JP2023110983A - 液晶ポリエステル樹脂、その製造方法、液晶ポリエステル樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

液晶ポリエステル樹脂、その製造方法、液晶ポリエステル樹脂組成物およびそれからなる成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】成形安定性と成形品の耐熱性のバランスに優れた液晶ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂組成物および成形品を提供すること。【解決手段】液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位を15~80モル%、芳香族ジオールに由来する構造単位を7~40モル%、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位を7~40%、下記構造単位(I)を0.01~5モル%、および下記構造単位(II)を0.01~5モル%含む液晶ポリエステル樹脂。TIFF2023110983000015.tif42133(X1、X2はそれぞれ独立に、O、CO、NH、CH2O、CH2COO、およびCH2NHのいずれかを表す。nは1~5の整数を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、液晶ポリエステル樹脂、その製造方法、液晶ポリエステル樹脂組成物およびそれからなる成形品に関する。より詳しくは、成形安定性と成形品の耐熱性のバランスに優れた液晶ポリエステル樹脂、その製造方法、液晶ポリエステル樹脂組成物および成形品に関するものである。
液晶ポリエステル樹脂は、その液晶構造のため、耐熱性、流動性、寸法安定性に優れる。このため、それらの特性が要求されるコネクタやリレーなどの電気・電子部品を中心に需要が急激に拡大しており、射出成形などによる製品化過程における生産安定性の向上が求められている。特に、射出成形による生産は、品切りや成形トラブルなどで成形機の停機と再開(復帰)を繰り返すため、復帰後に良品を得るまでに必要な時間を短縮させて成形安定性を高めることは重要である。加えて、近年の機器の高性能化に伴い、上記部品の小型化や薄肉化が進んでおり、小型・薄肉でありながらも、SMT工程におけるリフローなど、高温処理時に変形しない耐熱性も重要である。一方、上述した成形安定性と耐熱性はトレード・オフの関係にあり、両立させたバランスの良い材料を得ることは極めて困難である。
液晶ポリエステル樹脂は多様なモノマーからなっているため、その構造の組み合わせ方や、他樹脂とのアロイによって性能を大きく変えることができる。その例として、特許文献1においては、1,4-シクロヘキサンジオールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を少量含むことで流動性が向上することが示されている。またた、特許文献2および3には、PCT(ポリ-1,4-シクロへキシサンジメチレンテレフタレート)樹脂を液晶ポリエステルに添加することで、ガスバリア製やウェルド強度が向上することが開示されている。さらに、液晶ポリエステルに多量のPCTを添加した場合は、面衝撃や流動性に優れる材料となることが特許文献4には記されている。
国際公開第2019/198665号 特開平2-191636号公報 特開平4-348154号公報 特開平9-183891号公報
一方で、前記特許文献1に記載された液晶ポリエステル樹脂は、流動性は向上するものの、液晶ポリエステル樹脂を成形する際の射出成形機の停機・復帰過程での成形性が不安定であって、生産性に課題があった。特許文献2~4に記載された方法では、高温におけるガスや昇華物の発生や、成形品の耐熱変形性といった耐熱性が十分ではなかった。本発明は、上述した成形安定性と成形品の耐熱性のトレード・オフという課題を解決し、成形安定性と成形品の耐熱性のバランスに優れた液晶ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂組成物および成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の構造単位を少量有する液晶ポリエステル樹脂とすることで、成形安定性と成形品の耐熱性のバランスに優れた液晶ポリエステル樹脂を得ることのできることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位を15~80モル%、芳香族ジオールに由来する構造単位を7~40モル%、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位を7~40%、下記構造単位(I)を0.01~5モル%、および下記構造単位(II)を0.01~5モル%含む液晶ポリエステル樹脂。
Figure 2023110983000001
(X、Xはそれぞれ独立に、O、CO、NH、CHO、CHCOO、およびCHNHのいずれかを表す。)
(nは1~5の整数を表す。)
(2)液晶ポリエステル樹脂が、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位として、構造単位(III)を含み、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位として、下記構造単位(IV)を含み、構造単位(III)および構造単位(IV)の合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して60モル%以上80モル%未満である(1)記載の液晶ポリエステル樹脂。
Figure 2023110983000002
(3)液晶ポリエステル樹脂が、芳香族ジオールに由来する構造単位として、下記構造単位(V)を含み、構造単位(V)が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して2~20%である(1)または(2)に記載の液晶ポリエステル樹脂。
Figure 2023110983000003
(4)前記構造単位(I)および前記構造単位(II)をいずれも含まない液晶ポリエステル樹脂ならびに前記構造単位(I)を有する化合物および前記構造単位(II)を有する化合物、または前記構造単位(I)および前記構造単位(II)を有する化合物を溶融混練することにより(1)~(3)のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂を得る液晶ポリエステル樹脂の製造方法。
(5)(1)~(3)のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂100重量部に対し、充填材を10~200重量部含む、液晶ポリエステル樹脂組成物。
(6)(1)~(3)のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂、または(5)に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
(7)成形品が、コネクタ、リレー、スイッチ、コイルボビン、ランプソケット、カメラモジュール、集積回路封止部品、およびインシュレーターからなる群から選択されるいずれかである(6)に記載の成形品。
本発明の液晶ポリエステル樹脂によれば、成形安定性と成形品の耐熱性のバランスに優れた液晶ポリエステル樹脂を得ることができる。かかる樹脂は、特に薄肉の箱型や筒型形状を有するコネクタ、リレー、スイッチ、コイルボビン、ランプソケット、カメラモジュール、集積回路封止部品、インシュレーターなどの電気・電子部品や機械部品に好適である。
実施例において作製したコネクタ成形品の概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<液晶ポリエステル樹脂>
本発明で使用する液晶ポリエステル樹脂は、異方性溶融相を形成するポリエステルである。液晶ポリエステル樹脂としては、例えば、後述するオキシカルボニル単位、ジオキシ単位、ジカルボニル単位などから異方性溶融相を形成するよう選ばれた構造単位から構成されるポリエステルなどが挙げられる。
