JP2023114323A - 導電性パターン付構造体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】層間密着性が良好な導電性パターン付構造体を形成できる、導電性パターン付構造体の製造方法を提供する。【解決手段】基材と前記基材上の導電性パターンとを有する導電性パターン付構造体の製造方法であって、基材に対し、有機溶媒処理及びアルカリ処理からなる群から選択される1つ以上の処理を行う前処理工程と、前記前処理工程後の基材に酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子を含む分散体を塗布して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、前記塗布膜を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程後の塗布膜にめっきを行うめっき工程と、を含み、前記乾燥工程において、前記乾燥工程の後且つ前記めっき工程の前に、及び/又は、前記めっき工程の後に、塗布膜を大気圧未満の雰囲気圧力下で乾燥させる減圧乾燥を行う、導電性パターン付構造体の製造方法。【選択図】図2

Description

本発明は、導電性パターン付構造体の製造方法に関する。
回路基板は、基材上に導電性の配線を施した構造を有する。回路基板の製造方法は、一般的に、次の通りである。まず、金属箔を貼り合せた基材上にフォトレジストを塗布する。次に、フォトレジストを露光及び現像して所望の回路パターンのネガ状の形状を得る。次に、フォトレジストに被覆されていない部分の金属箔をケミカルエッチングにより除去してパターンを形成する。これにより、高性能の回路基板を製造することができる。しかしながら、従来の方法は、工程数が多く、煩雑であると共に、フォトレジスト材料を要する等の欠点がある。
これに対し、金属又は金属酸化物の粒子を分散させた分散体で基材上に所望の配線パターンを直接印刷する直接印刷技術が注目されている。この技術は、工程数が少なく、フォトレジスト材料を用いる必要がない等、きわめて生産性が高い。しかしながら、金属粒子を用いた場合、金属粒子自体の酸化などにより、安定性に問題が生じる場合がある。一方、金属酸化物粒子を用いた場合は、導電性を得るために還元焼成工程が必要となるため、使用できる基材が限定されること、及び還元性ガスが必要となって高コストになる問題点がある。
上記に関し、例えば特許文献1は、基板上に、所定パターンの導電膜を形成する導電膜の形成方法を記載する。当該方法においては、基板上に、導電膜のパターンとほぼ等しいパターンとなるように、金属粒子を含有する金属膜を液滴吐出法により形成し、その後、少なくとも1回の無電解めっきによって当該金属膜の表面を覆うようにめっき膜を形成することで導電膜を得る。
特開2006-128228号公報
特許文献1に記載される方法は、金属粒子を用いたパターン形成とめっきとを組み合わせることで、導電性及び信頼性に優れる導電膜を形成しようとするものであるが、当該方法では、導電膜と基材との密着性及び/又は導電膜内の層間の密着性(本開示で、これらを纏めて層間密着性ともいう。)になお不足があった。
本発明の一態様は、かかる状況に鑑み、層間密着性が良好な導電性パターン付構造体を形成できる、導電性パターン付構造体の製造方法を提供することを目的とする。
本開示は、以下の態様を包含する。
[1] 基材と前記基材上の導電性パターンとを有する導電性パターン付構造体の製造方法であって、
基材に対し、有機溶媒処理及びアルカリ処理からなる群から選択される1つ以上の処理を行う前処理工程と、
前記前処理工程後の基材に酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子を含む分散体を塗布して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、
前記塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程後の塗布膜にめっきを行うめっき工程と、
を含み、
前記乾燥工程において、前記乾燥工程の後且つ前記めっき工程の前に、及び/又は、前記めっき工程の後に、塗布膜を大気圧未満の雰囲気圧力下で乾燥させる減圧乾燥を行う、導電性パターン付構造体の製造方法。
[2] 前記乾燥工程において、前記減圧乾燥と、塗布膜を大気圧以上の雰囲気圧力下で乾燥させる非減圧乾燥とを行う、上記態様1に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
[3] 前記乾燥工程の後且つ前記めっき工程の前に還元工程を更に含む、上記態様1又は2に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
[4] 前記還元工程が湿式還元工程である、上記態様3に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
[5] 前記減圧乾燥における圧力が、90kPa以下、0.000001kPa以上である、上記態様1~4のいずれかに記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
[6] 前記基材がポリイミドである、上記態様1~5のいずれかに記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
[7] 前記分散体が、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、及び1-オクタノールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記態様1~6のいずれかに記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
本発明の一態様によれば、層間密着性が良好な導電性パターン付構造体を形成できる、導電性パターン付構造体の製造方法を提供することができる。
本発明の一態様で使用できる分散体における酸化銅とリン酸エステル塩との関係を示す断面模式図である。 本発明の一態様に係る導電性パターン付構造体の製造手順を示す断面模式図である。
以下、本発明の実施形態を例示するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
本発明の一態様は、基材と当該基材上の導電性パターンとを有する導電性パターン付構造体の製造方法を提供する。一態様において、当該方法は、
基材に対し、有機溶媒処理及びアルカリ処理からなる群から選択される1つ以上の処理を行う前処理工程と、
前処理工程後の基材に酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子を含む分散体を塗布して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、
塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
乾燥工程後の塗布膜にめっきを行うめっき工程と、
を含む。一態様においては、乾燥工程において、乾燥工程の後且つめっき工程の前に、及び/又は、めっき工程の後に、塗布膜を大気圧未満の雰囲気圧力下で乾燥させる減圧乾燥を行う。一態様においては、乾燥工程において、減圧乾燥と、塗布膜を大気圧以上の雰囲気圧力下で乾燥させる非減圧乾燥とを行う。
一態様に係る方法は、塗布膜形成工程の後、且つめっき工程の前に、還元工程を更に含む。
以下、各工程の好適例について説明する。
[基材]
本実施形態で用いられる基材は、塗布膜を形成する表面を有するものであり、配線パターンを形成するための回路基板シートの基板材料等を例示できる。基材は、無機材料若しくは有機材料又はこれらの組合せで構成されてよく、一態様において密着層を有してよい。
無機材料としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス等のガラス、及びアルミナ等のセラミック材料が挙げられる。
有機材料としては、セルロースなどの紙材料、樹脂フィルム等の高分子材料が挙げられる。高分子材料としては、ポリイミド(PI)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール(POM)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)(PA6、PA66等)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PENt)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、シリコーンポリマー(ポリシロキサン)、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノールノボラック、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、シクロオレフィンポリマー(COP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等を挙げることができる。ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)は、フレキシブル性、及びコストの観点から好ましい。中でも、ポリイミド(PI)は、イミド結合を有することで、本開示の前処理工程及び/又は後処理工程による効果を良好に発現し得る点で好ましい。
基材は、例えば、ガラスコンポジット基材、ガラスエポキシ基材等の複合基材、テフロン(登録商標)基材、アルミナ基材、低温低湿同時焼成セラミックス(LTCC)、シリコンウェハ等であってもよい。
基材の厚みは、好ましくは、1μm以上、又は25μm以上であり、好ましくは、10mm以下、又は5mm以下、又は1mm以下、又は250μm以下である。基材の厚みが250μm以下である場合、作製される電子デバイスを、軽量化、省スペース化、及びフレキシブル化でき好ましい。基材は筐体であってもよく、この場合の厚みとしては、1μm以上、又は25μm以上、又は100μm以上、又は200μm以上を例示でき、また10mm以下、又は5mm以下を例示できる。筐体の厚みが上記範囲であることは基材成型後の良好な機械的強度及び耐熱性の点で有利である。
<前処理工程>
前処理工程は、基材と、酸化銅及び/又は銅の層との密着性の向上を目的に実施する。本工程は、塗布膜形成工程の前に、基材に対し、有機溶媒処理、及びアルカリ処理からなる群から選択される1つ以上の処理を施す工程である。上記処理のうち2つ以上を併用することで、密着性向上効果がより良好になる傾向がある。
