JP2023056771A - 産業チューブおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性および柔軟性に十分に優れた産業チューブを提供すること。【解決手段】炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位、および炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位を含有し、融点が240℃以上で、曲げ弾性率が100~1,300MPaであるポリアミドを含む産業チューブ。【選択図】なし
Description
本発明は、耐熱性および柔軟性に優れた産業チューブおよびその製造方法に関するものである。
ナイロン6、ナイロン66などに代表される結晶性ポリアミドは、その優れた特性と溶融成形の容易さから、衣料用、産業資材用繊維、あるいは汎用のエンジニアリングプラスチックとして広く用いられているが、高温下での酸化劣化などの問題点も指摘されており、より耐熱性に優れた柔軟性ポリアミドの要求が高まっている。
従来の産業チューブは、金属製であったが、重量を軽減するために、樹脂化が進行している。樹脂化で使用される樹脂としては、液体または気体の透過抑制、および優れた機械的性質の観点から、脂肪族系のPA11,12などが広く用いられているが、融点が200℃以下であるため耐熱性不足などの問題点が指摘されている(特許文献1)。
一方で、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を含む半芳香族ポリアミドは一般に脂肪族ポリアミドよりも耐熱性に優れることが知られている。半芳香族ポリアミドは一般的に脂肪族ポリアミドよりも剛直であるため、チューブとして使用する際にはエラストマーなどの柔軟性付与材とのアロイにより柔軟性を付与することが提案されている。しかしながら、半芳香族ポリアミドを使用する場合、柔軟性を向上させるためにはエラストマーなどの柔軟性付与材をより多く使用しなければならず、その場合柔軟性と耐熱性の両立が難しいとされている(特許文献2)。例えば、柔軟性付与材を含む産業チューブは、高温環境下において、柔軟性付与材が表面に滲出するブリードアウトが起こり、表面性に劣った。
本発明の発明者等は、従来のポリアミドを用いた場合、耐熱性および柔軟性のいずれにも十分に優れた産業チューブを得ることができない、という新たな問題を見出した。耐熱性について、詳しくは、仮に融点が比較的高くても、加熱により引張強度が低下する引張強度保持率の問題が生じた。
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、耐熱性および柔軟性に十分に優れた産業チューブを提供することを目的とする。
本発明はまた、耐熱性および柔軟性だけでなく、ゴム弾性、機械的特性および表面性にも十分に優れた産業チューブを提供することを目的とする。
本発明者らは、特定のポリアミドを含むことにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
<1> 炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位、および炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位を含有し、融点が240℃以上で、曲げ弾性率が100~1,300MPaであるポリアミドを含む産業チューブ。
<2> 前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)がダイマー酸である、<1>に記載の産業チューブ。
<3> 前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)がダイマージアミンである、<1>または<2>に記載の産業チューブ。
<4> 前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)がテレフタル酸である、<1>~<3>いずれかに記載の産業チューブ。
<5> 前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)が1,10-デカンジアミンである、<1>~<4>いずれかに記載の産業チューブ。
<6> 前記ポリアミドにおける炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の合計の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、15~70質量%である、<1>~<5>いずれかに記載の産業チューブ。
<7> 前記ポリアミドの結晶融解エンタルピーが20J/g以上である、<1>~<6>いずれかに記載の産業チューブ。
<8> 前記ポリアミドの引張試験における伸長回復率が20%以上である、<1>~<7>いずれかに記載の産業チューブ。
<9> 前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)の炭素数が20~40であり、
前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)の炭素数が20~40であり、
前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)の炭素数が4~12であり、
前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)の炭素数が4~12である、<1>~<8>いずれかに記載の産業チューブ。
<10> 前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、2~40質量%であり、
前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、5~45質量%であり、
前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、10~50質量%であり、
前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、10~50質量%である、<1>~<9>いずれかに記載の産業チューブ。
<11> 前記産業チューブは、前記ポリアミドを含む単層チューブであるか、または前記ポリアミドを含む層を有する多層チューブである、<1>~<10>いずれかに記載の産業チューブ。
<12> 前記産業チューブが、空気チューブ、油圧チューブ、ペイントスプレーチューブ、高圧チューブ、自動車配管用チューブ、冷却配管用チューブまたは医療用チューブである、<1>~<11>いずれかに記載の産業チューブ。
<13> 前記産業チューブの外径が3.0mm~20mm、肉厚が0.5mm~3.0mmである、<1>~<12>いずれかに記載の産業チューブ。
<14> 以下の一括重合法または分割重合法により重合を行い、ポリアミドを得ることを含む、産業チューブの製造方法:
炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)および炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)をまとめて反応させて重合する一括重合法;または
炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)とを、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)および炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)とは別に反応させて重合する分割重合法。
<15> 前記ポリアミドが<1>~<13>いずれかに記載の産業チューブに含まれるポリアミドである、<14>に記載の産業チューブの製造方法。
<1> 炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位、および炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位を含有し、融点が240℃以上で、曲げ弾性率が100~1,300MPaであるポリアミドを含む産業チューブ。
<2> 前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)がダイマー酸である、<1>に記載の産業チューブ。
<3> 前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)がダイマージアミンである、<1>または<2>に記載の産業チューブ。
<4> 前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)がテレフタル酸である、<1>~<3>いずれかに記載の産業チューブ。
<5> 前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)が1,10-デカンジアミンである、<1>~<4>いずれかに記載の産業チューブ。
<6> 前記ポリアミドにおける炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の合計の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、15~70質量%である、<1>~<5>いずれかに記載の産業チューブ。
<7> 前記ポリアミドの結晶融解エンタルピーが20J/g以上である、<1>~<6>いずれかに記載の産業チューブ。