次に、液晶ポリエステル樹脂を構成する構造単位について説明する。
本発明の液晶ポリエステル樹脂は、構造単位(I)と構造単位(II)をそれぞれ特定量含むことを特徴とする。これら二つの構造単位を特定量で組み合わせることによって、成形安定性と成形品の耐熱性を両立することが可能となる。構造単位(I)と構造単位(II)はシクロヘキサン環とメチレン鎖をそれぞれ有している。シクロヘキサン環とメチレン鎖は剛直性と屈曲性を併せ持つ特異な構造をしており、液晶ポリエステルのパッキング性を保ちつつも緩和させることが可能であり、両者を特定の範囲で液晶ポリエステル樹脂に導入することによって、成形安定性と成形品の耐熱性のバランスを取ることができることを見出した。また、特に構造単位(I)と構造単位(II)が液晶ポリエステル樹脂の主鎖中にて、お互いに近接して存在するほうがより効果を発揮する。
本発明の液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、下記構造単位(I)を0.01~5モル%含む。5モル%より多いと成形品の耐熱性が低下し、0.01モル%より少ないと成形安定性が向上しない。成形安定性と成形品の耐熱性の観点から、4モル%以下が好ましく、3.5モル%以下がより好ましく、3モル%以下がさらに好ましい。また、0.1モル%以上が好ましく、0.5モル%以上がより好ましく、1モル%以上がさらに好ましい。
下記構造単位(I)は、シクロヘキサンの1,4位に置換基(X,X)を有する構造であって、X、Xはそれぞれ独立に、O、CO、NH、CHO、CHCOO、およびCHNHのいずれかを表す。X、Xは同じであっても異なっていても良い。構造単位(I)の具体例としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-アミノシクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサン二酢酸、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを使用することができ、これらは単独でも用いても良く、複数種を併用して用いても良い。中でも、反応性の観点から、X、Xはそれぞれ独立に、O、COまたはCHOであることが好ましく、構造単位(I)は、1,4-シクロヘキサンジオール(X、X=O)、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(X、X=COO)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(X、X=CHO)由来の構造単位であることが好ましく、1,4-シクロヘキサンジメタノール由来の構造単位であることがさらに好ましい。
Figure 2023110983000004
(X、Xはそれぞれ独立に、O、CO、NH、CHO、CHCOO、およびCHNHのいずれかを表す。)
本発明の液晶ポリエステル樹脂は、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、下記構造単位(II)を0.01~5モル%含む。5モル%より多いと成形品の耐熱性が低下し、0.01モル%より少ないと成形安定性が向上しない。成形安定性と成形品の耐熱性の観点から、4モル%以下が好ましく、3.5モル%以下がより好ましく、3モル%以下がさらに好ましい。また、0.1モル%以上が好ましく、0.2モル%以上がより好ましく、0.4モル%以上がさらに好ましい。
下記構造単位(II)は、脂肪族ジオールに由来する構造単位であって、nは0~5の整数を表す。構造単位(II)の具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。反応性の観点から、構造単位(II)は、エチレングリコール(n=1)由来の構造単位であることが好ましい。
Figure 2023110983000005
(nは1~5の整数を表す。)
本発明の液晶ポリエステル樹脂は、オキシカルボニル単位として、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位を15~80モル%含む。15%未満であると、液晶性が損なわれるため成形品の耐熱性が低下する。成形品の耐熱性の観点から、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。一方で、80モル%より多いと、液晶ポリエステル樹脂の結晶性および融点の制御が困難となり、成形安定性が低下する。75モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましい。
オキシカルボニル単位の具体例としては、p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸や6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸などに由来する構造単位を使用することができる。
本発明の液晶ポリエステル樹脂は、ジオキシ単位として、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、芳香族ジオールに由来する構造単位を7~40モル%含む。5モル%未満であると、液晶ポリエステル樹脂の結晶性および融点の制御が困難となり、成形安定性が低下する。10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましい。一方で、40モル%より多いと、液晶性が損なわれるため成形品の耐熱性が低下する。37モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましい。
芳香族ジオールに由来する構造単位としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシノール、t-ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、クロロハイドロキノン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンなどに由来する構造単位が挙げられる。成形品の耐熱性に優れる観点から、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンに由来する構造単位を使用することが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂は、ジカルボニル単位として、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位を7~40モル%含む。7モル%未満であると、液晶ポリエステル樹脂の結晶性および融点の制御が困難となり、成形安定性が低下する。10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましい。一方で、40モル%より多いと、液晶性が損なわれるため成形品の耐熱性が低下する。37モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、2,2’-ジフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、1,2-ビス(2-クロロフェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸などに由来する構造単位が挙げられる。入手性に優れ、成形品の耐熱性と成形安定性に優れる観点から、テレフタル酸、イソフタル酸に由来する構造単位を使用することが好ましい。
また、上記構造単位に加えて、p-アミノ安息香酸、p-アミノフェノールなどから生成した構造単位を、液晶性や特性を損なわない程度の範囲でさらに有することができる。