有機溶媒処理は、基材を有機溶媒に接触させる処理である。接触は、基材の有機溶媒中への浸漬、基材に対する有機溶媒の噴霧等であってよく、好ましくは基材の有機溶媒中への浸漬である。有機溶媒としては、基材を溶解又は膨潤させる溶媒が好ましい。このような溶媒を、制御された条件で基材に接触させることにより、基材の表面のみを溶解又は膨潤させることができる。具体的には、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン等の環状エステル系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル等の鎖状エステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶媒;プロピレングリコールメチルアセテート、2-メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のグリコールエステル系溶媒;フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール等のフェノール系溶媒;アセトフェノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒;スルホラン、ジメチルスルホキシド等のスルホン系溶媒;キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒;クロロホルム等のハロゲン系溶媒;ジメチルアニリン等のアニリン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;エタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール等のアルコール系溶媒;が好ましい。特に、ポリイミド基材を用いる場合には、ポリイミドを膨潤させ得る点で、N-メチルピロリドンが最も好ましい。基材が膨潤することで、分散体が基材に塗布された後には、酸化銅及び/又は銅の層と基材との間にアンカー効果が働き、これらの密着性が良好となる。
有機溶媒処理の処理条件は、基材の表面のみが処理されるように適宜調整してよく、例えば、浸漬時間は、好ましくは、1分以上、又は5分以上であり、好ましくは、120分以下、又は60分以下である。浸漬温度は、好ましくは、10℃以上、又は20℃以上であり、好ましくは、100℃以下、又は60℃以下である。
アルカリ処理は、基材をアルカリ性処理剤に接触させる処理である。接触は、基材のアルカリ性処理剤中への浸漬、基材に対するアルカリ性処理剤の噴霧等であってよく、好ましくは基材のアルカリ性処理剤中への浸漬である。アルカリ性処理剤としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、2アミノエタノール水溶液、ジエチレントリアミン水溶液等が挙げられる。アルカリ性処理剤のpHは、好ましくは、8以上、又は9以上、又は10以上であり、好ましくは13以下である。アルカリ処理は、基材表面を化学的に変性することで、当該基材表面に、酸化銅及び/又は銅の層を強固に保持し得る化学構造を形成できる。例えば、ポリイミド基材を用いる場合、アルカリ処理によってポリイミドのイミド結合を切断することで、イミド基由来のアミド部位による水素結合、上記切断で生じたカルボキラートアニオンへの銅の配位、等によって、酸化銅及び/又は銅の層と基材との密着性が向上する。
アルカリ処理の処理条件は、基材の表面のみが処理されるように適宜調整してよく、例えば、浸漬時間は、好ましくは、1分以上、又は5分以上であり、好ましくは、120分以下、又は60分以下である。浸漬温度は、好ましくは、10℃以上、又は20℃以上であり、好ましくは、100℃以下、又は60℃以下である。
<塗布膜形成工程>
本工程では、酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子を含む分散体(本開示で、単に分散体ともいう。)を基材に塗布して、塗布膜を得る。
[酸化銅含有粒子及び/又は銅粒子を含む分散体]
分散体は、酸化銅含有粒子及び/又は銅粒子を含む。酸化銅含有粒子は、典型的には酸化銅からなるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含み得る。同様に、銅含有粒子は、典型的には銅からなるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含み得る。分散体は、分散媒、分散剤、及び/又は、還元剤を更に含んでもかまわない。
(酸化銅又は銅)
酸化銅としては、酸化第一銅(Cu2O)及び酸化第二銅(CuO)が挙げられるが、酸化第一銅が好ましい。酸化第一銅は、価格的にも銅であるがゆえに銀等の貴金属類と比較し安価である点、及びマイグレーションが生じ難い点で有利である、酸化銅又は銅としては、市販品又は合成品を用いてよい。
例えば、酸化第一銅の合成法としては、次の方法が挙げられる。
(1)ポリオール溶剤中に、水と銅アセチルアセトナト錯体を加え、いったん有機銅化合物を加熱溶解させ、次に、反応に必要な水を後添加し、さらに昇温して有機銅の還元温度で加熱して加熱還元する方法。
(2)有機銅化合物(例えば銅-N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン錯体)を、ヘキサデシルアミン等の保護剤存在下、不活性雰囲気中で、300℃程度の高温で加熱する方法。
(3)水溶液中に溶解した銅塩をヒドラジンで還元する方法。
この中では(3)の方法は操作が簡便で、かつ、平均粒子径の小さい酸化第一銅が得られるので好ましい。
酸化第二銅の合成方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)塩化第二銅又は硫酸銅の水溶液に水酸化ナトリウムを加えて水酸化銅を生成させた後、加熱する方法。
(2)硝酸銅、硫酸銅、炭酸銅、水酸化銅等を空気中で600℃程度の温度に加熱して熱分解する方法。
この中で(1)の方法は粒子径が小さい酸化第二銅が得られるので好ましい。
酸化銅の合成終了後、生成物溶液(上澄みとして)と酸化銅(沈殿物として)との分離は、遠心分離等の既知の方法を用いて行ってよい。以上のようにして、酸化銅含有粒子を得ることができる。
分散体の調製に際しては、酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子に、後述の分散媒、及び任意に後述の分散剤を加え、ホモジナイザー等既知の方法で攪拌し分散させてよい。分散媒によっては酸化銅が分散し難く分散が不充分な場合があるが、このような場合は、一例として、酸化銅が分散しやすいアルコール類(例えばブタノール等)を分散媒として用いて酸化銅を分散させた後、所望の分散媒への置換と所望の濃度への濃縮を行うことで、酸化銅を所望の分散媒に良好に分散させることができる。方法の一例として、UF膜による濃縮、適切な分散媒によって希釈及び濃縮を繰り返す方法、等が挙げられる。このようにして、酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子を含む分散体を得ることができる。
一態様において、酸化銅含有粒子及び銅含有粒子の平均粒子径は、好ましくは、1nm以上、又は3nm以上、又は5nm以上であり、好ましくは、100nm以下、又は50nm以下、又は40nm以下である。ここで平均粒子径とは、分散体中での分散時の粒子径であり、キュムラント法(例えば大塚電子製FPAR-1000を使用)によって測定したときの値である。すなわち、平均粒子径は、一次粒子径とは限らず、二次粒子径である場合もある。平均粒子径が100nm以下の場合、低温でのパターン形成が可能となり、基材の汎用性が広がる点、及び、基材上に微細パターンを形成し易い傾向がある点で好ましい。また、平均粒子径が1nm以上の場合、分散体中での酸化銅含有粒子及び銅含有粒子の分散安定性が良好で、分散体の長期保管安定性が良好である点、及び、均一な薄膜を作製できる点で好ましい。一態様において、分散体中の粒子は実質的に酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子のみである。この場合、分散体について測定した平均粒子径の値を酸化銅含有粒子及び銅含有粒子の平均粒子径とみなすことができる。
一態様において、酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子はヒドラジンを含む。ヒドラジンは水和物を形成していてもよい(すなわち、本開示のヒドラジンとは、ヒドラジン水和物も包含する概念である。)。ヒドラジンは、酸化銅含有粒子又は銅含有粒子の製造時に、酸化銅の還元剤として使用したヒドラジンの残留物であってもよいし、当該粒子の製造時に別途添加されたものでもよい。
酸化銅含有粒子中の酸化銅の含有率、及び銅含有粒子中の銅の含有率は、好ましくは、10質量%以上、又は30質量%以上、又は50質量%以上、又は70質量%以上であり、好ましくは、100質量%以下、又は99質量%以下、又は98質量%以下である。
酸化銅含有粒子中又は銅含有粒子中のヒドラジンの含有率は、好ましくは、0.000000001質量%以上、又は0.0000001質量%以上、又は0.0000005質量%以上であり、好ましくは、10質量%以下、又は5質量%以下、又は1質量%以下である。
酸化銅含有粒子中の酸化銅又は銅含有粒子中の銅に対する、ヒドラジンの質量比率は、好ましくは0.00001以上、又は0.0001以上、又は0.0002以上であり、好ましくは、1以下、又は0.1以下、又は0.01以下である。
分散体100質量%中の、酸化銅の質量比率、銅の質量比率、又は、酸化銅及び銅の合計質量比率は、好ましくは、5質量%以上、又は10質量%以上、又は15質量%以上であり、好ましくは、60質量%以下、又は55質量%以下、又は50質量%以下である。
(分散媒)
分散媒は、酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子を分散させることができるものである。一態様において、分散媒は、分散剤を溶解させることができる。分散体を用いて導電性パターンを形成するという観点から、分散媒の揮発性が作業性に影響を与える。したがって、分散媒は、導電性パターンの形成方法、例えば塗布の方式(特に印刷)に適するものであることが好ましい。すなわち、分散媒は分散性と印刷の作業性とに合わせて選択することが好ましい。
分散媒としては、アルコール類(1価アルコール及び多価アルコール(例えばグリコール))、アルコール(例えばグリコール)のエーテル類、アルコール(例えばグリコール)のエステル類等を使用できる。分散媒の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリ-1,2-プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、2-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよく、塗布方式に応じ、蒸発性、塗布に用いる機材、基材(すなわち被塗布基材)の耐溶剤性等を考慮し選択する。乾燥が遅く、連続印刷を用いる場合のインクの凝集が生じにくい点、及び、インクジェット印刷を用いる場合の間欠安定性が良好であり、異常飛行が少ない点で、分散体は、好ましくは、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、及び1-オクタノールからなる群から選択される1種以上の分散媒を含み、より好ましくは、1-ヘプタノール及び1-オクタノールからなる群から選択される1種以上の分散媒を含む。
分散媒の沸点は、印刷連続性の向上という点では高い方が好ましく、例えば、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。一方、上記沸点は、分散媒としての機能を良好に得る観点から、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。
分散媒の含有量は、分散体全体中、好ましくは、30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上であり、好ましくは、95質量%以下、又は90質量%以下である。
(分散剤)
