水、THF/水、アセトン/水、及びTFE/水の50/50%(体積/体積)で得た溶液を凍結乾燥することによって得た。アモルファス固体の残留溶媒含有量は、最初はTGMSで推計した。溶媒含有量は、真空下での乾燥(
5mbar/RT、18時間)によってさらに低下した。残留溶媒含有量が最も低いアモルファスサンプルは、アセトン/水の50/50%から回収した(実験ID QSA3).これらの条件を21mg/mlの濃度と組み合わせて用いて、多形スクリーニングのためのアモルファス物質を作製した。
API溶液を、アセトン/水 50/50で調製し(実験ID:QSA8)、18のバイアルに液体を分けた。この溶液を液体窒素中で凍結し、凍結乾燥機(Alpha 2-4 LD,Christ)を用いて高真空下に置いた。溶媒を凍結乾燥によって除去した。アモルファス物質のサンプルを、参照として多形スクリーニングから取り(実験ID:QSA8)、HT-XRPD、TGMS、及びH-NMRで分析した。
Figure 2024038072000063
Pho1(実験ID:TCP23)の水溶性を、定性的溶解度特定の手法で評価した。5.6mgのPho1に、物質が溶解するまで水を50μlずつ添加した(実験ID:SAS2)。裸眼による目視検査を用いて、完全に溶解したかどうかを判断した。700μlの水を添加した後、Pho1は、室温で水に溶解しなかったが、続いて200μlの水を添加した後は(合計で900μl)、物質は完全に溶解した。
約33mgのアモルファスのボルシクリブリン酸塩を、室温で15の溶媒系と混合した(詳細は表45を参照)。続いて、混合物を、Crystal16(商標)装置に入れ、図208に示す温度プロファイルに掛けた。
温度プロファイルの後、遠心分離によって固体を液体から分離し、固相を周囲条件下及び高真空下(5mbar、18時間)で乾燥し、その後回収して、HT-XRPDで分析した。液相を高真空下(5mbar、18時間)で乾燥し、回収された固体をHT-XRPDで分析した。次に、すべての固体を加速劣化条件(40℃/RH75%、2日間)に曝露し、続いてHT-XRPDで再度分析した。
Figure 2024038072000064
冷却結晶化によって、選択されたリン酸塩形態Pho1を調製し、そのような実験の収率を評価するために、さらなる結晶化実験を行った。行った3つの実験は、遊離塩基(プロジェクトS18128用に受け取ったもの、バッチ1694ER1201)の飽和溶液を、エタノール、THF、及びアセトン中、50℃で調製することから成っていた。ボルシクリブの懸濁液を、50℃で3時間インキュベートし、その後ろ過した。1mlの飽和溶液に、1.1当量の純リン酸を添加した。実験条件を表46に記載する。
対イオンの添加後、溶液をCrystal16(商標)装置中で温度プロファイルに掛けた。50℃で30分後、溶液の温度を、10℃/時の冷却速度で5℃まで低下させた。最終温度(5℃)で18時間のエージングを最後に適用した。
温度プロファイルの終了後、遠心分離によって固体を溶液から分離し、周囲条件及び高真空下(5mbar)で乾燥し、その後回収して、HT-XRPDで分析した。母液を蒸発させて、固体の重量に基づいて収率の評価を行った。
Figure 2024038072000065
XRPDパターンは、Crystallics T2高スループットXRPD装置を用いて得た。強度及び形状の変動に対して補正したVÅNTEC-500ガス面積検出器を備えたBruker D8 Discover General Area Detector Diffraction System(GADDS)にプレートを載せた(製品シート XRD 37、DOC-S88-EXS037V3、図297)。測定精度(ピーク位置)の較正は、NIST SRM1976標準(コランダム)を用いて行った。
データ収集は、XRPDパターンの最も特徴的な部分である1.5°~41.5°の2θ領域で単色CuKα線を用いて室温で行った。各ウェルの回折パターンを、2つの2θ範囲(第一フレームでは1.5°≦2θ≦21.5°、第二フレームでは19.5°≦2θ≦41.5°)で、各フレームの露光時間を90秒として収集した。バックグラウンドの除去又は曲線の平滑化は、XRPDパターンに適用しなかった。XRPD分析時に用いたキャリア物質は、X線に対して透過性であり、バックグラウンドに対する寄与はごく僅かであった。
HR-XRPDデータは、D8 Advance回折計上、CuKα1線(1.54056Å)を用い、ゲルマニウムモノクロメーターでRTで収集した。回折データは、1.5~41.5°2θの2θ範囲で収集した。半導体LynxEye検出器での検出器スキャンは、ステップあたり0.016°を用い、4秒/ステップのスキャン速度で行った(DOC-M88-EXX95 V2-11.2007、図298)。サンプルを、長さ8mm、外径0.4mmのガラスキャピラリーで測定した。
Pho1(S18128)及びPho3(SM、S18128B)に対する結果を表47に示す。精密化の過程で、以下のパラメータを精密化した。
- 格子定数;
- バックグラウンド;
- 機器の形状;
- ゼロシフト;
- 吸収
原子位置も熱運動パラメータも全体プロセスの過程で精密化しなかった。以下のフィッティング基準を用いた:
・Yo,m及びYc,mは、それぞれ、データ点mでの実測データ及び計算データである。
・Mは、データ点の数である。
・Pは、パラメータの数である。
・wは、データ点mに対して与えられた重み付けであり、それは、計数統計においてw=1/σ(Yo,mで与えられ、σ(Yo,m)は、Yo,mの誤差である。
Figure 2024038072000066
Figure 2024038072000067
結晶からの溶媒又は水の喪失に起因する質量減少を、TGA/熱流で特定した。TGA/DSC 3+ STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)での昇温時にサンプル重量をモニタリングすることで、重量対温度曲線を得た。TGA/DSC 3+の温度較正は、インジウム及びアルミニウムを用いて行った。サンプル(およそ2mg)を100μLのアルミニウムるつぼに秤量し、密封した。シールにピンホールをあけ、特に断りのない限り、TGA中、10℃/分の昇温速度で25から300℃までるつぼを加熱した。パージには、乾燥Nガスを用いた。
TGAサンプルから発生したガスを、Omnistar GSD 301 T2質量分析計(Pfeiffer Vacuum GmbH,Germany)で分析した。このMSは、四重極質量分析計であり、0~200amuの範囲内の質量が分析される。
溶融特性は、熱流束型DSC3+ STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)で記録したDSCサーモグラムから得た。DSC3+は、インジウム(m.p.=156.6℃;δHf=28.45J/g)及び亜鉛(m.p.=419.6℃;δHf=107.5J/g)の小片を用いて、温度及びエンタルピーについて較正した。サンプル(およそ2mg)を、標準的な40μLのアルミニウムパンに密封し、ピンホールをあけ、特に断りのない限り、DSC中、10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで加熱した。測定中は、流量50mL/分の乾燥Nガスを用いてDSC装置をパージした。
DMSO-d中でのH-NMR分光法を用いて、化合物の完全性の特性評価を行った。スペクトルは、標準的なパルスシーケンスを用いて、500MHz装置(Bruker BioSpin GmbH)上、室温で記録した(32スキャン)。データの処理は、ACD LabsのソフトウェアSpectrus Processor 2016.2.2(Advanced Chemistry Development Inc. Canada)で行った。
固体物質の様々な形態の吸湿性(水分取り込み)の相違から、相対湿度増加時のそれらの相対的安定性の尺度が得られた。小サンプルの水分収着等温線が、Surface Measurement Systems (London,UK)からのDVS-1システムを用いて得られ、この装置は、数ミリグラムのサンプルで用いるのに適し、0.1μgの精度を有する。相対湿度を、25℃の一定温度の下、収着-脱着-収着の過程で変動させた(40-95-0-40%のRH)。ステップあたりの重量平衡は、最小で1時間又は最大で6時間での、dm/dt<0.0002に設定した。その後、サンプルをHT-XRPDによって測定した。
吸湿性は、欧州薬局方吸湿性分類に従って分類した。25℃/RH80%(24時間)での水の取り込みパーセントが:質量変化<0.2%の場合 - 非吸湿性;質量変化>0.2%且つ<2%の場合 - 僅かに吸湿性;質量変化>2%且つ<15%の場合 -
中程度の吸湿性;質量変化>15%の場合 - 非常に吸湿性。
UPLC分析
Figure 2024038072000068
化合物の完全性は、クロマトグラムの「注入ピーク」以外の各ピーク面積と合計ピーク面積とから以下のようにして算出されるピーク面積パーセントとして表される。
Figure 2024038072000069
目的の化合物のピーク面積パーセントは、サンプル中の構成成分の純度の指標として用いられる。
UPLCアッセイにおいて、ボルシクリブ遊離塩基(プロジェクトS18128から)の溶液を、参照として測定し、そのピーク面積を、TGMSによって特定された溶媒の量を考慮に入れた後に、100%の回収率に帰属した。塩のサンプルを同じ方法で測定し、回収率%を、ここでも溶媒の量を考慮に入れることによって算出した。測定したすべての塩の場合において、<100%の回収率はAPIに帰属することができ、残りの回収率%は、対イオンに帰属することができ、そこからAPI:対イオンの比を特定することがで
きた(表48)。
Figure 2024038072000070
Pho1は、多形スクリーニングで広く得られた形態であった。エタノールを含む熱サイクル実験(実験ID:TCP23)から得た真空乾燥Pho1を、分析特性評価のために用いた。高真空(5mbar)又はAAC(40℃/RH75%、2日間)のいずれかへの曝露時、Pho1は、XRPDパターン(図209)に示されるように、安定に維持された。
図210のPho1のTGMS分析は、40~120℃でおよそ1.4%の水が放出されたことを示し、これは、APIの1分子あたり0.4分子の水に相当する。約190℃の吸熱イベントは、おそらくPho1の溶融に相当すると思われる。200℃より上では、物質は、著しい質量減少によって示されるように、熱分解を受けた。
出発物質(Pho1)のDSC分析を、図211に示す。25~80℃のブロードな吸熱イベントは、水の放出に関連し得る。200℃のシャープな吸熱イベントは、Pho1の溶融に関連し得るものであり、一方217~269℃のブロードな吸熱イベントは、熱分解を表す。
サイクルDSC(cDSC)を、Pho1(実験ID:TCP23)に対して行って、Pho1が水の除去後に安定に維持されるかどうかを特定した。Pho1のサンプルを140℃まで加熱し(図212A)、HT-XRPDによる分析のために冷却して室温に戻した。HT-XRPDの結果(図213)によって示されるように、cDSC後にPho1が回収され、このことは、Pho1中の水が、未結合の非化学量論水として存在し得る、又は固体粒子の表面上に吸着され得ることを示唆している。
Pho1の化学純度を、LCMS分析によって評価した(図214)。結果は、APIの純度が98.4%(面積%)であることを示した。陽イオンスペクトルは、正に荷電した種[M+H]に相当するm/zが470のイオンを示し、遊離塩基の分子質量と一致していた(すなわち、469.8g/mol)。LCMSアッセイ分析から、Pho1のAPI:ホスフェートの比は、1:1.4であると推計された。
図215は、Pho1のH-NMRスペクトルを、遊離塩基(出発物質、プロジェクトS18128)と比較して示す。遊離塩基と比較して、Pho1のNMRピークは低磁場にシフトしており、このことは、Pho1が塩として単離されたことを示した。
