JP2022526591A - 骨格筋幹細胞の製造及び障害の治療のための方法、組成物及びキット - Google Patents

骨格筋幹細胞の製造及び障害の治療のための方法、組成物及びキット Download PDF

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Abstract

筋原性前駆細胞の集団を製造するための方法、組成物及びキット、並びにそれらに由来する細胞集団を含む組成物がとりわけ本明細書で提供される。対象(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD))における筋疾患又は筋障害を治療又は予防するための方法及び組成物も含まれる。【選択図】図1A

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月3日に出願された米国仮出願第62/828,973号の利益を主張する。本出願の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
政府支援
本発明は、国立衛生研究所(NIH)によって授与された助成金番号R01AR070751の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
本開示は、筋原性前駆細胞の集団を製造することを含む、骨格筋細胞置換療法に関する。
骨格筋細胞置換療法において主要な障壁となっているのは、移植骨格筋細胞の損傷部位に限定したインテグレーションである。多くの細胞移植は、患者が生存状態の新しい細胞を継続的に必要とするため、複数回の細胞注入を必要とする。したがって、筋疾患及び筋症候群を標的とする治療法を製造するための新しい方法が必要とされている。
筋原性前駆細胞の集団及びそれらに由来する子孫を製造するための、方法、組成物及びキットが、とりわけ、本明細書中に提供される。対象における筋疾患又は筋障害(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD))を治療又は予防するための方法及び組成物も含まれる。
本明細書では、in vitroで多能性幹細胞に由来する筋原性前駆細胞が、筋肉内移植の際に筋幹細胞ニッチに存在し、静止状態になり、ヒト筋幹細胞に類似するそれらの分子発現プロファイルを変化させ得ることが初めて実証される。したがって、そのような筋原性前駆細胞は、変性筋消耗疾患又は状態を治療する等の治療目的に使用することができる。したがって、一実施形態では、細胞の少なくとも30%がin vitroで多能性幹細胞に由来するPAX7+筋原性前駆細胞(MPC)である、哺乳動物細胞の集団が提供される。
いくつかの実施形態では、PAX7+MPCはCHRNA1(コリン受容体ニコチンアルファ1)、NTSR1(ニューロテンシン受容体1)、又はFZD1(フリズルドクラス受容体1)のうちの1つ又は複数を発現し、FZD5(フリズルドクラス受容体5)、GPR37(Gタンパク質共役受容体37)、又はGPR27(Gタンパク質共役受容体27)のうちの1つ又は複数を発現しない。
いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞(ESC)、特にヒト多能性幹細胞である。
別の実施形態は、変性筋消耗疾患又は状態を治療する方法をそれを必要とする患者に提供する。いくつかの実施形態では、方法は、本開示の細胞集団を患者に注射することを伴う。変性筋消耗疾患又は状態の例としては、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD))、ミオパチー、ミトコンドリア病、軟組織肉腫、イオンチャネル疾患、悪液質及びサルコペニアが挙げられる。
また、筋原性前駆細胞(MPC)の集団の製造方法が提供され、方法は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK-3)の選択的阻害剤を含む、培地で複数の多能性幹細胞を分化させて、分化細胞を得ることと、分化細胞をNotchシグナル伝達の阻害剤で処理することと、分化細胞を線維芽細胞増殖因子(FGF)で増殖させ、それにより、PAX7を発現するMPCの集団(ペアードボックス(paired box)タンパク質)を得ることと、とを含む。
更に、筋原性前駆細胞(MPC)の集団を製造するための方法が本明細書で提供される。態様では、方法は、対象から細胞集団を得ることと、前記細胞集団から胚性幹細胞(ESC)集団である多能性幹細胞(PSC)集団を製造することと、前記多能性幹細胞集団から筋原性前駆細胞集団を製造することと、とを含む。
実施形態では、本明細書の方法は、多能性幹細胞集団が、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF2)及び/又は線維芽細胞増殖因子8を含む細胞培養培地中で培養されることを提供する。
実施形態では、本明細書の方法の筋原性前駆細胞は筋原性マーカを発現し、筋原性マーカはペアードボックスタンパク質(PAX7)又はMyoDを含む。実施形態では、筋原性前駆細胞は、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する。
他の実施形態では、本明細書で提供される方法は、筋原性前駆細胞集団の細胞におけるPAX7発現を増加させるのに有効な細胞集団を製造する。
実施形態では、本明細書に記載される方法は、ex vivoで、例えば少なくとも約30日間、培養及び増殖される多能性幹細胞集団を製造する。他の実施形態では、多能性幹細胞集団は、ex vivoで、約5日間、約10日間、約20日間、約30日間、約40日間、約50日間、約60日間又はそれを超えて培養される。
他の実施形態では、多能性幹細胞集団は、その数を増やすためにex vivoで培養される。
実施形態では、本明細書の方法は、多能性幹細胞集団が対象から得られた細胞集団から製造されることを提供する。
他の実施形態では、本明細書に記載の方法によって製造される多能性幹細胞集団は、人工多能性幹(iPS)細胞集団である。
更なる実施形態では、細胞集団は、対象(例えば、ヒト対象)から得られる。更なる実施形態では、細胞集団は生検によって得られる。
特定の態様では、本明細書に記載の方法に従って製造された筋原性前駆細胞の集団は、筋疾患又は筋障害を治療又は予防するために(例えば、それを必要とする対象において)使用される。態様では、方法は、本明細書に記載の方法に従って製造された筋原性前駆細胞の集団の有効量を対象に投与することを更に含む。
実施形態では、筋疾患は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を含む。他の実施形態では、筋障害は筋消耗障害を含み、例えば、筋消耗障害は悪液質を含み得る。
実施形態では、細胞は、対象において筋疾患が始まる前に単離される。他の実施形態では、細胞は、対象において筋疾患が始まった後に単離される。
実施形態では、本明細書の方法によって製造された多能性幹細胞集団は、対象に投与される前にそれらの数を増やすために培養される。
実施形態では、必要とする対象において初期筋原性マーカのレベルを増加させるための方法であって、本明細書に記載の方法に従って製造された筋原性前駆細胞の集団の有効量を対象に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
また、筋原性前駆細胞を製造するためのキットであって、細胞培養培地(1つ又は複数)を含み、細胞培養培地が多能性幹細胞(PSC)集団の培養に適している、キットが本明細書で提供される。実施形態では、本明細書に記載のキットは、無血清細胞培養培地である細胞培養培地を含む。
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を伴うこの特許又は特許出願公開の写しは、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁によって提供される。
図1A~図1Eは、ヒト多能性幹細胞(hPSC)に由来するPAX7::MPCがex vivoで維持され得、筋再生に関与し得ることを示す。図1Aは、PAX7::GFP hPSCからPAX7::GFP MPCへの筋原性分化のスキームを示す概略図である。図1Bは、筋原性分化の30日間後のPAX7::GFPヒト胚性幹細胞(hESC)、H9 ESC由来筋芽細胞(GFP対照なし)及び2回継代した後のPAX7GFP MPCのフローサイトメトリ分析を示す図である。GFP発現細胞をゲーティングした。図1Cは、細胞移植スキームを示す概略図である。図1Dは、PAX7::GFP hESC筋原性系統分化培養から識別及び増殖されたか、又は未識別の細胞の4週目のTAの断面の代表的な画像を示し、huLAMINA/C細胞核によって標識された、huDYSTROPHIN陽性線維及びヒト細胞を示す。図1Eは、TA領域全体のうちのhuDYSTROPHIN繊維陽性領域の定量化を示す棒グラフである。 図2A~図2Gは、PAX7::GFP子孫が単離され、細胞レベルで静止状態の筋幹細胞を模倣することができることを示す。図2Aは、未識別、又は識別及び増殖した細胞の移植後4週目のPAX7::GFP細胞単離のFACプロットの画像を示す。ベクタ培地を注入したTAを対照によって使用した。図2Bは、単一マウス(n(対照)=4、n(識別&増殖)=14、n(未識別)=8)から単離された単核細胞全ての中のPAX7::GFP細胞の%の定量化のグラフを示す。図2C及び2Dは、増殖前及び増殖後(B.E及びP.E)並びに移植後4週目(in vivo)の、筋原性分化後にPAX7::GFP細胞から単離された細胞の単一細胞Q PCRを示すグラフを表す。図2Eは、PAX7::GFP MPC移植後4週目の画像を示し、TAは切片であり、PAX7::GFP MPC子孫は、huLAMINA/C及びPAX7タンパク質の二重標識によって同定することができた。それらは基底膜の下に位置していた(黄色矢印)。図2Fは、PAX7::MPCの、in vivo及びex vivo培養でのピロニンY及びヘキスト細胞周期分析を示し、これらはin vivoでのPAX7::MPCでDNA及びRNA含有量が少ないことを表している。図2Gは、PAX7::GFPのin vivo及びPAX7::GFP MPCのex vivoからの異なる細胞周期における細胞の百分率を示す円グラフである。 図3A~図3Fは、移植前の細胞と比較したin vivoでのPAX7::GFPMPCのシングルセルRNAシーケンス解析を示す。GFPシグナルによって単離された細胞。図3Aは、in vivoでのPAX7::GFPMPC、移植前のex vivo、1ヶ月間培養されたex vivo、及びOCT4::GFPhESCのRNA含有量のグラフを示す。図3Bは、PAX7::GFPMPCのin vitro、ex vivo及びOCT4::GFPhESC間の特徴的な発現RNA発現プロファイルを示すPCAプロットを表す。しかし、1ヶ月のex vivo培養は、遺伝子発現プロファイルを変化させなかった。図3Cは、ほとんどの遺伝子が下方制御され、いくつかの遺伝子が移植前にPAX7::GFP MPCのin vivo及びex vivo比較して上方制御されたことを示す火山プロット(volcano plot)を表す。図3Dは、機能によってクラスター化された上方制御遺伝子及び下方制御遺伝子の画像を示す。図3E及び図3Fは、上方制御遺伝子及び下方制御遺伝子の遺伝子オントロジーエンリッチメントを示すクラスター分析の画像を示す。 図4A~図4Eは、PAX7::GFP MPCの再損傷及び連続移植の画像を示す。図4Aは、再損傷実験のスキームを示す。図4Bは、2回目の損傷後4週目を示す画像であり、移植されたPAX7::MPCの筋再生の関与を測定するため、TAは切片化され、huDYSTROPHIN及びLAMINA/Cで染色された。図4Cは、2回目の損傷後4週目の、TA領域全体のうちのhuDYSTROPHIN陽性領域の定量化のグラフを示す。図4Dは、連続移植のスキームを示す。図4Eは、PAX7::GFPMPCが第1の受容マウスから単離され、第2の受容マウスに移植されたことを表す画像を示す。第2の受容マウスのTAを切片化し、PAX7及びhuLAMINA/Cを使用して移植細胞を追跡した。共標識細胞は基底膜下に存在することが見出された(矢印)。 図5A~図5Dは、PAX7::GFP MPCの特性決定を示す。図5Aは、CRISPR Cas9によるPAX7::GFP hESCの生成の例示である。図5Bは、増殖後(P.E)、増殖前(B.E.)のPAX7::GFPMPC及び非筋芽細胞からの、PAX7、MYOD、GFP及びニューロゲニンの相対遺伝子発現を示す棒グラフである。図5Cは、PAX7::GFP MPCのex vivo増殖培養物におけるPAX7、MYOD及びGFPタンパク質発現の免疫細胞化学写真を示す画像である。図5Dは、PAX7::GFP MPCが、分化条件下で、MyHC及びDESMIN抗体によって標識された筋管を形成できたことを示す画像である。 図6は、移植試験の結果を示すグラフである。 図7は、マウスへの移植後のデュシェンヌのin vivoモデルにおけるトレッドミル試験の結果を示すグラフである。 図8A及び図8Bは、移植後のPAX7::GFP細胞のヒト起源を実証するブロット及び一連のグラフを示す。図8Aは、ヒト特異的プライマーを使用して、ゲノムPCRを実施して、注入されたTAから単離されたPAX7::GFP細胞の起源を決定した。図8Bは、シングルセルRNA-seq解析結果の配列比較は、注入されたTAから単離されたPAX7::GFP細胞の大部分がヒト細胞であることを示す。 図9は、移植された細胞がin vivoで移植後4週目に静止細胞になることを実証するプロットである。結果は、マウスへの注射後1週目、マウスへの注射後2週目、マウスへの注射後3週目、マウスへの注射後4週目として示される。PAX7::GFP細胞は、移植後1週目、2週目、3週目及び4週目で回収された。SNEプロットから、移植後1週目から、PAX7::GFP細胞のトランスクリプトームは経時的に有意に変化しないことが分かる。
筋原性前駆細胞の集団を製造するための方法、組成物及びキット、並びに調製された筋原性前駆細胞がとりわけ本明細書で提供される。対象(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD))の筋疾患又は筋障害を治療又は予防するための方法及び組成物も含まれる。消耗障害、癌、運動性が制限された患者、及び運動選手を治療するための方法及び組成物も本明細書で提供される。
態様では、筋消耗障害、心疾患、運動誘発性筋力低下、又は癌を有する対象を治療する方法が本明細書で提供される。態様では、適用は、骨格筋力の改善が有益であり得る疾患又は状態を含み得る。特定の態様では、疾患又は状態は、AIDS、加齢性サルコペニア、癌性悪液質、クッシング症候群、真性糖尿病及び敗血症による筋消耗を含み得る。更に、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及びデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に罹患している患者の筋力改善が企図される。更なる態様では、本明細書で提供される方法は、例えば歩行速度又は走行速度等を増加させる等の身体運動を増加させるために、健康な患者に使用することができる。
骨格筋細胞置換療法における主要な障壁は、損傷部位における移植された骨格筋細胞の限定的なインテグレーションである。マウス骨格筋幹細胞の移植は運動機能を改善するが、ヒト胚性PAX7細胞が、出生後のin vivo環境において機能的かつ連続的に再増殖され得、その細胞成熟段階を移行させるかどうかについてはほとんど知られていない。
in vivo環境のニッチ領域において静止状態の機能的な局所骨格筋幹細胞として生存することができるヒトPAX7::GFP細胞を生成するための新規な手法が本明細書で提供される。この研究では、hPSCを、筋原性系統及び単離されたPAX7::GFP発現筋原性前駆細胞(PAX7::GFP MPC)に直接分化させた。