上記の各構造単位を構成する原料モノマーは、各構造単位を形成しうる構造であれば特に限定されないが、各構造単位の水酸基のアシル化物、各構造単位のカルボキシル基のエステル化物、酸ハロゲン化物、酸無水物などのカルボン酸誘導体などが使用されてもよい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位として、下記構造単位(III)を含み、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位として、下記構造単位(IV)を含み、構造単位(III)と構造単位(IV)の合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、60モル%以上80モル%未満であることが好ましい。液晶ポリエステル樹脂の結晶性および融点を制御した上で、成形品の耐熱性に優れる観点から、好ましくは63モル%以上、さらに好ましくは67モル%以上である。一方で、液晶ポリエステル樹脂の結晶性および融点を制御した上で、成形安定性に優れる。
観点から、好ましくは78%以下、より好ましく75モル%以下、さらに好ましくは74モル%以下である。また、構造単位(III)と構造単位(IV)は、いずれか一方の構造単位を有し、もう一方の構造単位が0モル%であってもよいが、液晶ポリエステル樹脂の結晶性および融点を制御する観点から、それぞれが0モル%を超えることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂の構造単位(III)の含有量は、成形品の耐熱性に優れる観点から、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。一方で、液晶ポリエステル樹脂の結晶性および融点を制御した上で、成形安定性に優れる観点から、70モル%以下が好ましく、65モル%以下が好ましい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂の構造単位(IV)の含有量は、成形安定性に優れる観点から、5モル%以上が好ましく、10モル%以上が好ましい。一方で、成形品の耐熱性に優れる観点から、30モル%以下が好ましく、20モル%以下が好ましい。
Figure 2023110983000006
本発明の液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ジオールに由来する構造単位として、下記構造単位(V)を含み、構造単位(V)を液晶ポリエステル樹脂の構造単位全量100モル%に対して2~20モル%含有することが好ましい。構造単位(V)はハイドロキノンに由来する構造単位である。2モル%以上含有することにより、成形安定性をより向上させることができる。より好ましくは4モル%以上であり、さらに好ましくは7.5モル%以上である。一方で、20モル%以下含有することにより、成形品の耐熱性をより向上させることができる。より好ましくは15モル%以下であり、さらに好ましくは12モル%以下である。
Figure 2023110983000007
本発明の液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ジオールに由来する構造単位として、下記構造単位(VI)を含み、構造単位(VI)を液晶ポリエステル樹脂の構造単位全量100モル%に対して、3~30モル%含有することが好ましい。構造単位(VI)は4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位である。3モル%以上含有することにより、液晶ポリエステル樹脂の結晶性および融点を制御でき、成形品の耐熱性が向上する。好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは7モル%以上である。一方で、30モル%以下含有することにより、液晶ポリエステル樹脂の結晶性および融点を制御でき、成形安定性が向上する。より好ましくは25モル%以下であり、さらに好ましくは20モル%以下である。
Figure 2023110983000008
本発明の液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位として、下記構造単位(VII)を含み、構造単位(VII)を液晶ポリエステル樹脂の構造単位全量100モル%に対して、1~10モル%含有することが好ましい。下記構造単位(VII)はイソフタル酸に由来する構造単位である。1モル%以上含有することにより、液晶ポリエステル樹脂の結晶性および融点を制御でき、成形安定性が向上する。好ましくは2モル%以上であり、より好ましくは3モル%以上である。一方で、10モル%以下含有することにより、液晶ポリエステル樹脂の結晶性および融点を制御でき、成形品の耐熱性が向上する。より好ましくは9モル%以下であり、さらに好ましくは8モル%以下である。
Figure 2023110983000009
本発明における液晶ポリエステル樹脂の各構造単位の含有量は、液晶ポリエステルペレットを粉砕後、水酸化テトラメチルアンモニウムを添加し、島津製GCMS-QP5050Aを用いて熱分解GC/MS測定を行うことにより求めることができる。検出されなかった、あるいは検出限界以下の構造単位の含有量は0モル%として計算する。
本発明の液晶ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、成形品の耐熱性の観点から220℃以上が好ましく、270℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。一方、加工時の液晶ポリエステル樹脂の劣化を抑制し、成形時の金型汚れを抑制する観点から、液晶ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、360℃以下が好ましく、355℃以下がより好ましく、350℃以下がさらに好ましい。
融点(Tm)の測定は、示差走査熱量測定により行う。具体的には、まず、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で加熱することにより吸熱ピーク温度(Tm)を観測する。吸熱ピーク温度(Tm)の観測後、吸熱ピーク温度(Tm)+20℃の温度でポリマーを5分間保持する。その後、20℃/分の降温条件で室温までポリマーを冷却する。そして、20℃/分の昇温条件でポリマーを加熱することにより吸熱ピーク温度(Tm)を観測する。融点(Tm)とは、該吸熱ピーク温度(Tm)を指す。
<液晶ポリエステル樹脂の製造方法>
本発明で使用する液晶ポリエステル樹脂を製造する方法は、下記の方法が挙げられる。
(A)後述の公知のポリエステルの重縮合法に準じて液晶ポリエステル樹脂を製造する際に、構造単位(I)を有する化合物と構造単位(II)を有する化合物、または構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物の存在下で重縮合を行う方法。
(B)構造単位(I)および構造単位(II)をいずれも含まない液晶ポリエステル樹脂と、構造単位(I)を有する化合物と構造単位(II)を有する化合物、または構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物を溶融混練する方法。
前記構造単位(I)を有する化合物、構造単位(II)を有する化合物、または構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物は、具体例は後述するが、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであっても良く、これらを組み合わせても良い。(B)に示した手法では、溶融混練中に前記化合物の分解を抑制でき、成形品の耐熱性が向上する観点から、前記化合物はオリゴマーまたはポリマーであることが好ましい。
液晶ポリエステル樹脂との適度なエステル交換反応により、成形安定性と成形品の耐熱性を向上させることが可能なため、(B)に示した方法が好ましい。(B)の手法によると、前述したとおり構造単位(I)と構造単位(II)が近接しながら液晶ポリエステル樹脂主鎖中に導入されるため、液晶ポリエステル樹脂部位と構造単位(I)および構造単位(II)を有する部位がそれぞれブロック構造を形成しやすくなり、パッキングと緩和を両立することが容易となり、成形安定性と成形品の耐熱性を高度なレベルで両立できる。なお、これらを溶融混練する方法としては、後述の液晶ポリエステル樹脂組成物の製造方法に記載される方法が挙げられる。