動的蒸気収着(DVS)測定を、Pho1(実験ID:TCP23)に対して行った。図216に示されるように、この物質は、相対湿度(RH)の上昇と共に、次第に水を取り込んだ。25℃/RH80%では、水の取り込みは、およそ5.0%であり、これによって、この物質は中程度の吸湿性とされる(欧州薬局方吸湿性分類。25℃/RH80%での水の取り込みパーセントが:質量変化<0.2%の場合 - 非吸湿性;質量変化<2%且つ>0.2%の場合 - 僅かに吸湿性;質量変化<15%且つ2%の場合 - 中程度の吸湿性;質量変化>15%の場合 - 非常に吸湿性)。DVS分析後、XRPDによって示されるように、Pho1が回収された。
Pho1(実験ID:TCP23)の室温における水への溶解度を、定性的溶解度特定によって特定した。Pho1の水への溶解度は、およそ6~8mg/mlであった。固体物質に水を添加すると、Pho1は、ゲル状の物質となった(図217)。
Pho2は、プロジェクトS18128ではTHFから結晶性の低い相として得られたが、本試験では得られなかった。Pho2のXRPDパターンを、図218に示す。
Pho3は、受け取った物質であったが、熱サイクル実験では得られなかった。エタノールからの純リン酸を用いたボルシクリブ遊離塩基の冷却結晶化実験では、周囲条件下で乾燥した後にPho3が得られた(図219)。しかし、Pho3は、物質を高真空下(5mbar、18時間)で乾燥した後、Pho1に変換された。
Pho4は、1,2-ジメトキシエタン及びTHF中での熱サイクル実験で得られ、1,4-ジオキサン、2-プロパノール、及びアセトン/水(90/10、体積/体積)中での熱サイクル実験では、Pho1との混合物として得られた。1,2-ジメトキシエタン中での熱サイクル実験(実験ID:TCP16)で得られた物質のXRPDパターンを、図220に示す。周囲条件で乾燥した物質は、Pho4として得られ、これは、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時に安定に維持された。Pho4を高真空下(5mbar、18時間)で乾燥すると、物質はPho1に変換された。
Pho5は、アセトン中での熱サイクル実験(実験ID:TCP19)から得られた、周囲条件で乾燥した固体物質であった。Pho5は、AAC(40℃/RH75%、2日間)及び高真空(5mbar、18時間)への曝露時に、それぞれPho8及びPho1+ピークに変換されたため、不安定であった(図221)。
Pho6は、溶媒のクロロホルム、酢酸エチル、ギ酸エチル、及びt-ブチルメチルエーテル(TBME)からを含むいくつかの熱サイクル実験から、結晶性の低い固体物質として得られた。図222は、TBME中での熱サイクル実験から得た物質(実験ID:TCP26)のHT-XRPDパターンを重ねて示す。Pho6は、高真空(5mbar、18時間)への曝露後は安定に維持されたが、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露時にはアモルファスとなった。
図223のPho6のTGMS分析は、30~180℃でおよそ2.2%の水及び1.5%のTBMEが放出されたことを示す。Pho6中のTBMEの量は、H-NMR分析によって確認した(図226)。180℃より上では、Pho6は、著しい質量減少によって示されるように、熱分解を受けた。
Pho6のDSC分析を、図224に示す。143℃の前に吸熱イベントが検出され、これらは、水及びTBMEの除去に関連していた。146℃での発熱イベントは、再結晶イベントを示し得るものであり、一方176℃での吸熱イベントは、塩の溶融に関連し得る。物質の熱分解は、211~267℃のブロードな吸熱イベントによって特徴付けられた。
Pho6の化学純度を、LCMS分析によって評価した。結果は、APIの純度が94.3%(面積%)であることを示した。陽イオンスペクトルは、正に荷電した種[M+H]に相当するm/zが470のイオンを示し、遊離塩基の分子質量と一致していた(すなわち、469.8g/mol)。LCMSアッセイ分析から、Pho6のAPI:ホスフェートの比は、1:1.6であると推計された。
図231は、Pho6のH-NMRスペクトルを、遊離塩基(出発物質、プロジェクトS18128)と比較して示す。遊離塩基と比較して、Pho6のNMRピークは低磁場にシフトしており、このことは、Pho6が塩として単離されたことを確認するものであった。1.12ppmのTBMEのシグナルに基づいて、Pho6:TBMEの比は、1:0.1と推計され、これは、TGMSの結果(図223)によると、およそ1.4%に相当する。
Pho7は、2-プロパノール/水(90/10、体積/体積;実験ID:TCP30)中でのアモルファスのボルシクリブリン酸塩の熱サイクルによって得られた塩形態であった。図227に示されるように、Pho7は、高真空下での乾燥時は物理的に安定に維持されたが、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露後は、物質に追加の回折ピークが見られた。真空乾燥したPho7サンプル(実験ID:TCP30)を、この形態のさらなる分析特性評価のために用いた。
図228のTGMS分析は、25~180℃でおよそ4.0%の水及び2-プロパノールが放出されたことを示す。200℃より上では、物質は、著しい質量減少によって示されるように、熱分解を受けた。
Pho7のDSC分析を、図229に示す。200℃までにいくつかの吸熱及び発熱イベントが検出され、一方、著しい熱分解が、213~261℃のブロードな吸熱イベントによって特徴付けられた。
Pho7の化学純度を、LCMS分析によって評価した。結果は、APIの純度が98.4%(面積%)であることを示した。陽イオンスペクトルは、正に荷電した種[M+H]に相当するm/zが470のイオンを示し、遊離塩基の分子質量と一致していた(すなわち、469.8g/mol)。LCMSアッセイ分析から、Pho7のAPI:ホスフェートの比は、1:1.1であると推計された。
図231は、Pho7のH-NMRスペクトルを、遊離塩基(出発物質、プロジェクトS18128)と比較して示す。遊離塩基と比較して、Pho7のNMRピークは低磁場にシフトしており、このことは、Pho7が塩として単離されたことを確認するものであった。1.06ppmの2-プロパノールのシグナルによると、Pho7:2-プロパノールの比は、1:0.15であった。したがって、およそ1.7%の2-プロパノールが固相中に存在していた。
Pho8(図232)は、アセトン及びアセトニトリル中での熱サイクル実験から得られた、周囲条件で乾燥した物質をAAC(40℃/RH75%、2日間)へ曝露した後、結晶性の低い相として得られた。対応する真空乾燥した固体は、Pho1+ピークとして
分類され、AAC(40℃/RH75%、2日間)への曝露後、Pho8+ピークに変換された。純物質の作製が困難であったことから、Pho8についてのさらなる分析データは得られなかった。
Pho9は、純リン酸と組み合わせたTHF中に溶解したボルシクリブ遊離塩基を用いた冷却結晶化によって、周囲条件で乾燥した物質として得られた(実験ID:SSm1)。高真空下(5mbar、18時間)での乾燥時に、Pho9は、Pho1+Pho4の混合物に変換された(図233)。
例5:マロン酸ボルシクリブ
24の溶媒を含む多形スクリーニングを設計した。選択されたマロン酸塩を、20gのスケールで作製した。受け取った物質は、ボルシクリブ塩化物塩であり、これを用いて遊離塩基を作製した。マロン酸塩は、1等モル量のマロン酸を含有する遊離塩基溶液を凍結乾燥することによって調製した。多形スクリーニング実験を、偏りのない結晶化を促進するために、アモルファスのボルシクリブマロン酸塩で開始した。Mao1は、最も豊富に見られた相であり、過去の塩スクリーニングにおいて識別された無水固体形態であった。Mao1は、非吸湿性であり、およそ13mg/mlの水に対する溶解度を有していた。少量のアリコートの水を添加すると、Mao1は懸濁液となり、ゲルの形成は見られなかった。大スケールでの冷却結晶化実験によって、高収率及び高純度でMao1を得ることに成功した。Mao3、Mao4、及びMao5と称する他の3つの相は、非常に少ない結晶化条件からの試験で識別された。これらの3つの新規な結晶相は、水和物であると思われた。これらの相はすべて、物理的に不安定であり、真空下での乾燥時又はストレス条件への曝露時にMao1に変換された。
略語:
AAC 加速劣化条件(40℃及びRH75%)
Am アモルファス
API 活性医薬成分
DSC 示差走査熱量測定
GEN 遊離塩基変換実験の実験ID
H-NMR プロトン核磁気共鳴
HR-XRPD 高解像度X線粉末回折
HT-XRPD 高スループットX線粉末回折
ML 母液(液相)
MS 質量分析
RF 応答因子
RH 相対湿度
RT 室温
SM 出発物質
TCP 熱サイクル実験の実験ID
TGA 熱重量分析
TGMS 熱重量質量分析
UPLC 超高速液体クロマトグラフィ
AcN アセトニトリル
DCM ジクロロメタン
EtOH エタノール
HCl 塩酸塩
IPA 2-プロパノール
Mao マロン酸塩
MEK メチルエチルケトン
MTBE メチルtert-ブチルエーテル
THF テトラヒドロフラン
本試験では、マロン酸塩の多形挙動を、固体形態スクリーニングにおいて評価した。ボルシクリブマロン酸塩の新規な結晶相を識別するために、及びさらなる調査のために熱力学的に安定な形態を選択するために、24の溶媒を組み合わせた熱サイクルスクリーニングをデザインした。この試験は、以下のプロジェクト工程から成っていた:ME-522塩酸塩からの遊離塩基への変換;マロン酸塩の調製;24の溶媒中での熱力学的固体形態スクリーニング;選択されたボルシクリブマロン酸塩形態のスケールアップ及び特性評価;新規な固体形態の分析特性評価。
95gのME-522 HCl塩(バッチ1201)を提供した。ボルシクリブ遊離塩基を、ME-522塩酸塩から調製した。およそ3.4グラムのME-522(モノHCl塩)を、400mlの水に懸濁させた(pH約4.3)。2Mの水酸化ナトリウム溶液を添加して、pHをpH=11に調節した。30分後、溶液の色は黄色になり、析出が発生した。析出した固体をろ過し、ろ液のpHが8.5となるまで水で洗浄した。物質を、50℃及び5mbarで一晩乾燥した。得られた固体を、高スループットXRPD(HT-XRPD)、DSC、TGMS、UPLC、及びH-NMRで分析した。
得られた遊離塩基のHT-XRPD分析は、過去の試験(S18128)のために受け取った遊離塩基とは異なる粉末パターンを示した。この粉末パターンを図235に提示する。
回収された遊離塩基のTGA/TGMS分析(図236)は、MSシグナルに基づいて、水に帰属される30~100℃での3.3%の質量減少を示した(3.3%の水は、API1分子あたり0.9分子の水に相当する)。熱流シグナルは、水の喪失に帰属されるブロードな吸熱を示し、続いて160~180℃に溶融/再結晶イベント、及び220℃に最終溶融を示した。熱分解は、240℃よりも高い温度で見られた。
DSC曲線(図237)において、30~70℃にブロードな吸熱イベントが見られ、これは、水の喪失に帰属することができた。続いて、シャープな溶融イベントが164.7℃に、続いて発熱イベントが検出された。これらのイベントは、再結晶イベントに相当し得る。次に、217℃に小さい吸熱イベントが見られ、続いてシャープな吸熱イベントが226℃に見られた。
ボルシクリブ遊離塩基のUPLCクロマトグラム(図238)は、1.2分に化学純度100%(面積%)のAPIピークを示した。MSスペクトルでは、470m/zの断片が検出され、これは、種[M+H]に相当し得る(遊離塩基のMW:469g/mol)。