分散剤としては、酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子を分散媒中に分散させることができる化合物を使用できる。分散剤の数平均分子量は、好ましくは、300以上、又は350以上、又は400以上であり、好ましくは、300,000以下、又は200,000以下、又は150,000以下である。なお本開示の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用い標準ポリスチレン換算で求められる値である。数平均分子量が300以上であると、絶縁性に優れ、分散体の分散安定性への寄与も大きい傾向があり、300,000以下であると、取扱い性の点で好ましい。分散剤は、酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子、特に酸化銅含有粒子に対する親和性を有する基を有していることが好ましい。この観点から、分散剤は、好ましくは、リン含有有機物を含み又はリン含有有機物であり、又は、リン酸エステルを含み又はリン酸エステルであり、又は、ポリマーのリン酸エステルを含み又はポリマーのリン酸エステルである。ポリマーのリン酸エステルとして、例えば、下記式(1):
(式中、lは1~10000の整数であり、mは1~10000の整数であり、そしてnは1~10000の整数である。)
で示される構造は、酸化銅、特に酸化第一銅への吸着性、及び基材への密着性に優れるため、好ましい。
化学式(1)中、lは、より好ましくは1~5000、更に好ましくは1~3000である。
化学式(1)中、mは、より好ましくは1~5000、更に好ましくは1~3000である。
化学式(1)中、nは、より好ましくは1~5000、更に好ましくは1~3000である。
一態様において、リン含有有機物の分解温度は、600℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。分解温度は、分散体の分散安定性向上効果に優れる分散剤の選定が容易である観点から、50℃以上、又は80℃以上、又は100℃以上であってもよい。一態様において、リン含有有機物の沸点は、300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。沸点は、30℃以上、又は50℃以上、又は80℃以上であってよい。本開示で、分解温度は、熱重量示差熱分析法で測定される値である。
一態様において、リン含有有機物は、めっきを行う場合に塗布膜及びめっき層の剥がれが生じ難い点で好ましい。
分散剤としては公知のものを用いてもよい。例えば、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルとの塩、不飽和ポリカルボン酸ポリアミノアマイド、ポリアミノアマイドのポリカルボン酸塩、長鎖ポリアミノアマイドと酸ポリマーとの塩、等の、塩基性基を有するポリマーが挙げられる。また、アクリル系(コ)ポリマー、変性ポリエステル酸、ポリエーテルエステル酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリカルボン酸等のポリマーの、アルキルアンモニウム塩、アミン塩、アミドアミン塩等が挙げられる。このような分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。
上記市販品としては、例えば、DISPERBYK(登録商標)―101、DISPERBYK―102、DISPERBYK-110、DISPERBYK―111、DISPERBYK―112、DISPERBYK-118、DISPERBYK―130、DISPERBYK―140、DISPERBYK-142、DISPERBYK―145、DISPERBYK―160、DISPERBYK―161、DISPERBYK―162、DISPERBYK―163、DISPERBYK―2155、DISPERBYK―2163、DISPERBYK―2164、DISPERBYK―180、DISPERBYK―2000、DISPERBYK―2025、DISPERBYK―2163、DISPERBYK―2164、BYK―9076、BYK―9077、TERRA-204、及びTERRA-U(以上ビックケミー社製)、フローレンDOPA-15B、フローレンDOPA-15BHFS、フローレンDOPA-22、フローレンDOPA-33、フローレンDOPA-44、フローレンDOPA-17HF、フローレンTG-662C、及びフローレンKTG-2400(以上共栄社化学社製)、ED-117、ED-118、ED-212、ED-213、ED-214、ED-216、ED-350、及びED-360(以上楠本化成社製)、プライサーフM208F、及びプライサーフDBS(以上第一工業製薬製)等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
分散剤の酸価(mgKOH/g)は、好ましくは、20以上、又は30以上であり、好ましくは、130以下、又は100以下である。酸価が上記範囲である場合、分散体の分散安定性が良好であり好ましい。特に、酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子の平均粒子径が小さい場合、上記範囲の酸価が有効である。具体的には、ビックケミー社製「DISPERBYK―102」(酸価101)、「DISPERBYK-140」(酸価73)、「DISPERBYK-142」(酸価46)、「DISPERBYK-145」(酸価76)、「DISPERBYK-118」(酸価36)、「DISPERBYK-180」(酸価94)等が好ましく挙げられる。
また、分散剤のアミン価(mgKOH/g)と酸価との差([アミン価]-[酸価])は、-50以上0以下であることが好ましい。アミン価は、遊離塩基と遊離塩基由来部位との総量を示すものであり、酸価は、遊離脂肪酸と遊離脂肪酸由来部位との総量を示すものである。アミン価及び酸価は、それぞれ、JIS K 7700又はASTM D2074に準拠した方法で測定する。[アミン価]-[酸価]の値が-50以上0以下である場合、分散体の分散安定性が良好であり好ましい。[アミン価]-[酸価]の値は、より好ましくは-40以上0以下であり、さらに好ましくは-20以上0以下である。
分散剤の含有量は、酸化銅及び銅の量に比例させ、要求される分散安定性を考慮し調整するのがよい。分散体中の酸化銅及び銅に対する分散剤の質量比率(分散剤質量/酸化銅及び銅の合計質量)は、好ましくは、0.0050以上、又は0.050以上、又は0.10以上であり、好ましくは、0.30以下、又は0.25以下、又は0.23以下である。分散剤の量は分散体の分散安定性に影響し、量が少ないと酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子が凝集しやすく、多いと分散体の分散安定性が向上する傾向がある。但し、分散体における分散剤の含有率を35質量%以下にすると、めっき工程後に得られる銅含有膜において分散剤由来の残渣の影響を抑え、導電性を向上できる。一態様において、分散体100質量%中の分散剤の量は、好ましくは、0.5質量%以上、又は0.8質量%以上、又は1.0質量%以上であり、好ましくは、35質量%以下、又は30質量%以下、又は25質量%以下である。
(還元剤)
分散体が酸化銅含有粒子を含む場合、分散体は還元剤を含んでよい。還元剤としては、ヒドラジン、ナトリウム、水素化ホウ酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、蟻酸、シュウ酸、アスコルビン酸、硫化鉄(II)、塩化スズ(II)、水素化ジイソブチルアルミニウム、カーボン等が挙げられ、好ましくはヒドラジンである。ヒドラジンはヒドラジン水和物の形態であってもよい(すなわち、本開示のヒドラジンとは、ヒドラジン水和物も包含する概念である。)。分散体がヒドラジンを含むことにより、めっき工程において、ヒドラジンが酸化銅、特に酸化第一銅の還元に寄与し、より抵抗の低い還元銅層(銅含有膜として)を形成することができる。また、ヒドラジンは、分散体の分散安定性の維持においても有利であり、めっき時の生産性向上の観点からも好ましい。分散体中のヒドラジンは、酸化銅含有粒子中の成分として、及び/又は酸化銅含有粒子とは別に、存在してよい。
分散体中の還元剤の含有量(水和物の場合は水和水を除いた量)は、酸化銅の量に比例させ,要求される還元性を考慮し調整するのがよい。一態様において、分散体中の酸化銅に対する還元剤の質量比率(還元剤質量/酸化銅質量)は、好ましくは0.0001以上であり、好ましくは、0.1以下、又は0.05以下、又は0.03以下である。還元剤の質量比率が0.0001以上である場合、分散体の分散安定性が良好であり、かつ還元銅層の抵抗が低い点で好ましく、0.1以下である場合、分散体の長期安定性が良好である。
還元剤は2種類以上を併用してもよい。例えば、ヒドラジンとヒドラジン以外の還元剤とを併用する場合、分散体中のヒドラジンとヒドラジン以外の還元剤との合計含有量は、酸化銅の量に比例させ,要求される還元性を考慮し調整するのがよい。一態様において、分散体中の酸化銅に対するヒドラジンとヒドラジン以外の還元剤との合計質量比率(還元剤合計質量/酸化銅質量)は、好ましくは0.0001以上であり、好ましくは、0.1以下、又は0.05以下、又は0.03以下である。還元剤の上記合計質量比率が0.0001以上である場合、分散体の分散安定性が良好であり、かつ還元銅層の抵抗が低い点で好ましく、0.1以下である場合、分散体の長期安定性が良好である。
分散体は、配合成分を混合し、ミキサー法、超音波法、3本ロール法、2本ロール法、アトライター、ホモジナイザー、バンバリーミキサー、ペイントシェイカー、ニーダー、ボールミル、サンドミル、自公転ミキサー等を用いて分散処理することにより製造できる。分散体の粘度は、目的の塗布様式に応じて設計できる。例えばスクリーン印刷用の分散体の粘度は、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上、さらに好ましくは200mPa・s以上であり、好ましくは50000mPa・s以下、より好ましくは10000mPa・s以下、さらに好ましくは5000mPa・s以下である。なお分散体の粘度は、コーンプレート型回転粘度計を用いて23℃で測定される値である。
(分散体中の酸化銅と分散剤との関係)
図1は、本発明の一態様で使用できる分散体(酸化銅インク)における、酸化銅とリン酸エステル塩との関係を示す断面模式図である。図1を参照し、本発明の一態様において、酸化銅インク100が、酸化銅12とリン酸エステル塩13(分散剤としてのリン酸エステルの例)とを含む場合、酸化銅12の周囲を、リン酸エステル塩13が、リン13aを内側に、エステル塩13bを外側にそれぞれ向けて取り囲んでいる。リン酸エステル塩13は電気絶縁性を示すため、互いに隣接する酸化銅12間の電気的導通は、リン酸エステル塩13によって妨げられている。また、リン酸エステル塩13は、立体障害効果により酸化銅インク100の凝集を抑制している。したがって、酸化銅12は半導体である(すなわちある程度の導電性を有する)が、電気絶縁性を示すリン酸エステル塩13で覆われているので、酸化銅インク100は電気絶縁性を示す。
一方、めっき工程等において酸化銅12が銅に還元されると、優れた電気導電性を有する導電性パターン領域が形成される。なお、分散剤としてリン含有有機物を用いた場合、導電性パターン領域中にはリン元素が残存している。リン元素は、リン元素単体、リン酸化物及びリン含有有機物のうち少なくとも1つとして存在している。しかし、このような残存リン元素は、通常、導電性パターン領域中に偏析して存在しているため、導電性パターン領域の抵抗が大きくなる恐れはない。
