JP2023014561A - 多層グラフェンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ランダム積層構造を有し、層数均一性に優れた多層グラフェンを製造することができる多層グラフェンの製造方法の提供。【解決手段】 Fe-Cr合金膜を触媒として用いて炭素源から多層グラフェンを合成する工程を含む多層グラフェンの製造方法である。前記Fe-Cr合金におけるCr含有量が、10体積%~40体積%である態様、及び前記結晶性基板の表面が、サファイア基板の(0001)配向表面である態様が好ましい。【選択図】 図2D

Description

本発明は、多層グラフェンの製造方法に関する。
グラファイトは導電性物質であり、その結晶は炭素原子からなる原子層が層状に積層した結晶構造を有する。近年、この結晶から剥離により得られた単層(1層)のグラフェンにおいて、移動度が非常に高いという、バルクには無い特異な電子物性が発現することが見いだされた。これを契機に、グラフェンを用いた高周波デバイス、透明導電膜、フレキシブルデバイス、及び光センサへの応用が研究されている。
一方で、結晶からの剥離によるグラフェンの形成手法では、得られる単層原子膜がミクロンサイズの微小片であるため、大量生産や工業的な応用は難しい。これに対して、化学気相堆積(CVD)法により金属触媒上に直接グラフェンを合成する手法が開発された。触媒に用いる金属種や金属膜の結晶性によって、形成するグラフェンの層数(厚み)や積層構造、層数均一性が異なる。
最近、通常のグラファイトと異なり、積層するグラフェンが面内でランダムに回転した構造を持つランダム(乱層)積層構造を有する多層グラフェンが、多層でありながら単層の物性を保持することが見出され、注目されている。単層のグラフェンでは、機械強度が弱いことや光の吸収率が低いなど、これまでデバイス利用の上でいくつか問題点があった。しかし、単層のグラフェンの優れた電気特性を保持しつつ、層数を増やすことができればデバイス応用への可能性が広がると期待される。
ランダム積層を有する多層グラフェンを合成する方法として、触媒膜として鉄(Fe)を用いる方法が知られている(例えば、非特許文献1)。
Applied Physics Express 3(2010)025102
一つの側面では、本件は、ランダム積層構造を有し、層数均一性に優れた多層グラフェンを製造することができる多層グラフェンの製造方法を提供することを目的とする。
一つの態様では、本件で開示する多層グラフェンの製造方法は、Fe-Cr合金膜を触媒として用いて炭素源から多層グラフェンを合成する工程を含む。
一つの側面として、本件は、ランダム積層構造を有し、層数均一性に優れた多層グラフェンを製造することができる多層グラフェンの製造方法を提供できる。
図1Aは、従来技術における鉄触媒膜状に形成した多層グラフェンの断面を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。 図1Bは、従来技術における鉄触媒膜状に形成した多層グラフェンの上面を示す光学顕微鏡写真である。 図2Aは、実施形態1における多層グラフェンの製造方法の手順を示す模式図(その1)である。 図2Bは、実施形態1における多層グラフェンの製造方法の手順を示す模式図(その2)である。 図2Cは、実施形態1における多層グラフェンの製造方法の手順を示す模式図(その3)である。 図2Dは、実施形態1における多層グラフェンの製造方法の手順を示す模式図(その4)である。 図3は、実施形態2における多層グラフェンの製造方法の手順を示す模式図である。 図4Aは、比較例1の触媒膜(Fe)の光学顕微鏡による明視野像を示す写真である。 図4Bは、比較例1の触媒膜(Fe)の光学顕微鏡による暗視野像を示す写真である。 図4Cは、実施例1のFe-Cr合金膜(Cr20体積%)の光学顕微鏡による明視野像を示す写真である。 図4Dは、実施例1のFe-Cr合金膜(Cr20体積%)の光学顕微鏡による暗視野像を示す写真である。 図4Eは、実施例2のFe-Cr合金膜(Cr40体積%)の光学顕微鏡による明視野像を示す写真である。 