構造単位(I)を有する化合物としては、前述の構造単位(I)の具体例に示した化合物や、これら具体例に示した化合物にオキシカルボニル単位やジカルボニル単位などの液晶ポリエステル樹脂を構成しうる構造単位が1つ以上エステル結合した化合物が挙げられる。例えば、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートが挙げられる。
構造単位(II)を有する化合物としては、前述の構造単位(II)の具体例に示した化合物や、これら具体例に示した化合物にオキシカルボニル単位やジカルボニル単位などの液晶ポリエステル樹脂を構成しうる構造単位が1つ以上エステル結合した化合物が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物としては、前述の構造単位(I)または構造単位(II)の具体例に示した化合物同士がエステル結合やアミド結合などによって連結した化合物や、前述の構造単位(I)、構造単位(II)、およびオキシカルボニル単位やジカルボニル単位などの液晶ポリエステル樹脂を構成しうる構造単位の少なくとも3種の構造単位がエステル結合やアミド結合などを介して連結、または重合した化合物が挙げられる。
上記(B)の手法において、構造単位(I)と構造単位(II)が近接しながら液晶ポリエステル樹脂主鎖中に導入され、成形安定性と成形品の耐熱性を両立できる観点から、構造単位(I)および構造単位(II)の構造を有する化合物を、構造単位(I)および構造単位(II)から選ばれる構造単位を含まない液晶ポリエステル樹脂に溶融混練する手法が好ましい。構造単位(I)および構造単位(II)の構造を有する化合物の具体例としては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、およびテレフタル酸がエステル結合を介して連結した化合物、1,4-シクロヘキサンジオール、エチレングリコール、およびテレフタル酸がエステル結合を介して連結した化合物、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、エチレングリコール、およびテレフタル酸がエステル結合を介して連結した化合物、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、テレフタル酸がエステル結合を介して連結した化合物などが挙げられる。中でも、液晶ポリエステル樹脂との反応性が良好であって、成形安定性と成形品の耐熱性を高度に両立できる観点から、1,4-シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、およびテレフタル酸がエステル結合を介して連結した化合物、すなわちポリ(エチレンシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)を用いることが好ましい。
上記(B)に示した、構造単位(I)および構造単位(II)から選ばれる構造単位を含まない液晶ポリエステル樹脂を製造したあと、構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物を溶融混練する方法によって本発明の液晶ポリエステル樹脂を製造する場合、構造単位(I)および構造単位(II)の含有量を所望の範囲とし、成形安定性に優れる観点から、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物を0.5重量部以上溶融混練することが好ましい。より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは2重量部以上である。一方で、構造単位(I)および構造単位(II)の含有量を所望の範囲とし、成形品の耐熱性に優れる観点から、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物を10重量部以下溶融混練することが好ましい。より好ましくは8重量部以下、さらに好ましくは6重量部以下である。
公知のポリエステルの重縮合法としては、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、ハイドロキノンに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位、およびイソフタル酸に由来する構造単位からなる液晶ポリエステル樹脂を例に、以下が挙げられる。
(1)p-アセトキシ安息香酸および4,4’-ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンとテレフタル酸、イソフタル酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶ポリエステル樹脂を製造する方法。
(2)p-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、およびイソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアセチル化した後、脱酢酸重合することによって液晶ポリエステル樹脂を製造する方法。
(3)p-ヒドロキシ安息香酸フェニルおよび4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニルから脱フェノール重縮合反応により液晶ポリエステル樹脂を製造する方法。
(4)p-ヒドロキシ安息香酸およびテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれフェニルエステルとした後、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶ポリエステル樹脂を製造する方法。
なかでも(2)p-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、およびイソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアセチル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶ポリエステル樹脂を製造する方法が、液晶ポリエステル樹脂の末端構造の制御および重合度の制御に工業的に優れる点から、好ましく用いられる。
本発明で使用する液晶ポリエステル樹脂の製造方法として、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。固相重合法による処理としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、液晶ポリエステル樹脂のポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕する。粉砕したポリマーまたはオリゴマーを、窒素気流下、または、減圧下において加熱し、所望の重合度まで重縮合することで、反応を完了させる。上記加熱は、液晶ポリエステルの融点-50℃~融点-5℃(例えば、200~300℃)の範囲で1~50時間行うことができる。
<液晶ポリエステル樹脂組成物>
本発明の液晶ポリエステル樹脂は、液晶ポリエステル樹脂の機械強度その他の特性を付与するために充填材を含有してもよい。本発明で使用される充填材は、特に限定されるものではないが、例えば、繊維状、ウィスカー状、板状、粉末状、粒状などの充填材を挙げることができる。具体的には、繊維状、ウィスカー状充填材としては、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維や液晶ポリエステル繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、および針状酸化チタンなどが挙げられる。板状充填材としては、マイカ、タルク、カオリン、ガラスフレーク、クレー、二硫化モリブデン、およびワラステナイトなどが挙げられる。粉状、粒状の充填材としては、シリカ、ガラスビーズ、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウムおよび黒鉛などが挙げられる。本発明に使用される上記の充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理されていてもよい。また、本発明に使用される上記の充填材は、2種以上を併用してもよい。
