JP2023114243A - 液体吐出ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】安定的な吐出特性を確保することができる液体吐出ヘッドを提供する。【解決手段】一実施形態に係る液体吐出ヘッドは、アクチュエータ部材と、共通電極と、個別電極と、非圧電部材と、を備える。アクチュエータ部材は互いに反対向きに分極された圧電体が積層され、一方の側面に、複数の圧力室を構成する複数の溝と複数の空気室を構成する複数の溝と、を有し、複数の前記溝の底部側が接続される。複数の空気室を構成する複数の溝は、複数の前記圧力室に隣接し前記圧力室を構成する溝よりも深さ方向の寸法が大きい。共通電極は、複数の前記空気室の底部を含む内面に形成される。個別電極は、複数の前記圧力室の底部を含む内面に形成される。非圧電部材は前記アクチュエータ部材の前記一方の側面に対向配置される。【選択図】図7
Description
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッドに関する。
近年、インクジェットヘッドにおいて、高生産性が求められ、高速化や液滴量増加が課題となっている。例えば、シェアモードシェアードウォール式のインクジェットヘッドにおいては、同じ駆動柱を2つの圧力室で共有し、複数配列される室のうちの1/3を圧力室として同時に駆動する所謂3サイクル駆動が一般的である。また、駆動する圧力室の両側をダミー圧力室として、1つの圧力室を独立した2つの駆動柱で駆動する独立駆動ヘッドも開発されている。例えば、圧電部材に多数の溝を形成し、1本おきに出入り口を塞ぎ、出入り口が塞がれない溝を圧力室とし、塞がれた溝を空気室として、独立駆動とする構造が開発されている。
このようなインクジェットヘッドにおいて、圧力室を駆動する際の振動が圧電部材を介して他の圧力室内のインクに伝わることにより、隣接する圧力室の駆動の影響でインク滴の速度や体積が変化する、いわゆるクロストークが発生する。
本発明が解決しようとする課題は、安定的な吐出特性を確保することができる液体吐出ヘッドを提供することである。
一実施形態に係る液体吐出ヘッドは、アクチュエータ部材と、共通電極と、個別電極と、非圧電部材と、を備える。アクチュエータ部材は互いに反対向きに分極された圧電体が積層され、一方の側面に、複数の圧力室を構成する複数の溝と複数の空気室を構成する複数の溝と、を有し、複数の前記溝の底部側が接続される。複数の空気室を構成する複数の溝は、複数の前記圧力室に隣接し前記圧力室を構成する溝よりも深さ方向の寸法が大きい。共通電極は、複数の前記空気室の底部を含む内面に形成される。個別電極は、複数の前記圧力室の底部を含む内面に形成される。非圧電部材は前記アクチュエータ部材の前記一方の側面に対向配置される。
以下に、第1実施形態に係る液体吐出ヘッドであるインクジェットヘッド10の構成について、図1乃至図8を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係るインクジェットヘッドを示す斜視図であり、図2はインクジェットヘッドの一部の分解斜視図である。図3はインクジェットヘッドの一部の構成を拡大して示す斜視図であり、図4乃至図7はインクジェットヘッドの一部の構成を拡大して示す断面図である。図中X、Y、Zは互いに直交する第1方向、第2方向、及び3方向をそれぞれ示す。なお、本実施形態において、ノズルや圧力室31及び空気室32を構成する溝の並び方向がX軸に、圧力室31や空気室32の延出方向がY軸に、液体の吐出方向がZ軸に、それぞれ沿う姿勢を基準として方向の説明を記載するが、これに限られるものではない。
図1乃至図7に示すインクジェットヘッド10は、いわゆるサイドシュータ型のシェアモード方式インクジェットヘッドである。インクジェットヘッド10は、インクを吐出するための装置であり、例えばインクジェットプリンタの内部に搭載される。例えばインクジェットヘッド10は圧力室31と空気室32が交互に配される独立駆動式のインクジェットヘッドである。空気室32は、インクが供給されない空気室であり、ノズル28を備えない。
インクジェットヘッド10は、アクチュエータベース11と、ノズルプレート12と、フレーム13と、を備えている。アクチュエータベース11は、基材の一例である。インクジェットヘッド10の内部に、液体の一例としてのインクが供給されるインク室27が形成される。