化合物溶液のアッセイは、参照溶液と同等の応答因子(RF)を示し、回収率はおよそ100%であった。この結果は遊離塩基への変換が完了したことを示唆している。アッセイの結果を表55に提示する。
作製した遊離塩基(実験ID GEN4)のH-NMRスペクトル(図239)は、APIのケミカルシフトが参照無水遊離塩基(過去のプロジェクトS18128用に受け取ったもの)のシフトと重なっていることを示し、このことによって、遊離塩基への変換が成功であったことが確認された。
マロン酸塩を、THF/水/アセトン(32.5/32.5/35、体積/体積/体積)で調製した、1モル当量のマロン酸を含有するボルシクリブ遊離塩基の溶液を凍結乾燥
することによって調製した。得られた固体をHT-XRPDで分析し、そのアモルファス性を確認した(図240)。このアモルファス物質を、TGMS、UPLC、及びH-NMRでさらに分析して、得られたマロン酸塩の性質を確認した。
アモルファスのマロン酸塩のTGA/TGMS分析は(図241)、30~100℃で3.6%の質量減少を示し、これは、MSシグナルに基づいて、主として水及びTHFに帰属され得る。熱流シグナルは、水の喪失に帰属されるブロードな吸熱、続いて塩の熱分解に帰属され得る第二のブロードな吸熱を示した。
凍結乾燥で得たボルシクリブマロン酸塩のUPLCクロマトグラム(図242)は、1.2分に化学純度99.8%(面積%)のAPIピークを示した。MSスペクトルでは、470m/zの断片が検出され、これは、種[M+H]に相当し得る(遊離塩基のMW:469g/mol)。
化合物溶液のアッセイは、参照溶液と同等の応答因子(RF)を示し、回収率はおよそ77%であった。この結果は、API:マロン酸比が1:1であることを示唆している。アッセイの結果を表56に提示する。
アモルファスのマロン酸塩に対して得られたH-NMRスペクトル(図243)により、塩のプロトン共鳴が遊離塩基と比較してシフトしていたことから、塩の形成が確認された。API:マロン酸の特定された化学量論比は、1:1であった。GEN8のNMRスペクトルにおいて、さらなる共鳴シフトが見られ、これは、残留THFに帰属され得る(3.60及び1.76ppm)。API:THF比は、1:0.4であった。
凍結乾燥によって作製したアモルファスのボルシクリブマロン酸塩を用いて、熱サイクル実験を開始した。選択された溶媒系において、懸濁液をRTで調製し、50~5℃の3回の熱サイクルに掛け、続いて25℃で3日間エージングした。エージング時間の終了後、遠心分離によって固体を液体から分離し、周囲条件及び高真空下(5mbar)で乾燥し、その後回収して、HT-XRPDで分析した。
さらに、熱サイクル実験後、母液のアリコートを取り、UPLCで分析してAPIの溶解度を特定した。その後、溶液を真空下(5mbar)で蒸発させ、乾燥固体をHT-XRPDで分析した。次に、固体を加速劣化条件(40℃/RH75%で2日間)に曝露し、続いてHT-XRPDで再度分析した。アモルファスのボルシクリブマロン酸塩の懸濁液を、24の溶媒で調製した。温度プロファイルの後、母液のアリコートを取り、ろ過し、UPLCで分析してAPIの溶解度を特定した。定量的特定の結果を、表49に報告する。
ボルシクリブマロン酸塩は:アセトン/水(90/10、体積/体積)及びIPA/水(90/10、体積/体積)に非常に可溶性(溶解度 100~1000mg/mL);メタノールに可溶性(溶解度 33~100mg/mL);THF、水、及びEtOHに少し可溶性(溶解度 10~33mg/mL);IPA、アセトン、AcN、MEK、及び1,2-ジメトキシエタンに僅かに可溶性(溶解度 1~10mg/mL);1,4-ジオキサン、クロロホルム、ギ酸エチル、DCM、酢酸エチル、及び酢酸イソプロピルに非常に僅かに可溶性(溶解度 0.1~1mg/mL)、並びにトルエン、アニソール、MTBE、ジエチルエーテル、ペンタン、シクロヘキサン、及びn-ヘプタンに実質的に不溶性(溶解度 <0.1mg/mL)であった。マロン酸ボルシクリブは、極性のプロトン性溶媒中ではより可溶性であったが、低極性及び無極性溶媒中では溶解度は低下した。
Figure 2024038072000071
マロン酸塩に対して行った多形スクリーニングで、4つの結晶形態が識別され、Mao1、Mao3、Mao4、及びMao5と称した。Mao1は、過去の塩スクリーニング(S18128)で識別された塩形態であり、一方Mao3、Mao4、及びMao5は、本試験で見出された新規な結晶相であった。Mao1は、ストレス条件(AAC、40℃/RH75%、2日間)への曝露時に物理的に安定であった独特の結晶塩形態であった。結果を表50にまとめて示す。
Mao1は、本試験で試験した溶媒系のほとんどから結晶化された固体形態であったが、シクロヘキサン、ペンタン、及びn-ヘプタンは例外であり、これらからはアモルファス固体が回収された。おそらくこれらの無極性溶媒中では、アモルファス出発物質は、そのような無極性溶媒中でのその低い溶解度のために結晶化しなかったものと思われる。
Mao3は、水中、又は有機溶媒/水混合物中で行った結晶化実験から回収し、周囲条件で乾燥した固体で見出された。真空下での乾燥時及びAACへの曝露時に、Mao3はMao1に変換された。
Mao4の粉末パターンを、シクロヘキサン、ペンタン、及びn-ヘプタンから得たアモルファス固体のAACへの曝露後に検出した。Mao4は、AACへの2日間の曝露後に得られたことから、長期的なストレス条件時のこの形態の物理的安定性は未知である。他方、Mao5は、メタノール母液の蒸発からのみ得られた。Mao5は、AACへの曝
露時に物理的に不安定であり、Mao4に変換された。
Figure 2024038072000072
Figure 2024038072000073
マロン酸塩の析出の試みとして、さらなる冷却結晶化実験を行った。これらの実験は、3つの異なる結晶化溶媒で調製したボルシクリブ遊離塩基溶液(バッチ1694ER1201から)及び等モル量のマロン酸を、50℃で混合することによって開始した。さらなる冷却結晶化は、プロジェクトS18128Bからのボルシクリブリン酸塩(バッチID:19-09334-01)から変換して得られたボルシクリブ遊離塩基で開始した。遊離塩基を対イオンと混合した後、5℃に到達するまで冷却プロファイルを適用した。これらの実験のすべてから、冷却時にマロン酸塩Mao1が析出し、すべての場合で収率は>70%であった。最高収率は、バッチ1694ER1201でTHF中で行った実験から得た(約95%)。
Mao1を大スケールで得るために、スケールアップした冷却結晶化実験を行った。このために、25グラムのMe-522 HClをボルシクリブ遊離塩基に変換した。続いて、20グラムのボルシクリブ遊離塩基を、THFからのシード結晶なしの冷却結晶化によってMao1に変換した。この方法により、Mao1は、高収率(95%)及び高純度(100%、LCMSによる面積%)で回収された。
本試験で識別された固体形態の粉末回折パターンを、重ねて図244に提示する。3つの固体形態Mao1、Mao4、及びMao5は、DSC、TGMS、UPLC、及びH-NMRでさらに分析した。分析データは、本明細書で提示されるが、結果の概要を、以下及び表51に提示する。
マロン酸塩形態に対して行った熱分析は、Mao1が唯一の無水非溶媒和マロン酸塩形態であることを示した。Mao4は、塩の熱分解の前に水が少しずつ失われる一水和物であると思われた。一方、Mao5は、25~100℃で次第に放出されたと思われる1.5%の水含有量を示した(ある程度の残留水に相当)。さらに、著しい質量減少が100~180℃で発生しており、これは、質量シグナルによると、おそらく熱分解に起因すると思われる。
UPLC分析から、すべてのマロン酸塩形態が良好な化学純度(>99.2%、面積%)で得られたことが確認された。すべてのUPLCクロマトグラムにおいて、少量の不純物が1.4分に見られた(陽イオンモードの質量スペクトルには記録されなかった)。最も低い化学純度は、Mao4で特定された(98.5%)。
異なるマロン酸塩形態に対するH-NMRスペクトルは、著しい共鳴シフトを示し、このことから、プロトン移動による塩形成の結果としての構造の転位が確認された。すべてのスペクトルを、初期アモルファスマロン酸塩及び過去のプロジェクトで得られたMao1と比較した。3つすべての相において、推計された化学量論比API:CIは、1:
1であった。
Mao1及びMao4の吸湿性を、DVS測定によって評価した。Mao1は、非吸湿性で、RH80%での水の取り込みは0.15%である。さらに、Mao4は、僅かに吸湿性と思われ、RH80%での水の取り込みは0.9%であった。この塩における水の取り込みは、不可逆的であり、DVS分析時にMao1への変換が起こった。
Figure 2024038072000074
ボルシクリブマロン酸塩に対する多形スクリーニングは、新規な形態の偏りのない結晶化を促進するために、アモルファス相で開始した。Mao1は、スクリーニングにおいて最も豊富に見られた結晶相であり、これは、過去の塩スクリーニングにおいて見られた無水結晶相である。Mao3、Mao4、及びMao5と称する他の3つの相は、非常に少ない結晶化条件からの試験で識別された。
Mao4及びMao5の特性評価から、そのような相が、アモルファスマロン酸塩を短期間のストレス条件(AAC)に曝露した場合、又は蒸発結晶化の後に結晶化される水和物であり得ることが示唆された。Mao3も、水から、並びにIPA/水及びアセトン/水の混合物から回収された周囲条件で乾燥した固体で識別されたことから、水和物であり得る。新規に識別された相はすべて、真空下での乾燥時又はストレス条件への曝露時にMao1への変換が発生したことから、物理的に不安定であった。したがって、そのような形態は、Mao1の開発においていかなるリスクも引き起こさない。Mao1の結晶化を、1モル当量のマロン酸を含有するボルシクリブ遊離塩基の溶液を冷却することによっても調べた。これらの実験の結果から、Mao1を冷却結晶化によって容易に作製可能であることが示唆される。スケールを上げた20gでのMao1のスケールアップ冷却結晶化実験の成功から、このプロセスをより大きいスケールで実施可能であることが確認された。結晶化条件を微細に調整して、良好な収率及び化学純度でMao1が得られる強固な結晶化プロセスをデザインすることができる。
化学物質はすべてFisher Scientific又はSigma Aldrichから入手した。用いた化学物質は、研究グレードであり、少なくとも99%の純度である。本試験で用いた出発物質ME-522、ボルシクリブHCl塩(バッチ1201の95グラム)を提供した。
多形スクリーニングのために、ME-522HCl塩の遊離塩基への変換を以下のようにして行った:3.4グラムのME-522HCl塩を、400mLの水に溶解した(その結果pH4.3となった);水溶液のpHを11に調節した(2M NaOHを用いた
);30分後、溶液の色は黄色になり、析出が発生した。固体をろ過し、ろ液のpHが8.5となるまで水で洗浄した。物質を、50℃及び5mbarで一晩乾燥した。理論収率は92%であった。同じ手順を用いて、ボルシクリブリン酸塩(プロジェクトS18128B、バッチID:19-09334-01)から遊離塩基を調製したが、但し304.9mgで開始した。
多形スクリーニングは、偏りのない結晶化を促進するために、アモルファス相で開始することが好ましい。したがって、アモルファス物質を作製するために、遊離塩基の溶液を、THF/水/アセトン(32.5/32.5/35、体積/体積/体積)で調製した。このAPI溶液に、1モル当量のマロン酸を添加した。得られた塩溶液を、各バイアルに約90mgのAPI存在するように、UPLCバイアルに液体として分けた。この溶液を液体窒素中で凍結し、凍結乾燥機(Alpha 2-4 LD,Christ)を用いて高真空下に置いた。得られた固体を、HT-XRPDで分析した。このアモルファス物質を、TGMS、UPLC、及びH-NMRでさらに分析して、得られたマロン酸塩の性質を確認した。
