JP2023142440A - 糜爛又は潰瘍の予防方法、疾患の治療方法、糜爛又は潰瘍の予防用照射ガス及び糜爛又は潰瘍の予防用照射ガスの生成方法 - Google Patents

糜爛又は潰瘍の予防方法、疾患の治療方法、糜爛又は潰瘍の予防用照射ガス及び糜爛又は潰瘍の予防用照射ガスの生成方法 Download PDF

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勝徳 吉川
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Abstract

【課題】プラズマ発生装置においては、潰瘍、創傷等の治癒効果を高める検討がなされてきたものの、糜爛又は潰瘍の疾患の予防については、検討されていなかった。プラズマ発生装置を用いた糜爛又は潰瘍の予防方法を目的とする。【解決手段】生体組織に予防用照射ガスを照射する照射工程を1回以上有する、糜爛又は潰瘍の予防方法であって、前記予防用照射ガスは、プラズマにより生じる一重項酸素を含み、1回の前記照射工程は、積算一重項酸素濃度が10μmol/L以上となるように、前記照射ガスを照射することよりなる。【選択図】なし

Description

本発明は、糜爛又は潰瘍の予防方法、疾患の治療方法、糜爛又は潰瘍の予防用照射ガス及び糜爛又は潰瘍の予防用照射ガスの生成方法に関する。
プラズマ、又はプラズマにより生成された活性種を用いて、治療や殺菌等を行うプラズマ発生装置が知られている。プラズマ発生装置においては、例えば、プラズマ又は活性種を含む照射ガスを患部に照射して、創傷等の治癒の促進を図っている。
例えば、特許文献1は、折り曲げ部を有するプラズマ発生装置用ハンドピースであって、内部の電極間に位置し、前記折り曲げ部に沿って延在する屈曲性を有する絶縁部材を有するプラズマ発生装置を開示している。特許文献1の発明によれば、プラズマによる滅菌効果の向上と操作性の向上とが図られている。
特開2017-35281号公報
これまで、プラズマ発生装置においては、糜爛、潰瘍等の治癒効果を高める検討がなされてきたものの、糜爛又は潰瘍の疾患の予防については、検討されていなかった。
そこで、本発明は、プラズマ発生装置を用いた糜爛又は潰瘍の予防を目的とする。
本発明者らは、一重項酸素を含む照射ガスを組織に照射することで、糜爛又は潰瘍に対する予防効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の態様を有する。
<1>
生体組織に予防用照射ガスを照射する照射工程を1回以上有する、糜爛又は潰瘍の予防方法であって、
前記予防用照射ガスは、プラズマにより生じる一重項酸素を含み、
1回の前記照射工程は、下記積算一重項酸素濃度が10μmol/L以上となるように、前記予防用照射ガスを照射する、糜爛又は潰瘍の予防方法。
<積算一重項酸素濃度>
TPC(2,2,5,5-テトラメチル-3-ピロリン-3-カルボキサミド)0.1mol/L溶液0.8mLに対して、任意の時間、任意の距離で、予防用照射ガスを照射した後、予防用照射ガスが照射された前記溶液について、電子スピン共鳴(ESR)法により一重項酸素濃度を測定し、これを積算一重項酸素濃度(μmol/L)とする。
<2>
口腔粘膜炎の予防方法である、<1>に記載の糜爛又は潰瘍の予防方法。
<3>
前記口腔粘膜炎は、がん治療により誘発される疾患である、<2>に記載の糜爛又は潰瘍の予防方法。
<4>
前記照射工程を、1~3回/日かつ3日間以上行う、<1>~<3>のいずれかに記載の糜爛又は潰瘍の予防方法。
<5>
1回の前記照射工程は、1~120秒間である、<1>~<4>のいずれかに記載の糜爛又は潰瘍の予防方法。
<6>
<1>~<5>のいずれかに記載の糜爛又は潰瘍の予防方法を施す工程と、糜爛又は潰瘍の発症を誘発し得る治療工程とを含む、疾患の治療方法であって、
前記治療工程の開始前に、少なくとも1回以上の前記照射工程を行う、疾患の治療方法。
<7>
前記治療工程の開始後に、少なくとも1回以上の前記照射工程を行う、<6>に記載の疾患の治療方法。
<8>
前記治療工程は、がん治療である、<6>又は<7>に記載の疾患の治療方法。
<9>
一重項酸素を含み、下記積算一重項酸素濃度が10μmol/L以上である、糜爛又は潰瘍の予防用照射ガス。
<積算一重項酸素濃度>
TPC(2,2,5,5-テトラメチル-3-ピロリン-3-カルボキサミド)0.1mol/L溶液0.8mLに対して、任意の時間、任意の距離で、予防用照射ガスを照射した後、予防用照射ガスが照射された前記溶液について、電子スピン共鳴(ESR)法により一重項酸素濃度を測定し、これを積算一重項酸素濃度(μmol/L)とする。
<10>
<9>に記載の糜爛又は潰瘍の予防用照射ガスの生成方法であって、
電極を有するプラズマ発生部にプラズマ生成ガスを1~10L/minで供給し、前記電極に電圧を印加してプラズマを発生し、発生したプラズマにより前記一重項酸素を発生する、糜爛又は潰瘍の予防用照射ガスの生成方法。
<11>
一対の電極を有し、プラズマにより生じた一重項酸素を含む照射ガスを照射する照射器具と、
前記照射器具にプラズマ生成ガスを供給するガス供給部と、
前記電極に電圧を印加する給電部と、
制御部とを有し、
前記制御部は、下記積算一重項酸素濃度が10μmol/L以上となるように、前記ガス供給部及び前記給電部の少なくとも一方を制御する、糜爛又は潰瘍の予防用プラズマ発生層装置。
<積算一重項酸素濃度>
