JP2022191471A - 複合材料およびその製造方法、成形品並びに中間基材 - Google Patents

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敦 野原
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Abstract

【課題】 室温で低粘着性であり、かつ高温で粘着性が増すことにより、バッキングフィルム無しでもボビン状態で保管可能であり、自動テーププレースメント装置での自動積層プロセスに好適なトウプリプレグ、その製造方法、及びこれを用いてなる繊維強化複合材料を提供する。【解決手段】 強化繊維束にマトリックス樹脂組成物が含浸しているトウプリプレグであって、マトリックス樹脂に含まれる23℃で固形のエポキシ樹脂と23℃で液状のエポキシ樹脂の質量比が50:50~75:25であり、UV増粘倍率が200~5000倍であるトウプリプレグ、その製造方法、及びこれを用いて作製された繊維強化複合材料。【選択図】図1

Description

本発明は、航空機部材、自動車部材等に用いられるトウプリプレグ、及びこれを用いた積層体、及び繊維強化複合材料の製造方法に関する。
強化繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化複合材料用プリプレグは、その硬化物(繊維強化複合材料)が軽量で優れた機械特性を有するため、スポーツ、航空宇宙、一般産業用途に広く用いられている。繊維強化複合材料は、プリプレグを複数層積層して形成したプリプレグ積層体を、オートクレーブやプレス成形機を用いて加熱加圧成形して製造する。
プリプレグは通常幅広いシート状であるため、所望の形状の成形品を得るために、裁断してから積層して使用する。その際に、多量の端材が発生する。これに対し、細長いテープ状のトウプリプレグを用いる場合、所望の形状に近い形状に積層すれば、端材を削減することができる。また、プリプレグを手作業で積層すると、積層位置や積層角度に乱れが生じ、成形品に不具合が生じることがある。これに対し、自動積層装置を用いてトウプリプレグを積層した場合、位置や角度を精度良く、かつ高速で積層できる。これらの点より、自動積層装置を用いてトウプリプレグを積層すれば、高品位の成形体を低コストでかつ迅速に製造できる。
上述したように、トウプリプレグを自動積層したのち成形型内でプレス成形することにより、優れた機械物性や耐熱性を有する部材を低コストで作製することが可能となる。
トウプリプレグは、通常、紙管等に巻き取ったボビンの状態で保管するが、ボビンからの高速解舒を確実にするために、トウプリプレグの片面にバッキングフィルムを挿入することが多い。
特許文献1には、トウプリプレグの幅より幅広いプラスチック製のバッキングフィルムを片面に貼り合わせ、特定の範囲内のワインド比で螺旋状に巻き取られた、オートファイバープレースメント用トウプリプレグについて記載されている。
特開2017‐82209号公報
通常は、トウプリプレグを成形する際は、室温で適度な粘着性を有するトウプリプレグを、型やマンドレルに貼りつかせて使用する。そのため、トウプリプレグの製造時に張力をかけてボビンに巻き取る際に、バッキングフィルムがなければ、下層のトウプリプレグと、その上に巻き取られる上層のトウプリプレグが直接接することで互いに接着し、使用時の巻出しが困難になるため、バッキングフィルムは不可欠であった。
しかし、バッキングフィルムは使い捨てであるため、廃棄物の増加につながるとともに、コスト高の原因となる。
一方、自動積層装置を用いた積層に適したトウプリプレグの要求特性としては、
・ボビンからの高速解舒を可能とし、ガイドロールや自動テーププレースメント装置のコンパクションロール(積層ロール)への巻き付きを防止するための、室温での低粘着性、
・自動テーププレースメント装置の積層ヘッドへのフィードが可能となる室温での適度な硬さ、
・30~60℃程度の積層ヘッド部で加熱されることにより、成形型などの成形治具や下層の(先に積層した)トウプリプレグに容易に貼りつく粘着性、
が挙げられる。
すなわち、本発明の課題は、かかる問題を解決するために、製造時においては適度な柔軟性を有することでボビンへの巻取が容易であり、使用時においてはバッキングフィルムが無くとも優れた解舒性を有し、また、堅牢性、および、型への貼り付き性をも有するトウプリプレグを提供することである。更に、自動テーププレースメント装置で自動積層プロセスに好適に用いられるトウプリプレグ、当該トウプリプレグを用いた積層方法、当該プリプレグを硬化した複合材料、及び当該プリプレグの製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、従来、解舒性と、堅牢性及び型への貼り付き性とを両立するのが困難であったところ、エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和化合物とを含むマトリックス樹脂組成物、及び強化繊維束を含むトウプリプレグにおいて、当該マトリックス樹脂組成物のUV増粘倍率を特定の範囲にすることで、バッキングフィルムが不要であり、かつ自動テーププレースメント装置への適用が容易であるトウプリプレグが得られること、また、前記成分(A)、前記成分(B)、前記成分(C)、及び前記成分(D)、を含むトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂と強化繊維束を含有するトウプリプレグ前駆体にエネルギー線を照射することにより、前記トウプリプレグ、が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明の要旨は以下に存する。
[1] 下記の成分(A)、(B)、(C)、(C’)、(D)を含むマトリックス樹脂組成物が強化繊維束に含浸されたトウプリプレグであって、前記成分(A)が23℃で固形のエポキシ樹脂と23℃で液状のエポキシ樹脂を含み、前記23℃で固形のエポキシ樹脂と前記23℃で液状のエポキシ樹脂の質量比が50:50~75:25であり、以下の方法で測定されるUV増粘倍率が200~5000倍であるトウプリプレグ。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C):ラジカル重合性不飽和化合物
成分(C’):前記成分(C)がラジカル重合してなる重合体
成分(D):紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤
[UV増粘倍率の測定方法]
前記成分(A)、(B)、(C)、(D)を含むトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の50℃における粘度をη、上記トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物に下記条件でUV照射した後の50℃における粘度をηとし、ηに対するηの倍率をUV増粘倍率とする。
UV照射条件:厚さ120μmのトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物に対して、メタルハライドランプを用いて照度270mW/cm、照射量1000mJ/cmでUVを照射する。
[2] 23℃、プランジャー押付圧力90kPaで測定したタック値が5~40kPaであり、45℃、プランジャー押付圧力150kPaで測定したタック値が25~100kPaであり、且つ23℃におけるドレープ性値が10~40°である[1]に記載のトウプリプレグ。
[3] 前記トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の、キュラストメーターで測定した際の硬化完了時間が140℃で2.0~20.0分である、[1]または[2]に記載のプリプレグテープ。
[4] 前記成分(C’)が表層付近に局在する[1]から[3]のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
[5] 成分(D)が成分(D1):紫外線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤である[1]から[4]のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
[6] さらに成分(E):熱によりラジカルを発生する重合開始剤を含む[1]から[5]のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
[7] 前記成分(C)が、4官能以上のラジカル重合性不飽和化合物である、[1]から[6]のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
[8] 前記成分(A):エポキシ樹脂が、分子内に3個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂を含有する[1]から[7]のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
[9] 前記成分(B):エポキシ樹脂硬化剤が、ジシアンジアミド及びイミダゾール誘導体を含む、[1]から[8]のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
[10] 前記マトリックス樹脂組成物の成分(A)と成分(C)の合計100質量部に対し、成分(B)の含有量が3から質量部以上15質量部以下であり、成分(C)の含有量が6質量部以上から15質量部以下であり、成分(D)の含有量が1質量部以上から3質量部以下である、[1]から[9]のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
[11] 前記トウプリプレグの質量に対する前記熱マトリックス樹脂組成物の含有率が20~45質量%である、[1]から[10]のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
[12] 以下の工程(1)~(3)を含むトウプリプレグの製造方法。
(1)トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の調製工程;下記の成分(A)、(B)、(C)、(D)を混合させて、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物を得る工程であって、前記成分(A)が23℃で固形のエポキシ樹脂と23℃で液状のエポキシ樹脂を含み、前記23℃で固形のエポキシ樹脂と前記23℃で液状のエポキシ樹脂の質量比が50:50~75:25であり、以下の方法で測定されるUV増粘倍率が200~5000倍である。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C):ラジカル重合性不飽和化合物
成分(D):紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤
成分(C’):前記成分(C)がラジカル重合してなる重合体
[UV増粘倍率の測定方法]
成分(A)、(B)、(C)、(D)を含むトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の粘度をη、上記トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物に下記条件でUV照射した後の粘度をηとし、ηに対するηの倍率をUV増粘倍率とする。
UV照射条件:厚さ120μmのトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物に対して、メタルハライドランプを用いて照度270mW/cm、照射量1000mJ/cmでUVを照射する。
