JP2023021955A - シームレス缶及び塗装金属板 - Google Patents

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Takuya Kashiwakura
新 櫻木
Shin Sakuragi
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楠 張
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Abstract

【課題】経時保管後に絞りしごき加工等の過酷な加工に付された場合にも、成形時の金属露出等の塗膜欠陥の発生を抑制可能な耐経時脆化性に優れる内面塗膜を有し、塗膜被覆性及び耐食性に優れた絞りしごき缶等のシームレス缶を提供することである。【解決手段】少なくとも缶内面側に内面塗膜を有するシームレス缶であって、前記内面塗膜がポリエステル樹脂を含有し、前記ポリエステル樹脂における多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸の含有量が70モル%以上且つイソフタル酸の含有量が21モル%未満であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、塗装金属板から成るシームレス缶及びこのシームレス缶を成形可能な塗装金属板に関するものであり、より詳細には、耐経時脆化性に優れ、経時保管後の過酷な絞りしごき加工による金属露出等の塗膜欠陥の発生が有効に防止されている絞りしごき缶等のシームレス缶及びこのようなシームレス缶を生産性良く成形可能な塗装金属板に関する。
アルミニウム等の金属板を熱可塑性樹脂から構成されたプラスチックフィルム(熱可塑性樹脂フィルム)で被覆した有機樹脂被覆金属板(熱可塑性樹脂被覆金属板)は、缶用材料として古くから知られており、この有機樹脂被覆金属板を絞り加工或いは絞りしごき加工等に付して、飲料等を充填するためのシームレス缶とし、或いはこれをプレス成形してイージーオープンエンド等の缶蓋とすることもよく知られている。例えば、エチレンテレフタレート単位を主体とした結晶性のポリエステル樹脂から成る熱可塑性樹脂フィルムを有機樹脂被覆層として有する有機樹脂被覆金属板は、絞りしごき加工等により成形されるシームレス缶(以下、絞りしごき缶という場合がある)用の製缶材料として使用されている(特許文献1等)。このような有機樹脂被覆金属板は、クーラント(冷却・潤滑剤)を使用しないドライ条件下で絞りしごき成形等を行うことができるため、従来の金属板からクーラントを使用して絞りしごき成形する場合に比して、環境面で利点がある。
このような有機樹脂被覆金属板は、熱可塑性ポリエステル樹脂等の予め形成された熱可塑性樹脂フィルムを金属板に熱接着により貼り合せる方法、押出された熱可塑性ポリエステル樹脂等の溶融薄膜を金属板に貼り合せる押出しラミネート法等のフィルムラミネート方式により製造されている。
しかしながら、フィルムラミネート方式は、成膜の都合上、フィルム膜厚を薄膜に制御することが困難であるため、フィルムの厚みが厚くなりやすく、経済性の面で問題となる場合がある。
このようなフィルムラミネート方式による有機樹脂被覆金属板に代えて、薄膜での成膜が可能な塗装方式により金属板上に塗膜を形成した塗装金属板から、ドライ条件下で絞りしごき缶を製造することも提案されている。
例えば下記特許文献2には、両面塗装金属板であって、加工後に缶内面側となる皮膜の乾燥塗布量が90~400mg/100cm、ガラス転移温度が50~120℃であり、かつ60℃の試験条件において、鉛筆硬度H以上、伸び率200~600%及び動摩擦係数0.03~0.25の範囲内にあるものであり、加工後に缶外面側となる皮膜の乾燥塗布量が15~150mg/100cm、ガラス転移温度が50~120℃であり、かつ60℃の試験条件において、鉛筆硬度H以上である絞りしごき缶用塗装金属板が提案されている。
特開2001―353812公報 特許第3872998号
塗装金属板を用いて、ドライ条件下で絞りしごき缶等のシームレス缶を成形する場合、塗装金属板は、成形発熱による温度上昇を伴いながら、過酷な加工・変形に付されることになる。その際、塗装金属板の金属基体上に形成された塗膜が、十分な加工性を有していなければ、金属基体の加工に追従することができず、金属露出等の塗膜欠陥の発生による塗膜被覆性の低下や破胴が生じるおそれがある。従って、金属基体上に形成される塗膜には優れた加工性(製缶加工性)が要求される。
一方、ポリエステル系塗料組成物から形成されるポリエステル系塗膜には、所定の環境下での経時保管で加工性が低下する(経時脆化)という特有の課題がある。この経時脆化現象の発生の理由は正確に解明されるには至っていないが、本発明者等は次のように推定している。即ち、塗膜中において、経時によるエンタルピー緩和によってポリエステル樹脂の分子鎖の再配向(平衡状態への移行)が起こることに起因して、塗膜が脆化し、加工性が低下すると考えられる。塗膜が経時脆化した状態で、上述のような塗装金属板を用いてドライ条件下で絞りしごき加工等の過酷な加工を行った場合、加工時に金属露出等の塗膜欠陥が生じやすくなり、内面の塗膜被覆性が不足し、十分な耐食性を有する絞りしごき缶等のシームレス缶を得ることは困難である。
上述した特許文献2は、塗装金属板の缶内面側となる面に、連続での絞りしごき加工による60℃近い発熱が発生した際にも、硬度や伸び率等を発現できる塗膜を形成させることにより、絞りしごき加工にも耐え得る塗装金属板及びこの塗装金属板から成形される絞りしごき缶を提案したものであるが、この塗装金属板を経時保管した際に生じる経時脆化に関する知見、及び塗膜の経時脆化に起因する加工性の低下についての知見は一切なく、かかる問題を解決するものではなかった。
従って本発明の目的は、経時保管後に絞りしごき加工等の過酷な加工に付された場合にも、塗膜欠陥の発生を抑制可能な耐経時脆化性に優れる塗膜を缶内面側に有し、内面の塗膜被覆性及び耐食性に優れたシームレス缶を提供することである。
また本発明の他の目的は、加工後に缶内面となる面に、経時保管後に絞りしごき加工等の過酷な加工に付された場合にも、塗膜欠陥の発生を抑制可能な耐経時脆化性に優れる塗膜を有するシームレス缶用塗装金属板を提供することである。
本発明によれば、少なくとも缶内面側に内面塗膜を有するシームレス缶であって、前記内面塗膜がポリエステル樹脂を含有し、前記ポリエステル樹脂における多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸の含有量が70モル%以上且つイソフタル酸の含有量が21モル%未満であることを特徴とするシームレス缶が提供される。
本発明のシームレス缶においては、
[1] 缶胴中央部の厚みが缶底中央部の厚みの20~75%の厚みであり、缶胴中央部の前記内面塗膜の厚みが、缶底中央部の前記内面塗膜の厚みの20~75%の厚みであること、
[2] 前記ポリエステル樹脂における多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、テレフタル酸の含有量が60モル%以上であること、
[3] 前記ポリエステル樹脂における多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、イソフタル酸の含有量が2モル%以上21モル%未満であること、
[4] 前記内面塗膜が、硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂及び/又はアミノ樹脂を含有すること、
[5] 前記内面塗膜の下記式(1a)で表されるゲル分率(A)が、90%未満であること、
ゲル分率(A)=(W2a/W1a)×100(%)・・・(1a)
式中、W1aは前記シームレス缶から切り出した塗装金属基体から単離した前記内面塗膜の質量、W2aは該単離した前記内面塗膜を常温のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量、をそれぞれ示す。
[6] 前記内面塗膜の下記式(2a)で表されるゲル分率(B)が、前記ゲル分率(A)よりも10%以上高いこと、
ゲル分率(B)=[(W4a-W5a)/(W3a―W5a)]×100(%)・・・(2a)
式中、W3aは前記シームレス缶から切り出した前記内面塗膜が形成されている塗装金属基体の質量、W4aは該塗装金属基体を80℃のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量、W5aは該塗装金属基体から前記内面塗膜を除去した後の金属基体の質量をそれぞれ示す。
[7] 前記内面塗膜と金属基体の厚み比(前記内面塗膜の厚み/金属基体の厚み)が、缶底部及び缶胴部でほぼ同じであること、
[8] 缶外面側にさらに外面塗膜を有し、前記外面塗膜がポリエステル樹脂と硬化剤としてアミノ樹脂を含有すること、
[9] 前記外面塗膜の下記式(3a)で表されるゲル分率(A)が、90%未満であること、
ゲル分率(A)=(W7a/W6a)×100(%)・・・(3a)
式中、W6aは前記シームレス缶から切り出した塗装金属基体から単離した前記外面塗膜の質量、W7aは該単離した前記外面塗膜を常温のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量、をそれぞれ示す。
[10] 缶胴中央部の前記内面塗膜の下記式(5)で表される熱収縮率が30%以下であること、
熱収縮率(%)=(ΔL/L)×100・・・(5)
:缶胴中央部から単離した塗膜の高さ方向の初期長さ
ΔL:単位面積当たり5.20×10N/mの荷重をかけながら昇温速度5℃/minで30℃から200℃まで昇温した時のL該当部分の塗膜の高さ方向における最大収縮長さ
[11] 缶胴中央部の前記内面塗膜の下記式(6)で表される熱収縮率が50%以下であること、
熱収縮率(%)=(ΔL/L)×100・・・(6)
:缶胴中央部から単離した塗膜の高さ方向の初期長さ
ΔLは無荷重状態で昇温速度5℃/minで30℃から200℃まで昇温した時のL該当部分の塗膜の高さ方向における最大収縮長さ
[12] 前記内面塗膜の被覆度が、ERV換算で200mA未満であること、
[13] 絞りしごき缶であること、
が好適である。
尚、本明細書において、常温とは、20℃±5℃の温度を意味する。
本発明によればまた、少なくとも加工後に缶内面となる面に内面塗膜を有するシームレス缶用塗装金属であって、前記内面塗膜がポリエステル樹脂と硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂及び/又はアミノ樹脂を含有し、前記ポリエステル樹脂における多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸の含有量が70モル%以上且つイソフタル酸の含有量が21モル%未満であり、前記内面塗膜の下記式(1b)で表されるゲル分率(A)が、90%未満であり、前記内面塗膜の下記式(2b)で表されるゲル分率(B)が、前記ゲル分率(A)よりも10%以上高いことを特徴とする塗装金属板が提供される。
ゲル分率(A)(%)=(W2b/W1b)×100・・・(1b)
式中、W1bは前記塗装金属板から単離した前記内面塗膜の質量、W2bは該単離した前記内面塗膜を常温のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量をそれぞれ示す。
ゲル分率(B)(%)=[(W4b-W5b)/(W3b-W5b)]×100・・・(2b)
式中、W3bは前記内面塗膜が形成されている塗装金属板の質量、W4bは該塗装金属板を80℃のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量、W5bは該塗装金属板から前記内面塗膜を除去した後の金属基体の質量をそれぞれ示す。
本発明の塗装金属板においては、加工後に缶外面となる面にさらに外面塗膜を有し、前記外面塗膜がポリエステル樹脂と硬化剤としてアミノ樹脂を含有し、前記外面塗膜の下記式(3b)で表されるゲル分率(A)が、90%未満であることが好適である。
ゲル分率(A)(%)=(W7b/W6b)×100・・・(3b)
式中、W6bは前記塗装金属板から単離した前記外面塗膜の質量、W7bは該単離した前記外面塗膜を常温のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量をそれぞれ示す。
前述した通り、ポリエステル系塗膜の経時脆化は、エンタルピー緩和によってポリエステル樹脂の分子鎖の再配向(平衡状態への移行)が起こることにより生じると推定される。本発明者らは、かかるポリエステル系塗膜の経時脆化について鋭意検討した結果、その原因となるポリエステル樹脂のエンタルピー緩和現象は、ポリエステル樹脂の構成モノマーに大きく影響を受けることが分かった。以下に詳しく説明する。
一般に、上述のポリエステル系塗膜の主成分として用いられるポリエステル樹脂は、塗膜の耐熱性や強度等を確保する目的で、構成モノマーである多価カルボン酸成分として、テレフタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が多く含有されている場合が多い。本発明者らは、このような芳香族ジカルボン酸成分の中でも、イソフタル酸成分を一定割合(比率)以上含有するポリエステル樹脂を用いた場合に、エンタルピー緩和及びそれに伴う塗膜の経時脆化が起こりやすくなることを見出すと共に、ポリエステル樹脂の構成する多価カルボン酸成分として、イソフタル酸成分の含有量が一定割合(比率)より少ないポリエステル樹脂を用いることにより、エンタルピー緩和を抑制でき、塗膜の経時脆化を防止できることを見出した。
このような観点から、本発明においては、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、イソフタル酸成分の含有量が21モル%未満のポリエステル樹脂を用いることにより、塗膜の経時脆化を有効に抑制することが可能になり、経時保管後に、缶胴中央部における前記内面塗膜の厚みが、缶底中央部の前記内面塗膜の厚みの20~75%の厚みとなるようなドライ条件下での絞りしごき加工等の過酷な加工に付された場合にも、缶胴部での破断(本発明で破胴ということがある)が生じてしまうことはもちろん、金属露出が有効に防止され、絞りしごき加工等を行った後も高い塗膜被覆性を有し、優れた耐食性を有する絞りしごき缶等のシームレス缶を提供可能となる。
このことは後述する実施例の結果からも明らかであり、本発明に用いる塗装金属板は40℃条件下で1ヶ月保管した後に、折り曲げ試験を行った際にも優れた加工性を有しており、耐経時脆化性に優れている。また、本発明の塗装金属板は、絞りしごき成形により絞りしごき缶を成形した場合にも、ERV換算で表す内面塗膜の被覆度が200mA未満と金属露出が有効に防止されており、優れた製缶加工性を有している。
(塗装金属板)
本発明に用いる塗装金属板は、缶内面側となる面の内面塗膜が、ポリエステル樹脂を含有し、前記ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸成分の含有量が70モル%以上且つイソフタル酸成分の含有量が21モル%未満であることが第一の重要な特徴である。
本発明の塗装金属板においては、内面塗膜に含有されるポリエステル樹脂のイソフタル酸成分の含有量が21モル%未満、好ましくは20モル%未満、より好ましくは18モル%未満、更に好ましくは16モル%未満の範囲にあることにより、前述した通り、塗膜の経時脆化の原因であるエンタルピー緩和、即ちポリエステル樹脂の分子鎖の再配向(平衡状態への移行)が抑制されており、その結果、経時保管された後にも塗膜の加工性が低下せず、ドライ条件下での絞りしごき加工のような過酷な加工により成形されても、破胴はもちろん、金属露出等の塗膜欠陥の発生が有効に防止された塗膜被覆性に優れたシームレス缶を成形することが可能である。
