本明細書には、CD163+細胞に特異的に結合する抗体が開示される。いくつかの実施形態では、CD163+細胞は、免疫抑制性骨髄細胞である。いくつかの実施形態では、CD163+細胞は、骨髄系を発現するヒトCD163である。いくつかの実施形態では、CD163+細胞は、腫瘍細胞である。いくつかの実施形態では、CD163+免疫抑制性骨髄系細胞は、ヒトマクロファージである。いくつかの実施形態では、ヒトCD163+免疫抑制マクロファージは、M2またはM2様マクロファージである。いくつかの実施形態では、免疫抑制性骨髄細胞は、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)である。いくつかの実施形態では、ヒトマクロファージは、高レベルのCD163(CD163Hi)を発現する。対照的に、他のヒト造血細胞または原発性非免疫ヒト細胞は、CD163を発現しない。例えば、M1およびM1様マクロファージは、CD163を発現しない。
特定の炎症性サイトカインまたは微生物関連分子パターンに曝される単球およびマクロファージは、炎症促進性(M1またはM1様)あるいは抗炎症性M2またはM2様マクロファージに分化する。M1およびM2は、in vitroで活性化されたマクロファージを、それぞれ炎症促進性(IFN-γおよびリポ多糖で古典的に活性化されたとき)または抗炎症性(IL-4またはIL-10で代替的に活性化されたとき)として定義するために使用される分類であり、M1またはM2表現型を伴うin vivoまたはex vivoマクロファージは、M1様またはM2様マクロファージとして定義される。いくつかの実施形態では、M2マクロファージは、これらを特定のサイトカインへ曝露することにより生成される。いくつかの実施形態では、M2マクロファージは、IL-4、IL-10、IL-13、またはこれらの組合せにより分化される。
M2マクロファージのサブタイプには、M2a、M2b、M2c、およびM2dサブタイプが含まれる。M2aマクロファージは、CD163の上方調節発現、アルギナーゼー1、マンノース受容体MRC1(CD206)、MHC IIシステムによる抗原提示、ならびにIL-10およびTGF-βの産生を誘発するIL-4およびIL-13により誘導され、これにより、組織再生および炎症促進分子の阻害が生じ、炎症反応が妨げられる。M2bマクロファージは、免疫複合体への応答としてIL-1、IL-6、IL-10、TNF-αを産生する。M2cマクロファージは、IL-10により誘導され、成長因子ベータ(TGF-β)およびグルココルチコイド暴露を形質転換し、IL-10およびTGF-βを産生して、炎症反応を抑制する。M2dサブタイプは、IL-6およびアデノシンへの応答として活性化される。
M2マクロファージは、M2マクロファージおよびそのサブタイプに対応する機能と表現型を有している。M2様マクロファージは、M2マクロファージの機能的または表現型特徴のサブセットを有するin vivoまたはex vivoのマクロファージである。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、免疫抑制性骨髄細胞に対して、具体的にはM2およびM2様マクロファージなどの腫瘍関連マクロファージに対して高結合活性および特異的結合を有している。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト原発性肺腫瘍由来のM2およびM2様TAMに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、M1またはM1様マクロファージに対する顕著な結合を有していない。M1活性化マクロファージは、インターフェロン調節因子(IRF5)、カッパ光ポリペプチド遺伝子エンハンサの核因子(NF-κB)、活性化タンパク質(AP-1)、およびSTAT1などの転写因子を発現する。M1マクロファージは、IFN-γ、IL-1、IL-6、IL-12、IL-23、およびTNFαなどの炎症促進性サイトカインを分泌する。M1マクロファージは、M1マクロファージに対応する機能および表現型を有している。M1様マクロファージは、M1マクロファージの機能的または表現型特徴のサブセットを有するin vivoまたはex vivoのマクロファージである。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、原発性ヒト細胞に結合しない。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、造血幹細胞、白血球、T細胞、B細胞、NK細胞、および顆粒球に結合しない。
腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、固形腫瘍の微小環境中に多くの数が存在するマクロファージ細胞の異種分類である。大半の証拠より、TAMは、腫瘍促進表現型を有しており、腫瘍細胞増殖、腫瘍血管新生、運動性、浸潤、転移、抗癌薬耐性、および腫瘍免疫回避に関与していることが明らかであることが示唆されている。
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)間の細胞傷害性T細胞による直接腫瘍細胞死滅は、免疫系の抗腫瘍機能において主要な役割を果たす。しかし、腫瘍微小環境(TME)中のTAMは、T細胞媒介性抗腫瘍免疫応答を抑制する。TAMは、免疫抑制性転写プロファイルを有しており、IL-10および形質転換増殖因子β(TGFβ)を含む因子を発現する。ヒトにおけるTAMは、それぞれT細胞上でプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)および細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)を活性化する、肝細胞癌でのプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、および卵巣癌でのB7-ホモログの表面提示を介して、T細胞機能を直接抑制することが認められている。PD-1およびCTLA4への阻害シグナルは、免疫チェックポイントであり、これら阻害受容体のリガンドによる結合は、T細胞受容体シグナル伝達とT細胞毒性機能を阻害し、T細胞アポトーシスを促進する。HIF-1αは、TAMを誘導してT細胞機能を抑制する。CD163は、TAM上でのみ発現される免疫抑制分子として特定されており、癌免疫療法の候補となる治療標的になる可能性がある。
TAMは、一般的にTh1およびTh2型Tヘルパー細胞(CD4+)に対する関係を含む機能特徴に基づき、2つのカテゴリとしてM1様抗腫瘍およびM2様免疫抑制マクロファージに属する。M1マクロファージは、「古典的」モデルであり、病原体関連分子パターン(PAMP)(例えば、リポ多糖(LPS))または損傷関連分子パターン(DAMP)のほか、炎症性サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子-α(TNF-α))などの自然免疫活性化因子とともにIFN-γを用いて生成可能である。さらに、CD40-CD40リガンド経路を介したT細胞依存性マクロファージ活性化は、M1分化を誘導する。M1マクロファージは、炎症性、殺菌性、および細胞傷害性機能を有している。これらマクロファージは、Th1細胞の抗原依存性誘導、ならびにTh1およびCD8+T細胞の活性化を促進する。M1様抗腫瘍マクロファージによるT細胞傷害活性の促進は、腫瘍細胞除去に重要なものである。いくつかの実施形態では、M1様抗腫瘍マクロファージは、フローサイトメトリーにより測定された表面マーカー発現を特徴とするものであり、CD80+、CD86+、CD163Lo/-、またはCD206Lo/-いずれかの表現型を有している。M1マクロファージは、IL-12、ならびに低レベルのIL-10および/またはTGF-γを分泌する。
対照的に、M2様免疫抑制マクロファージは、in vitroでIL-4またはIL-10により生成可能な「代替的」または「非古典的」活性化のモデルであり、抗炎症性であり、かつ、創傷治癒および組織修復を促進する。いくつかの実施形態では、M2様免疫抑制マクロファージは、単球由来マクロファージから極性化され、腫瘍により分泌される因子によって動員される。M2様免疫抑制マクロファージが、腫瘍増殖、転移、および免疫回避の促進を含むTAMの腫瘍促進機能に関与する主なマクロファージ細胞型である。M2様マクロファージは、フローサイトメトリーにより判定される表面マーカーCD15、CD23、CD64、CD68、CD163Hi、CD204Hi、CD206Hi、および/または他のM2マクロファージマーカーを発現する。M2マクロファージは、高レベルのIL-10およびTGF-beta1、ならびに低レベルのIL-12を分泌する。
多くの腫瘍型では、TAM浸潤レベルは、顕著な予後値を有している。TAMは、多種多様な腫瘍における予後不良と関連している。例えば、より多くのM2様腫瘍関連マクロファージを有する乳癌患者は、より高悪性度の腫瘍、より大きな微小血管密度、およびより低い全生存率を有することが見出されている。より多くのM1様抗腫瘍TAMを有する患者は、相反効果を示した。
したがって、癌治療の免疫療法的処置を改善するための化合物と方法を特定する必要が、依然として残っている。
CD163(スカベンジャー受容体システインリッチ1型タンパク質M130、ヘモグロビンスカベンジャー受容体)は、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体のスカベンジャー受容体として作用して、遊離ヘモグロビン媒介性の酸化的損傷から組織を保護する細胞表面タンパク質である。分子量が125、451、125,982、121,609、および124,958Daである、CD163タンパク質の4つのアイソフォームが報告されている。アイソフォーム1は、CD163の最も一般的なアイソフォームであり、分子量は125,451Daであり、細胞外ドメイン、膜貫通セグメント、および細胞質尾部を含む1115のアミノ酸残基ポリペプチドからなる。細胞外ドメインは、9つのシステインリッチリピートドメインからなる。CD163タンパク質のアイソフォーム1には4つのN結合グリコシル化部位があり、M2マクロファージ中のCD163タンパク質は、還元条件下にあるSDS-PAGEにおいて、最大150kDaおよび最大130kDaで2つの異なる帯域を示す。
CD163mRNA発現は、一般的に骨髄細胞に限定されるが、特定のヒト癌によっても発現される。TAM上でのCD163発現は、癌における不良臨床転帰と相関すると認められている免疫抑制性M2様表現型に関連付けられている。CD163は、ヒトおよびマウス肉腫におけるマクロファージの腫瘍性活性化に必要なものである。CD163はまた、マクロファージスカベンジャー受容体であるとともに、免疫抑制を促進することが報告されている。いくつかの実施形態では、ヘモグロビンーハプトグロビン複合体とCD163との相互作用は、免疫抑制性サイトカインIL-10および発現ヘムーオキシゲナーゼー1(HO-1)の分泌を誘導する。HO-1は、炎症抑制の代謝物Fe2+、CO、およびビリベルジンを産生する。
可溶性CD163は、エキトドメイン脱落を介してヒトに生じるものであり、フィトヘマアグルチニン(PHA)または12-O-テトラデカノイルホルボールー13-アセテート(TPA)により刺激されるリンパ球増殖を含むT細胞応答をダウンレギュレートするなど、抗炎症特性を有していると報告されている。
CD163を標的とする抗体は、マクロファージを発現するCD163の自然免疫応答を調節すると認められている。例えば、CD163に対する抗体であるRM3/1抗体は、ヒト単球に対して産生されたマウスモノクローナルIgg1(κ軽鎖)である。RM3/1抗体は、ヒトCD163のシステインリッチドメイン9に結合して、LPS誘導型TNFαを減少させ、マクロファージによるIL-10分泌を増強する。
特定の用語
別段の定めのない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、特許請求される主題が属する技術分野の当業者により共通して理解されているものと同じ意味を有する。一般的に、本明細書に記載される免疫学、腫瘍学、細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学およびハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法と、それらの技法は、当技術分野でよく知られ、一般的に使用されるものである。前述の一般的な記述および以下の詳細な説明は、例示的かつ説明的なものに過ぎず、特許請求される主題に制限されるものではないことを理解されたい。本明細書で使用される章の見出しは、構成のみを目的とするものであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
本明細書で使用するとき、単数形「a」、「and」、および「the」は、文脈上特に明記されていない限り複数の指示対象を含む。このため、例えば「抗体」への言及は、複数の抗体を含むものであり、いくつかの実施形態では、「抗体」への言及は、多数の抗体などを含むものである。
本明細書で使用するとき、すべての数値または数値範囲は、文脈上特に明記されていない限り、かかる値の範囲内にあるかこれを包含する全整数および分数、または、範囲内にあるかこれを包含する整数を含む。このため、例えば90~100%の範囲に対する言及は、91%、92%、93%、94%、95%、95%、97%などのほか、91.1%、91.2%、91.3%、91.4%、91.5%など、92.1%、92.2%、92.3%、92.4%、92.5%などを含む。別の例では、1~5,000倍の範囲に対する言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍などのほか、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5倍など、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5倍などを含む。
「約」の付く数は、本明細書で使用するとき、その数を含むとともに、その数より10%低いものから10%高いものに及ぶ範囲を指す。「約」の付く範囲は、その範囲の下限より10%低く、その範囲の上限より10%高いことを指す。
「パーセント同一性」および「%同一性」は、2つの配列(ヌクレオチドまたはアミノ酸)がアライメント中の同じ位置に同じ残基を有している程度を指す。例えば、「アミノ酸配列は、配列番号Yに対してX%同一である」とは、配列番号Yに対するアミノ酸配列の%同一性を指し、詳細には、アミノ酸配列中の残基のX%が配列番号Yに開示される配列の残基と同一であるとされる。一般的に、このような計算にはコンピュータプログラムが利用される。配列の対を比較して位置合わせする例示的なプログラムとして、ALIGN(Myers and Miller,Comput Appl Biosci.1988 Mar;4(1):11-7)、FASTA(Pearson and Lipman,Proc Natl Acad Sci USA.1988 Apr;85(8):2444-8;Pearson,Methods Enzymol.1990;183:63-98)、およびギャップドBLAST(Altschul et al.,Nucleic Acids Res.1997 Sep 1;25(17):3389-40)、BLASTP、BLASTN、またはGCG(Devereux et al.,Nucleic Acids Res.1984 Jan 11;12(1 Pt 1):387-95)が挙げられる。
本明細書中で使用するとき、「抗体」は、抗原に結合するタンパク質を指す。抗体は、重鎖および軽鎖のそれぞれに可変ドメインおよび定常ドメインを含むことが多い。したがって、大半の抗体は、一体となって抗原に結合する抗体部分を形成する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を有している。各可変ドメイン内には、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)中にループを形成して、抗原の表面に接触する3つの相補性決定領域(CDR)がある。「抗体」には、ポリクローナル、モノクローナル、単特異性、多特異性(例えば二重特異性抗体)、天然、ヒト化、ヒト、キメラ、合成、組換え、ハイブリット、突然変異、グラフト、抗体フラグメント(例えば、完全長抗体の一部、一般的には、抗原結合またはその可変領域、例えばFab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント)、および抗原結合活性を有するin vitroで生成された抗体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この用語はまた、一本鎖抗体、例えば、可変重鎖および可変軽鎖が(直接またはペプチドリンカーを介して)一体的に結合して連続ポリペプチドを形成する一本鎖FV(sFvまたはscFv)抗体も含む。
本明細書で使用するとき、「相補性決定領域(CDR)」は、特異的抗原に結合する抗体における可変鎖の部分を指す。CDRを定義するために複数の方法が使用される場合がある。現在の技術は、CDRの長さと位置の様々な定義を用いる様々なナンバリングスキームを利用する。例えば、Kabatナンバリングスキームは、配列アライメントに基づくものであり、所与のアミノ酸位置の「可変パラメータ」(所与の位置での異なるアミノ酸の数を、その位置で最も多く生じるアミノ酸の頻度で割ったもの)を使用して、CDRを予測する。一方、Chothiaナンバリングスキームは、抗体の結晶構造がCDRとしてループ構造を定義するようにアライメントされる構造ベースのナンバリングスキームである。Martinナンバリングスキームは、非定型の長さの異なるフレームワーク領域の構造アライメントに焦点を当てたものである。IMGTナンバリングスキームは、免疫グロブリンスーパーファミリー全体を含む完全な参照遺伝子データベースからの配列のアライメントに基づく、標準化ナンバリングシステムである。Honnegerナンバリングスキーム(AHo’s)は、可変領域の3D構造の構造的アライメントに基づくものであり、構造的に保存されたCα位置を使用してフレームワークとCDRの長さを推定する。当業者は、使用される方法に基づきCDRの定義が変わることに留意されたい。CDRを定義するあらゆる方法が、本明細書に開示される配列を用いて企図される。
「受容者」、「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用されるものであり、診断、処置、または治療が望まれる哺乳動物対象、具体的にはヒトを指す。処置目的のための「哺乳動物」とは、ヒト、飼育動物、および家畜、ならびにイヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サルといった、実験室、動物園、スポーツ、またはペット動物を含む哺乳動物として分類される動物を指す。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
本明細書で使用するとき、「処置」、「処置すること」などの用語は、場合により、効果を得る目的で薬剤を投与すること、または処置を実行することを指す。いくつかの実施形態では、効果は、疾患またはその症状を完全または部分的に予防するという点で予防的であり、ならびに/あるいは、疾患および/またはその症状の部分的または完全な治癒をもたらすという点で治療的である。本明細書で使用するとき、「処置」には、哺乳動物、具体的にはヒトの疾患または障害(例えば癌)の処置が含まれ、(a)疾患またはその症状が、疾患(例えば、原発性疾患に関連するかそれにより引き起こされる疾患を含む)に罹患する傾向はあるが依然として疾患を抱えていると診断されていない対象に生じるのを防ぐこと、(b)疾患を阻害、すなわち疾患の進行を止めること、ならびに(c)疾患を緩和、すなわち疾患の退行を引き起こすことが含まれる。いくつかの実施形態では、処置することとは、癌の処置、改善、または予防が成功したことを指すものであり、軽減、寛解、症状の減少または病状が患者に対してより忍容可能となること、変性または衰退の速度が遅くなること、変性の最終地点がより衰弱すること(debilitating)などの客観的または主観的なパラメータが含まれる。症状の治療または改善は、医師による診察結果を含む、1つ以上の客観的または主観的パラメータに基づくものである。したがって、「処置すること」という用語は、疾患(例えば、癌)に関連する症状または状態を予防または遅延させるため、軽減するため、あるいは先の症状または状態の発症を阻止または阻害するための、本開示の化合物または薬剤の投与を含む。「治療効果」という用語は、対象における疾患、疾患の症状、または疾患の副作用の低減、根絶、または予防を指す。本開示の抗体の治療量を投与した後、疾患または障害のパラメータまたは症状において観察可能および/あるいは測定可能な変化、例えば、癌治療の場合、ex vivoで評価されるような腫瘍細胞死滅活性の増加、血中の免疫抑制性分泌因子レベルの低下、腫瘍体積または腫瘤の低下、腫瘍生検における細胞障害性リンパ球およびTh1様T細胞数の増加、病的状態または死亡率の低下、クオリティオブライフ因子の改善、あるいは疾患もしくは障害のパラメータまたは症状に関連する任意の客観的適応症の改善を患者が示す場合、対象は、疾患または障害を「処置」される。いくつかの実施形態では、パラメータは、例えば、腫瘍生検において細胞傷害性リンパ球細胞数ならびにT細胞活性化のマーカー(CD69、ICOS、OX40など)を増加させることにより、または腫瘍生検においてTAM上でのCD16、CD64、TLR2、Siglec-15の発現を減少させることにより、冷たい免疫腫瘍を温かい免疫腫瘍に変換することを含む。
いくつかの実施形態では、「応答を誘導する」とは、対象の病気の徴候または症状の緩和あるいは軽減を指すものであり、具体的には生存の延長を含むがこれに限定されるものではない。
「結合活性」という用語は、2つ以上の薬剤の複合体の希釈後の解離に対する耐性を指す。
いくつかの実施形態では、抗体「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列FC領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因し、抗体アイソタイプにより変動する生物学的活性を指す。
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。
「ヒトエフェクター細胞」は、本明細書で使用するとき、1つ以上のFcRを発現してエフェクター機能を実施する白血球を指す。例えば、細胞は、少なくともFc γRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実施する。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血単核細胞(PBMC)、NK細胞、単球、マクロファージ、細胞傷害性T細胞、および好中球が含まれるが、これらに限定されるものではない。
「補体依存性細胞傷害性」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、その同族抗原に結合している(適切なサブクラスの)抗体に対する補体系(C1q)の第1の成分の結合により、開始される。補体活性化を評価するには、例えばCDCアッセイが実施される。
「内在化する」抗体は、哺乳動物細胞上の抗原(例えば、細胞表面ポリペプチドまたは受容体)への結合に際して細胞に取り込まれる(すなわち、細胞に入る)抗体である。内在化抗体は、抗体フラグメント、ヒトまたはキメラ抗体、および抗体コンジュゲートを含む。場合により、(例えば、本明細書に開示されるものなどの)抗体の内在化は、細胞の生物学を改質し、その機能を変化させる。
「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」、または「抗原結合部位」は、抗原と相互作用して抗原に対する抗体の特異性と親和性に寄与するアミノ酸残基(または他の部分)を包含する抗体の一部である。その抗原に特異的に結合する抗体の場合、これは、そのCDRドメインの少なくとも1つの少なくとも一部を含む。
抗体の抗原結合領域は、抗原決定基である抗原の「エピトープ」、すなわち抗体により結合可能な抗原分子の一部に結合する「パラトープ」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、抗原物質は、抗体により認識可能な1つ以上の部分、すなわち、1より多くのエピトープを有しており、このため、単一の抗原物質は、それぞれが異なるエピトープに対する特異性を有する様々な抗体により特異的に結合される。いくつかの実施形態では、エピトープは、抗原の非近接部分を含む。例えば、ポリペプチドでは、ポリペプチド一次配列において近接していないが、ポリペプチドの三次および四次構造の状況では、抗原結合タンパク質により結合されるほど互いに接近しているアミノ酸残基は、エピトープを構成する。
「抗体フラグメント」は、無傷の抗体の一部を含む。いくつかの実施形態では、抗体フラグメントは、無傷の抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。
「抗体の抗原結合部分」、「抗原結合フラグメント」、「抗原結合ドメイン」、「抗体フラグメント」という用語は、本明細書では互換的に使用されるものであり、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。かかる用語内に含まれる抗体フラグメントの非限定的な例として、(i)Fabフラグメント、すなわちVL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価フラグメント、(ii)F(ab’)2フラグメント、すなわちヒンジ領域でのジスルフィド架橋により結合される2つのFabフラグメントを包含する二価フラグメント、(iii)VHおよびCH-ドメインからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一腕のVLおよびVHドメインを包含するFvフラグメント、(v)VHドメインを包含するdAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341(6242):544-6(1989))、および(vi)単離されたCDRが挙げられるが、これらに限定されるものではない。単一重鎖および単一軽鎖を含む「半分」抗体も含まれる。ダイアボディなどの他の一本鎖抗体の形態も、本明細書に包含される。
「機能的抗体フラグメント」は、本明細書で使用するとき、文脈の中で、抗体の抗原に結合するだけでなく、無傷の抗体を特徴付ける機能的属性も有する抗体フラグメントを指す。例えば、抗体の機能が、ADCCなどのエフェクター機能を可能にするFcドメインを有することに依存する場合、機能性フラグメントは、このような機能を有する。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、CD16(FcγRIIIa)またはCD64(FcγRI)などのマクロファージFc受容体に結合するFc部分を含むとき、腫瘍関連マクロファージの機能状態を調節する、またはM2状態マクロファージを再配向または減衰させるのに有効であると仮定されている。
抗体の「機能フラグメントまたはアナログ」という語句は、完全長抗体と共通の定性的な生物学的活性を有する化合物である。例えば、抗IgE抗体の機能フラグメントまたはアナログは、IgE免疫グロブリンに結合して、かかる分子が、高親和性受容体であるFcγRIへの結合能を有するのを妨げるか実質的に減らすというものである。
「抗原結合タンパク質」とは、抗体の抗原結合部分を含む部分を含んでいるタンパク質であり、任意選択で、抗原への抗原結合タンパク質の結合を促進する立体配座を抗原結合部分が適用するのを可能にするスキャホールドまたはフレームワーク部分も含んでいる。
「無傷の」抗体とは、抗原結合部位のほか、CL、ならびに少なくとも重鎖定常ドメインCH1、CH2、およびCH3を含む抗体である。いくつかの実施形態では、定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異体である。
本明細書で使用するとき、「組換え抗体」という用語は、例えば、CDR、VH領域、または無傷の軽鎖などの第1の抗体の抗原結合ドメイン、および1つ以上の他の抗体またはタンパク質由来のドメインを含む抗体を表す。キメラ抗体、ハイブリッド抗体、およびヒト化抗体は、組換え抗体の例である。
「CDRグラフト抗体」とは、1つの種またはアイソタイプの抗体に由来する1つ以上のCDR、および同じまたは異なる種あるいはアイソタイプの別の抗体のフレームワークを含む抗体である。
「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1つ以上の可変領域および定常領域を有する抗体をすべて含む。一実施形態では、抗体の可変ドメインおよび定常ドメインはすべて、ヒト免疫グロブリン配列(「完全ヒト抗体」と称される)に由来する。
本明細書で使用するとき、「親和性」という用語は、2つの薬剤同士の可逆的結合に対する平衡定数を指し、KDで表される。一実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、10-6M以下の範囲、または10-16M以下までの範囲(例えば、約10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13、10-14、10-15、10-16M以下)で、CD163に対するKD(平衡解離定数)により測定されるような結合親和性を呈する。ある実施形態では、本明細書に記載の抗体は、10-4M以下、約10-5M以下、約10-6M以下、10-7M以下、または10-8M以下のKDをもって、huCD163ポリペプチドに特異的に結合する。
「優先的に結合する」または「特異的に結合する」という用語は、抗体またはそのフラグメントが、関連しないアミノ酸配列に結合するよりも高親和性でエピトープに結合し、このエピトープを含有する他のポリペプチドに対し交差反応する場合、ヒトへの投与用に製剤化されるレベルでは毒性ではないことを意味する。いくつかの実施形態では、このような親和性は、未関連のアミノ酸配列に対する抗体またはそのフラグメントの親和性よりも、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、または少なくとも1000倍高い。
「特異的」という用語は、抗体が、抗体により認識されるエピトープを含有する抗原以外の分子に優先的に結合する状況を指す。この用語はさらに、例えば、抗原結合ドメインが、多数の抗原により運ばれる特定のエピトープに対し特異的であるという状況にも当てはまるものであり、この場合、抗原結合ドメインを運ぶ抗体またはその抗原結合フラグメントは、エピトープを運ぶ様々な抗原に結合可能となる。
本明細書で使用するとき、抗体は、抗原で検出可能なレベルで、好ましくは約104M-1以上、約105M-1以上、約106M-1以上、約107M-1以上、または109M-1以上の親和性定数Kaで抗体が反応する場合に、抗原に対して「免疫特異的」または「特異的」、あるいは「特異的に結合する」と言われる。
「単一特異的」という用語は、本明細書で使用するとき、1つの特定のエピトープに対して優先的な親和性を呈する抗体を含有する抗体組成物を指す。いくつかの実施形態では、単一特異的抗体調製物は、特定の抗原に対する特異的な結合活性を有する約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または99.9%の抗体で構成される。
「ポリペプチド」という用語は、その従来の意味で、すなわちアミノ酸の配列として使用される。ポリペプチドは、生成物の特定の長さに限定されるものではない。ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質は、ポリペプチドの定義内に含まれるものである、これらの用語は、別段の定めのない限り、本明細書で互換的に使用される。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、ホスホリル化などのほか、当該技術分野で知られる自然発生と非自然発生両方の他の修飾を表すものでも、除外するものでもない。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、タンパク質全体、またはそのサブ配列である。本開示の抗体に照らして目的の特定のポリペプチドは、CDRを含むとともに、このような細胞により発現されるヒトM2マクロファージまたはCD163タンパク質に結合可能なアミノ酸サブ配列である、
本明細書で使用するとき、「実質的に純粋」および「実質的に含まない」とは、例えば、約20%以下の外来物質、約10%以下の外来物質、約5%以下の外来物質、約4%以下の外来物質、約3%以下の外来物質、約2%以下の外来物質、または約1%以下の外来物質しか含有していない溶液あるいは懸濁液を指す。
「単離された」という用語は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まないタンパク質(例えば抗体)、核酸、または他の物質を指す。いくつかの実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合フラグメント、および核酸は、単離される。いくつかの実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合フラグメント、および核酸は、実質的に純粋である。
「単離された」は、ポリペプチドに適用されるとき、一般的に、それが天然に生じる他のタンパク質および核酸から分離されているポリペプチドを意味する。好ましくは、ポリペプチドはまた、それを精製するために使用される抗体またはゲルマトリクス(ポリアクリルアミド)などの物質からも分離される。場合により、この用語は、その起源または操作に起因して、(i)発現ベクターの一部の発現産物として宿主細胞に存在する、(ii)自然に結合されるもの以外のタンパク質または他の化学部分に結合される、あるいは(iii)自然に生じない、ポリペプチドまたはその一部、例えば、少なくとも1つの疎水性部分をタンパク質に付加または添加して、そのタンパク質が自然に見出されない形態にあるようにすることにより化学的に操作されるタンパク質を意味する。「単離された」とは、さらに、(i)化学的に合成される、または(ii)宿主細胞中で発現されて関連タンパク質および汚染タンパク質から精製分離されるタンパク質を意味する。
「有効量」という用語は、本明細書で使用するとき、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分が、反応を誘導する、例えば、対象に投与したときに、本明細書に記載されるようなマクロファージ活性またはTAM活性に関連する疾患の処置、予後、または診断を達成するのに十分な量を指す。本明細書で提供する抗体の治療上有効な量は、単独または組み合わせて使用されるとき、(例えば、腫瘍細胞成長の阻害における)抗体および併用物の相対的活性に応じて、ならびに、処置される対象および病状、対象の体重と年齢、病状の重症度、場合により当業者が容易に決定する投与様式などに応じて変動する。
「治療上有効な量」という用語は、概して、対象または哺乳動物の疾患または障害を「処置する」のに有効な抗体または薬物の量を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、あらゆる医学的処置に適用可能な合理的なベネフィット・リスク比で本明細書に記載の疾患または障害を阻害することにより一部の所望の治療効果を産み出すのに有効な量で、対象に投与される。治療的有効な量は、器官または組織において少なくとも部分的に所望の治療効果または予防効果を達成する量である。疾患または障害の予防および/あるいは治療的処置を行うのに必要な抗体の量は、それ自体固定されていない。いくつかの実施形態では、投与される抗体の量は、疾患の種類、疾患の拡張性、および疾患または障害を患う哺乳動物の大きさにより変動する。「治療上有効な」という用語は、対象が疾患または疾病の症状を発症した後の治療薬の投与を必要とする治療方法と組み合わせて使用されるとき、処置後に、疾患または障害の1つ以上の兆候または症状が改善あるいは排除されることを意味する。
「薬学的に許容可能な」という語句は、ヒトに投与したときに、生理学的に忍容可能であり、一般的に胃の不調や目眩などのアレルギー反応または同様の有害反応を生じさせない分子実体および組成物を表す。
「接触させる」という用語は、本明細書では、本明細書中で提供される組成物を、本明細書に記載の細胞、器官、組織、または流体と物理的に接近させる手段として定義される。
免疫調節抗体
本明細書の特定の実施形態では、ヒトCD163+細胞上で発現されるCD163タンパク質に特異的に結合する抗体が開示される。いくつかの実施形態では、CD163+細胞は、免疫抑制性骨髄細胞である。いくつかの実施形態では、免疫抑制性ヒト骨髄細胞は、ヒトマクロファージである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体の結合は、ヒトマクロファージ上での少なくとも1つのマーカーの発現を改質する。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、ヒトM2またはM2様免疫抑制性マクロファージ上で発現されるヒトCD163(huCD163)タンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、huCD163の約140kDaグリコ型であるCD163タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、huCD163の細胞外ドメイン3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、huCD163の細胞外ドメイン4に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、huCD163の細胞外ドメイン3および細胞外ドメイン4に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、huCD163に特異的に結合し、その結果、huCD163の立体構造に変化が生じる。いくつかの実施形態では、humCD163に対する立体配座の変化は、humCD163の細胞外ドメイン2、5、および9を暴露させる。いくつかの実施形態では、抗体は、huCD163の低分子量(約115kDa)グリコ型に特異的に結合しない。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、ヒトCD163+免疫抑制性骨髄細胞に結合して、M2またはM2様免疫抑制性マクロファージ(M2cマクロファージなど)を特徴付ける特定の細胞マーカーの発現に変化を生じさせる。このことは、非免疫抑制性または低免疫抑制性のほか、より抗腫瘍性の状態へのマクロファージの機能的分化を示している。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、M2またはM2様免疫抑制性マクロファージに結合して、M2またはM2様免疫抑制性マクロファージを特徴付ける特定の細胞マーカーの発現を減少させる。このことは、改質された分化状態へのマクロファージの機能的分化を示している。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、CD163+免疫抑制性骨髄細胞によるCD16、CD64、TLR2、およびSiglec-15の1つ以上の発現を低下させる。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体のCD163+免疫抑制性骨髄細胞への結合は、CD163+免疫抑制性骨髄細胞に機能的変化をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体のCD163+免疫抑制性骨髄細胞への結合は、M2またはM2様免疫抑制性マクロファージに変化をもたらす。いくつかの実施形態では、抗体に結合したCD163+免疫抑制性骨髄細胞の機能的変化は、エフェクター T細胞などの他の細胞との相互作用の修飾をもたらし、後に、標的腫瘍細胞に対する効果と相互作用を修飾する。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、腫瘍微小環境中で腫瘍関連マクロファージにより引き起こされる免疫抑制を低下させる。いくつかの実施形態では、腫瘍微小環境中での腫瘍関連マクロファージによる免疫抑制の低下は、免疫刺激、例えば、T細胞活性化、T細胞増殖、NK細胞活性化、NK細胞増殖、またはこれらの任意の組合せの促進産生の増加に相当する。いくつかの実施形態では、T細胞活性化および/またはNK細胞活性化は、T細胞および/またはNK細胞によるIFN-γ、TNF-α、パーフォリン、またはこれらの組合せの産生増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、免疫刺激、例えば、T細胞活性化、T細胞増殖、NK細胞活性化、NK細胞増殖、またはこれらの任意の組合せの促進産生を増加させる。いくつかの実施形態では、T細胞活性化および/またはNK細胞活性化は、T細胞および/またはNK細胞によるIFN-γ、TNF-α、パーフォリン、またはこれらの組合せの産生増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒトマクロファージ上で発現されるCD163タンパク質に特異的に結合し、ヒトマクロファージは、抗体と結合前の第1の免疫抑制活性、および抗体と結合後の第2の免疫抑制活性を有しており、第2の免疫抑制活性は、第1の免疫抑制活性よりも低い。様々な実施形態では、第1および第2の免疫抑制活性は、それぞれゼロではない。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、T細胞の活性化と増殖を促進する。いくつかの実施形態では、抗体は、T細胞集団を抗腫瘍T細胞表現型へと歪ませる。いくつかの実施形態では、抗体は、T細胞活性化の骨髄細胞抑制を低下または遮断する。いくつかの実施形態では、抗体は、TAMによるT細胞活性化抑制能を低下させ、より大きなT細胞刺激とIL-2産生を生じさせる。いくつかの実施形態では、抗体は、TAMによるT細胞活性化抑制能を遮断し、より大きなT細胞刺激とIL-2産生を生じさせる。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、T細胞増殖の骨髄抑制を低下させる。いくつかの実施形態では、抗体は、TAMがCD4+とCD8+T細胞の活性化および増殖を抑制する能力を低下させる。いくつかの実施形態では、抗体は、Th1細胞増殖のTAM抑制を低下させる。増殖したT細胞は、CD4+T細胞上での活性化マーカーの発現強化を示す。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、M2マクロファージが、M2マクロファージの免疫抑制効果を軽減するM1様表現型を呈するように、M2極性化マクロファージを改質する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、単球由来マクロファージに影響を及ぼして、免疫抑制性が低く、より抗腫瘍性の分化状態へと分化する。