TPC(2,2,5,5-テトラメチル-3-ピロリン-3-カルボキサミド)0.1mol/L溶液0.8mLに対して、任意の時間、任意の距離で、予防用照射ガスを照射した後、予防用照射ガスが照射された前記溶液について、電子スピン共鳴(ESR)法により一重項酸素濃度を測定し、これを積算一重項酸素濃度(μmol/L)とする。
本発明の予防方法によれば、疾患の予防に効果的である。
本発明の第一の実施形態に係る医療用プラズマ発生装置の模式図である。 本発明の第一の実施形態に係る医療用プラズマ発生装置の照射器具の部分断面図である。 本発明の第一の実施形態に係る医療用プラズマ発生装置のブロック図である。 実施例の結果を示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこの実施の形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において「予防」の用語には、糜爛又は潰瘍の発症の防止を目的とした処置、発症した糜爛又は潰瘍を軽度に抑えるための処置、発症した糜爛又は潰瘍の治癒を早めるための発症前の処置を含む。
本発明の糜爛又は潰瘍の予防方法は、プラズマにより生じた一重項酸素を含む照射ガスを生体組織に照射する照射工程を1回以上有し、1回の照射工程における積算一重項酸素濃度を特定の範囲とする。
本発明の疾患の治療方法は、本発明の糜爛又は潰瘍の予防方法を含む。
本発明の糜爛又は潰瘍の予防用照射ガスは、特定量の積算一重項酸素濃度を含む。
本発明の糜爛又は潰瘍の予防用照射ガスの生成方法は、電極を有するプラズマ発生部にプラズマ生成ガスを供給し、電極に電圧を印加することを含む。
以下、本発明の医療用プラズマ発生装置、糜爛又は潰瘍の予防方法、疾患の治療方法、糜爛又は潰瘍の予防用照射ガス、糜爛又は潰瘍の予防用照射ガスの生成方法について、実施形態を挙げて説明する。
(医療用プラズマ発生装置)
本発明に用いる医療用プラズマ発生装置の一例について、図面を参照して説明する。
医療用プラズマ発生装置は、電極を有するプラズマ発生部と、プラズマ発生部で生じたプラズマにより生じた活性種を含む照射ガスを吐出する照射口と、プラズマ発生部にプラズマ生成ガスを供給するガス供給部と、電極に電圧を印加する給電部とを有する。
図1~3の医療用プラズマ発生装置100は、照射器具10と、供給器20と、接続ケーブル30と、を備える。接続ケーブル30内には、電気供給線32と、接地線34と、ガス管路36と、が収容されている。
図2は、照射器具10における軸線に沿う面の断面(縦断面)図である。
図2に示すように、照射器具10は、プラズマ発生部12を有する。
照射器具10は、長尺状のカウリング2と、カウリング2の先端から突出するノズル1と、カウリング2内に位置するプラズマ発生部12とを備える。
カウリング2は、円筒形の胴体部2bと、胴体部2bの先端を塞ぐヘッド部2aとを備える。なお、胴体部2bは、円筒形に限らず、四角筒、六角筒、八角筒等の多角筒形でもよい。
ヘッド部2aは、先端に向かい漸次窄んでいる。即ち、本実施形態におけるヘッド部2aは、円錐形である。なお、ヘッド部2aは、円錐形に限らず、四角錘、六角錘、八角錘等の多角錘形でもよい。
ヘッド部2aは、先端に嵌合孔2cを有している。嵌合孔2cは、ノズル1を受け入れる孔である。ノズル1は、ヘッド部2aに着脱可能になっている。ヘッド部2aは、管軸O1方向に延びる第一の活性ガス流路7を内部に有している。管軸O1は、胴体部2bの管軸である。
プラズマ発生部12は、管状誘電体3(誘電体)と、内部電極4と、外部電極5とを備える。
管状誘電体3は、管軸O1方向に延びる円筒状の部材である。管状誘電体3は、管軸O1方向に延びるガス流路6を内部に有している。本実施形態において、プラズマ生成ガスは、ガス流路6内を管軸O1方向に通流する。第一の活性ガス流路7とガス流路6とは連通している。なお、管軸O1は、管状誘電体3の管軸と同じである。
管状誘電体3は、内部に内部電極4を備えている。内部電極4は、管軸O1方向に延びる略円柱状の部材である。内部電極4は、管状誘電体3の内面と離間している。
管状誘電体3の外周面の一部には、内部電極4に沿う外部電極5を備えている。外部電極5は、管状誘電体3の外周面に沿って周回する環状の電極である。
管状誘電体3と内部電極4と外部電極5とは、管軸O1を中心として同心円状に位置している。
本実施形態において、内部電極4の外周面と外部電極5の内周面とは、管状誘電体3を挟んで互いに対向している。
内部電極4は、電気供給線32に接続されている。
外部電極5は、接地線34に接続され、電気的に接地されている。
なお、本実施形態のプラズマ発生部12は、プラズマ生成ガスの流れ方向に直交する方向に対向する電極を有するが、本発明はこれに限定されない。プラズマ発生部12は、プラズマ生成ガスの流れ方向に沿って対向する2つの電極で構成されていてもよいし(特許第5441066号公報参照)、電圧が印加される電極を1つのみ有する構成でもよい(特表2018-504202号公報参照)。
ノズル1は、嵌合孔2cに嵌合する台座部1bと、台座部1bから突出する照射管1cとを備える。台座部1bと照射管1cとは一体になっている。ノズル1は、その内部に、第二の活性ガス流路8を有している。ノズル1は、先端に照射口1aを有している。第二の活性ガス流路8と第一の活性ガス流路7とは、連通している。
胴体部2bの材料は、特に制限はないが、絶縁性を有する材料が好ましい。絶縁性の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を例示できる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)等を例示できる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等を例示できる。
