本発明は、走行装置の走行速度の増減速を行う無段変速装置を備えたコンバインに関するものである。
従来のコンバインにおいて、圃場や穀稈の状態に合わせて変速レバーを操作して走行装置の走行速度の増減速を行う技術が知られている。(特許文献1参照)
しかし、特許文献1の技術では、走行装置の走行速度を増速させるために、変速レバーを中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合に、走行装置のクローラと圃場面のスリップやエンジンに大きな負荷が加わっている等の状態によって変速レバーに移動位置に対応して設けられた設定走行速度まで走行速度が増速されない恐れがあった。また、これにより、作業者が大きな不快感を抱いている問題も指摘されていた。
そこで、本発明の課題は、走行装置の実際の走行速度を、変速レバーで設定された設定走行速度にまで増速させ、作業者の不快感を軽減することができるコンバインを提供することにある。
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジン(E)を搭載した機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の左側後方に脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の右側後方に操縦部(5)を設けたコンバインにおいて、
前記エンジン(E)の第1伝動経路(A)の下流側にエンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(20)を設け、該無段変速装置(20)の伝動経路の下流に走行装置(2)と刈取装置(3)を設け、前記エンジン(E)の第2伝動経路(B)の下流側に脱穀装置(4)を設け、前記操縦部(5)のサイドパネル(15)に無段変速装置(20)を操作して走行装置(2)の設定走行速度(V)の増減速を行う変速レバー(16)を設け、前記走行装置(2)の設定走行速度(V)と走行装置の実際の走行速度(v)の速度差(S)が所定速度差(SA)よりも大きい場合には、前記速度差(S)に基づいて前記無段変速装置(20)のトラニオン軸(40)を回動させる駆動手段(42,43)を駆動させて走行速度(v)を変速させる構成とし、路上走行中においては前記設定走行速度(V)が前記走行速度(v)より小さい場合にのみ速度差(S)に基づく変速を実行することを特徴とするコンバインである。
請求項2記載の発明は、前記変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動させた場合には、前記設定走行速度(V)が増速し、前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動させた場合には、前記設定走行速度(V)が減速する構成とし、前記変速レバー(16)が中立姿勢から前側傾斜姿勢に所定以上移動していない場合には、前記駆動手段(42,43)を駆動させない請求項1記載のコンバインである。
請求項3記載の発明は、前記脱穀装置(4)の揺動棚上を移送される穀粒の層厚(T)が所定層厚(TA)よりも厚い場合には、前記駆動手段(42,43)を駆動させない請求項1又は2記載のコンバインである。
請求項4記載の発明は、前記変速レバー(16)の基部に、前記変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合の傾斜角度を測定する角度センサ(16A)を設け、前記設定走行速度(V)を角度センサ(16A)の測定値(θ)に対応させて直線状に増減速させる請求項1~3のいずれか1項に記載のコンバインである。
請求項5記載の発明は、前記変速レバー(16)の基部に、前記変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合の傾斜角度を測定する角度センサ(16A)を設け、前記設定走行速度(V)を角度センサ(16A)の測定値(θ)に対応させて曲線状に増減速させ、前記設定走行速度(V)における変速レバー(16)が前側傾斜姿勢に位置する場合の増減速度を、前記変速レバー(16)が中立姿勢に位置する増減速度よりも大きくした請求項1~3のいずれか1項に記載のコンバインである。
請求項6記載の発明は、前記変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合には、前記設定走行速度(V)を第1段階的に増速させ、前記変速レバー(16)を前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動した場合には、前記設定走行速度(V)が第2段階的に減速させ、前記第1階段を第2階段よりも多く設定した請求項1~3のいずれか1項に記載のコンバインである。
請求項1記載の発明によれば、エンジン(E)の第1伝動経路(A)の下流側にエンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(20)を設け、該無段変速装置(20)の伝動経路の下流に走行装置(2)と刈取装置(3)を設け、エンジン(E)の第2伝動経路(B)の下流側に脱穀装置(4)を設け、操縦部(5)のサイドパネル(15)に無段変速装置(20)を操作して走行装置(2)の設定走行速度(V)の増減速を行う変速レバー(16)を設け、走行装置(2)の設定走行速度(V)と走行装置の実際の走行速度(v)の速度差(S)が所定速度差(SA)よりも大きい場合には、速度差(S)に基づいて無段変速装置(20)のトラニオン軸(40)を回動させる駆動手段(42,43)を駆動させて走行速度(v)を変速させる構成とし、路上走行中においては設定走行速度(V)が走行速度(v)より小さい場合にのみ速度差(S)に基づく変速を実行するので、走行装置の実際の走行速度(v)を、変速レバー(16)の移動位置によって設定される設定走行速度(V)まで変速させることができる。また、作業者の不快感も軽減して操作時のストレスを抑制することができる。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動させた場合には、設定走行速度(V)が増速し、前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動させた場合には、設定走行速度(V)が減速する構成とし、変速レバー(16)が中立姿勢から前側傾斜姿勢に所定以上移動していない場合には、駆動手段(42,43)を駆動させないので、刈取装置(3)の引起装置の引起チェンの波打ち現象を抑制して、引起チェンに装着されているラグ等の衝突による破損等を防止することができる。
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、脱穀装置(4)の揺動棚上を移送される穀粒の層厚(T)が所定層厚(TA)よりも厚い場合には、駆動手段(42,43)を駆動させないので、エンジンEの負荷の過度な増加を抑制して、エンジン(E)のオーバヒートを防止することができる。
請求項4記載の発明によれば、請求項1~3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、変速レバー(16)の基部に、変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合の傾斜角度を測定する角度センサ(16A)を設け、設定走行速度(V)を角度センサ(16A)の測定値(θ)に対応させて直線状に増減速させるので、走行装置(2)の走行速度(v)を設定走行速度(V)に増速させる制御を容易に行うことができる。
請求項5記載の発明によれば、請求項1~3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、変速レバー(16)の基部に、変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合の傾斜角度を測定する角度センサ(16A)を設け、設定走行速度(V)を角度センサ(16A)の測定値(θ)に対応させて曲線状に増減速させ、設定走行速度(V)における変速レバー(16)が前側傾斜姿勢に位置する場合の増減速度を、変速レバー(16)が中立姿勢に位置する増減速度よりも大きくしたので、走行装置(2)の走行速度(v)を設定走行速度(V)により速やかに増速させることができる。
