JP2022191660A - ベルト部材、定着装置、及び、画像形成装置 - Google Patents

ベルト部材、定着装置、及び、画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】摺接部材との摺接による摩耗を充分に軽減する。【解決手段】定着ベルト21(ベルト部材)は、ニップ部形成部材26(摺接部材)に摺接する内周面21a(摺接面)におけるマルテンス硬度H1〔N/mm2〕が20≦H1≦70であって、鉛筆硬度H2がHB以上2H以下となるように形成されている。これにより、ニップ部形成部材26(摺接部材)との摺接による定着ベルト21やニップ部形成部材26の摩耗が充分に軽減される。【選択図】図4

Description

この発明は、定着ベルトなどのベルト部材と、それを備えた定着装置と、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、に関するものである。
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、摺接部材に摺接する定着ベルトなどのベルト部材を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
一方、特許文献1には、定着フィルム(ベルト部材)と支持部材(摺接部材)との摺接による摩耗を低減することを目的として、定着フィルムの内面のビッカース硬度Hv1と、支持部材との接触部のビッカース硬度Hv2と、の関係を、|Hv1-Hv2|≦200に設定する技術が開示されている。
従来のベルト部材は、摺接部材との摺接によるベルト部材と摺接部材との摩耗を充分に軽減することができなかった。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、摺接部材との摺接による摩耗が充分に軽減される、ベルト部材、定着装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
この発明におけるベルト部材は、摺接部材に摺接する摺接面におけるマルテンス硬度H1〔N/mm2〕が20≦H1≦70であって、鉛筆硬度H2がHB以上2H以下であるものである。
本発明によれば、摺接部材との摺接による摩耗が充分に軽減される、ベルト部材、定着装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。 定着装置を示す構成図である。 定着装置を幅方向にみた側面図である。 ニップ部の近傍を示す拡大図である。 定着ベルトが保持部材に保持された状態を示す断面側面図である。 定着ベルトとニップ部形成部材との摺接面の近傍を示す拡大図である。 比較例としての、経時における定着ベルトとニップ部形成部材との摺接面の近傍を示す拡大図である。 実験の条件と結果とを示す表図である。 変形例としての、定着装置を示す構成図である。
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1に示すように、本実施の形態における画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱可能(交換可能)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77、除電部(不図示)等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程、除電工程)がおこなわれて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、不図示の駆動モータによって図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像部76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程である。)。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82~84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送されたシートP上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、シートPに転写されなかった未転写トナーが残存する。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
ここで、2次転写ニップの位置に搬送されたシートPは、装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98(タイミングローラ対)等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等のシートPが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上のシートPがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
レジストローラ対98に搬送されたシートPは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、シートPが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、シートP上に、所望のカラー画像が転写される。
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写されたシートPは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ベルト21及び加圧ローラ31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像がシートP上に定着される。
その後、シートPは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出されたシートPは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
