JP2023157161A - 遮熱コーティングの施工方法及び耐熱部材 - Google Patents

遮熱コーティングの施工方法及び耐熱部材 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱部材における遮熱コーティングのコストを抑制する。【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法は、対象物の耐熱合金基材上に形成されたボンドコート層上にトップコート層を形成する工程を備える。トップコート層を形成する工程では、トップコート層の温度を300℃以上450℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することでトップコート層の断面の面積に対する未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域の面積の割合が0.15%以下となるトップコート層を形成する。【選択図】図1

Description

本開示は、遮熱コーティングの施工方法及び耐熱部材に関する。
航空機エンジンにおける燃焼器パネルやタービン翼、産業用ガスタービンにおけるタービン翼や分割環等のように、高温の燃焼ガスに曝される耐熱部材には、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating,TBC)を設けることが知られている。このような遮熱コーティングでは、耐熱合金基材上に形成されるボンドコート層と、ボンドコート層上に形成される遮熱層としてのトップコート層とを含んでいる。
ボンドコート層は、例えば溶射によって耐熱合金基材上に形成される(例えば特許文献1参照)。また、トップコート層は、熱サイクル耐久性を確保するため、トップコート層の厚さ方向に延在する縦割れと称される亀裂を層内に含むようにするため、電子ビーム物理蒸着(EB-PVD)によって形成されることがある(例えば特許文献2参照)。
国際公開第2016/076305号 特開2019-065384号公報
電子ビーム物理蒸着を行うための装置は、装置のイニシャルコストが溶射装置等と比べて10倍以上高価である。また、電子ビーム物理蒸着による層の形成のためのランニングコストは、溶射等による層の形成のためのランニングコストの10倍程度と高価である。さらに、電子ビーム物理蒸着による層の形成速度は、溶射等による層の形成速度の数分の1程度と低い。そのため、遮熱コーティングのトップコート層としての遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能を確保しつつ、より低コストでトップコート層を形成する方法が望まれている。
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、耐熱部材における遮熱コーティングのコスト抑制を目的とする。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法は、
対象物の耐熱合金基材上に形成されたボンドコート層上にトップコート層を形成する工程を備え、
前記トップコート層を形成する工程では、前記トップコート層の温度を300℃以上450℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することで前記トップコート層の断面の面積に対する未溶融の前記セラミックス粉末が凝集した領域の面積の割合が0.15%以下となる前記トップコート層を形成する。
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る耐熱部材は、
上記(1)の方法による遮熱コーティングの施工方法によって形成された前記トップコート層を有する。
本開示の少なくとも一実施形態によれば、耐熱部材における遮熱コーティングのコストを抑制できる。
幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法によって施工された遮熱コーティングを備える耐熱部材の断面の模式図である。 耐熱部材の一例としての航空機エンジン向けの燃焼器パネルの外観を表す図である。 幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法の手順を示すフローチャートである。 幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法に係る装置の概略を説明するための図である。 トップコート層の温度を上述した温度範囲に保つようにするための冷却方法の一例を示す図である。 溶射開始からのトップコート層の温度の推移を模式的に示したグラフである。 トップコート層の熱伝導率と溶射時温度との関係を示すグラフである。 剥離限界温度差と溶射時温度との関係を示すグラフである。 剥離限界温度差と横割れ長さとの関係を示すグラフである。 溶射1パスあたりの付着膜厚と溶射時温度との関係を示すグラフである。 面方向に分散する縦割れの密度の測定結果を示す表である。 横割れの最大長さの測定結果を示す表である。 耐熱部材の冷却に関する実施例について説明するための図である。 複数の耐熱部材の冷却に関する実施例について説明するための図である。 複数の耐熱部材の冷却に関する他の実施例について説明するための図である。 耐熱部材の冷却に関する実施例について説明するための図である。 耐熱部材の冷却に関する実施例について説明するための図である。 複数の孔に対する溶射時の施工角度について説明するための模式的な図である。 孔の直径と溶射材による孔の閉塞率との関係についての実験結果を示すグラフである。 未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域による影響について検討するために用いられた懸濁液X及び懸濁液Yの組成を表す表である。 懸濁液Xの固形成分の粒度分布を表すグラフである。 懸濁液Yの固形成分の粒度分布を表すグラフである。 懸濁液Xの固形成分のSEM画像である。 懸濁液Yの固形成分のSEM画像である。 溶射時温度と剥離限界温度差との関係を示すグラフである。 未溶融粒子混入率と剥離限界温度差との関係を示すグラフである。 懸濁液のpHと懸濁液中のセラミックス粉末のゼータ電位との関係を示すグラフである。 懸濁液Xによって生成された試験片のSEM画像である。 懸濁液Yによって生成された試験片のSEM画像である。
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
(遮熱コーティング3について)
図1は、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法によって施工された遮熱コーティング3を備える耐熱部材1の断面の模式図である。
図2は、耐熱部材1の一例としての航空機エンジン向けの燃焼器パネル1Aの外観を表す図である。
航空機エンジン向けの燃焼器パネル1Aやタービン翼、産業用ガスタービン向けのタービン翼や分割環等の耐熱部材1には、耐熱部材1の遮熱のための遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating : TBC)3が形成されている。
幾つかの実施形態に係る耐熱部材1の耐熱合金基材(母材)5上には、金属結合層(ボンドコート層)7と、遮熱層としてのトップコート層9が順に形成される。即ち、幾つかの実施形態では、遮熱コーティング3は、ボンドコート層7と、トップコート層9を含んでいる。
幾つかの実施形態に係るボンドコート層7は、MCrAlY合金(Mは、Ni,Co,Fe等の金属元素またはこれらのうち2種類以上の組合せを示す)などで構成される。
幾つかの実施形態に係るトップコート層9は、ZrO系の材料、例えば、Yで部分安定化または完全安定化したZrOであるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)で構成されているとよい。また、幾つかの実施形態に係るトップコート層9は、DySZ(ジスプロシア安定化ジルコニア)、ErSZ(エルビア安定化ジルコニア)、GdZr、又は、GdHfの何れかで構成されていてもよい。
これにより、遮熱性に優れた遮熱コーティング3が得られる。