請求項6記載の発明によれば、請求項1~3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合には、設定走行速度(V)を第1段階的に増速させ、変速レバー(16)を前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動した場合には、設定走行速度(V)が第2段階的に減速させ、第1階段を第2階段よりも多く設定したので、走行装置(2)の走行速度(v)の増速時の衝撃を抑制することができ、走行装置(2)の走行速度(v)を速やかに減速することができ緊急時に速やかに走行装置(2)を停止することができる。
コンバインの正面図である。
コンバインの平面図である。
コンバインの左側面図である。
エンジンEの出力回転の伝動図である。
エンジンEの出力回転の走行装置と刈取装置への伝動図である。
主変速レバーの説明図である。
無段変速装置の説明図である。
(a)は主変速レバーの姿勢と角度センサの測定値の関係、(b)は角度センサの測定値とトラニオン軸の開度の関係、(c)はトラニオン軸の開度と走行装置の設定走行速度の関係を示している。
コントローラの接続図である。
走行装置の増減方法である。
(a)は主変速レバーの姿勢と角度センサの測定値の関係、(b)は角度センサの測定値とトラニオン軸の開度の関係、(c)はトラニオン軸の開度と走行装置の設定走行速度の関係を示し、走行装置の実際の走行速度が設定走行速度よりも低速になった場合を図示している。
(a)は主変速レバーの姿勢と角度センサの測定値の関係、(b)は角度センサの測定値とトラニオン軸の開度の他の関係を示している。
(a)は主変速レバーの姿勢と角度センサの測定値の関係、(b)は主変速レバーを中立から前側傾斜に移動した角度センサの測定値とトラニオン軸の開度のさらに他の関係、(c)は主変速レバーを前側傾斜から中立に移動した角度センサの測定値とトラニオン軸の開度のさらに他の関係を示している。
図1~3に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取装置3が設けられている。また、刈取装置3の後方左側部に刈取装置3で収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側部に作業者が搭乗する操縦部5が設けられている。
操縦部5の下側には、エンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には、脱穀装置4で脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7に貯留された穀粒は、グレンタンク7に連結された排出オーガ(図示省略)によって外部に排出される。
操縦部5の操縦席の前方には、フロントパネル10が設けられ、操縦席の左方には、サイドパネル15が設けられている。
フロントパネル10の左部には、エンジンのEの出力回転等を表示するモニタ11が設けられ、右部には、走行装置2の旋回や刈取装置3の昇降を操作する操作レバー12が設けられている。
サイドパネル15の前部には、エンジンEの出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置20を操作する主変速レバー(請求項の「変速レバー」)16が設けられ、主変速レバー16の後側には、無段変速装置20の出力回転の増減速を行うトランスミッション21を操作する副変速レバー17が設けられ、副変速レバー17の後側には、刈取クラッチ22と脱穀クラッチ23の接続と接続解除を操作する刈脱レバー18が設けられている。
図4に示すように、エンジンEから出力された出力回転は、伝動経路(請求項の「第1伝動経路」)A上に設けられた無段変速装置20に伝動される。無段変速装置20の入力軸に伝動されたエンジンEの出力回転は、無段変速装置20で増減速と回転方向の切替えが行われてトランスミッション21に伝動される。
トランスミッション21に伝動される。トランスミッション21の入力軸30に伝動された無段変速装置20の出力回転は、トランスミッション21の多段ギヤで増減速されて出力軸34から出力されて走行装置2に伝動される。なお、走行装置2の実際の走行速度vは、トラックホイールに装着されたタコジェネレータや機体フレーム1に装着されたジャイロ等の速度センサ2Aで測定される。
トランスミッション21の出力軸31から出力された出力回転は、刈取クラッチ22を介して刈取装置3される。
また、エンジンEから出力された出力回転は、伝動経路(請求項の「第2伝動経路」)B上に設けられた脱穀クラッチ23を介して脱穀装置4に伝動される。
図5に示すように、無段変速装置20の出力回転は、トランスミッション21の入力軸30に伝動される。
入力軸30に伝動された出力回転は、ギヤ30Aと、ギヤ31Aと、ギヤ32Aを介してカウンタ軸32に伝動される。ギヤ30Aは入力軸30に設けられ、ギヤ31Aは出力軸31に回転自在に設けられ、ギヤ32Aはカウンタ軸32に設けられている。
カウンタ軸32に伝動された出力回転は、ギヤ32Bとギヤ33Aを介してカウンタ軸33に伝動される。ギヤ32Bはカウンタ軸32に設けられ、ギヤ33Aはカウンタ軸33に設けられている。
カウンタ軸33に伝動された出力回転は、ギヤ33Aの両側に設けられた左右一対のギヤ33Bと左右一対の34Aを介して出力軸34に伝動される。ギヤ33Bはカウンタ軸33に設けられ、ギヤ34Aは出力軸34に左右方向に摺動可能に設けられている。
出力軸34に伝動された出力回転は、ギヤ34Aの外側に設けられた左右一対のギヤ34Bと左右一対の35Aを介して走行装置2の入力軸35に伝動される。ギヤ34Bは出力軸34に左右方向に摺動可能に設けられ、ギヤ35Aは入力軸35に設けられている。
カウンタ軸32に伝動された出力回転は、ギヤ32Cとギヤ31B、又は、ギヤ32Dとギヤ31Cを介して出力軸31に伝動される。ギヤ32Cとギヤ32Dはカウンタ軸32に設けられ、ギヤ31Bとギヤ31Cは出力軸31に左右方向に摺動可能に設けられている。また、ギヤ31Bとギヤ31Cはシフタ装置(図示省略)を操作してシフタ36を介して左右方向に移動させることができる。
出力軸31に伝動された出力回転は、刈取クラッチ22を介して刈取装置3の入力軸37に伝動される。
図6に示すように、主変速レバー16を中立姿勢にした場合には、無段変速装置20の出力回転はゼロになる。主変速レバー16を中立姿勢から前側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置20の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と同じ正回転となり、前側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置20の出力回転は増速され、前側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置20の出力回転は減速される。一方、主変速レバー16を中立姿勢から後側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置20の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と逆さの逆回転となり、後側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置20の出力回転は増速され、後側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置20の出力回転は減速される。なお、主変速レバー16の姿勢は、主変速レバー16の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ16Aで測定される。
副変速レバー17を中立姿勢にした場合には、無段変速装置20から伝動された出力回転は増減速されない。副変速レバー17を中立姿勢から前側傾斜姿勢にした場合には、無段変速装置20から伝動された出力回転は減速され、副変速レバー17を後側傾斜姿勢にした場合には、無段変速装置20から伝動された出力回転は増速される。なお、副変速レバー17の姿勢は、副変速レバー17の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ17Aで測定される。