いくつかの実施形態では、本明細書には、ヒトマクロファージ上で発現されて、マクロファージによるCD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15のうち少なくとも1つの発現を低下させるヒトCD163タンパク質(huCD163)に特異的に結合する工程が、提供される。いくつかの実施形態では、ヒトマクロファージは、腫瘍関連免疫抑制性マクロファージである。いくつかの実施形態では、ヒトマクロファージは、M2様免疫抑制性マクロファージである。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、マクロファージにより発現される少なくとも1つの他のタンパク質を含む複合体の成分としてマクロファージにより発現されるCD163タンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、複合体は細胞表面複合体である。いくつかの実施形態では、複合体は、ガレクチン-1タンパク質、LILRB2タンパク質、およびカゼインキナーゼIIタンパク質から選択される少なくとも1つの他のタンパク質を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、マクロファージ上でCD163タンパク質に結合し、マクロファージにより内在化される。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、それが結合しているマクロファージに対し細胞傷害性ではない。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、CD4+T細胞活性または増殖を促進する。いくつかの実施形態では、抗体は、CD4+T細胞によるCD69、ICOS、OX40、PD1、LAG3、またはCTLA4の発現を促進する。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、CD8+T細胞活性または増殖を促進する。いくつかの実施形態では、抗体は、CD8+T細胞によるICOS、OX40、PD1、LAG3、またはCTLA4の発現を促進する。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、CD8+T細胞活性または増殖を促進することにより、腫瘍微小環境中で腫瘍細胞死滅を促進する。いくつかの実施形態では、抗体は、細胞傷害性リンパ球を媒介とした癌細胞死滅を促進する。いくつかの実施形態では、抗体は、NK細胞を媒介とした腫瘍細胞死滅を促進する。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、T細胞によるIL-2の発現を促進する。いくつかの実施形態では、CD163タンパク質への本開示の抗体の結合は、CD4+T細胞、CD196-T細胞、CXCR3+T細胞、CCR4-T細胞、またはこれらの任意の組み合わせを増加させる。いくつかの実施形態では、抗体は、CD4+CD196-CXCR3+CCR4-T細胞を増加させる。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、マクロファージ上で発現されるFc受容体に結合する定常ドメインを有する。いくつかの実施形態では、抗体はhuCD163に特異的に結合し、Fc受容体に結合する定常ドメインを有する。いくつかの実施形態では、抗体は、CD16(FcγRIIIa)またはCD64(FcγRI)などのCD163+免疫抑制性骨髄細胞上で発現されるFc受容体に結合する定常ドメインを有する。いくつかの実施形態では、huCD163およびFc受容体は、同じ細胞上で発現される。いくつかの実施形態では、huCD163およびFc受容体は、異なる細胞上で発現される。いくつかの実施形態では、抗体可変ドメインは、huCD163、およびFc受容体に同時に結合する抗体定常ドメインに特異的に結合する。
本明細書の特定の実施形態では、ヒトM2およびM2様マクロファージ上で発現されるCD163タンパク質に特異的に結合する抗体が開示され、前記結合は、以下の効果:
(a)ヒトマクロファージによる、CD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15である少なくとも1つのマーカーの発現の低下、
(b)ヒトマクロファージによる抗体の内在化、
(c)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの活性化、
(d)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの増殖、ならびに
(e)腫瘍微小環境中での腫瘍細胞死滅の促進
のうち少なくとも1つをもたらす。
本明細書の特定の実施形態では、ヒトM2およびM2様マクロファージ上で発現されるCD163タンパク質に特異的に結合する抗体が開示され、前記結合は、以下の効果:
(a)ヒトマクロファージによる、CD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15である少なくとも1つのマーカーの発現の低下、
(b)ヒトマクロファージによる抗体の内在化、
(c)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの活性化、
(d)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの増殖、ならびに
(e)腫瘍微小環境中での腫瘍細胞死滅の促進
のうち少なくとも2つをもたらす。
本明細書の特定の実施形態では、ヒトM2およびM2様マクロファージ上で発現されるCD163タンパク質に特異的に結合する抗体が開示され、前記結合は、以下の効果:
(a)ヒトマクロファージによる、CD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15である少なくとも1つのマーカーの発現の低下、
(b)ヒトマクロファージによる抗体の内在化、
(c)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの活性化、
(d)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの増殖、ならびに
(e)腫瘍微小環境中での腫瘍細胞死滅の促進
のうち少なくとも3つをもたらす。
本明細書の特定の実施形態では、ヒトM2およびM2様マクロファージ上で発現されるCD163タンパク質に特異的に結合する抗体が開示され、前記結合は、以下の効果:
(a)ヒトマクロファージによる、CD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15である少なくとも1つのマーカーの発現の低下、
(b)ヒトマクロファージによる抗体の内在化、
(c)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの活性化、
(d)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの増殖、ならびに
(e)腫瘍微小環境中での腫瘍細胞死滅の促進
のうち少なくとも4つをもたらす。
本明細書の特定の実施形態では、ヒトM2およびM2様マクロファージ上で発現されるCD163タンパク質に特異的に結合する抗体が開示され、前記結合は、以下の効果:
(a)ヒトマクロファージによる、CD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15である少なくとも1つのマーカーの発現の低下、
(b)ヒトマクロファージによる抗体の内在化、
(c)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの活性化、
(d)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの増殖、ならびに
(e)腫瘍微小環境中での腫瘍細胞死滅の促進
のうち少なくとも5つをもたらす。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)集団においてヒトCD163+免疫抑制性骨髄細胞に選択的に結合し、このとき、抗体は、M2マクロファージ上で発現されるCD163タンパク質に特異的に結合し、TAM集団の免疫抑制活性を低下させる。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、腫瘍微小環境においてヒトCD163+免疫抑制性骨髄細胞に選択的に結合し、このとき、抗体は、M2マクロファージ上で発現されるCD163タンパク質に特異的に結合し、M2マクロファージ媒介性抑制を低下させる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、ヒト、ヒト化、またはキメラである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、記載されるように結合するその抗原結合フラグメントである。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、例えばヒト抗体などの無傷の免疫グロブリン分子、ならびに、抗原結合部位(すなわちパラトープ)または単一重鎖および単一軽鎖を含有するヒト化Ig分子の部分であり、この部分は、Fab、Fab’、F(ab)’、F(ab’)2、Fd、scFv、可変重ドメイン、可変軽ドメイン、可変NARドメイン、二重特異性scFv、二重特異性Fab2、三重特異性Fab3、単鎖結合ポリペプチド、dAbフラグメント、ダイアボディ、およびその他抗原結合フラグメントと称されるものとして、当該技術分野で既知の部分を含む。免疫グロブリン分子またはそのフラグメントを構築するとき、様々な領域またはその部分は、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはそのフラグメントのうちいずれかを産生するために、1つ以上の定常領域またはその部分に融合、接続、またはその他の方法により結合される。このため、いくつかの実施形態では、上述の抗体のうちいずれか1つの抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、Fd、F(ab’)2、Fv、scFv、一本鎖結合ポリペプチド(例えば、Fc部分を有するscFv)、またはその他本明細書に記載されるような機能フラグメントである。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、任意の免疫グロブリンクラスのものであり、したがって、いくつかの実施形態では、γ、μ、α、δ、またはεの重鎖を有している。いくつかの実施形態では、γ鎖は、γ1、γ2、γ3、またはγ4である。いくつかの実施形態では、α鎖は、α1またはα2である。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、IgG免疫グロブリンである。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、任意のIgGサブクラスの抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はIgG1である。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、κまたはλのいずれかである可変軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、λ鎖は、例えば、λ1、λ2、λ3、およびλ4を含むサブタイプのうちいずれかのものである。いくつかの実施形態では、軽鎖はκである。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、ヒト可変フレームワーク領域およびヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト軽鎖可変フレームワーク領域およびヒト軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト重鎖可変フレームワーク領域およびヒト重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト軽鎖可変フレームワーク領域、ヒト軽鎖定常領域、ヒト重鎖可変フレームワーク領域、およびヒト重鎖定常領域を含む。
いくつかの実施形態では、ヒト重鎖定常領域は、IgG1またはIgG4、あるいはそれらのフラグメントである。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、ヒトIgG1である。IgG1を有する抗体の一例は、AB101である。AB101は、以下の実施例1に記載されるように、配列番号9を含む軽鎖、および配列番号10を含む重鎖を含んでいる。
いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、ADCC機能が低下したヒトIgG1(すなわちFc-ヌル抗体)である。本開示の例示的なFc-ヌル抗体は、AB102である。AB102は、配列番号9を含む軽鎖と、AB101の可変領域を含有するとともに重鎖定常領域がヒトIgG1のFc-ヌル型である配列番号11を含む重鎖とを含んでいる。AB102は、後述の実施例でさらに記述される。
いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、ADCC機能を増強するように修飾されたヒトIgG1である。ADCC機能が増強された本開示の例示的な抗体は、AB103である。AB103は、配列番号9を含む軽鎖と、AB101の可変領域を含有するとともに重鎖定常領域がヒトIgG1の増強されたADCC形態である配列番号12を含む重鎖とを含んでいる。
いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、ヒトIgG4である。IgG4を有する本開示の例示的な抗体は、AB104である。AB104は、配列番号9を含む軽鎖と、AB101の可変領域を含有するとともに重鎖定常領域がヒトIgG4である配列番号13を含む重鎖とを含んでいる。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒト可変フレームワーク領域およびマウス定常領域を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒト重鎖可変フレームワーク領域およびマウス重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒト軽鎖可変フレームワーク領域、マウス軽鎖定常領域、ヒト重鎖可変フレームワーク領域、およびマウス重鎖定常領域を含む。
いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、マウスIgG2Aである。マウスIgG2Aを有する抗体の一例は、AB211である。AB211は、配列番号14を含む軽鎖と、AB101のヒト可変領域を含有するとともに重鎖定常領域がマウスIgG1のFc-ヌル型であり、軽鎖定常領域がマウスκである配列番号15を含む重鎖とを含んでいる。AB211は、後述の実施例でさらに記述される。
いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、マウスIgG2Aである。マウスIgG2Aの重鎖を有する抗体の一例は、AB212である。AB211は、配列番号14を含む軽鎖と、AB101のヒト可変領域を含有するとともに重鎖定常領域がマウスIgG2aであり、軽鎖定常領域がマウスκである配列番号16を含む重鎖とを含んでいる。AB212は、後述の実施例でさらに記述される。
M2マクロファージ上で発現されるCD163タンパク質への抗体または抗原結合フラグメントの結合は、いくつかの実施形態におけるM2マクロファージの生物学的機能を部分的(例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはその中の任意の数)あるいは完全に調節する。抗体または抗原結合フラグメントの活性は、例えば、本明細書に記載、またはその他の方法で、当技術分野で知られるものなどの当技術分野で認識されているアッセイを使用する、in vitroおよび/またはin vivoアッセイを用いて求められる。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、必要に応じて、所望の機能性を保持しながら、抗体の特異的特性を改質するようさらに修飾される。例えば、一実施形態では、本開示の抗体は、in vivo安定性、溶解性、バイオアベイラビリティ、または半減期を含むがこれらに限定されない抗体の薬物動態特性を改質するよう修飾される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体の解離定数(Kd)は、約1~約10pM、約10~約20pM、約1~約29pM、約30~約40pM、約10~約100pM、または約20~約500pMである。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体の解離定数(Kd)は、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満、約100pM未満、約75pM未満、約50pM未満、約30pM未満、約25pM未満、約20pM未満、約18pM未満、約15pM未満、約10pM未満、約75.pM未満、約5pM未満、約2.5pM未満、または約1pM未満である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体のhuCD163タンパク質またはペプチドに対する親和性は、約10-9~約10-14、約10-10~約10-14、約10-11~約10-14、約10-12~約10-14、約10-13~約10-14、約10-10~約10-11、約10-11~約10-12、約10-12~約10-13、または10-13~約10-14である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、1より多くの結合部位を有する。いくつかの実施形態では、複数の結合部位は、互いに同一である。いくつかの実施形態では、複数の結合部位は、互いに異なる。自然発生のヒト免疫グロブリンは、一般的に2つの同一の結合部位を有しているが、操作された抗体は、例えば2つ以上の異なる結合部位を有している。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、二重特異性または多特異性である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、いくつかの実施形態では、単一抗原の2つの異なるエピトープに結合する。他のこのような抗体は、いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部位を、第2の抗原に対する結合部位と組み合わせている。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに結合し、Fc受容体に結合する定常ドメインを有している。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の1つ以上のエピトープの結合は、Fc受容体に対する二重特異性抗体の定常ドメインの結合と同時に生じる。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、多価とも称される2つ以上の価数を有している。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、三重特異性である。いくつかの実施形態では、多価抗体は、抗体の結合対象である抗原を発現する細胞により、二価抗体よりも速やかに内在化(および/または異化)される。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、3つ以上の抗原結合部位を有する多価抗体(例えば、四価抗体)である。いくつかの実施形態では、本開示の多価抗体は、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により産生される。いくつかの実施形態では、多価抗体は、二量体化ドメインおよび3つ以上の抗原結合部位を含む。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは、Fc領域またはヒンジ領域を含む(または、これらからなる)。このシナリオでは、抗体は、Fc領域と、Fc領域に対するアミノ末端の3つ以上の抗原結合部位とを含むことになる。いくつかの実施形態では、本明細書の多価抗体は、約3~約8、好ましくは4つの抗原結合部位を含む。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(および好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、ポリペプチド鎖は、2つ以上の可変領域を含む。例えば、ポリペプチド鎖は、VD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを含み、ここで、VD1は第1の可変領域であり、VD2は第2の可変領域であり、FcはFc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1とX2は、アミノ酸またはポリペプチドを表し、nは、0または1である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド鎖は、それぞれ独立してVH-CH1-フレキシブルリンカー-VH-CH1-Fc領域鎖、またはVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書の多価抗体は、少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変領域ポリペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書中の多価抗体は、約2~約8つの軽鎖可変領域ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の軽鎖可変領域ポリペプチドは、軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の軽鎖可変領域ポリペプチドは、CLドメインをさらに含む。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、多価形態へと折り畳まれるように構築され、これにより、いくつかの実施形態では、結合親和性、特異性、および/または血中半減期が改善される。抗体の多価形態は、例えば、当技術分野で知られる技法により調製される。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、標的タンパク質に特異的なSMIPまたは結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である。これら構築物は、抗体エフェクター機能を実行するのに必要な免疫グロブリンドメインに融合される抗原結合ドメインを含む一本鎖ポリペプチドである。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、重鎖可変領域、および/または、本明細書に開示されるエピトープに結合し、任意選択で免疫グロブリンFc領域を有している軽鎖可変領域を有している一本鎖結合ポリペプチドを含む。このような分子は、任意選択でエフェクター機能を有するか、または免疫グロブリンFc領域の存在により半減期が増加している単鎖可変フラグメント(scFv)である。
抗CD163抗体
本明細書の特定の実施形態では、CD163タンパク質に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、CD163結合抗体は、少なくとも1つの重鎖および少なくとも1つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、CD163結合抗体は、重鎖可変ドメイン(V H)を含む少なくとも1つの重鎖、および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む少なくとも1つの軽鎖を含む。各VHとVLは、3つの相補性決定領域(CDR)を含む。VHおよびVL、ならびにCDRのアミノ酸配列は、抗体の抗原結合特異性および抗原結合強度を決定する。VHおよびVLドメインは、表1に要約する。軽鎖および重鎖は、表2に要約する。CDRのアミノ酸配列は、表3に要約する。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、全免疫グロブリン、scFv、Fab、F(ab’)2、またはジスルフィド結合Fvから選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、IgGまたはIgMである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、ヒト、ヒト化、またはキメラである。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号7として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号7として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号7として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号8として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号8として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号8として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号7として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号8として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号7として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、VHは、配列番号8として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号7として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、VHは、配列番号8として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号10として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号10として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号10として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号11として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号11として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号11として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号12として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号12として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号12として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号13として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号13として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号13として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号10として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号10として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号10として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号11として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号11として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号11として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号12として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号12として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号12として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号13として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号13として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号13として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号15として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号15として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号15として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号16として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号16として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号16として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号15として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号15として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号15として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号16として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号16として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号16として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号1として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号3として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む抗体が開示される。いくつかの実施形態では、CD163に結合する抗体は、配列番号1として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号3として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、CD163に結合する抗体は、配列番号1として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号3として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号4として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号6として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む抗体が開示される。いくつかの実施形態では、CD163に結合する抗体は、配列番号4として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号6として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、CD163に結合する抗体は、配列番号4として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号6として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。
本明細書の特定の実施形態では、配列番号1として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、配列番号3として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、配列番号4として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号6として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む抗体が開示される。いくつかの実施形態では、CD163に結合する抗体は、配列番号1として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、配列番号3として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、配列番号4として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号6として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、CD163に結合する抗体は、配列番号1として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、配列番号3として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、配列番号4として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号6として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。
結合親和性と免疫反応性
抗体またはその抗原結合フラグメントの結合親和性および/または結合活性は、フレームワーク領域を修飾することにより改善される。フレームワーク領域の修飾のための任意の適切な方法は、当該技術分野で公知であり、本明細書で企図される。改質を行うための1つ以上の関連フレームワークアミノ酸位置の選択は、様々な基準に左右される。例えば、ドナーとアクセプター分子間のアミノ酸フレームワーク残基の相対的な差異が、変更を行うための関連フレームワークアミノ酸を選択する基準の1つである。この手法を使用して改質を行うための関連フレームワーク位置の選択には、残基決定における主観的バイアス、または残基によるCDR結合親和性の寄与における任意のバイアスを回避するという利点がある。
結合相互作用は、いくつかの実施形態における1つ以上のCDRの1つ以上のアミノ酸残基との分子間接触として明らかにされる。抗原結合は、例えば、CDRまたはCDR対、あるいは場合により、VH鎖およびVL鎖の最大6つのCDRすべての相互作用を必要とする。
抗体または抗原結合フラグメントの結合親和性および結合活性は、表面プラズモン共鳴(SPR)測定、AlphaLisaアッセイ、または平衡解離定数(KD)のフローサイトメトリーにより測定可能である。
本明細書には、0.1nM~1000nMのKDをもってヒトCD163に特異的に結合する抗体が、開示される。本明細書には、0.1~約500nM、約0.1~約100nM、約0.1~約50nM、約0.1~約20nM、約0.1~約10nM、約0.1~約5nM、約0.1~約2nM、約0.1~約1nM、約0.1~約0.5nM、約0.5~約1000nM、約0.5~約500nM、約0.5~約100nM、約0.5~約50nM、約0.5~約20nM、約0.5~約10nM、約0.5~約5nM、約0.5~約2nM、約0.5~約1nM、約1~約1000nM、約1~約500nM、約1~約100nM、約1~約50nM、約1~約20nM、約1~約10nM、約1~約5nM、約1~約2nM、約2~約1000nM、約2~約500nM、約2~約100nM、約2~約50nM、約2~約20nM、約2~約10nM、約2~約5nM、約5~約1000nM、約5~約500nM、約5~約100nM、約5~約50nM、約5~約20nM、約5~約10nM、約10~約1000nM、約10~約500nM、約10~約100nM、約10~約50nM、約10~約20nM、約20~約1000nM、約20~約500nM、約20~約100nM、約20~約50nM、約50~約1000nM、約50~約500nM、約50~約100nM、約100~約500nM、約100~約1000nM、約500~約1000nMのKDをもって、ヒトCD163に特異的に結合する抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、抗体は、1.8nM、12nM、45nM、または89nMのKDをもって、ヒトCD163に特異的に結合する。
本明細書に開示される抗体は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)上で高度に発現されるとともに、異なる起源の様々な腫瘍細胞上で検出される骨髄スカベンジャー受容体(myeloid scavenger receptor)CD163に結合する。腫瘍組織でのCD163の発現は、予後不良に関連する。本明細書に開示される抗体とIL-10極性化M2cマクロファージとの結合親和性は、フローサイトメトリーアッセイにより測定される。
本明細書には、0.1nM~1000nMのKDをもってM2cマクロファージに特異的に結合する抗体が、開示される。本明細書には、0.1~約500nM、約0.1~約100nM、約0.1~約50nM、約0.1~約20nM、約0.1~約10nM、約0.1~約5nM、約0.1~約2nM、約0.1~約1nM、約0.1~約0.5nM、約0.5~約1000nM、約0.5~約500nM、約0.5~約100nM、約0.5~約50nM、約0.5~約20nM、約0.5~約10nM、約0.5~約5nM、約0.5~約2nM、約0.5~約1nM、約1~約1000nM、約1~約500nM、約1~約100nM、約1~約50nM、約1~約20nM、約1~約10nM、約1~約5nM、約1~約2nM、約2~約1000nM、約2~約500nM、約2~約100nM、約2~約50nM、約2~約20nM、約2~約10nM、約2~約5nM、約5~約1000nM、約5~約500nM、約5~約100nM、約5~約50nM、約5~約20nM、約5~約10nM、約10~約1000nM、約10~約500nM、約10~約100nM、約10~約50nM、約10~約20nM、約20~約1000nM、約20~約500nM、約20~約100nM、約20~約50nM、約50~約1000nM、約50~約500nM、約50~約100nM、約100~約500nM、約100~約1000nM、約500~約1000nMのKDをもって、M2cマクロファージに特異的に結合する抗体が、開示される。いくつかの実施形態では、抗体は、7.7nMのKDをもってM2cマクロファージに特異的に結合する。
結合エピトープ
抗体エピトープは、線形ペプチド配列(すなわち「連続」)であるか、非連続アミノ酸配列(すなわち「立体配座」または「不連続」)で構成されてもよい。いくつかの実施形態では、抗体は、1つ以上のアミノ酸配列を認識し、ゆえにエピトープは、1より多くの別個のアミノ酸配列を定義する。抗体により認識されるエピトープは、例えば、当業者に周知のペプチドマッピングおよび配列解析の技法により求められる。結合相互作用は、CDRの1つ以上のアミノ酸残基との分子間接触として明らかにされる。
ヒトCD163タンパク質は、ヒトにおいてCD163遺伝子によりコードされるタンパク質である。ヒトCD163のアミノ酸配列は、MSKLRMVLLEDSGSADFRRHFVNLSPFTITVVLLLSACFVTSSLGGTDKELRLVDGENKCSGRVEVKVQEEWGTVCNNGWSMEAVSVICNQLGCPTAIKAPGWANSSAGSGRIWMDHVSCRGNESALWDCKHDGWGKHSNCTHQQDAGVTCSDGSNLEMRLTRGGNMCSGRIEIKFQGRWGTVCDDNFNIDHASVICRQLECGSAVSFSGSSNFGEGSGPIWFDDLICNGNESALWNCKHQGWGKHNCDHAEDAGVICSKGADLSLRLVDGVTECSGRLEVRFQGEWGTICDDGWDSYDAAVACKQLGCPTAVTAIGRVNASKGFGHIWLDSVSCQGHEPAIWQCKHHEWGKHYCNHNEDAGVTCSDGSDLELRLRGGGSRCAGTVEVEIQRLLGKVCDRGWGLKEADVVCRQLGCGSALKTSYQVYSKIQATNTWLFLSSCNGNETSLWDCKNWQWGGLTCDHYEEAKITCSAHREPRLVGGDIPCSGRVEVKHGDTWGSICDSDFSLEAASVLCRELQCGTVVSILGGAHFGEGNGQIWAEEFQCEGHESHLSLCPVAPRPEGTCSHSRDVGVVCSRYTEIRLVNGKTPCEGRVELKTLGAWGSLCNSHWDIEDAHVLCQQLKCGVALSTPGGARFGKGNGQIWRHMFHCTGTEQHMGDCPVTALGASLCPSEQVASVICSGNQSQTLSSCNSSSLGPTRPTIPEESAVACIESGQLRLVNGGGRCAGRVEIYHEGSWGTICDDSWDLSDAHVVCRQLGCGEAINATGSAHFGEGTGPIWLDEMKCNGKESRIWQCHSHGWGQQNCRHKEDAGVICSEFMSLRLTSEASREACAGRLEVFYNGAWGTVGKSSMSETTVGVVCRQLGCADKGKINPASLDKAMSIPMWVDNVQCPKGPDTLWQCPSSPWEKRLASPSEETWITCDNKIRLQEGPTSCSGRVEIWHGGSWGTVCDDSWDLDDAQVVCQQLGCGPALKAFKEAEFGQGTGPIWLNEVKCKGNESSLWDCPARRWGHSECGHKEDAAVNCTDISVQKTPQKATTGRSSRQSSFIAVGILGVVLLAIFVALFFLTKKRRQRQRLAVSSRGENLVHQIQYREMNSCLNADDLDLMNSSGGHSEPH(配列番号17)である。