また、これらの細胞をex vivoで維持及び増殖させることができることも提供される。in vivoで移植された場合、それらは、筋線維に融合すること、並びに基底膜下に存在する単核PAX7発現細胞になることによって筋再生に関与することができた。PAX7::GFP MPCの子孫が追跡され、GFP発現を伴って単離された。シングルセルRNA配列及び細胞測定と共に、これらの細胞から、特有の静止状態の筋幹細胞遺伝子特性が観察された。再損傷及び連続移植実験により、それらの自己再生及び再生能力が更に確認された。この研究は、hPSC由来の筋原性前駆細胞から静止筋幹細胞へのin vivoでの移行を単一細胞実験手法で実証した。
一般的な定義
以下の定義が、本主題を理解する目的及び添付の特許請求の範囲を構成する目的で含まれる。本明細書で使用される略語は、化学及び生物学の分野の範囲で従来の意味を有する。
本発明の様々な実施形態及び態様が本明細書に示され説明されているが、そのような実施形態及び態様が単なる例として提供されていることは当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、当業者には多数の変形、変更、及び置換が思い浮かぶであろう。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替形態が、本発明を実施する際に使用され得ることを理解されるべきである。
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成上の目的のためだけであり、記載された主題を限定するものと解釈されるべきではない。限定するものではないが、特許、特許出願、論文、書籍、マニュアル、及び論説を含む、本出願で引用された全ての文書又は文書の一部は、任意の目的のためにその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
他に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Singleton et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 2nd ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 1994);Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,NY 1989)を参照されたい。本明細書に記載のものと類似又は同等の任意の方法、装置及び物質を、本発明の実施において使用することができる。以下の定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために提供され、本開示の範囲を限定することを意味しない。
実施形態では、「筋疾患」又は「筋症候群」又は「筋状態」又は「ミオパチー」は、経時的に骨格筋の弱化及び衰弱の増加が生じる障害である。例えば、筋ジストロフィー(MD)は、通常は9つの主要な分類又は型に識別される少なくとも30の異なる遺伝性障害を含む。MDは、進行性の筋力低下、筋タンパク質の欠損、並びに経時的な筋線維及び組織の破壊を特徴とする一連の遺伝性の進行性変性障害を指す。多くの場合、組織学的写真は、線維サイズの変動、筋細胞の壊死及び再生、並びにしばしば結合組織及び脂肪組織の増殖を示す。これらの疾患は、主に骨格筋又は随意筋を標的とする。しかし、心臓の筋肉及び他の不随意筋もまた、特定の形態の筋ジストロフィーに影響を受ける。
MDの最も一般的な型は、典型的には4歳前後から男性に発症するデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。他の種類としては、ベッカー型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー及び筋緊張性ジストロフィーが挙げられる。それらは、筋肉タンパク質の生成に関与する遺伝子の突然変異に起因する。これは、親からの欠陥の遺伝又は初期の発達中に起こる変異のいずれかによって起こり得る。障害は、X連鎖劣性遺伝、常染色体劣性遺伝又は常染色体優性遺伝であり得る。筋ジストロフィーの更なる例としては、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、眼咽頭型筋ジストロフィー、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー、福山型先天性筋ジストロフィー、三好型ミオパチー、ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ステイナート型筋ジストロフィーが挙げられる。
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、最も一般的な遺伝性致死性小児筋ジストロフィーであり、男性の3000人に約1人が罹患する。DMDの小児は、通常、11歳又は12歳の年齢に車椅子生活となり、罹患者は通常、20代又は30代で死亡する。DMDは、X染色体(Xp21)上に位置するジストロフィン遺伝子の突然変異に起因し、ジストロフィンタンパク質の喪失とこれに付随する筋線維破壊を導く。骨格筋線維の完全性の維持におけるジストロフィンタンパク質の役割は一般によく認識されているが、筋線維の破壊及びジストロフィー筋肉の喪失を導く正確な機序はよく理解されていない。ジストロフィン遺伝子の発見及びその後のタンパク質産物の特性決定により、ジストロフィンが、筋肉のサルコメアや細胞骨格を周囲の細胞外マトリックスに連結させる不可欠な筋繊維鞘タンパク質として確立された。ジストロフィンの局在化は筋肉の完全性の維持と同義であり、その非存在は(DMDで証明されるように)膜の脆弱性、萎縮誘発性筋線維損傷、及び死を導く。
現在のDMD治療
DMDの治療法は知られておらず、医学的必要性が規制当局により継続して認められている。治療は、一般に、特定の質問票を使用して測定され得る生活の質を最大化するために、症状の発症を制御することを目的とし、以下が挙げられる。
プレドニゾロン及びデフラザコート等のコルチコステロイドは、最長2年の筋力及び筋機能の短期的改善を導く。コルチコステロイドはまた、歩行の延長を助けると報告されている。
β2アゴニストは、筋力を増加させるが、疾患進行を改変しない(例えば、βアゴニストであるサルブタモール(例えば、アルブテロール)を用いてもよい)。
水泳等の穏やかで不快でない身体活動が奨励される。不活動(床上安静等)は、筋疾患を悪化させる可能性がある。
理学療法は、筋力、柔軟性、及び機能を維持することを助ける。
整形外科用器具(装具及び車椅子等)は、移動性及びセルフケアの能力を改善することができる。睡眠中に足首を適所に保持する形態的に適合する取り外し可能な脚装具は、痙縮の開始を遅らせることができる。
疾患が進行するにつれて適切な呼吸支援が重要である。
心臓の問題はペースメーカーを必要とすることがある。
薬剤、例えばアタルレンも提供され得る。
本明細書で使用される場合、「消耗性症候群(wasting syndrome)」は、筋肉量及び/又は筋力の喪失を導く、それを特徴とする、又はそれを伴う疾患又は状態である。そのような疾患の例としては、AIDS;癌;筋萎縮症が生じる脱髄障害(例えば、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、先天性代謝障害例えばフェニルケトン尿症、テイ・サックス病、ハーラー症候群及び白質ジストロフィー等、感染後脳脊髄炎、ウイルス性脳炎、無菌性髄膜炎及びHTLV関連脊髄症);ジストロフィー疾患(例えば、筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ランドウジー・デジェリン型筋ジストロフィー及び肢帯筋筋ジストロフィー);全身性及び局所的ジストニー;摂食障害(例えば、食欲不振及び過食症);悪液質又は慢性疾患による消耗;及び血管障害(例えば梗塞)が挙げられる。筋肉量及び/又は筋力の減少はまた、ある種の化学療法を受けている対象において、又は加齢、栄養失調若しくは筋肉の不調の結果として起こり得る。筋肉の不調は、一般に、大気圏外空間等の無重力環境で長期間を経験するか、長期間寝たきりであるか、又は特定の筋肉若しくは筋肉群が固定されている(例えば、ギプス内)個体で起こる。長期の床上安静を必要とする個体には、慢性疾患を有する個体、及び例えば、血腫又は圧迫に起因する脊髄損傷による一時的な麻痺を患っている個体が含まれる。実施形態では、消耗性障害は、悪液質(例えば、化学療法誘発性悪液質)、加齢関連悪液質又はスポーツ医学関連である。
「悪液質」は、疾患によって、又は病気の副作用として引き起こされる衰弱及び体重減少である。心臓悪液質、すなわち心筋及び骨格筋の両方の筋タンパク質の消耗は、うっ血性心不全の特徴である。癌性悪液質は、固形腫瘍及び血液悪性腫瘍を有する患者に発生する症候群であり、脂肪組織及び除脂肪筋量の両方の大量枯渇を伴う体重減少によって現れる。後天性免疫不全症候群(AIDS)。悪液質は、AIDSの比較的一般的な臨床症状であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連ミオパチー及び/又は筋力低下/筋消耗である。HIV関連ミオパチー又は筋力低下又は筋消耗を有する個体は、典型的には、著しい体重減少、全身又は近位の筋力低下、圧痛、及び筋萎縮症を経験する。
本明細書で使用される場合、「試料」、「患者試料」、「生体試料」等は、患者、個体、又は対象から得られた様々な試料型を包含し、診断、予後及び/又はモニタリングアッセイで使用することができる。本発明で使用される生体試料は、細胞、タンパク質又は細胞の膜抽出物、腹水又は脳液(例えば、脳脊髄液)等の血液又は生物学的流体を含むことができる。固体生体試料の例には、中枢神経系、骨、***、腎臓、子宮頸部、子宮内膜、頭頸部、胆嚢、耳下腺、前立腺、下垂体、筋肉、食道、胃、小腸、結腸、肝臓、脾臓、膵臓、甲状腺、心臓、肺、膀胱、脂肪、リンパ節、子宮、卵巣、副腎、精巣、扁桃、胸腺及び皮膚の組織から採取された試料、又は腫瘍から採取された試料が含まれるが、これらに限定されない。「体液試料」の例には、血液、血清、***、前立腺液、***、尿、糞便、唾液、痰、粘液、骨髄、リンパ液、及び涙が含まれるが、これらに限定されない。
患者試料は、健康な対象、疾患患者、又は対象において筋疾患若しくは筋障害の関連症状を有する患者(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD))から得ることができる。特定の実施形態では、対象からの「試料」(例えば、試験試料)は、対象において筋疾患又は障害を有する対象において高レベルの本発明のタンパク質マーカを含有すると予想され得る試料を指す。特定の実施形態では、「提供される」試料は、アッセイを行う人(又は機械)によって得ることができるか、又はそれ以外によって得られ、アッセイを行う人(又は機械)に移され得る。
特定の実施形態では、生体試料は、自己、同種、ハプロタイプ一致、ハプロタイプ不一致、ハプロ一致、異種、細胞株又はそれらの組合わせを含む1つ又は複数の供給源から得られる。
また、患者から得られた試料を分割することができ、一部のみを診断に用いてもよい。更に、試料又はその一部は、後の分析のために試料を維持する条件下で保存することができる。この定義は、具体的には、生物学的起源の血液及び他の液体試料(限定されないが、末梢血、血清、血漿、臍帯血、羊水、脳脊髄液、尿、唾液、便及び滑液を含む)、生検標本又は組織培養物等の固体組織試料、又はそれらに由来する細胞及びそれらの子孫を包含する。特定の実施形態では、試料は、骨髄又は血液試料を含む。
「試料」の定義はまた、遠心分離、濾過、沈殿、透析、クロマトグラフィ、試薬による処理、洗浄、又は特定の細胞集団について増菌等によって、それらの入手後に何らかの方法で操作された試料を含む。この用語は、臨床試料を更に包含し、培養中の細胞、細胞上清、組織試料、器官等も含む。試料はまた、新鮮凍結及び/又はホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロック、例えば、免疫組織化学による病理学的分析又は研究のために調製された、臨床又は病理生検から調製されたブロックを含み得る。
本明細書で使用される「マーカ」は、細胞の特徴及び/又は表現型を説明するために使用される。マーカは、目的の特徴を含む細胞の選択に使用することができる。マーカは、特定の細胞によって異なる。マーカは、特定の細胞型の細胞の形態学的、機能的又は生化学的(酵素的)特徴、あるいは細胞型によって発現される分子による特徴である。好ましくは、そのようなマーカはタンパク質であり、より好ましくは、当技術分野で利用可能な抗体又は他の結合分子のエピトープを有する。しかし、マーカは、タンパク質(ペプチド及びポリペプチド)、脂質、多糖類、核酸及びステロイドを含むがこれらに限定されない、細胞に見られる任意の分子からなり得る。形態学的特徴又は形質の例としては、形状、サイズ及び核細胞質比が挙げられるが、これらに限定されない。機能的特徴又は形質の例としては、限定されないが、特定の基質に付着する能力、特定の色素を組み込む又は排除する能力、特定の条件下で移動する能力、及び特定の系統に沿って分化又は脱分化する能力が挙げられる。マーカは、当業者に利用可能な任意の方法によって検出され得る。マーカはまた、形態学的特徴の非存在又はタンパク質、脂質等の非存在であり得る。マーカは、ポリペプチドの存在及び非存在の固有の特徴のパネルと他の形態学的特徴との組合わせであり得る。
いくつかの実施形態では、筋障害は、「サルコペニア」である。サルコペニアは、高齢患者及び慢性疾患患者を苦しめ、筋肉量及び機能の喪失を特徴とする消耗性疾患である。アナボリックステロイドは、年齢、疾患及び外傷損傷に関連する除脂肪量の減少(骨格筋量の減少)を予防及び/又は逆転させることができることが確立されている。更に、除脂肪量の増加は、特定の筋消耗性障害の罹患率及び死亡率の減少に関連する。
本明細書で互換的に使用される「筋消耗」又は「筋の消耗」という用語は、筋肉量の進行性の減少並びに/あるいは運動を制御する骨格筋若しくは随意筋、心臓を制御する心筋、及び平滑筋を含む筋肉の進行性の衰弱及び変性を指す。
本明細書で使用される筋萎縮は、筋肉量の部分的又は完全な減少を指す。筋ジストロフィーは、進行性の筋力低下及び萎縮並びに筋細胞及び組織の死を伴う筋疾患である。筋萎縮には、例えば、筋肉の萎縮を伴う筋力低下、特に、近位筋の筋肉量の減少又は筋力低下、筋機能の低下、筋肉量の減少等を伴う疾患又は状態が含まれ得る。筋萎縮又は筋ジストロフィーは、長期の床上安静によって引き起こされる筋消耗、治療のための補助装置によって引き起こされる筋萎縮、又は悪液質、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性進行性筋萎縮症、筋ジストロフィー、又はそれらの組合わせによって引き起こされる筋萎縮であり得る。
「筋幹細胞」とは、細胞間融合によって多核筋線維を形成することに関与する単核筋芽細胞を子孫として作り出す、自己再生単核細胞を意味する。骨格筋、平滑筋又は心筋を製造する筋幹細胞が本明細書に包含される。
本明細書で使用される「筋細胞」という用語は、筋組織に寄与する任意の細胞を指す。筋芽細胞、衛星細胞、筋管、及び筋原線維組織は全て「筋細胞」という用語に含まれ、本発明の方法を使用して全て処理され得る。筋細胞の効果は、骨格筋、心筋及び平滑筋内で誘導され得る。成体脊椎動物の筋組織は、「衛星細胞」と呼ばれる予備筋芽細胞から再生する。衛星細胞は筋組織全体に分布しており、損傷又は疾患の非存在下では有糸***的に静止している。筋損傷後又は疾患からの回復中に、衛星細胞は細胞周期に再び入り、増殖し、1)既存の筋線維に入るか、又は2)新しい筋線維を形成する多核筋管に分化する。筋芽細胞は最終的に置換筋線維となるか、又は既存の筋線維に融合し、それによって収縮器官の構成要素の集合により線維束を増加させる。このプロセスは、例えば、誘導された筋線維変性の後に哺乳動物において生じるほぼ完全な再生によって示され、筋前駆細胞が増殖し、筋線維を再生しながら融合する。