胴体部2bの大きさは、特に制限はなく、手指で把持しやすい大きさとすることができる。
ヘッド部2aの材料は、特に制限はなく、絶縁性を有してもよいし、絶縁性を有しなくてもよい。ヘッド部2aの材料は、耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料が好ましい。耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料としては、ステンレス等の金属を例示できる。ヘッド部2aと胴体部2bとの材料は、同じでもよく、異なってもよい。
ヘッド部2aの大きさは、医療用プラズマ発生装置100の用途等を勘案して決定できる。例えば、医療用プラズマ発生装置100が口腔内用治療器具である場合、ヘッド部2aの大きさは、口腔内に挿入できる大きさが好ましい。
管状誘電体3の材料としては、公知のプラズマ発生装置に使用する誘電体材料を適用できる。管状誘電体3の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、合成樹脂等を例示できる。管状誘電体3の誘電率は低いほど好ましい。
管状誘電体3の内径Rは、内部電極4の外径dを勘案して適宜決定できる。内径Rは、後述する距離sを所望の範囲とするように決定する。
内部電極4は、管軸O1方向に延びる形状であれば特に限定されない。内部電極4は、例えば、周面が平滑な部材でもよいし、周面にネジ山等の凹凸を有する部材でもよい。
内部電極4の外径dは、医療用プラズマ発生装置100の用途(即ち、照射器具10の大きさ)等を勘案して、適宜決定できる。医療用プラズマ発生装置100が口腔内用治療器具である場合、外径dは、0.5~20mmが好ましく、1~10mmがより好ましい。外径dが上記下限値以上であると、内部電極4を容易に製造できる。加えて、外径dが上記下限値以上であると、内部電極4の表面積が大きくなり、プラズマをより効率的に発生して、治癒等をより促進できる。外径dが上記上限値以下であると、照射器具10を過度に大きくすることなく、プラズマをより効率的に発生し、治癒等をより促進できる。内部電極が周囲にネジ山等の凹凸を有する部材の場合、内部電極の外径の内、最大径を外径dとする。
内部電極4のねじ山の高さは、内部電極4の外径dを勘案して適宜決定できる。
内部電極4のねじ山のピッチは、内部電極4の長さや外径d等を勘案して適宜決定できる。
内部電極4の材料は、導電材であれば特に制限はなく、公知のプラズマ発生装置の電極に使用できる金属を適用できる。内部電極4の材料としては、ステンレス、銅、タングステン等の金属、カーボン等を例示できる。
内部電極4の材料は、導電材であれば特に制限はなく、公知のプラズマ発生装置の電極に使用できる金属を適用できる。内部電極4の材料としては、ステンレス、銅、タングステン等の金属、カーボン等を例示できる。
内部電極4の外面と管状誘電体3の内面との距離sは、0.05~5mmが好ましく、0.1~1mmがより好ましい。距離sが上記下限値以上であると、所望量のプラズマ生成ガスを容易に通流できる。距離sが上記上限値以下であると、プラズマをさらに効率的に発生し、照射ガスの温度を低くできる。
外部電極5の材料は、導電材であれば特に制限はなく、公知のプラズマ発生装置の電極に使用する金属を適用できる。外部電極5の材料としては、ステンレス、銅、タングステン等の金属、カーボン等を例示できる。
ノズル1の材料は、特に制限はなく、絶縁性を有してもよいし、導電性を有してもよい。ノズル1の材料としては、耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料が好ましい。耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料としては、ステンレス等の金属を例示できる。
ノズル1における照射管1c内の流路の長さ(即ち、距離L2)は、医療用プラズマ発生装置100の用途等を勘案して、適宜決定できる。
照射口1aの開口径は、例えば、0.5~5mmが好ましい。開口径が上記下限値以上であると、照射ガスの圧力損失を抑制できる。開口径が上記上限値以下であると、照射する照射ガスの流速を高めて、予防効果、治癒効果を促進できる。
照射管1cは、管軸O1に対して屈曲している。
照射管1cの管軸O2と管軸O1とのなす角度θは、医療用プラズマ発生装置100の用途等を勘案して決定できる。
なお、照射管1cは、基端から先端まで直線状でもよいし、途中で屈曲していてもよい。
外部電極5の先端Q1からヘッド部2aの先端Q2までの距離L1と、先端Q2から照射口1aまでの距離L2との合計(即ち、プラズマが発生する領域から照射口1aまでの道のり)は、医療用プラズマ発生装置100に求める大きさや、照射した照射ガスが当たる面(被照射面)における温度等を勘案して適宜決定する。距離L1と距離L2の合計が長ければ、被照射面の温度を低くできる。距離L1と距離L2の合計が短ければ、照射ガスの活性種濃度をさらに高めて、被照射面における予防効果、治癒効果をさらに高められる。なお、先端Q2は、管軸O1と管軸O2との交点である。
供給器20は、給電部50、ガス供給部60と、ガス供給源70と、制御部90と、これらを収容する筐体21とを備える。また、供給器20は、照射操作部9と、タイマ80とを有する。