一方で、シームレス缶の内容物に接する内面側に形成される内面塗膜には、製缶加工性以外にも内容物の風味やフレーバーを損なうことがないこと、すなわち塗膜成分の溶出が抑制されていると共に、内容物が有する香気成分(フレーバー成分)を収着(吸着)しないこと(耐香気収着性)が要求されるが、多価カルボン酸成分としてイソフタル酸成分が、耐経時脆化性に影響しない範囲で適度に含有されているポリエステル樹脂を用いた場合、イソフタル酸成分が全く含有されていないポリエステル樹脂を用いた場合に比して、塗膜の緻密化により耐香気収着性を向上できる場合がある。これは、適度にイソフタル酸を含有するポリエステル樹脂を用いることで、塗膜が緻密化(高密度化)することによると推察される。また、イソフタル酸成分が適度に含有されていることで、塗膜の製缶加工性も向上する場合があり、それにより成形時の塗膜欠陥の発生を抑制できる。耐経時脆化性及び耐香気収着性、製缶加工性を考慮した際の、ポリエステル樹脂のイソフタル酸含有量としては、2モル%以上21モル%未満、好ましくは3モル%以上20モル%未満、より好ましくは4モル%以上18モル%未満、更に好ましくは4モル%以上16モル%未満、特に好ましくは7.2モル%より高く16モル%未満、最も好ましくは11モル%以上16モル%未満が望ましい。
また経時脆化を抑制する観点の他、形成される塗膜の硬度や耐熱性、耐香気収着性、耐レトルト性等の観点から、内面塗膜に含有されるポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸成分の含有量が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であることも重要である。芳香族ジカルボン酸成分の含有量が70モル%未満の場合、塗膜の硬度や耐熱性、耐香気収着性、耐レトルト性が低下するおそれがある。さらに耐経時脆化性や耐熱性の観点から、芳香族ジカルボン酸の中でも、テレフタル酸を60モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上の量で含有することが好適である。
本発明の塗装金属板が、優れた耐経時脆化性を有し、経時保管された後においても、優れた加工性を有することは、本発明の塗装金属板が、40℃の条件下で1ヶ月間保管された後に、折り曲げ加工を施された折り曲げ部のERV(エナメルレーター値;Enamel Rater Value)が3mA未満であることからも明らかであり、優れた加工性を有している。尚、経時脆化評価の詳細な評価方法については後述する。
本発明に用いる塗装金属板は、加工後に缶外面側となる面にさらに外面塗膜を有する両面塗装金属板であることが望ましく、更に前記外面塗膜もポリエステル樹脂を含有していることが望ましい。また、前記外面塗膜に含有されるポリエステル樹脂においても、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸成分の含有量が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であることが望ましい。更に、イソフタル酸成分の含有量が、これに限定されないが、21モル%未満、好ましくは20モル%未満、より好ましくは16モル%未満であることが望ましい。
本発明の塗装金属板においては、内面塗膜全体の架橋度の度合いを表すゲル分率が所定の範囲にあることが、第二の重要な特徴である。より詳細には、上記式(1b)で求められる単離塗膜の状態で測定した内面塗膜のゲル分率(A)が、90%未満であることが望ましい。この理由について以下に説明する。
塗装金属板からドライ条件下で成形された絞りしごき缶等のシームレス缶において、缶体成形後に、絞りしごき加工等の過酷な加工により生じた塗膜中の残留応力が原因となって、塗膜-金属基体間の密着性(以下、「塗膜密着性」ということがある)が顕著に低下し、耐食性等の諸性能に悪影響を与える場合がある。この残留応力は、缶体に所定の条件で熱処理を施すことによって除去でき、それにより塗膜密着性を向上させることができることが分かった。しかしながら、そのような熱処理を施した場合、過酷な加工により生じた塗膜の残留応力が一気に緩和されるに伴い、塗膜と金属基体界面に収縮力が作用し、特に缶胴部の加工が厳しく薄肉化されている部位において、金属基体から塗膜が剥離し、塗膜被覆性が低下する場合があった。このような熱処理時の塗膜剥離現象を抑制するためには、加工時に生じる塗膜の残留応力を低減させる必要がある。
本発明者らは、加工後の塗膜の残留応力の低減及びそれによる熱処理時の塗膜剥離の抑制について鋭意検討した結果、内面塗膜全体の架橋度を表すゲル分率(架橋反応によりゲル化し、溶剤に対し不溶となった塗膜成分の質量割合)、より詳細には上記式(1b)で求められる単離塗膜の状態で測定した内面塗膜のゲル分率(A)が、加工後の塗膜の残留応力の大きさ、ひいては熱処理時の塗膜剥離現象に大きく影響することを見出すと共に、熱処理時の塗膜剥離を生じないゲル分率(A)の範囲を見出した。
前述した通り、塗装金属板を用いて、ドライ条件下で絞りしごき缶等のシームレス缶を高速で成形する場合、塗装金属板における加工後の塗膜には残留応力が生じる。特に、塗膜を構成するポリエステル樹脂等の主剤樹脂が硬化剤により高度に架橋されている場合においては、残留応力は大きくなると考えられる。
塗装金属板の内面塗膜における上記ゲル分率(A)は、後述するように内面塗膜全体のゲル分率、即ち塗膜全体の架橋度合いを表すと考えている。塗装金属板の内面塗膜における上記ゲル分率(A)が90%以上では、塗膜全体が高度に架橋されていることを示し、そのため加工後の残留応力が大きくなり、熱処理時の塗膜剥離を防止することが困難となる。一方、上記ゲル分率(A)を90%未満に調整した場合、塗膜全体の架橋度が高すぎず適度に制御されているため、塗装金属板が絞りしごき加工等の加工に付された場合に、加工後の塗膜の残留応力が小さくなると考えられる。これにより、熱処理時における残留応力の緩和に伴う塗膜と金属基体間の界面に生じる収縮力を小さくすることが可能となり、結果として塗膜剥離の発生が防止される。すなわち、本発明のシームレス缶においては、シームレス缶成形後に熱処理を施した後にも、塗膜剥離が有効に防止され塗膜被覆性に優れていると共に、熱処理により残留応力が除去されることで塗膜密着性が向上されていることから優れた耐食性を発現することが可能となる。
上記の通り、本発明に用いる塗装金属板の内面塗膜において、上記式(1b)で求められる単離塗膜の状態で測定した内面塗膜のゲル分率(A)が90%未満、好ましくは40%以上90%未満、より好ましくは45~88%、更に好ましくは50~85%の範囲、特に好ましくは55%以上85%未満、最も好ましくは55~80%の範囲内であることが望ましい。上記範囲よりもゲル分率が高い場合には、熱処理時に塗膜剥離が発生するおそれがある。40%よりも低い場合には、塗膜の架橋度合いが低くなり、耐熱性や耐レトルト性、更には耐経時脆化性が低下するおそれがある。
また、本発明に用いる塗装金属板の上述の外面塗膜においても、熱処理時の塗膜剥離耐性の観点から、上記式(3b)で求められる外面塗膜のゲル分率(A)が90%未満、好ましくは40%以上90%未満、より好ましくは50~88%、更に好ましくは55~85%の範囲、特に好ましくは60~84%、最も好ましくは65~84%の範囲内であることが望ましい。
更に、本発明の塗装金属板においては、上記式(2b)で求められる塗装金属板の状態で測定した内面塗膜のゲル分率(B)が、上述のゲル分率(A)よりも10%以上高いことが望ましい。この理由について以下に説明する。
ポリエステル系塗膜において、特定のポリエステル樹脂と硬化剤の組合せによっては、硬化剤が塗膜表面に近傍に濃化した塗膜構造になることが知られている。これはポリエステル樹脂と硬化剤の相溶性の低さに起因した現象と推察される。このような塗膜構造の場合、塗膜全体の架橋度に比して、塗膜表面の架橋度が高くなる場合が多い。
本発明においては、前述した通り、成形加工後の残留応力、及び熱処理時の塗膜剥離の観点から、内面塗膜においては、上述のゲル分率(A)を90%未満とし、塗膜全体の架橋度を適度に抑える必要がある一方で、塗膜表面においては耐熱性、耐香気収着性等の観点から、高度に架橋されていることが望ましく、即ち、前述したような硬化剤が塗膜表面近傍に濃化した塗膜構造を有していることが望ましい。
塗装金属板の内面塗膜における上述のゲル分率(B)は、塗装金属基体の状態で溶剤(MEK)中に浸漬して塗膜中の溶剤に可溶な未架橋成分(未硬化成分)を抽出し、溶剤に対し不溶となった塗膜成分の質量から求められる。この方法でゲル分率を測定した場合、溶剤と接触しない金属基体側の面からは未架橋成分が抽出されず、溶剤と接触する塗膜表面から抽出されることになるから、前述したような塗膜表面に硬化剤が濃化した濃化層を有し、塗膜表面のみが高度に架橋した塗膜の場合は、塗膜表面の硬化剤の濃化層の存在により溶剤が塗膜内部まで侵入できず、塗膜内部に存在する未架橋成分は抽出されにくくなる。そのため、上記方法で測定したゲル分率(B)は、塗膜全体の架橋度というより、塗膜表面近傍の架橋度を強く反映したものと言える。
これに対し、上述のゲル分率(A)は、塗装金属基体から単離した単離塗膜の状態で溶剤中に浸漬して未架橋成分を抽出し、溶剤に不溶となった塗膜成分の質量から求められる。この方法の場合、塗膜表面だけでなく、金属板側の面からも未架橋部分が抽出されるため、前述の硬化剤が塗膜表面近傍に濃化したような塗膜構造を有する塗膜の場合でも、溶剤が内部まで侵入して未架橋成分が抽出されることになる。そのため、上記方法で測定したゲル分率(A)は、塗膜全体の架橋度を反映したものと言える。従って、塗膜表面に硬化剤が濃化し、塗膜表面のみが高度に架橋した塗膜では、上述のゲル分率(A)とゲル分率(B)の値に差が生じ、ゲル分率(B)の方が高い値となる場合が多い。一方、ポリエステル樹脂と硬化剤の相溶性が高く、硬化剤が塗膜中に比較的均一に分布し、塗膜全体の架橋度が均一な塗膜の場合は、上記ゲル分率(A)と上記ゲル分率(B)は比較的近い値をとる場合が多い。
前述したとおり、本発明においては、塗膜全体に比して塗膜表面の架橋度が高いことが望ましいことから、塗装金属板の内面塗膜において、上述の塗膜全体の架橋度を示すゲル分率(A)に比して、塗膜表面の架橋度を示すゲル分率(B)の方が高いことが望ましく、具体的にはゲル分率(A)に比して、ゲル分率(B)が10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上高いことが望ましい。また、塗装金属板の内面塗膜におけるゲル分率(B)の範囲としては50%以上、好ましくは50~99%、より好ましくは60~98%、更に好ましくは70~97%、特に好ましくは80~97%の範囲内であることが望ましく、それにより上述した性能を兼ね備えた塗装金属板を提供することが可能になる。ゲル分率(A)とゲル分率(B)の差が10%以下、或いはゲル分率(B)が上記範囲より低い場合は、塗膜表面の架橋度が低くなりなることで、耐熱性が低下する傾向にある。そのため、絞りしごき缶等のシームレス缶を高速で成形する場合においては、温度上昇がより顕著になるため、成形した際に塗膜が金型に張り付きやすくなることがある。特に缶内面側においては、絞りしごき成形後、成形パンチから缶体を抜き取る時点で、缶体が成形パンチに張り付き、成形パンチと缶体が分離しにくくなる現象(ストリッピング性不良)が生じ、それにより缶体が座屈、または破胴するなど、生産性が低下するおそれがある。また、成形された絞りしごき缶の耐香気収着性が低下するおそれがある。
また、本発明に用いる塗装金属板の上述の外面塗膜におけるゲル分率(B)は、下記式(4b)から算出され、ゲル分率(B)の範囲としては、これに限定されないが40%以上、好ましくは40~99%、より好ましくは50~98%、更に好ましくは55~97%、特に好ましくは60~95%の範囲内であることが望ましい。
ゲル分率(B)(%)=[(W9b-W10b)/(W8b―W10b)]×100・・・(4b)
式中、W8bは前記外面塗膜が形成されている塗装金属板の質量、W9bは該塗装金属板を80℃のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量、W10bは該塗装金属板から前記外面塗膜を除去した後の金属基体の質量をそれぞれ示す。
外面塗膜のゲル分率(B)が上記範囲より低い場合は塗膜表面の架橋度が低くなることで塗膜硬度が低下し、絞りしごき缶等のシームレス缶の成形時に塗膜削れなどの外面不良が発生するおそれがある。
前記内面塗膜のガラス転移温度(Tg)としては、30℃以上、好ましくは40℃より高い、より好ましくは50℃より高く120℃以下、更に好ましくは55℃より高く110℃以下、特に好ましくは60~100℃、最も好ましくは65℃より高く90℃以下の範囲にあることが好適である。上記範囲よりもTgが低い場合には、成形後の缶体に内容物を充填した際に、内容物のフレーバー成分を収着しやすくなり、耐香気収着性が劣るおそれがあると共に、塗膜のバリア性が低下し、耐食性が劣るようになるおそれがある。一方Tgが120℃を超える場合は、塗膜の加工性及び伸び性が低下し、成形により金属露出が発生するおそれがあり、製缶加工性に劣るようになると共に、塗膜の残留応力が大きくなることで、熱処理時に塗膜剥離するおそれがある。
上記外面塗膜のTgについても30℃以上、好ましくは40℃より高い、より好ましくは50℃より高く120℃以下、更に好ましくは55℃より高く110℃以下、特に好ましくは60~100℃、最も好ましくは65℃より高く90℃以下の範囲にあることが好適である。上記範囲よりもTgが低い場合には、塗膜の硬度が低くなることで、塗膜削れなどの外面不良が発生するおそれがある。一方Tgが120℃を超える場合は、塗膜の加工性及び伸び性が低下し、成形により金属露出が発生するおそれがあり、製缶加工性に劣るようになる。
上述したように、少なくとも缶内面となる面に内面塗膜を有する塗装金属板を用いて絞りしごき等によりシームレス缶を成形することで、缶内面側の底部から胴部にかけて連続した前記内面塗膜で全体を被覆することが可能となる。さらに、成形後に缶外面となる面にも、外面塗膜を有する両面塗装金属板を用いた場合には、缶外面側の底部から胴部にかけて連続した前記外面塗膜で全体を被覆することが可能となる。
内面塗膜の膜厚は、乾燥膜厚で0.2~20μm、好ましくは1~16μm、より好ましくは2μmより大きく12μm以下の範囲にあることが好適である。また乾燥塗膜質量としては、3~300mg/dm、好ましくは15~220mg/dm、より好ましくは15~150mg/dm、より好ましくは25mg/dmより大きく150mg/dm以下の範囲にあることが好適である。上記範囲よりも薄膜の場合は、成形時に金属露出が発生しやすくなり、内面塗膜の被覆性に劣るようになる。一方上記範囲よりも厚膜の場合は、加工時に生じる残留応力が大きくなるため、成形後の熱処理時に塗膜剥離が生じやすくなると共に、必要以上に厚膜となるため経済性に劣る。
さらにシームレス缶に充填される内容物が、腐食性が強い酸性飲料の場合は、耐食性を確保するために膜厚を比較的厚くする必要があり、5μmより大きく16μm以下、好ましくは6μmより大きく12μm以下、より好ましくは6.5~10μmの範囲にあることが好適である。また乾燥塗膜質量としては、70mg/dmより大きく150mg/dm以下、好ましくは85mg/dmより大きく150mg/dm以下、より好ましくは90~140mg/dmの範囲であることが好適である。上記範囲よりも薄膜の場合は耐食性に劣り、上記範囲を超えた場合には絞りしごき成形後の熱処理時に塗膜剥離が生じやすくなる。
一方シームレス缶に充填される内容物が、腐食性が比較的弱い低酸性飲料等の場合は、比較的薄膜でも耐食性を確保可能のため1μm以上6.5μm未満、好ましくは2μmより大きく6.5μm未満、より好ましくは2.5~6μmの範囲であることが好ましい。また乾燥塗膜質量としては、15mg/dm以上90mg/dm未満、好ましくは25mg/dmより大きく90mg/dm未満、より好ましくは30~85mg/dmの範囲であることが好適である。上記範囲よりも薄膜の場合は耐食性に劣り、上記範囲を超えた場合には必要以上に厚膜となり、経済性に劣る。