刈脱レバー18を前側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ22と脱穀クラッチ23の接続は解除される。刈脱レバー18を後側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ22と脱穀クラッチ23が接続される。また、刈脱レバー18を前側傾斜姿勢と後側傾斜姿勢の間に位置する中立姿勢にした場合には、刈取クラッチ22の接続は解除され、脱穀クラッチ23は接続される。なお、刈脱レバー18の姿勢は、刈脱レバー18の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ18Aで測定される。
<無段変速装置>
図7に示すように、無段変速装置20のトラニオン軸40には、扇形ギヤ41が支持され、扇形ギヤ41の外周部に形成されたギヤには、前進用モータ(請求項の「駆動手段」)42の出力軸に設けられたギヤ42Aと、後進用モータ(請求項の「駆動手段」)43の出力軸に設けられたギヤ43Aが係合している。これにより、主変速レバー16の姿勢、すなわち、角度センサ16Aの測定値に基づいて前進用モータ42と後進用モータ43を駆動して無段変速装置20のトラニオン軸40を回動してエンジンEの出力回転の増減速と回転方向の切替えを行うことができる。なお、エンジンEの出力回転は、無段変速装置20の入力軸44に伝動される。
また、図7には、無段変速装置20のトラニオン軸40を扇形ギヤ41を介して前進用モータ42と後進用モータ43で回動させる形態を図示しているが、無段変速装置20のトラニオン軸40に径方向に延在するアームを支持し、このアームの外周部に前進用ソレノイドで駆動される前進用シリンダと後進用ソレノイドで駆動される後進用シリンダを連結する形態にすることもできる。
<走行装置の設定走行速度>
図8(a)は、横軸に主変速レバー16の姿勢を示し、縦軸に角度センサ16Aの測定値θを示している。主変速レバー16を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合には、角度センサ16Aの測定値θは増加する。本実施形態では、主変速レバー16を中立姿勢に移動した場合には、角度センサ16Aの測定値θはθ1に設定され、主変速レバー16を最前側の最大前側傾斜姿勢に移動した場合には、角度センサ16Aの測定値θはθ2に設定されている。
図8(b)は、横軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、縦軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示している。主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に移動させて角度センサ16Aの測定値θがθ1からθ2に直線的に増加した場合には、トラニオン軸40の開度βも直線的に増加し、主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動させて角度センサ16Aの測定値θがθ2からθ1に直線的に減少した場合には、トラニオン軸40の開度βも直線的に減少する。本実施形態では、角度センサ16Aの測定値θがθ1の場合には、トラニオン軸40の開度βはβ1に設定され、角度センサ16Aの測定値θがθ2の場合には、トラニオン軸40の開度βはβ2に設定されている。なお、トラニオン軸40の開度βは、β1よりも小さいβ0からβ2よりも大きいβ3まで直線的に増加するように設定されている。これにより、主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢に移動した場合に、走行装置2の実際の走行速度v2が設定走行速度V2よりも低速の場合には、トラニオン軸40の開度βをβ2よりもさらに大きくして実際の走行速度v2を設定走行速度V2に増速することができる。
図8(c)は、横軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示し、縦軸に走行装置2の設定走行速度Vを示している。トラニオン軸40の開度βがβ1からβ2に直線的に増加した場合には、走行装置2の設定走行速度Vも直線的に増加する。また、トラニオン軸40の開度βがβ1の場合には、走行装置2の設定走行速度VはV1に設定され、トラニオン軸40の開度βがβ2の場合には、走行装置2の設定走行速度VはV2に設定されている。なお、走行装置2の設定走行速度Vは、トラニオン軸40の開度βがβ0でV1よりも小さいV0に設定され、トラニオン軸40の開度βがβ3でV2よりも大きいV3まで直線的に増加するように設定されている。これにより、主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に移動させると走行装置2の設定走行速度VはV1からV2に増速して、走行装置2の実際の走行速度vもv1からv2に増速することができる。なお、図8(C)は、副変速レバー17が中立姿勢に移動され、トランスミッション21で出力回転の増減速を行われない場合を図示している。
<コントローラの接続図>
図9に示すように、コンバインのコントローラ50は、CPU等からなる処理部51と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部52から形成されている。
処理部51は、走行装置2の設定走行速度Vと走行速度vの偏差に基づいて無段変速装置20のトラニオン軸40を回動させる前進用モータ42及び後進用モータ43を駆動等させる。
記憶部52には、角度センサ16Aの測定値θ1,θ2や設定走行速度V1,V2等が保存されている。
コントローラ50の入力側には、走行装置2の走行速度vを測定する速度センサ2A、脱穀装置4の揺動棚上を後方に向かって搬送される穀粒の層厚を測定する層厚センサ4Aと、主変速レバー16の姿勢を測定する角度センサ16Aと、副変速レバー17の姿勢を測定する角度センサ17Aと、刈脱レバー18の姿勢を測定する角度センサ18Aが所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
コントローラ50の出力側には、刈取クラッチ22と、脱穀クラッチ24と、無段変速装置20のトラニオン軸40を回動させる前進用モータ42及び後進用モータ43が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
<走行装置の走行速度の増速方法>
図10に示すように、ステップS1で、コントローラ50の処理部51は、主変速レバー16の移動位置を測定するために主変速レバー16の下部に設けられた角度センサ16Aの測定値θを読込んでステップS2に進む。
ステップS2で、処理部51は、角度センサ16Aの測定値θに対応する無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを読込んでステップS3に進む。
ステップS3で、処理部51は、トラニオン軸40の開度βに対応する走行装置2の設定走行速度Vを読込んでステップS4に進む。
ステップS4で、処理部51は、走行装置2に装着された速度センサ2Aで測定値である走行装置2の実際の走行速度vを読込んでステップS5に進む。
ステップS5で、処理部51は、走行装置2の設定走行速度Vと実際の走行速度vの速度差Sが予め設定した所定速度差SAよりも大きいか否か判断し、速度差Sが所定速度差SAよりも大きいと判断した場合にはステップS6に進み、速度差Sが所定速度差SA以下と判断した場合にはステップS1に戻る。
ステップS6で、処理部51は、角度センサ16Aの測定値θが、予め設定された所定角度θAよりも大きいか否か判断し、測定値θが所定角度θAよりも大きいと判断した場合にはステップS7に進み、測定値θが所定角度θA以下と判断した場合にはステップS1に戻る。
図11(a)は、横軸に主変速レバー16の姿勢を示し、縦軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、図8(a)と同一図面である。
図11(b)は、横軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、縦軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示し、測定値θが所定角度θAの場合には、トラニオン軸40の開度βは所定開度βAに設定されていることを図示した以外は、図8(b)と同一図面である。
図11(c)のP1は、設定走行速度Vと実際の走行速度vの速度差Sが所定速度差SAよりも大きく、角度センサ16Aの測定値θが所定角度θAよりも大きい場合を示し、P2は、設定走行速度Vと実際の走行速度vの速度差Sが所定速度差SAよりも大きいが、角度センサ16Aの測定値θが所定角度θA以下の場合を示している。また、トラニオン軸40の開度βが所定開度βAの場合には、走行装置2の設定走行速度Vは所定速度VAに設定されている。