本実施形態において、照射操作部9は、筐体21の上面に設けられている。照射操作部9としては、ボタン式、タッチパネル等のスイッチが挙げられる。なお、照射操作部9は、筐体21の上面に設けられていなくてもよい。照射操作部9としては、例えば、供給器20の下方よりに設けられたフットペダル等でもよいし、照射器具10に設けられたスイッチでもよい。
筐体21は、ガス供給源70を離脱可能に収容する。これにより、筐体21に収容されたガス供給源70内のガスがなくなったとき、ガス供給源70を交換できる。
給電部50は、例えば、100Vの家庭用電源等の電源と接続されている。給電部50は、電気供給線32を介して、照射器具10の内部電極4と接続されている。
給電部50は、プラズマ発生部12の電極への電気の供給の開始又は停止を切り替える。加えて、給電部50は、電極に印加する電圧及び周波数を調整する。給電部50としては、例えば、インバータを含む回路等が挙げられる。
タイマ80は、例えば、照射時間を表示し、又は、照射時間を管理する。なお、医療用プラズマ発生装置100は、タイマ80を有しなくてもよい。
ガス供給部60は、ガス供給源70とガス管路36とを接続するガス配管65を備える。ガス配管65には、電磁弁61、圧力レギュレータ63及び流量コントローラ64(流量調整部)が設けられている。流量コントローラ64と電磁弁61とは、制御部90に接続されている。
電磁弁61は、開閉の切り替えによって、ガス供給源70から照射器具10へのプラズマ生成ガスの供給の開始及び停止を切り替える。図示例では、電磁弁61は、弁開度が調節できる構成ではなく、開閉の切り替えのみができる構成である。なお、電磁弁61は、弁開度が調節できる構成であってもよい。
圧力レギュレータ63は、電磁弁61とガス供給源70との間に配置される。圧力レギュレータ63は、ガス供給源70から電磁弁61に向かうプラズマ生成ガスの圧力を低下(プラズマ生成ガスを減圧)させる。
流量コントローラ64は、電磁弁61とガス管路36との間に配置される。流量コントローラ64は、電磁弁61を通過したプラズマ生成ガスの流量(単位時間当たりの供給量)を調整する。流量コントローラ64は、プラズマ生成ガスの流量を、例えば1~10L/minに調整する。
ガス配管65のガス供給源70側の端部には、継手66が設けられている。継手66には、ガス供給源70が着脱可能に装着されている。ガス供給源70を継手66に着脱させることで、ガス供給部60を筐体21に固定したまま、ガス供給源70を交換できる。この場合、交換前のガス供給源70、交換後のガス供給源70のいずれについても共通のガス供給部60を使用できる。なお、ガス供給部60は、ガス供給源70に固定され、ガス供給源70と一体的に筐体21から離脱可能であってもよい。
ガス供給源70は、プラズマ発生部12にプラズマ生成ガスを供給する。ガス供給源70は、内部にプラズマ生成ガスが収容された耐圧容器等である。ガス供給源70は、筐体21内に配置されたガス供給部60に対して着脱可能に装着されている。
なお、ガス供給源70は、筐体21外にあってもよいし、医療用プラズマ発生装置100とは独立した装置でもよい。
制御部90は、情報処理装置を用いて構成される。即ち、制御部90は、バスで接続されたCPU(Central Processor Unit)、メモリ及び補助記憶装置を備える。制御部90は、プログラムを実行することによって動作する。
ガス管路36は、供給器20から照射器具10にプラズマ生成ガスを供給する経路である。ガス管路36は、照射器具10の管状誘電体3に接続している。ガス管路36の材料は特に制限はなく、公知のガス管に用いる材料を適用できる。ガス管路36の材料としては、例えば、樹脂製の配管、ゴム製のチューブ等を例示でき、可撓性を有する材料が好ましい。
電気供給線32は、電源から照射器具10のプラズマ発生部12に電気を供給する配線を備える。
電気供給線32の材料は特に制限はなく、公知の電気配線に用いる材料を適用できる。電気供給線32の材料としては、絶縁材料で被覆した金属導線等を例示できる。
医療用プラズマ発生装置100は、報知部22を有する。報知部22は、視覚に対する通知機能を有する部材でもよいし、聴覚に対する通知機能を有する部材でもよい。視覚に対する通知機能を有する部材としては、LED等の発光素子が挙げられる。聴覚に対する通知機能を有する部材としては、ブザー、アラーム等の音声素子等が挙げられる。
報知部22は、供給器20に設けられていてもよいし、照射器具10に設けられていてもよいし、供給器20及び照射器具10とは独立して設けられていてもよい。また、医療用プラズマ発生装置100は、報知部22を有しなくてもよい。
医療用プラズマ発生装置100は、糜爛又は潰瘍等の治療用、糜爛又は潰瘍の予防用として好適である。
(予防用照射ガス)
本発明の予防用照射ガスは、一重項酸素を含む。
予防用照射ガスの積算一重項酸素濃度は、10μmol/L以上であり、30μmol/L以上が好ましく、60μmol/L以上がより好ましい。積算一重項酸素濃度が上記下限値以上であると、糜爛又は潰瘍に対する予防効果を高められる。
予防用照射ガスの積算一重項酸素濃度の上限は、例えば、300μmol/L以下が好ましく、250μmol/L以下がより好ましく、200μmol/L以下がさらに好ましい。積算一重項酸素濃度が上記上限値以下であると、過剰量の活性種の刺激により糜爛又は潰瘍が悪化することを防ぐことが出来る。
予防用照射ガスの積算一重項酸素濃度は、予防用照射ガス中の一重項酸素濃度及び予防用照射ガスの照射時間との組み合わせにより調節される。加えて、予防用照射ガス中の一重項酸素濃度は、プラズマ発生部12の電極への供給電流の印加電圧、プラズマ生成ガスの種類、プラズマ発生部12へのプラズマ生成ガスの供給量の組み合わせ等により調節できる。