(2)トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物含浸工程;強化繊維束に、前記マトリックス樹脂組成物を含浸させてトウプリプレグ前駆体を得る。
(3)紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線照射工程;前記トウプリプレグ前駆体の中央部に存在する前記重合開始剤からラジカルを発生させることなく、表層部に存在する前記重合開始剤にラジカルを発生させて、前記トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の粘度が中央部と比して表層部で増加されたプリプレグを得る。
[13] [1]から[11]のいずれか一項に記載のトウプリプレグを加熱し粘着性をもたせて積層する、自動積層成形方法。
[14] [1]から[11]のいずれか一項に記載のトウプリプレグを積層した積層体。
[15] [1]から[11]のいずれか一項に記載のトウプリプレグを積層したものを、金型内にて加熱加圧することにより硬化する繊維強化複合材料の製造方法。
[16] [1]から[11]のいずれか一項に記載のトウプリプレグを硬化した複合材料成形品。
本発明によれば、室温で低粘着性であることによる優れた解舒性とガイドロールやコンパクションロールへの巻き付き防止性、室温で適度な硬さを持つことによる積層ヘッド部での優れた形状保持性、及び高温で粘着性が増すことによる30~60℃程度の積層ヘッドによる被加熱部分の適度な貼り付き性を有し、自動テーププレースメント装置での自動積層プロセスに好適であり、バッキングフィルム無しであってもボビン状態で保管可能なトウプリプレグ、及びその製造方法を提供することができる。また、本発明に係るトウプリプレグを用いた積層体、積層方法、及び当該トウプリプレグを硬化した繊維強化複合材料を提供することができる。
なお、本発明における「室温」とは、トウプリプレグの作製・成形作業における通常の作業環境の温度を意味し、23℃程度である。
本発明におけるドレープ値の測定方法を表す模式図である。
本発明は、強化繊維束に成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):エポキシ樹脂硬化剤、成分(C):ラジカル重合性不飽和化合物、成分(D):紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤、成分(C’):前記成分(C)がラジカル重合してなる重合体、を含むマトリックス樹脂組成物が含浸されており、前記成分(A)が23℃で固形のエポキシ樹脂と23℃で液状のエポキシ樹脂を含み、前記23℃で固形のエポキシ樹脂と前記23℃で液状のエポキシ樹脂の比が50:50~75:25であるトウプリプレグに関し、前記成分(A)、前記成分(B)、前記成分(C)、及び前記成分(D)、を含むトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物のUV増粘倍率が200~5000倍である。
以下詳細に説明する。
<トウプリプレグ>
トウプリプレグとは、通常、数千~数万本の強化繊維のフィラメントが一方向に配列し、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物を含浸された強化繊維束が、紙管等のボビンに巻かれた細幅の中間基材である。
本発明のトウプリプレグは、室温で低粘着性であることによる優れた解舒性と、自動積層装置のガイドロールやコンパクションロールへの巻き付き防止性、室温で適度な硬さを持つことによる、自動積層装置の積層ヘッド部での優れた形状保持性、及び高温で粘着性が増すことによる、30~60℃程度の自動積層装置の積層ヘッドによる、被加熱部分の適度な貼り付き性を有しており、バッキングフィルム無しでボビン状態で保管が可能である。このため、本発明の一態様に係るトウプリプレグは、自動テーププレースメント装置を用いた自動積層プロセスに好適で低コストなトウプリプレグとなり得る。
本発明の強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維(なお本発明では、黒鉛繊維も炭素繊維に含まれるものとして扱う)、アラミド繊維、ボロン繊維等、通常の繊維強化複合材料に使用される強化繊維を使用することができる。なかでも、軽量、高強度、かつ高弾性率であり、耐熱性、耐薬品性にも優れる点から、炭素繊維が好ましい。炭素繊維としては、ピッチ系、ポリアクリロニトリル(PAN系)、レーヨン系等の種類が挙げられ、いずれの炭素繊維を用いてもよいが、炭素繊維の生産性の面からPAN系炭素繊維がより好ましい。
炭素繊維としては、ストランド引張強度が4GPa以上、好ましくは4.6GPa以上、引張伸度1.5%以上の高強度炭素繊維が、繊維強化複合材料の強度発現に適している。ここで、ストランド引張強度とは、JIS R7601(1986) に基づいて行うストランド引張試験で測定される強度をいう。
本発明で使用する強化繊維束のフィラメント数は、好ましくは1000~60000本、より好ましくは3000~50000本である。フィラメント数を前記下限値以上とすることによりトウプリプレグとして自動積層する際の生産性を高めることができる。前記上限値以下とすることにより強化繊維束への熱硬化性樹脂組成物の含浸を容易にすることができる。
強化繊維の太さは、フィラメント径が1~20μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは3~10μmの範囲である。強化繊維の太さを前記上限値以下とすることにより、引張強度や引張弾性率を高くすることができる。また、強化繊維の太さを前記下限値以上とすることにより、強化繊束の生産性を高くすることができ、製造コストを下げることができる。
なお、本明細書における「フィラメント径」とは、それぞれの繊維の断面の等面積円相当直径を意味する。
<樹脂含有率>
トウプリプレグのタックの強弱に影響を与える他の大きな因子として、マトリックス樹脂組成物の含有量が挙げられる。
トウプリプレグの質量に対するマトリックス樹脂組成物の含有率は、強化繊維束のフィラメント数にもよるが、20~45質量%が好ましく、25~45質量%がより好ましく、35~45質量%が更に好ましい。
前記下限値以上とすることにより、得られる繊維強化複合材料中のボイドを低減させることができる。前記上限値以下とすることにより得られる繊維強化複合材料の機械物性を高くするとともに、トウプリプレグのタックが強くなりすぎることを防ぐことができる。
<トウプリプレグの幅>
本発明のトウプリプレグの平均幅は、強化繊維束のフィラメント数にもよるが、好ましくは2~30mmであり、より好ましくは4~28mmである。また、厚みは0.10~0.70mmが好ましく、より好ましくは0.15~0.50mmである。幅のばらつきについては、トウプリプレグ平均幅をXとした場合、最大幅Xaと最小幅Xbの差(Xa-Xb)が0.2X以下であることが好ましい。0.2Xを超える場合、トウプリプレグの幅精度が低くすぎるため、積層後のトウプリプレグ同士に隙間が大きくなってしまい、その部分はプレス成形後も樹脂だまりとなり繊維強化複合材料の強度低下の原因となる。
本発明において、マトリックス樹脂組成物とは、ボビンに巻き取られた形のトウプリプレグに含浸された状態の樹脂組成物のことを指し、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物とは、トウプリプレグに含浸される前の樹脂組成物を指すものとする。
<マトリックス樹脂組成物>
以下、マトリックス樹脂組成物について説明する。
本発明のマトリックス樹脂組成物は、下記の成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及び成分(C’)を含む。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C):ラジカル重合性不飽和化合物
成分(D):紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤
成分(C’):前記成分(C)がラジカル重合してなる重合体
<成分(A):エポキシ樹脂>
本明細書において「エポキシ樹脂」という用語は、分子内に1つ以上のエポキシ基を有する化合物という化学物質のカテゴリーの名称として用いる。
成分(A):エポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型、及び脂環式エポキシ型等が挙げられるが、安価で入手しやすく、反応性に優れる点からグリシジルエーテル型またはグリシジルアミン型を含むことが好ましい。
これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2種以上を併用する場合、室温での低粘着性、及び積層ヘッドへのフィード可能な適度な硬さ、更に30~60℃程度に加熱された場合の十分な粘着性を併せ持つトウプリプレグを得るには、23℃で液状のエポキシ樹脂と23℃で固形のエポキシ樹脂を組み合わせて使用することが好ましい。
23℃で液状のエポキシ樹脂の市販品としては、例えばjER825、826、827、828、834(以上、三菱ケミカル(株)製)、エピクロン850(DIC(株)製)、エポトートYD-128(新日鉄住金化学(株)製)、DER-331、DER-332(ダウケミカル社製)、ARALDITE LY556(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂;
jER806、807、1750(以上、三菱ケミカル(株)製)、エピクロン830(DIC(株)製)、エポトートYD-170、エポトートYD-175(以上、新日鉄住金化学(株)製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂;
jER152(三菱ケミカル(株)製)、エピクロンN-730A(DIC(株)製)、DEN-425(ダウケミカル社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂;
jER604、630(以上、三菱ケミカル(株)製)、MY0600、MY0500(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)等のアミン型エポキシ樹脂;セロキサイド2021P、セロキサイド8000((株)ダイセル製)等の脂環式エポキシ樹脂;
等が挙げられる。
これらの23℃で液状のエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
23℃で液状のエポキシ樹脂としては、硬化物の靱性と耐熱性のバランスに優れる点からビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
23℃で固形のエポキシ樹脂は、23℃で半固形のエポキシ樹脂を含む。半固形エポキシ樹脂とは23℃で固形であり、40℃で液状であるエポキシ樹脂を指す。
23℃で固形のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの室温で固体のエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
23℃で固形のエポキシ樹脂の市販品としては、例えばjER154、157S70(以上、三菱ケミカル(株)製)、エピクロンN-770、エピクロンN-740、エピクロンN-775(以上、DIC(株)製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂;エピクロンN-660、エピクロンN-665、エピクロンN-670、エピクロンN-673、エピクロンN-695(以上、DIC(株)製)、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-104S(以上、日本化薬(株)製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;