本明細書には、ヒトCD163中でエピトープに特異的に結合する抗体が開示される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、非連続アミノ酸配列を含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、アミノ酸配列IGRVNASKGFGHIWLDSVSCQGHEPAI(配列番号18)を含むヒトCD163のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、アミノ酸配列VVCRQLGCGSA(配列番号19)を含むヒトCD163のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、アミノ酸配列WDCKNWQWGGLTCD(配列番号20)を含むヒトCD163のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号18~20のアミノ酸配列を含むヒトCD163のエピトープに結合する。
また本明細書には、本明細書に開示されるエピトープに特異的に結合する追加の抗体も開示される。本明細書に開示されるエピトープに特異的に結合するこれら追加の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、当技術分野で知られる技法を用いて特定可能である。例えば、エピトープ特異的抗体をデザインするための計算手法が、使用される。Nimrod et al.,Computational Design of Epitope-Specific Functional Antibodies,Cell Reports 25,2121-2131,Nov.20,2018(参照により本明細書に組み込まれる)。先ず非標準アミノ酸(ncAAs)p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン(pBpa)およびp-アジド-L-フェニルアラニン(pAzF)を標的エピトープに組み込み、次いでUV照射後に組み込んだncAAエピトープと交差反応する抗体を選択するといった、抗原に結合する抗体のライブラリの特異的なエピトープに結合する抗体を特定する別の手法も、使用可能である。架橋は、抗体とエピトープとの距離が十分に近いときにのみ生じるため、この方法は、標的エピトープに特異的に結合する抗体を効率的に選択することができる。Chen et al.Epitope-directed antibody selection by site-specific photocrosslinking,Science Advances,Vol.6,no.14,eaaz7825,01 Apr 2020(参照により本明細書に組み込まれる)。
抗体の修飾
抗体またはその抗原結合フラグメントは、場合により、例えばポリエチレングリコール(PEG)の添加などの様々な目的のために当技術分野で知られる技法を使用して修飾される。いくつかの実施形態では、PEG修飾(PEG化)は、循環時間の改善、溶解性の改善、タンパク質分解に対する忍容性の改善、抗原性および免疫原性の低下、バイオアベイラビリティの改善、毒性の低下、安定性の改善、ならびに製剤化の容易化のうち、1つ以上をもたらす。
場合により、抗原結合フラグメントがFc部分を含有しない場合、Fc部分は、このフラグメントに(組換えにより)添加されて、例えば対象へ投与したときに血中循環における抗原結合フラグメントの半減期を増加させる。適切なFc領域の選択、およびかかるフラグメントを組み込む方法は、当該技術分野で知られている。その循環半減期を増加させるが、その生物学的活性を失わないように目的のポリペプチドへとIgGのFc領域を組み込むことは、例えば、当該技術分野における従来技法を用いて達成される。いくつかの実施形態では、抗体のFc部分は、被験体に投与されると、血中循環における抗原結合フラグメントの半減期を増加させるようにさらに修飾される。修飾は、例えば当該技術分野における従来手段を用いて判定される。
加えて、いくつかの実施形態では、抗体およびその抗原結合フラグメントは、それらの複合体であるN-グリコシド結合糖鎖上にフコースを含有しないように産生または発現される。複合体N-グリコシド結合糖鎖からフコースを取り除くことは、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)、補体依存性傷害活性(CDC)を含むがこれらに限定されない、抗体および抗原結合フラグメントのエフェクター機能を増大させることが知られている。同様に、エピトープに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、場合により、そのC末端にて、抗体アイソタイプ、例えばIgG、IgA、IgE、IgD、およびIgM、ならびにアイソタイプサブクラス、具体的にIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4のいずれかに由来する免疫グロブリン重鎖のすべてまたは一部に付けられる。
加えて、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントは、いくつかの実施形態においてそれらが血液脳関門を通過可能となるようにも修飾される。このような本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントの修飾により、多形性神経膠芽腫(GBM)などの脳疾患の処置が可能となる。抗体または抗原結合フラグメントなどのタンパク質が血液脳関門を通過するのを可能にするための例示的な修飾は、米国特許出願公開第2007/0082380号に記載されている。
免疫グロブリンのグリコシル化は、それらのエフェクター機能、構造安定性、および抗体産生細胞からの分泌速度に対して顕著な効果を有することが認められている。これら特性を担う炭水化物基は、一般的に抗体の定常(C)領域に付着される。例えば、CHドメイン中のアスパラギン297におけるIgGのグリコシル化は、補体依存性細胞溶解の古典的経路を活性化するためにIgGの全能力に対して必要とされる(Tao and Morrison,J Immunol 143:2595(1989))。CH3ドメイン中のアスパラギン402におけるIgMのグリコシル化は、抗体の適切なアセンブリおよび細胞溶解活性に対して必要とされる(Muraoka and Shulman,J Immunol 142:695(1989))。IgA抗体のCH1およびCH3ドメイン中の162位と419位としてのグリコシル化部位の除去は、細胞内分解および分泌の少なくとも90%の分泌阻害を生じさせた(Taylor and Wall,Mol Cell Biol 8:4197(1988))。加えて、いくつかの実施形態では、抗体およびその抗原結合フラグメントは、それらの複合体であるN-グリコシド結合糖鎖上にフコースを含有しないように産生または発現される。複合体N-グリコシド結合糖鎖からフコースを取り除くことは、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)、補体依存性傷害活性(CDC)を含むがこれらに限定されない、抗体および抗原結合フラグメントのエフェクター機能を増大させることが知られている。これら「脱フコシル化」抗体および抗原結合フラグメントは、いくつかの実施形態では、複合体N-グリコシド結合糖鎖にフコースを含めるのに必要な酵素および生物化学経路をこれ以上含有しないように遺伝的に操作されている遺伝子導入動物、遺伝子導入植物、または細胞株(フコシルトランスフェラーゼノックアウト動物、植物、または細胞としても知られる)を含む、当該技術分野で知られる分子クローニング技法を利用する様々なシステムにより産生される。フコシルトランスフェラーゼノックアウト細胞となるように操作される細胞の非限定的な例には、CHO細胞、SP2/0細胞、NS0細胞、およびYB2/0細胞が含まれる。
可変(V)領域での免疫グロブリンのグリコシル化も、観察されている。SoxおよびHodは、ヒト抗体の約20%がV領域でグリコシル化されることを報告した(Proc Natl Acad Sci USA 66:975(1970))。Vドメインのグリコシル化は、V領域配列におけるN結合グリコシル化シグナルAsn-Xaa-Ser/Thrの偶発的発生から生じると考えられており、当該技術分野では免疫グロブリン機能にて役割を果たすと認識されていない。
可変ドメインフレームワーク残基でのグリコシル化は、場合により、抗体と抗原との結合相互作用を改質する。本開示は、ヒト化免疫グロブリン鎖のフレームワークまたはCDRにおいて数が制限されているアミノ酸が、抗体の親和性を増加させるべく突然変異(例えば、残基の置換、欠失、または付加による)されるように選択される基準を含む。
いくつかの実施形態では、システイン残基は、除去されるか、抗体またはFc含有ポリペプチドのFc領域に導入され、それにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成を排除するか増加させる。このような方法を用いて生成されるホモ二量体特異的結合剤または抗体は、いくつかの実施形態では、内在化能の改善、ならびに/または補体媒介性細胞死滅および抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増加を呈する。
CDR内の配列は、抗体をMHCクラスIIに結合させ、場合により望ましくないヘルパーT細胞応答を誘発することが認められている。いくつかの実施形態では、保存的置換により、抗体は結合活性を保持することが可能となるが、望ましくないT細胞応答の誘発能が低下してしまう。一実施形態では、重鎖または軽鎖のN末端20アミノ酸の1つ以上が、除去される。
いくつかの実施形態では、抗体分子は、ADCC活性の改善を呈するフコシル化が存在しないか減少した抗体分子を含む、エフェクター活性の改質をもたらす炭水化物構造の改質により産生される。これを達成するための様々な方法が、当該技術分野で知られている。例えば、ADCCエフェクター活性は、FcγRIII受容体への抗体分子の結合により媒介され、このことは、CH2ドメインのAsn-297におけるN結合グリコシル化の炭水化物構造に左右されることが認められている。非フコシル化抗体は、増加した親和性をもってこの受容体に結合し、天然フコシル化抗体よりも効率的にFcγRIII媒介性エフェクター機能を誘発する。一部の宿主細胞株、例えばLec13またはラットハイブリドーマYB2/0細胞株は、フコシル化レベルが低い抗体を自然に産生する。例えば、GnTIII酵素を過剰発現する細胞中で抗体を組換えにより産生することによる二等分糖の濃度の増加も、ADCC活性を増加させることが認められている。いくつかの実施形態では、2つのフコース残基のうち一方のみが存在しないことは、ADCC活性の増加に十分である。
抗体の共有結合修飾も、本明細書に含まれる。いくつかの実施形態では、共有結合修飾は、適用可能な場合、化学合成により、あるいは抗体の酵素的または化学的切断により作製される。いくつかの実施形態では、他の種類の共有結合修飾は、標的化アミノ酸残基を、選択された側鎖あるいはN末端またはC末端残基と反応可能な有機誘導体化薬剤と反応させることにより、導入される。
システイニル残基は、最も一般的には、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのα-ハロアセテート(および対応するアミン)と反応して、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を与える。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロメルクリベンゾエート、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応により、誘導体化される。
いくつかの実施形態では、ヒスチジル残基はpH5.5~7.0でのジエチルピロカーボネートとの反応により誘導体化される。この薬剤が、ヒスチジル側鎖に対し比較的特異的であるためである。いくつかの実施形態では、パラ-ブロモフェナシルブロミドも有用である。いくつかの実施形態では、反応はpH6.0で0.1Mカコジル酸ナトリウムにおいて行われる。
いくつかの実施形態では、リシニル残基およびアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応される。これら薬剤による誘導体化には、リシニル残基の電荷を逆転させる効果がある。α-アミノ含有残基を誘導体化するのに適切な他の試薬としては、メチルピコリニミデート、ピリドキサールホスフェート、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、0-メチルイソ尿素、2,4-ペンタンジオン、およびグリオキシル酸とのトランスアミナーゼ触媒反応などの、イミドエステルが挙げられる。
いくつかの実施形態では、アルギニル残基が、フェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンなどの1つ以上の従来の試薬との反応により、修飾される。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基のpKaが高いため、反応をアルカリ性条件下で行う必要がある。さらに、これら試薬は、いくつかの実施形態では、リジンの基、ならびにアルギニンε-アミノ基と反応する。
いくつかの実施形態では、チロシル残基の特異的修飾は、特に芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によりスペクトラルラベルをチロシル残基に導入することを目的に、行われる。最も一般的には、N-アセチルイミダゾールおよびテトラニトロメタンは、いくつかの実施形態では、それぞれO-アセチルチロシル種および3-ニトロ誘導体を形成するために使用される。チロシル残基は、放射免疫測定に使用するための標識タンパク質を調製するために、125Iまたは131Iを使用してヨウ素化される。
カルボキシル側基(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R-N=C=N-R’)との反応により特異的に修飾され、RおよびR’は、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドなどの様々なアルキル基である。さらに、アスパルチル残基とグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によりアスパラギニル残基とグルタミニル残基に変換される。
いくつかの実施形態では、グルタミニル残基とアルパラギニル残基は、それぞれ対応するグルタミル残基とアルパルチル残基へと脱アミド化される。これらの残基は、中性または塩基性条件下で脱アミド化される。
他の修飾には、プロリンとリジンのヒドロキシル化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、および任意のC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
別の種類の共有結合修飾は、グリコシドを特異的結合剤または抗体に化学的または酵素的に結合させることを含む。これらの手順は、N結合またはO結合グリコシル化のためのグリコシル化能を有する宿主細胞におけるポリペプチドまたは抗体の産生を必要としない。使用される結合様式に応じて、いくつかの実施形態では、糖は、(a)アルギニンとヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインのものなどの遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、スレオニン、またはヒドロキシプロリンのものなどの遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンのものなどの芳香族残基、あるいは(f)グルタミンのアミド基に付着される。
ポリペプチドまたは抗体上に存在する任意の炭水化物部分の除去は、いくつかの実施形態では、化学的または酵素的に達成される。化学的な脱グリコシル化は、化合物トリフルオロメタンスルホン酸、または同等の化合物への抗体の暴露を含む。この処置は、連結糖(linking sugar)(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除く大半またはすべての糖の切断をもたらしつつ、抗体を無傷で残す。いくつかの実施形態では、抗体上での炭水化物部分の酵素的切断は、様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用により達成される。
別の種類の共有結合修飾は、様々な非タンパク質性ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール、ポリオキシアルキレン、またはデキストランなどのポリサッカライドポリマーのうち1つに抗体を結合させることを含む。このような方法は、当該技術分野で公知である。
予め判定したポリペプチド抗原への結合親和性は、一般的に、典型的には1つ以上のCDRに隣接する領域および/または1つ以上のフレームワーク領域において、1つ以上の突然変異をV領域フレームワークに導入することにより、調節される。典型的に、このような突然変異は、グリコシル化部位配列を破壊または作製するが、ポリペプチドの疎水性構造特性に実質的に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換の導入を伴う。典型的に、プロリン残基を導入する突然変異は、避けられる。
エフェクター機能
抗体エフェクター機能の例には、C1q結合および補体依存性細胞傷害性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方調節、およびB細胞活性化が含まれる。一般的に、Fc媒介性機能は、その機能が影響を受ける細胞により発現される特殊化された受容体分子、「Fc受容体」、または「FcR」による抗体のFc部分の結合を含む。
IgGは、いくつかの実施形態では、免疫グロブリン分子のすべての機能を実行するので、最も汎用性の高い免疫グロブリンと考えられている。IgGは、血清中の主要なIgであり、胎盤を渡る唯一のIgクラスである。IgGは補体も固定するが、IgG4サブクラスは補体を固定しない。マクロファージ、単球、多形核白血球(PMN)、および一部のリンパ球は、IgGのFc領域に対する受容体を有している。すべてのサブクラスが同じように結合するわけではない。IgG2およびIgG4は、Fc受容体に結合しない。PMN、単球、およびマクロファージ上でのFc受容体への結合の結果、細胞は、場合により抗原をより良好に内在化する。IgGは、食作用を増強するオプソニンである。他の種類の細胞上でのFc受容体へのIgGの結合は、他の機能の活性化をもたらす。
ある実施形態では、FcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ(「γ」)受容体)に結合するとともに、FcγI、FcγII、およびFcγIIIサブクラスの受容体、ならびにこれら受容体の対立遺伝子変異体および代替的にスプライシングされた形態を含むFcRである。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有している。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン内に免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を包含している。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメイン内に免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を包含している。
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」または「ADCC」とは、特定の細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌Igにより、これら細胞毒性エフェクター細胞が、抗原を持つ標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させるのを可能にする細胞毒性の形態を表す。抗体は細胞傷害性細胞を「武装」させ、かかる死滅に必要とされる。ADCCを媒介するための一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現し、一方で単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。目的の分子のADCC活性を評価するために、いくつかの実施形態では、in vitro ADCCアッセイが実施される。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。
代替的に、または付加的に、いくつかの実施形態では、目的分子のADCC活性は、in vivoで、例えば動物モデルを対象に評価される。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、M2様マクロファージの表面膜タンパク質に結合し、M2様マクロファージにより内在化される。この内在化プロセスは、これらの細胞を死滅またはその増殖を阻害することなく、細胞の機能的免疫抑制特徴に対して観察された変化、すなわち、M2状態から微妙に活性化した状態への細胞の分化に関与していると考えられる。いくつかの実施形態では、内在化に際して抗体は、免疫抑制性可溶性因子の発現を低下させ、一方で、CD4+ヘルパーT細胞および細胞傷害性リンパ球を含むT細胞の活性または増殖を刺激または促進する可用性因子の発現を増加させる。
ある治療用途では、内在化プロセスは、CD163タンパク質を発現する標的細胞を死滅させるかその活性または増殖を低下させる目的のために利用される。内在化される抗体分子の数は、細胞、特に癌細胞を死滅させるか、またはその増殖を阻害するのに十分であるか、または適切である。抗体または抗体コンジュゲートの効力に応じて、いくつかの例では、細胞への単一抗体分子の取込みは、抗体が結合する標的細胞を死滅させるのに十分なものである。例えば、特定の毒素は、抗体にコンジュゲートされる毒素の1分子の内在化が、標的化細胞を死滅させるのに十分であるような死滅において、非常に強力である。
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体または抗原結合フラグメントは、治療部分、画像化もしくは検出可能部分、または親和性タグにコンジュゲートあるいは結合される。ポリペプチドをコンジュゲートまたは結合する方法は、当該技術分野で周知である。化合物とラベルとの会合(結合)には、共有結合および非共有結合相互作用、化学結合、ならびに組換え技法を含むがこれらに限定されない当技術分野で知られるあらゆる手段が含まれる。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、親和性タグ(例えば、精製タグ)にコンジュゲートされるか、これを用いて組換えにより操作される。例えばポリヒスチジン(例えば、His6)タグなどの親和性タグが、当技術分野における従来のタグである。
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、検出可能部分をさらに含む。検出は、例えばin vitro、in vivo、またはex vivoで達成される。例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントを用いてマクロファージにより発現されるhuCD163タンパク質の検出および/または判定のためのin vitroアッセイ(定量化、資格化(qualification)など)は、例えばELISA、RIA、およびウェスタンブロットを含むがこれらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、in vitroでの抗体の抗原の検出、診断、またはモニタリングは、例えば、標準ELISAアッセイにおいて対象から試料(例えば、血液試料)を取得し、この試料を試験することにより、行われる。
また本明細書の特定の実施形態では、本明細書に開示される抗体と担体とを含む組成物も開示される。
医薬組成物
本明細書の特定の実施形態では、本明細書に開示される抗体と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物が開示される。
このような組成物は、in vitroまたはin vivoでの解析に、または医薬組成物の場合、開示された抗体で対象を処置するためにin vivoまたはex vivoでの対象への投与に有用である。
いくつかの実施形態では、賦形剤は、担体、緩衝液、安定化剤、または当業者に知られる他の適切な材料である。このような材料は、非毒性でなければならず、活性成分の有効性を妨げるものであってはならない。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路に左右される。
本明細書に記載の方法により特定される、抗体または抗原結合フラグメントを含む医薬製剤は、いくつかの実施形態では、保管のために、所望の純度を有するタンパク質を任意選択の生理学的に許容可能な担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.Ed.(1980)を参照)、凍結製剤または水溶液の形態で調製される。許容可能な担体、または安定剤は、利用される用量と濃度でレシピエントに対して無毒であるとともに、リン酸塩、クエン酸塩、その他の有機酸などの緩衝液、アスコルビン酸やメチオニンなどの酸化防止剤、防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール、メチルやプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾールなど)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸、単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトールなどの糖類、ナトリウムなどの塩形成カウンターイオン、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、ならびに/あるいはTWEEN(登録商標)、PLURONIC(登録商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むものである。ある実施形態では、医薬組成物は、5~200mg/mL、好ましくは10~100mg/mLの濃度で抗体を含む。
許容可能な担体は、投与される対象に対して生理学的に許容可能であり、これが投与される化合物の治療特性を保持する。許容可能な担体およびその製剤は、概して、例えば、上述のRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。例示的な担体の1つは、生理食塩水である。「薬学的に許容可能な担体」という語句は、本明細書で使用するとき、1つの器官または身体部分の投与部位から別の器官または身体部分への対象化合物の搬送または輸送、あるいはin vitroアッセイ系に必要な、液体または固形充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤、封入材料などの薬学的に許容可能な材料、組成物、または溶媒を意味する。各担体は、他の製剤の成分と適合可能であり、それが投与される対象に有害ではないという意味で許容可能である。許容可能な担体は、対象化合物の特異的活性を改質するものでもない。
別の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、組成物中の化合物の安定性を改善するため、および/または組成物の放出速度を制御するために、許容可能な添加物をさらに含む。許容可能な添加物は、対象化合物の特異的活性を改質するものではない。例示的な許容可能な添加物には、マンニトール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、トレハロース、ソルボース、スクロース、ガラクトース、デキストラン、デキストロース、フルクトース、それらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、許容可能な添加物は、デキストロースなどの許容可能な担体および/または賦形剤と組み合わされる。代替的に、例示的な許容可能な添加物には、ペプチドの安定性を増加させ、溶液のゲル化を低下させるためのポリソルベート20やポリソルベート80などの界面活性剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、溶液の0.01%~5%の量で組成物に添加される。このような許容可能な添加物の添加は、保管中の組成物の安定性と半減期を増大させる。
一実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、リン酸塩、酢酸塩、またはTRISなどの等張性緩衝液を、ポリオール、ソルビトール、スクロース、または塩化ナトリウムなどの等張化および安定化を行う等張化剤と組み合わせて含有している。いくつかの実施形態では、等張化剤は、組成物中に約5%の量で存在する。
別の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、凝集を防ぎ、0.01~0.02%wt/volで安定化するために界面活性剤を含む。
別の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物のpHは、4.5~6.5または4.5~5.5の範囲である。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物はまた、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つ化合物など、処置される適応症に対して必要に応じて1より多くの活性化合物も含有している。例えば、処置方法は、免疫抑制剤をさらに提供する。このような分子は、意図した目的のために有効な量で組み合わせて適切に存在する。
いくつかの実施形態では、活性成分は、例えばコアセルベーション技法または界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれコロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中にあるヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封じ込められる。このような技法は、上述のRemington’s Pharmaceutical Sciencesに開示されている。
抗体の懸濁液および結晶形態も、本明細書で企図される。懸濁液および結晶形態を作製する方法は、当業者に知られている。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、無菌である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、従来の周知の滅菌技法により滅菌される。例えば、滅菌は、滅菌濾過膜を介した濾過により容易に達成される。いくつかの実施形態では、結果生じる溶液は、使用のために包装されるか、無菌条件下で濾過されて凍結乾燥される。凍結乾燥された調製物は、滅菌溶液と組み合わせてから投与される。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドが液体組成物中で比較的不安定であるときなど、長期保存のためにポリペプチドを安定化させる凍結乾燥が利用される。
いくつかの実施形態では、例えば、ポリオール(マンニトール、ソルビトール、およびグリセロールを含む)、糖(グルコースおよびショ糖を含む)、ならびにアミノ酸(アラニン、グリシン、およびグルタミン酸を含む)などの一部の賦形剤は、凍結乾燥製品用の安定剤として作用する。いくつかの実施形態では、ポリオールおよび糖も、ポリペプチドを凍結および乾燥による損傷から保護し、乾燥状態で保管中の安定性を増強させるために使用される。いくつかの実施形態では、糖は、凍結乾燥プロセスおよび保管中の両方において有効である。単糖類、二糖類、およびPVPなどのポリマーを含む他のクラスの分子も、凍結乾燥製品の安定剤として報告されている。
いくつかの実施形態では、注射において、本明細書に開示される医薬組成物は、上述のような適切な溶液との再構成に適した粉末である。これらの例として、凍結乾燥、回転乾燥、または噴霧乾燥粉末、非晶質粉末、顆粒、沈殿物、あるいは微粒子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。注射において、組成物は、安定剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調整剤、およびこれらの組合せを任意選択で含有している。
いくつかの実施形態では、徐放性調製物が調製される。徐放性調製物の適切な例として、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、このマトリクスは、成形品、例えばフィルムやマイクロカプセルの形態にある。徐放性マトリクスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(例えば、米国特許第3,773,919号を参照)、L-グルタミン酸とyエチル-L-グルタミン酸とのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、Lupron Depot(商標)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドで構成される注射用ミクロスフェア)、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-酢酸ビニルや乳酸-グリコール酸などのポリマーは、100日以上にわたり分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルは、それよりも短い期間にわたりタンパク質を放出する。いくつかの実施形態では、封入された抗体は体内に長期間残存するが、37℃で水分に曝露させると変性または凝集し、生物学的活性の損失、および場合により免疫原性の変化をもたらす。安定化のために考案された合理的な方策は、場合により、関与する機構に左右される。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による分子間S-S結合形成であると発見された場合、安定化は、場合により、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分含有量を調節し、適切な添加物を使用し、特定のポリマーマトリクス組成物を開発することにより達成される。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、本明細書に記載されるような短時間作用型、即時放出型、長時間作用型、または徐放型となるようにデザインされる。一実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、制御放出または徐放のために製剤化される。
医薬組成物は、例えば、皮下、硝子体内、皮内、静脈内、動脈内、腹腔内、脳脊髄内、または筋肉内注射を含むがこれらに限定されない注射により、投与される。それぞれの種類の注射用組成物の製剤化に使用される賦形剤および担体は、本明細書で企図される。以下の説明は、単なる例であり、組成物の範囲を制限することを意味するものではない。注射用組成物には、水溶液(水溶性の場合)または分散液、ならびに滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられるが、これらに限定されるものではない。静脈内投与において、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。いくつかの実施形態では、担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物を含有する溶剤または分散媒である。流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散の場合に必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持される。抗菌剤および抗真菌剤として、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールが挙げられる。いくつかの実施形態では、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトール、および塩化ナトリウムなどのポリアルコール類が、組成物中に含まれる。いくつかの実施形態では、結果生じる溶液は、そのまま使用するために包装されるか、凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、凍結乾燥した調製物は、後に滅菌溶液と組み合わせてから投与される。静脈内注射、または苦痛を伴う部位での注射において、活性成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性、および安定性を有する非経口投与に許容可能な水溶液の形態にある。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射、リンガー注射、および乳酸リンガー注射などの等張ビヒクルを使用して、適切な溶液を調製することができる。いくつかの実施形態では、必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝液、酸化防止剤、および/または他の添加剤が含まれる。いくつかの実施形態では、滅菌注射溶液は、適切な溶媒中の必要量の活性成分を、上記で列挙した成分の1つまたは組合せとともに組み込み、続いて必要に応じて滅菌濾過を行うことにより、調製される。一般的に、分散液は、塩基性分散媒および上記で列挙したものから必要な他の成分を含有する滅菌溶媒へと活性成分を組み込むことにより、調製される。注射用滅菌溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、先に滅菌濾過した溶液の所望の追加成分を加えた活性成分の粉末が得られる。
いくつかの実施形態では、組成物は従来、例えば単位用量の注射などにより静脈投与される。注射において、いくつかの実施形態では、活性成分は、実質的に発熱物質を含まず、適切なpH、等張性、および安定性を有する非経口投与に許容可能な水溶液の形態にある。いくつかの実施形態では、例えば、塩化ナトリウム注射、リンガー注射、乳酸リンガー注射などの等張溶媒を使用して、適切な溶液が調製される。いくつかの実施形態では、必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝液、酸化防止剤、および/または他の添加剤が含まれる。加えて、組成物は、いくつかの実施形態ではエアロゾル化を介して投与される(Lahn et al.,Int Arch Allergy Immunol 134:49-55(2004))。
非経口投与において、抗体は、薬学的に許容可能な非経口溶媒とともに単位用量注射可能な形態(溶液、懸濁液、エマルジョン)で製剤化される。かかる溶媒の例は、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンである。固定油やオレイン酸エチルなどの非水性溶媒も、使用される。リポソームは担体として使用される。溶媒は、等張性および化学的安定性を高める物質、例えば緩衝液および防腐剤などの添加剤を少量含有する。抗体は、一般的に約1mg/mL~10mg/mLの濃度でこのような溶媒中で製剤化される。
一実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば保管中の貯蔵寿命を増加させるために凍結乾燥される。組成物が、本明細書に提供される薬剤または方法での使用に考慮されるとき、いくつかの実施形態では、組成物は、ヒト対象に投与したときに炎症反応または危険なアレルギー反応を引き起こさないように発熱物質を実質的に含んでいない。発熱物質に関する組成物の試験、および発熱物質を実質的に含まない組成物の調製は、当業者に対し十分に理解されており、いくつかの実施形態では、市販のキットを用いて達成される。
いくつかの実施形態では、許容可能な担体は、吸収またはクリアランスを安定化、増加、または遅延させる化合物を含有する。このような化合物には、例えば、グルコース、スクロース、デキストランスなどの炭水化物、低分子量タンパク質、ペプチドのクリアランスまたは加水分解を低下させる組成物、あるいは賦形剤または他の安定化剤および/もしくは緩衝液が含まれる。吸収を遅延させる薬剤として、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンが挙げられる。いくつかの実施形態では、リポソーム担体を含む医薬組成物の吸収を安定化、増加、または減少させるために、清浄剤も使用される。いくつかの実施形態では、消化から保護するために、化合物は、酸性および酵素加水分解に対する耐性を付与するべく組成物と複合体化され、またはいくつかの実施形態では、化合物は、リポソームなどの適切な耐性を呈する担体中で複合体化される。化合物を消化から保護する手段は、当該技術分野で知られている。
いくつかの実施形態では、組成物は、投薬製剤と適合可能な形で、および治療上有効な量で投与される。投与される量は、処置される対象、活性成分を利用する対象の免疫系の能力、および所望の結合能の程度に左右される。投与に必要な活性成分の正確な量は、医療従事者の判断に左右され、各個人に特有である。初期投与およびブースターショットに適切なレジメンも変動可能なものであるが、初期投与、続いて後の注射または他の投与による1時間以上の間隔での反復投与を特色とする。代替的に、血液中の濃度を維持するのに十分な連続静脈内注入が、企図される。