<8> 前記ポリアミドの引張試験における伸長回復率が20%以上である、<1>~<7>いずれかに記載の産業チューブ。
<9> 前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)の炭素数が20~40であり、
前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)の炭素数が20~40であり、
前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)の炭素数が4~12であり、
前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)の炭素数が4~12である、<1>~<8>いずれかに記載の産業チューブ。
<10> 前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、2~40質量%であり、
前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、5~45質量%であり、
前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、10~50質量%であり、
前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、10~50質量%である、<1>~<9>いずれかに記載の産業チューブ。
<11> 前記産業チューブは、前記ポリアミドを含む単層チューブであるか、または前記ポリアミドを含む層を有する多層チューブである、<1>~<10>いずれかに記載の産業チューブ。
<12> 前記産業チューブが、空気チューブ、油圧チューブ、ペイントスプレーチューブ、高圧チューブ、自動車配管用チューブ、冷却配管用チューブまたは医療用チューブである、<1>~<11>いずれかに記載の産業チューブ。
<13> 前記産業チューブの外径が3.0mm~20mm、肉厚が0.5mm~3.0mmである、<1>~<12>いずれかに記載の産業チューブ。
<14> 以下の一括重合法または分割重合法により重合を行い、ポリアミドを得ることを含む、産業チューブの製造方法:
炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)および炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)をまとめて反応させて重合する一括重合法;または
炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)とを、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)および炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)とは別に反応させて重合する分割重合法。
<15> 前記ポリアミドが<1>~<13>いずれかに記載の産業チューブに含まれるポリアミドである、<14>に記載の産業チューブの製造方法。
本発明によれば、耐熱性と柔軟性に十分に優れたポリアミド含有産業チューブを提供することができる。
本発明の産業チューブに含まれるポリアミドは、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)(以下、成分(A)ということがある)からなる単位、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)(以下、成分(B)ということがある)からなる単位、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)(以下、成分(C)ということがある)からなる単位、および炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)(以下、成分(D)ということがある)からなる単位を含有する。成分(A)~(D)は、ポリアミド中、モノマー成分(またはモノマー残基)として含有されている。従って、「炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位」は単に「炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)モノマー」またはその残基と表現されてもよい。「炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位」は単に「炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)モノマー」またはその残基と表現されてもよい。「炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位」は単に「炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)モノマー」またはその残基と表現されてもよい。「炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位」は単に「炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)モノマー」またはその残基と表現されてもよい。
本発明においてポリアミドに用いる炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)としては、カルボキシル基以外は全て炭化水素からなる脂肪族ジカルボン酸が好ましく、例えば、ヘキサデカンジカルボン酸(炭素数18)、オクタデカンジカルボン酸(炭素数20)、ダイマー酸(炭素数36)が挙げられる。中でも、柔軟性が高くなることから、炭素数20以上の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、ダイマー酸がより好ましい。ダイマー酸は、例えばオレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸から選択される2つの分子を付加反応させたものであってもよい。当該2つの分子は同種の分子であってもよいし、または相互に異種の分子であってもよい。ダイマー酸は、不飽和結合を有するジカルボン酸であってもよいが、着色しにくいことから、水添してすべての結合が飽和結合であるジカルボン酸が好ましい。(A)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
成分(A)の炭素数は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のさらなる向上の観点から、好ましくは20~40、より好ましくは30~40、さらに好ましくは34~38である。
成分(A)の含有量は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のさらなる向上の観点から、2~40質量%であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましく、5~17質量%であることが特に好ましく、12~17質量%であることがさらに好ましい。当該含有量は、成分(A)の残基の含有量であって、ポリアミドを構成する全モノマー成分(またはそれらの残基の全量)に対する割合である。ポリアミドが2種以上の成分(A)を含む場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
本発明においてポリアミドに用いる炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)としては、アミノ基以外は全て炭化水素からなる脂肪族ジカルボン酸が好ましく、例えば、オクタデカンジアミン(炭素数18)、エイコサンジアミン(炭素数20)、ダイマージアミン(炭素数36)が挙げられる。中でも、ダイマージアミンが好ましい。ダイマージアミンを用いることにより、他のモノマーより比較的少ない樹脂組成でもポリマー全体の柔軟性を効果的に向上させることができる。通常、ダイマージアミンは、ダイマー酸をアンモニアと反応させたのち、脱水し、ニトリル化し、還元することにより製造される。ダイマージアミンは、不飽和結合を有するジアミンであってもよいが、着色しにくいことから、水添してすべての結合が飽和結合であるジアミンが好ましい。成分(B)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
成分(B)の炭素数は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のさらなる向上の観点から、好ましくは20~40、より好ましくは30~40、さらに好ましくは34~38である。
成分(B)の含有量は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のさらなる向上の観点から、5~45質量%であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましく、5~25質量%であることが特に好ましく、13~20質量%であることがさらに好ましい。当該含有量は、成分(B)の残基の含有量であって、ポリアミドを構成する全モノマー成分(またはそれらの残基の全量)に対する割合である。ポリアミドが2種以上の成分(B)を含む場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