[塗布膜の形成]
分散体の塗布方法としては、インクジェット印刷、スクリーン印刷、凹版ダイレクト印刷、凹版オフセット印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等を用いることができる。塗布は、ダイコート、スピンコート、スリットコート、バーコート、ナイフコート、スプレーコート、ディップコート等の方法を用いて実施できる。塗布方法は、好ましくはインクジェット印刷である。インクジェット法は印刷版が不要でかつ、配線間に余分な成分が付着することがないので、マイグレーション性に優れる。
塗布膜の乾燥後の層厚は、均一な導電性パターンを形成できる点で、好ましくは、1nm以上、又は10nm以上、又は100nm以上であり、好ましくは、10000nm以下、又は8000nm以下、又は7000nm以下である。
基材は密着層(インク受容層ともいう)を有してよく、分散体を当該密着層上に印刷することで塗布膜を形成してよい。密着層を形成する化合物(本開示において「コーティング用化合物」ともいう)は、好ましくは、-OH基を有し、並びに/又は、Ar-O構造及び/若しくはM-O構造を有する。ここで、Arは芳香族構造を、Mは金属原子をそれぞれ表す。上記密着層が存在する場合、酸化銅及び/又は銅の層を基材上に密着性良く形成でき、更に、熱が基材本体まで伝わりにくいことによって、耐熱性の低い樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂をも基材本体として使用できるため汎用性の点で有利である。
-OH基は、特に芳香族性水酸基(すなわち、-Ar-OH基を構成する-OH基)又は金属原子に結合した水酸基(すなわち、-M-OH基を構成する-OH基)であることが好ましい。-Ar-OH基及び-M-OH基を構成する-OH基は活性が高く、密着層と基材本体との密着性、及び/又は、酸化銅及び/又は銅の層と密着層との密着性に優れる傾向にある。
-Ar-OH基における芳香族構造(Ar)としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、及びトリフェニレン等の芳香族炭化水素;並びに、チオフェン、チアゾール、ピロール、フラン、ピリジン、ピラゾール、イミダゾール、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジン等の複素芳香族化合物;等の芳香族化合物に由来する(すなわち、これら化合物から水素原子が2つ除かれた)2価の基が挙げられる。芳香族構造のπ電子系に含まれる電子数は、22以下であることが好ましく、14以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。π電子系に含まれる電子数が22以下であると結晶性が高くなりすぎず、柔軟で平滑性の高い密着層を得やすくなる。芳香族構造は、芳香環に結合した水素の一部が官能基によって置換されていてもよい。官能基としては、例えば、ハロ基、アルキル基(例えばメチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、複素芳香族基(チエニル基等)、ハロアリール基(例えばペンタフルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基等)、アルケニル基、アルキニル基、アミド基、アシル基、アルコキシ基(例えばメトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、ナフトキシ基等)、ハロアルキル基(例えばパーフルオロアルキル基等)、チオシアノ基、及び水酸基等を挙げることができる。-Ar-OH基としては、特にヒドロキシフェニル基(-Ph-OH)が好ましい。
-M-OH基における金属原子(M)としては、ケイ素、銀、銅、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、タンタル、錫、カルシウム、セリウム、クロム、コバルト、ホルミウム、ランタン、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、アンチモン、サマリウム、テルビウム、タングステン、イットリウム、亜鉛、及びインジウム等が挙げられる。密着層に絶縁性を要する場合は、-Si-OH基、又は-Zr-OH基が好ましく、密着層に導電性を要する場合は、-Ti-OH基、又は-Zn-OH基が好ましい。
Ar-O構造における芳香族構造(Ar)は、上記-Ar-OH基に関して例示した芳香族化合物と同様の芳香族化合物から水素原子が1つ以上除かれた構造であってよい。特に、Ar-O構造としては、Ph-O構造が好ましい。
M-O構造における金属原子は、上記-M-OH基に関して例示した金属原子と同様のものを用いることができる。特に、M-O構造としては、Si-O構造、Ti-O構造、Zn-O構造、及びZr-O構造が好ましい。
Si-O構造を有するコーティング用化合物としては、例えばシリカ系化合物(例えば二酸化ケイ素(SiO2))、及びシリコーン系化合物(例えばポリシロキサン、例えばアルキルポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン)等が挙げられる。
コーティング用化合物としては、例えば、ポリイミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PENt)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、シリコーンポリマー(ポリシロキサン)、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノールノボラック樹脂、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)等に、上記の-OH基、Ar-O構造及びM-O構造のうち1つ以上を導入した材料が挙げられる。コーティング用化合物としては、特に、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ポリビニルフェノール、及びポリイミドが好ましい。
密着層の厚みの上限値は特に限定されないが、好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm以下であり、下限値は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.2μm以上である。
<乾燥工程>
本工程では、塗布膜形成工程で得た塗布膜を乾燥させる。本開示の方法では、塗布膜を大気圧未満の雰囲気圧力下で乾燥させる減圧乾燥を、乾燥工程において、乾燥工程の後且つめっき工程の前に、及び/又は、めっき工程の後に行う。一態様においては、乾燥工程において、減圧乾燥と、塗布膜を大気圧以上の雰囲気圧力下で乾燥させる非減圧乾燥とを行う。
減圧乾燥及び非減圧乾燥は、それぞれ分散媒を気化させるための工程である。本開示で、減圧乾燥とは、乾燥時の温度において大気圧(1気圧)未満である雰囲気圧力下での乾燥を意味し、非減圧乾燥とは、乾燥時の温度において1気圧以上である雰囲気圧力下での乾燥を意味する。塗布膜中の分散媒は、典型的には、高沸点であり、及び/又は、水酸基を有することで水素結合を形成しやすい。したがって、塗布膜の乾燥のために減圧乾燥を少なくとも用いることは、分散媒を良好に除去し、層間密着性を向上させる点で有利である。減圧乾燥は、基材と塗布膜との界面に吸着している溶媒を良好に除去できる点で、層間密着性及びその再現性(すなわち、良好な層間密着性の安定した発現)に有利である。
減圧乾燥に加えて非減圧乾燥を更に行う場合、基材と酸化銅又は銅との界面の分散媒の除去がより進むことで、基材と酸化銅又は銅との密着性がより高まる。減圧乾燥及び非減圧乾燥を共に行う場合、減圧乾燥及び非減圧乾燥のいずれを先に行ってもよいが、乾燥効率の観点から、非減圧乾燥を減圧乾燥の前に行うことが好ましい。
本開示の方法では、前処理工程において有機溶媒処理及び/又はアルカリ処理を行うため、前処理工程後の基材には、通常、これらの薬液残りが生じている。減圧乾燥によれば、上記の薬剤も良好に除去できるため、層間密着性及びその再現性の向上の点で有利である。すなわち、前処理工程と減圧乾燥工程とを併用することが、基材と酸化銅又は銅との密着性向上において有利である。
[減圧乾燥]
上記した各タイミングで実施され得る減圧乾燥において、分散媒は、室温(一態様において20℃)で気化させてもよいし、オーブン等によって加熱下で気化させてもよい。減圧乾燥の温度は、乾燥効率の観点から、好ましくは、20℃以上、又は30℃以上、又は40℃以上、又は50℃以上であり、基材の耐熱性を考慮すると、好ましくは、150℃以下、又は140℃以下、又は130℃以下、又は120℃以下、又は110℃以下、又は100℃以下である。
減圧乾燥における圧力は、塗布膜中の分散媒の良好な除去の観点から、好ましくは、90kPa以下、又は55kPa以下、又は1kPa以下であり、コストの観点から、好ましくは、0.000001kPa以上、又は0.00001kPa以上、又は0.0001kPa以上である。減圧は、減圧ポンプ等により行ってよい。減圧乾燥においてシリカゲル等の乾燥材を更に用いることは、乾燥の効果をより高める観点から好ましい。
減圧乾燥時間は、塗布膜中の分散媒の良好な除去の観点から、好ましくは10分以上、又は30分以上である。減圧乾燥時間は長い方が有利であるが、乾燥時間10日間程度で所望の分散媒除去を良好に実現できる傾向があることから、コストの点で、好ましくは、10日間以下、又は3日間以下である。
[非減圧乾燥]
非減圧乾燥は、加熱乾燥、乾燥材(シリカゲル等)による乾燥等であってよく、乾燥効率の観点から好ましくは加熱乾燥である。非減圧乾燥の温度は、好ましくは、30℃以上、又は40℃以上、又は50℃以上、又は60℃以上であり、好ましくは、150℃以下、又は140℃以下、又は130℃以下、又は120℃以下、又は110℃以下、又は100℃以下である。非減圧乾燥の圧力は、典型的には1気圧(すなわち常圧)である。非減圧乾燥の時間は、好ましくは、10分以上、又は30分以上であり、好ましくは、10日間以下、又は3日間以下である。
減圧乾燥及び任意の非減圧乾燥においては、窒素又は水素混合窒素(例えば水素と窒素との合計100体積%中水素を3体積%程度含有する混合気体)を系中に導入しても良い。
<還元工程>
分散体が酸化銅含有粒子を含む場合、本開示の方法は還元工程を含んでよい。還元工程は、乾燥工程又はめっき工程と同時に行ってよく、又はこれら工程とは別個に行ってもよい。一態様において、還元工程は、乾燥工程の後且つめっき工程の前に行う。還元工程においては、塗布膜(一態様においては乾燥工程後の塗布膜)である酸化銅含有膜を還元することで銅含有膜を得る。本工程では、酸化銅含有膜中の酸化銅含有粒子を還元して銅を生成させ、銅自体の融着及び一体化により銅含有膜(還元銅層)を形成することができる。ただし、酸化銅含有粒子をそのままめっきする場合は、本工程を省略してよい。還元方法としては、窒素雰囲気下で100℃以上、500℃以下の温度で還元を行う方法、水素混合窒素(例えば水素と窒素との合計100体積%中水素を3体積%程度含有する混合気体)中で100℃以上、500℃以下の温度で還元を行う方法、レーザ光を照射して還元する方法、還元液中に酸化銅含有膜を浸漬する方法(すなわち湿式還元)等が挙げられる。一態様において、還元工程は、酸化銅含有膜を還元液に浸漬する工程、すなわち湿式還元工程である。