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の疾病、疾患、または障害を処置するための薬剤を作製するための、本明細書に記載の組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は、処置を必要とする対象の物理的特徴に基づき製剤化され、疾病、疾患、または障害の段階に基づき単一または複数の製剤中で製剤化される。いくつかの実施形態では、薬剤は、病院および診療所への配布のために適切なラベルを伴う適切なパッケージに包装され、ラベルは、本明細書に記載の疾患を抱える対象の処置の指示に関するものである。いくつかの実施形態では、薬剤は、単一または複数の単位として包装される。組成物の用量および投与に関する指示は、いくつかの実施形態では、後述のようなパッケージとともに含まれる。本開示はさらに、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと、および薬学的に許容可能な担体とを含む薬剤を対象とする。
いくつかの実施形態では、組成物(本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメント)は、処置対象である疾病に依存して、単独で、あるいは第2の組成物と組み合わせて同時または連続的に投与される。一実施形態では、第2の治療的処置は、抗癌療法または抗癌治療薬である。2つ以上の組成物が投与されるとき、組成物は、例えば組み合わせて(連続的または同時に)投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、単回投与または複数回投与で投与される。
いくつかの実施形態では、ヒト対象への投与のために製剤化されるとき、組成物は、発熱物質を含まないように製剤化される。発熱物質に関する組成物の試験、および発熱物質を含まない医薬組成物の調製は、当業者に対して十分に理解されている。
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、注射を含むがこれに限定されない、対象に対する任意の適切な投与経路のために製剤化される。注射には、例えば、皮下注射、腹膜注射、静脈内注射、筋肉内注射、または脳脊髄液(CSF)への脊髄注射が含まれる。いくつかの実施形態では、投与は、1、2、3、4、5、6、7、またはそれより多くの注射部位で行われる。一実施形態では、投与は、6つの注射部位を介して行われる。
in vivoでの適用において、接触は、例えば、任意の適切な手段による対象への(本明細書に記載されるような)組成物の投与を介して行われる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、非経口投与、皮下投与、腹腔内投与、脳脊髄内投与、肺内投与、および鼻腔内投与を含む全身投与または局所投与といった適切な手段、および必要な場合は、局所処置、病巣内投与により投与される。非経口経路には、例えば、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、硬膜外投与、筋肉内投与、および髄腔内投与が含まれる。いくつかの実施形態では、このような投与は、ボーラス注入、連続注入、またはパルス注入として行われる。いくつかの実施形態では、組成物は、部分的に投与が短期間または慢性であるかに依存して、注射により投与される。局所投与、特に経皮投与、経粘膜投与、直腸投与、経口投与、または局所投与、例えば所望の部位の近くに配したカテーテルを介した投与を含む、他の投与方法が、企図される。
処置および使用の方法
本明細書の特定の実施形態では、必要とする個体の癌を処置する方法が開示され、該方法は、本明細書に開示される抗体を個体に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、ヒト対象の癌を処置するための薬剤の製造における、本明細書に開示されるような抗体の使用を提供する。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト腫瘍関連マクロファージ上で発現されるCD163タンパク質に特異的に結合し、マクロファージによるCD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15のうち少なくとも1つの発現を低下させる。
本明細書の特定の実施形態では、必要とする対象の免疫活性を調節する方法が開示され、該方法は、本明細書に記載の抗体を前記対象に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト腫瘍関連マクロファージ上で発現されるCD163タンパク質に特異的に結合し、マクロファージによるCD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15のうち少なくとも1つの発現を低下させる。
本明細書の特定の実施形態では、M2マクロファージのレベルが病理学的または不適切に上昇した(例えば、対象における免疫媒介性腫瘍細胞死滅を促進するのに有用なレベルと比較して不適切に上昇した)対象を処置する方法が開示され、該方法は、本明細書に記載の抗体を前記対象に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト腫瘍関連マクロファージ上で発現されるCD163タンパク質に特異的に結合し、マクロファージによるCD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15のうち少なくとも1つの発現を低下させる。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号3として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号3として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号3として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号4として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号6として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号4として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号6として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号4として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号6として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、配列番号3として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、配列番号4として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号6として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む抗体が開示される。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、配列番号3として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、配列番号4として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号6として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、配列番号3として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、配列番号4として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号6として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3のうち、少なくとも1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号7として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号7として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号8として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号8として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号8として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号8として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)とを含む。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号7として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、VHは、配列番号8として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号7として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、VHは、配列番号8として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号10として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号10として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号10として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号11として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号11として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号11として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号12として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号12として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号12として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号13として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号13として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号13として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号10として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号10として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号10として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号11として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号11として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号11として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号12として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号12として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号12として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号13として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号13として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号9として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号13として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号15として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号15として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号15として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号16として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号16として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号16として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
またいくつかの実施形態では、抗体は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号15として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号15として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号15として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号16として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号16として記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号14として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有しており、重鎖は、配列番号16として記載のアミノ酸配列に対して100%同一のアミノ酸配列を有している。
いくつかの実施形態では、本開示は、癌のヒト対象における腫瘍関連マクロファージによる免疫抑制を低下させる薬剤の製造における、本明細書に記載の抗体の使用を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、癌のヒト対象におけるT細胞媒介性腫瘍細胞死滅を促進する薬剤の製造における、本明細書に記載の抗体の使用を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、癌のヒト対象を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に記載の抗体を治療上有効量で対象に投与する工程を含み、それにより、対象の腫瘍関連マクロファージによる免疫抑制が低下される。
いくつかの実施形態では、本開示は、癌のヒト対象を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に記載の抗体を治療上有効量で対象に投与する工程を含み、それにより、対象のT細胞媒介性腫瘍細胞死滅が増加される。
本明細書の特定の実施形態では、癌患者における免疫抑制を低下させるために腫瘍関連マクロファージを機能的に再配向する方法が開示され、該方法は、腫瘍微小環境中でのCD4+またはCD8+T細胞活性または増殖を改善するのに有効な本明細書に記載の抗体を含む医薬組成物を一定量で患者に投与する工程を含む。
本明細書の特定の実施形態では、必要とするヒト対象におけるリンパ球媒介性腫瘍細胞死滅を促進する方法が開示され、該方法は、本明細書に記載の抗体を含む医薬組成物を有効量で対象に投与する工程を含む。
本明細書の特定の実施形態では、腫瘍微小環境中での腫瘍関連マクロファージの活性を調節する方法が開示され、該方法は、腫瘍関連マクロファージを本明細書に開示される抗体と接触させる工程を含み、前記方法は、以下の効果:
(a)ヒトマクロファージによる、CD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15である少なくとも1つのマーカーの発現の低下、
(b)ヒトマクロファージによる抗体の内在化、
(c)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの活性化、
(d)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの増殖、ならびに
(e)腫瘍微小環境中での腫瘍細胞死滅の促進
のうち少なくとも1つをもたらす。
本明細書の特定の実施形態では、腫瘍微小環境中での腫瘍関連マクロファージの活性を調節する方法が開示され、該方法は、腫瘍関連マクロファージを本明細書に開示される抗体と接触させる工程を含み、前記方法は、以下の効果:
(a)ヒトマクロファージによる、CD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15である少なくとも1つのマーカーの発現の低下、
(b)ヒトマクロファージによる抗体の内在化、
(c)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの活性化、
(d)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの増殖、ならびに
(e)腫瘍微小環境中での腫瘍細胞死滅の促進
のうち少なくとも2つをもたらす。
本明細書の特定の実施形態では、腫瘍微小環境中での腫瘍関連マクロファージの活性を調節する方法が開示され、該方法は、腫瘍関連マクロファージを本明細書に開示される抗体と接触させる工程を含み、前記方法は、以下の効果:
(a)ヒトマクロファージによる、CD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15である少なくとも1つのマーカーの発現の低下、
(b)ヒトマクロファージによる抗体の内在化、
(c)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの活性化、
(d)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの増殖、ならびに
(e)腫瘍微小環境中での腫瘍細胞死滅の促進
のうち少なくとも3つをもたらす。
本明細書の特定の実施形態では、腫瘍微小環境中での腫瘍関連マクロファージの活性を調節する方法が開示され、該方法は、腫瘍関連マクロファージを本明細書に開示される抗体と接触させる工程を含み、前記方法は、以下の効果:
(a)ヒトマクロファージによる、CD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15である少なくとも1つのマーカーの発現の低下、
(b)ヒトマクロファージによる抗体の内在化、
(c)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの活性化、
(d)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの増殖、ならびに
(e)腫瘍微小環境中での腫瘍細胞死滅の促進
のうち少なくとも4つをもたらす。
本明細書の特定の実施形態では、腫瘍微小環境中での腫瘍関連マクロファージの活性を調節する方法が開示され、該方法は、腫瘍関連マクロファージを本明細書に開示される抗体と接触させる工程を含み、前記方法は、以下の効果:
(a)ヒトマクロファージによる、CD16、CD64、TLR2、またはSiglec-15である少なくとも1つのマーカーの発現の低下、
(b)ヒトマクロファージによる抗体の内在化、
(c)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの活性化、
(d)CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはこれらの任意の組合せの増殖、ならびに
(e)腫瘍微小環境中での腫瘍細胞死滅の促進
のうち少なくとも5つをもたらす。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、CD8 T細胞の活性化および増殖の骨髄細胞抑制を低下させる。
M2からM1へのマクロファージの極性化は、結果生じるマクロファージがM1またはM1様マクロファージに関連する特定の機能的または表現型特質を有するように、本開示のM2またはM2様マクロファージが改質されるプロセスを指す。いくつかの実施形態では、M2またはM2様マクロファージは、CD163をこれ以上発現しないときに極性化される。
いくつかの実施形態では、抗体は、CD8 T細胞によるRaji細胞のCD19-CD3 BiTE媒介性死滅の骨髄細胞抑制を低下させる。
いくつかの実施形態では、抗体は、癌細胞のCAR T細胞媒介性死滅の骨髄細胞抑制を低下させる。
いくつかの実施形態では、抗体は、ADCCによるNK細胞媒介性癌細胞死滅の骨髄細胞抑制を低下させる。
本明細書に開示される方法のいずれかは、いくつかの例では、追加の抗癌療法を前記対象に施す工程をさらに含む。抗癌療法には、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、およびサイトカイン療法、ならびにこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。一実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメント、および抗癌療法は、同時または連続的に投与される。
いくつかの実施形態では、追加の抗癌療法は、免疫療法である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、チェックポイント阻害剤を含む組成物である。いくつかの実施形態では、追加の抗癌療法は、免疫チェックポイント阻害剤である。
いくつかの実施形態では、本開示は、huCD163発現マクロファージを含む疑いがある細胞試料中のhuCD163発現マクロファージを特定するためのin vitroまたはex vivo方法を提供し、該方法は、細胞試料を本明細書に記載の抗体と接触させる工程と、試料中のhuCD163発現マクロファージの存在を示す陽性シグナルである試料中の細胞への結合を測定する工程とを含む。
いくつかの実施形態では、本開示は、細胞試料中のヒトM2cマクロファージを特定するための方法を提供し、該方法は、ヒトM2cマクロファージを含む疑いのある血液細胞を含む細胞試料を、本明細書に記載の抗体と接触させる工程と、試料中のヒトM2c発現マクロファージの存在を示す陽性シグナルである試料中の細胞への結合を測定する工程とを含む。いくつかの実施形態では、細胞試料は、ヒト対象から得た細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞試料は、培養細胞を含む。いくつかの実施形態では、試料中のM2細胞を検出するための方法は、検出を容易にするために、結合に際して細胞により内在化されないが細胞の外部に結合したまま残る抗体またはフラグメントを使用する工程を含む。
いくつかの実施形態では、本開示は、細胞試料中のhuCD163発現癌細胞を特定するための方法を提供し、該方法は、huCD163発現癌細胞を含む疑いのある細胞を含む細胞試料を、本明細書に記載の抗体と接触させる工程と、試料中のhuCD163発現癌細胞の存在を示す陽性シグナルである試料中の細胞への結合を測定する工程とを含む。いくつかの実施形態では、細胞試料は、ヒト対象から得た細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞試料は、培養細胞を含む。
いくつかの実施形態では、本開示は、M2cマクロファージ上での細胞表面マーカーの発現を調節する方法を提供する。いくつかの実施形態では、CD16(FcγRIIIa)、CD64(FcγRI)、Siglec-15、およびTLR2のうち少なくとも1つの発現が、低下される。いくつかの実施形態では、CD16、CD64、Siglec-15、およびTLR2の発現が、低下される。
いくつかの実施形態では、本開示は、T細胞活性化の骨髄細胞抑制を低下させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、T細胞によるIL-2産生の増加を誘導する。いくつかの実施形態では、本開示は、Th1細胞増殖を増加させるための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、T細胞の増殖におけるTh1細胞の割合を増加させるための方法を提供する。これら態様のそれぞれにおいて、方法は、本明細書に記載の抗体をin vivoで投与する工程、あるいは、抗体をin vivoまたはex vivoで複合免疫細胞系と接触させる工程を含み、これにおいて、マクロファージ、エフェクターT細胞、および任意選択の腫瘍標的細胞は、in vivoでの相互作用を再現またはモデル化する方法で相互作用することが可能となる。
いくつかの実施形態では、本開示は、T細胞増殖の骨髄細胞抑制を低下させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、CD4+細胞増殖またはCD8+T細胞増殖、あるいはその両方を増加させる方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とする患者におけるCD69、ICOS、OX40、PD-1、LAG3、およびCTLA4のうち少なくとも1つのT細胞発現を増加させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、CD4+T細胞によるCD69、ICOS、OX40、PD-1、LAG3、およびCTLA4のうちの少なくとも1つの発現を増加させる。いくつかの実施形態では、方法は、CD8+T細胞によるICOS、OX40、PD-1、LAG3、およびCTLA4のうちの少なくとも1つの発現を増加させる。
いくつかの実施形態では、本開示は、癌細胞死滅を増加させるための方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性リンパ球(CTL)による癌細胞死滅が、増加される。いくつかの実施形態では、MHCミスマッチ癌細胞(MHC-mismatched cancer cells)のT細胞媒介性死滅が、増加される。
いくつかの実施形態では、本開示は、CD8+T細胞活性化またはCD8+T細胞増殖のマクロファージ媒介性抑制を低下させるために、骨髄細胞を本明細書に記載の抗体と接触させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗体は、M0マクロファージを含む骨髄細胞と接触される。いくつかの実施形態では、抗体は、M2マクロファージを含む骨髄細胞と接触される。いくつかの実施形態では、抗体は、M0およびM2マクロファージを含む骨髄細胞と接触される。
いくつかの実施形態では、本開示は、肺癌のヒト患者を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に記載の抗体を有効量で患者に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、肺癌は、癌腫または腺癌である。いくつかの実施形態では、肺癌は、非小細胞肺癌である。
本開示の有効な応答は、対象が、病気の徴候もしくは症状の部分的または全体的な緩和あるいは減少を経験するときに達成され、癌の処置の場合、具体的には、治癒、寛解、生存の延長、または他の他覚的応答を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、予想される無増悪生存期間は、再発の回数、疾患の段階、および他の因子を含む予後因子に応じて、数か月から数年で測定される。生存の延長には、少なくとも1か月(mo.)、少なくとも約2mos.、少なくとも約3mos.、少なくとも約4mos.、少なくとも約6mos.、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年などの時間が挙げられるが、これらに限定されるものではない。全生存率も、例えば数か月から数年で測定される。代替的に、いくつかの実施形態では、有効な応答は、対象の症状が静的なままであることである。適応症の処置のさらなる指標は、以下で詳述される。
いくつかの実施形態では、予防方法での治療薬の投与は、望ましくない疾患または障害の症状が現れる前に行われ、それにより、疾患または障害は、予防されるか、または代替的にその進行が遅延される。このため、予防方法と併せて使用するとき、「治療上有効な」という用語は、処置後に、(平均して)より少数の対象が、望ましくない疾患または障害を発症するか、症状の重症度を進行させることを意味する。
いくつかの実施形態では、組成物中の活性成分の量、組成物製剤、および投与形態は、対象に対し過度に毒性となることなく、各対象に対する望ましい治療応答を達成するのに有効な量の活性成分を提供するように変動される因子の中にある。選択された用量値は、利用する特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、利用する特定の化合物の***または代謝の速度、処置の持続時間、利用する特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または材料、処置される対象の年齢、性別、体重、状態、全身健康、食事、および既往歴、ならびに医療分野で周知の同様の因子を含む様々な因子に左右される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体および抗原結合フラグメントは、様々な投与量で様々な時間枠にわたり、対象に投与される。非限定的な用量として、約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kg、約100mg/kg、約125mg/kg、約150mg/kg、約175mg/kg、約200mg/kg、またはこれらの間の任意の整数が挙げられる。加えて、抗体または抗原結合フラグメントの投与は、いくつかの実施形態では、週2回、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、6週間ごと、8週間ごと、12週間ごと、またはこれらの中の週の組合せで行われる。例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントを4週間にわたり週1回または2回投与し、続いて2週間治療を行わないといった投与サイクルも、企図される。例えば、本明細書に記載の用量および毎週のサイクルの異なる組み合わせを含む追加の投与サイクルも、本開示の範囲内で企図される。
いくつかの実施形態では、組成物の治療有効な量は、疾患の重篤度、ならびに処置される対象の体重および全身状態により変動し、左右されるが、一般的に、適用ごとに約1.0μg/kg~約100mg/kg、約10μg/kg~約30mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、または約1mg/kg~約10mg/kgの範囲にある。投与は、障害または状態に対する応答、および対象の処置に対する忍容性に応じ、必要に応じて、毎日、隔日、毎週、月2回、毎月、あるいはこれよりも多いか少ない頻度で行われる場合がある。いくつかの実施形態では、4、5、6、7、8、10、12週以上などの長期間にわたる維持投与が、所望の障害の症状の抑制が生じるまで必要とされ、用量は必要に応じて調整される。この療法の進捗は、従来技法およびアッセイにより容易にモニタリングされる。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、0.01mg/kg~100mg/kgの範囲の用量で毎日~毎週~毎月(例えば、毎日、隔日、3日ごと、または週2、3、4、5、または6回)の頻度、好ましくは0.1~45mg/kg、0.1~15mg/kg、または0.1~10mg/kgの範囲の用量で週2または3回、あるいは最大45mg/kgを月に1回、生理溶液中で静脈内投与される。
応答は、対象が、病気の徴候または症状の部分的または全体的な緩和あるいは減少を経験するときに達成され、具体的には生存の延長が挙げられるが、これに限定されるものではない。予想される無増悪生存期間は、例えば、再発の回数、疾患の段階、および他の因子を含む予後因子に応じて、数か月から数年で測定される。生存の延長には、少なくとも1か月(mo)、少なくとも約2か月(mos.)、少なくとも約3mos.、少なくとも約4mos.、少なくとも約6mos.、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、またはそれより長い時間などの時間が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、全生存率はまた、数か月から数年で測定される。いくつかの実施形態では、対象の症状は、静的なままであるか、または低下する。
場合により、当業者を含む医師または獣医師は、必要な組成物の有効量(ED50)を容易に判定かつ処方する。例えば、医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するのに必要なレベルよりも低レベルで組成物中に利用される化合物の投与を開始し、所望の効果を達成するまで用量を段階的に増やすことができる。代替的に、いくつかの実施形態では、用量は一定のままである。
いくつかの実施形態では、他の抗体、小分子治療薬、および/または他の薬剤は、同時または連続投与のために別々の組成物中で組み合わされる。一実施形態では、同時投与は、同時に、または互いに30分以内に投与される1つ以上の組成物を含む。いくつかの実施形態では、投与は、同じ部位または異なる部位で行われる。
いくつかの実施形態では、このような成分の毒性および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%に対する致死量)とED50(集団の50%に治療上有効な用量)を求めるために、細胞培養物または実験動物を対象とする標準の薬学的手順により求められる。いくつかの実施形態では、毒性効果と治療効果との用量比が治療指数であり、これは、LD50/ED50の比として表される。いくつかの実施形態では、毒性の副作用を呈する化合物が使用されるが、健康な細胞に対して起こり得る損傷を最小限に抑え、それにより副作用を減少させるために、影響を受けた組織部位に対してこのような化合物を標的とする送達系をデザインすることに、注意を払う必要がある。
細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータは、いくつかの実施形態では、ヒトを対象とする使用のための用量範囲を製剤化するのに使用される。このような化合物の用量は、毒性がほとんどまたはまったく無いED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。いくつかの実施形態では、投与量は、利用される剤形および使用される投与経路に依存して、この範囲内で変動する。本開示の方法で使用されるあらゆる化合物において、治療上有効用量は、いくつかの実施形態では、細胞培養アッセイから最初に推定される。いくつかの実施形態では、用量は、細胞培養物において判定されるように、IC50を含む循環血漿中濃度配列(すなわち、最大半量阻害を達成する試験化合物の濃度)を達成するために動物モデルにおいて製剤化される。血漿中の値は、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定される。場合により、このような情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に判定するために使用される。
いくつかの実施形態では、本開示は、癌患者を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に記載の抗体を治療上有効量で患者に投与する工程を含み、さらに、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、またはサイトカイン療法から選択される抗癌療法で対象を処置する工程を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメント、および別の抗癌療法は、同時または連続的に施される。
診断製品および方法
いくつかの実施形態では、本明細書には、患者の処置状態を評価するために、あるいは、本明細書に記載の疾患および障害など、M2マクロファージまたはTAMの活性に関連もしくは相関される疾患または障害を診断するために、試料または対象におけるhuCD163タンパク質またはM2マクロファージを検出する方法が、開示される。
可溶性huCD163タンパク質、細胞または組織によるhuCD163タンパク質の発現、あるいはM2マクロファージの存在または活性を対象とするin vivoでの検出、診断、またはモニタリングでは、対象は、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントを投与され、抗体または抗原結合フラグメントは、検出可能部分に結合されている。いくつかの実施形態では、検出可能な部分は、限定されないが、磁気共鳴画像法(MRI)、蛍光、ラジオイメージング、内視鏡、腹腔鏡、または血管内カテーテルにより(すなわち、光活性剤の検出を介して)供給される光源、光走査、陽電子放射断層撮影(PET)走査、全身核磁気共鳴(NMR)、ラジオシンチグラフィー、単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)、標的近赤外領域(NIR)走査、X線、超音波などの当技術分野で認識されている方法を用いて、可視化される。このような方法を使用して化合物を検出するためのラベルも、当技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、検出可能な部分の可視化により、M2マクロファージ活性またはhuCD163タンパク質を発現する別の細胞の活性に関連する疾病または疾患の検出、診断、および/またはモニタリングが可能となる。所望の標的タンパク質、すなわちhuCD163タンパク質に特異的な抗体を利用する追加の診断アッセイは、当該技術分野で知られており、本明細書でも企図される。
in vitroでの検出法では、対象から得られる試料には、血液、組織生検試料、およびこれらに由来する流体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
このため、本開示は、疾患または障害に関連するM2マクロファージまたはTAMマクロファージのレベルを検出または診断するのに有用であり、治療的処置の必要性を示す場合のある抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。他の実施形態では、抗体は、第2の薬剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、このような薬剤は、例えばレポーター分子または検出可能なラベルなどの分子あるいは部分である。かかる検出方法のための検出可能なラベル/部分は、当該技術分野で知られており、以下に詳述される。レポーター分子は、例えばアッセイを使用して検出される任意の部分である。ポリペプチドにコンジュゲートされているレポーター分子の非限定的な例として、酵素、放射性標識、ハプテン、蛍光ラベル、リン光分子、化学発光分子、発色団、発光分子、光親和性分子、ビオチンなどの着色粒子またはリガンドが挙げられる。いくつかの実施形態では、検出可能なラベルは、その特異的な機能的特性、および/または化学的特性に起因して検出される化合物および/または要素を含み、その使用により、それらが付着されるポリペプチドが、所望される場合に検出および/またはさらに定量化されることが可能となる。多くの適切な検出可能な(画像化)薬剤は、当該技術分野で知られており、同じくそれらのポリペプチドへの付着方法も知られている。
ポリペプチドは、いくつかの実施形態では、フルオレセイン、R-フィコエリトリン、およびビオチンなどの広範な蛍光色素、クエンチャー、およびハプテンにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、コンジュゲーションは、ポリペプチド合成中、またはポリペプチドが合成および精製された後のいずれかに行われる。
代替的に、抗体、抗原結合フラグメント、または結合タンパク質は、いくつかの実施形態では、蛍光部分とコンジュゲートされる。蛍光部分(例えば、R-フィコエリトリン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)など)でポリペプチドをコンジュゲートすることは、例えば、当該技術分野で認識される技法を使用して達成される。多数の市販の蛍光色素および色素コンジュゲーションキットは、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)などの特定用途のために市販されている。
非限定的な一実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、in vitroおよび/またはin vivoでM2マクロファージ、あるいは可溶性または結合型huCD163への抗体の結合を可視化するのに使用される抗原への結合の免疫検出のために、放射性核種、染料、造影剤、または蛍光薬剤などの検出可能なラベルに付随(コンジュゲート)される。
放射性標識の非限定的な例として、例えば、32P、33P、43K、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81mKr、87mSr、90Y、97Ru、99Tc、99mTc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb、121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Bi、および213Biが挙げられる。いくつかの実施形態では、放射性標識は、抗体イメージングの技術分野で知られる従来の化学を使用して化合物に付着される。放射性標識化合物は、in vitro診断技法、in vivo放射撮像技法、および放射免疫療法において有用である。
本明細書に記載の抗体および抗原結合フラグメントの組成物は、いくつかの実施形態では、非治療薬(例えば、親和性精製剤)としても使用される。
抗体技術
当業者により理解されるように、本明細書中の抗体、ならびにこれを調製および使用する方法の全体的な記述は、個々の抗体ポリペプチド成分および抗体フラグメントにも適用される。