本明細書で使用される「筋肉の成長」は、線維サイズの増加及び/又は線維の数の増加によって起こり得る筋肉の成長を指す。本明細書で使用される筋肉の成長は、A)湿重量の増加、B)タンパク質含有量の増加、C)筋線維の数の増加、又はD)筋線維直径の増加によって測定され得る。筋線維の成長の増進は、断面の楕円の短軸として定義される直径の増加として定義することができる。
本明細書に記載の「筋原性」細胞は、筋細胞又は筋線維の起源に関連する細胞である。様々な分子マーカが、筋原性分化の中期及び後期に特異的であることが知られている。例えば、C2C12細胞では、ミオシン及びMRF4は後期段階の筋形成を示し、主として筋管に限られるが、一方myogenin及びネスチンは中期段階の筋形成を示し、全ての筋管及び多くの関与する筋芽細胞に見られる。
本明細書で使用される場合、「衛星細胞」又は「筋衛星細胞」は、成熟筋に見られる細胞質がほとんどない小型の多能性細胞を指す。衛星細胞は、骨格筋細胞の前駆体であり、衛星細胞又は筋芽細胞を生じさせ、これらが骨格筋細胞を生じさせる。衛星細胞は、それらの親筋線維に追加の筋核を提供するか、又は静止状態に戻る可能性を有する。活性化されると、衛星細胞は細胞周期に再び入り増殖し、筋芽細胞に分化することができる。衛星細胞は、衛星細胞ニッチを再配置させる能力、筋肉再生を推進する能力、遺伝子マーカの適切な発現、糖タンパク質の適切な発現、及び培養中の増殖性を含むがこれらに限定されない、内因性衛星細胞と共有され得る1つ又は複数の特徴を示し得る。
本明細書で使用される筋肉の「萎縮」又は「消耗」は、筋線維周囲長の有意な低下を指す。有意な萎縮とは、罹患組織、損傷組織又は未使用の筋組織における筋線維直径が、非罹患組織、非損傷組織又は通常利用される組織と比較して少なくとも10%減少することを意味する。
「疾患」という用語は、哺乳動物の正常な健康状態からのいずれかの逸脱を指し、疾患症状が存在する時の状態、及び逸脱(例えば、筋機能不全又は筋障害)が生じているが症状はまだ現れていない状態を含む。
「患者」又は「それを必要とする対象」は、特定の障害に罹患している又は罹患し得る動物界の生存しているメンバを指す。実施形態では、対象は、疾患に自然に罹患し得る個体を含む種のメンバである。実施形態では、対象は、哺乳動物である。哺乳動物の非限定的な例としては、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)、霊長類(例えば、キツネザル、ブッシュベビー、サル、類人猿、及びヒト)、ウサギ、イヌ(例えば、コンパニオン犬、サービス犬、又は警察犬、軍用犬、レース犬、若しくはショードック等の作業犬)、ウマ(例えば、レース用ウマ及び作業用ウマ)、ネコ(例えば、飼い慣らされたネコ)、家畜(例えば、ブタ、ウシ、ロバ、ラバ、バイソン、ヤギ、ラクダ及びヒツジ)及びシカが挙げられる。実施形態では、対象は、ヒトである。
「対象」、「患者」、「個体」等の用語は、限定することを意図するものではなく、一般に相互に変更可能である。すなわち、「患者」として記載された個体は、必ずしも所与の疾患を有するとは限らず、単に医学的な助言を求めるだけであってもよい。
移行句「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法工程を排除しない。対照的に、「からなる(consisting of)」という移行句は、特許請求の範囲で指定されていない要素、工程、又は成分を除外する。「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句は、特許請求の範囲を、特定の材料又は工程、及び「特許請求される発明の基本的かつ新規な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。
本明細書の説明及び特許請求の範囲において、「少なくとも1つの(at least one of)」又は「1つ又は複数の(one or more of)」等の語句が出現し、その後に要素又は特徴の連言的なリストが続き得る。「及び/又は」という用語はまた、2つ以上の要素又は特徴のリストに出現し得る。そのような語句は、それが使用される文脈によって暗黙的又は明示的に矛盾しない限り、列挙された要素又は特徴のいずれかを個別に、又は列挙された要素又は特徴のいずれかを他の列挙された要素又は特徴のいずれかと組み合わせて意味することを意図している。例えば、句「A及びBのうちの少なくとも1つ」、「A及びBのうちの1つ又は複数」及び「A及び/又はB」は、それぞれ「A単独、B単独、又はAとBとを一緒に」を意味することを意図している。3つ以上の項目を含むリストについても同様の解釈が意図される。例えば、句「A、B、及びCの少なくとも1つ」、「A、B、及びCのうちの1つ又は複数」、及び「A、B、及び/又はC」は、それぞれ「A単独、B単独、C単独、AとB、AとC、BとC、又はAとBとCを一緒に」を意味することが意図されている。更に、上記及び特許請求の範囲における「に基づいて」という用語の使用は、列挙されていない特徴又は要素も許容されるように、「少なくとも部分的に基づいて」を意味することを意図している。
パラメータ範囲が提供される場合、その範囲内の全ての整数、及びその10分の1も本発明によって提供されることが理解される。例えば、「0.2~5mg」は、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg等、5.0mgを含む最大5.0mgの開示である。
本明細書の説明及び以下の特許請求の範囲を通して使用される場合、「a」、「an」、及び「the」の意味は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の言及を含む。
本明細書で使用される場合、状態、疾患若しくは障害、又は状態、疾患若しくは障害に関連する症状の「治療すること」又は「治療」は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るための手法を指す。有益な又は所望の臨床結果としては、限定されないが、1つ又は複数の症状又は状態の緩和又は改善、状態、障害又は疾患の程度の縮小、状態、障害又は疾患の状態の安定化、状態、障害又は疾患の発症の予防、状態、障害又は疾患の伝播の予防、状態、障害又は疾患の進行の遅滞又は遅延、状態、障害又は疾患の発症の遅延又は遅延、状態、障害又は疾患の状態の改善又は緩和、並びに部分的若しくは全体的にかかわらず寛解を挙げることができる。「治療すること」はまた、状態、障害又は疾患の進行を阻害すること、状態、障害又は疾患の進行を一時的に遅らせることを意味し得るが、場合によっては、状態、障害又は疾患の進行を永続的に停止させることを含む。
本明細書で使用される場合、用語「治療する」及び「予防する」は、絶対的な用語であることを意図しない。実施形態では、治療は、確立された疾患、状態、又は疾患若しくは状態の症状の重症度の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の減少を指すことができる。いくつかの実施形態では、疾患を治療するための方法は、対照と比較して、対象において疾患の1つ又は複数の症状が10%低下する場合、治療であると見なされる。したがって、低下は、天然又は対照レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、又は10%~100%の任意の百分率の低下であり得る。治療は、必ずしも疾患、状態、又は疾患若しくは状態の症状の治癒又は完全な消失を意味しないことが理解される。実施形態では、減少、低下又は阻害への言及は、対照レベルと比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれを超える変化を含み、そのような用語は完全な排除を含むことができるが、必ずしも含むわけではない。実施形態では、疾患の重症度は、例えば、投与前の個体又は治療を受けていない対照個体と比較して、少なくとも10%低下する。いくつかの態様では、疾患の重症度は、少なくとも25%、50%、75%、80%、又は90%低下し、又は場合によっては、標準的な診断技術を使用してもはや検出できない。
「有効量」、「有効用量」等の用語は、本明細書に記載されるように、所望の効果を達成するのに十分な薬剤の量を指す。実施形態では、細胞又は治療化合物の量に言及する場合の「有効な」という用語は、本開示の様式で使用した場合の合理的な利益/リスク比に見合った、過度の有害な副作用(毒性、刺激、又はアレルギー反応等)なしに改善又は所望の治療応答を得るのに十分な細胞又は化合物の量を指し得る。実施形態では、所望の細胞集団の生成に言及する場合の「有効な」という用語は、特に1つ又は複数の化合物を欠く培養条件と比較して、所望の細胞集団のメンバの製造が生じるか又は促進するのに十分な1つ又は複数の化合物の量を指し得る。
筋形成及び骨格筋
筋形成は、例えば特に胚発生中の筋組織の形成である。筋線維は、一般に、筋芽細胞の融合で筋管と呼ばれる多核線維を形成している。胚の初期発生において、筋芽細胞は増殖するか、又は筋管に分化することができる。in vivoでこの選択を制御するものは一般に明確ではない。細胞培養物中に置かれた場合、十分な線維芽細胞増殖因子(FGF)又は別の増殖因子が細胞を取り囲む培地中に存在するならば、ほとんどの筋芽細胞が増殖するであろう。成長因子が尽きると、筋芽細胞は***を停止し、筋管への最終分化を経る。筋芽細胞の分化は段階的に進行する。第1段階は、細胞周期の終了及び特定の遺伝子の発現の開始を含む。分化の第2段階は、筋芽細胞の互いのアライメントを含む。複数の研究では、ラット及びニワトリの筋芽細胞でさえも互いに認識し整列することができることが示されており、関与する機構が進化的に保存されていることを示唆している。第3段階が、その実際の細胞融合である。この段階では、カルシウムイオンの存在が重要である。マウスでは、融合は、メルトリンと呼ばれるメタロプロテイナーゼのセット及び依然として調査中の様々な他のタンパク質によって支援される。融合は、原形質膜へのアクチンの動員、続く密接な並置、及びその後急速に広がる孔の形成を含む。
胚発生の間、体節中の皮筋板及び/又は筋節は、予想される骨格筋に進化する筋原性前駆細胞を含む。皮筋板及び筋節の決定は、Tボックスファミリのメンバ、tbx6、ripply1及びmesp-baを含む遺伝子調節ネットワークによって調節される。骨格筋形成は、筋原性前駆体を筋線維に分化させるために、様々な遺伝子サブセットの厳密な制御に依存する。塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス(bHLH)転写因子、MyoD、Myf5、myogenin及びMRF4は、その形成に重要である。MyoD及びMyf5は、筋原性前駆体の筋芽細胞への分化を可能にし、続いてmyogeninは、筋芽細胞の筋管への分化を可能にする。MRF4は、筋特異的プロモータの転写を遮断し、分化前に骨格筋前駆体が成長及び増殖することを可能にするために重要である。
筋原性前駆細胞
成体哺乳動物種の骨格筋は、成長、トレーニング、及び損傷等の生理学的要求に適応する能力を示す。これらの適応が起こるプロセスは、成体骨格筋に存在し、衛星細胞と呼ばれている単核細胞の小さな集団に起因する。骨格筋線維は最終分化しており、これらの多核細胞の核はDNA合成又は有糸***ができない。筋線維数又は筋線維核の数の増加は、「筋芽細胞」として知られる筋前駆細胞の増殖及びその後の分化によるものである。成体において、筋芽細胞は、有糸***的に静止状態の予備前駆体集団として残り、これは、筋肉損傷時に、細胞周期に再び入り、数回の増殖を受け、その後、分化し、細胞周期から永久に退出することができる。分化すると、分化した筋芽細胞は、互いに又は既存の筋線維と融合する能力を獲得し、筋特異的筋原線維及び収縮タンパク質のセットの発現も開始する。静止状態の筋原性前駆細胞は、筋細胞膜と基底膜との間のくぼみに存在するため、成体筋線維とは物理的に異なる。筋損傷の場合、これらの細胞の一部は前駆細胞として残るが、他の細胞は新しい筋線維に分化する。筋外傷等の刺激に応答して、筋原性前駆細胞が活性化され、増殖し、筋原性マーカを発現する。最終的に、これらの細胞は、既存の筋線維に融合するか、又は一緒に融合して、損傷した骨格筋の再生中に新しい筋線維を形成する。
筋原性前駆細胞(MPC)の集団を製造する方法
筋原性前駆細胞(MPC)の集団を製造する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、多能性幹細胞(PSC)集団を適切な条件下で培養してMPC集団を製造することを含む。いくつかの実施形態では、PSCは、対象から単離された細胞から調製(例えば、脱分化)することができる。
多能性幹細胞
多能性幹細胞は、限定されないが、人工多能性幹(iPS)細胞又は胚性幹(ES)細胞とすることができる。特定の実施形態では、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞である。一実施形態では、多能性細胞は非ヒトES細胞である。一実施形態では、多能性細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞である。一実施形態では、人工多能性(iPS)細胞は線維芽細胞に由来する。一実施形態では、人工多能性(iPS)細胞は、ヒト線維芽細胞に由来する。一実施形態では、多能性細胞は造血幹細胞(HSC)である。一実施形態では、多能性細胞は神経幹細胞(NSC)である。一実施形態では、多能性細胞は、外胚葉幹細胞である。一実施形態では、多能性細胞は、発生的に制限された前駆細胞である。一実施形態では、多能性細胞は、げっ歯類多能性細胞である。一実施形態では、げっ歯類多能性細胞はラット多能性細胞である。一実施形態では、ラット多能性細胞はラットES細胞である。一実施形態では、げっ歯類多能性細胞はマウス多能性細胞である。一実施形態では、多能性細胞は、マウス胚性幹(ES)細胞である。
特定の実施形態では、hPSCは、フィーダ細胞を使用しない接着培養による細胞培養のための単一細胞としてプレーティングされる。培養には、皿、フラスコ、マイクロプレート、Geltrex(Gibco)、OptiCell(Nalge Nunc International)等の細胞培養シート等の培養容器が用いられる。培養容器は、細胞との接着性(親水性)を向上させるために表面処理されているか、又はコラーゲン、ゼラチン、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ラミニン、フィブロネクチン、マトリゲル(例えば、BD Matrigel(Becton Dickinson))、ビトロネクチン等の細胞接着用基質でコーティングされている。培養容器は、I型コラーゲン、マトリゲル、フィブロネクチン、ビトロネクチン又はポリ-D-リジンでコーティングすることができる。培地の培養には、マウス胚性線維芽細胞馴化培地の使用が含まれる。
