JP2023092353A - アルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、フラックスフリーろう付が可能で耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシートの提供を目的とする。【解決手段】本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、少なくとも二層以上の複層構造を有し、その片面、もしくは両面がろう材であるブレージングシートであって、ろう材の組成が質量%で、Mg:0.01~2.0%、Si:1.5~14.0%を含有し、かつ、0.01~0.3%のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、さらに、ろう材中のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含む金属間化合物であり、表層面(RD-TD)方向の観察により、円相当径で0.01μm以上5.0μm未満の径を有する金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在することを特徴とする。【選択図】図1
Description
この発明はフラックスフリーにより接合がなされるフラックスフリーろう付用のアルミニウム合金ブレージングシートに関する。
コンデンサやエバポレーターなどに代表されるアルミニウム製自動車用熱交換器は、多数の接合箇所を有すること、高い密閉性が求められることから、ろう付接合によって製造されている。
現在主流のフッ化物系フラックスを使用するろう付方法では、フラックスが材料中のMgと反応して不活性化し、ろう付不良が生じやすいため、Mg添加による部材高強度化が制限されてしまっている。しかし、近年の自動車用熱交換器は小型軽量化が強く望まれていることから、フラックスを用いることなく、Mgを添加した高強度のアルミニウム合金をろう付接合する手法の開発が要求されている。
現在主流のフッ化物系フラックスを使用するろう付方法では、フラックスが材料中のMgと反応して不活性化し、ろう付不良が生じやすいため、Mg添加による部材高強度化が制限されてしまっている。しかし、近年の自動車用熱交換器は小型軽量化が強く望まれていることから、フラックスを用いることなく、Mgを添加した高強度のアルミニウム合金をろう付接合する手法の開発が要求されている。
Al-Si-Mgろう材を用いるフラックスフリーろう付では、溶融して活性となったろう材中のMgが、接合部表面のAl酸化皮膜(Al2O3)を還元分解することでろう付接合が可能となるが、一方で材料表面に暴露したMgが酸素と反応し、MgO皮膜を接合部に生成してしまう問題がある。MgO皮膜は分解されにくい、安定性の高い酸化皮膜であるため、ろう付接合性が著しく低下してしまう。そこで、適切な第4元素を追加添加することでろう付接合性の向上を達成する技術が開発されている。
本願出願人は、従来、例えば以下の特許文献1に示すフラックスレスろう付方法を提案している。この特許文献1に記載の技術では、MgとSiを所定量含有するAl-Si系ろう材を芯材にクラッドしてアルミニウム合金クラッド材を構成している。また、減圧を伴わない非酸化性雰囲気において前記Al-Si系ろう材とろう付対象物を接触密着させ、559~620℃に加熱することでろう付を行っている。
しかし、第4元素を添加したろう材を用いた場合、厳しい腐食環境に曝されたときに耐食性が十分ではないという問題が生じる。この問題について調査を進めると、ろう付性向上を目的に添加した第4元素が耐食性に影響を及ぼしていることが分かった。さらに精査したところ、本発明者らは、この第4元素はろう付熱処理によって皮膜と母材の界面に単体元素として偏析することで耐食性低下に寄与していることを明らかにした。この点に鑑み、本発明者は、フラックスフリーろう付の接合性とろう付部の耐食性を同時に満足する新たな技術開発の要求の元、種々研究した結果、本発明に到達した。
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、第4元素を添加したろう材を用いたフラックスフリーろう付が可能であり、ろう付部の耐食性にも優れたアルミニウム合金ブレージングシートの提供を目的とする。
(1)本形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、少なくとも二層以上の複層構造を有し、その片面、もしくは両面がろう材であるブレージングシートであって、ろう材の組成が質量%で、Mg:0.01~2.0%、Si:1.5~14.0%を含有し、かつ、0.01~0.3%のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、さらに、ろう材中のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含む金属間化合物であり、表層面(RD-TD)方向の観察により、円相当径で0.01μm以上5.0μm未満の径を有する金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在することを特徴とする。
(2)本形態に係る(1)に記載のアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、前記ろう材に含有されるNa、Sr、Zr、Sb、Ceのいずれかが、ろう付熱処理後に単体元素偏析部として表層部に偏析する場合、酸化皮膜と母材の界面に占める前記単体元素偏析部の被覆率が10%以下であることが好ましい。
