JP2023132021A - 熱可塑性長繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の熱可塑性長繊維は、経時で安定な動摩擦係数を有し、長期間保管後も良好な高次通過性を得ることができる熱可塑性長繊維を提供する。【解決手段】 酸解離定数pKaが4.0~7.5の範囲であるpH緩衝剤の割合が油剤の全成分あたり2.0~5.0重量%であり、エージング後の糸-鏡面間動摩擦係数が0.45以下、糸-鏡面間動摩擦係数の変動幅が0.15以下であることを特徴とする経時安定性に優れた熱可塑性長繊維。【選択図】なし

Description

本発明は、高次通過性の良好な熱可塑性長繊維に関するものである。
長繊維は服などの衣料や漁網などの産業資材に用いられ、特にモノフィラメントではスクリーン紗や産業フィルターなどに用いられる。このような製品を得るための工程は、紡糸機で糸を製造した後、織編・染色・縫製などの高次加工を経るが、製造コストダウンや国外メーカーとの共同開発による新製品創出のため、原糸を船便で国外輸送した後に加工を行うことが多くなっている。一方、糸を船便で輸送する際、高温高湿度環境である海上を輸送されるため、糸の付着油剤成分の劣化や揮発が懸念され、実際にモノフィラメントにおいて、輸送前後で付着油剤の組成が変化し、摩擦が上昇して整経張力が不安定となる問題が発生している。付着油剤成分の劣化抑制を目的とした提案は、これまでいくつかなされている。
例えば、特許文献1には、ポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステル繊維において、付着油剤にイソシアネート系酸化防止剤を添加することで平滑成分の酸化分解を抑制し、紡糸から仮撚加工まで長期間保管後も良好な加工性が得られることを提案している。
特許文献2には、延伸ヒーターでの熱処理によって、糸表面および糸中に残留しているモノマーやオリゴマーを揮発させ、経時でのスカム発生が少ない繊維を提案している。
特許文献3には、脂肪酸アルキルエステルの重量平均分子量範囲を既定値以上の範囲とすることで、熱処理工程や経時における該成分の揮発・分解を抑制し、ポリエステルモノフィラメントの平滑性を維持させることを提案している。
特開2003-342876号公報 特開2020-143410号公報 特開2008-121125号公報
本発明の目的は、保管環境の変化や長期間保管後も、付着油剤成分が劣化せず、良好な高次通過性を有する熱可塑性長繊維を提供することである。
付着油剤成分が劣化する推定メカニズムの1つとして、平滑剤である脂肪酸アルキルエステルと水との平衡反応があり、脂肪酸アルキルエステルが加水分解してカルボン酸とアルコールが生成すると考える。また、生成したカルボン酸のプロトン(H)が触媒となり、エステルの加水分解を加速させる。油剤全成分における脂肪酸アルキルエステルの割合が減少するため、平滑性能が低下して長繊維の動摩擦が上昇するとともに、油剤組成のバランスが崩れたことで、油剤成分の相溶性が低下して成分が顕在化して、長手方向の摩擦に斑が生じると考える。また、このような長繊維を編織工程に用いると、走行張力の上昇や変動が悪化して、糸切れが増加し、編物・織物の目開きに斑が生じる品質欠点を引き起こす。このような問題に対して、先行技術では酸の発生を抑制するアプローチが十分でなく、経時の劣化を完全に抑制できるものではなかった。
特許文献1では、脂肪酸アルキルエステルが加水分解して発生するカルボン酸のプロトンを捕捉する添加剤が含まれていないため、経時の劣化を完全に抑制できなかった。特許文献2では、pH緩衝剤を添加することを提案しているが、1年経過後のpHが4まで低下しており、カルボン酸の酸解離定数pKaも4程度であることから、プロトンの捕捉が上手く機能しておらず、pH緩衝剤の効果が不十分であった。特許文献3では、脂肪酸アルキルエステルの重量平均分子量を上げることで油剤に含まれる分子数を減少させ、脂肪酸アルキルエステルと水の平衡反応が加水分解の方向へ傾くことを抑制しているが、発生するカルボン酸のプロトンを捕捉できていないため、加水分解を十分に抑制できなかった。
