JP2023077085A - 加硫ゴム-金属複合体並びにタイヤ、ホース、及びクローラ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐亀裂性、低発熱性及び加硫ゴムと金属との接着性に優れる加硫ゴム-金属複合体並びにそれを用いた耐久性に優れるタイヤ、ホース、及びクローラを提供する。【解決手段】金属と、前記金属を被覆する加硫ゴムとを備える加硫ゴム-金属複合体であって、前記加硫ゴムは、ゴム成分、カーボンブラック、及びシリカを含み、コバルト含有化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.01質量部以下であるゴム組成物の加硫ゴムであり、前記ゴム組成物中のコバルト含有化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.01質量部以下であり、前記金属は、スチールコード表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆された金属である加硫ゴム-金属複合体。【選択図】なし

Description

本発明は、加硫ゴム-金属複合体並びにタイヤ、ホース、及びクローラに関する。
空気入りタイヤに代表されるゴム物品の補強素子として、スチールワイヤからなるスチールコードが多用されている。スチールコードで補強したスチールコード・ゴム複合体では、スチールコードとゴムとの接着性を高めるために、スチールコード側にはブラスめっき(CuとZnの2元めっき)が施され、加硫時、ゴム中に配合された硫黄(S)と、ブラスめっき層中の銅(Cu)とが架橋反応して結合し、ブラスめっき層とゴムとの間に接着層(CuSやCuSを含む層)が形成されることにより、ブラスめっき層とゴムとの接着力が発現することが知られている。
ただし、スチールワイヤ表面にブラスめっきを施しただけでは、加硫初期の接着性や、高温高湿の湿熱環境下における接着性(湿熱接着性)が十分でないという問題があった。
そのため、初期接着性や湿熱接着性を改善することを目的として、ゴム中に有機コバルト塩を配合する技術が知られている。しかしながら、有機コバルト塩は高価であり、かつ未加硫ゴムを劣化させやすいという弊害が生じる。また、ゴム練り工程における温度を上げた際、コバルトによってゴム劣化が促進されるため、温度を下げて練り時間を長くする必要が生じる等、生産性を低下させてしまうという問題があった。更に近年では、環境負荷低減の観点から、コバルトの使用量の削減が求められている。
このような問題に対して、例えば特許文献1には、めっき表面領域において、銅、亜鉛及びコバルトの含有量を所定範囲に設定した3元系めっきを採用することで、ゴム中に有機コバルト塩を配合しなくとも、ゴムとスチールコードとの間の接着性を高めることができる技術が開示されている。
また、特許文献2には、コバルトフリー化合物でも三種合金コーティングの使用を可能にする鉄の粒子を豊富に含む真鍮コーティングを備えたスチールコードが開示されている。
特開2014-231580号公報 国際公開第2020/156967号
しかしながら、特許文献1のスチールコード・ゴム複合体では、ゴムとスチールコードとの間の接着性については向上できるものの、ゴムの耐亀裂性についてさらなる改善の必要があった。
さらに近年、自動車の低燃費性能向上の観点から、タイヤの転がり抵抗を低減させるべく、スチールコードをコーティングするゴムの低発熱性についても改善要求が高まっている。このような要求に対し、カーボンブラックの使用量を低減させることや、低級カーボンブラックを使用することによって、ヒステリシスロスを低下させたゴム組成物を製造し、スチールコード・ゴム複合体に適用する技術が知られている。
しかしながら、カーボンブラックの含有量を減少させたゴム組成物や、低級カーボンブラックを用いたゴム組成物を、上述したスチールコード・ゴム複合体に用いた場合、低ロス性については一定の改善効果が得られるものの、十分な耐亀裂性を得ることができなかった。
また、特許文献2に記載の加硫ゴム-金属複合体は耐亀裂性及び低発熱性が不十分である。
本発明は、上記事情に鑑み、耐亀裂性、低発熱性及び加硫ゴムと金属との接着性に優れる加硫ゴム-金属複合体並びにそれを用いた耐久性に優れるタイヤ、ホース、及びクローラを提供することを目的とし、当該目的を解決することを課題とする。
<1> 加硫ゴムと金属とを含み、前記加硫ゴムと前記金属とが接着している加硫ゴム-金属複合体であって、
前記加硫ゴムは、ゴム成分、カーボンブラック、及びシリカを含み、コバルト含有化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.01質量部以下であるゴム組成物の加硫ゴムであり、
前記金属は、スチールコード表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆された金属である加硫ゴム-金属複合体。
<2> 前記被覆中の前記鉄の量が、前記銅、前記亜鉛及び前記鉄の総質量の1質量%以上10質量%未満である<1>に記載の加硫ゴム-金属複合体。
<3> 前記被覆中のリンの量が、0mg/mを超え4mg/m以下である<1>又は<2>に記載の加硫ゴム-金属複合体。
<4> 前記スチールコードは、ダイヤモンドダイスにより伸線加工されている<1>~<3>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体。
<5> 前記カーボンブラックの含有量cと前記シリカの含有量sとの割合(c:s)が、質量基準で60:40~85:15である<1>~<4>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体。
<6> 前記カーボンブラックは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積が110~160m/gである<1>~<5>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体。
<7> 前記カーボンブラックは、遠心沈降法で得られた凝集体分布における最多頻度を示すストークス相当径Dstを含むピークの半値幅ΔD50が60nm以下であり、且つ、前記ΔD50と前記Dstとの比(ΔD50/Dst)が0.95以下である<1>~<6>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体。
<8> 前記シリカは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積が200m/g以上である<1>~<7>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体。
<9> 前記カーボンブラックと前記シリカとの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して30~80質量部である<1>~<8>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体。
<10> 前記ゴム組成物が、加硫剤及び加硫促進剤を含む<1>~<9>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体。
<11> 前記カーボンブラックの圧縮ジブチルフタレート吸収量が、80~110cm/100gである<1>~<10>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体。
<12> 前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5~25質量部である<1>~<11>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体。
<13>前記ゴム組成物中のコバルト含有化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.00質量部である<1>~<12>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体。
