JP2022154797A - 誘電体素子および電子回路基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】電極が卑金属で構成され、誘電体膜が還元雰囲気下で熱処理される場合であっても、リーク電流を比較的に低減しつつ、比較的に高い比誘電率を有する誘電体膜を備える誘電体素子、および、当該誘電体素子を搭載する電子回路基板を提供すること。【解決手段】卑金属から構成される第1の電極と、誘電体膜と、第2の電極と、を有する誘電体素子であって、誘電体膜は、化学式ABO3で表される複合酸化物を主成分として有する第1の誘電体膜と、化学式A’B’O3で表される複合酸化物を主成分として有する第2の誘電体膜と、が直接的に接している積層構造を有し、化学式中、Aはバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、Bはチタンであり、A’は、バリウム、ストロンチウムおよびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、B’はジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つである誘電体素子である。【選択図】図2A

Description

本発明は、誘電体素子および電子回路基板に関する。特に、薄膜状の誘電体膜を備える薄膜キャパシタ等の誘電体素子に関する。
近年の携帯電話やコンピュータに代表される電子機器は、さらなる高機能化、省電力化への要求が顕著となっており、それに伴って論理回路を構成するIC(集積回路)の動作周波数の高周波化や動作電圧の低減が求められている。
このICは動作時にインピーダンスの変動を伴うため、さまざまな論理演算を行う際、電源ラインに対して高周波ノイズが発生する。この高周波ノイズは回路内に存在する他のICの電源電圧に対するノイズとなって動作を不安定にさせるため、これを抑制するためにデカップリング回路と呼ばれるノイズ遮断のための回路を各ICに接続する。
デカップリング回路用のキャパシタとしては、ICとキャパシタとを接続する配線のインダクタンスを小さくするため、IC近傍の基板の内部に埋め込み可能な小型かつ低背なキャパシタが求められている。このようなキャパシタとして、誘電体素子の一例である薄膜キャパシタが知られている。
特許文献1には、バルク誘電体層と電極との間に中間誘電体層が挟まれた構造を有する誘電体積層薄膜が記載されている。このような誘電体積層薄膜によれば、電極と誘電体との界面に形成されるショットキー障壁を高くして、リーク電流を低減できることが記載されている。
また、特許文献2には、ペロブスカイト型の複合酸化物と、マンガンと、バナジウム、ニオブおよびタンタルから選ばれる少なくとも1つの元素Mと、を含み、これらの含有量を所定の範囲内である薄膜コンデンサが記載されている。このような薄膜コンデンサによれば、絶縁抵抗値が増加し、信頼性を向上できることが記載されている。
特開2003-45987号公報 特開2010-267953号公報
近年、薄膜キャパシタのコストを低減するために、電極を卑金属で構成することが行われている。一方、薄膜キャパシタの容量密度を高めるために、成膜法により形成された誘電体膜を高温で熱処理して、誘電体膜を構成する誘電体材料の結晶性を高めることが行われている。
しかしながら、電極を卑金属で構成する場合、大気などの高酸素分圧下の高温で熱処理すると、電極が酸化されてしまう。そのため、卑金属の酸化を防ぐために、高温での熱処理を還元雰囲気下で行う必要がある。
ところが、還元雰囲気下で熱処理を行うと、逆に、誘電体膜を構成する誘電体材料の一部が還元されてしまい、絶縁抵抗が低下する。その結果、誘電体膜が導通しやすくなり、リーク電流が増加する。また、薄膜キャパシタを基板に搭載して樹脂により埋め込む場合、この埋め込み処理時の雰囲気に含まれる水素に起因するプロトンが誘電体膜に固溶することがある。このようなプロトンが固溶すると、キャリアが誘電体中を移動しやすくなり、さらにリーク電流を増加させてしまう。
特許文献1および2では、電極を卑金属で構成することは想定されておらず、還元雰囲気下での熱処理に起因する薄膜キャパシタの誘電特性の低下については何ら考慮されていないという問題があった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、電極が卑金属で構成され、誘電体膜が還元雰囲気下で熱処理される場合であっても、リーク電流を比較的に低減しつつ、比較的に高い比誘電率を有する誘電体膜を備える誘電体素子、および、当該誘電体素子を搭載する電子回路基板を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の態様は以下の通りである。
[1]卑金属から構成される第1の電極と、誘電体膜と、第2の電極と、を有する誘電体素子であって、
誘電体膜は、化学式ABOで表される複合酸化物を主成分として有する第1の誘電体膜と、化学式A’B’Oで表される複合酸化物を主成分として有する第2の誘電体膜と、が直接的に接している積層構造を有し、