(3)本形態に係る(1)または(2)に記載のアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、前記ろう材にZnを質量%で3.0%以下含有していることが好ましい。
本発明は、接合性と耐食性を同時に満足するアルミニウム合金ブレージングシートを提供できる。
以下、実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
本実施形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、少なくとも心材及びろう材の二層以上の複層構造を有するアルミニウム合金ブレージングシートである。
上記心材の片面または両面に前記複層構造の最表面に位置するように配置されたろう材(クラッド層)は、質量%で、Mg:0.01~2.0%、Si:1.5~14.0%を含有し、かつ、0.01~0.3%のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成を有する。Na、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を元素Xと表記すると、前記ろう材はAl-Si-Mg-X系ろう材と表記することができる。
なお、本願明細書に記載の数値範囲において「~」を用いて上限値と下限値を規定した場合、特に表記しない限り、以上、以下を意味する。よって、例えば、0.01~2.0%は0.01%以上2.0%以下を意味する。
本実施形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、少なくとも心材及びろう材の二層以上の複層構造を有するアルミニウム合金ブレージングシートである。
上記心材の片面または両面に前記複層構造の最表面に位置するように配置されたろう材(クラッド層)は、質量%で、Mg:0.01~2.0%、Si:1.5~14.0%を含有し、かつ、0.01~0.3%のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成を有する。Na、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を元素Xと表記すると、前記ろう材はAl-Si-Mg-X系ろう材と表記することができる。
なお、本願明細書に記載の数値範囲において「~」を用いて上限値と下限値を規定した場合、特に表記しない限り、以上、以下を意味する。よって、例えば、0.01~2.0%は0.01%以上2.0%以下を意味する。
本形態の心材用アルミニウム合金は、特に組成に制限はなく、いずれの組成のアルミニウム合金でもよいが、一例を挙げるならば、質量%で、Mn:0.1~3.0%、Si:0.1~1.2%、Cu:0.01~3.0%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成に調製したアルミニウム合金などを用いることができる。心材用アルミニウム合金には、その他に、Si、Mn、Fe、Mg、Biなどを既知の量で含有してもよい。
本実施形態において、心材用アルミニウム合金の組成は特に限定されるものではないが、Mg2Siなどを微細析出させることで材料の大幅な高強度化が図れるため、MgとSiを積極添加したアルミニウム合金を好適に用いることができる。
従来のフッ化物系フラックスを用いるろう付方法は、フラックスがMgと反応して高融点のフッ化マグネシウムを生成し不活性化するため、ろう付性が低下することや、この反応によりMgを消費するため、高強度Mg添加合金に適用することが難しかったが、フラックスフリーろう付では高強度Mg添加合金が利用可能となる。
従来のフッ化物系フラックスを用いるろう付方法は、フラックスがMgと反応して高融点のフッ化マグネシウムを生成し不活性化するため、ろう付性が低下することや、この反応によりMgを消費するため、高強度Mg添加合金に適用することが難しかったが、フラックスフリーろう付では高強度Mg添加合金が利用可能となる。
なお、本形態のアルミニウム合金ブレージングシートに用いるろう材と心材の間にろう材として機能する中間層を設けた構成を採用してもよい。
さらに、Znを添加したアルミニウム合金を犠牲防食層として、ろう材をクラッドしていない心材の表面にクラッドして犠牲防食層を設けてもよい。
本実施形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、ろう材/心材/犠牲材/ろう材の四層構造でも良いし、ろう材/犠牲材/心材/犠牲材/ろう材の五層構造であっても良い、また、第1のろう材/第2のろう材/心材/ろう材の四層構造、あるいは、第1のろう材/第2のろう材/犠牲材/心材/犠牲材/ろう材の六層構造など、クラッド構成は特に限定されるものではない。
本実施形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、板状の心材と上述のろう材、犠牲材などとのクラッド圧延によりシート状に製造される。このアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材と犠牲材はクラッド層として心材に積層される。
さらに、Znを添加したアルミニウム合金を犠牲防食層として、ろう材をクラッドしていない心材の表面にクラッドして犠牲防食層を設けてもよい。
本実施形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、ろう材/心材/犠牲材/ろう材の四層構造でも良いし、ろう材/犠牲材/心材/犠牲材/ろう材の五層構造であっても良い、また、第1のろう材/第2のろう材/心材/ろう材の四層構造、あるいは、第1のろう材/第2のろう材/犠牲材/心材/犠牲材/ろう材の六層構造など、クラッド構成は特に限定されるものではない。
