JP2024033026A - フィルタ用基材 - Google Patents

フィルタ用基材 Download PDF

Info

Publication number
JP2024033026A
JP2024033026A JP2021007820A JP2021007820A JP2024033026A JP 2024033026 A JP2024033026 A JP 2024033026A JP 2021007820 A JP2021007820 A JP 2021007820A JP 2021007820 A JP2021007820 A JP 2021007820A JP 2024033026 A JP2024033026 A JP 2024033026A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
heat
porous membrane
fibers
filter
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021007820A
Other languages
English (en)
Inventor
元道 福田
Motomichi Fukuda
常括 竹内
Tsunekatsu Takeuchi
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Paper Mills Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Paper Mills Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Paper Mills Ltd filed Critical Mitsubishi Paper Mills Ltd
Priority to JP2021007820A priority Critical patent/JP2024033026A/ja
Priority to PCT/JP2022/001331 priority patent/WO2022158412A1/ja
Publication of JP2024033026A publication Critical patent/JP2024033026A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Filtering Materials (AREA)
  • Nonwoven Fabrics (AREA)
  • Paper (AREA)

Abstract

【解決手段】多孔質膜を熱融着により貼り合わせてフィルタ用濾材として使用するためのフィルタ用基材において、二以上の層からなる湿式不織布であり、少なくとも一層が合成繊維と熱融着性バインダー繊維を含む層であり、多孔質膜に接する側の最外層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上であり、多孔質膜に接しない側の層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%未満であり、多孔質膜と接する側の最外層の坪量が5g/m2以上60g/m2以下であり、多孔質と接しない側の層の坪量が25g/m2以上120g/m2以下であることを特徴とするフィルタ用基材。【効果】本発明によれば、熱融着による貼り合わせの際に高密度になり難く、且つ、多孔質膜と基材との間で高い剥離強度が得られるフィルタ用基材が得られる。【選択図】なし