化学式中、Aはバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、Bはチタンであり、A’は、バリウム、ストロンチウムおよびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、B’はジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つである誘電体素子である。
[2]第2の誘電体膜の厚さをt2とし、第1の誘電体膜および第2の誘電体膜の合計厚さをTとした時、t2/Tが10%以上50%以下である[1]に記載の誘電体素子である。
[3]t2/Tが10%以上30%以下である時に、第1の誘電体膜が第1の電極および第2の電極の両方に直接的に接している、または、第2の誘電体膜が第1の電極および第2の電極の両方に直接的に接している[2]に記載の誘電体素子である。
[4]第1の誘電体膜は、副成分として、化学式ABOで表される複合酸化物100モルに対して、イットリウムおよびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを0モル超0.3モル以下、マンガンを0モル超0.3モル以下、バナジウムを0モル超0.3モル以下含む[1]から[3]のいずれかに記載の誘電体素子である。
[5]積層構造において、化学式ABOで表される複合酸化物のX線回折測定における当該複合酸化物の(110)面の回折ピークのうち最強ピークの回折角2θが、当該複合酸化物のリファレンスをX線回折測定した場合に、当該リファレンスの(110)面の回折ピークのうち最強ピークの回折角2θよりも0.5°以上大きい[1]から[4]のいずれかに記載の誘電体素子である。
[6] [1]から[5]のいずれかに記載の誘電体素子が搭載されている電子回路基板である。
本発明によれば、電極が卑金属で構成され、誘電体膜が還元雰囲気下で熱処理される場合であっても、リーク電流を低減しつつ、比較的に高い比誘電率を有する誘電体膜を備える誘電体素子、および、当該誘電体素子を搭載する電子回路基板を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る誘電体素子としての薄膜キャパシタの断面模式図である。 図2Aは、誘電体膜の積層構造を説明するための薄膜キャパシタの断面模式図である。 図2Bは、誘電体膜の積層構造を説明するための薄膜キャパシタの断面模式図である。 図2Cは、誘電体膜の積層構造を説明するための薄膜キャパシタの断面模式図である。 図2Dは、誘電体膜の積層構造を説明するための薄膜キャパシタの断面模式図である。 図3Aは、薄膜キャパシタが搭載された電子回路基板の断面模式図である。 図3Bは、図3A中の90Aの拡大図である。
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、図面を用いて以下の順序で詳細に説明する。
1.薄膜キャパシタ
1.1 薄膜キャパシタの全体構成
1.2 誘電体膜
1.3 第1の電極
1.4 第2の電極
2.薄膜キャパシタの製造方法
3.電子回路基板
4.変形例
(1.薄膜キャパシタ)
まず、本実施形態に係る誘電体素子の一例として、薄膜状の誘電体膜を有する薄膜キャパシタについて説明する。
(1.1 薄膜キャパシタの全体構成)
図1に示すように、本実施形態に係る誘電体素子の一例としての薄膜キャパシタ1は、第1の電極10と、誘電体膜30と、第2の電極20とがこの順序で積層された構成を有している。誘電体膜30は、第1の誘電体膜および第2の誘電体膜を含む。
第1の電極10および第2の電極20が外部回路に接続されて電圧が印加されると、誘電体膜30が所定の静電容量を示し、キャパシタとしての機能を発揮することができる。各構成要素についての詳細な説明は後述する。なお、第1の電極と第2の電極とが異なる材質である場合には、薄膜キャパシタの上下方向を区別するために、一方の電極を上部電極、他方の電極を下部電極としてもよい。
なお、薄膜キャパシタの形状に特に制限はないが、通常、直方体形状とされる。またその寸法にも特に制限はなく、厚みおよび長さは用途に応じて適当な寸法とすればよい。
誘電体膜30の厚さは特に限定されず、所望の特性、用途等に応じて任意に設定することができる。本実施形態では、誘電体膜30の厚さは、好ましくは30nm~1000nm、より好ましくは30nm~600nmである。なお、誘電体膜30が、第1の誘電体膜および第2の誘電体膜から構成される場合には、誘電体膜30の厚さは、第1の誘電体膜および第2の誘電体膜の合計厚さに一致する。
なお、誘電体膜30の厚みは、誘電体膜30を含む薄膜キャパシタを、FIB(集束イオンビーム)加工装置で加工し、得られた断面を走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等で観察して測定することができる。
また、本実施形態では、誘電体膜30を構成する第1の誘電体膜および第2の誘電体膜は、公知の成膜法により形成された薄膜である。このような薄膜は、通常、基板上に原子が堆積して形成されるので、誘電体膜は、誘電体堆積膜であることが好ましい。したがって、本実施形態に係る誘電体膜は、誘電体の原料粉末を成形した成形体を焼成して得られる(固相反応により得られる)焼結体は含まない。なお、本実施形態では、誘電体膜30は結晶質である。