本実施形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、板状の心材と上述のろう材、犠牲材などとのクラッド圧延によりシート状に製造される。このアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材と犠牲材はクラッド層として心材に積層される。
本実施形態のアルミニウム合金ブレージングシート1は、一例として、図1に示すように、アルミニウム合金からなる心材2の両面にアルミニウム合金からなるろう材3をクラッド層としてクラッドした3層構造を採用できる。
また、ブレージングシート1は、ろう材を複層構造とすることができるので、例えば、図1の2点鎖線に示すように心材2とろう材3との間に更に別のろう材3Aを1層以上設けた構造、あるいは、心材2とろう材3との間に犠牲材3Bなどの別の層を1層以上設けた複層構造とすることができる。
また、ブレージングシート1は、ろう材を複層構造とすることができるので、例えば、図1の2点鎖線に示すように心材2とろう材3との間に更に別のろう材3Aを1層以上設けた構造、あるいは、心材2とろう材3との間に犠牲材3Bなどの別の層を1層以上設けた複層構造とすることができる。
以下、Al-Si-Mg-X系ろう材のMg含有量とSi含有量、その他、望ましい添加元素の含有量について各々説明する。
「Mg:0.01~2.0%」
MgはAl酸化皮膜(Al2O3)を還元分解するために添加される。Mg含有量が下限値未満であると還元分解効果が不十分であり、Mg含有量が上限越えであると材料強度が硬すぎて素材の製造が困難になること、およびMgO皮膜が材料表面に密に生成されることでろう付接合性が低下する。
「Mg:0.01~2.0%」
MgはAl酸化皮膜(Al2O3)を還元分解するために添加される。Mg含有量が下限値未満であると還元分解効果が不十分であり、Mg含有量が上限越えであると材料強度が硬すぎて素材の製造が困難になること、およびMgO皮膜が材料表面に密に生成されることでろう付接合性が低下する。
「Si:1.5~14.0%」
Siはろう付時に溶融ろうを形成し、ろう付接合部にフィレットを形成するために添加される。Si含有量が下限未満であると、溶融ろうが不足する。Si含有量が上限越えであると材料が硬く脆くなるため、素材製造が困難になる。
Siはろう付時に溶融ろうを形成し、ろう付接合部にフィレットを形成するために添加される。Si含有量が下限未満であると、溶融ろうが不足する。Si含有量が上限越えであると材料が硬く脆くなるため、素材製造が困難になる。
「Na、Sr、Zr、Sb、Ceの1種または2種以上である元素X:0.01~0.3%」
元素Xは、元素Xを含む金属間化合物を形成して直上の酸化皮膜(Al2O3)を脆弱にする。
更に、元素Xは、材料表層部分に分布することでMgOの形成を阻害して接合性を向上させ、溶融ろうの濡れ性向上のために添加される。元素Xの含有量が下限未満であると効果が不十分であり、元素Xの含有量が上限越えであると鋳造時に巨大な金属間化合物(晶出物)が生成し、圧延性が低下する。
元素Xを含む金属間化合物であり、表層面(RD-TD)方向の観察より、円相当径で0.01μm以上5.0μm未満の径を有する金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在するろう材であることが好ましい。なお、前記(RD-TD)において、RDはRolling Direction(圧延方向)を示し、TDはTransverse Direction(圧延直角方向)を示す。
元素Xは、元素Xを含む金属間化合物を形成して直上の酸化皮膜(Al2O3)を脆弱にする。
更に、元素Xは、材料表層部分に分布することでMgOの形成を阻害して接合性を向上させ、溶融ろうの濡れ性向上のために添加される。元素Xの含有量が下限未満であると効果が不十分であり、元素Xの含有量が上限越えであると鋳造時に巨大な金属間化合物(晶出物)が生成し、圧延性が低下する。
元素Xを含む金属間化合物であり、表層面(RD-TD)方向の観察より、円相当径で0.01μm以上5.0μm未満の径を有する金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在するろう材であることが好ましい。なお、前記(RD-TD)において、RDはRolling Direction(圧延方向)を示し、TDはTransverse Direction(圧延直角方向)を示す。
元素Xを含む金属間化合物をろう材表面に密に分布させることで酸化皮膜が脆弱化し、ろう溶融時のぬれの起点となってろう付接合性が向上する。ろう材表面における金属間化合物が10000μm2あたり10個に満たないと、ぬれの起点が不足してろう付性が低下する。同様の理由で金属間化合物は10000μm2あたり15個以上存在することが望ましい。
「ろう付熱処理によって元素Xが単体元素偏析部としての表層部に偏析した場合、酸化皮膜と母材の界面に占める単体元素偏析部の被覆率が10%以下」
ろう材中に存在する元素Xを含有する金属間化合物は、ろう付熱処理中に溶融することで元素Xが分離し、ろう付熱処理後に表層部に単体元素偏析部として偏析する。このとき、酸化皮膜と母材の界面に多量の元素Xが偏析すると耐食性が低下してしまう。元素Xの単体元素偏析部による酸化皮膜と母材界面の被覆率が10%を超えると耐食性が著しく低下する。同様の理由により、酸化皮膜と母材の界面における、単体元素偏析部による被覆率は5%以下が望ましい。
ろう材中に存在する元素Xを含有する金属間化合物は、ろう付熱処理中に溶融することで元素Xが分離し、ろう付熱処理後に表層部に単体元素偏析部として偏析する。このとき、酸化皮膜と母材の界面に多量の元素Xが偏析すると耐食性が低下してしまう。元素Xの単体元素偏析部による酸化皮膜と母材界面の被覆率が10%を超えると耐食性が著しく低下する。同様の理由により、酸化皮膜と母材の界面における、単体元素偏析部による被覆率は5%以下が望ましい。