本発明では、上記課題を克服し、保管環境の変化や長期間保管後も、付着油剤成分が劣化せず、良好な高次通過性を有する熱可塑性長繊維を提供する。
本発明は、下記の熱可塑性長繊維とすることで目的を達成できる。
酸解離定数pKaが4.0~7.5であるpH緩衝剤を2.0~5.0重量%含有する油剤を付着している、エージング後の糸-鏡面間動摩擦係数が0.45以下、その糸-鏡面間動摩擦係数の変動幅が0.15以下である熱可塑性長繊維。
ここでエージングとは、温度70℃、湿度95Rh%の恒温機内に7日間静置する処置とする。
本発明は、油剤成分を限定することにより、保管環境の変化や長期間保管後も、付着油剤成分が劣化せず、良好な高次通過性を有し、編物・織物の目開き斑を抑制する熱可塑性長繊維を提供することができる。
図1は、付着油剤のGPC測定した際、最大となるピーク強度を1.00として、その他のピーク強度を算出するための図である。
本発明に用いる熱可塑性長繊維とは、ポリエステル繊維やポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維を例示する。
ポリエステル繊維には、繊維素材ポリマーとして、ポリエチレンテレフタレート、繰り返し単位としてエチレンテレフタレート以外のものを一部含む共重合ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート以外のポリマーをポリエチレンテレフタレートに一部混合したポリエステルポリマーブレンドを用いたものが挙げられる。また、ポリアミド繊維には、繊維素材ポリマーとして、ポリアミド、繰り返し単位としてポリアミド以外のものを一部含む共重合ポリアミド、ポリアミド以外のポリマーをポリアミドに一部混合したポリアミドポリマーブレンドを用いたものが挙げられる。
その中でも特にポリエステル繊維が好ましい。ポリエステル繊維は比較的安価であり、機械的性質等の優れた特性から、衣料用途や資材用途など多方面で使用されるためである。
本発明の熱可塑性長繊維に付着した油剤において、酸(プロトン)の発生を抑制するために酸解離定数pKaが4.0~7.5であるpH緩衝剤を油剤成分あたり2.0~5.0重量%含有している。平滑剤として用いられる脂肪酸アルキルエステルが分解して発生するカルボン酸の酸解離定数pKaは一般的に4~5であるため、付着油剤のpHが5.0未満のとき脂肪酸アルキルエステルの分解が促進される。付着油剤のpHを5.0以上に保ち、脂肪酸アルキルエステルの分解を抑制するため、pH緩衝剤の酸解離定数pKaは4.0~7.5の範囲である。
pH緩衝剤の酸解離定数pKaが4.0未満の場合、付着油剤のpHが5.0未満まで低下して脂肪酸アルキルエステルの分解を促進する。また、pH緩衝剤の酸解離定数pKaが7.5を超える場合、平滑剤の脂肪酸アルキルエステルのエステル結合がアルカリ加水分解を引き起こす。好ましくは、pH緩衝剤の酸解離定数pKaは4.5~7.0として、付着油剤のpHを5.8以上に保ち、脂肪酸アルキルエステルの分解を更に抑制することが良い。
本発明の熱可塑性長繊維に用いるpH緩衝剤は、特に限定しないが、カルボン酸塩、リン酸塩などを用いることができる。pH緩衝剤の酸化分解や加水分解を防ぐため、官能基はアルキル基が好ましい。また、pH緩衝剤の平均分子量は300以上であると、揮発を抑制し、安定してpH抑制効果を得られるため好ましい。例えば、脂肪族モノカルボン酸塩、脂肪族ジカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、リン酸モノアルキル塩、リン酸ジアルキル塩、ポリオキシアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩を例示することができる。酸解離定数pKaの異なるpH緩衝剤を複数用いてもよく、発生する酸の酸解離定数pKaと維持したいpHの範囲を考慮して2種類以上の酸解離定数pKaの異なる緩衝剤を用いることが好ましい。
