JP2023115285A - 皮下埋込型ポート - Google Patents
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Abstract
【課題】新規な態様の識別表示を備えた皮下埋込型ポートを提供する。【解決手段】皮下埋込型ポート10において、レーザー光照射の変性作用による局部的な変色域が滑らかな部材表面をもって設けられており、かかる局部的な変色域を用いて、外部から目視可能な識別表示90が付されている。【選択図】図1
Description
本発明は、医療分野において患者の皮膚下に埋め込まれて用いられ、体内への薬液投与などに利用される皮下埋込型ポートに関するものである。
従来から、薬液などを長期間に亘って繰り返し体内へ注入する治療を行うに際しては、人体への繰り返しの穿刺による負担を軽減するために、薬液注入用のポートを患者の皮下に埋設しておくことが提案されている。具体的には、例えば特開平6-277298号公報(特許文献1)に皮下埋込型ポートの一例が示されている。
ところで、体内に埋設される皮下埋込型ポートでは、何らかの理由で取り出された際に個体を識別するための番号等の識別表示を付することが求められている。皮下埋込型ポートへの情報記載は、例えばISO10555-6:2015_6.1項にも規定がある。
そこで、従来の皮下埋込型ポートでは、合成樹脂製のハウジングの表面に熱刻印したり、金属製のハウジングの表面にプレス刻印することで、数字などの識別記号が刻設されていた。
ところが、本発明者が検討したところ、従来の皮下埋込型ポートは、新規且つ未開示の問題を幾つか内在していたことがわかった。具体的には、例えば従来の皮下埋込型ポートでは、表面への識別記号の刻設によって発生した凹凸やエッジが、皮下埋設状態で患者の体組織に触れることで、違和感を生じたり、生理学的反応を生ずるおそれがあった。また、識別記号の刻設で発生したバリ等が離脱して異物が発生するおそれもあった。更にまた、刻設された識別記号では、凹部に体組織等の異物が詰まって拭い取ることも難しいことから、識別記号の目視での確認に支障がでるおそれもあった。
本発明の解決課題は、新規な構造の識別表示を備え、それによって、刻設された識別表示を備えた従来構造の皮下埋込型ポートについて懸念される問題の少なくとも一つを軽減乃至は解消し得る、新規な皮下埋込型ポートを提供することにある。
本発明の第1の態様は、レーザー光照射の変性作用による局部的な変色域が滑らかな部材表面をもって設けられており、外部から目視可能な識別表示が該局部的な変色域を用いて付されている皮下埋込型ポートである。
本態様の皮下埋込型ポートでは、滑らかな部材表面を維持したままで、目視可能な識別表示を得ることができ、識別表示に伴う凹凸やエッジ、バリ等の発生が防止される。それ故、例えば識別表示がポート表面に露出する場合でも、識別表示による凹凸等の患者の体組織への接触が回避される。また、識別表示をポート内部に付すことも可能であり、それによって識別表示の損傷が防止される。更に、識別表示が変色域で形成されることから、単に凹凸で刻設された従来の識別表示に比して、周囲との色の差を利用した視認性の向上も可能となる。
なお、本態様において、「変性作用による変色域」とは、化学的または物理的に物性が変化することで目視による色の変化を生ずる構成をいう。すなわち、「変性作用による変色域」とは、金属表面の酸化による着色や、合成樹脂や金属の化学変化による(混合顔料の化学変化などを含む)着色、合成樹脂内部の気泡生成に伴う光屈折率及び/又は反射率の変化による着色などを含む。一方、「変性作用による変色域」は、凹凸刻設やエッチングのように粗面化などによって表面の滑らかさを機械的に変化させた態様を含まないし、また、表面に対して局部的に別材(顔料や染料など)を付着させて着色する印刷なども含まない。
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る皮下埋込型ポートにおいて、合成樹脂部材の内部が部分的に変性されて、該合成樹脂部材の内部に前記識別表示が付されているものである。
本態様の皮下埋込型ポートでは、レーザー光による樹脂の変性部分が合成樹脂部材の内部に設けられていることから、変性した樹脂が直接に体内組織へ触れることもない。また、仮にレーザー光の照射に伴って気泡等が発生しても、合成樹脂部材の内部に止まって部材表面の滑らかな面が維持され得る。
本発明の第3の態様は、前記第1の態様に係る皮下埋込型ポートにおいて、金属部材の表面が部分的に変性されて、該金属部材の表面に前記識別表示が付されているものである。
