JP2023156767A - インク組成物、印刷物、および印刷物の製造方法 - Google Patents

インク組成物、印刷物、および印刷物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】インク組成物中に重合開始剤を安定的に配合可能であり、かつ、十分な硬化性を有するインク組成物を提供する。【解決手段】活性エネルギー線硬化型のインク組成物であって、ビニルエーテル基を有しないエチレン性不飽和単量体(a)、重合開始剤(b)、およびチオール化合物(c)を含み、前記エチレン性不飽和単量体(a)は、芳香族基を有する単官能のエチレン性不飽和単量体(a1)、芳香族基を有しない単官能のエチレン性不飽和単量体(a2)、芳香族基を有する多官能のエチレン性不飽和単量体(a3)、および芳香族基を有しない多官能のエチレン性不飽和単量体(a4)からなる群から選択される少なくとも1種であり、エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて2質量%より多く、エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて20質量%以上である、インク組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、活性エネルギー線硬化型のインク組成物、該インク組成物の硬化物から構成される印刷物、および該印刷物の製造方法に関する。
活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、例えばインクジェットプリンタなどの印刷装置においてインクとして用いられる、重合性化合物を含むインク組成物である。該インク組成物は、被記録媒体にインク組成物を吐出し、活性エネルギー線を照射して硬化させる印刷方法において使用されている。このような活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いる印刷方法によれば、被記録媒体への密着性に優れる、耐久性の高い印刷を得ることが可能である。
活性エネルギー線硬化型インク組成物中には、重合性化合物を十分に重合させるための重合開始剤が含まれており、従来、例えばIRGACURE(登録商標)907としても知られる2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、IRGACURE(登録商標)TPOとしても知られるジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキサイドなどの重合開始剤が使用されている(特許文献1および2)。
また、IRGACURE(登録商標)819としても知られるビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドも、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキサイドなどの重合開始剤と共に使用されている(特許文献3)
特開2020-164705号公報 特開2017-179130号公報 特開2018-20571号公報
IRGACURE(登録商標)907、IRGACURE(登録商標)TPOなどの重合開始剤は、インク組成物中に比較的溶解させやすいと共に高い硬化性を有しており、従来から汎用されている。しかし、従来から汎用されているこれらの重合開始剤は、安全性が懸念される可能性もあり、該重合開始剤に代えて、例えばOmnirad(登録商標)819としても知られるビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドなどの重合開始剤を使用することで、安全性をより向上できると考えられる。しかし、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドなどの一部の重合開始剤は、インク組成物への溶解性が低く、インク組成物の保存安定性が低下する場合があった。さらに、硬化性が不十分である場合もあった。例えば特許文献1および2に記載の組成物は、特定の重合開始剤を使用しているため、十分な硬化性を有し得るが、重合開始剤の量が多くなる場合や、溶解性が比較的低い重合開始剤を使用する場合には、組成物の安定性が不十分となる可能性がある。例えば特許文献3には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドを他の重合開始剤と併用するインク組成物が記載されてはいるが、該組成物においても、重合開始剤の量が多くなる場合や、溶解性が比較的低い重合開始剤を使用する場合には、組成物の安定性が不十分となる可能性がある。また、硬化性が不十分となる場合もある。したがって、重合開始剤をその種類によらず安定的に配合可能であり、かつ十分な硬化性を有するインク組成物に対する要求が存在する。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、重合開始剤を安定的に配合可能であり、かつ、十分な硬化性を有するインク組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の条件を満たす重合性化合物(a)、重合開始剤(b)、およびチオール化合物(c)を含むインク組成物によって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の好適な態様を含む。
〔1〕活性エネルギー線硬化型のインク組成物であって、ビニルエーテル基を有しないエチレン性不飽和単量体(a)、重合開始剤(b)、およびチオール化合物(c)を含み、
前記エチレン性不飽和単量体(a)は、
芳香族基を有する単官能のエチレン性不飽和単量体(a1)、
芳香族基を有しない単官能のエチレン性不飽和単量体(a2)、
芳香族基を有する多官能のエチレン性不飽和単量体(a3)、および
芳香族基を有しない多官能のエチレン性不飽和単量体(a4)
からなる群から選択される少なくとも1種であり、
エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて2質量%より多く、エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて20質量%以上である、インク組成物。
〔2〕チオール化合物(c)は、2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物を含む、〔1〕に記載のインク組成物。
〔3〕チオール化合物(c)の含有量は、インク組成物の総量に基づいて0.5~12質量%である、〔1〕または〔2〕に記載のインク組成物。
〔4〕重合開始剤(b)は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドを含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のインク組成物。
〔5〕重合開始剤(b)の含有量は、インク組成物の総量に基づいて1~15質量%である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のインク組成物。
〔6〕エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体と、エチレン性不飽和単量体(a3)およびエチレン性不飽和単量体(a4)からなる群から選択される多官能エチレン性不飽和単量体とを含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のインク組成物。
〔7〕エチレン性不飽和単量体(a3)およびエチレン性不飽和単量体(a4)からなる群から選択される多官能エチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて40~80質量%である、〔6〕に記載のインク組成物。
〔8〕エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて15~50質量%である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のインク組成物。
〔9〕エチレン性不飽和重合性オリゴマーをさらに含む、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のインク組成物。
〔10〕エチレン性不飽和重合性オリゴマーは環状構造を有するオリゴマーである、〔9〕に記載のインク組成物。