また外面塗膜の膜厚は、乾燥膜厚で0.2~20μm、好ましくは1~16μm、より好ましくは2μmより大きく12μm以下、更に好ましくは2μmより大きく6.5μm以下の範囲にあることが好適である。また乾燥塗膜質量としては、3~300mg/dm、好ましくは15~220mg/dm、より好ましくは25mg/dmより大きく150mg/dm以下、更に好ましくは25mg/dmより大きく90mg/dm未満の範囲であることが好適である。上記範囲よりも薄膜の場合は、成形時に金属露出が発生しやすくなり、外面の塗膜被覆性に劣るようになる。一方上記範囲よりも厚膜の場合は、加工時に生じる残留応力が大きくなるため、絞りしごき成形後の熱処理時に塗膜剥離が生じやすくなる。
なお、塗装金属板の内面塗膜と外面塗膜の膜厚に関して、より高い被覆性が求められる内面塗膜の方が、外面塗膜よりも膜厚が厚くなることが好ましい。
塗装金属板の金属基体として用いる金属板としては、これに限定されないが、例えば、熱延伸鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、合金メッキ鋼板、アルミニウム亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板、スズメッキ鋼板、ステンレス鋼板、銅板、銅メッキ鋼板、ティンフリースチール、ニッケルメッキ鋼板、極薄スズメッキ鋼板、クロム処理鋼板などが挙げられ、必要に応じてこれらに各種表面処理、例えばリン酸クロメート処理やジルコニウム系の化成処理、ポリアクリル酸などの水溶性樹脂と炭酸ジルコニウムアンモン等のジルコニウム塩を組み合わせた塗布型処理等を行ったものが使用できる。
本発明においては、上記金属板の中でもアルミニウム板が好ましく、アルミニウム板としては、純アルミニウム板の他、アルミニウム合金板、具体的には「JIS H 4000」における3000番台、5000番台、6000番台のアルミニウム合金板を好適に使用することができ、強度等の面からアルミニウム合金板が好適である。アルミニウム合金板としては、前述の各種表面処理を施した表面処理アルミニウム合金板に加え、上述の塗料組成物から成る塗膜が金属基体との密着性に優れるため、表面処理を施していない無処理のアルミニウム合金板も好適に用いることが出来る。
金属板の厚みは、缶体強度、成形性の観点から0.1~1.00mm、好ましくは0.15~0.40mm、より好ましくは0.15~0.30mm、更に好ましくは0.20~0.28mmの範囲内にあるのが良い。
[内面塗膜及び外面塗膜]
本発明の塗装金属板及び後述するシームレス缶における内面塗膜、好適には内面塗膜及び外面塗膜の両方が、主剤としてポリエステル樹脂、好ましくは更に硬化剤を含有して成る。
前記内面塗膜中において、ポリエステル樹脂、好ましくは後述する非結晶性ポリエステル樹脂の含有量が50質量%より高いことが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
前記外面塗膜中においても同様に、ポリエステル樹脂、好ましくは非結晶性ポリエステル樹脂の含有量が50質量%より高いことが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
<ポリエステル樹脂>
本発明のシームレス缶及び塗装金属板において、内面塗膜及び外面塗膜を構成する主剤(主成分)としてポリエステル樹脂を用いるが、ここで主剤とは、塗膜を構成する樹脂成分の中で最も含有量(質量比率)が多いものとする。本発明においては、上記内面塗膜及び外面塗膜を構成する樹脂成分のうち、ポリエステル樹脂の占める質量割合が50質量%より高いことが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分としては、前述した通り、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸の含有量が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上の範囲にあることが望ましく、且つ耐経時脆化性の観点から、イソフタル酸の含有量が21モル%未満、好ましくは20モル%未満、より好ましくは18モル%未満、更に好ましくは16モル%未満であるポリエステル樹脂であることが望ましい。なお、芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等を例示できる。耐経時脆化性や耐熱性の観点から、テレフタル酸を60モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上の量で含有することが好適である。
さらに、耐経時脆化性と耐香気収着性、製缶加工性の両立の観点から、イソフタル酸の含有量が、2モル%以上21モル%未満、好ましくは3モル%以上20モル%未満、より好ましくは4モル%以上18モル%未満、更に好ましくは4モル%以上16モル%未満、特に好ましくは7.2モル%より高く16モル%未満、最も好ましくは11モル%以上16モル%未満のポリエステル樹脂が望ましい。
ポリエステル樹脂として、2種以上のポリエステル樹脂のブレンド体を用いる場合においても同様に、ポリエステル樹脂のブレンド体を構成する全ての多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸の含有量が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上の範囲にあることが望ましく、且つ耐経時脆化性の観点から、イソフタル酸の含有量が21モル%未満、好ましくは20モル%未満、より好ましくは18モル%未満、更に好ましくは16モル%未満であるポリエステル樹脂のブレンド体であることが望ましい。また、テレフタル酸を60モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上の量で含有することが好適である。
さらに、耐経時脆化性と耐香気収着性の両立の観点から、イソフタル酸の含有量が、2モル%以上21モル%未満、好ましくは3モル%以上20モル%未満、より好ましくは4モル%以上18モル%未満、更に好ましくは4モル%以上16モル%未満、特に好ましくは7.2モル%より高く16モル%未満、最も好ましくは11モル%以上16モル%未満のポリエステル樹脂のブレンド体であることが望ましい。
多価カルボン酸成分における芳香族ジカルボン酸以外の残余の成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、テルペン-マレイン酸付加体などの不飽和ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,2-シクロヘキセンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、メチルシクロへキセントリカルボン酸等の3価以上の多価カルボン酸等が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を選択し使用できる。
なお、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分として、脂肪族ジカルボン酸や脂環式ジカルボン酸を、上記芳香族ジカルボン酸の残余の割合、すなわち30モル%未満の量で含有しても良いが、脂肪族ジカルボン酸成分や脂環式ジカルボン酸成分の割合が多くなると、香気成分を収着しやすくなることで塗膜の耐香気収着性が劣るおそれがある。従って、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分に占める、脂肪族ジカルボン酸や脂環式ジカルボン酸の割合は30モル%未満、好ましくは20モル%未満、より好ましくは10モル%未満、更に好ましくは7モル%未満、特に好ましくは5モル%未満、最も好ましくは4モル%未満であることが望ましい。
ポリエステル樹脂として、2種以上のポリエステル樹脂のブレンド体を用いる場合においては、ポリエステル樹脂のブレンド体を構成する全ての多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、脂肪族ジカルボン酸や脂環式ジカルボン酸の割合は30モル%未満、好ましくは20モル%未満、より好ましくは10モル%未満、更に好ましくは7モル%未満、特に好ましくは5モル%未満、最も好ましくは4モル%未満であることが望ましい。
またポリエステル樹脂の構成する多価カルボン酸成分として、耐香気収着性を損なわない範囲で、炭素数6~14の脂肪族ジカルボン酸が少量含有されていることで、成形時の塗膜の加工性が向上し、塗膜被覆性をより向上できる場合がある。炭素数6~14の脂肪族ジカルボン酸としては、具体的にはアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を挙げることができる。炭素数6~14の脂肪族ジカルボン酸の中でも特に、アジピン酸、セバシン酸が好ましく、特にセバシン酸が好ましい。
上記ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたときの炭素数6~14の脂肪族ジカルボン酸の含有量としては、0.2~15モル%、好ましくは0.3~10モル%、より好ましくは0.5モル%以上6モル%未満の範囲、更に好ましくは1~5モル%、特に好ましくは1モル%以上4モル%未満の範囲であることが望ましい。上記範囲よりも含有量が少ない場合は、上述の炭素数6~14の脂肪族ジカルボン酸含有による加工性向上の効果が得られにくい。一方で、上記範囲よりも含有量が多くなると、ポリエステル樹脂のエンタルピー緩和が起こりやすくなり、塗膜が経時脆化しやすくなるおそれがあると共に、耐香気収着性が劣るようになるおそれもある。
ポリエステル樹脂として、2種以上のポリエステル樹脂のブレンド体を用いる場合においても同様に、ポリエステル樹脂のブレンド体を構成する全ての多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、炭素数6~14の脂肪族ジカルボン酸、好ましくはアジピン酸又はセバシン酸を上記の範囲で含有することが好ましい。
ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、高分子鎖の立体障害を生じにくい分子構造を有する多価アルコール成分を、ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分の合計量を100モル%としたとき20モル%以上の量で含有することが好適である。
このような多価アルコール成分としては、これに限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール等を例示することができ、これらの中から選ばれる少なくとも1種、又は2種以上を併せて20モル%以上、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましく50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上、最も好ましくは70モル%以上の量で含有することが好適である。それにより、塗装金属板からシームレス缶を成形する際、高分子鎖の回転による応力緩和が起こりやすくなると考えられ、その結果、成形後の塗膜の残留応力を低減し、熱処理時の塗膜剥離の抑制につながるものと推察される。
更に、耐香気収着性の観点から、ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分の合計量を100モル%としたとき、上記1,4-ブタンジオールは40モル%未満、より好ましくは30モル%未満、更に好ましくは20モル%未満、特に好ましくは10モル%未満であることが望ましい。1,4-ブタンジオールは40モル%以上の場合、耐香気収着性が劣るようになるおそれがある。
ポリエステル樹脂として、2種以上のポリエステル樹脂のブレンド体を用いる場合においても、ポリエステル樹脂のブレンド体を構成する全ての多価アルコール成分のトータルに占める、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコールの中から選ばれる少なくとも1種、又は2種以上を併せて20モル%以上、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましく50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上、最も好ましくは70モル%以上の量で含有することが好適である。
更に、耐香気収着性の観点から、ポリエステル樹脂ブレンドを構成する多価アルコール成分の合計量を100モル%としたとき、1,4-ブタンジオールは40モル%未満、より好ましくは30モル%未満、更に好ましくは20モル%未満、特に好ましくは10モル%未満であることが望ましい。
多価アルコール成分の残余の成分として、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,8-オクタンジオール、4-プロピル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、などの脂肪族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のエーテルグリコール類、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカングリコール類、水添ビスフェノール類、などの脂環族ポリアルコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、などの3価以上のポリアルコール等から1種、または2種以上の組合せで使用することができる。
ポリエステル樹脂は、上記の多価カルボン酸成分の1種類以上と多価アルコール成分の1種類以上とを重縮合させることや、重縮合後に多価カルボン酸成分、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等で解重合する方法、また、重縮合後に酸無水物、例えば 無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、エチレングリコールビストリメリテート二無水物等を開環付加させること等、公知の方法によって製造することができる。
ポリエステル樹脂は、硬化性及び耐レトルト性、金属基体との密着性等の観点から、酸価が0.1~40mgKOH/g、好ましくは酸価が0.5~25mgKOH/g、より好ましくは1~10mgKOH/g、更に好ましくは1.0mgKOH/g以上10mgKOH/g未満、特に好ましくは1.0mgKOH/g~8mgKOH/g、最も好ましくは1.0mgKOH/g以上5mgKOH/g未満の範囲にあることが望ましい。上記範囲よりも酸価が低い場合には、金属基体と塗膜の密着性が低下するおそれがある。一方、上記範囲よりも酸価が高い場合には、上記範囲にある場合に比して塗膜が吸水しやすくなり、耐レトルト性が低化するおそれがあると共に、硬化剤との反応点が増えることで塗膜の架橋密度が高くなり、製缶加工性や塗膜剥離耐性が低下することで金属露出が発生し、塗膜の被覆性が低下するおそれがある。
なお、ポリエステル樹脂が2種類以上のポリエステル樹脂をブレンドしたブレンド体である場合においては、各々のポリエステル樹脂の酸価と質量分率を乗じて得られた値の総和を、ブレンド体の平均酸価(AVmix)とし、その平均酸価が上述した酸価範囲内にあれば良い。