<14> 前記カーボンブラックの含有量cと前記シリカの含有量sとの割合(c:s)が、質量基準で、76:24~85:15である<5>~<13>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体。
<15> <1>~<14>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体を含むタイヤ。
<16> コバルト原子の含有量が1質量%以下である<15>に記載のタイヤ。
<17> <1>~<14>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体を含むホース。
<18> <1>~<14>のいずれか1つに記載の加硫ゴム-金属複合体を含むクローラ。
本発明によれば、耐亀裂性、低発熱性及び加硫ゴムと金属との接着性に優れる加硫ゴム-金属複合体並びにそれを用いた耐久性に優れるタイヤ、ホース、及びクローラを提供することができる。
特許文献2のFigue 3aである。
以下に、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。なお、以下の説明において、数値範囲を示す「A~B」の記載は、端点であるA及びBを含む数値範囲を表し、「A以上B以下」(A<Bの場合)、又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を表す。
また、質量部及び質量%は、それぞれ、重量部及び重量%と同義である。
<加硫ゴム-金属複合体>
本発明の加硫ゴム-金属複合体は、金属と、金属を被覆する加硫ゴムとを備える加硫ゴム-金属複合体である。
ここで、加硫ゴムは、ゴム成分、カーボンブラック、及びシリカを含み、コバルト含有化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.01質量部以下であるゴム組成物の加硫ゴムである。
当該加硫ゴムを「本発明の加硫ゴム」と称することがある。
本発明の加硫ゴムの元となる前記ゴム組成物を「本発明のゴム組成物」と称することがある。なお、ゴム組成物は未加硫状態であり、ゴム組成物に含まれるゴム成分も未加硫状態である。
本発明の加硫ゴム-金属複合体において、金属は、スチールコード表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆された金属(三元めっき金属)である。
上記構成の加硫ゴムが上記構成の金属を被覆している加硫ゴム-金属複合体を、本発明の加硫ゴム-金属複合体、又は第1の実施形態に係る本発明の加硫ゴム-金属複合体と称する。
本発明の加硫ゴム-金属複合体が耐久性及び加硫ゴムと金属との接着性に優れる理由は定かではないが、スチールコード表面が、銅-亜鉛-鉄の三元めっき金属の被覆ゴムとして、上記構成の本発明のゴム組成物の加硫ゴムを用いることで、当該効果をなし得ることを見出した。
本発明の加硫ゴム-金属複合体は、第1の実施形態に係る本発明の加硫ゴム-金属複合体の要件を満たせば、特に制限されず、例えば、次のような第2の実施形態に係る加硫ゴム-金属複合体であってもよい。
第2の実施形態に係る本発明の加硫ゴム-金属複合体は、
金属と、前記金属を被覆する加硫ゴムとを備える加硫ゴム-金属複合体であって、
前記加硫ゴムは、ゴム成分、カーボンブラック、シリカ、加硫剤、及び加硫促進剤を含むゴム組成物の加硫ゴムであり、
前記カーボンブラックは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積が110~160m/gであり、遠心沈降法で得られた凝集体分布における最多頻度を示すストークス相当径Dstを含むピークの半値幅ΔD50が60nm以下であり、且つ、前記ΔD50と前記Dstとの比(ΔD50/Dst)が0.95以下であり、
前記シリカは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積が200m/g以上であり、
前記カーボンブラックと前記シリカとの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して30~80質量部であり、且つ、前記カーボンブラックと前記シリカの含有量の割合(カーボンブラックの含有量:シリカの含有量)が、60:40~85:15であり、
前記ゴム組成物中のコバルト含有化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.01質量部以下であるゴム組成物の加硫ゴムであり、
前記金属は、スチールコード表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆された金属である。
以下、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積を「CTAB吸着比表面積」又は単に「CTAB」と記載することがある。
ジブチルフタレート吸収量を「DBP吸収量」又は単に「DBP」と記載することがある。
圧縮ジブチルフタレート吸収量を「24M4DBP吸収量」又は単に「24M4DBP」と記載することがある。
以下、本発明のゴム組成物及び金属について説明する。
〔ゴム組成物〕
本発明のゴム組成物は、ゴム成分、カーボンブラック、及びシリカを含み、コバルト含有化合物の含有量が、ゴム成分100質量部に対して0.01質量部以下である。
本発明のゴム組成物は、更に、加硫剤、加硫促進剤、ステアリン酸、亜鉛華等を含んでいてもよい。
(ゴム成分)
ゴム成分は、特に限定はされない。例えば、天然ゴム(NR)及び合成ジエン系ゴムからなる群より選択される少なくとも一種のジエン系ゴムを含むことができる。
合成ジエン系ゴムとしては、例えば、イソプレン系ゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエン-イソプレンゴム(BIR)、スチレン-イソプレンゴム(SIR)、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム(SBIR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)等、及びそれらの変性ゴムが挙げられる。また、ゴム成分は、本発明の効果を損なわない限度において、非ジエン系ゴムを含んでいてもよい。
ゴム成分は1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
ゴム成分は、加硫ゴムの低発熱性を低下させることなく、耐亀裂性を向上する観点からは、ジエン系ゴムとして、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ブタジエンゴム、及び、イソブチレン-イソプレンゴムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、天然ゴム及びブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
さらに、ゴム成分は、加硫ゴムの低発熱性を低下させることなく、耐亀裂性を向上できる観点からは、少なくとも天然ゴムを含むことが好ましい。さらにまた、ゴム成分が天然ゴムを含有する場合、ゴム成分中の天然ゴムの含有割合は、加硫ゴムの耐摩耗性及び耐亀裂性をより向上する観点から、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。
なお、ゴム成分は、本発明の効果を損なわない限度において、非ジエン系ゴムを含むこともできる。
(充填剤)
本発明のゴム組成物は、加硫ゴムの機械的強度を向上する観点から、充填剤として、カーボンブラック及びシリカを含有する。
充填剤は、ゴム組成物を補強する補強性充填剤であり、カーボンブラック及びシリカ以外に、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;水酸化アルミニウム等を含んでいてもよい。