上記充填材中、特に引張強度や曲げ強度などの機械的強度、耐熱性、寸法安定性に優れる点から、ガラス繊維を使用することが好ましい。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものであれば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどを挙げることができる。
上記充填材は、その表面が公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤により処理されていてもよい。また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でさらに酸化防止剤、熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ハイドロキノン、ホスファイト、チオエーテル類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(例えば、レゾルシノール、サリシレート)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料または顔料を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤(臭素系難燃剤、燐系難燃剤、赤燐、シリコーン系難燃剤など)、難燃助剤、および帯電防止剤から選択される通常の添加剤を配合することができる。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物において、充填材の含有量は、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対し、10~200重量部が好ましい。充填材含有量が10重量部以上であれば、成形品の機械強度を向上させることができるため好ましい。15重量部以上がより好ましく、20重量部以上がさらに好ましい。一方、充填材含有量が200重量部以下であれば、成形性および薄肉流動性に優れた液晶ポリエステル樹脂組成物が得られるため好ましい。150重量部以下がより好ましく、100重量部以下がさらに好ましい。
<液晶ポリエステル樹脂組成物の製造方法>
本発明の液晶ポリエステル樹脂に、充填材、および他の添加剤等を配合する方法としては、例えば、構造単位(I)および構造単位(II)から選ばれる構造単位を含まない液晶ポリエステル樹脂に、構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物、充填材およびその他の固体状の添加剤等を配合するドライブレンド法や、構造単位(I)および構造単位(II)から選ばれる構造単位を含まない液晶ポリエステル樹脂、構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物、および充填材にその他の液体状の添加剤等を配合する溶液配合法、構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物、充填材およびその他の添加剤を構造単位(I)および構造単位(II)から選ばれる構造単位を含まない液晶ポリエステル樹脂の重合時に添加する方法や、構造単位(I)および構造単位(II)から選ばれる構造単位を含まない液晶ポリエステル樹脂、構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物、充填材およびその他の添加剤を溶融混練する方法などを用いることができる。なかでも溶融混練する方法が好ましい。溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、液晶ポリエステル樹脂の融点+50℃以下で溶融混練して液晶ポリエステル樹脂組成物とすることができる。なかでも二軸押出機が好ましい。
二軸押出機については、液晶ポリエステル樹脂、および充填材の分散性を向上させるため、ニーディング部を1箇所以上設けていることが好ましく、2箇所以上設けていることがより好ましい。ニーディング部を上記のように設け、液晶ポリエステル樹脂を上述の(B)の方法で製造する場合、構造単位(I)および構造単位(II)から選ばれる構造単位を含まない液晶ポリエステル樹脂と、構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物の分散性が向上し、液晶ポリエステル樹脂との適度なエステル交換反応により、前述したとおり構造単位(I)と構造単位(II)が近接しながら液晶ポリエステル樹脂主鎖中に導入されるため、成形品の耐熱性と成形安定性をより向上させることができる。ニーディング部の設置箇所は、例えば、充填材をサイドフィーダーから添加する場合、液晶ポリエステル樹脂の可塑化を促進させるために、充填材のサイドフィーダーより上流側に1箇所以上、液晶ポリエステル樹脂と充填材との分散性を向上させるため、サイドフィーダーよりも下流側に1箇所以上の計2箇所以上設置することが好ましい。
また、二軸押出機中の水分や混練中に生じた分解物を除去するため、ベント部を設けていることが好ましく、2箇所以上設けていることがより好ましい。ベント部の設置箇所は、例えば、充填材をサイドフィーダーから添加する場合、液晶ポリエステル樹脂の付着水分を除去するために、充填材を投入するサイドフィーダーより上流側に1箇所以上、溶融混練時の分解ガス、充填材供給時の持ち込み空気を除去するため、サイドフィーダーよりも下流側に1箇所以上の計2箇所以上設置することが好ましい。ベント部は、常圧下としてもよく、減圧下としてもよい。
混練方法としては、構造単位(I)および構造単位(II)から選ばれる構造単位を含まない液晶ポリエステル樹脂、構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物、充填材およびその他の添加剤を元込めフィーダーから一括で投入して混練する方法(一括混練法)、2)構造単位(I)および構造単位(II)から選ばれる構造単位を含まない液晶ポリエステル樹脂、構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物、およびその他の添加剤を元込めフィーダーから投入して混練した後、充填材およびその他添加剤をサイドフィーダーから添加して混練する方法(サイドフィード法)、3)構造単位(I)および構造単位(II)から選ばれる構造単位を含まない液晶ポリエステル樹脂、構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物、およびその他の添加剤を高濃度に含むマスターペレットを作製し、次いで規定の濃度になるようにマスターペレットを液晶ポリエステル樹脂および充填材と混練する方法(マスターペレット法)など、どの方法を用いてもかまわない。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸などの公知の溶融成形を行うことによって、成形品に加工することが可能である。ここでいう成形品としては、射出成形品、押出成形品、プレス成形品、シート、パイプ、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムなどの各種フィルム、未延伸糸、超延伸糸などの各種繊維などが挙げられる。特に加工性の観点から射出成形であることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂または液晶ポリエステル組成物を成形して得られる成形品は、金属端子部を有し、薄肉の箱型や筒型形状を有するコネクタ、リレー、スイッチ、コイルボビン、ランプソケット、カメラモジュール、集積回路封止部品、インシュレーターなどの電気・電子部品に有用である。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明が実施例により限定されるものではない。実施例中、液晶ポリエステル樹脂の組成および特性評価は以下の方法により測定した。