本態様の皮下埋込型ポートでは、レーザー光の照射による金属部材の加熱酸化や酸化膜の形成などで金属部材の表面が変性されることで、金属部材の滑らかな表面を維持しつつ識別表示を設けることができる。なお、識別表示を付した金属部材は、直接にポート表面に露出されていても良いし、以下の第4の態様に示すように、透明なカバー部材等で覆われていても良い。
本発明の第4の態様は、前記第1又は第3の態様に係る皮下埋込型ポートにおいて、前記変色域が表面に設けられた表示部材に対して、該表示部材の該変色域を覆う透明なカバー部材が設けられているものである。
本態様の皮下埋込型ポートでは、表示部材の変色域が直接に体組織に触れることを回避できる。それ故、例えば金属等の特定の材質にアレルギー反応を示す患者の場合でも、表示部材の選択自由度が大きくなる。
本発明に従えば、刻設された識別表示を備えた従来構造の皮下埋込型ポートについて懸念される問題の少なくとも一つが軽減乃至は解消される、新規な識別表示を有する皮下埋込型ポートが提供され得る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1~4には、本発明の第1の実施形態としての皮下埋込型ポート10が示されている。本実施形態の皮下埋込型ポート10はハウジング12を有しており、ハウジング12に設けられた凹所14が栓体16で塞がれることによって薬液貯留用の内腔18が形成されている。なお、以下の説明において、上下方向は、原則として図1中の上下方向をいう。
より詳細には、ハウジング12は分割構造とされており、インナベース部材20とカバー部材としてのアウタカバー部材22とを含んで構成されている。
インナベース部材20は、図5に単品図が示されているように、厚肉の略円形ブロック形状とされており、中央部分には上方に開口する円形の凹所14が形成されている。なお、凹所14の周壁部24には、下端の外周面にカラー状突部26が突設されている一方、上端の内周角部が切欠状に拡径されて環状段差部28が形成されている。
また、インナベース部材20には、凹所14を外部に連通させるポート部30が設けられている。ポート部30は、凹所14の周壁部24が部分的に外方に厚肉とされることで、周壁部24から外周面上に突設されている。かかるポート部30には、周壁部24を貫通する連通孔32が形成されている。
そして、図1~4に示されているように、ポート部30の連通孔32には、外方から筒状のポート部材34が圧入固定されている。ポート部材34は、ポート部30の連通孔32に固着される基端側筒状部36と、周壁部24から外方に突出する先端側筒状部38とを有している。先端側筒状部38には、カテーテルなどの外部管路40が接続されるようになっている。
なお、インナベース部材20のポート部30は、周壁部24の基端に設けられたカラー状突部26よりも大きな突出高さで外周に向けて突設されている。また、ポート部30の周方向両側には、それぞれ所定距離を隔てて、カラー状突部26の外周面から突出する一対の嵌合板部42,42が形成されている。
アウタカバー部材22は、図6,7に単品図が示されているように、上下方向に延びる略筒状とされており、インナベース部材20に上方から被せられて外周の略全体を覆い得る大きさを有している。また、アウタカバー部材22は、厚肉筒状の下側筒状部44と、テーパ筒状の上側筒状部46とを備えている。
アウタカバー部材22の下側筒状部44は、円筒状の嵌合内周面48と、下方に向かって広がるフレア状外周面50とを有しており、下方に向かって次第に厚肉となっている。嵌合内周面48は、インナベース部材20の外周面に対応した円筒形状とされており、嵌合内周面48の下端開口部には、インナベース部材20のカラー状突部26に対応した段付状の拡径部52が形成されている。
また、アウタカバー部材22の下側筒状部44において、インナベース部材20のポート部30に対応する部分が、上下に広がる平坦な外周面をもった竪壁部54とされており、かかる竪壁部54において、ポート部30を外周面に露出させる開口窓56が形成されている。更に、開口窓56の周方向両側には、竪壁部54から外方に突出する一対の保護片58,58が形成されており、インナベース部材20のポート部材34を周方向両側から保護するようになっている。
一方、アウタカバー部材22の上側筒状部46は、上方に向かって次第に縮径して略一定の厚さ寸法で延びるテーパ付きの円筒形状とされている。また、上側筒状部46の上端の開口部分には、内周に向かって突出する環状押え部60が形成されていると共に、環状押え部60の内周端には、下方に突出する係止爪62が、全周に亘って一体形成されている。