アモルファス物質を、凍結乾燥後に回収した。アモルファス物質は、水による3.2%の質量減少を示した。化学純度は、初期物質と同等であり、H-NMRから、API:マロン酸の化学量論比1:1が確認された。
アモルファスのボルシクリブマロン酸塩の懸濁液を、選択された溶媒系で調製した。約90mgのAPIを、室温で24の溶媒系と混合した(詳細は表52を参照)。続いて、混合物を、Crystal16(商標)装置に入れ、図245に示す温度プロファイルに掛けた。
温度プロファイルの後、遠心分離によって固体を溶液から分離し、周囲条件及び高真空下で乾燥し、その後回収して、HT-XRPDで分析した。
母液の少量のアリコートを取り、0.2μMのPTFEシリンジフィルターでろ過した。溶質の濃度をUPLC分析で特定した。その後、溶液を真空下(5mbar)で蒸発させ、乾燥固体をHT-XRPDで分析した。次に、固体を加速劣化条件(40℃/RH75%で2日間)に曝露し、続いてHT-XRPDで再度分析した。
Figure 2024038072000075
冷却結晶化によって、選択されたシュウ酸塩形態Mao1を調製し、そのような実験の収率を評価するために、さらなる結晶化の試みを行った。3つの実験(実験ID:SSm1~3)を、プロジェクトS18128用に受け取ったバッチ1694ER1201の遊離塩基で開始した。4つめの実験(実験ID:SSm5)は、S18128Bのリン酸塩からの変換によって得た遊離塩基で開始した。
飽和遊離塩基溶液を、エタノール、THF、及びアセトン中、50℃で調製した。このために、ボルシクリブ遊離塩基の非常に薄い懸濁液を、50℃で3時間インキュベートし、その後ろ過した。この飽和溶液に、化学量論量のマロン酸を、エタノール、THF、及びアセトン中で調製したマロン酸の1Mストック溶液から添加した。実験条件を表53に記載する。
酸の添加後、溶液を、Crystal16中、サンプルを50℃で30分間保持することから成る温度プロファイルに掛けた。THF及びアセトン中で行った実験では、析出が高温で見られたが、エタノール中では析出が見られなかったことから、Mao1のシードを添加すると、結晶化が直ちに発生した。続いて、10℃/時の冷却速度での5℃への冷
却プロファイルを適用した。最終温度(5℃)で18時間のエージングを適用した。温度プロファイルの後、遠心分離によって固体を溶液から分離し、周囲条件及び高真空下で乾燥し、その後回収して、HT-XRPDで分析した。母液を蒸発させて、母液中の固体の量を特定し、それを用いて結晶化実験の収率を特定した。
Figure 2024038072000076
Mao1のスケールアップのために、25グラムのME-522HCl塩を、この物質を170mLの水に懸濁させることによってまず遊離塩基に変換した(実験ID:GEN10)。2MのNaOHを用いて溶液のpHを11に調節した結果、色が黄色に変化した。pHは、安定するまで定期的に測定した。この懸濁液をブフナー漏斗でろ過し、固体を、ろ液のpHが8.5になるまでフィルター上で水で洗浄した。固体を、高真空下(5mbar)、50℃で15時間乾燥し、遊離塩基への変換を、HT-XRPD及びH-NMRで確認した。
遊離塩基をMao1へ変換するために、20.2グラムのボルシクリブ遊離塩基(実験ID:GEN10から得た)を130mLのTHFに溶解した(実験ID:SSm4)。この溶液を50℃に加熱し、マロン酸を1:1.1のAPI:CI比で添加した。マロン酸は、THF溶液として添加した(10mLのTHFに4.19グラムのマロン酸)。
およそ10分間50℃で撹拌した後、析出が発生した。50℃でさらに20分間撹拌した後、懸濁液を室温まで冷却し、ろ過によって固体を液相から単離した。続いて固体を、減圧下(200mbar)、50℃で17時間乾燥した。スケールアップ実験から、23.5グラムのMao1が得られた(収率95mol%)。分析データから、Mao1が得られたことが確認される。
XRPDパターンは、Crystallics T2高スループットXRPD装置を用いて得た。強度及び形状の変動に対して補正したVÅNTEC-500ガス面積検出器を備えたBruker D8 Discover General Area Detector Diffraction System(GADDS)にプレートを載せた(製品シート XRD 37、DOC-S88-EXS037V3、図297)。測定精度(
ピーク位置)の較正は、NIST SRM1976標準(コランダム)を用いて行った。
データ収集は、XRPDパターンの最も特徴的な部分である1.5°~41.5°の2θ領域で単色CuKα線を用いて室温で行った。各ウェルの回折パターンを2つの2θ範囲(第一フレームでは1.5°≦2θ≦21.5°、第二フレームでは19.5°≦2θ≦41.5°)で、各フレームの露光時間を90秒として収集した。バックグラウンドの除去又は曲線の平滑化は、XRPDパターンに適用しなかった。XRPD分析時に用いたキャリア物質は、X線に対して透過性であり、バックグラウンドに対する寄与はごく僅かであった。
HR-XRPDデータは、D8 Advance回折計上、CuKα1線(1.54056Å)を用い、ゲルマニウムモノクロメーターでRTで収集した。回折データは、3~41.5°2θの2θ範囲で収集した。半導体LynxEye検出器での検出器スキャンは、ステップあたり0.016°を用い、2秒/ステップのスキャン速度で行った(DOC-M88-EXX95 V2-11.2007、図298)。サンプルを、長さ8mm、外径0.3mmのガラスキャピラリーで測定した。
リートベルト計算では、格子パラメータ、結晶系、さらには原子位置を、単結晶ファイル(cif)から得た。精密化の過程で、以下のパラメータを精密化した。
- 格子定数;
- バックグラウンド;
- 機器の形状;
- ゼロシフト;
- 吸収
原子位置も熱運動パラメータも全体プロセスの過程で精密化しなかった。以下のフィッティング基準を用いた:
・Yo,m及びYc,mは、それぞれ、データ点mでの実測データ及び計算データである。
・Mは、データ点の数である。
・Pは、パラメータの数である。
・wは、データ点mに対して与えられた重み付けであり、それは、計数統計においてw=1/σ(Yo,mで与えられ、σ(Yo,m)は、Yo,mの誤差である。
Figure 2024038072000077
Figure 2024038072000078
結晶からの溶媒又は水の喪失に起因する質量減少を、TGA/熱流で特定した。TGA/DSC 3+ STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)での昇温時にサンプル重量をモニタリングすることで、重量対温度曲線を得た。TGA/DSC 3+の温度較正は、インジウム及びアルミニウムのサンプルを用いて行った。サンプル(およそ2mg)を100μLのアルミニウムるつぼに秤量し、密封した。シールにピンホールをあけ、TGA中、10℃分-1の昇温速度で25から300℃までるつぼを加熱した。パージには、乾燥Nガスを用いた。
TGAサンプルからのガスを、質量分析計Omnistar GSD 301 T2(Pfeiffer Vacuum GmbH,Germany)で分析した。これは、四重極質量分析計であり、0~200amuの温度範囲内の質量が分析される。
溶融特性は、熱流束型DSC3+ STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)で記録したDSCサーモグラムから得た。DSC3+は、インジウム(m.p.=156.6℃;δHf=28.45J/g)及び亜鉛(m.p.=419.6℃;δHf=107.5J/g)の小片を用いて、温度及びエンタルピーについて較正した。サンプル(およそ2mg)を、標準的な40μLのアルミニウムパンに密封し、ピンホールをあけ、DSC中、10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで加熱した。測定中は、流量50mL/分の乾燥Nガスを用いてDSC装置をパージした。
DMSO-d中でのH-NMR分光分析を、化合物完全性の特性評価のために、及び塩の化学量論比を特定するために用いた。スペクトルは、標準的なパルスシーケンスを用いて、500MHz装置(Bruker BioSpin GmbH)上、室温で記録した(32スキャン)。データの処理は、ACD LabsのソフトウェアSpectrus Processor 2016.2.2(Advanced Chemistry
Development Inc. Canada)で行った。
固体物質の様々な形態の吸湿性(水分取り込み)の相違から、相対湿度増加時のそれらの相対的安定性の尺度が得られた。小サンプルの水分収着等温線が、Surface Measurement Systems (London,UK)からのDVS-1システムを用いて得られ、この装置は、数ミリグラムという少ないサンプルで用いるのに適し、0.1μgの精度を有する。相対湿度を、25℃の一定温度の下、収着-脱着-収着の
過程で変動させた(45-95-0-45%のRH)。ステップあたりの重量平衡は、最小で1時間又は最大で6時間での、dm/dt<0.0002に設定した。その後、サンプルをHT-XRPDによって測定した。
吸湿性は、欧州薬局方吸湿性分類に従って分類した。25℃/RH80%(24時間)での水の取り込みパーセントが:質量変化<0.2%の場合 - 非吸湿性;質量変化>0.2%且つ<2%の場合 - 僅かに吸湿性;質量変化>2%且つ<15%の場合 -
中程度の吸湿性;質量変化>15%の場合 - 非常に吸湿性。
UPLC分析法
Figure 2024038072000079
化合物の完全性は、クロマトグラムの「注入ピーク」以外の各ピーク面積と合計ピーク面積とから以下のようにして算出されるピーク面積パーセントとして表される。
Figure 2024038072000080
目的の化合物のピーク面積パーセントは、サンプル中の構成成分の純度の指標として用いられる。
Figure 2024038072000081
Figure 2024038072000082
Mao1を、本発明の塩スクリーニング、並びにシュウ酸イオン及びリン酸イオンの対イオンを含む塩スクリーニング(プロジェクトS18128A及びS18128B)に基づいて、最良のボルシクリブの塩形態として選択した。多形スクリーニングから得たMao1のサンプル(実験ID:TCP7)を用いて、この形態の完全な特性評価を行った。加えて、スケールアップ実験から得たMao1のバッチ(実験ID:SSm4)についての分析データを得た。
Mao1は、本試験で識別された最も多く発生した固体形態であった。すべての場合において、良好な結晶性の固体が回収された。Mao1は、周囲条件で乾燥した固体で得られ、真空下での乾燥時及びAACへの曝露時に物理的に安定であった。分析特性評価のために選択した実験は、THF中で行った熱サイクル実験から回収された固体であった(実験ID TCP7)。AACの前後のMao1のXRPDパターンを、図246に示す。
高解像度XRPDも、Mao1(実験ID TCP7)について記録した。図247には、リートベルト解析のグラフによる図を提示し、一方表54には、最終パラメータを提示する。格子パラメータは、試験S18128で得たボルシクリブマロン酸塩の単結晶データから得た。得られたMao1の固体(実験ID TCP7)は、1つの相しか含んでおらず、結晶不純物は検出されなかった。
Mao1のTGMS分析(図248)は、分解開始前の質量減少が僅かに0.7%であったことから、この形態が非溶媒和無水形態であることを示した。
分解は140℃付近で開始した。
Mao1のDSC曲線(図249)は、溶融/分解に起因するピーク温度181.1℃の吸熱イベントを示した。
Mao1に対して得られたプロトンNMRスペクトル(図250)は、アモルファスのマロン酸塩のスペクトルと重なっていた。API:マロン酸の特定された化学量論比は、1:1であった。
