JP2022151490A - 樹脂フィルム、積層体、積層体の製造方法、電気回路体、ヘルスケアセンサー、ウエアラブルセンサー、および樹脂フィルム加工品の製造方法 - Google Patents

樹脂フィルム、積層体、積層体の製造方法、電気回路体、ヘルスケアセンサー、ウエアラブルセンサー、および樹脂フィルム加工品の製造方法 Download PDF

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Yuya Suzuki
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Norifumi Miwa
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信康 甲斐
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Abstract

【課題】高い柔軟性と復元性を持ちつつ、印刷工程時における印刷版離れ性と、印刷層との密着性を両立した樹脂フィルムや積層体、積層体の製造方法、電気回路体、ヘルスケアセンサー、ウエアラブルセンサー、および樹脂フィルム加工品の製造方法を提供する。【解決手段】以下の条件1から3のすべてを満たす、樹脂フィルム。条件1:樹脂フィルムの温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率が0.5MPa以上50MPa以下。条件2:樹脂フィルムの25℃における損失正接が0.5以下。条件3:レーザー顕微鏡による、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における平坦部比率が70%以下。【選択図】図1

Description

本発明は、高い柔軟性と復元性を持ちつつ、印刷工程時における印刷版離れ性と、印刷層との密着性を両立した樹脂フィルム、積層体、積層体の製造方法、電気回路体、ヘルスケアセンサー、ウエアラブルセンサー、および樹脂フィルム加工品の製造方法に関する。
近年、IoT社会の発達に伴い、ウエアラブルセンサーの開発が盛んに行われている。ウエアラブルセンサーとは、腕や、脚、頭部など、体の一部に装着することで、体全体のダイナミックな動きや、体内の微小な圧力、電気信号などを常時モニタリングするものである。産業用や医療用を初めとする様々な分野で開発が進められており、膨大なデータ収集とそれらを用いたアラームやアドバイスにより、私たちの生活を根底から変えることが期待されている。
これらのデバイスの基材として、これまで様々な樹脂フィルムが検討されてきた。しかし、従来の材料は、例えばポリイミドのような剛直な化学結合や強い結晶性を有するフィルムであり、自由に曲げることはできるが、伸縮させることはできないものであった。そのため、基材として、引き延ばしが容易で、かつ、瞬時に復元ができる材料が求められている。
このような高い柔軟性と復元性を有した樹脂フィルムの代表例として、特許文献1に記載の「カーボネート結合を有するポリエーテルポリオール(a)とイソシアネート化合物(b)を反応させて製造されるポリウレタンであって、ポリエーテルポリオール(a)の水酸基価が55以下であるポリウレタン」が提案されている。また、特許文献2に記載の「装着性と形状追従性に加えて、伸縮時の電気抵抗変化が小さい導電性フィルム」や、特許文献3に記載の「優れた伸縮性と強度を有し、かつ膜表面の撥水性にも優れるとともに、表面のベタつきもない伸縮性膜」が提案されている。
特開2015-189886号公報 特開2017-199654号公報 特開2020-105485号公報
センサーとして使用するためには、基材に伸縮性を有した配線や電極を実装することが求められ、実装方法としては、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等で行われることが考えられている。引き延ばしが容易で、かつ、瞬時に復元ができる材料を用いたセンサーの実現が近づく中、配線や電極をはじめとした、印刷層と樹脂フィルムの密着性を確保しつつ、この印刷工程時において、印刷版と樹脂フィルムとが貼り付くといった印刷不良を起こさずに、生産性を高めることが最近求められてきている。
前述のウエアラブルセンサーに使用される樹脂フィルムでは、弱い力で大きく伸ばすことが可能な「柔軟性」、ほぼ完全に復元することを0℃以下の温度で、かつ毎秒1回を超える早い周期で行うことができる「復元性」が求められる。柔軟性が高い材料は基本的にタック性が高い特徴をもつが、印刷加工をする際にタック性が高いと印刷版に貼り付く印刷不良が生じやすくなる課題があることがわかった。「柔軟性」と「印刷版離れ性」を両立させる方法として、樹脂フィルム表面を低極性にし、印刷版/樹脂フィルム間の界面相互作用を低下させる方法があるが、この場合、配線や電極等のような印刷層と樹脂フィルムの界面相互作用も低下させてしまい、密着性が低下しやすくなる。つまり、樹脂フィルムの特性として、「柔軟性」、「復元性」、「印刷版離れ性」、「印刷層密着性」の4項目全てを高水準で満たす必要がある。
以上のような要望に対し、本発明者らが前述の観点について確認したところ、特許文献1に提案されている材料は、「柔軟性」は優れ、「印刷層密着性」も良好であったが、「復元性」や「印刷版離れ性」が不十分であった。
特許文献2に提案されている材料について、「印刷版離れ性」、「印刷層密着性」は優れているが、「柔軟性」や「復元性」は不十分であった。
また、特許文献3に提案されている材料について、「柔軟性」や「復元性」、「印刷版離れ性」は優れているが、「印刷層密着性」は不十分であった。また、特許文献1に記載の材料に対して、特許文献3に記載のような凹凸形状をつけた場合、特許文献1と比べて、「印刷版離れ性」の向上は見られるものの、不十分であり、また、特許文献3のものと比べて、「印刷層密着性」の向上は見られるものの、不十分であった。
以上の点から、本発明の課題は、高い柔軟性と復元性を持ちつつ、印刷工程時における印刷版離れ性と、印刷層との密着性を両立した樹脂フィルムや積層体、積層体の製造方法、電気回路体、ヘルスケアセンサー、ウエアラブルセンサー、および樹脂フィルム加工品の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明の樹脂フィルム、積層体、積層体の製造方法、電気回路体、ヘルスケアセンサー、ウエアラブルセンサー、および樹脂フィルム加工品の製造方法の好ましい一態様は以下の通りである。
(1)以下の条件1から3のすべてを満たす、樹脂フィルム。
条件1:樹脂フィルムの温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率が0.5MPa以上50MPa以下。
条件2:樹脂フィルムの25℃における損失正接が0.5以下。
条件3:レーザー顕微鏡による、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における平坦部比率が70%以下。
(2)以下の条件4を満たす、(1)に記載の樹脂フィルム。
条件4:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における二乗平均平方根粗さRqが400nm以上。
(3)以下の条件5を満たす、(1)または(2)に記載の樹脂フィルム。
条件5:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面において、動的接触角拡張収縮法で得られる、樹脂フィルムの水に対する接触角ヒステリシスが5°以上。
ここで、接触角ヒステリシスとは、前進接触角と、後退接触角の差の絶対値を指す。
(4)以下の条件6を満たす、(1)から(3)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
条件6:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における算術平均粗さRaが430nm以上。
(5)以下の条件7を満たす、(1)から(4)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
条件7:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における最大高さRzが8μm以上。
(6)以下の条件8を満たす、(1)から(5)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
条件8:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面において、表面自由エネルギーが30mN/m以上。
(7)以下の条件9を満たす、(1)から(6)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
条件9:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面において、樹脂フィルム1mm角あたりの表面積が1.3mm以上。
(8)以下の条件10を満たす、(1)から(7)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
条件10:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面において、動的接触角拡張収縮法で得られる、樹脂フィルムのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角ヒステリシスが5°以上。
ここで、接触角ヒステリシスとは、前進接触角と、後退接触角の差の絶対値を指す。
(9)以下の条件11を満たす、(1)から(8)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
条件11:樹脂フィルムのヘイズが30%以上70%以下
(10)化学式1の構造およびウレタン結合を含む、(1)から(9)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