jER1001、1002、1003(以上、三菱ケミカル(株)製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂;
jER4004P、4005P(以上、三菱ケミカル(株)製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂;
YX4000、YL6121H(以上、三菱ケミカル(株)製)などのビフェニル型エポキシ樹脂;
HP4700(DIC(株)製)などのナフタレン型エポキシ樹脂;
HP7200(DIC(株)製)などのジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;
TSR-400(DIC(株)製)、DER858(ダウケミカル社製)、AER 4152(旭化成イーマテリアルズ(株)製)などのオキサゾリドン環骨格を有するエポキシ樹脂;
EXA-1514、EXA-1517(DIC(株)製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂;
等が挙げられる。
23℃で固形のエポキシ樹脂としては、硬化物の耐熱性と靱性のバランスに優れる点からオキサゾリドン環骨格を有するエポキシ樹脂、及び、硬化性と硬化物の耐熱性に優れる点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
23℃で固形のエポキシ樹脂と23℃で液状のエポキシ樹脂の質量比は、50:50~75:25であることが好ましく、60:40~75:25であることがより好ましい。
前記範囲内であれば、トウプリプレグに適度なドレープ性と、室温における適度な硬さを与えることができ、自動テーププレースメント装置の積層ヘッドへのフィードが可能となる。
また、前記範囲内であることにより、昇温速度が2℃/minである昇温粘度測定における、エポキシ樹脂の硬化開始前のマトリックス樹脂組成物の粘度の傾きを大きくすることができ、23℃におけるタック値と45℃におけるタック値の差を大きくすることができる。それにより、トウプリプレグの室温での低粘着性と、30~60℃程度での粘着性を両立でき、バッキングフィルムなしであっても、ボビンに巻いた状態で室温で保存可能でありながら、使用時にボビンからから容易に解舒でき、さらに、自動積層装置に適用した際に、コンパクションロールへ巻付かないが、成形治具や積層済みのトウプリプレグに容易に貼りつくため、自動積層装置に好適に使用することができる。
成分(A):エポキシ樹脂は、分子内に3個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂を含むことが好ましい。分子内に3個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂は、一分子内に複数のエポキシ基を有するために反応点が近くなるため、連鎖的に反応が進むこと、また、急速に反応発熱が発生することで反応が促進されることにより、硬化速度を高められる。また、硬化物の架橋点間距離が短いことから、硬化物のTgを高くすることができる。
多官能エポキシ樹脂のトウプリプレグ含浸用マトリックス組成物中のエポキシ樹脂の100質量部に対する含有量は、5質量部以上40質量部以下が好ましい。より好ましくは、10質量部以上40質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以上40質量部以下である。前記下限値以上とすることで、マトリックス樹脂組成物の速硬化性を高め、耐熱性を向上させることができる。前記上限値以下とすることで、硬化後のマトリックス樹脂組成物が硬脆くなることを防止できる。
分子内に3個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン類、アミノフェノールのグリシジル化合物、アミノクレゾールのグリシジル化合物などが挙げられる。これらの中でも高い耐熱性と、高い機械物性を発揮できる点で、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンが好ましい。フェノールノボラック型エポキシ樹脂のように、分子内有するエポキシ基の個数が異なる物質を含んでいる場合には、GPCで分画し、平均エポキシ基数が3以上のものとする。
分子内に3個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピクロンN-740、エピクロンN-775(以上、DIC(株)製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂;
エピクロンN-660、エピクロンN-665、エピクロンN-670、エピクロンN-673、エピクロンN-695(以上、DIC(株)製)、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-104S(以上、日本化薬(株)製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;
が挙げられる。
<成分(B):エポキシ樹脂硬化剤>
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤としては、例えばアミン型、アミンアダクト型、イミダゾール型、酸無水物型(カルボン酸無水物等)、フェノール型(フェノールノボラック樹脂等)、メルカプタン型、ルイス酸アミン錯体型、オニウム塩型などが挙げられるが、エポキシ樹脂を硬化させうるものであればどのような構造のものでもよい。これらの中でも、硬化物の物性に優れる点からアミン型及びアミンアダクト型の硬化剤が好ましく、硬化速度が速い点からイミダゾール型が好ましい。
これらの硬化剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミン型の硬化剤としては、例えばジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン、脂肪族アミン、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、及びこれらの異性体、変成体などがある。これらの中でも、トウプリプレグの保存安定性に優れ、硬化物の耐熱性(Tg)を高くできる点で、ジシアンジアミドが好ましい。ジシアンジアミドの市販品としては、例えば、jERキュアDICY7(三菱ケミカル(株)製)等が挙げられる。
アミンアダクト型の硬化剤の市販品としては、例えば、アミキュアPN-23、PN-50(以上、味の素ファインテクノ(株)製)等が挙げられる。
イミダゾール型の硬化剤は、その構造の中に非共有電子対を有する窒素原子を有し、これが(A)成分のエポキシ基やジシアンジアミドを活性化し、硬化を促進する。イミダゾール型の硬化剤としては、特に限定されないが、1H-イミダゾールの1位、2位、4位、5位を任意の置換基に置換した化合物を指す。
イミダゾール型の硬化剤の市販品としては、例えば、
2MZA-PW(四国化成工業(株)製))などの2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン;
2MAOK-PW(四国化成工業(株)製))などの2,4-ジアミノ-6-[2‘-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加塩;
2P4MHZ-PW(四国化成工業(株)製)などの2-フェニル‐4-メチル‐5-ヒドロキシメチルイミダゾール;
2PHZ-PW(四国化成工業(株)製)などの2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメ
チルイミダゾール;
等を挙げることができる。
イミダゾール型の硬化剤については、昇温に従いエポキシ樹脂への溶解が開始し、それに伴って反応が開始することから、室温での安定性が確保できるため、微粒子状のものが好ましい。
硬化剤の粒径は、溶解速度の観点から、1μm~10μmが好ましい。1μm以上とすることで室温での安定性を確保することができ、10μm以下とすることで硬化性を良好にすることができる。
室温での安定性とマトリックス樹脂組成物の速硬化性を両立できる点から、2MZA-PWが好ましい。
硬化物の高耐熱性と、マトリックス樹脂組成物の速硬化性を両立するため、ジシアンジアミドとイミダゾール型硬化剤を併用することが好ましい。
成分(B)の含有量は、成分(A)の100質量部に対し、3~15質量部が好ましく、5~15質量部がより好ましく、10~15質量部が更に好ましい。成分(B)の含有量が前記下限値以上であれば、エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂を十分に硬化することができる。一方、前記上限値以下であれば、靱性の高い樹脂硬化物を得ることができる。
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤を用いる場合、さらに成分(F):硬化助剤を併用してもよい。
成分(F):硬化助剤は、前記成分(B)の硬化性を高めるために用いる。前記成分(F)としては、例えば、尿素誘導体、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、変性脂肪族アミン化合物、ルイス酸錯体、オニウム塩、フェノール化合物等が挙げられる。
なかでも、マトリックス樹脂組成物の貯蔵安定性と硬化性とのバランスを両立できることから、尿素誘導体が好適に用いられる。
尿素誘導体は、分子内に少なくとも1つのジメチルウレイド基を有する。
尿素誘導体としては、分子内に少なくとも1つのジメチルウレイド基を持ち、高温で加熱することによりイソシアネート基とジメチルアミンを生成し、これらがエポキシ樹脂のエポキシ基やジシアンジアミドまたはその誘導体を活性化するものであれば、特に制限されない。
尿素誘導体としては、例えば、ジメチルウレイド基が脂肪族化合物に結合した脂肪族ジメチル尿素、ジメチルウレイド基が芳香環に結合した芳香族ジメチル尿素などが挙げられる。
脂肪族ジメチル尿素としては、例えばイソホロンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチル尿素、m-キシリレンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチル尿素、ヘキサメチレンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチル尿素などが挙げられる。
芳香族ジメチル尿素としては、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、4,4’-メチレンビス(ジフェニルジメチルウレア)、及び2,4-トルエンビス(3,3-ジメチルウレア)、が挙げられ、貯蔵安定性と硬化性のバランスに優れることから、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、2,4-トルエンビス(3,3-ジメチルウレア)(TBDMU)が好ましい。TBDMUの市販品としては、例えば、Omicure24(ピイ・ティ・アイ・ジャパン(株)製)が挙げられる。
これらの中でも、硬化速度が速くなる点で、芳香族ジメチルウレアが好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<成分(C):ラジカル重合性不飽和化合物>