[レーザ光による還元]
レーザ光による還元方法としては、レーザ光照射部を有する公知のレーザ光照射装置を用いてよい。レーザ光は、高強度の光を短時間露光し、基材上に形成した乾燥塗膜を短時間高温に上昇させ、焼成できる点で好ましい。レーザ光方式は、焼成時間を短時間にできるため基材へのダメージが少なく、耐熱性が低い基材(例えば樹脂フィルム基板)への適用も可能である点で有利である。また、レーザ光方式は、波長選択の自由度が大きく、乾燥塗膜の光吸収波長及び/又は基材の光吸収波長を考慮して波長を選択できる点でも有利である。更に、レーザ光方式によれば、ビームスキャンによる露光が可能であるため、露光範囲の調整が容易であり、例えば、マスクを使用せず、乾燥塗膜の目的の領域のみへの選択的な光照射(描画)が可能である。
レーザ光源の種類としては、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、YVO(イットリウムバナデイト)、Yb(イッテルビウム)、半導体レーザ(GaAs,GaAlAs,GaInAs)、炭酸ガスなどを用いることができる。レーザとしては、基本波だけでなく必要に応じ、高調波を取り出して使用してもよい。
レーザ光の中心波長は、350nm以上、600nm以下であることが好ましい。特に、酸化銅として酸化第一銅を用いる場合、酸化第一銅は、上記範囲の中心波長を有するレーザ光を良好に吸収するため均一に還元され、低抵抗の金属配線を形成し得る。
レーザ光は、ガルバノスキャナーを通して乾燥塗膜に照射されることが好ましい。ガルバノスキャナーによってレーザ光を乾燥塗膜上に走査することで、任意の形状の金属配線を得ることができる。
レーザ光の照射出力は、所望の焼成(例えば酸化第一銅の還元)を効率よく行う観点から、好ましくは、100mW以上、又は200mW以上、又は300mW以上であり、レーザ光の過度な出力に起因するアブレーションによる金属配線の破壊を抑制して低抵抗の金属配線を得る観点から、好ましくは、1500mW以下、又は1250mW以下、又は1000mW以下である。
[湿式還元]
湿式還元においては、還元剤を含む還元液を用いる。還元剤は、無機系であっても、有機系であってもよい。無機系還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、二酸化硫黄、亜硝酸ナトリウム、金属アルミニウム、塩化セリウム、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられ、有機系還元剤としては、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、メタノール、クエン酸及びその塩、シュウ酸及びその塩、ギ酸及びその塩、グリセリン、グルコース、エチレングリコール、グリシン及びその誘導体、L-アスコルビン酸及びその塩、チオグリコール酸、塩酸ヒドロキシルアミン、ハイドロキノン、ハイドロサルファイト、エリソルビン酸、エリソルビン酸塩、チオ尿素、錫系還元剤、鉄系還元剤、亜鉛系還元剤などが挙げられる。
グリシン誘導体としては、例えばN-[N-(ベンジルオキシカルボニル)グリシル]-L-プロリン、N-カルボベンゾキシグリシ4-ニトロフェニル、L-(2-クロロフェニル)グリシン塩化物、BOC-NΑ-メチル-L-フェニルグリシン、アセチルアミノ(シアノ)酢酸エチル、キシレノールオレンジ、D-(-)-2-(2,5-ジヒドロフェニル)グリシン、Cbz-シクロへキシル-L-グリシン、(R)-α-[(3-エトキシ-1-メチル-3-オキソ-1-プロペニル)アミノ]ベンゼン酢酸カリウム、N-(ジフェニルメチレン)グリシンtert-ブチル、D-プロパルギルグリシン、(S)-α-アミノ-4-フルオロベンゼン酢酸、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-2-シクロヘキシルグリシン、グリシンメチル塩酸塩、D-2-アリルグリシン塩酸塩、(S)-2-シクロヘキシル-2-アミノ酢酸、(2S)-N-[[(カルボキシメチル)アミノカルボニル]メチル]-2-アミノ-4-メチルペンタンアミド、(R)-2-アミノ-4-ペンチン酸、(R)-N-BOC-プロパルギルグリシン、N-ベンジルグリシン、(S)-N-BOC-Α-アリルグリシンジシクロヘキシルアミン、BOC-D-シクロプロピルグリシン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-D-2-フェニルグリシン、(R)-(-)-N-(3,5-ジニトロベンゾイル)-α-フェニルグリシン、L-2-クロロフェニルグリシン、4-フルオロ-D-フェニルグリシン、BOC-L-シクロプロピルグリシン、グリシンベンジルp-トルエンスルホナート、(S)-N-BOC-アリルグリシン、(R)-N-BOC-アリルグリシン、(R)-4-ヒドロキシ-α-[(3-メトキシ-1-メチル-3-オキソ-1-プロペニル)アミノ]ベンゼン酢酸カリウム、N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]-D-2-フェニルグリシン、DL-ロイシルグリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロパルギルグリシン、2-アミノ-2-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]酢酸、(S)-N-BOC-3-ヒドロキシアダマンチルグリシン、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、2-プロパルギル-L-グリシン、N-(トリフェニルメチル)グリシン、N-ベンジルグリシンエチル、2-(2-オキソ-2-ヒドロキシエチルアミノ)安息香酸、FMOC-D-アリルグリシン、L-2-(4-クロロフェニル)グリシン、D-2-シクロヘキシルグリシン、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシン、N-(ベンジルオキシカルボニル)-D-フェニルグリシン、N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]-L-2-フェニルグリシン、ベンジルオキシカルボニルアミノ(ジメトキシホスフィニル)酢酸メチル、N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシンメチル、4-(トリフルオロメチル)フェニルグリシン、グリシル-DL-ロイシン、N-トシルグリシン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-D-2-シクロヘキシルグリシン、N-ホルミルグリシン、N-T-ブチルグリシンHCL、(R)-2-アリルグリシン、H-グリシンベンジルエステル塩酸塩、N-カルボベンゾキシ-L-2-フェニルグリシン、(ジフェニルメチレンアミノ)酢酸エチル(ジフェニルメチレンアミノ)酢酸エチル、オクスフェニシン、L-メチオニルグリシン、(4-ヒドロキシフェニル)(アミノ)酢酸、(R)-α-アミノベンゼン酢酸メチル・塩酸塩、L-Α-シクロプロピルグリシン、N-ベンジルグリシン塩酸塩、D-シクロプロピルグリシン、α-アミノ-4-フルオロベンゼン酢酸、グリシンtert-ブチル塩酸塩、N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-ホスホノグリシントリメチル、N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシン、N-(4-ヒドロキシフェニル)グリシン、DL-2-(4-クロロフェニル)グリシン、L-Α-シクロヘキシルグリシン、グリシンエチル塩酸塩、N-[(メトキシカルボニル)メチル]カルバミド酸ベンジル、DL-2-(2-クロロフェニル)グリシン、L-シクロペンチルグリシン、N-BOC-2-(4’-クロロフェニル)-D-グリシン、BOC-L-シクロペンチルグリシン、D-(2-クロロフェニル)グリシン塩化物、N-フタロイルグリシン、N-ホルミルグリシンエチル、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-2-フェニルグリシン、N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシン、N-(2-アミノエチル)グリシン、N-フェニルグリシン、N,N-ジメチルグリシン塩酸塩、(S)-N-FMOC-アリルグリシン、D-(-)-2-(4-ヒドロキシフェニル)グリシン、L(+)-2-フェニルグリシンメチルエステル塩酸塩、エデト酸三ナトリウム、N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシルグリシン、(2R)-2-アミノ-2-フェニル酢酸エチル・塩酸塩、N-アセチルグリシンエチル、L-ロイシルグリシン水和物、L-2-アリルグリシン塩酸塩、等が挙げられる。
なおグリシン誘導体としては、分子中にヒドロキシ基を2個以上有する構造を有する化合物が好適である。ヒドロキシル基を2個以上有するグリシン誘導体を用いることは、後工程であるめっき工程の速度を高くでき、工程中に膜の剥がれが生じ難い点で有利である。分子中にヒドロキシ基を2個以上有する構造を有する化合物の好適例は、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシン、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、等である。
還元工程が湿式還元工程である場合、還元液中の還元剤濃度は、還元速度が良好で安定した還元ができる観点で、例えば、1.0g/L以上、又は3.0g/L以上、又は5.0g/L以上、又は10.0g/L以上であってよく、例えば、600g/L以下、又は570g/L以下、又は550g/L以下、又は520g/L以下、又は500g/L以下であってよい。
還元液中の還元剤濃度は、還元速度が良好で安定した還元ができる観点で、例えば、0.1質量%以上、又は0.3質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1.0質量%以上であってよく、例えば、60質量%以下、又は57質量%以下、又は55質量%以下、又は52質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
一態様において、還元液は、グリシン誘導体を含む。還元液中の当該グリシン誘導体の濃度は、好ましくは、1質量%以上、又は8質量%以上、又は16質量%以上であり、好ましくは、50質量%以下、又は32質量%以下である。
典型的な態様において、還元液は溶媒を含む。溶媒系は、水系又は有機溶媒系であってよい。溶媒としては、例えば、水、エタノール、1-ブタノール、2-プロパノール、トルエン、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。特に水、エタノール、1-ブタノール、及び2-プロパノールは再利用の観点で好ましい。
還元液中の溶媒としては、水が特に好ましく、特にグリシン誘導体と水との組み合わせがコスト及び生産性の観点で好ましい。還元液は、特に好ましくは、グリシン誘導体の濃度が1質量%以上50質量%である水溶液である。
一態様においては、生産性の観点、すなわち還元が早く進むという観点から、還元液が、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシン及び/又はクエン酸を含むことが好ましい。特にN,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシンを用いる場合、還元液中で銅が2価イオンとなりグリシンと錯体を作ることで、酸化銅から銅への還元が促進される点で好ましい。
