JP2023112768A - 機能性生地およびその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】柔軟性(しなやかさ、ゴワゴワ感)を失わずに基布本来の触感を維持しながら、汚染防止性および制振性などの機能を付与させた機能性生地を提供すること。【解決手段】基布(Y)と、要件(a)~(d)を満たす4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含有する機能性膜(X)とを含む機能性生地:(a)4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位(i)65~93モル%と、炭素原子数2~4のα-オレフィンに由来する構成単位(ii)7~35モル%とを含む共重合体である;(b)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである;(c)示差走査熱量分析で測定される融点(Tm)が200℃未満であるか、または実質的に観測されない;(d)密度が820~850kg/m3である;(e)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が1.0~3.5である。【選択図】なし

Description

本発明は、4-メチル-1-ペンテン系共重合体を含有する機能性生地およびその用途に関する。
従来から、衣料、日用品、医療品、自動車用部品などの分野で、合成繊維または天然繊維の布帛に撥水性や撥油性等を付与して防汚機能を高める試みが行われており、特に撥水材料として、フッ素系ポリマー(特許文献1)やウレタン樹脂(特許文献2)などが用いられている。
例えば、特許文献1には、布帛とフッ素含有ポリマーとの間に、フッ素含有ポリマー単量体、フッ素原子を含有しない共単量体および架橋剤からなる共重合体皮膜を形成した合成繊維布帛が開示されている。
特許文献2には、分散染料で染色されたポリエステル系繊維布帛に、ポリウレタン樹脂またはポリアミノ酸ウレタン樹脂主体の合成重合体よりなるコーティング樹脂溶液を塗布してコーティング皮膜を形成し、電子線架橋を施すことを特徴とするコーティング布帛の製造方法が開示されている。
また、撥水性以外の機能としては、人工皮革や合成皮革などの材料に制振性を付与する試みが行われている。例えば、特許文献3~4には、特定のスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)組成物が、制振性を有する合成皮革、人工皮革などの用途に使用できることが記載されている。また、特許文献4には、制振性を有する特定のポリウレタン系エラストマー(TPU)にTPSなどをブレンドした組成物が、人工皮革や合成皮革などに使用できることが記載されている。
一方、4-メチル-1-ペンテン系共重合体は、ポリエチレンやポリプロピレンに比べて、耐熱性、透明性、電気特性等に優れ、各種用途に広く使用されており、特に産業用離型フィルムやコンデンサ用フィルムなどが知られている。また、4-メチル-1-ペンテン系共重合体の分子量や組成を調整して低融点化することで耐熱性や離型性を保持しつつ溶剤への溶解性が良好とすることで、産業用フィルムへの適用が開示されている(特許文献5~6参照)。
特開昭60-39482号公報 特開平7-11586号公報 特許第5236417号公報 特許第4184178号公報 特許第5840064号公報 特開2017-132251号公報
上述の通り各種基布への機能付与方法は開示されているが、基布本来の触感を維持しながら、基布の汚染防止や制振性を付与させることが困難であった。また、フッ素系材料は廃棄時にフッ素系のガスが放出されるなど環境への課題が顕在化しつつあるため、環境低負荷なオレフィン系の材料が求められていた。さらに、基布へのコーティングや基布との積層体とすることで、ゴワゴワ感やしなやかさが失われたり、折り曲げ時に白化するなどの問題や、柔軟化させすぎるとべたつきが発生してしまうという問題があるため、柔軟性(しなやかさ、ゴワゴワ感)を失わず、フィット感を付与させたり、最表層の非粘着性を改善させたりすることが求められている。
本発明の課題は、柔軟性(しなやかさ、ゴワゴワ感)を失わずに基布本来の触感を維持しながら、汚染防止性および制振性などの機能を付与させた機能性生地を提供することにある。
本発明者らは、上述の状況に鑑み、前述の課題を解決するために鋭意検討した。その結果、特定の4-メチル-1-ペンテン系共重合体を含む機能性膜を基布に含侵または積層することにより、上述の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、例えば以下の[1]~[8]に関する。
[1] 基布(Y)と、下記要件(a)~(d)を満たす4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含有する機能性膜(X)とを含むことを特徴とする機能性生地:
(a)4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位(i)65~93モル%と、炭素原子数2~4のα-オレフィンに由来する構成単位(ii)7~35モル%とを含む(ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)の合計を100モル%とする。)共重合体である;
(b)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである;
(c)示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点(Tm)が200℃未満であるか、または実質的に観測されない;
(d)密度が820~850kg/m3である;
(e)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が1.0~3.5である。
[2] 前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)が、活性水素含有官能基、酸無水物基、およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する、項[1]に記載の機能性生地。
[3] 前記基布(Y)が、天然繊維もしくは合成繊維からなる織布および不織布から選択される、項[1]または[2]に記載の機能性生地。
[4] 前記機能性膜(X)が、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)と、25℃における比誘電率が5以下の溶媒(B)とを含み、かつ、前記溶媒(B)の含有量が、機能性膜(X)100質量%に対して0.001~0.5質量%である、項[1]~[3]のいずれか1項に記載の機能性生地。
[5] 項[1]~[4]のいずれか1項に記載の機能性生地を製造する方法であって、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)および25℃における比誘電率が5以下の溶媒(B)を含むコーティング剤を前記基布(Y)に塗布する第一の工程と、前記コーティング剤が塗布された基布(Y)を乾燥することにより前記機能性膜(X)を形成する第二の工程とを含む、機能性生地の製造方法。
[6] 項[1]~[3]のいずれか1項に記載の機能性生地を製造する方法であって、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含有する機能性膜(X)を、前記基布(Y)に積層する工程を含む、機能性生地の製造方法。
[7] 項[1]~[4]のいずれか1項に記載の機能性生地を備えた衣料用資材。
[8] 項[1]~[4]のいずれか1項に記載の機能性生地を備えたアウトドア用資材。
本発明によれば、4-メチル-1-ペンテン系共重合体の特徴である離型性、撥水性および制振性を保持させ、基布の風合いや柔軟性を損なわない機能性生地を提供することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、本明細書において、「重合体」および「(共)重合体」との語句は、特に断りのない限り、単独重合体および共重合体を包含する意味で用いられる。
本発明に係る機能性生地は、基布(Y)と、後述する4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含有する機能性膜(X)とを含むことを特徴とする。また、本発明の機能性生地の一実施形態では、前記機能性膜(X)は、25℃における比誘電率が5以下の溶媒(B)を含み、かつ、前記溶媒(B)の含有量が、機能性膜(X)100質量%に対して0.001~0.5質量%であることが好ましい。
[基布(Y)]
本発明の機能性生地に用いられる基布(Y)としては、適度な厚みと充実感を有し、かつ柔軟な風合を有するシート状の繊維質基材であればいずれも使用でき、天然繊維もしくは合成繊維からなる織布もしくは不織布からなる各種の繊維質基材、人工皮革、合成皮革、天然皮革等が好ましく用いられる。
