JP2024022424A - ミシン - Google Patents

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【課題】リテーナの往復動ストロークを大きく設定しなくても、リテーナがルーパ糸を保持する時間を長くする。【解決手段】針糸を保持し、針板を貫通して上下動する針と、ルーパ糸を保持し、前記針板の下方の空間内を往復動して前記針糸に前記ルーパ糸を絡ませるルーパと、前記針板の下方の空間内を往復動し、前記ルーパ糸を捕捉するリテーナ5と、駆動源からの駆動力を前記リテーナ5に伝達しつつ、前記リテーナ5の運動状態を変化させるリテーナ運動機構6と、を備え、前記リテーナ運動機構6は、前記リテーナ5を前記針板の下方の空間内における一定範囲の位置で一定時間、その前後に比べて低速移動させるように前記往復動を行わせることで、前記ルーパ糸を捕捉した状態を継続させる。【選択図】図2

Description

本発明は、生地を貫通するリテーナ針を用いることなくルーパ糸が広がった環状とされた縫い目を形成できるミシンに関するものである。
ルーパ糸が広がった環状とされた縫い目を形成できるミシンは従来から存在する。例えば特許文献1に記載されたミシンである。特許文献1に記載のミシンは、針板の下方で、針板を貫通することなく移動するリテーナを設けたことにより、当該リテーナがルーパ糸を保持することで、生地を貫通して穴を開けてしまうリテーナ針を用いることなく、二重環部分で、ルーパ糸が広がった環状とされた縫い目を形成できるよう構成されている。特許文献1の図示内容によると、図4に示された縫い目(生地の裏面側から見たもの)に対比して図3に示された縫い目が該当する(ただし、リテーナ針の生地への貫通による空孔は、図3のようには生じない)。
特開2001-314681号公報
特許文献1に記載のミシンでは、内部に設けられた主軸の駆動力を受けて、リテーナが所定範囲を円弧状軌道に沿って往復動するよう構成されている(特許文献1の図2参照)。この往復動は単純往復であることから、往復動での折り返しの際、移動方向が転換されるに伴いリテーナの移動速度が一瞬0になるものの、往動中及び復動中のリテーナの移動速度は、時間との関係で一定形状のサインカーブに乗るように変化する。このため、例えばルーパ糸が所望の広がりを有した環状とされた縫い目を形成するためには、リテーナが継続的にルーパ糸を保持する時間(ルーパ糸を捕捉してから解放するまでの時間)を長くする必要があり、そのためには、リテーナが前記サインカーブに乗る速度で移動しつつルーパ糸を保持するようにするため、保持時間の延長に応じてリテーナの往復動ストローク(往復動する範囲)を大きく設定する必要がある。ルーパ糸を捕捉してからリテーナが折り返し点まで移動し、移動方向が逆転してからリテーナがルーパ糸を解放するからである。ところが、例えば小型のミシンではシリンダの内部容積を大きくすることに限界があるため、リテーナがルーパ糸を所望の縫い目を実現できる分の時間だけ保持させようとしても、スペースの関係でシリンダ内にリテーナの往復動範囲を納められず、往復動ストロークを大きくすることが不可能な場合がある。
そこで本発明は、リテーナの往復動ストロークを大きく設定しなくても、リテーナがルーパ糸を保持する時間を長くでき、ルーパ糸が所望の広がりを有した縫い目を実現できるミシンを提供することを課題とする。
本発明は、針糸を保持し、針板を貫通して上下動する針と、ルーパ糸を保持し、前記針板の下方の空間内を往復動して前記針糸に前記ルーパ糸を絡ませるルーパと、前記針板の下方の空間内を往復動し、前記ルーパ糸を捕捉するリテーナと、駆動源からの駆動力を前記リテーナに伝達しつつ、前記リテーナの運動状態を変化させるリテーナ運動機構と、を備え、前記リテーナ運動機構は、前記リテーナを前記針板の下方の空間内における一定範囲の位置で一定時間、その前後に比べて低速移動させるように前記往復動を行わせることで、前記リテーナが前記ルーパ糸を捕捉した状態を継続させるミシンである。
この構成によれば、リテーナ運動機構により、リテーナは、針板の下方の空間内における一定範囲の位置で一定時間、その前後に比べて低速移動させるように往復動を行わせることで、リテーナがルーパ糸を捕捉した状態を維持する。このため、リテーナを低速移動させない構成に比べ、低速移動中は速度の低下した分長時間ルーパ糸を保持できるから、リテーナの往復動する範囲を大きくしなくてもよい。なお、前記「低速移動」には速度が0である場合(停止状態)も含まれる。また、速度が0である場合を分離した言い換えを行うと、「前記リテーナ運動機構は、前記リテーナを前記針板の下方の空間内における一定範囲の位置で一定時間、その前後に比べて低速移動させる、または、速度0で待機するように前記往復動を行わせる」となる。
そして、前記リテーナ運動機構による前記リテーナの前記低速移動に係る前記一定範囲が、前記リテーナの移動方向が逆転する折り返し位置と、当該折り返し位置の近傍であって、当該折り返し位置から前記リテーナが後退する方向に離れた位置との間の範囲であるものとできる。
また、前記リテーナ運動機構は、前記リテーナを前記一定範囲にて、前記折り返し位置から一度後退させ、その後再び前記折り返し位置まで前進させ、その後更に後退させるものとできる。
これらの構成によれば、リテーナが折り返し位置近傍で低速にて前進と後退を繰り返す。このため、一定時間に完全停止させるものに比べ、リテーナ運動機構の構成を簡略化できる。なお、前記「一定時間に完全停止」には、折り返しに伴い瞬間的に停止することは含まれない。