「ろう材層にZnを質量%で3.0%以下含有すること」
ZnはAlに固溶して材料の自然電位を卑にすることで犠牲防食効果が得られるので、所望によりろう材層に含有させる。ただし、ろう材層のZn含有量が上限越えであると自己耐食性が著しく低下する。
ZnはAlに固溶して材料の自然電位を卑にすることで犠牲防食効果が得られるので、所望によりろう材層に含有させる。ただし、ろう材層のZn含有量が上限越えであると自己耐食性が著しく低下する。
「元素X(Na、Sr、Zr、Sb、Ceの1種または2種以上)を含む金属間化合物であって、表層面(RD-TD)方向の観察より、円相当径で0.01μm以上5.0μm未満の径を有する金属間化合物が10000μm2あたり10個より多い」
元素Xを含む金属間化合物をろう材層に細かく密に分布させるためには、鋳造時の冷却速度、均質化処理温度、熱間圧延時の所定温度での圧延時間、冷間圧延時の1パス当たりの圧下率を制御することで達成される。
元素Xを含む金属間化合物をろう材層に細かく密に分布させるためには、鋳造時の冷却速度、均質化処理温度、熱間圧延時の所定温度での圧延時間、冷間圧延時の1パス当たりの圧下率を制御することで達成される。
「ろう付熱処理によって元素Xが単体元素として表層部に偏析した場合、酸化皮膜と母材の界面の被覆率が10%以下」
元素Xを含む金属間化合物が円相当径で0.01μm未満と非常に微細であった場合、ろう付熱処理によって金属間化合物が溶解し、元素Xが分離して単体の状態となり易い。金属間化合物の溶解により、元素Xが材料表層部に単体元素偏析部となって偏析し、酸化皮膜と母材の界面における被覆率が増加してしまう。よって、ろう付時に分解しやすい非常に微細な金属間化合物の発生を抑制する必要があり、これは焼鈍時の冷却速度と冷間圧延時の材料温度を制御することで達成される。
元素Xを含む金属間化合物が円相当径で0.01μm未満と非常に微細であった場合、ろう付熱処理によって金属間化合物が溶解し、元素Xが分離して単体の状態となり易い。金属間化合物の溶解により、元素Xが材料表層部に単体元素偏析部となって偏析し、酸化皮膜と母材の界面における被覆率が増加してしまう。よって、ろう付時に分解しやすい非常に微細な金属間化合物の発生を抑制する必要があり、これは焼鈍時の冷却速度と冷間圧延時の材料温度を制御することで達成される。
「製造条件」
[ろう材の準備]
ろう材は、目的組成の合金溶湯から鋳造により鋳塊を得、均質化処理、面削を経て熱間圧延により目的の厚さの板状のろう材を得ることができる。
[非ろう材の準備]
非ろう材(心材)は、目的組成の合金溶湯から鋳造により鋳塊を得、鋳塊に均質化処理、面削を施すことで目的厚さの板状の非ろう材を得ることができる。
[クラッド圧延]
板状のろう材と非ろう材を組み付け、均熱処理、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を施す。冷間圧延工程中に適宜中間焼鈍を行うことができる。
[ろう材の準備]
ろう材は、目的組成の合金溶湯から鋳造により鋳塊を得、均質化処理、面削を経て熱間圧延により目的の厚さの板状のろう材を得ることができる。
[非ろう材の準備]
非ろう材(心材)は、目的組成の合金溶湯から鋳造により鋳塊を得、鋳塊に均質化処理、面削を施すことで目的厚さの板状の非ろう材を得ることができる。
[クラッド圧延]
板状のろう材と非ろう材を組み付け、均熱処理、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を施す。冷間圧延工程中に適宜中間焼鈍を行うことができる。
「ろう材の準備」
目的組成のアルミニウム合金の板材を鋳造し、冷却速度、0.5℃/s以上とする。鋳造時の冷却速度が所定の速度に満たない場合は、元素Xを含む金属間化合物が粗大に成長してしまい、規定サイズの化合物を密に分布させることができない。同様の理由で冷却速度は1℃/s以上が望ましい。
目的組成のアルミニウム合金の板材を鋳造し、冷却速度、0.5℃/s以上とする。鋳造時の冷却速度が所定の速度に満たない場合は、元素Xを含む金属間化合物が粗大に成長してしまい、規定サイズの化合物を密に分布させることができない。同様の理由で冷却速度は1℃/s以上が望ましい。
「均質化処理」
均質化処理は、400℃以上、550℃以下の温度で1~10時間程度加熱する条件を選択できる。均質化処理温度は400℃以上530℃未満の所定の温度で均質化処理することがより好ましく、この温度範囲で均質化処理することで元素Xを含む金属間化合物を密に分布させることができる。400℃未満の温度では十分な効果が得られない。同様の理由で450℃以上、530℃未満の温度を付加することが望ましい。
均質化処理は、400℃以上、550℃以下の温度で1~10時間程度加熱する条件を選択できる。均質化処理温度は400℃以上530℃未満の所定の温度で均質化処理することがより好ましく、この温度範囲で均質化処理することで元素Xを含む金属間化合物を密に分布させることができる。400℃未満の温度では十分な効果が得られない。同様の理由で450℃以上、530℃未満の温度を付加することが望ましい。
鋳造により鋳塊を面削する場合に特に規定は無く、熱間圧延を行う場合も特に規定は無い。また、板状のろう材と非ろう材(心材)の組み付けに特に規定はなく、均熱処理にも特に規定はない。
<熱間圧延、温度と圧延時間>
「材料温度:400~500℃における圧延時間を5分以上」