図4Fは、実施例2のFe-Cr合金膜(Cr40体積%)の光学顕微鏡による暗視野像を示す写真である。 図4Gは、比較例2の触媒膜(Cr)の光学顕微鏡による明視野像を示す写真である。 図4Hは、比較例2の触媒膜(Cr)の光学顕微鏡による暗視野像を示す写真である。 図5Aは、実施例3のFe-Cr合金膜(Cr5体積%)の光学顕微鏡による暗視野像を示す写真である。 図5Bは、実施例4のFe-Cr合金膜(Cr10体積%)の光学顕微鏡による明視野像を示す写真である。 図6Aは、比較例1(触媒膜:Fe)における多層グラフェンの光学顕微鏡による明視野像を示す写真である。 図6Bは、実施例1(触媒膜:Fe-Cr(20体積%))における多層グラフェンの光学顕微鏡による暗視野像を示す写真である。 図7は、実施例1(触媒膜:Fe-Cr(20体積%))における多層グラフェンのラマン分光スペクトルを示す図である。 図8は、比較として示す、規則的なAB積層構造を有する多層グラフェンのラマン分光スペクトルを示す図である。
(多層グラフェンの製造方法)
開示の多層グラフェンの製造方法は、Fe-Cr合金膜を触媒として用いて炭素源から多層グラフェンを合成する工程を含む。
本件で開示する技術は、以下の従来技術の問題、及び知見に基づき完成させるに至ったものである。
すなわち、従来技術の非特許文献1(Applied Physics Express 3(2010)025102)の鉄触媒膜を用いたCVD合成方法では、図1Aに示すように、層数が100層を超える厚い多層グラフェンの膜が形成される(図中、符号aは多層グラフェンを示す)。しかし、図1Bに示す顕微鏡像において、エリアによる層数のばらつきがコントラストの差として確認でき、図中、符号bは、多層グラフェンの層数が多い(厚い)エリアを示し、符号cは、多層グラフェンの層数が少ない(薄い)エリアを示すことが確認できた。このように、従来技術では、面内の均一性が乏しいため、層数が均一で大面積のランダム積層構造を有する多層グラフェンを得ることが難しいという問題があることを本発明者らは見出した。更なる新規物性の解明に向けて、また、デバイス応用する上で層数のばらつきは歩留まりに大きく影響するため、層数の均一性を制御する技術が望まれている。
開示の多層グラフェンの製造方法は、多層グラフェン合成工程を少なくとも含み、金属膜形成工程と合金化再結晶化工程とを更に含むことが好ましく、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
多層グラフェンの製造方法によりランダム積層構造を有し、層数均一性に優れた多層グラフェンを製造することができる。
<多層グラフェン合成工程>
多層グラフェン合成工程は、Fe-Cr合金膜を触媒として用いて炭素源から多層グラフェンを合成する工程である。
まず、Fe-Cr合金膜、及びその形成方法について説明し、次いで、多層グラフェン合成工程について説明する。
-Fe-Cr合金膜-
Fe-Cr合金膜は、鉄(Fe)、クロム(Cr)、及び不可避な炭素等の不純物を含有するFe-Cr合金からなる合金膜である。
Fe-Cr合金膜は、合金層形成工程により好適に製造することができるが、結晶性基板上のFe-Cr合金膜に限定されるものではなく、前記Fe-Cr合金からなる箔(ホイル)や板(プレート)などの形態であってもよい。
Fe-Cr合金膜におけるCr含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、5体積%~40体積%が好ましく、10体積%~40体積%がより好ましく、10体積%~30体積%がさらに好ましく、15体積%~25体積%が特に好ましい。
炭素の含有量としては、前記Fe-Cr合金の総量に対して、1.2質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
炭素以外の不純物の含有量としては、Fe-Cr合金の総量に対して、0.1質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がより好ましく、0.001質量%以下がさらに好ましい。