さらに、インクジェットヘッド10は、インクジェットヘッド10を制御する回路基板17や、インクジェットヘッド10とインクタンクとの間の経路の一部を形成するマニホールド18などの部品を備える。
図2に示すように、アクチュエータベース11は、基板21と、一対のアクチュエータ部材22と、を備える。
基板21は、例えばアルミナなどのセラミックスによって矩形の板状に形成される。基板21は平坦な実装面を有する。基板の実装面に一対のアクチュエータ部材22が接合されている。基板21には複数の供給孔25と排出孔26とが形成されている。
図2及び図3に示すように、アクチュエータベース11の基板21には、パターン配線211が形成される。パターン配線211は、例えばニッケル薄膜によって形成される。パターン配線211は、共通パターンや個別パターンを有し、アクチュエータ部材22に形成された電極層34に接続される所定のパターン形状に構成される。例えばパターン配線211は、供給孔25や排出孔26を避けた位置に形成される。
供給孔25は、基板21の中央部であって一対のアクチュエータ部材22の間において、アクチュエータ部材22の長手方向に並んで設けられている。供給孔25は、マニホールド18のインク供給部に連通する。供給孔25は、インク供給部を介してインクタンクに接続される。供給孔25はインクタンクのインクをインク室27に供給する。
排出孔26は、供給孔25及び一対のアクチュエータ部材22を挟んで、二列に並んで設けられている。排出孔26は、マニホールド18のインク排出部に連通する。排出孔26は、インク排出部を介してインクタンクに接続される。排出孔26はインク室27のインクをインクタンクに排出する。このような構成とする場合には、インクジェットヘッド10は、循環式となり、各圧力室31に対して供給孔25がある一方側から、排出孔26がある他方側に向けて、インクが流れる。あるいは、インク排出部が、例えば、メンテナンス時のみ開かれ、印字中にはインク供給部と連通する構成であってもよい。このような構成とする場合には、インクジェットヘッド10は非循環式となり、各圧力室31に対して両側からインクが流れ込む。
一対のアクチュエータ部材22は、基板21の実装面に接着される。一対のアクチュエータ部材22は供給孔25を挟んで二列に並んで基板21に設けられている。各アクチュエータ部材22は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって形成された板状の二つの圧電体201、202によってそれぞれ形成される。前記二つの圧電体201、202は、分極方向がその厚さ方向に互いに反対向きとなるように分極される。すなわち、アクチュエータ部材22は、一対の圧電体201、202が積層され、積層方向において互いに反対向きに分極される。アクチュエータ部材22は、例えば熱硬化性を有するエポキシ系接着剤によって基板21の実装面に接着される。図2に示すように、アクチュエータ部材22は、二列に並ぶノズル28に対応して、インク室27内において平行に並んで配置される。アクチュエータ部材22は、インク室27を、供給孔25が開口する第1共通室271と、排出孔26が開口する二つの第2共通室272とに区切る。アクチュエータ部材22の頂部は、ノズルプレート12に接着される。
アクチュエータ部材22は、複数の圧電体201、202が積層された積層圧電部材で構成され、駆動素子となる複数の側壁33と、複数の圧力室31と、複数の空気室32と、を交互に並列して備える。複数の圧電体201、202は厚さ方向が第3方向に沿って積層され、互いに接着されて構成される。なお、積層圧電部材は製造過程において分極されている。
アクチュエータ部材22は、深さ方向となる第3方向の一方側の側面、すなわちノズルプレート12に対向する一方の側面において、圧力室31及び空気室32を構成する複数の溝が、第1方向に並んで形成される。アクチュエータ部材22は、積層圧電部材が、複数の溝によって一方側が複数に分割され、複数の溝の底部側が一体に接続される櫛歯形状に構成される。アクチュエータ部材22は、例えばダイシング加工などで一方の側面に溝が形成されることにより複数に分割され、他端側が連結し、図中Xで示す第1方向に沿って側壁33が溝を挟んで複数並列配置される。