Description

本発明は、フィルタ用基材に関する。
従来から、エアフィルタ用濾材、液体フィルタ用濾材として、多孔質膜が使用されている。多孔質膜の素材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;等が挙げられる。特に、これらの多孔質膜は高い捕集効率と低い圧力損失を達成できるため、高い捕集効率が求められるクリーンルーム用フィルタやサイクロン式掃除機用フィルタ等において、エアフィルタ用濾材として使用されている。また、高い耐薬品性を備えていることから、水酸化ナトリウム等の強アルカリにより清浄作業が行われることがある浄水処理用フィルタ、産業廃水、工業用水等の濾過用フィルタにおいて、液体フィルタ用濾材としても広く使用されている。しかしながら、非特許文献1にあるように、多孔質膜は機械的強度が低く、寸法安定性にも問題があることから、多孔質膜単体で使用することが難しい。そのため、フィルタ用基材と多孔質膜とを複合化したフィルタ用濾材が必要とされている。しなやかさや気孔率の観点から、フィルタ用基材として不織布が使用されることが多い。以下、「フィルタ用基材」を「基材」と略記する場合があり、「フィルタ用濾材」を「濾材」と略記する場合がある。
基材と多孔質膜との複合化は、熱融着による貼り合わせ、接着剤による貼り合わせ等によって行われる。接着剤による貼り合わせは、接着剤が多孔質膜の孔を塞ぐことから、圧力損失の上昇や捕集効率の低下が懸念されるため好ましくない。そのため、熱融着による貼り合わせによって複合化することが好ましい。熱融着による貼り合わせは、熱圧処理によるラミネート加工が施されるが、熱圧処理によって基材が高密度となるため、圧力損失が上昇する場合があった。また、熱圧処理による剥離強度が不十分であることにより、フィルタ使用中に、多孔質膜が基材から剥離する問題が生ずる場合があった。そのため、フィルタ用基材には、熱融着による貼り合わせの際に高密度となりにくく、且つ高い剥離強度が求められる。
多孔質膜と複合化させるための基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂からなり、目付量が40g/m~120g/m、厚みが0.3mm~0.9mm、破裂強さが199kPa~600kPa、突刺強さが8N~24N、気孔率が65%~90%である不織布が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1で開示されている基材では、熱融着による貼り合わせの際に基材が高密度となり圧力損失が上昇する懸念や、多孔質膜と基材との剥離強度が十分ではないため、多孔質膜が基材から剥離するなどの問題が発生する懸念があった。
特許文献2では、基材として、ポリエステル/ポリエチレンの芯鞘複合繊維からなるスパンボンド不織布が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2の基材においても、熱融着による貼り合わせの際に基材が高密度となり、圧力損失が上昇する懸念や、基材と多孔質膜との剥離強度が十分でなく、多孔質膜が基材から剥離するなどの問題が発生する懸念があった。
そのため、熱融着による貼り合わせの際に、圧力損失が上昇し難く、且つ、多孔質膜と基材との間で高い剥離強度が得られるフィルタ用基材が求められている。
北島 賢宏著、「ふっ素樹脂フィルムとその高機能化」、バルカー技術誌、Winter、2015、No.28、第6頁
特開2014-240047号公報 特開平10-211409号公報
本発明は、熱融着による貼り合わせの際に、圧力損失が上昇し難く、且つ、多孔質膜と基材との間で高い剥離強度が得られるフィルタ用基材を得ることを課題としている。
本発明者らは、この課題を解決するため研究を行い、以下の発明を見出した。
<1>多孔質膜を熱融着により貼り合わせてフィルタ用濾材として使用するためのフィルタ用基材において、二以上の層からなる湿式不織布であり、少なくとも一層が合成繊維と熱融着性バインダー繊維を含む層であり、多孔質膜に接する側の最外層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上であり、多孔質膜に接しない側の層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%未満であり、多孔質膜と接する側の最外層の坪量が5g/m以上60g/m以下であり、多孔質と接しない側の層の坪量が25g/m以上120g/m以下であることを特徴とするフィルタ用基材。
<2>多孔質膜の素材がポリテトラフルオロエチレンである<1>記載のフィルタ用基材。
本発明によれば、熱融着による貼り合わせの際に高密度になり難く、且つ、多孔質膜と基材との間で高い剥離強度が得られるフィルタ用基材が得られる。
本発明のフィルタ用基材は、多孔質膜を熱融着により貼り合わせてフィルタ用濾材として使用するためのフィルタ用基材であり、二以上の層からなる湿式不織布であり、少なくとも一層が合成繊維と熱融着性バインダー繊維を含む層であり、多孔質膜に接する側の最外層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上であり、多孔質膜に接しない側の層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%未満であり、多孔質膜と接する側の最外層の坪量が5g/m以上60g/m以下であり、多孔質と接しない側の層の坪量が25g/m以上120g/m以下であることを特徴とする。