幾つかの実施形態に係るトップコート層9では、トップコート層9の厚さ方向に延在する縦割れCvが面方向、すなわち図1における図示左右方向及び紙面奥行き方向に分散している。また、幾つかの実施形態に係るトップコート層9では、面方向に延在する横割れChが分散している。
幾つかの実施形態に係る遮熱コーティング3では、トップコート層9における複数の縦割れCvを有する構造により、耐熱合金基材5との線膨張係数の違いによる熱応力の発生を緩和できるので、熱サイクル耐久性に優れる。
(フローチャート)
図3は、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法の手順を示すフローチャートである。幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法は、ボンドコート層7を形成する工程S10と、トップコート層9を形成する工程S20とを含んでいる。
幾つかの実施形態において、ボンドコート層7を形成する工程S10は、耐熱合金基材5上に溶射によってボンドコート層7を形成する工程である。幾つかの実施形態において、ボンドコート層7を形成する工程S10は、例えば、耐熱合金基材5上に高速フレーム溶射(HVOF)によってボンドコート層を形成する工程であってもよい。以下の説明では、ボンドコート層7を形成する工程S10は、耐熱合金基材5上に高速フレーム溶射によってボンドコート層7を形成する工程であるものとする。
すなわち、幾つかの実施形態において、ボンドコート層7を形成する工程S10では、溶射材としてのMCrAlY合金等の粉末を高速フレーム溶射によって耐熱合金基材5の表面に溶射する。
なお、幾つかの実施形態において、ボンドコート層7の表面粗さは、トップコート層9との密着性を高めるために、算術平均粗さRaで8μm以上であるとよい。
幾つかの実施形態において、トップコート層9を形成する工程S20は、対象物である耐熱部材1の耐熱合金基材5上に形成されたボンドコート層7上にトップコート層9を形成する工程である。幾つかの実施形態において、トップコート層9を形成する工程S20では、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することでトップコート層を形成する。すなわち、幾つかの実施形態において、トップコート層9を形成する工程S20で実施する溶射は、懸濁液による高速フレーム溶射(S-HVOF)である。幾つかの実施形態において、トップコート層9を形成する工程S20では、溶射材としてのセラミックス粉末を溶媒に分散した懸濁液を高速フレーム溶射によってボンドコート層7の表面に溶射する。懸濁液による高速フレーム溶射では、懸濁液として供給された溶射材TMは、燃焼炎ジェット流CFによって溶射対象物の表面に吹き付けられる(後述する図4B参照)。
トップコート層9を形成する工程S20における溶射の条件については、後で詳細に説明する。
図4Aは、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法に係る装置の概略を説明するための図である。
図4Aに示すように、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、溶射ガン30と、溶射ガン30の移動装置50と、集塵フード70とを用いて遮熱コーティング3を施工する。なお、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、図4Aに示したこれらの装置以外にも、図示はしていないが、溶射制御盤、移動装置50の駆動を制御する制御装置や、溶射材の供給装置なども装置構成中に含まれる。
遮熱コーティング3の施工に際し、遮熱コーティング3の施工の対象物である耐熱部材1を固定する必要がある場合には、固定治具91を用いてもよく、耐熱部材1を連続的に回転させる必要がある場合には、不図示の回転駆動装置を用いてもよい。
幾つかの実施形態に係る移動装置50は、例えば産業用ロボットであるが、例えばNC装置のように複数の方向に移動可能なスライド軸を有する走査装置であってもよい。
図4Aに示すように、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、例えば、溶射ガン30、移動装置50、及び集塵フード70は、1つの溶射ブース20の内部に配置される。溶射ブース20は、遮音のためや粉塵の周囲への飛散防止のために周囲とは仕切られた空間を形成するものである。例えば溶射ブース20は、作業室内に配置された箱状のものであってもよく、作業室の一部を壁等で区切った一区画であってもよく、建屋内に設けた専用の部屋であってもよい。
遮熱コーティング3の施工の対象物である耐熱部材1は、この溶射ブース20内で遮熱コーティング3が形成される。
幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、上述したように、ボンドコート層7を形成する工程S10では高速フレーム溶射(HVOF)による溶射を行い、トップコート層9を形成する工程S20では、懸濁液による高速フレーム溶射(S-HVOF)による溶射を行う。そのため、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、例えば溶射ガン30及び溶射材の供給装置をボンドコート層7を形成する工程S10とトップコート層9を形成する工程S20とで変更することで、同一の溶射ブース20内でボンドコート層7を形成する工程S10とトップコート層9を形成する工程S20とを実施できる。
幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、ボンドコート層7を形成する工程S10の後でトップコート層9を形成する工程S20を行う際に耐熱部材1をボンドコート層7を形成する工程S10を実施した溶射ブース20とは異なる溶射ブースに移動させなくてもよい。これにより、耐熱部材1を異なる溶射ブースに移動させる手間や、移動させた後の溶射開始までの耐熱部材1のセッティング等の手間を省くことができる。
(トップコート層9を形成する工程S20における施工条件について)
従来、トップコート層は、熱サイクル耐久性を確保するため、トップコート層の厚さ方向に延在する縦割れと称される亀裂を層内に含むようにするため、電子ビーム物理蒸着(EB-PVD)によって形成されることがあった。
しかし、電子ビーム物理蒸着を行うための装置は、装置のイニシャルコストが溶射装置等と比べて10倍以上高価である。また、電子ビーム物理蒸着による層の形成のためのランニングコストは、溶射等による層の形成のためのランニングコストの10倍程度と高価である。さらに、電子ビーム物理蒸着による層の形成速度は、溶射等による層の形成速度の数分の1程度と低い。そのため、遮熱コーティングのトップコート層としての遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能を確保しつつ、より低コストでトップコート層を形成する方法が望まれている。
発明者らが鋭意検討した結果、トップコート層9を形成する工程S20において、トップコート層9の温度を300℃以上450℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することで、電子ビーム物理蒸着によってボンドコート層上にトップコート層を形成した場合と同等の遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能を確保できることが判明した。
そこで、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、トップコート層9を形成する工程S20において、トップコート層9の温度を300℃以上450℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することでトップコート層9を形成するようにしている。
なお、発明者らの検討結果については、後で説明する。
