JP2023133161A - 導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像 - Google Patents

導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像 Download PDF

Info

Publication number
JP2023133161A
JP2023133161A JP2023023924A JP2023023924A JP2023133161A JP 2023133161 A JP2023133161 A JP 2023133161A JP 2023023924 A JP2023023924 A JP 2023023924A JP 2023023924 A JP2023023924 A JP 2023023924A JP 2023133161 A JP2023133161 A JP 2023133161A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
conductive
conductive composition
polypeptide
resin
metal particles
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2023023924A
Other languages
English (en)
Inventor
真範 関
Masanori Seki
大輝 渡部
Hiroteru Watabe
遊磨 小林
Yuma Kobayashi
真野 八島
Maya Yajima
大平 向出
Taihei Mukaide
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Canon Virginia Inc
Original Assignee
Canon Inc
Canon Virginia Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc, Canon Virginia Inc filed Critical Canon Inc
Priority to PCT/JP2023/008706 priority Critical patent/WO2023171693A1/ja
Publication of JP2023133161A publication Critical patent/JP2023133161A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)
  • Conductive Materials (AREA)

Abstract

【課題】金属粒子の分散安定性に優れるとともに、簡易な後処理を行うだけでも導電性に優れた導電性画像を容易に記録することが可能な導電性組成物、及びその製造方法を提供する。【解決手段】金属粒子及びポリペプチドを含有し、金属粒子の表面の少なくとも一部が、ポリペプチドで被覆されている導電性組成物である。ポリペプチドは、酸性アミノ酸及び中性アミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸ユニットを有するとともに、ポリペプチドに占める、アミノ酸ユニットの割合(質量%)が、95質量%以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像に関する。
導電性を示すパターンや回路などの膜状の導電性画像を記録及び形成する材料として、金属粒子を含有する液状の導電性組成物が用いられている。このような導電性組成物中で金属粒子を安定して分散させて分散安定性を保つには、金属粒子に吸着しうる処理剤を用いる必要がある。但し、このような処理剤は導電性に寄与しない成分であることから、高温での焼成処理や溶剤を用いた洗浄処理などを施すことで、記録された導電性画像から除去する必要があった。しかし、導電性画像を記録する基材の多様化に伴い、高温での焼成処理を必要としない導電性組成物が求められている。
例えば、4つのアミノ酸を有するペプチドを処理剤として用いた無機ナノ粒子用の分散剤が提案されている(特許文献1)。また、ゼラチン又はコラーゲンペプチドで被覆された銅ナノ粒子を含有する、インクジェット方式の液体吐出ヘッドから吐出可能な導電性インクが提案されている(特許文献2)。
特開2016-093796号公報 特開2016-186033号公報
しかし、特許文献1及び2で提案された導電性インクなどでは、基材への付与後に高温で焼成せず、乾燥させるといった簡易な後処理を行うだけでは導電性に寄与しない成分を十分に除去することができず、導電性に優れた画像を記録することは困難であった。さらに、これらの導電性インクなどは分散安定性も不十分であった。
したがって、本発明の目的は、金属粒子の分散安定性に優れるとともに、簡易な後処理を行うだけでも導電性に優れた導電性画像を容易に記録することが可能な導電性組成物を提供することにある。また、本発明の別の目的は、この導電性組成物の製造方法、この導電性組成物を用いた導電性画像の記録方法、及び導電性画像を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、金属粒子及びポリペプチドを含有し、前記ポリペプチドが、酸性アミノ酸及び中性アミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸ユニットを有するとともに、前記ポリペプチドに占める、前記アミノ酸ユニットの割合(質量%)が、95質量%以上であり、前記金属粒子の表面の少なくとも一部が、前記ポリペプチドで被覆されていることを特徴とする導電性組成物が提供される。
本発明によれば、金属粒子の分散安定性に優れるとともに、簡易な後処理を行うだけでも導電性に優れた導電性画像を容易に記録することが可能な導電性組成物を提供することができる。また、本発明によれば、この導電性組成物の製造方法、この導電性組成物を用いた導電性画像の記録方法、及び導電性画像を提供することができる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明において、化合物が塩である場合は、組成物中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。本発明においては、導電性組成物のことを、単に「組成物」又は「インク」と記載することがある。また、本発明における「画像」とは、文字、写真、線画、配線、パターンなどを含むものであり、基材に所望の「画像」を表現することを「記録」「形成」と記載する。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
種々検討した結果、本発明者らは、金属粒子の表面の少なくとも一部が、特定のポリペプチドで被覆されていること有効であることを見出した。このポリペプチドは、酸性アミノ酸及び中性アミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸ユニットを有するとともに、ポリペプチドに占める、前記アミノ酸ユニットの割合(質量%)が、95質量%以上である。つまり、金属粒子への吸着及び/又は化学結合部位として機能する窒素原子と、液媒体中に金属粒子を分散させるために機能する親水性基と、を有する特定のポリペプチドを金属粒子の処理剤として用いることが有効であることを見出した。すなわち、金属粒子と、親水性基(カルボン酸基、アミノ基)を有する特定のポリペプチドとを併用する。これにより、乾燥などの簡易な後処理を行うだけで導電性に優れた導電性画像を記録しうる、金属粒子の分散安定性に優れた導電性組成物が得られることを見出し、本発明に至った。
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、金属粒子及びポリペプチドを含有する。このポリペプチドは、酸性アミノ酸及び中性アミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸ユニットを有するとともに、ポリペプチドに占めるアミノ酸ユニットの割合(質量%)が、95質量%以上である。そして、金属粒子の表面の少なくとも一部は、ポリペプチドで被覆されている。導電性組成物は、25℃において液体(液状)であることが好ましい。以下、導電性組成物を構成する各成分について、それぞれ説明する。
(金属粒子)
導電性組成物は金属粒子を含有する。金属粒子は、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、及び金からなる群より選択される少なくとも1種の金属で形成されていることが好ましい。なかでも、白金、銅、銀、金が好ましく、銀、金がさらに好ましく、金が特に好ましい。導電性組成物中の金属粒子の含有量(質量%)は、組成物全質量を基準として、1.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