Fe-Cr合金膜の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、100nm~1,000nmが好ましい。
平均厚みとしては、任意の5点以上のFe-Cr合金膜の厚みを測定した平均値とすることができる。
[Fe-Cr合金層の製造方法]
Fe-Cr合金層の製造方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、金属膜形成工程、及び合金化再結晶化工程により製造することが好ましい。
本開示の多層グラフェンの製造方法は、金属膜形成工程、及び合金化再結晶化工程を含むことが好ましい。
金属膜形成工程、及び合金化再結晶化工程により、結晶性基板上にグラフェン合成の触媒となるFe-Cr合金膜を好適に形成することができる。
<金属膜形成工程>
金属膜形成工程は、結晶性基板の表面に、(1)FeとCrとを堆積させる、又は(2)Fe-Cr合金を堆積させて金属膜を形成する工程である。
-結晶性基板-
結晶性基板としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サファイア基板、МgO基板、スピネル(МgAl)基板などが挙げられる。これらの中でも、サファイア基板が好ましく、サファイア単結晶の(0001)配向表面(一般的にはC面と称される)を有するサファイア基板がより好ましい。また、結晶性基板の表面がサファイア基板の(0001)配向表面であることが好ましい。
結晶性基板としては、化学機械研磨処理を施した原子レベルで平滑な面を有するものが好ましい。さらに酸素雰囲気中で1,000℃~1,400℃程度で加熱処理することが好ましい。加熱処理の時間としては、3時間~24時間が好ましい。
結晶性基板の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、100nm~1mmが好ましい。
金属膜の形成方法としては、例えば、蒸着法、スパッタリング法などが好適に挙げられる。
(1)FeとCrとを堆積させて金属膜を形成する場合(実施形態1)、Feの供給源とCrの供給源を用い、同一の結晶性基板上にFe膜とCr膜とを順次堆積させるか、又はFeとCrを同時に堆積させて金属膜を形成することができる。
FeとCrを堆積させる順序としては特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、Fe膜とCr膜との界面の酸化や不純物混入を防ぐために、真空中で一貫してFeとCrとを堆積させることが好ましい。
(2)Fe-Cr合金を堆積させて金属膜を形成する場合(実施形態2)、予め合金化されたFe-Cr合金供給源を用い、結晶性基板上に直接金属膜(合金膜)を形成することができる。
金属膜を形成する際(金属膜堆積時)の結晶性基板の温度としては、室温以上が好ましく、400℃~600℃がより好ましい。
金属膜の平均厚みとしては、Fe膜とCr膜を合わせた総厚みとして、100nm~1,000nmが好ましい。
金属膜におけるCr含有量としては、得られる前記Fe-Cr合金膜におけるCr含有量が好適な範囲(例えば、10体積%~40体積%)となるように適宜調整することが好ましく、5体積%~40体積%が好ましく、10体積%~40体積%がより好ましく、10体積%~30体積%がさらに好ましく、15体積%~25体積%が特に好ましい。
<合金化再結晶化工程>
合金化再結晶化工程は、金属膜形成工程に続いて、800℃~1,100℃で加熱して金属膜を合金化及び再結晶化してFe-Cr合金膜を形成する工程である。
金属膜を合金化及び再結晶化する方法としては、800℃~1,100℃で加熱することが好ましい。加熱の保持時間としては、10分間~600分間が好ましい。これにより、金属膜を合金化及び再結晶化してFe-Cr合金膜を好適に形成することができる。
金属膜を合金化及び再結晶化する装置としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、多層グラフェンの合成に用いる装置と併用できることが好ましく、高い気密性を保持でき、10Pa以下まで減圧できる排気系を有する炉であることが好ましい。また、合成に使用する不活性ガス、水素ガスなどの供給ラインが装置に繋がっており、流量計によりそれぞれの流量を制御できることが好ましい。