これにより、電子ビーム物理蒸着によってボンドコート層7上にトップコート層9を形成した場合と比べて、低いランニングコストで、且つ、より短時間でトップコート層9を形成できる。また、トップコート層9を懸濁液による高速フレーム溶射によって形成するようにすれば、トップコート層9を形成するための設備の導入コストも大幅に抑制できる。
また、幾つかの実施形態に係る耐熱部材1は、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法によって形成されたトップコート層9を有する。
これにより、耐熱部材1の製造コストを抑制できる。
なお、トップコート層9を形成する工程S20では、トップコート層9の温度を300℃以上400℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することでトップコート層9を形成するとなおよい。
これにより、遮熱コーティングにおける遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能がさらに良好となる。
トップコート層9の温度が上述した温度範囲に保たれているか否かは、例えば赤外線で温度を検出するサーモビューアのような非接触式の温度計で測定して確認するようにしてもよい。
また、トップコート層9の温度が上述した温度範囲に保たれるように、適宜冷却をするようにしてもよい。
すなわち、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、トップコート層9を形成する工程S20では、冷却媒体による冷却を行うことでトップコート層9の温度を制御するとよい。
これにより、トップコート層9の温度を上述した温度範囲に制御し易くなるので、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能が安定する。
図4Bは、トップコート層9の温度を上述した温度範囲に保つようにするための冷却方法の一例を示す図である。
図4Bに示す例では、耐熱部材1は軸状部材である。図4Bに示す例では、耐熱部材1は、耐熱部材1を連続的に回転させるための不図示の回転駆動装置によって回転させられながらトップコート層9が形成される。図4Bに示す例では、耐熱部材1は、不図示の回転駆動装置の把持部92に把持されていて、把持部92とともに回転する。
図4Bに示す例では、例えば冷却ノズル81から吹き出される冷却媒体CMによって耐熱部材1が冷却される。なお、図4Bに示す例では、燃焼炎ジェット流CFが冷却ノズル81から吹き出される冷却媒体CMによって受ける影響を抑制するため、冷却媒体CMは、トップコート層9の表面ではなく、耐熱部材1の内、トップコート層9を形成しない領域1aや、耐熱部材1を把持する把持部92に向けて吹き出されるようにするとよい。
耐熱部材1の冷却に関する、図4Bに示す例以外の実施例や冷却媒体CMの種類等については、後で説明する。
図5は、溶射開始からのトップコート層9の温度の推移を模式的に示したグラフである。トップコート層9の温度は、トップコート層9の形成のための溶射を開始した時点から時間が経過するにつれて上昇する。図4Bに示す例のように、冷却媒体CMによる冷却を行うことで、溶射中のトップコート層9の温度が安定して上述した温度範囲内に保つことができる。
すなわち、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、トップコート層9を形成する工程S20において、溶射開始後にトップコート層9の温度が上昇した後に安定した状態での温度の平均値が上述した温度範囲内に保たれるようにするとよい。
以下の説明では、該平均値のことを溶射時温度Taとも称する。
なお、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、トップコート層9の形成のための溶射を開始する前に、ボンドコート層7が形成されている耐熱部材1を予熱する必要はない。
以下、発明者らの検討結果について説明する。
図6は、溶射時温度Taが413℃である試験片A、溶射時温度Taが477℃である試験片B、及び、溶射時温度Taが586℃である試験片Cについて、トップコート層9の熱伝導率(相対値)と溶射時温度Taとの関係を示すグラフである。
図7は、試験片A、試験片B、及び試験片Cについて、剥離限界温度差ΔT(相対値)と溶射時温度Taとの関係を示すグラフである。
図8は、試験片A、試験片B、及び試験片Cについて、剥離限界温度差ΔT(相対値)と横割れChの長さ(横割れ長さ)との関係を示すグラフである。
図9は、試験片A、試験片B、試験片C、及び、溶射時温度Taが678℃である試験片Dについて、溶射1パスあたりの付着膜厚(相対値)と溶射時温度Taとの関係を示すグラフである。
図10Aは、試験片A、試験片B、及び試験片Cについて、面方向に分散する縦割れCvの密度の測定結果を示す表である。
図10Bは、試験片A、試験片B、及び試験片Cについて、横割れChの最大長さの測定結果を示す表である。
なお、図6では、トップコート層9の熱伝導率は、電子ビーム物理蒸着(EB-PVD)によって形成した場合のトップコート層の熱伝導率を1とした相対値で表している。
同様に、図7及び図8では、トップコート層9の剥離限界温度差ΔTは、電子ビーム物理蒸着によって形成した場合のトップコート層の剥離限界温度差ΔTを1とした相対値で表している。なお、図7及び図8における剥離限界温度差ΔTは、この温度差ΔTを与える試験を1000サイクル繰り返したときに遮熱コーティング3に剥離が生じると推定される温度差である。
図9では、トップコート層9の1パスあたりの付着膜厚は、溶射時温度Taが450℃の時の1パスあたりの付着膜厚を1とした相対値で表している。
なお、図10A及び図10Bに示した各データの取得にあたり、各試験片をトップコート層9の厚さ方向に沿って切断した切断面の顕微鏡写真を観察することで各データを取得した。また、図10A及び図10Bでは、該切断面における観察部位(視野)を変えた6カ所(6視野)で各データを取得した。
なお、図10A及び図10Bに示した各データの取得にあたり、各顕微鏡写真において、図1の図示左右方向に相当する視野の大きさが1.09mmであったため、この視野内で観察される縦割れCvの本数、及び、横割れChの最大長さを取得した。
試験片A、試験片B、試験片C、及び試験片Dについての溶射時温度Ta以外の溶射条件は、次のとおりである。
試験片A乃至Dは、図4Bに示すような円筒型の試験片であり、試験片A乃至Dの外周部に形成されたボンドコート層7上に、トップコート層9を懸濁液による高速フレーム溶射によって形成した。
溶射ガン30のトラバース速度は、100mm/秒である。トップコート層9の膜厚は、0.5mmである。円筒型の試験片の回転速度は、1200rpmである。
なお、試験片の溶射に際し、溶射ガン30は、図4Bにおける図示上下方向の一方側の成膜開始位置から他方側に移動させながら成膜する。溶射ガン30が他方側の成膜終了位置に到着した後には、溶射ガン30を図4Bにおける紙面奥行き方向に移動させて燃焼炎ジェット流CFが試験片にあたらないように退避させ、その後、図4Bにおける図示上下方向の一方側に向けて移動させる。そして、溶射ガン30を図4Bにおける紙面奥行き方向に移動させて成膜開始位置まで戻し、以降、上述した動作を繰り返すことでトップコート層9を形成する。
図6に示すように、溶射時温度Taを450℃以下とすることで、トップコート層9の熱伝導率を電子ビーム物理蒸着によって形成した場合と同等以下とすることができる。
なお、図6に示すように、溶射時温度Taを400℃以下とすることで、トップコート層9の熱伝導率をさらに低下させることができる。
図7に示すように、溶射時温度Taを400℃以下とすることで、トップコート層9の剥離限界温度差ΔTを電子ビーム物理蒸着によって形成した場合と同等以上とすることができる。
なお、トップコート層9の剥離限界温度差ΔTは、図7における相対値として0.8程度であってもよいので、溶射時温度Taを450℃以下とすることで、トップコート層9の剥離限界温度差ΔTを要求される温度差以上とすることができる。
したがって、溶射時温度Taは、450℃以下にするとよく、400℃以下にするとさらによい。