本実施形態では、第1の電極は卑金属から構成されている。卑金属は、貴金属よりも安価であり、電極を卑金属で構成することにより、薄膜キャパシタのコストを低減できる。
薄膜キャパシタにおいては、公知の成膜法により、誘電体膜を構成する誘電体材料が第1の電極上に形成される。公知の成膜法により形成された誘電体膜は、結晶性が低いことが多く、その結果、当該誘電体膜が示す比誘電率が低くなる傾向にある。誘電体膜の比誘電率が低い場合、低背な薄膜キャパシタの容量密度を高めることが困難となる。
そこで、誘電体膜の比誘電率を高くするために、成膜後の誘電体膜を高温で熱処理し、誘電体膜の結晶化を促進して、結晶性を高めることが行われる。このような高温での熱処理では、卑金属が酸化しやすいため、卑金属の酸化を防ぐために、還元雰囲気下で熱処理が行われる。
しかしながら、還元雰囲気下での熱処理では、逆に、誘電体膜を構成する誘電体材料の一部が還元され、誘電体膜の絶縁抵抗が低下する。その結果、誘電体膜が導通しやすくなり、リーク電流が高くなる。
本実施形態では、第1の電極が卑金属から構成され、還元雰囲気下で熱処理を行っても、リーク電流を比較的に低く維持しつつ、薄膜キャパシタの容量密度を高めるために、比較的に比誘電率が高いが、比較的に還元されやすい第1の誘電体膜と、比較的に比誘電率が低いが、比較的に還元されにくい第2の誘電体膜とが界面を介して接している積層構造を形成している。このような積層構造を有する薄膜キャパシタであれば、リーク電流を比較的に低く維持しつつ、耐還元性を有する誘電体材料のみを用いた薄膜キャパシタよりも高い比誘電率を得ることができる。
上記の第1の誘電体膜は、化学式ABOで表される複合酸化物を主成分として有している。本実施形態では、第1の誘電体膜の全体(100mol%)中、主成分が80mol%以上100mol%以下含まれていることが好ましい。
上記の化学式中、「A」は、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)およびカルシウム(Ca)からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、「B」はチタン(Ti)である。このような複合酸化物は、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、たとえば、組成式BaSrCa1-x-yTiO(0≦x≦1、0≦y≦1)で表すことができる。「A」は、バリウムを少なくとも含むことが好ましく、バリウムであることがより好ましい。
また、上記の第2の誘電体膜は、化学式A’B’Oで表される複合酸化物を主成分として有している。本実施形態では、第2の誘電体膜の全体(100mol%)中、主成分が80mol%以上100mol%以下含まれていることが好ましい。
上記の化学式中、「A’」は、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)およびカルシウム(Ca)からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、「B’」はジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)からなる群から選ばれる少なくとも1つである。このような複合酸化物は、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、たとえば、組成式BaSrCa1-s-tZrHf1-m(0≦s≦1、0≦t≦1、0≦m≦1)で表すことができる。「A’」は、バリウムを少なくとも含むことが好ましく、バリウムであることがより好ましい。「B’」は、ジルコニウムを少なくとも含むことが好ましく、ジルコニウムであることがより好ましい。
図2Aに示すように、誘電体膜30は、第1の誘電体膜31と第2の誘電体膜32とが積層された積層構造を有している。この積層構造においては、第1の誘電体膜31と第2の誘電体膜32とが直接的に接している。すなわち、第1の誘電体膜31と第2の誘電体膜32との間には界面が形成されている。
このような積層構造を有する誘電体膜を還元雰囲気下で熱処理すると、比較的に還元されやすい第1の誘電体膜に含まれる複合酸化物(ABO)から酸素が奪われ、酸素欠陥と自由電子とが生成する。一方、第1の誘電体膜と第2の誘電体膜とが直接的に接しているので、第2の誘電体膜に含まれる複合酸化物(A’B’O)から、ABO側に酸素が移動し、ABOに酸素を供給することができる。すなわち、ABOに生成した酸素欠陥の一部は、A’B’Oから供給された酸素により補償される。その結果、ABOの還元が緩和され、還元により生じるキャリアに起因するリーク電流が低減される。また、ABOは、A’B’Oよりも高い比誘電率を有しているので、リーク電流を低減しつつ、誘電体膜がA’B’Oから構成されている場合よりも高い比誘電率を得ることができる。