(1)液晶ポリエステル樹脂の組成分析
粉砕した液晶ポリエステル樹脂ペレット0.1mgに、水酸化テトラメチルアンモニウム25%メタノール溶液2μLを添加し、島津製GCMS-QP5050Aを用いて熱分解GC/MS測定を行い、液晶ポリエステル樹脂中の各構成成分の組成比を求めた。
(2)液晶ポリエステル樹脂の融点(Tm)
示差走査熱量測定(DSC)装置(TAインスツルメンツ社製Q200)により、ポリエステル樹脂を室温から20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)の観測後、Tm+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される昇温曲線中の吸熱ピーク温度を融点(Tm)とした。
(3)成形安定性(復帰に必要なショット数の評価)
各実施例および比較例により得られた液晶ポリエステル樹脂ペレットを、熱風乾燥機を用いて150℃3時間熱風乾燥した後、ファナック製ファナックα30C射出成形機に供し、射出シリンダー温度を液晶ポリエステルの融点+20℃(2種以上の液晶性ポリエステルを溶融混練している場合は、高い方の融点+20℃)、金型温度:90℃として、射出圧力を100MPa、速度を最低充填速度に設定し、図1に示す端子間ピッチが0.4mm、製品の最小肉厚部(隔壁部3)が0.2mm、外形寸法が幅3mm×高さ2mm×長さ30mmの、ゲート対面側の壁角部まで十分に充填されたコネクタ成形品を得た。図1は上記コネクタ成形品の斜視図である。コネクタ成形品の片側の短尺面2に設置したピンゲートG1(ゲート径0.3mm)から液晶ポリエステル樹脂または樹脂組成物を充填した。50ショット連続成形を行った後、射出シリンダー温度を150℃まで下げて60分間静置した。再度、射出シリンダー温度を液晶ポリエステルの融点+20℃に上昇させ、同じ液晶ポリエステル樹脂または樹脂組成物を用いて、パージショットを1ショット行った後、同条件、同一金型にて射出成形を行い、同様にゲート対面側の壁角部まで十分に充填された成形品が得られるまでに必要なショット数、すなわち復帰に必要なショット数を評価した。該角部は復帰後に未充填が発生しやすい部位であり、復帰に必要なショット数が少ないほど成形安定性に優れる。
(4)耐熱性(荷重たわみ温度(DTUL)の評価)
各実施例および比較例により得られた液晶ポリエステル樹脂ペレットを、熱風乾燥機を用いて150℃で3時間乾燥した後、ファナック製ファナックα30C射出成形機に供し、射出シリンダー温度を液晶性ポリエステルの融点+20℃(2種以上の液晶性ポリエステルを溶融混練している場合は、高い方の融点+20℃)、金型温度を90℃として、射出圧力を100MPa、速度を最低充填速度に設定し、127mm長×12.7mm幅×3.2mm厚の棒状試験片を作製した。得られた試験片について、ASTM D648に準拠し、HDT-500(安田精機製作所製)を用いて、荷重1.82MPaでの条件で荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。DTULの温度(℃)は高いほど優れ、215℃未満であれば成形品の耐熱性に劣る。
[実施例1]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸916重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル253重量部、ハイドロキノン94重量部、テレフタル酸297重量部、イソフタル酸71重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート16重量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール31重量部および無水酢酸1231重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から350℃までを4時間で昇温させた。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが10kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A-1)を得た。Tmは323℃であった。
[実施例2]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸916重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル253重量部、ハイドロキノン94重量部、テレフタル酸297重量部、イソフタル酸71重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート16重量部、1,4-シクロヘキサンジオール25重量部および無水酢酸1231重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から350℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが10kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A-2)を得た。Tmは325℃であった。
[実施例3]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸869重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル293重量部、ハイドロキノン89重量部、テレフタル酸287重量部、イソフタル酸110重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート16重量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール31重量部および無水酢酸1231重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から340℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を340℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが10kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A-3)を得た。Tmは320℃であった。
[実施例4]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸916重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル253重量部、ハイドロキノン94重量部、テレフタル酸297重量部、イソフタル酸71重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート16重量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール2重量部および無水酢酸1189重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から350℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが10kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A-4)を得た。Tmは327℃であった。
[実施例5]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸916重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル412重量部、テレフタル酸297重量部、イソフタル酸71重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート16重量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール31重量部および無水酢酸1231重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から350℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが10kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A-5)を得た。Tmは326℃であった。