本発明のフィルタ用基材は、二以上の層からなる。そして、本発明では、多孔質膜フィルムに接する側の最外層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上であり、多孔質膜に接しない側の層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%未満である。本発明のフィルタ用基材が二層の場合は、熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上の層/熱融着性バインダー繊維が50質量%未満の層という構成である。また、三層以上構成の場合、例えば、熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%未満の層/熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上の層/熱融着性バインダー繊維が50質量%未満の層という構成である場合、熱融着性バインダー繊維が50質量%以上の層が多孔質膜に接しない場合、十分な剥離強度が得ることができない。本発明のフィルタ用基材において、熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上の層は少なくとも片表面に露出する構成である必要がある。すなわち、熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上の層/熱融着性バインダー繊維が50質量%未満の層/熱融着性バインダー繊維が50質量%未満の層という構成、熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上の層/熱融着性バインダー繊維が50質量%未満の層/熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上の層という構成が例示できる。
湿式不織布は、均一な地合いが得られる湿式抄紙法で製造された不織布である。湿式抄紙法では、各繊維を水に分散させスラリーを調成する。スラリーは抄紙機を用いて抄造され、湿式不織布が得られる。
抄造の際に配合する薬品として、湿紙状態での断紙対策として湿潤強度剤やヤンキードライヤーからの剥離を安定させるため、内添サイズ剤を使用してもよい。
湿式抄紙法では、例えば、長網式、円網式、傾斜ワイヤー等の抄紙方式を用いることができる。本発明のフィルタ用基材は、二以上の層からなるため、これらの抄紙方式から選択される同種又は異種の二機以上の抄紙方式がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機を使用して製造することができる。均一性に優れたフィルタ用基材を製造するには、少なくとも一層が長網式、傾斜ワイヤー式のように、緩やかに、ワイヤー上のスラリーから脱水することができる抄紙方式を使用することが好ましい。
本発明において、合成繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル繊維;ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等のポリオレフィン繊維;ポリスチレン又はこれらポリマーの変性ポリマー及びコポリマーからなる繊維;アクリル繊維;ポリアクリロニトリル繊維;ポリビニルアルコール繊維;ポリアミド繊維;ウレタン繊維;レーヨン繊維、再生セルロース繊維、溶剤紡糸セルロース繊維等のセルロース繊維;コラーゲン、アルギン酸、キチン質等を溶液にしたものを紡糸した繊維;等が挙げられる。本発明において、合成繊維は、熱融着性バインダー繊維の融点又は軟化温度においても、繊維の断面形状が変化しないか、又は断面形状が変化しても、繊維形状は維持するという特徴を有し、主体繊維の役割を果たす。そのため、合成繊維を配合することにより、熱融着による貼り合わせの際に厚みが下がり難く、基材が高密度になり難いという効果が得られる。なお、一般的に、合成繊維の融点又は軟化点は、熱融着性バインダー繊維の融点又は軟化点よりも高いという特徴を有する。
合成繊維の配合比率は、湿式不織布に含まれる全繊維成分に対して、10~80質量%であることが好ましく、20~75質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがさらに好ましい。合成繊維の配合比率が10質量%未満である場合、熱融着による貼り合わせの際に厚みが下がり過ぎて、密度が高過ぎる基材となることから、濾材の圧力損失が高くなりすぎて、フィルタとして適さない場合がある。一方、合成繊維の配合比率が80質量%超である場合、熱融着性バインダー繊維が少ないため、基材から繊維が脱落しやすく、フィルタとして使用した際に、脱落繊維が下流に流出して悪影響を与えるという問題が発生する場合がある。
合成繊維の繊度は、0.1~6.0デシテックスが好ましく、より好ましくは0.6~3.3デシテックスである。合成繊維の繊度が0.1デシテックス未満である場合、抄紙性が悪く、地合いが悪くなる傾向があり、コストアップにもなる。一方、合成繊維の繊度が6.0デシテックス超である場合、地合いが悪くなる傾向がある。合成繊維の繊維長は2~20mmが好ましく、より好ましくは3~10mmである。合成繊維の繊維長が2mm未満である場合、湿式抄紙法でワイヤーから繊維が抜け易く、歩留りが低下する場合がある。一方、合成繊維の繊維長が20mmを超えると、湿式抄紙法において、スクリーンで繊維が詰まり、抄紙が困難となる場合がある。