そして、前記リテーナ運動機構は、リンク単位体が二つ組み合わされたリンク機構を備え、前記リンク機構は、往復動が入力されることで、両リンク単位体における入力側連結点と出力側連結点を結ぶ直線どうしの関係にて、直線状に並んだ直線状態と屈曲した屈曲状態との間のうち一部または全部の範囲で変化することを繰り返すよう構成され、少なくとも、前記リンク機構につき前記屈曲状態が解消していって前記変化の折り返しとなり、再び屈曲を開始していく間、前記リテーナは前記ルーパ糸を捕捉した状態を継続するものとできる。
この構成によれば、リンク機構が直線状態、または、変化の折り返しとなる状態前後の間は、リテーナを小さな距離で往復動させることができるため、その前後に比べてリテーナを低速移動させられる。このため、リンク機構で低速移動を実現できる。
そして、前記リテーナ運動機構は、リンク単位体が二つ組み合わされたリンク機構を備え、前記リンク機構は、往復動が入力されることで、両リンク単位体における入力側連結点と出力側連結点を結ぶ直線どうしの関係にて、一方向に屈曲した近位屈曲状態、直線状に並んだ直線状態、他方向に屈曲した遠位屈曲状態を繰り返すよう構成され、前記直線状態に対し、前記近位屈曲状態は前記遠位屈曲状態よりも、両リンク単位体間の屈曲点が近くに設定されており、少なくとも、前記リンク機構が前記直線状態から前記近位屈曲状態を経て、再び前記直線状態になるまでの間、前記リテーナは前記ルーパ糸を捕捉した状態を継続するものとできる。
この構成によれば、リンク機構が直線状態から近位屈曲状態を経て、再び直線状態になるまでの間は、リテーナを小さな距離で往復動させることができるため、その前後に比べてリテーナを低速移動させられる。このため、リンク機構で低速移動を実現できる。
そして、前記リテーナ運動機構は、入力側に設けられ一定範囲を回動する入力側回動部材と、出力側に設けられ一定範囲を回動する出力側回動部材と、前記入力側回動部材から前記出力側回動部材に変位を伝達する変位伝達機構と、を備え、前記変位伝達機構は、前記入力側回動部材の回動変位における接線方向成分と、前記出力側回動部材の回動変位における接線方向成分とのなす角度の関係により、前記入力側回動部材から前記出力側回動部材への変位伝達量を一時的に減少させるものとできる。
この構成によれば、入力側回動部材の回動変位における接線方向成分と、前記出力側回動部材の回動変位における接線方向成分とのなす角度の関係により、リテーナの低速移動を実現できる。
そして、前記入力側回動部材は、第1回動中心から異なる径方向に延びる第1入力腕部と第1出力腕部とを有し、前記第1入力腕部から入力された駆動力を、前記第1出力腕部から、前記第1回動中心まわりの回動力として出力し、前記出力側回動部材は、第2回動中心から異なる径方向に延びる第2入力腕部と第2出力腕部とを有し、前記第2入力腕部から入力された駆動力を、前記第2出力腕部から、前記第2回動中心まわりの回動力として出力し、
前記変位伝達機構は、前記第1出力腕部または前記第2入力腕部に設けられていて、前記第1回動中心または前記第2回動中心を通る径方向に対して平行に延びる溝部と、前記第2入力腕部または前記第1出力腕部に設けられていて、前記溝部に沿って移動するスライド部材とを有するものとできる。
この構成によれば、溝部とスライド部材との組み合わせにより、リテーナの低速移動を実現できる。
本発明は、リテーナを変速移動させない構成に比べ、低速移動中は長時間ルーパ糸を保持できるから、リテーナの往復動する範囲を大きくしなくてもよい。よって、リテーナの往復動ストロークを大きく設定することなしに、リテーナがルーパ糸を保持する時間を長くでき、その結果、ルーパ糸が所望の広がりを有した縫い目を実現できる。
本発明の一実施形態に係る機構を内蔵したミシンを示す斜視図である。 第1実施形態に係るリテーナ運動機構(リンク機構)を含む範囲を抜き出して示した斜視図であって、リテーナが最も前進(進出)した状態を示す。 第1実施形態に係るリンク機構を含む範囲を抜き出して示した斜視図であって、リテーナが最も後退(退避)した状態を示す。 第1実施形態に係るリンク機構のリテーナ周りとルーパとの位置関係を示した要部の斜視図であって、(a)は図3の状態に対応し、(b)は図2の状態に対応している。 第1実施形態において、針、ルーパ、ルーパ糸(リテーナは図示しない)の位置関係を動作順に示す斜視図である。 第1実施形態において、針、ルーパ、針糸、ルーパ糸(リテーナは図示しない)の位置関係を動作順に示す斜視図である。 第1実施形態において、針、ルーパ、リテーナ、針糸、ルーパ糸の位置関係を動作順に示す斜視図である。 第1実施形態において、針、ルーパ、リテーナ、針糸、ルーパ糸の位置関係を動作順に示す斜視図である。 第1実施形態において、針、ルーパ、リテーナ、ルーパ糸(針糸は図示しない)の位置関係を動作順に示す斜視図である。 第1実施形態において、針、ルーパ、リテーナ、ルーパ糸(針糸は図示しない)の位置関係を動作順に示す斜視図である。 第1実施形態において、リテーナの進出状態の変化を示すグラフである。 第1実施形態において、リテーナの進出状態の変化を示す別のグラフである。 第2実施形態に係るリテーナ運動機構(リンク機構)を含む範囲を抜き出して示した斜視図であり、リテーナが通常速度状態である場合(針が上死点位置にある時点)を示す。 第2実施形態に係るリンク機構を含む範囲を抜き出して示した斜視図であり、リテーナが低速状態である場合(針が下死点位置にある時点)を示す。 第2実施形態において、リテーナの進出状態の変化を示すグラフである。 第3実施形態に係るリテーナ運動機構を含む範囲を抜き出して示した斜視図である。 第3実施形態に係るリテーナ運動機構を示し、図16とは逆側から見た場合の斜視図である。 第3実施形態に係るリテーナ運動機構を示す分解斜視図である。 第3実施形態に係るリテーナ運動機構の動作を示す説明図である。
次に本発明につき実施形態を取り上げて説明を行う。本実施形態のミシン1は、ルーパ糸Lbが広がった環状とされた縫い目を形成できるミシン1であって、主に二重環縫いを形成するために用いられるが、例えば偏平縫い等、ルーパ糸を用いた他の縫い目を形成する際にも対応可能である。また、前記「二重環縫い」は、1本針二重環縫い、複数本針二重環縫いの両方が含まれる。なお、以下の説明における上下方向は実施形態における方向である。