ポリエステル樹脂の水酸基価については、これに限定されるものではないが、製缶加工性、熱処理時の塗膜剥離、耐レトルト白化性等の観点から20mgKOH/g以下、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは1~10mgKOH/g、更に好ましくは2~8mgKOH/gの範囲にあることが望ましい。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は30℃以上、好ましくは40℃より高い、より好ましくは50℃より高く120℃以下、更に好ましくは55℃より高く110℃以下、特に好ましくは60~100℃、最も好ましくは65℃より高く90℃以下の範囲にあることが好適である。上記範囲よりもTgが低くなると、上記したような絞りしごき加工等により製造されたシームレス缶に内容物を充填した際、樹脂の運動性の増加により、内容物に含まれる香気成分が塗膜内部に拡散しやすくなるため、香気成分の塗膜への収着量も増加し、耐香気収着性が劣るようになるおそれがあると共に、耐熱性や耐食性、耐レトルト性も劣るようになるおそれがある。一方Tgが120℃を超える場合は、塗膜の加工性及び伸び性が低下することで製缶加工性が劣るようになり、成形により金属露出が発生するおそれがあり、結果として成形後の塗膜の被覆性が劣化すると共に、成形時の残留応力が大きくなることで、熱処理時の塗膜剥離耐性が劣化するおそれがある。
本発明においては、Tgの異なる2種以上のポリエステル樹脂をブレンドして用いることもでき、Tgの異なるポリエステル樹脂をブレンドすることで、ポリエステル樹脂1種のみを使用した場合に比べ、耐衝撃性に優れ、外部から衝撃を受けても塗膜欠陥のできにくい塗膜を形成できる場合がある。
その場合においても、下記式(7)により算出されるポリエステル樹脂ブレンドのTgmixが上記のTg範囲にあれば良い。
1/Tgmix=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm)・・・(7)
W1+W2+…+Wm=1
式中、Tgmixはポリエステル樹脂ブレンドのガラス転移温度(K)を表わし、Tg1,Tg2,…,Tgmは使用する各ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂1,ポリエステル樹脂2,…ポリエステル樹脂m)単体のガラス転移温度(K)を表わす。また、W1,W2,…,Wmは各ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂1,ポリエステル樹脂2,…ポリエステル樹脂m)の質量分率を表わす。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、これに限定されるものではないが、製缶加工性の観点から、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは3,000~50,000、更に好ましくは5,000~20,000、特に好ましくは10,000~20,000の範囲であることが好適である。上記範囲よりも小さいと塗膜が脆くなり、製缶加工性に劣る場合があり、上記範囲よりも大きいと塗料安定性が低下するおそれがある。
またポリエステル樹脂としては、製缶加工性や耐デント性、塗料化の観点から非結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。ここで非結晶性とは、示査走査型熱量計(DSC)による測定において、明確な結晶成分の融点を示さないことを意味する。非結晶性ポリエステル樹脂の場合、結晶性のポリエステル樹脂に比して、溶剤への溶解性に優れ、塗料化が容易であると共に、製缶加工性や耐デント性に優れた塗膜を形成できる。
なお、本発明においては、上記内面塗膜及び/又は外面塗膜に含有される全てのポリエステル樹脂成分のうち、非結晶性ポリエステル樹脂が占める質量割合が40質量%より高いことが好ましく、50質量%より高いことがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、80質量%以上であることが最も好ましい。
<硬化剤>
本発明の塗装金属板及びシームレス缶における内面塗膜及び外面塗膜は、硬化剤を含有することが望ましい。硬化剤が、主成分であるポリエステル樹脂の官能基、例えばカルボキシル基や水酸基と反応し架橋構造を形成することで、塗膜の耐熱性や耐レトルト性等を顕著に向上させることができる。
このような硬化剤としては、イソシアネート化合物、レゾール型フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、β-ヒドロキシアルキルアミド化合物などを挙げることができる。特に硬化性や衛生性等の観点から、レゾール型フェノール樹脂、アミノ樹脂が好適である。
本発明の塗装金属板シームレス缶においては、内面塗膜を形成する塗料組成物(以下、「内面用塗料組成物」ということがある)には、レゾール型フェノール樹脂、アミノ樹脂が好適であり、特に製缶加工性や耐香気収着性の観点からレゾール型フェノール樹脂をより好適に使用することができる。
外面塗膜を形成する塗料組成物(以下、「外面用塗料組成物」ということがある)には、硬化剤由来の着色がなく透明な塗膜を形成可能なアミノ樹脂を好適に使用することができる。一方、前述のレゾール型フェノール樹脂は、形成される塗膜が黄色くなることから、外面塗膜を形成する塗料組成物に使用する場合は注意が必要である。
≪レゾール型フェノール樹脂≫
レゾール型フェノール樹脂としては、例えばo-クレゾール、p-クレゾール、p-tert-ブチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、フェノール、m-クレゾール、m-エチルフェノール、3,5-キシレノール、m-メトキシフェノール等のフェノール化合物の1種または2種以上を混合して使用し、これらフェノール化合物とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて成るレゾール型フェノール樹脂を使用することができる。
硬化性の観点から、上記フェノール化合物の中でも、ホルムアルデヒドとの反応で3官能となるフェノール化合物を出発原料として20質量%超、好ましくは30質量%超、より好ましくは50質量%超、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上含有するレゾール型フェノール樹脂が好ましい。
ホルマリン類との反応で3官能となるフェノール化合物としてはフェノール、m-クレゾール、m-エチルフェノール、3,5-キシレノール、m-メトキシフェノールが挙げられ、これらの中から1種、または2種以上を選択し使用できる。これら3官能のフェノール化合物が20質量%以下だと硬化性が十分に得られず、塗膜の硬化度が低下するおそれがある。
これら3官能となるフェノール化合物の中でも、硬化性の面からm-クレゾールがより好ましく、m-クレゾールを出発原料の主成分として含有するレゾール型フェノール樹脂(以下、「m-クレゾール系レゾール型フェノール樹脂」ということがある)が特に好ましい。それにより、十分な塗膜の硬化度を得ることができ、塗膜の耐熱性、耐食性、耐レトルト性等の観点から望ましい。なお、ここで主成分とは、出発原料となるフェノール化合物の中で最も含有量(質量比率)が多いものとする。
m-クレゾール系レゾール型フェノール樹脂としては、m-クレゾールを出発原料として50質量%超、好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上含有するものが好ましい。
上述の3官能となるフェノール化合物の他、ホルムアルデヒドとの反応で2官能となるフェノール化合物を出発原料として使用する場合の含有量は70質量%未満、好ましくは50質量%未満、より好ましくは30質量%未満、更に好ましくは20質量%未満とすることが好ましい。70質量%以上だと、硬化性が低下するおそれがある。2官能となるフェノール化合物としては、o-クレゾール、p-クレゾール、p-tert-ブチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノール等がある。
更に本発明に用いるレゾール型フェノール樹脂としては、ポリエステル樹脂との相溶性、硬化性の点から、含有するメチロール基の一部ないしは全部を炭素数1~12のアルコール類でアルキルエーテル化(アルコキシメチル化)したものを好適に使用することができる。
アルキルエーテル化するメチロール基の割合としては50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。アルキルエーテル化の割合が50%未満だとポリエステル樹脂との相溶性が低くなり、塗膜に濁りが生じたり、十分な硬化性が得られなかったりする。アルキルエーテル化する際に使用されるアルコールとしては炭素原子数1~8個、好ましくは1~4個の1価アルコールであり、好適な1価アルコールとしてはメタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノールなどを挙げることができ、より好ましくはn-ブタノールである。
また、アルキルエーテル化されたメチロール基(アルコキシメチル基)の数は、フェノール核1核当たりのアルコキシメチル基を平均して0.3個以上、好ましくは0.5~3個有することが好適である。0.3個未満だとポリエステル樹脂との硬化性が劣るようになる。
また上記レゾール型フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)としては、500~3,000、好ましくは800~2,500の範囲であることが好適である。上記範囲よりも小さいと形成される塗膜の架橋密度が高くなる傾向にあるため、成形時に生ずる残留応力が大きくなり、熱処理時の塗膜剥離耐性が劣るようになるおそれがある。一方上記範囲よりも大きいと硬化性が劣るようになり、その結果、塗膜の耐熱性や耐食性、耐レトルト性等が劣るおそれがある。
≪アミノ樹脂≫
アミノ樹脂としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド、などのアミノ成分と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド成分との反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。このメチロール化アミノ樹脂のメチロール基の一部又は全部を炭素原子数1~12のアルコール類によってアルキルエーテル化したものも上記アミノ樹脂に含まれる。これらを単独或いは2種以上を併用して使用できる。
アミノ樹脂としては、衛生性、製缶加工性等の観点から、ベンゾグアナミンを使用したメチロール化アミノ樹脂(ベンゾグアナミン樹脂)、メラミンを使用したメチロール化アミノ樹脂(メラミン樹脂)、尿素を使用したメチロール化アミノ樹脂(尿素樹脂)が好ましく、硬化性(ポリエステル樹脂との反応性)の観点からベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂がより好ましく、熱処理時の塗膜剥離耐性の観点からベンゾグアナミン樹脂が最も好ましい。
ベンゾグアナミン樹脂としては、ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基の一部又は全部を、メタノール、エタノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコールでアルキルエーテル化したベンゾグアナミン樹脂、例えばメチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、エチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、或いはメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂、メチルエーテルとエチルエーテルの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂、エチルエーテルとブチルエーテルの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。中でもメチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂がより好ましい。
メラミン樹脂としては、メラミン樹脂のメチロール基の一部又は全部を、メタノール、エタノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコールでアルキルエーテル化したメラミン樹脂、例えばメチルエーテル化メラミン樹脂、エチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、或いはメチルエーテルとブチルエーテルの混合エーテル化メラミン樹脂、メチルエーテルとエチルエーテルの混合エーテル化メラミン樹脂、エチルエーテルとブチルエーテルの混合エーテル化メラミン樹脂が好ましい。中でもメチルエーテル化メラミン樹脂がより好ましく、フルエーテル化タイプのメチルエーテル化メラミン樹脂が特に好ましい。
尿素樹脂としては、尿素樹脂のメチロール基の一部又は全部を、メタノール、エタノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコールでアルキルエーテル化した尿素樹脂、例えばメチルエーテル化尿素樹脂、エチルエーテル化尿素樹脂、ブチルエーテル化尿素樹脂、或いはメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化尿素樹脂、メチルエーテルとエチルエーテルと混合エーテル化尿素樹脂、エチルエーテルとブチルエーテルの混合エーテル化尿素樹脂が好ましい。
上述のメラミン樹脂及びベンゾグアナミン樹脂が有する官能基としては、イミノ基(>NH)、N-メチロール基(>NCHOH)、N-アルコキシメチル基(>NCHOR;Rはアルキル基)が挙げられ、これらの官能基は、主剤であるポリエステル樹脂に含まれるカルボキシル基(-COOH)や水酸基(-OH)との架橋反応、或いはアミノ樹脂同士での自己縮合反応における反応点として作用する(なお、イミノ基については自己縮合反応のみに寄与する)。
なお、上述の反応点(官能基)の数に関して、メラミン樹脂とベンゾグアナミン樹脂の単量体で比較すると、分子構造上、メラミン樹脂の方が多くなると考えられる。それにより、メラミン樹脂は硬化性に優れる反面、形成される塗膜の架橋密度が高くなりやすく、配合量によっては熱処理時に塗膜剥離が発生するおそれがある。一方ベンゾグアナミン樹脂は、メラミン樹脂に比べて硬化性に劣るものの、形成される塗膜の架橋密度は高くなりにくく、塗膜剥離耐性の観点からはメラミン樹脂よりも好適と言える。
そのため、硬化性と熱処理時の塗膜剥離耐性のバランスを取るために、メラミン樹脂とベンゾグアナミン樹脂を併用し、それらを所定の比率で混合した混合アミノ樹脂を用いた方が望ましい場合がある。その場合、メラミン樹脂及びベンゾグアナミン樹脂の配合量比(質量比)は、90:10~5:95、好ましくは80:20~10:90、より好ましくは80:20~20:80、更に好ましくは75:25~25:75、特に好ましくは70:30~30:70とすることが望ましい。
硬化剤は、ポリエステル樹脂100質量部に対して1~40質量部、好ましくは1~30質量部、より好ましくは2~20質量部の範囲で配合することが望ましい。
硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂を用いる場合には、主剤となるポリエステル樹脂(固形分)100質量部に対して1~40質量部、好ましくは2~30質量部、より好ましくは2~25質量部、更に好ましくは2.5~20質量部、特に好ましくは3~15質量部の範囲で配合することが好ましい。
また硬化剤としてアミノ樹脂を用いる場合には、ポリエステル樹脂100質量部に対して、メラミン樹脂の配合量は10質量部未満、好ましくは5.5質量部未満とすることが望ましい。