予防用照射ガスの積算一重項酸素濃度の測定方法は、TPC(2,2,5,5-テトラメチル-3-ピロリン-3-カルボキサミド)0.1mol/L溶液0.8mLに対して、任意の時間、任意の距離で、予防用照射ガスを照射した後、予防用照射ガスが照射された前記溶液について、電子スピン共鳴(ESR)法により一重項酸素濃度を測定し、これを本明細書では任意の時間、任意の距離での積算一重項酸素濃度と定義する。
TPC0.1mol/L溶液(以下、単に「TPC溶液」ということがある)は、水溶液である。
予防用照射ガスをTPC溶液に照射する際の距離(プラズマ照射器の照射口からTPC溶液の水面までの距離)は、後述する予防方法の照射工程(特に「予防照射工程」ということがある)における照射距離と同じである。予防用照射ガスをTPC溶液に照射する際の距離は、例えば、10mmとされる。
予防用照射ガスをTPC溶液に照射する時間(照射時間)は、予防照射工程における照射時間と同じである。即ち、予防用照射ガスにおける積算一重項酸素濃度は、1回の予防照射工程において照射される一重項酸素の総量と相関がある。
予防用照射ガスに含まれる活性種としては、一重項酸素以外に、ヒドロキシルラジカル、オゾン、過酸化水素、スーパーオキシドアニオンラジカル、一酸化窒素、二酸化窒素、ペルオキシナイトライト、過酸化亜硝酸、三酸化二窒素等を例示できる。予防用照射ガスに含まれる活性種の種類は、例えば、プラズマ生成ガスの種類等によって調節できる。
(予防用照射ガスの生成方法)
本実施形態の予防用照射ガスの生成方法について、医療用プラズマ発生装置100を用いた予防用照射ガスの生成方法を説明する。
例えば、医師等の使用者は、供給器20の主電源をオンとする。この際、タイマ80が照射時間を管理する機能を有する場合、タイマ80で予防用照射ガスの照射時間を設定する。
使用者が照射操作部9を操作すると、制御部90は、タイマ80を作動し、ガス供給源70からガス供給部60及びガス管路36を介して照射器具10のプラズマ発生部12にプラズマ生成ガスを供給し、プラズマ発生部12への供給電圧を調節し、電極に電圧を印加する。
プラズマ発生部12に供給したプラズマ生成ガスは、管状誘電体3の後方から管状誘電体3の内空部に流入する。プラズマ生成ガスは、電圧を印加した内部電極4と外部電極5とが対向する位置において電離し、プラズマになる。
本実施形態においては、内部電極4と外部電極5とが、プラズマ生成ガスの流れる方向と直交する向きに対向している。内部電極4の外周面と外部電極5の内周面とが対向する位置で発生したプラズマは、ガス流路6と、第一の活性ガス流路7と、第二の活性ガス流路8とをこの順に通流する。この間、プラズマは、ガス組成を変化しつつ通流し、ラジカル等の活性種を含む予防用照射ガスとなる。
生じた予防用照射ガスはノズル1の照射口1aから吐出される。吐出された予防用照射ガスは、照射口1a近傍の気体の一部をさらに活性化して活性種を生成する。これらの活性種を含む予防用照射ガスを被照射物に照射する(照射工程)。
照射工程における任意の照射時間(タイマ80での設定時間)が経過すると、制御部90は、プラズマ発生部12へのプラズマ生成ガスの供給及びプラズマ発生部12への電気の供給の少なくも一方を停止して、予防用照射ガスの吐出を終える。この際、プラズマ発生部12への電気の供給(即ち、電極への電圧の印加)及びプラズマ発生部12へのプラズマ生成ガスの供給を停止して、照射操作部9による指示を停止することが好ましい。あるいは、所定の時間を経過した時点で、所定量の積算一重項酸素濃度を照射したことを報知部22で報知する。
照射工程において、照射操作部9が、1回の操作で電気信号を1回だけ発信する場合は、制御部90は、例えば、以下のように電磁弁61、流量コントローラ64、タイマ80及び給電部50を制御する。
照射操作部9からの電気信号を制御部90が受け付けると、制御部90が、電磁弁61を開として電磁弁61を通過したプラズマ生成ガスの流量を流量コントローラ64に調整させる。また、制御部90が、給電部50を制御して、プラズマ発生部12の電極に電圧を印加する。また、制御部90がタイマ80を起動する。タイマ80が所定の時間に達すると、制御部90はタイマ80からの信号を受け、電磁弁61を閉とするか、プラズマ発生部12の電極への電圧の印加を停止する。あるいは、所定の時間照射したことを報知部22で報知する。この結果、使用者が照射操作部9を1回操作すると、所定量の積算一重項酸素濃度の予防用照射ガスが、照射口1aより吐出される。
照射工程において、照射操作部9が、操作をし続けている間、電気信号を発信し続ける場合は、制御部90は、例えば、以下のように電磁弁61、流量コントローラ64、タイマ80及び給電部50を制御する。
照射操作部9からの電気信号を制御部90が受け付けている間、制御部90が、電磁弁61を開として電磁弁61を通過したプラズマ生成ガスの流量を流量コントローラ64に調整させる。また、制御部90が、給電部50を制御して、プラズマ発生部12の電極に電圧を印加する。また、制御部90がタイマ80を起動する。照射操作部9の操作を停止すると、制御部90は、電磁弁61を閉とするか、プラズマ発生部12の電極への電圧の印加を停止する。あるいは、所定の時間が経過したことを報知部22で報知する。その結果、使用者が照射操作部9を操作している間、予防用照射ガスが、照射口1aより吐出される。