また、アウタカバー部材22の底面には、インナベース部材20の嵌合板部42,42に対応する位置に、嵌合凹部64,64が形成されている。なお、アウタカバー部材22には、各嵌合凹部64の外周側に隣接して上下に貫通するサービスホール66が設けられている。かかるサービスホール66は、例えば製造ラインや施術に際して位置決めに利用したり、インナベース部材20又はポート部材34に嵌合ピンを設けて固定するなど、適宜に用いることができる。
そして、アウタカバー部材22は、インナベース部材20に対して上方から被せられ、アウタカバー部材22の下側筒状部44へインナベース部材20が入り込んだ状態で組み付けられ、相互に固着されている。かかる組付状態では、インナベース部材20の外周面の略全体に亘ってアウタカバー部材22の下側筒状部44の嵌合内周面48が重ね合わされている。また、インナベース部材20のカラー状突部26の上面とポート部30の上面には、アウタカバー部材22の下端面が重ね合わされて上下方向に位置合わせされており、インナベース部材20とアウタカバー部材22の各下面が略同じ平面上に広がっている。
さらに、上述の如きハウジング12と協働して内腔18を形成する栓体16は、図8,9に単品図が示されているように、全体として厚肉の略円板形状とされている。なお、栓体16は、ゴムやエラストマなどの弾性材により構成されている。
栓体16の上面には、中央部分において上方に突出する円形の嵌合突部76が設けられている。また、栓体16において、嵌合突部76の外周に位置する上面は、嵌合突部76より下方で環状に広がる上側環状面78とされている。
一方、栓体16の下面には、中央部分において下方に開口する円形の凹部80が設けられている。また、栓体16において、凹部80の外周に位置する下面は、凹部80の開口縁部から径方向外方に広がる環状の下側環状面82とされている。
そして、栓体16は、インナベース部材20の上に重ね合わされて配置され、図1~4に示されているように、上方から被せられるアウタカバー部材22で外周面を覆われた状態でハウジング12へ組み付けられている。ハウジング12への組付状態下で、栓体16の外周部分が、インナベース部材20の周壁部24の上端面と、アウタカバー部材22の環状押え部60との間で、軸方向に挟まれて圧縮されている。
栓体16の外周部分が圧縮されることで、栓体16の外周面は、アウタカバー部材22の上側筒状部46の内周面に密接されている。また、栓体16の外周部分の下面は、インナベース部材20の周壁部24の上端面に対して、環状段差部28を含む全面に亘って当接されている。更に、栓体16の外周部分の上面には、アウタカバー部材22の環状押え部60の内面が当接されていると共に、係止爪62が食い込むように係止されている。
また、ハウジング12への組付状態下で、栓体16の上面は、アウタカバー部材22の上端開口部から上方に僅かに膨らんで露出されている。一方、栓体16の下面は、インナベース部材20の凹所14の開口面上で略平坦に広がっている。これにより、インナベース部材20の凹所14が、開口部において栓体16で流体密に塞がれて薬液貯留用の内腔18が形成されている。
かかる内腔18には、患者の皮下に埋め込まれた使用状態において、経皮的に穿刺される中空針を栓体16に貫通させることで、薬液等を外部から注入可能とされる。また、内腔18に貯留された薬液は、栓体16の弾性等に基づいて、ポート部材34を通じて漸次に流出されて、血管等へ投与され得る。
ここにおいて、ハウジング12には、外部から目視可能な識別表示90が、表示部材としての表示リング92を用いて付されている。
表示リング92は、略一定断面で周方向に延びる円環形状とされており、図4に示されているように、インナベース部材20の周壁部24の上端外周部分へ組み込まれている。即ち、インナベース部材20の周壁部24の上端部分には、上端の外周角部を切り欠くように段差状の小径部94が設けられており、かかる小径部94へ表示リング92が外嵌されて組み付けられている。
なお、表示リング92のハウジング12への組付状態で、表示リング92の外周面はアウタカバー部材22の内周面に重ね合わされていると共に、表示リング92の上端面は栓体16の下面に重ね合わされている。