アクチュエータ部材22は、複数の側壁33を有するとともに、側壁33の間に、圧力室31及び空気室32を構成する溝を有する。言い換えると、側壁33は、圧力室31及び空気室32を形成する溝の間に駆動素子として形成される。側壁33は、圧力室31と空気室32の間に形成され、駆動信号に応じて変形することで、圧力室31の容積を変化させる。
アクチュエータ部材22は、短手方向の幅が頂部側から基板側に向かって漸次大きくなる。アクチュエータ部材22の長手方向に直交する方向(短手方向)に沿う断面形状は台形状に形成される。アクチュエータ部材22の側面部221は、第2方向及び第3方向に対して傾斜する傾斜面を有する。
図4は、図2に示したインクジェットヘッド10のアクチュエータ部材22の一方を部分的に拡大した断面図である。図5は、図4に示したインクジェットヘッド10の圧力室31を構成する溝をV-V線で切断した断面図である。そして、図6は、図4に示したインクジェットヘッド10の空気室32を構成する溝をVI-VI線で切断した断面図である。
図2、図5、図6に示すように、溝の底面部と基板21の主面とは傾斜する側面部221によって繋がる。圧力室31と空気室32とは、交互に複数配置される。圧力室31および空気室32は、アクチュエータ部材22の長手方向と交差する方向にそれぞれ延び、アクチュエータ部材22の長手方向である第1方向(図中X軸)において複数並列する。本実施形態において例えば圧力室31及び空気室32を構成する複数の溝は、X方向の幅寸法が、Z方向に沿う深さ方向において一定に構成され、溝の延出方向であるY方向に直交する断面が矩形状に構成される。
第1方向に並ぶ複数の溝は、空気室32を構成する溝の深さDBが、圧力室31を構成する溝の深さDAよりも深く構成される。すなわち、ノズルプレート12側に開口する圧力室31及び空気室32のうち、空気室32を構成する溝の底部は、圧力室31を構成する溝の底部よりも、深さ方向である第3方向の一方側であって、ノズルプレート12から離れた位置、すなわちアクチュエータ部材22の内部側の位置、に配置される。一例として空気室32の深さDBは、圧力室31の深さDAに対して、圧力室31と空気室32の間隔、すなわち側壁33の厚みの分だけ深い。本実施形態においては、圧力室31の深さDAは150μm、空気室32の深さDBは200μmに構成される。なお、圧力室31を構成する溝と空気室32を構成する溝は、長手方向に沿う幅寸法や延出方向の寸法が等しく構成されていてもよく、異なっていてもよい。圧力室31の底部、空気室32の底部及び側壁33は、積層圧電部材で構成される。すなわち、圧力室31及び空気室32は圧電部材によって、その底部を含む内壁面が構成されるとともに、一方側の開口に非圧電部材であるノズルプレート12が配置され、空気室32の延出方向の両端の開口が非圧電部材であるカバー部23によって塞がれる。
アクチュエータ部材22の圧力室31及び空気室32の内壁面、並びに側面部221にはそれぞれ電極層34が設けられている。電極層34は、例えばニッケル薄膜等の導電膜によって形成される。電極層34は溝の内面部から側面部221を通って基板21上に至り、パターン配線211に接続される。例えば電極層34は、側壁33の底面部を含む溝の内面に形成されている。一例として、圧力室31に形成される電極層34は個別電極を構成し、空気室32に形成される電極層34は、共通電極を構成する。個別電極を構成する電極層34は、圧力室31の底部を含む内面に形成され、圧力室31の延出方向における一方側から一方の側面部221に導出され、パターン配線211に接続される。共通電極を構成する電極層34は、空気室32の底部を含む内面に形成され、他方側から他方の側面部221に導出され、パターン配線211に接続される。
複数の圧力室31は、頂部に接合されるノズルプレート12の複数のノズル28に連通する。圧力室31の第2方向の両端はインク室27に連通する。すなわち、一方の端部はインク室27の第1共通室271に開口し、他方の端部は、インク室27の第2共通室272に開口する。このため、圧力室31の一方の端部からインクが流入し、他方の端部からインクが流出する。また、圧力室31の両方の端部からインクが流入してもよい。
図3、図6に示すように、空気室32は第3方向(Z方向)における一方側が頂部に接合されるノズルプレート12によって塞がれる。また複数の空気室32は、例えば、第2方向の両端がカバー部23により塞がれる。すなわち、インク室27の第1共通室271と空気室32の間、及び空気室32と第2共通室272との間にそれぞれカバー部23が配され、空気室32の両端はインク室27と隔てられている。このため、空気室32はインクが流入しない空気室を構成する。
