JP2023019188A - 抗菌性積層体 - Google Patents

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Yusuke Hatanaka
洋史 阿部
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Abstract

【課題】迅速に抗菌性を発現し、一定時間、抗菌性が持続及び増大し、更に耐擦性に優れる抗菌性積層体を提供する。【解決手段】樹脂を含む基材と、銀を含む抗菌剤微粒子及びバインダーを含有する抗菌膜と、を備える抗菌性積層体であって、抗菌剤微粒子の平均粒径は、1.0μm以下であり、抗菌性積層体における抗菌膜の表面の水接触角は、50°以下であり、温度40℃、相対湿度90%条件での抗菌性積層体の透湿度は、1.0×10-4~1.0×102g/m2・dayであり、基材と抗菌膜とは直接結合している、抗菌性積層体。【選択図】図1

Description

本発明は、抗菌性積層体に関する。
従来、抗菌膜を形成するための抗菌液として、抗菌剤微粒子、バインダー及び溶媒を含有する抗菌液が知られている。
特許文献1及び2には、抗菌剤微粒子として銀担持無機酸化物を用い、基材に抗菌液をスプレー法などにより塗布して抗菌膜を形成する技術が記載されている。
特開2017-43599号公報 特開2017-109983号公報
近年、新型コロナウイルスの世界的な流行に伴い、公共施設等で使用されるコンピューターのキーボードや、マウス、電卓、スイッチ等の表面に対する抗菌性への関心が高まっている。
例えば病院、介護施設、学校等では、キーボードにシリコーン製のカバーが設けられ、定期的に除菌及び交換が行われているが、ますますその頻度が高まっている。
しかしながら、本発明者らの検討により、シリコーンなどのケイ素含有樹脂や、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素含有樹脂を含む撥水性基材に対して、従来の方法で抗菌膜を形成すると、抗菌性が迅速に発現しにくいということが分かった。
抗菌性は、抗菌成分である銀イオン(Ag)を放出することで発現する。抗菌性を迅速に発現するためには、抗菌膜の表面に水(例えば、汗や唾などに含まれている微量の水)が接触した際に、迅速に銀イオンを放出することが重要である。
また、より効果的な抗菌性を示すためには、抗菌性が発現してから一定時間、抗菌性が持続し、かつ抗菌性が増大する(すなわち、銀イオンの放出量が増加する)ことが重要である。
さらに、コンピューターのキーボードや、マウス、電卓、スイッチ等の表面に対する抗菌性という観点からは、抗菌膜の表面を擦った後も抗菌性が持続する(すなわち、耐擦性に優れる)ことが重要である。
本発明の課題は、迅速に抗菌性を発現し、一定時間、抗菌性が持続及び増大し、更に耐擦性に優れる抗菌性積層体を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題が解決されることを見出した。
[1]
樹脂を含む基材と、
銀を含む抗菌剤微粒子及びバインダーを含有する抗菌膜と、
を備える抗菌性積層体であって、
上記抗菌剤微粒子の平均粒径は、1.0μm以下であり、
上記抗菌性積層体における上記抗菌膜の表面の水接触角は、50°以下であり、
温度40℃、相対湿度90%条件での上記抗菌性積層体の透湿度は、1.0×10-4~1.0×10g/m・dayであり、
上記基材と上記抗菌膜とは直接結合している、
抗菌性積層体。
[2]
上記抗菌剤微粒子の平均粒径が、0.7μm以下である、[1]に記載の抗菌性積層体。
[3]
上記抗菌剤微粒子が、銀担持ガラスを含む、[1]又は[2]に記載の抗菌性積層体。
[4]
上記抗菌膜の上記基材とは反対側の表面から上記基材に向かって膜厚方向に50%の領域に、上記抗菌剤微粒子が60%以上存在している、[1]~[3]のいずれか1つに記載の抗菌性積層体。
[5]
上記抗菌膜の膜厚Aに対する上記抗菌剤微粒子の平均粒径Bの比B/Aが、1.0以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の抗菌性積層体。
[6]
上記抗菌膜の膜厚が1.0μm以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の抗菌性積層体。
本発明によれば、迅速に抗菌性を発現し、一定時間、抗菌性が持続及び増大し、更に耐擦性に優れる抗菌性積層体を提供できる。
本発明の抗菌性積層体の一態様を示す断面模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
以下、本明細書における各記載の意味を表す。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「抗菌」とは、菌類(細菌、カビ等)、ウイルス等を含む増殖性有機微小体(病原体等)を不活化すること、及び増殖性有機微小体の増殖を防ぐことの少なくとも1つを含む概念を意味する。
本明細書に記載の化合物において、特段の断りがない限り、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)、光学異性体及び同位体が含まれていてもよい。また、異性体及び同位体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
本発明の抗菌性積層体は、
樹脂を含む基材と、
銀を含む抗菌剤微粒子及びバインダーを含有する抗菌膜と、
を備える抗菌性積層体であって、
抗菌剤微粒子の平均粒径は、1.0μm以下であり、
抗菌性積層体における抗菌膜の表面の水接触角は、50°以下であり、
温度40℃、相対湿度90%条件での抗菌性積層体の透湿度は、1.0×10-4~1.0×10g/m・dayであり、
基材と抗菌膜とは直接結合している、
抗菌性積層体である。
図1に、本発明の抗菌性積層体の一態様を示す断面模式図を示す。図1の抗菌性積層体10は、基材2の一方の表面に抗菌膜1が積層された構造を有する。
抗菌膜1は、抗菌剤微粒子3とバインダーを含有する。図1の抗菌性積層体10では、抗菌膜1中の抗菌剤微粒子3以外の部分がバインダーである。