次に、図2~図5等を用いて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2~図4等を参照して、定着装置20は、ベルト部材としての定着ベルト21、摺接部材としてのニップ部形成部材26、補強部材23、加熱手段としてのヒータ25(熱源)、加圧部材としての加圧ローラ31、温度センサ40、反射部材27、等で構成される。
ここで、ベルト部材としての定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状ベルトであって、図2中の矢印方向(反時計方向)に回転(走行)する。定着ベルト21は、内周面21a(ニップ部形成部材26との摺接面である。)側から、基材層、弾性層、離型層が順次積層されていて、その全体の厚さが1mm以下に設定されている。
定着ベルト21の基材層21A(図6参照)は、層厚が30~70μm程度であって、ニッケル、ステンレス等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成されている。
定着ベルト21の弾性層は、層厚が100~300μm程度であって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、等のゴム材料で形成されている。弾性層を設けることで、ニップ部における定着ベルト21表面の微小な凹凸が形成されなくなり、シートP上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。
定着ベルト21の離型層は、層厚が10~50μm程度であって、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。離型層を設けることで、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保される。
なお、本実施の形態では、定着ベルト21の基材層21Aは、内周面21a(ニップ部形成部材26やフランジ29との摺接面である。)側に、マルテンス硬度と鉛筆硬度とが調整された層厚9~15μm程度の表層21Aaが設けられているが、これについては後で詳しく説明する。
また、定着ベルト21の直径は15~120mm程度になるように設定されている。
定着ベルト21の内部(内周面側)には、ニップ部形成部材26、ヒータ(加熱手段)、補強部材23、反射部材27、等が固設されている。
ここで、ニップ部形成部材26は、定着ベルト21の内周面21a(摺接面)に摺接するように固定されている。そして、ニップ部形成部材26が定着ベルト21を介して加圧ローラ31に圧接することで、シートPが搬送されるニップ部(定着ニップ部)が形成される。図3及び図5を参照して、ニップ部形成部材26は、その幅方向両端部が、定着装置20の側板43に固定支持されたフランジ29(保持部材)に保持されている。また、定着ベルト21は、その幅方向両端部が、フランジ29に回転可能に保持されている。なお、ニップ部形成部材26やフランジ29については、後で詳しく説明する。
そして、定着ベルト21は、その内部に設置されたヒータ25(加熱手段)の輻射熱により直接的に加熱される。
加熱手段としてのヒータ25は、ハロゲンヒータ(又はカーボンヒータ)であって、その両端部が定着装置20の側板43に固定されている(図3参照)。そして、装置本体1の電源部により出力制御されたヒータ25(加熱手段)の輻射熱によって、定着ベルト21において主としてニップ部を除く部分が加熱される。さらに、加熱された定着ベルト21の表面からシートP上のトナー像Tに熱が加えられる。なお、ヒータ25の出力制御は、定着ベルト21表面に対向するサーミスタ等の温度センサ40によるベルト表面温度の検知結果に基づいておこなわれる。また、このようなヒータ25の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定することができる。
なお、本実施の形態では、定着ベルト21の内周面側に1本のヒータ25を設置したが、定着ベルト21の内周面側に複数のヒータを設置することもできる。
このように、本実施の形態における定着装置20は、定着ベルト21の一部のみが局所的に加熱されるのではなく、定着ベルト21が周方向の比較的広い範囲にわたって加熱されることになるために、装置を高速化した場合であっても定着ベルト21が充分に加熱されて定着不良の発生を抑止することができる。すなわち、比較的簡易な構成で効率よく定着ベルト21を加熱できるために、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短縮化されるとともに、装置の小型化が達成される。
特に、本実施の形態における定着装置20は、定着ベルト21がヒータ25(加熱手段)によって直接的に加熱されるように構成されているため、定着ベルト21の加熱効率がさらに向上するとともに、定着装置20をさらに低コスト化・小型化することができる。
ここで、図5を参照して、保持部材としての2つのフランジ29は、耐熱性樹脂材料等で形成されていて、定着装置20の幅方向両端部の側板43にそれぞれ嵌め込まれている。フランジ29には、定着ベルト21の円形姿勢を維持しながら定着ベルト21を保持するためのガイド部29aや、定着ベルト21の幅方向の移動(ベルト寄り)を規制するためのストッパ部29b、等が設けられている。
なお、本実施の形態において、定着ベルト21の内周面21aに接触する部材は、幅方向両端のフランジ29と、ニップ部形成部材26と、のみであって、それ以外に内周面21aに接触して定着ベルト21の回転をガイドするような部材(ベルトガイド)は存在しない。
ここで、本実施の形態では、ニップ部を形成するニップ部形成部材26の強度を補強する補強部材23が、定着ベルト21の内周面側に固設されている。図3を参照して、補強部材23は、幅方向の長さがニップ部形成部材26と同等になるように形成されていて、その幅方向両端部が定着装置20のフランジ29(保持部材)に保持されている。詳しくは、補強部材23は、フランジ29とニップ部形成部材26との間に挟まれるようにして、その位置が定められることになる。