硬化剤としてメラミン樹脂を用いる場合には、ポリエステル樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部未満、好ましくは0.1質量部以上5.5質量部未満、より好ましくは0.5~5.4質量部、更に好ましくは0.5~5質量部、特に好ましくは0.5~4質量部、最も好ましくは1質量部以上4質量部未満の量で配合することが好ましい。
硬化剤としてベンゾグアナミン樹脂を用いる場合にはポリエステル樹脂100質量部に対して4~40質量部、好ましくは5~30質量部、より好ましくは6~28質量部、更に好ましくは8~25質量部、特に好ましくは8~24質量部で配合することが好ましい。
硬化剤として、前述のメラミン樹脂とベンゾグアナミン樹脂の混合アミノ樹脂を用いた場合には、ポリエステル樹脂100質量部に対して、2~25質量部、好ましくは2~20質量部、より好ましくは2.5~15質量部、更に好ましくは3質量部以上10質量部未満で配合することが好ましい。
上記範囲よりも硬化剤量が少ない場合には、十分な硬化性を得ることができず、塗膜の架橋度が低くなり、上述の塗膜のゲル分率(A)及びゲル分率(B)を前述した範囲に制御することが困難になり、耐熱性が低下するおそれがある。そのため、シームレス缶を高速で成形する場合においては、温度上昇がより顕著になるため、成形した際に塗膜が金型に張り付きやすくなるおそれがある。特に缶内面側においては、成形後、パンチから缶体を抜き取る時点で、ストリッピング性不良により缶体が座屈、または破胴するなど、生産性が低下するおそれがある。缶外面側においては、しごき加工時に塗膜削れなどの外面不良が発生するおそれがある。また耐レトルト性が劣るようになるおそれもある。
一方上記範囲よりも硬化剤量が多い場合には、用いる硬化剤の種類にもよるが、塗膜のゲル分率(A)を前述した範囲に制御することが困難になり、成形後の熱処理時の塗膜剥離を抑制できず、塗膜被覆性が低下するおそれがある。
<硬化触媒>
本発明に用いる内面用塗料組成物及び外面用塗料組成物には、ポリエステル樹脂と硬化剤の架橋反応を促進する目的で硬化触媒を配合することが好ましい。
硬化触媒としては、従来公知の硬化触媒を用いることができ、例えばp-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、リン酸、アルキルリン酸、またはこれらのアミン中和物等の有機スルホン酸系及びリン酸系の酸触媒を使用することができる。上記硬化触媒の中でも、有機スルホン酸系の酸触媒を用いることが好ましく、特にドデシルベンゼンスルホン酸やそのアミン中和物が好適である。
硬化触媒は、ポリエステル樹脂の100質量部に対して、固形分として0.01~3質量部、好ましくは0.02~1.0質量部、より好ましくは0.02質量部以上0.5質量部未満、更に好ましくは0.03質量部以上0.3質量部未満、特に好ましくは0.04質量部以上0.2質量部未満、最も好ましくは0.04~0.1質量部の範囲であることが望ましい。
また、硬化触媒として上記酸触媒のアミン中和物(例えばドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物)を用いる場合には、アミンを除いた酸触媒の含有量が上記範囲内であれば良い。上記範囲よりも硬化触媒の含有量が少ない場合には、硬化反応を促進する効果が十分得られないおそれがある一方、上記範囲よりも硬化触媒の含有量が多い場合には、それ以上の効果は望めず、また塗膜の耐水性が低下し、結果として耐食性や耐レトルト性等が劣化するおそれがある。
また、酸触媒が酸-塩基相互作用により金属基体表面に局在化することで、塗膜と金属基体間の密着性が低下するおそれがあり、缶成形時に塗膜が剥がれる等の問題が生じるおそれがある。
(塗料組成物)
本発明の塗装金属板の塗膜を形成する塗料組成物は、少なくとも主剤として上述したポリエステル樹脂と上述した硬化剤、更に好ましくは上述の硬化触媒(酸触媒)を含有する。なお、本発明においては、塗料組成物中の塗膜を形成する固形成分(水や溶剤などの揮発する物質を除いた不揮発成分)の中で、最も含有量(質量割合い)が多い成分のことを、主剤(主成分)として定義する。
また、本発明に用いる塗料組成物において、塗料組成物中に含まれる全ての樹脂成分のうち、主剤となる前述のポリエステル樹脂、好ましくは非結晶性ポリエステル樹脂の含有量が50質量%より高いことが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
本発明において、塗膜の形成に使用可能な塗料組成物の形態としては、溶剤型塗料組成物と、水性塗料組成物とが挙げられる。本発明においては塗装性等の観点から溶剤型塗料組成物が好ましい。
塗料組成物が溶剤型塗料組成物である場合、上述したポリエステル樹脂、硬化剤、並びに溶媒として有機溶媒を含有する。なお、本実施形態における溶剤型塗料組成物とは主剤樹脂、硬化剤等を公知の有機溶媒に溶解された状態で塗料化されたものであって、塗料組成物中における有機溶媒の占める質量割合が40質量%以上である塗料組成物と定義する。
前記有機溶媒としては、トルエン、キシレン、芳香族系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノアセテート、メタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ソルベントナフサ等から溶解性、蒸発速度等を考慮して1種、または2種以上を選択し使用される。
塗料組成物が水性塗料組成物の場合は、従来公知の水分散性又は水溶性のポリエステル樹脂及び硬化剤と共に、溶媒として水性媒体を含有する。
水性媒体としては、公知の水性塗料組成物と同様に、水、或いは水とアルコールや多価アルコール、その誘導体等の有機溶剤を混合したものを水性媒体として用いることができる。有機溶剤を用いる場合には、水性塗料組成物中の水性媒体全体に対して、1~45質量%の量で含有することが好ましく、特に5~30質量%の量で含有することが好ましい。上記範囲で溶剤を含有することにより、製膜性能が向上する。
このような有機溶媒としては、両親媒性を有するものが好ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n―ブタノール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、ブチルセロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル3-メトキシブタノールなどが挙げられる。
塗料組成物には、必要に応じ潤滑剤を含有することができる。その場合の配合量としては、ポリエステル樹脂100質量部に対し、潤滑剤0.1質量部~20質量部、好ましくは0.2~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部の範囲であることが望ましい。
潤滑剤を加えることにより、成形加工時の塗膜の傷付きを抑制でき、また成形加工時の塗膜の滑り性を向上させることができる。
塗料組成物に加えることのできる潤滑剤としては、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ワックス、ポリエチレンなどのポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、ラノリン、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバろう、およびシリコン系化合物、ワセリンなどを挙げることができる。これらの潤滑剤は一種、または二種以上を混合し使用できる。
塗料組成物には、上記成分の他、従来より塗料組成物に配合されている、レベリング剤、顔料、消泡剤、着色剤等を従来公知の処方に従って添加することもできる。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリエステル樹脂と併せてその他の樹脂成分が含まれていても良く、例えばポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、アクリルアミド系化合物、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メチルセルロース等の樹脂が含まれていても良い。
塗料組成物においては、ポリエステル樹脂が固形分として5~55質量%の量で含有されていることが好適である。上記範囲よりも樹脂固形分が少ない場合には、適正な塗膜量を確保することができず、塗膜の被覆性が劣るようになる。一方、上記範囲よりも樹脂固形分が多い場合には、作業性及び塗工性に劣る場合がある。
(塗装金属板の製造方法)
本発明においては、前述した通り、主剤として多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸の含有量が70モル%以上且つイソフタル酸の含有量が21モル%未満であるポリエステル樹脂と、好ましくは更に硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂及び/又はアミノ樹脂を含有する内面用塗料組成物を金属板の少なくとも内面となる面に、前述した膜厚となるように塗工する。好適には、更に金属板の外面となる面に、前述した主剤のポリエステル樹脂、好ましくは更に硬化剤としてアミノ樹脂を含有する外面用塗料組成物を、前述した膜厚となるように塗工する。
塗料組成物の焼き付け条件は、ポリエステル樹脂、硬化剤、金属基体の種類、塗工量等によって適宜調節されるが、上述した塗料組成物は、充分な硬化度を得るために、焼付け温度が150℃~350℃、好ましくは200℃より高く320℃以下の温度で、5秒以上、好ましくは5秒~30分間、特に好ましくは5秒~180秒間の条件で加熱硬化させることが好ましい。上記範囲よりも焼き付け温度が低い場合には、充分な硬化度を得られないおそれがある。一方で、上記範囲よりも焼き付け温度が高い場合には、過度な加熱によりポリエステル樹脂が熱分解するおそれがある。上記範囲よりも焼付け時間が短い場合には、充分な硬化度を得られないおそれがあり、上記範囲よりも焼付け時間が長い場合には、経済性や生産性に劣る。
また焼付け後の内面塗膜及び外面塗膜においては、前述した通り、前記ゲル分率(A)が、90%未満であり、前記ゲル分率(B)が、ゲル分率(A)よりも10%以上高いことが望ましい。
塗装方法としては、ロールコーター塗装、スプレー塗装、ディップ塗装などの公知の塗装方法によって、金属板の少なくとも缶内面側となる面に、好適には両面に塗装した後、コイルオーブン等の加熱手段によって焼き付けることにより製造することができる。
本発明の塗装金属板においては、絞りしごき加工等の加工後に缶内面側となる面に形成された上記内面塗膜及び/又は加工後に缶外面側となる面に形成された上記外面塗膜上に、必要に応じて別の塗料組成物(溶剤型塗料組成物又は水性塗料組成物)から成る塗膜が形成されていても良いが、経済性の観点からは形成されていない方が好ましい。
本発明に用いる塗装金属板の缶内面側となる面の最表層は、塗料組成物から形成されて成る塗膜、好適には前述の内面用塗料組成物から成る前記内面塗膜、或いは前記内面塗膜上に形成された後述のワックス系潤滑剤から成る層であることが望ましい。同様に、本発明に用いる塗装金属板の缶外面側となる面の最表層は、塗料組成物から形成されて成る塗膜、好適には前述の外面用塗料組成物から成る前記外面塗膜、或いは前記外面塗膜上に形成された後述のワックス系潤滑剤から成る層であることが望ましい。
また、本発明の塗装金属板においては、前述の塗料組成物から成る内面塗膜及び外面塗膜は、金属基体との密着性に優れるため、内面塗膜及び/又は外面塗膜が金属基体である上記金属板に直接接するように形成されていることが好適である。
(シームレス缶)
本発明の絞りしごき缶等のシームレス缶においては、缶内面側に位置する内面塗膜が、ポリエステル樹脂を含有し、前記ポリエステル樹脂における多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸の含有量が70モル%以上且つイソフタル酸の含有量が21モル%未満であることが第一の特徴である。
本発明の塗装金属板について前述したとおり、本発明のシームレス缶においても、内面塗膜中に含有される前記ポリエステル樹脂のイソフタル酸量が21モル%未満、好ましくは20モル%未満、より好ましくは18モル%未満、更に好ましくは16モル%未満であることにより、塗膜の経時脆化の原因であるポリエステル樹脂のエンタルピー緩和が抑制されており、その結果、塗膜の加工性が経時で低下しないため、経時保管された後に、ドライ条件下で絞りしごき加工のような過酷な加工により成形されても、破胴はもちろん、金属露出等の塗膜欠陥が少ない塗膜被覆性に優れるシームレス缶として成形される。
さらに、耐経時脆化性と耐香気収着性の両立の観点から、前記ポリエステル樹脂のイソフタル酸の含有量が、2モル%以上21モル%未満、好ましくは3モル%以上20モル%未満、より好ましくは4モル%以上18モル%未満、更に好ましくは4モル%以上16モル%未満、特に好ましくは7.2モル%より高く16モル%未満、最も好ましくは11%以上16モル%未満であることが望ましい。また、塗膜を構成するポリエステル樹脂における多価カルボン酸成分の70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上が、芳香族ジカルボン酸であることも、塗装金属板について述べた理由と同様の理由から重要である。特に、テレフタル酸を60モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上の量で含有することが好適である。
また、前記シームレス缶が、さらに缶外面側に外面塗膜を有し、前記外面塗膜もポリエステル樹脂、好ましくは更に硬化剤を含有していることが望ましい。また、これに限定されないが、前記外面塗膜に含有されるポリエステル樹脂においても、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸成分の含有量が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であることが望ましい。更に、これに限定されないが、イソフタル酸成分の含有量が21モル%未満であることがより望ましい。
また、前記シームレス缶が、少なくとも缶内面側の缶底部及び缶胴部が、前記内面塗膜で連続的に被覆されていることが好ましく、更に缶外面側の缶底部及び缶胴部が、前記外面塗膜で連続的に被覆されていることが好ましい。
更に本発明シームレス缶においても、塗装金属板と同様に、内面塗膜の上記式(1a)で表されるゲル分率(A)が90%未満、好ましくは40%以上90%未満、より好ましくは50%以上90%未満、更に好ましくは50~88%の範囲、特に好ましくは55%以上85%未満、最も好ましくは55~80%の範囲内であることが好適であり、内面塗膜の上記式(2a)で求められるゲル分率(B)がゲル分率(A)よりも10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上高いことが好適である。また、ゲル分率(B)は50%以上、好ましくは50~99%、より好ましくは60~98%、更に好ましくは70~97%、特に好ましくは80~97%の範囲であることが好適である。また本発明のシームレス缶の外面塗膜の上記式(3a)で表されるゲル分率(A)及び下記式(4a)で表されるゲル分率(B)においても、前述の塗装金属板の外面塗膜と同様の範囲にあることが望ましい。
ゲル分率(B)=[(W12a-W13a)/(W11a-W13a)]×100(%)・・・(4a)
式中、W11aは前記シームレス缶から切り出した前記外面塗膜が形成されている塗装金属基体の質量、W12aは該塗装金属基体を80℃のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量、W13aは該塗装金属基体から前記外面塗膜を除去した後の金属基体の質量をそれぞれ示す。