図8及び図10Bに示すように、溶射時温度Taが高くなるほど横割れChの長さが大きくなる傾向にあることが分かる。そして、横割れChの長さが大きくなるほどトップコート層9の剥離限界温度差ΔTが低下する傾向にあることが分かる。横割れChが成長してトップコート層9の剥離の原因となって、熱サイクル耐久性を低下させてしまうため、横割れChの長さは小さい方が望ましい。なお、図8に示す各プロットは、図10Bに示したデータに基づくものである。
なお、図10Aに示すように、溶射時温度Taが高くなるほど面方向に分散する縦割れCvの密度は大きくなる。面方向に分散する縦割れCvの密度は、大きい方が熱サイクル耐久性が高くなるが、面方向に分散する縦割れCvの密度を大きくしようとすると横割れChの長さが長くなる傾向にある。そのため、面方向に分散する縦割れCvの密度は、4本/mm程度であればよい。
図9に示すように、溶射時温度Taが低くなると、溶射1パスあたりの付着膜厚が小さくなる。そのため、溶射時温度Taが低くなると、トップコート層9の生産性が低下する。
図9に示すように、溶射時温度Taが300℃を下回ると、溶射時温度Taが450℃である場合と比べて溶射1パスあたりの付着膜厚は、1/2以下となる。
そのため、溶射時温度Taは、300℃であることが望ましい。
(耐熱部材1の冷却について)
図11は、耐熱部材1の冷却に関する実施例について説明するための図である。
図12Aは、複数の耐熱部材1の冷却に関する実施例について説明するための図である。
図12Bは、複数の耐熱部材1の冷却に関する他の実施例について説明するための図である。
図13は、耐熱部材1の冷却に関する実施例について説明するための図である。
図14は、耐熱部材1の冷却に関する実施例について説明するための図である。
図11に示すように、例えば、板状の耐熱部材1の一方の面にトップコート層9を形成する場合、該一方の面とは反対側の他方の面に向けて冷却媒体CMを吹き出すことで耐熱部材1を冷却するようにしてもよい。
図12A及び図12Bに示すように、トップコート層9を形成する工程S20では、治具93、94に複数取り付けられた耐熱部材1に対して順次溶射することでトップコート層9を形成してもよい。
これにより、複数の耐熱部材1に対してトップコート層9を効率的に形成できる。
すなわち、図12Aに示すように、複数の耐熱部材1を並べて配置しておき、溶射の1パスで複数の耐熱部材1に対して溶射するようにしてもよい。この場合、例えば直線状又は面状に並べて配置した複数の耐熱部材1を治具93で保持するようにしてもよい。
図12Aに示すように、複数並べて配置された耐熱部材1における、トップコート層9を形成する面とは反対側の面に向けて冷却媒体CMを吹き出すことで各耐熱部材1を冷却するようにしてもよい。
なお、図12Aに示すように、複数の耐熱部材1を並べて配置しておき、溶射の1パスで複数の耐熱部材1に対して溶射するようにした場合、溶射のパスと、その次のパスとの施工間隔が一つの耐熱部材1に対して溶射する場合と比べて長くなるので、トップコート層9の温度が上がりにくい。そのため、冷却媒体CMを吹き出すことで各耐熱部材1を冷却しなくても溶射時温度Taが上述した温度範囲を保つことができるのであれば、冷却媒体CMによる冷却は必須ではない。
図12Bに示すように、環状に並べて配置された複数の耐熱部材1と溶射ガン30とを相対的に回転させることで、複数の耐熱部材1に対して溶射するようにしてもよい。この場合、例えば環状に並べて配置した複数の耐熱部材1を治具94で保持するようにしてもよい。すなわち、この治具94は、環状に配置した複数の耐熱部材1を保持可能であるとよい。そして、トップコート層9を形成する工程S20では、この治具94に保持された複数の耐熱部材1と溶射ガン30とを相対的に回転させながら複数の耐熱部材1に対して順次溶射するとよい。
なお、環状に並べて配置された複数の耐熱部材1を固定しておき、溶射ガン30を回転させることで溶射をしてもよく、溶射ガン30を固定しておき、環状に並べて配置された複数の耐熱部材1を回転させることで溶射をしてもよい。
複数の耐熱部材1を回転させる場合、各耐熱部材1と周囲の空気との間で速度の差が生じるので、各耐熱部材1に空気を吹きつけた場合と同様の冷却効果が得られて、各耐熱部材1を効率的に冷却できる。
例えば図13及び図14に示すように、例えばいわゆるフィルム冷却孔のように、耐熱部材1が耐熱合金基材5の表面に開口した複数の孔110を有する場合、複数の孔110から気体(冷却媒体CM)を噴出させながらトップコート層9を形成するようにしてもよい。
これにより、溶射時温度Taを上述した温度範囲に制御し易くなるので、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能が安定する。
なお、例えば図2に示した燃焼器パネル1Aのように、燃焼器パネル1Aの一方の面と他方の面とに連通する複数の孔が設けられているのであれば、例えば図13に示すように、トップコート層9を形成する面とは反対側の面に気体を噴射することで複数の孔110から気体を噴出させるようにしてもよい。
また、例えばタービン翼において複数の孔110がタービン翼における翼の内部の冷却通路と連通している場合のように、複数の孔110が耐熱部材1の内部の通路120と連通している場合(図14参照)、複数の孔110に連通する通路120に気体(冷却媒体CM)を供給することで複数の孔110から気体を噴出させるようにしてもよい。
(冷却媒体CMについて)
幾つかの実施形態では、冷却媒体CMは、圧縮機で圧縮した圧縮空気であってもよい。
圧縮機で圧縮した圧縮空気でれば、冷却媒体CMの確保が容易であり、冷却のためのコスト増を抑制できる。
なお、冷却媒体CMとしての圧縮空気は、工場の動力用の圧縮空気を生成するための圧縮機で圧縮した圧縮空気であってもよく、耐熱部材1の冷却のために設置した圧縮機で圧縮した圧縮空気であってもよい。
また、幾つかの実施形態では、冷却媒体CMは、ドライアイスを含んでいてもよい。
すなわち、冷却媒体CMは、粒径が比較的小さいドライアイスの粒又は粉末を圧縮空気で搬送するようにしたものであってもよく、ドライアイスが気化した比較的温度が低い二酸化炭素であってもよい。
これにより、トップコート層9の形成時にトップコート層9の温度が上がり過ぎるおそれが少なくなり、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能が安定する。
(耐熱合金基材5の表面に開口した複数の孔110の閉塞抑制について)
上述したように、幾つかの実施形態に係る耐熱部材1では、例えばフィルム冷却を行うために、耐熱部材1の表面には複数の孔110(以下、冷却孔110とも称する)が開口していることがある。このような耐熱部材1の場合には、遮熱コーティングの形成工程において遮熱コーティングの材料(溶射材)が冷却孔110に侵入して冷却孔110を閉塞してしまうのを防ぐ必要がある。そのため、例えばマスキングピンを予め各冷却孔110に挿入しておけば、遮熱コーティングの形成工程において遮熱コーティングの材料が各冷却孔110に侵入することを防止できる。
しかし、マスキングピンを用いた場合、遮熱コーティングの形成後にマスキングピンを各冷却孔110から除去しなければならない。そのため、耐熱部材1における冷却孔110の数が増えるほど、マスキングピンを除去する手間が増えてしまう。そのため、より簡易な方法で遮熱コーティングの形成工程において冷却孔110が閉塞することを防止できるようにすることが望まれている。
そこで、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、例えばボンドコート層7を形成する工程S10において、耐熱合金基材5の表面に開口した複数の孔110から気体を噴出させながら、耐熱合金基材5上にボンドコート層7を溶射によって形成するとよい。すなわち、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、例えばボンドコート層7を形成する工程S10は、複数の孔110から気体を噴出させながら、耐熱合金基材5上にボンドコート層7を溶射によって形成する工程であってもよい。
このように、複数の孔110から気体を噴出させながらボンドコート層7を形成することで、これら複数の孔110へのボンドコート層7の材料(溶射材)の侵入が抑制される。これにより、ボンドコート層7を形成する工程S10において、これら複数の孔110がボンドコート層7の材料で閉塞することを抑制できる。