還元中は、還元液中の還元剤濃度が一定になるように、撹拌をしながら塗布膜を浸漬することが好ましい。
還元液は、銅イオン及び/又は酸化銅を所定以上含むことが好ましい。これにより、湿式還元時の塗布膜の脱落を抑制できる。還元液中の、銅イオン濃度、又は酸化銅濃度、又は銅イオンと酸化銅との合計濃度は、好ましくは、1質量%以上、又は5質量%以上であり、好ましくは、99質量%以下、又は90質量%以下である。一態様において、酢酸銅、塩化銅、酸化銅、金属銅、及び本開示の酸化銅含有粒子を含む分散体からなる群から選択される1種以上を溶媒に添加して還元液を調製することによって、還元液中に銅イオン及び/又は酸化銅を含有させてよい。一態様において、塗布膜から溶媒中に酸化銅が拡散することによって、還元液が酸化銅を含有してもよい。
湿式還元工程の温度は、生産性の観点から、還元が早く進む点で、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。また、均一な銅含有膜を得る観点から、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
湿式還元工程と、めっき工程における無電解めっきとを同時に行うこともできる。生産性向上の観点から、湿式還元工程とめっき工程とを同時に行うことが好ましい。具体的には、後述するめっき液が還元剤も含むことで、湿式還元工程とめっき工程とを同時に行うことができる。なおこの場合には、めっき液中の還元剤濃度及びめっき物質濃度(一態様において銅濃度)が本開示で還元液及びめっき液について例示する範囲内となるように、溶媒量を調整することが好ましい。
<洗浄工程>
湿式還元を行う場合には、当該湿式還元後、適切な洗浄液を用いて、未還元部及び還元液を除去してもよい。これにより、基材の上に清浄な還元領域が残される。一方、洗浄工程を行わなくてもよい。いずれの場合も、導電性パターンとしての還元領域によって導電性が付与された基材(以下、導電性基材ともいう。)が得られる。ただし、酸化銅含有膜をそのままめっきする場合は、本工程を省略できる場合がある。
洗浄を行う場合の洗浄液としては、酸化銅を分散又は溶解させる液を用いることができる。具体例としては、水、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリ-1,2-プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、2-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、2-オクタノール、n-ノニルアルコール、2、6ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、アセトン等の溶媒が挙げられる。上記の溶媒は、特に、塗布膜に分散剤が含まれる場合、酸化銅を良好に洗い落とすことができ好適である。溶媒としては、水、エタノール、ブタノール、i-プロパノール、及びアセトンが特に好ましい。なお、上記の洗浄液は、溶媒に加えて分散剤を含んでもよい。分散剤としては前述したものが使用でき、より好ましくはリン含有有機物である。
<脱脂工程>
本開示の方法の一態様は、めっき工程の前に、塗布膜を脱脂する工程を有してよい。一態様においては、酸化銅を還元せずに直接脱脂することで、生産性を向上させることができる。また別の一態様においては、酸化銅を還元(例えば前述の還元工程で)した後脱脂してよい。脱脂方法としては、UV法、湿式脱脂法等が挙げられる。脱脂工程により、その後のめっきの成長速度が速くなり、生産性が向上する。また、本工程は、めっき後の導電性層(すなわち、めっき層、並びに、酸化銅及び/又は銅の層が銅を含む場合の当該層)の空隙率低減、すなわち、最終的な導電性層の空隙率に寄与する。なお、無電解めっきと共に脱脂を行ってもよく、この場合、脱脂工程を省略してもよい。
導電性パターン付構造体の層間密着性の観点から、脱脂工程は、アミノ基を含む化合物を含む脱脂液に塗布膜を浸漬することにより行われることが好ましい。アミノ基を含む化合物としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等のアミノ酸類、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン等のアルキルアミン類、2-アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等のポリアミン類、タウリン等のアミノスルホン酸、2-アミノエタンチオール等のアミノチオール類、3-ピコリルアミン、3-ピリジンメタノール等の含窒素複素環式化合物類が挙げられる。めっきの成長速度に寄与する観点から、2-アミノエタノールが特に好ましい。
脱脂液は市販品であってもよく、具体的には、上村工業株式会社から入手可能であるALC―009(アミノ基を有する化合物として2-アミノエタノールを含む)、アトテックジャパン株式会社から入手可能であるクリーナーセキュリガント902(アミノ基を有する化合物として2-アミノエタノールを含む)等が挙げられる。
脱脂液の中のアミノ基を含む化合物の濃度としては、めっき反応の阻害物質を取り除く観点から5mmol/L以上が好ましく、10mmol/L以上がより好ましく、20mmol/L以上がより好ましい。また、めっき反応を促進させる観点から、100mmol/L以下が好ましく、90mmol/L以下がより好ましく、80mmol/L以下がより好ましい。
脱脂液への塗布膜の浸漬時間としては、めっきの成長速度に寄与する観点から1分以上が好ましく、2分以上がより好ましい。また、基材へのダメージを低減する観点から、15分以内が好ましく、10分以内がより好ましい。攪拌下での浸漬が、均一な脱脂の観点で好ましい。
浸漬温度は、めっきの成長速度促進の効果を高めるために15℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。また、基材へのダメージを低減する観点から、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
<めっき工程>
本発明の一態様においては、乾燥工程後の、還元工程及び/又は脱脂工程を経た又は経ていない塗布膜に対して、めっきを行ってよい。一態様において、めっきは無電解めっきである。一態様においては、酸化銅含有膜を還元せずに直接めっきを行うことで、生産性を向上させることができる。無電解めっきは、酸化銅含有膜中の酸化銅の一部若しくは全部を還元してよく、又は当該酸化銅を還元しなくてもよい。また別の一態様においては、酸化銅含有膜を還元(例えば湿式還元)して得た銅含有膜を無電解めっきすることで、導電性を向上させることができる。無電解めっきにより、酸化銅及び/又は銅の層と、めっき層とで構成された導電性パターンを形成できる。これにより、導電性パターン付構造体を製造できる。無電解めっきは、パターンへの適用性の広さの観点で有利である。めっき方法としては、一般的な無電解めっき法を適用してよい。例えば、還元工程、脱脂工程又は洗浄工程と共に、無電解めっきを行ってよい。
無電解めっきにはめっき液を用いる。乾燥工程後の塗布膜は外部応力により剥がれが生じやすいことから、めっき析出がバラつき、応力が一部分に集中すると、めっき工程時に当該塗布膜の剥がれが生じる場合がある。一態様において、めっき液はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含む。EDTAは、錯化剤として機能し、銅イオンと安定性の高い錯体を形成するため、めっき浴中の副反応を抑制し、浴を安定化して、めっき析出を均一に進行させることにより塗布膜の剥がれ防止に寄与していると考えられる。したがって、EDTAを含むめっき液の使用は、層間密着性に優れる導電性パターン付構造体の製造に寄与する。またEDTAは、高温の液中においても安定であるため、EDTAを含むめっき液を加温下(例えば30℃以上)で使用する場合にはめっき速度を速めることにも寄与する。また、湿式還元を行った後にEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含むめっき液でめっきを行うと、銅めっきの成長が促進されることによって生産性が向上するので、特に好ましい。めっき液中のEDTAの量は、EDTAによる利点を良好に得る観点から、好ましくは、7g/L以上、又は10g/L以上、又は15g/L以上であり、めっき析出物中の不純物を低減し、電気抵抗を低くする観点から、好ましくは50g/L以下、又は45g/L以下、又は40g/L以下である。
典型的な態様において、めっき液は、銅イオン源及び還元剤を含む。銅イオン源は液中でイオンとして存在してよい。例えば、空気バブリングを行いながら塗布膜をめっき液に浸漬してよい。めっき液中の銅イオンは無電解めっきにより還元され、塗布膜の表面に銅が析出し、めっき銅層が形成される。塗布膜が酸化銅を含有する場合、無電解めっきにおいては、当該酸化銅の一部又は全部がめっき液によって還元されてもよいし、還元されなくてもよく、したがって、酸化銅及び/又は銅を含む層の上にめっき銅層が形成される。
めっき液の銅濃度は、めっきの速度を向上させる観点から、好ましくは、1.5g/L以上、又は1.8g/L以上、又は2.0g/L以上であり、めっき被膜の均一性の観点から、好ましくは、5.0g/L以下、又は4.0g/L以下、又は3.5g/L以下、又は3.0g/L以下である。特に、湿式還元とめっきとを組み合わせる場合、めっき液の銅濃度は、好ましくは1.8g/L以上3.5g/L以下である。
めっき液が含む銅イオン源としては、CuSO4、CuCl2、CuCl、CuNO3、Cu3(PO42等を例示でき、密着性に優れるめっき層を形成する観点から、CuCl2及びCuSO4が好ましい。
めっき液は、還元剤として、ホルムアルデヒド(CH2O)、テトラヒドロ酸カリウム、ジメチルアミンボラン、グリオキシル酸、及びホスフィン酸からなる群から選択される1種以上を含んでよい。めっき液中の還元剤の量は、好ましくは、0.1g/L以上、又は0.5g/L以上、又は1.0g/L以上であり、好ましくは、15.0g/L以下、又は12.0g/L以下、又は9.0g/L以下である。
めっき液は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)に加えて追加の錯化剤を更に含んでもよい。追加の錯化剤としては、ロシェル塩、トリエタノールアミン、硫酸アンモニウム、クエン酸、グリシン等を例示できる。めっき液中の追加の錯化剤の量は、好ましくは、5g/L以上、又は7g/L以上、又は10g/L以上であり、好ましくは、50g/L以下、又は45g/L以下、又は40g/L以下である。
めっき液は、所望に応じて界面活性剤を更に含んでもよい。
めっき液は市販品であってもよい。市販品としては、上村工業株式会社から入手可能であるスルカップELC-SP、メルテックス株式会社から入手可能であるメルプレートCU-390、メルプレートCU-5100P、奥野製薬工業株式会社から入手可能であるOPCカッパーNCA、、ロームアンドハース株式会社から入手可能であるC4500、アトテック株式会社から入手可能であるPrintganthUPlus、日本マクダーミッド株式会社から入手可能であるCu-510、等を用いることができる。