成分(C):ラジカル重合性不飽和化合物とは、ラジカル重合性不飽和結合、すなわち炭素-炭素二重結合あるいは三重結合を分子内に含む低分子化合物、高分子化合物又はオリゴマーのことである。
ここで言う炭素-炭素二重結合あるいは三重結合を分子内に含む低分子化合物とは、炭素-炭素二重結合あるいは三重結合を分子内に含むモノマーのことを指し、分子量はおおよそ50~1000のものが一般的である。オリゴマーは、モノマーが複数個(一般的には2~100個)重合したものをいう。
ラジカル重合性不飽和結合を分子内に含む低分子化合物としては、分子内に1個以上の、例えば1~6個のラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物が挙げられる。
例えば、(メタ)アクリレート化合物、アリルフタレート化合物、アリルイソフタレート化合物、アリルテレフタレート化合物、アリルシアヌレート化合物、などが挙げられる。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタアクリレート」を意味する。ラジカル重合性不飽和化合物として、ラジカル重合性に優れることから(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
本発明において、ラジカル重合性不飽和化合物としては、4官能以上のラジカル重合性不飽和化合物が好ましい。ラジカル重合性不飽和化合物を4官能以上とすることで、これを含むマトリックス樹脂組成物ラジカル重合反応を効果的に促進し、得られたトウプリプレグの室温でのタック値を小さくすることができる。
4官能以上のラジカル重合性不飽和低分子化合物の市販品としては、例えば、
ライトエステルBP-4A(共栄社化学(株)製)などのペンタエリスリトールテトラアクリレート;
ウレタンアクリレートUA-101I(共栄社化学(株)製)などのグリセリンジメタクリレートイソホロンジイソシアネート付加物;
ウレタンアクリレートUA-101H(共栄社化学(株)製)などのグリセリンジメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネート付加物;
ウレタンアクリレートUA-101T(共栄社化学(株)製)などのグリセリンジメタクリレートトリレンジイソシアネート付加物;
等が挙げられる。
5官能以上のラジカル重合性不飽和低分子化合物の市販品としては、例えば、
ネオマーDA-600(三洋化成工業(株)製)などのジペンタエリスリトールペンタアクリレート;
等が挙げられる。
6官能以上のラジカル重合性不飽和低分子化合物の市販品としては、例えば、
ライトエステルDPE-6A(共栄社化学(株)製)などのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;
ウレタンアクリレートUA-306I(共栄社化学(株)製)などのペンタエリスリトールトリメタクリレートイソホロンジイソシアネート付加物;
ウレタンアクリレートUA-306H(共栄社化学(株)製)などのペンタエリスリトールトリメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネート付加物;
ウレタンアクリレートUA-306T(共栄社化学(株)製)などのペンタエリスリトールトリメタクリレートトリレンジイソシアネート付加物;
等が挙げられる。
少ない添加量でも硬化速度を高められるため、6官能以上のラジカル重合性不飽和低分子化合物を用いることが好ましい。
前記成分(C)の添加量は、成分(A):エポキシ樹脂の100質量部に対し、6~15質量部が好ましく、7~10質量部がより好ましい。成分(C)の含有量が前記下限値以上であれば、後述するエネルギー線の照射により、これを含むトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物を効果的に増粘することができる。成分(C)の含有量が前記上限値以下であれば、トウプリプレグ前駆体のべたつきを抑えることができる。
<成分(C’)エネルギー線の照射により前記成分(C)がラジカル重合してなる重合体>
成分(C’)は、前記成分(C)がラジカル重合することによって得られる重合体である。また、前記成分(C’)は、前記成分(A)や成分(A)から誘導される化合物と化学結合を形成しても構わない。
成分(C’)はトウプリプレグ表層部に局在することが好ましい。トウプリプレグの表層部とは、トウプリプレグの表面の任意の点から、トウプリプレグの厚み方向に進み、最初に到達する強化繊維の表面までのマトリックス樹脂組成物によって充填された空間をいう。
成分(C’)がトウプリプレグ表層部に局在すると、トウプリプレグ表面のマトリックス樹脂組成物の粘度が高く、内部のマトリックス樹脂組成物の粘度が低くなるので、プリプレグのドレープ性を保ちつつプリプレグ表面のタック性を制御することができる。
マトリックス樹脂組成物中の成分(C)と成分(C’)の合計の含有量は、成分(A)100質量部に対して、8質量部~15質量部が好ましく、9~13質量部がより好ましく、10~12質量部が更に好ましい。成分(B)と成分(C’)の合計の含有量が、前記下限値以上とすることにより、十分なタック性制御効果が得られる。前記上限値以下とすることにより、前記エネルギー線による成分(C)の硬化反応が進行させるために十分な量の成分(D)を添加したとしても、前述したエポキシ樹脂の硬化阻害が起こりにくい。また、プリプレグを複数枚重ねて硬化させ、繊維強化複合材料を作製した場合に、その硬化度、強度、耐熱性及び層間結合力が低くなりにくい。
<成分(D):紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤>
成分(D):紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤としては、前記エネルギー線の照射を受けて、開裂、水素引き抜き、電子移動などの反応を起こす化合物を用いることができる。このような化合物は、特に制限なく公知の光重合開始剤を使用することができる。比較的安価で入手が容易であることから、アルキルフェノン系ラジカル開始剤、ベンゾフェノン系ラジカル開始剤、ベンゾイン系ラジカル開始剤などのカルボニル系光重合開始剤、チオキサントン系ラジカル開始剤、アシルホスフィンオキサイド系ラジカル開始剤などが好ましい。
成分(D1):紫外線もしくは可視光線の照射によりラジカルを発生する光重合開始剤はトウプリプレグ前駆体に紫外線もしくは可視光線を照射することでトウプリプレグ表面に成分(E)が局在したプリプレグを製造することが容易に実現できるため更に好ましい。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記エネルギー線のエネルギー量は、上記反応が進行する量を適宜選択すれば良い。
エネルギー線として、光と称されるものを用いる場合、重合開始剤は、アルキルフェノン化合物が好ましい。
アルキルフェノン化合物は、紫外線などの比較的エネルギーが高いため、比較的低い照射強度で用いることが出来る光によっても硬化しやすく、短時間の照射で硬化するためである。
アルキルフェノン化合物のうち、α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物、α-アミノアルキルフェノン化合物が紫外線照射による硬化性に優れる点からより好ましい。
中でも、紫外線によりラジカルを発生し種々の樹脂への溶解性が高いことから、α-ヒドロキシアルキルフェノンが特に好ましい。
α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物の市販品としては、例えば、
IRGACURE 184(BASF社製)などの1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;IRGACURE 1173(BASF社製)などの2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン;
IRGACURE 2959(BASF社製)などの1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン;
IRGACURE 127(BASF社製)などの2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プ
ロパン-1-オン;
等が挙げられる。
α-アミノアルキルフェノン化合物の市販品としては、例えば、
IRGACURE 907(BASF社製)などのなどの2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン;
IRGACURE 369E(BASF社製)などの2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1;
IRGACURE 379EG(BASF社製)などの2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン;
等が挙げられる。
ベンゾフェノン系ラジカル開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4,4´-ジクロロベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、ミヒラーケトン、などが挙げられる。
ベンゾイン系ラジカル開始剤の市販品としては、例えば、
セイクオール BBI(精工化学(株)社製)などのベンゾインイソブチルエーテル;などが挙げられる。
さらに、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、テトラエチルメチルアンモニウムスルフィドなどのスルフィド系光重合開始剤、ベンゾキノン、t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノンなどのキノン系光重合開始剤、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9
H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシムなどのオキシムエステル化合物系光重合開始剤、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸などのオキシフェニル酢酸エステル系光重合開始剤などが挙げられる。
アルキルフェノン化合物を用いる場合、その含有量は、成分(C)の100質量部に対して、10~30質量部が好ましく、10~20質量部がより好ましく、10~15質量部が更に好ましい。前記下限値以上であれば、紫外線照射によるラジカル重合反応を短時間で起こすことができる。前記上限値以下であれば、紫外線照射後に残存した成分(C)による最終的な硬化物への悪影響を抑えることができる。
また、成分(B)の100質量部に対して、10~40質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましく、15~20質量部が更に好ましい。
重合開始剤の含有量が前記下限値以上であれば、紫外線照射時間を短くても十分に成分(C)を硬化することができる。一方、重合開始剤の含有量が前記上限値以下であれば、樹脂組成物の硬化物の耐熱性を高くすることができる。また、マトリックス樹脂組成物の硬化物から、残存するラジカル発生剤の溶出を軽減することができる。特に、α―ヒドロキシアルキルフェノン化合物を用いる場合、反応進行に伴い、酸が発生するため、エポキシ樹脂硬化剤としてアミン系硬化剤を用いると、エポキシ樹脂の硬化阻害が起こるが、この影響を低減することができ、マトリックス樹脂組成物の速硬化性を損なうことがない。