また、表示リング92の外周面を覆うアウタカバー部材22は、可視光線を透過する無色透明又は有色透明とされており、ハウジング12へ組み込まれた表示リング92の外周面が、アウタカバー部材22を介して、外部から目視可能とされている。なお、図1では、ハウジング12等の外部構造線と区別するために、表示リング92の外形線を破線で示している。因みに、アウタカバー部材22は、透明な合成樹脂材で形成されることが望ましく、耐薬品性や生体適合性などを考慮して、例えばポリエーテルスルホン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などが好適に採用される。また、インナベース部材20は、金属等で形成しても良いが、アウタカバー部材22と同様な合成樹脂製とすることが望ましく、それによってアウタカバー部材22との溶着等による固定も容易に実現可能になる。
表示リング92は、加熱により酸化等の作用で表層が変性して変色域が形成される金属製とされている。表示リング92の材質として採用される金属は、レーザー光の照射による加熱で酸化作用等によるマーキングが可能な金属であれば何等限定されるものではないが、例えばチタンやステンレス、鉄やアルミニウム、及びこれらの合金等が採用され得る。特に本実施形態では、チタン合金製の表示リング92とされており、加熱されることで酸化による変性作用により表面に酸化被膜が形成される。酸化被膜は、光の干渉乃至は回折作用により厚さ等に応じた色相を示すことから、目視で明確な有彩色を看取できる。
それ故、表示リング92に対して局部的な加熱をすることで局部的な変色域としての着色域を設けることが可能であり、例えばレーザー光を用いて表示リング92の表面の特定箇所を加熱することで、表示リング92の表面において任意の形態で各種の文字やデザイン、記号などを、識別表示90として設けることができる。
具体的には、図1に例示されているように、識別表示90が、個体を識別可能な記号として、例えば社標や社名、管理番号などを局部的な着色域で表記することができる。
実際にレーザー光を用いてチタン合金製の表示リング92の表面に着色域を形成した具体例を、図10に示す。レーザー光の照射装置は、オムロン株式会社製「ファイバレーザマーカ MX-Z2000G」を使用した。
なお、図10では、写真光線の関係で中央部分だけが明瞭に見えるが、現物では識別表示90の全体に亘って明瞭に表示し得た。また、かかる表示リング92をハウジング12へ組み込んだ状態で、アウタカバー部材22を介して、識別表示90の全体を外部から目視確認できることが確認できた。
特に、本実施形態の皮下埋込型ポート10では、識別表示90が、レーザー光照射による表示リング92の表面の変性作用で着色形成されることから、表示リング92において実質的に凹凸のない滑らかな表面を維持しつつ識別表示90を付することができる。それ故、従来の識別表示の刻設構造に比して、刻設で生じた凹部への異物や雑菌等の入り込みが防止されて、凹部への異物の入り込みによる識別表示90の視認性の低下や、凹部に入り込んだ異物や雑菌等の体内への侵入リスクの軽減などが図られ得る。
また、本実施形態では、表示リング92の表面が滑らかに維持されると共に、表示リング92の外部への露出が回避されることから、従来のハウジング表面への識別表示の刻設構造で問題になる識別表示部分の凹凸やエッジの体組織への接触と、それに伴う違和感や生理学的反応の問題が、回避され得る。
更にまた、表示リング92がハウジング12の内部に組み込まれて、ハウジング12の表面への露出が回避されていることから、表示リング92や変性作用に伴う着色域によるアレルギーなどの生体反応も軽減乃至は回避することができ、表示リング92の材質などの選択自由度も大きく確保され得る。
しかも、本実施形態では、表示リング92がハウジング12と栓体16で囲まれた略密閉領域に配されており、内腔18内の貯留薬液への接触も防止され得る。それ故、表示リング92や識別表示90の耐薬品性も考慮する必要がないことに加えて、仮に表示リング92に付着した異物等があっても、薬液から体内へ侵入することが防止され得る。
また、表示リング92の変性作用で着色形成された識別表示90は、表面が滑らかで且つ化学的にも安定している。それ故、長期間に亘って識別表示90の表示機能が維持され得ると共に、患者の体内から取り出して観察する際に、従来のハウジング表面に刻設された識別表示のように刻設凹部への生体組織等の入り込みによって視認性が低下することもなく、表面に付着した生体組織等の異物を容易に拭い去ることもできて、識別表示90の目視確認が容易となる。
次に、図11,12には、本発明の第2の実施形態としての皮下埋込型ポート100が示されている。なお、第1の実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、第1の実施形態と同一の符号を付すことで詳細な説明を省略する。
本実施形態は、識別表示の別態様の一つを例示するものであり、ハウジング12を構成する部材の内部に局部的な変色域を設けることで識別表示102を付したものである。