めっき液による無電解めっき浴の温度は、より高速なめっき成長が望めることから、好ましくは、25℃以上、又は30℃以上、又は35℃以上であり、好ましくは、80℃以下、又は70℃以下、又は65℃以下である。めっき時間は、好ましくは、5分以上、又は10分以上であり、好ましくは、60分以下、又は50分以下、又は40分以下である。
めっき層(一態様においてめっき銅層)の層厚は、導電性パターン付構造体に要求される電流を流すことが可能である点で、好ましくは、300nm以上、又は500nm以上、又は1μm以上、又は2μm以上であり、好ましくは、100μm以下、又は50μm以下、又は30μm以下である。
一態様において、無電解めっきの後に電解めっきを実施してもよい。電解めっきには、一般的な電気めっき法を適用することができる。例えば、銅イオンを含む溶液(めっき浴)中に、電極と、めっきを施す対象である導電性基材とを入れる。そして、外部直流電源から直流電流を電極と導電性基材との間に印加する。一態様においては、導電性基材上の還元銅層に、外部直流電源の電極対の一方に接続された冶具(例えばクリップ)を接続することで還元銅層に電流を印加できる。この結果、導電性基材上の還元銅層の表面に、銅イオンの還元によって銅が析出し、めっき銅層が形成される。
電解めっき浴としては、例えば硫酸銅浴、ホウふっ化銅浴、シアン化銅浴、及びピロリン酸銅浴を使用することができる。安全性及び生産性の観点から、硫酸銅浴及びピロリン酸銅浴が好ましい。
硫酸銅めっき浴としては、例えば、硫酸銅5水和物、硫酸及び塩素を含有する硫酸酸性硫酸銅めっき浴が好適に用いられる。硫酸銅めっき浴中の硫酸銅5水和物の濃度は、好ましくは、50g/L以上、又は100g/L以上であり、好ましくは、300g/L以下、又は200g/L以下である。硫酸の濃度は、好ましくは、40g/L以上、又は80g/L以上であり、好ましくは、160g/L以下、又は120g/L以下である。めっき浴の溶媒は、通常、水である。めっき浴の温度は、好ましくは、20℃以上、又は30℃以上であり、好ましくは、60℃以下、又は50℃以下である。電解処理時の電流密度は、好ましくは、1A/dm2以上、又は2A/dm2以上であり、好ましくは、15A/dm2以下、又は10A/dm2以下である。
ピロリン酸銅めっき浴としては、例えば、ピロリン酸銅及びピロリン酸カリウムを含有するめっき浴が好適である。ピロリン酸銅めっき浴中のピロリン酸銅の濃度は、好ましくは、60g/L以上、又は70g/L以上であり、好ましくは、110g/L以下、又は90g/L以下である。ピロリン酸カリウムの濃度は、好ましくは、240g/L以上、又は300g/L以上であり、好ましくは、470g/L以下、又は400g/L以下である。めっき浴の溶媒は、通常、水である。めっき浴のpHは、好ましくは、8.0以上、又は8.2以上であり、好ましくは、9.0以下、又は8.8以下である。pH値調整のために、アンモニア水等を添加してもよい。めっき浴の温度は、好ましくは、20℃以上、又は30℃以上であり、好ましくは、60℃以下、又は50℃以下である。電解処理時の電流密度は、好ましくは、0.5A/dm2以上、又は1A/dm2以上であり、好ましくは、10A/dm2以下、又は7A/dm2以下である。
電解めっき用のめっき浴は界面活性剤を更に含んでもよい。
<後処理工程>
本開示の方法の一態様は、基材と、酸化銅及び/又は銅の層との密着性の向上を目的に、後処理工程を含む。後処理工程は、塗布膜形成工程と乾燥工程との間、乾燥工程とめっき工程との間、及びめっき工程の後、のうち1つ以上において、加湿処理及び/又は加熱処理を行う工程である。加湿処理及び加熱処理の両方を行う場合、これらは同時又は逐次に実施してよい。逐次の場合、加湿処理、加熱処理の順序は限定されない。
加湿処理によれば、基材と、酸化銅及び/又は銅の層との界面に水分が入り込むことで層間密着性向上効果が得られる。理論に拘束されるものではないが、上記の層間密着性向上は、酸化銅及び/又は銅の層が含む成分(例えば、分散体由来の分散剤成分)と、加湿処理で提供される水分と、基材とが水素結合を形成することによってもたらされると考えられる。基材の材質が、ポリイミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PENt)、ポリベンズイミダゾール(PBI)等、特にポリイミドである場合、水素結合形成性の化学構造であるイミド結合の寄与によって、層状密着性向上効果が良好である。
また、加熱処理によれば、基材の機械強度の向上によって、基材と、酸化銅及び/又は銅の層との層間密着性が向上すると考えられる。一態様において、基材の材質がポリイミドである場合、めっき工程においてポリイミド中のイミド結合の切断が生じる場合があるが、加熱処理によって、一旦切断されたイミド結合が修復され得る。加熱処理によるこのような分子構造の変化が、基材の機械強度向上をもたらすと考えられる。
加湿手段としては、恒温恒湿槽、デシケーター等を使用できる。
加熱手段としては、乾燥炉、オーブン等を使用できる。
加湿処理の相対湿度は、好ましくは、50%以上、又は60%以上、又は70%以上であり、好ましくは、100%以下である。
加湿処理の時間は、好ましくは、1時間以上、又は10時間以上、又は24時間以上であり、好ましくは、14日間以下、又は10日間以下、又は8日間以下である。
加熱処理は、例えば空気中で行ってよい。一態様においては、湿度が前述で例示した範囲に制御された気体(空気、不活性気体等)中で(すなわち、加湿処理と加熱処理とを同時に)行ってよい。加熱処理の温度は、基材の機械強度向上効果(一態様において、ポリイミド基材を用いる場合のイミド結合形成効果)を良好に得る観点から、好ましくは、100℃以上、又は200℃以上、又は250℃以上であり、基材の熱劣化を回避する観点(一態様において、ポリイミド基材の耐熱性の観点)から、好ましくは、400℃以下、又は350℃以下、又は300℃以下である。
<導電性パターン付構造体の製造方法の好適例>
以下、図2を参照して、導電性パターン付構造体の製造方法のより具体的な好適例を説明する。
まず、水とプロピレングリコール(PG)との混合溶媒A中に酢酸銅Bを溶かし、ヒドラジンCを加えて攪拌する(図2(a))。
次いで、遠心分離によって、生成物溶液(上澄み2a)と酸化第一銅(沈殿物2b)とを固液分離する(図2(b))。
次いで、沈殿物2bに、分散剤D及びアルコールEを加え(図2(c))、沈殿物を分散させて、酸化銅を含む分散体2cを得る(図2(d))。
別途、基材1を準備し(図2(e))、本開示の前処理工程によって、基材1上に処理表面Sを形成する(図2(f))。
次いで、酸化銅を含む分散体2cを、インクジェット法又はグラビア印刷法等によって基材1の処理表面S上に印刷して塗布膜を形成し(塗布膜形成工程)、次いで乾燥させる(乾燥工程)。この結果、基材1上に、酸化銅及び分散剤を含む酸化銅含有膜(酸化銅層)2dが形成される(図2(g))。
次いで、アミノ基を含む化合物を含む脱脂液に酸化銅含有膜を浸漬して脱脂工程を行い、次いでめっき工程を行う。なお脱脂工程は省略してもよい。めっき工程の前、又はめっき工程において、酸化銅層中の酸化銅の一部又は全部が還元されてもよい。この結果、基材1上に、酸化銅及び/又は銅の層2eと、めっき銅層2fとが形成される(図2(h))。
以上の手順で、導電性パターン付構造体を製造できる。
本開示の方法で、前処理工程及び塗布膜形成工程に続く工程の好ましい順序としては、以下を例示できる。なお下記例において、括弧内は任意工程であることを示す。
(1)減圧乾燥を、少なくとも還元前に実施
(非減圧乾燥)-減圧乾燥-(非減圧乾燥)-還元-(洗浄)-(脱脂)-(減圧乾燥)-めっき-(後処理)-(減圧乾燥)
(2)減圧乾燥を、少なくとも還元後且つめっき前に実施
(減圧及び/又は非減圧乾燥)-還元-(洗浄)-(脱脂)-減圧乾燥-めっき-(後処理)-(減圧乾燥)
(3)減圧乾燥を、少なくともめっき後に実施
(減圧及び/又は非減圧乾燥)-還元-(洗浄)-(脱脂)-(減圧乾燥)-めっき-(後処理)-減圧乾燥
上述の通り、本開示の方法によれば、基材との層間密着性に優れる導電性層を非常に低コストかつ低エネルギーで作製できるので、より簡便に導電性パターン付構造体を製造することができる。
<追加の層の形成>
本開示の導電性パターン付構造体は、前述したような基材及び導電性層に加え、追加の層を有してもよい。追加の層としては、樹脂層及びハンダ層を例示できる。
[樹脂層]
一態様においては、導電性層の一部が樹脂層で覆われていることが好ましい。導電性層の一部が樹脂層で覆われていることにより、導電性パターンの酸化が防止され、信頼性が向上する。また、導電性層に樹脂層で覆われていない部分が存在することで、部品を電気的に接合することができる。
樹脂層の一例は、封止材層である。樹脂層は例えばトランスファー成形、圧縮成形等により形成することができる。用いられる樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール(POM)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)(PA6、PA66等)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PENt)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、シリコーンポリマー(ポリシロキサン)、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フェノールノボラック、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、シクロオレフィンポリマー(COP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等が挙げられる。また、樹脂層の厚みは、好ましくは、0.1μm以上、又は0.5μm以上であり、好ましくは、1mm以下、又は800μm以下である。
封止材層は、製造後の完成品(導電性パターン付構造体そのもの及びそれを含む製品)において、導電性パターンを外部からのストレスから保護し、導電性パターン付構造体の長期安定性を向上できる。
樹脂層の一例である封止材層の透湿度は、良好な長期安定性を確保する観点から、好ましくは、1.0g/m2/day以下、より好ましくは0.8g/m2/day以下、さらに好ましくは0.6g/m2/day以下である。透湿度を低くすることで、封止材層の外部からの水分の混入を防ぎ、導電性パターンの酸化を抑制できる。透湿度は低い程好ましい。上記透湿度は、カップ法で測定される値である。
封止材層は、製造時に使用される場合がある酸素バリア層を剥離した後にも、導電性パターン付構造体に対して酸素バリア機能を与える機能層であることができる。その他の機能として、導電性パターン付構造体の取り扱い時の耐傷性、外界からの汚染から導電性パターン付構造体を保護するための防汚性、強靭な樹脂を用いた場合における導電性パターン付構造体に対する剛性向上、等の機能を有してよい。
[ハンダ層]
一態様において、導電性層の基材側とは反対側の一部にハンダ層が形成されていることが好ましい。ハンダ層によって導電性層と他の部材とを接続できる。ハンダ層は例えばリフロー法によって形成できる。ハンダ層は、Sn-Pb系、Pb-Sn-Sb系、Sn-Sb系、Sn-Pb-Bi系、Bi-Sn系、Sn-Cu系、Sn-Pb-Cu系、Sn-In系、Sn-Ag系、Sn-Pb-Ag系、Pb-Ag系等のハンダ層であってよい。ハンダ層の厚みは、好ましくは、0.1μm以上、又は0.5μm以上であり、好ましくは、2mm以下、又は1mm以下である。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<評価方法>