そして、補強部材23がニップ部形成部材26及び定着ベルト21を介して加圧ローラ31に当接することで、ニップ部においてニップ部形成部材26が加圧ローラ31の加圧力を受けて大きく変形する不具合を抑止している。本実施の形態において、補強部材23は、ヒータ25が位置する側に凹部が対向するように形成された略コの字状の板状部材である。この補強部材23は、上述した機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが好ましい。
また、本実施の形態では、補強部材23における、ヒータ25に対向する面の側に、反射部材27(反射板)が固設されている。これにより、ヒータ25から補強部材23に向かう熱(補強部材23を加熱する熱)が反射部材27で反射されて定着ベルト21の加熱に用いられることになるために、定着ベルト21の加熱効率がさらに向上することになる。
なお、補強部材23における、ヒータ25に対向する面の一部又は全部に、鏡面処理を施したり断熱部材を設けたりした場合であっても、同じような効果を得ることができる。
図2を参照して、ニップ部(定着ニップ部)の位置で定着ベルト21の外周面に当接する加圧部材としての加圧ローラ31は、直径が30mm程度であって、中空構造の芯金32上に弾性層33を形成したものである。加圧ローラ31(加圧部材)の弾性層33は、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA、PTFE等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。加圧ローラ31は定着ベルト21に圧接して、双方の部材間に所望のニップ部を形成する。また、図3を参照して、加圧ローラ31には不図示の駆動機構の駆動ギアに噛合するギア45が設置されていて、加圧ローラ31は図2中の矢印方向(時計方向)に回転駆動される。また、加圧ローラ31は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に軸受42を介して回転可能に支持されている。なお、加圧ローラ31の内部に、ハロゲンヒータ等の熱源を設けることもできる。
なお、加圧ローラ31の弾性層33を発泡性シリコーンゴム等のスポンジ状の材料で形成した場合には、ニップ部に作用する加圧力を減ずることができるために、固定部材16に生じる負荷を軽減することができる。さらに、加圧ローラ31の断熱性が高められて、定着ベルト21の熱が加圧ローラ31側に移動しにくくなるために、定着ベルト21の加熱効率が向上する。
また、本実施の形態では、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径とほぼ同等になるように形成したが、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径よりも小さくなるように形成することもできる。その場合、ニップ部における定着ベルト21の曲率が加圧ローラ31の曲率よりも小さくなるために、ニップ部から送出されるシートPが定着ベルト21から分離され易くなる。
図4を参照して、定着ベルト21の内周面21a(摺接面)に摺接する摺接部材としてのニップ部形成部材26は、加圧ローラ31との対向面26a(定着ベルト21に摺接する面であって、図6参照)が、加圧ローラ31の曲率にならうように凹状に形成されている。これにより、シートPは加圧ローラ31の曲率にならうようにニップ部から送出されるために、定着工程後のシートPが定着ベルト21に吸着して分離しないような不具合を抑止することができる。
なお、本実施の形態では、ニップ部を形成するニップ部形成部材26の形状を凹状に形成したが、ニップ部を形成するニップ部形成部材26の形状を平面状に形成することもできる。すなわち、ニップ部形成部材26の対向面26a(定着ベルト21に摺接する面である。)が平面形状になるように形成することができる。これにより、ニップ部の形状がシートPの画像面に対して略平行になって、定着ベルト21とシートPとの密着性が高まるために定着性が向上する。さらに、ニップ部の出口側における定着ベルト21の曲率が大きくなるために、ニップ部から送出されたシートPを定着ベルト21から容易に分離することができる。
また、摺接部材としてのニップ部形成部材26を形成する材料としては、樹脂材料や金属材料を用いることができるが、加圧ローラ31による加圧力を受けても大きく撓むことがない程度の剛性があり、耐熱性と断熱性とを有する樹脂材料(液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリイミド、等である。)が好適である。
また、ニップ部形成部材26の対向面26a(表面をコーティングした場合も含む。)は、溝や凸状パターンが形成されたものであっても良い。
なお、ニップ部形成部材26の対向面26a(定着ベルト21に摺接する面である。)には、定着ベルト21との摺動抵抗を減ずるために、低摩擦材料(例えば、ダイヤモンドライクカーボン、PTFE、二硫化モリブデン、グラファイト等である。)がコーティングされていることが好ましい。その場合、樹脂材料からなるニップ部形成部材26の対向面26aに、上述した低摩擦材料を分散させた塗料をスプレー塗装等の方法により成膜した後に焼成することによってコーティング層を形成することができる。
また、ニップ部形成部材26の対向面26a(表面をコーティングした場合も含む。)は、定着ベルト21との摺動抵抗を減ずるために、潤滑剤(例えば、シリコーンオイル、基油がシリコーンオイルであるシリコーングリス、フロロシリコーンオイル、基油がフロロシリコーンオイルであるフロロシリコーングリス、フッ素オイル、基油がフッ素オイルであるフッ素グリス、又は、これらのいずれか2種以上を組み合わせたもの、等である。)を塗布しておくこともできる。
また、本実施の形態では、定着ベルト21を加熱する加熱手段としてヒータ25を用いた。これに対して、ニップ部形成部材26としてセラミックヒータなどを用いることで、摺接部材として機能するニップ部形成部材26を加熱手段としても機能するように構成することもできる。その場合、ニップ部形成部材26の対向面26aは、ガラス・セラミックス等の無機材料であっても良いし、最表面に樹脂の塗膜が形成されたものであっても良い。