本開示の抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。しかし、好ましい実施形態では、これらはモノクローナルである。特定の実施形態では、本開示の抗体は、ヒト抗体である。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を産生する方法は、当該技術分野で知られている。
抗体、抗原結合フラグメント、およびM2マクロファージにより発現されるhuCD163に結合する他のタンパク質は、このような方法を用いて生成され、いくつかの実施形態では、それらの結合親和性、結合活性、および調節能の1つ以上を試験される。
いくつかの実施形態では、従来の方法は、huCD163タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを特定するために利用される。いくつかの実施形態では、抗体および抗原結合フラグメントは、結合親和性、会合速度、解離速度、および結合活性のうちの1つ以上を評価される。このようなパラメータの測定は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ELISpotアッセイ、スキャッチャード解析、表面プラズモン共鳴(例えばBIACORE)分析などを含むがこれらに限定されない結合アッセイ、競合結合アッセイなどを使用して達成される。非限定的な一実施形態では、huCD163タンパク質に結合する特異的な抗体または抗原結合フラグメントの結合能を測定するために、ELISAアッセイが使用される。表面プラズモン共鳴技術は、Liljeblad et al.,Glyco J 17:323-9(2000)に記載されている。
いくつかの実施形態では、本開示による抗体は、以下に詳述されるように、当該技術分野で利用可能なベクターおよび方法を用いて組換えにより産生される。いくつかの実施形態では、ヒト抗体は、in vitroで活性化されたB細胞によっても産生される(米国特許第5,567,610号および5,229,275号を参照)。
いくつかの実施形態では、ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体の全レパートリーを産生可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)において産生される。例えば、キメラおよび生殖系列突然変異マウスの抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合欠失は、完全な内因性抗体産生の阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異マウスへのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移行は、抗原チャレンジに際してヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovits et al.,Proc Natl Acad Sci USA,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature 362:255-58(1993)、Bruggemann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993)、米国特許第5,545,806号、5,569,825号、5,591,669号、5,545,807号、およびWO97/17852を参照されたい。いくつかの実施形態では、このような動物は、本開示のポリペプチドを含むヒト抗体を産生するように遺伝子操作される。
抗体は、例えば、飽和硫酸アンモニウム沈殿法、オイグロブリン沈殿法、カプロン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52)、あるいは抗IgカラムまたはプロテインA、G、もしくはLカラムを用いた親和性クロマトグラフィーなどの、当業者に公知の方法を用いて、培養上清または腹水(動物中で産生される場合)から単離かつ精製される。
上述のように、本開示は、抗体フラグメントをさらに提供する。特定の状況では、抗体全体ではなく、抗体フラグメントを使用するという利点が存在する。例えば、より小さなサイズのフラグメントでは、速やかなクリアランスが可能となり、これにより、いくつかの実施形態では、固形腫瘍などの特定の組織へのアクセスが改善される。抗体フラグメントの例として、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント、ダイアボディ、線形抗体、一本鎖抗体、ならびに抗体フラグメントから形成される多特異性抗体が挙げられる。
抗体フラグメントを産生するために様々な技法が開発されてきた。従来、これらのフラグメントは、無傷の抗体のタンパク質分解消化を介して得られた(例えば、Morimoto et al.,J Biochem Biophys Methods 1992 24(1-2):107-17、およびBrennan et al.,Science 1985 229:81を参照)。しかし、これらフラグメントは、いくつかの実施形態では、組換え宿主細胞により直接産生されるようになった。いくつかの実施形態では、Fab、Fv、およびScfv抗体フラグメントはすべて、大腸菌の中で発現されるとともにそこから分泌されるため、これらフラグメントを大量に容易に産生することができる。いくつかの実施形態では、Fab’-SHフラグメントは、大腸菌から直接回収され、化学的に結合されてF(ab’)2フラグメントを形成する(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))。別の手法によれば、いくつかの実施形態では、F(ab’)2フラグメントは、組換え宿主細胞培養物から直接単離される。IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られるサルベージ受容体結合エピトープを含み、in vivo半減期が増加したFabおよびF(ab’)2フラグメントが、米国特許第5,869,046号および6,121,022号に記載されている。他の抗体フラグメントの産生技法は、当業者に明白である。
他の実施形態では、選択対象の抗体は、一本鎖Fvフラグメント(scFv)である。WO93/16185、米国特許第5,571,894号と5,587,458号を参照されたい。FvとsFvは、定常領域を欠く無傷の結合部位を備える唯一の種である。このため、これらは、in vivoでの使用中の非特異的結合の低下に適している。いくつかの実施形態では、sFv融合タンパク質は、sFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにおいてエフェクタータンパク質の融合をもたらすように構築されている。上述のAntibody Engineering,ed.Borrebaeckを参照されたい。いくつかの実施形態では、抗体フラグメントは、例えば米国特許第5,641,870号に記載されるような「線形抗体」でもある。いくつかの実施形態では、このような線形抗体フラグメントは、単特異性または二重特異性である。
二重特異性またはその他多重特異性抗体の作製方法は、当該技術分野で公知であり、化学的架橋、ロイシンジッパーの使用(Kostelny et al.,J Immunol 148:1547-53(1992))、ダイアボディ技術(diabody technology)(Hollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90:6444-8(1993))、scFv二量体(Gruber et al.,J Immunol 152:5368(1994))、線形抗体(Zapata et al.,Protein Eng 8:1057-62(1995))、およびキレート化組換え抗体(Neri et al.,J Mol Biol 246:367-73(1995))が挙げられる。
従来の完全長二重特異性抗体の産生は、2つの鎖の特異性が異なる、2つの免疫グロブリン重鎖と軽鎖との対の共発現に基づく(Millstein et al.,Nature 305:537-9(1983))。免疫グロブリン重鎖と軽鎖の無作為な分類に起因して、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は、可能性として10個の異なる抗体分子の混合物を産生し、そのうち1つだけが正確な二重特異性構造を有する。正確な分子の精製は、例えば、親和性クロマトグラフィーにより行われる。同様の手順が、WO93/08829およびTraunecker et al.,EMBO J 10:3655-9(1991)に開示されている。
別の手法によれば、所望の結合特異性を持つ抗体可変領域(抗体-抗原結合部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。好ましくは、この融合は、ヒンジの少なくとも一部、CH2、およびCH3領域を含むIg重鎖定常ドメインに対して行われる。軽鎖結合に必要な部位を伴う第1の重鎖定常領域(CH1)は、融合物の少なくとも1つに存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物および必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別個の発現ベクターに挿入され、適切な宿主細胞へと共トランスフェクトされる。これにより、構築物に使用される4つのポリペプチド鎖の不均等比が最適収量の所望の二重特異性抗体をもたらす実施形態では、4つのポリペプチドフラグメント相互の比率の調整に際する柔軟性がより高くなる。しかし、均等比にある少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収量をもたらすとき、またはこの比には所望の鎖の組合せの収量に対して顕著な効果がないとき、2つまたは4つすべてのポリペプチド鎖に対するコーディング配列を、単一発現ベクターに挿入することが可能である。
二重特異性抗体は、例えば、一方の腕に第1の二重特異性を持つハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方の腕にハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖の対(第2の結合特異性をもたらす)で構成されている。二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することで容易な分離方法が得られるため、この非対称的な構造は、不要な免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物の分離を容易にする。この手法は、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体生成のさらなる詳細については、例えば、Suresh et al.,Methods Enzymol 121:210(1986)を参照されたい。
米国特許第5,731,168号に記載される別の手法によれば、いくつかの実施形態では、抗体分子対間の界面は、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大限にするように操作される。好ましいインターフェースは、CH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面の1つ以上の小アミノ酸側鎖は、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)と置き換えられる。第2の抗体分子の界面には、大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)と置き換えることにより、大きな側鎖と同一または類似の大きさの代償的「空洞」が形成される。これにより、ホモ二量体などの他の不要な最終産物よりもヘテロ二量体の収率を増加させるための機構が提供される。
二重特異性抗体は、架橋または「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体のうち一方はアビジンに結合され、他方はビオチンに結合される。このような抗体は、例えば、不要な細胞に対する免疫系細胞の標的化(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染症の処置(WO91/00360、WO92/20373、およびEP03089)のために提唱されている。いくつかの実施形態では、ヘテロコンジュゲート抗体は、あらゆる都合の良い架橋方法を使用して作製される。適切な架橋剤は、当技術分野で周知であり、多くの架橋技法とともに米国特許第4,676,980号に開示されている。別の方法は、scFvのC末端にてストレプトアビジンコード配列を付加することにより四量体を作製するようにデザインされている。ストレプトアビジンは4つのサブユニットで構成されているため、scFv-ストレプトアビジンが折り畳まれると、4つのサブユニットが会合して四量体を形成する(Kipriyanov et al.,Hum Antibodies Hybridomas 6(3):93-101(1995))。
二重特異性抗体を作製する別の手法によれば、いくつかの実施形態では、抗体分子対間の界面は、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大限にするように操作される。1つの界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を備えている。この方法では、第1の抗体分子の界面の1つ以上の小アミノ酸側鎖は、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)と置き換えられる。第2の抗体分子の界面には、大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)と置き換えることにより、大きな側鎖と同一または類似の大きさの代償的「空洞」が形成される。これにより、ホモ二量体などの他の不要な最終産物よりもヘテロ二量体の収率を増加させるための機構が提供される。WO96/27011を参照されたい。
抗体フラグメントから二重特異性抗体を生成する技法も、この文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学的結合を使用して調製される。Brennan et al.,Science 229:81(1985)には、無傷の抗体をタンパク分解により切断してF(ab’)2フラグメントを産生する手順が記載されている。これらフラグメントは、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、ビシナルジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を妨げる。次いで、生成されたFab’フラグメントは、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。次いで、Fab’-TNF誘導体のうち1つは、メルカプトエチルアミンでの還元によりFab’-チオールに再変換され、等モル量の他のFab’-TNF誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。いくつかの実施形態では、産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用される。
近年の進歩により、大腸菌からのFab’-SHフラグメントの直接回収が容易となり、このフラグメントは、例えば化学的に結合されて二重特異性抗体を形成する。Shalaby et al.,J Exp Med 175:217-25(1992)には、ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の産生が記載されている。各Fab’フラグメントは、大腸菌から別々に分泌され、in vitroでの指向性化学結合に晒されて、二重特異性抗体を形成した。このように形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体および正常なヒトT細胞を過剰発現する細胞に結合するほか、ヒト***腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を誘発することができた。
組換え細胞培養物から直接二重特異性抗体フラグメントを作製して単離するための様々な技法も、記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して産生されている。Kostelny et al.,J Immunol 148(5):1547-53(1992)を参照されたい。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab’部分に結合された。抗体ホモ二量体は、ヒンジ領域で還元されて単量体を形成し、次いで再酸化されて、抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は、いくつかの実施形態では、抗体ホモ二量体を産生するために使用される。
抗体の特定と調製
抗体、その可変領域、または抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列は、いくつかの実施形態では、従来のシーケンシング技法を用いて判定され、抗体の組換え産生のために発現ベクターへとサブクローン化される。これは、対象、例えば癌患者の血液から単核細胞を取得し、この単核細胞からB細胞クローンを産生し、B細胞を誘導して抗体産生プラズマ細胞とし、このプラズマ細胞により産生される上清をスクリーニングして抗体が含有されているかどうか判定することにより、達成される。本開示の抗体の特異性を有する他の抗体の特定は、いくつかの実施形態では、同様の方法を用いて達成される。例えば、抗体を産生するB細胞クローンが一旦特定されると、抗体の可変領域またはその一部をコードするDNAをクローン化するために、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)が実施される。次いで、これら配列は、ヒト抗体の組換え産生に適した発現ベクターへとサブクローン化される。いくつかの実施形態では、結合特異性は、抗体または組換え抗体の、M2細胞またはM2細胞により発現されるヒトCD163ポリペプチドを発現する他の細胞への結合能を判定することにより確認される。
本明細書に記載の方法の特定の実施形態では、末梢血またはリンパ節から単離されたB細胞は、例えば、CD19陽性であることに基づき選別され、例えば96、384、または1536ウェルの構成で、例えばウェルごとの単一細胞特異性と同程度の低さで播種される。細胞は、抗体産生細胞、例えばプラズマ細胞に分化するよう誘導され、培養上清は採取され、例えばFMATまたはFACS分析を使用して、その表面上に標的ポリペプチドを発現する細胞への結合を試験される。次いで、陽性ウェルは、全ウェルRT-PCRに晒されて、クローン娘プラズマ細胞により発現されるIgG分子の重鎖および軽鎖可変領域を増幅する。結果生じるPCR産物は、重鎖および軽鎖可変領域、またはその一部をコードするものであり、組換え発現のためにヒト抗体発現ベクターへサブクローン化される。次いで、結果生じる組換え抗体は、その本来の結合特異性を確認するために試験され、さらにいくつかの実施形態では、他の細胞またはタンパク質に対する交差反応性を試験される。
このため、一実施形態では、抗体を特定する方法は、以下のように実施される。先ず、完全長またはほぼ完全長のCD163cDNAが、CD163ポリペプチドの発現のために細胞株へとトランスフェクトされる。次に、個々のヒト血漿または血清試料が、細胞発現ポリペプチドに結合する抗体について試験される。そして最後に、血漿または血清陽性の個体から得たMAbは、同じ細胞発現CD163ポリペプチドへの結合を特徴づけられる。いくつかの実施形態では、MAbの細密な特異性に対するさらなる定義が、この時点で実施される。
本開示の抗体またはその部分をコードするポリヌクレオチドは、いくつかの実施形態では、当該技術分野で利用可能および本明細書に記載の方法により、抗体を発現する細胞から単離される。この方法には、ヒト抗体ポリペプチドの保存領域に特異的なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応による増幅が挙げられる。例えば、軽鎖および重鎖可変領域は、WO92/02551、米国特許第5,627,052号、またはBabcook et al.,Proc Natl Acad Sci USA 93:7843-48(1996)に記載される分子生物学的技法により、B細胞からクローン化される。ある実施形態では、抗体を発現するクローン娘プラズマ細胞により発現されるIgG分子の重鎖および軽鎖の両可変領域のすべてまたは1つの領域をコードするポリヌクレオチドが、サブクローン化され、配列決定される。いくつかの実施形態では、コードされたポリペプチドの配列は、ポリヌクレオチド配列から容易に判定される。
本開示のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドは、発現ベクターへとサブクローン化されて、当該技術分野で知られ本明細書に記載の手順を用いて、本開示の抗体およびポリヌクレオチドを組換えにより産生する。
いくつかの実施形態では、CD163ポリペプチドまたはM2細胞に対する抗体(またはそのフラグメント)の結合特性は、一般的に、例えば免疫組織化学(IHC)および/または蛍光活性化細胞選別(FACS)などの免疫蛍光ベースのアッセイを含む免疫検出法を用いて、判定および評価される。いくつかの実施形態では、免疫測定法は、抗体がCD163ポリペプチドまたはM2マクロファージに特異的に結合するかどうかを判定するための制御と手順を含むが、対照細胞、例えばM1細胞、または対照タンパク質を発現するようトランスフェクトされる宿主細胞を認識も交差反応もしない。
CD163ポリペプチドまたはM2マクロファージに対する抗体を産生する患者を特定するための血清の事前スクリーニングに従い、本開示の方法は、一般的に、事前に患者または対象から得られる生物学的試料からのB細胞の単離または精製を含む。いくつかの実施形態では、患者または対象は、目的の癌や特定の疾患を抱える疑いがある、もしくは抱えていると現在診断されているか既に診断されている、あるいは、癌や疾患がないと考えられる。一般的には、患者または対象は、哺乳動物であり、特定の実施形態ではヒトである。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、リンパ節またはリンパ節組織、胸水、末梢血、腹水、腫瘍組織、または脳脊髄液(CSF)を含むがこれらに限定されない、B細胞を含有する試料である。いくつかの実施形態では、B細胞は、腫瘍生検または特定の疾患により影響を受ける他の生物学的試料といった異なる種類の生物学的試料から単離される。しかし、いくつかの実施形態では、B細胞を含むあらゆる生物学的試料は、本開示の実施形態のいずれかに使用されることが理解される。
一旦単離されると、B細胞は、例えば、形質細胞、形質芽細胞、またはプラズマ細胞へのB細胞の増殖あるいは発達を支持する条件下で、B細胞を培養することにより抗体を産生するよう誘導される。次に、抗体は、標的抗原、例えば特定の組織、細胞、またはポリペプチドに特異的に結合する抗体を特定するために、一般的に高スループット技法を使用してスクリーニングされる。ある実施形態では、特異的抗原、例えば抗体に結合した細胞表面ポリペプチドは知られていないが、他の実施形態では、抗体に特異的に結合した抗原が知られている。
本開示によれば、B細胞は、いくつかの実施形態では、生物学的試料、例えば腫瘍、組織、末梢血、またはリンパ節試料から、当該技術分野で知られかつ利用可能な任意の手段により単離される。B細胞は、一般的にその表面上でのB細胞特異的マーカー、例えばCD19、CD138、および/または表面IgGの存在に基づきFACSにより選別される。しかし、いくつかの実施形態では、例えばCD19磁気ビーズまたはIgG特異的磁気ビーズを用いたカラム精製、その後のカラムからの溶出など、当該技術分野で知られる他の方法が、利用される。しかし、いくつかの実施形態では、任意のマーカーを利用するB細胞の磁気単離は、特定のB細胞の損失をもたらす。それゆえ、ある実施形態では、単離された細胞は選別されず、代わりに、腫瘍から単離されたFicoll精製単核細胞は、ウェルごとの適切または所望の数の特異性に直接播種される。
抗体を産生するB細胞を特定するために、B細胞は、一般的に低密度(例えば、ウェルごとの単一細胞特異性、ウェルごとに1~10の細胞、ウェルごとに10~100の細胞、ウェルごとに1~100の細胞、ウェルごとに1~100の細胞、ウェルごとに10未満の細胞、またはウェルごとに100未満の細胞)で、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートの中、例えば、96、384、または1536のウェル構成で播種される。最初にB細胞がウェルごとに1より多くの細胞密度で播種されると、本開示の方法は、ウェルごとの単一細胞特異性が達成されるまで抗原特異的抗体を産生すると特定されるウェルにおいて引き続き細胞を希釈する工程を含み、それにより、いくつかの実施形態では、抗原特異的抗体を産生するB細胞の特定を容易にする。いくつかの実施形態では、細胞上清またはその一部、および/あるいは細胞は、今後の試験および後の抗体ポリヌクレオチドの回収のために冷凍保存される。
ある実施形態では、B細胞は、B細胞による抗体の産生に有利な条件下で培養される。例えば、B細胞は、B細胞の増殖と分化に有利な条件下で培養されて、抗体産生形質芽細胞、形質細胞、またはプラズマ細胞をもたらす。特定の実施形態では、B細胞は、リポ多糖(LPS)またはCD40リガンドなどのB細胞マイトジェンの存在下で培養される。特異的な一実施形態では、B細胞は、フィード細胞、および/またはCD40リガンドなどの他のB細胞活性化因子で培養されることにより、抗体産生細胞に分化される。
細胞培養上清、またはそこから得られる抗体は、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のものを含む当技術分野で利用可能な慣例的方法を使用して、標的抗原への結合能を試験される。特定の実施形態では、培養上清は、高スループット方法を用いて、標的抗原に結合する抗体の存在を試験される。例えば、B細胞は、複数の細胞上清を同時にサンプリングして、標的抗原に結合する抗体の存在を試験するために、ロボティックプレートハンドラー(robotic plate handler)が使用されるようなマルチウェルマイクロタイターディッシュ中で培養される。特定の実施形態では、抗原は、抗体/抗原複合体の捕捉を容易にするために、ビーズ、例えば常磁性ビーズまたはラテックスビーズに結合される。他の実施形態では、抗原および抗体は(異なるラベルで)蛍光標識され、標的抗原に結合する抗体の存在を特定するためにFACS解析が実施される。一実施形態では、抗体結合は、FMAT(商標)解析および計測手段を用いて判定される(Applied Biosystems,Foster City,Calif.)。FMATは、高スループットスクリーニング用の蛍光マクロ共焦点プラットフォームであり、これにより、生きた細胞またはビーズを使用したミックスアンドリード(mix-and-read)非放射性アッセイが可能となる。
特定の標的抗原(例えば、癌組織または細胞、感染性物質などの生体試料)に対する抗体の結合を、対照試料(例えば、正常細胞、別の種由来の比較対象細胞、異なる癌組織または細胞、異なる感染性物質などの生物学的試料)に対する抗体の結合を比較する場合、いくつかの実施形態では、対照試料に結合する量と比較して少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍多く抗体が、特定の標的抗原に結合する場合に、抗体は特定の標的抗原に優先的に結合すると考えられる。
抗体鎖、その可変領域、またはフラグメントをコードするポリヌクレオチドは、いくつかの実施形態では、当該技術分野で利用可能な任意の手段を利用して細胞から単離される。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例えば、当該技術分野で利用可能な慣例的手順を用いて、ポリメラーゼ配列またはその補体をコードする重鎖あるいは軽鎖に特異的に結合するオリゴヌクレオチドプライマーを使用する逆転写PCR(RT-PCT)を用いて単離される。一実施形態では、陽性ウェルは、全ウェルRT-PCRに晒されて、クローン娘プラズマ細胞により発現されるIgG分子の重鎖および軽鎖可変領域を増幅する。いくつかの実施形態では、これらのPCR産物は配列決定され、次いで、重鎖および軽鎖可変領域またはその部分をコードする産物が、ヒト抗体発現ベクターへとサブクローン化され、当該技術分野における慣例的手順により組換え発現される(例えば、米国特許第7,112,439号を参照)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるようなM2マクロファージに特異的な抗体またはそのフラグメントをコードする核酸分子は、伝播され、核酸の切断、ライゲーション、形質転換、およびトランスフェクションに対する様々な周知の手順により発現される。このため、ある実施形態では、抗体フラグメントの発現は、大腸菌などの原核生物宿主細胞に好ましい(例えば、Pluckthun et al.,Methods Enzymol 178:497-515(1989)を参照)。他の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントの発現は、酵母菌などの真核生物宿主細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiae、S.pombe、Pichia pastoris)、動物細胞(哺乳動物細胞を含む)、または植物細胞に好ましい。適切な動物細胞の例として、骨髄腫、COS、CHO、またはハイブリドーマ細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。植物細胞の例として、タバコ、トウモロコシ、大豆、およびコメ細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、当業者に知られる、および本開示に基づく方法により、核酸ベクターは、特定の宿主系に異質配列を発現させるためにデザインされ、次いで、腫瘍特異的抗体(またはそのフラグメント)をコードするポリヌクレオチド配列が挿入される。規制要素は、特定の宿主に応じて変動する。
いくつかの実施形態では、可変および/または定常領域をコードするポリヌクレオチドを含有する1つ以上の複製可能な発現ベクターが調製され、適切な細胞株、例えば、マウスNSO株などの非産生骨髄細胞株や、大腸菌などの細菌を形質転換するために使用され、その中で抗体の産生が生じる。効率的な転写と翻訳を得るために、各ベクター中のポリヌクレオチド配列は、適切な規制配列、具体的には、可変領域配列に操作可能に結合されるプロモーターおよびリーダー配列を含む必要がある。
このように抗体を産生するための特定の方法は、一般的に周知であり、慣例的に使用される。例えば、分子生物学手順は、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1989に記載されている。Sambrook et al.,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,(2001))も参照されたい。必要ではないが、特定の実施形態では、組換え抗体をコードするポリヌクレオチドの領域が、配列決定される。DNAシーケンシングは、例えば、当技術分野で知られる任意の方法で、または任意のシステムを使用して実施される。基本的なシーケンシング技術は、例えば、Sanger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 74:5463(1977))、およびthe Amersham International plc sequencing handbookとその改訂版に記載されている。
特定の実施形態では、結果生じる組換え抗体またはそのフラグメントは、その後、その元の特異性を確認するために試験され、いくつかの実施形態では、例えば関連するポリペプチドとの交差反応をさらに試験される。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法に従い特定または産生される抗体は、従来の方法を使用して、他のエフェクター機能を内在化する能力を試験される。
パッケージ、キット、および事前充填容器
本明細書にはまた、上述の1つ以上の化合物を含有するキットも提供される。いくつかの実施形態では、このキットは、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを適切な容器手段に入れて含んでいる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物を含む容器手段が、提供される。いくつかの実施形態では、この容器手段は、例えば液体または凍結乾燥組成物を収容する任意の適切な容器であり、バイアル、シリンジ、ボトル、静脈内(IV)バッグ、またはアンプルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、シリンジは、0.5cc、1cc、2cc、5cc、10cc、またはそれより多くを含むがこれらに限定されない任意の体積にある、対象への注射に適した液体を保持する。
本明細書には、本明細書に記載の一組成物または複数の組成物を含むキットが、提供される。いくつかの実施形態では、本明細書には、本明細書に記載の抗体および抗癌療法薬を含む、癌の対象を処置するためのキットが提供される。
いくつかの実施形態では、本明細書には、本明細書に記載の抗体と、容器に添付または包装されるラベルとを含む癌処置用のキットが提供され、ラベルには、抗体と抗癌療法薬との併用が記載されている。
いくつかの実施形態では、本明細書には、抗癌療法薬と、容器に添付または包装されるラベルとを含む癌処置用のキットが提供され、ラベルには、抗癌療法薬と本明細書に記載の抗体との併用が記載されている。
いくつかの実施形態では、キットの容器手段は、一般的に少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、アンプル、シリンジ、静脈内(IV)バッグ、および/または他の容器手段を含み、その中に少なくとも1つのポリペプチドが配され、および/または好ましくは適当に等分される。本明細書には、本明細書に記載の組成物を含む容器手段が提供される。
いくつかの実施形態では、キットは、市販のために、少なくとも1つの融合タンパク質、検出可能な部分、レポーター分子、および/または任意の他の試薬を厳重に閉じ込めた状態で含んでいる。いくつかの実施形態では、このような容器は、所望のバイアルが保持される注射容器および/または吹付け成型されたプラスチック容器を含む。いくつかの実施形態では、キットはまた、キット中の材料の使用に関する印刷物を含む。
パッケージおよびキットはさらに、いくつかの実施形態では、医薬製剤中の緩衝化剤、防腐剤、および/または安定化剤を含む。いくつかの実施形態では、キットの各構成要素は、個々の容器内に封入されており、様々な容器はすべて、1つのパッケージ内にあってもよい。いくつかの実施形態では、本開示のキットは、低温貯蔵または室温貯蔵のためにデザインされる。
加えて、いくつかの実施形態では、調製物は、キットの貯蔵寿命を増加させる安定剤を含有し、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)を含む。組成物が凍結乾燥される場合、キットは、いくつかの実施形態では、凍結乾燥された調製物を再構成するためにさらなる溶液の調製物を含有する。許容可能な再構成溶液は、当該技術分野で周知であり、例えば、薬学的に許容可能なリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、パッケージおよびキットはさらに、例えばELISAアッセイなどのアッセイ用の1つ以上の構成要素を含む。本出願中の試験対象である試料として、例えば、血液、血漿、組織切片、および分泌物、尿、リンパ液、ならびにそれらの産物が挙げられる。いくつかの実施形態では、パッケージおよびキットは、試料収集のための1つ以上の構成要素(例えば、シリンジ、カップ、綿棒など)をさらに含む。
いくつかの実施形態では、パッケージおよびキットは、US FDAまたは同様の規制当局により求められる情報、例えば、製品説明、投与量、投与形態、および/または処置の適応症を特定するラベルを含む。本明細書で提供されるパッケージは、本明細書に記載される任意の組成物を含んでもよい。
「包装材料」という用語は、キットの構成要素を収容する物理的構造を指す。いくつかの実施形態では、包装材料は、構成要素を滅菌状態で維持するものであり、かかる目的のために一般的に使用される材料(例えば、紙、段ボール、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプルなど)で作製される。いくつかの実施形態では、ラベルまたはパッケージインサートは、適切な書面の説明書を含む。このため、キットは、いくつかの実施形態では、本開示の任意の方法でキット構成要素を使用するためのラベルまたは説明書をさらに含んでいる。いくつかの実施形態では、キットは、パックまたはディスペンサ中に、本明細書に記載の方法で化合物を投与するための説明書とともに化合物を含む。
またさらなる実施形態では、キットは、抗癌治療薬用の容器手段をさらに含む。
説明書には、いくつかの実施形態では、処置方法を含む本明細書に記載の任意の方法を実施するための説明書が挙げられる。さらに説明書には、良好な臨床評価項目の適応症または発生するあらゆる有害症状、あるいはいくつかの実施形態では、ヒト対象での使用のために米国食品医薬品局などの規制機関により求められる追加の情報が含まれる。
いくつかの実施形態では、説明書は、「印刷物」上に、例えば、キット内またはキットに貼り付けられた紙または厚紙上に、キットまたは包装材料に貼り付けられたラベル上に、あるいはキットの構成要素を含有するバイアルまたはチューブに取り付けられて存在する。いくつかの実施形態では、説明書はさらに、例えばCD-ROM、DVD、フラッシュメモリデバイス、ソリッドステートメモリ、磁気ディスクおよびディスクデバイス、磁気テープ、クラウドコンピューティングデバイスおよびサービスなどのコンピュータ可読媒体に含まれる。場合により、プログラムおよび命令は、媒体上で永久的に、ほぼ永久的に、半永久的に、または非一時的にコードされる。
本明細書には、本明細書に記載の組成物を含む容器手段が提供される。いくつかの実施形態では、この容器手段は、液体または凍結乾燥組成物を収容する任意の適切な容器であり、バイアル、シリンジ、ボトル、静脈内(IV)バッグ、またはアンプルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。シリンジは、0.5cc、1cc、2cc、5cc、10cc、またはそれより多くを含むがこれらに限定されない任意の体積にある、対象への注射に適した液体を保持する。
本明細書には、本明細書に記載の組成物を含むキットが、提供される。いくつかの実施形態では、本明細書には、本明細書に記載の抗体を抗癌療法薬と組み合わせてを含む、癌を処置するためのキットが提供される。
いくつかの実施形態では、本明細書には、本明細書に記載の抗体と、容器に添付または包装されるラベルとを含む癌処置用のキットが提供され、ラベルには、抗体またはその抗原結合フラグメントと抗癌療法薬との使用が記載されている。
いくつかの実施形態では、本明細書には、抗癌療法薬と、容器に添付または包装されるラベルとを含む癌処置用のキットが提供され、ラベルには、抗癌療法薬と本明細書に記載の抗体との併用が記載されている。
本開示は、例示目的のみのために提供されるが本開示をあらゆる方法で制限することを意図するものではない以下の実施例において、さらに例示される。
実施例1-特定とクローニング
チェックポイント阻害剤である抗PD-1処置に応答する患者により産生されるヒト骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)に特異的に結合する抗体を、単離してクローン化する。MDSCの免疫抑制効果を標的とし、これを逆転させる治療上の可能性を有する抗体を特定し、これにより腫瘍除去を向上させることを目的として、これらモノクローナル抗体の免疫調節特性をさらに調べた。
免疫チェックポイント阻害剤に対する部分的または完全な応答を少なくとも6か月間達成した癌患者を特定し、I-STARプラットフォームを介したメモリーB細胞レパートリー解析のために選択した。このプラットフォームでは、短期間B細胞培養システムを利用して、メモリーB細胞レパートリーを調べた。CD19およびIgG表面発現に基づき15,000を超えるメモリーB細胞を、各ドナー患者の1000万個の末梢血単核細胞(PBMC)から単離した。次に、これらメモリーB細胞を、B細胞の活性化、増殖、末端分化、および抗体分泌を促進した条件下、約1細胞/ウェルで40個の384ウェルマイクロタイタープレートに蒔いた。1細胞/ウェルの播種密度により、単一B細胞クローンの拡張が可能となり、これにより真正の抗体重鎖と軽鎖の対は、各培養ウェルから再構築することができた。高スループットおよび小型化された多重フローサイトメトリーアッセイを用いて、各ウェル中の分泌IgG抗体を、MDSCへの結合についてスクリーニングした。49個の陽性B細胞クローンを特定した。MDSC結合プロファイルおよび抗体可変領域配列に基づき優先付けを行った抗体の選択サブセットを、配列決定し、クローン化し、さらなるin vitro特徴化のために組換えIgG1として発現させた。
MDSC特異的抗体を産生するB細胞クローン由来の免疫グロブリン遺伝子の重(VH)および軽(VL)可変領域を、ファミリー特異的プライマーセットを用いたRT-PCR増幅により増幅した。陽性ファミリー特異的PCR反応から、VHまたはVL領域クローンのプールを、ヒトIgG1定常ドメイン配列に対して上流の発現ベクターへとクローン化し、その結果、そのB細胞クローンにより産生される抗体と同じ結合特徴を持つ機能的抗体を得た。DNAプラスミドをデザインし、GenScript,NJ,USAにおいて定常領域中の遺伝子合成のために要求した。これらプラスミドを、すべての起こり得る重鎖および軽鎖ファミリー特異的対において組み合わせ、これを使用してHEK293細胞を一時的にトランスフェクトした。分泌された組換え抗体を含むすべてのトランスフェクタント上清を、フローベースMDSC結合アッセイにおいてスクリーニングした。ウェルごとに1より多くのB細胞クローンを包含するウェルにおいて、複数のVHおよびVLドメイン配列を増幅させ、前述のように発現させた。次いで、MDSCスクリーンを使用して、混合培養物に見出される抗体で観察されるような結合活性を再現する重鎖と軽鎖を組み合わせたプールを特定した。全結合mAbに対するVH可変領域およびVL可変領域のDNA配列を、maxipreps(Genscript由来、およびMacherey Nagelで増幅したプラスミド)から精製したDNAを用いた複数のシーケンシング反応により確認した。