Mao1に対して得られたUPLCクロマトグラム(図251)により、99.4%の化学純度(面積%)の化合物の完全性が確認された。
Mao1の吸湿性を、DVSによって特定した。粉末を、収着/脱着/収着サイクル(40-95-0-40%のRH)から成る25℃で実施したRHプロファイルに曝露した。質量の変化及び等温線プロットを、図252A及び図252Bに示す。収着半サイクルの過程で得られた水蒸気取り込みは、0.75%であった。DVS分析は、RH80%での水の取り込みが0.15%であることを示し、このことは、この物質が非吸湿性であることを示唆している(欧州薬局方吸湿性分類に基づく)。DVS分析後は、回収された固体中にMao1が依然としてHT-XRPDで識別されたことから、固体形態の変換は見られなかった。
Mao1の水への溶解度を、水の少量のアリコートを溶解するまでこの物質に添加することによって特定した。この方法によって、Mao1の水への溶解度は、およそ13mg/mlと推計された。少量の水をMao1に添加した後、懸濁液が得られ、ゲル形成は見られなかった(図253)。
スケールアップ実験から得られたMao1のHT-XRPDパターンを、図254に示す。
高解像度XRPDを、Mao1(実験ID Ssm4)について記録した。図255には、リートベルト解析のグラフによる図を提示し、一方表54には、最終パラメータを提示する。格子パラメータは、試験S18128で得たボルシクリブマロン酸塩の単結晶データから得た。得られたMao1の固体(実験ID TCP7)は、1つの相しか含んでおらず、結晶不純物は検出されなかった。
Mao1のTGMS分析(図256)は、分解開始前の質量減少が僅かに0.08%であったことから、この形態が非溶媒和無水形態であることを示した。
分解は160℃付近で開始した。
Mao1のDSC曲線(図257)は、溶融/分解に起因するピーク温度182.4℃の吸熱イベントを示した。
スケールアップ実験から得られたMao1(実験ID Ssm4)のH-NMRスペクトルを、出発物質の遊離塩基(実験ID GEN10)と比較して図258に示す。遊離塩基と比較して低磁場シフトしたMao1塩のシグナルから、得られた物質が塩であることが確認された。NMRシグナルに基づいて、微量のTHF(1重量%)が存在していると推定された。API:マロン酸の特定された化学量論比は、1:1であった。
Mao1に対して得られたUPLCクロマトグラム(図259)により、100%の化学純度(面積%)の化合物の完全性が確認された。主ピークに関連する質量は、470.3[M+H]であり、遊離塩基の分子量(すなわち、469.8g/mol)と一致していた。
マロン酸塩が実質的に不溶性であったいくつかの溶媒では(シクロヘキサン、ペンタン、及びヘプタンなど)、熱サイクル実験後にアモルファス固体が回収された。短期間のストレス条件(AAC、40℃/RH75%、2日間)に曝露すると、アモルファス固体は、結晶化してMao4となった。分析特性評価のために選択した実験は、40℃/RH75%に2日間曝露した後のシクロヘキサンから回収された固体であった(実験ID TCP3)。Mao4のHT-XRPDディフラクトグラムを、図260に示す。
Mao4のTGMS分析は(図261)、水に起因する40~150℃の範囲内での3.5%の質量減少を示した(塩1分子あたり水1.1分子)。熱分解は160℃より高い温度で開始した。
Mao4のDSC曲線(図262)は、水の喪失に帰属される25~100℃のブロードな吸熱イベント、及びこれに続く塩の溶融/熱分解に相当する177.1℃のシャープな吸熱イベントを示した。
UPLC-MS分析(図263)は、APIが98.5%(面積%)の化学純度を有することを示した。
Mao4に対して得られたプロトンNMRスペクトル(図264)から、Mao4のスペクトルがMao1のスペクトルと重なっていることから、この形態がマロン酸塩であることが確認された。API:マロン酸の化学量論比は、1:1であった。
Mao4の吸湿性を、DVSによって特定した。粉末を、収着/脱着/収着サイクル(40-95-0-40%のRH)から成る25℃で実施したRHプロファイルに曝露した。質量変化及び等温線プロットを、図265に示す。第一の収着半サイクルにおいて、得られた水の取り込みは、RH95%で2.8%であった。質量変化のプロット(図265A)は、RH90から95%までの収着時には、水の収着は平衡に到達しなかったことを示した。RH95%から0%の脱着サイクル時には、水が放出された。最後の収着半サイクルでは、質量変化は0.37%であった(RH0%から40%までの範囲)。
水の取り込みは不可逆的であり、このことは、形態の変化が起こったことを示唆している。回収された固体から、HT-XRPDによってMao1が識別された(図266)。
DVS分析は、RH80%で0.9%の質量変化を示し、このことは、Mao4が僅かに吸湿性であったことを示唆している(欧州薬局方吸湿性分類に基づく)。
メタノールからの単一の蒸発結晶化実験では、Mao5と称する新規な粉末パターンが識別された(実験ID TCP6_ML)。短期間のストレス条件(AAC、40℃/RH75%、2日間)に曝露すると、Mao5はMao4に変換された。Mao5のHT-
XRPDディフラクトグラムを、図267に示す。
Mao5のTGMS分析は(図268)、水に起因する40~100℃の範囲内での1.5%の質量減少を示した(塩1分子あたり水0.5分子)。MSシグナルに基づいて、25~100℃の少しずつの質量減少は、おそらく残留水に相当するものと思われ、一方100~180℃の第二の重量減少ステップは、おそらく熱分解に帰属され得るものと思われる。
Mao5のDSC曲線(図269)は、水の喪失に帰属される90~130℃のブロードな吸熱イベント、及びこれに続く無水Mao1への再結晶化イベントに相当し得る発熱イベントを示した。
UPLC-MS分析(図270)は、APIが99.2%(面積%)の化学純度を有することを示した。
例6:シュウ酸ボルシクリブの結晶構造
シュウ酸ボルシクリブ(サンプルコードSFY_242を付与)の100Kでの構造を、非対称単位中に2つのボルシクリブ分子、1つのシュウ酸イオン、1つの2-ペンタノン分子、及び1つの水分子を有するキラル単斜空間群P2で特定した。データは、著しい異常分散シグナルを含んでおり、絶対配置は、共鳴散乱に基づいて決定することができた。分子は、2つのキラル炭素原子を含有し、それらは、第一の結晶学的に独立した分子に対してはC1:S、C2:R、第二の結晶学的に独立した分子に対してはC31:S、C32:Rの配置を有する(原子ラベリングスキームについては、図1を参照)。精密化の最終残差値は、R1=0.0525(I>2σ(I))及びwR2=0.1297である(全方向)。
シュウ酸ボルシクリブの結晶のいくつかのサンプルを用いた。113-1、113-2、及び113-5とラベルしたバイアルには、遊離シュウ酸の結晶が入っており、113-7のバイアルは調べなかった。単に数字の5とラベルしたバイアルは、2-ペンタノン中のターゲット化合物の結晶を含んでおり、データ収集のために選択した試料は、寸法0.010×0.040×0.050mmのプレートであった。結晶を、鉱油(STP Oil Treatment)と共にMiTeGen(商標)マウントに載せた。最初の回折パターンは、結晶の質が、非欠面性双晶の徴候のない適切なものであることを示した。
回折データ(φ-及びω-スキャン)を、IμSマイクロ線源からのCuKα線(λ=1.54178Å)を用い、Bruker Photon2 CPAD検出器を搭載したBruker-AXS X8 Kappa回折計により、100Kで収集した。データ変換(Data reduction)を、プログラムSAINTで行い、等価反射に基づく半経験的吸収補正を、プログラムSADABSで行った。結晶特性及びデータ/精密化統計の概要を、表57に示す。
構造を、プログラムSHELXTを用いた双対空間法で解析し、すべてのデータについて、確立された精密化法を用い、SHELXLでFに対して精密化した。非水素原子はすべて、異方性で精密化した。炭素に結合したすべての水素原子は、幾何学的に計算された位置に配置し、騎乗モデルを用い、それらのUisoを、それらが結合している原子のUeqの1.2倍に拘束して精密化した(メチル基及びOH基に対しては1.5倍)。窒素又は酸素に結合した水素原子は、差フーリエ合成から取り、これらの水素原子は、続いて、N-H及びO-Hの距離に対する距離抑制の補助の下、半自由な形で精密化した(ターゲット値は、N-Hについては0.91(2)Å、O-Hについては0.84(2)Å)。さらなる抑制は適用しなかった。一部の水素位置は、他よりも容易に位置決定可能で
あり、場合によっては、別の選択肢としての水素部位が可能である(可能性は必ずしも高くないが)と思われたことは言及されるべきである。選択された水素位置のセットは、目的にかなったもの(sensible)であり、N-H及びO-Hの水素原子はすべて、意味のある水素結合に関与しているが、結晶がプロトン化パターンの組み合わせを表す可能性はある。このことは、非水素原子位置の精度を低下させるものではなく、キラル原子の絶対配置の特定における信頼性を減ずるものでもない。
シュウ酸ボルシクリブ(サンプルコードSFY_242を付与)の100Kでの構造を、非対称単位中に2つのボルシクリブ分子、1つのシュウ酸イオン、1つの2-ペンタノン分子、及び1つの水分子を有するキラル単斜空間群P2で特定した。図271は、非対称単位の内容を原子ラベリングスキームと共に示す。
この構造は、12の古典的水素結合及び15の非古典的水素結合を示す。古典的水素結合のうちの9つ、及び非古典的水素結合のうちの9つは、非対称単位内に存在し、図271に示される。2つの独立したボルシクリブ分子が、シュウ酸イオンによって一緒に連結され、水分子も、シュウ酸イオンに結合している。2-ペンタノンリン酸(2-pentanone phosphate)が、2つの非古典的水素結合を介して2つのボルシクリブ分子のうちの1つ
と緩やかに連結している。これによって、架橋に利用可能である3つの古典的水素結合ドナーだけが残され、すなわち、O3-H3、O8-H8、及びO1W-H1WAである。図272に示されるように、対応する水素結合、O3-H3…O13、O8-H8…O1Wii、及びO1W-H1WA…O14iiiは、図271に示す配列を架橋して、以下の充填プロット(図273)に見られる三次元フレームワークとしている。対称演算子
i:-x+2,y-0.5,-z+1;ii:-x+1,y+0.5,-z+1;iii:x-1,y,z。すべての水素結合を表58に挙げる。
充填プロット(図273)は、2-ペンタノン分子を収容する結晶学的a軸に沿って延びるチャネルを示す。2-ペンタノンが構造の残りの部分と緩やかに結合しているだけであることを考えると、類似サイズの他の溶媒分子も取り込まれることがあり得ることは想定される。図274は、シミュレーションによる粉末パターンを示す。
手元にある分子はキラルであり、絶対構造は、共鳴散乱に基づいて決定することができた。Parsons法で算出したFlack-xパラメータは、0.043(13)に精密化された。Hooft & Spekによって導入された方法を用いた異常分散シグナルの分析によって、絶対構造が正しい確率は1、構造がラセミ双晶である確率は0、絶対構造が正しくない確率は0と算出される。Hoof法では、絶対構造パラメータであるHoof-yも得られ、これは、Flack-xと直接比較可能である。Hooft-yは、0.039(14)と算出された。したがって、キラル原子は、第一の結晶学的に独立した分子に対してはN1:S、C1:S、C2:Rの配置を有し、第二の結晶学的に独立した分子に対してはN2:S、C31:S、C32:Rの配置を有すると、高い信頼性で特定することができる(両独立分子共に同じ絶対配置を有する)。
Figure 2024038072000083
Figure 2024038072000084
等価原子生成に用いた対称変換:
#1 -x+2,y-1/2,-z+1;#2 -x+1,y+1/2,-z+1;#3