具体的には、透明な合成樹脂材料で形成されたインナベース部材20の底壁部104において、厚さ方向の中間部分に位置して、局部的な変色域による識別表示102が設けられている。かかる変色域は、例えば底壁部104に向けてレーザー光線を照射し、かかるレーザー光線の焦点位置を調節して、底壁部104の厚さ方向中間部分に集光させることで形成される。レーザー光線のエネルギーが、ハウジング12の厚さ方向中間部分で局部的に集中することで、合成樹脂が局部的に加熱変性され、加熱変性された部分が焦がされたり気泡が生成したりすることで、例えば黒色や白色に変色(着色)した変色域が設けられており、当該変色域を用いて識別表示102が付されている。
そして、この識別表示102が、透明とされたインナベース部材20を透過して外部から直接に目視可能とされている。なお、図12では、理解しやすいように、着色領域を誇張して識別表示102をモデル的に示している。
本実施形態の皮下埋込型ポート100においても、ハウジング12の内部が変性されることで、部材表面を滑らかに維持しつつ、目的とする識別表示102を付することができ、第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
特に、識別表示102がハウジング12の内部に設けられていることから、樹脂の変性に伴って発生する物質があっても、生体や薬液などへの影響が回避される。また、第1の実施形態に比して表示リング等の別部品が不要となることから、ハウジング構造の簡略化も実現可能になる。
なお、識別表示102が設けられ得る部位はインナベース部材20の底壁部104に限定されるものではなく、例えばインナベース部材20の周壁部24やアウタカバー部材22などに識別表示102を付することもできる。
次に、図13には、本発明の第3の実施形態としての皮下埋込型ポート110が示されている。本実施形態では、ハウジング112を構成するアウタカバー部材114が金属部材とされており、例えばチタン(チタン合金を含む)製とされている。そして、このアウタカバー部材114により表示部材が構成されて、外周面に識別表示116が設けられている。
かかる識別表示116は、第1の実施形態と同様に、レーザー光の照射によって局部的に形成された変色域によって構成されている。なお、ハウジング112のインナベース部材20をチタン合金製として、インナベース部材20の下面など、外部に露出する面に識別表示116を付することも可能である。
本実施形態では、ハウジング112において外部に露出する面に、表面の滑らかさを確保しつつ識別表示116を付することができ、特別な表示部材を採用することなく、広い表示面を容易に確保することができる。また、チタン合金製のアウタカバー部材114は、レーザー光の照射による良好な発色性を有しつつ、高い生体適合性も発揮される。しかも、従来の識別表示を刻設する場合のように表面の凹凸に起因する問題の発生も回避され得る。それ故、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上述の実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
たとえば、第1および第2の実施形態のように識別表示がハウジングの内部に設けられる場合、アウタカバー部材及び/又はインナベース部材の全体が透明とされる必要はなく、少なくとも識別表示を外部から視認し得る部分が透明であればよい。また、第3の実施形態のように識別表示がハウジングの表面に設けられる場合、アウタカバー部材及び/又はインナベース部材の全体が金属製とされる必要はなく、少なくとも識別表示が設けられる部分が金属製であればよい。なお、識別表示は、有彩色で着色される必要はなく、無彩色で着色されてもよい。
また、ハウジングとは別体の表示部材の組付構造も、第1の実施形態の如きインナベース部材への外嵌組付構造に限定されるものでなく、例えば栓体の外周面やアウタカバー部材の内周面及び/又は外周面に表示部材を組み付けることも可能である。更にまた、表示部材も円環形状に限定されるものでなく、プレート状等の任意の形状が採用可能である。加えて、皮下埋込型ポートの具体的構造や形状、大きさなどは何等限定されるものでなく、ハウジングや栓体、内腔などの各部材は任意に設計することができる。
なお、第1の実施形態の識別表示態様と第2の実施形態の識別表示態様は、両方を併せて採用しても良いし、更に、第1の識別態様と第2の識別表示態様の少なくとも一方と第3の識別表示態様を併せて採用することも可能である。また、採用される識別表示の具体的な表記内容や表記態様などは限定されない。