抗菌性積層体10における抗菌膜1の表面S1の水接触角は、50°以下である。
温度40℃、相対湿度90%条件での抗菌性積層体10の透湿度は、1×10-4~1×10g/m・dayである。
基材2と抗菌膜1とは直接結合している。基材2と抗菌膜1との間には他の層が存在しない。また、基材2に含まれる物質の少なくとも1つと、抗菌膜1に含まれる物質の少なくとも1つとが化学的に結合している。
本発明の抗菌性積層体が、迅速に抗菌性を発現し、一定時間、抗菌性が持続及び増大し、更に耐擦性に優れる理由については、詳細には明らかになってはいないが、後掲の実施例及び比較例の結果などから、本発明者らは以下のように推定している。
本発明の抗菌性積層体は、シリコーンなどのケイ素含有樹脂や、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素含有樹脂を含む撥水性基材に、抗菌膜を積層しており、かつ、基材と抗菌膜とは直接結合している。基材と抗菌膜とを直接結合させる手段については後述するが、好ましい一態様として、基材の表面をコロナ処理する方法が挙げられる。撥水性基材の表面をコロナ処理することで、撥水性基材の表面の一部にヒドロキシ基などの反応性基を生じさせ、抗菌膜に含まれる物質と反応することで、結合を形成できるが、このときに、基材の表面にまだらに(不均一に)抗菌膜が形成され、抗菌剤微粒子が偏在している部分が無数に発生するため、迅速に抗菌性を発現することができると考えられる。
本発明の構成の抗菌性積層体により、少量の水でも迅速に抗菌性を発現することができるというのは、予想外の効果である。
さらに、撥水性基材と抗菌膜との結合が形成されているため、耐擦性に優れると考えられる。
これに対して、基材の表面にコロナ処理等を施さない場合は、基材の表面に均一に抗菌膜が配置されるため、迅速に抗菌性を発現することができないと考えられる。さらに、撥水性基材と抗菌膜との結合が形成されていないため、耐擦性に劣ると考えられる。
また、基材上に、接着層を設けて、接着層を介して抗菌膜と積層した場合も、接着層の表面に均一に抗菌膜が配置されるため、迅速に抗菌性を発現することができないと考えられる。
本発明の抗菌性積層体は、シリコーンなどのケイ素含有樹脂や、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素含有樹脂を含む撥水性基材に、抗菌膜を積層しているため、抗菌性積層体の透湿度が、温度40℃、相対湿度90%条件で、1.0×10-4~1.0×10g/m・dayである。この特定の透湿度を満たすことで、一定時間、抗菌性が持続及び増大すると考えられる。
これに対して、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)などの親水性の高い樹脂を含む基材を用いると、抗菌性積層体の透湿度が1.0×10g/m・dayを超え、基材側に銀イオンが溶出してしまい、抗菌性が増大しにくいと考えられる。
また、基材上に、接着層を設けて、接着層を介して抗菌膜と積層した場合も、接着層側に銀イオンが溶出してしまい、抗菌性が増大しにくいと考えられる。
(抗菌性積層体の透湿度)
本発明の抗菌性積層体の透湿度は、温度40℃、相対湿度90%条件で、1.0×10-4~1.0×10g/m・dayであり、1.0×10-3~1.0×10g/m・dayであることが好ましい。
抗菌性積層体の透湿度は、基材に含まれる樹脂の種類、抗菌膜に含まれるバインダーの種類、基材及び抗菌膜の膜厚などによって調整することができる。
(基材と抗菌膜との結合)
基材と抗菌膜とは直接結合している。すなわち、基材と抗菌膜とは間に他の層などを介さずに、直接接している。また、基材に含まれる物質と抗菌膜に含まれる物質とは結合(好ましくは化学結合)している。基材に含まれる物質と抗菌膜に含まれる物質とを化学結合させるための手段は、例えば、基材の表面にコロナ処理、イトロ処理、及びフレイムボンド処理からなる群より選ばれる少なくとも1つの処理を施してから、抗菌膜を積層する方法が挙げられる。コロナ処理、イトロ処理、及びフレイムボンド処理については後述する。
[抗菌膜]
本発明の抗菌性積層体が有する抗菌膜について説明する。
抗菌膜は、少なくとも、銀を含む抗菌剤微粒子と、バインダーとを含有する。
(抗菌剤微粒子)
抗菌剤微粒子は、銀を含み、好ましくは銀担持無機酸化物を含む。
銀を含む抗菌剤微粒子(単に、「抗菌剤微粒子」とも呼ぶ。)と、水(例えば、汗や唾などに含まれている微量の水)とが接触すると、抗菌剤微粒子から抗菌成分である銀イオンが水に溶出する。これにより、本発明の抗菌性積層体の抗菌性が発現する。
〈銀担持無機酸化物〉
銀担持無機酸化物は、銀と、銀を担持する担体である無機酸化物とを有する。
銀(銀原子)としては、その種類は特に制限されない。また、銀の形態も特に制限されず、例えば、金属銀、銀イオン、銀塩(銀錯体を含む)など形態で含まれる。なお、本明細書では、銀錯体は銀塩の範囲に含まれる。
銀塩としては、例えば、酢酸銀、アセチルアセトン酸銀、アジ化銀、銀アセチリド、ヒ酸銀、安息香酸銀、フッ化水素銀、臭素酸銀、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、塩素酸銀、クロム酸銀、クエン酸銀、シアン酸銀、シアン化銀、(cis,cis-1,5-シクロオクタジエン)-1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、フッ化銀(I)、フッ化銀(II)、7,7-ジメチル-1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-4,6-オクタンジオン酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、ヘキサフルオロヒ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、イソチオシアン酸銀、シアン化銀カリウム、乳酸銀、モリブデン酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、酸化銀(I)、酸化銀(II)、シュウ酸銀、過塩素酸銀、ペルフルオロ酪酸銀、ペルフルオロプロピオン酸銀、過マンガン酸銀、過レニウム酸銀、リン酸銀、ピクリン酸銀一水和物、プロピオン酸銀、セレン酸銀、セレン化銀、亜セレン酸銀、スルファジアジン銀、硫酸銀、硫化銀、亜硫酸銀、テルル化銀、テトラフルオロ硼酸銀、テトラヨードムキュリウム酸銀、テトラタングステン酸銀、チオシアン酸銀、p-トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロ酢酸銀、バナジン酸銀などが挙げられる。