尚、シームレス缶の塗膜における上記ゲル分率(A)及び(B)は、これに限定されないが、例えばシームレス缶の缶底中央部に位置する内面塗膜及び/又は外面塗膜から測定することができる。尚、本明細書において、シームレス缶の缶底中央部とは、シームレス缶成形に伴う加工の程度が比較的少なく、成形に用いた塗装金属板の厚みと近似する厚みを有する部位である。
また、本発明のシームレス缶においても、塗装金属板について述べたとおり、前記内面塗膜及び前記外面塗膜のガラス転移温度(Tg)としては、30℃以上、好ましくは40℃より高い、より好ましくは50℃より高く120℃以下、更に好ましくは55℃より高く110℃以下、特に好ましくは60~100℃、最も好ましくは65℃より高く90℃以下の範囲にあることが好適である。
また本発明のシームレス缶においては、缶胴中央部の前記内面塗膜の厚みが、缶底中央部の前記内面塗膜の厚みの20~75%の厚みであることが望ましい。
すなわち、本発明のシームレス缶は、後述するように、前述した塗装金属板を用い、従来公知の製法により成形された、絞りしごき缶(DI缶)、絞り缶(DR缶)、深絞り缶(DRD缶)、DTR缶、引っ張り絞りしごき加工缶等であるが、本発明においては特に絞りしごき缶であることが好適である。
上記各種シームレス缶は、塗装金属板から絞りしごき加工等により成形されていることから、缶胴部に位置する内面塗膜の厚みは、加工により金属基体と同じように薄くなっており、缶胴中央部(高さ方向の中央部、最も薄肉化されている部分)の内面塗膜の厚みが、缶底中央部の内面塗膜の厚みの20~75%の範囲にあることが好適であり、特に絞りしごき缶においては、好ましくは20~60%、より好ましくは20~50%、更に好ましくは25~45%、特に好ましくは30~45%、最も好ましくは30~40%の厚みであることが好適である。外面塗膜の厚みも缶胴中央部(高さ方向の中央部、最も薄肉化されている部分)の外面塗膜の厚みが、缶底中央部の外面塗膜の厚みの20~75%、好ましくは20~60%、より好ましくは20~50%、更に好ましくは25~45%、特に好ましくは30~45%、最も好ましくは30~40%の厚みであることが好適である。
また本発明のシームレス缶においては、缶胴部の最も薄肉化されている部分の内面塗膜の厚みが、缶胴部の最も厚い部分(薄肉化されていない部分)の内面塗膜の厚みの80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは55%以下であることが好適である。さらに、外面塗膜も同様に缶胴部の最も薄肉化されている部分の外面塗膜の厚みが、缶胴部の最も厚い部分(薄肉化されていない部分)の外面塗膜の厚みの80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは55%以下であることが好適である。
シームレス缶の缶底中央部の金属基体の厚みとしては、0.10~0.50mm、好ましくは0.15~0.40mm、より好ましくは0.15~0.30mm、更に好ましくは0.20~0.28mmの厚みが好適である。金属基体の種類は、成形に用いた塗装金属板と同様である。
またシームレス缶の缶底中央部の内面塗膜の膜厚は、成形に用いた塗装金属板について前述した膜厚と同じであるが、0.2~20μm、好ましくは1~16μm、より好ましくは2μmより大きく12μm以下の範囲にあることが好適である。また乾燥塗膜質量としては、3~300mg/dm、好ましくは15~220mg/dm、より好ましくは15~150mg/dm、より好ましくは25mg/dmより大きく150mg/dm以下の範囲にあることが好適である。
シームレス缶に充填される内容物が、腐食性が強い酸性飲料の場合は、缶底中央部の内面塗膜の膜厚は、5μmより大きく16μm以下、好ましくは6μmより大きく12μm以下、より好ましくは6.5~10μmの範囲にあることが好適である。また乾燥塗膜質量としては、70mg/dmより大きく150mg/dm以下、好ましくは85mg/dmより大きく150mg/dm以下、より好ましくは90~140mg/dmの範囲であることが好適である。
一方シームレス缶に充填される内容物が、腐食性が比較的弱い低酸性飲料等の場合は、缶底中央部の内面塗膜の膜厚は、1μm以上6.5μm未満、好ましくは2μmより大きく6.5μm未満、より好ましく2.5~6μmの範囲であることが好ましい。また乾燥塗膜質量としては、15mg/dm以上90mg/dm未満、好ましくは25mg/dmより大きく90mg/dm未満、より好ましくは30~85mg/dmの範囲であることが好適である。
また缶底中央部の上記外面塗膜の膜厚は、乾燥膜厚で0.2~20μm、好ましくは1~16μm、より好ましくは2μmより大きく12μm以下、更に好ましくは2μmより大きく6.5μm以下の範囲にあることが好適である。また乾燥塗膜質量としては、3~300mg/dm、好ましくは15~220mg/dm、より好ましくは25~150mg/dm、更に好ましくは25mg/dmより大きく90mg/dm未満の範囲であることが好適である。
(シームレス缶(絞りしごき缶)の製造方法)
本発明のシームレス缶は、前述した本発明の塗装金属板を用い、従来公知の成形法により製造することができる。特に本発明の塗装金属板は、耐経時脆化性に優れていることから、塗装金属板の状態で経時保管された後であっても、塗装金属板の塗膜は優れた伸び性、加工性、及び密着性を維持していることから、絞りしごき加工等の過酷な加工の際にも、破胴や缶口端での塗膜剥離を生じることなく、金属露出のない塗膜被覆性に優れた絞りしごき缶を成形することができる。なお、本発明の塗装金属板は、成形性や潤滑性に優れるものであるから、クーラントを用いる場合はもちろん、クーラントを用いず、ドライ条件下で成形を行った場合でも、絞りしごき缶を成形することができる。以下、絞りしごき缶の製造方法について詳述する。
絞りしごき成形に先立って塗装金属板の塗膜表面にはワックス系潤滑剤を塗布することが好ましく、これによりドライ条件下で効率よく絞りしごき加工を行うことができる。ワックス系潤滑剤としては、例えば、これに限定されないが、脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、白色ワセリン、ライスワックス、蜜蝋、木蝋、モンタンワックス等の鉱物由来ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンワックス、パラフィン系ワックス(固形パラフィン、流動パラフィン)、ラノリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、などを挙げることができ、中でもパラフィンワックス、白色ワセリン、より好ましくはパラフィンワックスが好適に使用できる。これらのワックス系潤滑剤は一種、または二種以上を混合し使用できる。
上記ワックス系潤滑剤の中でも100~350℃、好ましくは150~250℃、より好ましくは200℃程度の温度での短時間(例えば0.1~600秒間、好ましくは1~300秒間、より好ましくは、10~180秒間)の熱処理(加熱)で50質量%以上揮散するワックス系潤滑剤(高温揮発性ワックス系潤滑剤)が望ましく、それにより缶成形後の後工程で、ワックス系潤滑剤を熱処理により容易に揮発除去できるようになり、缶胴に外面印刷を施す場合において、ワックス系潤滑剤によってインキが弾かれるおそれがなくなり、外面印刷適性の面で望ましい。高温揮発性ワックス系潤滑剤としては、150~250℃、好ましくは200℃程度の温度での短時間(10~180秒間)の熱処理で50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上揮発除去できるものが望ましく、融点が20~100℃、好ましくは25~80℃のものが望ましい。ワックス系潤滑剤の塗布量としては、成形性、生産性の観点から塗装金属板の片面当たり1~1000mg/m、好ましくは2~500mg/m、より好ましくは5~200mg/m、更に好ましくは10~100mg/m、特に好ましくは20~80mg/mの範囲であることが望ましい。
ワックス系潤滑剤が塗布された塗装金属板を、カッピング・プレスで、ブランクを打抜き、絞り加工法により、絞りカップを成形する。
本発明においては、下記式(8)で定義される絞り比RDが、トータル(絞りしごき缶まで)で1.1~2.6の範囲、特に1.4~2.6の範囲にあることが望ましい。上記範囲よりも絞り比が大きいと、絞りしわが大きくなり、塗膜に亀裂が発生して金属露出を発生するおそれがある。
RD=D/d・・・(8)
式中、Dはブランク径、dは缶胴径を表す。
次いで、前記絞りカップを、再絞り-一段又は数段階のしごき加工(絞りしごき加工)を行って缶胴部の薄肉化を行う。この際本発明においては、成形に用いるパンチの温度が10~100℃、好ましくは10~80℃、より好ましくは15~70℃となるように温度調節されていることが好ましい。上記範囲よりもパンチ温度が低いと、塗装金属板に塗布したワックス系潤滑剤が十分に滑性を示すことができず、パンチから缶体を抜き取る時点で、ストリッピング性不良が生じるおそれがあると共に、内面塗膜の伸び性が低下し、成形後の塗膜被覆性が低下するおそれがある。一方上記範囲よりもパンチ温度が高い場合は、成形パンチから缶体を抜き取る時点で、ストリッピング性不良が生じるおそれがある。
本発明においては、下記式(9)で表されるしごき率Rが、25~80%、好ましくは40~80%、より好ましくは50~80%、更に好ましくは55~75%、特に好ましくは55~70%、最も好ましくは60%より高く70%以下の範囲にあることが望ましい。上記範囲よりもしごき率が低いと、十分に薄肉化できず、経済性の点で十分満足するものではなく、一方上記範囲よりもしごき率が高い場合には、金属露出のおそれがある。
R(%)=(tp-tw)/tp×100・・・(9)
式中、tpは元の塗装金属板の厚み、twは絞りしごき缶の缶胴側壁中央部の厚みを表す。
また本発明の絞りしごき缶等のシームレス缶においては、缶胴中央部(高さ方向の中央部、最も薄肉化されている部分)の厚みが、缶底中央部の厚みの20~75%、好ましくは20~60%、より好ましくは20~50%、更に好ましくは25~45%、特に好ましくは30~45%、最も好ましくは30~40%の厚みとなるように薄肉化されていることが好適である。絞りしごき缶等のシームレス缶の金属基体の厚みも同様に、缶胴中央部の金属基体の厚みが、缶底中央部の金属基体の厚みの20~75%、好ましくは20~60%、より好ましくは20~50%、更に好ましくは25~45%、特に好ましくは30~45%、最も好ましくは30~40%の厚みであることが好適である。また、塗装金属板から絞りしごき加工により絞りしごき缶を成形した場合には、缶胴部に位置する塗膜の厚みは、加工により金属基体と同じように薄くなる。従って、前述した通り、缶胴中央部の塗膜の厚みは、製缶時にほとんど薄肉化されない缶底中央部の塗膜の厚みの20~75%、好ましくは20~60%、より好ましくは20~50%、更に好ましくは25~45%、特に好ましくは30~45%、最も好ましくは30~40%の厚みであることが好適である。
また本発明の絞りしごき缶等のシームレス缶においては、缶胴部の最も薄肉化されている部分の厚みが、缶胴部の最も厚い部分(最も薄肉化されていない部分)の厚みの80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは55%以下であることが好適である。
また上述したように内面塗膜を有する塗装金属板から絞りしごき加工等により絞りしごき缶等のシームレス缶を成形した場合には、缶胴部に位置する内面塗膜の厚みは、加工により、缶胴部に位置する金属基体と同じように薄くなる。従って、本発明の絞りしごき缶等のシームレス缶においては、缶胴部における前記内面塗膜と金属基体の厚み比と、缶底部における前記内面塗膜と金属基体の厚み比は、ほぼ同じとなる。すなわち、本発明の絞りしごき缶等のシームレス缶においては、前記内面塗膜と金属基体の厚み比(=前記内面塗膜の厚み/金属基体の厚み)が、缶底部及び缶胴部で実質的にほぼ同じとなるのが特徴である。なおここでの「ほぼ同じ」とは、製造誤差がその範囲内に含まれるものを意味するものとし、例えば缶胴部の(前記内面塗膜の厚み/金属基体の厚み)が、缶底部の(前記内面塗膜の厚み/金属基体の厚み)の0.9~1.1倍の範囲内であることを意味する。なお、外面塗膜についても同様である。
また、本発明の絞りしごき缶等のシームレス缶においては、缶胴部における前記内面塗膜と金属基体の厚み比(=前記内面塗膜の厚み/金属基体の厚み)が、缶胴部の位置によらず缶胴部全体で実質的にほぼ同じとなるのが特徴である。なお、外面塗膜についても同様である。
なお、前記一段又は数段階のしごき加工の加工速度(パンチの移動速度)としては2000mm/sec以上、好ましくは3000mm/sec以上、より好ましくは4000mm/sec以上、更に好ましくは5000mm/sec以上、特に好ましくは6000mm/sec以上とすることが望ましい。しごき加工時の加工速度を上記速度以上とすることにより、加工発熱が大きくなり、高温状態になることで塗膜の加工性(伸び性)が向上する。その結果、成形時の金属露出が抑制され、成形後の内面塗膜及び外面塗膜の被覆性を更に向上させることができる。更に、高い温度で成形されることで、成形加工中に応力緩和しやすくなるため、成形後の塗膜の残留応力を低減することができ、熱処理時の塗膜剥離を抑制する上でも好ましい。
絞りしごき加工後、所望により常法に従って底部のドーミング成形及び開口端縁のトリミング加工を行う。
本発明によれば、前記塗装金属板を、絞りしごき加工等した後、得られたシームレス缶を熱処理工程に付することが好適である。前述した通り、本発明の塗装金属板及びシームレス缶においては、内面塗膜のゲル分率(A)が90%未満に制御されていることから、熱処理工程で加熱された場合でも、塗膜の剥離が有効に防止されている。
成形後の絞りしごき缶等のシームレス缶に、少なくとも一段の熱処理を施すことにより、加工により生じた塗膜の残留応力を除去することができる。塗膜の当該残留応力が除去されることにより、加工後の塗膜と金属基体間の密着性(塗膜密着性)を向上させることが可能となる。その結果、塗膜の耐食性が顕著に向上され、例えばシームレス缶に腐食性の強い内容物を充填した際、塗膜下腐食の発生を抑制することができる。熱処理の温度は、塗膜のガラス転移温度より高い温度である必要があり、100~300℃、好ましくは150~250℃の温度範囲が好ましい。熱処理の時間は特に限定されないが、0.1~600秒間、好ましくは1~300秒間、より好ましくは、10~180秒間で加熱することが好ましい。なお、加工の際用いた前述のワックス系潤滑剤が上述の高温揮発性ワックス系潤滑剤である場合には、この熱処理により塗膜表面から揮発除去させることもできる。
絞りしごき缶等のシームレス缶の塗膜の残留応力が熱処理によって除去されていない場合、加工度の大きい缶胴中央部(高さ方向における中央部)の塗膜を金属基体から単離し加熱すると残留応力を解放する方向(主に缶の高さ方向)に寸法が大きく変化することから、加熱による単離塗膜の寸法変化量(熱収縮率)を測定することにより、熱処理によって残留応力が除去されているかの目安とすることができる。シームレス缶から単離した缶胴中央部の上記内面塗膜における下記式(5)で表される熱収縮率(荷重あり)が30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下であることが望ましい。また、下記式(6)で表される熱収縮率(荷重なし)が50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下であることが望ましい。熱収縮率が上記範囲内にある場合、塗膜密着性が改善され、優れた耐食性を発現することができる。上記範囲よりも熱収縮率が大きい場合、残留応力が十分に除去されておらず、塗膜密着性の不足により、耐食性が低下するおそれがあると共に、缶が衝撃を受け凹むなどした際に塗膜が剥離するおそれがある。また、缶外面側に上記外面塗膜を有する場合には、缶胴中央部の外面塗膜においても、熱収縮率は上記範囲内にあることが望ましい。