ところで、図14には、別発明に係る皮下埋込型ポート120の一参考形態が示されている。かかる別発明は、本発明と同様の課題を有する。また、本参考形態の皮下埋込型ポート120は、生体に接触するハウジング表面の滑らかさを確保しつつ、外部から目視可能な識別表示122を実現するものである。
具体的には、図15に示されるように、ハウジング124を構成するインナベース部材126の部材表面に、凹及び/又は凸により識別表示122が付されている。なお、凹凸による識別表示122は、インナベース部材126の材質等を考慮して、例えばプレス型による刻設の他、加熱型やレーザー光照射による溶融などで形成され得る。
このような凹凸は、界面における光の反射や屈折、或いはプリズム作用によって、白色等の着色域として視認される領域を形成する。それ故、識別表示122そのものに顔料や染料で着色せずとも、目視で認識可能な識別表示が実現される。尤も、凹凸の表面に着色したり、凹内に有色充填材を注入等することで、識別表示122の識別性の向上を図ることも可能である。
そして、かかるインナベース部材126には、第1の実施形態と同様に、識別表示122が付された表面を外部から覆うようにして、透明な合成樹脂からなるアウタカバー部材128が組み付けられている。
これにより、インナベース部材126の外周面に付された識別表示122が、アウタカバー部材128を通じて、外部から目視可能とされている。なお、このことから本参考態様では、表示部材がインナベース部材126により構成されている。
上記の如き構造とされた皮下埋込型ポート120では、識別表示122そのものが凹凸やエッジ部を有するものの、かかる凹凸やエッジ部がアウタカバー部材128で覆われて、皮下埋込型ポート120の表面への露出が避けられている。それ故、皮下埋込型ポート120の使用状態における識別表示122の凹凸やエッジの体組織への接触と、それに伴う違和感や生理学的反応の問題が、回避され得る。
また、インナベース部材126において識別表示122の付された外周面が、アウタカバー部材128で覆われており、かかる外周面と内腔18との間が栓体16でシールされている。それ故、識別表示122の凹凸形成によって発生したバリ等の異物が薬液に混入することも防止され得る。
なお、本参考態様では、インナベース部材126の表面に識別表示122が付されていたが、例えば本発明の第1の実施形態と同様に、インナベース部材126やアウタカバー部材128とは別体で表示リング等の表示部材を設けて、かかる表示部材に対して識別表示を付することも可能である。また、識別表示を付す部位も限定されるものでなく、例えばインナベース部材126の底面やアウタカバー部材128の表面などに識別表示を設けると共に、かかる識別表示部位を、別途に設けた透明なカバー部材で覆うことも可能である。或いは、透明なアウタカバー部材128の内周面に識別表示を刻設等で付すことも可能であり、その場合には、アウタカバー部材128自体によって、内周面に付した識別表示を覆う透明なカバー部材が構成され得る。
また、本参考態様の如き識別表示122は、直接に表面に露呈されないことから、凹凸での形成に代えて、例えば染料や顔料を印刷などで部材表面に付することで着色することによって識別表示122を構成してもよい。
このように識別表示122が、染料や顔料の付着で設けられる場合であっても、識別表示122が透明なカバー部材で覆われることから、識別表示122の剥がれや溶出が防止されて、染料や顔料が体内へ放出されるリスクが回避され得る。
すなわち、本明細書及び図面は、クレームされた本発明とは別発明として、以下の別発明態様を開示する。
第1の別発明態様は、表示部材の表面に付された製品の識別表示が、透明なカバー部材を介して、外部から目視可能に設けられている皮下埋込型ポートである。
第2の別発明態様は、前記第1の別発明態様において、前記識別表示が、前記表示部材の表面において凹及び/又は凸をもって刻設されているものである。
第3の別発明態様は、前記第1又は第2の別発明態様において、前記識別表示が着色されているものである。
10,100,110:皮下埋込型ポート、22:アウタカバー部材(合成樹脂部材、カバー部材)、90,102,116:識別表示、92:表示リング(金属部材、表示部材)、114:アウタカバー部材(金属部材、表示部材)
Claims (1)
- レーザー光照射の変性作用による局部的な変色域が滑らかな部材表面をもって設けられており、外部から目視可能な識別表示が該局部的な変色域を用いて付されている皮下埋込型ポート。
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