ここで、本実施の形態では、ニップ部形成部材26とヒータ25(加熱手段)との間の空間を隔絶するように、補強部材23(及び、反射部材27)を設置している。
本実施の形態では、定着ベルト21(内周面21a)の周方向の比較的広い範囲に対向するようにヒータ25が設置されているため、加熱待機時(プリント動作待機時)においても定着ベルト21を周方向に温度ムラなく加熱できる。したがって、プリント要求を受けた後、速やかにプリント動作をおこなうことができる。このとき、従来のオンデマンド方式の定着装置(例えば、特許第2884714号公報参照。)では、ニップ部で加熱待機時に加圧ローラを変形させたまま熱を与えてしまうと、加圧ローラのゴムの材質によっては、熱劣化を起こして加圧ローラの寿命が短くなってしまったり、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生してしまったりする(ゴムの圧縮永久ひずみは、ゴムの変形に加熱が加わることにより増大する。)。そして、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生すると、加圧ローラの一部が凹んだ状態になり、所望のニップ幅が得られないため、定着不良が発生したり、回転時に異音が生じたりする。
これに対して、本実施の形態では、ニップ部形成部材26とヒータ25との間に、ヒータ25の熱を遮るように補強部材23(及び、反射部材27)が設置されているために、加熱待機時に熱がニップ部形成部材26に達しにくくなる。したがって、加熱待機時に加圧ローラ31が変形した状態で高温加熱される不具合が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
さらに、ニップ部形成部材26と定着ベルト21との摩擦抵抗を低減するために双方の部材間に潤滑剤を塗布する場合には、ニップ部における高圧条件に加えて高温条件による使用によって劣化して、定着ベルト21のスリップ等の不具合が生じてしまう可能性がある。
これに対して、本実施の形態では、ニップ部形成部材26とヒータ25との間に、ヒータ25の熱を遮るように補強部材23(及び、反射部材27)が設置されているために、ヒータ25の熱がニップ部の潤滑剤に達しにくくなる。したがって、潤滑剤の高温による劣化が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
また、本実施の形態では、ニップ部形成部材26とヒータ25との間に、ヒータ25の熱を遮るように補強部材23(及び、反射部材27)が設置されているために、ニップ部形成部材26が断熱されて、ニップ部では積極的に定着ベルト21は加熱されないことになる。そのため、ニップ部に送入されたシートPの温度がニップ部から送出されるときには低くなる。すなわち、ニップ部出口では、シートP上に定着されたトナー像の温度が低くなって、トナーの粘性が低下して、定着ベルト21に対するトナー接着力が小さくなった状態で、シートPは定着ベルト21から分離される。したがって、定着工程直後のシートPが定着ベルト21に巻き付いてジャムになる不具合が防止されるとともに、定着ベルト21に対するトナー固着も抑制される。
以下、上述のように構成された定着装置20の通常時の動作について簡単に説明する。
装置本体1の電源スイッチが投入されると、ヒータ25に電力が供給されるとともに、加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。これにより、ニップ部における加圧ローラ31との摩擦力によって、定着ベルト21も図2中の矢印方向に従動(回転)する。
その後、給紙部12からシートPが給送されて、2次転写ローラ89の位置で、シートP上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。未定着画像T(トナー像)が担持されたシートPは、不図示のガイド板に案内されながら図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。
そして、ヒータ25によって加熱された定着ベルト21による加熱と、補強部材23によって補強されたニップ部形成部材26と加圧ローラ31との押圧力とによって、シートPの表面にトナー像Tが定着される。その後、ニップ部から送出されたシートPは、矢印Y11方向に搬送される。
以下、本実施の形態における定着装置20(画像形成装置1)において特徴的な、定着ベルト21について詳しく説明する。
先に図2~図4等を用いて説明したように、定着装置20には、ベルト部材としての定着ベルト21や、摺接部材としてのニップ部形成部材26や、定着ベルト21を介してニップ部形成部材26(摺接部材)に圧接してシートPが搬送されるニップ部(定着ニップ部)を形成する加圧部材としての加圧ローラ31や、フランジ29などが設置されている。
そして、定着ベルト21(ベルト部材)は、その内周面21aが、摺接部材としてのニップ部形成部材26やフランジ29に摺接する摺接面となる。
ここで、本実施の形態における定着ベルト21(ベルト部材)は、摺接部材(本実施の形態では、ニップ部形成部材26やフランジ29である。)に摺接する摺接面としての内周面21aにおけるマルテンス硬度H1〔N/mm2〕が20≦H1≦70であって、鉛筆硬度H2がHB以上2H以下となるように形成されている。
詳しくは、本実施の形態において、定着ベルト21の基材層21A(積層構造体において最内周面側の層である。)は、内周面21a(ニップ部形成部材26との摺接面である。)側に、層厚が9~15μm程度の表層21Aaが設けられている。この表層21Aa(基材層21A(定着ベルト21)の内周面21a)は、ポリイミドワニス(又は、ポリアミド樹脂)とPTFEとカーボンブラックとを配合したものであって、マルテンス硬度H1〔N/mm2〕が20≦H1≦70となり、鉛筆硬度H2がHB以上2H以下となるように調整されている。
なお、「マルテンス硬度」とは、圧子で測定対象を引っ掻いて、一定の深さの凹みを形成するのに要した荷重で硬さの度合いを示した指標である。
また、「鉛筆硬度」とは、測定対象に対して傷跡がつかない最も硬い鉛筆スケールの値である。