上記した天然繊維もしくは合成繊維(以下これらを「繊維質素材」ともいう。)からなる織布もしくは不織布としては、特に限定されず、従来公知のものが用いられる。前記繊維質素材としては、例えば、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維;ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ塩化ビニル等の合成繊維を挙げることができる。織布としては、例えば、前記繊維質素材から作られた織物、編物等を挙げることができる。また不織布としては、前記繊維質素材を化学的方法、機械的方法、またはそれらの組合せにより絡み合わせてウェッブとしたものが挙げられる。
繊維質基材の具体的な態様としては、極細繊維またはその束状繊維、特殊多孔質繊維、通常の合成繊維、半合成繊維、天然繊維、無機繊維などを用いて形成された絡合不織シートや編織物シートなどの繊維質シートなどが挙げられる。
上記した繊維質基材のうちでも、極細繊維またはその束状繊維を用いて形成される繊維質シートが好ましく用いられ、繊維質シートを構成する極細繊維の単繊維繊度が0.5dtex以下であることが好ましく、0.1dtex以下であることがより好ましい。
また、繊維質基材を極細繊維束から形成する場合は、極細繊維束のトータル繊度が0.5~10dtexであることが機能性生地の風合などの点から好ましい。また、繊維質基材を構成する極細繊維は、ポリエステル系繊維および/ またはポリアミド系繊維から形成されているのが、得られる機能性生地の強度、感触、コストなどの点から好ましい。
本発明で用いられる基布(Y)は、後述する4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)との接着性を向上させるために、基布(Y)の表面に表面処理剤の被覆層を形成しておいてもよく、その場合の被覆層の厚さは5μm 以下とするのが好ましい。前記被覆層の厚さが厚くなると、柔軟で一体感のある風合を有する機能性生地が得られにくくなる。
上記した天然繊維もしくは合成繊維からなる織布もしくは不織布の厚さは、取り扱い性が容易である点で、20μm~3000μmであることが好ましく、20μm~1500μmであることがより好ましく、50μm~1000μmであることが更に好ましい。
[4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)]
本発明で用いられる4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)は、下記要件(a)~(e)を全て満たす。
<要件(a)>
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)は、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位(i)65~93モル%と、炭素原子数2~4のα-オレフィンに由来する構成単位(ii)7~35モル%とを含む共重合体である(ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)の合計を100モル%とする。)。
上記要件(a)は、4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位(i)と、炭素原子数2~4のα-オレフィンに由来する構成単位(ii)とを特定の割合で有することを規定している。
本明細書において、α-オレフィンに由来する構成単位とは、α-オレフィンに対応する構成単位、即ち、-CH2-CHR-(Rは水素原子、またはアルキル基)で表される構成単位を示唆する。4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)についても、同様に解釈でき、4-メチル-1-ペンテンに対応する構成単位(即ち、-CH2-CH(-CH2CH(CH32)-で表される構成単位)を示唆する。
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)において、構成単位(i)の量の下限値は65モル%、好ましくは67モル%、より好ましく68モル%であり、構成単位(i)の量の上限値は93モル%、好ましくは91モル%、より好ましくは90モル%である。
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)において、構成単位(i)の量が上記の下限値以上であると、柔軟性と撥水性が両立しやすい。一方、構成単位(i)の量が上記の上限値以下であると、後述する融点が上がりゴワゴワ感や基布の硬さを感じることになる。
したがって、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)において、炭素原子数2~4のα-オレフィンに由来する構成単位(ii)の量の上限値は35モル%、好ましくは33モル%、より好ましくは32モル%であり、構成単位(ii)の量の下限値は、7モル%、好ましくは9モル%、より好ましくは10モル%である。
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を構成する各構成単位の含有率(モル%)の値は、13C-NMRにより測定される。なお、測定方法の詳細については、後述の実施例に記載する内容のとおりである。
このように、本発明で用いられる4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)は、α-オレフィンとして炭素原子数2~4のα-オレフィンを含んでいる。構成単位(ii)は、これらのうち1つのα-オレフィンから導かれてもよいし、2以上のα-オレフィンから導かれてもよい。構成単位(ii)が1つのα-オレフィンから導かれている場合は、プロピレンであることが好ましい。
<要件(b)>
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)は、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]が、0.5~5.0dl/gの範囲である。
前記極限粘度[η]は、好ましくは1.0~4.0dl/g、より好ましくは1.2~3.5dl/gである。後述するように、重合中に水素を併用すると分子量を制御でき、低分子量体から高分子量体まで自在に得て、上記範囲の極限粘度[η]に調整することができる。測定方法の詳細については、後述の実施例に記載する内容のとおりである。
<要件(c)>
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)は、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点(Tm)が200℃未満であるか、または実質的に観測されない。
前記融点(Tm)は、好ましくは160℃以下であるか、実質的に観測されず、より好ましくは融点が150℃以下であるか、または実質的に観測されず、特に好ましくは150℃以下である。なお、融点が実質的に観測されないとは、示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融解熱量ΔH(Tm)(単位:J/g)が、実質的に観測されず、0J/gであることをいう。融解熱量ΔH(Tm)が実質的に観測されないとは、DSC測定において、ピークが観測されないことである。
前記融点(Tm)が観測される場合の下限は、好ましくは110℃、より好ましくは120℃、さらに好ましくは125℃である。
このような要件を満たすことにより、本発明の機能性生地が、高い撥水性と柔軟性を有することができ、ゴワゴワ感が低減される。
<要件(d)>
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)の密度は、820~850kg/m3である。
前記密度は、好ましくは825~850kg/m3、より好ましくは830~850kg/m3である。なお、測定方法の詳細は、後述する実施例に記載する内容のとおりである。前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)の密度は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体のコモノマー組成比によって、適宜変えることができる。密度が上記の範囲内にある前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)は、透明性と離型性が良好となるため有利である。
<要件(e)>
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が、1.0~3.5の範囲にある。
前記分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2~3.0、より好ましくは1.5~2.8である。前記分子量分布(Mw/Mn)が前記範囲内であると、組成分布に由来する低分子量、低立体規則性ポリマーの影響が少なく、得られる成形体(フィルム等)の機械強度が低下しにくいため好ましい。
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)は、さらに下記要件(f)~(g)の内、好ましくは1つ以上、より好ましくは全てを満たす。
<要件(f)>