なお、上述したように、例えばボンドコート層7を形成する工程S10において、複数の孔110から気体を噴出させながら、耐熱合金基材5上にボンドコート層7を高速フレーム溶射によって形成するとよい。
これにより、複数の孔110がボンドコート層7の材料で閉塞することを抑制しつつ、ボンドコート層7を高速フレーム溶射によって形成できる。
また、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、例えばトップコート層9を形成する工程S20において、耐熱合金基材5の表面に開口した複数の孔110から気体を噴出させながら、耐熱合金基材5上に形成されたボンドコート層7上にトップコート層9を溶射によって形成するとよい。すなわち、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、例えばトップコート層9を形成する工程S20は、複数の孔110から気体を噴出させながら、耐熱合金基材5上に形成されたボンドコート層7上にトップコート層9を溶射によって形成する工程であってもよい。
このように、複数の孔110から気体を噴出させながらトップコート層9を形成することで、これら複数の孔110へのトップコート層9の材料(溶射材、すなわちセラミックス粉末)の侵入が抑制される。これにより、トップコート層9を形成する工程S20において、これら複数の孔110がトップコート層9の材料で閉塞することを抑制できる。
また、トップコート層9を形成する工程S20において、溶射によってトップコート層9の温度が過度に上昇すると上述したような不都合が生じるおそれがある場合には、複数の孔110から気体を噴出させることでトップコート層9の温度の過度な上昇を抑制できる。
なお、上述したように、例えばトップコート層9を形成する工程S20において、複数の孔110から気体を噴出させながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することでトップコート層9を形成するとよい。
これにより、電子ビーム物理蒸着によってボンドコート層7上にトップコート層9を形成した場合と比べて、低いランニングコストで、且つ、より短時間でトップコート層9を形成できる。また、トップコート層9を懸濁液による高速フレーム溶射によって形成するようにすれば、トップコート層9を形成するための設備の導入コストも大幅に抑制できる。
なお、上述したように、例えば図2に示した燃焼器パネル1Aのように、燃焼器パネル1Aの一方の面と他方の面とに連通する複数の孔が設けられている場合、例えば図13に示すように、トップコート層9を形成する面とは反対側の面に気体を噴射することで複数の孔110から気体を噴出させるようにすればよい。これにより、複数の孔から気体を容易に噴出させることができる。
また、図14に示すように、複数の孔110が耐熱部材1の内部の通路120と連通している場合、上述したように、複数の孔110に連通する通路120に気体(冷却媒体CM)を供給することで複数の孔110から気体を噴出させるようにしてもよい。この通路120に気体を供給することで複数の孔110から気体を容易に噴出させることができる。
上述したような、遮熱コーティングの形成工程において複数の孔から気体を噴出させることで冷却孔110が溶射材で閉塞することを抑制することは、溶射の方式を問わず有効である。すなわち、例えば、大気圧プラズマ溶射(APS)、高速フレーム溶射(HVOF)、懸濁液による大気圧プラズマ溶射(S-APS)、及び、懸濁液による高速フレーム溶射(S-HVOF)等の溶射において有効である。
図15は、複数の孔110に対する溶射時の施工角度について説明するための模式的な図である。
幾つかの実施形態において、孔110に対する溶射時の施工角度θaとは、孔110の延在方向と溶射材の噴射方向(溶射ガン30のノズル31の延在方向)との角度の差である。
幾つかの実施形態において、孔110の傾斜角度θbとは、耐熱合金基材5の表面5aの延在方向と孔110の延在方向との角度の差である。
施工角度θaが90度付近では孔110が溶射材で閉塞してしまい、施工角度θaが90度から徐々に小さくなって0度に近づくにつれて、孔110が閉塞し難くなる傾向にある。
また、例えば大気圧プラズマ溶射(APS)では、高温のプラズマジェットを利用し、溶射材を溶融させて基材に付着させるようにしている。これに対し、例えば高速フレーム溶射(HVOF)や懸濁液による高速フレーム溶射(S-HVOF)では、溶射材を超音速度で基材に衝突させて付着させるようにしている。そのため、施工角度θaが90度から徐々に小さくなるにしたがって、例えば高速フレーム溶射(HVOF)や懸濁液による高速フレーム溶射(S-HVOF)の方が、例えば大気圧プラズマ溶射(APS)よりも孔110が閉塞し難くなる傾向にある。
なお、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、トップコート層9を形成する工程S20において、孔の延在方向と溶射材の噴射方向との角度の差、すなわち施工角度θaを0度以上80度以下に設定して溶射するとよい。
発明者らが鋭意検討した結果、孔110がトップコート層9の材料で閉塞することを抑制するためには、施工角度θaを0度以上80度以下に設定して溶射すると一層よいことが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、施工角度θaを0度以上80度以下に設定して溶射することで、孔110がトップコート層の材料で閉塞することを効果的に抑制できる。
幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、孔110の直径は、0.5mmより大きい(たとえば0.533mm以上)とよい。
発明者らが鋭意検討した結果、後述するように、孔110がトップコート層9の材料で閉塞することを抑制するためには、孔110の直径が0.5mmより大きい(たとえば0.533mm以上)と一層よいことが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、孔110の直径を0.5mmより大きく(たとえば0.533mm以上)なるように設定して溶射することで、孔110がトップコート層9の材料で閉塞することを効果的に抑制できる。
図16は、孔110の孔径(直径)と溶射材による孔110の閉塞率との関係についての実験結果を示すグラフである。
図16に示す結果は、孔110の傾斜角度θbが30度であり、施工角度θaが60度ある場合に、溶射方式の違いや孔110からの気体(空気)の噴出の有無による孔110の閉塞率を示している。
図16に結果を示す実験では、上記耐熱合金基材5に相当する耐熱合金の試験片の表面にボンドコート層7とトップコート層9とを順に形成した。図16に結果を示す実験では、トップコート層9は、膜厚の目標値を実機における膜厚と同等に設定して、懸濁液による高速フレーム溶射によって形成した。
図16に示すグラフの縦軸の閉塞率は、トップコート層9の形成後における孔110の孔径Daをボンドコート層7の形成後における孔110の孔径Dbで除した値の百分率である。なお、ボンドコート層7の形成後における孔110の孔径Dbは、ボンドコート層7の溶射材によって孔110の一部が閉塞しているため、ボンドコート層7の形成前の孔110の孔径よりも小さくなる傾向にある。
図16に示すグラフの横軸の孔径は、ボンドコート層7の形成前の孔110の孔径である。
図16に示すように、孔110から空気を噴出させずに溶射した場合、孔110の孔径が0.5mm以下であると、閉塞率は100%となってしまうが、孔110の孔径が0.5mmより大きい(たとえば0.533mm以上)と、閉塞率は、50%程度よりも下回る。
また、図16に示すように、孔110から空気を噴出させずに溶射した場合、トップコート層9を大気圧プラズマ溶射で形成した場合よりもトップコート層9を懸濁液による大気圧プラズマ溶射で形成した場合の方が閉塞率は、小さくなる。図16に示すように、孔110から空気を噴出させずに溶射した場合、トップコート層9を懸濁液による大気圧プラズマ溶射で形成した場合よりもトップコート層9を懸濁液による高速フレーム溶射で形成した場合の方が閉塞率は、小さくなる。