熱間圧延時に所定の高温域で動的ひずみが入る所定圧延時間を満たすことで、本発明で定義する所定サイズの元素Xを含む金属間化合物の析出を促進できる。圧延時間が所定の時間に満たない場合、充分な効果が得られない。同様の理由で、400~500℃における圧延時間を10分以上とすることが望ましい。
「材料温度:400~500℃における圧延時間を5分以上」
熱間圧延時に所定の高温域で動的ひずみが入る所定圧延時間を満たすことで、本発明で定義する所定サイズの元素Xを含む金属間化合物の析出を促進できる。圧延時間が所定の時間に満たない場合、充分な効果が得られない。同様の理由で、400~500℃における圧延時間を10分以上とすることが望ましい。
「冷間圧延、1パスあたりの圧下率」
冷間圧延時の板厚が0.2mm以上における1パス当たりの圧下率を25%以上に規定することが望ましい。1パス当たりの圧下率が所定の条件を満たすとき、元素Xを含む粗大な金属間化合物を粉砕し、本発明で目的とする望ましい金属間化合物サイズに収めることができる。所定の圧下率に満たない場合、金属間化合物のサイズを目的の範囲に収めることができず、充分な効果が得られない。
冷間圧延時の板厚が0.2mm以上における1パス当たりの圧下率を25%以上に規定することが望ましい。1パス当たりの圧下率が所定の条件を満たすとき、元素Xを含む粗大な金属間化合物を粉砕し、本発明で目的とする望ましい金属間化合物サイズに収めることができる。所定の圧下率に満たない場合、金属間化合物のサイズを目的の範囲に収めることができず、充分な効果が得られない。
「冷間圧延、材料温度」
冷間圧延の材料温度は180℃未満とする。冷間圧延によって材料温度は上昇するが、所定の温度範囲を超えてしまうと元素Xを含む非常に微細な金属間化合物が析出し、酸化皮膜と母材の界面に占める単体元素偏析部の被覆率を10%以下に制御することが難しくなる。
「中間焼鈍」
中間焼鈍時の冷却速度は30℃/hr以上が望ましい。所定の冷却速度より緩慢な冷却の場合、非常に微細な元素Xを含む金属間化合物が多く析出し、酸化皮膜と母材の界面に占める単体元素偏析部の被覆率を10%以下にすることができなくなる。同様の理由で中間焼鈍時の冷却速度は60℃/hr以上が望ましい。
冷間圧延の材料温度は180℃未満とする。冷間圧延によって材料温度は上昇するが、所定の温度範囲を超えてしまうと元素Xを含む非常に微細な金属間化合物が析出し、酸化皮膜と母材の界面に占める単体元素偏析部の被覆率を10%以下に制御することが難しくなる。
「中間焼鈍」
中間焼鈍時の冷却速度は30℃/hr以上が望ましい。所定の冷却速度より緩慢な冷却の場合、非常に微細な元素Xを含む金属間化合物が多く析出し、酸化皮膜と母材の界面に占める単体元素偏析部の被覆率を10%以下にすることができなくなる。同様の理由で中間焼鈍時の冷却速度は60℃/hr以上が望ましい。
以上説明したアルミニウム合金ブレージングシート1は、ろう材の組成が質量%で、Mg:0.01~2.0%、Si:1.5~14.0%を含有し、かつ、0.01~0.3%のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上の元素Xを含有する。更に、表層面(RD-TD)方向の観察により、円相当径で0.01μm以上5.0μm未満の径を有する金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在する。
元素Xを含む金属間化合物がろう付時に酸化皮膜を脆弱化し、ろう溶融時のぬれの起点となってろう付性を向上させる。また、円相当径で0.01μm以上5.0μm未満の径を有する金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在していることで、ろう付時のぬれの起点の数を確保し、溶融ろうの濡れ性を向上させ、良好なろう付性を発揮できる。よって、上述のアルミニウム合金ブレージングシート1によれば、フラックスレスろう付であっても良好なろう付性を得ることができる。
図2は、前記アルミニウム合金ブレージングシート1を用いてフィン5を形成し、ろう付対象材としてアルミニウム合金製のチューブ6を用いたアルミニウム製熱交換器4を示している。フィン5、チューブ6を、補強材7、ヘッダープレート8と組み込んで、ろう付によって自動車用などのアルミニウム製熱交換器4を得ることができる。
図2に示す構成の熱交換器4であるならば、MgとSiを適量含有する強度の高いアルミニウム合金ブレージングシート1を備えているので、強度の高い熱交換器4を提供できる。
また、ろう材に生成している円相当径で0.01μm以上5.0μm未満の径を有する元素Xを含む金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在するため、ろう付時にろう材表面に生成しようとする酸化皮膜を脆弱化するため、ろう溶融時のぬれの起点となる部分を増やすことができ、ろう付性低下を抑制できる。
また、ろう材に生成している円相当径で0.01μm以上5.0μm未満の径を有する元素Xを含む金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在するため、ろう付時にろう材表面に生成しようとする酸化皮膜を脆弱化するため、ろう溶融時のぬれの起点となる部分を増やすことができ、ろう付性低下を抑制できる。
また、ろう材中の元素X(Na、Sr、Zr、Sb、Ceの1種または2種以上)を含む金属間化合物は、ろう付時に分解して元素Xからなる単体金属偏析部として酸化皮膜とろう材との界面に析出する。しかし、酸化皮膜とろう材の界面における単体金属偏析部の被覆率を10%以下と低くしているので、ろう付部は優れた耐食性を示す。従って、本実施形態の構造により、フラックスレスろう付であっても、ろう付性に優れ、強度が高く、耐食性に優れた熱交換器4を得ることができる。