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)が、ポリスチレン換算で、好ましくは1,000~1,000,000、より好ましくは5,000~800,000、さらに好ましくは10,000~500,000である。なお、測定方法の詳細については、後述の実施例に記載する内容のとおりである。
<要件(g)>
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)のメルトマスフローレイト(MFR;ASTM D1238準拠、温度230℃ 、荷重2.16kg)は、好ましくは0.1~100g/10分、より好ましくは0.5~50g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分の範囲内にある。
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)のメルトマスフローレイト(MFR)が前記範囲内であると、良好な分散性が得られるとともに、樹脂の分子量が低すぎず、成形体(フィルム等)として十分な機械強度が得られるため好ましい。
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)は、活性水素含有基、酸無水物基、エポキシ基からなる群から選ばれる1種類以上の官能基を有するのもまた好ましい態様である。これらの官能基は、4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)中に、0.1~10.0当量含まれていることが好ましい。またこれらの官能基の共重合体(A)への導入(変性)は公知の方法で行うことができ、特に限定されない。
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)に官能基を導入することで、天然繊維、ポリエステルやアクリル、ポリアミド等をはじめとした極性基を有する基布(Y)との密着性を付与することができ、折り曲げた時に機能性膜(X)が剥離しない機能性生地を得ることができる。
<4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)の製造方法>
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、4-メチル-1-ペンテンと前述の炭素原子数2~4のα-オレフィンとを、マグネシウム担持型チタン触媒またはメタロセン触媒などの適切な重合触媒存在下で重合することにより製造できる。
ここで、使用することができる重合触媒としては、従来公知の触媒、例えば、マグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号、国際公開01/27124号、特開平3-193796号公報、特開平2-41303号公報、国際公開第2011/055803号、国際公開第2014/050817号等に記載のメタロセン触媒などが好適に用いられる。重合は、溶解重合および懸濁重合などを含む液相重合法、ならびに気相重合法などから適宜選択して行うことができる。
液相重合法では、液相を構成する溶媒として不活性炭化水素溶媒を用いることができる。上記不活性炭化水素の例には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、および灯油などを含む脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、およびメチルシクロヘキサンなどを含む脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどを含む芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、およびテトラクロロメタンなどを含むハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物などが含まれる。
また、液相重合法では、前述の4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)に対応するモノマー(すなわち、4-メチル-1-ペンテン)、前述の炭素原子数2~4のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)に対応するモノマー(すなわち、前述の炭素原子数2~4のα-オレフィン)自体を溶媒とした塊状重合とすることもできる。
なお、上記の4-メチル-1-ペンテンと上記の炭素原子数2~4のα-オレフィンとの共重合を段階的に行うことにより、前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を構成する4-メチル-1-ペンテンの構成単位(i)、および、炭素原子数2~4のα-オレフィンの構成単位(ii)の組成分布を適度に制御することもできる。
重合温度は、-50~200℃が好ましく、0~100℃がより好ましく、20~100℃がさらに好ましい。重合圧力は、常圧~10MPaゲージ圧であることが好ましく、常圧~5MPaゲージ圧であることがより好ましい。
重合の時に、生成するポリマーの分子量や重合活性を制御する目的として、水素を添加してもよい。添加する水素の量は、前述の4-メチル-1-ペンテンの量と前述の炭素原子数2~4のα-オレフィンの量との合計1kgに対して、0.001~100NL程度が適切である。
[溶媒(B)]
前記溶媒(B)は、25℃における比誘電率が5以下であり、かつ、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)が一部でも可溶な液状の物質であれば、特に限定されないが、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、ナフテン系溶剤、イソパラフィン系溶剤等の脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤等が挙げられる。
前記ナフテン系溶剤は、1分子内にナフテンに由来する構造を含む化合物である。具体的には、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、エクソールD(登録商標、エクソンモービル社製)が挙げられる。
前記イソパラフィン系溶剤は、1分子内にイソパラフィンに由来する構造を含む化合物である。具体的には、IPソルベント(登録商標、出光興産社製)、シェルゾール(登録商標、シェル社製)、アイソパー(登録商標、エクソンモービル社製)が挙げられる。
前記芳香族系溶剤は、1分子内にベンゼン環など芳香族に由来する構造を含む化合物である。具体的には、トルエン、キシレン以外に、ソルベッソ(登録商標、エクソンモービル社製)、イプゾール(登録商標、出光興産社製)、ミネラルスピリット等が挙げられる。
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)に、25℃における比誘電率が5以下の溶媒(B)を添加することで、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)が均一に展開する。そのため、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)と溶媒(B)とを含むコーティング剤を基布(Y)に含侵させて乾燥させることで、機能性生地の表面平滑性や均一性が向上する傾向がある。
前記溶媒(B)の沸点は、好ましくは10~300℃、より好ましくは20~250℃、さらに好ましくは70~200℃である。この範囲に沸点があると、ハンドリング性と機能性生地を製造した場合の製造効率のバランスが良好となる。
また、上記脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤に加えて、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、イソホロン、γ-ブチロラクトン等のケトン系溶剤を含むことができる。このケトン系溶剤の使用量は、溶剤全体を100質量%とした場合、好ましくは0.5~40質量%、より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは10~20質量%である。
[添加剤]
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)は、副次的添加物を加えて種々の改質が行われたものであってもよい。副次的添加剤の具体例として、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの副次的添加物は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
可塑剤としては、芳香族カルボン酸エステル(フタル酸ジブチル等)、脂肪族カルボン酸エステル(メチルアセチルリシノレート等)、脂肪族ジアルボン酸エステル(アジピン酸-プロピレングリコール系ポリエステル等)、脂肪族トリカルボン酸エステル(クエン酸トリエチル等)、リン酸トリエステル(リン酸トリフェニル等)、エポキシ脂肪酸エステル(ステアリン酸エポキシブチル等)、石油樹脂等が挙げられる。