なお、第2の誘電体膜に含まれる複合酸化物(A’B’O)と、第1の誘電体膜に含まれる複合酸化物(ABO)とでは、結晶構造は同じであるものの、格子定数が異なっており、「A」、「B」、「A’」および「B’」が上述した元素である場合、A’B’Oの格子定数は、ABOの格子定数よりも大きい。このとき、A’B’OからABOに酸素が移動すると、ABOの格子が歪み収縮する。その結果、ABOの格子面間隔が小さくなるので、格子が収縮した後のABOについて、X線回折測定を行うと、所定の格子面の回折ピークの位置(回折角2θ)が高角度側にシフトする。
このような格子の収縮は、A’B’OからABOへの酸素が移動する場合に生じる。したがって、成膜されたABOが還元雰囲気下で熱処理されていない場合、成膜されたABOには、熱処理に伴うエネルギーが加えられていないので、成膜された格子からの収縮は生じない。なお、本実施形態に係る薄膜キャパシタにおいては、電極として機能するために、卑金属の導電性が十分に確保されている必要があるので、卑金属の酸化が生じる雰囲気は考慮しない。
そこで、格子の収縮が生じていない、すなわち、還元雰囲気下で熱処理されていない成膜直後のABOをリファレンスとすると、リファレンスのABOの所定の格子面の回折ピークの回折角2θの値(P)よりも、上記の積層構造を有する誘電体膜を還元雰囲気下で熱処理した後のABOの当該格子面の回折ピークの回折角2θの値(P)が大きくなる。
本実施形態では、ABOの(110)面の回折ピークのうち最強ピークについて、PおよびPを算出する。最強ピークは、回折角2θが30°~34°の範囲内にあるが、ABOの組成により変化する。
本実施形態に係る薄膜キャパシタのABOの(110)面の最強ピークの回折角2θの値(P)は、リファレンスのABOの(110)面の最強ピークの回折角2θの値(P)よりも、0.5°以上大きいことが好ましい。
PがPrよりも0.5°以上大きいことにより、A’B’OからABOへ酸素が移動して、ABOの還元が緩和され、上記の効果が得られたことが推察可能である。
また、第1の誘電体および第2の誘電体の合計厚さをTとし、第2の誘電体膜の厚さをt2とした時に、t2/Tが10%以上50%以下であることが好ましい。すなわち、第2の誘電体膜の厚さを、第1の誘電体膜の厚さ以下にすることにより、上記の効果を向上させることができる。
さらに、上記の誘電体膜を含む薄膜キャパシタは、電子回路基板に搭載され、樹脂内部に埋め込まれることがある。埋め込み処理では、通常、樹脂由来の水素を含む雰囲気に薄膜キャパシタが曝露され、雰囲気由来のプロトンが誘電体膜に固溶することがある。特に、プロトンが第1の誘電体膜に固溶すると、プロトンの移動またはプロトンを介するキャリアの移動が生じるため、リーク電流が増加してしまう。しかしながら、本実施形態に係る薄膜キャパシタでは、上記の積層構造を有しているので、プロトン等の移動を抑制でき、リーク電流をさらに低減することができる。
上記の効果は、図2Aに示す積層構造以外の積層構造でも得られる。図2Aでは、第1の電極10上に第1の誘電体膜31が形成されているが、第1の電極と第2の電極とが異なる材質である場合、図2Bに示すように、第1の電極10上に第2の誘電体膜32が形成され、第2の誘電体膜32上に第1の誘電体膜31が積層された積層構造であってもよい。
また、図2Cおよび図2Dに示すように、誘電体膜が3層構造を有し、一方の誘電体膜が他方の2つの誘電体膜に挟まれて形成される積層構造であってもよい。このような積層構造を有することにより、異なる極性を示す第1の電極および第2の電極には、同じ誘電体膜が接しているため、電圧(たとえば、バイアス電圧)の印加方向による薄膜キャパシタの特性変化が生じにくい。
第2の誘電体膜32が2つの第1の誘電体膜31に挟まれている積層構造(図2C)と、第1の誘電体膜31が2つの第2の誘電体膜32に挟まれている積層構造(図2D)と、は、重要視する特性に応じて選択すればよい。たとえば、電圧の印加方向による薄膜キャパシタの特性変化が生じにくいことを重要視する場合には、図2Dに示す積層構造が好ましい。なお、図2Dに示す積層構造においては、第2の誘電体膜32の厚さt2は、2つの第2の誘電体膜32の合計厚さである。
また、誘電体膜は、第1の誘電体膜と第2の誘電体膜とが直接的に接していれば、第1の誘電体膜および第2の誘電体膜の合計層数が4層以上の積層構造を有していてもよい。
第1の誘電体膜は、主成分(ABO)以外に副成分を有してもよい。副成分としては、ABO100モルに対して、イットリウム(Y)およびアルミニウム(Al)からなる群から選ばれる少なくとも1つを0モル超0.3モル以下含むことが好ましい。また、ABO100モルに対して、マンガン(Mn)を0モル超0.3モル以下含むことが好ましい。また、ABO100モルに対して、バナジウム(V)を0モル超0.3モル以下含むことが好ましい。さらに、ABO100モルに対して、イットリウムおよびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを0モル超0.3モル以下、マンガンを0モル超0.3モル以下、バナジウムを0モル超0.3モル以下含むことがより好ましい。第1の誘電体膜が、このような元素を含むことにより、上述した、樹脂に埋め込まれた後のプロトン等の移動を抑制することができる。その結果、リーク電流をさらに低減することができる。