なお、単離した塗膜の加熱による寸法変化量(収縮量)は、熱機械分折装置(TMA)等により測定することができる。
熱収縮率(荷重あり)=(ΔL/L)×100(%)・・・(5)
式中、Lは缶胴中央部から単離した塗膜の高さ方向の初期長さ(測定部)、ΔLは単位面積当たり5.20×10N/mの荷重をかけながら昇温速度5℃/minで30℃から200℃まで昇温した時のL該当部分の塗膜の高さ方向における最大収縮量(収縮長さの最大値)である。
熱収縮率(荷重なし)=(ΔL/L)×100(%)・・・(6)
式中、Lは缶胴中央部から単離した塗膜の高さ方向の初期長さ(測定部)、ΔLは無荷重状態で昇温速度5℃/minで30℃から200℃まで昇温した時のL該当部分の塗膜の高さ方向における最大収縮量(収縮長さの最大値)である。
熱処理後は急冷或いは放冷した後、更に必要に応じて従来公知の方法により、印刷・焼付け工程により缶胴部に印刷層が形成され、印刷層の上に印刷層を保護するための仕上げニス層が形成される。所望により、一段或いは多段のネックイン加工に付し、フランジ加工を行って、巻締用の缶とする。また、絞りしごき缶等のシームレス缶を成形した後、その上部を変形させてボトル形状にすることもできるし、底部を切り取って、他の缶端を取り付けてボトル形状とすることもできる。
本発明のシームレス缶の容量としては、150mL以上、好ましくは150~2200mL、より好ましくは180~1200mL、更に好ましくは300~700mLが好適である。
本発明の塗装金属板の内面塗膜は、優れた製缶加工性を有することから、絞りしごき加工のような過酷な加工時にも金属露出の発生を抑制でき、また成形後の熱処理においても塗膜剥離を生じないため、しごき加工速度等の成形条件を調整することにより、内面塗膜がERV(エナメルレーター値;Enamel Rater Value)換算で200mA未満の被覆度を有する、塗膜被覆性に優れたシームレス缶を得ることができる。
ここで、ERV換算により得られる内面塗膜の被覆度は、得られたシームレス缶に、電解液となる濃度1質量%の食塩水を缶口部付近まで満たし、エナメルレーターでERVを測定した値をいうものとし、缶底の外面側に金属露出部を形成して陽極に接続する一方、陰極を缶内に満たされた食塩水に浸して、常温(約20℃)下で、6.3Vの直流電圧を4秒間印加した後の電流値とする。このような測定において、電流が多く流れるほど絶縁体である内面塗膜に欠陥が存在し、缶内面の金属露出の面積が大きいことを示している。
シームレス缶のERV換算での内面塗膜の被覆度は200mA未満、好ましくは100mA未満、より好ましくは50mA未満であることが望ましい。また、単位面積(cm)当りのERVで表した場合は0.70mA/cm未満、好ましくは0.35mA/cm未満、より好ましくは0.18mA/cm未満であることが望ましい。ここで単位面積当りのERVとは、上述の方法で測定した絞りしごき缶のERVを、評価面積(缶胴部及び缶底部の内面と上述の食塩水が接触している面積)で割った値である。
なお、シームレス缶の内面側について、成形後に、必要に応じて内面に更に補正塗料などスプレー塗装し、内面塗膜上に別の塗膜を形成しても良いが、前述の通り、内面塗膜が成形後も高い被覆度を有するため、スプレー塗装する必要はなく、経済性の面から、スプレー塗装されていないことが好ましい。即ち、シームレス缶の内面側の最表層は、塗料組成物から成る塗膜、好適には前述の内面用塗料組成物から成る前記内面塗膜、或いは前述した前記内面塗膜上に塗布されたワックス系潤滑剤から成る層、より好適には前記内面塗膜であることが好ましい。
また、缶外面側については、基本的に印刷層が形成されない缶底部は、前記外面塗膜が最表層に位置していても良いが、缶体の搬送性の向上等を目的として、底部外面側の表層に形成されている前記外面塗膜上に、更に別の塗料組成物から成る塗膜が形成されていても良い。即ち、缶底部外面の最表層は、塗料組成物から成る塗膜、好適には前記外面塗膜、或いは前述した前記外面塗膜上に塗布されたワックス系潤滑剤から成る層、より好適には前記外面塗膜が缶底部の最表層に位置していることが望ましい。
本発明の塗装金属板は、過酷な成形加工による絞りしごき缶用途に好適に使用できることから、絞りしごき缶以外の用途、例えば従来公知の製法による絞り缶(DR缶)、深絞り缶(DRD缶)、DTR缶、引っ張り絞りしごき加工缶等のシームレス缶、又は缶蓋等にも好適に適用できる。缶蓋の形状は、内容物注出用開口を形成するためのスコア及び開封用のタブが設けられたイージーオープン蓋等の従来公知の形状を採用することができ、フルオープンタイプ又はパーシャルオープンタイプ(ステイ・オン・タブタイプ)の何れであってもよい。
以下実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、単に部とあるものは質量部を示す。
ポリエステル樹脂A~Mの各種測定項目は以下の方法に従った。なお、使用したポリエステル樹脂はいずれも非結晶性のポリエステル樹脂である。表1にポリエステル樹脂の特性(モノマー組成、Tg、酸価、数平均分子量)を示す。
(数平均分子量の測定)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定した。
(ガラス転移温度の測定)
示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で測定した。
(酸価の測定)
ポリエステル樹脂の固形物1gを10mlのクロロホルムに溶解し、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定し、樹脂酸価(mgKOH/g)を求めた。指示薬はフェノールフタレインを用いた。
(モノマー組成の測定)
ポリエステル樹脂の固形物30mgを重クロロホルム0.6mLに溶解させ、H-NMR測定し、ピーク強度からモノマー組成比を求めた。
(実施例1~11、比較例1~3)
[内面用塗料組成物の調製]
主剤としてポリエステル樹脂A(酸価:4mgKOH/g、水酸基価:5mgKOH/g、Tg:84℃、Mn=18,000、多価カルボン酸成分組成:テレフタル酸成分/トリメリット酸成分=99.8/0.2モル%、多価アルコール成分組成:エチレングリコール成分/プロピレングリコール成分=27.4/72.6モル%))等のポリエステル樹脂、硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂(メチロール基をn-ブタノールでアルキルエーテル化したm―クレゾール系レゾール型フェノール樹脂、アルキルエーテル化されたメチロール基の割合:90モル%、Mn=1,200)、ベンゾグアナミン樹脂(ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、イミノ基・メチロール基含有部分エーテル化タイプ)、又はメラミン樹脂(メチルエーテル化メラミン樹脂、フルエーテルタイプ)、硬化触媒(酸触媒)としてドデシルベンゼンスルホン酸を用いた。なお、ドデシルベンゼンスルホン酸としては、東京化成工業社製「ドデシルベンゼンスルホン酸(ソフト型)(混合物)」を用いた。
ポリエステル樹脂をメチルエチルケトン/ソルベントナフサ=50/50(質量比)の混合溶剤に溶解させ、固形分30質量%のポリエステル樹脂溶液を得た。硬化剤をメチルエチルケトンで希釈し、固形分30質量%の硬化剤溶液を得た。ドデシルベンゼンスルホン酸を2-ジメチルアミノエタノールでアミン中和した後、イソプロパノールに溶解させ、固形分が30質量%のドデシルベンゼンスルホン酸溶液を得た。
次に、ポリエステル樹脂溶液、硬化剤溶液、酸触媒溶液を、所定の固形分配合比となるようにガラス容器内に入れて10分間攪拌し、固形分濃度30質量%の溶剤型塗料組成物を調製した。
表2に内面用塗料組成物の配合組成(ポリエステル樹脂の種類、硬化剤の種類、ポリエステル樹脂/硬化剤/酸触媒の固形分配合比)を示す。
[外面用塗料組成物の調製]
主剤としてポリエステル樹脂、硬化剤としては、メラミン樹脂(メチルエーテル化メラミン樹脂、フルエーテルタイプ)、ベンゾグアナミン樹脂(ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、イミノ基・メチロール基含有部分エーテル化タイプ)、硬化触媒(酸触媒)として上述のドデシルベンゼンスルホン酸を用いた。
ポリエステル樹脂をメチルエチルケトン/ソルベントナフサ=50/50(質量比)の混合溶剤に溶解させ、固形分30質量%のポリエステル樹脂溶液を得た。硬化剤をメチルエチルケトンで希釈し、固形分30質量%の硬化剤溶液を得た。ドデシルベンゼンスルホン酸を2-ジメチルアミノエタノールでアミン中和した後、イソプロパノールに溶解させ、固形分が30質量%のドデシルベンゼンスルホン酸溶液を得た。
次に、ポリエステル樹脂溶液、硬化剤溶液、酸触媒溶液を、所定の固形分配合比となるようにガラス容器内に入れて10分間攪拌し、固形分濃度30質量%の溶剤型塗料組成物を調製した。
表2に外面用塗料組成物の配合組成(ポリエステル樹脂の種類、硬化剤の種類、ポリエステル樹脂/硬化剤/酸触媒の固形分配合比)を示す。
[塗装金属板の作成]
金属板としてリン酸クロメート系表面処理アルミニウム板(3104合金、板厚:0.27mm)を用い、まず、成形後に外面側となる面に、焼付け後の乾燥塗膜質量が40mg/dm(約3μm)になるように、上記外面用塗料組成物をバーコーターにて塗装し120℃で60秒間乾燥を行った。その後、反対側の内面側となる面に、焼付け後の乾燥塗膜質量が88mg/dm(約6.4μm)となるよう上記内面用塗料組成物をバーコーターにて塗装し120℃で60秒乾燥を行った後、250℃(オーブンの炉内温度)で30秒間焼付けを行なうことにより作成した。
[絞りしごき缶の作製]
上記の方法で作成した塗装金属板の両面に、高温揮発性ワックス系潤滑剤であるパラフィンワックス(200℃程度の短時間の熱処理で50質量%以上揮発除去可能なもの)を塗布(塗布量:片面当たり約50mg/m)した後、直径142mmの円形に打ち抜き、浅絞りカップを作成した。次いで、この浅絞りカップに対し、外径Φ66mmのパンチ(温度調節あり)を用いて、ドライ条件下で再絞り加工、しごき加工(3段)、ドーミング加工を行った。その後、オーブンを用いて201℃で75秒間の熱処理を施し、絞りしごき缶[缶径:66mm、高さ:約130mm、容量:約370ml、トータル絞り比:2.15、しごき率:61%、缶胴中央部厚み/缶底中央部厚み×100=約40%、缶胴中央部の金属基体の厚み/缶底中央部の金属基体の厚み×100=約40%、缶胴中央部の内面塗膜厚み/缶底中央部の内面塗膜厚み×100=約39%、缶底中央部の内面塗膜質量(膜厚):86mg/dm(約6.3μm)、缶底中央部の内面塗膜厚み/缶底中央部の金属基体の厚み=約0.024、缶胴中央部の内面塗膜厚み/缶胴中央部の金属基体の厚み=約0.023]を得た。なお、上記の201℃で75秒間の熱処理後において、上記パラフィンワックスは少なくとも90質量%以上揮発除去されている。
各実施例、比較例で用いた内面用塗料組成物及び外面塗料組成物で得られる塗膜特性について、下記の試験方法に従って試験を行った。
[ゲル分率(A)]
各実施例、比較例で用いた内面用塗料組成物、又は外面用塗料組成物を用いて、下記の通り測定用の単離塗膜サンプルを作製した。各実施例、比較例の塗装金属板における内面塗膜、又は外面塗膜の塗装条件(塗料種、乾燥塗膜質量、乾燥・焼付け条件)と同じになるように各内面用塗料組成、又は外面用塗料組成物をリン酸クロメート系表面処理アルミニウム板(3104合金、板厚:0.27mm)にバーコーターにて塗装し、120℃での乾燥を行った後、250℃で30秒間焼付けを行い、塗装金属板を作製した。塗装金属板から5cm×5cmサイズの試験片を切り出し、希釈した塩酸水溶液中に浸漬してアルミニウム板(金属基体)を溶解させた。次いで、フィルム状の単離塗膜を取り出し、十分に蒸留水で洗浄して乾燥させ、これを測定用の単離塗膜サンプルとした。サンプルの質量(W1)を測定した後、サンプルを30mlのMEK(メチルエチルケトン)に常温(20℃)で1時間浸漬させた。その後、サンプルの溶剤不溶分(ゲル化分)をアルミ製シャーレに取り出し、120℃30分の条件で乾燥させ室温まで冷ました後に、アルミ製シャーレ及び乾燥後のサンプルの溶剤不溶分の合計質量(W2’)を測定し、そこからあらかじめ測定しておいたアルミ製シャーレの質量(W0)を差し引くことで乾燥後のサンプルの溶剤不溶分(ゲル化分)の質量(W2=W2’-W0)を求めた。塗装金属板の内面塗膜及び外面塗膜のゲル分率(A)(%)は下記式(1)で求められる。結果を表2に示す。
ゲル分率(A)(%)=100×W2/W1・・・(1)
なお、両面に塗膜を形成された塗装金属板や絞りしごき缶から測定用サンプルを得る場合は、試験片を切り出した後、測定しない片側の塗膜をサンドペーバーで削るなどして除去した後、上記方法等により金属基体を溶解させることで測定用の単離塗膜サンプルを得ることができる。或いは、塗装金属板又は絞りしごき缶の缶底部等から5cm×5cmサイズの試験片を切りだし、煮沸した過酸化水素水に数分間浸漬し十分に蒸留水で洗浄した後に、フィルム状の塗膜を金属基体から剥がし取り乾燥させ、これを測定用の単離塗膜サンプルとすることもできる。
[缶底内面塗膜のゲル分率(A)]
上記「絞りしごき缶の作製」の項に記載した通りに成形し、201℃で75秒間の熱処理を施した後の実施例1の絞りしごき缶について、缶底内面塗膜のゲル分率(A)を測定した。測定用の単離塗膜サンプルの作成方法は下記の通りである。
熱処理後の絞りしごき缶の缶底より、缶底中央部を中心として金属基材圧延目に対して0°方向に30mm、90°方向に30mmの大きさとなるように缶底部を切り出した。切り出したサンプルを煮沸した過酸化水素水に2~3分間浸漬し十分に蒸留水で洗浄した後に、缶内面側の塗膜を金属基材から剥がし取り乾燥させることで、測定用の単離塗膜サンプルを得た。
ゲル分率(A)の測定は上記「ゲル分率(A)」の項に記載した測定方法と同様に行った。結果は下記に示す。
実施例1の絞りしごき缶の缶底内面塗膜のゲル分率(A):61%
[ゲル分率(B)]
各実施例、比較例で用いた内面用塗料組成物、又は外面用塗料組成物を用いて、下記の通り測定用サンプルを作製した。各実施例、比較例の塗装金属板における内面、外面塗膜の塗装条件(塗料種、乾燥塗膜質量、乾燥・焼付け条件)と同じになるように各内面用塗料組成物、又は外面用塗料組成物をリン酸クロメート系表面処理アルミニウム板(3104合金、板厚:0.27mm)にバーコーターにて塗装し、120℃での乾燥を行った後、250℃で30秒間焼付けを行い、塗装金属板を作製した。
塗装金属板から5cm×5cmサイズの試験片を切り出し、これを測定用サンプルとした試験片の質量測定後(W3)、400mlのMEK(メチルエチルケトン)を用い、沸騰しているMEK(80℃還流下)に試験片を1時間浸漬させ、沸点で1時間のMEK抽出を行った。抽出後の試験片をMEKで洗浄後、120℃30分の条件で乾燥し、抽出後の試験片の質量(W4)を測定した。さらに塗膜を濃硫酸による分解法で剥離・除去し、洗浄・乾燥し、試験片の質量(W5)を測定した。塗装金属板の内面塗膜及び外面塗膜のゲル分率(B)(%)は下記式(2)で求められる。結果を表2に示す。
ゲル分率(B)(%)=100×(W4-W5)/(W3-W5)・・・(2)
なお、両面に塗膜を形成された塗装金属板や絞りしごき缶(缶底部等)から測定用サンプルを得る場合は、試験片を切り出した後、測定しない片側の塗膜をサンドペーバーで削るなどして除去した後、上記方法によりゲル分率(B)を測定することができる。
各実施例、比較例で得られた塗装金属板及び絞りしごき缶において、下記の試験方法に従って評価を行った。
[耐経時脆化性評価]
耐経時脆化性評価として、初期加工性と経時加工性の評価を行った。加工性の評価は下記の折り曲げ試験方法に従って評価を行った。