本発明においてポリアミドに用いる炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)としては、例えば、セバシン酸(炭素数10)、アゼライン酸(炭素数9)、アジピン酸(炭素数6)、テレフタル酸(炭素数8)、イソフタル酸(炭素数8)、オルトフタル酸(炭素数8)が挙げられる。中でも、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性をさらに向上させやすいことから、炭素数8以上の芳香族ジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。成分(C)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
成分(C)の炭素数は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のさらなる向上の観点から、好ましくは4~12、より好ましくは6~12、さらに好ましくは6~10である。
成分(C)の含有量は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のさらなる向上の観点から、10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがより好ましく、25~40質量%であることが特に好ましく、25~35質量%であることがさらに好ましい。当該含有量は、成分(C)の残基の含有量であって、ポリアミドを構成する全モノマー成分(またはそれらの残基の全量)に対する割合である。ポリアミドが2種以上の成分(C)を含む場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
本発明に用いるポリアミドに用いる炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)としては、例えば、1,12-ドデカンジジアミン(炭素数12)、1,10-デカンジアミン(炭素数10)、1,9-ノナンジアミン(炭素数9)、1,8-オクタンジアミン(炭素数8)、1,6-ヘキサンジアミン(炭素数6)が挙げられる。中でも、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性をさらに向上させやすいことから、炭素数6以上のジアミンが好ましく、8以上のジアミンが好ましく、1,10-デカンジアミンがより好ましい。成分(D)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
成分(D)の炭素数は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のさらなる向上の観点から、好ましくは4~12、より好ましくは6~12、さらに好ましくは8~12である。
成分(D)の含有量は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のさらなる向上の観点から、10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがより好ましく、30~45質量%であることが特に好ましく、30~40質量%であることがさらに好ましい。当該含有量は、成分(D)の残基の含有量であって、ポリアミドを構成する全モノマー成分(またはそれらの残基の全量)に対する割合である。ポリアミドが2種以上の成分(D)を含む場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
本発明に用いるポリアミドにおいては、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位は、ソフトセグメントを形成し、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位と、炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位は、ハードセグメントを形成することが好ましい。その結果として、ポリアミドがより優れた耐熱性を有しながらも、より十分に優れた柔軟性を有することができるものと考えられる。詳しくは、本発明に用いるポリアミドにおいては、ハードセグメントがゴムの架橋点の役割を果たし、ソフトセグメントが自由に伸縮できるため、耐熱性が確保されながらも、柔軟性が発現する。成分(C)と(D)の組み合わせとしては、例えば、テレフタル酸とブタンジアミン、テレフタル酸と1,9-ノナンジアミン、テレフタル酸と1,10-デカンジアミン、テレフタル酸と1,12-ドデカンジアミンが挙げられ、中でも、テレフタル酸と1,10-デカンジアミンが好ましい。テレフタル酸と1,10-デカンジアミンを用いることにより、ハードセグメントが高結晶性のセグメントになりやすいので、ハードセグメントとソフトセグメントの相分離構造の形成が促進され、より十分に優れた柔軟性を発現する。「ゴム」は、外力によって局所的に変形するが、除力すると元の形状へと戻る特性を示す物質の概念で用いている。
本発明に用いるポリアミドには、重合時に分解しやすいポリエーテル成分やポリエステル成分を用いないことが好ましい。ポリエーテル成分としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。ポリエステル成分としては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンセバケートが挙げられる。ポリエーテル成分やポリエステル成分を用いた場合、重合温度が高いと、分解が生じる場合がある。
ポリエーテル成分およびポリエステル成分の合計含有量は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のさらなる向上の観点から、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。当該合計含有量範囲の下限値は通常、0質量%である。当該合計含有量は、ポリエーテル成分およびポリエステル成分の残基の含有量であって、ポリアミドを構成する全モノマー成分(またはそれらの残基の全量)に対する割合である。ポリエーテル成分およびポリエステル成分は、ポリアミドとの共有結合によりポリアミドの一部を構成する成分であり、ポリアミドに単にブレンドされるものではない。
本発明に用いるポリアミドには、重合度調整や、製品の分解抑制や着色抑制等のため、末端封鎖剤を含有してもよい。末端封鎖剤としては、例えば、酢酸、ラウリル酸、安息香酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ステアリルアミン等のモノアミンが挙げられる。末端封鎖剤は上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。末端封鎖剤の含有量は、特に限定されないが、通常、ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して0~10モル%である。
本発明に用いるポリアミドには、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状補強材;タルク、膨潤性粘土鉱物、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、グラファイト等の充填材;酸化チタン、カーボンブラック等の顔料;酸化防止剤;帯電防止剤;難燃剤;難燃助剤が挙げられる。添加剤は、重合時に含有させてもよいし、重合後溶融混練等により含有させてもよい。
ポリアミド中の炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)の合計の含有量は、ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、15~70質量%であることが好ましく、15~65質量%であることがより好ましく、15~40質量%であることが特に好ましく25~35質量%であることがさらに好ましい。
本発明の産業チューブおよび当該産業チューブに含まれるポリアミドは、耐熱性および柔軟性により十分に優れており、通常はゴム弾性、機械的特性および表面性にも十分に優れている。
本明細書中、耐熱性は融点と耐熱老化性の観点からの特性を意味し、詳しくは、より高い融点を有しながらも、より高い引張強度保持率を有する特性をいう。なお、引張強度保持率とは、150℃および100時間の熱処理後の引張強度保持率(%)のことである。例えば、融点が比較的高くても、耐熱老化性が劣ると、熱処理後の引張強度保持率が低下するため、結果として比較的高温での使用に耐えない。また例えば、耐熱老化性が良好であっても、融点が比較的低いと、比較的低温で溶融するため、結果として比較的高温での使用に耐えない。
柔軟性は、曲げ弾性率に関する特性を意味し、詳しくは、適度に小さな曲げ弾性率を有する特性をいう。
ゴム弾性は、伸長回復率に関する特性を意味し、詳しくは、より大きな伸長回復率を有する特性をいう。
機械的特性は、引張強度に関する特性を意味し、詳しくは、より大きな引張強度を有する特性をいう。
表面性は、表面への含有成分の滲出に関する特性を意味し、詳しくは、100℃および100時間熱処理においても表面への滲出が十分に抑制される特性をいう。
本明細書中、耐熱性は融点と耐熱老化性の観点からの特性を意味し、詳しくは、より高い融点を有しながらも、より高い引張強度保持率を有する特性をいう。なお、引張強度保持率とは、150℃および100時間の熱処理後の引張強度保持率(%)のことである。例えば、融点が比較的高くても、耐熱老化性が劣ると、熱処理後の引張強度保持率が低下するため、結果として比較的高温での使用に耐えない。また例えば、耐熱老化性が良好であっても、融点が比較的低いと、比較的低温で溶融するため、結果として比較的高温での使用に耐えない。