充填剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
[カーボンブラック]
カーボンブラックは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積が110~160m/gであることが好ましい。
カーボンブラックのCTAB吸着比表面積が110m/g以上であることで、加硫ゴムについて十分な耐摩耗性が得られ、160m/g以下であることで、加硫ゴムは、より低発熱性に優れる。
加硫ゴムの耐亀裂性をより向上する観点からは、カーボンブラックのCTAB吸着比表面積が、115m/g以上であることがより好ましく、120m/g以上であることが更に好ましい。また、加硫ゴムの低発熱性をより向上する観点からは、カーボンブラックのCTAB吸着比表面積が、157m/g以下であることがより好ましく、153m/g以下であることが更に好ましい。
なお、カーボンブラックのCTAB吸着比表面積は、JIS K 6217-3:2001年(比表面積の求め方-CTAB吸着法)に準拠した方法で測定することができる。
カーボンブラックは、加硫ゴムの耐亀裂性をより向上する観点から、遠心沈降法で得られた凝集体分布における最多頻度を示すストークス相当径Dstを含むピークの半値幅ΔD50が60nm以下であり、且つ、ΔD50とDstとの比(ΔD50/Dst)が0.95以下であることが好ましい。
遠心沈降法で得られた凝集体分布における最多頻度を示すストークス相当径Dstを含むピークの半値幅ΔD50を60nm以下とすることで、加硫ゴムの耐亀裂性の向上を図ることができる。ΔD50の下限値は特に制限されないが、加硫ゴム-金属複合体の製造性の観点からは、20nm以上であることが好ましい。
さらに、加硫ゴムの耐亀裂性と製造性との両立の観点からは、カーボンブラックのΔD50を、20~55nmとすることがより好ましく、25~50nmとすることが更に好ましい。
なお、半値幅ΔD50(nm)は、遠心沈降法で得られた凝集体分布曲線において、その頻度が最大である点の半分の高さのときの分布の幅である。ストークス相当径Dstは、JIS K6217-6記載の方法に従って遠心沈降法を用いて得られた凝集体分布の最多頻度を与える凝集体サイズのことであり、ストークス沈降径とも呼ばれる。このDstをカーボンブラック凝集体の平均径とする。また、本発明では、カーボンブラックの凝集体分布は、体積基準での凝集体分布を意味している。
更に、ΔD50とDstとの比(ΔD50/Dst)を0.95以下とすることで、加硫ゴムについて、優れた耐亀裂性を実現できる。ΔD50とDstとの比(ΔD50/Dst)の下限値については特に限定はされないが、加硫ゴムの低発熱性をより向上する観点からは、0.50以上であることが好ましい。また、加硫ゴムの耐亀裂性と低発熱性とのより高いレベルでの両立の観点からは、ΔD50/Dstは、0.50~0.90であることがより好ましく、0.55~0.87であることが更に好ましい。
また、カーボンブラックは、圧縮ジブチルフタレート吸収量(24M4DBP吸収量)が、80~110cm/100gであることが好ましい。
カーボンブラックの24M4DBP吸収量を、80cm/100g以上とすることで、ゴム補足力が強まり、加硫ゴムの耐摩耗性及び耐亀裂性を高めることができ、110cm/100g以下とすることで、加硫ゴムの発熱性が低くなり、またゴム組成物の粘度が低下して工場でのゴム組成物の加工性が良好となる。さらに、同様の観点から、カーボンブラックの24M4DBP吸収量は、80~105cm/100gであることがより好ましく、80~100cm/100gであることがさらに好ましい。
なお、カーボンブラックの24M4DBP吸収量(cm/100g)は、ISO 6894に準拠し、24,000psiの圧力で4回繰り返し圧力を加えた後、ジブチルフタレート吸収量(DBP吸収量)を測定した値である。この24M4DBP吸収量は、いわゆるファンデルワールス力により生じている変形及び破壊性の構造形態(2次ストラクチャー)によるDBP吸収量を排除し、非破壊性の真のストラクチャーの構造形態(1次ストラクチャー)に基づくDBP吸収量を求めるときに用いる、1次ストラクチャーを主体とするカーボンブラックの骨格的構造特定を評価する指標である。
カーボンブラックの種類は、特に制限されず、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等のカーボンブラックが挙げられ、市販品を用いてもよい。カーボンブラックの種類は、一種のみを用いてもよいし、二種類以上を用いてもよい。
カーボンブラックは、カーボンブラックの含有量c(質量)と、後述するシリカの含有量s(質量)との合計含有量dが、ゴム成分100質量部に対して30~80質量部であることが好ましい。
カーボンブラックとシリカとの合計含有量dが、ゴム成分100質量部に対して30質量部以上であることで、加硫ゴムの耐亀裂性がより向上し、80質量部以下であることで、加硫ゴムの低発熱性をより向上することができる。カーボンブラックとシリカとの合計含有量は、加硫ゴムの耐亀裂性向上の観点から、ゴム成分100質量部に対して40質量部以上であることがより好ましく、45質量部以上であることが更に好ましい。加えて、合計含有量dは、加硫ゴムの低発熱性を改善する観点から、ゴム成分100質量部に対して70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることが更に好ましい。
なお、カーボンブラック及びシリカの含有量については、それぞれ複数種のカーボンブラック及びシリカを用いる場合は、複数種の合計量を含有量とする。例えば、含有量c1のカーボンブラック1と含有量c2のカーボンブラック2との二種を含む場合は、カーボンブラックの含有量cは、c1+c2として計算される。
さらに、ゴム組成物中の、カーボンブラックの含有量cとシリカの含有量sとの割合(c:s)は、質量基準で60:40~85:15であることが好ましい。
この割合は、カーボンブラックの含有量cとシリカの含有量sとの合計含有量dに対する、カーボンブラックの含有割合〔(c/d)×100〕が60~85質量%であることを意味する。この合計含有量dに対するカーボンブラックの含有割合が、60質量%以上であることで、加硫ゴムの耐亀裂性をより向上することができ、85質量%以下であることで、加硫ゴムの低発熱性をより向上することができる。
同様の観点から、合計含有量dにおけるカーボンブラックの含有割合は、質量基準で、65~85質量%(シリカの含有割合が35~15質量%)であることがより好ましく、70~85質量%(シリカの含有割合が30~15質量%)であることが更に好ましく、76~85質量%(シリカの含有割合が24~15質量%)であることがより更に好ましい。
[シリカ]
シリカは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB吸着比表面積)が200m/g以上であることが好ましい。
シリカのCTAB吸着比表面積を200m/g以上とすることで、加硫ゴムの耐亀裂性をより高めることができる。
なお、シリカのCTAB吸着比表面積については、ASTM-D3765-80の方法に準拠した方法で測定することができる。
シリカのCTAB吸着比表面積は、より優れた耐亀裂性を有する加硫ゴムを得る観点から、210m/g以上であることが好ましく、220m/g以上であることがより好ましく、230m/g以上であることがさらに好ましい。
シリカのCTAB吸着比表面積の上限値は特に限定はされないが、現時点において、300m/gを超えるシリカを入手することはできない。
シリカは、BET法によって測定された比表面積(BET比表面積)が100~300m/gであることが好ましく、150~250m/gであることがより好ましい。シリカのBET比表面積を100~300m/gとすることで、シリカ同士の凝集を抑えるとともに、ゴムの補強性に要する表面積を確保することができ、加硫ゴムの低発熱性と耐亀裂性とをより高いレベルで両立できる。