不活性ガスとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、アルゴン(Ar)、窒素などが挙げられる。
金属膜を合金化及び再結晶化する条件としては、大気圧、又は減圧において、水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気で行うことが好ましく、混合ガスにおける水素濃度としては、1体積%~30体積%が好ましい。
水素と不活性ガスとの流量は、装置内の容積にも依存するため一義的には規定できないが、水素の流量としては、1sccm~1,000sccmが好ましく、不活性ガスとの流量としては、10sccm~10,000sccmが好ましい。
ここで、単位「sccm」(standard cubic centimeters per minute)とは、1atm(大気圧1,013hPa)、25℃における1分間あたりの流量(cm)に換算したガス流量を表す単位である。気体の圧力が1atmの場合、1[sccm]=1.667×10-5[L/s]=6×10-5[m/h]=1.667×10-8[m/s]である。
<多層グラフェン合成工程>
次いで、Fe-Cr合金膜を触媒として用いて炭素源から多層グラフェンを合成する工程(多層グラフェン合成工程)を行う。
-炭素源-
炭素源としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、炭化水素ガス、気化させたアルコール類などが挙げられる。
炭化水素ガスとしては、例えば、メタン(CH)、エチレン(C)、アセチレン(C)などが挙げられる。
アルコール類としては、例えば、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。
これらの中でも、アセチレンが好ましい。
多層グラフェンの合成方法としては、例えば、化学気相堆積法(CVD)、分子線エピタキシー法(MBE)などが挙げられる。これらの中でも、CVD合成が好ましい。
CVD合成に用いる装置としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、Fe-Cr合金層の形成に用いる装置と併用できることが好ましく、高い気密性を保持でき、10Pa以下まで減圧できる排気系を有する炉であることが好ましい。また、合成に使用する不活性ガス、水素ガス、及び炭素源の供給ラインが装置に繋がっており、流量計によりそれぞれの流量を制御できることが好ましい。
多層グラフェンの合成方法としては、大気圧、又は減圧において、不活性ガス雰囲気、又は水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気で炭素源を導入することにより行うことが好ましい。
多層グラフェンの合成温度としては、500℃~800℃が好ましく、炭素源の導入に先立って温度範囲に昇温しておく。
炭素源の流量としては、装置内の容積にも依存するため一義的には規定できないが、0.1sccm~100sccmが好ましい。
多層グラフェンの合成時間としては、炭素源の流量(又は分圧)や温度などに依存し、一義的には規定できないが、1分間~60分間が好ましい。
(多層グラフェン)
開示の多層グラフェンは、積層するグラフェンが面内でランダムに回転した構造を持つ、ランダム積層構造を有する多層グラフェンである。多層グラフェンの面積が1,000μm以上であり、多層グラフェンにおける層数の最大値と最小値との差が20層以下であることが好ましい。
多層グラフェンは、開示の多層グラフェンの製造方法により好適に製造することができる。
多層グラフェンの面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000μm以上が好ましく、5,000μm以上がより好ましく、10,000μm以上がさらに好ましい。