[第1実施形態]
本実施形態(第1実施形態)に係る機構を内蔵したミシン1は、図1に示すように、縫製時の生地を支持するシリンダ2が筒状とされている。なお、後述する第2実施形態に係る機構を内蔵したミシン1も外観は同じである。このシリンダ2の長手方向に沿って生地が送られる。本実施形態では、図1における右方から左方に向かって生地が送られて縫製される。シリンダ2の先端部分に、針3が上下動して縫製が行なわれる縫製部が設けられている(図1における符号「3」は針3そのものを示すものではなく、大体の位置を示すために付している)。縫製作業を行う作業者(オペレータ)は、ミシン1に対して図1における右方(図示した矢印OPの方向)に位置して作業を行う。ここで、本実施形態のミシン1は、生地を筒状に縫製することに特化しているため、例えばシリンダの長手方向に直交して生地が送られるミシンに比べて、シリンダ2を細く形成する必要があって、シリンダ2が有する内部空間も小さいため、内部の部品配置にスペース上の制限がある点に注目すべきである。なお、「OP」との符号は、説明のために必要な図に付したが、当該符号が付されていない図においても、位置関係は当該符号が付されている図と同じ関係である。
本実施形態(後述する第2実施形態も同様)のミシン1において、縫い目の形成にかかわる主な部分は、図4に示す針3、ルーパ4、リテーナ5である。針3及びルーパ4の構成は公知のものと同じである。針3は、針糸La(図6等参照)を保持し、針板21を貫通して上下動する。本実施形態では、針3は複数本設けられている(具体的には4本)。なお、従来ではリテーナ針が縫製用の針と並列して設けられていたが、本実施形態ではリテーナ針は存在せず、生地を貫通する針として縫製用の針3のみが設けられている。
ルーパ4は、例えば図5~図10に示す形状であり、ルーパ糸Lb(図5等参照)を保持し、シリンダ2における針板21の下方の空間内を往復動して、図6~図8に示すように針糸Laにルーパ糸Lbを絡ませる。ルーパ4は、図示のようにやや上方に凸となった湾曲形状とされており、図5に示すように、ルーパ糸Lbはルーパ4の基端部分から先端部分まで内部を移動可能に通されている。本実施形態のルーパ4は、シリンダ2に対して生地を送る方向に対して直交する方向(シリンダ2の幅方向)で往復動する。このため本実施形態では、ルーパ4によってルーパ糸Lbを生地送り方向に対して左右に振ることができるため、リテーナ5を用いなかったとしても、縫い目自体は形成可能である。従って以下で説明するリテーナ5は、縫い目を形成するためのものとしては必須構成ではない。本実施形態のリテーナ5は、二重環縫い等を形成する際にルーパ4にて引き出されたルーパ糸Lbを保持し、その結果、ルーパ糸Lbが所望の広がりを有した縫い目を実現するための構成である。
リテーナ5は、シリンダ2における針板21の下方の空間内を往復動し、ルーパ4の保持されているルーパ糸Lbを捕捉する。本実施形態に係る機構におけるリテーナ5は、図2及び図3に示すリテーナ運動機構としてのリンク機構6に接続されており、主軸(図示しない)の駆動力が変換されつつ伝達されて往復動する。このリテーナ5は従来のリテーナ針と異なり、前記往復動により生地を貫通しない。リテーナ5は、図7に示すように板状体が折り曲げられて形成されている。平板状の基部51は、リンク機構6により揺動するリテーナ支持体8に取り付けられる。本実施形態では、リテーナ支持体8の取付部82に固定穴511が一致するようにして取り付けられる。なお、リテーナ5の回動中心はリテーナ支持体8の回動支持部81(前記揺動に係る回動中心)に一致する。基部51の上端では板厚方向に折り曲げられた連結部52が形成されており、連結部52の先端に、連結部52の延びる方向に直交して突出した先端部53が形成されている。基部51、連結部52、先端部53は一体とされている。この先端部53(より詳しくは、先端部53における連結部52寄り部分)でルーパ糸Lbを引っ掛けることで、リテーナ5がルーパ糸Lbを捕捉する。リテーナ5の先端部53は、ルーパ4の往復動方向と直交する方向(シリンダ2の長手方向に沿う方向)に往復動する。このため、リテーナ5においてルーパ糸Lbを引っ掛ける先端部53の移動方向とルーパ4の移動方向とは直交している(図7に矢印で示した移動方向を参照)。
リンク機構6は、ミシン1の駆動源(図示しないモータ)からの駆動力をリテーナ5に伝達しつつ、リテーナ5の運動状態を変化させる。本実施形態のリンク機構6は、主軸の駆動力を受けて軸方向(上下)に往復動する伝達棒7と、リテーナ5を支持するリテーナ支持体8とを連結する。なお、主軸は回転するものであって、主軸と伝達棒7との間に介在するエキセン機構等の変換機構によって往復動に変換される。このリンク機構6は、シリンダ2の基端側から先端側に向けて相互に回動可能に連結された、第1部材61~第6部材66から構成されている。
第1部材61、第3部材63はそれぞれ形状の異なるV字形状とされており、V字形状の折り返し部分の回動支点を中心としてV字形状の各先端部分が回動する。第1部材61は伝達棒7の端部に接続されている。第2部材62、第4部材64~第6部材66はそれぞれI字形状(直棒状)とされており、長手方向の両端部分が他の部材に対して回動可能に接続されている。第5部材65は、シリンダ2の基端部と先端部との間に延びている、他部材より長い部材である。