以下の表1に示す組成のろう材と、Al-Mn系合金の非ろう材層をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートを用意した。
ブレージングシートはクラッド率10%の両面ろう材構成を採用し、H14相当調質の0.05mm厚に仕上げ、ろう付接合試験に供する際はコルゲート加工し、ろう付した。ろう付対象部材として、H14のJISA3003合金板を用意した。
ブレージングシートはクラッド率10%の両面ろう材構成を採用し、H14相当調質の0.05mm厚に仕上げ、ろう付接合試験に供する際はコルゲート加工し、ろう付した。ろう付対象部材として、H14のJISA3003合金板を用意した。
ろう材の製造条件として、表2に示すように、鋳造冷却速度(℃/s)と均質化処理温度(℃)、HR高温時間(min)、冷間圧延時の1パス当たりの圧下率(%)、CR温度(℃)、中間焼鈍冷却速度(IA冷却速度:℃/hr)について設定した。
ろう付相当熱処理の条件は平均昇温速度100℃/minで常温から600℃まで加熱し、600℃到達後100℃/minの冷却速度で150℃まで冷却し、室温まで空冷(急冷)する条件とした。
HR高温時間は、熱間圧延において材料が高温状態となる時間を示し、CR温度は、冷間圧延時の材料温度上昇に関し上限に設定した温度を意味する。
ろう付相当熱処理の条件は平均昇温速度100℃/minで常温から600℃まで加熱し、600℃到達後100℃/minの冷却速度で150℃まで冷却し、室温まで空冷(急冷)する条件とした。
HR高温時間は、熱間圧延において材料が高温状態となる時間を示し、CR温度は、冷間圧延時の材料温度上昇に関し上限に設定した温度を意味する。
「評価項目」
<金属間化合物個数>
ろう付相当熱処理前のアルミニウム合金ブレージングシートについて、圧延方向に平行な断面(RD-ND)を作製し、ろう材層の表面を0.1μmの砥粒で鏡面処理し、ろう材層の最表面から10μm深さまでの範囲をEPMA(電子線マイクロアナライザ)で全自動粒子解析を行った。EPMAは、日本電子株式会社製JXA-8530Fを用い、解析ソフトは、JXA-8530Fに付随の粒子解析プログラムを用いた。観察倍率は1000倍、加速電圧は15kVとしている。
さらに、1μm以下の微細な化合物粒子を測定するため、切り出したろう材層の圧延方向に平行な断面(RD-ND)を機械研磨し、および電解研磨を施して薄膜を作製し、この薄膜に対して、TEM(透過型電子顕微鏡)とEDS(エネルギー分散型X線分光)分析によって、ろう材層の最表面から10μm深さまでの範囲を10000μm2(100μm角)相当の視野において観察倍率10000倍(特に微細なものは50000倍)で観察し、微細な金属間化合物個数を計測した。
<金属間化合物個数>
ろう付相当熱処理前のアルミニウム合金ブレージングシートについて、圧延方向に平行な断面(RD-ND)を作製し、ろう材層の表面を0.1μmの砥粒で鏡面処理し、ろう材層の最表面から10μm深さまでの範囲をEPMA(電子線マイクロアナライザ)で全自動粒子解析を行った。EPMAは、日本電子株式会社製JXA-8530Fを用い、解析ソフトは、JXA-8530Fに付随の粒子解析プログラムを用いた。観察倍率は1000倍、加速電圧は15kVとしている。
さらに、1μm以下の微細な化合物粒子を測定するため、切り出したろう材層の圧延方向に平行な断面(RD-ND)を機械研磨し、および電解研磨を施して薄膜を作製し、この薄膜に対して、TEM(透過型電子顕微鏡)とEDS(エネルギー分散型X線分光)分析によって、ろう材層の最表面から10μm深さまでの範囲を10000μm2(100μm角)相当の視野において観察倍率10000倍(特に微細なものは50000倍)で観察し、微細な金属間化合物個数を計測した。
<接合率>
コルゲート加工したフィンとAA3003合金板を組み付けてろう付相当熱処理を施し、図3に示す熱交換器試験体10を作成した。熱交換器試験体10においてフィン11と合金板12は、フィン11の湾曲部と合金板12との間に形成されたフィレットからなる接合部13により接合されている。この熱交換器試験体10において、フィン接合率を(接合数/総接触数)×100で求めた。
判定は、◎:100%、〇〇:90%以上100%未満、〇:80%以上90%未満、×:80%未満とした。
コルゲート加工したフィンとAA3003合金板を組み付けてろう付相当熱処理を施し、図3に示す熱交換器試験体10を作成した。熱交換器試験体10においてフィン11と合金板12は、フィン11の湾曲部と合金板12との間に形成されたフィレットからなる接合部13により接合されている。この熱交換器試験体10において、フィン接合率を(接合数/総接触数)×100で求めた。
判定は、◎:100%、〇〇:90%以上100%未満、〇:80%以上90%未満、×:80%未満とした。
<フィレット長>
コルゲート加工したフィンとAA3003合金板を組み付けてろう付相当熱処理を施し、図3に示す熱交換器試験体10を作成し、フィン/チューブ接合部においてフィレットからなる接合部13の長さを各試料で20点計測し、その平均値をもって評価した。
フィレット長さは、フィレット13の幅W(フィン11の湾曲部頂点と合金板12の接点部分を挟むように合金板12の長さ方向に沿って存在するフィレットの全幅)を示す。図3に示す接合部13の幅Wが大きいならば、良好なろう付接合ができたと解釈できる。
判定は、◎:1.0mm以上、〇〇:0.8mm以上1.0mm未満、〇:0.6mm以上0.8mm未満、×:0.6mm未満とした。
コルゲート加工したフィンとAA3003合金板を組み付けてろう付相当熱処理を施し、図3に示す熱交換器試験体10を作成し、フィン/チューブ接合部においてフィレットからなる接合部13の長さを各試料で20点計測し、その平均値をもって評価した。