離型剤としては、高級脂肪酸の低級(C1~4)アルコールエステル(ステアリン酸ブチル等)、脂肪酸(C4~30)の多価アルコールエステル(硬化ヒマシ油等)、脂肪酸のグリコールエステル、流動パラフィン等が挙げられる。
耐熱安定剤としては、例えば、フェノール系(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート等)、多環フェノール系(2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、その他のメチレン架橋化多環フェノール等)、リン系(テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4-ビフェニレンジホスフォネート、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等)、アミン系(N,N-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン等)などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、アクリレート系等が挙げられる。
抗菌剤としては、4級アンモニウム塩、ピリジン系化合物、有機酸、有機酸エステル、ハロゲン化フェノール、有機ヨウ素等が挙げられる。
界面活性剤としては、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビットもしくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤などが挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩などが挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両面界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキル時ヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
帯電防止剤としては、上記の界面活性剤、脂肪酸エステル、高分子型帯電防止剤が挙げられる。脂肪酸エステルとしてはステアリン酸やオレイン酸のエステルなどが挙げられ、高分子型帯電防止剤としてはポリエーテルエステルアミドが挙げられる。
顔料としては、無機含量(酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、硫化カドミウム等)、有機顔料(アゾレーキ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系)が挙げられる。染料としてはアゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系等が挙げられる。これら顔料および染料の添加量は、特に限定されないが、前記共重合体(A)100質量部に対して、合計で、通常5質量部以下、好ましくは0.1~3質量部である。
スリップ剤としては、ワックス(カルナバロウワックス等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等)、講習脂肪酸塩(ステアリン酸カルシウム等)、高級アルコール(ステアリルアルコール等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等)などが挙げられる。
上記の各種添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて、特に限定されないが、前記4-メチル-1-ペンテン・α‐オレフ重合体(A)に対して、それぞれ、0.01~30質量部であることが好ましい。
[機能性生地の製造方法]
本発明の機能性生地を製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)および前記溶媒(B)を含むコーティング剤を前記基布(Y)に含浸させて乾燥する方法や、
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含有する機能性膜(X)を、前記基布(Y)に積層する工程を含む方法
などが挙げられる。より具体的には、
1)前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)および前記溶媒(B)を含むコーティング剤を前記基布(Y)に塗布する第一の工程(以下「塗布工程」ともいう)と、前記コーティング剤が塗布された基布(Y)を乾燥することにより機能性膜(X)を形成する第二の工程(以下「乾燥工程」ともいう)とを含む方法、
2)単層押出し成膜機または共押出し成膜機を用い、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含むフィルム(機能性膜(X))を、熱溶融下、前記基布(Y)に押出しラミネートを行いつつ、冷却ロールで成型する方法、
3)押出し成膜機または共押出し成膜機を用い、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含む樹脂組成物を用いてフィルム(機能性膜(X))を成膜した後、熱ロールまたは熱プレス機を用い、加熱および加圧下、前記フィルムを前記基布(Y)にラミネートする方法、
4)カレンダー式加熱ロールを用い、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含む樹脂組成物を溶融しながら前記基布(Y)にラミネートして機能性膜(X)を形成する方法、
あるいは、これら1)~4)の方法を2つ以上併せて用いる方法などが挙げられる。これらの中では、上記の1)の方法および3)の方法が好ましい。
上記の方法(例えば、2)~4)の方法)において、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含む機能性膜(X)側に意匠性および/または非粘着性を付与する目的で、上記の冷却ロールまたは熱ロールに凹凸模様を付けた、エンボスロールを用いてもよい。
上記の1)の方法では、乾燥工程において、前記溶媒(B)の沸点に近い温度に加熱して溶媒をある程度除去することにより、前記基布(Y)の表面および/または表面近傍の内部に機能性膜(X)が形成された機能性生地を製造することができる。機能性膜(X)が基布(Y)の表面近傍の内部に形成されている場合、該機能性膜(X)は、基布(Y)を構成する繊維の間に点在して形成されていてもよい。
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)および前記溶媒(B)を含むコーティング剤を塗布する方法は、特に限定されないが、はけやブラシを用いた塗布、スプレーによる吹き付け、スクリーン印刷法、フローコーティング、スピンコート、ディッピングによる方法や、バーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターナイフ、ロールコート、ダイコートなどを用いてロールや平板に塗布する方法など挙げられる。
本発明における溶媒の除去とは、溶媒を完全に取り去ることのみを意味するものではなく、成形し得る程度に溶媒を取り去ることをいう。具体的には、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)および前記溶媒(B)を含むコーティング剤を用いて形成した機能性膜(X)全体を100質量%とした場合、前記溶媒(B)が0.001~0.5質量%程度になるまで、溶媒(B)を取り去ることをいう。前記溶媒(B)の含有量が前記範囲にあると、基布(Y)本来の柔軟性を維持することができる。
溶媒を除去する方法は特に限定されず、放置することで乾燥してもよいが、一般的には30~220℃で加熱し乾燥することで除去される。また4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)の熱劣化や熱分解を防ぐために4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)の融点(Tm)以下の温度で溶媒を除去することが好ましい。乾燥温度が低すぎると乾燥時間が長くなるため生産性が悪化する場合があり、一方、乾燥温度が高すぎると発泡や劣化などの問題が生じる場合がある。
上記の乾燥工程では、発泡を防ぎながら短時間で乾燥させるために、2段階以上もしくは連続的に温度を上昇させながら乾燥してもよい。また、乾燥工程の後に水、メタノール、エタノール、アセトン、塩化メチレンなど共重合体(A)が溶解しにくい溶媒に浸漬する工程、あるいはその溶媒の蒸気雰囲気下に曝す工程を経ることによってコート層に残留する溶媒を低減することもできる。乾燥後のコート層中に残留する溶媒は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下である。
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含む機能性膜(X)を押出法などで成形する場合、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)をその融点(Tm)以上の温度に加熱して溶融する必要がある。しかしながら、上記コーティング剤で機能性膜(X)を形成する場合、融点(Tm)より低い温度で形成できるため、共重合体(A)の熱劣化などによる分解物が少なくなり、離型性や撥水性が高くなる場合がある。