また、第2の誘電体膜は、本発明の効果が得られる範囲内において、微量な不純物、副成分等を含んでいてもよい。
(1.4.第1の電極)
図1に示すように、第1の電極10は、後述する第2の電極20とともに誘電体膜30を挟み、キャパシタとして機能させるための電極である。第1の電極10を構成する材料は、上述したように、導電性を有する卑金属である。このような卑金属としては、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、および、これらから選ばれる少なくとも2つを含む合金が例示される。
本実施形態では、ニッケル、銅および鉄が好ましく、ニッケルがより好ましい。ニッケルの純度は高いほど好ましく、たとえば、99.99質量%以上であることがより好ましい。
本実施形態では、第1の電極10は基板を兼ねており、たとえば、金属箔のような金属板であることが好ましい。この場合、薄膜キャパシタをより薄層化できることに加えて、薄膜キャパシタを電子回路基板に実装することが容易となる。
第1の電極10の厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上70μm以下であることがより好ましい。第1の電極10の厚さが小さすぎる場合、薄膜キャパシタ1の製造時に第1の電極10をハンドリングし難くなる傾向がある。
(1.5.第2の電極)
図1に示すように、誘電体膜30の表面には、第2の電極20が上部電極として薄膜状に形成されている。第2の電極20は、上述した第1の電極10とともに、誘電体膜30を挟み、キャパシタとして機能させるための電極である。したがって、第2の電極20は、第1の電極10とは異なる極性を示す。
第2の電極20を構成する材料は、誘電体膜の還元雰囲気下での熱処理後に第2の電極が形成される場合には、導電性を有する材料であれば特に制限されない。たとえば、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の金属、または、これらの合金;シリコン(Si)、GaAs、GaP、InP、SiC等の半導体;ITO、ZnO、SnO等の導電性金属酸化物が例示される。
第2の電極が形成された後に、誘電体膜が還元雰囲気下で熱処理される場合には、第2の電極を構成する材料は、第1の電極と同様に、上記の卑金属であることが好ましい。
第2の電極20の厚さは、第1の電極10と同様に、電極として機能する程度の厚みであれば特に制限されない。本実施形態では、厚みは0.01μm以上であることが好ましい。
(2.薄膜キャパシタの製造方法)
次に、図2Aに示す薄膜キャパシタ1の製造方法の一例について以下に説明する。
まず、第1の電極10を準備する。本実施形態では、第1の電極10として、卑金属箔を準備する。卑金属箔は下部電極であり基板を兼ねている。
続いて、誘電体膜を構成する材料を第1の電極10上に堆積させて誘電体膜30を形成する。本実施形態では、公知の成膜法を用いて、第1の電極10上に誘電体堆積膜としての第1の誘電体膜31を形成し、その後、第1の誘電体膜31上に、誘電体堆積膜としての第2の誘電体膜32を形成する。
公知の成膜法としては、たとえば、真空蒸着法、スパッタリング法、PLD(パルスレーザー蒸着法)、MO-CVD(有機金属化学気相成長法)、MOD(有機金属分解法)、ゾルゲル法、CSD(化学溶液堆積法)が例示される。本実施形態では、コスト等の観点から、スパッタリング法が好ましい。
なお、成膜時に使用する原料(蒸着材料、各種ターゲット材料、有機金属材料等)には微量の不純物、副成分等が含まれている場合があるが、所望の誘電特性が得られれば、特に問題はない。
たとえば、スパッタリング法を用いる場合、第1の誘電体膜を形成するためのターゲットを用いて、基板としての第1の電極10上に第1の誘電体膜31を形成する。成膜条件としては、基板温度は、好ましくは100~500℃である。また、成膜時の圧力は、好ましくは0.05~10Paである。
続いて、第1の誘電体膜31上に第2の誘電体膜32を形成する。第2の誘電体膜を形成する方法は、公知の成膜法であればよい。公知の成膜法としては、第1の誘電体膜の形成と同様に、たとえば、真空蒸着法、スパッタリング法、PLD(パルスレーザー蒸着法)、MO-CVD(有機金属化学気相成長法)、MOD(有機金属分解法)、ゾルゲル法、CSD(化学溶液堆積法)が例示される。本実施形態では、コスト等の観点から、第1の誘電体膜を形成する成膜法と同じ成膜法であることが好ましく、スパッタリング法が好ましい。
たとえば、スパッタリング法により第1の誘電体膜および第2の誘電体膜を形成する場合、第1の誘電体膜31を形成した後に、基板(第1の電極10)を加熱したままで、第1の誘電体膜を形成するためのターゲットから、第2の誘電体膜を形成するためのターゲットに切り替えて、第1の誘電体膜と同様の条件で、第1の誘電体膜31上に第2の誘電体膜32を形成する。すなわち、成膜条件としては、基板温度は、好ましくは300℃以下である。また、成膜時の圧力は、好ましくは0.05~10Paである。第1の誘電体膜および第2の誘電体膜を形成する順序を適宜変更することにより、図2Aに示す積層構造以外の任意の積層構造を形成できる。