本発明おいて、熱融着性バインダー繊維の融点又は軟化温度以上に不織布の温度を上げる工程を製造工程に組み入れることで、機械的強度が向上する。
熱融着性バインダー繊維の繊度は、0.1~6.0デシテックスが好ましく、より好ましくは0.2~3.3デシテックスである。熱融着性バインダー繊維の繊度が0.1デシテックス未満である場合、厚みが小さく、密度が高い不織布となることから、圧力損失が高くなり、フィルタ用基材として適さない場合がある。一方、熱融着性バインダー繊維の繊度が6.0デシテックス超である場合、不織布の地合いが悪くなり、フィルタ用基材として適さない場合がある。熱融着性バインダー繊維の繊維長は2~20mmが好ましく、より好ましくは3~10mmである。熱融着性バインダー繊維の繊維長が2mm未満である場合、湿式抄紙法でワイヤーから繊維が抜けやすく、歩留まりが低下する場合がある。一方、熱融着性バインダー繊維の繊維長が20mmを超えると、湿式抄紙法においてスクリーンで繊維が詰まり、抄紙が困難となる場合がある。
熱融着性バインダー繊維としては、単繊維の他、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)などの複合繊維が挙げられる。単繊維としては、ポリエチレン、未延伸ポリエステル等の繊維を挙げることができる。複合繊維は、不織布表面に皮膜が形成されない状態で、機械的強度を向上させることができる。芯鞘繊維としては、例えばポリプロピレン(芯)と、ポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせが挙げられる。また、ポリエチレン等の低融点樹脂のみで構成される全融タイプの単繊維は、乾燥工程で皮膜を形成しやすく、厚みが小さくなりやすいことから、圧力損失が高くなることがあるが、特性を阻害しない範囲であれば使用することができる。本検討においては、芯部分があることから、熱融着による貼り合わせの際に厚みが下がり難い芯鞘繊維が熱融着性バインダー繊維として好ましい。
熱融着性バインダー繊維の配合比率は、湿式不織布に含まれる全繊維成分に対して、20~90質量%であることが好ましく、25~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがさらに好ましい。熱融着性バインダー繊維の配合比率が10質量%未満である場合、合成繊維を止める成分が足りず、脱落繊維が多く発生するという問題が発生する場合がある。一方、熱融着性バインダー繊維の配合比率が90質量%超である場合、厚みが小さく、密度が高い不織布となることから、熱圧処理の際に厚みが下がることで圧力損失が上がり、フィルタとして適さないという問題が発生する場合がある。
熱融着性バインダー繊維の融点は、180℃未満であることが好ましく、170℃未満であることが好ましく、160℃未満であることがさらに好ましい。熱融着性バインダー繊維の融点が180℃よりも高い場合、熱融着による貼り合わせの際に高い温度をかける必要があり、それにより合成繊維が潰れやすくなることで、圧力損失が高くなる場合がある。
多孔質膜フィルムに接する側の最外層における熱融着性バインダー繊維の配合比率は、該層に含まれる全繊維成分に対して、50質量%以上であるが、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。また、該層における熱融着性バインダー繊維の配合比率は、100質量%であっても良い。
多孔質膜に接しない側の層における熱融着性バインダー繊維の配合比率は、該層に含まれる全繊維成分に対して、50質量%未満であるが、より好ましくは40質量%未満であり、さらに好ましくは30質量%未満である。また、該層における熱融着性バインダー繊維の配合比率は、0質量%であっても良い。多孔質膜に接しない側の層が複数層である場合、熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%未満である層が複数層の中の1層以上であれば良いが、多孔質膜に接しない側の最外層が熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%未満である層であることがより好ましい。
本発明において、主体繊維として、合成繊維の他に、木材パルプを用いることもできる。木材パルプは、NBKP,LBKP,NBSP,LBSPその他いずれの種類のパルプでも限定はされない。木材パルプの繊維が細かいと、圧力損失が高くなる傾向があるため、特に限定はされないが、木材パルプの繊維径は大きいほうが好ましい。
湿式不織布が木材パルプを含有する場合、木材パルプの配合比率は、特に限定されないが、湿式不織布に含まれる全繊維成分に対して、50質量%未満であることが好ましく、40質量%未満であることがより好ましく、30質量%未満であることがさらに好ましく、また、木材パルプを含有しなくてもなんら問題はない。木材パルプの配合比率が50質量%以上である場合、木材パルプが不織布の孔を塞ぐため、圧力損失が高くなるという問題が発生する場合があり、また、木材パルプが多孔質膜との接着を阻害するため、剥離強度が小さくなるという問題が発生する場合がある。
本発明において、バインダー繊維として、熱融着性バインダー繊維の他に、湿熱接着性バインダー繊維を用いることもできる。湿熱接着性バインダー繊維としては、ポリビニルアルコール(PVA)系繊維のような熱水可溶性の繊維を使用することができる。湿熱接着性バインダー繊維は、常温の水ではほとんど溶解しないで、繊維形態を保っているが、湿式抄紙法のドライヤー面で加熱されると、容易に溶解し始め、その瞬間にタッチロールのような加圧設備で加圧し、その後の脱水乾燥を経ることによって、再凝固し、バインダー効果が得られる。