付着油剤成分あたりのpH緩衝剤の割合が2.0重量%未満であった場合、十分なpH低下抑制効果が得られない。また、pH緩衝剤の割合が5.0重量%を超えても更なるpH低下抑制効果が得られず、動摩擦係数が増加する。好ましいpH緩衝剤の割合は2.4~4.6重量%である。
本発明の熱可塑性長繊維に付着する油剤は、pH緩衝剤を適切に添加することで、脂肪酸アルキルエステルが分解してカルボン酸となることを抑制されるため、エージングによる油剤組成の変化が小さくなる。例えば、THF(テトラヒドロフラン)を用いて、本願の熱可塑性長繊維から抽出した成分をGPCにて測定し、エージングによる油剤組成の変化を確認することができる。GPCの結果を図1のように、縦軸に強度、横軸に分子量としたときの分子量分布曲線をプロットすると、分子量別にピークとして表れ、ピークトップの強度は化合物の形態や油剤中の含有量に応じて表れる。最大となるピーク強度を1.00として、その他のピーク強度を算出することで、油剤成分比の変化を読み取ることができ、エージング前後の同一分子量のピーク強度において、(エージング前のピーク強度)-(エージング後のピーク強度)が-0.05~+0.05を満たすことが分かっている。±0.05を超える場合、油剤成分が揮発または分解しており、動摩擦が上昇して過張力による編織機の異常停止や糸切れが多発する。より好ましくは±0.03以内である。
本発明の熱可塑性長繊維は、エージング後の糸-鏡面間動摩擦係数が0.45以下、その糸-鏡面間動摩擦係数の変動幅が0.15以下であることで、長期間保管後も編織工程において長繊維と工程ガイドの擦れを軽減し、過張力による編織機の異常停止や糸切れがなく、編物・織物の目開き斑による品質欠点の発生を抑制できる。動摩擦係数が0.45を超える場合、過張力による編織機の異常停止や糸切れが多発する。エージング後の糸-鏡面間動摩擦係数の好ましい範囲は0.40以下である。また前記糸-鏡面間動摩擦係数の変動幅が0.15を超える場合、過張力による編物・織物の目開きに斑が生じる品質欠点を引き起こす。糸-鏡面間動摩擦係数の変動幅の好ましい範囲は0.13以下である。
ここでエージングとは、温度70℃、湿度95Rh%の恒温機内に7日間静置する処置とする。
本発明の熱可塑性長繊維に付着する油剤のpHが5.5~7.4、エージング後に付着している油剤のpHが5.2~7.1であることが好ましい。付着油剤のpHが5.5以上であると、エージングで少量の酸が発生してもpH5.2以上とすることができ、筬など金属製の工程ガイドを酸で腐食させるリスクを低減して、ガイドの交換周期を延長できるため好ましい。付着油剤のpHが7.4以下、エージング後のpHが7.1以下であると、油剤成分が沈殿することを抑制し、油剤を均質な状態で付与し、付着後も成分の析出を抑制できることから、製織工程のスカムが少なく、糸-鏡面間動摩擦係数の変動幅を更に小さくできるため好ましい。より好ましくは、付着油剤のpHが5.8~7.1、エージング後の付着油剤のpHが5.5~6.8であることがよい。
本発明の熱可塑性長繊維は、エージング前後の油剤付着量の減量率が10%以下であることで、長期間保管後も動摩擦を低く保つことができるため好ましい。減量率は5%以下であると、動摩擦を低く保つことができるためより好ましい。
本発明の熱可塑性長繊維に付着した油剤成分は、平滑剤として脂肪酸アルキルエステルを用いることができる。また、重量平均分子量が450以上であると、製造工程や経時で分解しにくいため好ましく、650以下であれば動摩擦に大きな影響を及ぼさないため好ましい。また、動摩擦が悪化しない範囲で変性シリコーンなど添加剤を加えてよい。
本発明の熱可塑性長繊維の繊度は特に限定しないが、繊度が細いほど破断強力が小さくなり、動摩擦の上昇による糸切れが起こりやすいため、単糸繊度32dtex以下の品種で本発明の効果がより顕著に表れる。