柔軟性は、曲げ弾性率に関する特性を意味し、詳しくは、適度に小さな曲げ弾性率を有する特性をいう。
ゴム弾性は、伸長回復率に関する特性を意味し、詳しくは、より大きな伸長回復率を有する特性をいう。
機械的特性は、引張強度に関する特性を意味し、詳しくは、より大きな引張強度を有する特性をいう。
表面性は、表面への含有成分の滲出に関する特性を意味し、詳しくは、100℃および100時間熱処理においても表面への滲出が十分に抑制される特性をいう。
耐熱性の指標の1つとなるポリアミドの融点は、240℃以上であることが必要であり、耐熱性のさらなる向上の観点から、300℃以上であることが好ましく、305℃以上であることがより好ましい。融点の上限値は特に限定されず、例えば、融点は通常、350℃以下、特に330℃以下であってもよい。融点が低すぎると、比較的低温で溶融するため、比較的高温での使用に耐えない。
ポリアミドの融点は、示差走査熱量計DSC-7型(パーキンエルマー社製)用いて、昇温速度20℃/分で昇温したときの発熱ピークの温度を用いている。
耐熱性の指標の1つとなるポリアミドの耐熱老化性について、引張破断強度保持率は通常、70%以上であり、耐熱性のさらなる向上の観点から、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
ポリアミドの引張破断強度保持率は、150℃および100時間の熱処理前後においてISO178に準拠して測定された引張強度について、熱処理後の引張強度の、熱処理前の引張強度に対する割合で表される値である。なお、熱処理前の引張強度は通常、10MPa以上であり、機械的特性のさらなる向上の観点から、20MPa以上であることが好ましく、30MPa以上であることがより好ましい。熱処理前の引張強度の上限値は特に限定されず、当該引張強度は通常、100MPa以下である。
柔軟性の指標となるポリアミドの曲げ弾性率は、100~1300MPaであることが必要であり、柔軟性のさらなる向上の観点から、100~1200MPaであることが好ましく、100~1000MPaであることがより好ましい。曲げ弾性率が大きすぎると、柔軟性が低下する。曲げ弾性率が小さすぎると、全体として柔らかすぎるため、産業チューブとしての使用に耐えない。
ポリアミドの曲げ弾性率は、ISO178に準じ測定した23℃における曲げ弾性率を用いている。
本発明に用いるポリアミドにおいて、ハードセグメントの結晶性の指標となる結晶融解エンタルピーは、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のさらなる向上の観点から、20J/g以上であることが好ましく、40J/g以上であることがより好ましく、60J/g以上であることがさらに好ましい。当該結晶融解エンタルピーは通常、120J/g以下(特に90J/g以下)である。
ポリアミドの結晶融解エンタルピーは、示差走査熱量計DSC-7型(パーキンエルマー社製)用いて、昇温速度20℃/分で昇温したときの吸熱ピークの熱量を用いている。
ポリアミドの伸長回復率は通常、20%以上であり、ゴム弾性のさらなる向上の観点から、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、55%以上であることがさらに好ましい。
ポリアミドの伸長回復率は、ISO178に準じて作製されたダンベル試験片(4mm厚)を、23℃環境下、引張試験速度5mm/minで伸びが11mmとなるまで引張り、直ちに同じ速度で元に戻したきの伸長回復率を用いている。
ポリアミドの密度は通常、0.90~1.10g/cm3であり、ゴム弾性のさらなる向上の観点から、0.95~1.05であることが好ましく、0.98~1.01であることがより好ましい。
ポリアミドの密度は、ISO多目的試験片を用いてJIS K 7112に基づき測定された値を用いている。
本発明に用いるポリアミドの製造方法は特に限定されないが、例えば、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)と炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)と炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)とをまとめて反応させる方法(以下、「一括重合法」ということがある)、または成分(C)と成分(D)とを、成分(A)および成分(B)とは別に反応させる方法(以下、「分割重合法」ということがある)により得ることができる。ポリアミドは、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のさらなる向上の観点から、分割重合方法により製造されることが好ましい。ポリアミドを分割重合法により製造することにより、当該ポリアミドはより好ましい結晶融解エンタルピーを有するようになり、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性がさらに向上するためである。
一括重合法においては、所定の全成分を混合し、重合を行う。重合方法は特に限定されないが、例えば、得られるポリアミドの融点以下の温度に加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、当該温度を維持することにより重合する方法が挙げられる。「得られるポリアミドの融点」とは「目的とするポリアミドの融点」のことであり、例えば、後述する分割重合法において説明される「ハードセグメントポリマーの融点」であってもよい。
従って、一括重合法によりポリアミドを製造するに際しては、例えば、まず、後述する分割重合法において説明される製造方法によりハードセグメントポリマーを得る。次いで、得られたハードセグメントポリマーの融点を測定する。融点の測定方法は特に限定されず、例えば、示差走査型熱量計により測定することができる。その後、モノマー(またはプレポリマー)を含む混合物を、当該「融点」以下の温度(特に当該融点未満の温度)で重合反応に供することにより、ポリアミドを製造することができる。例えば、成分(A)~(D)それぞれとしてダイマー酸、ダイマージアミン、テレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、「目的とするポリアミド」の融点(例えば「ハードセグメントポリマーの融点」)は315℃であり、一括重合法における重合温度は220~300℃(特に240~280℃)であってもよい。この場合、一括重合法における重合時間は、十分な重合が行われる限り特に限定されず、例えば、1~10時間(特に3~7時間)であってもよい。
分割重合法においては、成分(C)と成分(D)とを、成分(A)および成分(B)とは別に反応させて重合を行う。例えば、成分(C)と成分(D)とを反応させ反応生成物を得たのち、当該反応生成物を、成分(A)および成分(B)と、さらに反応させて重合する。詳しくは、
成分(A)と、
成分(B)と、
成分(C)と成分(D)との反応生成物と、
を反応させて重合する。
成分(A)と、
成分(B)と、
成分(C)と成分(D)との反応生成物と、
を反応させて重合する。
このような分割重合法において、成分(A)および成分(B)は、相互に反応していない状態で使用されてもよいし、または相互に反応した状態(すなわち、それらの反応生成物の形態)で使用されてもよい。例えば、本発明に用いるポリアミドは、成分(A)と成分(B)を予め反応させたのち、得られた成分(A)と成分(B)との反応生成物と、成分(C)と成分(D)との反応生成物を反応させて重合することにより得てもよい。詳しくは、本発明に用いるポリアミドは、成分(A)と成分(B)との反応生成物と、成分(C)と成分(D)との反応生成物と、を反応させて重合することにより得てもよい。成分(A)および成分(B)は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含む産業チューブの耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のさらなる向上の観点から、相互に反応した状態(すなわち、それらの反応生成物の形態)で使用されることが好ましい。
分割重合法により重合したポリアミドは、一括重合法により重合したポリアミドとは異なり、成分(C)と(D)からなるハードセグメントおよび成分(A)と(B)からなるソフトセグメントから構成されるポリアミドとして得られる。従って、一括重合法により重合したポリアミドが「ランダム型ポリアミド」であることに対して、分割重合法により重合したポリアミドは、ハードセグメントおよびソフトセグメントの含有の観点から、「ブロック型ポリアミド」と称することができる。
分割重合法においては、用いる炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)のモノマー比率[(C)/(D)]を調整することにより、得られる反応生成物の連鎖長を制御することができ、その結果、得られるポリアミドの柔軟性やゴム弾性を制御することができる。柔軟性やゴム弾性がより十分に向上することから、モル比[(C)/(D)]は、45/55~60/40とすることが好ましく、45/55~55/45とすることがより好ましい。