図16に示すように、トップコート層9を懸濁液による大気圧プラズマ溶射で形成した場合、及び、トップコート層9を懸濁液による高速フレーム溶射で形成した場合には、孔110から空気を噴出させずに溶射した場合よりも孔110から空気を噴出させながら溶射した場合の方が閉塞率は、小さくなる。
(未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域による影響について)
上述したように、発明者らが鋭意検討した結果、ボンドコート層上にトップコート層を形成する工程において、トップコート層の温度を300℃以上450℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することで、電子ビーム物理蒸着によってボンドコート層上にトップコート層を形成した場合と同等の遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能を確保できることが判明した。
また、発明者らが鋭意検討した結果、トップコート層9を形成する工程S20において、トップコート層9の温度を300℃以上450℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射する場合であっても、トップコート層9に未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域が存在すると、その領域が剥離亀裂の起点となって熱サイクル耐久性に影響を及ぼすおそれがあることが判明した。そして、発明者らが鋭意検討した結果、トップコート層9の断面の面積に対する未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域の面積の割合が0.15%以下であれば、電子ビーム物理蒸着によってボンドコート層7上にトップコート層9を形成した場合と同等の遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能を確保できることが判明した。
そこで、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、トップコート層9を形成する工程S20において、トップコート層9の温度を300℃以上450℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することでトップコート層9の断面の面積に対する未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域の面積の割合が0.15%以下となるトップコート層9を形成するようにしている。
なお、発明者らの検討結果については、後で説明する。
これにより、電子ビーム物理蒸着によってボンドコート層7上にトップコート層9を形成した場合と比べて、低いランニングコストで、且つ、より短時間でトップコート層9を形成できる。また、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法によれば、トップコート層9を形成するための設備の導入コストも大幅に抑制できる。
なお、以下の説明では、トップコート層9の断面の面積に対する未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域の面積の割合を未溶融粒子混入率とも称する。未溶融粒子混入率は、未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域の面積をトップコート層9の断面の面積で除した値を百分率で表した値である。具体的には、次のようにして未溶融粒子混入率を求める。
例えば、トップコート層9の断面を研磨して走査電子顕微鏡(SEM)で観察される像の画像を取得する。そして、取得した画像の所定の領域内における未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域を特定し、その面積を求める。そして、求めた面積を上記所定の領域の面積で除して未溶融粒子混入率を求める。
なお、セラミックス粉末は、上述したようにイットリア安定化ジルコニア、ジスプロシア安定化ジルコニア、エルビア安定化ジルコニア、GdZr、又は、GdHfの何れかを含むとよい。
これにより、遮熱性に優れた遮熱コーティング3が得られる。
幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、トップコート層9を形成する工程S20では、トップコート層9の温度を300℃以上450℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することで未溶融粒子混入率が0.02%以下となるトップコート層9を形成するとよい。
これにより、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能がさらに良好となる。
(懸濁液中のセラミックス粉末のゼータ電位について)
上述したように、溶射時のトップコート層9の温度を低くするほどトップコート層9の剥離限界温度差ΔTを高くすることができる(図7参照)。しかし、溶射時のトップコート層9の温度を低くするほど懸濁液中のセラミックス粉末の凝集状態がトップコート層9の組織に反映されやすくなって、トップコート層9へ未溶融粒子を取り込み易くなる。
懸濁液中のセラミックス粉末が分散され易くなるようにするためには、懸濁液中のセラミックス粉末のゼータ電位の絶対値を大きくすることが望ましい。
後述するように、発明者らが鋭意検討した結果、懸濁液中のセラミックス粉末のゼータ電位の絶対値が40mV以上であれば、懸濁液中のセラミックス粉末が凝集し難くなり、結果として、トップコート層9への未溶融粒子の取り込みを抑制できることが判明した。
そこで、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、トップコート層9を形成する工程S20において、懸濁液中のセラミックス粉末のゼータ電位の絶対値が40mV以上となる懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射するとよい。
これにより、トップコート層9における未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域を少なくすることができるので、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能が良好となる。
(懸濁液のpHについて)
発明者らが鋭意検討した結果、トップコート層9の形成に用いるセラミックス粉末では、懸濁液のpHが2以下であるか9以上であれば、懸濁液中のセラミックス粉末のゼータ電位の絶対値が40mV以上となって、懸濁液中のセラミックス粉末が凝集し難くなり、結果として、トップコート層9への未溶融粒子の取り込みを抑制できることが判明した。
そこで、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、トップコート層9を形成する工程S20において、分散媒に水又はエタノールを用い、pHが2以下又は9以上である懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射するとよい。
これにより、トップコート層9における未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域を少なくすることができるので、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能が良好となる。
なお、上述したように、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、トップコート層9を形成する工程S20において、トップコート層9の温度を300℃以上400℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することでトップコート層9を形成するとよい。
これにより、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能がさらに良好となる。