これにより、図11(c)に図示したP2の場合、すなわち、走行装置2の設定走行速度Vが所定速度VAよりも低速で刈取装置3の刈取速度が低速の場合には、トラニオン軸40の開度βを開閉操作する前進用モータ42と後進用モータ43の回動を停止して刈取装置3の刈取速度を一定に維持して、刈取装置3の穀稈を引起こす引起装置3Aに設けられた複数のラグ3Bが装着された引起チェン(図示省略)の移動方向に直交する方向への波打ちを抑止して、ラグ3Bの衝突による破損や引起チェンのスプロケットからの脱落を防止することができる。
ステップS7で、処理部51は、層厚センサ4Aの測定値である揺動棚を移動する脱穀された穀粒の層厚Tが、予め設定された所定層厚TAよりも小さいか否か判断し、層厚Tが所定層厚TAよりも小さいと判断した場合にはステップS8に進み、層厚Tが所定層厚TA以上と判断した場合にはステップS1に戻る。これにより、層厚Tが所定層厚TA以上、すなわち、多量の穀稈が脱穀装置4に搬送されている場合には、トラニオン軸40の開度βを開閉操作する前進用モータ42と後進用モータ43の回動を停止して、エンジンEの負荷の増加を抑制することができる。
ステップS8で、処理部51は、前進用モータ42と後進用モータ43を駆動して無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを大きくして、無段変速装置20の入力軸44に伝動されてきた出力回転を増速して、走行装置2の実際の走行速度vを主変速レバー16の移動位置に対応する設定速度Vまで増速させてステップS1に戻る。これにより、走行装置2の実際の走行速度vを主変速レバー16の移動位置に対応する設定走行速度Vを同一速度にすることができるので主変速レバー16の操作時の走行装置2の実際の走行速度vの応答性能を向上させることができ、作業者の不快感も軽減することができる。
上記のとおり、本発明において処理部51は、主変速レバー16の所定の操作領域において、速度差Sが発生しているとき、出力を増速側に補正を行う。これについては速度差Sが設定走行速度Vが実際の走行速度vよりも高い場合と低い場合のいずれにおいても出力補正を行うこともできるが、増速側のみ補正を行うことが好ましい(以下の説明でこの様なパターンを「増速側のみの補正」と呼び、反対のパターンを「減速側のみの補正」と呼ぶことがある)。
また、ステップS7の判断に変えて、あるいはステップS7の判断に続いて以下の変形例のような判断をさせることも好ましい。
圃場内を走行している際に、圃場が湿田である場合に減速側のみの補正を行うものである。圃場が湿田であることの判定条件としては、例えば刈取装置3が機体に対して所定以上上昇していること、車高の調節機構によって、車高が所定以上上昇されていることや、作業者によって設定される湿田モードが有効になっていること(湿田モードとしては例えば車体の旋回力を一定以下に制限することで急激な車体挙動を起こさせないようにするものなどが想定される)等が挙げられる。または、IMU(慣性計測装置)により検出される機体モーメントの平均値やピーク値などが所定以上小さい等、挙動が緩やかであることなどを用いることもできる。
また、圃場では速度の補正を行わず、路上走行時にのみ補正を行うこともできる。圃場では走行負荷が大きく作業負荷も大きい為、過剰なエンジン負荷の抑制が期待できる。路上走行であることの判定方法としては、刈取装置3のクラッチ操作部が切状態でかつ刈取装置3が所定以上上昇していることや、所謂副変速装置が路上走行用の変速位置にセットされていることが挙げられる。
または、路上走行の場合は増速側のみの補正を行い、それ以外(作業時)は増減速両方の補正を行うこともできる。その際には、路上走行では作業時と比較して補正量に上限を設定することが望ましい。すなわち、速度差Sが所定以上大きい場合には補正量を所定の上限値に制限する。なお、路上走行と作業走行の両方で補正の上限を設定し、その上限値を路上走行と作業走行で異ならせることも好ましい。
<トラニオン軸の開度の他の設定方法>
図12(a)は、横軸に主変速レバー16の姿勢を示し、縦軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、図8(a)と同一図面である。
図12(b)は、横軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、縦軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示している。主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に移動させて角度センサ16Aの測定値θがθ1からθ2に直線的に増加した場合には、トラニオン軸40の開度βは曲線的、すなわち、測定値θがθ1では開度βが小さく、測定値θがθ2では開度βが大きく増加し、主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動させて角度センサ16Aの測定値θがθ2からθ1に直線的に減少した場合には、トラニオン軸40の開度βも曲線的、すなわち、測定値θがθ2では開度βが大きく、測定値θがθ1では開度βが小さく減少する。なお、トラニオン軸40の開度βは、β1よりも小さいβ0からβ2よりも大きいβ3まで曲線的に増加するように設定されている。これにより、主変速レバー16を中立姿勢の近傍で移動されるのに比較して前側傾斜姿勢の近傍で移動させた場合に、トラニオン軸40の開度βを大きく変化させることができるので、走行装置2の実際の走行速度vを主変速レバー16の移動位置に対応する設定走行速度Vを容易に同一速度にすることができる。なお、図8(b)は、主変速レバー16の姿勢を測定する角度センサ16Aの測定値θの増減又は減速に対応させて無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを直線的に増減させている。
<トラニオン軸の開度のさらに他の設定方法>
図13(a)は、横軸に主変速レバー16の姿勢を示し、縦軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、図8(a)と同一図面である。
図13(b)は、横軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、縦軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示している。主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に移動させて角度センサ16Aの測定値θがθ1からθ2に直線的に増加した場合には、トラニオン軸40の開度βは階段的、図示した例では4階段的に増加する。なお、トラニオン軸40の開度βは、β1よりも小さいβ0からβ2よりも大きいβ3まで曲線的に増加するように設定することができる。これにより、主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に移動させる場合には、走行装置2の走行速度vの増速時の衝撃を抑制することができる。なお、図8(b)は、主変速レバー16の姿勢を測定する角度センサ16Aの測定値θの増減に対応させて無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを直線的に増減させている。
図13(c)は、横軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、縦軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示している。主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動させて角度センサ16Aの測定値θがθ2からθ1に直線的に減少した場合には、トラニオン軸40の開度βは階段的、図示した例では斜姿勢に移動させて4段階の半分の2階段的に減少する。これにより、主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動させる場合には、主変速レバー16を少しの移動によりトラニオン軸40の開度βを大きく移動させて速やかに走行装置2の走行速度vを減速することができる。なお、図8(b)は、主変速レバー16の姿勢を測定する角度センサ16Aの測定値θの減速に対応させて無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを直線的に増減させている。