プラズマ生成ガスとしては、例えば、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン等)、窒素、酸素、空気等を例示できる。これらのガスは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
プラズマ生成ガスは、窒素を主成分とすることが好ましい。ここで、窒素を主成分とするとは、プラズマ生成ガスにおける窒素の含有量が50体積%超であることをいう。
即ち、プラズマ生成ガスにおける窒素の含有量は、50体積%超が好ましく、70体積%以上がさらに好ましく、80~100体積%がさらに好ましく、90~100体積%が特に好ましい。プラズマ生成ガス中の窒素以外のガス成分としては、例えば、酸素、希ガス等を例示できる。
プラズマ生成ガスの酸素濃度は、1体積%以下が好ましい。酸素濃度が上限値以下であると、オゾンの発生を低減できる。
照射工程における管状誘電体3に導入するプラズマ生成ガスの流量は、1~10L/minが好ましく、2~10L/minがより好ましく、3~10L/minがさらに好ましい。管状誘電体3に導入するプラズマ生成ガスの流量が上記下限値以上であると、被照射物における被照射面の温度の上昇を抑制しやすい。プラズマ生成ガスの流量を上記上限値以下とすれば、電極に印加する電圧をより低められる。
照射工程における内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電圧は、1kVpp以上20kVpp以下が好ましく、5kVpp以上20kVpp以下がより好ましい。ここで、交流電圧を表す単位「Vpp(Volt peak to peak)」は、交流電圧波形の最高値と最低値との電位差である。
印加する交流電圧が上記上限値以下であると、発生するプラズマの温度を低く抑えられる。印加する交流電圧が上記下限値以上であると、さらに効率的にプラズマを発生できる。
照射工程における内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電流の周波数は、0.5kHz以上30kHz以下が好ましく、5kHz以上30kHz以下がより好ましく、10kHz以上30kHz以下がさらに好ましい。交流電流の周波数が上記上限値以下であると、発生するプラズマの温度を低く抑えられる。交流電流の周波数が上記下限値以上であると、さらに効率的にプラズマを発生できる。
照射工程における予防用照射ガスを照射する時間(照射時間)は、所望する積算一重項酸素濃度となる時間とされる。照射時間は、例えば、1~120秒間が好ましく、3~90秒間がより好ましく、5~60秒間がさらに好ましい。照射時間が上記下限値以上であると、予防用照射ガス中の一重項酸素量を高めて、予防効果をより高められる。照射時間が上記上限値以下であれば、過剰量の活性種の刺激により糜爛又は潰瘍が悪化することを防ぐことが出来る。
照射時間は、照射工程を行う毎に設定してもよいし、予め設定された時間に基づいて、制御部90がプラズマ発生部12への電気の供給及びプラズマ生成ガスの供給の少なくとも一方を停止してもよい。
ノズル1の照射口1aから照射する予防用照射ガスの温度は、100℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましい。ノズル1の照射口1aから照射する予防用照射ガスの温度が上記上限値以下であると、被照射面の温度を40℃以下にしやすい。被照射面の温度を40℃以下にすることで、被照射部分が患部である場合にも、患部への刺激を低減できる。ノズル1の照射口1aから照射する予防用照射ガスの温度の下限値は、特に制限はなく、例えば、10℃である。予防用照射ガスの温度は、照射口1aにおける予防用照射ガスの温度を熱電対で測定した値である。
照射口1aから被照射面までの距離(照射距離)は、例えば、1.0~10mmが好ましい。照射距離が上記下限値以上であると、被照射面の温度を低くし、被照射面への刺激をさらに緩和できる。照射距離が上記上限値以下であると、予防効果をさらに高められる。
照射口1aから1mm以上10mm以下の距離で離れた位置の被照射面の温度は、40℃以下が好ましい。被照射面の温度が40℃以下であると、被照射面への刺激を低減できる。被照射面の温度の下限値は特に制限はないが、例えば10℃である。
被照射面の温度は、内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電圧、照射する予防用照射ガスの吐出量、内部電極4と外部電極5とが対向している領域の先端Q1から照射口1aまでの道のり等の組み合わせで調節できる。被照射面の温度は、熱電対を用いて測定できる。
照射口1aから吐出する予防用照射ガスの流量は、1~10L/minが好ましい。
照射口1aから吐出する予防用照射ガスの流量が上記下限値以上であると、予防効果、治療効果をより高められる。照射口1aから吐出する予防用照射ガスの流量が上記上限値以下であると、予防用照射ガスの被照射面の温度が過度に高まることを防止できる。加えて、被照射面が濡れている場合には、被照射面の急速な乾燥を防止できる。医療用プラズマ発生装置100において、照射口1aから吐出する予防用照射ガスの流量は、プラズマ発生部12へのプラズマ生成ガスの供給量で調節できる。
(糜爛又は潰瘍の予防方法)
本発明の糜爛又は潰瘍の予防方法(以下、単に「予防方法」ということがある)は、生体組織に予防用照射ガスを照射する照射工程を1回以上有する。
照射工程を有することで、糜爛又は潰瘍の発症を防ぐか軽度とし、糜爛又は潰瘍を発症した場合には、糜爛又は潰瘍の治癒を早める。