金属粒子は、分散した状態で導電性組成物中に存在する。導電性組成物中の金属粒子の体積基準の累積50%粒子径は、金属粒子の分散安定性の観点から、1nm以上100nm以下であることが好ましく、5nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。以下、「体積基準の累積50%粒子径」のことを、単に「平均粒子径」とも記す。金属粒子の平均粒子径が5nm未満であると、単位質量当たりの金属粒子の数が多くなるため、導電性組成物中で複数の金属粒子が衝突して凝集しやすくなり、金属粒子の分散安定性が低下しやすくなる場合がある。一方、金属粒子の平均粒子径が100nm超であると、導電性組成物中で金属粒子が沈降しやすくなり、金属粒子の分散安定性が低下しやすくなる場合がある。金属粒子の体積基準の累積50%粒子径(平均粒子径)は、動的光散乱法により測定することができる。金属粒子が金又は銀で形成されている場合には、紫外-可視吸収スペクトルを測定することで、金属粒子の粒径を簡便に判断することができる。
金属粒子の形状は、略球形であることが好ましい。本発明においては、金属粒子の短径b/長径aの比が0.9以上である場合、金属粒子の形状は略球形である、と判断する。金属粒子が略球形であることを表す指標として、金属粒子の短径b/長径aの比を用いる。金属粒子の短径b/長径aの比を求めるには、まず、金属粒子の長径aと短径bを測定する。具体的には、導電性組成物(分散液やインク)を水により適宜希釈した後、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、金属粒子を撮影する。そして、金属粒子を形成する最小単位の粒子の重心を通る最長径を長径a、及び最短径を短径bとする。このようにして測定した長径a及び短径bから、短径b/長径aの比を算出する。そして、30個の金属粒子についての短径b/長径aの比の平均値を、その金属粒子の短径b/長径aの比とする。金属粒子の短径b/長径aの比は、0.9以上であることが好ましい。短径b/長径aの比は、理論上、1.0以下である。
(ポリペプチド)
導電性組成物は、酸性アミノ酸及び中性アミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸ユニットを有するとともに、このアミノ酸ユニットの割合(質量%)が95質量%以上であるポリペプチドを含有する。以下、前記のポリペプチドを、単に「ポリペプチド」とも記す。上記の割合の上限は100質量%である。ポリペプチドは水溶性であることが好ましい。本明細書において、化合物が「水溶性」であることとは、25℃で、液体の組成物中において当該化合物が粒子径を測定しうる粒子を形成しない状態で存在することをいう。
ポリペプチドの構成ユニットとなるアミノ酸には20種類ある。アミノ酸は、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、及び中性アミノ酸の3種類に分類される。酸性アミノ酸には、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)の2種類がある。塩基性アミノ酸には、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、及びリジン(K)の3種類がある。中性アミノ酸には、アラニン(A)、アスパラギン(N)、グリシン(G)、システイン(C)、グルタミン(Q)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、及びバリン(V)がある。
ポリペプチドに占める、酸性アミノ酸及び中性アミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸ユニットの割合が95質量%以上であるポリペプチドとしては、フィブロイン、ポリグルタミン酸、及びポリアスパラギン酸などを挙げることができる。フィブロインは、アラニン、グリシン、セリン、及びチロシンなどのアミノ酸ユニットで構成され、酸性アミノ酸及び中性アミノ酸の割合は、約98質量%である。ポリグルタミン酸はグルタミン酸ユニットで構成され、酸性アミノ酸及び中性アミノ酸の割合は100質量%である。また、ポリアスパラギン酸はアスパラギン酸ユニットで構成され、酸性アミノ酸及び中性アミノ酸の割合は100質量%である。ポリペプチドは、Fmoc基(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基)やBoc基(tert-ブトキシカルボニル基)などの保護基でアミノ基を保護したアミノ酸を用いるペプチド固相合成法によって合成することができる。
ゼラチンやコラーゲンペプチドなどの、酸性アミノ酸及び中性アミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸ユニットの割合(質量%)が少ないポリペプチドは、塩基性アミノ酸ユニットを多く有する。上記の割合が95質量%未満のポリペプチドを用いると、塩基性アミノ酸のアミノ基による金属粒子の還元が、ペプチド部位と金属粒子との反応よりも優先してしまう。このため、得られる導電性組成物の分散安定性が不十分となる。酸性アミノ酸及び中性アミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸ユニットの割合(質量%)が少ないポリペプチドとしては、例えば、ゼラチン(91質量%)などを挙げることができる。
ポリペプチド中の親水性基(カルボン酸基、アミノ基)は、塩を形成していてもよい。カルボン酸基と塩を形成するカチオンとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンなどを挙げることができる。アルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのイオンを挙げることができる。有機アンモニウムイオンとしては、アルキルアミン、アルカノールアミンなどのイオンを挙げることができる。アミノ基と塩を形成するアニオンとしては、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオンなどを挙げることができる。ハロゲン化物イオンとしては、ヨウ素、臭素、塩素などのイオンを挙げることができる。
導電性組成物が水性媒体をさらに含有する場合には、水性媒体のpHに応じて、親水性基を与えるアミノ酸の種類を選択してもよい。例えば、水性媒体の液性が酸性(pH<7)である場合には、3級アルキルアミノ基や複素芳香族基が塩を形成しやすくなる。一方、水性媒体の液性がアルカリ性(pH>7)である場合には、ヒドロキシ基、カルボン酸基が塩を形成しやすくなる。
ポリペプチドは、ペプチド結合部分及び親水性基(カルボン酸基、アミノ基)を有する。ペプチド結合部分は、金属粒子と相互作用する部分である。親水性基は、金属粒子を分散させるための分散基として機能する。このようなポリペプチドを用いることで、水性媒体などの液媒体中に金属粒子を安定して分散させることができる。さらに、乾燥などの簡易な後処理を行うだけでも導電性に優れた導電性画像を容易に形成しうる導電性組成物とすることができる。
金属粒子の表面の少なくとも一部は、ポリペプチドで被覆されている。ポリペプチドが金属粒子と相互作用することで、金属粒子の表面にポリペプチドが付着して固定化されていると考えられる。
導電性組成物の分散安定性を向上させるには、金属粒子とポリペプチドとの相互作用を強くすることが重要である。金属粒子とポリペプチドとの相互作用には、物理吸着及び化学吸着がある。物理吸着の場合、ファンデルワールス相互作用とイオン吸着の混合であり、平衡状態にあると考えられる。一方、化学吸着の場合、金属粒子に含まれる金属原子と、ポリペプチドに含まれる窒素原子とが化学結合(共有結合)を形成していると考えられる。このため、吸着量は、物理吸着に比して化学吸着のほうが強い。したがって、下記一般式(1)及び(2)に示すように、金属粒子に含まれる金属原子(M)と、ポリペプチドに含まれる窒素原子(N)とが化学結合していることが好ましい。下記一般式(1)及び(2)中、Mは金属粒子に含まれる金属原子を表す。
Figure 2023133161000001
金属原子(M)と窒素原子(N)との結合(以下、「M-N結合」とも記す)は、赤外吸収スペクトルを測定することによって同定することができる。M-N結合が形成されていれば、M-N伸縮振動に由来する赤外吸収スペクトルの吸収ピークが450~600cm-1の波長域に出現する。M-N結合を同定する方法については、例えば、東北工業試験所報告,第4号,昭和49年10月,p.15-19に記載されている。
ポリペプチドとしては、市販品を用いることができる。市販されていない場合には、合成したポリペプチドを用いてもよい。ポリペプチドは、例えば、Fmoc基やBoc基をアミノ基の保護基として用いる従来公知のペプチド固相合成法によって合成することができる。ポリペプチドの一例であるフィブロインは、例えば、Nature Protocols,2011年,第6巻,p.1612-1631などに記載された公知の方法にしたがって精製することができる。
導電性組成物中のポリペプチドの含有量(質量%)は、組成物全質量を基準として、0.00001質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