多層グラフェンにおける層数の最大値(Nmax)と最小値(Nmin)との差(Nmax-Nmin)としては、20層以下が好ましく、15層以下がより好ましく、10層以下がさらに好ましい。
多層グラフェンの層数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2層~200層であってもよく、5層~100層であってもよく、50層~100層であってもよく、10層~50層であってもよい。多層グラフェンにおける二次元(平面)方向に対する層数の分布としては、均一な化学特性及び光学特性を得ることができる点から、特定の層数が均一に分布することが好ましいが、層数の幅を持って分布していてもよい。
多層グラフェンの同定方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、後述する図7の実施例1(触媒膜:Fe-Cr合金膜(Cr20体積%))における多層グラフェンのラマン分光スペクトルに示されるように、1600cm-1、及び2700cm-1付近に明瞭なピークが観測されることから、多層グラフェンが形成されていることを同定できる。また、2700cm-1付近のピーク形状がシングルピークであることから、得られた多層グラフェンがランダム積層を有していることを同定できる。
多層グラフェンは、光学顕微鏡により結晶性基板やFe-Cr合金層とのコントラストの差に基づいて確認でき、その面積、及び層数を求めることができる。層数の同定方法としては、他にも、原子間力顕微鏡により結晶性基板やFe-Cr合金層と多層グラフェンとの段差を直接測定する方法が挙げられ、単層グラフェンの厚み(約0.34nm)から算出することができる。
多層グラフェンは、AB積層構造を有する多層グラフェンにはない特異的な物性を発現する二次元材料として利用できる。例えば、AB積層構造を有する多層グラフェンに対して、高電子移動度を示すことから高周波デバイスへの応用、比表面積が大きいことから化学センサへの応用、高い光吸収係数を示すことから光学センサへの応用ができる。
以下、開示の多層グラフェンの製造方法における実施形態について、図面を参照しながら説明するが、本件は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、以下の図面において、図示の便宜上、相対的に正確な大きさや厚みを示していない構成部材がある。
[実施形態1]
多層グラフェンの合成をCVD法により行うことを例として、図2に沿って説明する。
図2A~Dは、実施形態1における多層グラフェンの製造方法の手順を示す模式図である。実施形態1は、金属膜形成工程と、合金化再結晶化工程と、多層グラフェン合成工程とを含み、金属膜形成工程が、結晶性基板の表面にFeとCrとを堆積させて金属膜を形成する工程である。
まず、結晶性基板1として、(0001)配向表面(一般的にはC面と称される)を有するサファイア単結晶を用意する(図2A)。結晶性基板1は、化学機械研磨処理を施した原子レベルで平滑な面を有するものが好ましく、さらに、酸素雰囲気で1,000℃~1,400℃、3時間~24時間の加熱処理を行うことが好ましい。
次に、結晶性基板1上に、Fe及びCrを含む金属膜を、例えば、蒸着法やスパッタリング法により形成する(図2B)。FeとCrの供給源を用い、同一の結晶性基板1上にFe膜2とCr膜3とを順次堆積させるか、又はFeとCrを同時に堆積させて金属膜を形成する。Fe膜とCr膜との界面の酸化や不純物混入を防ぐために、真空中で一貫してFeとCrとを堆積させることが好ましい。堆積時の結晶性基板1の温度は、室温以上が好ましく、400℃~600℃がより好ましい。金属膜の平均厚みは、100nm~1,000nmが好ましい。金属膜におけるCr含有量は、好適な範囲(例えば、10体積%~40体積%)となるようにFeとCrの供給量を適宜調整する。