例えばカバー部23は、各空気室32の延出方向であるY方向の両端に、それぞれ設けられている。カバー部23は、側壁33の端部同士を接続するとともに、共通室271、272と空気室32との間を隔てる隔壁である。
カバー部23は空気室32の端部を塞ぐ壁状部材である。例えばカバー部23は、空気室32の両側部を構成する一対の側壁33の端部同士を接続する。カバー部23は感光性樹脂材料で構成される。例えばカバー部23は空気室32の両端部に感光性樹脂を塗布した後、露光硬化させて所定形状に成形される。例えばカバー部23の一部は空気室32の内部に配置される。
ノズルプレート12は、非圧電部材であり、例えばポリイミド製の矩形のフィルムによって形成される。ノズルプレート12は、アクチュエータベース11の実装面に対向する。ノズルプレート12には、ノズルプレート12を厚さ方向に貫通する、複数のノズル28が形成される。
複数のノズル28は、圧力室31と同数設けられ、圧力室31にそれぞれ対向して配置される。ノズル28は、第1方向(X方向)に沿って複数並び、一対のアクチュエータ部材22に対応して2列に配列される。各ノズル28はそれぞれ軸が第3方向に延びる筒状に構成される。例えばノズル28は径が一定であっても、中央部または先端部にかけて縮径する形状であってもよい。ノズル28は、一対のアクチュエータ部材22に形成される圧力室31の延出方向の中途部に対向配置され、圧力室31にそれぞれ連通する。複数のノズル28は、各圧力室31の、両端部の間に対応する位置であって、例えば長手方向中央部に、1つずつ、配置される。
フレーム13は、例えばニッケル合金によって矩形の枠状に形成される。フレーム13は、アクチュエータベース11の実装面とノズルプレート12との間に介在する。フレーム13は、アクチュエータベース11の実装面とノズルプレート12とにそれぞれ接着される。すなわち、ノズルプレート12は、フレーム13を介してアクチュエータベース11に取り付けられている。
マニホールド18は、アクチュエータベース11のノズルプレート12とは反対側に接合される。マニホールド18の内部に、供給孔25に連通する流路であるインク供給部や排出孔26に連通する流路であるインク排出部が形成される。
図1に示す回路基板17は、フィルムキャリアパッケージ(FCP)である。回路基板17は、複数の配線が形成されるとともに、柔軟性を有する樹脂製のフィルム51と、フィルム51の複数の配線に接続された駆動IC52と、を有する。駆動IC52はフィルム51の配線やパターン配線211を介して電極層34に電気的に接続される。
以上のように構成されたインクジェットヘッド10の内部において、アクチュエータベース11と、ノズルプレート12と、フレーム13とに囲まれるインク室27が形成される。すなわち、インク室27は、アクチュエータベース11とノズルプレート12との間に形成される。例えばインク室27は、2つのアクチュエータ部材22によって第2方向(Y方向)において3つの区間に仕切られ、排出孔26が開口する共通室としての二つの第2共通室272と、供給孔25が開口する共通室としての第1共通室271と、を有する。第1共通室271及び第2共通室272は、複数の圧力室31に連通している。
以上のように構成されたインクジェットヘッド10において、供給孔、圧力室、及び排出孔を通って、インクはインクタンクとインク室27との間で循環する。例えばインクジェットプリンタの制御部から入力された信号によって、駆動IC52がフィルム51の配線を介して圧力室31の電極層34に駆動電圧を印加することにより、圧力室31の電極層34と、空気室32の電極層34との間に電位差を生じさせることで、側壁33を選択的にシェアモード変形させる。側壁33は積層された圧電体の断面形状がくの字に屈曲するようにせん断変形する。圧力室31と空気室32の間に形成された側壁33を駆動信号に応じて変形することで、圧力室31の容積を変化させる。
側壁33がシェアモード変形することにより、当該電極層34が設けられた圧力室31の容積が増加し、圧力が減少する。これにより当該圧力室31にインク室27のインクが流入する。
圧力室31の容積が増加した状態で、駆動IC52が圧力室31の電極層34に逆電位の駆動電圧を印加すると、側壁33がシェアモード変形して当該電極層34が設けられた圧力室31の容積が減少し、圧力が増加する。これにより、圧力室31の中のインクが加圧され、ノズル28から吐出される。