また、銀錯体の一例としては、ヒスチジン銀錯体、メチオニン銀錯体、システイン銀錯体、アスパラギン酸銀錯体、ピロリドンカルボン酸銀錯体、オキソテトラヒドロフランカルボン酸銀錯体、イミダゾール銀錯体などが挙げられる。
担体である無機酸化物としては、例えば、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ガラス(酸化ケイ素、酸化リン、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ホウ素、および、酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物)、ゼオライト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、リン酸チタン、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。
銀担持無機酸化物としては、例えば、銀担持ゼオライト(ゼオライト銀)、銀担持アパタイト、銀担持ガラス、銀担持リン酸ジルコニウム、銀担持ケイ酸カルシウムなどが好適に挙げられ、なかでも、銀担持アパタイト、銀担持ガラスが好ましく、抗菌性の観点から、銀担持ガラスがより好ましい。銀担持ガラスとしては、リン酸ガラス系担体に担持された銀(リン酸ガラス銀)が特に好ましい。
抗菌剤微粒子は、銀担持無機酸化物以外の抗菌剤を含んでいてもよく、例えば、有機系抗菌剤が挙げられる。
有機系抗菌剤としては、例えば、フェノールエーテル誘導体、イミダゾール誘導体、スルホン誘導体、N-ハロアルキルチオ化合物、アニリド誘導体、ピロール誘導体、第4アンモニウム塩、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、又はイソチアゾリン系化合物などが挙げられる。
抗菌剤微粒子は、銀に加えて、更に銀を含まない無機系抗菌剤を含んでいてもよい。
銀を含まない無機系抗菌剤としては、例えば、銅、亜鉛などの金属を上述した担体に担持させた抗菌剤が挙げられる。
抗菌剤微粒子中の銀担持無機酸化物の含有量は、固形分で、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が最も好ましい。
抗菌剤微粒子中の銀担持無機酸化物以外の成分の含有量は、固形分で、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましく、5質量%以下が最も好ましい。
〈抗菌剤微粒子の平均粒径〉
抗菌剤微粒子の平均粒径は、1.0μm以下であり、0.9μm以下が好ましく、0.7μm以下がより好ましい。抗菌剤微粒子の平均粒径の下限は特に限定されないが、例えば、0.05μm以上である。
本発明において、平均粒径は、堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて50%体積累積径(D50)を3回測定して、3回測定した値の平均値を用いる。
抗菌剤微粒子の平均粒径は、従来公知の方法により調節でき、例えば、乾式粉砕または湿式粉砕を採用できる。乾式粉砕においては、例えば、乳鉢、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、回転ミル、振動ミル、遊星ミル、ビーズミル等が適宜用いられる。また、湿式粉砕においては、各種ボールミル、高速回転粉砕機、ジェットミル、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等が適宜用いられる。
例えば、ビーズミルにおいては、メディアとなるビーズの径、種類、混合量等を調節することで平均粒径を制御できる。
本発明においては、例えば、粉砕対象物である抗菌剤微粒子をエタノールまたは水中に分散させ、サイズが異なるジルコニアビーズを混合し振動させることで、湿式粉砕により、抗菌剤微粒子の平均粒径を調節できるが、この方法に限定されず、粒径を制御するうえで適切な方法を選択すればよい。
〈抗菌剤微粒子の含有量〉
抗菌膜の全質量に対する抗菌剤微粒子の含有量は、固形分で、例えば、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、1質量%以上が特に好ましく、5質量%以上が最も好ましい。
抗菌膜の全質量に対する抗菌剤微粒子の含有量は、固形分で、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましく、20質量%以下が最も好ましい。
抗菌剤微粒子中の銀の含有量は特に制限されないが、抗菌剤微粒子の全質量に対して、例えば、0.1~30質量%であり、0.3~10質量%が好ましい。
(バインダー)
抗菌膜に含まれるバインダーについて説明する。
バインダーに含まれる物質の種類は特に限定されないが、少なくとも1種のシラン化合物、又はシラン化合物の加水分解及び縮合反応物を含むことが好ましい。すなわち、下記シラン化合物は、バインダーであってもよいし、バインダーの前駆体であるバインダー形成用化合物であってもよい。
〈シラン化合物〉
シラン化合物としては、例えば、下記一般式(I)で表されるシロキサン化合物(シロキサンオリゴマー)が挙げられる。
Figure 2023019188000002
一般式(I)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。mは1~100の整数を表す。R、R、RおよびRは複数存在する場合は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。R、R、RおよびRのうち少なくとも2つは結合して環を形成してもよい。