〔11〕エチレン性不飽和単量体(a1)の量は、インク組成物の総量に基づいて2質量%より多い、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のインク組成物。
〔12〕エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体として、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、およびアルコキシ化フェノール(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含む、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載のインク組成物。
〔13〕インク組成物における、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1からなる群から選択される重合開始剤の含有量は、インク組成物の総量に基づいて0質量%以上5質量%未満である、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載のインク組成物。
〔14〕インク組成物における、ビニルエーテル基を有する重合性化合物の含有量はインク組成物の総量に基づいて0質量%以上5質量%未満である、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載のインク組成物。
〔15〕〔1〕~〔14〕のいずれかに記載のインク組成物の硬化物からから構成される、印刷物。
〔16〕〔1〕~〔14〕のいずれかに記載のインク組成物をインクジェット方式により吐出する工程、および、活性エネルギー線を照射してインク組成物を硬化する工程を少なくとも含む、印刷物の製造方法。
本発明によれば、インク組成物中に重合開始剤を安定的に配合可能であり、かつ、十分な硬化性を有するインク組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。
本発明のインク組成物は、活性エネルギー線硬化型のインク組成物であって、ビニルエーテル基を有しないエチレン性不飽和単量体(a)、重合開始剤(b)、およびチオール化合物(c)を含み、
前記エチレン性不飽和単量体(a)は、
芳香族基を有する単官能のエチレン性不飽和単量体(a1)、
芳香族基を有しない単官能のエチレン性不飽和単量体(a2)、
芳香族基を有する多官能のエチレン性不飽和単量体(a3)、および
芳香族基を有しない多官能のエチレン性不飽和単量体(a4)
からなる群から選択される少なくとも1種であり、
エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて2質量%より多く、エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて20質量%以上である、インク組成物である。
〔ビニルエーテル基を有しないエチレン性不飽和単量体(a)〕
本発明のインク組成物に含まれるビニルエーテル基を有しないエチレン性不飽和単量体(a)は、活性エネルギー線の照射により硬化する特性を有する重合性化合物である。活性エネルギー線としては、例えば、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、α線、γ線およびエックス線等が挙げられ、その中でも紫外線および電子線が好ましい。エチレン性不飽和単量体(a)は、芳香族基を有する単官能のエチレン性不飽和単量体(a1)、芳香族基を有しない単官能のエチレン性不飽和単量体(a2)、芳香族基を有する多官能のエチレン性不飽和単量体(a3)、および芳香族基を有しない多官能のエチレン性不飽和単量体(a4)からなる群から選択される少なくとも1種である。本明細書において、上記のエチレン性不飽和単量体(a1)、エチレン性不飽和単量体(a2)、エチレン性不飽和単量体(a3)およびエチレン性不飽和単量体(a4)を、それぞれ、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(a3)および単量体(a4)とも称する。本発明のインク組成物は、ビニルエーテル基を有しないエチレン性不飽和単量体(a)として、1種類または2種類以上の単量体(a1)、1種類または2種類以上の単量体(a2)、1種類または2種類以上の単量体(a3)、および/または1種類または2種類以上の単量体(a4)を含有してよい。
芳香族基を有する単官能のエチレン性不飽和単量体(a1)は、1つ以上の芳香族基を有すると共に、分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する単官能モノマーであり、例えば、芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート、および芳香族基を有する単官能(メタ)アクリルアミドが挙げられ、好ましくは芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレートである。なお、本明細書において(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを表し、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドを表す。また、本明細書において、芳香族基とは、芳香族炭化水素系の環状構造を含む基であり、具体的にはベンゼン環のような単環の芳香族構造を有する基、ナフタレンおよびアントラセンのような多環の芳香族構造を有する基が挙げられる。
芳香族基を有する単官能のエチレン性不飽和単量体(a1)としては、例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アルコキシ化フェノール(メタ)アクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-フタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、ネオペンチルグリコール-アクリル酸-安息香酸エステル、及びこれらにリンやフッ素等の官能基が付与された(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。これらの中でも、インク組成物の保存安定性を高めやすく、硬化性を高めやすい観点からは、重合性化合物(a)は、芳香族基を有する重合性化合物として、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アルコキシ化フェノール(メタ)アクリレートおよびアルコキシ化ビスフェノールA-ジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
芳香族基を有しない単官能のエチレン性不飽和単量体(a2)は、芳香族基を有しない、分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する単官能モノマーであり、例えば、芳香族基を有しない単官能(メタ)アクリレート、および芳香族基を有しない単官能(メタ)アクリルアミドが挙げられ、好ましくは芳香族基を有しない単官能(メタ)アクリレートである。
芳香族基を有しない単官能のエチレン性不飽和単量体(a2)としては、例えばアミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-コハク酸等が挙げられる。
芳香族基を有する多官能のエチレン性不飽和単量体(a3)は、1つ以上の芳香族基を有すると共に、分子内に2個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する多官能モノマーであり、例えば、芳香族基を有する多官能(メタ)アクリレート、および芳香族基を有する多官能(メタ)アクリルアミドが挙げられ、好ましくは芳香族基を有する多官能(メタ)アクリレートである。
芳香族基を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば芳香族基を有する二官能~六官能の(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香族基を有する二官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族基を有しない多官能のエチレン性不飽和単量体(a4)は、芳香族基を有しない、分子内に2個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する多官能モノマーであり、例えば、芳香族基を有しない多官能(メタ)アクリレート、および芳香族基を有しない多官能(メタ)アクリルアミドが挙げられ、好ましくは芳香族基を有しない多官能(メタ)アクリレートである。