フィレット長さは、フィレット13の幅W(フィン11の湾曲部頂点と合金板12の接点部分を挟むように合金板12の長さ方向に沿って存在するフィレットの全幅)を示す。図3に示す接合部13の幅Wが大きいならば、良好なろう付接合ができたと解釈できる。
判定は、◎:1.0mm以上、〇〇:0.8mm以上1.0mm未満、〇:0.6mm以上0.8mm未満、×:0.6mm未満とした。
<界面被覆率>
単板状態でろう付相当熱処理した試料からFIB(収束イオンビーム)加工で断面を切り出し、皮膜と母材の界面をSTEM(走査透過型電子顕微鏡)に付属するEDS(エネルギー分散型X線分析)によって組成分析した。なお、他分析機器の一例として通常のTEM(透過型電子顕微鏡)-EDSが挙げられるが、分解能が不充分であるためXの分布を見誤る可能性がある。
各試料とも、倍率が32万倍から64万倍において合計10μm長さの界面を分析し、(Xが分布する合計長さ/総分析長さ)×100の式より被覆率を求めた。
<耐食性>
ろう付相当熱処理した供試材を100mm×25mmに切り出し、両面暴露の状態でSWAAT試験に72時間負荷し、腐食試験前後の重量変化(腐食減量)によって評価した。
判定は、◎:40mg/dm2未満、〇〇:40mg/dm2以上60mg/dm2未満、〇:60mg/dm2以上100mg/dm2未満、×:100mg/dm2以上とした。
単板状態でろう付相当熱処理した試料からFIB(収束イオンビーム)加工で断面を切り出し、皮膜と母材の界面をSTEM(走査透過型電子顕微鏡)に付属するEDS(エネルギー分散型X線分析)によって組成分析した。なお、他分析機器の一例として通常のTEM(透過型電子顕微鏡)-EDSが挙げられるが、分解能が不充分であるためXの分布を見誤る可能性がある。
各試料とも、倍率が32万倍から64万倍において合計10μm長さの界面を分析し、(Xが分布する合計長さ/総分析長さ)×100の式より被覆率を求めた。
<耐食性>
ろう付相当熱処理した供試材を100mm×25mmに切り出し、両面暴露の状態でSWAAT試験に72時間負荷し、腐食試験前後の重量変化(腐食減量)によって評価した。
判定は、◎:40mg/dm2未満、〇〇:40mg/dm2以上60mg/dm2未満、〇:60mg/dm2以上100mg/dm2未満、×:100mg/dm2以上とした。
表1に示す供試材No.1~22、No.37~39は、質量%で、Mg:0.01~2.0%、Si:1.5~14.0%を含有し、かつ、0.01~0.3%のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成を有するろう材試料である。供試材No.23~26は、上述の組成から、Si含有量あるいはMg含有量のいずれかが外れた組成のろう材試料である。供試材No.27~36は、上述の組成から、Na、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上の含有量の範囲が外れたろう材試料である。供試材No.37~39は、上述の範囲のSiとMgを含有し、上述の範囲のSrを含有し、更にZnを1.5~5質量%含有した試料である。
表2に示す製造条件のうち、製造条件A~Jは望ましい範囲内の製造条件を示すが、製造条件KはCR温度が高すぎる製造方法、製造条件Lは焼鈍後の冷却速度が遅すぎる製造方法を示す。また、製造条件Mは鋳造冷却速度が不足する製造方法、製造条件Nは均質化処理温度が低すぎる製造方法、製造条件OはHR高温時間が不足する製造方法、製造条件Pは1パス当たりの圧下率が低い製造方法である。
表3に示す供試材No.1~22は、望ましい組成を有し、製造条件も好適範囲の条件のため、ろう材中のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含む金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在する試料である。
供試材No.1~22の界面被覆率はいずれも7%以下であり、接合率に優れ、フィレット長が長く、耐食性も良好であった。
供試材No.1~22の界面被覆率はいずれも7%以下であり、接合率に優れ、フィレット長が長く、耐食性も良好であった。
供試材No.23、25、27、29、31、33、35は、Si、Mg、Na、Sr、Zr、Sb、Ceのいずれかを過剰に含む試料であるが、いずれも製造途中で試料にクラックが入るなどの理由により、ブレージングシートとして製造不可であった。
供試材No.24、26、28、30、32、34、36は、Si、Mg、Na、Sr、Zr、Sb、Ceのいずれかの含有量が望ましい範囲より低い試料であるが、接合率が悪く、フィレット長も不充分であった。
供試材No.24、26、28、30、32、34、36は、Si、Mg、Na、Sr、Zr、Sb、Ceのいずれかの含有量が望ましい範囲より低い試料であるが、接合率が悪く、フィレット長も不充分であった。
供試材No.37~58は、望ましい組成を有し、製造条件も好適範囲の条件のため、ろう材中のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含む金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在する試料である。
供試材No.37~58の界面被覆率はいずれも9%以下であり、接合率に優れ、フィレット長が長く、耐食性も良好であった。
供試材No.37~58の界面被覆率はいずれも9%以下であり、接合率に優れ、フィレット長が長く、耐食性も良好であった。
供試材No.59~72は、Si、Mg、Na、Sr、Zr、Sb、Ceのいずれかの含有量が望ましい範囲より少ないか多すぎる試料であるが、接合率が悪く、フィレット長も不充分であるか製造不可の試料であった。