次いで、Fe膜2とCr膜3とを含む金属膜の合金化及び再結晶化を行い、多層グラフェン合成の触媒として好適なFe-Cr合金膜5を形成する(図2C)。後述する多層グラフェン合成にも用いる装置として、高い気密性を保持でき、10Pa以下まで減圧できる排気系を有する炉を用いる。また、不活性ガス、水素ガス、炭素源などの供給ラインが装置に繋がっており、流量計によりそれぞれの流量を制御可能である。装置にFe膜2及びCr膜3を含む金属膜が堆積した結晶性基板1を導入後、真空排気と不活性ガス充填のサイクルを複数回繰り返すことにより炉内の残留酸素濃度を低減させる。金属膜の合金化及び再結晶化は、大気圧、又は減圧において、水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気で行うことが好ましい。混合ガスにおける水素濃度は、1体積%~30体積%が好ましく、水素の流量は、1sccm~1,000sccmが好ましく、不活性ガスの流量は、10sccm~10,000sccmが好ましい。金属膜を800℃~1,100℃で加熱して、10分間~600分間程度保持させることにより、Fe膜2とCr膜3とを含む金属膜の合金化と再結晶化を行い、Fe-Cr合金膜5を形成することができる。
次いで、Fe-Cr合金膜5を触媒として用いて炭素源から多層グラフェン10を、CVD法により合成する(図2D)。多層グラフェンの合成温度としては、500℃~800℃が好ましく、炭素源としてのアセチレンの導入に先立って温度範囲に昇温しておく。アセチレンの流量としては、0.1sccm~100sccmが好ましい。多層グラフェンの合成時間としては、アセチレンの流量(又は分圧)や温度などに依存するが、1分間~60分間程度である。
以上により、Fe-Cr合金膜5の表面にランダム積層構造を有する多層グラフェンが得られる。
[実施形態2]
図2A、図3、図2C及び図2Dは、実施形態2における多層グラフェンの製造方法の手順を示す模式図である。実施形態2は、金属膜形成工程が、結晶性基板の表面にFe-Cr合金を堆積させて金属膜を形成する工程であること以外は、実施形態1と同じである。
次に、結晶性基板1(図2A)上に、Fe-Cr合金を堆積させて金属膜4を、例えば、蒸着法やスパッタリング法により形成する(図3)。予め合金化されたFe-Cr合金の供給源を用い、結晶性基板1上に直接金属膜(Fe-Cr合金膜)4を形成する。Fe膜とCr膜との界面の酸化や不純物混入を防ぐために、真空中で堆積させることが好ましい。堆積時の結晶性基板1の温度は、室温以上が好ましく、400℃~600℃がより好ましい。金属膜の平均厚みは、100nm~1,000nmが好ましい。金属膜におけるCr含有量は、好適な範囲(例えば、10体積%~40体積%)となるようにFe-Cr合金の供給源を適宜準備する。
次いで、金属膜4の合金化及び再結晶化を行い、多層グラフェン合成の触媒として好適なFe-Cr合金膜5を形成し(図2C)、Fe-Cr合金膜5を触媒として用いて炭素源から多層グラフェン10を、CVD法により合成する(図2D)。
以上により、Fe-Cr合金膜5の表面にランダム積層構造を有する多層グラフェンが得られる。
以下、実施例に基づいて開示の多層グラフェンの製造方法、及び多層グラフェンをより具体的に説明するが、本件は以下の実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
実施形態1の方法にしたがって、以下の条件により多層グラフェンを製造した。
FeとCrの供給源を用い、得られるFe-Cr合金膜におけるCr含有量が、20体積%となるように金属膜を形成して合金化及び再結晶化を行い、実施例1のFe-Cr合金膜を形成した。
結晶性基板1のサイズは、1cm×1cmであり、金属膜を形成する際の結晶性基板1の温度は、室温であり、金属膜の平均厚みは、100nmであり、混合ガスにおける水素濃度は、1体積%であり、水素の流量は、1sccmであり、不活性ガスの流量は、100sccmであった。
合金化及び再結晶化を行う際の加熱温度は、1,000℃、加熱時間は、60分間であった。
得られた実施例1のFe-Cr合金膜(Cr20体積%)の光学顕微鏡による明視野像、及び暗視野像をそれぞれ図4C及び図4Dに示す。
次いで、Fe-Cr合金膜を触媒として用いて炭素源であるアセチレンから多層グラフェン10を、CVD法により合成した。
アセチレンの流量は、0.5sccmであり、前記多層グラフェンの合成温度及び合成時間は、600℃、及び5分間であった。