芳香族基を有しない多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば芳香族基を有しない二官能~六官能の(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香族基を有しない二官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1000)ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(700)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族基を有しない三官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド変性体、プロピレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。
芳香族基を有しない四官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド変性体、プロピレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。
芳香族基を有しない五官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド変性体、プロピレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。
芳香族基を有しない六官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド変性体、プロピレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。
本発明のインク組成物は、エチレン性不飽和単量体(a)として、上記のような単量体(a1)~(a4)のうちの1種または2種以上を含んでよいが、但し、エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて2質量%より多く、かつ、エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて20質量%以上である。
本発明のインク組成物に含まれる、ビニルエーテル基を有しないエチレン性不飽和単量体(a1)、(a2)、(a3)および(a4)からなる群から選択されるエチレン性不飽和単量の総量は、インク組成物の保存安定性を向上させやすいと共に、硬化性を高めやすい観点から、本発明のインク組成物の総量に基づいて、好ましくは50~98質量%、より好ましくは55~95質量%、さらに好ましくは60~95質量%である。また、本発明のインク組成物に含まれる、ビニルエーテル基を有しないエチレン性不飽和単量体(a1)、(a2)、(a3)および(a4)からなる群から選択されるエチレン性不飽和単量体の総量は、インク組成物の保存安定性を向上させやすいと共に、硬化性を高めやすい観点から、インク組成物に含まれる重合性化合物の総量に基づいて、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、さらに好ましくは70~100質量%である。
本発明のインク組成物における、エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて2質量%より多い。言い換えると、本発明のインク組成物は、ビニルエーテル基を有しない単官能のエチレン性不飽和単量体を2質量%より多い量で含む。ビニルエーテル基を有しない単官能のエチレン性不飽和単量体の例は、エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a2)について上記に述べた通りである。単量体(a1)および単量体(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体の量が2質量%未満である場合、インク組成物の粘度が高くなりすぎるために、インクジェット方式による印刷方法においてインク組成物として使用することが難しい。また、印刷物の画像精度を高めることが難しくなる場合がある。単官能エチレン性不飽和単量体の含有量は、インク組成物の吐出性を向上させやすい観点および印刷物の画像精度を高めやすい観点から、インク組成物の総量に基づいて、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらにより好ましくは15質量%より多い、とりわけ好ましくは20質量%以上、とりわけより好ましくは25質量%以上である。また、インク組成物の硬化性を高めやすい観点からは、インク組成物の総量に基づいて、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらにより好ましくは50質量%以下、とりわけ好ましくは40質量%以下である。
本発明のインク組成物における、エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて20質量%以上である。言い換えると、本発明のインク組成物は、ビニルエーテル基を有さず、芳香族基を有する、単官能または多官能のエチレン性不飽和単量体を20質量%以上含む。ビニルエーテル基を有さず、芳香族基を有する、単官能または多官能のエチレン性不飽和単量体の例は、エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a3)について上記に述べた通りである。ビニルエーテル基を有さず、芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体の量が20質量%未満である場合、重合開始剤、特に芳香族基を有する重合開始剤、例えばアシルホスフィンオキサイド系の重合開始剤のインク組成物への溶解性を向上させることができず、該重合開始剤がインク組成物中で析出し、その結果、インク組成物の保存安定性が低下したり、インク組成物の硬化性を十分に高めることができない。エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の保存安定性を向上させやすい観点およびインク組成物の硬化性を高めやすい観点から、インク組成物の総量に基づいて、好ましくは25質量%以上、より好ましくは28質量%以上である。また、上記の芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体の量は、耐候性等の塗膜性能劣化の観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらにより好ましくは50質量%以下、とりわけ好ましくは40質量%以下である。
本発明のインク組成物における、エチレン性不飽和単量体(a3)およびエチレン性不飽和単量体(a4)からなる群から選択される多官能エチレン性不飽和単量体の量は、硬化性、塗膜強度の観点から、インク組成物の総量に基づいて好ましくは40~80質量%、より好ましくは43~70質量%、さらに好ましくは45~60質量%である。
〔重合開始剤(b)〕
本発明のインク組成物は、少なくとも1種の重合開始剤(b)を含む。重合開始剤(b)は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線照射を受けて重合を開始する化合物であり、例えば光重合開始剤が挙げられる。本発明のインク組成物は、重合開始剤に対する高い溶解性を有するため、使用する重合開始剤の種類に制限されることなく、重合開始剤をインク組成物中に安定に配合することができる。また、向上された硬化性を有するため、重合開始剤の量が少ない場合や、高い安全性を有するものの硬化性が低い重合開始剤を使用する場合であっても、インク組成物全体としての十分な硬化性を達成することができる。
重合開始剤(b)としては、例えば、低エネルギーで重合を開始させることができるアシルホスフィンオキサイド化合物、α-アミノアルキルフェノン化合物、およびチオキサントン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。例えば、アシルホスフィンオキサイド化合物、又はα-アミノアルキルフェノン化合物とチオキサントン化合物との混合物を使用してもよい。