金属粒子に含まれる金属原子とポリペプチドに含まれる窒素原子とが化学結合するとともに、金属粒子がポリペプチドによって適切に被覆されることが好ましい。具体的には、金属粒子の表面がポリペプチドによって一様に覆われていることが好ましい。このためには、導電性組成物中、ポリペプチドの含有量(質量%)は、金属粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.001倍以上0.100倍以下であることが好ましく、0.005倍以上0.075倍以下であることがさらに好ましい。上記の質量比率が0.005倍未満であると、ポリペプチドが少なすぎてしまい、金属粒子の表面を十分に被覆することができず、金属粒子の表面にポリペプチドが付着していない領域が存在しやすくなる。このような場合、導電性組成物中で複数の金属粒子が衝突した際に、金属粒子が合一したり、凝集したりして、金属粒子の粒子径が大きくなり、分散安定性が十分に得られない場合がある。一方、上記の質量比率が0.075倍超であると、導電性組成物によって記録した導電性画像中でポリペプチドが占める容積が大きくなり、導電性が十分に得られない場合がある。また、導電性組成物をインクジェット方式の液体吐出ヘッドから吐出する際に、吐出性がやや低下する場合がある。
金属粒子の粒子径が決まれば、金属粒子1個当たりの表面積を算出することができる。したがって、ポリペプチドの1分子当たりの占有面積を概算することができれば、1個の金属粒子の表面を被覆するための分子の個数を算出することができる。占有面積は、原子の直径を1.5Åとして断面積を算出し、ポリペプチドの原子の個数を掛けて概算値としてもよい。
また、金属粒子を被覆する飽和吸着量を概算し、それを目安の添加量としてもよい。具体的には、ポリペプチドの添加量に対して、吸着量をプロットする。得られたプロット(吸着等温線)がラングミュア型の吸着等温線に則った曲線である場合、添加量を増加しても吸着量が増加せず、飽和する領域が存在するため、この領域の吸着量を飽和吸着量とみなすことができる。
金属粒子の表面の少なくとも一部がポリペプチドで被覆されているか否かについては、金属粒子のゼータ電位より確認することができる。ポリペプチドによって被覆されていない金属粒子のゼータ(ζ)電位は、通常、0mV以上である。すなわち、ゼータ電位はゼロか、プラスで絶対値の小さい値(0~+3mV程度の値)を示す。これに対し、ポリペプチドによってその粒子表面の少なくとも一部が被覆された金属粒子のゼータ電位は0未満である。すなわち、ゼータ電位はマイナスの値(具体的には、-1mV以下の値)を示す。これは、ポリペプチドにおける親水性基がイオン解離を生じて、アニオンとなるためである。ゼータ電位は、ゼータ電位測定装置により測定することができる。ゼータ電位の測定にあたっては、金属粒子を被覆していないポリペプチドを除外するため、導電性組成物について遠心分離処理を行って上澄みを除去してウェットケーキを得た後、水で希釈して調製した試料を用いることが好ましい。
分散性の観点から、ポリペプチドによってその粒子表面の少なくとも一部が被覆された金属粒子のゼータ電位は、-30mV以下(負の値、かつ、絶対値が30mV以上)であることが好ましい。ゼータ電位が-30mV超(負の値、かつ、絶対値で30mV未満)であると、ポリペプチドによる金属粒子の被覆が少ないため、金属粒子が凝集しやすく、分散安定性が十分に得られない場合がある。また、ゼータ電位のチャートは、単一のピークトップを有するとともに、ピークの形状がシャープであり、ピークの半値幅も小さい傾向にある。
また、金属粒子の表面の少なくとも一部がポリペプチドで被覆されているか否かについては、金属粒子と接触させる前後におけるポリペプチドの量を追跡することでも確認することができる。例えば、金属粒子とポリペプチドを接触させた後、遠心分離して固液分離し、得られる上澄み液中のポリペプチドを定量分析することで、金属粒子の表面の少なくとも一部がポリペプチドで被覆されているか否かを検証することができる。上澄み液中のポリペプチドは、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などによって定量分析することができる。
(液媒体)
導電性組成物は、さらに、液媒体を含有してもよい。液媒体としては、非水性媒体及び水性媒体のいずれも用いることができる。非水性媒体としては、ヘプタン、石油エーテルなどの有機溶剤で構成される液媒体を挙げることができる。非水性媒体は水を含有しない。水性媒体としては、水を含み、さらに各種の有機溶剤が含まれていてもよい。導電性組成物は、さらに、水性媒体を含有することが好ましい。
水性媒体は、水、又は水を主成分としてプロトン性有機溶剤や非プロトン性有機溶剤を併用した混合媒体である。有機溶剤としては、任意の割合で水と混和するもの(水混和性有機溶剤)、又は任意の割合で水に溶解するもの(水溶性有機溶剤)を用いることが好ましい。なかでも、水を50質量%以上含有する均一な混合媒体を水性媒体として用いることが好ましい。水としては、脱イオン水(イオン交換水)や超純水を用いることが好ましい。
プロトン性有機溶剤は、酸素原子や窒素原子に結合した水素原子(酸性水素原子)を有する有機溶剤である。非プロトン性有機溶剤は、酸性水素原子を有しない有機溶剤である。有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、カルボン酸アミド類、ケトン類、ケトアルコール類、環状エーテル類、含窒素溶剤類、及び含硫黄溶剤類などを挙げることができる。
水性媒体としては、水、水/アルコールの混合溶媒、水/(ポリ)アルキレングリコールの混合溶媒、及び水/含窒素溶剤類の混合溶媒などを挙げることができる。導電性組成物中の水の含有量(質量%)は、導電性組成物全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましい。
導電性組成物中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、導電性組成物全質量を基準として、5.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上50.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(樹脂)
導電性組成物は、さらに、樹脂を含有してもよい。この樹脂は、ポリペプチドとは異なるものである。導電性組成物に樹脂を添加することによって、導電性組成物の粘度や表面張力などの物性を容易に調整することができる。また、導電性組成物に樹脂を添加することによって、導電性組成物により記録される導電性画像の硬度、柔軟性、及び基材への密着性などの性能を調整することもできる。導電性組成物に含有させる樹脂の種類は、導電性組成物を付与する基材を形成する材料に対応させて選択することが好ましい。例えば、導電性組成物に添加する樹脂及び基材を形成する樹脂材料について、いわゆる「SP値」が互いに近いものを選択すると、基材に対する導電性画像の密着性の向上が期待される。樹脂の好適な組み合わせについては後述する。
導電性組成物中の樹脂の含有量(質量%)は、導電性組成物全質量を基準として、0.01質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上20.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが特に好ましい。導電性組成物中の樹脂の含有量が少なすぎると、樹脂を添加することによる導電性組成物の物性調整の程度や、導電性画像の性能調整の程度が低くなる場合がある。一方、導電性組成物中の樹脂の含有量が多すぎると、導電性画像の導電性が十分に得られない場合がある。
樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ、ポリビニルアルコール、及び多糖類などを挙げることができる。なかでも、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、及びポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂がさらに好ましい。樹脂は、これらのうち複数種の樹脂で形成される樹脂(共重合体、複合樹脂など)であってもよい。
樹脂は、イオン性基(アニオン性基、カチオン性基)を有するものであっても、イオン性基を有しないものであってもよい。ポリペプチドによってその粒子表面の少なくとも一部が被覆された金属粒子の持つマイナス電荷の斥力に影響を及ぼしにくく、導電性組成物中で安定に金属粒子と共存することができるため、アニオン性基を有する樹脂やイオン性基を有しない樹脂が好ましい。水性の液媒体を含有する導電性組成物とする場合は、アニオン性基を有する樹脂やイオン性基を有しない樹脂を特に好適に用いることができる。また、カチオン性基を有する樹脂を用いる場合は、金属粒子との斥力を考慮して導電性組成物中の含有量を決定することが好ましい。樹脂の重量平均分子量は、2,000以上100,000以下であることが好ましい。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値である。
樹脂は、液媒体に溶解しうる溶解性樹脂であってもよく、液媒体中に分散する樹脂粒子であってもよい。なかでも、樹脂粒子であることがさらに好ましい。本明細書において「樹脂が溶解性である」とは、その樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を形成しない状態で液媒体中に存在することを意味する。樹脂が溶解性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。ここでは、水性の液媒体を含有する導電性組成物、及びアニオン性基を有する樹脂を例に挙げて説明するが、液媒体が非水性である場合やカチオン性基を有する樹脂の場合も対応する成分に置き換えること以外は同様に判断することができる。
まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は溶解性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、とすることができる。また、粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
(その他の添加剤)
導電性組成物は、必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類;尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体;などの、常温(25℃)で固体の有機化合物をさらに含有してもよい。また、導電性組成物は、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤をさらに含有してもよい。
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、及びノニオン性などの界面活性剤を用いることができる。導電性組成物中の界面活性剤の含有量(質量%)は、導電性組成物全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、及びアセチレングリコール系化合物などのノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
<導電性組成物の製造方法>
次に、上述の導電性組成物を製造する方法について説明する。導電性組成物を製造する方法としては、以下に示す2つの製造方法(第1の製造方法及び第2の製造方法)を挙げることができる。第1の製造方法は、水性媒体中で金属塩を還元して金属粒子を形成する第1工程と、形成した金属粒子と、ポリペプチドとを接触させる第2工程と、を有する。第2の製造方法は、金属塩とポリペプチドを水性媒体中で40℃以上150℃以下に加熱して、金属塩に含まれる金属原子とポリペプチドに含まれる窒素原子とが化学結合した前駆体を形成する第1工程と、形成された前駆体を還元する第2工程と、を有する。
(第1の製造方法)
[第1工程]
第1工程では、水性媒体中で金属塩を還元して金属粒子を形成する。反応温度は金属塩の種類や液媒体に応じて設定することができ、例えば、0℃以上150℃以下とすることが好ましい。
[第2工程]
第2工程では、第1工程で形成した金属粒子と、ポリペプチドとを接触させる。具体的には、金属粒子と、ポリペプチドとを、水性媒体中で混合すればよい。これにより、目的とする導電性組成物を得ることができる。第2工程を実施する温度は0℃以上50℃以下とすることが好ましく、室温付近(20℃以上30℃以下)でもよい。
(第2の製造方法)
[第1工程]
第1工程では、水性媒体中で金属塩及びポリペプチドを40℃以上150℃以下に加熱して、これらを反応させる。具体的には、金属塩の水溶液にポリペプチドを添加した後、撹拌下で、40℃以上150℃以下の範囲に加熱する。加熱温度は、液媒体の種類に応じて決定することができる。水のみで構成される液媒体を用いる場合、加熱温度は40℃以上とすることが好ましく、50℃以上とすることがさらに好ましい。また、還流温度を考慮して、水の沸点である100℃以下とすることが好ましい。一方、水及び有機溶剤(好適には水よりも高沸点であるもの)の混合媒体である液媒体を用いる場合、水及び有機溶剤の共沸を考慮して、加熱温度は40℃以上150℃以下とすることが好ましい。これにより、金属塩に含まれる金属原子とポリペプチドに含まれる窒素原子とが化学結合した前駆体を形成することができる。
前駆体が形成されたか否かについては、金属原子(M)と窒素原子(N)との結合の有無で確認することができる。金属原子(M)と窒素原子(N)との結合(以下、「M-N結合」とも記す)は、赤外吸収スペクトルを測定することによって同定することができる。M-N結合が新たに形成されれば、M-N伸縮振動に由来する赤外吸収スペクトルの吸収ピークが450~600cm-1の波長域に出現する。この吸収ピークの有無により、前駆体が形成されたか否か判断することができる。
[第2工程]
第2工程では、第1工程で得た前駆体を還元する。これにより、金属粒子に含まれる金属原子とポリペプチドに含まれる窒素原子とが化学結合している状態で、金属粒子がポリペプチドによって被覆された、目的とする金属粒子を含有する導電性組成物を得ることができる。反応温度は金属塩の種類や液媒体に応じて設定することができ、例えば、0℃以上150℃以下とすることが好ましい。
[製造方法に用いる成分]
次いで、上述の第1の製造方法及び第2の製造方法に用いる各種の成分について説明する。
(水性媒体)
水性媒体としては、導電性組成物に含有させうる前述の水性媒体を用いることができる。すなわち、水のみ、又は水を主成分としてプロトン性有機溶剤や非プロトン性有機溶剤を併用した混合媒体を用いることができる。有機溶剤としては、任意の割合で水と混和するもの(水混和性有機溶剤)、又は任意の割合で水に溶解するもの(水溶性有機溶剤)を用いることが好ましい。なかでも、水を50質量%以上含有する均一な混合媒体を水性媒体として用いることが好ましい。水としては、脱イオン水(イオン交換水)や超純水を用いることが好ましい。
(金属塩)
金属塩としては、金属イオンと無機アニオン種で構成される金属塩、金属イオンと有機アニオン種で構成される金属塩、及び金属イオンと無機有機アニオン種で構成される金属塩を挙げることができる。金属イオンとしては、金属粒子を形成しうる、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、及び金などの金属のイオンを用いることができる。無機アニオン種としては、酸化物、ハロゲン、炭酸、硝酸などのアニオンを挙げることができる。有機アニオン種としては、ギ酸、酢酸などのカルボン酸のアニオンを挙げることができる。
金属塩の具体例としては、塩化ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)などのニッケル化合物;塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、酸化パラジウム(II)などのパラジウム化合物;塩化白金(II)、酸化白金(IV)などの白金化合物;塩化銅(I)、塩化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)などの銅化合物;塩化銀(I)、硝酸銀、酸化銀、酢酸銀などの銀化合物;酸化金(III)、塩化金(I)、八塩化四金、塩化金(III)、臭化金(III)、フッ化金(III)、フッ化金(V)、水酸化金(I)、水酸化金(III)などの金化合物;などを挙げることができる。
近年、電子機器などに用いられている貴金属やレアメタルなどの材料は、このまま使い続けると数十年のうちに資源が枯渇する可能性が指摘されている。このような材料はクリティカルマテリアルと呼ばれており、資源を枯渇させないため、使用済みの貴金属製品や廃電子機器からこれらの資源を回収して再資源化する取り組みが各国で行われている。なかでも、白金、金、銀などの貴金属の再資源化は他の資源と比較して進んでおり、再生技術も確立されつつある。金の再生方法としては、回収した廃製品から他の金属を除去し、王水や有機溶媒で金を溶解・浸出した後、還元剤で金を再結晶化して純度を高め、さらに融解して有機物を除去した塊にする方法などがある。回収した貴金属を製品として再利用する場合には純度保証が必要となる。例えば、金の場合には99.99%の高い純度を保証する必要がある。
このような観点から、金属塩として、金属廃液から回収された回収金属塩を用いることも好ましい。例えば、金属粒子として金粒子を含有する導電性組成物を製造する場合、回収した金を利用した塩化金(III)酸を用いることができる。塩化金(III)酸は、上記の金の再生方法の途中で生成する金-王水溶液を乾燥することで調製することができる。
金属粒子として金粒子を含有する導電性組成物を製造する場合、出発原料の1つとして、再生した塩化金(III)酸を用いることができる。金は還元性が高いことから、再生した塩化金(III)酸に他の金属不純物が含まれていても、金粒子が優先的に形成される。このため、再生した塩化金(III)酸について、高い純度保証は不要である。塩化金(III)酸の純度は、90%以上であることが好ましく、95%以上あることがさらに好ましい。金の再生過程で、純度保証に関連する工程を省略して原材料コストを抑制することができる。
また、金属粒子として銀粒子を含有する導電性組成物を製造する場合、出発原料の1つとして使用しうる硝酸銀(I)について、高い純度保証は不要である。硝酸銀(I)の純度は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。銀の再生過程で、純度保証に関連する工程を省略して原材料コストを抑制することができる。
廃棄物からは、公知の方法にしたがって硝酸銀(I)を回収することができる。例えば、銀を含有する廃液に硝酸を加えて酸性とし、沈殿物を分離して得たろ液に重クロム酸塩を添加すれば、重クロム酸銀の沈殿が生成する。重クロム酸銀の沈殿物を熱希硝酸に溶解した後、NO型陰イオン交換樹脂で処理することで、硝酸銀(I)を回収することができる。