実施例、比較例で用いた内面用塗料組成物を用いて、下記の通り評価用塗装金属板を作製した。各実施例、比較例における内面塗膜の塗装条件(塗料種、乾燥塗膜質量、乾燥・焼付け条件)と同じになるように各リン酸クロメート系表面処理アルミニウム板(3104合金、板厚:0.27mm)にバーコーターにて塗装し、120℃で60秒乾燥を行った後、250℃で30秒間焼付けを行い、評価用塗装金属板を作製した。この塗装金属板を、アルミニウム板の圧延方向が長辺となるように3.5×3cmの大きさに切り出し、この試験片の内面用塗料組成物を塗装した面が外になるように短辺に平行に折り曲げた。折り曲げ部の内側に、スペーサーとしてアルミニウム板(3104合金、板厚:0.27mm)を2枚挟んだ後、室温下(20℃)で、3kgの錘を40cmの高さから落下させ、折り曲げ加工を行った。折り曲げられた先端部分2cm幅を、1%塩化ナトリウム水溶液に浸漬したスポンジに接触させ、室温下で6.3Vの電圧を4秒間印加した後の電流値(ERV)を測定した。
初期加工性:評価用塗装金属板を作成後2日以内に評価した。
経時加工性:評価用塗装金属板を作成後40℃の恒温器に1ヶ月保管後に初期加工性と同様に評価した。
初期加工性、経時加工性共に、評価基準は次の通りである。結果を表2に示す。
◎:0.5mA未満
〇:0.5mA以上1.0mA未満
△:1.0mA以上3mA未満
×:3mA以上
[耐香気収着性評価(香気成分収着試験)]
耐香気収着性評価は、上記「絞りしごき缶の作製」の項に記載した通りに成形し、201℃で75秒間の熱処理を施した後の絞りしごき缶を用いて下記の通り行った。
絞りしごき缶の缶底から高さ8.0cmの位置を中心に2.5cm×5cmの大きさの試験片を合計8枚切り出し、外面側の塗膜(外面塗膜)をサンドペーパー(紙やすり)で削り、洗浄・乾燥した。モデルフレーバー試験溶液として、リモネン2ppmを含む5%エタノール水溶液を調製した。パッキン付きガラス瓶(デュラン瓶)にモデルフレーバー試験溶液を入れ、試験片8枚を浸漬、密閉し、30℃で2週間保存した。試験片をガラス瓶より取り出し、水洗後、水滴を取り除き、ジエチルエーテル50mLに浸漬、密封、一昼夜室温保存した。抽出液を濃縮装置で濃縮し、GC-MS分析(ガスクロマトグラフィー質量分析)を行った。GC-MS分析から得られたリモネン由来の成分ピークから、検量線により収着量を求め、下記式(10)よりリモネンの仕込み量に対する比率を、リモネン収着率(%)として求めた。結果を表2に示す。
リモネン収着率(%)=(リモネンの収着量/リモネンの仕込み量)×100・・・(10)
評価基準は以下の通りである。
◎:リモネン収着率が4%未満
〇:リモネン収着率が4%以上6%未満
△:リモネン収着率が6%以上9%未満
×:リモネン収着率が9%以上
[内面塗膜被覆性評価(ERV評価)]
内面塗膜被覆性評価は、上記「絞りしごき缶の作製」の項に記載した通りに、絞りしごき加工、及びドーミング加工まで行った絞りしごき缶(表中「熱処理なし」と表記)と、その後オーブンによる201℃で75秒間の熱処理を行った後の絞りしごき缶(表中「熱処理あり」と表記)について、下記の通り行った。なお、しごき加工時の平均加工速度(しごき加工時のパンチの平均移動速度)は、約5500mm/secとした。
絞りしごき缶の缶底の外面側に金属露出部を形成し、缶体をエナメルレーターの陽極に接続する一方、1%食塩水360mLを缶内へ注ぎ、エナメルレーターの陰極を缶内に満たされた食塩水に浸して、常温下(20℃)で6.3Vの電圧を4秒間印加した後の電流値(ERV)を測定した。
評価基準は以下の通りである。
◎:電流値 50mA未満(0.18mA/cm未満)
〇:電流値 50mA以上200mA未満(0.18mA/cm以上0.70mA/cm未満)
△:電流値 200mA以上700mA未満(0.70mA/cm以上2.50mA/cm未満)
×:電流値 700mA以上(2.50mA/cm以上)
[塗膜剥離耐性評価]
塗膜剥離耐性評価は、上記「絞りしごき缶の作製」の項に記載した通りに成形し、201℃で75秒間の熱処理を施した後の絞りしごき缶について、缶胴部の内面塗膜及び外面塗膜の剥離の有無を観察し評価した。
評価基準は以下の通りである。
〇:塗膜剥離が認められない。
△:缶胴側壁の加工が厳しく薄肉化されている部位でごく僅かに塗膜剥離が認められる。
×:缶胴側壁の加工が厳しく薄肉化されている部位の広範囲で塗膜剥離が認められる。
(熱収縮率評価)
熱収縮率の評価は、上記「絞りしごき缶の作製」の項に記載した通りに、絞りしごき加工、及びドーミング加工まで行った実施例1の絞りしごき缶(熱処理なし)と、その後オーブンによる201℃で75秒間の熱処理を行った後の実施例1の絞りしごき缶(熱処理あり)の缶胴中央部の内面塗膜を用いて、下記の通り行った。
上記の絞りしごき缶を用いて、金属基体圧延目に対して0°方向の缶胴中央部(最も薄肉化されている部位)を中心として缶胴円周方向10mm缶高さ方向20mmのサンプルを切り出した。缶外面側の塗膜をサンドペーパーで削ることで除去し、金属面を露出させた後、希釈した塩酸水溶液中に浸漬して金属基体を溶解させた。次いで、フィルム状の缶内面側の内面塗膜を取り出し、十分に蒸留水で洗浄して乾燥させ、得られたフィルム状塗膜を4mm幅(缶胴円周方向)で20mm長さ(缶高さ方向)に切り出すことで測定用サンプルを得た。
測定用サンプルを熱機械分析装置にチャッキングし、チャック間距離(塗膜の高さ方向における測定部初期長さに該当)が5mmとなるようにした。下記条件で測定サンプルの変位量を測定し、荷重あり及び無荷重状態での缶高さ方向における熱収縮率を評価した。
装置:セイコーインスツルメンツ株式会社製 TMA/SS6100
昇温速度:5℃/分
温度範囲:30~200℃
測定モード:引っ張りモード
測定時荷重:5mN(5.20×10N/m)又は無荷重
チャック間距離:5mm
測定前のチャック間距離(塗膜の測定部初期長さに該当)をL、単位面積当たり5.20×10N/mの荷重をかけながら昇温速度5℃/minで30℃から200℃まで昇温した時のL該当部分の高さ方向における収縮量の最大値(最大収縮長さ)をΔLをとし、下記式(5)に示す数式で計算される値を熱収縮率(荷重あり)とした。なお、変位量は収縮を正、膨張若しくは伸長を負の値とした。結果を以下に示す。
熱収縮率(荷重あり)=(ΔL/L)×100(%)・・・(5)
実施例1の絞りしごき缶(熱処理なし)の内面塗膜の熱収縮率(荷重あり):83%
実施例1の絞りしごき缶(熱処理あり)の内面塗膜の熱収縮率(荷重あり):2%
また、測定前のチャック間距離(塗膜の測定部初期長さに該当)をL、無荷重状態で昇温速度5℃/minで30℃から200℃まで昇温した時のL該当部分の高さ方向における収縮量の最大値(最大収縮長さ)をΔLとし、下記式(6)に示す数式で計算される値を熱収縮率(荷重なし)とした。なお、変位量は収縮を正、膨張若しくは伸長を負の値とした。結果を下記に示す。
熱収縮率(荷重なし)=(ΔL/L)×100(%)・・・(6)
実施例1の絞りしごき缶(熱処理なし)の内面塗膜の熱収縮率(荷重なし):79%
実施例1の絞りしごき缶(熱処理あり)の内面塗膜の熱収縮率(荷重なし):19%
(耐食性評価)
耐食性の評価は、上記「絞りしごき缶の作製」の項に記載した通りに、絞りしごき加工、及びドーミング加工まで行った実施例1の絞りしごき缶(熱処理なし)と、その後オーブンによる201℃で75秒間の熱処理を行った後の実施例1の絞りしごき缶(熱処理あり)の缶胴中央部の内面塗膜について、下記の通り行った。
上記の絞りしごき缶を用いて、缶胴中央部(最も薄肉化されている部位)を中心として缶胴円周方向40mm缶高さ方向40mmの試験片を切り出した。上記試験片にカッターで長さ4cmの素地に達するクロスカット傷を入れ、食塩を含有する酸性のモデル液に浸漬させて37℃で2週間経時して、腐食状態を評価した。なお、試験に用いたモデル液は、食塩を0.2%とし、これにクエン酸を加えてpHが2.5となるよう調整したものを用いた。評価基準は、クロスカット部周辺において、塗膜下腐食の最大幅が片側あたり1.5mm以上であったものを×、0.5mm以上1.5mm未満ものを〇、0.5mm未満のものを◎とした。結果を下記に示す。
実施例1の絞りしごき缶(熱処理なし)の腐食状態:×
実施例1の絞りしごき缶(熱処理あり)の腐食状態:◎
表1に各実施例、比較例に用いたポリエステル樹脂の特性(モノマー組成、Tg等)、表2に内面用塗料組成物及び外面用塗料組成物の配合組成、及び内面塗膜の塗膜特性(ゲル分率)、評価結果を示す。
Figure 2023021955000001
Figure 2023021955000002
本発明の絞りしごき缶等のシームレス缶は、経時保管後に絞りしごき加工等の過酷な加工に付された場合にも、成形時の金属露出の発生を有効に防止できる耐経時脆化性に優れた内面塗膜を有する塗装金属板から成形されて成るため、優れた塗膜被覆性及び耐食性を有しており、飲料容器などに好適に使用できる。また本発明のシームレス缶用塗装金属板は、耐経時脆化性に優れた内面塗膜を有していることから、絞りしごき缶等のシームレス缶の製造に好適に使用できる。

Claims (16)

  1. 少なくとも缶内面側に内面塗膜を有するシームレス缶であって、
    前記内面塗膜がポリエステル樹脂を含有し、前記ポリエステル樹脂における多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸の含有量が70モル%以上且つイソフタル酸の含有量が21モル%未満であることを特徴とするシームレス缶。
  2. 缶胴中央部の厚みが缶底中央部の厚みの20~75%の厚みであり、缶胴中央部の前記内面塗膜の厚みが、缶底中央部の前記内面塗膜の厚みの20~75%の厚みであることを特徴とする請求項1記載のシームレス缶。
  3. 前記ポリエステル樹脂における多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、テレフタル酸の含有量が60モル%以上である請求項1又は2記載のシームレス缶。
  4. 前記ポリエステル樹脂における多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、イソフタル酸の含有量が2モル%以上21モル%未満である請求項1又は2記載のシームレス缶。
  5. 前記内面塗膜が、硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂及び/又はアミノ樹脂を含有する請求項1又は2に記載のシームレス缶。
  6. 前記内面塗膜の下記式(1a)で表されるゲル分率(A)が、90%未満である請求項1又は2に記載のシームレス缶。
    ゲル分率(A)=(W2a/W1a)×100(%)・・・(1a)
    式中、W1aは前記シームレス缶から切り出した塗装金属基体から単離した前記内面塗膜の質量、W2aは該単離した前記内面塗膜を常温のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量、をそれぞれ示す。
  7. 前記内面塗膜の下記式(2a)で表されるゲル分率(B)が、前記ゲル分率(A)よりも10%以上高い請求項6記載のシームレス缶。
    ゲル分率(B)=[(W4a-W5a)/(W3a―W5a)]×100(%)・・・(2a)
    式中、W3aは前記シームレス缶から切り出した前記内面塗膜が形成されている塗装金属基体の質量、W4aは該塗装金属基体を80℃のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量、W5aは該塗装金属基体から前記内面塗膜を除去した後の金属基体の質量をそれぞれ示す。
  8. 前記内面塗膜と金属基体の厚み比(前記内面塗膜の厚み/金属基体の厚み)が、缶底部及び缶胴部でほぼ同じである請求項1又は2に記載のシームレス缶。
  9. 缶外面側にさらに外面塗膜を有し、前記外面塗膜がポリエステル樹脂と硬化剤としてアミノ樹脂を含有する請求項1又は2に記載の絞りしごき缶。
  10. 前記外面塗膜の下記式(3a)で表されるゲル分率(A)が、90%未満である請求項1又は2に記載のシームレス缶。
    ゲル分率(A)=(W7a/W6a)×100(%)・・・(3a)
    式中、W6aは前記シームレス缶から切り出した塗装金属基体から単離した前記外面塗膜の質量、W7aは該単離した前記外面塗膜を常温のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量、をそれぞれ示す。
  11. 缶胴中央部の前記内面塗膜の下記式(5)で表される熱収縮率が30%以下である請求項1又は2に記載のシームレス缶。
    熱収縮率(%)=(ΔL/L)×100・・・(5)
    :缶胴中央部から単離した塗膜の高さ方向の初期長さ
    ΔL:単位面積当たり5.20×10N/mの荷重をかけながら昇温速度5℃/minで30℃から200℃まで昇温した時のL該当部分の塗膜の高さ方向における最大収縮長さ
  12. 缶胴中央部の前記内面塗膜の下記式(6)で表される熱収縮率が50%以下である請求項1又は2に記載のシームレス缶。
    熱収縮率(%)=(ΔL/L)×100・・・(6)
    :缶胴中央部から単離した塗膜の高さ方向の初期長さ
    ΔLは無荷重状態で昇温速度5℃/minで30℃から200℃まで昇温した時のL該当部分の塗膜の高さ方向における最大収縮長さ
  13. 前記内面塗膜の被覆度が、ERV換算で200mA未満である請求項1又は2に記載のシームレス缶。
  14. 絞りしごき缶である請求項1又は2記載のシームレス缶。
  15. 少なくとも加工後に缶内面となる面に内面塗膜を有するシームレス缶用塗装金属であって、前記内面塗膜がポリエステル樹脂と硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂及び/又はアミノ樹脂を含有し、前記ポリエステル樹脂における多価カルボン酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸の含有量が70モル%以上且つイソフタル酸の含有量が21モル%未満であり、
    前記内面塗膜の下記式(1b)で表されるゲル分率(A)が、90%未満であり、
    前記内面塗膜の下記式(2b)で表されるゲル分率(B)が、前記ゲル分率(A)よりも10%以上高いことを特徴とする塗装金属板。
    ゲル分率(A)=(W2b/W1b)×100(%)・・・(1b)
    式中、W1bは前記塗装金属板から切り出した塗装金属基体から単離した前記内面塗膜の質量、W2bは該単離した前記内面塗膜を常温のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量をそれぞれ示す。
    ゲル分率(B)=[(W4b-W5b)/(W3b―W5b)]×100(%)・・・(2b)
    式中、W3bは前記塗装金属板から切り出した前記内面塗膜が形成されている塗装金属基体の質量、W4bは該塗装金属基体を80℃のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量、W5bは該塗装金属基体から前記内面塗膜を除去した後の金属基体の質量をそれぞれ示す。
  16. 加工後に缶外面となる面にさらに外面塗膜を有し、前記外面塗膜がポリエステル樹脂と硬化剤としてアミノ樹脂を含有し、前記外面塗膜の下記式(3b)で表されるゲル分率(A)が、90%未満である請求項15記載の塗装金属板。
    ゲル分率(A)=(W7b/W6b)×100(%)・・・(3b)
    式中、W6bは前記塗装金属板から切り出した塗装金属基体から単離した前記外面塗膜の質量、W7bは該単離した前記外面塗膜を常温のMEK中に60分間浸漬した後、取り出して乾燥した後の質量をそれぞれ示す。
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