1つのB細胞クローン(重鎖VH3.30-3/IGHG1および軽鎖VK1.O12に対するGermline ID)をMDSCスクリーンから特定し、配列番号9を含む軽鎖および配列番号10を含む重鎖を含んだAB101と命名した。クローンを入手するドナーは、非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された患者であった。この患者は、化学療法に対する進行性疾患を抱えており、抗PD-1処置時には完全寛解を認めていたが採血時には依然として処置を受けていた。B細胞クローンウェルは、シーケンシングから1つの重鎖と1つの軽鎖しか有していないことを確認した。単一B細胞クローンから分泌されたIgG抗体で観察されるように、再現された抗体はさらに、MDSC上に別個の二峰性結合を有しており、このことから、抗体標的がMDSCの選択亜集団上で高度に発現されることを認めた。図1を参照されたい。緩和ブロック(組換えFcブロック10μg/mL(Abcam))および厳格ブロック(組換えFcブロック10μg/mL+1μg/mLの抗CD16、抗CD32、および抗CD64)条件での2つのMDSCドナー上の再現スクリーンからの結果から、緩和ブロック条件下で約10nmのIC50でのヒトMDSCへのAB101の用量依存的飽和結合を認めた。厳格ブロック条件下では、MFIの低下により裏付けられるように、全体的なAB101の結合低下を認めた。
CD163は、単球/マクロファージ系列由来の細胞のマーカーである。in vitroで分化したMDSC上でのCD163の発現は、二峰性であると報告されている。AB101の二峰性結合は、CD163発現と相関する可能性があると仮定した。この仮説を試験するために、in vitroのMDSCを作製し(実施例11を参照)、実施例8に記載のように抗CD163(BioLegend 333611)およびAF647コンジュゲートAB101と共染色し、FACSにより結合を解析した。先ず、細胞をCD163高または低としてゲート化し(gated)、次いで、様々な濃度のAB101またはヒトIgG1アイソタイプ対照との結合を調べた。AB101抗体が結合していた細胞の亜集団は、CD163Hi細胞であった。図2を参照されたい。
実施例2-自己単球およびT細胞の単離
本実施例は、自己単球およびT細胞の単離を示す。当該技術分野で一般的に使用される技法を使用して、ヒト単球およびT細胞を入手した。血小板アフェレーシス収集プロセス中に、LeukoReduction System(LRS)チャンバとして知られる統合チャンバ内に白血球(WBC)を捕捉し、そこからヒト単球およびT細胞を単離した。標準密度勾配遠心分離(Ficoll(商標)Paque Premium 1.073,GE Healthcare No.17-5449-52)により、末梢血単核細胞(PBMC)をLRS試料から精製した。上清は廃棄し、ペレットを20mL Easysep(商標)緩衝液(StemCell Technologies No.20144)の中で再懸濁して、PBMCを列挙し、単球およびT細胞をさらに単離した。
製造業者の指示に従い、EasySepヒト単球単離キット(Stem Cell No.19359)を使用して、単球を単離した。
製造業者の指示に従い、それぞれヒトCD3+T細胞単離キット(StemCell 19051)、EasySep(商標)ヒトCD4+T細胞単離キット(StemCell No.17952)、EasySep(商標)ヒトCD8+T細胞単離キット(StemCell No.17953)を使用して、CD3、CD4、またはCD8の全T細胞を単離した。これら陰性選択キットでは抗体を使用し、除去の対象である望ましくない細胞型を標識し、所望の標的細胞を試料から単離することを可能にした。
実施例3-免疫抑制性骨髄細胞へのAB101特異的結合
特異性を評価するために、遠赤蛍光色素AF647にコンジュゲートした本発明の抗体、抗体AB101の結合を、MDSC、実施例11および以下に記載するように生成した免疫抑制性M2cおよび炎症促進性M1マクロファージを含む異なる細胞型に対して試験した。加えて、健康なドナーのPBMCから得た別個の免疫集団を、抗体結合について評価した。これら試験それぞれにおいて、少なくとも3つの個別ドナーを使用した。標準手順を用いたFicoll勾配を使用して、PBMCを血液から単離した。次いで、免疫細胞集団を鑑別するために、PBMC細胞を造血系統マーカー(CD45-BV421(BD642275)、CD3-BV510(BD563109)、CD11c-PE-Cy7(BD561356)、CD14-FITC(BD347493)、CD20-APC-Cy7(BD562643)、CD56-PE(BD347747)、およびCD66c(BD551478))で染色した。別個の系統集団は、以下の発現パターンをさらに特徴とするものであり、これをAB101への結合について評価した:T細胞CD45+CD3+、B細胞CD45+CD20+、単球CD45+CD14+、NK細胞CD45+SSClowCD14-CD3-CD56+、顆粒球CD45+SSCHiCD14-CD66+、および樹状細胞CD45+CD14-CD66-CD11c+。小気道上皮細胞(SAEC、#CC-2547)、腎近位尿細管上皮細胞(RPTEC、#CC-2553)、肺微小血管内皮細胞(HMVEC、#CC-2527)、臍静脈内皮細胞(HUVEC、#C2519A)、大動脈平滑筋細胞(AOSMC、#CC2571)、およびケラチノサイト(#00192627)を含む、原発性ヒト非免疫細胞(Lonza)への結合抗体も評価した。これらの細胞を、細胞型特異的培地および製造業者の指示に従う条件で、集密度60~70%になるまで培養し、これを採取して、フローサイトメトリーにより抗体結合を試験した(図4および図5)。
標準の方法により単離した単球から、in vitro単球MDSCを生成した。0日目、単球をRPMI1640(Hyclone SH30027.02、無血清)の中1.5×105/cm2で播種し、5%CO2、37℃で1時間インキュベートし、次いで、予め温めたRPMIで洗浄してから、MDSC培地(RMPI+10%FBS(Hyclone SH30070.03)+50ng/mL GM-CSF(R&D Systems 215-GM-010)+50ng/mL IL-6(R&D Systems 206-IL-010)、T75フラスコごとに20mL)を細胞に添加した。次いで、細胞を5%CO2、37℃で7日間、培地を変更することなく培養した。7日後、PBS(Hyclone SH30028.03)+2mM EDTAで2回洗浄し、次いでT75フラスコごとに1 5mLで冷たいマクロファージ剥離用試薬(PromoCell C-41330)を添加し、続いて2~8℃で40分間インキュベーションを行うことにより、細胞を採取した。フラスコを手のひらで軽く叩いて細胞を取り出し、これを集めてPBS+2mM EDTAで1:1に希釈した。円錐管の中、450xgで15分間遠心分離を行い細胞をペレット状にし、PBS+2mM EDTAで1回洗浄し、計数し、FACSブロッキング緩衝液(緩和染色条件ではPBS+1% FBS+0.1μg/mL Fcブロック(Abcam Ab90285)、または厳格染色条件ではPBS+1%FBS+Fcブロックおよび+0.01μg/mL CDRブロック(FcR CD16、CD32、およびCD64に対する抗体、それぞれBD Biosciences 556617、557333、および555525))の中、1×107/mLで再懸濁した。細胞をFACSブロッキング緩衝液の中、室温(R T)で20分間(min)インキュベートし、次いで4℃で30分間インキュベートした。その後、FACS緩衝液+5%BSA(Sigma A3059)で細胞を1×106細胞/mLに希釈し、細胞40μL(4×104の細胞)をウェルに等分して染色を行った。一次抗体(20、6、2、0.75、0.25、0.08、および0.02μg/mLでのAB101、または6μg/mLでのヒトIgG1アイソタイプ対照)を細胞に加え、室温で90分間インキュベートした。250μL/ウェルのFACS緩衝液+5%BSAで細胞を3回洗浄した。二次APCヤギ抗ヒトIgG(Jackson IR109-136-097)抗体を、(1:1000の希釈で)FACS緩衝液+BSA+e780生体色素中、1:250で調製し、細胞に添加した(ウェルごとに50μL)。4℃で45分間のインキュベーション後、細胞をFACS緩衝液250μL中で3回洗浄した。次いで、細胞をウェルごとに100μLの4%PFA中、室温で10~15分間固定し、FACS緩衝液250μLで1回洗浄し、650xgで5分間ペレット状にし、次いでFACS緩衝液100μL中で再懸濁して、フローサイトメトリーにより解析した。
図3に示すように、AB101抗体は、ヒト免疫抑制性骨髄細胞(M2cマクロファージおよび単球性MDSC)に結合する。この図は、AB101またはアイソタイプ染色のMFIをM2c、M1、およびM0上にプロットする図である。AB101抗体は、T細胞、B細胞、NKT細胞、好中球、単球、および樹状細胞の染色(黒色の曲線)とアイソタイプ対照(灰色の曲線)との比較を示す図4に示すようにB細胞、T細胞、NK細胞、および顆粒球には結合せず、ならびに、AB101抗体は、図5に示すようなSAEC、RPTEC、HMVEC、HUVEC、AOSMC、およびケラチノサイトなどの非免疫細胞には結合しない。このため、AB101抗体は、他の免疫細胞または非免疫細胞に影響を及ぼすことなくCD163発現免疫抑制性骨髄細胞に特異的に結合する。
実施例4-AB101 FcNull抗体によるCD163ポリペプチドの免疫沈降
本実施例は、配列番号9を含む軽鎖と配列番号11を含む重鎖とを含むAB102と命名されたFc受容体(Fcヌル)への抗体の結合を実質的に低下させるよう修飾されたIgG1配列中にAB101可変ドメインを含むFcNull抗体を用いた、CD163の免疫沈降を示す。Klockenbusch and Kast,J Biomed Biotechnol Article ID 927585(2010)に基づき、免疫沈降(IP)を行った。より古典的な架橋IP手法でパラホルムアルデヒド(PFA)固定液の前に、またはビス(スルホクシンイミジル)スベレート(BS3)架橋、続いてIPの前に、抗体を追加した。
PFA手法を用いた架橋を含むIPにおいて、単球をヒト血液から単離し、次いで実施例2と実施例11のプロトコルを用いてM2細胞に極性化させ、M2マクロファージを、マクロファージ剥離用試薬(Macrophage Detachment Solution DXF、PromoCell,No.C-41330)により37℃で最大10分間インキュベーションを行った後にプレートから剥離し、その間、細胞は寄せ集まって剥離し始めていた。フラスコをしっかりと叩き、細胞剥離を促した。剥離後、細胞にFACS緩衝液を添加することにより、マクロファージ剥離試薬を急冷した。細胞を300xgで10分間かけてペレット状にし、上清を取り除いた。5%BSA(w/v)および1mM EDTA pH8.0を含有する30mLのPBS中で細胞ペレットを再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。
細胞をアリコートごとに15×106細胞(アリコートごとに5mL)の6つのアリコートに分割し、それぞれにビオチン化抗体を添加した。2つのアリコートにマウスIgG1抗hCD163をそれぞれ50μg投与し(R&D,No.MAB1607)、2つのアリコートにアイソタイプ対照抗体ISO2(Fcヌルフレームワーク中)をそれぞれ100μg投与し、残り2つのアリコートには試験抗体AB102(Fc受容体(Fcヌル)への結合を大幅に低下させるよう修飾されたIgG1配列にAB101可変ドメインを含む)をそれぞれ100μg投与した。細胞を4℃で1時間(hr)インキュベートし、時折、管を反転させることにより軽く混合を行った。細胞を300xgで5分間かけてペレット状にし、PBS-EDTAで3回洗浄し、次いで、5mLのPBS(マグネシウムまたはカルシウムなし、HyClone,No.SH30028.02)中で再懸濁した。パラホルムアルデヒド(PFA、0.8%の5mL)を各管に添加し、最終PFA濃度を0.4%とした。細胞をPFA中、室温で5分間、軽く揺動させながらインキュベートした。細胞を800xgで5分間の遠心分離によりペレット状にし、上清を取り除いた。1.25Mグリシンを含有する10mLの氷冷PBS中で細胞を再懸濁し、急冷した。細胞を800xgで5分間かけてペレット状にし、氷冷PBS中で再懸濁した。細胞を800xgで5分間かけてペレット状にし、1xプロテアーゼ阻害剤を含有する1.0mLのRIPA緩衝液(ThermoFisher Scientific,No.89900)中で再懸濁した。細胞を氷上で2時間インキュベートし、次いで2mLのDounceホモジナイザーを15回通過させた。
細胞溶解物をハンギングバケット遠心分離機で回転させて核をペレット状にし、上清をIPに使用した。タンパク質溶解物(50μL)を入力画分として取っておき、1xプロテアーゼ阻害剤を含有する2.0mLの冷たいPBSを残りの上清に添加した。Dynabeads Myone Streptavidin(250μL)(ThermoFisher Scientific,No.65601)を各試料に添加し、これらを4℃で一晩回転させた。翌日、StemCellマグネットでビーズを集め、上清を取り除いた。5mLのParo緩衝液I、5mLのParo緩衝液II、および5mLのParo緩衝液IIIを用いて、ビーズを4℃で5分間、連続洗浄した(Oncotarget.2017; 8(7):11105-11113)。次いで、ビーズを冷たいPBSで3回洗浄し、最後に100μLのPBS中で再懸濁し、-80℃で冷凍した。
ビーズを質量分析により解析した。この解析は、一般的に、Yan et al.,Mol Cell Proteomics 10(3):M110.005611(2011)に記載される方法に従い実施した。この方法では、ホルムアルデヒド架橋の逆転、およびストレプトアビジンビーズからのタンパク質溶出を、6Mグアニジン、150mMトリス緩衝液(pH8.3)を用いて60℃で3時間、一定の撹拌を行いながら実施した。上清を変性させ、還元し、10mMトリス(2-カルボキシエチル)-ホスフィン(TCEP)および50mMクロロアセトアミド(CAA)と同じ緩衝液中、95℃で10分間かけてアルキル化した。次いで、試料を10倍に希釈し、37℃で一晩かけてトリプシン1.3μgで消化した。ペプチドをC18カートリッジにより浄化した。AB102IPの複製物1つ、および抗CD163IPの複製物1つを、直接MS/MS解析のためにC18カートリッジから溶出した。AB102IPの複製物1つ、および抗CD163の複製物1つを、PBS緩衝液pH7.5において0.1Mホルムアルデヒド-d2、0.4Mシアノ水素化ナトリウムでインキュベートして、重ジメチル化(d4)で標識した。ISO2(Fcヌル)IPの両複製物を、PBS緩衝液pH7.5において0.1Mホルムアルデヒド、0.4Mシアノ水素化ナトリウムで1時間インキュベートして、C18カートリッジ上で軽ジメチル化(d0)で標識した。次いで、C18カートリッジを0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)で洗浄し、80%アセトニトリル(ACN)で溶出した。d0/d4ジメチル化ペプチドを緩衝液A(20%ACN、0.1%TFA)中で再懸濁し、混合した。室内で調製したマイクロキャピラリーHPLC強カチオン交換カラム(SCX)(200mm×20cm、Proteomix SCX3μm、Sepax Technologies)を用いて、ペプチドを分画した。緩衝液Aの中で平衡化したマイクロキャピラリーカラムにペプチドを充填し、緩衝液Aで洗浄した。30%、50%の緩衝液B(ギ酸アンモニウム800mM、20%ACN、pH2.8)を含有する20μLの緩衝液Aで結合ペプチドを溶出し、続いて緩衝液D(0.5M酢酸アンモニウム、50%ACN)で20μLを溶出した。Spede-Vacによりすべての試料を乾燥し、Thermo-Oritrap-Fusionにより直接解析した。Comet検索エンジンによりヒトUniProtデータベースに対してスペクトルを検索した(https://sourceforge.net/projects/comet-ms/)。脱メチル化ラベルにおいて、N末端およびLys側鎖上での28.03Da(d0ジメチル化に対する)および32.06Da(d4ジメチル化に対する)の差動修飾を使用した。
強カチオン交換カラム(200mm×20cm、Proteomix SCX 3μm、Sepax Technologies)を使用して、重/軽試料をインラインHPLCカラムに通し、Thermo-Oritrap-Fusionを使用してMS/MSに晒した。重および軽標識試料では、完全にメチル化されたスペクトルのみを含めた。すべてのペプチドが重同位体を包含していた場合に、89個のタンパク質を特定した。これにより、タンパク質は陰性対照ではなくAB102IPにおいて特定されたことを認めた。AB102IPに固有の89個のタンパク質のうち12個、すなわちCD163、RIPK1、NEUA、SLC31、LRP8、SLIT1、RAF1、ILK、ATRN1、MCA32、FNBP2、およびLRRN3を、細胞表面上にもっともらしく存在すると考えた。1つの追加のタンパク質としてTNR5は、2つの重メチル化ペプチドと1つの非メチル化ペプチド(IP由来不明)を有していたことが分かった。これにより、AB102IPに対して排他的である可能性が裏付けられた。
AB102IPの複製物1つおよび対照抗CD163IPの複製物1つに由来するペプチドを、質量分析により個別に解析した。AB102IP中で特定した360個のタンパク質のうち45個を、膜結合または分泌された可能性があるとして精選した。他のデータセット中で特定したタンパク質のうち、CD163、ガレクチン-1、ガレクチン-3、およびペプチジループロリルシス-トランスイソメラーゼA(PPIA)を、AB102IPに見出した。CD163と直接相互作用すると報告されているカゼインキナーゼIIbも、このデータセット中で特定した。
BS3手法を使用する架橋によるIPでは、上清をフラスコから250mL遠心分離管へと集めることにより、マクロファージを採取した。冷たいマクロファージ剥離用試薬(30mL)を各フラスコに加え、4℃で45分間インキュベートした。次いで、フラスコをスクレーパーで掻き取り、細胞を250mL遠心分離管の中に集め、650xgで10分間遠心分離した。培地を吸引し、細胞ペレットは管の中に残した。次いで、細胞を20mlの冷たいPBS+2mM EDTAの中で再懸濁した。
次いで、PBS+2mM EDTAで細胞を1×107細胞/mLに希釈し、3つの体積として40%、40%、および20%総体積に分割した。AB102(2.5mg)を40%画分の1つに添加した。FcNullフレームワーク(2.5mg)中の抗PDL1抗体を、陽性対照であった他の40%画分に添加した。アイソタイプ対照(FcNullフレームワーク中のISO2、1.25mg)を、陰性対照であった20%画分に添加した。各画分を4℃で2時間、軽く混合しながらインキュベートした。次いで、これらを650xgで10分間遠心分離し、上清を慎重にデカントした。ペレットをそれぞれ15mL PBS+EDTA中で再懸濁し、次いで650xgで10分間遠心分離した。次いで、この洗浄工程を繰り返した。次に、ペレットを壊さずに洗浄緩衝液を慎重に取り除いた。40%画分のペレットを、架橋緩衝液2mL中で再懸濁した。40%画分のペレットを、架橋緩衝液1mL中で再懸濁した。50mM BS3のストック濃度を、各8mgバイアルごとに超純水70μLに溶かした。BS3(60μl/mLの細胞)を、再懸濁した各細胞画分に添加して最終濃度を3mM BS3とし、各細胞画分を軽く旋回させることにより混合した。次いで、細胞画分を氷の上で1時間インキュベートし、旋回させて10分毎に混合した。BS3インキュベーションの後、クエンチ溶液15mLを細胞に直接添加し、室温で15分間インキュベートした。細胞を1200xgで15分間遠心分離し、クエンチ緩衝液を慎重にデカントした。先述のように、ペレットをPBS+EDTAで1回洗浄した。次いで、溶解緩衝液20mL(Pierce(商標)IP Lysis Buffer#87788)を各40%画分に添加し、10mLを20%画分に添加することにより細胞を溶解し、続いて氷の上で15分間インキュベートした。次いで、細胞溶解物を13,000xg、4℃で10分間遠心分離した。
MabSelect SuReレジン(GE H Ealthcare Life Sciences,No.17543801)を、調製した細胞のIPおよびタンパク質精製に使用するために調製した。滅菌Mab Select Sureを、20カラム体積(CV)の滅菌PBSで平衡化した。AB102および陽性対照試料には150μlのMab Select Sureを使用し、ISO試料には75μlを使用した。次いで、滅菌および平衡化Mabselect Sureレジンを、50mL円錐管に移した。遠心分離後、調製したMab Select Sureレジンとともに上清を管に加えた。試料を4℃で回転混合しながら一晩かけてインキュベートした。翌日、試料を氷の上で10分間沈降させた。MabSelect SuReレジンをピペットにより使い捨てドリップカラムに移した。レジンを20カラム体積の滅菌PBSで洗浄した。溶出前に、カラムを回収管に入れ、エッペンドルフベンチトップマイクロ遠心分離機の中9,000rpmで30秒間遠心分離して、過剰な液体を取り除いた。カラムの底にはストッパーを配した。ストッパーを配したカラムに溶出緩衝液として1カラム体積の50mMグリシンpH2.5を加え、ピペットで混合し、次いで混合物を室温で8分間インキュベートすることにより、細胞を溶出した(全体積(レジンおよび溶出緩衝液)の10分の1を各試料から取り除き、ウェスタンブロット解析による架橋判定のために取っておいた。以下を参照)。残りの試料は、1/10体積の2M Tris pH8.0を添加することにより中和した。カラムの底からストッパーを取り外し、直ちに滴下カラムを1.8mLエッペンドルフ遠心分離管に入れることにより、溶出液を回収した。カラムアセンブリを9,000rpmで30秒間、ベンチトップ微小遠心分離ユニット中で遠心分離した。1/10体積の滅菌2M Tris pH8.0を溶出画分に加えることにより、溶出液を中和した。溶出プロトコルを繰り返し、完全なタンパク質除去を確実にした。溶出液画分は、ウェスタンブロットにより架橋を認めるまで-80℃で保存した。
架橋の確認のためのウェスタンブロット解析
保存した溶出画分をLaemmli Sample Buffer(Bio-Rad,No.161-0747)+10%2-メルカプトエタノールと混合した。試料を90℃で10分間加熱した。試料を4~12%のBis-Tris勾配ポリアクリルアミドゲルに充填した。ゲルを200Vで80分間流した。充填後、ゲルをPVDFウェスタンブロット膜に移し、4℃、25Vで一晩流した。翌朝、ブロットをSuperblock(ThermoFisher Scientific,No.37515)により室温で3時間遮断した。遮断後、膜をSuperBlockの中、1回洗浄した。ウェスタンブロットを1:1000の抗ヒトIgG HRPにより4℃で一晩かけてプロービングした。翌日、1回につき10分のPBSTで、ブロットを4回洗浄した。ウェスタンブロットをPBSで1回、10分間洗浄した。次いで、SuperSignal West Dura Extended Duration Substrate(ThermoFisher Scientific,No.34076)を用いてウェスタンブロットを発達させた。曝露に際して、ウェスタンブロットにより、AB102の陽性架橋を表す明白な過度に推移した帯(super-shifted band)を認めた。陽性対照抗体についても架橋帯を観察した。予想どおり、ISOでは分子量推移を観察しなかった。
次いで、残りの試料をアセトン沈殿させ、SDS-PAGEゲル上で流し、次いで、架橋帯を切除し、質量分析評価のために調製した。溶出試料(AB101、ISO、および上記からの陽性対照)を解凍した。冷たい(-20℃)アセトンの4倍溶出液体積を、各試料に添加した。次いで、試料を激しくボルテックスし、-20℃で1時間インキュベートした。試料を15,000xgで10分間遠心分離した。ペレットを破壊しないように注意しながら、上清をデカントした。ペレットを速度vacで5分間、または液体が蒸発するまで乾燥させた。ペレットを管ごとに15μlの中で再懸濁し、溶解するまで混合した。溶出液を各条件ごとに組み合わせた。試料を充填した緩衝液+10%2-メルカプトエタノールを添加し、試料を90℃で5分間加熱した。各試料5マイクロリットルを、SYPRO Ruby Protein Gel Stain(ThermoFisher Scientific,No.S12000)解析のために保存した。残りの試料の全体積を、4~12%Bis-Tris勾配ポリアクリルアミドゲルに充填し、ゲルの上で80分間、200Vで流した。ゲルをカセットから取り除き、質量分析等級の水で3×10分間洗浄した。次いで、ゲルをSafe Stain blueで1時間染色した。染色をデカントし、次いでゲルを1回につき30分間、2回洗浄することにより、質量分析等級の水で脱染色した。メスおよびピンセットの広範囲にエタノール(Etoh)を噴霧してから、架橋帯をゲルから切除し、滅菌エッペンドルフ管に入れた。ゲル切片を覆うのに十分な滅菌超純水で管を満たし、湿った氷の上に充填し、MS Bioworksに送った。
MS Bioworksが質量分析を行った。質量分析において、提出した各試料をすべて、先ず25mM重炭酸アンモニウム、続いてアセトニトリルで洗浄することによりProGestロボット(DigiLab)を用いたトリプシンでのゲル内消化を行い、60℃で10mMジチオトレイトールによる還元、続いて室温で50mMヨードアセトアミドでのアルキル化を行い、トリプシン(Promega)により37℃で4時間消化した後、ギ酸で急冷し、消化物をプールし、さらに処理することなく解析することにより、処理した。次いで、各消化試料を、Thermofisher Fusion LumosにインターフェースしたWaters M-Class NanoAcquity HPLCシステムを用いたnano LC-MS/MSにより解析した。ペプチドを捕捉カラム上に充填し、75μm解析カラム上で350nL/分で溶出し、両カラムにLuna C18レジン(Phenomenex,No.00C-4041-E0)を充填した。質量分析計をデータ依存モードで作動させ、Orbitrapは、MSおよびMS/MSに対して60,000FWHMと15,000FWHMで、3sサイクル時間で作動した。高度なピーク判定が可能になった。4時間の器具時間を使用/サンプリングした。MS Bioworksによるデータ処理では、以下のパラメータとともにMascot(Matrix Science)のローカルコピーを使用してデータを検索した:酵素:トリプシン/P、データベース:Swissprot Human(連鎖状のフォワードおよびリバースと、一般的に起こり得る汚染)、固定修飾:カルバミドメチル(C)、可変修飾:酸化(M)、アセチル(N-term)、Pyro-Glu(N-term Q)、脱アミド化(N/Q)、質量値:モノアイソトピック、ペプチド質量許容値:10ppm、フラグメント質量許容値:0.02Da、Max Missed Cleavages:2。検証、フィルタリング、およびサンプルごとの非冗長リストの作成のために、Mascot DATファイルをScaffold(Proteome Software)へと構文解析した(parsed)。データを1%タンパク質およびペプチドFDRでフィルタリング氏、タンパク質ごとに少なくとも2つの固有のペプチドが必要であった。スペクトル豊富因子(SAF)を正規化スペクトル豊富因子(NSAF)に変換し、これを使用して、所与の試料内のタンパク質の相対的存在量、および試料間の所与のタンパク質の相対的存在量を近似させた。
MS BioworksからのBS3架橋データに観察したタンパク質の検査は、PFAを含む上記IPで特定された標的の完全な列記を裏付けるものではなかった。ガレクチン-3を重および軽データセットの両方に見出し、表現は軽データセットの方が大きかった。ガレクチン-1を重および軽データセットの両方に見出し、3/5のペプチドのみを重アイソトープで標識した。LILRB2は観察されず、uPARも観察されなかった。PPIAを重データと軽データの両方で見出し、ともに表現はほぼ等しかった。図6Aは、AB102の上位20個の標的を示す。図6Bは、AB102の上位細胞表面標的を示す。図6Cは、アイソタイプ陰性対照(ISO)と比較したAB102の上位細胞表面標的を示す。BS3架橋剤を使用してAB102により免疫沈降した細胞表面タンパク質のうち、CD163のスペクトル豊富因子(SAF)は、最高であった。CD163は、PFAおよびBS3両方の方法によりAB102で免疫沈降させた。SAFは、各標的のタンパク質サイズ(分子量)に正規化したスペクトル数であり、図6Aと6BのSAF値は、各標的のアイソタイプ対照についてSAFから減算したAB102の値である。
実施例5-FcNullフレームワーク中のAB101抗体によるCD163のグリコ型の免疫沈降
グリコシル化は、タンパク質の立体配座、安定性、および機能に影響を及ぼす高度に調節された翻訳後修飾であり、タンパク質間相互作用(すなわち、その同族受容体へのリガンドの結合)を確立する上で重要な役割を果たす。AB102抗体、および拡張によりAB101は、CD163の明確な高分子量グリコ型に対する特異性を有しており、免疫抑制性マクロファージの活性に必要な他のタンパク質とCD163との相互作用に影響を及ぼす可能性がある。
AB101 FcNull抗体は、Fc受容体(Fcヌル)への抗体の結合を大幅に低下させるように修飾したIgG1配列にAB101可変ドメインを含み、AB102と称される。Western blotおよびSYPRO Ruby Protein Gel Stainによる解析では、12μlの4x NuPAGE LDS試料緩衝液(Thermofisher,No.NP0007)を10%2-メルカプトエタノールと共に、実施例4のPBSビーズの25μLのアリコートに加え、95℃で25分間インキュベートした。試料を4~12%のBis-Tris勾配ポリアクリルアミドゲルに流した。直接可視化のために、製造業者の指示に従いSYPRO Ruby Protein Gel Stainでゲルを染色した。ウェスタンブロットのために、タンパク質を4℃で一晩かけて、20VでPVDF膜に移した。翌朝、膜を5.0mLのSuperblock(ThermoFisher,No.37515、Tween 20なし)の中で1時間遮断した。一次抗CD163抗体(ヤギIgGポリクローナル、R&D,No.AF1607)を、1μg/mLの濃度で膜に添加した。一次Abにおいて約3時間インキュベーション(室温で揺動)した後、膜を約5mLのPBSTで3回洗浄し、1回につき5分間洗浄した。洗浄後、1:10,000(v/v)HRPコンジュゲート抗ヤギF(ab’)2特異的二次Ab(様々なベンダー)を含有する5mLのSuperBlock(Tween20なし)を膜に添加し、室温で約1時間インキュベートした。二次Abでインキュベーションした後、膜を5mL PBSTで3回洗浄し、1回につき約5分間洗浄した。製造業者の指示に従い、FotoDyne Analyst Luminary Convertible transilluminator FX workstationを備えたSuperSignal West Dura Extended Duration Substrateを使用して、膜を撮像した。
図7に示すように、AB102は、CD163の明確な高分子量グリコ型を免疫沈降させる。矢印で示す二重項の帯はともに、おそらくCD163の明確なグリコ型である。
実施例6-マウスではなくヒト組換えCD163タンパク質に対するAB101の結合
本実施例は、AB101が、マウスではなくヒト組換えCD163タンパク質に結合することを示す。Hisタグを付けた組換えヒトCD163(R&D Systems,No.1607-CD-050)および組換えマウスCD163(R&D Systems,No.7435-CD-050)タンパク質へのAB101結合は、ELISAを用いて判定した。組換えタンパク質をPBS中で5μg/mLに希釈し、384ウェルの高結合ELISAプレート(Greiner Bio-One,No.781061)に25μL/ウェルで添加し、4℃で一晩インキュベートした。Biotek ELx405 Selectマイクロプレートウォッシャー(洗浄プログラムELISA_384_PBS_3x_wash)を使用して、プレートをPBSで3回洗浄し、次いで、90μL/ウェルのブロッキング緩衝液(2%非脂肪、ドライミルク/PBS+0.05%Tween20)を用いて室温で1時間遮断した。
遮断後、ウェルごとに一次抗体25μLをプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。試験抗体はAB101であった。対照抗huCD163抗体は、マウスIgG1フレームワーク(R&D Systems,#MAB1607)中にある市販の抗体であり、アイソタイプ対照は、既知の特異性を持つヒトIgG1、ヒトFcNull、およびマウスIgG1フレームワーク中にある専売のmAbであった。一次抗体の結合後、EL405X(洗浄プログラムELISA_384_PBS_3X_wash)を使用して、プレートをPBSで3回洗浄した。抗huCD163の二次抗体は、ヤギ抗マウスIgG F(ab)’2HRP(Jackson Immunoresearch,No.115-035-072)であり、AB101およびAB102の二次抗体は、ヤギ抗ヒトIgG F(ab)’2HRP(Jackson Immunoresearch,No.109-035-097)であった。二次抗体は、2%非脂肪、ドライミルク/PBSの中で1:2500に希釈し、ウェルごとに25μLをそれぞれのプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。EL405x(洗浄プログラムELISA_384_PBS_4x_wash)を使用して、プレートをPBSで4回洗浄した。最終洗浄を取り除いた後、25μL/ウェルの清浄なUltra-TMBを添加し、プレートを室温で10~15分間インキュベートし、光から保護した。発達後、0.3M HClをウェルごとに25μL添加することにより反応を止め、プレートをSpectraMax M5e機器を用いて450nmで読み取った。
図8に示すように、AB101、AB102、および対照CD163抗体は、本アッセイにおいてhuCD163に結合したが、アイソタイプ対照では顕著な結合を認めなかった。AB101も対照抗huCD163抗体も、組換えマウスCD163に結合しなかったが、市販の抗muCD163抗体は予想どおりに結合した(図9)。
実施例7-ポリクローナル抗CD163抗体による、M2cマクロファージへのAB101の結合の遮断
本実施例は、ポリクローナル抗CD163抗体がM2c細胞へのAB101の結合を遮断することを示す。M2c細胞上でのCD163へのAB101の結合の特異性を調べるために、ヒトCD163に対する市販のポリクローナル抗体を用いて、遮断実験を行った。
採取したM2c細胞をFACS緩衝液(2mM EDTAを含有するPBS)(ThermoFisher No.15575-038)の中で再懸濁し(100μLにつき100万個の細胞)、適切な体積のヒトFc-ブロック(細胞100万個につき組換えヒトFcブロック10μg)を添加した。細胞を室温で20分間インキュベートした。ヤギ抗huCD163ポリクローナル抗体(R&D,#AF1607)およびヤギ対照ポリクローナル抗体(Sigma,#PP40)を最終濃度200μg/mLで添加し、室温で1時間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で希釈して最終体積を100万細胞/mLにし、40μL/ウェルをv底ポリプロピレン不透明96ウェルプレートに移した。
Alexa Fluor(登録商標)647で標識したAB101およびAPCで標識した抗huCD163(R&D Systems,#FAB1607A)抗体を添加し、4℃で90分間インキュベートした。マルチドロップを用いて、5%BSAを含有するFACS緩衝液250μLを各ウェルに添加することにより細胞を洗浄し、350xgで5分間遠心分離し、緩衝液を取り除いた。洗浄工程は、洗浄体積300μLのFACS緩衝液で2回繰り返した。生体色素e780を含むFACS緩衝液50μL(1:1000の希釈)を各ウェルに添加し、プレートを室温で20分間インキュベートした。次いで、マルチドロップを使用してFACS緩衝液250μLを各ウェルに添加することにより細胞を洗浄し、350xgで5分間遠心分離し、緩衝液を取り除いた。FACS緩衝液(75μL)を各ウェルに添加し、BD Canto IIフローサイトメーターを用いて試料解析を行った。
ポリクローナル抗CD163抗体でのM2cマクロファージの前処理により、M2cマクロファージへのAB101抗体(図10)および対照モノクローナル抗huCD163抗体(図11)の結合を遮断した。ヤギ対照ポリクローナル抗体でのM2cマクロファージの前処理では、M2cマクロファージへのAB101抗体(図10)および対照モノクローナル抗huCD163抗体(図11)の結合は遮断されなかった。
実施例8-極性化後のヒトM2cマクロファージにおけるCD163のsiRNAノックダウンはAB102の結合を減少させる
この実施例は、極性化後のヒトM2cマクロファージにおけるCD163のsiRNAノックダウンがAB102の結合を減少させることを示す。この実施例で使用されている方法は、Troegeler et al.,Immunol Cell Biol 92:699-708(2014)に基づいている。
単離された単球(3人のドナーから)は、6ウェルプレートにおいてウェルあたり1.5×106細胞で別々にプレーティングした。4日目に、培地を除去し、10%FBS、100ng/ml M-CSF(PeprotechNo.300-25)、および50ng/mL IL-10(PeprotechNo.200-10)を含む新鮮なX-VIVO培地を各ウェルに添加した。6日目に培地を除去し、細胞は10%FBSを含む温かいX-VIVO培地で2回洗浄した。1ミリリットルのX-VIVO培地+10%FBSを各ウェルに添加し、細胞をインキュベーターに戻し、siRNAトランスフェクション溶液を調製した。
以下のヒトON-TARGETplussiRNA-SMARTpool試薬(Dharmacon)を試験した:CD163(カタログ番号L-007847-00-0005)、SCRAM(カタログ番号D-001810-10-05)、CD206(カタログ番号L-011730-00-0005)、CD163L1(カタログ番号L-008024-00-0005)、PPIA(カタログ番号L-004979-04-0005)、FCGR2A(カタログ番号L-014152-00-0005)、FCGR3A(カタログ番号L-016308-00-0005)、LGALS1(カタログ番号L-011718-00-0005)、LGALS3(カタログ番号L-010606-00-0005)、LILRB2(カタログ番号L-020017-00-0005)、FCGR2C(カタログ番号L-027340-02-0005)、およびUPAR(カタログ番号L-006388-00-0005)。
siRNAトランスフェクションを調製するために、ON-TARGETplusSMART siRNAプールを使用して、200μMのマスターストックを作製した。凍結乾燥オリゴヌクレオチド(各5nmol)を25μLの1×Thermo siRNA緩衝液(Thermo No.B002000)に再懸濁した。アリコートは-80℃で保存した。次に、これらのマスターストックを細胞グレードの超純水(Hyclone No.SH3052902)で希釈して、20μMのワーキングストックを作製した。マスターミックス(6ウェルプレートの6つのウェルに十分)を作製するために、以下の試薬を混合した:120μL 20μM siRNAプール(最終濃度200nM)、270μLのHiPerFect(Qiagen No.301705)、および2.64mLの温かいRPMI(FBSまたはその他の添加剤なし)。siSCRAM(スクランブルsiRNA)のためのマスターミックスには、720μL 20μM siSCRAM、1.23mL HiPerFect、および12.1mL RPMIが含まれていた。混合物を合わせ、反転により定期的に混合しながら、室温で15分間インキュベートした。使用直前に、チューブを短時間遠心分離し、siRNAミックス(495μL/ウェル)を細胞に滴下した。プレートを軽くゆすって混合し、次に37℃で6時間インキュベートした。インキュベーション後、10%FBSおよびIL-10(最終濃度50ng/mL)およびM-CSF(Peprotech No.300-25、最終濃度50μg/mL)を含む2mLのX-VIVO培地を添加した。翌日、培地を交換して(IL-10およびM-CSF中に保持)、トランスフェクション試薬および死滅しつつある細胞をすべて除去した。
8日目に、フローサイトメトリーのために、マクロファージを拾い上げて抗体で染色するか、またはRT-qPCR用に溶解した。
フローサイトメトリーに使用されるこれらのマクロファージについては、以下の方法が使用された。siRNAで処理したM2マクロファージをマクロファージ剥離液を用いて採取し、剥離液中で4℃にて45分間インキュベートし、次いでプレートを穏やかにこすり落とした。マクロファージ剥離溶液を、0.2mM EDTAおよび0.1%HSAを含む冷PBS-/-(カルシウムおよびマグネシウムを含まないPBS、Hyclone No.SH30028.02)と交換した。細胞を650×gで5分間スピンダウンし、次いで、100万細胞あたり0.5mLのコールドブロック溶液(FACS緩衝液+10%NGS+10μgのヒトIgG Fcフラグメントタンパク質(Abcam No.ab90285))に再懸濁した。細胞を計数し、さらなる計算のために1mLあたり平均1×106を使用した。細胞を室温で15分間インキュベートし(FcR結合を増加させるため)、続いて完全なブロッキングのために氷上で30分間インキュベートした。未染色の細胞のアリコートをコンペンセーション対照のために取っておいた。e780生存率色素(ThermoFisher eBioscience No.65-0865-18)を、最終希釈率1:1000で残りに添加した。細胞を96ウェルプレートに等分し(ウェルあたり40μL)、10μLの抗体溶液を各ウェルに添加した。抗体は、FACS緩衝液中100μg/mLの開始濃度で調製し、FACS緩衝液で段階希釈した。抗体の添加後、細胞の各セットを抗体パネル(AF647にコンジュゲートしたFcNullフレームワーク中のAB101およびBV421にコンジュゲートした市販の抗CD163 [BioLegend No.333612])およびアイソタイプパネル(AF647にコンジュゲートしたFcNullフレームワーク中のISO2およびBV421にコンジュゲートした市販のmIgG1)を用いてテストした。最終抗体濃度は20μg/mLから0.3μg/mLの範囲であった。細胞を一次抗体中4℃で1時間インキュベートし、次いで450×gでペレット化し、150μL PBS-EDTAで3回洗浄した。ペレット化後、細胞を100μL 4%パラホルムアルデヒド(PBS-/-中)に再懸濁し、室温で15分間インキュベートした(光から保護した)。固定後、細胞を650×gで5分間スピンダウンし、PBS-EDTAで1回洗浄した。細胞を100μLのPBS-EDTAに再懸濁し、週末をまたいで4℃で保存した(光から保護した)。次に、BD CantoIIマシン上のフローサイトメトリーによって細胞を分析した。