分割重合法において、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)を含有する反応生成物の製造方法(以下、単に「反応生成物の製造方法X」ということがある)は特に限定されないが、例えば、成分(D)の融点以上、かつ成分(C)の融点以下の温度に加熱し、成分(C)の粉末の状態を保つように、成分(D)を添加する方法が挙げられる。例えば、成分(C)および(D)それぞれとしてテレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、加熱温度は100~240℃(特に140~200℃)であってもよい。成分(D)の添加は連続的に行うことが好ましく、例えば、1~10時間(特に1~5時間)かけて行うことが好ましい。
成分(C)と成分(D)との反応生成物は、成分(C)と成分(D)との塩の形態を有していてもよいし、それらの縮合物(またはオリゴマーもしくはプレポリマー)の形態を有していてもよいし、またはこれらの複合形態を有していてもよい。
成分(A)と成分(B)を予め反応させる場合、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)と炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)とを反応させる方法は特に限定されないが、例えば、80~150℃(特に100~150℃)の温度で0.5~3時間反応させる方法が挙げられる。
成分(A)と成分(B)との反応生成物もまた、成分(C)と成分(D)との反応生成物と同様に、塩の形態を有していてもよいし、それらの縮合物(またはオリゴマーもしくはプレポリマー)の形態を有していてもよいし、またはこれらの複合形態を有していてもよい。
分割重合法において、重合方法は特に限定されないが、例えば、ハードセグメントポリマー(すなわちハードセグメントを構成する成分(C)および(D)のみから構成されるポリアミド)の融点以下の温度(好ましくは当該融点未満の温度)で重合する方法が挙げられる。詳しくは、ハードセグメントポリマー(すなわちハードセグメントを構成する成分(C)および(D)のみから構成されるポリアミド)の融点以下の温度に加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、当該温度を維持することにより重合する。このように重合することにより、ハードセグメントは溶融することなく、ソフトセグメントだけが溶融した状態で重合することができる。ハードセグメントポリマーの融点以下の温度で重合する方法は、重合温度が高くなり分解しやすい280℃以上の高融点のポリアミドの重合において、特に効果的である。
「ハードセグメントポリマーの融点」とは、ハードセグメントを構成する成分(C)および(D)のみをモノマー成分として十分に重合させてなるポリアミドの融点のことである。「ハードセグメントポリマーの融点」は、例えば、国際公開2013/042541号パンフレットに記載の方法により、成分(C)および(D)のみをモノマー成分として十分に重合させてなるポリアミドの融点であってもよい。詳しくは、「ハードセグメントポリマーの融点」は、成分(C)および(D)から反応生成物を得る工程(i)および得られた反応生成物を重合する工程(ii)を含む方法により得られたポリアミド(ハードセグメントポリマー)の融点である。ハードセグメントポリマーの製造過程において、工程(i)では、成分(C)および(D)を、成分(D)の融点以上、かつ成分(C)の融点以下の温度に加熱し、成分(C)の粉末の状態を保つように、成分(D)を添加することにより反応生成物を得ることができる。工程(i)では、例えば、成分(C)および(D)それぞれとしてテレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、加熱温度は100~240℃(好ましくは140~200℃、特に170℃)であってもよい。成分(D)の添加は連続的に行うことが好ましく、例えば、1~10時間(好ましくは1~5時間、特に2.5時間)かけて行うことが好ましい。ハードセグメントポリマーの製造過程において、工程(ii)では、工程(i)で得られた固相状態の反応生成物を、当該固相状態を保つように、十分に加熱して、重合(すなわち固相重合)を行う。工程(ii)では、例えば、成分(C)および(D)それぞれとしてテレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、加熱温度(すなわち重合温度)は220~300℃(好ましくは240~280℃、特に260℃)であってもよく、加熱時間(すなわち重合時間)は1~10時間(好ましくは3~7時間、特に5時間)であってもよい。工程(i)および(ii)は窒素不活性ガス等の気流中で行うことが好ましい。例えば、成分(C)および(D)それぞれとしてテレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、「ハードセグメントポリマーの融点」の融点は通常315℃である。
従って、分割重合法によりポリアミドを製造するに際しては、例えば、以下の方法を採用することができる。まず、当該ポリアミドを構成する成分(C)および(D)のみを用いて上記した工程(i)および(ii)により十分に重合を行い、ポリアミド(すなわちハードセグメントポリマー)を得る。次いで、得られたポリアミドの融点を測定する。融点の測定方法は一括重合法においてと同様である。その後、前記した反応生成物の製造方法Xにより、成分(C)と成分(D)とを反応させ反応生成物を得たのち、当該反応生成物を、「ハードセグメントポリマーの融点」以下の温度で、成分(A)および成分(B)と、さらに反応させて重合することにより、ポリアミドを製造することができる。成分(A)~(D)それぞれとしてダイマー酸、ダイマージアミン、テレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、分割重合法における重合温度は220~300℃(好ましくは240~280℃、特に260℃)であってもよい。この場合、分割重合法における重合時間は、十分な重合が行われる限り特に限定されず、例えば、1~10時間(好ましくは3~7時間、特に5時間)であってもよい。
一括重合法および分割重合法(以下、単に「本発明に用いるポリアミドの製造方法」ということがある)においては、必要に応じて、触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられる。触媒の含有量は、特に限定されないが、通常、ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して0~2モル%である。
本発明に用いるポリアミドの製造方法においては、必要に応じて、有機溶媒や水を加えてもよい。
本発明に用いるポリアミドの製造方法においては、重合は、密閉系でおこなってもよいし、常圧でおこなってもよい。密閉系でおこなう場合、モノマーの揮発や縮合水の発生等で圧力が上昇することがあるので、適宜圧力を制御することが好ましい。一方、用いるモノマーの沸点が高く、加圧しなくてもモノマーが系外に流出しない場合、常圧で重合することができる。例えば、ダイマー酸、ダイマージアミン、テレフタル酸、デカンジアミンの組み合わせの場合、常圧で重合することができる。
本発明に用いるポリアミドの製造方法においては、酸化劣化を防ぐため、窒素雰囲気下または真空下で重合をおこなうことが好ましい。
重合したポリアミドは、ストランド状に押出しペレットとしてもよいし、ホットカット、アンダーウォーターカットしてペレットとしてもよい。
本発明に用いるポリアミドの製造方法においては、重合後、さらに高分子量化するために、固相重合をおこなってもよい。固相重合は、重合時の粘度が高粘度で操業が困難になる場合等に、特に効果的である。固相重合は、不活性ガス流通下または減圧下で、樹脂組成物の融点未満の温度で30分以上加熱することによりおこなうことが好ましく、1時間以上加熱することによりおこなうことがより好ましい。樹脂組成物の融点は、上記した「ハードセグメントポリマーの融点」と同様の温度であってもよい。
本発明の産業チューブは、ポリアミドを押出成形することにより得ることができる。
本発明の産業チューブを製造するに際して、ポリアミドは、十分に乾燥されたポリアミド(特にそのペレット)を用いることが好ましい。ポリアミドペレットは、含有する水分量が多いと、成形機のシリンダー内で発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。成形に用いるペレットの水分率は、ポリアミド100質量部に対して、0.3質量部未満とすることが好ましく、0.1質量部未満とすることがより好ましい。
産業チューブの外径は、内部を流れる流体の流量を考慮して設計される。また産業チューブの肉厚は内在物の透過性が増大せず、また、必要とされるチューブの破壊圧力を維持できる厚さでかつ、チューブの組み立て作業性が良好な柔軟性を維持することができる厚さに設計されることが望ましい。産業チューブの外径は、例えば、3.0~20.0mm(特に3.0~10.0mm)であり、肉厚は0.5~3.0mmであることが好ましい。
本発明の産業チューブは、本発明のポリアミドを含有する層を少なくとも一つを含んでいればよく、必要に応じて単層又は2層以上の形態を有していても良い。詳しくは、本発明の産業チューブは、前記したポリアミドを含む単層チューブであってもよいし、または前記したポリアミドを含む層を1層以上で有する多層チューブであってもよい。