この湿熱接着性バインダー繊維の接着力に及ぼす影響は、水中軟化点から考えることができる。水中軟化点は、湿式抄紙法において、湿紙がドライヤーにより熱を受け、湿熱接着性バインダーが溶解し始めて接着機能を示す温度を大体示している。水中軟化点の低い湿熱接着性バインダーを使用するほど、接着の前提条件である湿熱接着性バインダー繊維の溶解が容易となり、接着効果が大きくなる。しかし、水中軟化点があまりに低くなりすぎると、ドライヤーへの付着が起こり易いという問題が生じる。湿熱接着性バインダーが溶解するためには、その水中軟化点以上に湿紙の温度が高くなる必要があり、従って乾燥温度が高いほど接着効果が大きく、強度は向上する。湿紙の温度が湿熱接着性バインダー繊維の水中軟化点以下では、湿熱接着性バインダーの溶解が起こらず、従って、バインダー効果はまったく失われる。ヤンキードライヤーの場合、ドライヤーのスチーム温度は130~160℃程度で、これに接触している湿紙の温度は60~90℃と考えられるから、十分なバインダー効果を得るためには、湿熱接着性バインダー繊維の水中軟化点が65~85℃であることが好ましい。ただし、湿熱接着性バインダー繊維は皮膜を形成することで、湿式不織布の孔を塞ぎ、また水分の無い状態で熱圧処理を行っても多孔質膜との接着には寄与しないことから、配合比率は特に限定されないが、湿熱接着性バインダー繊維を用いる場合には、湿式不織布に含まれる全繊維成分に対して、20質量%未満であることが好ましい。
また、湿熱接着性バインダーの繊度は特に限定されないが、0.3~5.0デシテックスであることが好ましく、より好ましくは1.0~3.0デシテックスである。繊度が0.3デシテックス未満である場合、抄紙ワイヤーから脱落する場合がある。一方、5.0デシテックスを超えた場合、比表面積が少ないことから、十分な強度が得難いことがある。繊維長は、地合い、分散性の観点を考慮すると、3~6mmが好ましい。
また、本発明に用いられるその他の繊維としては、木綿パルプ、ワラパルプ、竹パルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、麻パルプが挙げられる。ガラス繊維や炭素繊維等の無機繊維を用いることもできるが、熱融着による貼り合わせの際に砕け、基材の強度が著しく下がることがあるため、含有しないほうが好ましい。
本発明のフィルタ用基材は、特に限定されないが、坪量が30g/m~180g/mであることが好ましく、40g/m~160g/mであることがより好ましい。坪量が30g/mよりも小さくなると、基材の強度が弱く、フィルタとして使用している最中に破損する場合がある。180g/mよりも大きい場合、圧力損失が高くなり、フィルタとして使用するには適さない場合がある。
本発明の多孔質膜に接する側の最外層の坪量は5g/m~60g/mであり、10g/m~50g/mであることがより好ましい。多孔質に接する側の最外層の坪量が5g/mよりも小さい場合、多孔質膜との接着強度を上げるという効果が十分に得られない。多孔質膜に接する側の最外層の坪量が60g/mよりも大きい場合、圧力損失が高くなり、フィルタとして使用するには適さない。
本発明の多孔質膜に接しない側の層の坪量は25g/m~120g/mであり、30g/m~110g/mであることがより好ましい。多孔質に接しない側の層の坪量が25g/mよりも小さい場合、強度が弱いため、フィルタとして使用した際に破損が起こり、フィルタとして使用するには適さない。多孔質に接しない側の層の坪量が120g/mよりも大きい場合、圧力損失が高くなり、フィルタとして使用するには適さない。
本発明のフィルタ用基材は、特に限定されないが、密度が0.1~0.5g/cmの範囲であることが好ましい。該密度は、湿式抄紙の際の抄紙条件の調整、繊維の種類、繊維の配合比率、坪量や厚みの調整で適宜調整することができる。密度が0.1g/cmよりも小さくなると、熱圧処理の際に脱落繊維が発生してトラブルとなる場合がある。密度が0.5g/cmを超えると、圧力損失が高くなるため、フィルタ用基材として適さない場合がある。
本発明のフィルタ用基材において、フラジール通気度は、JIS L1096:2010に記載のA法(フラジール形法)で規定される通気度をいう。本発明のフィルタ用基材のフラジール通気度は、10cm/cm・s以上であることが好ましく、より好ましくは20cm/cm・s以上である。10cm/cm・sよりもフラジール通気度が低いと、圧力損失が高くなり、フィルタ用基材として適さない場合がある。
本発明のフィルタ用基材と多孔質膜とを熱融着により貼り合わせることによって、フィルタ用濾材となる。貼り合わせは、熱圧処理によって行うことができる。熱圧処理は、熱プレス機を用いてシートの積層加工や、熱カレンダーを用いて巻き取り同士の積層加工により行うことができる。湿式不織布と多孔質膜の十分な剥離強度を得るために、熱圧処理時の温度は100℃以上であることが好ましい。
本発明において、多孔質膜は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート;ポリウレタン;ポリイミド;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の多孔質膜を用いることができる。耐熱温度の低い多孔質膜を用いると、熱圧処理を行った際に多孔質膜の軟化し、孔が閉塞してフィルタとして使用するために十分なフラジール通気度を得ることができない恐れがあることから、耐熱性に優れたポリテトラフルオロエチレンを用いることが好ましい。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下、実施例に記載される部及び比率は質量を基準とする。