上述したように、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、トップコート層9を形成する工程S20において、冷却媒体CMによる冷却を行うことでトップコート層9の温度を制御するとよい。
これにより、冷却媒体CMによる冷却を行うことでトップコート層9の温度を上述した温度範囲に制御し易くなるので、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能が安定する。
なお、上述したように、冷却媒体CMは、圧縮機で圧縮した圧縮空気であってもよい。冷却媒体CMは、ドライアイスを含んでいてもよい。
以下、未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域による影響について発明者らの検討結果について説明する。
図17は、未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域による影響について検討するために用いられた懸濁液X及び懸濁液Yの組成を表す表である。
図18Aは、懸濁液Xの固形成分の粒度分布を表すグラフである。
図18Bは、懸濁液Yの固形成分の粒度分布を表すグラフである。
図19Aは、懸濁液Xの固形成分のSEM画像である。
図19Bは、懸濁液Yの固形成分のSEM画像である。
図20は、各試験片について、溶射時温度Taと剥離限界温度差ΔT(相対値)との関係を示すグラフである。
図21は、未溶融粒子混入率と剥離限界温度差ΔT(相対値)との関係を示すグラフである。
図22は、懸濁液のpHと懸濁液中のセラミックス粉末のゼータ電位との関係を示すグラフである。
図23は、懸濁液Xによって生成された試験片のSEM画像である。
図24は、懸濁液Yによって生成された試験片のSEM画像である。
なお、図20及び図21では、トップコート層9の剥離限界温度差ΔTは、電子ビーム物理蒸着によって形成した場合のトップコート層の剥離限界温度差ΔTを1とした相対値で表している。図20及び図21における剥離限界温度差ΔTは、この温度差ΔTを与える試験を1000サイクル繰り返したときに遮熱コーティング3に剥離が生じると推定される温度差である。
図17に示すように、懸濁液Xと懸濁液Yとでは、固形分組成の大きな違いはないが、分散剤成分が異なっている。この分散剤成分の相違に起因するものであると推定されるが、懸濁液Xと懸濁液Yとでは、図18A及び図18Bに示すように、固形成分の粒度分布が異なっている。具体的は、懸濁液Yにおける固形成分の粒度分布は、懸濁液Xにおける固形成分の粒度分布と比べてピークが低く、分布幅が大きくなっており、ブロードになっている。
図19A及び図19Bに示すように、懸濁液Yにおける固形成分は、懸濁液Xにおける固形成分と比べて凝集している。
なお、懸濁液X、及び懸濁液Yの分散媒は、水である。但し、懸濁液の分散媒はエタノールであってもよく、水とエタノールとの混合溶液であってもよい。
図20では、黒色で塗りつぶしたプロットで示した試験片A、試験片B、試験片C、試験片F、及び試験片Gは、懸濁液Xによって溶射した試験片であり、白抜きのプロットで示した試験片Eは、懸濁液Yによって溶射した試験片である。なお、試験片A、試験片B、及び試験片Cは、図6から図10Bに示した試験片A、試験片B、及び試験片Cと同じ試験片である。
試験片Aの溶射時温度Taは上述したように413℃であり、試験片Eの溶射時温度Taは412℃である。試験片Fの溶射時温度Taは349℃であり、試験片Gの溶射時温度Taは268℃である。
試験片E、試験片F、及び試験片Gについての溶射時温度Ta以外の溶射条件は、試験片A、試験片B、試験片C、及び試験片D(図9参照)についての溶射時温度Ta以外の上述した溶射条件と同じである。
なお、試験片Aの膜厚、すなわちボンドコート層7の厚さとトップコート層9厚さとの合計値は0.60mmであり、試験片Bの膜厚は0.51mmであり、試験片Cの膜厚は0.54mmである。試験片Eの膜厚は0.49mmであり、試験片Fの膜厚は0.59mmであり、試験片Gの膜厚は0.53mmである。
幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法では、上述したように冷却媒体CMによる冷却を行うこと等によって比較的低温でトップコート層9を形成することが望ましい。しかし、比較的低温でトップコート層9を形成した場合のデメリットとして、懸濁液の凝集状態がトップコート層9の組織に反映され易くなる。そのため、懸濁液の分散状態が良好でないと、未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域がトップコート層9に表れ、この領域が剥離亀裂の起点となる等してトップコート層9の機械的特性に悪影響を及ぼすこととなる。
図21に示すように、懸濁液Xによって溶射した試験片Aでは未溶融粒子混入率が略0%であるのに対し、懸濁液Yによって溶射した試験片Eでは未溶融粒子混入率が0.24%程と、試験片Aの未溶融粒子混入率よりも高くなっている。
例えば図23に示した試験片AのSEM画像では、未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域は見当たらない。
図24に示した試験片EのSEM画像では、未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域が散見される。なお、未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域は、例えば図24において破線で囲んだ領域である。図23と図24とでは、SEM画像の倍率は同じ倍率であり、5000倍のSEM画像を引用している。
図20及び図21に示すように、懸濁液Yによって溶射した試験片Eの剥離限界温度差ΔTは、溶射時温度Taが略等しい、懸濁液Xによって溶射した試験片Aと比べて大幅に低い。試験片A及び試験片Eの断面のSEM画像や懸濁液における固形成分の粒度分布等と併せて考察すると、懸濁液における固形成分の分散状態が剥離限界温度差ΔTに大きな影響を及ぼしていることが推察される。
図21に示すように、未溶融粒子混入率を0.02%以下とすることで、トップコート層9の剥離限界温度差ΔTを電子ビーム物理蒸着によって形成した場合と同等以上とすることができる。
なお、トップコート層9の剥離限界温度差ΔTは、図21における相対値として0.8程度であってもよいので、未溶融粒子混入率を0.15%以下とすることで、トップコート層9の剥離限界温度差ΔTを要求される温度差以上とすることができる。
したがって、未溶融粒子混入率は、0.15%以下にするとよく、0.02%以下にするとさらによい。
図22に示すように、懸濁液X中のセラミックス粉末のゼータ電位は、-40mV以下である。なお、懸濁液X中のセラミックス粉末のゼータ電位は2回測定されているため、図22において、懸濁液X中のセラミックス粉末のゼータ電位のプロットは2つ示されている。
懸濁液Y中のセラミックス粉末のゼータ電位は、35mV程度である。
懸濁液の分散状態は、懸濁液中のセラミックス粉末のゼータ電位の絶対値の影響を受ける。そのため、懸濁液中のセラミックス粉末のゼータ電位の絶対値は、40mV以上であるとよい。
懸濁液中のセラミックス粉末のゼータ電位は、懸濁液のpHの影響を受ける。図22からは、懸濁液のpHを2以下とするか、9以上とすれば、懸濁液中のセラミックス粉末のゼータ電位の絶対値が40mV以上となることが分かる。
したがって、懸濁液のpHは、2以下であるか、9以上であるとよい。
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る遮熱コーティングの施工方法は、対象物である耐熱部材1の耐熱合金基材5に形成されたボンドコート層7上にトップコート層9を形成する工程S20を備える。トップコート層9を形成する工程S20では、トップコート層9の温度を300℃以上450℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することでトップコート層9の断面の面積に対する未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域の面積の割合(未溶融粒子混入率)が0.15%以下となるトップコート層9を形成する。