前記分解物としては、例えば4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)が高温で分解したことにより得られる、該共重合体(A)を構成するモノマー成分の2量体~5量体などの低分子量成分や、上述した添加剤、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料、および酸化分解した成分の一部などが挙げられる。
[密着性向上樹脂]
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含む組成物またはコーティング剤には、機能性膜(X)と基布(Y)との間の密着力や接着力を高める必要がある場合、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、a)熱可塑性の接着性樹脂、b)粘着成分を有する樹脂、c)共重合体(A)を極性化合物でグラフト変性した成分(以下「グラフト変性共重合体(A’)」ともいう)をさらに配合することもできる。特に、前記組成物または前記コーティング剤が、活性水素含有官能基、酸無水物基及びエポキシ基からなる群から選ばれた官能基を有する前記a)~c)のいずれかの樹脂である樹脂(C)を含む態様が好ましい。
<a)熱可塑性の接着性樹脂>
前記熱可塑性の接着性樹脂(以下「接着性樹脂(a)」ともいう。)としては、公知の熱可塑性接着剤を挙げることができるが、極性官能基が導入されたポリオレフィン、アイオノマー樹脂、エチレン又はエチレンを含むモノマーとグリシジルメタクリレートとの共重合体から選ばれるものを用いるのが好ましい。極性官能基が導入されたポリオレフィンとしては、例えば、市販の熱可塑性樹脂「アドマー」(登録商標)(三井化学(株)製)、ポリオレフィン系接着性樹脂(三菱ケミカル(株)製「モディック」)を用いることができる。また、同様に溶剤に溶解もしくは分散した液状の様態として、液状ポリオレフィン系接着剤(三井化学(株)製「ユニストール」(登録商標))、塩素化ポリオレフィンワニス(日本製紙(株)製「スーパークロン」)が挙げられる。前記接着性樹脂(a)の添加量は、共重合体(A)100質量%に対して0.1~30質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましい。
<b)粘着成分を有する樹脂>
前記粘着成分を有する樹脂(以下「樹脂(b)」ともいう。)は、粘着性がある樹脂であるならば、特に制限はないが、例えば、DSCで測定した融点(Tm)が110℃未満の熱可塑性樹脂、および従来公知である熱可塑性エラストマーを挙げることができる。具体的には、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂またはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。ポリオレフィン系熱可塑性樹脂またはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの具体例として、エチレン系重合体、プロピレン系共重合体、ブテン系共重合体が挙げられる。より具体的には、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするエチレン系共重合体、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするエチレン系共重合体等が挙げられる。
また、熱可塑性エラストマーとしてはポリスチレン系エラストマーを挙げることもできる。ポリスチレン系エラストマーとしては、硬質部(結晶部)となるポリスチレンブロックと、軟質部となるジエン系モノマーブロックとのブロック共重合体(SBS)、水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック(HSBR)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレン共重合体(SIB)などを例示することができる。ポリスチレン系エラストマーは、単独または2種類以上を組み合せて用いられる。
スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体は、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)を水素添加してなるものである。SISの具体例としては、JSR株式会社から商品名:JSR SIS(登録商標)として、株式会社クラレから商品名:ハイブラー(登録商標)、またはシェル株式会社から商品名:クレイトンD(登録商標)として市販されているものなどが挙げられる。
また、SEPSの具体例としては、株式会社クラレから商品名:セプトン(登録商標)として市販されているものなどが挙げられる。また、SIBSの具体例としては、株式会社カネカから商品名:シブスター(登録商標)として市販されているものなどが挙げられる。
さらには、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーの例として、オレフィン系ブロック共重合体からなるエラストマーも使用することができる。ポリオレフィン系ブロック共重合体からなるエラストマーとして、例えば硬質部となるポリプロピレン等の結晶性の高いポリマーを形成するポリオレフィンブロックと、軟質部となる非晶性を示すモノマー共重合体とのブロック共重合体が挙げられ、具体的には、オレフィン(結晶性)・エチレン・ブチレン・オレフィンブロック共重合体、ポリプロピレン・ポリオレフィン(非晶性)・ポリプロピレンブロック共重合体等を例示することができる。具体例としては、JSR株式会社から商品名DYNARONとして市販されているものが挙げられる。前記樹脂(b)の添加量は、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)100質量%に対して0~50質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましい。
c)グラフト変性共重合体(A’)
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を極性樹脂と混合する場合などでは、前記グラフト変性共重合体(A’)を用いることが好ましい。
グラフト変性に用いる極性化合物としては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸またはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニル、ビニル基含有有機ケイ素化合物、カルボジイミド化合物などが挙げられる。これらのうち、不飽和カルボン酸またはその誘導体およびビニル基含有有機ケイ素化合物が特に好ましい。
不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物等を挙げることができ、不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。これらの化合物は従来公知のものが使用でき、特に制限はないが具体的な化合物としては、例えばアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸〔登録商標〕(エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)等の不飽和カルボン酸;またはその誘導体、例えば酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等が挙げられる。かかる誘導体の具体例としては、例えば塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。これらの中では、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸〔登録商標〕またはこれらの酸無水物が好ましく用いられる。
ビニル基含有有機ケイ素化合物としては、従来公知のものが使用でき、特に制限はないが具体的には、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシーエトキシシラン)、γ-グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクロキシプロピルメチルジメメトキシシラン、3-メタクロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが使用できる。好ましくは、γ-グリシドキシプロピルトリピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-アクロキシプロピルトリメトキシシラン、さらに好ましくは、立体障害が小さくグラフト変性効率の高いビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-アクロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