インクジェットヘッド10の製造方法について説明する。まず、板状の基板21に複数の溝を形成する圧電部材を接着剤等で貼り付け、ダイシングソーやスライサー等を使用した機械加工を施して所定形状の外形を有するアクチュエータベース11を成形する。なお、例えば予め複数枚分の厚さのブロック状のベース部材を形成してから分割し、所定形状のアクチュエータベース11を複数枚製造してもよい。
続いて、圧力室31や空気室32を構成する溝の内面や基板21の表面に電極層34やパターン配線211を形成する。以上により、アクチュエータベース11の表面に、電極層34、及びパターン配線211が所定箇所にそれぞれ形成される。
続いて、空気室32の端部に、カバー部23を形成することによって空気室32の両端を塞ぐ。例えば空気室32を構成する溝に感光性樹脂を充填し、対象部位を硬化させてカバー部23を形成する。あるいは感光性樹脂を硬化させた後、感光性樹脂層を成形することで、カバー部23が形成される。
そして、アクチュエータベース11をマニホールド18に組み付け、アクチュエータベース11の基板21の一方の面に、熱可塑性樹脂の接着シートにより、フレーム13を貼付ける。
そして、組立てられたフレーム13、アクチュエータ部材22の側壁33の頂部のノズルプレート12側の面が同一面となるよう研磨する。そして、側壁33の頂部、フレーム13の研磨面にノズルプレート12を接着して取り付ける。このとき、圧力室31にノズル28が対向するように位置決めを行う。さらに、図1に示すように基板21の主面に形成されたパターン配線211に、フレキシブルプリント基板を介して駆動IC52や回路基板17を接続することで、インクジェットヘッド10が完成する。
以下に、インクジェットヘッド10を備えるインクジェットプリンタ100の一例について、図10を参照して説明する。インクジェットプリンタ100は、筐体111と、媒体供給部112と、画像形成部113と、媒体排出部114と、搬送装置115と、制御部116と、を備える。
インクジェットプリンタ100は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る所定の搬送路Aに沿って、吐出対象物である記録媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行う液体吐出装置である。
筐体111は、インクジェットプリンタ100の外郭を構成する。筐体111の所定箇所に、用紙Pを外部に排出する排出口を備える。
媒体供給部112は複数の給紙カセットを備え、各種サイズの用紙Pを複数枚積層して保持可能に構成される。
媒体排出部114は、排出口から排出される用紙Pを保持可能に構成された排紙トレイを備える。
画像形成部113は、用紙Pを支持する支持部117と、支持部117の上方に対向配置された複数のヘッドユニット130と、を備える。
支持部117は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト118と、搬送ベルト118を裏側から支持する支持プレート119と、搬送ベルト118の裏側に備えられた複数のベルトローラ120と、を備える。
支持部117は、画像形成の際に、搬送ベルト118の上面である保持面に用紙Pを支持するとともに、ベルトローラ120の回転によって所定のタイミングで搬送ベルト118を送ることにより、用紙Pを下流側へ搬送する。
ヘッドユニット130は、複数(4色)のインクジェットヘッド10と、各インクジェットヘッド10上にそれぞれ搭載された液体タンクとしてのインクタンク132と、インクジェットヘッド10とインクタンク132とを接続する接続流路133と、循環部である循環ポンプ134と、を備える。ヘッドユニット130は、インクタンク132と、インクジェットヘッド10の内部に作りこまれた圧力室31、空気室32、及びインク室27において液体を常時循環させる循環型のヘッドユニットである。
本実施形態において、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色のインクジェットヘッド10と、これらの各色のインクをそれぞれ収容するインクタンク132を備える。インクタンク132は接続流路133によってインクジェットヘッド10に接続される。接続流路133は、インクジェットヘッド10の供給口に接続される供給流路と、インクジェットヘッド10の排出口に接続される回収流路と、を備える。