、R、RおよびRが表す有機基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数4~16の複素環基などが挙げられる。
、R、RおよびRは、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、または、炭素数6~14のアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、炭素数6~10のアリール基であることがより好ましい。
、R、RおよびRが表すアルキル基は、分岐状であってもよい。
、R、RおよびRが表す有機基は置換基を有していてもよく、置換基が更に置換基を有していてもよい。
、R、RおよびRの好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
mは、2~20の整数を表すことが好ましく、3~15の整数を表すことがより好ましく、5~10の整数を表すことが更に好ましい。
シラン化合物としては、親水性を示し抗菌性に優れる抗菌膜を得る観点から、例えば、メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1~6のアルコキシ基を有するシラン化合物が挙げられ、下記一般式(II)で表されるシロキサン化合物(シロキサンオリゴマー)が好ましい。
Figure 2023019188000003
一般式(II)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1~6の有機基を表す。nは1~100の整数を表す。
一般式(II)において、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1~6の有機基を表す。上記有機基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。R、R、RおよびRは複数存在する場合は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。R、R、RおよびRのうち少なくとも2つは結合して環を形成してもよい。
、R、RおよびRが表す有機基としては、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数3~6のシクロアルキル基が好ましい。上記アルキル基又は上記シクロアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。R、R、RおよびRで表されるアルキル基の炭素数を1~6とすることにより、シロキサンオリゴマーの加水分解性を高めることができる。加水分解の容易さから、R、R、RおよびRで表される有機基としては、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基が更に好ましい。
一般式(II)において、nは2~20の整数を表すことが好ましい。nをこの範囲内とすることにより、加水分解物を含む溶液の粘度を適切な範囲とすることができ、また、シロキサンオリゴマーの反応性を好ましい範囲に制御できる。nは3~15の整数を表すことがより好ましく、5~10の整数を表すことが更に好ましい。
シロキサンオリゴマーは、水成分とともに混合されることによって、少なくとも一部が加水分解された状態となる。シロキサンオリゴマーの加水分解物は、シロキサンオリゴマーを水成分と反応させ、ケイ素に結合したアルコキシ基をヒドロキシ基に変化させることによって得られる。加水分解に際しては必ずしも全てのアルコキシ基が反応する必要はないが、塗布後に親水性を発揮するためにはなるべく多くのアルコキシ基が加水分解されることが好ましい。また、加水分解に際して最低限必要な水成分の量はシロキサンオリゴマーのアルコキシ基と等しいモル量となるが、反応を円滑に進めるには大過剰の量の水が存在することが好ましい。
この加水分解反応は室温でも進行するが、反応促進のために加温してもよい。また反応時間は長い方がより反応が進むため好ましい。また、後述する触媒の存在下であれば半日程度でも加水分解物を得ることが可能である。
加水分解反応は可逆反応であり、系から水が除かれるとシロキサンオリゴマーの加水分解物はヒドロキシ基間で縮合を開始してしまう。従って、シロキサンオリゴマーに大過剰の水を反応させて加水分解物の水溶液を得た場合、そこから加水分解物を無理に単離せずに水溶液のまま用いることが好ましい。
一般式(II)で表されるシロキサンオリゴマーとしては、市販品を用いることもでき、具体的には、例えば、三菱化学社製のMKC(登録商標)シリケートが挙げられる。
バインダーは、上述したシラン化合物以外の化合物を含んでいてもよい。
バインダー中のシラン化合物の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
〈バインダーの含有量〉
抗菌膜の全質量に対するバインダーの含有量は、固形分で、例えば、3~99質量%が好ましく、5~95質量%がより好ましく、10~90質量%が更に好ましい。
抗菌膜は、銀を含む抗菌剤微粒子及びバインダーに加えて、更に、その他の成分を含有してもよい。
(分散剤)
抗菌膜は、分散剤を含有してもよい。
分散剤は、抗菌剤微粒子の分散性を高める機能を有する。
分散剤としては、ノニオン系またはアニオン系の分散剤が好ましく用いられる。また、抗菌剤微粒子に対する親和性の観点から、例えばカルボキシ基、リン酸基および水酸基などのアニオン性の極性基を有する分散剤(アニオン系分散剤)がより好ましい。
アニオン系分散剤としては、市販品を用いることができ、その具体例としては、BYK社の商品名DISPERBYK(登録商標)-110、DISPERBYK(登録商標)-111、DISPERBYK(登録商標)-116、DISPERBYK(登録商標)-140、DISPERBYK(登録商標)-161、DISPERBYK(登録商標)-162、DISPERBYK(登録商標)-163、DISPERBYK(登録商標)-164、DISPERBYK(登録商標)-170、DISPERBYK(登録商標)-171、DISPERBYK(登録商標)-174、DISPERBYK(登録商標)-180、DISPERBYK(登録商標)-182等が好適に挙げられる。