(還元剤)
金属塩を還元するには、還元剤を用いることが好ましい。還元剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、エチレングリコールなどの1級ヒドロキシ基を有するアルコール類;2-プロパノール、2-ブタノールなどの2級ヒドロキシ基を有するアルコール類;グリセリンなどの1級ヒドロキシ基及び2級ヒドロキシ基を有するアルコール類;チオール類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類;グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マルトースなどの糖類;クエン酸、タンニン酸、アスコルビン酸などの有機酸類及びその塩;水素化ホウ素類及びその塩;ヒドラジン、アルキルヒドラジン、硫酸ヒドラジンなどのヒドラジン類;などを挙げることができる。有機酸類や水素化ホウ素類の塩を形成するアニオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属のイオン、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属のイオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンなどを挙げることができる。
還元剤としては、有機酸類やその塩を用いることが好ましい。有機酸類やその塩は、金属塩を還元するとともに、形成される金属粒子の表面に付着して、金属粒子同士の凝集や合一が生じない程度の斥力を生じさせることができる。有機酸類やその塩としては、アスコルビン酸やその塩、クエン酸やその塩などが好ましい。なかでも、アスコルビン酸塩、クエン酸塩などがさらに好ましい。
また、還元剤として、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、デンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどの化合物を用いることができる。これらの化合物も、上記の有機酸類やその塩と同様に、金属塩を還元するとともに、形成される金属粒子の表面に付着して、金属粒子の凝集や合一が生じないようにするための補助的な斥力を生じさせることができる。
還元剤の使用量は、金属の種類、金属塩の濃度、形成しようとする金属粒子の大きさ(粒径)、還元剤を添加する際の温度や撹拌力などに応じて適宜設定すればよい。第1工程では、激しく撹拌しながら金属塩を還元することが好ましい。また、第1工程では、加熱条件下で金属塩を還元することが好ましく、液媒体を還流させながら金属塩を還元することがさらに好ましい。例えば、水のみで構成される液媒体を用いて還流する場合、加熱温度を40℃以上100℃以下に調整するため、反応容器を入れた浴(例えば、オイルバス)の温度を115℃以上200℃以下に設定することが好ましい。
還元剤によって還元されたのみで、処理剤で被覆されていない金属粒子は、還元剤の種類に応じたゼータ電位の値を示す。例えば、後述する実施例では、還元剤としてクエン酸を用いて金粒子を形成している。クエン酸が付着した金粒子のゼータ電位は、-40mV程度である。但し、クエン酸などの還元剤は金属粒子への付着力が弱いため、クエン酸などの還元剤を付着させるだけでは、金属粒子が継続して安定に分散した導電性組成物を得ることはできない。
<導電性画像の記録方法>
次に、導電性画像を記録する方法について説明する。本発明の導電性画像の記録方法は、上述の導電性組成物を基材に付与する工程を有する。導電性組成物を基材に付与することで、所望とする導電性画像を得ることができる。導電性組成物を基材に付与する方法としては、インクジェット法、フレキソ法、スピンコーティング法などを挙げることができる。なかでも、インクジェット法によって導電性組成物を基材に付与することが好ましい。インクジェット法は、導電性組成物をインクジェット方式の吐出ヘッドから吐出して記録媒体などの基材に付与する方法である。導電性組成物を吐出ヘッドから吐出する方式としては、導電性組成物に力学的エネルギーを付与する方式や、導電性組成物に熱エネルギーを付与する方式などがある。上述の導電性組成物を用いること以外、インクジェット法によって導電性組成物を基材に付与する方法は公知の方法とすればよい。
導電性組成物をインクジェット方式の吐出ヘッドから吐出して基材に付与し、導電性画像を記録(形成)する場合、その表面張力や粘度を適切に制御した導電性組成物を用いることが好ましい。この場合、具体的には、導電性組成物中の金属粒子の含有量(質量%)は、組成物全質量を基準として、5.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましい。導電性組成物中の金属粒子の含有量が5.0質量%未満であると、膜状の導電性画像を記録するためには、複数回の導電性組成物の付与が必要になる場合がある。一方、導電性組成物中の金属粒子の含有量が30.0質量%超であると、導電性組成物の粘度が高くなりやすい。このため、インクジェット方式の吐出ヘッドから導電性組成物を吐出させる際に吐出口が詰まりやすくなる場合がある。
25℃における導電性組成物の表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上60mN/m以下であることがさらに好ましく、30mN/m以上50mN/m以下であることが特に好ましい。25℃における導電性組成物の粘度は、1.0mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上5mPa・s以下であることがさらに好ましい。25℃における導電性組成物のpHは、3.0以上9.0以下であることが好ましく、5.0以上9.0以下であることが好ましい。
導電性画像の記録方法は、さらに、基材に付与した導電性組成物を乾燥させる工程を有してもよい。上述の導電性組成物を用いれば、例えば100℃以上の高温で乾燥させなくても、常温(25℃)などの低温で乾燥させるだけで、優れた導電性を有する導電性画像を記録することができる。基材に付与した導電性組成物は、送風や加熱などによって乾燥させてもよいが、これらの手法を利用しないで乾燥、すなわち、自然乾燥させればよい。基材に付与した導電性組成物を乾燥させる温度は、20℃以上120℃以下とすることが好ましく、20℃以上50℃以下とすることがさらに好ましい。乾燥温度が20℃未満であると、乾燥に要する時間がより長くなる場合がある。乾燥時間を短くすることで、記録される導電性画像の導電性が高くなりやすい。基材の耐熱温度が高い場合には、耐熱温度まで乾燥温度を上げることも可能である。但し、乾燥温度を高めすぎると、基材が変形する場合がある。本発明の記録方法では、導電性組成物を基材に付与した後、加熱や焼結する工程、活性エネルギー線などの照射により硬化する工程は実施しなくてもよい。
<導電性画像>
本発明の導電性画像は、基材と、基材に形成された導電層と、を有する導電性画像である。導電層は、金属粒子、及び上述のポリペプチドを含有し、金属粒子はポリペプチドによってその粒子表面の少なくとも一部が被覆されている。好適には、本発明の導電性画像は、基材に記録される導電性画像であり、上述の導電性組成物によって形成された画像である。
(基材)
基材は、付与された導電性組成物を乾燥などさせて導電性画像を記録しうるものであればよい。導電性組成物は低温での乾燥でも導電性を発現するため、耐熱温度の低い基材を用いることもできる。基材としては、ガラス、紙、樹脂材料、セラミックス、及びシリコンなどを用いることが好ましい。樹脂材料としては、生体適合性材料及び合成樹脂などを挙げることができる。樹脂材料は、板状又はシート状であることが好ましい。
樹脂材料としては、生体適合性材料を用いることができる。生体適合性材料とは、生体に有害な影響を及ぼさない材料を指し、化学反応・生体防御反応に不活性、生体での分解・劣化・溶出が生じにくい、他の成分を吸着しにくい、柔軟性・強度を兼ね備える、といった特性を備える材料である。生体適合性材料としては、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(α-ヒドロキシエステル)、ポリ(β-ヒドロキシエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリ無水物、ポリケトン、ポリ(オルトエステル)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリアセタール、ポリ(イミノカーボネート)、ポリフォスファゼンなどの生分解性プラスチック類;ポリペプチド、ゼラチン、コラーゲン、フィブロインなどのタンパク質;セルロース、キトサンなどの多糖類;などが好ましい。なかでも、ゼラチン、コラーゲン、フィブロイン、セルロース、及びキトサン、からなる群より選択される少なくとも1種で形成された生体適合性材料が好ましい。
樹脂材料としては、合成樹脂を用いることができる。合成樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エポキシ、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)などの樹脂が好ましい。なかでも、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、及びポリカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種で形成された合成樹脂材料が好ましい。これらの合成樹脂材料は、フラットパネルなどの基板に用いられる樹脂としても好適であり、板状又はシート状であることが特に好ましい。