x-1,y,z;
#4 x,y+1,z;#5 -x+1,y-1/2,-z+1;#6 -x+1,y+1/2,-z
例7:リン酸ボルシクリブの結晶構造
リン酸ボルシクリブ(サンプルコードSFY_241を付与)の100Kでの構造を、非対称単位中に2つのボルシクリブ分子、2つのリン酸イオン、及び1.5のイソプロピルアルコール分子を有するキラル単斜空間群P2で特定した。これは、ボルシクリブ1分子あたり0.75の溶媒分子に相当し、半溶媒和物と一溶媒和物との間に位置する。データは、著しい異常分散シグナルを含んでおり、絶対配置は、共鳴散乱に基づいて決定することができた。分子は、2つのキラル炭素原子を含有し、それらは、第一の結晶学的に独立した分子に対してはC1:S、C2:R、第二の結晶学的に独立した分子に対してはC31:S、C32:Rの配置を有する(原子ラベリングスキームについては、図1を参照)。精密化の最終残差値は、R1=0.0326(I>2(5(I))及びwR2=0.0845である(全方向)。
ボルシクリブの結晶のいくつかのサンプルを供した。イソプロピルアルコール中にボルシクリブのリン酸塩を含有するバイアル114_20からの結晶の質が最も良好であると思われ、データ収集のために選択した試料は、寸法0.008×0.025×0.270mmのブレードであった。結晶を、鉱油(STP Oil Treatment)と共にMiTeGen(商標)マウントに載せた。最初の回折パターンは、結晶の質が、非欠面性双晶の徴候のない良好なものであることを示した。
回折データ(f-及びw-スキャン)を、IμSマイクロ線源からのCuKα線(λ=
1.54178Å)を用い、Bruker Photon2 CPAD検出器を搭載したBruker-AXS X8 Kappa回折計により、100Kで収集した。データ変換を、プログラムSAINTで行い、等価反射に基づく半経験的吸収補正を、プログラムSADABSで行った。結晶特性及びデータ/精密化統計の概要を、表59に示す。
構造を、プログラムSHELXTを用いた双対空間法で解析し、すべてのデータについて、確立された精密化法を用い、SHELXLでFに対して精密化した。非水素原子はすべて、異方性で精密化した。炭素に結合したすべての水素原子は、幾何学的に計算された位置に配置し、騎乗モデルを用い、それらのUisoを、それらが結合している原子のUeqの1.2倍に拘束して精密化した(メチル基及びOH基に対しては1.5倍)。ディスオーダーした溶媒を除いて、窒素又は酸素に結合した水素原子の座標は、差フーリエ合成から取り、これらの水素原子は、続いて、N-H及びO-Hの距離に対する距離抑制の補助の下、半自由な形で精密化した(ターゲット値は、N-Hについては0.91(2)Å、O-Hについては0.84(2)Å)。非対称単位中には、1.5分子のイソプロピルアルコールが、各々が0.5分子に相当して3つの部位にわたって分布していることが見出された。半分が占有している溶媒分子上の3つのヒドロキシル水素原子を、最良の水素結合パターンが可能なように配置し、続いて騎乗モデルを用いて精密化した。CF基は、平均よりも僅かに大きい動きを示すが、合理的なディスオーダーモデルを確立することはできなかった。1-2及び1-3距離並びに変位パラメータに対する似た値への抑制(similarity restraints)、さらには異方性変位パラメータに対する剛性結合抑制(rigid bond restraints)を、溶媒原子及びCF基の原子に適用した。
リン酸ボルシクリブイソプロピルアルコール溶媒和物(サンプルコードSFY_241を付与)の100Kでの構造を、非対称単位中に2つのボルシクリブ分子、ターゲット分子ごとに1つずつの2つのリン酸イオン、及び1.5のイソプロピルアルコール分子を有するキラル単斜空間群P2で特定した。これは、ボルシクリブ1分子あたり0.75の溶媒分子に相当し、この構造は半溶媒和物と一溶媒和物との間に位置する。図275及び図276は、原子ラベリングスキームと共に2つの独立した分子を示す
リン酸ボルシクリブの構造の超分子配列は、水素結合によって支配されている。図275及び図276に示される2つのPO-H…0P結合と共に(すなわち、O13-H13…015及びO17-H17…011)、水素結合である014-H14…016及びO18-H18…012iiが、リン酸イオンを連結して結晶学的b軸に沿って延びる無限鎖としている(図277)。2つのボルシクリブ分子は、図278 4に示されるように、水素結合であるO3-H3…011、08-H8…012、09-H9…010、O1-H1A…015iii、N1-H1…013iii、及びN2-H2…017ivを介してこのリン酸イオン鎖と結合している。これが、充填プロット(図280)にも見ることができる緊密な三次元フレームワークをもたらしている。溶媒分子は、結晶学的b方向(リン酸イオン鎖に対して平行)に沿って延びるチャネルをある程度均一に埋めている。3つのディスオーダーした溶媒分子のうちの2つは、相互作用O1T-H1T…O16及びO1U-H1U…O16を介して、リン酸イオンのうちの1つと水素結合している。第三の溶媒ヒドロキシル基に対しては、適切な水素結合を確立することができなかったが、水素結合O1S-H1S…015を可能とする1つの考え得る水素位置は存在する。しかし、この位置は、O6上の水素原子と衝突することから採用しなかった。ヒドロキシル基O6-H6は、相互作用O6-H6…01Siv及びO6-H6…01Uを介して、溶媒の酸素原子のうちの2つと水素結合している(図279)。加えて、非古典的水素結合C-H…0及びC-H…Fがいくつか存在する。対称演算子 i:x,y+1,z;ii:x,y-1,z;iii:-x+2,y-0.5,-z+1;iv:-x+2,y-0.5,-z+1;v:-x+2,y+1.5,-z+1。すべての水素結合を表60に挙げる。
図280は、リン酸ボルシクリブの構造の充填プロットを示し、図281は、シミュレーションによる粉末パターンを示す。
手元にある分子はキラルであり、絶対構造は、共鳴散乱に基づいて決定することができた。Parsons法で算出したFlack-xパラメータは、0.002(5)に精密化された。Hooft & Spekによって導入された方法を用いた異常分散シグナルの分析によって、絶対構造が正しい確率は1、構造がラセミ双晶である確率は0、絶対構造が正しくない確率は0と算出される。Hoof法では、絶対構造パラメータであるHoof-yも得られ、これは、Flack-xと直接比較可能である。Hooft-yは、0.005(6)と算出された。したがって、キラル原子は、第一の結晶学的に独立した分子に対してはN1:S、C1:S、C2:Rの配置を有し、第二の結晶学的に独立した分子に対してはN2:S、C31:S、C32:Rの配置を有すると、高い信頼性で特定することができる(両独立分子共に同じ絶対配置を有する)。
Figure 2024038072000085
Figure 2024038072000086
等価原子生成に用いた対称変換:#1 -x+2,y-1/2,-z+1;#2 -x+2,y+1/2,-z+1;#3 -x+1,y-1/2,-z+2;#4 x,y+1,z;#5 -x+1,y+1/2,-z+1;#6 -x+1,y+3/2,-z+1;#7 -x+2,y+1/2,-z+2;#8 x,y-1,z
例8:マロン酸ボルシクリブの結晶構造
プロジェクトS18128におけるボルシクリブに対する塩スクリーニングの過程で、マロン酸塩が識別された(図282)。その時点では、結晶は、単結晶構造特定のためには小さすぎた。本試験では、エタノールからの再結晶によって結晶を成長させる試みにより、構造分析に適する結晶を得た。
マロン酸ボルシクリブを、冷却結晶化によってEtOHから再結晶した。得られた結晶は、針状の形態を有していた。およそ0.39×0.07×0.06mmのサイズの結晶を、切断することなく単結晶回折のために選択した(図283)。
単結晶回折データは、モリブデン線を用いたArdenaで利用可能な回折計で収集した。マロン酸塩は、単斜空間群P2で結晶化し、ボルシクリブとマロン酸との比は1:1であることが確認された。最終結晶学的データ及び構造精密化パラメータを、表61に提示する。
Figure 2024038072000087
マロン酸ボルシクリブの結晶は、1:1の比のボルシクリブカチオン及びマロン酸モノアニオンを含んでいた。ボルシクリブカチオンとマロン酸アニオンとの間の水素結合を、原子ラベリングと共に図284に示す。マロン酸アニオンの荷電カルボン酸基(O41)は、荷電ボルシクリブアミン基(N4)からの水素原子の受容体として働く。マロン酸イオンの中性カルボン酸基(O46)は、ボルシクリブアルコール基(O1)の水素受容体として作用する。
図285は、b軸に沿った結晶充填及び水素結合スキームを示し、一方表62は、水素結合の詳細な記述を示す。マロン酸ボルシクリブの結晶構造は、トンネル状構造であり、この場合、ボルシクリブカチオンがトンネルを形成して、その中にマロン酸アニオンが位置している。これらのトンネルは、らせん軸2の周りにアニオンが並んだ状態で方向[010]に沿って延びており、他のマロン酸アニオンさらにはボルシクリブカチオンとの水素結合を介して接続されている。
Figure 2024038072000088
対称変換:(i)2-x,y-0.5,1-z;(ii)2-x,y+0.5,-z
入手可能な物質の量が少なかったため、HR-XRPD実験及び単結晶回折で得たモデルを用いたリートベルト解析(Rietveld, 1969)を行うことができなかった。しかしながら、単結晶データからのシミュレーションによる粉末パターンは、HT-XRPD実験から得た回折パターンと同じであった(図286)。
実験SSm53(プロジェクトS18128)から得たマロン酸ボルシクリブを用いて、単結晶を成長させた。
実験SSm53で得た残りの物質を、1.8mLバイアル中、200μLのEtOHに懸濁させた。懸濁液を、EtOHの沸点まで加熱し、この温度で約1分間、すべての物質が溶解するまで保持した。バイアルをRTで放置した。数日後、針状の結晶が出現した。
単結晶測定を、Nonius Kappa-CCDで行った。データは296Kで収集した。全球データをθ=22.6°まで収集した結果、4575の反射を得た。データ変換は、HKL Scalepack(Otwinowski & Minor 1997)を用いて行い、格子パ
ラメータは、1~27.5°のθ範囲内の11508の反射から、Denzo及びScalepak(Otwinowski & Minor, 1997)を用いて得た。構造を、SHELXT-2014/7(Sheldrick, G. M., 2015a)による直接法を用いて解析した。構造を、SHEL
XL-2014/7(Sheldrick, G. M., 2015b)を用い、完全行列最小二乗精密化法に
よって精密化した。H原子はすべて形状から組み込み、精密化は行わなかった。いくつかの静的ディスオーダー(static disorders)が検出された(アルコール及びトリフルオロメチル基)。収集したデータの角度が小さいこと、さらには反射の数が少ないことにより、両方のディスオーダーを異方性熱パラメータで精密化した。
例9:ボルシクリブ(ME-522)塩の選択
この例は、ボルシクリブの塩形態を選択するための試験を開示する。初期の原薬は、水への曝露時に原薬がゲル化するというゲル化の問題を呈し、さらにはボルシクリブHClの異なる形態が、同じ製造プロセスを用いた異なる製造施設で単離されるという製造の問題も呈した。
固体のボルシクリブHClを、様々な溶媒で特性評価した。識別された20の異なる形態のうちの11が、安定な形態であると分かった(1、2、6~7、12~14、及び18~20)。図287に試験の結果を示す。
ボルシクリブの属性も調べた。限定されない例として、図288は、ボルシクリブのターゲットとする生成物属性の例を示す。1つの実施形態では、ボルシクリブ生成物は、以下の特性のうちの1又は複数の有する:ゲル化を呈さない、5mg/mL超の水溶解度;多形/水和物/溶媒和物の合計数が5未満;無水及び無溶媒である;1又は複数の安定な多形を有する;安定性を呈する(加速劣化条件下);吸湿性ではない;Cl(塩)化学量