特定の実施形態では、細胞は、増殖因子、例えば線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)及びROCK阻害剤、例えばY-27632を含む培地中で培養される。「ROCK阻害剤」とは、Rhoキナーゼ(ROCK:Rho-associated,coiled-coil containing protein kinase)を阻害する物質を意味し、ROCK I及びROCK IIのいずれかを阻害する物質であり得る。ROCK阻害剤としては、上記の機能を有するものであれば特に限定されない。使用され得るROCK阻害剤の例としては、N-(4-ピリジニル)-4β-[(R)-1-アミノエチル]シクロヘキサン-1α-カルボキサミド(Y-27632)、ファスジル(HA1077)、(2S)-2-メチル-1-[(4-メチル-5-イソキノリニル)スルホニル]ヘキサヒドロ-1-H-1,4-ジアゼピン(H-1152)、4β-[(1R)-1-アミノエチル]-N-(4-ピリジル)ベンゼンカルボキサミド(Wf-536)、N-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4PER(R)-1-アミノエチル]シクロヘキサン-カルボキサミド(Y-30141)、N-(3-{[2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-1-エチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-6-イル]オキシ}フェニル)-4-{[2-(4-モルホリニル)エチル]-オキシ}ベンズアミド(GSK269962A)及びN-(6-フルオロ-1H-インダゾール-5-イル)-6-メチル-2-オキソ-4-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-3,4-ジヒドロ-1H-ピリジン-5-カルボキサミド(GSK429286A);ROCKに対する、抗体(機能性断片を含む)、アンチセンス核酸、及びsiRNA;ROCK拮抗薬及びドミナントネガティブ体;並びに当該分野で公知の他のROCK阻害剤が挙げられる。
GSK-3β阻害剤による分化
多能性幹細胞は、筋原性前駆細胞(MPC)に分化するように誘導され得る。例示的な手順では、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK-3)、例えばCHIR99021の選択的阻害剤である。GSK3β(グリコーゲンシンターゼキナーゼ3)は、グリコーゲンの製造、アポトーシス、幹細胞の維持等に関わる多くのシグナル経路に関与するセリン/トレオニンプロテインキナーゼである。GSK3には、2つのイソ型、α及びβが含まれる。特定の実施形態では、GSK3β阻害剤は、GSK3β阻害剤である。GSK3β阻害剤の使用は、GSK3β阻害剤がGSK3β阻害活性を有する限り特に限定されない。GSK3β阻害剤は、GSK3β阻害活性に加えてGSK3α阻害活性を有する物質であってもよい。
GSK3β阻害剤の例としては、CHIR98014(2-[[2-[(5-ニトロ-6-アミノピリジン-2-イル)アミノ]エチル]アミノ]-4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(1H-イミダゾール-1-イル)ピリミジン)、CHIR99021(6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジン-イル]アミノ]エチル]アミノ]ニコチノニトリル)、ケンパウロン、AR-A0144-18、TDZD-8(4-ベンジル-2-メチル-1,2,4-チアジアゾリジン-3,5-ジオン)、SB216763(3-(2,4-ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、BIO(6-ブロモインジルビン-3-オキシム)、TWS-119(3-[6-(3-アミノフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イルオキシ]フェノール)及びSB415286(3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-e-2,5-ジオン)が挙げられる。また、GSK3β阻害剤としては、GSK3β mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA等を用いることができ、市販されているものか、又は当該技術分野において公知の方法に従って合成することができる。
特定の実施形態では、GSK3β阻害剤は、CHIR99021、SB216763、SB415286、BIO、又はそれらの塩を含む。
特定の実施形態では、細胞は、GSK3β阻害剤を含む培養培地中で、少なくとも6時間、又は少なくとも12時間、又は少なくとも18時間、又は少なくとも24時間、又は少なくとも48時間、又は少なくとも72時間、又は少なくとも96時間培養される。特定の実施形態では、細胞は、限定されないが、GSK3β阻害剤を含む培養培地中で、1~8日間、2~7日間、3~6日間、3~5日間、3~4日間、又は4~5日間培養される。
GSK3β阻害剤(例えば、CHIR99021)の濃度は、いくつかの実施形態では、少なくとも0.2μM、0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、又は3μMであり得る。GSK3β阻害剤(例えば、CHIR99021)の濃度は、いくつかの実施形態では、3μM、3.5μM、4μM、4.5μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、30μM、又は40μM以下であり得る。GSK3β阻害剤(例えば、CHIR99021)の濃度は、いくつかの実施形態では、限定されないが、0.2~10μM、0.5~8μM、1~7μM、2~5μM、又は2~4μMであり得る。
Notchシグナル伝達阻害剤による処理
細胞をGSK3β阻害剤と共に培養した後、いくつかの例では、次いで細胞をγ-セクレターゼ阻害剤及び/又はNotchシグナル伝達阻害剤と共に培養する。γ-セクレターゼ阻害剤の例は、N-[N-(3,5-ジフルオロフェニルアセチル)--アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)である。DAPTは、家族性アルツハイマー病(AD)の初期発症に関連するアミロイド-β(Aβ)ペプチドの蓄積を導くアミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解的切断を触媒する多量体膜タンパク質複合体である、Notchシグナル伝達を遮断するγ-セクレターゼの強力かつ特異的な阻害剤である。これは、特に膜貫通ドメイン7又はそれを超えるC末端領域内で、γ-セクレターゼの触媒中心のC末端断片、プレセニリン(PS)に直接結合し、光活性化可能なDAPT誘導体の合成を導く。DAPTは、γ-セクレターゼの基質であるNotchを間接的に阻害する。
Notchシグナル伝達阻害剤は、Notchシグナル伝達経路を阻害する薬剤、例えば、化学化合物又は抗体である。γ-セクレターゼに対する阻害剤は、例えばNotchシグナル伝達経路を阻害することができる。そのようなγ-セクレターゼ阻害剤は、例えば、天然のペプチド性又は非ペプチド性又は半ペプチド性であり、好ましくは小分子である。例としては、DAPT(N-[N-(3,5-ジフルオロフェニルアセチル)-L-アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル)が挙げられる。また、化学分類AS(アリールスルホンアミド)、DBZ(ジベンズアゼピン(DBZ)、BZ(ベンゾジアゼピン)、LY-411,575及び数多くの他のものからの化合物が、それらのγ-セクレターゼ阻害活性について試験された。γ-セクレターゼ阻害剤は、スルホンアミド/スルホン及びベンゾジアゼピン/ベンゾラクタムに識別されている。これらのγ-セクレターゼ阻害剤のいくつかは、既に臨床第I相及び第II相試験中である。
特定の実施形態では、細胞は、少なくとも1つのNotchシグナル伝達阻害剤(例えば、DAPT)を含む培地中で、少なくとも約1日間、又は少なくとも約2日間、又は少なくとも約3日間、又は少なくとも約4日間、又は少なくとも約5日間、又は少なくとも約6日間、又は少なくとも約7日間、又は少なくとも約8日間培養される。特定の実施形態では、細胞は、少なくとも1つのNotchシグナル伝達阻害剤(例えば、DAPT)を含む培地中で、1~20日間、2~15日間、3~12日間、4~11日間、5~10日間、6~9日間、7~9日間、7~8日間、又は8~10日間培養されるが、これらに限定されない。
識別及び増殖
GSK3β阻害剤及びNotchシグナル伝達阻害剤による処理の後、いくつかの実施形態では、細胞は、(薬剤が培地から除去された後の)数日間にわたって更に分化させられる。いくつかの実施形態では、更なる分化は、少なくとも約2日間、4日間、6日間、8日間、10日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、20日間、25日間又は30日間持続し得る。
いくつかの実施形態では、分化したPAX7+細胞は、識別(濃縮)され、増殖され得る。いくつかの実施形態では、細胞は識別され、続いて増殖される。いくつかの実施形態では、細胞は増殖され、続いて識別される。
分化細胞の識別は、PAX7+MPCを認識する薬剤を用いて行うことができる。そのような薬剤の例としては、細胞表面マーカに特異的な抗体が挙げられる。PAX7+筋原性前駆細胞は、他の細胞、例えば、多能性細胞及び依然として分化を受けている細胞から濃縮され得る。例えば、抗体をFACS又は磁気ビーズで使用して、前駆細胞を識別し、単離し、精製することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、標的筋原性前駆細胞のマーカの例えば、NCAM、HNK1、PAX7+、MyoD+、CD54+、インテグリンα9β1+及びSDC2+(シンデカン2)等のパネルに特異的であるように使用される。
PAX7+筋原性前駆細胞の増殖は、FGF2(塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)及びFGF-βとしても知られる)又はFGF8又はそれらの組み合わせ、任意でFBSを補充した培地中で行うことができる。
in vivo再生及び生着が可能なMPC集団
濃縮及び増殖したPAX7+MPCは、実験例に示されるように、優れた再増殖及び生着能を有する。本発明者等は、in vitroで多能性幹細胞に由来する筋原性前駆細胞が、筋肉内移植の際に筋幹細胞ニッチに存在し、静止状態になり、ヒト筋幹細胞に類似するそれらの分子発現プロファイルを変化させ得ることは初めてであったと考える。
また、実施例に示されるように、PAX7+MPCの再生及び生着能は、最小細胞濃度を必要とする。示されるように、PAX7+MPCの濃度が15%未満の場合、再生及び生着は観察されなかった。
したがって、本開示の一実施形態によれば、細胞の少なくとも30%が、in vitro又はex vivoでの多能性幹細胞に由来するPAX7+筋原性前駆細胞(MPC)である細胞集団(例えば、哺乳動物細胞、又はより具体的にはヒト細胞)が提供される。いくつかの実施形態では、細胞集団は、少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%のPAX7+MPCを含む。
いくつかの実施形態では、細胞集団は、少なくとも100、1000、10,000、100,000、1x10、1x10、1x10、又は1x10の細胞を含む。いくつかの実施形態では、集団の細胞のかなりの部分が、分化中にPAX7+MPCと共に培養されている。例えば、集団の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%又は99.9%が、分化中にPAX7+MPCと共に培養されている。
本技術によって得られるPAX7+MPCは、天然の筋原性前駆細胞とは異なると考えられる。PAX7+、NCAM、HNK1、PAX7+、MyoD+、CD54+、インテグリンα9β1+及びSDC2+に加えて、これらは、以下の細胞表面マーカ:CHRNA1+、NTSR1+、FZD1+、FZD5-、GPR37-及びGPR27-のうちの1つ又は複数によって特性決定され得る。いくつかの実施形態では、誘導されたPAX7+MPCは、CHRNA1+、NTSR1+、FZD1+、FZD5-、GPR37-及びGPR27-のうちの少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つによって特性決定される。
いくつかの実施形態では、少なくとも2つは、CHRNA1+及びNTSR1+、CHRNA1+及びFZD1+、CHRNA1+及びFZD5-、CHRNA1+及びGPR37-、CHRNA1+及びGPR27-、NTSR1+及びCHRNA1+、NTSR1+及びFZD1+、NTSR1+及びFZD5-、NTSR1+及びGPR37-、NTSR1+及びGPR27-、FZD1+及びCHRNA1+、FZD1+及びNTSR1+、FZD1+及びFZD5-、FZD1+及びGPR37-、FZD1+及びGPR27-、FZD5-及びCHRNA1+、FZD5-及びNTSR1+、FZD5-及びFZD1+、FZD5-及びGPR37-、FZD5-及びGPR27-、GPR37-及びCHRNA1+、GPR37-及びNTSR1+、GPR37-及びFZD1+、GPR37-及びFZD5-、GPR37-及びGPR27-、GPR27-及びCHRNA1+、GPR27-及びNTSR1+、GPR27-及びFZD1+、GPR27-及びFZD5-、又はGPR27-及びGPR37-である。
いくつかの実施形態では、誘導されたPAX7+MPCは、CHRNA1+、NTSR1+、FZD1+、FZD5-、GPR37-及びGPR27-のうちの少なくとも3つによって特性決定される。いくつかの実施形態では、誘導されたPAX7+MPCは、CHRNA1+、NTSR1+、FZD1+、FZD5-、GPR37-及びGPR27-のうちの少なくとも4つによって特性決定される。いくつかの実施形態では、誘導されたPAX7+MPCは、CHRNA1+、NTSR1+、FZD1+、FZD5-、GPR37-及びGPR27-のうちの少なくとも5つによって特性決定される。いくつかの実施形態では、誘導されたPAX7+MPCは、CHRNA1+、NTSR1+、FZD1+、FZD5-、GPR37-及びGPR27-の全てによって特性決定される。
細胞表面タンパク質が陽性(+)であるか陰性(-)であるかは、抗体等のマーカを認識する薬剤によって評価され得る。しかし、そのような陽性及び陰性は絶対的ではない場合があることが当業者によって容易に理解される。いくつかの実施形態では、陽性であるマーカは、参照細胞上よりも細胞上でより高い発現を有する。いくつかの実施形態では、陰性であるマーカは、参照細胞上よりも細胞上でより低い発現を有する。参照細胞は、例えば、多能性幹細胞から同様に分化したが、筋組織をin vivoで再生することができない細胞である。
MPC集団を製造するための方法は、MPC集団の細胞におけるPAX7発現を増加させるのに有効である。例えば、発現は、参照と比較して少なくとも0、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、又は200%増加し得る。実施形態では、筋原性前駆細胞集団におけるPAX7発現は、少なくとも100%増加する。実施形態では、筋原性前駆細胞集団におけるPAX7発現レベルは、少なくとも125%増加する。実施形態では、筋原性前駆細胞集団におけるPAX7発現レベルは、少なくとも150%増加する。実施形態では、筋原性前駆細胞集団におけるPAX7発現レベルは、少なくとも50%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1100%又は1200%増加する。実施形態では、筋原性前駆細胞集団におけるPAX7発現レベルは、約50%~約1200%増加する。
ヒトPAX7のアミノ酸配列は、アクセッション番号NP_002575.1(配列番号1)としてNCBI GenBankデータベースで公的に入手可能であり、以下の通りである。
Figure 2022526591000002
ヒトPAX7をコードするヌクレオチド配列は、アクセッション番号NM_002584.2(配列番号2)としてGenBankデータベースで公的に入手可能であり、以下の通りである(開始コドン及び終止コドンを太字及び下線で示す)。
Figure 2022526591000003