上述の通り、導電性組成物に含有させる樹脂の種類は、導電性組成物を付与する基材を形成する材料に対応させて選択することが好ましい。例えば、導電性組成物に添加する樹脂及び基材を形成する樹脂材料について、いわゆる「SP値」が互いに近いものを選択すると、導電性画像の基材への密着性を高めうると考えられる。
基材を形成する樹脂と、導電性組成物に含有させる樹脂との好適な組み合わせを以下に列挙する。ポリエステル樹脂で形成される基材を用いる場合、導電性組成物に含有させる樹脂としては、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル、ポリ酢酸ビニル、及びポリアミドなどの樹脂が好ましい。ポリウレタン樹脂で形成される基材を用いる場合、導電性組成物に含有させる樹脂としては、ポリアミドなどの樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂で形成される基材を用いる場合、導電性組成物に含有させる樹脂としては、ポリウレタン、ポリオレフィン、アクリル、及びポリ酢酸ビニルなどの樹脂が好ましい。ポリ塩化ビニル樹脂で形成される基材を用いる場合、導電性組成物に含有させる樹脂としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、及びポリイミドなどの樹脂が好ましい。ポリアミド樹脂で形成される基材を用いる場合、導電性組成物に含有させる樹脂としては、ポリウレタン、アクリル、及びポリアミドなどの樹脂が好ましい。ポリイミド樹脂で形成される基材を用いる場合、導電性組成物に含有させる樹脂としては、ポリアミドなどの樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂で形成される基材を用いる場合、導電性組成物に含有させる樹脂としては、ポリウレタン、ポリオレフィン、アクリル、及びポリ酢酸ビニルなどの樹脂が好ましい。アクリル樹脂で形成される基材を用いる場合、導電性組成物に含有させる樹脂としては、アクリルなどの樹脂が好ましい。エポキシ樹脂で形成される基材を用いる場合、導電性組成物に含有させる樹脂としては、ポリアミドなどの樹脂が好ましい。また、樹脂材料以外にも、ガラスで形成される基材を用いる場合、導電性組成物に含有させる樹脂としては、ポリアミドなどの樹脂が好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<導電性組成物の分析方法>
赤外吸収(IR)スペクトルは、フーリエ変換赤外分光分析機(商品名「Spectrum One-B」、パーキンエルマー製)を使用して測定した。導電性組成物中の金属粒子の平均粒子径(体積基準の累積50%粒子径、D50)は、小角X線散乱装置(商品名「Nano-Viewer」、リガク製)により測定した。この際の測定条件は、波長(λ):0.154nm、入射角:1.7°とした。導電性組成物の極大吸収波長は、紫外可視近赤外分光光度計(商品名「UV-3600」、島津製作所製)を使用して測定した。導電性組成物中の金属粒子のゼータ電位は、ゼータ電位計(商品名「ゼータサイザーナノ」、マルバーン製)により測定した。この際、製造した導電性組成物について、遠心分離処理を行って上澄みを除去することでウェットケーキを得た後、測定に適した濃度となるように超純水で希釈して調製した試料を測定対象とした。なお、塩化金(III)・4水和物及び硝酸銀(I)(いずれもキシダ化学製)を、クエン酸3ナトリウム・2水和物により還元して生成した金粒子及び銀粒子のゼータ電位は、それぞれ1mV及び0mVであった。
<回収金属塩の調製>
基板から回収した金を原料として、導電性組成物を製造した。金メッキのついた基材を切り取り、化学処理しやすくするために5mm×5mm程度の大きさに破砕して破砕片を得た。得られた破砕片を10%希硝酸に2時間浸漬し、銅とニッケルを溶解して金メッキ箔を基材から浮かせた後、ろ紙を敷いたろ過機に希硝酸を通じて、金メッキ箔を分離した。希硝酸は、銅とニッケルが溶解した青緑色を呈していた。ろ紙上の金メッキ箔に希硝酸を加え、金メッキ箔表面に残った銅やニッケルを洗い流した。得られた金メッキ箔をろ紙ごと別の容器に移し、35%塩酸及び60%硝酸を3:1(体積比)で混合した王水溶液を少しずつ滴下して金を溶解させた。金が溶解した時点でろ紙を取り出し、得られた金-王水溶液をろ過して基材の破片を除去した。耐酸性のロータリーエバポレーターを使用してろ液を加温しながら減圧蒸留し、硝酸、塩酸、水の順に除去して、塩化金(III)酸・4水和物を得た。
<処理剤の準備>
処理剤として、以下に示すものを用いた。ポリペプチドに占める中性・酸性のアミノ酸の割合を「特定のアミノ酸の割合」として示す。
・「フィブロイン」:5%フィブロイン水溶液、シグマ-アルドリッチ製、特定のアミノ酸の割合98%
・「ポリグルタミン酸ナトリウム」:ペプチド研究所製、特定のアミノ酸の割合100%
・「ポリアスパラギン酸ナトリウム」:シグマ-アルドリッチ製、特定のアミノ酸の割合100%
・「ゼラチン」:ナカライテスク製、特定のアミノ酸の割合91%
・「ポリリジン」:ペプチド研究所製、特定のアミノ酸の割合0%
・「Fmoc-KVCC」:Fmoc固相合成法で合成した、9-フルオレニルオキシカルボニルで保護したポリペプチド(リシン-バリン-システイン-システイン)、特定のアミノ酸の割合75%
<第1の製造方法による導電性組成物(分散液)の製造>
以下に示す方法により導電性組成物(分散液)を製造した。実施例D1~D18で製造した導電性組成物(分散液)中の金属粒子の形状は、いずれも「略球形」であった。以下、金属粒子に対するポリペプチドの質量比率を、「ポリペプチド/金属粒子」とも記す。
(実施例D1~D3、D7~D18、比較例D1)
表1に示す量の塩化金(III)酸・4水和物(キシダ化学製)、及び表1に示す量(液媒体として表記)の超純水を加熱還流し、表1に示す量のクエン酸3ナトリウム・2水和物を添加した。実施例D7~D9の塩化金(III)酸・4水和物としては、上述の「回収金属塩の調製」で得たものを用いた。内温(反応温度)を100℃に保ち、2時間撹拌した。25℃まで冷却した後、表1に示す種類及び量の処理剤を添加して15時間撹拌し、導電性組成物D1~D3及びD7~D19を得た。
(実施例D4)
硝酸銀(I)(キシダ化学製)106.7mg、及びクエン酸3ナトリウム・2水和物403.2mgを超純水1,000mLに溶解し、氷冷しながら30分間撹拌して水溶液を得た。得られた水溶液に、水素化ホウ素ナトリウム33mgをイオン交換水1gに溶解した溶液を添加し、さらに30分間氷冷撹拌して褐色透明の分散液を得た。得られた分散液を25℃に戻し、撹拌しながら5%フィブロイン水溶液0.1gを添加した。さらに25℃で30分間撹拌して、導電性組成物D4を得た。
(実施例D5及びD6)
5%フィブロイン水溶液0.10gに代えて、ポリグルタミン酸ナトリウム5mg又はポリアスパラギン酸ナトリウム5mgをそれぞれ用いたこと以外は、前述の実施例D4の場合と同様にして、導電性組成物D5及びD6を得た。
Figure 2023133161000002
<第2の製造方法による導電性組成物(分散液)の製造>
以下に示す方法により導電性組成物(分散液)を製造した。実施例D19~D32で製造した導電性組成物(分散液)中の金属粒子の形状は、いずれも「略球形」であった。
(実施例D19~D21、D23~D32、比較例D2~D4)
表2に示す量の塩化金(III)酸・4水和物を表2に示す量(液媒体として表記)の超純水に溶解し、撹拌しながら、表2に示す種類及び量の処理剤を添加した。反応温度を60℃として2時間撹拌して、前駆体を含む反応液を得た。実施例D23の塩化金(III)酸・4水和物としては、上述の「回収金属塩の調製」で得たものを用いた。得られた反応液を60℃で加熱還流し、表2に示す量のクエン酸3ナトリウム・2水和物を添加した。内温(反応温度)を100℃に保ち、2時間撹拌した。25℃まで冷却した後、15時間撹拌して、導電性組成物D20~D22及びD24~D36を得た。比較例D2~D4では、金属粒子が凝集してしまった。このため、金属粒子の平均粒子径を測定することができなかった。
実施例D19で得た前駆体を、フーリエ変換赤外分光分析機(商品名「Spectrum One-B」、パーキンエルマー製)を使用して分析した。その結果、590cm-1付近の強いM-N(Au(金原子)-N)由来のピークの出現により、金原子とポリペプチド中の窒素原子との化学結合を確認した。
(実施例D22)
硝酸銀(I)108mgを超純水1,000mLに溶解し、撹拌しながら、5%フィブロイン水溶液0.10gを添加した。反応温度を60℃として2時間撹拌して、前駆体を含む反応液を得た。得られた前駆体を、フーリエ変換赤外分光分析機(商品名「Spectrum One-B」、パーキンエルマー製)を使用して分析した。その結果、590cm-1付近の強いM-N(Ag(銀原子)-N)由来のピークの出現により、銀原子とポリペプチド中の窒素原子との化学結合を確認した。得られた反応液に、イオン交換水1gに水素化ホウ素ナトリウム35mgを溶解した溶液を添加した。氷冷下でさらに30分間撹拌して、褐色透明の反応液を得た。25℃でさらに30分間撹拌して、導電性組成物D23を得た。