本実施形態では、所望の積層構造を有する誘電体膜を形成した後、誘電体膜の熱処理を行う。熱処理は、たとえば、雰囲気制御が可能な管状炉を用いて行う。管状炉内に、第1の電極10上に形成された誘電体膜30(第1の誘電体膜31および第2の誘電体膜32)を載置し、炉内の酸素分圧を第1の電極10(卑金属箔)が酸化しない程度に制御して熱処理を行う。熱処理時の保持温度は好ましくは1000℃以下であり、保持時間は1~600分である。
炉内の酸素分圧は、たとえば、窒素、酸素、水素、水蒸気等を含む混合ガスを雰囲気ガスとして炉内に流通させることにより達成される。
このような熱処理を行うことにより、誘電体膜30の結晶化が促進され、誘電体膜30の結晶性が高くなる。その結果、薄膜キャパシタ1の容量密度を高めることができる。
熱処理後、第2の誘電体膜32上に、公知の成膜法を用いて第2の電極を構成する材料の薄膜を形成して第2の電極20を形成する。
以上の工程を経て、図2Aに示すように、第1の電極10、第1の誘電体膜31、第2の誘電体膜32および第2の電極20がこの順序で形成された薄膜キャパシタ1が得られる。
(3.電子回路基板)
本実施形態に係る電子回路基板は、上記の薄膜キャパシタを搭載している。また、当該電子回路基板は、上記の薄膜キャパシタに加えて、他の電子部品を備えてもよい。薄膜キャパシタ等の電子部品は、電子回路基板の表面に設置されていてよいし、電子回路基板内に埋め込まれていてもよい。電子回路基板に備えられる上記の薄膜キャパシタは、上述したように、基板および第1の電極(下部電極)として、卑金属箔を有している。
電子回路基板の一例が図3A及び図3Bに示される。図3Aに示す電子回路基板90は、エポキシ系樹脂基板92と、エポキシ系樹脂基板92を覆う樹脂層93と、樹脂層93上に設置された薄膜キャパシタ1と、樹脂層93及び薄膜キャパシタ1を覆う絶縁性被覆層94と、絶縁性被覆層94上に設置された電子部品95と、複数の金属配線96と、を備える。
少なくとも一部の金属配線96は、エポキシ系樹脂基板92又は絶縁性被覆層94の表面に引き出されてよい。また、少なくとも一部の金属配線96は、薄膜キャパシタ1の取り出し電極54、56、又は電子部品95に接続されていてよい。また、少なくとも一部の金属配線96は、電子回路基板90の表面から裏面に向かう方向において、電子回路基板90を貫通していてよい。
図3Bに示すように、本実施形態に係る薄膜キャパシタ1は、下部電極(第1の電極)10と、下部電極10の表面に設けられた誘電体膜30と、誘電体膜30の上面の一部の上に設けられた上部電極(第2の電極)20とを少なくとも備えている。これらに加えて、当該薄膜キャパシタ1は、誘電体膜30の他部を貫通して下部電極10の表面に直接設けられた貫通電極52と、上部電極20、誘電体膜30及び貫通電極52を覆う絶縁性樹脂層58と、絶縁性樹脂層58を貫通して貫通電極52の表面に直接設けられた取り出し電極54、及び、絶縁性樹脂層58を貫通して上部電極20の表面に直接設けられた取り出し電極56を備えていてよい。
電子回路基板90は、たとえば、以下の手順で製造される。まず、エポキシ系樹脂基板92の表面が未硬化樹脂層で覆われる。未硬化樹脂層は、樹脂層93の前駆体である。薄膜キャパシタ1の下部電極が未硬化樹脂層に面するように、薄膜キャパシタ1が未硬化樹脂層の表面に設置される。未硬化樹脂層及び薄膜キャパシタ1を絶縁性被覆層94で覆うことにより、薄膜キャパシタ1が、エポキシ系樹脂基板92と絶縁性被覆層94との間に挟み込まれる。未硬化樹脂層の熱硬化により、樹脂層93が形成される。さらに、熱プレスにより、絶縁性被覆層94が、エポキシ系樹脂基板92、薄膜キャパシタ1及び樹脂層93へ圧着され、薄膜キャパシタ1が樹脂により基板内に埋め込まれる。
薄膜キャパシタを樹脂に埋め込む工程は、通常樹脂由来の水素を含む雰囲気にキャパシタが曝露されるため、上述したように、雰囲気に存在する水素に起因するプロトンが薄膜キャパシタの誘電体膜に侵入することがある。プロトンが誘電体膜に侵入すると、プロトンあるいはプロトンを介するキャリアが誘電体中を移動しやすくなり、誘電体膜の絶縁抵抗が低下し、リーク電流が増加する。
しかしながら、本実施形態では、薄膜キャパシタの誘電体膜が上記の積層構造を有しているので、プロトン等の移動に起因するリーク電流の増加を抑制することができる。
続いて、この積層型基板を貫通する複数のスルーホールが形成される。金属配線96が各スルーホール内に形成される。金属配線96の形成後、電子部品95が絶縁性被覆層94の表面に設置される。
以上の方法により、薄膜キャパシタ1が埋め込まれた電子回路基板90が得られる。各金属配線96は導電体であり、たとえば、銅から構成される。未硬化樹脂層は、Bステージの熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂等)であってよい。Bステージの熱硬化性樹脂は、室温では完全には硬化されておらず、加熱により完全に硬化される。絶縁性被覆層94は、エポキシ系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂又はポリイミド系樹脂等から形成されてよい。
(4.変形例)