[ヒドラジン定量方法]
標準添加法によりヒドラジンの定量を行った。
サンプル(分散体)50μLに、ヒドラジン33μg、サロゲート物質(ヒドラジン1524)33μg、ベンズアルデヒド1質量%アセトニトリル溶液1mlを加えた。最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS(ガスクロマトグラフ/質量分析)測定を行った。
同じく、サンプル(分散体)50μLに、ヒドラジン66μg、サロゲート物質(ヒドラジン1524)33μg、ベンズアルデヒド1質量%アセトニトリル溶液1mlを加えた。最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行った。
同じく、サンプル(分散体)50μLに、ヒドラジン133μg、サロゲート物質(ヒドラジン1524)33μg、ベンズアルデヒド1質量%アセトニトリル溶液1mlを加えた。最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行った。
最後に、サンプル(分散体)50μLに、ヒドラジンを加えず、サロゲート物質(ヒドラジン1524)33μg、ベンズアルデヒド1質量%アセトニトリル溶液1mlを加え、最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行った。
上記4点のGC/MS測定から、m/z=207のクロマトグラムよりヒドラジンのピーク面積値を得た。次にm/z=209のマスクロマトグラムよりサロゲートのピーク面積値を得た。x軸に、添加したヒドラジンの質量/添加したサロゲート物質の質量、y軸に、ヒドラジンのピーク面積値/サロゲート物質のピーク面積値をとり、標準添加法による検量線を得た。
検量線から得られたY切片の値を、添加したヒドラジンの質量/添加したサロゲート物質の質量で除しヒドラジンの質量を得た。
[平均粒子径測定]
分散体の平均粒子径は、大塚電子製FPAR-1000を用いてキュムラント法によって測定した。
<実施例1>
[分散体の塗布及び乾燥]
水30240g及び1,2-プロピレングリコール(旭硝子製)13976gからなる混合溶媒中に、酢酸銅(II)一水和物(日本化学産業製)3224gを溶解し、ヒドラジン水和物(日本ファインケム製)940gを加えて攪拌した後、遠心分離を用いて上澄みと沈殿物とに分離した。
得られた沈殿物345gに混合用液794gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散し、酸化第一銅(酸化銅(I))を含む酸化第一銅粒子を含有する分散体を得た。なお上記の混合用液は、リン含有有機化合物としてDISPERBYK-145(商品名、ビックケミー社製)(BYK-118)72gに、分散媒として1-ヘプタノール(東洋合成工業製)764gを加えて調製した。さらに、上記分散体1063gにDISPERBYK-145 5g、1-ヘプタノール82gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散し、目的の分散体を得た。また、インク中のヒドラジン量は0.2質量%であった。この時、分散体を常圧、60℃で4.5時間加熱した時の固形分残渣(酸化第一銅粒子)は、26.1質量%であった。
[基材洗浄及び前処理工程]
ポリイミド基材に、超純水中で5分間超音波を照射し、次いでエタノール中で5分間超音波を照射して洗浄を行った。その後、当該基材の表面にUVオゾン処理を施した。次いで、基材をN-メチルピロリドン(NMP)に室温で15分間浸漬させた(前処理工程)。その後、水で洗浄し、基材表面をエアブローして水を取り除いた。
[塗布膜形成工程]
当該表面にインクジェット印刷機(富士フイルム、DimatixDMP-2835)で印刷を行った。ヘッドはDMC-11601、電圧は25V、周波数は25kHzとした。1mm×70mmのパターンを描いた。
[乾燥工程]
上記印刷後の試料を、加熱オーブンにて、60℃、常圧で1時間乾燥させた(非減圧乾燥)。続いて上記試料をデシケーターに入れ、デシケーターに接続した減圧ポンプで減圧し、25℃、1kPaで5日間保持した(減圧乾燥)。
[還元工程]
上記試料を、水素4体積%及び窒素96体積%の混合気体雰囲気下、300℃で1時間焼成し、銅含有膜を得た。
[めっき工程]
次に、EDTAを含む無電解めっき液である奥野製薬工業株式会社のOPCカッパーNCA(ホルムアルデヒド2.2g/Lを含む)を60℃に加温し、試料を10分間浸漬した。処理後、試料を取り出し水洗した。
[密着性評価]
テープ剥離試験により密着性を評価した。試料表面にカプトン粘着テープ(6563#50)を貼りつけ、試料表面とテープの角度が60度になるようにして一気に引きはがした。剥離しないか、又は剥離が接着面積全体の20%未満の範囲で起きた場合を○、剥離が接着面積全体の20%以上の範囲で起きた場合を×とした。テープ剥離試験の結果、銅含有膜の剥離は見られなかった。
<実施例2>
減圧乾燥を51kPaで1日間行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。
テープ剥離試験の結果、銅含有膜の剥離は見られなかった。
<実施例3>
還元工程を湿式還元としたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。湿式還元は次の方法で行った。N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシンを水に溶かし、35質量%の溶液を調製した。これを還元液として用い、60℃に加熱した状態の当該還元液に、上記の酸化銅含有膜を5分間浸漬させた。その後、水で洗浄し、銅含有膜を得た。
テープ剥離試験の結果、銅含有膜の剥離は見られなかった。湿式還元工程は、低温で実施できることから基材が汎用基材であっても適用でき好ましい。
<実施例4>
めっき後に減圧乾燥を1kPaで1日間行ったこと以外は、実施例3と同様の方法で行った。
テープ剥離試験の結果、銅含有膜の剥離は見られなかった。
<比較例1>
基材洗浄、前処理工程、及び減圧乾燥を下記のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
[基材洗浄及び前処理工程]
ポリイミド基材に、超純水中で5分間超音波を照射し、次いでエタノール中で5分間超音波を照射して洗浄を行った。その後、当該基材の表面にUVオゾン処理を施した。
[乾燥工程]
非減圧乾燥のみ行い、減圧乾燥は実施しなかった。
テープ剥離試験の結果、接着面積全体の90%の範囲で銅含有膜の剥離が見られた。
<比較例2>
[基材洗浄及び前処理工程]
実施しなかった。
[塗布膜形成工程]
ポリイミド基材表面に分散体1mlを滴下し、スピンコート(500rpm、300秒)を行った。
[乾燥工程]
90℃、常圧で2時間加熱乾燥を行い、基材上に乾燥塗膜が形成された試料を得た。減圧乾燥は実施しなかった。
[還元工程]
上記試料を、窒素雰囲気下で300℃で1時間焼成し、銅含有膜を得た。
[めっき工程]
実施例1と同様の方法で行った。
[評価]
テープ剥離試験の結果、接着面積全体の90%の範囲で銅含有膜の剥離が見られた。
<実施例5~8>
(インクジェット適性の評価)
分散体の溶媒を1-ブタノール(実施例5)、1-ヘキサノール(実施例6)、1-ヘプタノール(実施例7)、又は1-オクタノール(実施例8)に変更した他は実施例1と同様の手順で分散体(インク)を調製した。得られたインクについて、インクジェットの間欠安定性を評価した。間欠吐出を行った時にノズルのつまりが起きるまでの時間を計測し、1時間以上:A,30分以上1時間未満:B,30分未満:Cとして評価した。間欠安定性の評価条件は以下のとおりである。
装置:DIMATIXマテリアルプリンターDMP-2831
ヘッド:DMC-11610
電圧:25V
吐出ノズル数:7(No.5~11)
吐出有無判断:DropWatcherでの目視
1-ブタノール溶媒のインクは評価C、1-ヘキサノール溶媒のインクは評価B、1-ヘプタノール溶媒のインク及び1-オクタノール溶媒のインクは評価Aであった。これらの結果から、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール又は1-オクタノール、特に1-ヘプタノール又は1-オクタノールを溶媒とするインクにおいてインクジェット適性が良好であることがわかった。
なお、本発明は、上記実施形態又は実施例に限定されるものではない。当業者の知識に基づいて上記実施形態又は実施例に設計の変更等を加えてもよく、また、上記実施形態又は実施例を任意に組み合わせてもよく、そのような変更等を加えた態様も本発明の範囲に含まれる。
本発明の一態様は、プリント配線板、電子デバイス、電磁波シールド、帯電防止膜等の製造に好適に適用され得る。
100 酸化銅インク
12 酸化銅
13 リン酸エステル塩
13a リン
13b エステル塩
1 基材
2a 上澄み
2b 沈殿物
2c 分散体
2d 酸化銅含有膜
2e 酸化銅及び/又は銅の層
2f めっき銅層

Claims (7)

  1. 基材と前記基材上の導電性パターンとを有する導電性パターン付構造体の製造方法であって、
    基材に対し、有機溶媒処理及びアルカリ処理からなる群から選択される1つ以上の処理を行う前処理工程と、
    前記前処理工程後の基材に酸化銅含有粒子及び/又は銅含有粒子を含む分散体を塗布して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、
    前記塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
    前記乾燥工程後の塗布膜にめっきを行うめっき工程と、
    を含み、
    前記乾燥工程において、前記乾燥工程の後且つ前記めっき工程の前に、及び/又は、前記めっき工程の後に、塗布膜を大気圧未満の雰囲気圧力下で乾燥させる減圧乾燥を行う、導電性パターン付構造体の製造方法。
  2. 前記乾燥工程において、前記減圧乾燥と、塗布膜を大気圧以上の雰囲気圧力下で乾燥させる非減圧乾燥とを行う、請求項1に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
  3. 前記乾燥工程の後且つ前記めっき工程の前に還元工程を更に含む、請求項1又は2に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
  4. 前記還元工程が湿式還元工程である、請求項3に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
  5. 前記減圧乾燥における圧力が、90kPa以下、0.000001kPa以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
  6. 前記基材がポリイミドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
  7. 前記分散体が、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、及び1-オクタノールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
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