マウスPAX7のアミノ酸配列は、アクセッション番号NP_035169.1(配列番号3)としてNCBI GenBankデータベースで公的に入手可能であり、以下の通りである。
Figure 2022526591000004
マウスPAX7をコードするヌクレオチド配列は、アクセッション番号NM_011039.2(配列番号4)としてGenBankデータベースで公的に入手可能であり、以下の通りである(開始コドン及び終止コドンを太字及び下線で示す)。
Figure 2022526591000005

Figure 2022526591000006
MPC集団を製造するための方法は、MPC集団の細胞におけるMyoD発現を増加させるのに有効である。例えば、発現は、参照と比較して少なくとも0、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、又は200%増加し得る。実施形態では、筋原性前駆細胞集団におけるMyoD発現は、少なくとも100%増加する。実施形態では、筋原性前駆細胞集団におけるMyoD発現レベルは、少なくとも125%増加する。実施形態では、筋原性前駆細胞集団におけるMyoD発現レベルは、少なくとも150%増加する。実施形態では、筋原性前駆細胞集団におけるMyoD発現レベルは、少なくとも50%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1100%又は1200%増加する。実施形態では、筋原性前駆細胞集団におけるMyoD発現レベルは、約50%~約1200%増加する。
ヒトMyoDのアミノ酸配列は、アクセッション番号NP_002469.2(配列番号5)としてNCBI GenBankデータベースで公的に入手可能であり、以下の通りである。
Figure 2022526591000007
ヒトMyoDをコードするヌクレオチド配列は、アクセッション番号NM_002478.5(配列番号6)としてGenBankデータベースで公的に入手可能であり、以下の通りである(開始コドン及び終止コドンを太字及び下線で示す)。
Figure 2022526591000008
マウスMyoDのアミノ酸配列は、アクセッション番号NP_034996.2(配列番号7)としてNCBI GenBankデータベースで公的に入手可能であり、以下の通りである。
Figure 2022526591000009
マウスMyoDをコードするヌクレオチド配列は、アクセッション番号NM_010866.2(配列番号8)としてGenBankデータベースで公的に入手可能であり、以下の通りである(開始コドン及び終止コドンを太字及び下線で示す)。
Figure 2022526591000010
他の態様では、MPC集団を製造する方法は、細胞集団をex vivoで少なくとも30日間培養及び増殖させることを含む。他の態様では、細胞集団は、少なくとも5日間、少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、ex vivoで培養及び増殖される。
態様では、細胞集団は、それらの数を増やすため培養される。例えば、数は、少なくとも0、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、又は200%増加し得る。実施形態では、数は、少なくとも50%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1100%、又は1200%増加し得る。実施形態では、細胞集団を培養し、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%増殖される。
更なる例では、MPC集団は、対象から得られた細胞、例えば骨格細胞の集団から製造される。他の例では、PSC集団は、人工多能性幹(iPS)細胞集団である。
更なる態様では、細胞集団は、生検により対象から得られる。
本明細書中に記載される方法に従って製造される筋原性前駆細胞の集団もまた本明細書中に提供される。
筋疾患又は障害を治療するための方法
それを必要とする対象における筋疾患又は筋障害を予防又は治療する方法が本明細書に含まれる。更なる実施形態では、方法は、本明細書に記載の方法に従って製造された筋原性前駆細胞の集団の有効量を対象に投与することを含む。筋原性前駆細胞は、生体試料からの細胞から調製された多能性幹細胞に由来/分化し得る。
生体試料
特定の実施形態では、生体試料は、自己、同種、ハプロタイプ一致、ハプロタイプ不一致、ハプロ一致、異種、細胞株又はそれらの組合わせを含む1つ又は複数の供給源から得られる。
したがって、いくつかの実施形態における細胞は初代細胞、例えば初代ヒト細胞である。試料は、対象から直接採取された組織、体液、及び他の試料、並びに分離、遠心分離、遺伝子工学(例えばウイルスベクターによる形質導入)、洗浄、及び/又は培養等の1つ又は複数の処理工程から生じる試料を含む。生体試料は、生物源から直接得られた試料又は処理された試料であり得る。生体試料としては、体液、例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿及び汗、組織及び器官試料、これらに由来する処理された試料が挙げられるが、これらに限定されない。
骨格筋(SkM)再生は、筋線維の基底膜の下に存在する筋原性前駆体の活性に依存する。筋芽細胞の増殖、分化、及び融合の変化は、多くの神経筋障害によって共有される特徴であり、細胞ベースアッセイ及び薬理学的治療のために使用することができる。ヒト骨格筋生検、特に疾患に罹患したものは、脂肪細胞及び線維芽細胞等の非筋原性細胞の広範な集団を含むことが多い。したがって、特定の実施形態では、試料は筋組織又は骨組織である。
いくつかの態様では、細胞が由来する若しくは単離される試料は、血液若しくは血液由来試料であるか、又はアフェレーシス産物若しくは白血球アフェレーシス産物であるか又は、それに由来する。例示的な試料には、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、***、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃腺、又は他の器官、並びに/あるいはそれらに由来する細胞が含まれる。試料には、細胞療法、例えば養子細胞療法の状況において、自己及び同種の供給源からの試料が含まれる。
いくつかの実施形態では、細胞は細胞株に由来する。いくつかの実施形態における細胞は、異種供給源から、例えばマウス、ラット、非ヒト霊長類又はブタから得られる。
いくつかの実施形態では、細胞の単離は、1つ若しくは複数の調製及び/又は非親和性ベースの細胞分離工程を含む。いくつかの例では、細胞を洗浄し、遠心分離し、及び/又は1つ又は複数の試薬の存在下で培養して、例えば、望ましくない成分を除去し、所望の成分を濃縮し、特定の試薬に感受性の細胞を溶解又は除去する。いくつかの例では、細胞は、密度、接着特性、サイズ、感受性及び/又は特定の成分に対する耐性等の1つ又は複数の特性に基づいて分離される。
いくつかの例では、対象の循環血液からの細胞は、例えばアフェレーシス又は白血球アフェレーシスによって得られる。試料は、いくつかの態様では、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、及び/又は血小板を含むリンパ球を含有し、いくつかの態様では、赤血球及び血小板以外の細胞を含有する。
いくつかの実施形態では、対象から採取された血液細胞は、例えば、血漿画分を除去し、その後の処理工程のために細胞を適切な緩衝液又は培地に配置するために洗浄される。いくつかの実施形態では、細胞はホスフェート緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、カルシウム及び/又はマグネシウム及び/又は多くの若しくは全ての二価カチオンを欠く。いくつかの態様では、洗浄工程は、製造業者の指示に従って半自動「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991 cell processor,Baxter)によって達成される。いくつかの態様では、洗浄工程は、製造業者の指示に従ってタンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって達成される。いくつかの実施形態では、細胞は、洗浄後に、例えばCa++/Mg++非含有PBS等の様々な生体適合性緩衝液に再懸濁される。特定の実施形態では、血液細胞試料の成分が除去され、細胞が培養培地に直接再懸濁される。いくつかの実施形態では、方法は、赤血球を溶解することによる末梢血からの白血球の調製及びPercoll又はFicoll勾配による遠心分離等の密度に基づく細胞分離方法を含む。
いくつかの実施形態では、細胞集団の単離方法は、表面マーカ、例えば表面タンパク質、細胞内マーカ、又は核酸等の1つ又は複数の特異的な分子の細胞内における発現又は存在に基づく異なる細胞型の分離を含む。いくつかの実施形態では、そのようなマーカに基づく任意の公知の分離方法が使用され得る。いくつかの実施形態では、分離は、親和性又は免疫親和性に基づく分離である。例えば、いくつかの態様における単離は、1つ又は複数のマーカ、典型的には細胞表面マーカの細胞の発現又は発現レベルに基づく細胞及び細胞集団の分離であって、これは例えばそのようなマーカに特異的に結合する抗体又は結合パートナーとの培養によるものであり、続いて一般に洗浄工程及び抗体又は結合パートナーに結合した細胞の、抗体又は結合パートナーに結合しなかった細胞からの分離を含む。
そのような分離工程は、試薬に結合した細胞が更なる使用のために保持されるポジティブセレクション、並びに/あるいは抗体又は結合パートナーに結合しなかった細胞が保持されるネガティブセレクションに基づくことができる。いくつかの例では、両方の画分が更なる使用のために保持される。いくつかの態様では、ネガティブセレクションは、所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカに基づいて分離が行われるように、不均一な集団中の細胞型を特異的に同定する抗体が利用できない場合に有用であり得る。
分離は、特定の細胞集団又は特定のマーカを発現する細胞の100%濃縮又は除去が生じる必要はない。例えば、マーカを発現する細胞等の特定の種類の細胞のポジティブセレクション又は濃縮は、そのような細胞の数又は割合を増加させることを指すが、マーカを発現しない細胞の完全な非存在が生じる必要はない。同様に、マーカを発現する細胞等の特定の種類の細胞のネガティブセレクション、除去、又は枯渇は、そのような細胞の数又は割合を減少させることを指すが、全てのそのような細胞の完全な除去が生じる必要はない。
いくつかの例では、複数回の分離工程が行われ、1つの工程からポジティブ又はネガティブセレクションされた画分が、その後のポジティブ又はネガティブセレクション等の別の分離工程を経る。いくつかの例では、単一の分離工程は、それぞれがネガティブセレクションを標的とするマーカに特異的である、複数の抗体又は結合パートナーと細胞とを培養すること等によって、複数のマーカを同時に発現する細胞を枯渇させることができる。同様に、様々な細胞型上に発現される複数の抗体又は結合パートナーと共に細胞を培養することによって、複数の細胞型を同時にポジティブセレクションすることができる。
態様では、細胞は、対象において筋疾患(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)の開始前に単離される。他の態様では、細胞は、対象において筋疾患(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)の開始後に単離される。
態様では、細胞は培養されて、対象に投与される前にそれらの数を増殖する。態様では、細胞集団は、培養されて、それらの数を増殖する。例えば、数は、少なくとも0、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、又は200%増加し得る。実施形態では、数は、少なくとも50%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1100%、又は1200%増加し得る。実施形態では、細胞集団を培養し、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%増殖される。
一実施形態では、本明細書中に記載される細胞は、移植可能であり、例えば、筋原性前駆細胞(MPC)の集団であり、対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、細胞の集団を投与される対象は、細胞集団が得られるのと同じ対象(例えば、自己細胞療法のために)である。いくつかの実施形態では、対象は異なる対象である。いくつかの実施形態では、対象は、筋損傷を患っているか、又は正常な対象である。例えば、移植のための細胞(例えば、筋原性前駆細胞(MPC)の集団を含む組成物)は、移植に適した形態であり得る。
治療
以下に例示されるような変性筋消耗性疾患又は状態を治療するための組成物、使用、治療法、医薬品及び方法も提供される。
筋ジストロフィー
筋ジストロフィーは、進行性の衰弱及び筋肉量の喪失を引き起こす遺伝性疾患の群である。筋ジストロフィーでは、異常な遺伝子(突然変異)が、健康な筋肉を形成するのに必要なタンパク質の産生を妨げる。大部分において、筋ジストロフィー患者内の衛星細胞は、筋肉産生に必要なタンパク質を欠いている。本明細書で開発される衛星細胞(例えば、多能性幹細胞からin vitroで得られたPAX7+MPC)は、完全に機能的であり、健康である。それらは、非対称的細胞***を経ることができ、宿主筋芽細胞と融合して損傷した筋肉を回復させ、新しい筋肉を作り出す筋芽細胞を生じさせることができる。実験データは、これが連続的な筋再生に治癒的な長期効果を有することを裏付けている。
ミオパチー
ミオパチーは、筋機能及び筋力の喪失に関連する遺伝性筋疾患の群である。炎症性ミオパチーを引き起こす原因は不明であるが、免疫系において何らかの異常が起こり、それが筋細胞の攻撃を導くと考えられている。原因には、感染症、薬物による筋損傷、筋機能に影響を及ぼす遺伝性疾患、電解質レベルの障害、及び甲状腺疾患も含まれる。免疫系を回避することができる筋肉を製造することができる衛星細胞を設計することができる。したがって、筋原性前駆細胞は、免疫系によって標的化され得ず、したがって、筋機能及び筋力を患者に修復し得ると考えられる。
ミトコンドリア病
ミトコンドリア病は、ミトコンドリアが身体が適切に機能するのに十分なエネルギーを産生できない場合に疾患が起こる遺伝性疾患の群である。結果として、ミトコンドリア病は、筋力低下、筋肉痛、及び筋緊張低下を導く。本発明の衛星細胞は、筋機能及び筋力を回復させることによって、筋力低下を減少させることを助けるため、ミトコンドリア病に罹患している患者の生活の質を有意に改善することができると考えられる。
軟組織肉腫
軟組織肉腫は、限局性軟組織癌の一群である。例えば、横紋筋肉腫(RMS)は、完全に分化することができなかった骨格(横紋筋)筋細胞から発症する高悪性度の癌形態である。これは、典型的には手術及び化学療法によって治療され、高い生存率を導く傾向がある。しかし、外科的に除去されるか、又は局所放射線療法によって損傷されるため、その後、患者は、患部には非常に弱い筋肉が残る。衛星細胞の注射は、これらの疾患から生存した患者の筋肉領域における筋再生を回復させることを助け得ると考えられる。
イオンチャネル疾患
イオンチャネル疾患は、典型的には筋力低下、筋緊張の欠如、又は偶発性筋麻痺を特徴とするイオンチャネルの欠陥に関連する疾患の群である。衛星細胞は、これらの患者の機能的筋肉の回復を助けることができると考えられる。
悪液質