Figure 2022151490000002
なお、化学式1のRは、水素またはメチル基を指す。
(11)化学式2のセグメントを含み、さらに化学式3のセグメントまたは化学式4のセグメントのいずれかを含む、(1)から(10)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
Figure 2022151490000003
Figure 2022151490000004
Figure 2022151490000005
pは1以上の整数である。
rは1以上の整数である。
sは1以上の整数である。
(12)化学式5のセグメント、化学式6のセグメント、化学式7のセグメント、化学式8のセグメント、およびそれらの水添体のセグメントからなる群より選ばれる少なくとも1つのセグメントを含む、(1)から(11)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
Figure 2022151490000006
Figure 2022151490000007
Figure 2022151490000008
Figure 2022151490000009
(13)単層である、(1)から(12)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
(14)(1)から(13)のいずれかに記載の樹脂フィルムの少なくとも一方に、基材を含む積層体。
(15)工程1、2、3、および4をこの順に行う、(14)に記載の積層体の製造方法。
工程1:条件12を満たす基材Aの上に、化学式9のセグメントを含む樹脂前駆体と溶媒を含む塗料組成物を塗布し、塗布層を形成する工程。
条件12:レーザー顕微鏡による、基材A表面の少なくとも一方の表面における平坦部比率が70%以下。
Figure 2022151490000010
工程2:前記塗布層から溶媒を除去する工程。
工程3:活性エネルギー線を照射して、前記樹脂前駆体を架橋させる工程。
工程4:前記塗布層の基材A反対面に基材Bを貼り付けた後に、基材Aを剥離する工程。
(16)(1)から(13)のいずれかに記載の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルム上に形成された導体回路を含む、電気回路体。
(17)(1)から(13)のいずれかに記載の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルム上に形成された導体回路を含む、ヘルスケアセンサー。
(18)(1)から(13)のいずれかに記載の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルム上に形成された導体回路を含む、ウエアラブルセンサー。
(19)(1)から(13)のいずれかに記載の樹脂フィルムをスクリーン印刷で加工する工程を備える、樹脂フィルム加工品の製造方法。
高い柔軟性と復元性を持ちつつ、印刷工程時における印刷版離れ性と、印刷層との密着性を両立した樹脂フィルムや積層体、積層体の製造方法、電気回路体、ヘルスケアセンサー、ウエアラブルセンサー、および樹脂フィルム加工品の製造方法を提供することができる。
本発明における積層体の一例を示す断面図である。 本発明における積層体の一例を示す断面図である。 本発明における積層体の一例を示す断面図である。 本発明における積層体の一例を示す断面図である。 本発明におけるスクリーン版の一例を示す平面図である。 本発明におけるスクリーン版の一例を示す平面図である。 本発明における電気回路体の一例を示す平面図である。 本発明における電気回路体の一例を示す平面図である。
本発明者らは、従来技術にて本発明の課題を解決することが難しい理由について、以下のように考えている。
まず、樹脂フィルムが印刷版と貼り付くメカニズムについて考察する。本用途で求められるような、柔軟性が高い樹脂フィルムは、印刷版の凹凸形状に追随しやすく、樹脂フィルム/印刷版間で界面相互作用かかり、「タック性」が生じる。特に、平坦な樹脂フィルムは、表面全体が印刷版の凹凸形状に追随し、タック性の程度が大きいと考えられる。したがって、柔軟性が高く、かつ平坦な樹脂フィルムは、印刷工程時における印刷版との貼り付きが生じやすくなる。
印刷版との貼り付きを抑制させる方法として、シリコーン系や、オレフィン系の素材を用いるといった、樹脂フィルムの表面自由エネルギーを低下させる方法がある。この場合、印刷層との界面相互作用が低下してしまい、「印刷層密着性」がトレードオフとなりうる。また、樹脂フィルムの弾性率を上げることで、タック性を低下させる方法があるが、この場合、樹脂フィルムの架橋密度が上がることととなり、「柔軟性」がトレードオフとなりうる。したがって、これらの対策では、「柔軟性」、「復元性」、「印刷版離れ性」「印刷層密着性」を全て満たすことが難しいことが考えられる。
以上の観点から、特許文献に記載の材料で、「柔軟性」、「復元性」、「印刷版離れ性」、「印刷層密着性」の4項目を満たすことができなかった理由を詳しく考察する。
特許文献1に記載の材料は、ポリウレタンを使用しており、ポリエーテルポリオール部分が柔軟性のあるソフトセグメントとして、ウレタン部分が凝集力の高いハードセグメントとして機能し、それらがミクロ相分離構造を形成している。柔軟性を付与するために、ハードセグメントであるウレタン部分の凝集力を低下させており、それに伴い、復元性が低下している。また、この材料は、柔軟性が高く、かつ、全面が平坦な形状を有するものである。したがって、この材料は、表面全体が印刷版の凹凸形状に追随してしまうため、印刷版離れ性が不十分であったと推定している。一方で、ソフトセグメント、ハードセグメントが共に、比較的極性の高いセグメントで形成されており、印刷層との密着性は良好であると推定している。
特許文献2に記載の材料は、弾性率が高いエポキシ材料に、プラズマ処理で凹凸形状を付与した基材を転写させたものである。弾性率が高いことでタック性が低く印刷版離れ性は良好であるが、架橋密度が高いことで、柔軟性が不十分となったと推定している。
特許文献3に記載の材料は、シリコーン材料に、凹凸形状をパターニングした材料である。表面自由エネルギーが低く、かつ、表面に形状を付与したことで、樹脂フィルムが印刷版と接触する際に、一部非接触部分を有し、接触面積を低下させている。したがって、印刷版離れ性は良好であると考えられる。一方で、この材料は、表面自由エネルギーが低いことで、印刷層との界面相互作用が低下している。さらに、この材料は、平坦部分を含み、かつ、凹凸形状の高差方向で急激に変化したものであり、印刷時に印刷ペーストが樹脂フィルムの凹部分に入り込みにくく、凹部分・凸部分で印刷層の勾配ができると考えられる。したがって、印刷層密着性が不十分となったと推定している。
また、特許文献1に記載のポリウレタンに対して、特許文献3に記載のような凹凸形状をつけた場合、印刷版との接触面積が低下することで、特許文献1と比べて、印刷版離れ性の向上がみられると考えられるが、凸部分はあるものの平坦であり、この部分が印刷版と貼り付くきっかけとなり、印刷版離れ性は不十分となると考えられる。また、樹脂組成の極性が上がることで、特許文献3と比べて、印刷層密着性の向上はみられるものの、この材料は、平坦部分を含み、かつ、凹凸形状の高差方向で急激に変化したものであり、印刷時に印刷ペーストが樹脂フィルムの凹部分に入り込みにくく、凹部分・凸部分で印刷層の勾配ができてしまい、印刷層との密着性は不十分となると推測する。
これに対し、本発明者らは、前述の課題を解決する方法として、高い柔軟性・復元性を有した材料を用いた上で、表面の平坦部比率を低下させることで、印刷工程時における印刷版離れ性と、印刷層との密着性を両立した樹脂フィルムを得ることに成功し、本発明に至った。さらに、印刷版離れ性と印刷層との密着性を両立することで得られる意外な効果として、伸縮挙動を繰り返しても印刷層の抵抗値変化を抑制でき、電気信号を安定して検出できることがわかった。以下、本発明の詳細について記載する。
本発明の積層体の好ましい一態様は以下の条件1から3のすべてを満たす、樹脂フィルムである。
条件1:樹脂フィルムの温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率が0.5MPa以上50MPa以下。
条件2:樹脂フィルムの25℃における損失正接が0.5以下。
条件3:レーザー顕微鏡による、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における平坦部比率が70%以下。
上記態様とすることで、高い柔軟性と復元性を持ちつつ、印刷工程時における印刷版離れ性と、印刷層との密着性を両立することができる。さらに、伸縮時における印刷層の抵抗値変化を抑制することができる。
(条件1、2)
本発明の樹脂フィルムは、温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率が0.5MPa以上50MPa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率が0.5MPa以上であることにより、タック性が強すぎて取り扱いが困難となることを抑制でき、50MPa以下であることにより、樹脂フィルムを容易に変形可能なものとすることができる。同様の観点から、1.0MPa以上、25MPa以下であることがより好ましく、3.0MPa以上、10MPa以下であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂フィルムは、25℃における損失正接が0.5以下であることが好ましい。損失正接を0.5以下とすることにより、樹脂フィルムとして用いたときに、十分な復元性を得ることができる。同様の観点から樹脂フィルムの25℃における損失正接は0.2以下がより好ましく、0.05以下がさらに好ましい。
貯蔵弾性率、および、損失正接は、DMA(動的粘弾性測定)法により測定された値を指し、その測定方法は後述する。