本発明の予防方法の対象は、哺乳類、鳥類等の脊椎動物を例示できる。哺乳類としては、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ等を例示できる。本発明の予防方法は、ヒト以外を対象としてもよい。
予防照射工程は、上述の「予防用照射ガスの生成方法」により行われる。
予防照射工程は、例えば、健常な生体組織に対して、予防用照射ガスを照射する(予防照射工程)。
1回の予防照射工程において、積算一重項酸素濃度が10μmol/L以上となるように、予防用照射ガスを対象面に照射する。1回の予防照射工程における積算一重項酸素濃度は、10μmol/L以上であり、30μmol/L以上が好ましく、60μmol/L以上がより好ましい。積算一重項酸素濃度が上記下限値以上であると、予防効果をより高められる。
1回の予防照射工程における積算一重項酸素濃度の上限値は、例えば300μmol/L以下が好ましく、250μmol/L以下がより好ましく、200μmol/L以下がさらに好ましい。積算一重項酸素濃度が上記上限値以下であると、過剰量の活性種の刺激により糜爛又は潰瘍が悪化することを防ぐことが出来る。
予防方法が2回以上の予防照射工程を有する場合、それぞれの予防照射工程における積算一重項酸素濃度は、同じでもよいし、異なってもよい。
予防方法における予防照射工程の回数は、1回以上であればよく、3回以上が好ましく、5回以上が好ましい。予防照射工程の回数が上記下限値以上であると、予防効果をより高められる。
予防照射工程の回数の上限は、特に限定されないが、例えば、60回以下が好ましい。
複数の予防照射工程を有する場合、予防照射工程同士の間隔は、例えば、4~48時間が好ましく、6~24時間がより好ましく、8~24時間がさらに好ましい。予防照射工程同士の間隔が上記下限値以上であると、照射対象面への刺激をより低減できる。予防照射工程同士の間隔が上記上限値以下であると、予防効果をより高められる。
複数の予防照射工程を有する場合、1日当たりの予防照射工程の回数は、1~3回が好ましい。1日当たりの予防照射工程の回数が上記下限値以上であると、予防効果をより高められる。1日当たりの予防照射工程の回数が上記上限値以下であると、照射対象面への刺激をより低減できる。
予防照射工程における照射時間は、例えば、1~120秒間が好ましく、3~90秒間がより好ましく、5~60秒間がさらに好ましい。照射時間が上記下限値以上であると、予防用照射ガス中の一重項酸素量を高めて、予防効果をより高められる。照射時間が上記上限値以下であると、過剰量の活性種の刺激により糜爛又は潰瘍が悪化することを防ぐことが出来る。
予防方法が2回以上の予防照射工程を有する場合、それぞれの予防照射工程における照射時間は、同じでもよいし、異なってもよい。
本発明の予防方法は、予防照射工程以外の工程を有してもよい。予防方法は、例えば、被照射部位の洗浄、清掃、消毒、保湿、含嗽、ドレッシング等の工程を有してもよい。
(疾患の治療方法)
本発明の疾患の治療方法(単に、「治療方法」ということがある)は、本発明の予防方法を施す工程(予防工程)と、糜爛又は潰瘍の発症を誘発し得る治療工程とを含む。
治療工程としては、例えば、投薬、放射線治療を例示できる。また、がん治療に使用される薬の成分、放射線治療を施す部位によっては、***、皮膚、消化管、胃腸に糜爛または潰瘍を発症することがある。
従って、糜爛又は潰瘍を発症する可能性のある投薬、がん等の治療が、本発明の治療工程となり得る。中でも、粘膜等に糜爛又は潰瘍を発症する可能性があるがん治療において、本発明の予防方法は有効である。
治療方法において、予防工程は糜爛又は潰瘍の発症前に行う工程である。予防工程は、治療工程の開始前に開始し、治療工程の開始前に終了してもよいし、治療工程の開始後、糜爛又は潰瘍の発症前に終了してもよい。
治療方法において、治療工程の開始前に、予防工程を構成する予防照射工程の内、少なくとも1回の予防工程を行う。
治療工程の開始前の予防照射工程の回数は、1回以上であり、3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。治療工程の開始前の予防照射工程の回数が上記下限値以上であると、予防効果をより高められる。治療工程の開始前の予防照射工程の回数の上限は、例えば、60回とされる。
照射対象面は、例えば、口腔内、皮膚等、糜爛又は潰瘍の発現し得る場所である。
治療方法において、治療工程の開始後、糜爛又は潰瘍が発症した後は、糜爛又は潰瘍の患部に対して照射ガスを照射する快癒工程を設けてもよい。快癒工程を設けることで、糜爛又は潰瘍の治癒を促進する。
快癒工程は、糜爛又は潰瘍の患部に対して、照射ガスを照射する。
快癒照射工程は、予防照射工程と同様である。
快癒照射工程における積算一重項酸素濃度と、快癒照射工程における積算一重項酸素濃度とは、同じでもよいし、異なってもよい。
以上の通り、本発明の予防方法によれば、糜爛又は潰瘍の発症を抑制するか、糜爛又は潰瘍の軽度とし、糜爛又は潰瘍が発症した場合には、その後の糜爛又は潰瘍の治癒を早められる。
本発明の予防方法は、糜爛又は潰瘍を発症し得る治療において、治療の開始前に行うことが特に有効である。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