論比が1:1である;結晶物質である;及び製造可能である。
初期塩スクリーニングを行った。図289にスクリーニングの結果を示す。様々な酸対イオンを用いて、塩を、形態、結晶性、及び安定性について調べた。良好な結晶性及び安定性を有する11の塩を、続いての分析用に最初に選択した。
二次塩スクリーニングを行った。3つの塩(マロン酸塩、シュウ酸塩、及びリン酸塩)を、2つ以下の多形を有すること、ゲル化しないこと、残留溶媒の割合が低いこと、及び水溶解度が5mg/mL超であること、に基づいて、続いての開発用に選択した。図290にスクリーニングの結果を示す。
図288に示される生成物属性に関連する、ボルシクリブのHCl塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、及びリン酸塩の特性を調べた。図291に分析の結果を示す。
A.シュウ酸ボルシクリブ:シュウ酸ボルシクリブの特性としては、以下が挙げられる:Oxa2は、観察された最も一般的で安定なモノシュウ酸塩であり、真空条件下で安定であった;Oxa1、Oxa2、Oxa6、及びOxa7は、進行劣化条件(advanced aging condition)(40℃/RH75%)に曝露した場合に安定であった;これらの形態を水に曝露した場合に、ゲル化は見られなかった。しかし、モノ塩、半塩、又は両者の混合物のいくつかの固体形態が見出され;すべて半シュウ酸塩(Oxa1、Oxa3、及びOxa4)に帰属されたいくつかのシュウ酸塩単結晶構造が識別され;並びにいくつかの不安定な形態は、進行劣化条件に曝露すると、Oxa8に変換された。さらに、単結晶データに基づくと、ボルシクリブシュウ酸塩結晶は、水又は溶媒分子によって埋められ得る空隙/キャビティを構造中に有する。構造中に存在する非化学量論的水/溶媒は、制御が困難であることが見出され、おそらく、環境の相対湿度に強く依存し得るものと思われる。
B.リン酸ボルシクリブ:リン酸ボルシクリブの特性は、以下を含んでいた:初期塩スクリーニングでは、2つの形態、Pho1及びPho2のみが見出された;プラントで製造された物質は、新規な形態、Pho3であると特定された;Pho1は、進行劣化条件(40℃/RH75%)に曝露された場合に安定である唯一の形態であった;水への曝露時にゲル化は見られなかった;並びにPho1は、>5mg/mLの溶解度であった。さらに、網羅的な多形スクリーニングの後、いくつかのさらなる形態:Pho1、Pho3、Pho4、Pho5、Pho6、Pho7、Pho8、及びPho9が見出され、Pho1は、中程度に吸湿性であることが見出され、水への曝露時にゲルとなった。
C.マロン酸ボルシクリブ:マロン酸ボルシクリブの特性は、以下を含んでいた:Mao1は、最も一般的な形態であり、無水固体であり、非吸湿性であり、およそ13mg/mLの溶解度を有していた;水への曝露時にゲル化は見られなかった;Mao3及びMao5は、真空下での乾燥時、又は進行劣化条件(40℃/RH75%)への曝露時に、物理的に不安定であり、Mao1に変換された;Mao4は、炭化水素溶媒(シクロヘキサン、ペンタン、及びヘプタン)に曝露された場合に、アモルファス物質からのみ直接形成された;並びにMao1は、冷却結晶化によって、高収率及び高純度で製造/精製することができる。しかし、3つのさらなる形態が識別された:すべて水和物と思われるMao3、Mao4、及びMao5。これらの製造性、多形、及び吸湿性の特性に基づいて、マロン酸塩をさらなる開発のために選択した。
ボルシクリブHCl塩及びマロン酸塩を、イヌのPK試験で比較した(例10も参照)。各塩形態を、同一の調合で錠剤に調合した。9体のイヌを、3体のイヌ/群の3つの群に振り分けた。各群は、以下の異なる前処理のうちの1つを受けた。
1.前処理なし(自然の胃pH-酸性又はアルカリ性であり得る)
2.ファモチジン(アルカリ性の胃pHを引き起こす)
3.ペンタガストリン(酸性の胃pHを引き起こす)
この試験では、クロスオーバーデザインを用いた。イヌの各群は、まず前処理を受けてから、ボルシクリブHCl塩の投与を受けた。休薬期間の後、同じ群のイヌは同じ前処理を受けてから、ボルシクリブマロン酸塩の投与を受けた。次に、結果を変動性について分析した。図293は、この変動性分析を示す。各群に対する変動性分析は、マロン酸塩の方が、より一定の曝露が可能であることを示した。これらの結果は、3群すべてを一緒に分析した場合に統計的に有意であり(図293の「組み合わせ」前処理の行を参照)、マロン酸塩は、HCl塩よりも低いTmax、Cmax/用量、及びAUClast/用量を有することが見出された。図294は、各イヌ及びPKパラメータにおけるマロン酸塩のHCl塩に対する比を算出したものを示す。
例10:雄のビーグル犬におけるボルシクリブ塩吸収の評価
この例は、雄のビーグル犬におけるボルシクリブ塩の吸収を評価する試験について開示する。この試験の目的は、ボルシクリブ(ME-522)塩酸塩及びマロン酸塩の吸収の変動性を、様々な胃腸管pH条件にわたって評価することであった。
物質及び方法
ボルシクリブ塩酸塩及びマロン酸塩を、表62にまとめて示すように、同一の調合で300mg錠剤に調合した。
Figure 2024038072000089
イヌの薬物動態試験:この2相試験では、9体のビーグル犬を、群あたり3体のイヌの3つの処理群(群1~3)に振り分けた。動物を体重によってランク付けし、コンピュータによる無作為割り付けを用いて処理群に割り付けた。すべてのイヌに対して、第I相ではボルシクリブHCl塩の、第II相ではボルシクリブマロン酸塩の300mgの経口錠剤を1つ投与し、相間の休薬期間は7日間とした。各相の過程で、群2には、ボルシクリブ投与の1時間前にファモチジン(40mg/イヌ)を経口投与し、群3には、ボルシクリブ投与のおよそ30分前にペンタガストリン(0.006mg/kg)を筋肉内(IM)投与した。
臨床観察を少なくとも1日1回、投与日にはボルシクリブ投与のおよそ1時間後に記録した。体重測定を、用量投与前(第1日及び8日)、及び第I相後の休薬期間の最終日(第7日)に無作為化のために記録した。ボルシクリブの血漿中濃度の分析のために、各相の過程で、血漿サンプルを、用量投与前に(第II相のみ)、さらには投与の0.5、1、2、4、5、6、8、及び24時間後に、すべての群から採取した。
薬物動態分析:薬物動態(PK)分析を、Phoenix WinNonlinによる
ノンコンパートメント分析を用いて、ボルシクリブの個々の血漿中濃度対時間データに対して行った。薬物吸収を評価するために、PKパラメータCmax(最大血漿中濃度)を測定した。
各イヌに対して、ボルシクリブ遊離塩基の実際に投与した量を、イヌの体重データを用い、mg/kgベースで算出した。次に、用量で標準化したCmax/用量PKパラメータを、各イヌに対して算出した。
統計分析:各イヌ及び処理に対するCmaxを表63に表で示す。体重、用量当たりの投与されたボルシクリブ遊離塩基、及び用量で標準化したCmax/用量の算出を、表64にまとめて示す。
Figure 2024038072000090
Figure 2024038072000091
統計分析:各塩及び前処理に対する%CVを(分析あたり3体のイヌ)、表65に提示する。前処理全体にわたっての各塩に対する%CVを(分析あたり9体のイヌ)、表66に提示する。分散の2標本F検定から、マロン酸塩と塩酸塩との間でのCmax/用量の差は、すべての前処理全体にわたって(9体のイヌ)統計的に有意であることが示された(p=0.007)。
Figure 2024038072000092
Figure 2024038072000093
これらの結果に基づいて、様々な胃腸管pH条件全体にわたって、マロン酸ボルシクリブの吸収の変動性が塩酸塩よりも低いことが見出された。
群あたりの各対象におけるボルシクリブの血漿中濃度を、HPLCで測定した。表67は、生体分析法を示す。表68は、様々な時間間隔で測定した群あたりの各対象におけるボルシクリブの血漿中濃度(ng/mL)を示す。結果は、図295にグラフとしても示す。
Figure 2024038072000094
Figure 2024038072000095
Figure 2024038072000096
Figure 2024038072000097
例11:ボルシクリブマロン酸塩の形成
Figure 2024038072000098
2-(2-クロロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-((2S,3R)-2-(ヒドロキシメチル)-1-メチルピロリジン-3-イル)-4H-クロメン-4-オンマロン酸塩(ME-522マロン酸塩):
ボルシクリブ遊離塩基(Int-5A)及びアセトン(5体積分)を反応フラスコに投入して、不均一反応混合物を得た。反応混合物を50±5℃で加熱し、すべての固体が溶解して均一反応溶液が得られるまでかき混ぜた。温度を50±5℃に維持した状態で、マロン酸(1.1当量)を反応溶液に添加し(僅かに発熱)、1時間撹拌した。反応混合物を、4.5時間かけて50℃から25℃までゆっくり冷却し、16時間以上にわたって25±5℃に保持した。粗生成物を真空ろ過によって回収し、ウェットケーキを1体積分のアセトンで洗浄した。得られた固体を、真空下、40℃で乾燥して、表題の化合物を96%の純度で黄色固体として得た。
母液を濃縮し、得られた粗固体を上記と同じ手順を用いてアセトンから再結晶することによって、第二の生成分の物質を得た。両ロット共にMao1を得た。
マロン酸ボルシクリブのサンプル情報及びXRPDの結果を表1にまとめて示す。ロット20-00022-01、20-00026-01、及び20-00062-01のXRPDパターンは、シャープなピークを呈し、このことは、これらのサンプルが、主として結晶物質を含んでいることを示している(データセクション参照)。サンプルパターンは、ピーク位置という点で互いに類似しており(図1)、このことは、これらが同じ物質を含んでいることを示唆している。ロット20-00026-01のパターンは、およそ10~30°2θの範囲内の拡散散乱を示し、このことは、このロットがよりディスオーダーであること、又はアモルファス構成成分を含有する可能性があることを示唆している。
Figure 2024038072000099
XRPDパターンを、Optix長微小焦点源を用いて発生させたCu線の入射ビームを用いたPANalytical Empyrean回折計で収集した。楕円傾斜多層膜ミラーを用いて、CuKαX線を、試料を通して検出器上に集光した。分析の前に、シリコン試料(NIST SRM 640e)を分析して、Si 111ピークの観察位置がNIST認証位置と一致していることを確認した。各サンプルの試料を、3μm厚のフィルム間に挟み、透過形状で分析した。ビームストップ、短散乱防止エクステンション(short anti-scatter extension)、及び散乱防止ナイフエッジを用いて、空気によって発生するバックグラウンドを最小限に抑えた。入射及び回折ビームに対してソーラースリットを用いて、軸発散の広がりを最小限に抑えた。回折パターンは、試料から240mmに置いた走査型位置敏感検出器(X’Celerator)及びData Collectorソフトウェアv.5.5を用いて収集した。Data Viewer v.1.8を用いて、本報告中のデータセクションにあるXRPD画像を作成した。データ取得パラメータは、本報告のデータセクションにある画像上に表示する。Data Viewer バージョン1.8を用いて、図1を作成した。
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Claims (24)