供試材No.73~92は、鋳造時の冷却速度が遅い試料であるが、接合率が悪く、フィレット長も不充分な試料であった。
供試材No.93~106は、鋳造時の冷却速度が遅い試料であり、かつ、Si、Mg、Na、Sr、Zr、Sb、Ceのいずれかを過剰に含むか、これらの含有量が少なすぎる試料である。これらの試料は、接合率が悪く、フィレット長も不充分であるか製造不可の試料であった。
供試材No.73~92は、鋳造時の冷却速度が遅い試料であるが、接合率が悪く、フィレット長も不充分な試料であった。
供試材No.93~106は、鋳造時の冷却速度が遅い試料であり、かつ、Si、Mg、Na、Sr、Zr、Sb、Ceのいずれかを過剰に含むか、これらの含有量が少なすぎる試料である。これらの試料は、接合率が悪く、フィレット長も不充分であるか製造不可の試料であった。
供試材No.107~114の試料は、製造条件をB~Iの何れかに設定して製造した試料である。これらの試料は、金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在する試料であり、界面被覆率がいずれも5%以下であり、接合率に優れ、フィレット長が長く、耐食性も良好であった。
供試材115、116は、CR温度が高すぎる試料であるか最終焼鈍の冷却速度が遅すぎる試料であるが、被覆率が10%を超えて大きくなり、耐食性に劣る問題を生じた。
供試材117~120は、製造条件M、N、O、Pの何れかを採用したため、接合率が悪く、フィレット長も不充分であるか製造不可の試料であった。
供試材115、116は、CR温度が高すぎる試料であるか最終焼鈍の冷却速度が遅すぎる試料であるが、被覆率が10%を超えて大きくなり、耐食性に劣る問題を生じた。
供試材117~120は、製造条件M、N、O、Pの何れかを採用したため、接合率が悪く、フィレット長も不充分であるか製造不可の試料であった。
供試材121~128は、製造方法B~Iを用いて製造した例であるが、いずれも金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在する試料であり、界面被覆率がいずれも7%以下であり、接合率に優れ、フィレット長が長く、耐食性も良好であった。
供試材129~134は、製造方法K~Pを用いて製造した例であるが、接合率が悪いか、フィレット長が短いか、耐食性に劣る試料であった。
供試材129~134は、製造方法K~Pを用いて製造した例であるが、接合率が悪いか、フィレット長が短いか、耐食性に劣る試料であった。
供試材135、136、138、139は、SiとMgとSrを適量含み、更に適量のZnを含んでいるため、界面被覆率がいずれも5%以下であり、接合率に優れ、フィレット長が長く、耐食性も良好であった。
供試材137、140はZn含有量が多すぎたため、耐食性に劣り、供試材141~143は、製造条件Mを採用したため、接合率とフィレット長を満足しない試料であった。
供試材137、140はZn含有量が多すぎたため、耐食性に劣り、供試材141~143は、製造条件Mを採用したため、接合率とフィレット長を満足しない試料であった。
以上の説明から、ろう材の組成が質量%で、Mg:0.01~2.0%、Si:1.5~14.0%を含有し、0.01~0.3%のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、ろう材中のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含む金属間化合物であり、円相当径で0.01μm以上5.0μm未満の径を有する金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在することがブレージングシートにおいて重要であることが分かる。
1…アルミニウム合金ブレージングシート、2…心材、3…ろう材、3A…ろう材、3B…犠牲材、4…熱交換器、5…フィン、6…チューブ、10…熱交換器試験体、11…フィン、12…合金板。
Claims (3)
- 少なくとも二層以上の複層構造を有し、その片面、もしくは両面がろう材であるブレージングシートであって、ろう材の組成が質量%で、Mg:0.01~2.0%、Si:1.5~14.0%を含有し、かつ、0.01~0.3%のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、さらに、ろう材中のNa、Sr、Zr、Sb、Ceの1種、あるいは2種以上を含む金属間化合物であり、表層面(RD-TD)方向の観察により、円相当径で0.01μm以上5.0μm未満の径を有する金属間化合物が10000μm2あたり10個より多く存在することを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
- 請求項1に記載のアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、前記ろう材に含有されるNa、Sr、Zr、Sb、Ceのいずれかが、ろう付熱処理後に単体元素偏析部として表層部に偏析する場合、酸化皮膜と母材の界面に占める前記単体元素偏析部の被覆率が10%以下であることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
- 請求項1または請求項2に記載するアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、前記ろう材にZnが質量%で3.0%以下含有されていることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
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