上記アシルホスフィンオキサイド化合物としては、具体的には、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(Omnirad(登録商標)819)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(Omnirad(登録商標)TPO)、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4-メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4-エチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4-イソプロピルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1-メチルシクロヘキサノイルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して使用してもよい。
α-アミノアルキルフェノン化合物としては、具体的には、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(Omnirad(登録商標)907)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-2-オン等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して使用してもよい。
上記チオキサントン化合物としては、具体的には、例えば、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して使用してもよい。
本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤(b)は、低エネルギーで重合を開始させやすい観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物であることが好ましい。また、安全性に優れるインク組成物を提供しやすい観点からは、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドを含むことが好ましい。特に、本発明のインク組成物によれば、従来の組成物において溶解性が低く、該重合開始剤が析出し、組成物の保存安定性や硬化性が十分とはいえなかったビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドを重合開始剤として使用する場合であっても、十分な溶解性と、高い硬化性を得ることが可能となる。
インク組成物の安全性を向上させやすい観点からは、インク組成物は、安全性が懸念されている特定の重合開始剤の量が低いことが好ましく、このような重合開始剤を実質的に含有しないことがより好ましい。このような観点から、インク組成物における、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1からなる群から選択される重合開始剤の含有量は、インク組成物の総量に基づいて、好ましくは0質量%以上5質量%未満、より好ましくは0質量%以上3質量%未満、さらに好ましくは0質量%以上1質量%未満、さらにより好ましくは0質量%以上0.3質量%未満、とりわけ好ましくは0質量%である。
インク組成物中の重合開始剤(b)の含有量は、インク組成物に含まれるエチレン性不飽和単量体(a)などの重合性化合物の含有量にもよるが、インク組成物の総量に基づいて、好ましくは2~15質量%。より好ましくは3~14質量%、さらに好ましくは5~13質量%、さらにより好ましくは7~12質量%である。重合開始剤(b)の含有量が上記の下限以上である場合、低エネルギーの照射でも硬化性及び密着性に優れたインクを得やすい。また、該含有量が上記の上限以下である場合、未反応の重合開始剤が残存することを防止しやすい。
本発明の好ましい一態様において、インク組成物は、重合開始剤(b)としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドを含む。この態様において、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドの含有量は、インク組成物の総量に基づいて、好ましくは2~15質量%。より好ましくは3~13質量%、さらに好ましくは4~11質量%、さらにより好ましくは4.5~10質量%である。ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドの量が上記の範囲内である場合、高い安全性を有すると共に、保存安定性および硬化性に優れるインク組成物を提供することができる。
インク組成物の保存安定性を高めやすい観点からは、インク組成物における重合開始剤(b)、好ましくはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドの含有量Wに対する、エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体の含有量Wa13の割合(Wa13/W)は、好ましくは2~10、より好ましくは2.5~8、さらに好ましくは3~6である。
〔チオール化合物(c)〕
本発明のインク組成物は、少なくとも1種のチオール化合物(c)を含む。チオール化合物は、分子内に少なくとも1つのチオール基を有する化合物である。なお、チオール化合物(c)は重合性化合物ではなく、(メタ)アクリル基等の重合性官能基を実質的に有さない。インク組成物がチオール化合物(c)を含有する場合、酸素阻害の防止や連鎖移動剤としての効果があるため、インク組成物の硬化性を向上させることができる。チオール化合物(c)におけるチオール基の数は特に限定されず、チオール化合物(c)は、1個のチオール基を有する単官能チオール化合物であってもよいし、2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物であってもよいが、該チオール基の数は、好ましくは1~6個、より好ましくは2~5個、さらに好ましくは3~4個である。
単官能チオール化合物としては、例えばチオグリセリン、2-アミノチオフェノール、ベンゾイルチオールが挙げられる。
多官能チオール化合物としては、例えばペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート)、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンが挙げられる。
チオール化合物(c)が有するチオール基は、第1級チオール基、第2級チオール基のいずれであってもよいが、チオール化合物(c)は、保存安定性の観点から、好ましくは第2級チオール基を有し、より好ましくは2個以上の第2級チオール基を有する。
チオール化合物(c)の分子量は、粘度上昇抑制の観点から、好ましくは150~1,000、より好ましくは200~800、さらに好ましくは230~700である。
チオール化合物(c)としては、低臭気の観点から、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物が好ましく、該エステル化合物は、2つ以上の第2級チオール基を有する化合物であることがより好ましい。
チオール化合物(c)の含有量は、インク組成物の総量に基づいて、0.5~12質量%、好ましくは0.6~8質量%、より好ましくは0.8~5質量%、さらにより好ましくは1~3質量%である。チオール化合物(c)の含有量が上記の下限以上であると、インク組成物の硬化性を十分に高めやすい。また、チオール化合物(c)の含有量が上記の上限以下であると、インク組成物の粘度変化を防止しやすく、保存安定性を高めやすい。
〔重合性オリゴマー(d)〕
本発明のインク組成物は、上記のビニルエーテル基を有しないエチレン性不飽和単量体(a)、重合開始剤(b)、およびチオール化合物(c)の他に、重合性化合物としての重合性オリゴマー(d)を含有してもよい。重合性オリゴマー(d)は、例えば上記に述べたエチレン性不飽和単量体の1種または2種以上のプレポリマーおよび/またはオリゴマーであってよい。なお、本明細書において、重合性オリゴマー(d)とは、重合性基を有する重量平均分子量が800以上の重合性化合物である。なお、本明細書において、「オリゴマー」は、プレポリマーであってもオリゴマーであってもよく、これらのいずれもを包含する。重合性オリゴマー(d)の重量平均分子量は、通常800以上であり、硬化収縮の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上、さらに好ましくは2,000以上である。また、その上限は例えば10,000以下、好ましくは5,000以下である。なお、重量平均分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。重合性オリゴマー(d)は、ビニルエーテル基を有しない重合性オリゴマーであることが好ましく、ビニルエーテル基を有さず、2個以上のエチレン性不飽和基を重合性基として有するオリゴマーであることがより好ましい。