前記グラフト変性共重合体(A’)は、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)100質量部に対して、前記極性化合物を通常1~100質量部、好ましくは5~80質量部の量でグラフト反応させることにより得ることができる。このグラフト反応は、通常ラジカル開始剤の存在下に行なわれる。
グラフト重合に用いられるラジカル開始剤としては、有機過酸化物あるいはアゾ化合物などが挙げられる。ラジカル開始剤は、4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)、および極性化合物にそのまま混合して使用することもできるが、少量の有機溶媒に溶解してから使用することもできる。この有機溶媒としては、ラジカル開始剤を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定することなく用いることができる。
また、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)に極性化合物をグラフト反応させる際には、還元性物質を用いてもよい。還元性物質を用いると、極性化合物のグラフト量を向上させることができる場合がある。
前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)の極性化合物によるグラフト変性反応は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を有機溶媒に溶解し、次いで極性化合物およびラジカル開始剤などを溶液に加え、70~200℃、好ましくは80~190℃の温度で、0.5~15時間、好ましくは1~10時間反応させる方法を挙げることができる。
また、押出機などを用いて、無溶媒で、4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)と極性化合物とを反応させることもできる。この反応は、通常4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)の融点(Tm)以上、具体的には160~290℃の温度で、通常0.5~10分間行なわれることが望ましい。
このようにして得られるグラフト変性共重合体(A’)の変性量(極性化合物のグラフト量)は、通常、グラフト変性反応を行った4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)100質量%に対して0.1~50質量%、好ましくは0.2~30質量%、さらに好ましくは0.2~10質量%である。
[複合体]
本発明の機能性生地は、他の部材と複合化することにより、複合体として各種用途に用いることができる。すなわち、本実施形態に係る複合体は、前記機能性生地の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、前記機能性生地とは異なる部材とを備える。
本発明の機能性生地は、離型性、撥水性と柔軟性(ゴワゴワ感低減)の性能バランスに優れるため、前記機能性生地とは異なる部材と複合化しても同様の効果が発現する。すなわち、本発明における複合体は、離型性、撥水性と柔軟性、制振性などの性能バランスに優れている。
本発明における複合体を形成する方法は、各種公知の方法が適用可能である。例えば、前記機能性生地と前記機能性生地とは異なる部材を、必要に応じてプレス等により加熱圧着、または溶着することにより複合体を作製することができる。また、前記基布(Y)と前記基布(Y)とは異なる部材を、必要に応じてプレス等により加熱圧着、または溶着することにより得られた複合基材の前記基布(Y)側の表面または表面近傍の内部に、上述した機能性生地の製造方法と同様にして機能性膜(X)を形成することにより、複合体を作製することができる。
また、前記機能性生地と前記機能性生地とは異なる部材との間に接着剤を付与し、接着剤を介して接合することにより、複合体を作製することもできる。また、前記基布(Y)と前記基布(Y)とは異なる部材との間に接着剤を付与し、接着剤を介して接合することにより得られた複合基材の前記基布(Y)側の表面または表面近傍の内部に、上述した機能性生地の製造方法と同様にして機能性膜(X)を形成することにより、複合体を作製することができる。
前記接着剤としては、SBR系溶剤接着剤や、EVA、石油樹脂、またはEVAと石油樹脂との混合物等からなるホットメルト接着剤を好適に用いることができる。
前記機能性生地とは異なる部材、または、前記基布(Y)とは異なる部材としては特に限定されないが、例えば、毛皮、金属、炭素材、ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、高分子発泡体、メッシュ構造体(経編繊維、ダブルラッセルメッシュ、3次元スプリング構造体等)、繊維強化プラスチック、紙、木材、ガラス、石材、セラミック等が挙げられる。これらの部材は一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
[用途]
本発明の機能性生地および複合体は、4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)による離型性、撥水性、応力緩和性や制振性などの特徴を有する上、さらに、4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含有する機能性膜(X)を、天然繊維もしくは合成繊維からなる織布もしくは不織布などの基布(Y)に含侵または積層することで、従来の4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)だけでは困難であった柔軟性と撥水性の両立、縫い付け時の強度、意匠性を付与することが可能となり、様々な用途へ展開可能となる。
本発明の機能性生地および複合体は、従来公知の用途である、衣類用資材、医療用資材、衛生用資材、食品包装材、漁業用資材、農林業用資材、土木建築用資材、シューズ用資材、スポーツ用資材、レジャー用資材、産業用資材などの用途に用いることができる。例えば、衣類用資材としては、肌着、靴下、シャツ、ブリーフ、トランクス、ショーツ、キャミソール、スパッツ、ブラジャー、タイツ、腹巻などのインナーウェア、Tシャツ、セーター、コート、ジャケット、ジャンパー、パンツ、スカート、ファスナー、ボタン、帽子、手袋等のアウターウェア、トレーニングウェア、スキーウェア、水着、レオタード、サポーター等のスポーツウェア;医療用資材としては、手術用シーツ、メディカルウェア、血液吸収体、薬品吸収体、医療用テープ、絆創膏、湿布材等;衛生用資材としては、オムツ、失禁パット、生理用品、お産パッド、母乳パッド、マスク紐、眼帯紐、創傷被覆材等;漁業用資材としては、海苔網、巻き網、養殖の魚網や養殖網等;農林業用資材としては、防虫ネット、防風ネット、遮光ネット、雑草防止用ネット、防鳥用ネット、キューリネット、フラワーネット等;土木建築用資材としては、保水シート、結露防止シート、緑化シート、育苗シート、植生ネット、土嚢ネット等;シューズ用資材としては、靴表皮材、靴紐、スポーツ;レジャー用資材としては、ゴルフ、野球、テニス、卓球、バレーボール、バドミントン、サッカー、ハンドボール、バスケットボール、ホッケー、アイスホッケ、水球などのスポーツ用ネット、靴表皮材、虫取り網等;産業用資材としては、帽子、お手拭、洗車用品、玩具等;アウトドア用資材としては、テント、フライシート、キャンプチェア、レインコート、リュック、布バケツ等が挙げられる。
本発明の機能性生地は、特に好ましくは、衣類用資材およびアウトドア用資材であり、従来用いられてきたフッ素系やシリコーン系コーティング剤と比較して同様の離型性、撥水性を示しつつ軽量であり廃棄時にも有害なガスが発生しない特徴を有する。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例における重合体の物性測定方法、使用材料、試験片の作製方法および評価方法は、以下の通りである。
[物性測定方法]
<構成単位の含有率>
ポリマー中の4-メチル-1-ペンテン、およびα-オレフィン含量の定量化は、以下の装置および条件により13C-NMRで測定した結果を基にした。ただし、本測定結果のα-オレフィン含量には、4-メチル-1-ペンテンの含量は含まれない。
日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用いて、オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。得られた13C-NMRスペクトルにより、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィンの組成を定量化した。
<極限粘度>
ウベローデ粘度計を用いて、デカリン中135℃で測定した値である。重合パウダー、およびペレットまたは樹脂塊を約20mg採取し、デカリン15mLに溶解して、得られるデカリン溶液につき、135℃に加熱したオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同じように比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)をゼロに外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η]として算出した(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)>