本発明の熱可塑性長繊維のフィラメント数は特に限定しないが、モノフィラメントでは動摩擦の上昇によって走行張力が増加してスレ毛羽が生じ、その箇所で糸切れするため、本発明の効果がより顕著に表れる。
本発明の熱可塑性長繊維の好ましい製造方法について説明する。
本願の熱可塑性長繊維の製造工程は、公知の製造方法を採用すればよく、一例としてポリエステルモノフィラメントの製造方法について説明する。
押出機によって溶融させたポリエチレンテレフタレート(PET)を所望の繊度となるように計量ポンプを用いて紡糸口金に供給し糸条を吐出させる。溶融紡糸温度としてはPETを十分に溶融させ、かつ過度の熱付与による熱分解を抑制するという観点から280~310℃とすることが好ましい。
芯鞘複合とする場合は、2台の押出機を用いて芯鞘別々に溶融、計量させ、公知の芯鞘複合口金により両成分を複合させた後に吐出させる。
糸条の配向抑制、配向均一化を目的とし、吐出された糸条が冷却されるまでの部位に加熱筒を用いてもよい。加熱筒を使用する場合、加熱筒内雰囲気温度は200~330℃とすることが好ましい。加熱筒内雰囲気温度が200℃以上であれば加熱筒の効果が十分得られる。加熱筒内雰囲気温度が330℃以下であれば糸長手方向の繊径ムラが抑制される。
冷却方式はチムニーエアーによる冷却を採用することが好ましい。チムニーエアーによる冷却は、例えば糸条の走行方向に対して略直角方向かつ一方向から吹き付ける方式や糸条の走行と略直角方向かつ全周方向から吹き付ける方式を用いることができる。冷却した糸条をローラで引き取る前に、紡糸油剤を付与することが好ましい。給油した糸条は、好ましくは表面速度300~3000m/分の引取りローラで引取る。その後、一旦未延伸糸として巻き取ってから延伸する二工程法、そのまま延伸工程に給糸する直接紡糸延伸法のどちらを用いてもよい。生産効率や得られるモノフィラメントの配向均一性の観点から直接紡糸延伸法の方が好ましい。
本発明の製造工程で用いる油剤の組成は特に限定するものではないが、平滑性を向上し、編織時のスレ毛羽や糸切れを抑制する観点から脂肪酸アルキルエステル系平滑剤を30重量%以上含有する油剤を用いることが好ましい。また、油剤中に変性シリコーンを6~8重量%添加すると、さらに平滑性が向上するため好ましい。油剤は水と混合・エマルション化し、給油ガイドやオイリングローラによって糸条に付与すればよい。その際の給油量は、延伸糸に対し油剤付着量が0.1~2.0重量%とすれば平滑性が良好かつ、パッケージ形成の際の糸落ち、崩れが抑制されるため好ましい。
次に、実施例により本発明の熱可塑性長繊維について詳細に説明する。実施例と比較例の評価は、次の方法により測定した。
(1)繊度
ポリエステルモノフィラメントを500mかせ取り、かせの質量(g)に20を乗じた値を繊度とした。
(2)糸-鏡面間の動摩擦特性
摩擦試験機(英光産業製)を用いて、ピン直径35mmφ、0.3Sの鏡面仕上げクロムピンを用いて、下記の条件で測定した時の摩擦係数μで表した。
走行糸の入り側張力 :T1 =10g
走行糸の出側張力 :T2 =測定値
接触角度 :90°
糸の走行速度 :2.5m/分
μ=(2/π)×ln(T2/T1) 。
(3)付着油剤のpH
試料10gを精秤し、メタノールを溶媒としてソックスレー抽出器を用いて3時間かけて加熱還流させて油剤を抽出し、抽出後メタノール除去し乾燥して、0.1%水溶液に調整し、pH計(堀場製作所製)を用いてpHを測定した。
(4)油分付着量の測定
試料10gを精秤し、メタノールを溶媒としてソックスレー抽出器を用いて3時間かけて加熱還流させて油剤を抽出し、抽出後メタノール除去し乾燥して、抽出前後の容器の重量差から油分付着量を算出した。
(5)GPCの測定
試料のTHF可溶成分のGPCにより測定される分子量分布は下記のように測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定装置:GPC-8220GPC(東ソー社製)