なお、シリカのBET比表面積については、JISK 6430:2008年の方法に準拠して測定することができる。
シリカの種類は特に制限されず、例えば、湿式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。
中でも、シリカは、湿式シリカであることが好ましく、沈降シリカであることがより好ましい。これらのシリカは、ゴム組成物中での分散性が高く、加硫ゴムの低発熱性の改善を図り、且つ、耐亀裂性をより向上することができる。
なお、沈降シリカとは、製造初期に、反応溶液を比較的高温、中性~アルカリ性のpH領域で反応を進めてシリカ一次粒子を成長させ、その後酸性側へ制御することで、一次粒子を凝集させる結果得られるシリカのことである。
シリカは、市販品でもよく、例えば、ローディア社のZeosilPremium 200MP(商品名)として、入手することができる。
シリカは、一種のみ用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
ゴム組成物中のシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2~25質量部であることが好ましく、5~25質量部であることがより好ましく、5~14質量部であることがより好ましい。シリカの含有量が、ゴム成分100質量部に対して2質量部以上であれば、加硫ゴムの耐亀裂性をより向上でき、25質量部以下とすることで、ゴム組成物の加工性を損ねにくい。
[シランカップリング剤]
ゴム組成物はシリカを含有しているため、シリカ-ゴム成分間の結合を強化して補強性をさらに高めた上で、シリカのゴム組成物中の分散性を向上させるため、シランカップリング剤を含むこともできる。
ゴム組成物中のシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、5~15質量部以下であることが好ましい。シランカップリング剤の含有量がシリカ100質量部に対して15質量部以下であることで、シリカのゴム組成物中の分散性を改良する効果が得られるとともに、経済性も損ないにくい。また、シランカップリング剤の含有量が、シリカ100質量部に対して5質量部以上であることで、ゴム組成物中のシリカの分散性を高めることができる。
シランカップリング剤は、特に制限されない。例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールトリスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が好適に挙げられる。
(加硫剤)
ゴム組成物は、更に加硫剤を含むことが好ましい。
ゴム組成物中の加硫剤の含有量は、特に限定はされないが、ゴム成分100質量部に対して、3.0~7.0質量部であることが好ましい。加硫剤を、上記範囲で含有することによって、加硫ゴムと金属との密着性を低下させることなく、加硫ゴムの強度(耐亀裂性等)を高めることができるためである。
加硫剤の種類は、特に制限されず、例えば、硫黄等が挙げられる。
(加硫促進剤)
ゴム組成物は、更に加硫促進剤を含むことが好ましい。
ゴム組成物が加硫促進剤を含むことによって、ゴム組成物の加硫を促進させ、加硫ゴムの強度をより高めることができる。
加硫促進剤の種類は、特に限定はされず、グアニジン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の加硫促進剤が挙げられる。これらの加硫促進剤は、一種のみ用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
以上の中でも、加硫ゴムの強度をより高める観点から、スルフェンアミド系の加硫促進剤を用いることが好ましい。
スルフェンアミド系の加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-メチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-エチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-プロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘプチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-2-エチルヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-デシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジメチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジエチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘプチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジオクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジ-2-エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。
これらの中でも、加硫促進剤は、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを少なくとも含むことがより好ましい。
ゴム組成物中の加硫促進剤の含有量は、加硫ゴムの低発熱性と耐亀裂性とをさらに向上する観点から、ゴム成分100質量部に対して、0.8質量部以上が好ましく、0.9質量部以上がより好ましく、また、3質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましく、2.3質量部以下であることがさらに好ましい。
(各種成分)
ゴム組成物は、その他の成分を、発明の効果を損なわない程度に含むことができる。
その他の成分としては、例えば、軟化剤、ステアリン酸、老化防止剤、亜鉛華、樹脂、ワックス、オイル等の、ゴム工業界で通常使用されている添加剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜含むことができる。
[老化防止剤]
その他成分のうち、老化防止剤としては、特に限定されず、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられる。
アミン系老化防止剤としては、例えば、フェニレンジアミン骨格(-NH-Ph-NH-)を有するフェニレンジアミン系老化防止剤等が挙げられる。
具体的には例えば、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、 N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン 、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン 、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N-4-メチル-2-ペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジアリール-p-フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール-p-フェニレンジアミン、フェニルヘキシル-p-フェニレンジアミン、フェニルオクチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
中でも、フェニレンジアミン部分(-NH-Ph-NH-)以外には二重結合を有しないことが好ましく、具体的には、下記式(1)(R-NH-Ph-NH-R)で表されるアミン系老化防止剤が好ましい。
Figure 2023077085000001
上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して一価の飽和炭化水素基である。