抗菌膜が分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、抗菌剤微粒子の含有量に対して、固形分で、例えば、50質量%以上であり、200質量%以上が好ましく、400質量%以上がより好ましい。
抗菌膜が分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、抗菌剤微粒子の含有量に対して、例えば、1500質量%以下である。
(触媒)
抗菌膜は、触媒を含有してもよい。
特に、バインダーとして上記シロキサンオリゴマーを含有する場合、その縮合を促進する触媒を更に含むことが好ましい。
シロキサンオリゴマーの縮合を促進する触媒としては、特に限定されないが、例えば、酸触媒、アルカリ触媒、有機金属触媒などが挙げられる。酸触媒の例としては、硝酸、塩酸、硫酸、酢酸、クロロ酢酸、蟻酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸などが挙げられる。アルカリ触媒の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。有機金属触媒の例としては、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートなどのアルミキレート化合物;ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)などのジルコニウムキレート化合物;チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)などのチタンキレート化合物;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエートなどの有機スズ化合物;等が挙げられる。
これらのうち、有機金属触媒が好ましく、アルミキレート化合物またはジルコニウムキレート化合物がより好ましい。
抗菌膜が触媒を含有する場合、触媒の含有量は、抗菌膜の全質量に対して、固形分で、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、0.3~10質量%が更に好ましい。
シロキサンオリゴマーの縮合を促進する触媒は、シロキサンオリゴマーの加水分解に対しても有用である。
(界面活性剤)
抗菌膜は、界面活性剤(界面活性を示す成分)を含有していてもよい。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、イオン性(アニオン性、カチオン性、両性)界面活性剤などいずれも好適に使用できる。
ノニオン性の界面活性剤の例としては、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、ポリアルキレングリコールモノアルキルエステル類、ポリアルキレングリコールモノアルキルエステル・モノアルキルエーテル類などが挙げられる。より具体的には、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノセチルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエステル、ポリエチレングリコールモノステアリルエステルなどが挙げられる。
イオン性の界面活性剤の例としては、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩などのアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤;アルキルカルボキシベタインなどの両性型界面活性剤;等が挙げられる。
抗菌膜の全質量に対する界面活性剤の含有量は、固形分で、例えば0.0001質量%以上であり、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましい。
抗菌膜が界面活性剤を含有する場合、抗菌膜の全質量に対する界面活性剤の含有量は、固形分で、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
(シリカ粒子)
抗菌膜は、シリカ粒子を含有していてもよい。
シリカ粒子の形状は特に限定されず、球状、板状、針状、ネックレス状などが挙げられるが、球形が好ましい。また、シリカをシェルとしてコアに空気および有機樹脂などを内包していてもよい。更に、分散安定化するためにシリカ粒子の表面に表面処理が施されていてもよい。
シリカ粒子の平均粒径(一次粒径)は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましい。シリカ粒子の粒径は、上述した抗菌剤微粒子と同様に測定できる。
形状およびサイズ等が異なる2種以上のシリカ粒子を併用してもよい。
抗菌膜がシリカ粒子を含有する場合、抗菌膜の全質量に対するシリカ粒子の含有量は、固形分で、95質量%以下が好ましく、10~90質量%がより好ましく、20~80質量%が更に好ましい。
(酸性材料)
抗菌膜は、酸性材料を含有してもよい。
酸性材料としては、例えば、リン酸、硫酸などの無機酸;リンゴ酸、乳酸、酒石酸、サリチル酸、グルコン酸、アジピン酸、フィチン酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、グリオキシル酸、メルドラム酸、グルタミン酸、ピクリン酸、アスパラギン酸、酢酸、ギ酸、クエン酸などの有機酸;これら酸のアルカリ金属塩;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
抗菌膜中の酸性材料の含有量は、特に限定されない。
(抗菌膜の水接触角)
本発明の抗菌性積層体における抗菌膜の表面の水接触角は、50°以下であり、40°以下が好ましい。抗菌膜の表面の水接触角が50°以下であると、抗菌膜が親水性を示し、迅速に抗菌性を発現し、かつ抗菌性が持続する。これは、抗菌膜が親水性を示すことで、水分が抗菌膜中に浸透しやすくなり、抗菌膜中の抗菌剤微粒子にも水分が届いて銀イオンを放出できるようになるためであると考えられる。また、抗菌膜中の抗菌剤微粒子も有効活用されて、銀イオンの供給を持続できるため、抗菌性が持続すると考えられる。