<合成繊維>
・PET繊維(繊度1.7デシテックス、繊維長5mm)
<熱融着性バインダー繊維>
・PET-低融点PET芯鞘繊維(芯鞘バインダー、繊度2.2デシテックス、繊維長5mm、鞘部の融点120℃)
・全融PETバインダー繊維(全融バインダー、繊度1.2デシテックス、繊維長5mm、融点230℃)
<木材パルプ>
・NBKPチヌーク(濾水度680mlCSF)
〔湿式不織布の製造〕
実施例1~14、比較例1~5
表1記載の繊維配合になるように、各繊維を水に投入して、縦型パルパーで10分間混合分散してスラリーを調成した後、湿紙を傾斜ワイヤー方式で湿式抄紙した層と(多孔質膜に接する側の最外層)と、表1記載の繊維配合になるように、各繊維を水に投入して、縦型パルパーで10分間混合分散してスラリーを調成した後、湿紙を円網方式で湿式抄紙した層(多孔質膜に接しない層)とを積層して、表面温度130℃のヤンキードライヤーで乾燥し、抄紙速度20m/minで、2層構成の湿式不織布を得た。
比較例6及び7
表1記載の繊維配合になるように、各繊維を水に投入して、縦型パルパーで10分間混合分散してスラリーを調成した後、湿紙を傾斜ワイヤー方式で湿式抄紙して、単層構造の湿式不織布を得た。
(湿式不織布と多孔質膜との貼り合わせ)
実施例1~15の湿式不織布と比較例1~7の湿式不織布にPTFE多孔質膜を120℃の熱ロールにより熱圧処理を行い、貼り合わせを行って、フィルタ用濾材を得た。
(評価方法)
実施例及び比較例で作製したフィルタ用基材及びフィルタ用濾材は、下記の方法で評価を行った。
1)圧力損失
圧力損失はJIS B9908-2:2019に従って行い、以下の評価を行った。なお、熱融着による貼り合わせの際に基材が高密度となると、圧力損失が高くなる。
○:圧力損失は多孔質膜単体に対して200%未満であった。
△:圧力損失は多孔質膜単体に対して200%~300%であった。
×:圧力損失は多孔質膜単体に対して300%超であった。
2)剥離強度
基材剥離は、多孔質膜を貼り合わせたフィルタ用濾材の端部を、重さ5kgのステンレスの棒を立てた状態で縦方向に20回こすり、多孔質膜の剥離の状態を確認した。
○:多孔質膜がフィルタ用基材より剥がれることは全くなかった。
×:多孔質膜がフィルタ用基材より剥がれた。
3)基材強度
JIS第8種粉体とJIS第11種粉体を1:1の比率で混合し、濃度0.05質量%になるように水に希釈したものを試験用液体として用い、フィルタ用濾材を水で湿潤した後、試験用液体100mlをフィルタ用濾材の多孔質膜面を上流側にセットして濾過面積14cm、差圧△P=320mmHgでの条件で濾過した後のフィルタ用濾材の状態を確認した。
○:破れ等の破損は確認されなかった。
×:破れ等の破損が確認された。
上記評価結果を表1に示す。
二以上の層からなる湿式不織布であり、少なくとも一層が合成繊維と熱融着性バインダー繊維を含む層であり、多孔質膜に接する側の最外層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上であり、多孔質膜に接しない側の層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%未満であり、多孔質膜と接する側の最外層の坪量が5g/m以上60g/m以下であり、多孔質と接しない側の層の坪量が25g/m以上120g/m以下であるフィルタ用基材である実施例1~15のフィルタ用基材は、低い圧力損失、高い剥離強度及び高い基材強度が得られていることが分かる。
多孔質膜に接する側の最外層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%未満である比較例1では、多孔質膜に接着する熱融着性バインダー繊維が少なかった結果、十分な剥離強度が得られなかったと推測される。
多孔質膜と接する側の最外層の坪量が5g/m未満である比較例2では、多孔質膜に接着する熱融着性バインダー繊維が少なかった結果、十分な基材強度が得られなかったと推測される。
多孔質膜と接する側の最外層の坪量が60g/m超である比較例3では、熱融着性バインダー繊維の配合比率が多い、多孔質膜と接する側の最外層の坪量が大きく、高密度となった結果、圧力損失が上がったものと推測される。
多孔質膜に接しない側の層の熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上である比較例4では、熱融着性バインダー繊維の配合比率が多い、多孔質膜に接しない側の層が高密度となった結果、圧力損失が上がったものと推測される。
多孔質膜に接しない側の層の坪量が25g/m未満である比較例5では、フィルタ用基材の坪量が低く、基材の強度が弱くなった結果、フィルタとして使用中に破損したものと推測される。
熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上の層のみの単層構造の湿式不織布である比較例6では、熱融着性バインダー繊維の配合比率が高いため、圧力損失が高くなったものと推測される。
熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%未満の層のみの単層構造の湿式不織布である比較例7では、熱融着性バインダー繊維の配合比率が低いため、剥離強度が低くなったものと推測される。
本発明のフィルタ用基材は多孔質膜を貼り合わせて使用するための基材として好適に使用できる。