得られた実施例1(触媒膜:Fe-Cr(20体積%))における多層グラフェンの光学顕微鏡による明視野像を図6Bに示す。
(実施例2)
実施例1において、得られるFe-Cr合金膜におけるCr含有量が、40体積%となるように金属膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のFe-Cr合金膜、及び多層グラフェンを製造した。
得られた実施例2のFe-Cr合金膜(Cr40体積%)の光学顕微鏡による明視野像、及び暗視野像をそれぞれ図4E及び図4Fに示す。
(実施例3~5)
実施例1において、得られるFe-Cr合金膜におけるCr含有量が、5体積%、10体積%、及び30体積%となるように金属膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3~5のFe-Cr合金膜、及び多層グラフェンをそれぞれ製造した。
得られた実施例3のFe-Cr合金膜(Cr5体積%)の光学顕微鏡による暗視野像を図5Aに示し、実施例4のFe-Cr合金膜(Cr10体積%)の光学顕微鏡による暗視野像を図5Bに示す。
(比較例1)
実施例1において、得られるFe-Cr合金膜におけるCr含有量が0体積%、Fe含有量が100体積%となるように金属膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の触媒膜(Fe)、及び多層グラフェンを製造した。
得られた比較例1の触媒膜(Fe)の光学顕微鏡による明視野像、及び暗視野像をそれぞれ図4A及び図4Bに示す。
得られた比較例1(触媒膜:Fe)における多層グラフェンの光学顕微鏡による明視野像を図6Aに示す。
(比較例2)
実施例1において、得られるFe-Cr合金膜におけるCr含有量が、100体積%となるように金属膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の触媒膜(Cr)、及び多層グラフェンを製造した。
得られた比較例2の触媒膜(Cr)の光学顕微鏡による明視野像、及び暗視野像をそれぞれ図4G及び図4Hに示す。
比較例1の触媒膜(Fe)の明視野像(図4A)では、均一なコントラストが観察されるが、暗視野像(図4B)では、多数の不規則な線を含む模様が観察される。これらは、表面の凹凸や膜内部の結晶粒界に起因するものであり、膜の不均一性を示している。
実施例1のFe-Cr合金膜(Cr20体積%)の暗視野像(図4D)では、比較例1の触媒膜(Fe)に見られた模様が観察されないため、結晶粒界がなく表面が平坦な均一性の高い合金膜が形成していることが分かる。
図示しないが、実施例5のFe-Cr合金膜(Cr30体積%)では実施例1と比べてわずかに結晶粒界が形成され、実施例2のFe-Cr合金膜(Cr40体積%)の暗視野像(図4F)では、比較的多くの結晶粒界を確認することができる。
参考として示す比較例2の触媒膜(Cr)の暗視野像(図4H)では、非常に細かい結晶粒が形成するため、粒界密度が高い不均一な膜となる。
図5A及びBに、低Cr含有量のFe-Cr合金膜の実施例として、実施例3のFe-Cr合金膜(Cr5体積%)、及び実施例4のFe-Cr合金膜(Cr10体積%)の暗視野像を示す。どちらの場合も、結晶粒界や凹凸に起因する模様を呈しており、実施例1のFe-Cr合金膜(Cr20体積%)と比較して膜が不均一であることが分かる。
これらの結果から、実施例1のFe-Cr合金膜(Cr20体積%)が触媒膜として最も適している。
図6Bに、合金化再結晶化工程、及び多層グラフェン合成工程を実施することにより製造された実施例1(触媒膜:Fe-Cr(20体積%))における多層グラフェンの光学顕微鏡による暗視野像を示し、図6Aに、比較例1(触媒膜:Fe)における多層グラフェンの光学顕微鏡による明視野像を示す。
比較例1(触媒膜:Fe)では、色の濃淡(コントラスト)が異なる領域が多く観察された。このコントラストの違いは多層グラフェン膜の厚みの違いに起因しており、層数に大きなばらつきがあることを示している。一般的に、グラフェンの層数の不均一性は、顕微鏡観察におけるコントラストで確認でき、そこからサイズを見積もることができる。同等のコントラストを有するそれぞれの領域の最大長さは、おおよそ数十μm~数百μm程度であった。