また、インクタンク132には、図示しないポンプなどの負圧制御装置が連結される。そして、インクジェットヘッド10とインクタンク132との水頭値に対応して、負圧制御装置はインクタンク132内を負圧制御することで、インクジェットヘッド10の各ノズル28に供給されたインクを所定形状のメニスカスを形成する。
循環ポンプ134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。循環ポンプ134は、供給流路に設けられている。循環ポンプ134は、配線により制御部116の駆動回路に接続され、CPU(Central Processing Unit)による制御によって制御可能に構成される。循環ポンプ134は、インクジェットヘッド10とインクタンク132を含む循環流路で液体を循環させる。
搬送装置115は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る搬送路Aに沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置115は、搬送路Aに沿って配置される複数のガイドプレート対121と、複数の搬送用ローラ122と、を備えている。
複数のガイドプレート対121は、それぞれ、搬送される用紙Pを挟んで対向配置される一対のプレート部材を備え、用紙Pを搬送路Aに沿って案内する。
搬送用ローラ122は、制御部116の制御によって駆動されて回転することで、用紙Pを搬送路Aに沿って下流側に送る。なお、搬送路Aには用紙の搬送状況を検出するセンサが各所に配置される。
制御部116は、コントローラであるCPU等の制御回路と、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)と、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
以上のように構成されたインクジェットプリンタ100において、制御部116は、例えばインターフェイス部においてユーザが操作入力部の操作による印刷指示を検出すると、搬送装置115を駆動して用紙Pを搬送するとともに、所定のタイミングでヘッドユニット130に対して印字信号を出力することで、インクジェットヘッド10を駆動する。インクジェットヘッド10は吐出動作として、画像データに応じた画像信号により、駆動IC52に駆動信号を送り、配線を介して圧力室31の電極層34に駆動電圧を印加してアクチュエータ部材22の側壁33を選択的に駆動してノズル28から液滴としてのインクを吐出し、搬送ベルト118上に保持された用紙Pに画像を形成する。また、液体吐出動作として、制御部116は、循環ポンプ134を駆動することで、インクタンク132とインクジェットヘッド10とを通る循環流路で液体を循環させる。循環動作により、インクタンク132内のインクは、循環ポンプ134が駆動されることにより、インクタンク132のインクが、マニホールド18のインク供給部を通って、供給孔25からインク室27の第1共通室271に供給される。このインクは、一対のアクチュエータ部材22の複数の圧力室31に供給される。インクは、圧力室31を通ってインク室27の第2共通室272に流入する。このインクは、排出孔26から、マニホールド18のインク排出部を通ってインクタンク132に排出される。
上述した実施形態にかかるインクジェットヘッド10によれば、いわゆるクロストークを抑制でき、安定した吐出性能を確保しやすい。すなわち、上記実施形態のインクジェットヘッド10によれば、空気室32が深く形成されていることにより、複数の圧力室31間の振動伝達を抑制できる。すなわち、空気室32の深さを大きくとることで、圧電部材20の側壁33の振動部位と、複数の側壁33が連結する連結部位までの距離を確保できるため、連結部位を介して他の側壁33に振動が伝わることを抑制できる。したがって、アクチュエータ部材22において圧力室31を駆動する際の側壁33の振動が隣接する別の圧力室31内のインクへ伝達して圧力室内のインクの圧力に影響を及ぼす、いわゆるクロストークを抑制でき、吐出性能を維持しやすい。