速硬化性と成分(C)の十分な硬化の両立の観点から、前記マトリックス樹脂組成物の成分(A)と成分(C)の合計100質量部に対し、成分(B)の含有量が3質量部以上15質量部以下で、成分(C)の含有量が6質量部以上15質量部以下で、かつ成分(D)の含有量が1質量部以上3質量部以下であることが好ましい。前記マトリックス樹脂組成物の成分(A)と成分(C)の合計100質量部に対し、成分(B)の含有量が5質量部以上15質量部以下で、成分(C)の含有量が8質量部以上15質量部以下で、かつ成分(D)の含有量が1質量部以上2.5質量部以下であることがより好ましい。前記マトリックス樹脂組成物の成分(A)と成分(C)の合計100質量部に対し、成分(B)の含有量が8質量部以上15質量部以下で、成分(C)の含有量が9質量部以上15質量部以下で、かつ成分(D)の含有量が1質量部以上1.5質量部以下であることが特に好ましい。
<成分(E)熱によりラジカルを発生する重合開始剤>
成分(E):熱によりラジカルを発生する重合開始剤としては、熱により、開裂、水素引き抜き、電子移動などの反応を起こす化合物を用いることができる。このような化合物は、アゾ化合物、過酸化物などがある。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
成分(E)を含むことにより、マトリックス樹脂組成物に含まれる成分(C)を、加熱加圧成形時に完全に硬化させられる。
アゾ化合物の市販品としては、例えば、
V-70(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、V-65(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、V-60(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、V-59(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、V-40(和光純薬工業(株)製)などの1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、V-30(和光純薬工業(株)製)などの1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、V-19(和光純薬工業(株)製)などの2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチル-バレロニトリル、等のアゾニトリル化合物;
VA-080(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、VA-082(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、VA-085(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド]、VA-086(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、VA-088(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、VF-096(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、VAm-110(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、VAm-111(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、等のアゾアミド化合物;
VR-110(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、VR-160(和光純薬工業(株)製)などの2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、等のアルキルアゾ化合物;
等が挙げられる。
有機過酸化物の市販品としては、例えば、
パーオクタH(日油(株)製)などの1,1,3,3-テトラメチルブチル ハイドロパーオキサイド、などのハイドロパーオキサイド;
パーブチルC(日油(株)製)などのt-ブチルクミルパーオキサイド、パーブチルD(日油(株)製)などのジ-t-ブチルパーオキサイド、パーヘキシルD(日油(株)製)などのジ-t-ヘキシルパーオキサイド、パークミルD(日油(株)製)などのジクミルパーオキサイド、パーブチルP(日油(株)製)などのビス(1-t-ブチルパーオキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、パーヘキシン25B(日油(株)製)などの2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、パーヘキサ25B(日油(株)製)などの2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、などのジアルキルパーオキサイド;
パーロイルL(日油(株)製)などのジラウロイルパーオキサイド、サンペロックス-DPO(三建化工(株)製)などのジデカノイルパーオキサイド、サンペロックス-CD(三建化工(株)製)などのジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、パーロイルTCP(日油(株)製)などのビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、などのジアシルパーオキサイド;
パーブチルZ(日油(株)製)などのt-ブチルパーオキシベンゾエート、パーブチルI(日油(株)製)などのt-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、パーブチルO(日油(株)製)などのt-ブチル 2-エチルパーヘキサノエート、パーヘキシルI(日油(株)製)などのt-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、パーブチルL(日油(株)製)などのt-ブチル パーオキシラウレート、トリゴノックス121(化薬アクゾ(株)製)などの(1,1-ジメチルプロピル) 2-エチルパーヘキサノエート、カヤエステルHO(化薬アクゾ(株)製)などのt-ブチル 2-エチルパーヘキサノエート、パーブチル355(日油(株)製)などのt-ブチル 3,5,5-トリメチルパーヘキサノエート、パーブチルE(日油(株)製)などのt-ブチル パーオキシ-2-エチルヘキシル モノカーボネート、パーブチルMA(日油(株)製)などのt-ブチル パーオキシマレイン酸、などのパーオキシエステル;
などを用いることができる。
これらのなかでも、半減期が、140℃で0.1~10時間であり、加熱加圧成形時に十分な硬化速度を得られるため、ジアルキルパーオキサイドが好ましい。マトリックス樹脂組成物の溶解性とラジカル重合性に優れる点から、パーヘキシルD、パークミルDが好ましい。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<その他の成分(任意成分)>
その他の成分として、前記エポキシ樹脂組成物は、これを用いて得られる繊維強化複合材料の靱性向上のため熱可塑性樹脂を含むことができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール(PVF)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)等が挙げられる。中でも繊維強化複合材料の靱性を向上させ、耐熱性に優れることから、PVFまたはPESが好ましい。
これらの熱可塑性樹脂の含有量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対し、0.2~45質量部が好ましく、0.5~25質量部がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が0.2質量部以上であれば、繊維強化複合材料の靱性を向上させる効果を十分に発揮させることができるため好ましく、45質量部以下であれば、適度なタックを有するトウプリプレグが得られ、また粘度の温度依存性が適切なエポキシ樹脂組成物が得られるため好ましい。また作製する繊維強化複合材料の用途に応じ、ポリアミド(PA)粒子、アクリル系重合体等の熱可塑性樹脂粒子、粉末状シリカ等の無機充填材、カルボキシ末端ブタジエンアクリロニトリル共重合ゴム等の液状ゴム、ニトリルゴム等の固形ゴム、ゴム粒子、コアシェル型エラストマー粒子、リン化合物、脱泡剤等の難燃剤等も含むことができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、各成分が混練され、均一に分散または溶解する限り、従来から用いられる一般的な方法にて製造することができる。
例えば、該樹脂組成物を構成する各成分を同時に混合して調製してもよく、あるいは、必要に応じて予めエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に、硬化剤やその他添加物を適宜分散させたマスターバッチを調製し、これを用いて調製してもよい。混合操作には、三本ロールミル、プラネタリミキサー、ニーダー、万能攪拌機、ホモジナイザー、ホモディスペンサー等の混合機を用いることができる。
<トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物>
以下、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物について説明する。
本発明におけるトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物は、前記成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)を含み、UV増粘倍率が500~5000倍となるよう、公知の材料から適宜選択し、組み合わせて使用すればよい。
以下に説明すること以外については、上述したマトリックス樹脂組成物についての説明を、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物にも適用できるので、説明を繰り返さない。
<トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の粘度>
本発明に用いるトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物は、30℃における粘度が10~10000Pa・sであることが好ましい。より好ましくは100~5000Pa・sであり、更に好ましくは700~3000Pa・sである。
30℃における粘度を前記下限値以上とすることにより、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の取り扱い性を良好にできる。適度な硬さのトウプリプレグ前駆体を得ることができる。前記上限値以下とすることにより、トウプレリプレグが硬くなりすぎることを防ぐことができる。
また、本発明に用いるトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物は、50℃における粘度が0.1~1000Pa・sであることが好ましい。より好ましくは1~500Pa・sであり、更に好ましくは10~100Pa・sである。
50℃における粘度を前記下限値以上とすることにより、UV照射後に内部からマトリックス樹脂組成物が染み出してくることを防ぐことができる。50℃における粘度を前記上限値以下にすることにより、強化繊維束へのトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の含浸を容易に行える。