1 機体フレーム
2 走行装置
3 刈取装置
4 脱穀装置
5 操縦部
16 主変速レバー(変速レバー)
16A 角度センサ
20 無段変速装置
40 トラニオン軸
42 前進用モータ(駆動手段)
43 後進用モータ(駆動手段)
A 伝動経路(第1伝動経路)
B 伝動経路(第2伝動経路)
E エンジン
S 速度差
SA 所定速度差
T 層厚
TA 所定層厚
θ 測定値
V 設定走行速度
v 走行速度
本発明は、走行装置の走行速度の増減速を行う無段変速装置を備えたコンバインに関するものである。
従来のコンバインにおいて、圃場や穀稈の状態に合わせて変速レバーを操作して走行装置の走行速度の増減速を行う技術が知られている。(特許文献1参照)
しかし、特許文献1の技術では、走行装置の走行速度を増速させるために、変速レバーを中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合に、走行装置のクローラと圃場面のスリップやエンジンに大きな負荷が加わっている等の状態によって変速レバーに移動位置に対応して設けられた設定走行速度まで走行速度が増速されない恐れがあった。また、これにより、作業者が大きな不快感を抱いている問題も指摘されていた。
そこで、本発明の課題は、走行装置の実際の走行速度を、変速レバーで設定された設定走行速度にまで増速させ、作業者の不快感を軽減することができるコンバインを提供することにある。
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジン(E)を搭載した機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の左側後方に脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の右側後方に操縦部(5)を設けたコンバインにおいて、
前記エンジン(E)の第1伝動経路(A)の下流側にエンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(20)を設け、該無段変速装置(20)の伝動経路の下流に走行装置(2)と刈取装置(3)を設け、前記エンジン(E)の第2伝動経路(B)の下流側に脱穀装置(4)を設け、前記操縦部(5)のサイドパネル(15)に無段変速装置(20)を操作して走行装置(2)の設定走行速度(V)の増減速を行う変速レバー(16)を設け、前記走行装置(2)の設定走行速度(V)と走行装置の実際の走行速度(v)の速度差(S)が所定速度差(SA)よりも大きく、コントローラ(50)が路上走行であると判断している場合には、前記速度差(S)に基づいて前記無段変速装置(20)のトラニオン軸(40)を回動させる駆動手段(42,43)を駆動させて走行速度(v)を変速させる構成とし、前記設定走行速度(V)が前記実際の走行速度(v)より小さい場合にのみ速度差(S)に基づく変速を実行することを特徴とするコンバインである。
請求項2記載の発明は、前記変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動させた場合には、前記設定走行速度(V)が増速し、前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動させた場合には、前記設定走行速度(V)が減速する構成とし、前記変速レバー(16)が中立姿勢から前側傾斜姿勢に所定以上移動していない場合には、前記駆動手段(42,43)を駆動させない請求項1記載のコンバインである。
請求項3記載の発明は、前記脱穀装置(4)の揺動棚上を移送される穀粒の層厚(T)が所定層厚(TA)よりも厚い場合には、前記駆動手段(42,43)を駆動させない請求項1又は2記載のコンバインである。
請求項4記載の発明は、前記変速レバー(16)の基部に、前記変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合の傾斜角度を測定する角度センサ(16A)を設け、前記設定走行速度(V)を角度センサ(16A)の測定値(θ)に対応させて直線状に増減速させる請求項1~3のいずれか1項に記載のコンバインである。
請求項5記載の発明は、前記変速レバー(16)の基部に、前記変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合の傾斜角度を測定する角度センサ(16A)を設け、前記設定走行速度(V)を角度センサ(16A)の測定値(θ)に対応させて曲線状に増減速させ、前記設定走行速度(V)における変速レバー(16)が前側傾斜姿勢に位置する場合の増減速度を、前記変速レバー(16)が中立姿勢に位置する増減速度よりも大きくした請求項1~3のいずれか1項に記載のコンバインである。
請求項1記載の発明によれば、エンジン(E)の第1伝動経路(A)の下流側にエンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(20)を設け、該無段変速装置(20)の伝動経路の下流に走行装置(2)と刈取装置(3)を設け、エンジン(E)の第2伝動経路(B)の下流側に脱穀装置(4)を設け、操縦部(5)のサイドパネル(15)に無段変速装置(20)を操作して走行装置(2)の設定走行速度(V)の増減速を行う変速レバー(16)を設け、走行装置(2)の設定走行速度(V)と走行装置の実際の走行速度(v)の速度差(S)が所定速度差(SA)よりも大きく、コントローラ(50)が路上走行であると判断している場合には、速度差(S)に基づいて無段変速装置(20)のトラニオン軸(40)を回動させる駆動手段(42,43)を駆動させて走行速度(v)を変速させる構成とし、設定走行速度(V)が実際の走行速度(v)より小さい場合にのみ速度差(S)に基づく変速を実行するので、走行装置の実際の走行速度(v)を、変速レバー(16)の移動位置によって設定される設定走行速度(V)まで変速させることができる。また、作業者の不快感も軽減して操作時のストレスを抑制することができる。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動させた場合には、設定走行速度(V)が増速し、前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動させた場合には、設定走行速度(V)が減速する構成とし、変速レバー(16)が中立姿勢から前側傾斜姿勢に所定以上移動していない場合には、駆動手段(42,43)を駆動させないので、刈取装置(3)の引起装置の引起チェンの波打ち現象を抑制して、引起チェンに装着されているラグ等の衝突による破損等を防止することができる。
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、脱穀装置(4)の揺動棚上を移送される穀粒の層厚(T)が所定層厚(TA)よりも厚い場合には、駆動手段(42,43)を駆動させないので、エンジンEの負荷の過度な増加を抑制して、エンジン(E)のオーバヒートを防止することができる。
請求項4記載の発明によれば、請求項1~3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、変速レバー(16)の基部に、変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合の傾斜角度を測定する角度センサ(16A)を設け、設定走行速度(V)を角度センサ(16A)の測定値(θ)に対応させて直線状に増減速させるので、走行装置(2)の走行速度(v)を設定走行速度(V)に増速させる制御を容易に行うことができる。
請求項5記載の発明によれば、請求項1~3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、変速レバー(16)の基部に、変速レバー(16)を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合の傾斜角度を測定する角度センサ(16A)を設け、設定走行速度(V)を角度センサ(16A)の測定値(θ)に対応させて曲線状に増減速させ、設定走行速度(V)における変速レバー(16)が前側傾斜姿勢に位置する場合の増減速度を、変速レバー(16)が中立姿勢に位置する増減速度よりも大きくしたので、走行装置(2)の走行速度(v)を設定走行速度(V)により速やかに増速させることができる。
コンバインの正面図である。