悪液質は、身体組成(筋肉喪失を介して)、生活の質、パフォーマンスステータス、罹患率及び死亡率を変化させる病態生理学的変化を特徴とする複雑で多因子性の障害であり、癌を有する患者の最大半数が悪液質で死亡し、患者の最大20%が悪液質を死因として有する。その有病率の増加を考慮して、悪液質は癌併存症であると提起されている。衛星細胞は、筋肉再生を回復させるのに役立つため、悪液質に苦しんでいる患者の生活の質を有意に改善することができると考えられる。
サルコペニア
サルコペニアは、骨格筋量及び機能の喪失を特徴とする状態である。主に高齢者の疾患であるが、その発症は高齢者に限ってみられるわけではない状態に関連し得る。サルコペニアは、骨格筋量及び筋力の進行性及び全身性の喪失を特徴とする症候群であり、身体障害、生活の質の低下及び死亡と密に相関している。経時的な衛星細胞の喪失は、サルコペニアに起因する主要な原因の1つであると考えられる。衛星細胞の注射は、サルコペニアの進行を有意に遅らせることができると考えられる。
変性筋消耗状態の非限定的な例には、以下が挙げられる:
筋ジストロフィー
-肢帯筋筋ジストロフィー(LGMD)
-ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)
-先天性筋ジストロフィー(CMD)
・ベスレムCMD
・福山CMD
・筋・眼・脳病(MEB)
・脊椎硬直症候群
・ウルリッヒCMD
・ウォーカー・ワールブルク症候群(WWS)
-デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)
-エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー(EDMD)
-顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)
-筋緊張性ジストロフィー(DM)
-眼咽頭型筋ジストロフィー(OPMD)
ミオパチー
-先天性ミオパチー
・キャップミオパチー
・中心核ミオパチー
・線維型不均衡を伴う先天性ミオパチー
・コアミオパチー
・セントラルコア病
・マルチミニコアミオパチー
・ミオシンストレージミオパチー
・筋細管ミオパチー
・ネマリンミオパチー
-遠位型ミオパチー
・GNEミオパチー/野中ミオパチー/遺伝性封入体ミオパチー(HIBM)
・ライ遠位型ミオパチー
・Markesberg-Griggs遅発性遠位型ミオパチー
・三好型ミオパチー
・Uddミオパチー/脛骨筋ジストロフィー
・VCPミオパチー/IBMPFD
・声帯及び咽頭遠位型ミオパチー
・ウェランダー遠位型ミオパチー
-内分泌ミオパチー
・甲状腺機能亢進性ミオパチー
・甲状腺機能低下性ミオパチー
-炎症性ミオパチー
・皮膚筋炎
・封入体筋炎
・多発性筋炎
-代謝性ミオパチー
・酸性マルターゼ欠損症(AMD、ポンペ病)
・カルニチン欠乏症
・カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠損症
・宿鎖酵素欠損症(コーリ病、フォーブス病)
・乳酸脱水酵素欠損症
・ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症
・ホスホフルクトキナーゼ欠損症(垂井病)
・ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症
・ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症
・ホスホリラーゼ欠損症(マッカードル病)
-筋原線維性ミオパチー(MFM)
-肩甲腓骨型ミオパチー
ミトコンドリア病
-フリードライヒ運動失調症(FA)
-ミトコンドリアミオパチー
・カーンズ・セイアー症状群(KSS)
・リー症候群(亜急性壊死性脳筋症)
・ミトコンドリアDNA枯渇症候群
・ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス及び脳卒中様発作(MELAS)
・ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症(MNGIE)
・赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)
・神経障害、運動失調及び網膜色素変性症(NARP)
・ピアソン症候群
・進行性外眼筋麻痺(PEO)
軟組織肉腫
-血管肉腫
-***性皮膚線維肉腫
-類上皮肉腫
-消化管間質腫瘍(GIST)
-カポジ肉腫
-平滑筋肉腫
-脂肪肉腫
-悪性末梢神経鞘腫
-粘液線維肉腫
-多形肉腫
-横紋筋肉腫
-孤在性線維性腫瘍
-滑膜肉腫
-未分化多形肉腫
イオンチャネル疾患
-アンダーセン・タウィル症候群
-高カリウム血性周期性四肢麻痺
-低カリウム血性周期性四肢麻痺
-先天性筋硬直症
・ベッカー型筋硬直症
・トムゼン型筋硬直症
-先天性パラミオトニア
-カリウム惹起性ミオトニー
悪液質
サルコペニア
実施形態では、変性筋消耗性疾患は、筋ジストロフィー又は筋消耗性疾患である。筋ジストロフィーの例としては、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、眼咽頭型筋ジストロフィー、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー、福山型先天性筋ジストロフィー、三好型ミオパチー、ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ステイナート型筋ジストロフィーが挙げられる。
実施形態では、筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を含む。
方法は、細胞を、それを必要とする対象、例えば哺乳動物対象、例えばヒト対象に投与することを更に含み得る。細胞の供給源は、哺乳動物、例えばヒトであり得る。細胞の供給源又はレシピエントはまた、非ヒト対象、例えば動物モデルであり得る。「哺乳動物」という用語は、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、ヤギ、ウマ、サル、イヌ、ネコ、及びヒトを含む生物を含む。同様に、移植可能な細胞は、非ヒトトランスジェニック生物を含むこれらの生物のいずれかから得ることができる。一実施形態では、移植可能な細胞は遺伝子操作されており、例えば、細胞は外因性遺伝子を含むか、又は内因性遺伝子を不活性化若しくは変化させるように遺伝子操作されている。
筋原性前駆細胞(MPC)の集団を含む組成物は、埋込み可能装置を使用して対象に投与することができる。埋込み可能装置及び関連技術は当技術分野で公知であり、本明細書に描写される化合物又は組成物の連続的又は徐放性送達が望まれる送達システムとして有用である。更に、埋込み可能装置送達システムは、化合物又は組成物の特定の送達点(例えば、局在部位、器官)を標的とするのに有用である(Negrin et al.,Biomaterials,22(6):563(2001))。代替の送達方法を含む叙放性技術も使用することができる。例えば、ポリマー技術、徐放技術及びカプセル化技術(例えば、ポリマー、リポソーム)に基づく徐放性製剤を、本明細書に描写される化合物及び組成物の送達に使用することもできる。
実施形態では、早期筋原性マーカのレベルをそれを必要とする対象において増加させるための方法が本明細書で提供される。更なる実施形態では、方法は、本明細書に記載の方法に従って製造された筋原性前駆細胞の集団の有効量を対象に投与することを含む。
他の実施形態では、筋疾患又は筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)を治療するための方法は、症状の開始を制御するための方法と組み合わせて、本明細書に記載の方法に従って製造された筋原性前駆細胞の集団を対象に投与することを含む。特に、併用治療は、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン及びデフラザコート等)、β2アゴニスト(例えば、サルブタモール(例えば、アルブテロール)を投与することを含み得る。更に、併用療法は、不快でない身体活動(例えば、水泳を含む)、理学療法、整形外科用器具(装具及び車椅子等)、適切な呼吸補助を含み得る。
実施形態では、併用療法は、本明細書中に記載される方法に従って作製された筋原性前駆細胞を、構造が以下に記載されるアタルレン(PTC124)(IUPAC名:3-[5-(2-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]安息香酸)と組み合わせて投与することを含み得る。
Figure 2022526591000011
上述の細胞は、生理学的に許容され得る担体、賦形剤又は希釈剤を含有する薬学的又は生理学的に許容され得る調製物又は組成物として投与され得、ヒト及び非ヒト動物を含む目的のレシピエント生物の組織に投与され得る。
MPC集団(例えば、MPC集団を含む組成物)は、滅菌生理食塩水又は他の生理学的に許容される注射可能な水性液体等の適切な液体又は溶液に細胞を再懸濁することによって調製され得る。そのような組成物に使用される成分の量は、当業者によって日常的に決定され得る。
例において、注射可能な投与のために、組成物(例えば、MPC集団を含む組成物)は、滅菌された溶液若しくは懸濁液中にあるか、又は薬学的及び生理学的に許容され得る水性若しくは油性ビヒクルに再懸濁され得、これは、保存剤、安定剤、及び溶液若しくは懸濁液をレシピエントの体液(すなわち、血液)と等張にするための物質を含有し得る。使用に適した賦形剤の非限定的な例としては、水、ホスフェート緩衝生理食塩水、pH7.4、0.15M塩化ナトリウム水溶液、デキストロース、グリセロール、希釈エタノール等、及びそれらの混合物が挙げられる。例示的な安定剤は、ポリエチレングリコール、タンパク質、糖類、アミノ酸、無機酸、及び有機酸であり、単独で又は混合物のいずれかとして使用することができる。量又は分量、並びに使用される投与経路は、個々に決定され、当業者に公知の同様の種類の用途又は適応症で使用される量に対応する。
本発明と一致して、MPC集団は、筋肉を含む体組織に投与され得る。MPC懸濁液中の細胞の数及び投与様式は、治療される部位及び状態に応じて異なり得る。多数のMPCを本発明に従って投与することができる。
実施形態では、ヒトにおける治療有効量の組成物(例えば、MPC集団を含む組成物)が投与され得る。一実施形態では、組成物(例えば、MPC集団を含む組成物)は、3週間のサイクルで1日3回、1日2回、1日1回、14日間のオン(1日4回、1日3回又は1日2回、又は1日1回)及び7日間のオフ、3週間のサイクルで最大5又は7日間のオン(1日4回、1日3回又は1日2回、又は1日1回)及び14~16日間のオフ、又は2日に1回、又は1週間に1回、又は2週間に1回、又は3週間に1回投与される。
一実施形態では、組成物(例えば、MPC集団を含む組成物)は、1週間に1回、又は2週間に1回、又は3週間に1回、又は4週間に1回で、少なくとも1週間、いくつかの実施形態では1~4週間、2~6週間、2~8週間、2~10週間、又は2~12週間、2~16週間、又はそれを超えて(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、36、48週間以上)投与され得る。
医薬組成物及び製剤
本発明は、有効量の組成物(例えば、MPC集団を含む組成物)及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物であって、有効量が本発明の方法に関連して上述した通りである医薬組成物を提供する。
一実施形態では、組成物(例えば、MPC集団を含む組成物)は、単一剤形で少なくとも1つの更なる治療薬剤と更に組み合わされる。一実施形態では、少なくとも1つの追加の治療剤は、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン及びデフラザコート等)、β2アゴニスト(例えば、サルブタモール(例えば、アルブテロール)又はアタルレン(PTC124)(IUPAC名:3-[5-(2-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]安息香酸)を含む。
「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしにヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適した化合物、物質、組成物、担体、及び/又は剤形を指す。
「薬学的に許容される賦形剤」は、一般に安全で、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくないものでもない医薬組成物を調製するのに有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用及びヒト医薬使用に許容される賦形剤を含む。薬学的に許容される賦形剤の例には、滅菌液体、水、緩衝食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、油、洗剤、懸濁化剤、炭水化物(例えば、グルコース、ラクトース、スクロース又はデキストラン)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸又はグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、又はそれらの適切な混合物が含まれるが、これらに限定されない。
医薬組成物は、バルク又は用量単位形態で提供され得る。投与の容易さ及び製剤の均一性のために、医薬組成物を用量単位形態で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される「用量単位形態」という用語は、治療される対象のための単位用量として適した物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要とされる医薬担体と会合して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の用量単位形態の仕様は、活性化合物の固有の特徴及び達成されるべき特定の治療効果によって決定され、それらに直接依存する。用量単位形態は、アンプル、バイアル、坐剤、糖衣錠、錠剤、カプセル、IVバッグ、又はエアロゾル吸入器上の単一ポンプであり得る。
治療用途では、用量は、選択された用量に影響を及ぼす他の要因の中でも、薬剤、レシピエント患者の年齢、体重及び臨床状態、並びに治療を投与する臨床医又は開業医の経験及び判断に応じて変化する。一般に、用量は治療有効量であるべきである。用量は、mg/kg/日の測定単位(用量は、患者の体重(kg)、体表面積(m)、及び年齢(年)に合わせて調整され得る)で提供することができる。筋疾患又は筋障害を治療する方法における組成物の例示的な用量及び投与レジメンが本明細書に記載されている。
医薬組成物は、任意の所望の経路(例えば、肺、吸入、鼻腔内、経口、頬側、舌下、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸膜内、髄腔内、経皮、経粘膜、直腸等)による投与のための任意の適切な形態(例えば、液体、エアロゾル、溶液、吸入剤、ミスト、スプレー、又は固体、粉末、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、パッチ等)をとることができる。例えば、本発明の医薬組成物は、吸入又は吹送(口又は鼻のいずれか)によるエアロゾル投与のための水溶液又は粉末の形態、経口投与のための錠剤又はカプセルの形態、直接注射又は静脈内注入のための滅菌注入液への添加による投与に適した滅菌水溶液又は分散液の形態、あるいは経皮又は経粘膜投与用のローション、クリーム、フォーム、パッチ、懸濁液、溶液又は坐剤の形態であり得る。
実施形態では、医薬組成物は、注射可能な形態を含む。