[実施例6]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸1116重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル238重量部、ハイドロキノン84重量部、テレフタル酸311重量部、イソフタル酸28重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート16重量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール31重量部および無水酢酸1349重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から350℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが10kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A-6)を得た。Tmは330℃であった。
[比較例1]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸916重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル253重量部、ハイドロキノン94重量部、テレフタル酸297重量部、イソフタル酸71重量部および無水酢酸1185重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から350℃までを4時間で昇温させた。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが10kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A-7)を得た。Tmは328℃であった。
[比較例2]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸869重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル293重量部、ハイドロキノン89重量部、テレフタル酸286重量部、イソフタル酸109重量部および無水酢酸1185重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から340℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を340℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが10kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A-8)を得た。Tmは322℃であった。
[比較例3]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸1050重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル297重量部、テレフタル酸284重量部、イソフタル酸86重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート59重量部および無水酢酸1292重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、145℃から340℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を340℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが10kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A-9)を得た。Tmは321℃であった。
[比較例4]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸916重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル253重量部、ハイドロキノン94重量部、テレフタル酸297重量部、イソフタル酸71重量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール31重量部および無水酢酸1231重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から350℃までを4時間で昇温させた。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが10kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A-10)を得た。Tmは328℃であった。
[比較例5]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸921重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル254重量部、ハイドロキノン94重量部、テレフタル酸299重量部、イソフタル酸70重量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール136重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート16重量部および無水酢酸1393重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から330℃までを4時間で昇温させた。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが10kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A-11)を得た。Tmは312℃であった。
[比較例6]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸1151重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル207重量部、テレフタル酸185重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート320重量部および無水酢酸1153重量部(フェノール性水酸基合計の1.07当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から330℃までを4時間で昇温させた。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが10kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A-12)を得た。Tmは314℃であった。
実施例1~6および比較例1~6で得られたペレットについて、上記(1)に記載の方法で組成分析を行った結果、および(2)~(4)の評価を行った結果を表1に示す。
Figure 2023110983000010
続いて、液晶ポリエステル樹脂(A-5)~(A-12)に対して、さらに添加剤(a-1)~(a-4)、および充填材(b-1)~(b-3)を溶融混練した液晶ポリエステル樹脂を作製した。(a-3)および(a-4)の製造例について次に示す。
[製造例1]