カラム:TSK-GEL SUPER HZ2000、TSK-GEL SUPER HZ2500、TSK-GEL SUPER HZ3000
温度:40℃
溶媒:THF
流速:0.35ml/分
試料:0.15質量%に調整したTHF試料溶液
試料の前処理:試料10gを精秤し、メタノールを溶媒としてソックスレー抽出器を用いて3時間かけて加熱還流させて油剤を抽出し、抽出後メタノール除去し乾燥して、テトラヒドロフランTHF(安定剤含有、和光純薬社製)に0.15重量%で溶解後0.45μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いた。
測定は前記THF試料溶液を10μL注入して測定した。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
THF可溶のGPCの測定結果については、縦軸が強度、横軸が分子量の分子量分布曲線でプロットし、最大となるピーク強度を1.00として分子量分布曲線全体の強度を補正した。
(6)GPCによる評価
エージング前の付着油剤のGPCを測定し、最大となるピーク強度を1.00として、その他のピーク強度を算出する。次に、エージング後の付着油剤のGPCを測定し、エージング前と同様に、最大となるピーク強度を1.00として、その他のピーク強度を算出する。同一分子量のピークについて、下記式を満たせば合格とする。
-0.05≦(エージング前のピーク強度)-(エージング後のピーク強度)≦0.05
なお、エージングは、温度70℃、湿度95Rh%の恒温機内に7日間静置して行う。
(7)走行張力の評価
整経工程を再現する目的で、長繊維を巻き取ったパッケージをクリールに載せ、パッケージ端部から30cmの距離にあるテンサーを通し、張力計を介して200m/分の速度のローラで引き取った。その際、テンサー上に錘を載せて、テンサー出側の張力を4gに設定して30分走行させ、走行張力の最大値および変動幅を測定した。
(実施例1)PETモノフィラメント
常法によって重合およびペレット化したPETをエクストルーダーによって溶融させた。その後、溶融したポリマーを、295℃に保温されたスピンブロック内に設けた配管および所望のポリマー流量に計量する計量ポンプを通過させ、スピンパックに導いた。スピンパック内には順にフィルター、公知の紡糸口金が設けられている。この紡糸口金から糸条を紡出させた。加熱筒内雰囲気温度273℃の加熱筒を配設し、口金から紡出された糸条を通過させた。その後、糸条に対し冷却機を用いて直角かつ1方向から25℃のエアーを15m/分の風速で糸条に吹き付け、冷却固化させた。冷却固化された糸条に、オイリングロールにより紡糸油剤を延伸糸に対して0.3%となるように給油した。
油剤の成分は、pH緩衝剤として脂肪族ジカルボン酸塩(pKa=5.5)を3.0%、アルキルホスフェート塩(pKa=6.8)を1.0%、公知の脂肪酸エステル系平滑剤60%、変性シリコーン7%、その他公知の金属磨耗剤、制電剤、界面活性剤からなる混合油剤を蒸留水に対して8%の濃度でエマルション化したものである。
給油後の糸条はそのまま735m/分の速度で非加熱の第1ゴデットロールに引き取った。一旦巻き取ることなく742m/分の速度で90℃の温度に加熱された第1ホットロール、2385m/分の速度で90℃の温度に加熱された第2ホットロール、3373m/分の速度で130℃の温度に加熱された第3ホットロールに引き回し、延伸、熱セットを行った。さらに、3375m/分の速度で2個の非加熱のゴデットロールに引き回した後、巻取張力が0.425g/dtexとなるようにスピンドル回転数を制御してパッケージに巻き取り、4.0dtexのポリエステルモノフィラメントを得た。このポリエステルモノフィラメントの特性は表1のとおりである。エージング後も動摩擦係数を低く保ち、pH低下を抑制し、GPC(分子量分布)および走行張力の変化を抑制することができた。
(実施例2)ポリアミドモノフィラメント