重合性オリゴマー(d)としては、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマーおよびエポキシアクリレートオリゴマー等が挙げられる。本発明の組成物は、1種類の重合性オリゴマーを含有していてもよいし、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。重合性オリゴマー(d)は、好ましくはエチレン性不飽和重合性オリゴマーであり、より好ましくは環状構造を有するエチレン性不飽和重合性オリゴマーである。
ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリオールと多価イソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとの反応生成物が挙げられる。イソシアネート化合物としては、例えばジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等が挙げられ、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2-ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。ポリエステルアクリレートオリゴマーとしては、例えばアルケマ社のCN2259、CN293などのオリゴマーが挙げられる。
重合性オリゴマー(d)は、好ましくはエチレン性不飽和重合性オリゴマーであり、より好ましくは環状構造を有するエチレン性不飽和重合性オリゴマーである。環状構造としては、例えば、芳香族、脂肪族環状構造が挙げられる。このようなオリゴマーとしては、例えばビスフェノールA骨格をもつオリゴマーが挙げられる。重合開始剤の溶解性を向上させる観点から、芳香族系エチレン性不飽和オリゴマーが好ましい。
本発明のインク組成物が重合性オリゴマー(d)を含有する場合、その含有量は、硬化性、硬化収縮抑制の観点から、インク組成物の総量に基づいて好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。また、粘度上昇抑制の観点からは、インク組成物の総量に基づいて好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
本発明のインク組成物は、上記のエチレン性不飽和単量体および重合性オリゴマー以外の他の重合性化合物を含有していてもよいが、該組成物における、ビニルエーテル基を有する重合性化合物の量は少ないことが、チオール化合物との反応を抑制し、インク組成物の保存安定性を向上させやすい観点から好ましい。この観点から、インク組成物における、ビニルエーテル基を有する重合性化合物の含有量は、インク組成物の総量に基づいて、好ましくは0質量%以上5質量%未満、より好ましくは0質量%以上3質量%未満、さらに好ましくは0質量%以上1質量%未満、さらにより好ましくは0質量%以上0.3質量%未満、とりわけ好ましくは0質量%である。
〔着色材〕
本発明のインク組成物は、着色材をさらに含んでいてもよい。なお、本発明のインク組成物はクリアインクであっても、着色インクであってもよいが、クリアインクの場合には通常は着色材を含有しない。
着色材としては特に限定されないが、例えば顔料、染料が挙げられる。インク組成物の耐候性を高めやすい観点からは、顔料としては、無機顔料および有機顔料のいずれか、または両方を使用することが好ましい。着色材としては、例えば、シアン色を有する顔料、マゼンタ色を有する顔料、イエロー色を有する顔料、黒色顔料および白色顔料などが用いられる。場合によっては、バイオレット、ブルー、グリーン、オレンジおよびレッド等の特色顔料を用いることにより色再現性に優れた画像を形成することができる。また、一般的な黒色顔料および白色顔料、ならびにシアン、マゼンタおよびイエローの3原色の顔料の他に、目的に応じて、例えば金、銀等の金属光沢顔料や無色または淡色の体質顔料等を含有してもよい。
無機顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、トリポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカなどが挙げられる。
有機顔料としては、具体的には、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系の有機顔料などが挙げられる。また、酸性、中性または塩基性カーボンからなるカーボンブラックを用いてもよい。さらに、架橋したアクリル樹脂の中空粒子などを有機顔料として用いてもよい。
シアン色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。これらの中でも、耐候性、着色力などの点から、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4のいずれかまたは両方が好ましい。
マゼンダ色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド48(Ca)、C.I.ピグメントレッド48(Mn)、C.I.ピグメントレッド57(Ca)、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントバイオレット19などが挙げられる。これらの中でも、耐候性、着色力などの点から、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、およびC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
イエロー色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14C、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメ
ントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー130、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントイエロー214などが挙げられる。これらの中でも、耐候性などの点から、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー213、およびC.I.ピグメントイエロー214からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
黒色顔料としては、具体的には、例えば、三菱化学社製のHCF、MCF、RCF、LFF、SCF;キャボット社製のモナーク、リーガル;デグサ・ヒュルス社製のカラーブラック、スペシャルブラック、プリンテックス;東海カーボン社製のトーカブラック;コロンビア社製のラヴェンなどが挙げられる。これらの中でも、三菱化学社製のHCF#2650、HCF#2600、HCF#2350、HCF#2300、MCF#1000、MCF#980、MCF#970、MCF#960、MCF88、LFFMA7、MA8、MA11、MA77、MA100、およびデグサ・ヒュルス社製のプリンテックス95、プリンテックス85、プリンテックス75、プリンテックス55、プリンテックス45からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
白色顔料としては、ピグメントホワイト6,18,21が例示できる。また、白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCOPb(OH)、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、さらに、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい)を使用してもよい。
インク組成物中の着色材の含有量は、色および使用目的により適宜選択すればよいが、インク組成物が着色インクである場合、インク組成物の総量に基づいて、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。着色材の含有量が前記範囲にあると、インク組成物の粘度を上昇させることなく流動性を維持しやすい。