一方、実施例1(触媒膜:Fe-Cr(20体積%))の多層グラフェンでは、基板全体に渡ってコントラストが一定であり、多層グラフェンにおける層数の最大値と最小値との差が20層以下と算出され、均一な層数の多層グラフェンが得られていることが分かった。なお、本実施例により得られる均一な層数の領域は、用いた基板サイズと同等であった。
実施例1(触媒膜:Fe-Cr(20体積%))の図6Bに示す多層グラフェンから得られたラマンスペクトルを図7に示す。
1600cm-1、及び2700cm-1付近に明瞭なピークが観測されることから、グラフェンが形成していることを確認した。また、2700cm-1付近のピーク形状がシングルピークであることから、得られた多層グラフェンがランダム積層を有していることが示された。
比較として、図8に高配向性熱分解グラファイト(HOPG)から得られた2700cm-1付近のラマンスペクトルを示す。一般的に、HOPGではグラフェンが規則的なBernal(AB)積層しており、そのような積層構造を持つグラファイト結晶では同範囲に観測されるピークは低波数側(2695cm-1付近)に肩を持つ構造になることが知られている。
更に以下の付記を開示する。
(付記1)
Fe-Cr合金膜を触媒として用いて炭素源から多層グラフェンを合成する工程を含むことを特徴とする多層グラフェンの製造方法。(符号10、図2C~D)
(付記2)
前記Fe-Cr合金膜におけるCr含有量が、10体積%~40体積%である付記1に記載の多層グラフェンの製造方法。(符号5、図2C)
(付記3)
結晶性基板の表面に、(1)FeとCrとを堆積させる、又は(2)Fe-Cr合金を堆積させて金属膜を形成する工程と、
次いで、800℃~1,100℃で加熱して前記金属膜を合金化及び再結晶化して前記Fe-Cr合金膜を形成する工程と、を更に含む付記1から2のいずれかに記載の多層グラフェンの製造方法。(図2A~C、並びに図3)
(付記4)
前記結晶性基板が(0001)配向表面を有するサファイア基板であり、前記表面が前記(0001)配向表面である付記3に記載の多層グラフェンの製造方法。
(付記5)
前記多層グラフェンの合成温度が、500℃~800℃である付記1から4のいずれかに記載の多層グラフェンの製造方法。
(付記6)
前記炭素源が、アセチレンである付記1から5のいずれかに記載の多層グラフェンの製造方法。
(付記7)
ランダム積層構造を有する多層グラフェンであって、
その面積が1,000μm以上であり、
前記多層グラフェンにおける層数の最大値と最小値との差が20層以下であることを特徴とする多層グラフェン。(符号5、図6B)
1 結晶性基板
2 鉄膜(Fe膜)
3 クロム膜(Cr膜)
4 金属膜(Fe-Cr合金膜)
5 (合金化及び再結晶化された)Fe-Cr合金膜
10 多層グラフェン

Claims (6)

  1. Fe-Cr合金膜を触媒として用いて炭素源から多層グラフェンを合成する工程を含むことを特徴とする多層グラフェンの製造方法。
  2. 前記Fe-Cr合金膜におけるCr含有量が、10体積%~40体積%である請求項1に記載の多層グラフェンの製造方法。
  3. 結晶性基板の表面に、(1)FeとCrとを堆積させる、又は(2)Fe-Cr合金を堆積させて金属膜を形成する工程と、
    次いで、800℃~1,100℃で加熱して前記金属膜を合金化及び再結晶化して前記Fe-Cr合金膜を形成する工程と、を更に含む請求項1から2のいずれかに記載の多層グラフェンの製造方法。
  4. 前記結晶性基板の表面が、サファイア基板の(0001)配向表面である請求項3に記載の多層グラフェンの製造方法。
  5. 前記多層グラフェンの合成温度が、500℃~800℃である請求項1から4のいずれかに記載の多層グラフェンの製造方法。
  6. 前記炭素源が、アセチレンである請求項1から5のいずれかに記載の多層グラフェンの製造方法。

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