上述した実施形態では、誘電体膜が、第1の誘電体膜および第2の誘電体膜のみで構成される場合を説明したが、第1の誘電体膜および第2の誘電体膜とは異なる誘電体膜をさらに有していてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
以下、実施例において、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実験1)
まず、第1の電極として、厚みが30μmのニッケル箔、鉄箔、銅箔、白金箔を準備した。これら金属箔の寸法は、縦80mm×横80mmであった。
続いて、第1の誘電体膜および第2の誘電体膜の形成に必要なスパッタリング用ターゲットを固相法により以下のようにして作製した。
ターゲットの原料粉末として、BaCO、SrCO、CaCO、TiO、ZrOの粉末と、Y、Al、MnO、Vの粉末と、を準備した。第1の誘電体膜用のターゲットの原料は、表1に示す組成となるように秤量した。第2の誘電体膜用のターゲットの原料は、表1に示す組成となるように秤量した。
ボールミル中で水を溶媒として、秤量した第1の誘電体膜用のターゲットの原料粉末の湿式混合を20時間行った。得られた混合粉末スラリーを100℃で乾燥させ、混合粉末を得た。得られた混合粉末を、プレス機によるプレス成形して成形体を得た。成形条件は、圧力を100Pa、温度を25℃、プレス時間を3分とした。
その後、得られた成形体を焼成して焼結体を得た。
得られた焼結体を、平面研削盤と円筒研磨機により直径200mm、厚さ6mmに加工して、第1の誘電体膜を形成するためのスパッタリング用ターゲットを得た。第2の誘電体膜を形成するためのスパッタリング用ターゲットも、第1の誘電体膜を形成するためのスパッタリング用ターゲットと同様にして作製した。
次に、第1の電極としてのニッケル箔上に、上記で作製した第1の誘電体膜のスパッタリング用ターゲットおよび第2の誘電体膜のスパッタリング用ターゲットを用いて、表1に示す積層構造が得られるように、ターゲットを切り替えて、スパッタリング法により、第1の誘電体膜および第2の誘電体膜から構成され、厚さ200nmである誘電体膜を形成した。成膜条件は、圧力:1.5Pa、基板(第1の電極)温度:500℃以下とした。なお、比較例1では、第1の誘電体膜は形成しなかった。また、実施例24では、ニッケル箔の代わりに銅箔を用い、実施例25では、ニッケル箔の代わりに鉄箔を用い、比較例2では、ニッケル箔の代わりに白金箔を用いた。
比較例2を除き、第1の電極上に形成された誘電体膜を管状炉内に載置し、炉内を、窒素、酸素、水素、水蒸気で構成される混合ガスを流通させて、ニッケル箔、銅箔および鉄箔が酸化しない程度の酸素分圧に調整した。この状態で、昇温速度が20℃/分以下の条件で昇温し、700℃以上で1分以上保持する熱処理を行った。
熱処理後の誘電体膜に対し、第2の誘電体膜上に、室温において、スパッタリング法によりニッケルを形成した。その後、誘電体膜が形成されている金属箔を基板に支持させ、レジストをニッケル上にコートし、露光および現像を行った後、ニッケルのみをエッチングして第2の電極としてのパターンを形成した。以上の工程を経て、薄膜キャパシタ試料を得た。なお、比較例2では、第2の誘電体膜を形成後、誘電体膜を熱処理することなく、第2の電極を形成した。
得られた薄膜キャパシタ試料に対して、水素を3%含む還元雰囲気下で、200℃に加熱して1時間保持する熱処理を行った。この熱処理は、薄膜キャパシタを基板に搭載し樹脂内に埋め込む処理を模している。
なお、表1において、「第1誘電体」の欄における「BT」はチタン酸バリウム(BaTiO)を示し、「ST」はチタン酸ストロンチウム(SrTiO)を示し、「CT」はチタン酸カルシウム(CaTiO)を示し、「第2誘電体」の欄における「BZ」はジルコニウム酸バリウム(BaZrO)を示している。
また、「積層構造」の欄では、「1st」は第1の電極を示し、「2nd」は第2の電極を示し、第1の電極から第2の電極までの誘電体膜の積層順序を示している。すなわち、実施例1~7は、図2Cに示す積層構造を有していた。実施例8~13および20~28は、図2Aに示す積層構造を有していた。実施例14~19および比較例2は、図2Dに示す積層構造を有していた。
また、第1の誘電体膜および第2の誘電体膜の組成は、すべての試料についてXRF(蛍光X線元素分析)を使用して分析を行い、表1に記載の組成と一致していることを確認した。また、誘電体膜の厚みは、薄膜キャパシタをFIBで加工し、得られた断面をTEMで観察して測長した値とした。
(XRD測定)
熱処理後の誘電体膜に含まれる第1の誘電体膜に対してXRD測定を行い、X線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートにおいて、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物の(110)面の最強ピークの回折角2θを算出した。結果を表1に示す。また、熱処理を行っていない比較例2の誘電体膜に含まれる第1の誘電体膜に対しても同様のXRD測定を行い、(110)面の最強ピークの回折角2θを算出した。すなわち、比較例2の回折角2θがリファレンス(P)であった。