<UV増粘倍率>
成分(A)、(B)、(C)、(D)を含むトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の粘度をη、上記トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物に下記条件でUV照射した後の粘度をηとし、ηに対するηの倍率(η/η)をUV増粘倍率とする。
[UV照射条件]
コーティングテスター株式会社製の4面フィルムアプリケーターを用いて厚さ120μmとなるように、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物を離形紙上に塗工しフィルムを作成する。作成したフィルムに対して、アイグラフィック株式会社製のメタルハライドランプを用いて照度270mW/cm、照射量1000mJ/cmでUVを照射する。
[粘度測定条件]
装置:AR-G2(ティー・エー・インスツルメント社製)
測定モード:ねじりモード
使用プレート:直径25mmのパラレルプレート
プレートギャップ:0.5mm
測定周波数:10rad/sec
温度:50℃
ストレス:300Pa
本発明のUV増粘倍率は、200~5000倍であることが好ましい。より好ましくは500~5000倍であり、更に好ましくは1000~5000倍である。
UV増粘倍率を前記下限値以上とすることにより、マトリックス樹脂組成物の粘度が低くなり過ぎないため、本発明におけるトウプリプレグの室温でのタック値が高くなり過ぎず、トウプリプレグが優れた解舒性を示す。また、バッキングフィルム無しであっても、本発明におけるトウプリプレグが室温においてボビン状態で保管可能となる。
UV増粘倍率を前記上限値以下とすることにより、
トウプリプレグが硬くなり過ぎないため、ボビンにスムーズに巻き取ることができ、トウプリプレグのタック値が低くなりすぎないため、自動積層装置での積層時に適度な貼り付き性を有する。
また、本発明に用いるマトリックス樹脂組成物はUV照射後の50℃における粘度が1000~100000Pa・sであることが好ましい。より好ましくは5000~100000Pa・sであり、更に好ましくは10000~100000Pa・sである。
UV照射後の50℃における粘度を前記下限値以上とすることにより、マトリックス樹脂組成物の粘度が低くなり過ぎないため、本発明におけるトウプリプレグの室温でのタック値が高くなり過ぎず、トウプリプレグが優れた解舒性を示す。また、バッキングフィルム無しであっても、本発明におけるトウプリプレグが室温においてボビン状態で保管可能となる。さらに、本発明におけるトウプリプレグを自動積層する際に、トウ幅が変動することを防ぐことができる。また、自動積層装置での積層時に、本発明におけるトウプリプレグが適度な硬さになり、積層ヘッド部で優れた形状保持性を示すとともに、ガイドロールやコンパクションロールへの巻き付きが防止される。
50℃における粘度を前記上限値以下にすることにより、本発明におけるトウプリプレグが硬くなり過ぎないため、ボビンにスムーズに巻き取ることができる。また、本発明におけるトウプリプレグのタック値が低くなり過ぎないため、自動積層装置での積層時に30~60℃程度の積層ヘッドで加熱された部分が適度な貼り付き性を有し、自動テーププレースメント装置での自動積層プロセスに好適に用いることができる。
<23℃におけるタック値>
トウプリプレグのタック値は、粘着力測定機を用いたプローブタック試験法により測定することができる。プローブタック試験法とは、一定の接地面積を持つ測定子(プランジャー)を一定の圧力で一定の時間押し付けた後、一定の速度で引き剥がすのに必要な力を測定する方法である。
トウプリプレグのタック値は平均最大ストレス値で表すことができる。なおストレス値とは、プランジャーと試料の接触面に生じる引張応力を意味し、平均最大ストレス値とは、以下に述べる条件で行うプローブタック試験により得られる値である。
(プローブタック試験条件)
プランジャーの試料との接触面積:3.1cm
プランジャー押付時間:10秒
プランジャー押付圧力:90kPa
プランジャー上昇速度:1mm/秒
試料台温度:23℃
手順:
1)トウプリプレグを試料台にプランジャーとの接地面積以上になるように並べ、測定中にはがれないように固定する。
2)プランジャーを、トウプリプレグに90kPaの下方向の圧力をかけ10秒間押し当てる。
3)プランジャーを1mm/秒で上昇させる。
4)プランジャーを上昇させる間のストレス値の最大値を最大ストレス値とし、合計3回測定して、得られた最大ストレス値の平均値を平均最大ストレス値とする。
本発明に係るトウプリプレグの23℃におけるタック値は、プランジャー押付圧力90kPaで測定した場合に、5~40kPaであり、好ましくは5~30kPaであり、さらに好ましくは5~25kPaである。前記下限値以上とすることで、ボビンへの巻き取りが容易にできる。また、前記上限値以下とすることで、ボビン巻きからの高速解舒が可能になり、また、ガイドロール等への巻き付きを防止できる。
<45℃におけるタック値>
45℃におけるタック値は、試料台温度を45℃、プランジャー押付圧力を150kPaとする以外は23℃におけるタック値と同様の測定方法で測定する。
本発明に係るトウプリプレグの45℃におけるタック値は、プランジャー押付圧力150kPaで測定した場合に、25~100kPaであり、30~80kPaとすることが好ましい。前記下限値以上とすることで、積層部での粘着性を高めることができる。前記上限値以下とすることで、積層部のコンパクションロールに巻き付くことを防ぐことができる。
ここで「積層部」とは、トウプリプレグにおける、オートテーププレースメント装置の積層ヘッドによって成形治具や他のトウプリプレグに押し付けられる部分を意味する。
本発明に係るトウプリプレグの23℃、プランジャー押付圧力90kPaで測定したタック値よりも、45℃、プランジャー押付圧力150kPaで測定したタック値の方が大きい方が好ましく、その差が、5~70kPa以下であることが好ましく、10kPa~70kPaであることがより好ましく、15kPa~70kPaであることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることで、自動積層装置のヘッド部分でトウプリプレグを加熱する際に、効果的に粘着性を付与することができ、積層が容易になる。また、前記上限値以下とすることで、積層時のリプレイス性を付与することができる。
<23℃におけるドレープ値>
23℃におけるドレープ値は以下の方法により得られる値である。
まず長さ250mmに切り取ったトウプリプレグを水平な試験台の上面に置き、トウプリプレグの先端から200mmの部分を空中に突き出す。残りの50mmの部分にはアルミプレートを載せた上に100g程度の重りを載せ、測定中動かないように固定する。水平になるようにトウプリプレグを保持した後、保持を外して垂下させてから30秒後に、試験台と垂下したトウプリプレグとでなす角度をドレープ値θ(°)とする。試験台と垂下したトウプリプレグとでなす角度とは、試験台上面の水平線を線1、試験台の先端点と「試験台の先端を中心とする半径90mmの円とトウプレグが交わる点」とを結んだ線を線2とした際に、線1と線2がなす角度のことをいうものとする。測定時の温度は23℃である。
本発明のトウプリプレグの23℃におけるドレープ値は、10°~40°であり、好ましくは20°~35°である。10°以上とすることにより、トウプリプレグをボビンに巻き取る際にスムーズに巻き取ることができる。40°以下とすることにより積層ヘッド部へスムーズにトウプリプレグを供給することができる。
<トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の硬化完了時間>
本発明に用いるトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物は、キュラストメーターで測定した際の140℃における硬化完了時間が、2.0~20.0分であることが好ましく、2.0~10.0分であることがより好ましく、2.0~8.0分であることがさらに好ましく、2.0~5.0分であることが特に好ましい。
上記範囲の硬化完了時間は、エポキシ樹脂の硬化剤、硬化助剤の種類及び添加量、エポキシ樹脂の種類、及び紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤とエポキシ樹脂の硬化剤の添加量の比を適宜調整することにより達成可能である。
<評価および評価方法>
キュラストメーターによる測定は、ゴム加硫試験の工業規格JIS K6300に基づいて試験を行う。この時、振動数は100cpm、振幅角度は±1/4°、ダイス形状はWP-100とする。
キュラストメーターのトルク-時間曲線は、測定されたトルクを縦軸とし、横軸を時間として得られる曲線である。通常、樹脂の硬化反応が進むに従いトルクは上昇し、硬化反応が終わりに近づくとトルクは飽和を迎える。
本発明における硬化完了時間は、トルク-時間曲線の接線の傾きが最大値となった後、その傾きが最大値の1/20となる時間とする。
キュラストメーターで測定した際の140℃における硬化完了時間が、前記上限値以下であれば、本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、硬化性に優れているため、プレス成形におけるプレス型の占有時間を短くすることができ、成形サイクルを早く回すことができる。また、キュラストメーターで測定した際の140℃における硬化完了時間が、前記下限値以上であれば、樹脂がフローする時間があるため成形体に樹脂を十分に行き渡らせることができる。
<トウプリプレグの製造方法>
本発明のトウプリプレグは、前記強化繊維束に、成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):エポキシ樹脂硬化剤、成分(C):ラジカル重合性不飽和化合物、及び成分(D):紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤、を含むトウプリプレグ含浸用樹脂組成物を含浸させて、トウプリプレグ前駆体を作製し、前記トウプリプレグ前駆体の少なくとも片面に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線からなる群より選択される少なくとも1種のエネルギー線を照射することにより、前記成分(C)の一部を反応させ、成分(C’):前記成分(C)ラジカル重合性不飽和化合物がラジカル重合してなる重合体、を生成させることにより得られる。
ここで、前記成分(C’)は、トウプリプレグの表層部に局在することが好ましい。トウプリプレグの表層部とは、トウプリプレグの表面の任意の点から、トウプリプレグの厚み方向に進み、最初に到達する強化繊維の表面までのマトリックス樹脂組成物によって充填された空間をいう。局在するとは、指定した部位に90%以上の成分が存在することをいう。
成分(C’)がトウプリプレグ表層部に局在すると、トウプリプレグ表面のマトリックス樹脂組成物の粘度が高く、内部のマトリックス樹脂組成物の粘度が低くなるので、トウプリプレグのドレープ性を保ちつつトウプリプレグ表面のタック性を制御することができる。
<トウプリプレグ前駆体の製造方法>
前記トウプリプレグ前駆体は、トウプリプレグ含浸用マトリックス組成物を強化繊維束に含浸させることにより作製することができる。