本実施形態において重要なのは、リテーナ5がルーパ糸Lbを捕捉しているときにおいて、上下動する伝達棒7と、第1部材61~第3部材63との駆動力伝達の関係である。リンク単位体としての第1部材61(V字形状のうち伝達棒7と反対側の部分である出力腕部611)及び第2部材62とが、両部材61(611),62における入力側連結点と出力側連結点を結ぶ直線どうしの関係にて、図2に示す接続方向Xのように同一直線上に並んで一直線になっている直線状態が、リテーナ5が最も前進(進出)した状態に対応する。第1部材61の出力腕部611と第2部材62との屈曲状態及びその変化は、特に制限なく種々に設定できるが、本実施形態で最初に説明する屈曲状態によると、直線状態が、入力側である伝達棒7の往復動の1サイクルで2回現れる。1回目の直線状態では、その瞬間にて伝達棒7は下降継続中である。伝達棒7が更に下降して最下端に達すると、第1部材61の出力腕部611と第2部材62とは、図2に示した状態から近位屈曲状態である「く」の字状(または右倒しの「V」字状)となる。なお、近位屈曲状態での「く」の字の屈曲はわずか(角度が数度)であり、外観上は直線状態と区別がつきにくいため図示していない。伝達棒7が上昇に転じると、前記「く」の字の角度が大きくなり、2回目の直線状態を経て、第1部材61の出力腕部611と第2部材62とが逆「く」の字状(または左倒しの「V」字状)に変化していき、図3に示す遠位屈曲状態である接続方向Yで屈曲した状態となる。ここで伝達棒7は最上端に達している。伝達棒7が下降に転じると、前記逆「く」の字の角度が大きくなっていき、図2に示す直線状態に戻る。伝達棒7の上下往復動に伴い、この動作が繰り返される。この場合、屈曲に関する変化の折り返しとなる状態は近位屈曲状態と遠位屈曲状態である。なお、直線状態に対し、近位屈曲状態は遠位屈曲状態よりも、第1部材61(出力腕部611)、第2部材62間の屈曲点が近くに設定されている。
このように動作するよう構成されたリンク機構6により、リテーナ5の前記往復動に関し、当該リテーナ5を針板21の下方の空間内における一定範囲の位置で一定時間、その前後に比べて低速移動させることで微動状態とし、前記ルーパ糸Lbを捕捉した状態を継続させることができる。前記低速移動に係る前記一定時間は、リテーナ5がルーパ糸Lbを捕捉して(図7に示す瞬間)からルーパ4が前述した往復動に係る移動方向の逆転を開始する(図10に示す瞬間のすぐ後)までの時間に含まれる。また、前記低速移動に係る前記一定範囲は、リテーナ5の移動方向が、先端部53の最も前進(進出)した状態にて後退(退避)方向に逆転する折り返し位置と、当該折り返し位置の近傍であって、当該折り返し位置からリテーナ5が後退する方向に離れた位置との間の範囲である。ここで「近傍」とは、詳しくは後述するが、リテーナ5の往復動に関する全ストローク量(最進出位置から最退避位置までの距離に対応)の3%未満の範囲である。
リンク機構6の第1部材61(出力腕部611)と第2部材62とが直線状態となる前後は、各部材61(611),62の回動軌跡の接線(各部材61(611),62の軸線方向に直交する接線)をほぼ共有するような関係となる。この関係が成立している間は、駆動側である第1部材61から従動側である第2部材62に伝達する駆動力のほぼ100%が、前記接線方向に沿う方向成分の力である。すなわち、前記接線方向に直交する方向成分の力はほぼ0%となっている。一方、V字形状とされている第3部材63のうち、第2部材62から駆動力を受ける側の枝部と第2部材62との軸線方向は直交するように設定されている(図2参照)。このため、前述した方向成分では、第2部材62の駆動力によって第3部材63はほとんど回動しないことになる。従って、リンク機構6に(第3部材63よりも力の伝達方向で下流側に)接続されているリテーナ5を低速移動(ほとんど動かない状態に)させられる。以上、本実施形態では、リンク機構6を構成する部材の回動に伴う力の方向成分によって、他の部材への駆動力の伝達量を低下させることで、リテーナ5を低速移動させることができる。
また、近位屈曲状態に着目した場合、リンク機構6が直線状態から近位屈曲状態を経て、再び直線状態になるまでの間は、直線状態から遠位屈曲状態を経て、再び直線状態になるまでの間に比べて、リテーナ5を小さな距離で往復動させることができるため、その前後に比べてリテーナ5を低速移動させられる。
リンク機構6により駆動力が伝達されたリテーナ5は、往復動の際、ルーパ糸Lbを保持する側の折り返し動作を挟む時間区間において、前記微動状態とされる。ここで、前記微動状態は、リテーナ5の折り返しが従来(特許文献1)のように即時になされるのではなく、一定時間低速移動しつつ一定範囲を往復するような(リテーナ5が限定された範囲内で「足踏み」をするような)運動をする状態のことである。前記「一定範囲」とは、往復動の方向における、全範囲に比べて微小な範囲である。前記「微小な範囲」に関し、本実施形態においては、ミシン1が備える主軸の回転角度が47°以上の場合、その回転角度内に対応するリテーナ5の往復動の移動量が、移動の全ストローク量(最進出位置から最退避位置までの距離に対応)の3%未満であることと定義する。
このため、本実施形態におけるリテーナ5の移動位置の変化は、一定した湾曲のサインカーブ状にはならず、2回の折り返しのうち一方側で、リテーナ5の速度が極端に低下して前記微動状態となる。特に図11では、当該折り返しに対応した「山」が二つあってその間に小さな「谷」が一つあるように変化し、前記「足踏み」の状態となる。なお、図11に示す横軸の「0°」は、針3が最も上昇した位置(針3を支持する図示しない針棒の上死点)に対応している。そして「180°」は、針3が最も下降した位置(前記針棒の下死点)に対応している。なお、リンク機構6の構成を変更することで、リテーナ5の移動位置の変化を図12に示すようにできる。この場合、同じ「足踏み」の状態であっても、図示したように、前記折り返しに対応した「山」が一つであって、例えば、サインカーブの湾曲が部分的に緩やかになったり、サインカーブ中に「平らな」部分が現れたりするように、リテーナ5の移動位置が変化する。