Figure 2023133161000003
<導電性組成物(インク)の製造>
以下に示す方法により、水性媒体及び界面活性剤を含有する水性のインク(導電性組成物)を製造した。得られたインク中の金属粒子の平均粒子径は、いずれも、原料として用いた導電性組成物(分散液)中の金属粒子の平均粒子径±1nmの範囲内であった。このことから、金属粒子は導電性組成物及びインク中で安定して分散していることがわかった。
限外ろ過装置(商品名「TFFミニメイト限外ろ過システム」、フィルター:30K、ポール製)を使用して、上記で得られた導電性組成物(分散液)を濃縮し、金属粒子の含有量が14.85%である導電性組成物の濃縮液を得た。そして、以下に示す配合となるように各成分を混合して、金属粒子の含有量が10.0%である各インクを得た。界面活性剤としては、アセチレングリコール系の界面活性剤(商品名「オルフィンPD-005」、日信化学工業製)を用いた。
・導電性組成物の濃縮液:67.4部
・エチレングリコール:31.0部
・界面活性剤:0.1部
・表3に示す種類の樹脂:樹脂(固形分)として1.25部となる使用量(部)
・超純水:成分の合計が100.0%となる使用量(部)
表3に示す樹脂として、以下に示す市販品を用いた。
・樹脂1:ポリエステル樹脂の水分散液(商品名「バイロナールMD-2000」、樹脂粒子の含有量40%、東洋紡製)
・樹脂2:水溶性ナイロン樹脂(ポリアミド)樹脂(商品名「AQナイロンA-90」、東レ製)
・樹脂3:ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニル共重合樹脂の水分散液(商品名「ビニブラン603」、樹脂粒子の含有量50%、日信化学工業製)
・樹脂4:ポリアミド樹脂の水分散液(商品名「セポルジョンNE205」、樹脂粒子の含有量40%、住友精化製)
・樹脂5:ポリオレフィン樹脂の水分散液(商品名「スミフィットWR101」、樹脂粒子の含有量31%、住友化学製)
・樹脂6:ポリオレフィン/ポリ酢酸ビニル共重合樹脂の水分散液(商品名「セポルジョンVA406」、樹脂粒子の含有量50%、住友精化製)
・樹脂7:ポリウレタン樹脂の水分散液(商品名「スーパーフレックス210」、樹脂粒子の含有量35%、第一工業製薬製)
<分散安定性の評価>
得られたインク(導電性組成物)1mLを密閉可能なガラス瓶に入れ、60℃の恒温槽(商品名「IC602」、ヤマト科学製)中に所定期間載置して保存した。保存後のインク(導電性組成物)を超純水で1,500倍(体積基準)に希釈し、紫外可視近赤外分光光度計(商品名「UV-3600」、島津製作所製)により分析した。700nmの波長における光の吸収が保存前と比較して30%増大した際に「凝集した」と判断し、凝集するまでの保存期間により、以下に示す評価基準にしたがって分散安定性を評価した。結果を表3に示す。以下に示す評価基準のうち、「A」及び「B」を許容できるレベルとし、「C」を許容できないレベルとした。
A:凝集するまでの期間が2週間以上であった。
B:凝集するまでの期間が1週間以上2週間未満であった。
C:凝集するまでの期間が1週間未満であった。
Figure 2023133161000004
<導電性画像の製造>
インク(導電性組成物)をインクカートリッジに充填し、ピエゾ素子による物理的エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「LaboJet-500」、MicroJet製)にセットした。このインクジェット記録装置を使用し、温度25℃、相対湿度50%の環境下、以下に示すシート状の基材に、1/600インチ×1/600インチの単位領域へのインク(導電性組成物)の付与量を20ngとしたベタ画像を記録して記録物を得た。得られた記録物を表4-1及び4-2に示す乾燥温度、相対湿度50%の環境下で表4-1及び4-2に示す時間乾燥させて、各導電性画像(2mm×3cmの長方形画像)を得た。
・PETフィルム:商品名「パナクレアACX」、パナック製
・PI:ポリイミドフィルム、商品名「カプトンH」、東レ・デュポン製
・PP:ポリプロピレンフィルム、商品名「トレファン#40-2500」、東レ製
・PC:ポリカーボネートフィルム、商品名「ピュアエースD」、帝人製
・ゼラチンシート:富士フイルム和光純薬製の0.1%ゼラチン溶液を、バーコーターを用いてPETフィルムに塗布して乾燥させたもの
・フィブロインシート:ミリポアシグマ製の5%フィブロイン水溶液を、バーコーターを用いてPETフィルムに塗布して乾燥させたもの
<導電性評価>
触針式膜厚計(Tencor製)を使用して得られた導電性画像の膜厚を測定した。測定した膜厚から導電性画像の断面積を算出し、4端針法によって体積抵抗率を測定及び算出した。また、以下に示す評価基準にしたがって導電性画像の導電性を評価した。以下に示す評価基準において、「A」を許容できるレベルとし、「C」を許容できないレベルとした。結果を表4-1及び4-2に示す。
A:体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下であった。
C:体積抵抗率が1×10-4Ω・cmを超えていたか、導電性を示さなかった。
<密着性評価>
上記の導電性評価に用いたものと同様の条件で、導電性画像(横3.5cm×縦3.5cm×厚さ1μm)を得た。この導電性画像について、クロスカットプレート(商品名「クロスカットプレート」、カット幅;2mm、オールグッド製)に沿ってカッターナイフで縦横に切れ込みを入れ、格子状のクロスカットを作製した。クロスカット部分に粘着テープ(商品名「セロテープ(登録商標)CT-24」、ニチバン製、粘着力4.01N/10mm)を貼り付けた後、60°の角度で瞬時に引き剥がした。塗膜(導電性画像)における剥がれの状態を目視で確認し、JIS-K5600、「付着性クロスカット法」に準じて)を参考にして以下に示す「分類0~5」に当てはめ、以下の評価基準にしたがって導電性画像の密着性を評価した。以下に示す評価基準において、「A」及び「B」はいずれも許容できるレベルであり、「A」はより良好な密着性を示す。結果を表4-1及び4-2に示す。
[分類]
・分類0:カットの縁がなめらかで、どの格子の目も剥がれがなかった。
・分類1:カットの交差点における塗膜の小さな剥がれがあったが、クロスカットの部分で影響を受けるのは、5%未満であった。
・分類2:塗膜がカットの線に沿って、及び/又は交差点において剥がれていた。クロスカットの部分で影響を受けるのは、5%を超えて15%以下であった。
・分類3:塗膜がカットの線に沿って部分的又は全面的に大きく剥がれており、及び/又は目の部分が、部分的に又は全面的に剥がれていた。クロスカットの部分で影響を受けるのは、15%を超えて35%以下であった。
・分類4:塗膜がカットの線に沿って部分的又は全面的に大きく剥がれており、及び/又は数か所の目が部分的に又は全面的に剥がれていた。クロスカットの部分で影響を受けるのは、35%を超えて65%以下であった。
・分類5:分類4でも分類できない剥がれの程度のいずれかであった。
[評価基準]
A:分類0、分類1、又は分類2に該当した。
B:分類3、分類4、又は分類5に該当した。
Figure 2023133161000005
Figure 2023133161000006
乾燥温度を120℃とした実施例E30及びE58では、熱により基材が変形し、反りが生じていた。

Claims (26)

  1. 金属粒子及びポリペプチドを含有し、
    前記ポリペプチドが、酸性アミノ酸及び中性アミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸ユニットを有するとともに、前記ポリペプチドに占める、前記アミノ酸ユニットの割合(質量%)が、95質量%以上であり、
    前記金属粒子の表面の少なくとも一部が、前記ポリペプチドで被覆されていることを特徴とする導電性組成物。
  2. 前記ポリペプチドが、フィブロイン及びポリグルタミン酸の少なくとも一方である請求項1に記載の導電性組成物。
  3. 前記金属粒子に含まれる金属原子と前記ポリペプチドに含まれる窒素原子とが化学結合している請求項1に記載の導電性組成物。
  4. 前記ポリペプチドの含有量(質量%)が、前記金属粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.001倍以上0.100倍以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性組成物。
  5. 前記ポリペプチドの含有量(質量%)が、前記金属粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.005倍以上0.075倍以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性組成物。
  6. 前記金属粒子が、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、及び金からなる群より選択される少なくとも1種の金属で形成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性組成物。