分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。具体的には、液体クロマトグラフとしてWaters社製ALC/GPC150-Cplus型(示差屈折計検出器一体型)を用い、分離カラムとして東ソー(株)製GMH6-HTを2本、およびGMH6-HTLを2本直列接続して用い、移動相媒体としてo-ジクロロベンゼン、酸化防止剤として0.025質量%のジブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業(株)製)を用い、移動相媒体を1.0mL/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500μLとし、検出器は示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンとしては、重量平均分子量(Mw)が1,000以上、4,000,000以下において、東ソー(株)製の標準ポリスチレンを用いた。
得られたクロマトグラムを、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを用いて検量線を作成して解析することで、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn値)を算出した。1サンプル当たりの測定時間は60分であった。
<融点(Tm)>
セイコーインスツル(株)製DSC220C装置を用い、示差走査熱量計(DSC)によりポリマーの融点(Tm)を測定した。具体的には、下記合成例で得られた共重合体7~12mgをアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で200℃まで加熱した。その後、共重合体を完全融解させるために250℃で5分間保持し、次いで10℃/分で-50℃まで冷却した。-50℃で5分間置いた後、その試料を10℃/分で250℃まで再度加熱した。この再度の(2度目の)加熱でのピーク温度を、融点(Tm)として採用した。
<密度>
JIS K7112に準拠して、密度勾配管を用いて測定した。
<メルトマスフローレイト(MFR)>
ASTM D1238に準拠して、共重合体(A-1)~(A-3)については温度230℃、荷重2.16kgfで測定、共重合体(cA-4)については260℃、荷重5.0kgfで測定した。
<保存安定性>
4-メチル-1-ペンテン系共重合体および溶媒を含むコーティング剤の調製において、4-メチル-1-ペンテン系共重合体および溶媒を攪拌機付き容器に入れ、80℃、1時間、200rpmで攪拌して組成物を調製した後に、24時間、室温で保管した。前記保管後、前記組成物が、可視光線下、目視で透明な場合は○、白濁して見えたが流動性が見られた場合は△、白濁しかつ流動性が見られなかった場合は×として評価した。
<フィルム塗工性>
4-メチル-1-ペンテン系共重合体および溶媒を含むコーティング剤で機能性生地を作製した場合は、フィルム塗工性を下記のように評価した。4-メチル-1-ペンテン系共重合体および溶媒を含むコーティング剤を24時間、室温で保管した。その後、25℃で基布(Y)に塗布してアプリケーターで均一に伸ばした後、25℃で30分、さらに80℃で1時間乾燥した。これにより、機能性膜を有する機能性生地が得られた場合、機能性膜側の機能性生地の外観を目視で確認し、基布によらない凹凸があった場合は、溶け残りによるブツとして×と評価し、凹凸がなかった場合又は厚みムラがなかった場合は○と評価した。
<タック性>
機能性生地のタック性は下記のように評価した。得られた機能性生地において、機能性膜側の機能性生地の表面を指で押した場合、指に4-メチル-1-ペンテン系共重合体の成分が目視できる程度に付着した場合をタック性ありとして△、指に残らなかった場合をタック性なしとして〇と評価した。
<柔軟性>
機能性生地を100mm×50mmのサイズに切り出し、10人のモニターに対して手で自由に折り曲げたり丸めたりして変形させた場合の柔軟性(しなやかさ、ゴワゴワ感)を4段階評価で聴取し、平均値が、ランク2以下を合格とした。
ランク1:柔軟性良好
ランク2:しなやかさが少し不足
ランク3:ゴワゴワ感あり
ランク4:ゴワゴワ感が顕著
<水の接触角測定>
DropMaster500画像処理式、固液界面解析システムを用いて、得られた機能性生地の上に水滴を落としたときの接触角値を測定した。接触角値が大きいほど、極性が高い材料に対する離型性が高いことを意味する。
<臨界界面張力>
臨界界面張力測定は、DropMaster500画像処理式、固液界面解析システムにより、試験液としてぬれ張力試薬用混合液(和光純薬工業株式会社製)を用いて、23℃、湿度50%の環境下で、実施例で得られた機能性生地の接触角を測定し、それを元に臨界界面張力を算出した。臨界界面張力が小さいほど、極性が高い材料に対する離型性が高いことを意味する。
<溶媒含有量、分解物含有量>
フィルム中に含まれる溶媒や共重合体の分解物の含有量の測定は、特開2011-88352号公報、特開2007-224311号公報等の試験方法を参考にして実施した。具体的には、厚み50μmのフィルムを、20×2mmの短冊状にカットし、そのうち10mg分を精秤後、ヘリウム気流下にて180℃で30分加熱した。前記加熱時に発生するガス成分を動的ヘッドスペース法で捕集し、熱脱着GC/MSスペクトル分析装置(アジレントテクノロジー社製HP6890/HP5975)にて測定した。次に、得られたMSスペクトルを、デカンを標準試料とした換算定量値に換算し、溶媒に由来するピークを溶媒量、前記溶媒に由来しないピークを分解物量とした。
[4-メチル-1-ペンテン系共重合体の合成]
<4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A-1)の合成>
充分に窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で、ノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナで乾燥したもの)、および、4-メチル-1-ペンテン450mlを装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.19MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、および、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを、窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度を調整した。重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。その後、反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた共重合体(A-1)の量は44.0gであり、ポリマー中の4-メチル-1-ペンテン含量は84.1モル%、プロピレン含量は15.9モル%であった。得られた共重合体(A-1)の物性を表1に示す。
<4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A-2)の合成>
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4-メチル-1-ペンテンを450ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.16MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた共重合体(A-2)は36.3gであり、ポリマー中の4-メチル-1-ペンテン含量は86.2mol%、プロピレン含量は13.8mol%であった。得られた共重合体(A-2)の物性を表1に示す。
<4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A-3)の合成>
充分に窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4-メチル-1-ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.13MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、および、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmol含むトルエン溶液0.34mlを、窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度を調整した。重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。その後、反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-3)の量は36.9gであり、ポリマー中の4-メチル-1-ペンテン含量は72.5モル%、プロピレン含量は27.5モル%であった。得られた共重合体(A-3)の物性を表1に示す。