コンバインの平面図である。
コンバインの左側面図である。
エンジンEの出力回転の伝動図である。
エンジンEの出力回転の走行装置と刈取装置への伝動図である。
主変速レバーの説明図である。
無段変速装置の説明図である。
(a)は主変速レバーの姿勢と角度センサの測定値の関係、(b)は角度センサの測定値とトラニオン軸の開度の関係、(c)はトラニオン軸の開度と走行装置の設定走行速度の関係を示している。
コントローラの接続図である。
走行装置の増減方法である。
(a)は主変速レバーの姿勢と角度センサの測定値の関係、(b)は角度センサの測定値とトラニオン軸の開度の関係、(c)はトラニオン軸の開度と走行装置の設定走行速度の関係を示し、走行装置の実際の走行速度が設定走行速度よりも低速になった場合を図示している。
(a)は主変速レバーの姿勢と角度センサの測定値の関係、(b)は角度センサの測定値とトラニオン軸の開度の他の関係を示している。
(a)は主変速レバーの姿勢と角度センサの測定値の関係、(b)は主変速レバーを中立から前側傾斜に移動した角度センサの測定値とトラニオン軸の開度のさらに他の関係、(c)は主変速レバーを前側傾斜から中立に移動した角度センサの測定値とトラニオン軸の開度のさらに他の関係を示している。
図1~3に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取装置3が設けられている。また、刈取装置3の後方左側部に刈取装置3で収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側部に作業者が搭乗する操縦部5が設けられている。
操縦部5の下側には、エンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には、脱穀装置4で脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7に貯留された穀粒は、グレンタンク7に連結された排出オーガ(図示省略)によって外部に排出される。
操縦部5の操縦席の前方には、フロントパネル10が設けられ、操縦席の左方には、サイドパネル15が設けられている。
フロントパネル10の左部には、エンジンのEの出力回転等を表示するモニタ11が設けられ、右部には、走行装置2の旋回や刈取装置3の昇降を操作する操作レバー12が設けられている。
サイドパネル15の前部には、エンジンEの出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置20を操作する主変速レバー(請求項の「変速レバー」)16が設けられ、主変速レバー16の後側には、無段変速装置20の出力回転の増減速を行うトランスミッション21を操作する副変速レバー17が設けられ、副変速レバー17の後側には、刈取クラッチ22と脱穀クラッチ23の接続と接続解除を操作する刈脱レバー18が設けられている。
図4に示すように、エンジンEから出力された出力回転は、伝動経路(請求項の「第1伝動経路」)A上に設けられた無段変速装置20に伝動される。無段変速装置20の入力軸に伝動されたエンジンEの出力回転は、無段変速装置20で増減速と回転方向の切替えが行われてトランスミッション21に伝動される。
トランスミッション21に伝動される。トランスミッション21の入力軸30に伝動された無段変速装置20の出力回転は、トランスミッション21の多段ギヤで増減速されて出力軸34から出力されて走行装置2に伝動される。なお、走行装置2の実際の走行速度vは、トラックホイールに装着されたタコジェネレータや機体フレーム1に装着されたジャイロ等の速度センサ2Aで測定される。
トランスミッション21の出力軸31から出力された出力回転は、刈取クラッチ22を介して刈取装置3される。
また、エンジンEから出力された出力回転は、伝動経路(請求項の「第2伝動経路」)B上に設けられた脱穀クラッチ23を介して脱穀装置4に伝動される。
図5に示すように、無段変速装置20の出力回転は、トランスミッション21の入力軸30に伝動される。
入力軸30に伝動された出力回転は、ギヤ30Aと、ギヤ31Aと、ギヤ32Aを介してカウンタ軸32に伝動される。ギヤ30Aは入力軸30に設けられ、ギヤ31Aは出力軸31に回転自在に設けられ、ギヤ32Aはカウンタ軸32に設けられている。
カウンタ軸32に伝動された出力回転は、ギヤ32Bとギヤ33Aを介してカウンタ軸33に伝動される。ギヤ32Bはカウンタ軸32に設けられ、ギヤ33Aはカウンタ軸33に設けられている。
カウンタ軸33に伝動された出力回転は、ギヤ33Aの両側に設けられた左右一対のギヤ33Bと左右一対の34Aを介して出力軸34に伝動される。ギヤ33Bはカウンタ軸33に設けられ、ギヤ34Aは出力軸34に左右方向に摺動可能に設けられている。
出力軸34に伝動された出力回転は、ギヤ34Aの外側に設けられた左右一対のギヤ34Bと左右一対の35Aを介して走行装置2の入力軸35に伝動される。ギヤ34Bは出力軸34に左右方向に摺動可能に設けられ、ギヤ35Aは入力軸35に設けられている。
カウンタ軸32に伝動された出力回転は、ギヤ32Cとギヤ31B、又は、ギヤ32Dとギヤ31Cを介して出力軸31に伝動される。ギヤ32Cとギヤ32Dはカウンタ軸32に設けられ、ギヤ31Bとギヤ31Cは出力軸31に左右方向に摺動可能に設けられている。また、ギヤ31Bとギヤ31Cはシフタ装置(図示省略)を操作してシフタ36を介して左右方向に移動させることができる。
出力軸31に伝動された出力回転は、刈取クラッチ22を介して刈取装置3の入力軸37に伝動される。
図6に示すように、主変速レバー16を中立姿勢にした場合には、無段変速装置20の出力回転はゼロになる。主変速レバー16を中立姿勢から前側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置20の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と同じ正回転となり、前側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置20の出力回転は増速され、前側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置20の出力回転は減速される。一方、主変速レバー16を中立姿勢から後側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置20の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と逆さの逆回転となり、後側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置20の出力回転は増速され、後側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置20の出力回転は減速される。なお、主変速レバー16の姿勢は、主変速レバー16の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ16Aで測定される。
副変速レバー17を中立姿勢にした場合には、無段変速装置20から伝動された出力回転は増減速されない。副変速レバー17を中立姿勢から前側傾斜姿勢にした場合には、無段変速装置20から伝動された出力回転は減速され、副変速レバー17を後側傾斜姿勢にした場合には、無段変速装置20から伝動された出力回転は増速される。なお、副変速レバー17の姿勢は、副変速レバー17の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ17Aで測定される。
刈脱レバー18を前側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ22と脱穀クラッチ23の接続は解除される。刈脱レバー18を後側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ22と脱穀クラッチ23が接続される。また、刈脱レバー18を前側傾斜姿勢と後側傾斜姿勢の間に位置する中立姿勢にした場合には、刈取クラッチ22の接続は解除され、脱穀クラッチ23は接続される。なお、刈脱レバー18の姿勢は、刈脱レバー18の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ18Aで測定される。
<無段変速装置>