単層チューブには、前記したポリアミド以外に、他の熱可塑性樹脂および/または添加剤を含んでもよい。他の熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、多層チューブにおいて「他の層」を構成する材料として後述されている熱可塑性樹脂と同様のポリマーが挙げられる。添加剤としては、産業チューブに従来から添加されている添加剤が使用可能であり、例えば、顔料、染料、着色剤、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、銅化合物等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、ガラス繊維、潤滑剤、フィラー、補強繊維、補強粒子、発泡剤等が挙げられる。単層チューブにおける前記したポリアミドの含有量は特に限定されず、通常は単層チューブ全量に対して50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
本発明の産業チューブが2層以上で構成される場合、前記したポリアミドを含む層(以下、「ポリアミド含有層」ということがある)の配置は特に限定されないが、内部を流れる流体の流路抵抗を低減し、不必要な残存物を低減するために、前記したポリアミド含有層はチューブの最内層であることが好ましい。
多層チューブにおいてポリアミド含有層には前記したポリアミド以外に、他の熱可塑性樹脂および/または添加剤を含んでもよい。他の熱可塑性樹脂および添加剤はそれぞれ、単層チューブにおける他の熱可塑性樹脂および添加剤と同様の材料から選択されてもよい。ポリアミド含有層における前記したポリアミドの含有量は特に限定されず、通常はポリアミド含有層全量に対して50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは99%以上、特に好ましくは100%である。
本発明の産業チューブが多層チューブであった場合に、ポリアミド含有層以外の「他の層」を構成する材料については、特に限定されず、チューブの成形性の観点からは熱可塑性樹脂が好ましい。そのような熱可塑性樹脂としては、チューブの用途や、隣接する層との密着性などを考慮して適宜選択することができる。具体的には、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレートなどのポリエステル系樹脂;エチレン―テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ビニリデンフルオライド共重合体(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン―クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン―ヘキサフルオロプロピレンービニリデンフルオライド共重合体などのフッ素系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン―酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)などのポリオレフィン系樹脂;ポリアセタール、ポリフェニレンスルファイドなどのポリエーテル樹脂;半芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドなどのポリアミドなどが挙げられる。「他の層」は添加剤を含んでもよい。当該添加剤は単層チューブにおける添加剤と同様の材料から選択されてもよい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
ポリアミドの物性測定は以下の方法によっておこなった。
(1)樹脂組成
得られたペレットや粉末について、高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製ECA-500NMR)を用いて、1H-NMR分析することにより、それぞれの共重合成分のピーク強度から求めた(分解能:500MHz、溶媒:重水素化トリフルオロ酢酸と重水素化クロロホルムとの容量比が4/5の混合溶媒、温度:23℃)。表1~表3において、樹脂組成を最終組成として質量比で示した。
(1)樹脂組成
得られたペレットや粉末について、高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製ECA-500NMR)を用いて、1H-NMR分析することにより、それぞれの共重合成分のピーク強度から求めた(分解能:500MHz、溶媒:重水素化トリフルオロ酢酸と重水素化クロロホルムとの容量比が4/5の混合溶媒、温度:23℃)。表1~表3において、樹脂組成を最終組成として質量比で示した。
(2)融点、結晶融解エンタルピー
得られたペレットや粉末から数mg採り、示差走査熱量計DSC-7型(パーキンエルマー社製)用いて、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、350℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温し、さらに25℃で5分間保持後、昇温速度20℃/分で再昇温した。
再昇温時の発熱ピークのトップを融点とし、吸熱ピークの熱量を結晶融解エンタルピーとした。結晶融解エンタルピーは、融解開始から終了までの温度範囲のピーク面積から求められる。
得られたペレットや粉末から数mg採り、示差走査熱量計DSC-7型(パーキンエルマー社製)用いて、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、350℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温し、さらに25℃で5分間保持後、昇温速度20℃/分で再昇温した。
再昇温時の発熱ピークのトップを融点とし、吸熱ピークの熱量を結晶融解エンタルピーとした。結晶融解エンタルピーは、融解開始から終了までの温度範囲のピーク面積から求められる。
融点
◎:305℃以上(最良)。
○:300℃以上305℃未満(良)。
△:240℃以上300℃未満(実用上問題なし)。
×:240℃未満(実用上問題あり)。
結晶融解エンタルピー
◎:60J/g以上(最良)。
○:40J/g以上60J/g未満(良)。
△:20J/g以上40J/g未満(実用上問題なし)。
×:20J/g未満(実用上問題あり)。
◎:305℃以上(最良)。
○:300℃以上305℃未満(良)。
△:240℃以上300℃未満(実用上問題なし)。
×:240℃未満(実用上問題あり)。
結晶融解エンタルピー
◎:60J/g以上(最良)。
○:40J/g以上60J/g未満(良)。
△:20J/g以上40J/g未満(実用上問題なし)。
×:20J/g未満(実用上問題あり)。
(3)曲げ弾性率(柔軟性)
本発明のチューブは優れた柔軟性を有するものである。
具体的には、チューブに用いられるポリアミドペレットを4mm厚の試験片(ダンベル試験片)に射出成形した際の、ISO178に準じ測定した23℃における曲げ弾性率が1300MPa以下であることが望ましく(△:実用上問題なし)、1200MPa以下であることがより好ましく(○:良)、1000MPa以下であることがさらに好ましい(◎:最良)。また、上記曲げ弾性率は、チューブとしての機能を損なわない観点から、100MPa以上であることが必要であり、300MPa以上であることが望ましい。よって、曲げ弾性率(柔軟性)は、当該曲げ弾性率が1300MPa超または100MPa未満であると、実用上問題があるものと評価した。
本発明のチューブは優れた柔軟性を有するものである。
具体的には、チューブに用いられるポリアミドペレットを4mm厚の試験片(ダンベル試験片)に射出成形した際の、ISO178に準じ測定した23℃における曲げ弾性率が1300MPa以下であることが望ましく(△:実用上問題なし)、1200MPa以下であることがより好ましく(○:良)、1000MPa以下であることがさらに好ましい(◎:最良)。また、上記曲げ弾性率は、チューブとしての機能を損なわない観点から、100MPa以上であることが必要であり、300MPa以上であることが望ましい。よって、曲げ弾性率(柔軟性)は、当該曲げ弾性率が1300MPa超または100MPa未満であると、実用上問題があるものと評価した。
(4)伸長回復率(ゴム弾性)
上記(3)と同様にダンベル試験片を作製し、INTESCO社製2020型試験機を用いて伸長回復率の測定をおこなった。23℃環境下、チャック間距離55mm、引張試験速度5mm/minの条件で、伸びが11mmとなるまで引張り、直ちに同じ速度で元に戻し、応力がゼロになった時の残留歪A(mm)を求めた。
伸長回復率は、残留歪Aを用いて下記式により算出した。
伸長回復率(%)=(11-A)/11×100
◎:50%以上(最良)。
○:30%以上50%未満(良)。
△:20%以上30%未満(実用上問題なし)。
×:20%未満(実用上問題あり)。
上記(3)と同様にダンベル試験片を作製し、INTESCO社製2020型試験機を用いて伸長回復率の測定をおこなった。23℃環境下、チャック間距離55mm、引張試験速度5mm/minの条件で、伸びが11mmとなるまで引張り、直ちに同じ速度で元に戻し、応力がゼロになった時の残留歪A(mm)を求めた。
伸長回復率は、残留歪Aを用いて下記式により算出した。
伸長回復率(%)=(11-A)/11×100
◎:50%以上(最良)。
○:30%以上50%未満(良)。
△:20%以上30%未満(実用上問題なし)。
×:20%未満(実用上問題あり)。
(5)密度
得られたポリアミドのペレットを十分に乾燥した後、射出成形機(ファナック社製 S2000i-100B型)を用いて、シリンダー温度として「ポリアミドの融点+15℃」、シリンダー内滞留時間として10秒の条件で射出成形し、試験片(ISO多目的試験片)を作製した。この試験片を用いてJIS K 7112に基づいて測定を行った。