細胞の第2のセットは、以下のように、RT-qPCRアッセイにおける使用のために採取した。細胞を緩衝液RLT中で採取し、QIAshredders(Qiagen No.79654)を含むQiagen RNeasyキット(Qiagen No.74104)を使用して、RNAを単離した。溶出後、RNAを使用して、SuperScript IIIファーストストランド合成システム(Invitrogen No.18080051)を使用してcDNAを作製した。1.5μg RNAに、RNaseを含まない水を加えて最終容量を10μLにした。これに、5μLのDnaseIマスターミックス((試料あたり)=1.5μL 10×DnaseI緩衝液+2μL RNaseを含まない水+1.5μL DnaseI酵素)を添加した。試料を十分に混合し、室温で15分間インキュベートした。インキュベーション後、1.5μL EDTA溶液を加えて反応を停止し、試料を65℃で10分間インキュベートし(酵素を死滅させるため)、次いで氷に戻して冷却した。dNTP(1.5μL)およびオリゴ-dT(1.5μL)を各試料に加え、十分に混合した。試料を65℃で5分間インキュベートし、次いで氷に2分間戻した。試料を冷却した後、13μLの試料を新鮮なチューブに移し、それぞれに+RTマスターミックス(7μL)を加えた。残りの7.5μLの試料に、陰性対照試料用の-RTマスターミックス(3.5μL)を添加した。+RTマスターミックスの場合(試料あたり):4μL 5×ファーストストランド緩衝液、1μL 0.1M DTT、1μL RNaseOUT、および1μL SuperScript III逆転写酵素(上記に言及されたSuperScript IIIシステムのすべての部分)。-RTマスターミックスでは、SuperScript III酵素をRNaseを含まない水に置き換えた。
試料を十分に混合し、25℃で5分間インキュベートした。インキュベーション後、試料を50℃で30分間インキュベートし、続いて55℃で30分間のインキュベーション、次いで70℃で15分間のインキュベーションを行った。次いで、試料を4℃に冷却し、その後引き続いて氷上に保持した。使用前に、20μLのRNaseを含まない水を+RT試料に添加し、10μLのRNaseを含まない水を-RT試料に添加して、RT-qPCR用のcDNAを希釈した。
qPCRのために、2μLの希釈されたcDNAを、0.2μLの各プライマー(10μMのストック濃度)、2.6μLのRNaseを含まない水、および5μLの2×SYBR Green qPCRミックス(BioRad No.1725271)と混合した。未処理の対照細胞の希釈系列を使用して標準曲線を作成した。試料は、温度融解曲線を含むデフォルト設定を使用して、StepOne qPCR装置で実行した。試料は、内在性対照としてのRpl17aの増幅に対して正規化した。
図12に示すように、(3つの複製物に代表的な)CD163に対するsiRNAを用いての、極性化M2cマクロファージの処理は、スクランブルsiRNA(siSCRAM)またはsiRNAで処理されていないM2cマクロファージと比較して、AB102抗体の結合が大幅に減少した。
実施例9-siRNAノックダウン後の極性化ヒトM2cマクロファージへのAB102結合
この実施例は、様々なsiRNAを使用するsiRNAノックダウン後の極性化ヒトM2cマクロファージへのAB102の結合を示す。
単球を全血から単離し、ウェルあたり1.5×106細胞でプレーティングし(6ウェルプレート)、上記の実施例8に記載されるようにM2極性化条件下で培養した。6日目に、培地を交換し、100ng/mL M-CSFおよび50ng/mL IL-10を添加した。
siRNA処理は、以前に記載されたように(実施例8を参照のこと)様々なsiRNAを用いて8日目に行われた。翌日、培地を吸引してトランスフェクション試薬および死滅しつつある細胞をすべて除去し、新鮮な培地を加えた(IL-10およびM-CSFをまだ含んでいる)。10日目に、FACS分析をsiRNA処理細胞で実施し、細胞の第2のセットを、RT-qPCRのためにRLT緩衝液中で採取した(実施例8を参照)。データは、siSCRAM処理M2cへのAB102結合幾何学的MFIを100%として、未処理M2cへのアイソタイプ対照抗体結合幾何学的MFIを0%として使用して正規化した。
CD163のsiRNAノックダウンは、AB102抗体の結合を減少させた。対照的に、図13に示すような、FCGR2A+FCGR3A(ドナー3例のうち1例で)、FCGR2C、またはFCGR3Aに対するsiRNAのいくつかのわずかな減少を除いて、siCD206、siCD163L1、siPPIA、siLGALS1、siLGALS3、siLILRB2、またはsiUPARを用いるノックダウン後のAB102結合の減少の証拠は見られなかった。実際、AB102の結合強度はいくつかのsiRNA条件で増加した。RT-qPCRは、標的の強力なノックダウンを示した。
実施例10-M2cマクロファージの細胞表面上でのCD163発現のLPS誘導性減少は、マクロファージへのAB101結合を減少させる
この実施例は、LPS誘導性のCD163の脱落後のM2cマクロファージへのAB101の結合の減少を示す。単球を実施例2に記載されるように単離し、10%FBS、50ng/mL M-CSF、および50ng/mL IL-10を含むX-VIVO培地を100μL/ウェルで含む平底の組織培養処理した96ウェルプレート中、1×104細胞/ウェルでプレーティングした。7日目に、細胞の半分を10ng/mL LPS(E.coli O111:B4由来のリポ多糖、Sigma No.L5293-2ML)で24時間処理した。細胞は、200nMから開始して、それぞれの8つの連続5倍希釈を使用して、前述の方法に従って、非コンジュゲート一次抗体、抗CD163(R&D Systems MAB1607-100)およびAB101のタイトレーションを用いて標識した。Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPureF(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2フラグメント抗体を二次抗体として使用した(Jackson ImmunoResearch 109-606-006)。細胞をフローサイトメトリーによって分析した。
図14に示すように、培養されたM2cマクロファージのLPSによる処理は、AB101抗体と対照抗CD163抗体の両方による結合の喪失を生じた。
実施例11-AB101によるT細胞活性化(IL-2産生)および増殖の骨髄細胞抑制の遮断
この実施例は、AB101がT細胞活性化(IL-2産生)および増殖の骨髄細胞抑制を遮断することを示す。
T細胞活性化のM2マクロファージ媒介性抑制を軽減する能力を評価するために、M0、M1およびM2cマクロファージがヒト単球から生成された。M0マクロファージは、3つの処理プロトコルの下でAB101またはアイソタイプ対照とともに培養された:1)M0からM2cマクロファージへの極性化中のAB101(またはアイソタイプ対照抗体)の存在下(5~7日目、「前」条件)、2)極性化後のAB101(またはアイソタイプ抗体)の存在下(7日目以降、「後」条件)、または3)条件1と2の組み合わせ(「前」および「後」極性化)。
M0マクロファージの生成。0日目に、個々のドナー(実施例2に記載されるように単離)からの単球を、M0培地(X-VIVO培地+10%FBS+100ng/mL M-CSF)中の96ウェル組織培養プレートの2.5×105細胞/ウェルでプレーティングし、37℃、5%CO2で5日間インキュベートした。
M0マクロファージのM1またはM2cマクロファージへの極性化。5日齢のM0マクロファージは、M0培地100ng/mL IL-10(Peprotech No.200-10)中で細胞を培養することによりM2cに、M0培地+100ng/mL IFN-ガンマ(Peprotech No.200-10)で培養することによりM1に極性化された。Peprotech No.300-03)。AB101またはIgG1アイソタイプ対照で処理された細胞については、これらの抗体はM2c培地中20μg/mLで添加された。6日目に、M1マクロファージについては、培地を廃棄し、新鮮なM0培地+100ng/mLIFN-ガンマ+1ng/mL LPS(E.coli O111:B4由来のリポ多糖、Sigma No.L5293-2ML)を添加した。
自己ドナーからのPBMCを使用して、CD8+T細胞を単離した(実施例2に記載されているように)。マクロファージとの共培養の日(7日目)まで、T細胞をX-VIVO+10%FBS中で一晩T75フラスコにプレーティングした。
フローサイトメトリーによる色素希釈を使用して複数世代の追跡を可能にするCellTrace(商標)バイオレット増殖色素キット(ThermoFisher No.C34557)を使用して、共培養の前にT細胞を染色した。CellTrace(商標)染色は、メーカーのプロトコルに従って実施した。
7日目に、プレーティングされたマクロファージから上清を除去し、培地を100μLのX-VIVO培地+10%FBS+0.5μg/mLのOKT3と交換した。マクロファージを37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。T細胞をフラスコから採取し、「Pre/Post極性化」および「後極性化」処理のために、AB101(20μg/mL)またはアイソタイプ対照(20μg/mL)の非存在下または存在下で、平底96ウェルプレート中、100μL/ウェル(115万/mL)で115,000T細胞にて再懸濁した。T細胞を100μLの容量でマクロファージに添加して、200μL/ウェルの最終容量および0.25μg/mLのOKT3の最終濃度を得た。プレートを37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。8日目に、上清を採取した。IL-2レベルは、CisBio HTRF IL-2キット(No.62HIL02PEG)を使用して、製造元のプロトコルに従って、次の変更を加えて測定した。アッセイは、少量の384ウェルプレート(Greiner Bio-One No.784075)で実施し、すべての容量を半分にし、そしてプレートを短時間回転させて泡を表面に移動させた。
図15に示すように、AB101抗体は、T細胞の刺激および増殖のマーカーであるIL-2産生の増加によって証明されるように、骨髄細胞がT細胞の活性化を抑制する能力を遮断した。細胞は、「前」条件である、極性化の間(IL-10を用いる)、AB101またはアイソタイプ対照で処理された。
10日目に、各96ウェルプレートからの共培養されたT細胞を、V底の96ウェルプレート(ThermoFisher No.249946)に移し、300×gで2分間遠心分離することによりペレット化した。ペレットをPBS(0.5μL/mL)中の100μLのe780生存率色素(eBiosciences No.65-0865-14)に再懸濁し、暗所にて室温で10分間インキュベートした。
e780染色に続いて、150μL FACS緩衝液(1×PBS+2mM EDTA+1%FBS)を加えることによって細胞を洗浄し、300×gで2分間遠心分離した。上清を除去した。細胞ペレットを50μL/ウェル FACSブロック(FACS緩衝液中の5μL/100μLのヒトTruStainFcX(商標)[Fc受容体ブロッキング溶液、BioLegend No.422302])に再懸濁し、4℃で30分間インキュベートした。
抗体カクテル(2×)は、1:50希釈(最終濃度は1:100)のAPC標識抗CD8(BD Pharmingen No.561953)および1:50希釈のFITC標識抗CD14(最終濃度は1:100)(BD No.347493)を含むFACSブロックを使用して作製した。この抗体カクテルを50μL/ウェルで添加し、暗所にて氷上で30分間インキュベートした。染色液を150μL/ウェルFACS緩衝液で洗浄した。細胞を300×gで2分間ペレット化した。上清を除去し、細胞を25μLの4%PFAで15分間、暗所にて氷上で固定した。フローサイトメーターでの分析前に、75μL/ウェルのPBSを添加した。
図16および図17に示されるように、AB101抗体は、極性化の間のAB101処理により、それぞれ、OKT3誘導性CD4+およびCD8+T細胞増殖を可能にした。さらに、図18に示されるように、極性化後、CD3+T細胞との共培養の間のもの(グラフ上で「Post」と表示)、または極性化の間および後(グラフで「PreおよびPost」と表示)を組み合わせたものである、AB101抗体を用いる処理は、アイソタイプ抗体処理と比較した場合の、IL-2産生の増強をもたらした。これらの結果は、AB101のM2cマクロファージへの結合が、M2c媒介T細胞増殖とIL-2産生の抑制を緩和することを示す。AB101処理は、IL-10を用いる極性化中に有効であり、構成的に抑制シグナルを克服し、M2c極性化後に有効であり、これは、インビボでの腫瘍微小環境における抑制性TAMに代表的である。
実施例12-M2c表面マーカー発現の減少
この実施例は、AB101での処理後のM2c表面メーカー発現の減少を示す。
単球を単離し(実施例2に記載)、AB101またはアイソタイプ対照抗体の存在下でM2cマクロファージ(実施例11に記載)に極性化した。次いで、実施例11に記載のプロトコルに従って、表現型抗体の表面マーカー発現について細胞を染色した。M2cマクロファージのAB101またはアイソタイプ対照抗体での処理後のマクロファージ表面発現について、正規化中央値蛍光強度(MFI)を下のグラフに表示する。生細胞は、e780固定可能生存率色素を使用してゲートした。正規化されたMFIは、AB101で処理された細胞のMFIをアイソタイプ対照で処理されたM2c細胞のMFIで除算することによって計算した。次に、試料をM2c対照のパーセントに正規化して、表面マーカーの発現の相対的な変化を示した。7人のドナーからのデータを平均し、2元配置分散分析を使用して統計を実行した。
図19に示すように、極性化の間のAB101抗体によるM2マクロファージの「Pre」処理は、CD16、CD64、カルレティキュリン、およびSiglec-15の発現を減少させた。低親和性IgG受容体であるCD16(FcγRIIIa)は、M2抑制マクロファージで高度に発現している。高親和性IgG受容体であるCD64(FcγRI)もM2で高発現している。Siglec-15は、免疫抑制に関与するITIMを含む膜貫通型タンパク質であり、これは抑制性マクロファージ上で特異的に発現する。
これらのマーカーの変化は、アイソタイプ対照抗体で処理されたM2c細胞では見られなかった。同様に、PD-L1、CD11b、CD14、CD32、CD163、CD206、HLA-DR、CD204、CD33、CD80、CD86、HLA-DR、DP、DQ、CD48、MARCO、LILRB2、CD172a(SIRPα)、IL10RおよびIL18Rの表面発現を評価したが、これらのマーカーの発現の変化はAB101処理では見られなかった。
実施例13-AB101で処理されたM2cマクロファージは、OKT-3活性化T細胞をTh1表現型に向けて歪める
この実施例は、AB101で処理されたM2cマクロファージが、OKT3で刺激されたT細胞によるTh1関連表面マーカーの発現を誘導することを示す。データは、M2c細胞のAB101処理が、M2cを媒介した免疫抑制を阻害し、抗腫瘍Th1細胞の活性化を調節することを示唆する。
腫瘍微小環境中の骨髄細胞である腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、腫瘍の増殖を促進する弱められた免疫応答を調整することが示されている。頻繁に、この効果は、T細胞をより低い比率のTh1/Th2に歪めることとして見ることができる(例えば、T細胞をTh2表現型に歪める)。したがって、本発明者らは、AB101がTAMと腫瘍浸潤リンパ球(TIL)との間のクロストークに影響を及ぼし、TILに対するTAMの抑制効果を緩和すると仮定した。
Th1対Th2ヘルパー細胞の比率は、AB101およびアイソタイプ対照の存在下または非存在下で評価した。M2cマクロファージは、5日目(「前」=極性化中)および7日目(「後」極性化、共培養中)にAB101またはアイソタイプ対照で処理された。7日目に開始して、処理されたM2cマクロファージをOKT3で刺激されたCD3+T細胞と3日間共培養して、T細胞の増殖を可能にする。T細胞増殖に続いて、10日目に、T細胞を共培養から取り出し、細胞表面マーカー抗体パネルで染色して、Th1対Th2の比率の歪みを決定した。表面マーカーおよび細胞生存率染色に続いて、T細胞を固定し、フローサイトメトリーによってTh1またはTh2マーカーの存在を分析した。パネル1は、Th1/Th2、Th17、およびTregの比率を決定するために使用されたのに対して、パネル2は、T細胞の活性化および消耗を決定するために使用された。
単球が得られ、マクロファージに培養され、マクロファージは、前の実施例に記載されたように極性化された。
CD3+T細胞は、製造業者の指示に従って、StemCell CD3+陰性選択キットを使用して、実施例2に記載されるように得られた。
マクロファージおよびT細胞は、実施例11に記載されるように、3日間共培養された。
10日目に、細胞は、実施例11に記載された方法に従って、以下の表4に記載された抗体カクテルを使用して標識された。
抗体カクテルは、残りの50μL/ウェルのブロッキング緩衝液を使用して2倍で作製され、パネル1抗体は1:50(最終濃度は1:100)であり、パネル2抗体は1:50(最終濃度は1:100)である。
インビトロ骨髄性細胞、M2c細胞は、共培養において活性化されたT細胞に対して免疫抑制効果を有し、ここでは、M2cは、T細胞増殖を阻害し、T細胞をTh2表現型に歪めた。
AB101での処理は、M2c細胞の抑制効果を軽減し、刺激されたT細胞がIL-2を産生し、増殖し(実施例11に示されるように)、それらを活性化Th1、炎症誘発性、表現型に向けて歪める能力を生じた。図20は、AB101でのM2c細胞の処理がアイソタイプ対照と比較してTh1/Th2比を増加させたことを示し、このことは、M2c細胞のAB101処理がT細胞をTh1表現型に向けて歪ませたことを示した。さらに、図21は、AB101でのM2c細胞の処理は、アイソタイプ対照と比較してCD4+T細胞上のCD69の発現が増加させたことを示し、このことは、M2c細胞がAB101で処理されたときに、CD4+T細胞がTh1表現型に歪むことを引き起こすことを示す。図22および図23は、AB101でのM2c細胞の処理が、アイソタイプ対照と比較して、CD4+T細胞上で、それぞれICOSおよびOX40の発現を増加させたことを示し、このことは、M2c細胞のAB101処理が、増殖したCD4+T細胞に活性化マーカーの発現の増強を引き起こすことを示す。
実施例14-CD8 T細胞によるRaji細胞のCD19-CD3二重特異性T細胞エンゲージャー媒介殺傷の骨髄細胞抑制の低下
この実施例は、AB101処理が、CD8 T細胞によるCD19-CD3 BiTE媒介性のRaji細胞の殺傷の骨髄細胞抑制を減少させることを示す。腫瘍細胞殺傷は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)抗体(ヒトCD19およびヒトCD3に対する二重特異性抗体、InvivoGen Bimab-hcd19cd3)を使用して、アイソタイプ対照抗体に対して、AB101について評価した。M2cマクロファージは、共培養中の5日目の極性化前(「前」)および7日目の極性化後(「後」)にAB101またはアイソタイプ対照で処理した。T細胞の増殖を可能にするために、T細胞との共培養を7日目から開始して3日間続けた。10日目に、T細胞をマクロファージとの共培養から取り出し、続いて腫瘍細胞+/-BiTE抗体上でインキュベートして、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)と腫瘍細胞との接触を促進した。BiTE抗体での処理後、フローサイトメトリーによって腫瘍細胞を生存率について染色した。
単球を培養し、マクロファージを実施例11に記載のように極性化させた。CD8+T細胞を実施例11に記載のように得た。マクロファージ(25,000細胞/ウェル)は、記載された方法を使用して、CD8+T細胞(115,000細胞/ウェル)とともに3日間共培養した。
10日目に、Raji(ATCC No.CCL-86)およびK562(ATCC No.CCL-243)細胞を、実施例11に記載の方法を使用してCellTraces Violetで染色した。次いで、腫瘍細胞を、平底96ウェル組織培養プレート中のM0培地に100k細胞/ウェルで再懸濁した。いくつかの未染色および染色された細胞は、フロー分析のための単一染色対照のために取っておかれた。
10日目に、CD8+T細胞は、StemCell CD8陰性選択キットを使用して、T細胞/マクロファージ共培養から単離した。回収したT細胞をRajiおよびK562細胞プレートにウェルあたり100μLでプレーティングした。二重特異性抗体を各RajiおよびK562プレートに最終濃度10ng/mL、最終容量220μL/ウェルで添加した(いくつかのウェルは対照としてBiTEを含まない)。細胞をBiTE処理で37℃、5%CO2で一晩培養した。
11日目に、細胞を新しいV底プレートに配置し、300×gで2分間遠心分離した。上清をすべてのプレートから採取し、新しいV底96ウェルプレートに移し、その後密封し、後のサイトカイン分析のために-80℃で保存した。細胞をFACS緩衝液(PBS+1%FBS)に再懸濁し、実施例11に記載されるように、抗CD8、抗CD14(非標的細胞を除外するため)、およびe780生存率色素で染色した。染色後、細胞をFACS緩衝液ですすぎ、4%PFAを使用して固定し、フローサイトメトリー分析のためにPBSに再懸濁した。CellTraceバイオレット標識腫瘍細胞は、細胞内にFixable Viability Dye eFluor(商標)780を含めることにより、腫瘍細胞死について評価した。eFluor(商標)780色素について陽性の細胞は、BiTEなしの対照ウェルと比較した死滅率としてプロットした。
AB101での処理は、アイソタイプ対照と比較してT細胞増殖の増加を可能にする、M2cマクロファージの抑制効果を軽減した。図24に示されるように、BiTEの存在下でのCTLの増加は、アイソタイプ対照と比較して、Raji腫瘍細胞殺傷の増加をもたらした。K562は陰性対照として使用され、殺傷+BiTE抗体の増加は示さなかった。
実施例15-ヒト初代M2cマクロファージによる抗体の内在化
0日目に、単球(実施例2を参照)を、100μL(1×106/mL)のM0培地中1×105/ウェルで、光学的に透明な底の96ウェル組織培養プレートにプレーティングして、マクロファージに分化させた。5日目に、プレートを回転させて浮遊細胞を取り除き、培地を穏やかに吸引した。以前の実施例に記載したように、マクロファージは100μL/ウェルのM2c培地中でM2cに極性化された。
6日目に、抗体は、Alexa Fluor(商標)647抗体標識キット(Invitrogen No.A20186)を使用して標識した。各抗体(100μg)を50μL PBSで2mg/mLに希釈した。テストした抗体は以下の通りであった:AB101 huIgG1およびAB102 huIgG1ADCC-Null、CD163マウスモノクローナルIgG1抗体(R&D Systems MAB1607-100)、およびアイソタイプ対照:ISO1 huIgG1またはISO2ヒトFc-nullフレームワーク。
キットからのA-647カルボン酸スクシンイミジルエステルのバイアル全体を150μL PBSに再懸濁した。A-647溶液のアリコート(50μL)を希釈抗体の各チューブに1mg/mLで添加し、混合物を暗所にて室温で45分間インキュベートした。
Zebra脱塩カラム(Thermo 87766)を、最初に底部を切り取り、4,100rpmで1分間遠心分離して貯蔵緩衝液を除去することにより洗浄した。次に、カラムを300μLのPBSで2回(4,100rpmで1分間スピン)、300μLのPBSで1回(4,100rpmで2分間スピン)洗浄した。カラムを新しい琥珀色のチューブに入れ、抗体を個別にロードした。次に、カラムを4,100rpmで2分間遠心分離し、Alexa-647標識抗体を1mg/mLで溶出した。
7日目に、培養プレートをはじくことによってFBS含有培地を培養プレートから除去し、プレートを250μLの冷PBSで2回洗浄し、続いて、標識AB101、ISO1、および抗CD163抗体(R&D Systems MAB1607-100)で染色するための、Fc受容体をブロックする、20μg/mLの非標識ISO1 IgG1抗体、またはAB102およびISO2で染色するための非標識ISO1ブロックを伴わない培地を含む90μLのX-VIVO培地を添加した。細胞を37℃、5%CO2で30分間インキュベートした後、最終濃度が5μg/mLの標識抗体を添加した。1時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞を250μLの冷FACS緩衝液で洗浄し、続いて4%PFA(BD Cytofix/Cytoperm No.554722)を暗所にて室温で10分間添加した。細胞成分の対比染色は、1mLあたり2滴/mLのNucBlue(商標)(Molecular Probes No.R37605)およびActinGreen(商標)(Molecular Probes No.R37110)を1×Perm Buffer(BD Perm/Wash No.554723、水中1:10で希釈)を添加することによって調製した。プレートをはじいて固定液を取り除き、対比染色液(20μL/ウェル)を加えた。染色は暗所にて室温で20分間進行した。次いで、細胞を250μL/ウェル PBSを加えることにより洗浄し、これを除去して50μL/ウェル PBSと置き換えた。セロミクス(Cellomics)機器を使用して細胞を画像化した。
これらのデータは、セロミクスによって決定された細胞内の平均蛍光値(AF647における平均リング平均強度)である。細胞は、DAPI染色された核(NucBlue)およびFITC標識細胞骨格(AcinGreen)によって規定および検出される。図25は、少なくとも4人の個々のドナーの代表的な結果を示す。すべての場合において、アイソタイプ対照抗体は内在化せず、AB102抗体は市販の抗CD163抗体(R&D Systems MAB1607-100)と同程度まで内在化した。AB101(IgG1)抗体は、AB102(FcNull)または市販のCD163抗体よりも約2倍多く内在化した。
実施例16-AB101はヒト肺癌異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害する
AB101は、ヒト肺癌異種移植モデルにおいてインビボでの腫瘍増殖阻害について試験した。AB101処理後、腫瘍のサイズと重量は対照群と比較して有意に減少し、脾臓のCD8+T細胞におけるCD8+T細胞の割合、ならびにT細胞活性化マーカーであるICOSおよびOX40の表面発現が対応して増加した。CD4+T細胞については違いは観察されなかった。これらの結果は、AB101がCD8+T細胞の活性化および増殖を促進することを示唆しており、以前の実施例で示したインビトロ研究と一致している。さらに、CD11b+細胞の割合が増加した。CD11bは、単球、マクロファージ、顆粒球、樹状細胞、およびナチュラルキラー細胞に存在する。まとめると、これらの知見は、AB101が腫瘍量を制御するために免疫応答を増強するための処置的応用を有しているかもしれないことを示唆している。
AB101の処置可能性を決定するために、インビボでの腫瘍増殖の減少におけるAB101の有効性を、ヒトCD34+造血幹細胞の生着および多系統免疫細胞集団の再構成を使用して試験した。
A549(ヒト肺癌、p53野生型)およびNCI-H1975(ヒト肺腺癌、p53変異、p.R273H、)の凍結アリコートをATCCから購入した(それぞれ、カタログ番号CCL-185およびCRL-5980)。A549細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS、Corning、カタログ番号35-010-CV)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(pen/strep、HyClone、カタログ番号SV30010)を補充したF-12K培地(ATCC No.30-2004)で培養した。H1975細胞は、10%FBSおよび1%Pen/Strepを補充したRPMI(HyClone、カタログ番号SH30096.02)で培養した。マウスへの皮下注射の前に、細胞を37℃/5%CO2で複数回継代して増殖させた。
NSG-SGM3マウスに2つのヒト臍帯血ユニットを移植し、これは、Shultz et al.,Nat Rev Immunol 7(2):118-30(2007)[PubMed:17259968]; Shultz et al.,Nat Rev Immunol 12(11):786-98(2012)[PubMed:23059428];Ishikawa et al.,Curr Top Microbiol Immunol 324:87-94(2008)[PubMed:18481454];Pearson et al.,Curr Protoc Immunol;Chapter 15:Unit 15.21(2008)[PubMed:18491294]において以前に記載されたように、The Jackson Laboratoryによって実施された。これらのマウスのうちの2匹は病気になり安楽死させられた。施設に到着すると、これらのマウスは5日間順応させられた。各マウスの左右の脇腹を6日目に剃毛した。
7日目に、A549およびH1975細胞を培養物から採取し、PBS(Ca2+またはMg2+を含まないリン酸緩衝生理食塩水、HyClone No. SH30028.02)で3回洗浄し、Corning Matrigel(登録商標)メンブレンマトリックス(Fisher Scientific No.CB-40234C)中に5×106細胞/mLの密度で再懸濁した。A549細胞を右脇腹に注射し、H1975細胞を100μLマトリゲル中の5×105細胞の用量で各マウスの左脇腹に注射した。
注射の5日後、腫瘍をデジタルノギス(Fisher Scientific No.NC0649232)によって測定した。腫瘍が50~75mm3(腫瘍体積=(W(2)×L)/2)に達したら、Webベースのランダマイザーアプリケーション(https://www.randomizer.org/)を使用してマウスを無作為化し、1群あたり7匹のマウスを含む2つの群(以下に表示)に分けた:
(1)アイソタイプ対照抗体(ISO1 Hu IgG1)、
(2)AB101抗体(Hu IgG1)。
マウスは、無作為化の日から開始し、その後3日ごとに抗体処置を受けた。各マウスは、腹腔内注射を介して、100μLのPBS中の処置ごとに200μgのアイソタイプ対照またはAB101を受けた。腫瘍サイズは、26日目まで、月曜日、水曜日、および金曜日に測定した。致命的な病的状態の兆候を示したマウスはすべて記録され、すぐに安楽死させられた。26日目にマウスを屠殺した。さらなる分析のために腫瘍および脾臓を採取した。
単離された腫瘍は、脂肪、線維性、および壊死性の領域を除去し、2~4mmの小片に切断することによって、秤量し、処理した。処理された腫瘍は、腫瘍解離酵素混合溶液(Tumor Dissociationキット、マウス、MACS Miltenyi Biotec、No.130-096-730)を含むgentleMACS Cチューブ(MACS Miltenyi Biotec,No.130-096-334)に添加した。細胞は、gentleMACS解離剤(MACS Miltenyi Biotec,No.130-093-235)を使用して解離し、5%CO2および95%湿度で30分間インキュベートした。細胞をペレット化し、PBSに再懸濁し、100μmセルストレーナー(Corning No.352360)を使用して濾した。解離した単一細胞をフローサイトメトリーで分析した。
脾臓は、セルストレーナーを通して圧搾することによって処理され、単一の細胞に解離された。10mLシリンジプランジャーヘッドを使用して、脂肪および線維組織を除去した。フローサイトメトリーによる分析のために、脾臓細胞をペレット化し、PBSに再懸濁した。
腫瘍および脾臓からの骨髄およびT細胞は、以下の表5に示される抗体カクテルパネルを用いたフローサイトメトリーを使用して定量化された。細胞生存率は、e780生存率色素(eBiosciences No.65-0865-14、PBS中1:500)を使用して評価した。一次抗体またはアイソタイプ対照抗体で染色する前に、細胞をFACS緩衝液(PBS+1%FBS+1mM EDTA(Fisher Scientific No.15575-038))中のe780とともに4℃で10分間インキュベートした。次に、細胞を200μLのFACS緩衝液で洗浄し、25μL Fcブロック(FACS緩衝液+5μL/mLのFcブロック(BioLegend No.422302))で4℃にて30分間ブロックした。抗体染色液(下記の表5を参照)を細胞に添加し(25μL)、暗所でさらに30分間4℃でインキュベートした。FACS分析の前に細胞を3回洗浄した。
AB101処置は、アイソタイプ対照抗体と比較して、A549およびH1975腫瘍増殖を有意に減少させる。図26および図27は、A549とH1975のそれぞれについて、プロットされた30日間にわたる腫瘍を示す。矢印は、抗体処置による注射を示す。各点は、マウス7匹の平均測定値を表す。エラーバーは、平均標準誤差(SEM)を示す。統計的有意差は、Mann-Whitney検定を使用して算出した。
アイソタイプ対照において、A549およびH1975腫瘍の体積は、時間とともに増加した。しかし、AB101処置を受けたマウスでは、A549腫瘍は、アイソタイプ対照と比較して遅い成長を示したが、一方、H1975腫瘍は、17日目に退縮を示し、その後増殖は一定のままであった。D5での無作為化において、アイソタイプ対照とAB101の平均腫瘍体積はそれぞれ63.6mm3および63mm3であり、D26ではアイソタイプ対照の平均腫瘍体積は378mm3であったのに対して、AB101の平均腫瘍体積は198mm3であった。D5のH1975腫瘍体積はアイソタイプ対照およびAB101でそれぞれ57.8と34.2であり、D26ではアイソタイプ対照の平均腫瘍体積は164.4mm3であったのに対して、AB101の平均腫瘍体積は57.4mm3であった。
AB101処置は、A549およびH1975腫瘍の両方の腫瘍サイズを有意に減少させた。腫瘍はD26で切除され、重量が測定された。AB101は、アイソタイプ対照と比較して、A549腫瘍のサイズを49%縮小し(平均腫瘍重量:アイソタイプ対照で538.2mg、AB101で273.0mg、p=0.003)、H1975腫瘍を60%縮小した(平均腫瘍重量:アイソタイプ対照で217.2mgおよびAB101で85.6mg、p=0.0009)。
AB101処置は、脾臓中の全生細胞中のCD8+T細胞および骨髄性細胞の割合を有意に増加させた。CD8+T細胞の平均パーセントはアイソタイプ対照の1.3からAB101の3.3に増加し、CD11b+細胞の平均パーセントはアイソタイプ対照の2.1からAB101の4まで大幅に増加した。
AB101処置はまた、脾臓におけるヒトCD8+T細胞上の活性化マーカーの発現を有意に増強した。CD8+T細胞でのICOS発現の平均MFIは、アイソタイプ対照の318からAB101の841まで増加し、OX40発現の平均MFIは、アイソタイプ対照の586からAB101の1561まで増加した。
実施例17-AB101は、M2c/T細胞共培養アッセイにおけるT細胞のM2c媒介免疫抑制を緩和する
AB101がTMEにおける癌媒介性免疫回避を調節することができるかどうかを評価するために、ヒトPBMC由来T細胞を自己免疫抑制M2cマクロファージと共に培養した。M2c媒介免疫抑制から抗CD3(OKT3)活性化T細胞をレスキューするAB101免疫調節活性は、処置効果の読み取りとしてT細胞増殖およびIL-2産生を用いて、3つの処置レジメンの下で評価された。図28は実験計画を示す。
AB101がM2様腫瘍関連マクロファージの生成を妨害するかどうかを決定するために、M0マクロファージを、AB101またはアイソタイプ対照の存在下で(「Pre」レジメン)M2cマクロファージに極性化した。T細胞との共培養前に処置抗体を洗い流した。AB101処置がM2c媒介免疫抑制からT細胞をレスキューするどうかを評価するために、T細胞を、M2cマクロファージおよびAB101の存在下で抗CD3、またはM2c/T細胞共培養中のアイソタイプ対照の存在下で(「Post」レジメン)活性化した。インビボ免疫療法を模倣するために、PreおよびPostのレジメンを組み合わせた(Pre/Post)。
実験の最初のセットにおいて、M2c極性化に対するAB101の効果は、3人の健康な対象からのヒト単球由来マクロファージおよびT細胞を用いて評価された。CD4+およびCD8+T細胞は、AB101またはアイソタイプ対照で処理された自己M2cマクロファージの存在下でOKT3を用いて活性化された。M2cマクロファージ単独と共培養されたOKT3刺激T細胞を使用して、M2c媒介免疫抑制を評価した。IFN-γ+LPS極性化M1マクロファージとのT細胞共培養は、最適なT細胞活性化の尺度を提供した。OKT3活性化を伴わないM2c/T細胞共培養は、静止T細胞に似ていた。図29は、AB101処理が、アイソタイプ対照よりもCD4+およびCD8+T細胞の増殖をそれぞれ***細胞の7~54%(p<0.01)および21~83%(p<0.05)有意に増強したことを示す。M1マクロファージおよびAB101で処理されたM2cマクロファージは、同様のレベルの増殖を誘発した。加えて、図30は、AB101処理または未処理M2c群からの活性化T細胞によるIL-2分泌と比較した場合、M2cマクロファージのAB101前処理が3つの研究対象すべてからの活性化T細胞によるIL-2産生を有意に増加させたことを示す。AB101で処理されたM2cマクロファージとの共培養からのIL-2レベルは、M1マクロファージとの共培養で達成されたものと同等かそれ以上であった。予想通り、OKT3活性化なしでM2cと共培養したT細胞は、検出可能なレベルのIL-2を産生しなかった。
次に、Preレジメン、Pre/PostレジメンおよびPostレジメンの下でのCD8+T細胞/M2c共培養に対するAB101処理の効果を評価した。実験は、3人の健康な対象からのPBMCを使用して実行した。3人の研究対象からのCD3+T細胞は、M2cマクロファージの存在下、抗CD3(OKT3、0.25μg/mL)で活性化された。M2cマクロファージは、極性化の間、AB101(20μg/mL)、ヒトIgG1アイソタイプ対照(20μg/mL)、または培地単独で処理された(前、共培養前)。抗CD3刺激の72時間後にT細胞を採取し、フローサイトメトリーによって増殖を定量化した。P値は、M2c、AB101、およびIgG1アイソタイプ対照処置群についてのダネットのT3多重比較検定によって計算した(p<0.05、*、p<0.01、**p<0.001、***)。
図31は、アイソタイプ対照群と比較した場合、AB101処置が、PreレジメンおよびPostレジメンのCD8+T細胞増殖を有意に増強したことを示す(p<0.05)。AB101のPreレジメンとPostレジメンは、対応するアイソタイプ対照群の値と比較した場合、***したCD8+T細胞の割合をそれぞれ23から42%と26から47%に増加させた。CD8+T細胞増殖の最大の増加は、AB101 Pre/Post群で観察され、アイソタイプ対照Pre/Post対照群の22%***CD8+T細胞と比較して、49%***CD8+T細胞であった(p=0.062)。
図32は、個々の研究対象に対応するIL-2データを示す。AB101処置群の3人の対象はすべて、M2c単独およびアイソタイプ対照群と比較した場合、CD8+T細胞のIL-2産生を有意に増加させた。最高のIL-2分泌は、M2c/T細胞共培養の前後の併用処置で達成された。3つのAB101処置レジメンの増殖およびIL-2データは、AB101がM2c細胞の極性化に影響を与えるだけでなく、T細胞/M2c共培養の間のM2c媒介免疫抑制を緩和することを示した。
図33および図34は、前およびPre/Post AB101処置の編集された増殖データを示す。AB101は、CD4+T細胞の増殖よりもCD8+T細胞の増殖に大きな影響を及ぼした。AB101処置は、それぞれ前(n=16、p<0.001)およびPre/Postレジメン(n=13、p<0.001)で、対応するアイソタイプ対照値よりもCD8+T細胞の増殖を有意に増強した。CD4+T細胞は、AB101PreレジメンおよびPre/Postレジメンに応答して増殖し、アイソタイプ処理されたM2cマクロファージと比較した場合、***した細胞の割合が31から44%(前、n=18、p<0.01)および42から49%(Pre/Post、n=14、p<0.05)の増加であった。
図35は、M2c細胞の極性化中のAB101での処理がまた、M2c/T細胞共培養アッセイにおいてT細胞のIL-2産生を有意に増強したことを示す。前処理AB101群のT細胞は有意に高いレベルのIL-2を産生し、中央値は292ng/mLであり、対応するアイソタイプ対照処置群のT細胞からの104ng/mLよりもほぼ3倍高かった(n=21、p<0.0001)。AB101 Pre/Post処理は、333ng/mLのT細胞によるIL-2応答を生成し、これは、アイソタイプ対照で処理されたM2c/T細胞共培養からの227ng/mLよりも50%大きかったが、しかし、この違いは有意さに到達しなかった。
実施例18-AB101は、M2cマクロファージと共培養されたT細胞によるT細胞増殖およびサイトカイン応答の回復においてAB104よりも強力である
AB101媒介性の免疫抑制の軽減が、M2cマクロファージによって発現されるFc受容体との相互作用を必要とするかどうかを決定するために、本発明者らは、M2c/T細胞共培養アッセイにおいてAB101-IgG4(AB104)およびAB101-IgG1Fcヌル(AB102)アイソタイプを評価した。AB101 IgG1-Fc領域は、M2cマクロファージ上のCD64、CD32、およびCD16に結合するが、IgG1FcヌルアイソタイプのFcγ受容体への結合は最小限である。IgG1 Fc領域と同様に、IgG4 Fc領域はCD64に対してナノモル濃度の親和性を有しているが、通常はCD32またはCD16Fc受容体に結合しない。AB101、AB102、およびAB104アイソタイプがT細胞増殖に対するM2c媒介免疫抑制を緩和する能力を、5人の研究対象からの細胞と比較した。