このように構成することで、ニップ部形成部材26やフランジ29と定着ベルト21とが摺接しても、定着ベルト21やニップ部形成部材26やフランジ29の摩耗を軽減することができる。
以下、その理由について詳述する。
従来は、定着装置20において、定着ニップ部では、定着ベルト21の内周面21aと、摺接部材としてのニップ部形成部材26と、の摺動抵抗が大きくて、それらの部材の摩耗粉が多く発生していた。特に、定着ニップ部における摺動抵抗を減ずるために、それらの部材の摺接面に潤滑剤を塗布したとしても、潤滑剤と摩耗粉とが混合することにより、潤滑剤の粘度が上昇して、かえって装置の駆動トルクが上昇してしまっていた。
このような問題を解決するために、定着ベルト21のマルテンス硬度や鉛筆硬度を単純に大きく設定してしまうと、定着ベルト21の摩耗を軽減することはできるが、ニップ部形成部材26(摺接部材)の摩耗が加速されてしまう。これは、一般的に、硬度は、硬さ、つまり異なる2つの物質を摺接させた場合にどちらに傷がつくかの指標となる特性であるからである。
このようなことから、従来は、以下の2つに大別されるアプローチで問題を解決しようとしていた。
その1つ目のアプローチは、定着ベルトの硬度と摺接部材の硬度との関係を、ある一定の関係に調整することで、双方の部材における摩耗紛の発生量の総量を最小化するというものである。このアプローチは、一定の効果を奏するものの、双方の部材の摩耗を充分に軽減することはできなかった。すなわち、このアプローチは、双方の部材が少しずつ摩耗するようなポイントを狙うことで、定着装置の寿命を満たすように設定しているにすぎず、摩耗自体を充分に軽減するものではなかった。
また、2つ目のアプローチは、潤滑剤を用いて双方の部材の接触を低減するというものである。このアプローチは、潤滑剤が形成する油膜をいかに制御するかが重要であり、材料や表面性の制御により、理論的には完全に摩耗を防止することができると考えられる。しかし、有機材料のもつ僅かな凹凸やうねりのような機械精度の限界から、完全に双方の部材を非接触潤滑状態にすることは難しかった。また、定着装置において、高温時に最高性能になるような設計をすると、低温時の駆動トルクが増すなど、対応可能な温度範囲の設定に不自由さがあった。また、有機材料による潤滑油の吸収や、揮発、外因性の不純物による摩耗発生など、理想的な油膜を現実的に実現することが非常に難しかった。
このような問題を解決するために、本願発明者は解析や実験などをおこない鋭意努力した結果、マルテンス硬度H1と鉛筆硬度H2との2種類の硬度に注目して、マルテンス硬度H1は低く設定して、鉛筆硬度H2は高く設定するという、相反した特性を合わせ持つ内周面21a(摺接面)を有する定着ベルト21を製造することで、定着ベルト21の内周面21aの摩耗を軽減するとともに、摺接部材(ニップ部形成部材26)の摩耗も軽減することができることを知得した。
マルテンス硬度が低くて鉛筆硬度が高い定着ベルト21の内周面21aは、摺接部材(ニップ部形成部材26)にわずかに存在する粗さ、うねり、振動などの影響により、局所的、一時的に摺動圧力が高まっても、内周面21aを有する表層21Aaが柔らかく変形をすることによるサスペンション効果が発現する。そのため、非常にロバスト性の高い摺動状態を実現できて、定着ベルト21の内周面21aの摩耗を防ぎながら、摺接部材(ニップ部形成部材26)の摩耗も防ぐことが可能となる。
マルテンス硬度は、比較的、最表面の近傍の硬度情報を多く含んでいる。
これに対して、鉛筆硬度は、比較的、表層21Aaとその下地層との間の接着力の情報を多く含んでいる。換言すると、表面的には柔らかいが内部は硬く下地としっかり接着しているような表層21Aaは、摺接部材を摩耗させないし、自身も摩耗しない、というのがメカニズムであると考えられる。
図6は、定着ベルト21の内周面21a(表層21Aa)と、ニップ部形成部材26の対向面26aと、が摺接する部分を拡大して示したものである。
図6(A)に示すように、内周面21a(表層21Aa)と対向面26aとのうち少なくとも一方が有機材料の場合、内周面21aと対向面26aとは、鏡面ではなく、ある程度の粗さを有することになる。
しかし、本実施の形態では、内周面21a(表層21Aa)におけるマルテンス硬度が低くて鉛筆硬度が高く設定されていて、表層21Aaは非常に柔らかく変形する能力が高くなる。そのため、内周面21aと対向面26aとが長い時間摺接して、双方の粗さや、うねり、振動、コンタミなどの影響を受けることになっても、それらの変位が緩衝されて、図6(B)に示すように、内周面21aと対向面26aとの粗さが削られることなく、そのまま粗さが維持されながら内周面21aと対向面26aとが摺接することになる。すなわち、内周面21aと対向面26aとの摺動抵抗が、局所的、一時的に高まる不具合が防止されて、内周面21aや対向面26aの摩耗紛が生じにくくなる。換言すると、表層21Aaは非常に柔らかいため、定着ベルト21(表層21Aa)からはもちろんのこと、ニップ部形成部材26(対向面26a)からも摩耗紛が発生しにくくなる。
これに対して、従来の定着ベルト121(図7参照)を用いた場合には、定着ベルト121の内周面121a(基材層121A)と、ニップ部形成部材26の対向面26aと、が長い時間摺接すると、双方の粗さや、うねり、振動、コンタミなどの影響により、局所的、一時的に摺動圧力が高まった箇所から摩耗が進行してしまう。そのため、そのような摩耗によって発生した摩耗紛がさらに局所的な圧力上昇を発生させて、当初には内周面121aと対向面26aとが粗さを有していても、最終的には図7に示すように内周面121aと対向面26aとがそれぞれ鏡面に近い状態になってしまう。そして、そのように内周面121aと対向面26aとの摩耗が大きくなると、装置の駆動トルクが上昇する不具合や、定着ベルト1やニップ部形成部材26の本来の機能が低下する不具合、などが生じてしまうことになる。
これに対して、本実施の形態における定着ベルト21を用いた場合には、経時においても、定着ベルト21やニップ部形成部材26(及び、フランジ29)の摩耗を軽減することができる。