得られたポリアミドのペレットを十分に乾燥した後、射出成形機(ファナック社製 S2000i-100B型)を用いて、シリンダー温度として「ポリアミドの融点+15℃」、シリンダー内滞留時間として10秒の条件で射出成形し、試験片(ISO多目的試験片)を作製した。この試験片を用いてJIS K 7112に基づいて測定を行った。
(6)引張強度(機械的特性)および耐熱老化性
ポリアミドペレットを、射出成形機S2000i-100B型(ファナック社製)により、シリンダー温度として「ポリアミドの融点+15℃」、金型温度として「ポリアミドの融点-175℃」、シリンダー内滞留時間として「10秒」の条件で射出成形し、試験片(ISO多目的試験片)を作製した。
上記の方法で作製した試験片を用いて、ISO178に準拠して引張強度を測定した。
さらに試験片を大気雰囲気下の熱炉の中で、150℃で100時間熱処理した試験片を作製し、その試験片の引張破壊強度保持率(%)を求め、150℃における耐熱老化性を評価した。なお、引張破断強度保持率は、熱処理後の引張破壊強度の、熱処理前の引張破壊強度に対する割合で表される値である。
ポリアミドペレットを、射出成形機S2000i-100B型(ファナック社製)により、シリンダー温度として「ポリアミドの融点+15℃」、金型温度として「ポリアミドの融点-175℃」、シリンダー内滞留時間として「10秒」の条件で射出成形し、試験片(ISO多目的試験片)を作製した。
上記の方法で作製した試験片を用いて、ISO178に準拠して引張強度を測定した。
さらに試験片を大気雰囲気下の熱炉の中で、150℃で100時間熱処理した試験片を作製し、その試験片の引張破壊強度保持率(%)を求め、150℃における耐熱老化性を評価した。なお、引張破断強度保持率は、熱処理後の引張破壊強度の、熱処理前の引張破壊強度に対する割合で表される値である。
引張強度
◎:30MPa以上(最良)。
○:20MPa以上30MPa未満(良)。
△:10MPa以上20MPa未満(実用上問題なし)。
×:10MPa未満(実用上問題あり)。
◎:30MPa以上(最良)。
○:20MPa以上30MPa未満(良)。
△:10MPa以上20MPa未満(実用上問題なし)。
×:10MPa未満(実用上問題あり)。
耐熱老化性
◎:150℃×500時間熱処理後の引張破断強度保持率が80%以上であった(最良)。
〇:150℃×500時間熱処理後の引張破断強度保持率が75%以上80%未満であった(良)。
△:150℃×500時間熱処理後の引張破断強度保持率が70%以上で75%未満あった(実用上問題なし)。
×:150℃×500時間熱処理後の引張破断強度保持率が70%未満であった(実用上問題あり)。
◎:150℃×500時間熱処理後の引張破断強度保持率が80%以上であった(最良)。
〇:150℃×500時間熱処理後の引張破断強度保持率が75%以上80%未満であった(良)。
△:150℃×500時間熱処理後の引張破断強度保持率が70%以上で75%未満あった(実用上問題なし)。
×:150℃×500時間熱処理後の引張破断強度保持率が70%未満であった(実用上問題あり)。
(7)熱処理後の表面性
実施例及び比較例の各々において製造したチューブを大気雰囲気下の熱炉の中で、100℃で100時間熱処理を行った後のチューブ表面状態を目視で観察し、製造直後のチューブ表面状態に比べて、ブリードアウトが認められなければ良好とした。
◎:熱処理後のチューブの表面状態は、製造直後のチューブの表面状態と変化がなかった(最良)。
○:熱処理後のチューブ表面のブリードアウト量は、製造直後のチューブ表面のブリードアウト量よりも僅かに増加しただけで、熱処理後のチューブの表面状態は良好であった(良)。
△:熱処理後のチューブ表面のブリードアウト量は、製造直後のチューブ表面のブリードアウト量よりも増加したが、熱処理後のチューブの表面状態は実用上問題なかった。
×:熱処理後のチューブ表面のブリードアウト量は、製造直後のチューブ表面のブリードアウト量よりも著しく増加し、熱処理後のチューブの表面状態は実用上問題があった。
実施例及び比較例の各々において製造したチューブを大気雰囲気下の熱炉の中で、100℃で100時間熱処理を行った後のチューブ表面状態を目視で観察し、製造直後のチューブ表面状態に比べて、ブリードアウトが認められなければ良好とした。
◎:熱処理後のチューブの表面状態は、製造直後のチューブの表面状態と変化がなかった(最良)。
○:熱処理後のチューブ表面のブリードアウト量は、製造直後のチューブ表面のブリードアウト量よりも僅かに増加しただけで、熱処理後のチューブの表面状態は良好であった(良)。
△:熱処理後のチューブ表面のブリードアウト量は、製造直後のチューブ表面のブリードアウト量よりも増加したが、熱処理後のチューブの表面状態は実用上問題なかった。
×:熱処理後のチューブ表面のブリードアウト量は、製造直後のチューブ表面のブリードアウト量よりも著しく増加し、熱処理後のチューブの表面状態は実用上問題があった。
実施例1(一工程法=一括重合法)
加熱機構、撹拌機構を備えた反応容器に、ダイマー酸26.7質量部、ダイマージアミン25.3質量部、テレフタル酸23.5質量部、1,10-デカンジアミン24.4質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.10質量部を投入した。次亜リン酸ナトリウム一水和物の上記量は、ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して0.24モル%であった。
その後、撹拌しながら260℃まで加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、260℃で、5時間重合をおこなった。重合中、系は懸濁状態であった。
重合終了後、払い出し、これを切断し、乾燥してポリアミドのペレットを得た。
加熱機構、撹拌機構を備えた反応容器に、ダイマー酸26.7質量部、ダイマージアミン25.3質量部、テレフタル酸23.5質量部、1,10-デカンジアミン24.4質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.10質量部を投入した。次亜リン酸ナトリウム一水和物の上記量は、ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して0.24モル%であった。
その後、撹拌しながら260℃まで加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、260℃で、5時間重合をおこなった。重合中、系は懸濁状態であった。
重合終了後、払い出し、これを切断し、乾燥してポリアミドのペレットを得た。
実施例2,3および比較例1~3
反応容器に投入するモノマーを表1のように変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこない、ペレットを得た。
反応容器に投入するモノマーを表1のように変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこない、ペレットを得た。
実施例4(二工程法=分割重合法)
・反応生成物の作製
リボンブレンダー式の反応装置にテレフタル酸26.8質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.10質量部を投入し、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温した1,10-デカンジアミン23.4質量部を、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応生成物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、テレフタル酸:1,10-デカンジアミン=54.2:45.8であった。
・ポリアミドの作製
加熱機構、撹拌機構を備えた反応容器にダイマー酸18.6質量部、ダイマージアミン31.1質量部を投入した。100℃で1時間撹拌した後に上記反応生成物を50.2質量部撹拌しながら投入した。
その後260℃まで撹拌しながら加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、260℃で、5時間重合をおこなった。重合中、系は懸濁溶液の状態であった。
重合終了後、払い出し、これを切断し、乾燥してペレットを得た。次亜リン酸ナトリウム一水和物の上記量は、ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して0.33モル%であった。
・反応生成物の作製
リボンブレンダー式の反応装置にテレフタル酸26.8質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.10質量部を投入し、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温した1,10-デカンジアミン23.4質量部を、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応生成物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、テレフタル酸:1,10-デカンジアミン=54.2:45.8であった。
・ポリアミドの作製
加熱機構、撹拌機構を備えた反応容器にダイマー酸18.6質量部、ダイマージアミン31.1質量部を投入した。100℃で1時間撹拌した後に上記反応生成物を50.2質量部撹拌しながら投入した。