常法によって重合およびペレット化したN66をエクストルーダーによって溶融させた。その後、溶融したポリマーを、289℃に保温されたスピンブロック内に設けた配管および所望のポリマー流量に計量する計量ポンプを通過させ、スピンパックに導いた。スピンパック内には順にフィルター、公知の紡糸口金が設けられている。この紡糸口金から糸条を紡出させた。その後、糸条に対し冷却機を用いて直角かつ1方向から25℃のエアーを15m/分の風速で糸条に吹き付け、冷却固化させた。冷却固化された糸条に、オイリングロールにより紡糸油剤を延伸糸に対して0.3%となるように給油した。
油剤の成分は、pH緩衝剤として脂肪族ジカルボン酸塩(pKa=5.5)を2.0%、アルキルホスフェート塩(pKa=6.8)を0.5%、公知の脂肪酸エステル系平滑剤62%とした以外は実施例1と同一である。
給油後の糸条はそのまま774m/分の速度で非加熱のゴデッドロールで引き取り、一旦巻き取ることなく、3200m/分の速度で190℃の温度に加熱されたホットロールに引き回し、延伸、熱セットを行った。さらに、3000m/分の速度でスピンドル回転数を制御してパッケージに巻き取り、8.0dtexのナイロンモノフィラメントを得た。良好な動摩擦係数であり、走行張力の変化を抑制することができた。
(実施例3)PETマルチフィラメント
常法によって重合およびペレット化したPETをエクストルーダーによって溶融させた。その後、溶融したポリマーを、280℃に保温されたスピンブロック内に設けた配管および所望のポリマー流量に計量する計量ポンプを通過させ、スピンパックに導いた。スピンパック内には順にフィルター、公知の紡糸口金が設けられている。この紡糸口金から糸条を紡出させた。その後、糸条に対し冷却機を用いて直角かつ1方向から25℃のエアーを25m/分の風速で糸条に吹き付け、冷却固化させた。冷却固化された糸条に、オイリングロールにより紡糸油剤を延伸糸に対して1.0%となるように給油した。
油剤の成分は、pH緩衝剤として脂肪族ジカルボン酸塩(pKa=5.5)を3.0%、脂肪族ポリオキシアルキレンリン酸エステル塩(pKa=6.3)を1.0%とした以外は実施例1と同一である。
給油後の糸条はそのまま1500m/分の速度で80℃の温度に加熱された第1ホットロール、4200m/分の速度で160℃の温度に加熱された第2ホットロールに引き回し、延伸、熱セットを行った。さらに、4221m/分の速度で2個の非加熱のゴデットロールに引き回した後、巻取張力が0.212g/dtexとなるようにスピンドル回転数を制御してパッケージに巻き取り、22.0dtex、18フィラメントのポリエステル長繊維を得た。良好な動摩擦係数であり、走行張力の変化を抑制することができた。
(比較例1)PETモノフィラメント
実施例1から、pH緩衝剤として脂肪族ジカルボン酸塩(pKa=5.5)を1.0%とした以外は実施例1と同様にモノフィラメントを得た。エージング後では動摩擦係数が上昇し、pHが4.8まで低下した。また、GPCにより測定される分子量分布において、エージング前後における同一分子量のピーク強度の差が0.05以上となり、走行張力は増加して変動も大きくなった。
Figure 2023132021000001

Claims (3)

  1. 酸解離定数pKaが4.0~7.5であるpH緩衝剤を2.0~5.0重量%含有する油剤が付着している、エージング後の糸-鏡面間動摩擦係数が0.45以下、その糸-鏡面間動摩擦係数の変動幅が0.15以下である熱可塑性長繊維。
    ここでエージングとは、温度70℃、湿度95Rh%の恒温機内に7日間静置する処置とする。
  2. 繊維に付着している油剤のpHが5.5~7.4、エージング後に付着している油剤のpHが5.2~7.1である請求項1記載の熱可塑性長繊維。
  3. エージング前後の油剤付着量の減量率が10%以下である請求項1または2記載の熱可塑性長繊維。
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