とRは、同一であっても異なっていてもよいが、合成上の観点から、同一であることが好ましい。
前記一価の飽和炭化水素基の炭素数は、1~20が好ましく、3~10が更に好ましく、6及び7が特に好ましい。飽和炭化水素基の炭素数が20以下であると、単位質量当たりのモル数が大きくなるため、老化防止効果が大きくなり、ゴム組成物の加硫ゴムの耐オゾン性が向上する。
上記式(1)中のR及びRは、ゴム組成物の加硫ゴムの耐オゾン性を更に向上させる観点から、それぞれ独立して炭素数1~20の鎖状又は環状の一価の飽和炭化水素基であることが好ましい。
前記一価の飽和炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基が挙げられ、アルキル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよく、また、シクロアルキル基には、置換基として更にアルキル基等が結合していてもよい。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,4-ジメチルペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基等が挙げられ、これらの中でも、1,4-ジメチルペンチル基が好ましい。
前記シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられ、これらの中でも、シクロヘキシル基が好ましい。
なお、式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、任意の担体に担持されていてもよい。例えば、式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、シリカ、炭酸カルシウム等の無機充填剤に担持されていてもよい。
また、式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、ゴム成分とともにマスターバッチを構成してもよい。ここで、マスターバッチとする際に用いるゴム成分は、特に限定されるものではなく、天然ゴム(NR)等のジエン系ゴムでもよいし、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等であってもよい。
また、式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、有機酸との塩としてもよい。ここで、塩とする際に用いる有機酸としては、特に限定されるものではないが、ステアリン酸等が挙げられる。
また、キノリン系老化防止剤も好適に用いることができ、キノリン系老化防止剤としては、例えば、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等が挙げられる。
以上の老化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
老化防止剤は、以上の中でも、アミン系老化防止剤及びキノリン系老化防止剤からなる群より選択される1つ以上を含むことが好ましく、アミン系老化防止剤を少なくとも含むことがより好ましい。
[亜鉛華]
その他成分のうち、亜鉛華(ZnO)については、加硫促進助剤として用いられる。
ゴム組成物が亜鉛華をさらに含むことによって、ゴム組成物の加硫を促進させ、加硫ゴムの強度をより高めることができる。
ここで、ゴム組成物中の亜鉛華の含有量は特に限定はされないが、加硫ゴムの低発熱性と耐亀裂性とをさらに向上する観点から、ゴム成分100質量部に対して、4~12質量部であることが好ましく、6~10質量部であることがより好ましい。
[コバルト含有化合物]
本発明では、ゴム組成物中のコバルト含有化合物の含有量が、ゴム成分100質量部に対して0.01質量部以下である。これは、本発明のゴム組成物が、コバルト含有化合物を実質的に含まないことを意味する。環境への負荷を低減し、各種規制へ対応するためである。
同様の観点から、ゴム組成物中のコバルト含有化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.00質量部、すなわち、ゴム組成物がコバルト含有化合物を含まない(コバルトフリーである)ことが好ましい。
コバルト含有化合物は、有機酸コバルト塩、コバルト金属錯体等が挙げられる。
有機酸コバルト塩としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ロジン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、トール油酸コバルト、オレイン酸コバルト、リノール酸コバルト、リノレン酸コバルト、パルミチン酸コバルト等を挙げることができる。また、コバルト金属錯体としては、例えばコバルトアセチルアセトナートが挙げられる。
(ゴム組成物の調製)
ゴム組成物の調製方法は、特に限定されない。
本発明のゴム組成物は、上述した各成分を配合して、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を使用して混練りすることによって製造することができる。
ここで、各成分の配合量は、ゴム組成物中の含有量として既述した量と同じである。
各成分の混練は、全一段階で行ってもよく、二段階以上に分けて行ってもよい。例えば二段階で混練する場合、混練の第一段階の最高温度は、130~160℃とすることが好ましく、第二段階の最高温度は、90~120℃とすることが好ましい。
〔金属〕
本発明のゴム-金属複合体に含まれる金属は、スチールコード表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆された金属(三元めっき金属)である。
スチールコードは、スチール製のモノフィラメント及びマルチフィラメント(撚りコード又は引き揃えられた束コード)のいずれでもよく、その形状は制限されない。スチールコードが撚りコードである場合の撚り構造についても特に制限はなく、単撚り、複撚り、層撚り、複撚りと層撚りの複合撚りなどの撚り構造が挙げられる。
スチールコードが銅、亜鉛、及び鉄の三元系のめっき層を有することで、めっき層を構成する成分が、ゴムとスチールコードとの間の接着性を高める役目を果たすことができるため、ゴム組成物中のコバルト化合物の含有量が、少ない場合(ゴム成分100質量部に対して0.01質量部以下)であっても、高い接着性を実現できる。
スチールコードは、ゴム組成物との接着性を好適に確保する観点から、更に、接着剤処理などの表面処理がなされていてもよい。接着剤処理を使用する場合は例えばロード社製、商品名「ケムロック」(登録商標)などの接着剤処理が好ましい。
また、例えば、表面のN原子が2原子%以上60原子%以下であって、かつ、表面のCu/Zn比が1以上4以下であるスチールフィラメントを使用することができる。また、金属フィラメント1としては、フィラメント半径方向内方にフィラメント最表層5nmまでの酸化物として含まれるリンの量が、C量を除いた全体量の割合で、7.0原子%以下である場合が挙げられる。
本発明のゴム-金属複合体に含まれる金属は、スチールコード表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆された金属(三元めっき金属)である。より具体的には、金属は、上記の1つ以上のスチールフィラメントを含むスチールコードにおいて、前記フィラメントは、スチールフィラメント基材と、前記スチールフィラメント基材を部分的または全体的に被覆する被覆(めっき層)とを含み、前記被覆は、銅および亜鉛からなる黄銅を含み、前記被覆は、鉄で強化されており、前記鉄が前記黄銅中に粒子として存在し、前記粒子は、10~10000ナノメートルのサイズを有することを特徴とするスチールコードであることがより好ましい。前記粒子は、20~5000ナノメートルのサイズを有することが、更に好ましい。「鉄で強化された」とは、鉄がフィラメント状鋼基材に由来しないことを意味する。