抗菌膜の表面の水接触角の下限は特に限定されないが、例えば、5°以上の場合が多い。
なお、水接触角を測定する抗菌膜の表面は、通常、基材とは反対側の表面(図1の表面S1)である。
水接触角は、接触角計DMo-502(協和界面化学社製)を用い、抗菌膜の表面に純水を1μl滴下してθ/2法により接触角を測定し、5回測定して得た値の平均値を水接触角とする。
(抗菌膜の膜厚)
抗菌膜の膜厚は、1.0μm以下が好ましく、0.7μm以下がより好ましく、0.5μm以下が更に好ましい。膜厚の下限は特に限定されないが、例えば、0.01μm以上である。
膜厚は、抗菌膜をミクロトームで切削して断面を削り出し、削り出した断面を走査電子顕微鏡で観察し、任意の20箇所における膜厚を測定し、それらを算術平均した値を、抗菌膜の膜厚(平均膜厚)とする。
(膜厚方向の抗菌剤微粒子の偏在性)
抗菌膜の基材とは反対側の表面から基材に向かって膜厚方向に50%の領域に、抗菌剤微粒子が60%以上存在していることが好ましく、65%以上存在していることがより好ましく、70%以上存在していることが更に好ましい。
「抗菌膜の基材とは反対側の表面から基材に向かって膜厚方向に50%の領域に、抗菌剤微粒子が60%以上存在している」とは、図1を使って説明すると、抗菌膜1の表面S1から抗菌膜1の膜厚方向の中央線Cまでの領域(膜厚方向に50%の領域)に、抗菌剤微粒子の中心点が存在する抗菌剤微粒子が、抗菌剤微粒子全体の数に対して60%以上であるということである。
抗菌膜の基材とは反対側の表面から基材に向かって膜厚方向に50%の領域に、抗菌剤微粒子が60%以上存在していると、抗菌膜の表面近傍に偏在する抗菌性微粒子が多く、さらに迅速に抗菌性を発現することができる。
(B/A)
抗菌膜の膜厚Aに対する抗菌剤微粒子の平均粒径Bの比B/Aは、0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、1.0以上であることが更に好ましく、1.2以上であることが更に好ましく、1.4以上であることが特に好ましい。
B/Aが1.0以上であると、抗菌膜の表面近傍に存在する(または抗菌膜の表面から突出している)抗菌性微粒子が多く、さらに迅速に抗菌性を発現することができる。
[基材]
本発明の抗菌性積層体が有する基材について説明する。
基材は支持体として機能し得る部材である。
基材は樹脂を含む。
本発明では、温度40℃、相対湿度90%条件での抗菌性積層体の透湿度が、1×10-4~1×10g/m・dayとなるように、基材の種類を選ぶ必要がある。
基材に含まれる樹脂は、シリコーンなどのケイ素含有樹脂、又はポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素含有樹脂が好ましい。
基材の形状は特に限定されず、板状、フィルム状、シート状などが挙げられる。基材表面は、平坦面でも、凹面でも、凸面でもよい。また、基材は、コンピューターのキーボードや、マウス、電卓、スイッチ等の各種装置の表面に設けられるカバーであってもよい。
基材の厚みは特に制限されず、使用目的に応じて適宜選択される。基材の厚みは、1μm以上10mm以下が好ましく、10μm以上7mm以下がより好ましく、30μm以上5mm以下が更に好ましい。
[抗菌性積層体の製造方法]
以下に、本発明の抗菌性積層体の製造方法の好ましい態様について説明する。
本発明の抗菌性積層体は、
樹脂を含む基材の表面に、コロナ処理、イトロ処理、及びフレイムボンド処理からなる群より選ばれる少なくとも1つの処理を施す工程(1)、
上記処理を施した基材の表面に、銀を含む抗菌剤微粒子及びバインダー形成用化合物を含有する抗菌液(抗菌膜形成用組成物)を塗布する工程(2)、及び
塗布された抗菌液を乾燥させ、抗菌膜を形成する工程(3)
を含むことが好ましい。
工程(1)の樹脂を含む基材については前述したとおりである。
工程(1)の各処理について説明する。
(コロナ処理)
コロナ処理の条件は特に制限されないが、例えば、コロナ処理の処理量としては、好ましくは600~12000J/m(10~200W・分/m)であり、さらに好ましくは1200~9000J/m(20~150W・分/m)である。
(イトロ処理)
イトロ処理の条件は特に制限されないが、例えば、処理温度としては、30~150℃が好ましく、さらに好ましくは40~100℃である。また、処理時間としては5秒以内が好ましく、1秒以内がより好ましい。
(フレイムボンド処理)
フレイムボンド処理の条件は特に制限されないが、例えば、処理温度としては、20~100℃が好ましく、さらに好ましくは30~80℃である。また、処理時間としては5秒以内が好ましく、1秒以内がより好ましい。
工程(2)の銀を含む抗菌剤微粒子及びバインダー形成用化合物(好ましくはシラン化合物)については前述したとおりである。
抗菌液は、銀を含む抗菌剤微粒子及びバインダー形成用化合物に加えて、さらに溶媒を含むことが好ましい。
溶媒は特に限定されず、例えば、水及び有機溶媒の少なくとも1種が挙げられる。
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。
溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
抗菌液は、更に、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、前述の抗菌膜が含んでもよい成分として記載した、分散剤、触媒、界面活性剤、シリカ粒子、酸性材料等が挙げられる。
抗菌液における固形分の含有量、すなわち、溶媒以外の成分の合計含有量は特に制限されないが、抗菌液の全質量に対して、0.0005~60質量%が好ましく、0.01~30質量%がより好ましく、0.05~20質量%が更に好ましい。
抗菌液を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、スプレー法、刷毛塗り法、浸漬法、静電塗装法、バーコート法、ロールコート法、フローコート法、ダイコート法、不織布塗り法、インクジェット法、キャスト法、回転塗布法、LB(Langmuir-Blodgett)法などが挙げられる。