医薬組成物は、限定するものではないが、カプセル、錠剤、頬側形態、トローチ、ロゼンジ、及びエマルジョン、水性懸濁液、分散液又は溶液の形態の経口液体を含む経口的に許容される剤形の形態とすることができる。カプセルは、本発明の化合物と、不活性充填剤及び/又は希釈剤、例えば薬学的に許容されるデンプン(例えば、トウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、糖、人工甘味剤、粉末セルロース、例えば結晶性及び微結晶性セルロース、小麦粉、ゼラチン、ガム等との混合物を含有し得る。
医薬組成物は、非経口投与に適した滅菌水溶液又は分散液の形態とすることができる。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内及び頭蓋内注射又は注入技術を含む。
医薬組成物は、直接注射によるか又は静脈内注入のための滅菌注入液への添加のどちらかによる投与に適した滅菌水溶液又は分散液の形態であり得、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物、あるいは1つ又は複数の植物油を含有する溶媒又は分散媒を含む。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての本発明の化合物の溶液又は懸濁液は、界面活性剤と適切に混合された水中で調製され得る。適切な界面活性剤の例を以下に示す。分散液は、例えば、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及び油中のそれらの混合物中で調製することもできる。
本発明の方法で使用するための医薬組成物は、製剤中に存在する任意の担体又は希釈剤(ラクトース又はマンニトール等)に加えて、1つ又は複数の添加剤を更に含むことができる。1つ又は複数の添加剤は、1つ又は複数の界面活性剤を含むか、又は1つ又は複数の界面活性剤からなることができる。界面活性剤は、典型的には、細胞の脂質構造に直接挿入して薬物透過及び吸収を増強することを可能にする脂肪酸等の1つ又は複数の長脂肪族鎖を有する。界面活性剤の相対的な親水性及び疎水性を特性決定するために一般的に使用される経験的パラメータは、親水性-親油性バランス(「HLB」値)である。界面活性剤のHLB値が低いほどより疎水性であり、油中の溶解度がより大きく、一方界面活性剤のHLB値が高いほどより親水性であり、水溶液中の溶解度はより大きい。したがって、親水性界面活性剤は、一般に、HLB値が約10を超える化合物であり、疎水性界面活性剤は、一般に、HLB値が約10未満の化合物であると考えられる。しかし、多くの界面活性剤では、HLB値を決定するために選択された経験的方法に応じて、HLB値は約8HLB単位も異なり得るので、これらのHLB値は単なる指針である。
本明細書で使用される全ての百分率及び比は、特に明記しない限り、重量基準である。本発明の他の特徴及び利点は、異なる実施例から明らかである。提供される実施例は、本発明を実施するのに有用な異なる構成要素及び方法論を示す。実施例は、特許請求される発明を限定しない。本開示に基づいて、当業者は、本発明を実施するのに有用な他の構成要素及び方法を同定し、使用することができる。
筋原性前駆細胞を製造するためのキット
態様では、筋原性前駆細胞を製造するためのキットが提供される。実施形態では、キットは、多能性幹細胞(PSC)集団を培養するのに適した細胞培養培地を含む。
本明細書の実施形態では、様々な代替試薬(例えば、コーティング、解離剤、刺激試薬、分化試薬、及び培地等の培養試薬)を使用してもよい。例えば、PSC、ES細胞及びiPSCの培養のために、特定の試薬セットは必要とされない。しかし、非限定的な例を以下に提供する。
実施形態では、キットは、ヒトiPS細胞及びhES細胞の成長及び増殖のための培地を含む。実施形態では、培地は、DMEM/F12、20%ノックアウト血清置換、1mMのL-グルタミン、100mMのMEM非必須アミノ酸、及び0.1mMのβ-メルカプトエタノールを含む。実施形態では、滅菌濾過後に10ng/mLのFGF-2が添加され得る。
実施形態では、キットは、ES及び/又はiPS細胞の選択及び/又は継代のための試薬を含む。実施形態では、試薬は、ReLeSR(商標)継代試薬(Stemcell Technologies,Vancouver Canada,カタログ番号05872又は05873)である。実施形態では、試薬はmTeSR(商標)1(Stemcell Technologies,Vancouver Canada,カタログ番号85850又は85857)である。実施形態では、試薬は、Vitronectin XF(商標)(Stemcell Technologies,Vancouver Canada,カタログ番号07180又は07190)である。実施形態では、試薬は、Gentle Cell Dissociation Reagent(Stemcell Technologies,Vancouver Canada,カタログ番号07174)である。多くのプレートコーティング試薬及びES/iPSC培地が市販されており、当業者に公知である。実施形態では、任意のプレートコーティング試薬が使用され得る。実施形態では、コーティング試薬は、GibcoのGelTrex(Invitrogen,A1413302)である。他の実施形態では、細胞は、6U/mLディスパーゼ(Invitrogen,17105041)を使用して又は機械的に毎週継代され得る。
実施形態では、キットは、1つ又は複数の細胞剥離酵素を含む試薬を含む。実施形態では、試薬は、TrypLE(商標)細胞剥離試薬(ThermoFisher カタログ番号:A1285901)である。実施形態では、試薬は、TrypLE(商標)Express(Thermo Fisher SKU番号12604-013)である。実施形態では、試薬は、StemPro(商標)Accutase(商標)細胞剥離試薬(Thermo Fisherカタログ番号A1110501)である。様々な剥離試薬が当技術分野で公知であり、使用され得る。実施形態では、細胞は、培養表面(プレート等)から物理的に削り取られ得る。実施形態では、剥離試薬は、EDTA 4Na 1Xを含むトリプシンEDTA 0.25%トリプシン(Invitrogen,25200114)、又は他の実施形態では、Accutase(Invitrogen,S-1100-1,AT-104)を含む。実施形態では、キットは、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF2)及び/又は線維芽細胞増殖因子8を含む。
実施形態では、キット中の細胞培養培地は、PSC集団の培養に適している。
実施形態では、キット中の細胞培養培地は、約5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%又は0.5%の血清を含む。実施形態では、キットは、約5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、又は0.5%以下の血清の使用のために構成される。
実施形態では、キット中の細胞培養培地は、無血清細胞培養培地である。
実施形態では、キットは血清を含まない。
本発明はまた、本発明の方法で使用するための医薬組成物を含む包装及びキットを提供する。キットは、ボトル、バイアル、アンプル、ブリスターパック、及びシリンジからなる群から選択される1つ又は複数の容器を含むことができる。キットは、本発明の疾患、状態又は障害(例えば、筋ジストロフィー)を治療及び/又は予防するのに使用するための説明書、1つ又は複数のシリンジ、1つ又は複数のアプリケータ、あるいは本発明の医薬組成物を再構成するのに適した滅菌溶液のうちの1つ又は複数を更に含むことができる。
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
本明細書の実施形態は、以下の実施例及び詳細なプロトコルによって更に説明される。しかし、実施例は、単に実施形態を例示することを意図しており、本明細書の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本出願を通して引用された全ての参考文献並びに公開された特許及び特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
ヒト多能性幹細胞(hPSC)に由来するPAX7::MPCがex vivoで維持され、筋再生に関与することができた。
PAX7は、筋肉発達中の筋原性系統及び成体筋幹細胞において特異的に発現される。自己再生能のために、マウス筋幹細胞は、筋芽細胞と比較して、より望ましい移植結果を達成している2、8。ヒトにおける潜在的な筋幹細胞移植療法を研究するための前駆細胞集団を得るために、CRISPR-Cas9技術を用いることによって、PAX7::GFP hESCレポータ細胞株を得た(図5A)。
hPSC 6からの筋原性誘導過程の間に(図1A)、PAX7::GFP発現細胞を18日目に検出することができ、細胞数は18日目から30日目までの間に徐々に増加した。30日目に採取した場合、GFP発現細胞の百分率は5~10%に達することができる(図1B)。FACSによって単離され、培養においてex vivoで維持された後、それらは急速に増殖し、塩基性fgf2及びfgf8を添加した培地中で培養した場合、細胞の約30~40%がフローサイトメータ及びIFによって検出されるGFP発現を維持した(図1B及び図5C)。これらの細胞は、PAX7::GFP筋原性前駆細胞(PAX7::GFP MPC)と呼ばれる。PAX7::GFP MPCの筋原性能を確認するために、GFP細胞また、PAX7::GFP MPCのex vivo培養において初期筋原性マーカPAX7及び/又はMYODを発現することが観察された(図5B~C)。そして、これらのPAX7::GFP MPCは、培地血清回収後に筋管に融合することができた(図5C)。
PAX7::GFP MPCの筋原性再生能
これらの細胞の筋原性再生能を調べるために、Pax7::GFP hESC筋原性誘導培養物に直接由来する未識別細胞(未識別)並びにex vivoで増殖させたPax7::GFP MPC(識別及び増殖)を免疫不全マウス(NSG)に移植して、移植スキームを比較した(図1B)。これらのマウスのうち1つの前脛骨筋(TA)を放射線照射して、衛星細胞を枯渇させ、筋線維を1.2%BaClによって損傷させて、移植細胞からde novo線維を形成させた。TAを、移植後4週目に採取した(図1C)。識別及び増殖したPAX7::GFP MPCは、ヒト特異的DYSTROPHIN抗体によって検出された筋線維に分化及び融合した(図1D~1E)。対照的に、未識別の細胞は、組織化された筋線維に再生することができず、代わりに、細胞の大部分は筋管を形成せず、おそらく線維芽細胞に分化転換した(図1D~図1E)。DYSTROPHIN陽性筋線維は少量の限られた量しか検出されず、これは筋幹細胞療法の臨床的成功を妨げる制限因子であった9~13。細胞は、精製せずに培養物から直接解離した可能性があり、したがって、ニューロン及び線維芽細胞等の他の細胞型を含んでいた可能性がある14
以下の研究では、識別及び増殖されたPAX7::GFPMPC細胞を使用した。上記の証拠は、PAX7::GFP MPCが筋再生に関与し、huDYSTROPHIN発現筋線維を形成する宿主筋に融合することができたことを裏付けている。
PAX7::GFP MPCの再増殖及び生着分析並びにそれらの筋原性前駆体特性の分析
PAX7::GFP MPCの再増殖及び生着する能力をよりよく理解し、それらの筋原性前駆体特性を更に確認するために、GFPシグナルを有する移植MPCの最終結果を、NSGマウスのTAへのin vivo移植後に追跡した。移植後4週目に、TAから細胞を単離し、単核細胞を回収した。単核細胞の総数から回収された移植後4週目で依然としてGFPを発現している細胞の百分率は、単一TAから単離された場合には0.025%まで達し、又は4つのTAを一緒に集計した場合には0.09%に達することができる(図2A及び図2B)。TAから単離されたPAX7::GFP MPCの状態を保証するために(in vivoでのPAX7::MPC)、単一細胞QPCRでは、TAから単離されたGFP発現単一細胞におけるPAX7及びGFPの発現レベルは、増殖前のレベル(Before Expansion:B.E.)と同様に移植前(Post Expansion:P.E)のPAX7::GFPMPCと比較してより高かった(図2C~図2D)。
次に、PAX7::GFP細胞の位置をin vivoで調べた。PAX7及びhuLAMINA/C二重標識を使用して、PAX7::GFPMPCの子孫を追跡した。全てのヒト細胞の中で、一部の細胞は、成体筋幹細胞が位置する基底膜の下に存在することが見出された(図2E)。その後、これらの細胞を単離すると、PAX7::GFP陽性であった細胞は、静止状態の幹細胞の特徴である細胞周期のG0期にあることが検出された(図2F~2G)。
要約すると、移植されたPAX7::GFP MPCは、筋再生に関与し、また、生着したPAX7::GFPMPCと称される、筋幹細胞ニッチ領域に含まれるPAX7発現細胞になった。
次いで、この実施例では更に、IF切片からの移植に使用される細胞数に対する、移植後にニッチ領域に位置する細胞の百分率を、定量化した。細胞をin vitroで増殖させ、マウスに移植した。4週間後、細胞をこれらの初代マウスから単離し、20匹の他のマウスに移植した。結果(図6)は、細胞がin vivoで効率的に生着することができることを実証している。ニッチ領域に位置する細胞の百分率を、移植後に、IF切片からの移植に使用される細胞数に対して定量化した。
PAX7::GFP+生着細胞及び「成体衛星細胞」特性の分析
次に、PAX7::GFP生着細胞が「成体衛星細胞」特性を有するかどうかを判定した。シングルセルRNA-seq解析を使用して、PAX7::GFP MPCがPAX7::GFP生着細胞になる移行過程の間の転写プロファイル変化を分析及び解釈した。一方、未分化OCT4::GFPhESC及びin vitroで増殖したPax7::GFP MPCを1ヶ月間含めた。
最初に、Pax7 GFP生着細胞がPax7 GFP MPCよりも低いRNA含有量を有することが認められた(図3A)。この現象は、活性化された衛星細胞と比較した場合、静止状態の衛星細胞において見出された15、16。主成分分析(PCA)では、hESC、注入及び増殖細胞(1週間及び1ヶ月のin vitro増殖)が、それら自身の型の細胞と一緒に密にクラスター化したことを実証した。PCAからの別の知見として、ex vivoでの1ヶ月の増殖は、PAX7::GFP MPC特性を転写に関して変化させなかった。
PAX7::GFP生着プロセス中に生じた変化を理解するために、転写プロファイルの変化をPAX7::GFP MPCと生着したPAX7::GFP MSCとの間で比較した。PAX7::GFPMPCと比較して、生着したPAX7::GFP MSCでは、490個の遺伝子が上方制御され、11,336個の遺伝子が下方制御された(図3C)。細胞周期進行を調節する遺伝子は下方制御され、生着細胞が細胞周期から外れたことを示し、これはin vivoでマウス衛星細胞で観察された。下方制御された遺伝子の中で、衛星細胞が静止状態に戻った際に失われると報告されたMyoD1は17、生着過程において抑制されることが見出された。その発現が筋幹細胞分化を特徴づける別の2つの転写因子MEF2C及びMyogeninは、それらの発現を減少させた18。高度に上方制御された転写物には、細胞外マトリックス関連遺伝子(COL1A1及びLAMA4)及び細胞分化を負に調節するnotchシグナル伝達関連遺伝子(NOTCH3及びHEYL)が含まれる(図3D)。
休止への移行のタイムラインを更に理解するために、この実施例では、それぞれ移植後1、2、3及び4週の時点でTAから単離されたPAX7::GFP細胞に対してシングルセルRNA-seq解析を行った。この実施例は、scranを使用して、本発明者等の2つの配列決定研究の結果を比較しようとした。興味深いことに、PAX7::GFP+細胞におけるトランスクリプトーム変化が移植の最初の週内に起こり、最初の週の後ではあまり変化しないことが見出された(図9)。この現象は、PAX7:GFP+細胞の静止筋幹細胞状態への移行が、筋修復と比較して比較的迅速に起こることを示唆している。