強化繊維束へのトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の供給方法としては、強化繊維束(トウ)をレジンバス内に通過させてトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物を含浸させた後、オリフィス、ロール等によって余剰のトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物を搾り取り樹脂含有量を調整する「レジンバス法」;回転ロール上にトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物層を形成し、これをトウに転写するような転写ロール式の含浸法(例えばドクターブレードを持つ回転ドラムによる含浸法)である「回転ロール法」;紙上に熱硬化性樹脂層を形成し、トウに転写する「紙上転写法」;特開平09-176346号公報、特開2005-335296号公報、特開2006-063173号公報等に記載された「ノズル滴下法」などが挙げられる。これらの中でも、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の供給量の制御や実施の容易さの点で、回転ロール法が好ましい。
トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物は強化繊維束に均一に含浸されていることが好ましい。均一に含浸されていることにより、表面に熱硬化性樹脂組成物が偏在することで表面のタック値が不均一になり、自動積層装置のガイドロールやコンパクションロールに巻き付くことを防止できるとともに、作製した繊維強化複合材料中のボイドを低減させることができ、機械的特性が向上する。
<紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射>
紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射は、トウプリプレグ前駆体の少なくとも片面に、前記エネルギー線を照射し、トウプリプレグ前駆体の表層部に存在する成分(D):紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤、からラジカルを発生させることにより、トウプリプレグ前駆体の深部に存在する成分(C):ラジカル重合性不飽和化合物を重合させることなく、表層部でのみ前記成分(C)を重合させて、トウプリプレグを得る工程である。
トウプリプレグ前駆体の両面に前記エネルギー線を照射してトウプリプレグを得れば、バッキングフィルム無しでボビンに巻き取れるため、好ましい。
ここで、トウプリプレグ前駆体の深部とは、プリプレグ前駆体の厚さ100%に対し、トウプリプレグ前駆体の表面からの厚みの40%よりも深い部分をいう。
また、トウプリプレグ前駆体の表層部とは、トウプリプレグ前駆体の、表面の任意の点から、トウプリプレグ前駆体の厚み方向に進み、最初に到達する強化繊維の表面までの、トウプリプレグ含浸用樹脂組成物によって充填された空間をいう。
エネルギー線の照射線量、ラジカル重合開始剤のエネルギー線への反応性、ラジカル重合性不飽和化合物の反応性、トウプリプレグ前駆体のエネルギー線吸収係数等が総合的に作用して、エネルギー線照射後のトウプリプレグ表層部並びにトウプリプレグ深部におけるラジカル重合性不飽和化合物の反応率が決まるので、エネルギー線の照射条件はこれらを考慮して適宜決定する。
エネルギー線の吸収はランバート・ベールの法則に従う。即ちIoを入射する前のエネルギー線強度、Iを厚さdの試料を透過したエネルギー線強度、αを吸収係数とすると、以下の関係が成り立つ。
Log(Io/I)=α・d
従って、この関係において、特定の深さ、即ちトウプリプレグ前駆体の厚さ100%に対し、トウプリプレグ前駆体の、保護フィルムに接した表面から厚み40%の深さにおいてIが実質的にゼロ、即ち、成分(C)ラジカル重合性不飽和化合物の重合反応が実質的に開始されない条件でエネルギー線を照射することにより、トウプリプレグ前駆体の深部に存在する成分(C)ラジカル重合性不飽和化合物を重合させることなく、トウプリプレグ前駆体の表層部にのみ、マトリックス樹脂組成物中に前記成分(C’)が含まれたトウプリプレグを得ることができる。
なお、炭素繊維及び黒鉛繊維は、紫外線、赤外線及び可視光線を透過させないので、これらの光線を、炭素繊維又は黒鉛繊維を強化繊維とするトウプリプレグ前駆体に対して用いることにより、トウプリプレグ前駆体の表層部のみで、前記成分(C)を重合させる条件が容易に実現されるため、好ましい。
但し、可視光線はトウプリプレグ製造工程の作業と監視のために必要であるため、望ましい段階のみに照射して照射線量を厳密に制御するためには技術的な困難が伴う。
また、赤外線に反応する前記成分(D)は、温度によっても反応するため、トウプリプレグ前駆体の深さ方向におけるラジカル重合反応の制御のためには、赤外線照射時の熱除去を必要とする。従って、エネルギー線としては、紫外線が最も好適に用いられる。
<自動積層装置>
トウプリプレグを自動積層する自動積層装置(自動テーププレースメント装置)としては、公知の装置を用いることができる。自動積層装置としては、特開平4-62142号公報に示されるように、供給装置から引き出されたトウプリプレグを積層ロールに巻きかけ、型に押圧しつつ、型に沿って積層ロールを転動させることによって積層する構成を有することが好ましい。さらに、積層後の剥がれが生じないように、積層部において加熱を行える機能を有していることが好ましい。
本発明のトウプリプレグは、自動積層装置に好適に用いることができる。換言すれば、トウプリプレグを加熱し粘着性を持たせて積層する、自動積層成形方法も本発明の一態様である。本明細書において「自動積層成形方法」とは、自動積層装置を用いる成形方法をいう。また、トウプリプレグを積層したプリプレグシート(積層体)も本発明の一態様である。本発明の一態様に係るプリプレグシートは、例えば、自動積層装置を用いて、トウプリプレグを自動積層成形方法による成形を行なうことで好適に製造することができる。
<繊維強化複合材料の製造>
本発明の繊維強化複合材料は、上述した本発明のトウプリプレグの積層体を金型内でプレス成形することにより得られる。
プレス成形に用いられる金型に特に制限は無く、本発明のトウプリプレグを高温高圧下で硬化させることのできる金型であればよく、金型を閉じた時に該金型の内部を気密に保つことのできる構造を有する金型を用いることが好ましい。ここで、気密とは、金型を満たすのに十分な量の成形材料を金型内に入れ、加圧した際にも、成形材料を構成するマトリックス樹脂組成物が金型から実質的に漏れ出さないことをいう。
内部を気密に保つ金型としては、金型を締めた時に上型・下型(雄型・雌型)が接触する部分にシアエッジ構造やゴムシール構造を採用した金型が挙げられる。また、金型の内部を気密に保つものであれば公知のいかなる構造を採用した金型であってもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特に断りが無い限り、材料(原料)の配合比率は全て質量部で表すものとする。
実施例で用いた樹脂原料を以下に示す。
<成分(A)エポキシ樹脂>
jER828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「jER828」)
TSR-400:オキサゾリドン環骨格を有するエポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名「エピクロン TSR-400」)
N-740:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名「エピクロン N-740」)
<成分(B)エポキシ樹脂硬化剤>
DICY7:ジシアンジアミド(三菱ケミカル(株)製、商品名「jERキュアDICY7」)
2MZA-PW:2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(四国化成工業(株)製、商品名「2MZA-PW」)
<成分(C)ラジカル重合性不飽和化合物>
DPE-6A:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名「ライトエステルDPE-6A」)
<成分(D)紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤>
IRGACURE 184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、商品名「IRGACURE 184」)
<成分(E)熱によりラジカルを発生する重合開始剤>
パーヘキシルD:ジ-t-ヘキシルパーオキサイド(日油(株)製)、製品名「パーヘキシルD」)
[実施例1]
(トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の調製)
jER828とDICY7を質量比1:1で混合し、三本ロールミルを用いて均一に分散させてペースト状のマスターバッチを得た。同様に、jER828と2MZA-PWを質量比1:1で混合し、三本ロールを用いて均一に分散させてペースト状のマスターバッチを得た。
jER828とIrgacure184を質量比2:1で混合し、Irgacure184が完全に溶解するまで撹拌し、透明なマスターバッチを得た。
表1に示す比率となるように、TSR-400と、N-740と、マスターバッチに用いた量を除いたjER828をフラスコに秤量し、120℃にて均一に溶解した。得られた溶解物を60℃程度まで降温させ、上述のマスターバッチ、DPE-6A、パーヘキシルDを加え、均一になるまで撹拌し、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物1を得た。
(トウプリプレグの作製)
強化繊維束として、フィラメント数50,000本の三菱ケミカル株式会社製のTRW40 50L(引張強度4,120MPa、引張弾性率240GPa)を用いてトウプリプレグを作製した。
具体的には、クリールから強化繊維束を送り出し、表面温度が110℃程度に加温された開繊バーを通し、幅20から25mmに拡幅させた。拡幅された強化繊維束を、60℃程度に加温されたトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物1が塗布されたタッチロールに接触させ、強化繊維束にトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物1を付着させた。トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物1が付着した強化繊維束を、80℃程度に加温された含浸ロールを通過させることにより、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物1を強化繊維束内部まで含浸させた後、溝のついたロールを通すことによりトウ幅を12mm程度に調整してトウプリプレグ前駆体を得てから、トウプリプレグ前駆体をアイグラフィック株式会社製のメタルハライドランプを用いて照度270mW/cm、照射量1000mJ/cmでUVを両面照射し、ワインダーにて紙管に巻き取り、トウプリプレグを作製した。なお、ドクターブレードとタッチロール間のクリアランスを調整することによって、強化繊維束に対するトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物1の付着量(即ちトウプリプレグの樹脂含有率)を37.8質量%に調整した。
[実施例2~8、比較例1~2]
(トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の調製)