工程(3)の乾燥は、室温(例えば、15~35℃)での乾燥でもよく、40~120℃での加熱環境下での乾燥でもよい。乾燥時間は特に限定されないが、例えば、1~30分間とすることができる。
上記工程(1)~(3)を行うことで、基材と抗菌膜とを直接結合させることができる。
[抗菌性積層体の用途]
本発明の抗菌性積層体は、種々の用途に適用できる。例えば、抗菌性積層体を種々の物品の表面に配置することにより、物品の表面に抗菌性を付与できる。
例えば、本発明の抗菌性積層体は、公共施設等で使用されるコンピューターのキーボードや、マウス、電卓、スイッチ等に使用するカバーとして用いることができる。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
<実施例1>
容器中でエタノール170gを攪拌しながら、純水100g、バインダーとなるシロキサン化合物(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート MS51」)3.7g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)15g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)60g、および、アニオン性界面活性剤(ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10gを順次加えた後、平均粒径を1.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ゼオライト、東亞合成社製、エタノール希釈:固形分濃度50質量%)1.1gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液を得た。
なお、抗菌剤微粒子の平均粒径は、ビーズミルを用いてジルコニアビーズを混合し振動させることで湿式粉砕により事前に調節した。
更に、抗菌液をシリコーン製基材(厚さ:3mm、シリコーンゴムシートKS-125、十川ゴム社製)に霧吹きで20g吹きかけて塗布し、20分間室温(20℃)で乾燥後、基材と抗菌膜の積層体を得た。
なお、基材の表面は、春日電機社製、表面改質コロナ装置TEC-4AXによるコロナ処理(電極と基材表面間距離:1mm、出力75W、電極速度5m/minで6往復:「コロナ処理条件1」とも呼ぶ。)を事前に施した後に、上記抗菌液の塗布を行った。
<実施例2>
実施例1で、抗菌剤微粒子の平均粒径を0.7μmに制御した以外は、同様にして、積層体を得た。
<実施例3>
実施例1で、抗菌剤微粒子を、リン酸ガラス銀(富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度25質量%)、添加量を2.2gとした以外は、同様にして、積層体を得た。
<実施例4>
実施例3で、抗菌剤微粒子の平均粒径を0.7μmに制御した以外は、同様にして、積層体を得た。
<実施例5>
実施例4で、表面改質コロナ装置TEC-4AXによるコロナ処理の往復回数を12往復(「コロナ処理条件2」とも呼ぶ。)とした以外は、同様にして、積層体を得た。
<実施例6>
実施例5で、三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート MS51」の量を1.8gとした以外は、同様にして、積層体を得た。
<実施例7>
実施例5で、三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート MS51」の量を2.7gとした以外は、同様にして、積層体を得た。
<実施例8>
実施例3で、シリコーン製基材に代えて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製基材(厚さ:3mm、PTFE板003、村上電業社製)を用い、抗菌液塗布前のコロナ処理に代えて、イトロ処理を施した以外は、同様にして、積層体を得た。イトロ処理は、イトロ社製火炎処理機(イトロ処理システムNTS、燃料ガス:テトラメチルシラン0.1mmol%、テトラメトキシシラン0.01mmol%、残りが圧縮空気の混合ガスで1秒間処理)により行った。
<比較例1>
実施例3で、抗菌剤微粒子の平均粒径を1.5μmに制御した以外は、同様にして、積層体を得た。
<比較例2>
実施例3で、三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート MS51」の量を2.8gとし、信越化学製KBM-503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を1.1g追加した以外は、同様にして、積層体を得た。
<比較例3>
実施例3で、シリコーン製基材に代えて、アルミニウム製基材(岩崎商店社、A5052材、厚み1mm)を用いた以外は、同様にして、積層体を得た。
<比較例4>
実施例3で、基材をトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム株式会社製、厚み130μm)とした以外は、同様にして、積層体を得た。
<比較例5>
実施例3で、シリコーン製基材に代えて、易接着処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)製基材(東洋紡社、A4160、厚み125μm)とした以外は、同様にして、積層体を得た。なお、抗菌液は接着層表面に塗布した。
<比較例6>
実施例3で、基材のコロナ処理を行わなかった以外は、同様にして、積層体を得た。
上記で作製した実施例および比較例の積層体の各物性値は以下のように行った。
結果を下記表1~2に示した。
<表面水接触角>
接触角計DMo-502(協和界面化学社製)を用い、抗菌膜の表面に純水を1μl滴下してθ/2法により接触角[°]を測定し、5回測定して得た値の平均値を水接触角とした。
<透湿度>
温度40℃、相対湿度90%の環境下における水蒸気透過度を測定した。水蒸気透過度の測定は、JIS(日本産業規格)-Z0208に準ずる方法を用いて測定した。