窒素導入間、攪拌装置および還流冷却器を備えつけた反応器に、テレフタル酸ジメチル826重量部および1,4-シクロヘキサンジメタノール613重量部を入れ、窒素雰囲気下200℃で溶解させた後チタン触媒(チタンテトライソプロポキシド)0.38重量部を添加した。200℃で20分、260℃で45分加熱攪拌し、テレフタル酸と1,4-シクロヘキサンジメタノールがエステル結合を介して連結したオリゴマーを得た。このオリゴマーを粉砕後、窒素導入間、攪拌装置および留出管を備えつけた反応器に入れ、窒素雰囲気下300℃で溶解させた後、10mmHgの減圧下で30分、さらに1mmHgで1時間溶融重縮合を行った。反応器底部より溶融樹脂をストランド状に吐出しペレタライズすることで、テレフタル酸と1,4-シクロヘキサンジメタノールからなるポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートを得た。
[製造例2]
窒素導入間、攪拌装置および還流冷却器を備えつけた反応器に、テレフタル酸ジメチル826重量部、エチレングリコール79重量部、および1,4-シクロヘキサンジメタノール429重量部を入れ、窒素雰囲気下200℃で溶解させた後チタン触媒(チタンテトライソプロポキシド)0.38重量部を添加した。200℃で20分、260℃で45分加熱攪拌し、テレフタル酸とエチレングリコールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールがエステル結合を介して連結したオリゴマーを得た。このオリゴマーを粉砕後、窒素導入間、攪拌装置および留出管を備えつけた反応器に入れ、窒素雰囲気下300℃で溶解させた後、10mmHgの減圧下で30分、さらに1mmHgで1時間溶融重縮合を行った。反応器底部より溶融樹脂をストランド状に吐出しペレタライズすることで、テレフタル酸とエチレングリコールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールからなるポリ(エチレンシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)を得た。
また、各実施例および比較例において用いた化合物を次に示す。
(a-1)構造単位(I)を有する化合物:1,4-シクロヘキサンジメタノール
(a-2)構造単位(II)を有する化合物:固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート
(a-3)構造単位(I)を有する化合物:製造例1により合成したポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート
(a-4)構造単位(I)および構造単位(II)を有する化合物:製造例2により合成したポリ(エチレンシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)
続いて、各実施例および比較例において用いた、無機充填材(b-1)~(b-3)を次に示す。
(b-1):ヤマグチマイカ(株)製 マイカ “NJ-030”
(b-2):富士タルク工業(株)製 タルク “RL217”
(b-3):日本電気硝子(株)製 EPG(70MD-01N)/P9W
実施例7~13、比較例7~11
サイドフィーダーを備えた東芝機械製TEM35B型2軸押出機で、シリンダーC1(元込めフィーダー側ヒーター)~C6(ダイ側ヒーター)の、C3部にサイドフィーダーを設置し、C5部に真空ベントを設置した。ニーディングブロックをC2部、C4部に組み込んだスクリューアレンジを用い、液晶ポリエステル樹脂(A-5)~(A-12)、および添加剤(a-1)~(a-4)を表2に示す配合量で元込めフィーダーから投入し、無機充填材(b-1)~(b-3)を表2に示す配合量でサイドフィーダーから投入して、シリンダー温度を液晶ポリエステル樹脂の融点+10℃、スクリュー回転数を200rpmに設定し、溶融混練してペレットとした。得られた液晶ポリエステル樹脂のペレットについて、熱風乾燥機を用いて150℃3時間熱風乾燥した後、上記(1)、(3)および(4)の評価を行った。結果は表2に示す。
Figure 2023110983000011
表1および2の結果から、本発明の液晶ポリエステル樹脂および液晶ポリエステル樹脂組成物は、成形安定性と成形品の耐熱性のバランスに優れていることが分かる。そのため、薄肉の箱型や筒型形状を有するコネクタ、リレー、スイッチ、コイルボビン、ランプソケット、カメラモジュール、集積回路封止部品などの電気・電子部品や機械部品用途への使用に適しているといえる。
本発明の液晶ポリエステル樹脂および液晶ポリエステル樹脂組成物は、成形安定性と成形品の耐熱性のバランスに優れるため、薄肉の箱型や筒型形状を有するコネクタ、リレー、スイッチ、コイルボビン、ランプソケット、カメラモジュール、集積回路封止部品、インシュレーターなどの電気・電子部品や機械部品用途に好適である。
1 長尺面
2 短尺面
3 長さ30mm
4 高さ2mm
5 幅3mm
6 ピッチ間距離0.4mm
7 最小肉厚部0.2mm
G1 ピンゲート

Claims (7)

  1. 液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位を15~80モル%、芳香族ジオールに由来する構造単位を7~40モル%、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位を7~40%、下記構造単位(I)を0.01~5モル%、および下記構造単位(II)を0.01~5モル%含む液晶ポリエステル樹脂。
    Figure 2023110983000012

    (X、Xはそれぞれ独立に、O、CO、NH、CHO、CHCOO、およびCHNHのいずれかを表す。)
    (nは1~5の整数を表す。)
  2. 液晶ポリエステル樹脂が、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位として、構造単位(III)を含み、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位として、下記構造単位(IV)を含み、構造単位(III)および構造単位(IV)の合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して60モル%以上80モル%未満である請求項1に記載の液晶ポリエステル樹脂。
    Figure 2023110983000013
  3. 液晶ポリエステル樹脂が、芳香族ジオールに由来する構造単位として、下記構造単位(V)を含み、構造単位(V)が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して2~20%である請求項1または2に記載の液晶ポリエステル樹脂。
    Figure 2023110983000014
  4. 前記構造単位(I)および前記構造単位(II)をいずれも含まない液晶ポリエステル樹脂ならびに前記構造単位(I)を有する化合物および前記構造単位(II)を有する化合物、または前記構造単位(I)および前記構造単位(II)を有する化合物を溶融混練することにより請求項1~3のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂を得る液晶ポリエステル樹脂の製造方法。
  5. 請求項1~3のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂100重量部に対し、充填材を10~200重量部含む、液晶ポリエステル樹脂組成物。
  6. 請求項1~3のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂、または請求項5に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
  7. 成形品が、コネクタ、リレー、スイッチ、コイルボビン、ランプソケット、カメラモジュール、集積回路封止部品、およびインシュレーターからなる群から選択されるいずれかである請求項6に記載の成形品。
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