また、内周面21a(表層21Aa)から摩耗紛が発生する過程に注目すると、従来の定着ベルト121(図7参照)の内周面121aは、摺接部材(ニップ部形成部材26)から変形力を受けて、その発生した変位が限界に達したときに、内周面121aの一部が摩耗紛として脱離する。そこで、本実施の形態では、定着ベルト21の内周面21a(表層21Aa)が変形力を受けたときに、その変形力に逆らうために硬くするのではなくて、逆に容易に変位が発生して膜から摩耗紛が脱離しないようにするために、内周面21a(表層21Aa)のマルテンス硬度を低くして、鉛筆硬度を高めている。すなわち、マルテンス硬度は最表面(内周面21a)の硬さを原因とした相手部材(ニップ部形成部材26)への傷の入りやすさの指標であり、鉛筆硬度は相手部材(ニップ部形成部材26)から衝撃力(アタック)を受けたときにおける表層膜の脱落しにくさの指標であるので、マルテンス硬度が低く鉛筆硬度が高いという相反する特性を持つ定着ベルト21が摩耗防止に有用となる。
ここで、本実施の形態における定着ベルト21(ベルト部材)は、内周面21a(摺接面)におけるマルテンス硬度H1を測定するときの永久歪が押込み深さに対して50%以上80%以下となるように形成されたものである。
また、本実施の形態における定着ベルト21(ベルト部材)は、内周面21a(摺接面)を有する表層21Aaの層厚が10μm以上に設定されている。
このように構成することにより、上述した定着ベルト21やニップ部形成部材26やフランジ29の摩耗を軽減する効果がさらに発揮されることになる。
以下、その理由について詳述する。
定着ベルト21の内周面21a(表層21Aa)がニップ部形成部材26から変形力を受けたとき、それによる負荷を緩衝させるためには、定着ベルト21の表層21Aaは変形しやすく、その層厚も厚い方が良い。また、そのときの内周面21a(表層21Aa)の変形は、弾性変形ではなくて、塑性変形の方が摩耗紛の発生を軽減する効果が長く維持される。
したがって、マルテンス硬度測定時の永久歪(残留歪)が押し込み深さに対して50%以上であり、層厚が10μm以上である表層21Aaは、定着ベルト21とニップ部形成部材26との双方の摩耗を長期にわたり大幅に低減することができる。これは、表層21Aaとして弾性変形性に優れた材料を用いた場合には、弾性変形の領域内での変形に収まっているうちは、一切傷の入らない状態を保つことができるが、万一、弾性変形の領域を超える変形が生じると、凝集破壊、すなわち摩耗紛の発生が生じるためである。これは、一般的に、弾性変形性に優れた材料は、架橋構造を持っていたり、分子量が高かったり、粒界が少なかったりするため、弾性変形の限界を超えてしまうと、不可逆な分子構造の破断や疲労破壊が起きてしまうためであると考えられる。
一方、表層21Aaとして塑性変形性に優れた柔らかい材料を用いた場合には、分子量が低かったり、粒界が多かったりすること等から、仮に、その変形が塑性変形の領域を超えたものであっても、材料が摩耗紛として遊離しにくく、変形後の状態で再度安定化すると考えられる。
これらのことから、定着ベルト21の内周面21a(表層21Aa)の変形は、弾性変形ではなくて、塑性変形の方が、そこに傷は入ったとしても摩耗紛が発生しにくくなり、またそのような効果が長く維持されることになる。
ここで、本実施の形態における定着ベルト21(ベルト部材)は、内周面21a(摺接面)の放射率が0.94以上になるように形成されている。具体的に、そのような放射率となるように、定着ベルト21(特に、表層21Aaである。)の材料や色が選定されている。
この「放射率」とは、物体からの熱放射のしやすさであって、0~1の数字で表すものである(「0」に近づくほど熱放射しにくく、「1」に近づくほど熱放射しやすい)。放射率は、物体表面の温度を温度計で測定して、その測定温度が、熱放射を「1」に設定した放射温度計の温度と一致したときの放射率である。
また、「放射率」は、光の熱エネルギーの受け取りやすさでもある。したがって、放射率が高い定着ベルト21を用いると、ヒータ25から発生した熱エネルギーを効率的に受け取れるようになり、エネルギーのロスが低減されて、高寿命でエネルギー性の高い定着装置20を実現することができる。特に、定着ベルト21の放射率が0.94を下回ってしまうと、充分な省エネルギー性と耐久性とが得られなくなってしまう。
本実施の形態における定着装置20は、定着ベルト21(内周面21a)の放射率を0.94以上に設定しているため、省エネルギー性と高耐久性とを高めることができる。
以下、図8を用いて、本発明の効果を確認するために、本願発明者がおこなった実験の条件と結果とについて説明する。
図8に示すように、実施例1~5、比較例1~5として、マルテンス硬度、鉛筆硬度(及び、永久歪)の異なる10個の定着ベルト21をそれぞれ用いて、定着ベルト21(定着装置20)の耐久性を確認する実験をおこなった。
定着ベルト21の内周面21aの「マルテンス硬度」の測定は、測定装置「Fischerscope HCU H100VP」を使用して、測定条件として、ダイヤモンド圧子(面角136°)を用いて、押し込み深さ5μm、押し込み速度5μm/20s(加重、除荷とも同一)とした。
測定は、23℃の環境で10回おこない、その平均値を用いた。また、測定時の浮きを低減するためR20mm程度の平面を有する金属ステージスに定着ベルト21を固定して測定をおこなった。また、定着ベルト21の内周面21a側にシリコーンゴムやPFAから成る弾性層がある場合は除去して、定着ベルト21の基材層21A(ステンレス、ニッケル、ポリイミドなどで形成されている。)が直接的に金属ステージに接するように測定をおこなった。また、両面テープなどを裏に貼って固定することは避けた。マルテンス硬度は、深さ1μmでの値とした。
また、図8中の「永久歪」は、内周面21a(表層21Aa)の残留歪みであって、押し込み深さ・荷重曲線における、実験終了時に無負荷となった瞬間の押し込み深さの値をグラフから読み取った値〔μm〕で、押し込み深さである5〔μm〕を除した値、の百分率表記とした。すなわち、図8の「永久歪」は、マルテンス硬度を測定するときの永久歪の押し込み深さに対する割合(%)となる。
一方、定着ベルト21の内周面21aの「鉛筆硬度」の測定は、JIS-K5600に準拠しておこなった。