Claims (2)

  1. 多孔質膜を熱融着により貼り合わせてフィルタ用濾材として使用するためのフィルタ用基材において、二以上の層からなる湿式不織布であり、少なくとも一層が合成繊維と熱融着性バインダー繊維を含む層であり、多孔質膜に接する側の最外層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%以上であり、多孔質膜に接しない側の層における熱融着性バインダー繊維の配合比率が50質量%未満であり、多孔質膜と接する側の最外層の坪量が5g/m以上60g/m以下であり、多孔質と接しない側の層の坪量が25g/m以上120g/m以下であることを特徴とするフィルタ用基材。
  2. 多孔質膜の素材がポリテトラフルオロエチレンである請求項1記載のフィルタ用基材。
JP2021007820A 2021-01-21 2021-01-21 フィルタ用基材 Pending JP2024033026A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021007820A JP2024033026A (ja) 2021-01-21 2021-01-21 フィルタ用基材
PCT/JP2022/001331 WO2022158412A1 (ja) 2021-01-21 2022-01-17 フィルタ用基材及びフィルタ用濾材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021007820A JP2024033026A (ja) 2021-01-21 2021-01-21 フィルタ用基材

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2024033026A true JP2024033026A (ja) 2024-03-13

Family

ID=90193550

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021007820A Pending JP2024033026A (ja) 2021-01-21 2021-01-21 フィルタ用基材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2024033026A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5096726B2 (ja) 複合濾材
CN107405579B (zh) 膜分离活性污泥处理用半透膜的支撑体、过滤膜和模块
JP7371056B2 (ja) 半透膜支持体
JP6005542B2 (ja) 半透膜支持体用不織布
JP6612624B2 (ja) 膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体及び濾過膜
JP2016159197A (ja) 膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体
JP2012106177A (ja) 半透膜支持体
JP2013144283A (ja) 半透膜支持体用不織布
JP2014100625A (ja) 半透膜支持体及びその製造方法
JP6038370B1 (ja) 膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体、濾過膜及びモジュール
JP6038369B1 (ja) 膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体、濾過膜及びモジュール
JP2006061789A (ja) 液体濾過用フィルター濾材
JP2024033026A (ja) フィルタ用基材
JP7500436B2 (ja) 半透膜支持体及び半透膜支持体の製造方法
JP2024033025A (ja) フィルタ用基材
JP2015061717A (ja) ひだ密着防止不織布
JP2013139030A (ja) 半透膜支持体及び半透膜支持体の製造方法
JP5893971B2 (ja) 半透膜支持体の製造方法
JP7081911B2 (ja) 積層フィルタ用濾材
JP2017042691A (ja) 膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の製造方法
JP2016137459A (ja) フィルタ用不織布及びフィルタ用濾材
JP2024033028A (ja) フィルタ用基材
JP2014180639A (ja) 半透膜の製造方法
WO2022158412A1 (ja) フィルタ用基材及びフィルタ用濾材
JP2005058832A (ja) 液体濾過用フィルター濾材