図7に示すように、無段変速装置20のトラニオン軸40には、扇形ギヤ41が支持され、扇形ギヤ41の外周部に形成されたギヤには、前進用モータ(請求項の「駆動手段」)42の出力軸に設けられたギヤ42Aと、後進用モータ(請求項の「駆動手段」)43の出力軸に設けられたギヤ43Aが係合している。これにより、主変速レバー16の姿勢、すなわち、角度センサ16Aの測定値に基づいて前進用モータ42と後進用モータ43を駆動して無段変速装置20のトラニオン軸40を回動してエンジンEの出力回転の増減速と回転方向の切替えを行うことができる。なお、エンジンEの出力回転は、無段変速装置20の入力軸44に伝動される。
また、図7には、無段変速装置20のトラニオン軸40を扇形ギヤ41を介して前進用モータ42と後進用モータ43で回動させる形態を図示しているが、無段変速装置20のトラニオン軸40に径方向に延在するアームを支持し、このアームの外周部に前進用ソレノイドで駆動される前進用シリンダと後進用ソレノイドで駆動される後進用シリンダを連結する形態にすることもできる。
<走行装置の設定走行速度>
図8(a)は、横軸に主変速レバー16の姿勢を示し、縦軸に角度センサ16Aの測定値θを示している。主変速レバー16を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合には、角度センサ16Aの測定値θは増加する。本実施形態では、主変速レバー16を中立姿勢に移動した場合には、角度センサ16Aの測定値θはθ1に設定され、主変速レバー16を最前側の最大前側傾斜姿勢に移動した場合には、角度センサ16Aの測定値θはθ2に設定されている。
図8(b)は、横軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、縦軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示している。主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に移動させて角度センサ16Aの測定値θがθ1からθ2に直線的に増加した場合には、トラニオン軸40の開度βも直線的に増加し、主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動させて角度センサ16Aの測定値θがθ2からθ1に直線的に減少した場合には、トラニオン軸40の開度βも直線的に減少する。本実施形態では、角度センサ16Aの測定値θがθ1の場合には、トラニオン軸40の開度βはβ1に設定され、角度センサ16Aの測定値θがθ2の場合には、トラニオン軸40の開度βはβ2に設定されている。なお、トラニオン軸40の開度βは、β1よりも小さいβ0からβ2よりも大きいβ3まで直線的に増加するように設定されている。これにより、主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢に移動した場合に、走行装置2の実際の走行速度v2が設定走行速度V2よりも低速の場合には、トラニオン軸40の開度βをβ2よりもさらに大きくして実際の走行速度v2を設定走行速度V2に増速することができる。
図8(c)は、横軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示し、縦軸に走行装置2の設定走行速度Vを示している。トラニオン軸40の開度βがβ1からβ2に直線的に増加した場合には、走行装置2の設定走行速度Vも直線的に増加する。また、トラニオン軸40の開度βがβ1の場合には、走行装置2の設定走行速度VはV1に設定され、トラニオン軸40の開度βがβ2の場合には、走行装置2の設定走行速度VはV2に設定されている。なお、走行装置2の設定走行速度Vは、トラニオン軸40の開度βがβ0でV1よりも小さいV0に設定され、トラニオン軸40の開度βがβ3でV2よりも大きいV3まで直線的に増加するように設定されている。これにより、主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に移動させると走行装置2の設定走行速度VはV1からV2に増速して、走行装置2の実際の走行速度vもv1からv2に増速することができる。なお、図8(C)は、副変速レバー17が中立姿勢に移動され、トランスミッション21で出力回転の増減速を行われない場合を図示している。
<コントローラの接続図>
図9に示すように、コンバインのコントローラ50は、CPU等からなる処理部51と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部52から形成されている。
処理部51は、走行装置2の設定走行速度Vと走行速度vの偏差に基づいて無段変速装置20のトラニオン軸40を回動させる前進用モータ42及び後進用モータ43を駆動等させる。
記憶部52には、角度センサ16Aの測定値θ1,θ2や設定走行速度V1,V2等が保存されている。
コントローラ50の入力側には、走行装置2の走行速度vを測定する速度センサ2A、脱穀装置4の揺動棚上を後方に向かって搬送される穀粒の層厚を測定する層厚センサ4Aと、主変速レバー16の姿勢を測定する角度センサ16Aと、副変速レバー17の姿勢を測定する角度センサ17Aと、刈脱レバー18の姿勢を測定する角度センサ18Aが所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
コントローラ50の出力側には、刈取クラッチ22と、脱穀クラッチ24と、無段変速装置20のトラニオン軸40を回動させる前進用モータ42及び後進用モータ43が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
<走行装置の走行速度の増速方法>
図10に示すように、ステップS1で、コントローラ50の処理部51は、主変速レバー16の移動位置を測定するために主変速レバー16の下部に設けられた角度センサ16Aの測定値θを読込んでステップS2に進む。
ステップS2で、処理部51は、角度センサ16Aの測定値θに対応する無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを読込んでステップS3に進む。
ステップS3で、処理部51は、トラニオン軸40の開度βに対応する走行装置2の設定走行速度Vを読込んでステップS4に進む。
ステップS4で、処理部51は、走行装置2に装着された速度センサ2Aで測定値である走行装置2の実際の走行速度vを読込んでステップS5に進む。
ステップS5で、処理部51は、走行装置2の設定走行速度Vと実際の走行速度vの速度差Sが予め設定した所定速度差SAよりも大きいか否か判断し、速度差Sが所定速度差SAよりも大きいと判断した場合にはステップS6に進み、速度差Sが所定速度差SA以下と判断した場合にはステップS1に戻る。
ステップS6で、処理部51は、角度センサ16Aの測定値θが、予め設定された所定角度θAよりも大きいか否か判断し、測定値θが所定角度θAよりも大きいと判断した場合にはステップS7に進み、測定値θが所定角度θA以下と判断した場合にはステップS1に戻る。
図11(a)は、横軸に主変速レバー16の姿勢を示し、縦軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、図8(a)と同一図面である。
図11(b)は、横軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、縦軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示し、測定値θが所定角度θAの場合には、トラニオン軸40の開度βは所定開度βAに設定されていることを図示した以外は、図8(b)と同一図面である。
図11(c)のP1は、設定走行速度Vと実際の走行速度vの速度差Sが所定速度差SAよりも大きく、角度センサ16Aの測定値θが所定角度θAよりも大きい場合を示し、P2は、設定走行速度Vと実際の走行速度vの速度差Sが所定速度差SAよりも大きいが、角度センサ16Aの測定値θが所定角度θA以下の場合を示している。また、トラニオン軸40の開度βが所定開度βAの場合には、走行装置2の設定走行速度Vは所定速度VAに設定されている。
これにより、図11(c)に図示したP2の場合、すなわち、走行装置2の設定走行速度Vが所定速度VAよりも低速で刈取装置3の刈取速度が低速の場合には、トラニオン軸40の開度βを開閉操作する前進用モータ42と後進用モータ43の回動を停止して刈取装置3の刈取速度を一定に維持して、刈取装置3の穀稈を引起こす引起装置3Aに設けられた複数のラグ3Bが装着された引起チェン(図示省略)の移動方向に直交する方向への波打ちを抑止して、ラグ3Bの衝突による破損や引起チェンのスプロケットからの脱落を防止することができる。