<4-メチル-1-ペンテン系共重合体(cA-4)の合成>
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4-メチル-1-ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.11MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧し、連鎖移動剤として水素を50ml添加した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始20分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を130℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(cA-4)は31.2gであり、ポリマー中の4-メチル-1-ペンテン含量は99mol%、プロピレン含量は1mol%であった。得られた共重合体(cA-4)の物性を表1に示す。
[基布]
<基布(Y-1)>
コットン50%、ナイロン40%、及び スパンデックス10%を含有する30番手糸を用い、目付82g/m2、密度0.4g/cm3の平織り布を、基布(Y-1)とした。
<基布(Y-2)>
ポリエステル65%、レーヨン35%を含有する60番手糸を、60ゲージで丸編みした布を、基布(Y-2)とした。
[実施例1]
4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A-1)100質量部に、耐熱安定剤として、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト0.1質量部とn-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピネート0.1質量部とを添加し、固形分濃度が5質量%になるようにトルエン(和光純薬工業株式会社製)を添加して、40℃、1時間、200rpmで攪拌することにより、4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A-1)を含むコーティング剤を調製した。このコーティング剤を25℃で基布(Y-1)上に塗布してアプリケーターで均一に伸ばした後、25℃で30分、さらに80℃で1時間乾燥し、機能性生地を得た。得られた機能性生地の各種物性を測定した結果を表2に示す。
[実施例2]
4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A-1)の代わりに4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A-2)を用いた以外は実施例1と同様の作業を行い、得られたコーティング剤を基布(Y-1)上に塗布して機能性生地を得た。得られた機能性生地の各種物性を測定した結果を表2に示す。
[実施例3]
4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A-1)の代わりに4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A-3)を用いた以外は実施例1と同様の作業を行い、得られたコーティング剤を基布(Y-1)上に塗布して機能性生地を得た。得られた機能性生地の各種物性を測定した結果を表2に示す。
[実施例4]
4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A-2)99.8質量部に、耐熱安定剤として、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト0.1質量部とn-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピネート0.1質量部とを添加してペレットを作製した。このペレットを、30mmφ単軸押出機を兼ね備えた、ダイ幅250mmのT-ダイ成形機を用い、樹脂供給ホッパーより樹脂ペレットを投入し、240℃に設定した単軸押出機内のシリンダーを通して樹脂ペレットを融解させた後、T-ダイよりダイス温度240℃で押出成形を行うことで30μm厚みのフィルムを得た。このフィルムを基布(Y-1)上に積層させ、熱プレス装置で0.2MPa、150℃で30秒熱融着させることで機能性生地を得た。得られた機能性生地の各種物性を測定した結果を表2に示す。
[比較例1]
4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A-1)の代わりに4-メチル-1-ペンテン系共重合体(cA-4)を用いた以外は実施例1と同様の作業を行ったが、溶媒に溶けず保存安定性が悪かったため、機能性生地が得られなかった。
[比較例2]
4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A-2)の代わりに4-メチル-1-ペンテン系共重合体(cA-4)を用い、270℃に設定した単軸押出機でフィルムを得た以外は、実施例4と同様の作業を行い、機能性生地を得た。得られた機能性生地の各種物性を測定した結果を表2に示す。
本発明の機能性生地は、柔軟性(しなやかさ、ゴワゴワ感)を失わず基布本来の触感を維持しながら撥水性、制振性などの機能に優れているため、衣料用資材やアウトドア製品、人工皮革、合成皮革などに有効である。また、フッ素やシリコーンなどを含まないため、環境低負荷にも優れている。

Claims (8)

  1. 基布(Y)と、下記要件(a)~(d)を満たす4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含有する機能性膜(X)とを含むことを特徴とする機能性生地:
    (a)4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位(i)65~93モル%と、炭素原子数2~4のα-オレフィンに由来する構成単位(ii)7~35モル%とを含む(ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)の合計を100モル%とする。)共重合体である;
    (b)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである;
    (c)示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点(Tm)が200℃未満であるか、または実質的に観測されない;
    (d)密度が820~850kg/m3である;
    (e)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が1.0~3.5である。
  2. 前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)が、活性水素含有官能基、酸無水物基、およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する、請求項1に記載の機能性生地。
  3. 前記基布(Y)が、天然繊維もしくは合成繊維からなる織布および不織布から選択される、請求項1または2に記載の機能性生地。
  4. 前記機能性膜(X)が、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)と、25℃における比誘電率が5以下の溶媒(B)とを含み、かつ、前記溶媒(B)の含有量が、機能性膜(X)100質量%に対して0.001~0.5質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の機能性生地。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の機能性生地を製造する方法であって、
    前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)および25℃における比誘電率が5以下の溶媒(B)を含むコーティング剤を前記基布(Y)に塗布する第一の工程と、前記コーティング剤が塗布された基布(Y)を乾燥することにより前記機能性膜(X)を形成する第二の工程とを含む、機能性生地の製造方法。
  6. 請求項1~3のいずれか1項に記載の機能性生地を製造する方法であって、
    前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A)を含有する機能性膜(X)を、前記基布(Y)に積層する工程を含む、機能性生地の製造方法。
  7. 請求項1~4のいずれか1項に記載の機能性生地を備えた衣料用資材。
  8. 請求項1~4のいずれか1項に記載の機能性生地を備えたアウトドア用資材。
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