ただし、鉛筆(鉛筆スケール)は、MITSUBISHI社製のものを用いた。また、傷跡の評価は、基材層21Aにおける表層21Aaの密着性のみを評価したいため、表層21Aaが削られて基材層21Aの主部が完全に露出した状態を「不合格」と判定した。例えば、基材層21Aがステンレスやニッケルである場合、鉛筆で引っ掻いたエリアに表層21Aaが一切残っておらず金属光沢がはっきり確認できるようなときに「不合格」とする。
これに対して、引っ掻いた箇所に僅かでも表層21Aaが残っていたら、その鉛筆スケールは「合格」とした。例えば、表層21Aaが多少残っている場合、基材層21Aの主部が透けて見えることがあるが、そのような場合は「合格」となる。
なお、表層21Aaの残り具合は、マイクロメータやレーザ顕微鏡などで計測して、1μm以上の表層21Aaの残留が認められれば「合格」とした。合否の判断に迷う場合には、鉛筆スケールの硬度を上げていき、基材層21Aの主部が完全に露出する状態が確認されたときを不合格の基準とした。
定着ベルト21の「耐久評価」は、図2に示す定着装置2(リコー社製の電子写真方式の画像形成装置に設置されたものである。)に対して、評価用に余分な部品を取り除く改造を施したしたものに、実施例1~5、比較例1~5の定着ベルト21をそれぞれ組み込んでおこなった。また、「耐久評価」は、定着ベルト1に所定の加圧力と温度をかけた状態で、印刷時の走行シーケンスを繰り返させ、定着ベルト21の外径から計算された総走行距離が500〔km〕に到達するまでのモータの駆動トルク〔N/m〕のうち、最も高かったときの値でおこなった。また、その評価時の駆動トルクは、稼働時や停止時の瞬時値は使わずに、評価したい走行速度(例えば、300〔mm/s〕で走行中の値を使用した。
また、定着ベルト21に塗布する潤滑剤は、製品で規定される量(例えば、5〔g〕)として、評価が開始された後の補充はしなかった。
また、モータの駆動トルク〔N/m〕は、装置の大きさや構成、線速に左右されるため、モータの駆動トルクの定格値(例えば、1.0〔N/m〕)で規格化した百分率を「耐久評価結果」とした。そして、0≦100×最高駆動トルク値/駆動トルク定格値<100〔%〕であるときトルクOK(判定「○」)として、100〔%〕≦100×最高駆動トルク値/駆動トルク定格値であるときトルクNG(判定「×」)とした。
また、図8における「実施例1」に用いた定着ベルト21は、ニッケルからなる基材層21Aに、層厚が0.2mmのシリコーンゴムからなる弾性層を形成した後に、さらに弾性層の表面に層厚が0.03mmのPFAからなる離型層を形成したものである。また、この定着ベルト21は、基材層21Aの表層21Aaとして、層厚が15μmであって、ポリイミドワニス20重量%とPTFE粒子80重量%とカーボンブラックとをスプレー塗装して、300℃で最終焼成をおこなったものを用いた。ただし、ポリイミドワニスは、硬化後の重量で配合した。その後、最終焼成を300℃で実施した。
これに対して、「実施例2」に用いた定着ベルト21は、基材層21Aの表層21Aaとして、層厚が13μmであって、330℃で最終焼成をおこなったこと以外は、「実施例1」のものと同様である。
また、「実施例3」に用いた定着ベルト21は、基材層21Aの表層21Aaとして、層厚が21μmであって、280℃で最終焼成をおこなったこと以外は、「実施例1」のものと同様である。
また、「実施例4」に用いた定着ベルト21は、基材層21Aの表層21Aaとして、層厚が9μmであって、ポリアミドイミド樹脂20重量%とPTFE粒子80重量%とカーボンブラックとをスプレー塗装して、270℃で最終焼成をおこなったこと以外は、「実施例1」のものと同様である。
また、「実施例5」に用いた定着ベルト21は、基材層21Aの表層21Aaとして、層厚が14μmであって、300℃で最終焼成をおこなったこと以外は、「実施例4」のものと同様である。
また、図8における「比較例1」に用いた定着ベルト21は、基材層21Aの表層21Aaとして、層厚が10μmであって、ポリアミドイミド樹脂30重量%とPTFE粒子70重量%とカーボンブラックとをスプレー塗装して、300℃で最終焼成をおこなったこと以外は、「実施例1」のものと同様である。
また、「比較例2」に用いた定着ベルト21は、基材層21Aの表層21Aaとして、層厚が15μmであって、230℃で最終焼成をおこなったこと以外は、「実施例1」のものと同様である。
また、「比較例3」に用いた定着ベルト21は、基材層21Aの表層21Aaとして、層厚が13μmであって、ポリイミドワニス60重量%とPTFE粒子40重量%とカーボンブラックとをスプレー塗装して、350℃で最終焼成をおこなったこと以外は、「実施例1」のものと同様である。
また、「比較例4」に用いた定着ベルト21は、基材層21Aの表層21Aaとして、層厚が9μmであって、ポリイミドワニス10重量%とPTFE粒子90重量%とカーボンブラックとをスプレー塗装して、280℃で最終焼成をおこなったこと以外は、「実施例1」のものと同様である。
また、「比較例5」に用いた定着ベルト21は、基材層21Aの表層21Aaとして、層厚が9μmであって、ポリイミドワニス30重量%とPTFE粒子70重量%とカーボンブラックとをスプレー塗装して、330℃で最終焼成をおこなったこと以外は、「実施例1」のものと同様である。
図8における実施例1~5、比較例1~5の実験結果からも、先に説明した本発明の効果が確認できる。
すなわち、内周面21aにおけるマルテンス硬度H1〔N/mm2〕が20≦H1≦70であって、鉛筆硬度H2がHB以上2H以下となるように形成された定着ベルト21を用いることで、定着ベルト21やニップ部形成部材26の摩耗が充分に軽減されて、装置の駆動トルク上昇(耐久性低下)が軽減される。
また、内周面21aにおけるマルテンス硬度H1を測定するときの永久歪が押込み深さに対して50%以上80%以下となるように形成されて、表層21Aaの層厚が10μm以上に設定された定着ベルト21を用いることで、上述した効果がさらに発揮される。
<変形例>
図9に示すように、変形例における定着装置20は、電磁誘導加熱方式のものであって、定着ベルト21が電磁誘導によって加熱される。
図9に示すように、変形例における定着装置20も、図2のものと同様に、定着ベルト21(ベルト部材)、ニップ部形成部材26(摺接部材)、補強部材23、加圧ローラ31(加熱部材)、温度センサ40、等で構成される。