ここで、前記の黄銅は、銅と亜鉛とからなり、少なくとも63質量%の銅を含み、残りが亜鉛であることが好ましく、65質量%以上の銅を含むことがより好ましく、67質量%以上の銅を含むことが更に好ましい。
また、前記被覆(めっき層)中の鉄の量が、黄銅と鉄の総質量と比較して質量で1%以上であり、質量で10%未満であることが好ましく、前記被覆中の鉄の量が、黄銅と鉄の総質量と比較して質量で3%以上であり、質量で9%未満であることが、より好ましい。
前記被覆は、実質的に亜鉛鉄合金を含まないことを特徴とするスチールコードが更に好ましい。
上記の1つ以上のスチールフィラメントを含むスチールコードにおいて、前記フィラメントの表面に存在するリンの量、換言すると、前記被覆(めっき層)中のリンの量がPであり、前記フィラメントの表面に存在する鉄の量、換言すると、前記被覆(めっき層)中の鉄の量がFeであり、(P+Fe)の量は、以下の方法(a)~(e)に従って、リンおよび鉄を溶解する弱酸でフィラメントの表面を穏やかにエッチングすることによって決定される。
(a)約5グラムのスチールコードを秤量し、約5cmの断片に切断し、試験管に導入する。
(b)0.01モル塩酸HClを10ml加える。
(c)試料を酸溶液で15秒間振盪する。
(d)ICP-OESにより、溶液中に存在する量を測定する。
ここで、ICP-OESとは、誘導結合プラズマ-10mLストリッピング溶液のマトリックス中の(0;0;0)、(2;0.02;1)、(5;0.1;2)、(10;0.5;5) mg/Lの(Cu;Fe;Zn)の標準溶液を全て使用する光学発光分光法(ICP-OES)をいう。
(e)フィラメント鋼の表面積の単位当たりの(P+Fe)の質量をミリグラム毎平方メートル(mg/m)で表した結果を示す。その結果を(Fe+P)と呼ぶ場合がある。
フィラメントの表面に存在するリンの量、換言すると、前記被覆(めっき層)中のリンの量は4mg/m以下であるが、ゼロより大きいことが、接着性を高める上で好ましい。即ち、0<P≦4mg/mである。リンの量(P)は4mg/mより少ないこと(P<4mg/m)がより好ましい。
より多量のリンP量は、接着層の成長を低下させる。リンP量は、3mg/mより低くても良いし、1.5mg/mより低くても更に良い。
さらに好ましい実施形態では、フィラメントの表面に存在する鉄の量が30mg/m以上であることが好ましく、35mg/mを超える鉄が表面に存在する場合がより好ましく、40mg/mを超える鉄が表面に存在する場合が更により好ましい。
また、フィラメントの表面に存在する鉄の量と、フィラメントの表面に存在するリンの量との質量比(Fe/P)は、27より大きいことが好ましい。
前記フィラメント表面被覆質量SCWが、表面積の単位当たり前記被覆中に存在する黄銅と鉄の質量の合計であり、前記被覆質量が平方メートル当たりのグラム数で表され、前記質量比[Fe/(SCW×P)]が13より大きいことが好ましい。
前記鉄が前記黄銅中に粒子として存在するスチールフィラメントを得る方法としては、鉄粒子で強化された黄銅被覆を有する中間ワイヤを、引き続いて潤滑剤中のより小さなダイスを通してワイヤを湿式ワイヤ引抜くことによって最終直径0.28mmまで引出して、スチールフィラメントを得ればよい。
潤滑剤は、一般に有機化合物中にリンを含む高圧添加剤を含有する。
ここで、用いるダイスとして、少なくともヘッドダイは焼結ダイヤモンドダイであり、残りのダイはタングステンカーバイドダイである、Set-Dダイスを用いればよい。スチールコードは、ダイヤモンドダイスにより伸線加工されていることが好ましい。
本発明のゴム組成物は、金属を被覆して一定期間が経過する場合でも金属腐食を抑制することができるため、例えば金属コードをゴム組成物で被覆した状態で製品を流通させ、流通先で加硫して加硫ゴム-金属複合体を製造することができる。また、そのようにして製造された加硫ゴム-金属複合体は、金属の腐食が抑制されているため、加硫ゴム-金属接着性が損なわれにくく、耐久性にも優れる。
ゴム組成物によるスチールコードの被覆方法としては、例えば以下に示す方法を用いることができる。
三元めっきされた所定の本数のスチールコードを所定の間隔で平行に並べ、このスチールコードを上下両側から、本発明のゴム組成物からなる厚さ0.5mm程度の未架橋ゴムシートでコーティングして前駆体を得る。得られた前駆体(未加硫ゴム-金属複合体)を加硫する。加硫条件は、例えば160℃程度の温度で、20分間程度;または、145℃程度の温度で、40分間程度とすることができる。
このようにして得られた加硫ゴムとスチールコードとの複合体は、優れた加硫ゴム-金属接着性を有する。
接着性に優れる本発明の加硫ゴム-金属複合体は、各種自動車用タイヤ、クローラ、ホースなど、特に強度が要求されるゴム物品に用いられる補強材として好適に用いられる。特に、各種自動車用ラジアルタイヤのベルト、カーカスプライ、ワイヤーチェーファーなどの補強部材として好適に用いられる。
<タイヤ>
本発明のタイヤは、本発明の加硫ゴム-金属複合体を含む。
本発明のタイヤは、本発明の加硫ゴム-金属複合体を含むことから、耐亀裂性と低発熱性に優れる。
本発明のタイヤの製造方法は、タイヤ内に、本発明の加硫ゴム-金属複合体が含まれるように製造し得る方法であれば、特に限定されない。
一般に、各種成分を含有させたゴム組成物が未加硫の段階で各部材に加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが製造される。例えば、本発明のゴム組成物を混練の上、得られたゴム組成物で、三元めっきされたスチールコードをゴム引きして未加硫のベルト層、未加硫のカーカス、及び他の未加硫部材を積層し、未加硫積層体を加硫することでタイヤが得られる。
タイヤに充填する気体としては、通常の空気、酸素分圧を調整した空気等の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いてもよい。
本発明のタイヤは、コバルト原子の含有量が1質量%以下であることが好ましい。タイヤ中のコバルト原子の含有量は、タイヤ製造に用いるゴム組成物がコバルト含有化合物を含まず、加硫ゴム-金属複合体の金属がコバルトを含まなければ、0質量%であるといえる。タイヤ中のコバルト原子の含有量は、例えば、タイヤを構成する各部材の元素量を測定する方法で測定することができる。
<クローラ、ホース>
本発明のクローラ、及びホースは、本発明の加硫ゴム-金属複合体を含む。
本発明の加硫ゴム-金属複合体を含む化工品は、本発明の加硫ゴム-金属複合体を含むことから、耐亀裂性と低発熱性に優れる。
化工品としては、加硫ゴム-金属複合体を含むタイヤ以外の化工品用ゴム物品が挙げられ、具体的には、クローラ、ホース等の強度が要求されるゴム物品が挙げられる。
<実施例1及び比較例1~6>
〔ゴム組成物の調製〕
(比較例3~5)
表1及び2に示す配合組成にて、各成分を混練し、ゴム組成物を調製した。表1に示す成分の詳細は次のとおりである。
なお、カーボンブラックの詳細は、表1中に示した。また、各成分の含有量は、ゴム成分(天然ゴム)100質量部に対する含有量(質量部)である。
(実施例1並びに比較例1、2、及び6)
表1及び2に示す配合組成にて、各成分を混練し、ゴム組成物を調製する。表1に示す成分の詳細は次のとおりである。
なお、カーボンブラックの詳細は、表1中に示した。また、各成分の含有量は、ゴム成分(天然ゴム)100質量部に対する含有量(質量部)である。
天然ゴム:RSS#1
シリカ:シリカは、後述する製造方法により製造したCTAB吸着比表面積=230m/g、BET比表面積=236m/gのシリカである
ステアリン酸:新日本理化株式会社製、商品名「ステアリン酸50S」
老化防止剤6C:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック 6C」
亜鉛華:ハクスイテック株式会社製、商品名「3号亜鉛華」
加硫促進剤CBS:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーCZ-G」
加硫剤:硫黄、鶴見化学株式会社製、商品名「粉末硫黄」