  1. ボルシクリブ遊離塩基、又は、1,5-ナフタレンジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ジベンゾイル-L-酒石酸、エタンスルホン酸、ゲンチジン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、オルトリン酸、硫酸、及びp-トルエンスルホン酸から選択される酸に相当する対イオンを含むボルシクリブ塩、を含む、ボルシクリブの結晶形態。
  2. 7.30°±0.2°、13.58°±0.2°、14.06°±0.2°、15.18°±0.2°、15.66°±0.2°、17.50°±0.2°、18.94°±0.2°、19.54°±0.2°、22.22°±0.2°、23.38°±0.2°、24.10°±0.2°、24.98°±0.2°、25.94°±0.2°、27.26°±0.2°、28.50°±0.2°、及び32.82°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態。
  3. 前記結晶形態が、マロン酸ボルシクリブを含む、請求項2に記載の結晶形態。
  4. 5.06°±0.2°、6.42°±0.2°、9.34°±0.2°、10.14°±0.2°、12.30°±0.2°、13.66°±0.2°、14.14°±0.2°、15.82°±0.2°、17.02°±0.2°、19.74°±0.2°、20.38°±0.2°、21.82°±0.2°、22.66°±0.2°、24.62°±0.2°、25.78°±0.2°、26.58°±0.2°、28.66°±0.2°、及び29.98°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態。
  5. 前記結晶形態が、ジベンゾイル酒石酸ボルシクリブを含む、請求項4に記載の結晶形態。
  6. 4.94°±0.2°、6.78°±0.2°、9.34°±0.2°、10.94°±0.2°、12.70°±0.2°、13.38°±0.2°、14.90°±0.2°、15.66°±0.2°、17.54°±0.2°、18.82°±0.2°、22.02°±0.2°、23.98°±0.2°、24.78°±0.2°、25.30°±0.2°、26.66°±0.2°、及び29.98°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態。
  7. 前記結晶形態が、リン酸ボルシクリブを含む、請求項6に記載の結晶形態。
  8. 6.86°±0.2°、12.66°±0.2°、13.58°±0.2°、14.74°±0.2°、15.98°±0.2°、19.38°±0.2°、23.94°±0.2°、24.78°±0.2°、及び25.94°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態。
  9. 前記結晶形態が、シュウ酸ボルシクリブを含む、請求項8に記載の結晶形態。
  10. 9.02°±0.2°、10.50°±0.2°、11.06°±0.2°、12.30°±0.2°、12.82°±0.2°、13.90°±0.2°、14.82°±0.2°、15.30°±0.2°、15.94°±0.2°、17.26°±0.2°、19.34°±0.2°、20.62°±0.2°、22.18°±0.2°、22.86°±0.2°、24.58°±0.2°、25.42°±0.2°、25.86°±0
    .2°、27.38°±0.2°、及び28.66°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするボルシクリブの結晶形態。
  11. 前記結晶形態が、ナパジシル酸ボルシクリブを含む、請求項10に記載の結晶形態。
  12. 前記結晶形態が、結晶無水物である、請求項1~11のいずれか一項に記載の結晶形態。
  13. 前記結晶形態が、結晶水和物である、請求項1~11のいずれか一項に記載の結晶形態。
  14. 6.36°±0.2°2θ、13.88°±0.2°2θ、7.31°±0.2°2θ、9.34°±0.2°2θ、10.05°±0.2°2θ、13.59°±0.2°2θ、14.08°±0.2°2θ、15.21°±0.2°2θ、15.67°±0.2°2θ、17.53°±0.2°2θ、18.70°±0.2°2θ、18.98°±0.2°2θ、19.38°±0.2°2θ、19.67°±0.2°2θ、20.16°±0.2°2θ、20.39°±0.2°2θ、21.01°±0.2°2θ、22.27°±0.2°2θ、23.35°±0.2°2θ、24.15°±0.2°2θ、24.67°±0.2°2θ、25.00°±0.2°2θ、25.18°±0.2°2θ、25.57°±0.2°2θ、25.93°±0.2°2θ、26.21°±0.2°2θ、27.19°±0.2°2θ、及び27.38°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするマロン酸ボルシクリブの結晶形態。
  15. 6.86°±0.2°2θ、9.70°±0.2°2θ、10.84°±0.2°2θ、12.50°±0.2°2θ、12.66°±0.2°2θ、12.81°±0.2°2θ、13.41°±0.2°2θ、13.71°±0.2°2θ、14.54°±0.2°2θ、15.35°±0.2°2θ、15.83°±0.2°2θ、18.70°±0.2°2θ、19.00°±0.2°2θ、19.43°±0.2°2θ、19.62°±0.2°2θ、21.75°±0.2°2θ、22.75°±0.2°2θ、23.35°±0.2°2θ、23.47°±0.2°2θ、23.81°±0.2°2θ、23.98°±0.2°2θ、24.36°±0.2°2θ、24.60°±0.2°2θ、24.86°±0.2°2θ、25.11°±0.2°2θ、25.60°±0.2°2θ、25.75°±0.2°2θ、及び26.25°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするシュウ酸ボルシクリブの結晶形態。
  16. 4.93°±0.2°2θ、6.79°±0.2°2θ、9.35°±0.2°2θ、10.58°±0.2°2θ、10.91°±0.2°2θ、12.64°±0.2°2θ、13.35°±0.2°2θ、13.58°±0.2°2θ、14.81°±0.2°2θ、15.60°±0.2°2θ、17.18°±0.2°2θ、17.52°±0.2°2θ、18.32°±0.2°2θ、18.78°±0.2°2θ、19.34°±0.2°2θ、19.64°±0.2°2θ、19.78°±0.2°2θ、22.02°±0.2°2θ、23.20°±0.2°2θ、23.67°±0.2°2θ、24.00°±0.2°2θ、24.71°±0.2°2θ、25.21°±0.2°2θ、25.39°±0.2°2θ、26.55°±0.2°2θ、27.22°±0.2°2θ、28.07°±0.2°2θ、及び29.90°±0.2°2θから選択される1又は複数のピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とするリン酸ボルシクリブの結晶形態。
  17. 請求項1~16のいずれか一項に記載のボルシクリブ結晶形態及び医薬的に許容される賦形剤を含む組成物。
  18. 請求項17に記載の組成物を含む剤形。
  19. 患者の疾患を治療する方法であって、前記方法は、請求項17に記載の組成物又は請求項18に記載の剤形の治療有効量を前記患者に投与することを含み、前記疾患は、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、B細胞リンパ増殖性疾患、B細胞性急性リンパ性白血病、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、バーキット白血病、ホジキン病、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、若年性骨髄単球性白血病、有毛細胞白血病、マスト細胞白血病、マスト細胞症、骨髄増殖性疾患(MPD)、骨髄増殖性腫瘍、真性多血症(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病(BCR-ABL1-陽性)、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、末梢神経系(PNS)の原発性多巣性リンパ腫、胸腺癌、脳癌、神経膠芽腫、肺癌、扁平上皮癌、皮膚癌(例:黒色腫)、眼癌、網膜芽細胞腫、眼球内黒色腫、口腔及び中咽頭癌、膀胱癌、胃癌、胃癌、膵癌、乳癌、子宮頚癌、頭頚部癌、腎癌、腎癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、直腸結腸癌、骨癌(例:転移性骨癌)、食道癌、精巣癌、婦人科癌、甲状腺癌、類表皮癌、AIDS関連癌(例:リンパ腫)、ウイルス誘発子宮頚癌(ヒトパピローマウイルス)、上咽頭癌(エプスタインバーウイルス)、カポジ肉腫、原発性体液性リンパ腫(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)、肝細胞癌(B型肝炎ウイルス及びC型肝炎ウイルス)、T細胞白血病(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)、皮膚の良性過形成、再狭窄、良性前立腺肥大、腫瘍血管新生、慢性炎症性疾患、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化、炎症性腸疾患、乾癬、湿疹、及び強皮症などの皮膚疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性、血管腫、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、嚢炎、脊椎関節炎、ぶどう膜炎、ベーチェット病、リウマチ性多発筋痛症、巨細胞性動脈炎、サルコイドーシス、川崎病、若年性特発性関節炎、化膿性汗腺炎、シェーグレン症候群、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎、クローン病、ループス、並びにループス腎炎から成る群より選択される、方法。
  20. 患者の過剰増殖性疾患を治療する方法であって、前記方法は、請求項17に記載の組成物又は請求項18に記載の剤形の治療有効量を前記患者に投与することを含み、前記過剰増殖性疾患は、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、B細胞リンパ増殖性疾患、B細胞性急性リンパ性白血病、及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症から成る群より選択される、方法。
  21. 患者の血液癌を治療する方法であって、前記方法は、請求項17に記載の組成物又は請求項18に記載の剤形の治療有効量を前記患者に投与することを含む、方法。
  22. 前記血液癌が、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性リンパ腫(ALL)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)から成る群より選択される、請求項21に記載の方法。
  23. 請求項1~16のいずれか一項に記載の結晶形態及び医薬的に許容される賦形剤を含む、患者の血液癌を治療するための組成物。
  24. 前記血液癌が、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性リンパ腫(ALL)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)から成る群より選択される、請求項23に記載の組成物。
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