樹脂フィルムの貯蔵弾性率、損失正接を上記範囲とするためには、ポリマーが柔軟性のあるソフトセグメントと凝集力の高いハードセグメントを有し、それらがミクロ相分離構造を形成していることに加えて、このハードセグメントが、π-π相互作用や水素結合などの物理架橋の寄与度を必要最低限までに下げつつ、アクリル架橋のような小さく強固な化学架橋を低密度で形成させることが重要である。π-π相互作用や水素結合などの物理架橋をハードセグメントとして機能させるためには、ハードセグメントの体積を大きくする必要が有る。それに伴い、弾性率が高くなり、柔軟性が低下してしまう。したがって、小さく強固な化学架橋を低密度で形成させることが必要となる。具体的な方法としては、炭素数3以上のアルキル基、または、アルケニル基を有する高分子ポリオールであって、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンジオールより選ばれる1種以上の高分子ポリオールと、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)、NDI(1,5-ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、PPDI(パラフェニレンジイソシアネート)、TMXDI(テトラメチルキシリレンジイソシアネート)、HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、H6XDI(水添キシリレンジイソシアネート)、H12MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)より選ばれる1種以上の2官能イソシアネートと、HEA(ヒドロキシエチルアクリレート)、4HBA(4-ヒドロキシブチルアクリレ-ト)より選ばれる1種以上のアクリル原料とを、モル比1:(1~2):(0.4~1.0)の仕込み比で反応させ、熱または活性エネルギー線で重合する方法を好ましくとることができる。ここで、仕込みモル比率について高分子ポリオールの仕込み量を1とした際、1,6-ヘキサンジオールや、トリエチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールなどの分子量500g/mol以下の低分子ポリオールの仕込み量は0.1以下であることが好ましい。また、仕込みモル比率について2官能イソシアネートの仕込み量を1とした際3官能以上のイソシアネートの仕込み量は0.1以下であることが好ましい。加えて、樹脂フィルム100質量%中に含まれる灰分の含有量は1質量%以下であることが好ましい。ここで、灰分とは窒素下500℃で1時間加熱した際の成分をいう。
また、樹脂フィルムは望ましい貯蔵弾性率、損失正接とするため、前記高分子ポリオール由来のモノマー単位の含有量を1モルとしたとき、前記2官能イソシアネート由来のモノマー単位の含有量が1~2モル、前記アクリル原料由来のモノマー単位の含有量が0.4~1.0モル、前記低分子量ポリオール由来のモノマー単位の含有量が0.1モル以下、前記3官能以上のイソシアネート由来のモノマー単位の含有量が0.2モル以下であることが好ましい。各モノマー単位の定性・定量は、樹脂フィルムをアルカリ加水分解した後、核磁気共鳴分光法、GC-MS、サイズ排除クロマトグラフィ、飛行時間型質量分析を組み合わせることで行うことができる。
(条件3)
本発明の樹脂フィルムは、条件3を満たすことが好ましい。
条件3:レーザー顕微鏡による、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の平坦部比率が70%以下。
ここで、樹脂フィルム表面の平坦部比率は、レーザー顕微鏡で樹脂フィルムを観察して得られた線粗さデータにおける、平面方向1μm毎の厚み高低差が100nm以下の頻度を示すパラメーターである。すなわち、この値を小さくすることで、樹脂フィルム表面の厚み高低差が絶えず変化し、表面全体がマットとなる。したがって、印刷工程時における印刷版との接触点を減らし、印刷版離れ性を高めることができる。部分的に突起があったとしても、そのピッチが広く、平坦部比率で70%を超過するような場合、部分的に発生した平坦部の多さの影響が強まり、印刷版離れ性が悪くなることがあるため、平坦部比率が70%以下であることが印刷版離れ性の観点で重要となる。また、突起が小さく、平坦部比率で70%を超過するような場合、印刷版の柔軟性などで結局印刷版と樹脂フィルムとが全面的に接触してしまい、印刷版離れ性が悪くなることがあるため、やはり平坦部比率が70%以下であることが印刷版離れ性の観点で重要となる。さらには、平坦部比率を70%以下とすることで表面全体がマットになり、樹脂フィルムと印刷層の界面全体にアンカー効果を発揮し、印刷層との密着性を高めることができる。仮に、樹脂フィルムの一部がマットになった場合、一部でのみアンカー効果が発揮し、界面で樹脂フィルム/印刷層の密着性が不均一になることが考えられる。この場合、樹脂フィルム/印刷層の密着性が弱い平滑な部分が、剥がれのきっかけとなり、樹脂フィルム全体で見ると、印刷層との密着性が弱くなってしまう。したがって、表面の平坦部比率を低下させることは、印刷版離れ性、印刷層との密着性をどちらも向上させる方法である。特に、条件1、2を満たすような材料で、柔軟性と復元性をどちらも有しつつ、印刷版離れ性と印刷層密着性を付与するためには、上記に示す、平坦部比率が70%以下であることが重要である。同様の観点から、樹脂フィルム表面の平坦部比率は50%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
また、平坦部比率は5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。上記態様とすることで、樹脂フィルムを伸縮した際に、表面の凹部が破断のきっかけとなることを抑制することができ、樹脂フィルム本来の伸縮性を維持することができる。
樹脂フィルム表面の平坦部比率は、次に記載する方法で算出する。具体的にはレーザー顕微鏡(キーエンス製VK9700)を用い、50倍の対物レンズ、光量100%、Z測定ピッチ0.02μmで観察を行い、解析ソフト(VK viewer)上で観察表面の任意の箇所で100μm分の線粗さデータを取得する。得られた線粗さデータのXYキャリブレーション値(1ピクセル毎のXY方向の距離)から、1μm当たりのピクセル数を計算する。実断面プロファイル(1ピクセル毎のZ方向の高さ)において、1μm当たりのZ方向の高低差(a)となるように、実断面プロファイルの差分を取得する。これらの操作を3回行い、取得した線粗さデータ3回分からヒストグラムを取り、100nm以下の頻度を算出する。なお、取得した線粗さデータ3回分の向きは、任意の一方向から120°ずつずらしたものを用いる。
条件3を満たすための具体的方法は、樹脂フィルムを製造する際の基材について、粒子を練り込んだ基材や、サンドブラスト処理を施した基材や、粒子を含むコーティング層を積層した基材を用いることを好ましく挙げることができ、これらの方法についての詳細は後述する。
本用途で求められる樹脂フィルムは、柔軟性と復元性を持ちつつ、印刷工程時における印刷版離れ性と、印刷層との密着性とを両立した樹脂フィルムである。条件1と2はそれぞれ柔軟性と復元性に関する条件であり、これらを満たすことで、柔軟性と復元性を高い水準で有することができる。一方で、前述のように柔軟性が高い樹脂フィルムはタック性が高く、印刷工程時における印刷版との貼り付き性が高くなる傾向がある。印刷版との貼り付きを抑制させる方法として、1.表面自由エネルギーの低下、2.弾性率アップによるタック性低下、3.表面のマット化、の3方法が考えられる。1.の方法は、樹脂フィルム表面の界面相互作用が低下し、印刷層との密着性がトレードオフとなる。2.の方法は、樹脂フィルム内の架橋密度が上がることで、柔軟性がトレードオフとなる。一方、3.の方法は、樹脂フィルム表面の界面相互作用や、樹脂フィルム内の架橋密度を変化させることがないので、柔軟性、復元性、印刷層との密着性を高い水準で維持しつつ、印刷版との貼り付き性を抑制するための好ましい方法である。一方で、ただ表面にマット形状をつけるだけでは不十分であり、特許文献3に記載のような樹脂フィルム表面にパターン形状をつけ、表面粗さや表面高さを上昇させる方法では、印刷版離れ性として不十分であった。この原因を追及したところ、これらの樹脂フィルムは、表面粗さが高い一方で、凹凸形状のピッチが大きく、凹部もしくは凸部に平坦部が存在していた。この平坦部が印刷版と強く密着しており、印刷版離れ性が不足しているのではないかと考察した。
そこで本発明では、表面の平坦部比率に着目し、この値を70%以下とすることにより、従来では成し遂げられなかった、柔軟性、復元性、印刷版離れ性、印刷層密着性を全て有することが可能となった。
さらに、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、印刷版離れ性と印刷層密着性は、伸縮時における印刷層の抵抗値変化に影響を与えていることがわかった。印刷版離れ性が高いことで、印刷層の配線のかすれや厚みムラが生じにくく、樹脂フィルムを伸縮させた際に配線が一様に伸縮でき、配線の断線を抑制できると考えている。また、印刷層密着性が高いことで、樹脂フィルムを伸縮させた際に、樹脂フィルムと印刷層が剥離せずに一様に伸縮することができ、配線の断線を抑制できると考えている。したがって、本発明のような表面の平坦部比率を70%以下とすることにより、柔軟性、復元性、印刷版離れ性、印刷層密着性を全て有することが可能となり、さらには、伸縮時における印刷層の抵抗値変化を抑制できることがわかった。
(条件4)
本発明の樹脂フィルムは、条件4を満たすことが好ましい。
条件4:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における二乗平均平方根粗さRqが400nm以上。