リンク機構6には屈曲可動部分(本実施形態ではリンク単位体である第1部材61と第2部材62との組み合わせ)が設けられており、伝達棒7の往復動を受けて、一方側の最屈曲状態(近位屈曲状態(図示せず)/図2の状態から図3とは逆に屈曲した「く」の字状)と他方側の最屈曲状態(遠位屈曲状態/図3に示す逆「く」の字状)との間で変化する。本実施形態では、伝達棒7の上下往復動が下向きから上向きに転換される時刻(瞬間)と、リンク機構6に設けられた屈曲可動部分の、第1部材61の出力腕部611と第2部材62との延びる方向が一直線状(直線状態)になる時刻とが一致しないように設定されている。そして本実施形態では、屈曲可動部分が一直線状になった状態(図2の状態)でリテーナ5の先端部53が最も突出し、屈曲可動部分の屈曲状態(「く」の字状、逆「く」の字状の両方とも)では先端部53が後退するように設定されている。図3が最も後退した状態を示している。このため、第1部材61の出力腕部611と第2部材62との延びる方向が一直線状になった後も伝達棒7に押されて第1部材61の出力腕部611と第2部材62との屈曲が継続する。屈曲状態(具体的には「く」の字状)となる手前と後の2回、第1部材61の出力腕部611と第2部材62とが一直線状になる。この2回の一直線状になる間の時間がすなわち、リテーナ5が前記微動状態となる時間である。このような第1部材61(出力腕部611)と第2部材62との関係により、リンク機構6は、図11のグラフ上(横軸0°から90°)で二つの山が現れているように、リテーナ5(特にルーパ糸Lbを捕捉する先端部53)を前記一定範囲にて、折り返し位置から一度後退させ、その後再び折り返し位置まで前進させ、その後更に後退させる。
ここで、第1部材61の出力腕部611と第2部材62との屈曲状態及びその変化を別の設定にした場合について説明する。前述した屈曲状態は、第1部材61の出力腕部611及び第2部材62が、直線状態、近位屈曲状態(「く」の字状)、遠位屈曲状態(逆「く」の字状)の3状態に変化するよう設定されていた。これに対して別の設定として、例えば、直線状態、屈曲状態の2状態に変化するよう設定することもできる。この場合、屈曲に関する変化の折り返しとなる状態は直線状態と屈曲状態である。前記「屈曲状態」は、第1実施形態における遠位屈曲状態(図3に示した状態)である。この構成であっても、リテーナ5の低速移動を実現できる。
更に別の設定として、前記直線状態とはならず、前記屈曲状態と同方向の屈曲であって、前記屈曲状態よりも緩やかに屈曲した状態(「準直線状態」と称する)と、屈曲状態の2状態に変化するよう設定することもできる。この場合、屈曲に関する変化の折り返しとなる状態は準直線状態と屈曲状態である。この構成であっても、同じようにリテーナ5の低速移動を実現できる。従ってリンク機構6は、直線状態と屈曲状態との間のうち一部または全部の範囲で変化することを繰り返すよう、種々に設定できる。
次に、図5~図10に、針3(4本)、ルーパ4、リテーナ5、針糸La、ルーパ糸Lbを取り出し、各部の位置関係を動作順に示して説明する。なお、一部の図では、説明の関係や図示内容が煩雑になるのを避けることを目的に、リテーナ5や針糸Laの図示を省略している。また、各部に添えられた矢印は移動方向を示す。また、横棒付きの矢印は、折り返し位置に来ていることを示す。各図は、シリンダ2の先端側から基端側を向いた視線、つまり、作業者の反対側から作業者(図5等に示す矢印OPの側)に向かうような視点によるものである。方向もその視点基準で表現している。
図5は、ルーパ4が図示右方向に移動している状態を示す。このとき、針3は下降している(針糸Laは図示省略)。図6は、ルーパ4の移動方向が図示右方向から図示左方向に逆転した後の状態を示す。このとき、針3は下死点(最下位置)に至った後に上昇している。そして、針糸Laは針3の下方に入り込むルーパ4によってすくわれる。この際、ルーパ糸Lbは針糸Laのループ内を右から左に通される。図7は、ルーパ4が図示左方に移動している状態を示す。リテーナ5はルーパ4に対して接近するように移動し、針糸Laのループ内を通ったルーパ糸Lbを引っ掛けて捕捉し、ルーパ糸Lbを保持し始める。図8は、ルーパ4がさらに図示左方に移動して、最も図示左方位置となった状態を示す。このとき、針3は上死点(最上位置)にある。リテーナ5は一定範囲の位置に保持されてルーパ糸Lbを捕捉し続けている。図9は、ルーパ4の移動方向が図示左方向から図示右方向に逆転した後の状態を示す。このとき、針3は下降していて(針糸Laは図示省略)ルーパ4と交差している。リテーナ5はこの時点でも、一定範囲の位置に保持されてルーパ糸Lbを捕捉し続けている。図10は、ルーパ4がさらに図示右方に移動して、最も図示右方位置となった状態を示す。このとき、針3は下死点にある(針糸Laは図示省略)。リテーナ5はこの後に後退してルーパ糸Lbを離す。ちなみに、リテーナ5がルーパ糸Lbを捕捉する位置は、従来、針と共に設けられ、生地を貫通した状態でルーパ糸を捕捉していたリテーナ針の捕捉位置と同じように設定されている。
リテーナ5の移動に関し、少なくとも、ルーパ4が最も図示左方に位置してから(図8)、針3がルーパ4と交差するまで(図9)の間は、リテーナ5はきわめて低速で移動する状態とされる。これにより、ルーパ糸Lbのうちリテーナ5が保持した部分の位置が、針糸Laに対してほとんど変動しないので、ルーパ4の左方への移動に伴ってルーパ糸Lbが引き出されることで、多く引き出された分、従来よりも大きく広がった(つまり「ゆったりとした」)ルーパ糸Lbのループを形成できる。従って、リテーナ5によるルーパ糸Lbの捕捉に応じ、ルーパ糸Lbが所望の広がりを有した環状とされた縫い目を形成できる。