ここで、変形例における定着装置20は、加熱手段として、ヒータ25の代わりに、誘導加熱部50が設置されている。そして、変形例における定着ベルト21は、誘導加熱部50による電磁誘導によって加熱される。
誘導加熱部50は、励磁コイル、コア、コイルガイド、等で構成される。励磁コイルは、定着ベルト21の一部を覆うように、細線を束ねたリッツ線を幅方向(図9の紙面垂直方向である。)に延設したものである。コイルガイドは、耐熱性の高い樹脂材料等からなり、励磁コイルやコアを保持する。コアは、フェライト等の強磁性体(比透磁率が1000~3000程度である。)からなる半円筒状部材であって、定着ベルト21に向けて効率のよい磁束を形成するためにセンターコアやサイドコアが設けられている。コアは、幅方向に延設された励磁コイルに対向するように設置されている。
一方、定着ベルト21には、図2等を用いて説明した基材層、弾性層、離型層とは別に、誘導加熱部50によって電磁誘導加熱される発熱層(例えば、弾性層と離型層との間に形成することもできるし、基材層を発熱層として用いることもできる。)が形成されている。発熱層の材料としては、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、コバルト、クロム、アルミニウム、金、白金、銀、スズ、パラジウム、これらのうち複数の金属からなる合金、等を用いることができる。
そして、定着ベルト21が図9中の矢印方向に回転駆動されると、定着ベルト21は誘導加熱部50との対向位置で加熱される。詳しくは、励磁コイルに高周波の交番電流を流すことで、定着ベルト21の周囲に磁力線が双方向に交互に切り替わるように形成される。このとき、定着ベルト21の発熱層の表面に渦電流が生じて、発熱層自身の電気抵抗によってジュール熱が発生する。このジュール熱によって、発熱層が電磁誘導加熱されて、定着ベルト21が加熱される。
このように構成された電磁誘導加熱方式の定着装置20においても、ニップ部形成部材26(摺接部材)に摺接する定着ベルト21の内周面21a(摺接面)におけるマルテンス硬度H1〔N/mm2〕が20≦H1≦70であって、鉛筆硬度H2がHB以上2H以下となるように形成されている。
これにより、ニップ部形成部材26(摺接部材)との摺接による定着ベルト21やニップ部形成部材26の摩耗が充分に軽減されることになる。
以上説明したように、本実施の形態における定着ベルト21(ベルト部材)は、ニップ部形成部材26(摺接部材)に摺接する内周面21a(摺接面)におけるマルテンス硬度H1〔N/mm2〕が20≦H1≦70であって、鉛筆硬度H2がHB以上2H以下となるように形成されている。
これにより、ニップ部形成部材26(摺接部材)との摺接による定着ベルト21やニップ部形成部材26の摩耗が充分に軽減される。
なお、本実施の形態では、ベルト部材としての定着ベルト21に対して本発明を適用したが、本発明が適用されるベルト部材はこれに限定されることなく、摺接部材に摺接するベルト部材のすべてに対して、例えば、中間転写ベルト78に対しても、本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、定着ベルト21がニップ部形成部材26とフランジ29とにそれぞれ摺接するように構成したが、このような構成に限定されることなく、例えば、定着ベルト21がニップ部形成部材26のみに摺接するように構成することもできるし、定着ベルト21がその他の部材に摺接するように構成することもできる。
また、本実施の形態では、定着ベルト21の内周面21aに摺接部材が摺接するように構成したが、定着ベルトの外周面(又は、両面)に摺接部材が摺接するように構成することもできる。その場合、定着ベルトの外周面(又は、両面)のマルテンス硬度と鉛筆硬度とが最適化されることになる。
また、本実施の形態では、定着ベルト21の基材層21Aaに、マルテンス硬度と鉛筆硬度とが最適化された表層21Aaを設けたが、表層21Aaを設けずに、基材層21Aa自体のマルテンス硬度と鉛筆硬度とを最適化しても良い。
そして、これらのような場合にも、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
20 定着装置、
21 定着ベルト(ベルト部材)、
21A 基材層、
21Aa 表層、
21a 摺接面、
25 ヒータ(加熱手段)、
26 ニップ部形成部材(摺接部材)、
26a 対向面、
31 加圧ローラ(加圧部材)。
特許2002-134264号公報

Claims (7)

  1. 摺接部材に摺接する摺接面におけるマルテンス硬度H1〔N/mm2〕が20≦H1≦70であって、鉛筆硬度H2がHB以上2H以下であることを特徴とするベルト部材。
  2. 前記摺接面におけるマルテンス硬度を測定するときの永久歪が押込み深さに対して50%以上80%以下であることを特徴とする請求項1に記載のベルト部材。
  3. 前記摺接面を有する表層の層厚が10μm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベルト部材。
  4. 前記摺接面の放射率が0.94以上であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載のベルト部材。
  5. 定着装置に設置される定着ベルトであって、
    前記摺接面は、前記定着ベルトの内周面であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載のベルト部材。
  6. 前記定着ベルトと、
    前記摺接部材と、
    前記定着ベルトを介して前記摺接部材に圧接してシートが搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、
    を備えたことを特徴とする定着装置。
  7. 請求項1~請求項5のいずれかに記載のベルト部材、又は、請求項6に記載の定着装置、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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