医療用プラズマ発生装置100と同様の医療用プラズマ発生装置を用い、下記照射条件で、予防用照射ガスをハムスター8匹の頬袋の2.5cmの領域に、1回/1日、照射した(予防照射工程)。1回の予防照射工程における積算一重項酸素濃度は、30μmol/Lであった。1回目の予防照射工程を行った日を0日目とし、3日目まで予防照射工程を行った。2回目、4回目の予防照射工程を行った直後に、ハムスターへ抗がん剤(5-FU)を60mg/kg投与した。2日目及び3日目に、ハムスターの頬袋(予防用照射ガスを照射した領域)を鉄ブラシで擦過した。4日目に、擦過した領域に口腔粘膜炎の発症(糜爛)を確認した。4日目の口腔粘膜炎の面積(初期面積)を100%とし、7日目、9日目及び11日目の口腔粘膜炎の面積の割合(%)を測定し、その平均値を図4に示す。
<照射条件>
・印加電圧:20kHz、5.7kVppの交流電流。
・プラズマ生成ガスの流量:3L/min.。
・照射時間:15秒間。
・照射距離:5mm。
・プラズマ生成ガス:窒素100体積%。
・積算一重項酸素濃度:30μmol/L回。
(実施例2)
照射条件を下記にした以外は、実施例1と同様にして、口腔粘膜炎の面積の割合(%)を測定し、その平均値を図4に示す。
<照射条件>
・印加電圧:20kHz、7.3kVppの交流電流。
・プラズマ生成ガスの流量:3L/min.。
・照射時間:15秒間。
・照射距離:5mm。
・プラズマ生成ガス:窒素100体積%。
・積算一重項酸素濃度:60μmol/L/回。
(比較例1)
照射条件を下記にした以外は、実施例1と同様にして、口腔粘膜炎の面積の割合(%)を測定し、その平均値を図4に示す。
<照射条件>
・印加電圧:なし(即ち、窒素ガスのみを照射)。
・プラズマ生成ガスの流量:3L/min.。
・照射時間:15秒間。
・照射距離:5mm。
・プラズマ生成ガス:窒素100体積%。
・積算一重項酸素濃度:0μmol/L回。
(比較例2)
照射条件を下記にした以外は、実施例1と同様にして、口腔粘膜炎の面積の割合(%)を測定し、その平均値を図4に示す。
<照射条件>
・印加電圧:7kHz、13.5kVppの交流電流。
・プラズマ生成ガスの流量:3L/min.。
・照射時間:15秒間。
・照射距離:5mm。
・プラズマ生成ガス:窒素100体積%。
・積算一重項酸素濃度:6μmol/L回。
図4に示すように、本発明を適用した実施例1~2は、7日目(Day7)における口腔粘膜炎面積が、初期面積の34~43%となっていた。
窒素ガスのみを照射した比較例1は、7日目における口腔粘膜炎面積が59%、積算一重項酸素濃度が6μmolである比較例2は、7日目における口腔粘膜炎面積が55%であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、糜爛の快癒を早められることを確認できた。
4 内部電極
5 外部電極
12 プラズマ発生部
100 医療用プラズマ発生装置

Claims (10)

  1. 生体組織に予防用照射ガスを照射する照射工程を1回以上有する、糜爛又は潰瘍の予防方法であって、
    前記予防用照射ガスは、プラズマにより生じる一重項酸素を含み、
    1回の前記照射工程は、下記積算一重項酸素濃度が10μmol/L以上となるように、前記予防用照射ガスを照射する、糜爛又は潰瘍の予防方法(但し、ヒトに対する行為を除く)。
    <積算一重項酸素濃度>
    TPC(2,2,5,5-テトラメチル-3-ピロリン-3-カルボキサミド)0.1mol/L溶液0.8mLに対して、任意の時間、任意の距離で、予防用照射ガスを照射した後、予防用照射ガスが照射された前記溶液について、電子スピン共鳴(ESR)法により一重項酸素濃度を測定し、これを積算一重項酸素濃度(μmol/L)とする。
  2. 口腔粘膜炎の予防方法である、請求項1に記載の糜爛又は潰瘍の予防方法。
  3. 前記口腔粘膜炎は、がん治療により誘発される疾患である、請求項2に記載の糜爛又は潰瘍の予防方法。
  4. 前記照射工程を、1~3回/日かつ3日間以上行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の糜爛又は潰瘍の予防方法。
  5. 1回の前記照射工程は、1~120秒間である、請求項1~4のいずれか一項に記載の糜爛又は潰瘍の予防方法。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の糜爛又は潰瘍の予防方法を施す工程と、糜爛又は潰瘍の発症を誘発し得る治療工程とを含む、疾患の治療方法であって、
    前記治療工程の開始前に、少なくとも1回以上の前記照射工程を行う、疾患の治療方法(但し、ヒトに対する行為を除く)。
  7. 前記治療工程の開始後に、少なくとも1回以上の前記照射工程を行う、請求項6に記載の疾患の治療方法。
  8. 前記治療工程は、がん治療である、請求項6又は7に記載の疾患の治療方法。
  9. 一重項酸素を含み、下記積算一重項酸素濃度が10μmol/L以上である、糜爛又は潰瘍の予防用照射ガス。
    <積算一重項酸素濃度>
    TPC(2,2,5,5-テトラメチル-3-ピロリン-3-カルボキサミド)0.1mol/L溶液0.8mLに対して、任意の時間、任意の距離で、予防用照射ガスを照射した後、予防用照射ガスが照射された前記溶液について、電子スピン共鳴(ESR)法により一重項酸素濃度を測定し、これを積算一重項酸素濃度(μmol/L)とする。
  10. 請求項9に記載の糜爛又は潰瘍の予防用照射ガスの生成方法であって、
    電極を有するプラズマ発生部にプラズマ生成ガスを1~10L/minで供給し、前記電極に電圧を印加してプラズマを発生し、発生したプラズマにより前記一重項酸素を発生する、糜爛又は潰瘍の予防用照射ガスの生成方法。
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