二乗平均平方根粗さRqは、算術平均粗さの標準偏差に当たり、この値が大きいことは、表面の凹凸サイズが不均一であることを示す。したがって、この値を大きくすることで、印刷工程時における印刷版との接触点を減らし、印刷版離れ性をより高めることができる。また、樹脂フィルムと印刷層の界面を増加させ、アンカー効果によって、印刷層との密着性を高めることができる。同様の観点から、樹脂フィルムのRqは600nm以上であることがより好ましく、800nm以上であることがさらに好ましい。
樹脂フィルムのRqは、次に記載する方法で算出する。具体的には、平坦部比率の測定に準じ、レーザー顕微鏡(キーエンス製VK9700)を用い、50倍の対物レンズ、光量100%、Z測定ピッチ0.02μmで観察を行い、解析ソフト(VK viewer)上で観察表面の任意の箇所で100μm×100μmぶんの面粗さデータを取得する。これらの操作を3回行い、各データのRqの値を平均したものを樹脂フィルムのRqとする。
条件4を満たすための具体的方法は、樹脂フィルムを製造する際の基材について、粒子を練り込んだ基材や、サンドブラスト処理を施した基材や、粒子を含むコーティング層を積層した基材を用いることを好ましく挙げることができ、これらの方法についての詳細は後述する。
(条件5)
本発明の樹脂フィルムは、条件5を満たすことが好ましい。
条件5:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面において、動的接触角拡張収縮法で得られる、樹脂フィルムの水に対する接触角ヒステリシスが5°以上。
ここで、接触角ヒステリシスとは、動的接触角における拡張収縮法によって得られる、前進接触角(θa)と後退接触角(θr)の差の絶対値を指す。固体表面がマット形状で、かつ、液滴が固体表面の凹部に入り込んだ、いわゆる「Wenzelモード」の場合、マット形状の表面粗さを液滴が感知し、液滴を拡張収縮した際に表面の粗さが液滴の進行方向に対して抵抗となる。したがって、マット形状の表面粗さが大きい程、接触角ヒステリシスは大きくなる。一方で、固体表面に平坦部があって凹部が深い場合、液滴が固体表面の凹部に入り込まず、凹部に空気層を有した、いわゆる「Cassieモード」となる。この「Cassieモード」は、特に表面張力が高い水を使用する場合に起こり易いことが知られる。この場合、液滴が表面の凹凸部分に感知できず、接触角ヒステリシスは、「Wenzelモード」と比べて小さくなる。したがって、この接触角ヒステリシスを大きくすることで、固体表面に液滴が「Wenzelモード」で着滴し、印刷版との接触点を減らし、印刷版離れ性を高めることができる。同様の観点から、樹脂フィルムの水に対する接触角ヒステリシスが8°以上であることがより好ましい。
条件5を満たすための具体的方法は、樹脂フィルムを製造する際の基材について、サンドブラスト処理を施した基材や、粒子を含むコーティング層を積層した基材を用いることを好ましく挙げることができ、これらの方法についての詳細は後述する。
(動的接触角の測定方法)
動的接触角の測定は、試料を事前に25℃の環境下で、12時間放置後に実施する。協和界面科学株式会社製のDrop Master DM-501を使用し、液滴の作成は、ニードルを這い上がらない範囲で、できるだけ小さい液滴を作成できる条件を選択する。動的接触角は樹脂フィルム表面に着滴してから、シリンジ針先端を指したままの状態で液吐出速度8.5μL/sで連続的に注入と吸引を繰り返し、同液滴の縮小過程の形状を100ミリ秒毎に連続的に撮影しその過程のそれぞれの接触角を求める。液滴の拡張・収縮過程の接触角は最初、拡張・収縮につれて変化し、次いで一定になる挙動を示す。拡張時の接触角を前進接触角、収縮時の接触角を後退接触角とする。ここで、接触角が一定になったとは、液滴が拡張・収縮していく方向に接触角を並べ、その順に連続した5点を選択したとき、連続した5点の標準偏差が最初に1°以下になった場合とする。
(条件6)
本発明の樹脂フィルムは、条件6を満たすことが好ましい。
条件6:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における算術平均粗さRaが430nm以上。
算術平均粗さRaを大きくすることで、印刷工程時における印刷版との接触点を減らし、印刷版離れ性を高めることができる。また、樹脂フィルムと印刷層の界面を増加させ、アンカー効果によって、印刷層との密着性を増加させることができる。同様の観点から、樹脂フィルムのRaは550nm以上であることがより好ましく、600nm以上であることがさらに好ましい。
樹脂フィルムのRaは、次に記載する方法で算出する。具体的には上述のRqと同様に、レーザー顕微鏡(キーエンス製VK9700)を用い、50倍の対物レンズ、光量100%、Z測定ピッチ0.02μmで観察を行い、解析ソフト(VK viewer)上で観察表面の任意の箇所で100μm×100μmぶんの面粗さデータを取得する。これらの操作を3回行い、各データのRaの値を平均したものを樹脂フィルムのRaとする。
条件6を満たすための具体的方法は、樹脂フィルムを製造する際の基材について、サンドブラスト処理を施した基材や、粒子を含むコーティング層を積層した基材を用いることを好ましく挙げることができ、これらの方法についての詳細は後述する。
(条件7)
本発明の樹脂フィルムは、条件7を満たすことが好ましい。
条件7:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における最大高さRzが8μm以上。
最大高さRzが大きいことは、表面の粗さの絶対値が大きいことを意味し、それにより印刷工程時における印刷版との接触点を減らし、印刷版離れ性を高めることができる。また、樹脂フィルムと印刷層の界面を増加させ、アンカー効果によって、印刷層との密着性を高めることができる。同様の観点から、樹脂フィルムのRzは9μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
樹脂フィルムのRzは、次に記載する方法で算出する。具体的には上述のRq、Raと同様に、レーザー顕微鏡(キーエンス製VK9700)を用い、50倍の対物レンズ、光量100%、Z測定ピッチ0.02μmで観察を行い、解析ソフト(VK viewer)上で観察表面の任意の箇所で100μm×100μmぶんの面粗さデータを取得する。これらの操作を3回行い、各データのRzの値を平均したものを樹脂フィルムのRzとする。
条件7を満たすための具体的方法は、樹脂フィルムを製造する際の基材について、サンドブラスト処理をRaが620nm以上となるように施した基材や、5μm以上の粒子を20質量部以上含むコーティング層を積層した基材を用いることを好ましく挙げることができ、これらの方法についての詳細は後述する。
(条件8)
本発明の樹脂フィルムは、条件8を満たすことが好ましい。
条件8:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面において、表面自由エネルギーが30mN/m以上。
ここで、樹脂フィルムの表面自由エネルギーは、樹脂フィルムの表面に対して、水、エチレングリコール、ジヨードメタンによる25℃での静的接触角を求め、各液体での静的接触角と、以下の非特許文献1に記載の、各液体の表面自由エネルギーの分散項、極性項、水素結合項を、以下の非特許文献2に記載の「畑、北崎の拡張ホークスの式」に導入し、連立方程式を解くことにより求めた値を指す。測定方法の詳細は後述する。
非特許文献1:J.Panzer :J.Colloid Interface Sci.,44,142 (1973).。
非特許文献2:北崎寧昭、畑 敏雄:日本接着協会紙,8,(3) 131(1972).。
樹脂フィルムの表面自由エネルギーが30mN/m以上であることにより、樹脂フィルムと印刷層の密着性をより十分なものにすることができ、樹脂フィルム上に回路パターンを形成し、繰り返し伸縮をおこなったときに、抵抗率が上昇することや、センサーから得られる信号のS/N比が低下することを軽減できる。さらには回路パターンの破断による導通不良が発生することを抑制できる。同様の観点から、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における表面自由エネルギーが35mN/m以上であることがより好ましい。
表面自由エネルギーは、後述する樹脂フィルムを含む材料や、表面処理方法を適宜選択することで上記範囲とすることができる。
(静的接触角の測定方法)
静的接触角の測定は、試料を事前に25℃の環境下で、12時間放置後に実施する。協和界面科学株式会社製のDrop Master DM-501を使用し、液滴の作成は、ニードルを這い上がらない範囲で、できるだけ小さい液滴を作成できる条件を選択する。静的接触角は樹脂フィルム表面に着滴してから5秒後に撮影した画像を使用し、θ/2法を用いて、静的接触角を算出する。
(条件9)
本発明の樹脂フィルムは、条件9を満たすことが好ましい。
条件9:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面において、樹脂フィルム1mm角あたりの表面積が1.3mm以上。
ここで、1mm角あたりの表面積は、レーザー顕微鏡で樹脂フィルムを観察して得られた線粗さデータを基に算出した値である。すなわち、この値を大きくすることで、樹脂フィルムと印刷層の界面を増加させ、アンカー効果によって、印刷層との密着性を増加させることができる。同様の観点から、1mm角あたりの表面積は1.5mmであることがより好ましく、2.0mm以上であることがさらに好ましい。
樹脂フィルム1mm角あたりの表面積は、次に記載する方法で算出する。具体的には上述の表面の平坦部比率と同様に、レーザー顕微鏡(キーエンス製VK9700)を用い、50倍の対物レンズ、光量100%、Z測定ピッチ0.02μmで観察を行い、解析ソフト(VK viewer)上で観察表面の任意の箇所で100μm分の線粗さデータを取得する。得られた線粗さデータのXYキャリブレーション値(1ピクセル毎のXY方向の距離)から、1μm当たりのピクセル数を計算する。実断面プロファイル(1ピクセル毎のZ方向の高さ)において、1μm当たりのZ方向の高低差(a)となるように、実断面プロファイルの差分を取得する。続いて、1μm毎の表面長さ(L=(1+a)1/2)を算出し、実断面プロファイルデータで総和を取った上で、1mm毎の表面長さ(L)となるように規格化する。この値を2乗することで、1mm角あたりの表面積(S=(L)とする。