得られたすべての薄膜キャパシタ試料について、リーク電流値、比誘電率および誘電損失の電圧印加方向に対する依存性の測定を、下記に示す方法によって行った。
(リーク電流値)
まず、デジタル超高抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用いて、薄膜キャパシタに印加される電界強度が0.3MV/cmとなるように直流電圧を印加して、室温での絶縁抵抗を測定した。得られた絶縁抵抗と第2の電極の電極面積とからリーク電流値を算出した。リーク電流値は小さい方が好ましく、本実施例では、リーク電流値が1.0E-4(A/mm)以下、すなわち、1.0×10-4(A/mm)以下である試料を良好である判断した。結果を表1に示す。
(比誘電率)
比誘電率は、薄膜キャパシタ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(Keysight社製E4980A)にて、周波数1kHzにおいて、入力信号レベル(測定電圧)が1Vrmsとなるように交流電圧を印加して測定された静電容量と、上記で得られた誘電体膜の厚みと、から算出した(単位なし)。比誘電率は、第2の誘電体膜のみから構成される薄膜キャパシタ(比較例1)の比誘電率よりも高い方が好ましく、本実施例では、55以上を良好とした。結果を表1に示す。
(誘電損失の電圧印加方向に対する依存性)
まず、薄膜キャパシタ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(Keysight社製E4980A)を用いて、薄膜キャパシタに印加される電界強度が0.5MV/cmとなるように直流バイアス電圧を掃引して、誘電損失(tanδforward)を算出した。
次に、直流バイアス電圧の印加方向を入れ替えて(逆にして)、同様に、誘電損失(tanδreverse)を算出した。
得られた誘電損失の比の常用対数(log(tanδforward/tanδreverse))の絶対値を算出した。絶対値が0に近いほど、電圧の印加方向に対する依存性が少ないことを示す。結果を表1に示す。
Figure 2022154797000002
表1より、薄膜キャパシタを上記の構成とすることにより、リーク電流を比較的に低く維持しつつ、高い比誘電率を示すことが確認できた。
本発明に係る誘電体素子は、上述した構成を有することにより、リーク電流を比較的に低く維持しつつ、高い比誘電率を示すことができる。したがって、このような誘電体素子は、たとえば、電子回路基板内に埋め込まれる薄膜キャパシタとして好適である。
1… 薄膜キャパシタ
10… 第1の電極
30… 誘電体膜
31… 第1の誘電体膜(ABO
32… 第2の誘電体膜(A’B’O
20… 第2の電極

Claims (6)

  1. 卑金属から構成される第1の電極と、誘電体膜と、第2の電極と、を有する誘電体素子であって、
    前記誘電体膜は、化学式ABOで表される複合酸化物を主成分として有する第1の誘電体膜と、化学式A’B’Oで表される複合酸化物を主成分として有する第2の誘電体膜と、が直接的に接している積層構造を有し、
    化学式中、Aはバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、Bはチタンであり、A’は、バリウム、ストロンチウムおよびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、B’はジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つである誘電体素子。
  2. 前記第2の誘電体膜の厚さをt2とし、前記第1の誘電体膜および前記第2の誘電体膜の合計厚さをTとした時、t2/Tが10%以上50%以下である請求項1に記載の誘電体素子。
  3. t2/Tが10%以上30%以下である時に、前記第1の誘電体膜が前記第1の電極および前記第2の電極の両方に直接的に接している、または、前記第2の誘電体膜が前記第1の電極および前記第2の電極の両方に直接的に接している請求項2に記載の誘電体素子。
  4. 前記第1の誘電体膜は、副成分として、化学式ABOで表される複合酸化物100モルに対して、イットリウムおよびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを0モル超0.3モル以下、マンガンを0モル超0.3モル以下、バナジウムを0モル超0.3モル以下含む請求項1から3のいずれかに記載の誘電体素子。
  5. 前記積層構造において、化学式ABOで表される複合酸化物のX線回折測定における当該複合酸化物の(110)面の回折ピークのうち最強ピークの回折角2θが、当該複合酸化物のリファレンスをX線回折測定した場合に、当該リファレンスの(110)面の回折ピークのうち最強ピークの回折角2θよりも0.5°以上大きい請求項1から4のいずれかに記載の誘電体素子。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の誘電体素子が搭載されている電子回路基板。
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