着色材として顔料を用いる場合、顔料の分散性を向上させるため、顔料誘導体や顔料分散剤をさらに使用してもよい。顔料誘導体としては、具体的には、例えば、ジアルキルアミノアルキル基を有する顔料誘導体、ジアルキルアミノアルキルスルホン酸アミド基を有する顔料誘導体などが挙げられる。顔料分散剤としては、具体的には、例えば、イオン性または非イオン性の界面活性剤や、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の高分子化合物などが挙げられる。これらの中でも、分散安定性の点から、カチオン性基またはアニ
オン性基を含む高分子化合物が好ましい。市場で入手可能な顔料分散剤としては、ルーブリゾール社製のSOLSPERSE、ビックケミー社製のDISPERBYK、エフカアディティブズ社製のEFKAなどが挙げられる。
インク組成物中の顔料誘導体および顔料分散剤の含有量は、それぞれ、インク組成物の総量に基づいて、0.05質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
着色材の分散には、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができ、また、ラインミキサー等の混合機を用いてもよい。さらに、上記着色材の分散後、着色材の粗大粒子を除去する目的で、遠心分離機、フィルター、クロスフロー等を用いて分級処理を行ってもよい。
着色材の分散を行う際には、分散剤を添加することができる。分散剤としては、その種類に特に制限はないが、公知の高分子分散剤を用いることが好ましい。分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、例えば、インク組成物の全質量に基づいて0.01~5質量%であってよい。着色材を添加するにあたっては、必要に応じて、分散助剤として、各種着色材に応じたシナージストを用いることも可能である。
〔他の成分〕
本発明のインク組成物には、上記に述べた成分の他に、溶剤、重合禁止剤(ゲル化防止剤)、表面調整剤、増感剤、消泡剤、殺菌剤、保湿剤、pH調整剤、防腐剤、防錆剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤等の他の成分を添加してもよい。例えば、重合禁止剤、ゲル化防止剤を添加する場合、インク組成物の保存安定性をより向上させることができる。また、表面調整剤を添加する場合、印刷物表面のレベリング性を向上することができる。
(溶剤)
本発明のインク組成物は、例えば、インク組成物の極性や粘度、表面張力、着色材の溶解性・分散性の向上、導電性の調整、および印字性能の調整などを目的として、溶剤を含有してもよい。溶剤としては、本発明のインク組成物を構成する成分、特に重合性化合物と相溶性を有するものであれば特に制限されず、公知の溶剤を用いることができる。溶剤としては、例えば、アルコール溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、エーテル溶剤および炭化水素溶剤などが挙げられ、具体的には、メタノール、2-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチルおよびテトラヒドロフランなどが挙げられる。これらの溶剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のインク組成物が溶剤を含有する場合、その含有量は、インク組成物の総量に基づいて、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であり、その下限値は0質量%以上であってよい。本発明のインク組成物は、溶剤を実質的に含有しないことが好ましい。なお、「実質的に含有しない」とは、水や溶剤が不可避的に混入する場合、例えば、製造過程において製造設備等の洗浄に用いた溶剤や原料中に含まれる水や溶剤が不可避的に混入してくる場合等を排除しないことを意味する。
(重合禁止剤)
本発明のインク組成物が重合禁止剤を含有する場合、保存安定性をさらに向上させることができる。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p-メトキシフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル)、TEMPOL(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンオキシル)、クペロンAl等が挙げられる。市販品としては、例えばIRGASTAB UV-10、IRGASTAB UV-22、FIRSTCURE ST-1(ALBEMARLE社製)等が挙げられる。重合禁止剤を添加する場合、保存安定性をより高めることができる。また、熱エネルギーにより重合性化合物が重合することによるヘッド詰まりを防止しやすい。本発明のインク組成物が重合禁止剤を含有する場合、その含有量は特に限定されず、インク組成物の総量に基づいて、例えば0.001~5質量%程度、好ましくは0.01~1質量%であってよい。
(表面調整剤)
本発明のインク組成物は、被記録媒体表面に対する濡れ性の向上およびはじきの防止を目的として表面調整剤を含有してもよい。本明細書において、「表面調整剤」とは、分子構造中に親水性部位と疎水性部位を有し、添加することによりインク組成物の表面張力を調整し得る物質のことを意味する。表面調整剤としては、具体的には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性表面調整剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性表面調整剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性表面調整剤、シリコーン系表面調整剤、およびフッ素系表面調整剤などが挙げられる。これらの表面調整剤を単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明のインク組成物が表面調整剤を含有する場合、その含有量は、使用目的により適宜選択し得るが、例えばインク組成物の総量に基づいて、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、また、表面調整剤の溶解不足を防止しやすい観点、インク組成物の泡立ちを防止しやすい観点からは、その含有量は好ましくは5質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下である。
(増感剤)
本発明のインク組成物は、増感剤として増感色素を含有してもよい。増感剤を含有することにより重合開始剤の感度を向上させ得る。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nm~450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。例えば、多核芳香族類、キサンテン類、シアニン類、メロシアニン類、チアジン類、アクリジン類、アントラキノン類、クマリン類などが好ましい。
さらに、共増感剤として、感度を一層向上させる、または酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を用いることもできる。例えばアミン類が挙げられ、具体的にはトリエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ホルミルジメチルアニリン、p-メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
本発明のインク組成物は、経時による不均一化、染料の析出等に起因する液体の濁りが生じる等の経時安定性の観点、および非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体を用いたときの乾燥性の観点から、好ましい一態様において、水を実質的に含有しない。したがって、本発明のインク組成物における水の含有量は、インク組成物の総量に基づいて、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、さらにより好ましくは0.1質量%以下である。
本発明のインク組成物に含まれ得る、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、公知の化合物を適宜選択して用いればよいが、具体的には例えば、特開2001-181549号公報に記載されている添加剤などを用いることができる