図8は、インクジェットヘッド10において、空気室32の深さ[μm]とクロストーク量[%]の関係を示すグラフである。ここで、クロストーク量とは、駆動するノズル28に発生する流速振幅を100%としたときに、隣接するノズル28に発生する流速振幅の比率を示している。図8において、圧力室31の深さを150μmとしたときに、空気室32の深さを、150μmから、300μmまで、変化させた時の、クロストーク量を示す。図8によれば、空気室32の深さが深い程、クロストーク量が小さくなっていることが判る。
図9は、本実施形態にかかるインクジェットヘッド10と比較例1にかかるインクジェットヘッド1010について、駆動時の側壁33の変形状態を示す説明図である。図9はアクチュエータ部材22の各部の変形の大きさ及び向きを矢印で示す。矢印の向きは当該位置における変形(変位)の方向を示し、矢印の大きさは変形(変位)量を示す。比較例1にかかるインクジェットヘッド1010は、空気室32の深さと圧力室31の深さとが等しく構成され、その他の構成はインクジェットヘッド10と同様に構成される。図9は、インクジェットヘッド10、1010の溝の並び方向における一方側の圧力室311を駆動し、他方側の圧力室312は駆動していない場合の振動状態を示す。
図9によれば、比較例1にかかるインクジェットヘッド1010では、圧力室312は駆動していないにもかかわらず、溝の並び方向において空気室32の他方側にある駆動されない圧力室312を形成する側壁33が変形しており、圧力室311の動作が圧力室312に影響を及ぼしていることがわかる。一方、本実施形態にかかるインクジェットヘッド10では、インクジェットヘッド1010と比べて、溝の並び方向において空気室32の他方側にある駆動されない圧力室312を形成する側壁33の変形が抑制されており、圧力室311の動作が圧力室312に及ぼす影響が小さいことがわかる。
すなわち、本実施形態にかかるインクジェットヘッド10は、空気室32を圧力室31よりも深くしたことにより、隣接する圧力室31への振動の伝達を抑えられる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
例えばカバー部23の形状は上記実施形態に限られるものではなく、適宜変更可能である。例えば、カバー部23は一部が空気室32内に配置される例を示したが、これに限られるものではなく、例えば全部が空気室32の外側に配置されていても良い。またカバー部23はアクチュエータ部材22の側面に沿うプレート状の部材であってもよい。
例えば他の実施形態として図11乃至図14に示すインクジェットヘッド110は、カバー部230が凹型状に形成される。図11は他の実施形態に係るインクジェットヘッドの一部を示す斜視図であり、図12は同インクジェットヘッドの一部の構成を拡大して示す断面図である。図13は、図12のインクジェットヘッドをXIII-XIII線に沿って切断した断面図であり、図14は図12のインクジェットヘッドをXIV-XIV線に沿って切断した断面図である。
本実施形態にかかるカバー部230は、側壁33の端部よりも空気室32の延出方向における外側を通り、空気室32の端部を塞ぐ壁状部材であり、U字状あるいはコ字状に曲がる曲げ部を有する。例えばカバー部230は、空気室32の延出方向に延びる一対の延出壁231と、一対の延出壁231を接続する接続壁232と、を備え、一対の延出壁231の間にスリット状の空気層321を有する凹型状に形成される。カバー部230は感光性樹脂材料で構成される。例えばカバー部230は空気室32の両端部に感光性樹脂を塗布した後、露光硬化させて所定の形状に成形される。カバー部230は延出壁231が側壁33の変形を吸収することで、カバー部230を介したクロストークを低減する。すなわち、カバー部230は側壁33間で振動が伝わりにくい形状とすることで、振動を減衰する効果を大きくすることができる。
上記実施形態においては、基板21の主面部分に複数の溝を備えるアクチュエータ部材22を配した例を示したが、これに限られるものではない。たとえば基板21の端面に、アクチュエータを備える構成であってもよい。また、ノズル列の数も上記実施形態に限られるものではなく、1列、あるいは3列以上備える構成としてもよい。
また、上記実施形態においては、基板21に複数の圧電体からなる積層圧電部材を備えたアクチュエータベース11を例示したが、これに限るものではない。例えば基板を用いずに圧電部材のみでアクチュエータベース11を形成しても良い。また供給側と排出側が逆であってもよく、あるいは切り替え可能に構成されていてもよい。