自己再生へのPAX7::GFP+生着細胞の分析
筋幹細胞の別の特徴は、幹細胞の機能的生着の鍵であるそれらの自己再生能である。最初に再損傷実験を行い、最初のPAX7::GFPMPC移植後のTAを最初の損傷後4週目に再損傷させた(図4A)。2回目の損傷後、最初の損傷を放置した後に形成されたヒト起源の筋線維はなかった(図4B)。そして、再損傷の4週間後、huDYTROPHINによって標識されたPAX7::MPCの子孫から、強固なde novo筋再生が観察され、これは、生着PAX7::GFP MPCが再生形成筋に関与することができたことを示している(図4B)。また、生着PAX7::GFP MPC細胞を単離し、第2のレシピエントマウスに移植した場合、これらの細胞は筋線維を形成するだけでなく、成体筋幹細胞と同様にニッチ領域に存在するPAX7発現細胞にもなり得た(図4D~図4E)。
移植後のPAX7::GFP+細胞のヒト起源の確認は、図8A及び図8Bにおいて更に実証される。図8A及び8Bは、移植後のPAX7::GFP細胞のヒト起源を実証するブロット及び一連のグラフを示す。図8Aでは、ヒト特異的プライマーを使用してゲノムPCRを実施して、注入されたTAから単離されたPAX7::GFP細胞の起源を決定した。図8Bでは、シングルセルRNA-seq解析結果の配列比較は、注入されたTAから単離されたPAX7::GFP細胞の大部分がヒト細胞であることを示す。
動物運動試験
この実施例では、PAX7::GFP MPCをNSG-MDXマウス(免疫系が損なわれたDMDマウスモデル)に注入した。次いで、トレッドミル試験を行った。図7に示すように、結果は、対照と比較してこれらのマウスの改善の増加を示す。
増殖したPAX7::GFPMPC細胞の特性決定
上記の実施例は、hPSC由来のPAX7::GFPMPC細胞が優れた再増殖能及び生着能を有することを実証した。この実施例は、それらの分子シグネチャ、特に細胞表面マーカに関して細胞を特性決定した。
単一細胞RNA発現分析は、これらのPAX7::GFPMPC細胞についての細胞表面マーカの固有のシグネチャを明らかにした。シグネチャは、以下の表に要約されるように、CHRNA1+、NTSR1+、FZD1+、FZD5-、GPR37-及びGPR27-を含んでいた。
Figure 2022526591000012
実施例2は、識別及び増殖されたPAX7::GFP MPCがin vivoで筋線維に分化及び融合することができたが、未識別細胞は組織化された筋線維に再生することができなかったことを実証した。この実施例では、生着のための最小PAX7+細胞濃度を更に調べた。
細胞集団中に約5%又は10%のPAX7+細胞しか存在しなかった場合、その集団は生着において無視できる活性を有していた。PAX7+集団が少なくとも30%、より明らかには35%~40%であった場合、効率的な生着及び組織再生能を示した。
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材料及び方法
動物及び細胞移植戦略
全ての動物実験は、ジョンズ・ホプキンス大学医学部(ボルチモア、メリーランド州)の動物実験委員会(IACUC)によって承認された。NSG(NOD.Cg-Prkdcscid Il 2rgtm1Wjl/SzJ、Jackson Lab)マウスを12時間明サイクル(午前7時~午後7時)に維持し、食物及び水を自由に摂取させた。マウスの左TAを、50μlの1.2%BaCl損傷の72時間前に放射線照射した(18g)。100万個のPAX7::GFP MPCを、rock阻害剤を補充した50μlの培養培地に再懸濁し、TAに注入した。
筋原性細胞の誘導及び細胞培養
筋原性系統の誘導のために、hPSC(H9細胞株(Coriellから購入したヒト胚性幹細胞株)及びGM01582iPSC(元の線維芽細胞株を有する再プログラムされたヒト人工多能性幹細胞株をCoriellから購入した)を、10ng/mlのFGF-2(PeproTech)及び10μMのY-27632(Cayman)を含有するMEF馴化N2培地の存在下、24ウェルプレートにおいてウェル当たり1.5x10細胞の密度で、Geltrex(Gibco)処理皿に単一細胞としてプレーティングした。グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK-3)の選択的阻害剤、例えばCHIR99021(Tocris,a Bio-Techne Corporation,Minneapolis,MN)(3μM)をN2培地中で4日間添加し、その後の8日間DAPT(10μM)によって、細胞を筋芽細胞に分化するように誘導した。細胞は分化し続け、N2培地中で次の13日間成熟した。筋芽細胞を、選択マーカNCAM/HNK1(NCAM:5.1H11、DSHB;HNK1:C6680、Sigma)を用いてFACSによって単離した。PAX7::GFP細胞を、GFPシグナルを有するFACによって単離した。
NCAM/HNK1筋芽細胞を、37℃で5%COを含有する加湿インキュベータ内で維持し、10%FBSを補充したN培地中で増殖させた。PAX7::GFP MPCを、20%FBS、b-FGF2及びFGF8を補充したN培地中で維持した。筋管形成を誘導するために、増殖した筋原性細胞をコンフルエントにプレーティングし、血清を含まないN培地に切り替えた。
筋肉からの単核細胞の単離及びピロニンヘキスト細胞周期分析
単核細胞を、2mg/mlコラゲナーゼA(Roche)、2.4U/mlディスパーゼII(Roche)、10μg/ml DnaseI(Roche)及び0.38mMのCaCl2を含有するPBSを用いてTA筋から単離した。消化した細胞を、FAC分析のために2%FBS及びDNaseIを含有するPBSに再懸濁した。細胞周期分析のために、細胞を1%PFAにおいて37℃で15分間固定し、100%メタノールにおいて-20℃で一晩透過処理した。翌日、細胞を洗浄し、ブロッキング緩衝液(PBS中0.75%サポニン、1%FBS、1% BSA)においてブロッキング処理した。一次GFP抗体(Invitrogen)及び二次抗体(ヤギ抗ニワトリ488)を室温で30分間染色した。次いで、細胞を、DNA及びRNA結合のためにヘキスト33342(2μg/mL)及びピロニン-Y(4μg/mL)を含有するブロッキング緩衝液に30分間懸濁した。最後に、フローサイトメトリ分析のために、細胞をピロニン-Y(2μg/mL)を含有するFAC緩衝液に懸濁した。
免疫細胞化学及び免疫組織化学
筋肉片を回収し、-60℃のイソペンタンを用いて凍結させた。凍結筋を8μm切片に凍結切片化した。凍結切片を冷メタノールで固定し、PBSで洗浄し、20%正常ヤギ血清(Vector Laboratories)及び2%ウシ血清アルブミン(Sigma Aldrich)でブロックした。ヒトラミンA+C(マウスIgG2b、1:100、Leica)、pan-species Pax7(IgG1、1:1、DSHB)、及びヒトラミニン(IgG2a、1:100、DSHB)に対する一次抗体をスライド上で4℃にて一晩培養した。ジストロフィンを検出するために、ヒトジストロフィン(Millipore、1:200)及びヒトラミンA+Cに対する一次抗体の組合わせをスライド上で4℃で一晩培養し、続いてマウス抗マウス二次抗体と室温で1時間培養した。切片を、DAPIを含むVecta Shieldマウンティング培地(Vector Laboratories)を使用して封入し、蛍光顕微鏡(Zeiss)を使用して画像化した。
シングルセルRNAシーケンス解析
Sony SH800識別機を使用して、96ウェル又は384ウェル捕捉プレート中の単一細胞として、蛍光活性化細胞識別によってPax7-GFP細胞を識別した。捕捉プレートウェルは、5μlの捕捉溶液(1:500 Phusion High-Fidelity Reaction Buffer,New England Biolabs;1:250 RnaseOUT Ribonuclease Inhibitor,Invitrogen)を含有した。次いで、前述のSCRB-seqプロトコル1-2を使用して、単一細胞ライブラリを調製した。簡潔には、細胞をプロテイナーゼK処理し、続いてRNA乾燥させて反応体積を減少させた。続いて、カスタム鋳型スイッチングプライマー及びバーコード化アダプタプライマーを使用してRNAを逆転写した。カスタマイズされたSCRB-seqバーコードプライマーは、固有の6塩基対の細胞特異的バーコードと、10塩基対の固有の分子識別子(UMI)とを含む。転写産物を集計し、濃縮し、その後、組み込まれていないバーコードプライマーをエキソヌクレアーゼI処理を用いて消化した。Terra PCR Direct Polymerase(Takara Bio)を用いてcDNAをPCR増幅した。最終ライブラリを、前述のようにカスタムP5プライマーを使用してNextera XTキット(Ilumina)を用いてライブラリ当たり1ngのcDNAを使用して調製した。集計したライブラリを、16塩基対バーコードリード、8塩基対i7インデックスリード及び66塩基対cDNAリード設計を有するIllumina NextSeq500の2つの高出力レーンで配列決定した。
配列決定データを分析するために、デフォルト設定及びバーコードをリストとして提供したzUMI 2.2.3を使用して読取りをマッピング及びカウントした。zUMIは、STAR(2.5.4b)を利用して、読取りを入力された参照ゲノムにマッピングし、Rsubread(1.28.1)を介して特徴Countsを利用して、カウント及びUMI表を集計する。ERCCスパイクイン参照と連結したEnsemblからのGRCh38を参照ゲノム及び遺伝子アノテーションに使用した。次元削減及びクラスター分析は、Seurat(2.3.4)を用いて行い、差次的遺伝子発現分析は、Monocle(2.4.0)で行った。GO濃縮分析を、Gene Ontology Consortiumツール8-10を介して示差的に発現された遺伝子に対して行い、REVIGO11で濃縮された期間及び経路を可視化した。
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他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は例示を意図しており、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではない。他の態様、利点、及び修正は、以下の特許請求の範囲内である。
本明細書で言及される特許及び科学文献は、当業者が利用可能な知識を確立する。本明細書で引用される、全ての参考文献、例えば、米国特許、米国特許出願公開、米国を指定するPCT特許出願、公開された外国特許及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に引用されるアクセッション番号によって示されるGenbank及びNCBIの提出物は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に引用される他の全ての公開された参考文献、文書、原稿及び科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。更に、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
本発明は、その好ましい実施形態を参照して特に示され説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更がなされ得ることが当業者によって理解されるであろう。

Claims (21)

  1. 細胞の少なくとも30%がin vitroで多能性幹細胞に由来するPAX7+筋原性前駆細胞(MPC)である、哺乳動物細胞の集団。
  2. 少なくとも10,000個の細胞を含む、請求項1に記載の集団。
  3. 前記PAX7+MPCが、CHRNA1(コリン受容体ニコチンアルファ1)、NTSR1(ニューロテンシン受容体1)、又はFZD1(フリズルドクラス受容体1)のうちの1つ又は複数を発現する、請求項1又は2に記載の集団。
  4. 前記PAX7+MPCが、CHRNA1、NTSR1、及びFZD1のうちの少なくとも2つを発現する、請求項3に記載の集団。
  5. 前記PAX7+MPCが、CHRNA1、NTSR1、及びFZD1を発現する、請求項3に記載の集団。
  6. 前記PAX7+MPCが、FZD5(フリズルドクラス受容体5)、GPR37(Gタンパク質共役受容体37)、又はGPR27G(タンパク質共役受容体27)のうちの1つ又は複数を発現しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の集団。
  7. 前記PAX7+MPCが、FZD5、GPR37又はGPR27のいずれも発現しない、請求項6に記載の集団。
  8. 前記PAX7+MPCがNCAMを発現し、HNK1を発現しない、請求項1~7のいずれか一項に記載の集団。
  9. 前記細胞の少なくとも35%がPAX7+MPCである、請求項1~8のいずれか一項に記載の集団。
  10. 前記細胞の少なくとも40%がPAX7+MPCである、請求項9に記載の集団。
  11. 前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞(ESC)である、請求項1~10のいずれか一項に記載の集団。
  12. 前記細胞がヒト細胞である、請求項1~11のいずれか一項に記載の集団。
  13. 請求項1~12のいずれか一項に記載の前記集団を患者に注射することを含む、それを必要とする患者の変性筋消耗疾患又は状態を治療する方法。
  14. 前記変性筋消耗疾患又は状態が、筋ジストロフィー、ミオパチー、ミトコンドリア病、軟組織肉腫、イオンチャネル疾患、悪液質及びサルコペニアからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
  15. 前記変性筋消耗疾患又は状態が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である、請求項14に記載の方法。
  16. 筋原性前駆細胞(MPC)の集団を製造するための方法であって、
    グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK-3)の選択的阻害剤を含む培地中で複数の多能性幹細胞を分化させて、分化細胞を得ることと、
    前記分化細胞をNotchシグナル伝達の阻害剤で処理することと、
    前記分化細胞を線維芽細胞増殖因子(FGF)で増殖させることと、
    それにより、PAX7(ペアードボックスタンパク質)を発現するMPCの集団を得ることと、
    とを含む、筋原性前駆細胞(MPC)の集団を製造するための方法。
  17. 前記MPCを濃縮することを更に含む、請求項16に記載の方法。
  18. 前記得られた集団が少なくとも30%のPAX7+MPCを含む、請求項17に記載の方法。
  19. 前記選択的GSK-3阻害剤が、CHIR99021、SB216763、SB415286、BIO、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記Notchシグナル伝達阻害剤がDAPTである、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記FGFが、FGF-2及びFGF-8である、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
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