この際、リテーナ5はきわめて低速で移動する状態とされるので、従来(特許文献1)のようにリテーナが一定速度で往復動し続けつつルーパ糸を保持する構成に比べ、ルーパ糸Lbを保持する間のリテーナ5の移動量を小さくできる。従って、リテーナ5の移動量を小さくできた分、シリンダ2内部でのリテーナ5の占有体積を小さくでき、シリンダ2に対してリテーナ5をコンパクトに収納できる。
ここで、リテーナ5の移動軌跡を図11のグラフに概略的に示す。グラフの横軸は時間軸(詳しくは、針3及びそれを支持する針棒の上死点及び下死点を基準とした角度による表示)で、縦軸は往復動に係る変位を示す。従来の一例として、特許文献1に記載のリテーナ5は、単純な往復動をするものであり、図示していないが、リテーナ5の移動軌跡は単純なサインカーブとなる。このような単純な往復動のままでルーパ糸Lbを長時間保持しようとすれば、リテーナ5の往復動のストロークを大きくする必要がある。そうすると、リテーナ5の往復動範囲がシリンダ2の内部に納まらなくなる可能性がある。
一方、本実施形態におけるリテーナ5の移動軌跡は、例えば図11に示されるものである。グラフ上で明らかなように、横軸0°から90°を含む範囲で、小さな低い山が二つ形成されている。グラフ上で小さな山が二つ形成されていることはすなわち、微小範囲でリテーナ5の先端部53が往復するということである。このように、ルーパ4に対してリテーナ5を限定された範囲内で「足踏み」させることにより、リテーナ5が即座に折り返すのではなく、往復動範囲中の狭い範囲にリテーナ5を一定時間とどめることができる。そうすることで、リテーナ5の往復動範囲を大きくすることなく、ルーパ糸Lbを保持できる。
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
例えば、リテーナ5を、一定範囲の位置で一定時間低速移動させるための構成である低速移動機構は、前記各実施形態のリンク機構に限定されるものではなく、種々の構成で実施できる。例えば、機械的な構成としては、カム、一部に歯を形成しない歯車、接近及び離反する複数の歯車の組み合わせ、クラッチ機構、摩擦により減速をなすブレーキ機構を有する構成が考えられる。また、電気的な構成としては、駆動力の伝達を所定時間周期で接続・切断する電気回路を有する構成が考えられる。また、前記各実施形態では、駆動力伝達経路中の1箇所に低速移動機構が設けられていたが、そうではなく、複数個所に低速移動機構が分離して設けられ、分離している各機構が、同時、または、タイムラグをもって作動するよう構成されていてもよい。
[第2実施形態]
また、リテーナ5を運動させるための駆動力を、ルーパ4を駆動させるための軸であるルーパ軸または送り台から得ることもできる。また、ミシンの他部分を駆動するための機構とは独立した駆動機構でリテーナ5を運動させることもできる。以下に、「第2実施形態」を例示する。
第2実施形態として、リテーナ5の駆動力をルーパ軸11から得るようにした構成の一例を図13及び図14に示す。また、第2実施形態におけるリテーナ5の移動軌跡を図15のグラフに概略的に示す。第2実施形態では、基端側に接続された主軸(図示しない)により駆動されるルーパ軸11に対して軸方向が平行となるようにリテーナ軸12が設けられている。リテーナ軸12の先端にはリテーナ支持部14が一体に設けられている。ルーパ軸11及びリテーナ軸12の各軸方向はシリンダ2の長手方向に沿っており、各軸中心の距離は一定とされている。ルーパ軸11とリテーナ軸12とはリンク機構13で駆動力が伝達可能に連結されている。リンク機構13は、リンク単位体としてのルーパ側リンク体131及び接続リンク体132を備える。接続リンク体132は、リテーナ軸12の基端側に一体に設けられたリンク受部121に接続されている。ルーパ軸11はルーパ4を前進及び後退させるべく所定角度範囲内で回動する。それに対応し、リンク機構13は図13に示す状態と図14に示す状態(詳しくは、図14に示す状態を越えた、ルーパ側リンク体131と接続リンク体132とが、僅かに、図13に示されたものとは逆屈曲した状態)とを繰り返す。
第2実施形態でのリテーナ5は、棒状体が「L」字状に折り曲げられ、かぎ針状とされている。リテーナ5は、径方向に延びる基部54がリテーナ支持部14に取り付けられており、基部54の径外側に一体に設けられた先端部55において、ルーパ糸Lbを引っ掛けることで捕捉する。前述のように、ルーパ軸11とリテーナ軸12は平行であって、各軸の先端にてルーパ4とリテーナ5が回動(揺動)するので、リテーナ5の先端部55は、ルーパ4に沿う方向(つまり、シリンダ2の長手方向に直交する方向)で往復動する。
リンク機構13において屈曲状態と一直線状の状態になるタイミングを調整することにより、第1実施形態と同様、第2実施形態のリテーナ5は、往復動の際、ルーパ糸(図示しない)を保持する側の折り返し動作を挟む時間区間において、前記微動状態とできる。第2実施形態では、図15に示すように、横軸の「180°」に対応する針3が最も下降した位置(針棒の下死点)を挟む区間が前記時間区間に対応し、そこに小さな低い山が二つ形成されている。この状態は、図14に示す状態と前記逆屈曲した状態との間に相当する。リテーナ5の先端部55によるルーパ糸Lbの捕捉は、従来のリテーナ針による捕捉にタイミング的には準じるものとなる。なお、第1実施形態と山の位置が異なる理由は、ルーパ4とリテーナ5の往復動方向の関係が、第1実施形態では直交する関係にあるのに対し、第2実施形態では平行な関係にあることにより、ルーパ糸を保持するタイミングが各実施形態で異なるからである。以上が第2実施形態の説明である。
[第3実施形態]