<抗菌膜の膜厚、抗菌剤微粒子の粒径、基材と抗菌膜との直接結合、及び膜厚方向の抗菌剤微粒子の偏在性>
抗菌膜をミクロトームで切削研磨し、断面方向から走査型電子顕微鏡で倍率5000倍で撮影し、抗菌膜の膜厚、抗菌剤微粒子の粒径、及び膜厚方向の抗菌剤微粒子の偏在性について、それぞれ20箇所を測定した。抗菌膜の膜厚及び抗菌剤微粒子の粒径はこれらの平均値とした。膜厚方向の抗菌剤微粒子の偏在性については抗菌膜の基材の反対側の表面から基材に向かって膜厚方向に50%の領域に、抗菌剤微粒子の中心点が入っているか否かで判断した。例えば20個中12個が入っていれば、膜厚方向の抗菌剤微粒子の偏在性を60%と判断した。
また、基材と抗菌膜とが直接結合しているか否かを確認した。
上記で作製した実施例および比較例の積層体の性能評価は以下のように行った。
結果を下記表3に示した。
<迅速に抗菌性を発現するか否かの評価:超純水接触後10分後の溶出Ag量の測定>
溶出Ag量は、以下の手順および条件で測定した。
積層体の抗菌膜(形成直後の抗菌膜)の表面に50μLの超純水(関東化学社製、規格:Ultrapur)を滴下した。超純水を滴下して10分後、抗菌膜の超純水を滴下した部分の表面に対して、銀イオン電極を接触させ、比較電極と銀イオン電極との電位差から、滴下10分後溶出Ag量を測定した。なお、測定には下記装置または器具を用いた。
・銀イオン電極:HORIBA社製、8011-10C
・比較電極:HORIBA社製、2565A-10T
・酸化還元電位計:HORIBA社製、卓上型pHメーター、F-72
本結果の数値が高いほど、短時間で抗菌成分であるAgが表面に溶出する(すなわち、迅速に抗菌性を発現する)ことを示す。
<一定時間、抗菌性が持続及び増大するか否かの評価:超純水接触後3時間後の溶出Ag量の測定>
上記超純水接触後10分後の溶出Ag量の測定と同様の手順で、超純水接触後3時間後の溶出Ag量を測定した。本結果の数値が高いほど、継続的に、かつ大量に抗菌成分であるAgが表面に溶出し続ける(一定時間、抗菌性が持続及び増大する)ことを示す。
<耐擦性の評価:布拭き後の超純水接触後3時間後の溶出Ag量の測定>
抗菌膜表面に対して、不織布(旭化成せんい製「ベンコットM-3II」)を当てて50g重/cmの荷重で2000回擦った後、上記超純水接触後3時間後の溶出Ag量の測定と同様の手順で超純水接触後3時間後の溶出Ag量を測定した。本結果の数値が高いほど、耐擦性に強い抗菌膜が形成されていることを示す。
Figure 2023019188000004
Figure 2023019188000005
Figure 2023019188000006
表3に示した結果より、実施例1~8の積層体は、超純水接触後10分後の銀イオンの溶出量が多く、少量の水に接触した後、迅速に抗菌性を発現することが分かった。また、実施例1~8の積層体は、超純水接触後3時間後の銀イオンの溶出量が、超純水接触後10分後の銀イオンの溶出量よりも大幅に増加しており、一定時間、抗菌性が持続し、かつ抗菌性が増大することが分かった。さらに、実施例1~8の積層体は、布拭き後の超純水接触後3時間後の銀イオンの溶出量が、布拭きを行わなかった場合(抗菌膜形成直後の超純水接触後3時間後の銀イオンの溶出量)の結果と同じであり、耐擦性に優れていることが分かった。
比較例1の積層体は、抗菌剤微粒子の平均粒径が1.0μmよりも大きく、耐擦性が実施例1~8の積層体よりも劣っていた。
比較例2の積層体は、抗菌膜の表面の水接触角が50°より大きく、親水的ではないため、迅速に抗菌性を発現することができなかったと考えられる。また、一定時間経過後の銀イオンの溶出量が実施例1~8の積層体に比べて少なかった。
比較例3の積層体は、アルミニウム製基材を用いているため、抗菌膜との結合が形成されず、実施例1~8の積層体に比べて耐擦性が劣っていた。
比較例4の積層体は、TAC製基材を用いているため、透湿度が高く、一定時間経過後の銀イオンの溶出量が実施例1~8の積層体に比べて少なかった。
比較例5の積層体は、基材上に、接着層を設けて、接着層を介して抗菌膜と積層しているため、迅速に抗菌性を発現することができなかったと考えられる。また、一定時間経過後の銀イオンの溶出量が実施例1~8の積層体に比べて少なかった。
比較例6の積層体は、基材にコロナ処理やイトロ処理を行っていないため、基材と抗菌膜とが結合しておらず、迅速に抗菌性を発現することができないと考えられる。また、耐擦性も実施例1~8の積層体に比べて劣っていた。
1 抗菌膜
2 基材
3 抗菌剤微粒子
10 抗菌性積層体
S1 抗菌膜の基材とは反対側の表面
C 抗菌膜の膜厚方向の中央線

Claims (6)

  1. 樹脂を含む基材と、
    銀を含む抗菌剤微粒子及びバインダーを含有する抗菌膜と、
    を備える抗菌性積層体であって、
    前記抗菌剤微粒子の平均粒径は、1.0μm以下であり、
    前記抗菌性積層体における前記抗菌膜の表面の水接触角は、50°以下であり、
    温度40℃、相対湿度90%条件での前記抗菌性積層体の透湿度は、1.0×10-4~1.0×10g/m・dayであり、
    前記基材と前記抗菌膜とは直接結合している、
    抗菌性積層体。
  2. 前記抗菌剤微粒子の平均粒径が、0.7μm以下である、請求項1に記載の抗菌性積層体。
  3. 前記抗菌剤微粒子が、銀担持ガラスを含む、請求項1又は2に記載の抗菌性積層体。
  4. 前記抗菌膜の前記基材とは反対側の表面から前記基材に向かって膜厚方向に50%の領域に、前記抗菌剤微粒子が60%以上存在している、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗菌性積層体。
  5. 前記抗菌膜の膜厚Aに対する前記抗菌剤微粒子の平均粒径Bの比B/Aが、1.0以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗菌性積層体。
  6. 前記抗菌膜の膜厚が1.0μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗菌性積層体。
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