また、上記実施形態においては、一例として、圧力室31の一方側が供給側であり、他方側が排出側であり、インクが圧力室の一方側から流入して他方側から流出する循環型のインクジェットヘッドを例示したがこれに限られるものではない。例えば非循環型としてもよい。また、例えば圧力室31の両側の共通室が供給側であって、両側からインクが流入する構成であってもよい。すなわち、圧力室31の両側からインクが流入し、圧力室31の中央に配置されるノズル28から流出する構成であってもよい。また、両端にそれぞれ形成されるカバー部23の形状が互いに異なっていてもよい。
また、例えば、吐出する液体は印字用のインクに限られるものではなく、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する装置等であっても良い。
また、上記実施形態において、インクジェットヘッドは、インクジェットプリンタ等の液体吐出装置に用いられる例を示したが、これに限られるものではなく、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、小型軽量化及び低コスト化が可能である。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、安定的な吐出特性を確保することができる液体吐出ヘッドを提供できる。
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10、110…インクジェットヘッド、11…アクチュエータベース、12…ノズルプレート、13…フレーム、17…回路基板、18…マニホールド、21…基板、22…アクチュエータ部材、23…カバー部、231…延出壁、232…接続壁、321…空気層、25…供給孔、26…排出孔、27…インク室、31…圧力室、32…空気室、33…側壁、34…電極層、51…フィルム、52…駆動IC、100…インクジェットプリンタ、111…筐体、112…媒体供給部、113…画像形成部、114…媒体排出部、115…搬送装置、116…制御部、117…支持部、118…搬送ベルト、119…支持プレート、120…ベルトローラ、121…ガイドプレート対、122…搬送用ローラ、130…ヘッドユニット、132…インクタンク、133…接続流路、134…循環ポンプ、211…パターン配線、221…側面部、271…第1共通室、272…第2共通室。
Claims (5)
- 互いに反対向きに分極された圧電体が積層され、一方の側面に、複数の圧力室を構成する複数の溝と、複数の前記圧力室に隣接し前記圧力室を構成する溝よりも深さ方向の寸法が大きい、複数の空気室を構成する複数の溝と、を有するとともに、複数の前記溝の底部側が接続される、アクチュエータ部材と、
複数の前記圧力室の底部を含む内面に形成される個別電極と、
複数の前記空気室の底部を含む内面に形成される共通電極と、
前記アクチュエータ部材の前記一方の側面に対向配置される非圧電部材と、
を備える液体吐出ヘッド。 - 前記複数の溝のうち前記空気室を構成する溝の、前記深さ方向と交差する延出方向の端部を塞ぐ、カバー部を備える、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記アクチュエータ部材は、複数の前記圧力室及び複数の前記空気室の間に配される複数の側壁を備え、
前記非圧電部材は、前記圧力室に連通する複数のノズルを備える、ノズルプレートである、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。 - 前記カバー部は、前記空気室の両側を構成する一対の前記側壁の、前記溝の深さ方向及び複数の前記溝の並び方向に対して交差する延出方向における端部から、前記延出方向において前記溝の外側にそれぞれ延びる一対の延出壁と、前記延出壁を前記側壁の端部よりも外側で接続する接続壁と、を有し、前記空気室の溝の端部を塞ぐ、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記アクチュエータ部材の、複数の前記圧電体は、前記溝の深さ方向に積層され、積層方向において互いに反対向きに分極される、請求項1乃至4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
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