本発明のインク組成物の粘度は、印刷適性の観点から、例えば2~60mPa・s、好ましくは3~40mPas・s、より好ましくは4~35mPas・s、さらに好ましくは5~30mPas・sである。インク組成物の粘度は、E型粘度計、B型粘度計などを用いて測定することができる。
〔インク組成物の調製方法〕
本発明のインク組成物の調製方法としては、従来公知の調製方法を使用できる。具体的には、例えば、インク組成物が顔料を含有する場合、顔料と、重合性化合物(配合する場合には重合性オリゴマー)の一部あるいは全部と、必要により顔料分散剤とをプレミックスした混合物を調製し、この混合物を分散機により分散させて一次分散体を調製する。分散機としては、例えば、ディスパ;ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミル等の容器駆動媒体ミル;サンドミルなどの高速回転ミル;撹拌槽型ミルなどの媒体撹拌ミルなどが挙げられる。
次に、一次分散体に、残りの重合性化合物、重合開始剤および表面調整剤と、必要によりゲル化防止剤などの他の添加剤を添加し、撹拌機を用いて均一に混合する。撹拌機としては、具体的には、例えば、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパ、ホモジナイザーなどが挙げられる。また、ラインミキサーなどの混合機を用いて、インク組成物を混合してもよい。さらに、インク組成物中の粒子をより微細化する目的でビーズミルや高圧噴射ミルなどの分散機を用いて、インク組成物を混合してもよい。例えばインク組成物が顔料を含有しない場合、一次分散体を調製することなく、各成分を混合してインク組成物を製造してもよい。
〔インク組成物の使用方法〕
本発明のインク組成物は、種々の材質の被記録媒体に対して使用することができる。被記録媒体としては、浸透性被記録媒体、非浸透性の被記録媒体および緩浸透性の被記録媒体のいずれを使用することもできる。なお、本明細書において「浸透性の被記録媒体」とは、例えば10pL(ピコリットル)のインク液滴を被記録媒体表面に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ミリ秒以下である被記録媒体をいい、「非浸透性の被記録媒体」とは、実質的に液滴が浸透しない被記録媒体をいう。なお、「実質的に浸透しない」とは、具体的には、例えばインク液滴を被記録媒体表面に滴下して1分後の液滴の浸透率が5%以下であることをいう。また、「緩浸透性の被記録媒体」とは、10pLのインク液滴を被記録媒体表面に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ミリ秒以上である被記録媒体をいう。
浸透性の被記録媒体としては、例えば、普通紙、多孔質紙およびその他インク液滴を吸収できる被記録媒体が挙げられる。非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体としては、例えば、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器および木材等が挙げられる。また本発明においては、機能付加の目的で、これらの材質を複数組み合わせて複合化した被記録媒体を使用することもできる。
合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、セルロイド等が挙げられる。
合成樹脂を用いた場合の被記録媒体の厚みや形状は、特に限定されるものではなく、フィルム状、カード状、ブロック状のいずれの形状でもよく、また透明又は不透明のいずれであってもよい。
合成樹脂の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状にして用いることも好ましく、各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、PNYフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムおよびPPフィルム等が挙げられる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVAおよびゴム類などを使用できる。
樹脂コート紙としては、例えば透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルムおよび紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体等が挙げられる。
金属としては、例えばアルミニウム、鉄、金、銀、銅、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、シリコン、鉛、亜鉛およびステンレス等、ならびにこれらの複合材料が挙げられる。
インクジェット方式としては、特に限定されるものではないが、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えてインクに照射する放射圧を利用した音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式などが挙げられる。なお、上記インクジェット方式には、フォトインクと呼ばれる低濃度のインクを微小体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式、無色透明のインクを用いる方式などが含まれる。
本発明において、インク組成物に含まれる重合性化合物(特にエチレン性不飽和モノマー(a)および場合により含まれる重合性オリゴマー(d))の重合反応を開始するためのエネルギー付与は、従来公知のエネルギー線の照射により行うことができる。照射手段としては、水銀灯やメタルハライドランプ以外に、紫外線LED、紫外線レーザなどを用いることができる。エネルギー線は、被記録媒体面上にインク組成物を吐出した後、1~1,000ミリ秒経過するまでの間にインク組成物に照射するのが好ましい。経過時間が1ミリ秒未満の場合、ヘッドと光源との距離が短くなりすぎるため、ヘッドへエネルギー線が照射されて不測の事態を招くおそれがある。一方、経過時間が1,000ミリ秒を超えると、多色が利用される場合のインク滲みにより画質が劣化する場合がある。
本発明は、上記に述べた本発明のインク組成物の硬化物からから構成される印刷物、ならびに、上記に述べた本発明のインク組成物をインクジェット方式により吐出する工程、および、活性エネルギー線を照射してインク組成物を硬化する工程を少なくとも含む、印刷物の製造方法も提供する。
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、下記の実施例及び比較例においてインク組成物を調製するために用いた成分を表1に示す。
Figure 2023156767000001
〔実施例1:インク組成物1の調製〕
500mlのステンレスビーカーに、重合性化合物としてのベンジルアクリレート(表1中の「V#160」、ビスコート#160)30質量部、および1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(表1中の「SR238NS」)59.89質量部、重合開始剤(b)としてのフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(表1中の「Omnirad(登録商標)819」)8質量部、およびチオール化合物(c)としてのペンタエリトリトール3-メルカプトブタン酸エステル(表1中の「カレンズMT(登録商標)PE1)2質量部を計り取り、マグネチックスターラーにより30分撹拌した。撹拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、得られた混合物を吸引ろ過し、インク組成物1を調製した。
〔実施例2~36および比較例1~4〕
表2~表5に示す組成となるように各成分を配合したこと以外は実施例1と同様にして、インク組成物を調製した。
〔インク組成物の初期粘度〕
実施例及び比較例で得たインク組成物の初期粘度を、25℃で、TVB-10(東機産業社製)により測定した。得られた結果を表2および表3に示す。
〔インク組成物の保存安定性〕
(1)粘度変化率