条件9を満たすための具体的方法は、樹脂フィルムを製造する際の基材について、サンドブラスト処理を施した基材や、粒子を含むコーティング層を積層した基材を用いることを好ましく挙げることができ、これらの方法についての詳細は後述する。
(条件10)
本発明の樹脂フィルムは、条件10を満たすことが好ましい。
条件10:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面において、動的接触角拡張収縮法で得られる、樹脂フィルムのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角ヒステリシスが5°以上。
ここで、接触角ヒステリシスとは、条件5と同様に、動的接触角における拡張収縮法によって得られる、前進接触角(θa)と後退接触角(θr)の差の絶対値を指す。また、PGMEAは、印刷時に使用される印刷ペーストに含まれる汎用的な溶剤である。即ち、この値を大きくすることで、固体表面に液滴が「Wenzelモード」で着滴し、印刷版との接触点を減らし、印刷版離れ性を高めることができる。さらには、印刷時に印刷ペーストが樹脂フィルム表面の凹凸に入り込み、溶媒除去後の印刷層が樹脂フィルムとの密着性を高めることができる。同様の観点から、樹脂フィルムのPGMEAに対する接触角ヒステリシスは8°以上であることがより好ましい。
条件10を満たすための具体的方法は、樹脂フィルムを製造する際の基材について、サンドブラスト処理をRaが620nm以上となるように施した基材や、5μm以上の粒子を20質量部以上含むコーティング層を積層した基材を用いることを好ましく挙げることができ、これらの方法についての詳細は後述する。
(条件11)
本発明の樹脂フィルムは、条件11を満たすことが好ましい。
条件11:樹脂フィルムのヘイズが30%以上70%以下。
ここで、樹脂フィルムのヘイズとは、樹脂フィルムの曇り度を示し、光の拡散の程度を表すパラメーターである。表面の凹凸サイズを大きくするとヘイズを大きくすることができる。一方で、この値が大きすぎるとフィルムが不透明となり、フィルムの下に置かれたものの形状や、色、印等がぼやけてしまうため、モジュール化する際の位置調整が難しくなる。同様の観点で、樹脂フィルムのヘイズは40%以上60%以下がより好ましい。
樹脂フィルムのヘイズは、NDH-5000(Nippon Denshoku社)に樹脂フィルムの表面粗さが高い面を上向きにして測定を3回行い、その平均値をヘイズとする。
特に、粒子を含む層を樹脂フィルムに積層した場合、粒子と樹脂フィルム間での組成の違いにより、屈折率が変わり、ヘイズが高くなる傾向がある。したがって、条件11を満たす方法としては、粒子を含む層の積層ではなく、樹脂フィルムを製造する際の基材の転写を好ましく挙げることができる。
(素材・構造・結合)
本発明の樹脂フィルムは、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、より選ばれる1種以上を含むことが、適度な伸縮性を得られる観点で好ましい。
なかでも、本発明の樹脂フィルムは、化学式1の構造およびウレタン結合を含むことが好ましい。
Figure 2022151490000011
なお、化学式1のRは、水素またはメチル基を指す。
樹脂フィルムが、上記の構造や結合を含むことは、様々な分析方法により調べることが可能であるが、少なくともFT-ATR-IR(フーリエ変換全反射赤外分光光度法)または熱分解GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析法)による分析方法で上記の構造や結合を含む場合、もしくは樹脂フィルムを形成する原料から上記の構造や結合を含むことを把握できる場合は、樹脂フィルムが、上記の構造や結合を含むこととする。
樹脂フィルムが、上記の構造を有することで、強固な化学架橋構造を形成し、強い復元性を付与することができる。また、ウレタン結合を含むことで、水素結合による弱い物理架橋を形成することで、柔軟性を保ちつつ、復元性を付与できる。
前記化学式1の構造は、化学式10の構造を含むことがより好ましい。
Figure 2022151490000012
なお、化学式10のRは、水素またはメチル基を指す。
化学式10のRは、以下のいずれかを指す。
・置換または無置換のアルキレン基、
・置換または無置換のアリーレン基、
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基、
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基、
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基、
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基。
前記ウレタン結合によるセグメントは、化学式11に示す構造を含むことが好ましい。
Figure 2022151490000013
なお、化学式11のRは、以下のいずれかを指す。
・置換または無置換のアルキレン基、
・置換または無置換のアリーレン基。
加えて、本発明の樹脂フィルム100質量%中、アクリルウレタン系樹脂を30質量%以上含むことが柔軟性と復元性を高水準で得る観点で好ましい。
本発明の樹脂フィルムは、化学式2のセグメントを含み、さらに化学式3のセグメントまたは化学式4のセグメントのいずれかを含むことが好ましい。
Figure 2022151490000014
Figure 2022151490000015
Figure 2022151490000016
pは1以上の整数である。
rは1以上の整数である。
sは1以上の整数である。
ここで、化学式2のセグメントは、前述のウレタン結合として好ましいものである。化学式3のセグメントと化学式4のセグメントは、ポリオール残基として好ましいものである。化学式2のセグメントと化学式3のセグメントの組み合わせ、または、化学式2のセグメントと化学式4のセグメントの組み合わせとすることで、各セグメント間の相互作用を好ましい範囲にすることができ、水素結合などの物理架橋の形成を抑制しつつ、アクリル架橋の強固な化学架橋を低密度で形成することができる。
また、本発明の樹脂フィルムは、化学式5のセグメント、化学式6のセグメント、化学式7のセグメント、化学式8のセグメント、およびそれらの水添体のセグメントからなる群より選ばれる少なくとも1つのセグメントを含むことが好ましい。化学式5~8について、記載を省略した置換基は任意の置換基を採用できるが、水素原子であることが好ましい。
Figure 2022151490000017
Figure 2022151490000018
Figure 2022151490000019
Figure 2022151490000020
ここで、化学式5のセグメント、化学式6のセグメント、化学式7のセグメント、化学式8のセグメント、およびそれらの水添体のセグメントは、ポリオール残基として好ましいものである。特に、化学式5の水添体のセグメントまたは化学式6の水添体のセグメントが特に好ましい。化学式5のセグメント、化学式6のセグメント、化学式7のセグメント、化学式8のセグメント、およびそれらの水添体のセグメントを用いることで、水素結合などの物理架橋の形成をさらに抑制しつつ、アクリル架橋の強固な化学架橋を低密度で形成することができる。また、樹脂フィルムに印刷ペーストを塗工する際の耐溶剤性を良好にすることができる。
(層構成)
本発明の樹脂フィルムは、単層から構成されることが好ましい。ここで、単層から構成される、とは、走査型電子顕微鏡(SEM)法で断面観察した際に不連続な境界面が観測されないものをいう。具体的な観察方法は、UV硬化性樹脂で包埋した樹脂フィルムを、厚み方向に対する断面が得られるよう、ミクロトームを用いて、包埋した樹脂ごと樹脂フィルムを切削して得た断面に対して、オートファインコータを用いて30mA×20秒×2回の条件で白金を蒸着して得た試験片を、走査電子顕微鏡(SEM)を用い、倍率5000倍、加速電圧3kVの条件において観察する方法である。さらに詳細な観察方法は、実施例の測定方法にて詳述するものである。
(積層体構成)
本発明の積層体は、樹脂フィルムの少なくとも一方に、基材を含む積層体であることが好ましい。その一例を図1に示す。ここで、基材とは、樹脂フィルム形成用塗料組成物をその表面に展開することが可能な物品である。本発明の積層体において基材を設けるとよい理由は、樹脂フィルムの製造時や加工時において、搬送性や加工性を確保するためである。
また、本発明の樹脂フィルムの製造方法は、工程1、2、3、および4をこの順に行うことが好ましい。
工程1:条件12を満たす基材Aの上に、化学式9のセグメントを含む樹脂前駆体と溶媒を含む塗料組成物を塗布し、塗布層を形成する工程。
条件12:レーザー顕微鏡による、基材A表面の少なくとも一方の表面における平坦部比率が70%以下。
Figure 2022151490000021
は、水素またはメチル基を指す。
は、以下のいずれかであることが好ましい。
・置換または無置換のアルキレン基。
・置換または無置換のアリーレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基。
は、以下のいずれかであることが好ましい。
・置換または無置換のアルキレン基。
・置換または無置換のアリーレン基。
工程2:前記塗布層から溶媒を除去する工程。
工程3:活性エネルギー線を照射して、前記樹脂前駆体を架橋させる工程。
工程4:前記塗布層の基材A反対面に基材Bを貼付けた後に、基材Aを剥離する工程。
積層体の構成の例を図2、図3、図4に示す。ここで、基材Aは、搬送性向上のための基材であり、離型層を含む多層積層体でも良い。離型層を含むことで、基材Aを樹脂フィルムから剥離することが容易となり、基材Aの形状を樹脂フィルムに転写しやすくなる。また、基材Aを樹脂フィルムから剥離する際に、後述する基材Bと樹脂フィルムの間で剥がれる、いわゆる泣き別れを抑制することができる。