  7. 前記金属粒子の体積基準の累積50%粒子径が、1nm以上100nm以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性組成物。
  8. 前記金属粒子の体積基準の前記累積50%粒子径が、5nm以上50nm以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性組成物。
  9. さらに、水性媒体を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性組成物。
  10. さらに、樹脂を含有する請求項9に記載の導電性組成物。
  11. 前記樹脂が、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ、ポリビニルアルコール、及び多糖類からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む請求項10に記載の導電性組成物。
  12. 前記樹脂が、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、及びポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む請求項10に記載の導電性組成物。
  13. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性組成物の製造方法であって、
    水性媒体中で金属塩を還元して前記金属粒子を形成する第1工程と、
    形成した前記金属粒子と、前記ポリペプチドを接触させる第2工程と、を有することを特徴とする導電性組成物の製造方法。
  14. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性組成物の製造方法であって、
    金属塩及び前記ポリペプチドを水性媒体中で40℃以上150℃以下に加熱して、前記金属塩に含まれる金属原子と前記ポリペプチドに含まれる窒素原子とが化学結合した前駆体を形成する第1工程と、
    前記前駆体を還元する第2工程と、を有することを特徴とする導電性組成物の製造方法。
  15. 前記金属塩として、金属廃液から回収された回収金属塩を用いる請求項13に記載の導電性組成物の製造方法。
  16. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性組成物を基材に付与する工程を有することを特徴とする導電性画像の記録方法。
  17. 前記導電性組成物をインクジェット法により前記基材に付与する請求項16に記載の導電性画像の記録方法。
  18. さらに、前記基材に付与した前記導電性組成物を20℃以上50℃以下の温度で乾燥させる工程を有する請求項16に記載の導電性画像の記録方法。
  19. 基材と、前記基材に形成された導電層と、を有する導電性画像であって、
    前記導電層が、金属粒子及びポリペプチドを含有し、
    前記ポリペプチドが、酸性アミノ酸及び中性アミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸ユニットを有するとともに、前記ポリペプチドに占める、前記アミノ酸ユニットの割合(質量%)が、95質量%以上であり、
    前記金属粒子の表面の少なくとも一部が、前記ポリペプチドで被覆されていることを特徴とする導電性画像。
  20. 基材に記録される導電性画像であって、
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性組成物で形成されたことを特徴とする導電性画像。
  21. 前記基材が、ガラス、紙、又は樹脂材料である請求項19に記載の導電性画像。
  22. 前記樹脂材料が、生体適合性材料である請求項21に記載の導電性画像。
  23. 前記生体適合性材料が、ゼラチン、コラーゲン、フィブロイン、セルロース、及びキトサンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項22に記載の導電性画像。
  24. 前記樹脂材料が、合成樹脂である請求項21に記載の導電性画像。
  25. 前記合成樹脂が、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エポキシ、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む請求項24に記載の導電性画像。
  26. 前記合成樹脂が、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、及びポリカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む請求項24に記載の導電性画像。
JP2023023924A 2022-03-10 2023-02-20 導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像 Pending JP2023133161A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2023/008706 WO2023171693A1 (ja) 2022-03-10 2023-03-08 導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022037459 2022-03-10
JP2022037459 2022-03-10

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023133161A true JP2023133161A (ja) 2023-09-22

Family

ID=88065539

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023023924A Pending JP2023133161A (ja) 2022-03-10 2023-02-20 導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023133161A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI537983B (zh) Metal powder slurry, and manufacturing method thereof
JP5519938B2 (ja) 導電性ペースト用銅粉の製造方法
EP2305402B1 (en) Method for producing silver-containing powder and conductive paste using the same
JP5623861B2 (ja) 金属ナノ粒子分散組成物
CN101835555B (zh) 铜微粒和其制造方法及铜微粒分散液
TWI557270B (zh) 無電解鍍敷用觸媒、使用其之金屬皮膜及其製造方法
JP4449676B2 (ja) 銅微粒子の製造方法
JP5176824B2 (ja) 銀被覆銅微粒子とその分散液及びその製造方法
KR20140037043A (ko) 피복 금속 미립자와 그 제조 방법
TWI579365B (zh) 導電膠
JP4428085B2 (ja) 銅微粒子の製造方法
KR102035115B1 (ko) 도전성 피막 복합체 및 그 제조방법
KR20110099723A (ko) 금속 입자의 수성 분산액
US20170213615A1 (en) Metal nanoparticle dispersion and metal coating film
US10307825B2 (en) Metal powder, ink, sintered body, substrate for printed circuit board, and method for manufacturing metal powder
KR20110099724A (ko) 은 입자의 수성 분산액
US20170120327A1 (en) Silver nanowires, and production method and dispersion of the same
JP6261098B2 (ja) 安定化ナノ粒子、及び安定化ナノ粒子の分散、及び適用方法
TW201805391A (zh) 接合用組成物及其製造方法、接合體以及被覆銀奈米粒子
JP2024051133A (ja) 卑金属めっき膜
WO2023171693A1 (ja) 導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像
JP2023133161A (ja) 導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像
WO2023171691A1 (ja) 導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像
JP2023133162A (ja) 導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像
TW201819303A (zh) 氧化亞銅粒子、其製造方法、光燒結型組成物、使用其的導電膜的形成方法及氧化亞銅粒子糊