実施例及び比較例で得たインク組成物を、60℃の環境下に7日間または28日間放置した後、インク組成物の粘度を、室温で、TVB-10(東機産業社製)により測定した。前述のインク組成物の初期粘度をV(mPa・s)とし、60℃の環境下に7日間放置後のインク組成物の粘度をV(mPa・s)とし、60℃の環境下に20日間放置後のインク組成物の粘度をV20(mPa・s)としたとき、次の式に従い、60℃の環境下に7日間放置した際の粘度の変化率(%)、および、60℃の環境下に20日間放置した際の粘度の変化率(%)を次の式により算出した。得られた結果を表2および表3に示す。なお、変化率が0%に近い程、粘度の変化が少なく、保存安定性に優れる組成物である。
60℃7日保管後の変化率(%)={(V-V)/V}×100
60℃20日保管後の変化率(%)={(V20-V)/V}×100
(2)重合開始剤の析出性
実施例及び比較例で得たインク組成物を、25℃の環境下に7日間放置した後、インク組成物中の析出物の有無を目視により確認した。得られた結果を表2および表3に示す。
〔硬化性〕
波長365nmのLEDランプを用い、600mW/cmの照射強度、20mJ/cm/Passの積算光量で照射を行い、2Pass毎に塗膜の硬化性を触診により確認し、硬化までに要したパス回数を評価した。なお、硬化性の評価を行うにあたり、重合開始剤が析出しやすいようなインク組成物であったとしても、重合開始剤を再溶解させた状態で評価を行った。
〔塗膜の耐エタノール性〕
硬化性評価で作成した塗膜を用い、まず、エタノール100%の液体を綿棒に浸し、塗膜を10往復こすった時の外観変化を評価した。外観に変化がなかった場合は、耐エタノール性試験結果を100%とした。外観に変化があった場合、エタノールと水を90:10の比率で混合した90%エタノールの水混合液を綿棒に浸し、同様にして塗膜の外観変化を評価した。この時点で外観に変化がなかった場合は、耐エタノール性試験結果を90%とした。外観に変化があった場合、さらに、エタノール/水比率を10%ずつ刻んだ混合液に綿棒に浸し、塗膜を10往復こすった時に外観変化の無かったエタノール比率を評価した。エタノール比率が高い程、塗膜の耐エタノール性が高いといえる。
Figure 2023156767000002
Figure 2023156767000003
Figure 2023156767000004
Figure 2023156767000005
ビニルエーテル基を有しないエチレン性不飽和単量体(a)、重合開始剤(b)、およびチオール化合物(c)を含み、特定のエチレン性不飽和単量体(a1)および(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体の量が2質量%より多く、エチレン性不飽和単量体(a1)および(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体の量が20質量%以上である、実施例1~36のインク組成物は、重合性開始剤の析出が無いと共に、60℃で7日間または20日間保存した際の粘度変化率が小さく、保存安定性に優れることが確認された。また、48回までのパス回数で硬化し、耐エタノール性に優れる硬化膜を与え、硬化性が良好であることも確認された。
これに対し、チオール化合物(c)を含有しない比較例1および2のインク組成物の場合、紫外線を照射しても十分な硬化性が得られず、硬化に要するパス回数が多くなった。また、エチレン性不飽和単量体(a1)および(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体を含まない比較例3のインク組成物の場合、重合開始剤を安定的に配合することができず、重合開始剤が析出した。なお、硬化性の評価および硬化膜の評価は、析出した重合開始剤を再度溶解させた組成物を用いて評価しているが、実際の使用においては、析出した重合開始剤はもはや硬化反応に関与せず、硬化性がより悪くなると考えられる。エチレン性不飽和単量体(a1)および(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体を含まず、エチレン性不飽和単量体(a1)および(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体を含まない比較例4のインク組成物は、重合開始剤を安定的に配合することができず、重合開始剤が析出した。また、初期粘度が高すぎるために、インク組成物として適するとはいえないものであった。

Claims (16)

  1. 活性エネルギー線硬化型のインク組成物であって、ビニルエーテル基を有しないエチレン性不飽和単量体(a)、重合開始剤(b)、およびチオール化合物(c)を含み、
    前記エチレン性不飽和単量体(a)は、
    芳香族基を有する単官能のエチレン性不飽和単量体(a1)、
    芳香族基を有しない単官能のエチレン性不飽和単量体(a2)、
    芳香族基を有する多官能のエチレン性不飽和単量体(a3)、および
    芳香族基を有しない多官能のエチレン性不飽和単量体(a4)
    からなる群から選択される少なくとも1種であり、
    エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて2質量%より多く、エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて20質量%以上である、インク組成物。
  2. チオール化合物(c)は、2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物を含む、請求項1に記載のインク組成物。
  3. チオール化合物(c)の含有量は、インク組成物の総量に基づいて0.5~12質量%である、請求項1に記載のインク組成物。
  4. 重合開始剤(b)は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドを含む、請求項1に記載のインク組成物。
  5. 重合開始剤(b)の含有量は、インク組成物の総量に基づいて1~15質量%である、請求項1に記載のインク組成物。
  6. エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体と、エチレン性不飽和単量体(a3)およびエチレン性不飽和単量体(a4)からなる群から選択される多官能エチレン性不飽和単量体とを含む、請求項1に記載のインク組成物。
  7. エチレン性不飽和単量体(a3)およびエチレン性不飽和単量体(a4)からなる群から選択される多官能エチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて40~80質量%である、請求項6に記載のインク組成物。
  8. エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a2)からなる群から選択される単官能エチレン性不飽和単量体の量は、インク組成物の総量に基づいて15~50質量%である、請求項1に記載のインク組成物。
  9. エチレン性不飽和重合性オリゴマーをさらに含む、請求項1に記載のインク組成物。
  10. エチレン性不飽和重合性オリゴマーは環状構造を有するオリゴマーである、請求項9に記載のインク組成物。
  11. エチレン性不飽和単量体(a1)の量は、インク組成物の総量に基づいて2質量%より多い、請求項1に記載のインク組成物。
  12. エチレン性不飽和単量体(a1)およびエチレン性不飽和単量体(a3)からなる群から選択される芳香族基を有するエチレン性不飽和単量体として、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、およびアルコキシ化フェノール(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のインク組成物。
  13. インク組成物における、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1からなる群から選択される重合開始剤の含有量は、インク組成物の総量に基づいて0質量%以上5質量%未満である、請求項1に記載のインク組成物。
  14. インク組成物における、ビニルエーテル基を有する重合性化合物の含有量はインク組成物の総量に基づいて0質量%以上5質量%未満である、請求項1に記載のインク組成物。
  15. 請求項1~14のいずれかに記載のインク組成物の硬化物から構成される、印刷物。
  16. 請求項1~14のいずれかに記載のインク組成物をインクジェット方式により吐出する工程、および、活性エネルギー線を照射してインク組成物を硬化する工程を少なくとも含む、印刷物の製造方法。
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