また、基材Bは、基材A剥離後の搬送性向上や傷つき防止のための基材であり、離型層や粘着層を含む多層積層体でも良い。離型層を含むことで、基材Bを樹脂フィルムから剥離することが容易となり、樹脂フィルム単体で後加工することができる。また、粘着層を含むことで、基材Bが樹脂フィルムと強く密着し、基材Aを樹脂フィルムから剥離する際に、基材Bと樹脂フィルムの間で剥がれる、いわゆる泣き別れを抑制することができる。
[本発明の形態]
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
[樹脂フィルム]
本発明の樹脂フィルムは、その課題である、柔軟性、復元性、印刷版離れ性、印刷層密着性の他に、隠蔽性、光沢性、耐指紋性、成型性、意匠性、耐傷性、防汚性、耐溶剤性、反射防止、帯電防止、導電性、熱線反射、近赤外線吸収、電磁波遮蔽、投錨性、易接着性等の他の機能を有してもよく、さらに1つ以上の層を形成して積層体としてもよい。例えば粘着層、電子回路層、印刷層、光学調整層等や他の機能層を設けてもよい。
前記樹脂フィルムの厚みは特に限定はなく、その用途によって適宜選択される。樹脂フィルムの厚みの下限は、樹脂フィルム自身の弾性率、破断伸度、基材と樹脂フィルム間の剥離力や剥離角度などの影響を受けるため、一概には定まらないが、後述する積層体の製造方法を用いて、一般的な柔軟材料同等の物性を実現する場合には、数μm程度が下限である。
[積層体]
本発明の積層体の好ましい態様は上述のとおりだが、前述の物性を示す樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、基材を有する積層体であることが好ましく、積層体が平面状態であっても、または成形された後の3次元形状のいずれであってもよい。
[基材]
本発明の積層体に用いられる基材は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれを用いてもよく、ホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。基材を構成する樹脂は、成形性が良好であれば好ましく、その点から熱可塑性樹脂がより好ましい。
基材に好適に用いられる熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂・3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂・4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体・フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂などを用いることができる。
基材に好適に用いられる熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂は、十分な延伸性と追従性を備える樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、強度・耐熱性・透明性の観点から、特に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、もしくはメタクリル樹脂であることがより好ましい。
基材に好適に用いられるポリエステル樹脂とは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、酸成分およびそのエステルとジオール成分の重縮合によって得られる。具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。またこれらに酸成分やジオール成分として他のジカルボン酸およびそのエステルやジオール成分を共重合したものであってもよい。これらの中で透明性、寸法安定性、耐熱性などの点でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートが特に好ましい。
基材は、表面全体がマット形状であり、平坦部比率が40%以下であることが好ましい。マット形状の付与方法は、基材作成時の粒子添加、基材作成後のサンドブラスト処理、粒子層のコーティングなどが挙げられ、特に、サンドブラスト処理、粒子層のコーティングが好ましい。
また基材には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。
さらに基材は、単層構成、積層構成のいずれであってもよい。
また、基材の表面には、本発明の樹脂フィルムとは別に易接着層、帯電防止層、アンダーコート層、紫外線吸収層、離型層などの機能性層をあらかじめ設けることも可能であり、本発明の積層体においては、基材と樹脂フィルム間の剥離力を低下させるため、離型層を有することが好ましい。離型層の詳細については後述する。
基材の表面には、前記樹脂フィルムを形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
[離型層]
本発明の積層体において、樹脂フィルム単体で後加工する場合は、前述のように基材に離型層を有することが好ましい。離型層を有する基材は、離型フィルムとも呼ばれる。離型層は、密着性や帯電防止性、耐溶剤性等を付与する観点から複数の層から構成されていてもよく、基材の両面にあってもよい。
離型層の厚みは、離型層の面内均一性、外観品位、剥離力の面から10~500nmであることが好ましく、20~300nmであることがより好ましい。なお、「~」は以上、以下を示す。
[樹脂フィルムの製造方法]
本発明の樹脂フィルムの製造方法は、基材A上に、化学式2のセグメントを含む樹脂前駆体を含む塗料組成物を塗布して、塗布層を形成し(工程1)、次いで塗布層から溶媒を除去して乾燥し(工程2)、活性エネルギー線を照射して、樹脂前駆体を架橋させ(工程3)、最後に基材A反対面に基材Bを貼付けた後に、基材Aを剥離する(工程4)ことが好ましい。
工程1の基材A上への塗料組成物の塗布方法は、基材A上に塗料組成物を塗布し、面内均一な塗布層を形成できれば、特に限定されない。フィルム上への塗布方法としては、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などから適宜、選択できる。ここで塗布層とは、塗布工程により形成された「液体の層」を指す。
工程2の溶媒を除去する方法、つまり乾燥方法は、基材上に形成された塗布層から、溶媒を除去することができれば、特に限定されない。乾燥方法としては、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)によりなどが挙げられるが、この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
工程3の架橋方法は、乾燥後、溶媒を除去した塗布層に対して活性エネルギー線を照射することにより、反応させ、塗膜を架橋させるものである。
活性エネルギー線による架橋は、汎用性の点から電子線(EB)および/または紫外線(UV)であることが好ましい。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100~3,000(mW/cm)が好ましく、より好ましくは200~2,000(mW/cm)、さらに好ましくは300~1,500(mW/cm)、となる条件で紫外線照射を行うことがよく、紫外線の積算光量が、100~3,000(mJ/cm)が好ましく、より好ましくは200~2,000(mJ/cm)、さらに好ましくは300~1,500(mJ/cm)となる条件で紫外線照射を行うことがよい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計および被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
工程4の基材Bは、基材Aと比べて剥離力が高ければ、特に限定されない。離型層や粘着層を含む多層積層体でも良い。離型層を含むことで、基材Bを樹脂フィルムから剥離することが容易となり、樹脂フィルム単体で後加工することができる。また、粘着層を含むことで、基材Bが樹脂フィルムと強く密着し、基材Aを樹脂フィルムから剥離する際に、基材Bと樹脂フィルムの間で剥がれる、いわゆる泣き別れを抑制することができる。
[樹脂前駆体]
樹脂前駆体は、架橋させることができる部位を有する化合物であれば、特に限定されないが、
化学式9の構造を含む樹脂前駆体が好ましく、化学式12の構造を含む樹脂前駆体がより好ましい。
Figure 2022151490000022
Figure 2022151490000023
およびRは、水素またはメチル基を指す。
、R、およびR10は、以下のいずれかであることが好ましく、nは3以上の整数であることが好ましい。
・置換または無置換のアルキレン基。
・置換または無置換のアリーレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基。
、Rは、以下のいずれかであることが好ましい。
・置換または無置換のアルキレン基。
・置換または無置換のアリーレン基。
化学式9および12の構造は、前述のように、図中のXで示される(メタ)アクリル基が末端にあり、この末端にある(メタ)アクリル基(X)が、架橋させることができる部位に相当する。さらに、(メタ)アクリル基(X)は、図中のYで示されるポリイソシアネート残基と隣接している。さらに化学式12のセグメントは、Yで示されるポリイソシアネート残基のもう一端と、化学式12中のZで示されるポリオール残基(Z)が隣接していることを意味している。