ここで、第1実施形態にて、隣り合う各部材61~66の連結は、図2及び図3に示すように、一定位置の軸を中心として回動可能な連結(丸孔と丸棒状の軸の組み合わせ)であった。しかし、これに限られず、1箇所以上の連結箇所において、形成された長孔または溝部の内部に回動軸(丸棒状)が位置し、回動と共に長孔または溝部の延びる範囲内で回動軸が位置ずれするように構成することもできる。このように構成することで、隣り合う各部材61~66のうち一方(駆動力伝達経路の上流側)が移動しても、その変位が他方(駆動力伝達経路の下流側)に伝達されない、または、わずかにしか伝達されないようにでき、駆動力伝達経路の最下流側に位置するリテーナ5を、前記実施形態と同様、きわめて低速で移動する状態にできる。具体例として、溝部を設けた形態を「第3実施形態」として、以下に説明する。なお、第1実施形態と共通性のある構成については、第3実施形態においても、同じ符号を付して説明する(説明の都合上、第1実施形態とは異なる名称としている構成もある)。
第3実施形態におけるリテーナ運動機構6は、リテーナ5を動作させるための駆動力の伝達順で、入力側に設けられ一定範囲を回動する入力側回動部材61と、出力側に設けられ一定範囲を回動する出力側回動部材63と、入力側回動部材61から出力側回動部材63に変位を伝達する変位伝達機構67と、を備える。変位伝達機構67は、入力側回動部材61の回動変位における接線方向成分と、出力側回動部材63の回動変位における接線方向成分とのなす角度の関係により、入力側回動部材61から出力側回動部材63への変位伝達量を一時的に減少させる。
前述した接線方向成分の角度関係に関して説明する。入力側回動部材61の回動変位における接線方向成分と、出力側回動部材63の回動変位における接線方向成分とが直交する関係にある場合、入力側回動部材61が回動しても、入力側回動部材61の回動力のうちで出力側回動部材63の回動変位における接線方向成分に相当する成分は0であるから、出力側回動部材63に回動力として伝達されない。すなわち、入力側回動部材61から出力側回動部材63への変位伝達量が一時的に減少する(この場合は0となる)。なお、入力側回動部材61の回動力は、変位伝達機構67内で位置ずれによって吸収されるだけとなる。
第3実施形態では、入力側回動部材61と出力側回動部材63の各回動変位における接線方向成分の前記直交する関係に対応させるように、入力側回動部材61の回動範囲の端部(第1出力腕部613が回動範囲の上端(上死点)になる位置)にて、入力側回動部材61の回動変位における接線方向成分が溝部671の延長方向にほぼ沿うように設定されている(図19に示した第1出力腕部613の回動軌跡を参照)。
ちなみに、接線方向成分の角度関係により、入力側回動部材61から出力側回動部材63への変位伝達量を一時的に減少させることは、第1実施形態のリテーナ運動機構としてのリンク機構6における入力側回動部材としての第1部材61と出力側回動部材としての第3部材63との間においても当てはまり、第1実施形態の第2部材62は、第3実施形態で説明した変位伝達機構67に相当する。この第1実施形態では、第1部材61(そのうち出力腕部611)と第2部材62が屈曲することで、位置ずれを生じさせて、入力側回動部材61の回動力を吸収する。同様に、第2実施形態のリテーナ運動機構としてのリンク機構13におけるルーパ側リンク体131とリンク受部121との間においても当てはまり、第2実施形態の接続リンク体132は、第3実施形態で説明した変位伝達機構67に相当する。ここで第2実施形態では、ルーパ側リンク体131が第3実施形態の入力側回動部材61に相当し、リテーナ軸12が第3実施形態の出力側回動部材62に相当する。この第2実施形態では、ルーパ側リンク体131と接続リンク体132とが屈曲することで、位置ずれを生じさせて、ルーパ側リンク体131の回動力を吸収する。従って、具体的構成が異なる第1実施形態及び第2実施形態であっても、第3実施形態により奏される作用の少なくとも一部は共通している。
第3実施形態は、具体的には図16~図19に示すように構成されている。なお、特に第4部材64及び第5部材65は、第1実施形態(図2参照)と形状が大きく異なるが、機能として大きな相違はない。入力側回動部材61は、第1回動中心61cから異なる径方向に延びる第1入力腕部612と第1出力腕部613(図19に回動動作を湾曲矢印で示す)とを有し、伝達棒7の動作によって第1入力腕部612から入力された駆動力を、第1出力腕部613から、第1回動中心61cまわりの回動力として出力する。出力側回動部材63は、63cから異なる径方向に延びる第2入力腕部631と第2出力腕部632(図19に回動動作を湾曲矢印で示す)とを有し、第2入力腕部631から入力された駆動力を、第2出力腕部632から、第2回動中心63cまわりの回動力として出力する。
変位伝達機構67は、第2入力腕部631に設けられている溝部671であって、第2回動中心63cを通る径方向に対して平行に延びる溝部671と、第1出力腕部613に設けられているスライド部材672であって、溝部671に沿って移動するスライド部材672とを有する。溝部671は、断面形状が長方形とされており、延長方向で一定の形状とされている。スライド部材672は、第1出力腕部613に一体に設けられた軸部6721と、軸部6721の周囲に回動可能に設けられたスライドブロック部6722とから構成されている。軸部6721は丸棒状であり、スライドブロック部6722は直方体形状であって、中央に軸部6721の入る穴(図示した形態は貫通穴であるが有底穴であってもよい)が設けられていて、スライドブロック部6722は溝部671の内面に当接しつつ、溝部671の延長方向に沿って移動する。つまり、溝部671に対してスライド部材672は摺動する。