各成分の組成及び含有量を表1、2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物2~10を得た。トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物2~8はそれぞれ実施例2~8に、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物9~10はそれぞれ比較例1~2に対応する。
(トウプリプレグの作製)
熱硬化性樹脂組成物2~10を用いた以外は実施例1と同様にして、トウプリプレグを作製した。
<トウプリプレグ含浸用樹脂組成物特性の評価>
(粘度測定)
各実施例及び比較例で調製したトウプリプレグ含浸用樹脂組成物につき、以下の通り昇温粘度測定を行った。得られた測定結果において30℃、50℃における粘度を読み取った。結果を表1、2に示す。
装置:AR-G2(ティー・エー・インスツルメント社製)
測定モード:ねじりモード
使用プレート:直径25mmのパラレルプレート
プレートギャップ:0.5mm
測定周波数:10rad/sec
昇温速度:2℃/min
ストレス:300Pa
<トウプリプレグ特性の評価>
23℃タック値、45℃タック値、23℃ドレープ値はそれぞれ以下の方法で測定した。結果を表1、2に示す。
〔23℃におけるタック値〕
トウプリプレグのタック値は、粘着力測定機を用いたプローブタック試験法により測定することができる。プローブタック試験法とは、一定の接地面積を持つ測定子(プランジャー)を一定の圧力で一定の時間押し付けた後、一定の速度で引き剥がすのに必要な力を測定する方法である。
トウプリプレグのタック値は平均最大ストレス値で表すことができる。なおストレス値とは、プランジャーと試料の接触面に生じる引張応力を意味し、平均最大ストレス値とは、以下に述べる条件で行うプローブタック試験により得られる値である。
(プローブタック試験条件)
プランジャーの試料との接触面積:3.1cm
プランジャー押付時間:10秒
プランジャー押付圧力:90kPa
プランジャー上昇速度:1mm/秒
試料台温度:23℃
手順:
1)トウプリプレグを試料台にプランジャーとの接地面積以上になるように並べ、測定中にはがれないように固定する。
2)プランジャーを、トウプリプレグに90kPaの下方向の圧力をかけ10秒間押し当てる。
3)プランジャーを1mm/秒で上昇させる。
4)プランジャーを上昇させる間のストレス値の最大値を最大ストレス値とし、合計3回測定して、得られた最大ストレス値の平均値を平均最大ストレス値とする。
〔45℃におけるタック値〕
45℃におけるタック値は、試料台温度を45℃、プランジャー押付圧力を150kPaとする以外は23℃におけるタック値と同様の測定方法で測定する。
〔23℃におけるドレープ値〕
23℃におけるドレープ値は以下の方法により得られる値である。
まず長さ250mmに切り取ったトウプリプレグを水平な試験台の上面に置き、トウプリプレグの先端から200mmの部分を空中に突き出す。残りの50mmの部分にはアルミプレートを載せた上に100g程度の重りを載せ、測定中動かないように固定する。水平になるようにトウプリプレグを保持した後、保持を外して垂下させてから30秒後に、試験台と垂下したトウプリプレグとでなす角度をドレープ値θ(°)とする。試験台と垂下したトウプリプレグとでなす角度とは、試験台上面の水平線を線1、試験台の先端点と「試験台の先端を中心とする半径90mmの円とトウプリプレグが交わる点」とを結んだ線を線2とした際に、線1と線2がなす角度のことをいうものとする。測定時の温度は23℃である。

Figure 2022191471000002

Figure 2022191471000003



表1~2に示すように、23℃で固形のエポキシ樹脂と23℃で液状のエポキシ樹脂の質量比が50:50~75:25であり、かつ、UV増粘倍率が200~5000倍である実施例1~8は、23℃のタック値が低く、かつ、45℃のタック値が高かった。一方、UV増粘倍率が200倍未満である比較例1~2は、23℃でのタック値が高かった。

Claims (16)

  1. 下記の成分(A)、(B)、(C)、(C’)、(D)を含むマトリックス樹脂組成物が強化繊維束に含浸されたトウプリプレグであって、
    前記成分(A)が23℃で固形のエポキシ樹脂と23℃で液状のエポキシ樹脂を含み、
    前記23℃で固形のエポキシ樹脂と前記23℃で液状のエポキシ樹脂の質量比が50:50~75:25であり、
    以下の方法で測定されるUV増粘倍率が200~5000倍である
    トウプリプレグ。
    成分(A):エポキシ樹脂
    成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
    成分(C):ラジカル重合性不飽和化合物
    成分(C’):前記成分(C)がラジカル重合してなる重合体
    成分(D):紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤
    [UV増粘倍率の測定方法]
    前記成分(A)、(B)、(C)、(D)を含むトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の50℃における粘度をη、前記トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物に下記条件でUV照射した後の50℃における粘度をηとし、ηに対するηの倍率をUV増粘倍率とする。
    UV照射条件:厚さ120μmのトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物に対して、メタルハライドランプを用いて照度270mW/cm、照射量1000mJ/cmでUVを照射する。
  2. 23℃、プランジャー押付圧力90kPaで測定したタック値が5~40kPaであり、45℃、プランジャー押付圧力150kPaで測定したタック値が25~100kPaであり、且つ
    23℃におけるドレープ性値が10~40°である
    請求項1に記載のトウプリプレグ。
  3. 前記トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の、
    キュラストメーターで測定した際の硬化完了時間が140℃で2.0~20.0分である、
    請求項1または2に記載のプリプレグテープ。
  4. 前記成分(C’)が表層付近に局在する
    請求項1から3のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  5. 成分(D)が成分(D1):紫外線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤である
    請求項1から4のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  6. さらに成分(E):熱によりラジカルを発生する重合開始剤を含む
    請求項1から5のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  7. 前記成分(C)が、4官能以上のラジカル重合性不飽和化合物である、
    請求項1から6のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  8. 前記成分(A):エポキシ樹脂が、分子内に3個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂を含有する
    請求項1から7のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  9. 前記成分(B):エポキシ樹脂硬化剤が、
    ジシアンジアミド及びイミダゾール誘導体を含む、
    請求項1から8のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  10. 前記マトリックス樹脂組成物の前記成分(A)と前記成分(C)の合計100質量部に対し、
    前記成分(B)の含有量が3質量部以上15質量部以下であり、
    前記成分(C)の含有量が6質量部以上15質量部以下であり、
    前記成分(D)の含有量が1質量部以上3質量部以下である、
    請求項1から9のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  11. 前記トウプリプレグの質量に対する前記マトリックス樹脂組成物の含有率が20~45質量%である、
    請求項1から10のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  12. 以下の工程(1)~(3)を含むトウプリプレグの製造方法。
    (1)トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の調製工程;下記の成分(A)、(B)、(C)、(D)を混合させて、トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物を得る工程であって、前記成分(A)が23℃で固形のエポキシ樹脂と23℃で液状のエポキシ樹脂を含み、前記23℃で固形のエポキシ樹脂と前記23℃で液状のエポキシ樹脂の質量比が50:50~75:25であり、以下の方法で測定されるUV増粘倍率が200~5000倍である。
    成分(A):エポキシ樹脂
    成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
    成分(C):ラジカル重合性不飽和化合物
    成分(D):紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤
    成分(C’):前記成分(C)がラジカル重合してなる重合体
    [UV増粘倍率の測定方法]
    前記成分(A)、(B)、(C)、(D)を含むトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の粘度をη、前記トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物に下記条件でUV照射した後の粘度をηとし、ηに対するηの倍率をUV増粘倍率とする。
    UV照射条件:厚さ120μmのトウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物に対して、メタルハライドランプを用いて照度270mW/cm、照射量1000mJ/cmでUVを照射する。
    (2)トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物含浸工程;強化繊維束に、前記マトリックス樹脂組成物を含浸させてトウプリプレグ前駆体を得る。
    (3)紫外線、赤外線、可視光線および電子線からなる群から選択されるいずれかのエネルギー線照射工程;前記トウプリプレグ前駆体の中央部に存在する前記重合開始剤からラジカルを発生させることなく、表層部に存在する前記重合開始剤にラジカルを発生させて、前記トウプリプレグ含浸用マトリックス樹脂組成物の粘度が中央部と比して表層部で増加されたトウプリプレグを得る。
  13. 請求項1から11のいずれか一項に記載のトウプリプレグを加熱し粘着性をもたせて積層する、自動積層成形方法。
  14. 請求項1から11のいずれか一項に記載のトウプリプレグを積層した積層体。
  15. 請求項1から11のいずれか一項に記載のトウプリプレグを積層したものを、金型内にて加熱加圧することにより硬化する繊維強化複合材料の製造方法。
  16. 請求項1から11のいずれか一項に記載のトウプリプレグを硬化した複合材料成形品。
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