ステップS7で、処理部51は、層厚センサ4Aの測定値である揺動棚を移動する脱穀された穀粒の層厚Tが、予め設定された所定層厚TAよりも小さいか否か判断し、層厚Tが所定層厚TAよりも小さいと判断した場合にはステップS8に進み、層厚Tが所定層厚TA以上と判断した場合にはステップS1に戻る。これにより、層厚Tが所定層厚TA以上、すなわち、多量の穀稈が脱穀装置4に搬送されている場合には、トラニオン軸40の開度βを開閉操作する前進用モータ42と後進用モータ43の回動を停止して、エンジンEの負荷の増加を抑制することができる。
ステップS8で、処理部51は、前進用モータ42と後進用モータ43を駆動して無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを大きくして、無段変速装置20の入力軸44に伝動されてきた出力回転を増速して、走行装置2の実際の走行速度vを主変速レバー16の移動位置に対応する設定速度Vまで増速させてステップS1に戻る。これにより、走行装置2の実際の走行速度vを主変速レバー16の移動位置に対応する設定走行速度Vを同一速度にすることができるので主変速レバー16の操作時の走行装置2の実際の走行速度vの応答性能を向上させることができ、作業者の不快感も軽減することができる。
上記のとおり、本発明において処理部51は、主変速レバー16の所定の操作領域において、速度差Sが発生しているとき、出力を増速側に補正を行う。これについては速度差Sが設定走行速度Vが実際の走行速度vよりも高い場合と低い場合のいずれにおいても出力補正を行うこともできるが、増速側のみ補正を行うことが好ましい(以下の説明でこの様なパターンを「増速側のみの補正」と呼び、反対のパターンを「減速側のみの補正」と呼ぶことがある)。
また、ステップS7の判断に変えて、あるいはステップS7の判断に続いて以下の変形例のような判断をさせることも好ましい。
圃場内を走行している際に、圃場が湿田である場合に減速側のみの補正を行うものである。圃場が湿田であることの判定条件としては、例えば刈取装置3が機体に対して所定以上上昇していること、車高の調節機構によって、車高が所定以上上昇されていることや、作業者によって設定される湿田モードが有効になっていること(湿田モードとしては例えば車体の旋回力を一定以下に制限することで急激な車体挙動を起こさせないようにするものなどが想定される)等が挙げられる。または、IMU(慣性計測装置)により検出される機体モーメントの平均値やピーク値などが所定以上小さい等、挙動が緩やかであることなどを用いることもできる。
また、圃場では速度の補正を行わず、路上走行時にのみ補正を行うこともできる。圃場では走行負荷が大きく作業負荷も大きい為、過剰なエンジン負荷の抑制が期待できる。路上走行であることの判定方法としては、刈取装置3のクラッチ操作部が切状態でかつ刈取装置3が所定以上上昇していることや、所謂副変速装置が路上走行用の変速位置にセットされていることが挙げられる。
または、路上走行の場合は増速側のみの補正を行い、それ以外(作業時)は増減速両方の補正を行うこともできる。その際には、路上走行では作業時と比較して補正量に上限を設定することが望ましい。すなわち、速度差Sが所定以上大きい場合には補正量を所定の上限値に制限する。なお、路上走行と作業走行の両方で補正の上限を設定し、その上限値を路上走行と作業走行で異ならせることも好ましい。
<トラニオン軸の開度の他の設定方法>
図12(a)は、横軸に主変速レバー16の姿勢を示し、縦軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、図8(a)と同一図面である。
図12(b)は、横軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、縦軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示している。主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に移動させて角度センサ16Aの測定値θがθ1からθ2に直線的に増加した場合には、トラニオン軸40の開度βは曲線的、すなわち、測定値θがθ1では開度βが小さく、測定値θがθ2では開度βが大きく増加し、主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動させて角度センサ16Aの測定値θがθ2からθ1に直線的に減少した場合には、トラニオン軸40の開度βも曲線的、すなわち、測定値θがθ2では開度βが大きく、測定値θがθ1では開度βが小さく減少する。なお、トラニオン軸40の開度βは、β1よりも小さいβ0からβ2よりも大きいβ3まで曲線的に増加するように設定されている。これにより、主変速レバー16を中立姿勢の近傍で移動されるのに比較して前側傾斜姿勢の近傍で移動させた場合に、トラニオン軸40の開度βを大きく変化させることができるので、走行装置2の実際の走行速度vを主変速レバー16の移動位置に対応する設定走行速度Vを容易に同一速度にすることができる。なお、図8(b)は、主変速レバー16の姿勢を測定する角度センサ16Aの測定値θの増減又は減速に対応させて無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを直線的に増減させている。
<トラニオン軸の開度のさらに他の設定方法>
図13(a)は、横軸に主変速レバー16の姿勢を示し、縦軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、図8(a)と同一図面である。
図13(b)は、横軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、縦軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示している。主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に移動させて角度センサ16Aの測定値θがθ1からθ2に直線的に増加した場合には、トラニオン軸40の開度βは階段的、図示した例では4階段的に増加する。なお、トラニオン軸40の開度βは、β1よりも小さいβ0からβ2よりも大きいβ3まで曲線的に増加するように設定することができる。これにより、主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に移動させる場合には、走行装置2の走行速度vの増速時の衝撃を抑制することができる。なお、図8(b)は、主変速レバー16の姿勢を測定する角度センサ16Aの測定値θの増減に対応させて無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを直線的に増減させている。
図13(c)は、横軸に角度センサ16Aの測定値θを示し、縦軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示している。主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動させて角度センサ16Aの測定値θがθ2からθ1に直線的に減少した場合には、トラニオン軸40の開度βは階段的、図示した例では斜姿勢に移動させて4段階の半分の2階段的に減少する。これにより、主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢から中立姿勢に移動させる場合には、主変速レバー16を少しの移動によりトラニオン軸40の開度βを大きく移動させて速やかに走行装置2の走行速度vを減速することができる。なお、図8(b)は、主変速レバー16の姿勢を測定する角度センサ16Aの測定値θの減速に対応させて無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを直線的に増減させている。
1 機体フレーム
2 走行装置
3 刈取装置
4 脱穀装置
5 操縦部
16 主変速レバー(変速レバー)
16A 角度センサ
20 無段変速装置
40 トラニオン軸
42 前進用モータ(駆動手段)
43 後進用モータ(駆動手段)
A 伝動経路(第1伝動経路)
B 伝動経路(第2伝動経路)
E エンジン
S 速度差
SA 所定速度差
T 層厚
TA 所定層厚
θ 測定値
V 設定走行速度
v 走行速度