Figure 2023077085000002
(シリカの製造方法)
10g/Lの濃度を有する珪酸ナトリウム溶液(SiO/NaO質量比が3.5)の12Lを25Lのステンレス鋼製反応器に導入した。この溶液を80℃に加熱した。全反応をこの温度で実施した。80g/Lの濃度を有する硫酸をpHが8.9の値に達するまで撹拌しながら(300rpm、プロペラ攪拌機)導入した。
230g/Lの濃度を有する珪酸ナトリウム溶液(SiO/NaO質量比が3.5)を76g/分の速度で、及び80g/Lの濃度を有する硫酸を反応混合物のpHを8.9の値に維持するように設定された速度で該反応器に15分にわたって同時に導入した。その後、凝集した粒子のゾルが得られた。このゾルを回収し、そして冷水が循環している銅コイルを使用して急速に冷却した。反応器を迅速に清浄にした。
4Lの純水をこの25L反応器に導入した。80g/Lの濃度を有する硫酸をpHが4の値に達するまで導入した。195g/分の流量での冷却ゾル及びpHを4に設定するのを可能にする流量での硫酸(80g/Lの濃度を有する)の同時添加を40分にわたって実施した。10分間続く熟成工程を実施した。
同時ゾル/硫酸添加の40分後には、20分間にわたる76g/分の流量での珪酸ナトリウム(第1の同時添加の場合と同一の珪酸ナトリウム)及び反応混合物のpHが4となるように維持するように設定された流量での硫酸(80g/L)の同時添加があった。20分後に、酸の流れをpHが8となったときに停止させた。
新たな同時添加を60分にわたって76g/分の珪酸ナトリウム流量で(第1の同時添加の場合と同一の珪酸ナトリウム)及び反応混合物のpHを8の値に維持するように設定された硫酸(80g/Lの濃度を有する)の流量で実施した。撹拌速度を混合物が非常に粘稠になったときに増加させた。
この同時添加後に、反応混合物を80g/Lの濃度を有する硫酸によって5分間にわたって4のpHにした。混合物を10分にわたってpH4で熟成させた。スラリーを減圧下で濾過及び洗浄し(15%のケーク固形分)、希釈後、得られたケークを機械的に砕解した。得られたスラリーをタービン噴霧乾燥機によって噴霧乾燥させ、サンプルのシリカを得た。
(カーボンブラックの物性)
表1に示すカーボンブラックの諸物性は、以下の方法にて求めた。
(i)圧縮ジブチルフタレート吸収量(24M4DBP)
24M4DBP吸収量(cm/100g)は、ISO 6894に準拠して測定した。
(ii)CTAB吸着比表面積
CTAB吸着比表面積(m/g)は、JIS K 6217-3:2001(比表面積の求め方-CTAB吸着法)に準拠した方法で測定した。
(iii)凝集体分布(遠心沈降法)
測定装置としては、Disk Centrifuge Photosedimentometer(DCP)「BI-DCP Particle sizer」(Brookhaven社製)を用いた。また、以下のとおり、ISO/CD 15825-3に準拠して測定した。
若干の界面活性剤を加えた25容量%エタノール水溶液中に、0.05~0.1質量%のカーボンブラックを加え、超音波処理(1/2インチ発振チップ、出力50W)を施して完全に分散させて分散液とした。沈殿液(スピン液)として蒸留水17.5mLを注加した回転ディスクの回転数を8,000rpmとし、上記分散液0.02~0.03mLを注加した。上記分散液の注加と同時に記録計を作動させ、回転ディスクの外周近傍の一定点を沈降により通過するカーボンブラック凝集体量を光学的に測定し、その吸光度(頻度)を時間に対する連続曲線として記録した。沈降時間を下記のストークスの一般式(A)によってストークス相当径dに換算し、凝集体のストークス相当径とその頻度との対応曲線を得た。
d=K/√t (A)
上記式(A)において、dは沈殿開始t分後における回転ディスクの光学測定点を通過するカーボンブラック凝集体のストークス相当径(nm)である。定数Kは、測定時におけるスピン液の温度、粘度、カーボンブラックとの密度差(カーボンブラックの真密度を1.86g/cmとする)、及び回転ディスクの回転数により決定される値である。本実施例及び比較例では、スピン液として蒸留水17.5mLを用い、測定温度23.5℃、ディスク回転数8,000rpmとしたため、定数Kは261.75となった。この測定結果から、ストークス径Dst(nm)、半値幅ΔD50(nm)、及び比(ΔD50/Dst)を得た。
なお、ストークス径Dst及び半値幅ΔD50の定義は以下のとおりである。
ストークス径Dst:上記の凝集体のストークス相当径とその頻度との対応曲線において、最多頻度を示すストークス相当径のことをいう。
半値幅ΔD50:上記の凝集体のストークス相当径dとその頻度との対応曲線において、その頻度が最大点の半分の高さのときの分布の幅のことをいう。
〔加硫ゴム-金属複合体の作製〕
(実施例1、比較例1~2)
表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆され、鉄を1質量%程度含むスチールコードを金属として用いることができる。この三元めっきスチールコードは、Set-Dダイスを用いて得られ、より詳細には、国際公開第2020/156967号明細書の段落番号[0065]~[0070]に記載の手法で製造される。
当該三元めっきスチールコードを、調製したゴム組成物で被覆して、未加硫ゴム-金属複合体(未加硫スチールコードトッピング反)を作製する。
未加硫ゴム-金属複合体を加硫して、加硫ゴム-金属複合体を作製する。
三元めっきスチールコードの被覆(めっき層)中の鉄の量Feとリンの量がPは、チールコードのフィラメントの表面を塩酸で穏やかにエッチングすることによって決定される。具体的には、下記(a)~(d)の手順に従い測定する。
(a)5グラムのスチールコードを秤量し、5cmの断片に切断し、試験管に導入する。
(b)試験管に0.01モル塩酸HClを10ml加える。
(c)試料を15秒間振盪する。
(d)ICP-OESにより、塩酸溶液中に存在する量を測定する。
ここで、ICP-OESとは、誘導結合プラズマ-10mLストリッピング溶液のマトリックス中の(0;0;0)、(2;0.02;1)、(5;0.1;2)、(10;0.5;5) mg/Lの(Cu;Fe;Zn)の標準溶液を全て使用する光学発光分光法(ICP-OES)をいう。
三元めっきスチールコードの被覆(めっき層)中の鉄の量Feは32.2mg/m、リンの量がPは1.5mg/mである。
(比較例3~5)
表面が、ブラスめっき(銅-亜鉛めっき)で被覆されたスチールコードを金属として用いた。
当該ブラスめっきスチールコードを、調製したゴム組成物で被覆して、未加硫ゴム-金属複合体(未加硫スチールコードトッピング反)を作製した。
未加硫ゴム-金属複合体を加硫して、加硫ゴム-金属複合体を作製した。
(比較例6)
表面が、ブラスめっき(銅-亜鉛めっき)で被覆されたスチールコードを金属として用いる。
当該ブラスめっきスチールコードを、調製したゴム組成物で被覆して、未加硫ゴム-金属複合体(未加硫スチールコードトッピング反)を作製する。
未加硫ゴム-金属複合体を加硫して、加硫ゴム-金属複合体を作製する。
<評価>
1.接着性
(1)初期接着
通常の加硫条件(TC90となる時間プラス5分)の1/2の加硫時間で加硫を行った際の加硫ゴム-金属複合体からスチールコードを引き抜く。スチールコードに付着している加硫ゴムの被覆状態を、目視観察にて観察し、比較例2のスチールコードに付着している加硫ゴムの被覆量を100とした場合の、各比較例及び実施例の加硫ゴムの被覆量を指数表示する。結果を表2に示す。許容範囲は100以上である。
なお、TC90とは、特定のゴムが加硫温度でのレオメーター曲線で最大トルクの90%に達する時間を意味する。
(2)湿熱劣化
加硫直後の加硫ゴム-金属複合体を、120℃で2日間蒸気環境下に保管し、保管後の加硫ゴム-金属複合体からスチールコードを引き抜く。スチールコードに付着している加硫ゴムの被覆状態を、目視観察にて観察し、比較例2のスチールコードに付着している加硫ゴムの被覆量を100とした場合の、各比較例及び実施例の加硫ゴムの被覆量を指数表示する。結果を表2に示す。許容範囲は120以上である。