その後260℃まで撹拌しながら加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、260℃で、5時間重合をおこなった。重合中、系は懸濁溶液の状態であった。
重合終了後、払い出し、これを切断し、乾燥してペレットを得た。次亜リン酸ナトリウム一水和物の上記量は、ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して0.33モル%であった。
実施例5~7ならびに比較例4~6、10および11
反応容器に投入するモノマーの種類および/または量を表1~表3に示すように変更する以外は、実施例4と同様の操作をおこない、ペレットを得た。
反応容器に投入するモノマーの種類および/または量を表1~表3に示すように変更する以外は、実施例4と同様の操作をおこない、ペレットを得た。
比較例7
加熱機構を備えた粉末撹拌装置に、テレフタル酸49.0質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.10質量部を投入した。170℃加熱下、撹拌しながら、1,10-デカンジアミン50.9質量部を3時間かけて少量ずつ加え、ナイロン塩を得た。その後、攪拌しながら前記ナイロン塩を250℃まで加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、250℃で7時間重合をおこなった。重合中、系は粉末の状態であった。
重合終了後、払い出し、ポリアミドの粉末を得た。
加熱機構を備えた粉末撹拌装置に、テレフタル酸49.0質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.10質量部を投入した。170℃加熱下、撹拌しながら、1,10-デカンジアミン50.9質量部を3時間かけて少量ずつ加え、ナイロン塩を得た。その後、攪拌しながら前記ナイロン塩を250℃まで加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、250℃で7時間重合をおこなった。重合中、系は粉末の状態であった。
重合終了後、払い出し、ポリアミドの粉末を得た。
比較例8
反応容器に投入するモノマーの種類および/または量を表2に示すように変更する以外は、比較例7と同様の操作をおこない、ペレットを得た。
反応容器に投入するモノマーの種類および/または量を表2に示すように変更する以外は、比較例7と同様の操作をおこない、ペレットを得た。
比較例9
ポリアミド12:宇部興産(UBESTA3030UFX1)のペレットを使用した。
ポリアミド12:宇部興産(UBESTA3030UFX1)のペレットを使用した。
チューブの作製
上記に示すポリアミドペレット(またはポリアミド粉末)を使用して、Plabor製チューブ成形機にて、シリンダー温度300~340℃で溶融させ、吐出された溶融樹脂をサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、外径10mm、肉厚2mmの単層チューブを製造した。
上記に示すポリアミドペレット(またはポリアミド粉末)を使用して、Plabor製チューブ成形機にて、シリンダー温度300~340℃で溶融させ、吐出された溶融樹脂をサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、外径10mm、肉厚2mmの単層チューブを製造した。
実施例1~7のポリアミドは、本発明で規定する要件を満たしていたために、いずれも、耐熱性(融点および耐熱老化性)、柔軟性ならびにゴム弾性に優れていた。また、実施例1~7のポリアミドは、単層チューブを作製後の熱処理においても表面性が良好である。
比較例1、2、4および5のポリアミドは、曲げ弾性率が低すぎ、耐熱老化性も良くなかった。
比較例3、6、7および8のポリアミドは、曲げ弾性率が高すぎ、柔軟性が乏しかった。
比較例9のポリアミドは、融点が低すぎ、柔軟性が乏しかった。
比較例3、6、7および8のポリアミドは、曲げ弾性率が高すぎ、柔軟性が乏しかった。
比較例9のポリアミドは、融点が低すぎ、柔軟性が乏しかった。
本発明の産業チューブは、製造業(または工業)、鉱業、農業、漁業、運輸業、通信業等の分野で使用されるあらゆるチューブを包含する。本発明の産業チューブは、このような分野で使用されるチューブの中でも、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、機械的特性および表面性のうち少なくとも1つの特性(例えば全ての特性)が要求されるチューブとして好適である。本発明の産業チューブの用途の具体例として、例えば、空気チューブ、油圧チューブ、ペイントスプレーチューブ、高圧チューブ、自動車配管用チューブ、冷却配管用チューブまたは医療用チューブが挙げられる。
Claims (15)
- 炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位、および炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位を含有し、融点が240℃以上で、曲げ弾性率が100~1,300MPaであるポリアミドを含む産業チューブ。
- 前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)がダイマー酸である、請求項1に記載の産業チューブ。
- 前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)がダイマージアミンである、請求項1または2に記載の産業チューブ。
- 前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)がテレフタル酸である、請求項1~3いずれかに記載の産業チューブ。
- 前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)が1,10-デカンジアミンである、請求項1~4いずれかに記載の産業チューブ。
- 前記ポリアミドにおける炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の合計の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、15~70質量%である、請求項1~5いずれかに記載の産業チューブ。
- 前記ポリアミドの結晶融解エンタルピーが20J/g以上である、請求項1~6いずれかに記載の産業チューブ。
- 前記ポリアミドの引張試験における伸長回復率が20%以上である、請求項1~7いずれかに記載の産業チューブ。
- 前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)の炭素数が20~40であり、
前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)の炭素数が20~40であり、
前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)の炭素数が4~12であり、
前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)の炭素数が4~12である、請求項1~8いずれかに記載の産業チューブ。 - 前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、2~40質量%であり、
前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、5~45質量%であり、
前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、10~50質量%であり、
前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、10~50質量%である、請求項1~9いずれかに記載の産業チューブ。 - 前記産業チューブは、前記ポリアミドを含む単層チューブであるか、または前記ポリアミドを含む層を有する多層チューブである、請求項1~10いずれかに記載の産業チューブ。
- 前記産業チューブが、空気チューブ、油圧チューブ、ペイントスプレーチューブ、高圧チューブ、自動車配管用チューブ、冷却配管用チューブまたは医療用チューブである、請求項1~11いずれかに記載の産業チューブ。
- 前記産業チューブの外径が3.0mm~20mm、肉厚が0.5mm~3.0mmである、請求項1~12いずれかに記載の産業チューブ。
- 以下の一括重合法または分割重合法により重合を行い、ポリアミドを得ることを含む、産業チューブの製造方法:
炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)および炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)をまとめて反応させて重合する一括重合法;または
炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)とを、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)および炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)とは別に反応させて重合する分割重合法。 - 前記ポリアミドが請求項1~13いずれかに記載の産業チューブに含まれるポリアミドである、請求項14に記載の産業チューブの製造方法。
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