化学式9および12のポリイソシアネート残基(Y)は、好ましくは、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)、NDI(1,5-ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、PPDI(パラフェニレンジイソシアネート)、TMXDI(テトラメチルキシリレンジイソシアネート)、HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、H6XDI(水添キシリレンジイソシアネート)、H12MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)等のポリイソシアネートの残基である。
化学式12のポリオール残基は、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、もしくは、前述の化学式5から8のセグメントより選ばれる1つ以上のセグメントを含むポリオールであるである。
[塗料組成物]
本発明の積層体の製造方法にて用いられる「塗料組成物」は、基材上に面内均一に塗布でき、本発明の特性を示す樹脂フィルムを形成することができれば特に限定されないが、前述の積層体の製造方法に適した塗料組成物であることが好ましい。具体的には、前述の樹脂前駆体と、後述する溶媒、その他の成分を加えて、塗料組成物とすることが好ましい。
[溶媒]
本発明の積層体の製造方法に用いられる塗料組成物は溶媒を含んでもよく、塗布層を面内に均一に形成するためには、溶媒を含む方が好ましい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下、特に好ましくは1種類以上4種類以下である。ここで「溶媒」とは、前述の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。
ここで、溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2-プロパノールと、n-プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
[塗料組成物中のその他の成分]
本発明の積層体の製造方法に用いられる塗料組成物は,酸化防止剤、重合開始剤、硬化剤や触媒を含むことが好ましい。重合開始剤および触媒は、樹脂フィルムの架橋を促進するために用いられる。重合開始剤としては、塗料組成物に含まれる成分をアニオン、カチオン、ラジカル重合反応等による重合、縮合または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
酸化防止剤は、その作用機構から、ラジカル連鎖開始防止剤、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤に大別され、高温条件下での劣化抑制に対してこれらのいずれでも本発明の効果は得られるが、ラジカル捕捉剤、または過酸化物分解剤がより好ましく、ヒンダードフェノール系、セミヒンダードフェノール系のラジカル捕捉剤、またはホスファイト系、チオエーテル系の過酸化物分解剤がより好ましい。
重合開始剤、硬化剤および触媒は種々のものを使用できる。また、重合開始剤、硬化剤および触媒はそれぞれ単独で用いてもよく、複数の重合開始剤、硬化剤および触媒を同時に用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。また、ウレタン結合の形成反応を促進させる架橋触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどが挙げられる。
光重合開始剤としては、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物、または、アシルフォスフィンオキサイド系化合物を使用することが好ましい。さらに、耐湿熱性の点から、ヒドロキシエトキシ基を導入したアルキルフェノン系化合物を使用することがより好ましい。アルキルフェノン形化合物の具体例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタン、1-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-エトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン、およびこれらの材料を高分子量化したものなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系化合物の具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、およびこれらの材料を高分子量化したものが挙げられる。これらを単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、樹脂フィルムを形成するために用いる塗料組成物にレベリング剤、滑剤、帯電防止剤等を加えてもよい。これにより、樹脂フィルムはレベリング剤、滑剤、帯電防止剤等を含有することができる。
レベリング剤の例としては、アクリル共重合体またはシリコーン系、フッ素系のレベリング剤が挙げられる。帯電防止剤の例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩が挙げられる。
[用途例]
本発明の樹脂フィルムは、光学特性、柔軟性、伸縮性、搬送性、外観品位に優れるといった利点を活かし、特に高い柔軟性や伸縮性が求められる用途に好適に用いることができる。
一例を挙げると、メガネ・サングラス、化粧箱、食品容器などのプラスチック成形品、水槽、展示用などのショーケース、スマートフォンの筐体、タッチパネル、カラーフィルター、フラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、フレキシブルデバイス、ウェアラブルデバイス、センサー、回路用材料、電気電子用途、キーボード、テレビ・エアコンのリモコンなどの家電製品、ミラー、窓ガラス、建築物、ダッシュボード、カーナビ・タッチパネル、ルームミラーやウインドウなどの車両部品、および種々の印刷物、医療用フィルム、衛生材料用フィルム、医療用フィルム、農業用フィルム、建材用フィルム等、それぞれの表面材料や内部材料や構成材料や製造工程用材料に好適に用いることができる。これら材料は本発明の樹脂フィルムを用いることで、その品位を優れたものとすることができる。また、本発明の樹脂フィルムは印刷版離れ性と、印刷層との密着性に優れることから、エレクトニクスデバイス回路基板用途に特に好ましく用いることができる。
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
「樹脂前駆体の合成」
樹脂前駆体の合成において、使用する原材料は以下の通りである。
「ジイソシアネート」
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
・HMDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
・MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
「ポリオール」
・PBAA: ポリブチレンアジペート 東ソー株式会社製 “ニッポラン”(登録商標)3027(重量平均分子量2500)
・PTMG:ポリテトラメチレングリコール 三菱ケミカル株式会社製 PTMG2000(重量平均分子量2000)
・PEAA:ポリエチレングリコールアジペート 東ソー株式会社製 “ニッポラン”(登録商標)4040(重量平均分子量2000)
・MPDAA:ポリ(3-メチルペンタンジオールアジペート) クラレ株式会社製 “クラレポリオール”(登録商標)P-2010(重量平均分子量 2000)
・PB:両末端水酸基導入ポリブタジエン 日本曹達株式会社製 G-3000(重量平均分子量 3000)
・HPB:両末端水酸基導入水添ポリブタジエン 日本曹達株式会社製 GI-3000(重量平均分子量 3100)
「ヒドロキシアクリレート」
・HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
[樹脂前駆体1]
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、ジイソシアネートとしてIPDI、ポリオールとしてPBAA、およびトルエンを入れた。このとき、ジイソシアネートとポリオールのモル比が0.43:0.29となるようにし、固形分濃度が60質量%になるようにした。90℃で反応させ、未反応時における残存イソシアネート基を100質量%としたとき、反応により残存イソシアネート基が1.4質量%となった時点で温度を70℃に下げ、ヒドロキシアクリレートとしてHEAを加えた。このとき、未反応時におけるジイソシアネートとポリオールとヒドロキシアクリレートのモル比が0.43:0.29:0.29となるようにした。未反応時における残存イソシアネート基を100質量%としたとき、反応により残存イソシアネート基が0.3質量%となった時点で加熱を止めて反応を終了し、トルエンを追加して固形分濃度を60質量%に調整して、樹脂前駆体1のトルエン溶液を得た。
[樹脂前駆体2~12]
ジイソシアネート、ポリオールの組み合わせとモル比を表1に記載の組み合わせに変えた以外は前記樹脂前駆体1と同様にして、樹脂前駆体2~12のトルエン溶液を得た。
Figure 2022151490000024
[光重合開始剤]
下記の材料を光重合開始剤として使用した。
光重合開始剤1 “IRGACURE”(登録商標)184(BASFジャパン株式会社製)
[レベリング剤]
下記の材料をレベリング剤1~3として使用した。
レベリング剤1 FT-650AC(株式会社ネオス製):フッ素系
レベリング剤2 “BYK”(登録商標)-394(ビックケミージャパン株式会社製):アクリル系
レベリング剤3 “BYK”(登録商標)-UV-3500(ビックケミージャパン株式会社製):シリコーン系
[塗料組成物1~13の調合]
樹脂前駆体、光重合開始剤、レベリング剤の各固形分が表2に記載の比率となるよう混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度40質量%の樹脂フィルム形成用塗料組成物1~13を得た。