2.耐亀裂性
実施例及び比較例のゴム組成物を160℃で15分間加硫して得られる加硫ゴムを100℃の空気雰囲気下で24時間劣化させる。その後、加硫ゴムをダンベル状に打ち抜いて試験片とする。中心部に1mmの予亀裂を入れた試験片を疲労試験機にて、80℃、チャック間距離20mm、一定応力の条件で、5Hzのストロークを与え、試験片が完全に破断するまでの回数を測定する。
評価については、比較例1の加硫ゴム試験片が破断するまでの回数を100としたときの実施例の加硫ゴム試験片が破断するまでの回数を指数表示する。結果を表2に示す。この指数値が大きいほど寿命が長く、加硫ゴムが耐亀裂性に優れていることを示す。許容範囲は100以上である。
3.低発熱性
実施例及び比較例のゴム組成物を160℃で15分間加硫して得られる加硫ゴム試験片に対し、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、温度60℃、歪5%、周波数15Hzでtanδを測定する。
評価については、比較例1の加硫ゴム試験片のtanδを100として、下記式にて実施例の加硫ゴム試験片のtanδを指数表示する。結果を表2に示す。指数値が小さいほど、ヒステリシスロスが小さく、低発熱性が良好であることを示す。許容範囲は100未満である。
発熱性指数={(各試験片のtanδ)/(比較例1の試験片のtanδ)}×100
Figure 2023077085000003
表2中、「スチールコード種」欄のAは、スチールコード表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆されていることを意味し、Bは、スチールコード表面が、ブラスめっき(銅-亜鉛めっき)で被覆されていることを意味する。
実施例1の加硫ゴム-金属複合体は、比較例1~6の加硫ゴム-金属複合体に比べ、耐亀裂性、低発熱性及び接着性について、バランス良く優れた効果を示すことがわかる。
特許文献2(国際公開第2020/156967号)の実施例では、図1(特許文献2のFig.3a)に示されるように、三元めっきによる被覆中の鉄の量が増加するに伴い、加硫ゴム-金属接着性が低下している。これに対し、実施例1による加硫ゴム-金属複合体は、加硫ゴム-金属接着性を向上することができるため、被覆中の鉄の量の増減に関わらず、一定水準以上の加硫ゴム-金属接着性を達成することができる。
なお、図1中、横軸の「1-W」等は特許文献2の段落番号[0075]の表IIに示される試料を指し、番号が大きいほど被覆中の鉄の量が大きい。また、縦軸のZ-Scoreは接着性の優劣を示し、数値が大きいほど、加硫ゴム-金属接着性が優れることを意味する。
本発明によれば、加硫ゴム-金属接着性、耐亀裂性及び低発熱性に優れる加硫ゴム-金属複合体を提供することができる。この加硫ゴム-金属複合体は、各種自動車用タイヤ、クローラ、ホースなど、特に強度が要求されるゴム物品に用いられる補強材として好適に用いられる。中でも、各種自動車用ラジアルタイヤのベルト、カーカスプライ、ワイヤーチェーファーなどの補強部材として好適に用いられる。

Claims (18)

  1. 金属と、前記金属を被覆する加硫ゴムとを備える加硫ゴム-金属複合体であって、
    前記加硫ゴムは、ゴム成分、カーボンブラック、及びシリカを含み、コバルト含有化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.01質量部以下であるゴム組成物の加硫ゴムであり、
    前記金属は、スチールコード表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆された金属である加硫ゴム-金属複合体。
  2. 前記被覆中の前記鉄の量が、前記銅、前記亜鉛及び前記鉄の総質量の1質量%以上10質量%未満である請求項1に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  3. 前記被覆中のリンの量が、0mg/mを超え4mg/m以下である請求項1又は2に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  4. 前記スチールコードは、ダイヤモンドダイスにより伸線加工されている請求項1~3のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  5. 前記カーボンブラックの含有量cと前記シリカの含有量sとの割合(c:s)が、質量基準で60:40~85:15である請求項1~4のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  6. 前記カーボンブラックは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積が110~160m/gである請求項1~5のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  7. 前記カーボンブラックは、遠心沈降法で得られた凝集体分布における最多頻度を示すストークス相当径Dstを含むピークの半値幅ΔD50が60nm以下であり、且つ、前記ΔD50と前記Dstとの比(ΔD50/Dst)が0.95以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  8. 前記シリカは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積が200m/g以上である請求項1~7のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  9. 前記カーボンブラックと前記シリカとの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して30~80質量部である請求項1~8のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  10. 前記ゴム組成物が、加硫剤及び加硫促進剤を含む請求項1~9のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  11. 前記カーボンブラックの圧縮ジブチルフタレート吸収量が、80~110cm/100gである請求項1~10のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  12. 前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5~25質量部である請求項1~11のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  13. 前記ゴム組成物中のコバルト含有化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.00質量部である請求項1~12のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  14. 前記カーボンブラックの含有量cと前記シリカの含有量sとの割合(c:s)が、質量基準で、76:24~85:15である請求項5~13のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体。
  15. 請求項1~14のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体を含むタイヤ。
  16. コバルト原子の含有量が1質量%以下である請求項15に記載のタイヤ。
  17. 請求項1~14のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体を含むホース。
  18. 請求項1~14のいずれか1項に記載の加硫ゴム-金属複合体を含むクローラ。
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