上記(1)の方法によれば、電子ビーム物理蒸着によってボンドコート層7上にトップコート層9を形成した場合と比べて、低いランニングコストで、且つ、より短時間でトップコート層9を形成できる。また、上記(1)の方法によれば、トップコート層9を形成するための設備の導入コストも大幅に抑制できる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、トップコート層9を形成する工程S20では、トップコート層9の温度を300℃以上450℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することでトップコート層9の断面の面積に対する未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域の面積の割合(未溶融粒子混入率)が0.02%以下となるトップコート層9を形成するとよい。
上記(2)の方法によれば、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能がさらに良好となる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の方法において、トップコート層9を形成する工程S20では、懸濁液中のセラミックス粉末のゼータ電位の絶対値が40mV以上となる懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射するとよい。
上記(3)の方法によれば、トップコート層9における未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域を少なくすることができるので、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能が良好となる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の方法において、トップコート層9を形成する工程S20では、分散媒に水又はエタノールを用い、pHが2以下又は9以上である懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射するとよい。
上記(4)の方法によれば、トップコート層9における未溶融のセラミックス粉末が凝集した領域を少なくすることができるので、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能が良好となる。
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの方法において、トップコート層9を形成する工程S20では、上記温度を300℃以上400℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することでトップコート層9を形成するとよい。
上記(5)の方法によれば、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能がさらに良好となる。
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの方法において、トップコート層9を形成する工程S20では、冷却媒体CMによる冷却を行うことで上記温度を制御するとよい。
上記(6)の方法によれば、冷却媒体CMによる冷却を行うことで上記温度を上記(1)又は(5)に記載の範囲に制御し易くなるので、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能が安定する。
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の方法において、冷却媒体CMは、圧縮機で圧縮した圧縮空気であってもよい。
上記(7)の方法によれば、冷却媒体CMの確保が容易であり、冷却のためのコスト増を抑制できる。
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)の方法において、冷却媒体CMは、ドライアイスを含んでいてもよい。
上記(8)の方法によれば、トップコート層9の形成時にトップコート層9の温度が上がり過ぎるおそれが少なくなり、遮熱コーティング3における遮熱性や熱サイクル耐久性等の性能が安定する。
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの方法において、セラミックス粉末は、イットリア安定化ジルコニア、ジスプロシア安定化ジルコニア、エルビア安定化ジルコニア、GdZr、又は、GdHfの何れかを含むとよい。
上記(9)の方法によれば、遮熱性に優れた遮熱コーティング3が得られる。
(10)本開示の少なくとも一実施形態に係る耐熱部材1は、上記(1)乃至(9)の何れかの方法による遮熱コーティングの施工方法によって形成されたトップコート層9を有する。
上記(10)の構成によれば、耐熱部材1の製造コストを抑制できる。
1 耐熱部材
3 遮熱コーティング
5 耐熱合金基材(母材)
7 金属結合層(ボンドコート層)
9 トップコート層

Claims (10)

  1. 対象物の耐熱合金基材上に形成されたボンドコート層上にトップコート層を形成する工程を備え、
    前記トップコート層を形成する工程では、前記トップコート層の温度を300℃以上450℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することで前記トップコート層の断面の面積に対する未溶融の前記セラミックス粉末が凝集した領域の面積の割合が0.15%以下となる前記トップコート層を形成する
    遮熱コーティングの施工方法。
  2. 前記トップコート層を形成する工程では、前記トップコート層の温度を300℃以上450℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することで前記トップコート層の断面の面積に対する未溶融の前記セラミックス粉末が凝集した領域の面積の割合が0.02%以下となる前記トップコート層を形成する
    請求項1に記載の遮熱コーティングの施工方法。
  3. 前記トップコート層を形成する工程では、前記懸濁液中の前記セラミックス粉末のゼータ電位の絶対値が40mV以上となる前記懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射する
    請求項1又は2に記載の遮熱コーティングの施工方法。
  4. 前記トップコート層を形成する工程では、分散媒に水又はエタノールを用い、pHが2以下又は9以上である前記懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射する
    請求項1又は2に記載の遮熱コーティングの施工方法。
  5. 前記トップコート層を形成する工程では、前記温度を300℃以上400℃以下に保ちながら、セラミックス粉末を含む懸濁液を高速フレーム溶射によって溶射することで前記トップコート層を形成する
    請求項1又は2に記載の遮熱コーティングの施工方法。
  6. 前記トップコート層を形成する工程では、冷却媒体による冷却を行うことで前記温度を制御する
    請求項1又は2に記載の遮熱コーティングの施工方法。
  7. 前記冷却媒体は、圧縮機で圧縮した圧縮空気である
    請求項6に記載の遮熱コーティングの施工方法。
  8. 前記冷却媒体は、ドライアイスを含む
    請求項6に記載の遮熱コーティングの施工方法。
  9. 前記セラミックス粉末は、イットリア安定化ジルコニア、ジスプロシア安定化ジルコニア、エルビア安定化ジルコニア、GdZr、又は、GdHfの何れかを含む
    請求項1又は2に記載の遮熱コーティングの施工方法。
  10. 請求項1又は2に記載の遮熱コーティングの施工方法によって形成された前記トップコート層を有する耐熱部材。
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