溝部671とスライド部材672との組み合わせで構成された変位伝達機構67により、図19に示すように、入力側回動部材61の第1回動中心61cと出力側回動部材63の第2回動中心63cとの直線距離が一定のままで、入力側回動部材61と出力側回動部材63とを回動させることができる。つまり、変位伝達機構67は、入力側回動部材61と出力側回動部材63との位置ずれを許容しつつ、入力側回動部材61から出力側回動部材63へ変位を伝達するように構成されている。この位置ずれを伴う変化によって、変位伝達量を一時的に減少させることが可能である。リテーナ5の移動位置の変化は図12と同様にできる。
なお変位伝達機構67は、入力側回動部材61と出力側回動部材63との関係において、前述の構成に限定されない。溝部671とスライド部材672を設ける部分は前述の構成と逆であってもよい。つまり変位伝達機構67は、第1出力腕部613または第2入力腕部631に設けられていて、第1回動中心61cまたは第2回動中心63cを通る径方向に対して平行に延びる溝部671と、第2入力腕部631または第1出力腕部613に設けられ、溝部671に沿って移動するスライド部材672とを有するように構成できる。
1 ミシン
2 シリンダ
21 針板
3 針
4 ルーパ
5 リテーナ
6 リテーナ運動機構(第1、第3実施形態)、リンク機構(第1実施形態)
61 リンク単位体(第1実施形態)、第1部材(第1実施形態)、入力側回動部材(第3実施形態)
61c 第1回動中心
612 第1入力腕部
613 第1出力腕部
62 リンク単位体、第2部材(第1実施形態)
63 第3部材(第1実施形態)、出力側回動部材(第3実施形態)
63c 第2回動中心
631 第2入力腕部
632 第2出力腕部
67 変位伝達機構(第3実施形態)
671 溝部
672 スライド部材
13 リテーナ運動機構(第2実施形態)、リンク機構(第2実施形態)
131 リンク単位体(第2実施形態)、ルーパ側リンク体(第2実施形態)
132 リンク単位体(第2実施形態)、接続リンク体(第2実施形態)
La 針糸
Lb ルーパ糸
OP 作業者に向かう側

Claims (7)

  1. 針糸を保持し、針板を貫通して上下動する針と、
    ルーパ糸を保持し、前記針板の下方の空間内を往復動して前記針糸に前記ルーパ糸を絡ませるルーパと、
    前記針板の下方の空間内を往復動し、前記ルーパ糸を捕捉するリテーナと、
    駆動源からの駆動力を前記リテーナに伝達しつつ、前記リテーナの運動状態を変化させるリテーナ運動機構と、を備え、
    前記リテーナ運動機構は、前記リテーナを前記針板の下方の空間内における一定範囲の位置で一定時間、その前後に比べて低速移動させるように前記往復動を行わせることで、前記リテーナが前記ルーパ糸を捕捉した状態を継続させるミシン。
  2. 前記リテーナ運動機構による前記リテーナの前記低速移動に係る前記一定範囲が、
    前記リテーナの移動方向が逆転する折り返し位置と、当該折り返し位置の近傍であって、当該折り返し位置から前記リテーナが後退する方向に離れた位置との間の範囲である、請求項1に記載のミシン。
  3. 前記リテーナ運動機構は、前記リテーナを前記一定範囲にて、前記折り返し位置から一度後退させ、その後再び前記折り返し位置まで前進させ、その後更に後退させる、請求項2に記載のミシン。
  4. 前記リテーナ運動機構は、リンク単位体が二つ組み合わされたリンク機構を備え、
    前記リンク機構は、往復動が入力されることで、両リンク単位体における入力側連結点と出力側連結点を結ぶ直線どうしの関係にて、直線状に並んだ直線状態と屈曲した屈曲状態との間のうち一部または全部の範囲で変化することを繰り返すよう構成され、
    少なくとも、前記リンク機構につき前記屈曲状態が解消していって前記変化の折り返しとなり、再び屈曲を開始していく間、前記リテーナは前記ルーパ糸を捕捉した状態を継続する、請求項1に記載のミシン。
  5. 前記リテーナ運動機構は、リンク単位体が二つ組み合わされたリンク機構を備え、
    前記リンク機構は、往復動が入力されることで、両リンク単位体における入力側連結点と出力側連結点を結ぶ直線どうしの関係にて、一方向に屈曲した近位屈曲状態、直線状に並んだ直線状態、他方向に屈曲した遠位屈曲状態を繰り返すよう構成され、前記直線状態に対し、前記近位屈曲状態は前記遠位屈曲状態よりも、両リンク単位体間の屈曲点が近くに設定されており、
    少なくとも、前記リンク機構が前記直線状態から前記近位屈曲状態を経て、再び前記直線状態になるまでの間、前記リテーナは前記ルーパ糸を捕捉した状態を継続する、請求項1に記載のミシン。
  6. 前記リテーナ運動機構は、入力側に設けられ一定範囲を回動する入力側回動部材と、出力側に設けられ一定範囲を回動する出力側回動部材と、前記入力側回動部材から前記出力側回動部材に変位を伝達する変位伝達機構と、を備え、
    前記変位伝達機構は、前記入力側回動部材の回動変位における接線方向成分と、前記出力側回動部材の回動変位における接線方向成分とのなす角度の関係により、前記入力側回動部材から前記出力側回動部材への変位伝達量を一時的に減少させる、請求項1に記載のミシン。
  7. 前記入力側回動部材は、第1回動中心から異なる径方向に延びる第1入力腕部と第1出力腕部とを有し、前記第1入力腕部から入力された駆動力を、前記第1出力腕部から、前記第1回動中心まわりの回動力として出力し、
    前記出力側回動部材は、第2回動中心から異なる径方向に延びる第2入力腕部と第2出力腕部とを有し、前記第2入力腕部から入力された駆動力を、前記第2出力腕部から、前記第2回動中心まわりの回動力として出力し、
    前記変位伝達機構は、前記第1出力腕部または前記第2入力腕部に設けられていて、前記第1回動中心または前記第2回動中心を通る径方向に対して平行に延びる溝部と、前記第2入力腕部または前記第1出力腕部に設けられていて、前記溝部に沿って移動するスライド部材とを有する、請求項6に記載のミシン。
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