4人(CD8+T細胞)および5人(CD4+T細胞)のヒト対象から単離されたT細胞を、M2cマクロファージの存在下、抗CD3(OKT3、0.25μg/mL)で活性化した。M2c/T細胞共培養は、Pre/Postレジメンの下で、20μg/mLの示されたAB101のアイソタイプで処理された。M2/T細胞共培養単独を、M2c媒介免疫抑制の対照として使用した。T細胞を、抗CD3刺激の72時間後に採取し、増殖をフローサイトメトリーによって定量化した。記号は個々の研究対象を表する。P値は、示された処置群を比較する、対応のある両側t検定によって計算された(p<0.05、*、ns、有意ではない)。
図36は、IgG1アイソタイプ対照(52~78%CD8+T細胞、46~65%CD4+T細胞)と比較した場合、およびAB102(52~78%CD8+T細胞、42~65%CD4+T細胞)と比較した場合、AB101Pre/Postレジメンが抗CD3活性化CD8+およびCD4+T細胞の平均増殖を有意に(p<0.05)増強したことを示す。AB104およびAB102処理は、それぞれのアイソタイプ対照と比較した場合、T細胞の増殖応答をわずかにしか増強しなかった。AB104処置群のCD4+T細胞の増殖反応のみが、IgG4アイソタイプ対照群よりも有意差に達した(39~47%の***細胞、p<0.05)。
図37は、AB101 Pre/Postレジメンが、IgG1アイソタイプ対照(40%***細胞、p<0.05)およびAB104処理(41%***細胞、p<0.05)と比較した場合、OKT3媒介CD8+T細胞増殖(70%***細胞)に対して強力かつ有意な刺激効果を有したことを示す。さらに、AB101Postレジメンは、アイソタイプ対照(27%***細胞、p<0.05)またはAB104処理(20%***細胞、p<0.05)と比較した場合、有意に増強されたCD8+T細胞増殖(54%分割細胞)を示した。AB104処置は、Pre/PostレジメンまたはPostレジメンのIgG4アイソタイプ対照よりも増殖反応を有意に改善しなかった。
M2c/T細胞共培養(Postレジメン)中のAB101処置は、M2c媒介免疫抑制を軽減し、抗CD3活性化CD8+T細胞による強力なサイトカイン応答を誘導した。3人の研究対象から単離されたCD8+T細胞は、M2cマクロファージの存在下で、抗CD3(OKT3、0.25μg/mL)で活性化された。M2c/T細胞共培養は、Postレジメンの下で、20μg/mLのAB101、ヒトIgG1アイソタイプ対照、AB104、ヒトIgG4アイソタイプ対照、および培地のみ(M2c)で処理された。抗CD3刺激の72時間後に上清を採取し、サイトカイン分泌を、磁気ビーズベースのイムノアッセイによって定量化した。P値は、示された処置群を比較する、対応のある両側t検定によって計算した(p<0.05、*、p<0.01、**、p<0.001、***、ns、有意ではない)。
図38は、IgG1アイソタイプ対照と比較した場合、AB101が、すべての研究対象においてIFNγおよびパーフォリンレベルを有意に増強したことを示す。表6は、AB101処置群の平均IFN-γ、パーフォリン、およびIL-6レベルが、IgG1アイソタイプ対照値と比較して、530から1600pg/mL(IFN-γ)、210から1900pg/mL(パーフォリン)、および203から690pg/mL(IL-6)に増加したことを示す。さらに、AB101処置は、3人の研究対象のうち2人で、TNF-α分泌を回復し、対応するIgG1アイソタイプ対照値に対して、60pg/mLから830pg/mLまで、および1pg/mLから120pg/mLまで、大幅な増加を伴った。表1に示すように、AB101 Pre/Postレジメンは、パーフォリンおよびテストされたサイトカインについての同様のサイトカインレベルを誘導することにより、Postレジメン群を用いて観察された結果を確認した。AB104は、どの処置群においてもM2c媒介免疫抑制を緩和しなかった。評価されたM2c共培養におけるIL-10レベルは、すべての処理条件下でアッセイの検出下限にあった。
AB101PostレジメンおよびPre/PostレジメンM2c/CD4+T細胞共培養についての対応するサイトカインおよびパーフォリンの結果を図39および表2に示す。3人の健康な研究対象から単離されたCD4+T細胞は、M2cマクロファージの存在下、抗CD3(OKT3、0.25μg/mL)で活性化した。M2c/T細胞共培養は、Postレジメン下、AB101(20μg/mL)、ヒトIgG1アイソタイプ対照(20μg/mL)、AB104(20μg/mL)、ヒトIgG4アイソタイプ対照(20μg/mL)、および培地単独(M2c)で処理した。抗CD3刺激の72時間後に上清を採取し、磁気ビーズベースのイムノアッセイによってサイトカイン分泌を定量化した。P値は、示された処置群を比較する、対応のある両側t検定によって計算された(p<0.05、*、p<0.01、**、ns:有意ではない)。
AB101は、IgG1アイソタイプ対照およびAB104と比較した場合、すべての研究対象においてIFNγ、TNF-αおよびパーフォリンレベルを有意に増強した。AB101処置群の平均IFN-γ、TNF-α、パーフォリンおよびIL-6レベルは、IgG 1アイソタイプ対照値と比較して、770から1700pg/mLまで(IFN-γ)、420から1400pg/mLまで(TNF-α)、220から780pf/mLまで(パーフォリン)、および1300~5100pg/mLまで(IL-6)増加した。AB101 Pre/Postレジメンは、パーフォリンおよびテストされたサイトカインについて同様のサイトカインレベルを誘導することにより、Postレジメン群で観察された結果を確認した。AB104は、IgG4アイソタイプ対照群の対応するレベルと比較した場合、サイトカインまたはパーフォリン応答を増強しなかった。
結論として、M2c媒介免疫抑制からのAB101によるT細胞サイトカイン応答のレスキューおよびAB104アイソタイプによる効力の欠如は、AB101 Fc受容体相互作用がAB101機能に必要とされ得ることを示唆している。
実施例19-AB101処理はCD8+T細胞の細胞傷害性活性を増強した
AB101がTME中のCD8+T細胞による腫瘍細胞殺傷を増強するかどうかを決定するために、M2cマクロファージの存在下、抗CD3抗体で刺激されたCD8+T細胞の細胞傷害性活性を評価した。この研究では、腫瘍抗原特異的、T細胞媒介性の腫瘍細胞の殺傷が、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))技術に置き換えられた。BiTE抗体は、2つのモノクローナル抗体の可変ドメインからなる融合タンパク質であり、癌細胞をCTLに橋渡しするように設計されている。一方の可変ドメインは癌細胞表面上の抗原を標的とし、他方の可変ドメインはT細胞の表面のCD3と結合する。BiTE(登録商標)抗体の両アームが結合すると、T細胞と癌細胞は互いに近接するように強制される。その結果、T細胞と癌細胞の間に細胞溶解性シナプスが形成され、T細胞からパーフォリンおよびグランザイムが放出され、腫瘍細胞死が起こる。
CD19-CD3 BiTE抗体を使用して、BiTEのCD19標的を発現するRajiB細胞リンパ腫細胞のT細胞媒介腫瘍細胞死滅におけるAB101の有効性を評価した。M2c/CD8+T細胞共培養のAB101処理は、M2c媒介免疫抑制を緩和し、CD8+T細胞の細胞溶解活性を拡大および増強する可能性がある。CD8+T細胞は、BiTEの非存在下で同種HLA制限細胞溶解によってRaji細胞を殺傷する可能性もある。CD8+T細胞による非HLA制限細胞死の評価のために、BiTEまたはHLAを発現しないK562細胞(慢性骨髄性白血病細胞株)を含めた。
M2cマクロファージおよび自己ヒト初代CD8+T細胞の共培養は、抗CD3で活性化され、3日間増殖された。共培養は、AB101(20μg/mL)、ヒトIgG1アイソタイプ対照(20μg/mL)、または培地単独で、Preレジメン、Pre/Postレジメン、およびPostレジメンで処理した。PreレジメンおよびPostレジメンでは、処置用抗体は、それぞれM2c極性化の間、およびM2cT細胞共培養の間にのみ添加した。P値は、AB101をM2cおよびアイソタイプ対照処置群とそれぞれ比較する、対応のある両側t検定によって計算された(p<0.05、*;p<0.01、**:p<0.001、***;p<0.0001、****;ns:有意ではない)。細胞毒性の読み出しを伴うM2/T細胞共培養アッセイのワークフローを図28に示す。
エラー!参照元が見つかりません。図40は、アイソタイプ対照と比較した場合、M0からM2マクロファージへの極性化の間、またはM2c/T細胞共培養の間のAB101処理が、CD19-CD3 BiTE(登録商標)抗体の存在下で、Raji細胞の殺傷を有意に増強したことを示す。Raji細胞死の割合は、Preでは66から77%(p<0.01)、Pre/Postでは64から83%(p<0.001)、Postレジメンでは65から82%(p<0.01)に増加した。Raji BiTE(登録商標)殺傷アッセイは、ダイナミックレンジが小さく、バックグラウンドが高く、静止CD8+T細胞(灰色のバー、黒丸)をM2c細胞とともに培養してRaji細胞の71%を殺傷した。
特に、AB101処置はまた、K562癌細胞を標的とする非HLA制限性CD8+T細胞の細胞傷害性活性を増加させた。M2cマクロファージおよびT細胞のPre/PostおよびPostAB101処置は、関連するアイソタイプ対照値と比較して、腫瘍細胞の殺傷をPre/Postで12から41%まで(p<0.01)、Post条件下で13から36%まで(p<0.05)増強した。
次に、ヒト対象のパネルからのCD8+T細胞の細胞傷害性活性に対するAB101の効果を評価した。8人の研究対象からのCD8+T細胞は、抗CD3(OKT3、0.25μg/mL)を含む自己M2cマクロファージの存在下で増殖させた。M2cマクロファージ単独、および共培養物を、AB101(20μg/mL)、ヒトIgG1アイソタイプ対照(20μg/mL)、または培地単独で、Preレジメン、Pre/Postレジメン、およびPostレジメンで処理した。抗CD3刺激の72時間後にT細胞を採取し、CD19-CD3BiTE抗体の存在下または非存在下でRaji細胞とともに培養した。Raji細胞の細胞死は、細胞溶解アッセイのセットアップの18時間後にフローサイトメトリーによって決定された。P値は、AB101をM2cおよびヒトIgG1アイソタイプ対照処置群とそれぞれ比較する、対応のある両側t検定によって計算した(p<0.01、**;p<0.001、***)。
エラー!参照元が見つかりませんに示されるように、AB101Pre/Post処理は、ヒトIgG1アイソタイプ対照群と比較した場合、CD8+T細胞媒介BiTE(登録商標)支援Raji細胞殺傷を49.5%から63.5%まで(p<0.001)に顕著に増加させた。BiTEがない場合、AB101群のCD8+T細胞は、Raji細胞の細胞溶解を35%から43%まで増強した(p<0.01)。
次に、非HLA制限性CD8+T細胞の細胞傷害性活性に対するAB101の効果を評価した。8人の研究対象からのCD8+T細胞は、抗CD3(OKT3、0.25μg/mL)を含む自己M2cマクロファージの存在下で増殖させた。M2cマクロファージ単独および共培養物を、AB101(20μg/mL)、ヒトIgG1アイソタイプ対照(20μg/mL)、または培地単独で、Preレジメン、Pre/Postレジメン、およびPostレジメン下で処理した。抗CD3刺激の72時間後にT細胞を採取し、K562細胞とともに培養した。K562細胞の細胞死は、アッセイ設定の18時間後にフローサイトメトリーによって決定した。P値は、AB101をM2cおよびヒトIgG1アイソタイプ対照処置群とそれぞれ比較する、対応のある両側t検定によって計算された(p<0.01、**)。
図42は、AB101処理がK562殺傷アッセイで細胞溶解性CD8+T細胞活性に最も強い影響を及ぼしたことを示す。AB101処置群の平均細胞死はヒトIgG1アイソタイプ対照群の2倍高く、平均K562殺傷はそれぞれ14%から29%まで増加した(p<0.01)。
実施例20-AB101は、M2cマクロファージと共培養されたT細胞上のケモカイン受容体の発現を調節する
AB101がCD4+およびCD8+T細胞の活性化状態を変化させるかどうかを決定するために、ケモカイン受容体の発現、および活性化または消耗のマーカーを、図28に示すようにM2c/T細胞共培養アッセイで評価した。
抗CD3活性化T細胞を、極性化の間にAB101またはアイソタイプ対照で処理された自己M2c細胞とともに共培養した。未処理M2cまたはIFN-γLPS活性化M1マクロファージとともに共培養された抗CD3活性化T細胞は、それぞれ免疫抑制および免疫活性化の対照として含まれていた。静止T細胞は、抗CD3活性化なしでM2cマクロファージとともに共培養された。抗CD3活性化の3日後、T細胞をフローサイトメトリーで分析した。フローサイトメトリー染色パネル1(表8)には、活性化マーカー(CD25およびCD69)、静止T細胞マーカーCD127、ならびに、CD4+T細胞サブセットを分化させるために通常使用されるケモカイン受容体CXCR3、CXCR4(CD194)およびCCR6(CD196)に対する抗体が含まれていた。フローサイトメトリー抗体パネル2(表8)には、T細胞活性化および消耗マーカーLAG3、OX40、PD-1、ICOS、およびCTLA-4が含まれていた。
3人の研究対象から単離されたT細胞は、M2cマクロファージの存在下、抗CD3(OKT3、0.25μg/mL)で活性化された。M2c/T細胞の共培養は、M2c極性化の間、AB101(20μg/mL)、ヒトIgG1アイソタイプ対照(20μg/mL)、または培地単独で処理された。M1/T細胞共培養は陽性対照として含まれていた。フローサイトメトリーのために、抗CD3刺激の72時間後に上清を採取した。ヒートマップは、すべての研究対象の組み合わせた処置群のFlowSOMクラスター分析を表す。
CD4+T細胞の表現型は、フローサイトメトリーパネル1およびバイアスのないクラスタリングのためのFlowJo FlowSOMプラグインを使用して評価した。図43に示すように、すべてのM2c/T細胞共培養群からのCD4+T細胞のFlowSOMクラスタリングは、表面マーカーについて示差的な発現レベルを有する8つのクラスター(0~7の番号)を特定した。クラスター1は静止T細胞を表し、クラスター6は活性化されたTh1様T細胞に似ている。
AB101処理がCD4+T細胞の比率にどのように影響したかについての視覚化された代表的な例を表9および図43に示す。抗CD3活性化なしでM2c細胞とともに共培養されたT細胞の大部分(平均=74%)がクラスター1で見出された(3人の研究対象のうち3人から)。クラスター1細胞は、CD69、CXCR3、CCR4、もしくはCD25の発現が低いかまったくない、またはCD127の発現が上昇している、静止表現型を有していた。免疫活性化M1極性化マクロファージの存在下で、T細胞の大部分(57%、3人の対象すべての平均)は、CXCR3の高発現と、CCR4、CD127、CCR6、および活性化マーカーCD25およびCD69の低発現とを特徴とする活性化表現型を採用する(クラスター2)。M1共培養はまた、CD25、CXCR3、およびCCR4の発現の上昇を伴う独自のより小さなサブセットも誘導する(クラスター7、M1とともに共培養されたT細胞の21%)。M2c細胞は、静止表現型クラスター1のT細胞の46%との共培養において、抗CD3活性化CD4+T細胞に対して免疫抑制効果を有した。さらに、M2c単独群のT細胞の32%が活性化T細胞表現型クラスター2において見出された。
図43は、アイソタイプ対照処置群の抗CD3活性化CD4+T細胞が、対応するM2c単独群のT細胞と同様の分布プロファイルを有し、クラスター1のT細胞の平均51%、クラスター2のT細胞の27%を示す(表9)。
対照的に、AB101での処置は、M2c極性化マクロファージの抑制効果を軽減した。AB101は、アイソタイプ対照アイソタイプ対照と比較して、クラスター2の活性化表現型を共有するT細胞の割合を27~40%有意に増強した(p<0.05)。さらに、AB101は、静止細胞の表現型を共有する細胞の割合を51%から13%に顕著に減少した(クラスター1、p<0.0001)。この分布は、M1マクロファージの存在下で刺激されたT細胞の表現型パターンに似ていた。
クラスター3、4および6もまた、アイソタイプ対照群と比較した場合、AB101での処置によって上昇した。図43に示すように、3つのクラスターの違いは、それぞれのM2c対照およびアイソタイプ対照に関連する3つの評価された対象のうち2つで有意性に達した(p<0.0001)。
クラスター3および4は、CXCR3の高発現、CCR4の中程度の発現、および活性化マーカーCD69の高発現(Cl.3)または低発現(Cl.4)発現を伴うCD127の存在によって定義される。クラスター3の表現型は、M1細胞または静止T細胞のいずれとも共有されておらず、AB101処置に特有であるように見える。
クラスター6は、CXCR3およびCD69の高発現およびCCR4およびCCR6の最小発現を伴う活性化Th1様T細胞の表現型を表す。AB101処理により、クラスター6のT細胞の割合の平均パーセンテージがアイソタイプ処理群の4.4%から9.3%まで増加した(表9)。
結論として、M2c共培養によって拡大されたCD4+T細胞表現型のFlowSOM分析は、AB101処置がM2c媒介免疫抑制を軽減し、CXCR3およびCCR4の発現によって強調される独特のT細胞表現型の発現を誘導することを示す。AB101処理はまた、M2c共培養における活性化Th1様CXCR3+T細胞の割合も増加させた。
T細胞の増強された活性化をもたらすM2c媒介抑制を遮断するAB101の能力をさらに調べるために、CD4+およびCD8+T細胞を、活性化および消耗のマーカー、LAG3、OX40、PD-1、ICOSおよびCTLA-4について評価した。FlowSOMによるCD4+およびCD8+T細胞のクラスタリングにより、5つのCD4+(0~4の番号)および4つのCD8+(0~3の番号)クラスターが特定された。
クラスター0(CD4+T細胞)およびクラスター3(CD8+T細胞)におけるLAG3、OX40、PD-1およびCTLA-4の低発現は、静止表現型を示す。PD-1およびICOSの発現の増加はクラスター1(CD4+T細胞)にあり、クラスター3(CD8+T細胞)はこの研究で活性化された表現型を表す(図44)。
クラスター0(ICOS+PD-1-LAG3-CTLA4-OX40-)は、刺激されていないCD4+T細胞の90%を表し、クラスター3(ICOSlo PD-1-LAG3-CTLA4-OX40-)は、抗CD3活性化なしでM2cマクロファージとともに培養された、静止状態のCD8+T細胞の93%を表す(図44)。M2c極性化マクロファージと共培養するか、アイソタイプ対照で処理すると(抗CD3活性化CD4+およびCD8+T細胞は主に対応する静止クラスター0(CD4+T細胞の65%である)およびクラスター3(CD8+T細胞の64%)に分類され、M2c細胞媒介免疫抑制を確認する。
AB101は、M2c単独またはアイソタイプ対照処置群と比較した場合、CD4+およびCD8+T細胞の活性化を有意に増強する。AB101処置群のCD4+T細胞の82%およびCD8+T細胞の93%は、M1極性化マクロファージと共培養されたT細胞と共有される、それぞれの活性化T細胞表現型クラスター1(ICOShi PD-1+LAG3-CTLA4-OX40lo)およびクラスター0(ICOShi PD-1+LAG3lo CTLA4-OX40lo)において見出される。
実施例21-AB101はm2c表面マーカーの発現を調節した
M0からM2cマクロファージへの極性化の間のAB101処理は、M2c/T細胞共培養アッセイにおいて、M2c媒介免疫抑制から抗CD3活性化T細胞をレスキューした。AB101がM2cの表面マーカーおよび免疫チェックポイントの発現を調節するかどうかを判断するために、5日齢のM0マクロファージをAB101またはアイソタイプ対照(20μg/mL)の存在下でIL-10からM2cマクロファージに極性化し、マクロファージ表現型抗体のパネルで染色した。フローサイトメトリープロファイルを、ナイーブ未処理M2c細胞およびLPS+IFN-γ極性化M1マクロファージと比較した。M2cマクロファージは、M2cマーカーCD163、CD206およびMer-TK、Fcγ受容体CD16、CD32、CD64、パターン認識受容体TLR2、TNFRファミリーメンバーCD40を発現する。予想されたように、IFN-γ処理後、M1マクロファージは、M2cマクロファージと比較した場合、より高いレベルのHLA-ClassIIおよびチェックポイントリガンドPD-L1を発現した。対照的に、M2cマクロファージは、M1マクロファージよりも高いレベルの免疫抑制リガンドSiglec-15およびLILRB2を示した。評価された表面マーカー、共刺激分子、および受容体CD86、CD91、CD150、カルレティキュリン、デクチン-1、TIM4およびTLR4はM2c細胞では発現されない。
活性化されたCD4+T細胞によるCXCR3発現をさらに分析するために、FlowSOMクラスター3から6は、それらのCXCR3+CD69+CD25+T細胞表現型に基づいて組み合わされた。得られた表現型の比率は、図45に円グラフとして示され、図45の表の表現型を表す。
AB101処置は、アイソタイプ処置群と比較した場合、活性化マーカーCD69およびCD25を発現する活性化CXCR3+、CD4+T細胞の割合を18%から40%まで増加させた。OR2572およびM2c単独の処置群は、同等の分布プロファイルを示した。
表面マーカー発現に対するAB101の調節効果を定量化するために、AB101処理M2c細胞上の表現型抗体のmMFI値を、最大10人の研究対象からの、アイソタイプ対照(nMFIiso)または未処理のナイーブM2cマクロファージ(nMFIM2c)上の対応するマーカーに正規化した(図46)。AB101は、アイソタイプ対照処理されたM2c細胞と比較して、CD16(34%nMFIiso、p<0.0001)およびCD64(30%nMFIiso、p<0.0001)の非常に有意な減少、ならびにTLR2(66%nMFIiso、p<0.05)の有意な減少を誘導した。AB101 M2c表面マーカーMFIがナイーブM2cマクロファージに正規化された場合にも、同様の傾向が観察された。AB101処理マクロファージからの表面マーカーのnMFiM2cは、CD16(44%nMFIM2c、p<0.001)、CD64(30%nMFIM2c、p<0.0001)、TLR2(63%nMFIM2c、p<0.05)およびSiglec-15(66%nMFIM2c、p<0.05)について有意に減少した。AB101処置は、M2cマクロファージ対照と比較した場合、HLAクラスIIの発現を増強し、CD163、CD206、MerkTK、LILRB2、およびPD-L1の発現には有意な影響を与えなかった。
要約すると、M2cマクロファージの極性化の間のAB101処理は、固有の受容体TLR2およびチェックポイントリガンドSiglec-15の発現を減少させた。さらに、それは、M2c細胞上のCD16およびCD64のIL-10誘導性アップレギュレーションを阻害した。
実施例22-AB101結合は、CD163のSRCRドメイン3および4の領域の保護を増加し(低速HD交換)、ドメイン2、5、および9の領域を露出させた(高速HD交換)
CD163に対するIgG結合の効果を調べるために、比較HDX研究を実施した。複合体に存在する過剰なAbに由来する多数のペプチドのために、多くのペプチドが、m/zおよび保持時間で重複する多くのペプチドをもたらした。最終的に、ノイズの多い重複ペプチドを除外した後、ペプシンデータ内の107ペプチドの最終セットは、平均冗長性1.28で74%のカバレッジに対応する。ネペンテシンIIデータセットについては、最終的なフィルター処理されたペプチド計数は230で、87%のカバレッジに対応し、平均冗長性は2.8であった。データセットを両方のプロテアーゼと組み合わせる場合、合計配列カバレッジは93%で、平均冗長性は4.1である。
質量分析による水素/重水素交換:組換えヒトCD163(rhCD163)の出発ストック溶液を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.2中0.36mg/mLに希釈した。内部交換レポーター:テトラペプチドPPPFまたはトリペプチドYPIを、最終濃度を1μMで各溶液に添加した。抗体複合体化試料は同じ方法で作成されたが、1.38mg/mLのAB101を含んでおり、これは、rhCD163の3倍モル過剰に相当する。これらの作業溶液を22℃でインキュベートし、重水素交換反応を開始する前に4℃で1日間保存した。10μLの作業用タンパク質溶液を、90μLの重水素化HBS緩衝液(20mM HEPES、pH 7.2、150mM NaCl、2mM CaCl2、95%D2O)で10倍に希釈し、22℃にて、3秒間、15秒間、1分間、5分間、30分間、4時間、または20時間インキュベートした。重水素化HBSはまた、0.2μg/mLのブラジキニンも含まれており、逆交換をモニターするために、すべての実験で完全に重水素化された参照化合物を提供した。高度に重水素化された試料として、追加の試料を37℃で20時間インキュベートした。交換した試料を等量(100μL)の氷冷クエンチ緩衝液(1M TCEP、0.2%ギ酸(FA))に加え、最終pHを2.5にした。試料をエタノールドライアイスバス(-60℃)中で瞬間冷凍し、続いて、LC-MS分析まで-80℃で保存した。重水素化されていない参照試料は、水性HBS緩衝液で希釈したことを除いて同じように調製した。
固定化ペプシンプロテアーゼを用いた試料処理:凍結試料を5℃ブロックで4分間解凍した後、ローディングループに注入した。ロードした試料を、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)および2%アセトニトリル(ACN)の流れを用いて、12℃、200μL/分に維持されたカスタムパックペプシンカラム(POROS20-ALレジンに固定化されたブタペプシン、2.1×50mMカラム)に通した。消化されたペプシン断片は、Waters XSelect CSH C18 XP VanGuardカートリッジ(2.1×5mm、2.5μm)にトラップされた。5分間のローディング、消化、およびトラッピングの後、ペプチドは分析カラム(Waters CSH 1×100mm、1.7μm、130Å)で3%から40%の溶媒Bのグラジエントを9分間使用して分離された(A:0.1% FA、0.025%TFA、2%ACN、B)ACN中0.1%FA)。LCシステムはWaters Synapt G2-Siに接続され、イオン移動度分離を有効にして、300~2000のm/z範囲でフルスキャンを実行した。ソース条件は、脱溶媒和の間の重水素の損失を最小限に抑えるように最適化された。重水素化されていない試料は、すべてのLC-MS分析の前と最後に分析された。分析分離工程では、一連の250μL注入を使用して、ペプシンカラムを洗浄した。1)0.1%TFAを含む0.1%Fos-12、2)0.1%TFA中の2M GndHCl、3)10%酢酸、10%アセトニトリル、5%イソプロパノール。各グラジエントの後、トラッピングカラムを一連の250μL注入で洗浄した。1)10%FA、2)30%トリフルオロエタノール、3)80%メタノール、4)66%イソプロパノール、34%ACN、5)80%ACN。トラップ洗浄中に、分析カラムを3つの急速なグラジエントで洗浄した。これらの洗浄工程は、分析される各ペプチドのキャリーオーバーのレベルが5%未満であることを保証するために必要であった。
固定化ネペンテシンIIプロテアーゼを用いた試料処理:POROS 20-ALに固定化されたネペンテシンIIプロテアーゼがオンライン消化ステップのために使用されたことを除いて、上記の試料処理が繰り返された。
最初に、交換およびサンプリング条件が非結合状態および抗体結合状態について同一であることを確実にするために、本発明者らは最初に内部標準ペプチドの交換プロファイルを調べた。両方のデータセットについて、PPPIおよびYPI標準は、非リガンドデータセットと抗体結合データセットの間で一貫しており、条件が一貫しており、微妙な変化でさえタンパク質構造および/またはダイナミクスの変化に起因すると解釈できることを保証する。さらに、重水素化緩衝液に組み込まれた完全に重水素化されたブラジキニンペプチドは、同一の重水素レベルを示し、各データセット内の試料間で逆交換のレベルが変動しないことを保証した。
抗体結合非結合状態間のHDX動態の比較を使用して、抗体結合に応答した抗原全体の変化を評価した。ペプシンおよびネペンテシンIIデータセットの変化の要約を図50および51に示す。変化は、抗体結合に応答したHDX動態に小さな変化(単一の時点での小さな変化)であったか、または大きな変化(2つの標準偏差を超えるまたはいくつかの時点で見られる)であったかによって一次配列で色分けされる。これらの比較では、ほぼ同じ領域をカバーするすべての重複ペプチドが一致していることを確認するとともに、複製間の標準偏差によって評価される統計的に有意な変化のみを本発明者らが利用したことに本発明者らは注目している。これらの基準により、データセットから最も保存的な推論のみを作成することが保証される。
図47に示されるペプシンデータセットにおいて、抗体結合時に保護の増加を示した2つの部位が存在した。1つの部位には、いくつかの時点で保護の劇的な増加を示した糖ペプチド271-285、および交換速度の大幅な低下もまた示すC末端に隣接する領域286-299をカバーするいくつかのペプチドが含まれる。2番目の部位は、保護のわずかな増加を示す残基405-418内の3つのペプチドを含む。多数のペプチドは、抗体結合の際に柔軟性の増加(より速い交換)を示した。最も顕著なものは残基125-139および479-488であったが、より微妙な増加が残基887-910と918-933で観察された。
図48に示されるネペンテシンIIデータセットは、全体では、ペプシンで観察されたものと同様の変化を示した。保護の最大の増加は残基279-286において明らかであり、これのちょうどN末端の領域(271-278)はわずかな増加を示す。残基408-415もまた、抗体結合時に保護のわずかな増加を示した。ペプシンデータと同様に、タンパク質の大部分で柔軟性が増加した。柔軟性の最大の増加は残基471-483で観察され、タンパク質のより多くの部分で小さな変化が見られた。これらのデータセットとの整合性は、OR2805のエピトープが残基279-285内にあり、隣接する配列(279-299)ならびに残基405-418も含む可能性があることを強く示す。HDX-MSでは観察されなかった他の領域も関与している可能性がある。
ペプシンデータと同様に、ネペンテシンIIデータセットのタンパク質の大部分にわたって柔軟性も増加した。柔軟性の最大の増加は残基471-483で観察され、タンパク質のより多くの部分での変化は小さかった(図49)。全体として、提案されたエピトープの遠位にある大きな変化は、抗体結合に対する大規模なアロステリック効果と一致している。エピトープの遠位にあるすべての変化がより露出しているという事実は、おそらく隣接するタンパク質ドメインとの相互作用に影響を与えることによって、抗体結合がタンパク質全体のいくつかの二次構造を緩めることを示す。非常にN末端側であるドメインと非常にC末端側であるドメインの両方で変化が見られるという事実は、このタンパク質がそのネイティブな(リガンドなし)コンフォメーションでいくつかのドメイン間相互作用を有することを示す。
図49は、ヒトCD163 ECDへのAB101結合の効果の模式的概略を示す。AB101の存在下では、ドメインSRCR3および4内の領域は水素-重水素交換から保護されていた。ドメイン3および4での交換の減少に伴い、SRCRドメイン2、5、および9は交換の増加を示し、AB101結合時の溶媒への曝露が多いことを示す。
実施例23-AB101は切断されたヒトCD163ECD SRCRドメイン1-5フラグメントに結合する
ヒトCD163の細胞外ドメインは、SRCRドメイン5の後で切断され、C末端ヒスチジンタグを保持した。このCD163ECDフラグメントは、HEK293-6E細胞で発現され、図50に示すようにIMAC法を使用して精製された。AB101は、表10に示すように、切断されたECDをナノモル以下のEC50に結合するが、しかし、予想どおりRM3/1は結合しない。RM3/1結合エピトープはSRCRドメイン8および9にマッピングされている。切断されたCD163ECD SRCR 1-5には、HDX-MSによってAB101結合エピトープを含むことが同定されたドメイン3および4が含まれている。AB101がSRCR1-5への結合を維持することは、HDX-MS研究からのエピトープ同定結果をさらにサポートする。
実施例24-AB101はヒトCD163 ECDタンパク質に結合するが、カニクイザル組換えCD163 ECDタンパク質には結合せず、カニクイザルCD163 ECDの単一点突然変異E323Kは、ヒトCD163ECDと同等のAB101結合を付与する。
実施例6において、プラスチックに固定化された組換えCD163タンパク質を用いたELISAアッセイを使用して、組換えヒトへのAB101結合は、26の別個の実験における14点用量反応曲線から、0.52nMの幾何平均EC50値を有すると決定された。AB101は組換えマウスCD163への結合を示さなかったが、市販のラット抗muCD163(Thermo Fisher Scientific#14-1631-82)抗体は予想通りに結合した。
AB101がマウスCD163に結合することに失敗し、およびヒトCD163との低アミノ酸配列同一性(72.9%)の結果として、焦点は、前臨床毒物学研究でしばしば使用される第2の種、すなわち非ヒト霊長目(NHP)カニクイザルに向けられた。カニクイザルCD163は、ヒトCD163と96.5%のアミノ酸配列同一性を共有している。HEK293-6E細胞におけるC末端8ヒスチジンタグを伴うヒトおよびカニクイザルCD163 ECDの生成により、7日目の一過性トランスフェクションCMのLあたり約1~2mgの精製タンパク質が得られた。図51は、ヒトおよびカニクイザルのCD163タンパク質のアラインメントを示す。
CD163上の結合エピトープおよびヒトとカニクイザルCD163との間の有意な配列同一性を同定し、AB101がカニクイザルCD163に結合しないというHDX-MS結果の知識を武器に、AB101結合に関与するSRCRドメイン3の重要な残基の同定を可能にした。ヒトCD163の323位のリジン残基は、毒物学研究で検討されているすべての潜在的な非ヒト種のグルタミン酸残基である(図51)。この位置は、HDX-MSによって規定されたSRCRドメイン3のAB101結合エピトープ内の中心にある。323位のカニクイザルグルタミン酸のリジンへの部位特異的変異誘発は、AB101のシノモルグスCD163 ECDへの結合を付与し、これは、AB101のヒトCD163 ECDへの結合に近いEC50を伴う(図52)。この機能の向上は、AB101結合エピトープの323位のリジンを強く示唆している。
実施例25-SPRによるヒトCD163へのAB101の結合親和性
表面プラズモン共鳴(SPR)測定を使用して、異なるランニング緩衝液条件でのヒトCD163へのAB101および抗CD163クローンGHI/61結合(AB101アビディティ測定)を決定した。
AB101および抗CD163クローンGHI/61のヒトCD163への結合のSPR分析を、Biacore T200機器(GE Healthcare Life Sciences)を使用して実施した。精製された組換えCD163タンパク質は、アミンカップリングキット(GE Healthcare Life Sciences)を使用して、チップ(Serie S-type CM5)に直接固定化された。アミンカップリング固定化に適した濃度とpHを決定するために、pHスカウティング(10mM酢酸ナトリウムpH5.5/5.0/4.5/4.0)を実行した。センサーチップCM5へのCD163カップリングの最良の条件として、酢酸ナトリウム(pH 5.5)を選択した。CM5チップに結合するCD163タンパク質の量は80RU(0.08ng/mm2)であった。
実験のために使用されたランニング緩衝液:緩衝液(1)10mM Hepes、150mM NaCl、3.0mM EDTA、および0.05%Tween 20、pH7.4または緩衝液;緩衝液(2)10mM Hepes、150mM NaCl、3.0mM CaCl2、1.0mM EGTA、および0.005%Tween 20、pH7.4。
MAbをランニング緩衝液に溶解した。AB101の場合、センサーグラムは、30μl/分の流速、6.25/12.5/25/50/100/200μg/mLの濃度、300秒の接触時間、および600秒の解離時間を使用して生成された。GHI/61の場合、センサーグラムは、30μl/分の流速、3.125/6.25/12.5/25/50/100μg/mLの濃度、300秒の接触時間、および600秒の解離時間を使用して生成された。フローセルは、10mMグリシン-HCl、pH 3.0(GE Healthcare Life Sciences)で再生された。データ分析は、Biacore T200コンピュータ上でとBiacoreT200評価ソフトウェアを使用して実行された。
GHI/61および他の抗CD163抗体のヒトCD163への結合は、遊離カルシウムに依存することが示されている。GHI/61は、カルシウム含有緩衝液よりもカルシウムを含まない緩衝液の方がCD163に対して高い親和性を示した。AB101結合がカルシウム依存性であるかどうかを判断するために、2mMカルシウム含有緩衝液またはカルシウムを含まないEDTA緩衝溶液中液で固定化されたヒトCD163へのAB101結合のSPR測定を実行した。表11および図53に示されるように、AB101は、カルシウムを含まないEDTA緩衝液(KD=89nM)での2倍弱いアビディティに関連して、カルシウム含有緩衝液で45nMのKDでより強い結合アビディティを有した。対照的に、SPR測定は、カルシウム含有およびEDTA緩衝液中のCD163へのGHI/61結合について、それぞれ63nMおよび12nMのKD値を観察した(図54および表11)。
SPRの結果は、以前に報告されたGHI/61の知見を確認し、AB101がヒトCD163への最適な結合のために生理学的カルシウム濃度を必要とし得ることを示した。
次に、本発明者らは、カルシウム含有緩衝液中の固定化されたAB101へのCD163結合親和性のSPR測定を実施し、12nMのKDを観察した(図55および表12)。固定化されたAB101へのCD163の結合は、固定化されたCD163へのAB101結合の対応するKa(1.678×104M-1s-1)と比較して、6.213×104(M-1s-1)の3.7倍高いkaを有していた。
要約すると、SPR測定は、2mMの遊離カルシウムの存在下でのCD163に対する12nMの結合親和性および45nMのアビディティを決定した。
実施例26-AlphaLISAによる溶液中のヒトCD163タンパク質へのAB101結合
溶液中のヒトCD163へのAB101の結合親和性は、AlfalLisaアッセイによって決定された。
アッセイは、C末端に10-ヒスチジンタグを有するヒト可溶性CD163、ビオチン化抗hIgG1、ストレプトアビジンアクセプタービーズおよびニッケルドナービーズからなる。
アッセイは、1500nMの開始タイトレーション濃度で、Ca2+、Mg2+を含まない1×PBS中の0.5%BSA中でAB101およびアイソタイプ対照の段階希釈を行うことによって実施した。CD163を同じ緩衝液で1500nMの濃度に希釈した。
AB101のヒトCD163への結合。AB101またはアイソタイプ対照の段階希釈液を5μl/ウェルから5μl/ウェルのヒトCD163の容量で添加し、アルミニウムプレートシーラーで密封し、穏やかに振とうしながら室温で1時間インキュベートした。
AB101の検出:AB101は、10μlの結合ミックスに対して5μl/ウェルの容量で、1×AlfaLISAイムノアッセイアッセイ緩衝液中の2.5nMのビオチン化抗ヒトIgG1抗体を使用して検出された。プレートを密封し、穏やかに振とうしながら室温で1時間インキュベートした。
アクセプタービーズの結合:抗体検出工程に続いて、1×AlphaLISAイムノアッセイアッセイ緩衝液中の100μg/mLストレプトアビジンアクセプタービーズ5μlを各ウェルに添加し、続いてプレートを密封し、穏やかに振とうしながら室温で1時間インキュベートした。
ドナービーズの結合:次に、1× AlphaLISAイムノアッセイアッセイ緩衝液中の100μg/mLニッケルドナービーズ5μlをウェルごとに添加し、続いてプレートを密封し、穏やかに振とうしながら室温で1時間インキュベートした。
プレートは、製造業者のプロトコルに従ってEnvisionプレートリーダーを使用して読み取られ、データは、Kdを計算するために、GlaphPad Prism 8を使用して分析された。
CD163に結合するAB101のAlphaLisa測定は、AB101の30nMで飽和に達した(図56)。1.8nMのKdは、5つの独立した測定値を組み合わせた1部位飽和結合モデルによって決定された(表13)。2部位飽和結合モデルは、より低いAB101濃度に対してより良いカーブフィットを提供した。
実施例27-AB101のM2cマクロファージへの結合
細胞上で発現されるCD163へのAB101の結合動態を決定するために、本発明者らは、4人の研究対象からの免疫抑制M2cマクロファージを用いて結合研究を実施した。
M2cマクロファージへのAB101結合は、4人の健康なヒト対象(39歳の女性、24歳の男性、39歳の男性および54歳の男性)から評価された。単球は、BloodWorksから購入したLeukoPaksから単離された。
7日目に、M2c細胞を、マクロファージ解離溶液DXF中で室温にて15分間インキュベートし、フラスコからX-VIVO-15(商標)培地から移した。遠心分離後、細胞をPBSで1回洗浄し、Zombie UVライブ/デッドステイン(1:500)に室温で20分間再懸濁させた。次に、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、FACSブロック(10%FBSおよび0.5mg/mLのヒトIgG1を含有するFACS緩衝液)に室温で20分間再懸濁した。ブロッキング緩衝液中の細胞を2.5×104細胞/ウェルで384ウェルプレートに移し、滴定した抗体を2×最終アッセイ濃度で各ウェルに直接添加した。細胞を抗体とともに室温で20分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、次いで、Symphonyフローサイトメーター(BD Biosciences)での取得のためにFACS緩衝液に再懸濁した。
M2cマクロファージへのAB101結合は、二峰性結合曲線(図57)を示し、これは、Fc受容体へのAB101結合が、M2c細胞上で発現されるCD163への結合に影響を及ぼし得ることを示唆している。1部位特異的飽和結合曲線におけるAB101について計算されたKd値を表14に示す。1部位モデルによって計算されたCD163へのAB101の結合のKd値は7.7nMで、Bmaxは46103gMFI(R2=0.91)であった。2部位カーブフィットモデリングは、より良いカーブフィットを提供した(R2=0.98)。
本開示およびその利点は詳細に説明されてきたが、添付の特許請求の範囲で定義される開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、および変更が本明細書で行われることを理解されるべきである。