Figure 2022151490000025
[塗料組成物14の調合]
側鎖にメタクリル基がついた、2官能メタクリル変性ポリイソプレン(株式会社クラレ社製“クラプレン”(登録商標)UC-102AM、重量平均分子量17,000)をトルエンで希釈し、固形分濃度60質量%の樹脂前駆体14のトルエン溶液を得た。
[塗料組成物15の調合]
アルゴンガス置換した、冷却管および攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)、カリウムシリコネート0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。そして、3時間後、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
さらに、4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンA1を得た。
上記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンA1の合成工程において、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)に加えて2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.86g(2.5mmol)を用いたこと以外は、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンA1の合成工程と同様にすることで、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンA2を合成した。
以下の材料をあらかじめ混練し、シリコーンゴムコンパウンド1を得た。
・ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンA1 : 72質量部。
・ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンA2 : 18質量部。
・ヘキサメチルジシラザン SIH6110.1 (Gelest社製) : 10質量部。
・ジビニルテトラメチルジシラザンSID4612.0 (Gelest社製) : 0.5質量部。
・脱イオン水 : 5.25質量部。
その後、シリコーンゴムコンパウンド1 100質量部にシリカ粒子“AEROSIL”(登録商標)300 (日本アエロジル株式会社製) 25質量部を加えて、カップリング反応のために窒素雰囲気下、60~90℃の条件下で1時間混練する第1ステップと、副生成物(アンモニア)の除去のために減圧雰囲気下、160~180℃の条件下で2時間混練する第2ステップとを経て、次いで、冷却し、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンA1を8質量部と、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンA2を2質量部添加し、20分間混練し、シリコーンゴムコンパウンド2を得た。
続いて、以下の材料とトルエンを用いて希釈し、固形分濃度30質量%の樹脂フィルム形成用塗料組成物15を得た。
・シリコーンゴムコンパウンド2 : 100質量部。
・オルガノハイドロジェンポリシロキサン 88466 (モメンティブ社製) : 0.35質量部。
・白金触媒SIP6831.2 (Gelest社製) : 0.05質量部。
・反応阻害剤(1-エチニル-1-シクロヘキサノール) : 0.1質量部。
[粒子層用塗料組成物]
アクリルバインダー(DIC(株)製の「“アクリディック”(登録商標)A-187」)を固形分換算で47質量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)の「“コロネート”(登録商標)HL」)を固形分換算で23質量部、ビーズ(富士シリシア化学(株)のシリカ粒子「“サイリシア”(登録商標)740」平均粒子径5μm)を固形分換算で30質量部、酢酸エチルに溶解または分散して調製した。
[原反フィルム]
下記の材料を原反フィルム1~8として使用した。
原反フィルム1 二軸延伸PETフィルム 厚み50μm Ra80nm。
原反フィルム2 二軸延伸PETフィルム 厚み50μm Ra220nm。
原反フィルム3 二軸延伸PETフィルム 厚み50μm Ra420nm。
原反フィルム4 “ルミラー”(登録商標) T60 50μm(東レ株式会社製)に対し、Raが410nmとなるように、サンドブラスト処理を実施したもの。
原反フィルム5 “ルミラー”(登録商標) T60 50μm(東レ株式会社製)に対し、Raが550nmとなるように、サンドブラスト処理を実施したもの。
原反フィルム6 “ルミラー”(登録商標) T60 50μm(東レ株式会社製)に対し、Raが750nmとなるように、サンドブラスト処理を実施したもの。
原反フィルム7 “ルミラー”(登録商標) T60 50μm(東レ株式会社製)に対し、以下記載する塗料1を乾燥後厚みが5μmとなるよう塗布した後に、100℃で30秒乾燥させたもの。
原反フィルム8 “ルミラー”(登録商標) T60 50μm(東レ株式会社製)に対し、以下記載する塗料2を乾燥後厚みが5μmとなるよう塗布した後に、100℃で30秒乾燥させたもの。
<塗料1>
アクリルバインダー(DIC(株)製の「“アクリディック”(登録商標)A-187」)を固形分換算で53質量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)の「“コロネート”(登録商標)HL」)を固形分換算で27質量部、ビーズ(富士シリシア化学(株)のシリカ粒子「“サイリシア”(登録商標)740」平均粒子径5μm)を固形分換算で20質量部、酢酸エチルに溶解または分散して調製したもの。
<塗料2>
アクリルバインダー(DIC(株)製の「“アクリディック”(登録商標)A-187」)を固形分換算で40質量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)の「“コロネート”(登録商標)HL」)を固形分換算で20質量部、ビーズ(富士シリシア化学(株)のシリカ粒子「“サイリシア”(登録商標)740」平均粒子径5μm)を固形分換算で40質量部、酢酸エチルに溶解または分散して調製したもの。
[離型層用塗料組成物]
下記材料を混合し、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度5質量%の離型層用塗料組成物を得た。
・側鎖型カルビノール変性反応型シリコーンオイル
(X-22-4015信越化学工業(株) 固形分濃度:100質量%):5質量部
・両末端型ポリエーテル変性反応型シリコーンオイル
(X-22-4952信越化学工業(株) 固形分濃度:100質量%):5質量部
・アクリル変性アルキド樹脂溶液
(ハリフタール KV-905 ハリマ化成株式会社 固形分濃度 53質量%):100質量部
・イソブチルアルコール変性メラミン樹脂溶液
(“メラン”(登録商標)2650L 日立化成株式会社 固形分濃度 60質量%):20質量部
・パラトルエンスルホン酸:5質量部。
[積層体、樹脂フィルムの製造方法]
[離型層付き基材の形成]
小径グラビアコーターを有する塗布装置を用い、原反フィルムに、離型層用塗料組成物を乾燥後の離型層厚みが、約200nmになるように、グラビアロールの線数、グラビアロールの周速、離型層用塗料組成物固形分濃度を調整して塗布し、次いで熱風温度140℃にて30秒保持することで、乾燥と架橋を行い、離型層付き基材1~8を得た。なお、使用した原反フィルム種は、表3の通りである。
Figure 2022151490000026
[積層体の形成方法]
<実施例1~9、11~32、比較例1~8>
以下の方法により積層体および樹脂フィルムを作成した。
(工程1)
基材Aとして、前述の離型層付き基材を使用し、スロットダイコーターによる連続塗布装置を用い、前述の樹脂フィルム形成用塗料組成物を、離型層付き基材の離型層上に、架橋後の樹脂フィルムの厚みが50μmになるように、吐出流量を調整して塗布し、塗布層を形成した。
(工程2)
工程1にて形成した塗布層を、下記の条件で乾燥させて、溶媒を除去した。
送風温度:50℃
風速;塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向:;塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間:2分間。
(工程3)
工程2にて、溶媒を除去して得られた塗布層(未架橋の樹脂フィルム)に、下記の条件で活性エネルギー線を照射して架橋させ、基材A、離型層および樹脂フィルムからなる積層体を得た。
照射光源:高圧水銀灯
照射出力:400W/cm
積算光量:120mJ/cm
酸素濃度:0.1体積%。
(工程4)
工程3にて得られた塗布層の基材A反対面に、基材Bとして原反フィルム1をロールtoロールで貼合させた。次いで、基材Aを剥離させて、基材B、樹脂フィルムからなる積層体を得た。
<実施例10>
以下の方法により積層体および樹脂フィルムを作成した。
(工程1)
基材Aとして、前述の離型層付き基材1を使用し、スロットダイコーターによる連続塗布装置を用い、塗料組成物2を、離型層付き基材の離型層上に、架橋後の樹脂フィルムの厚みが50μmになるように、吐出流量を調整して塗布し、塗布層を形成した。
(工程2)
工程1にて形成した塗布層を、下記の条件で乾燥させて、溶媒を除去した。
送風温度:50℃
風速;塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向;塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間:2分間。
(工程3)
工程2にて、溶媒を除去して得られた塗布層(未架橋の樹脂フィルム)に、下記の条件で活性エネルギー線を照射して架橋させ、基材A、離型層および樹脂フィルムからなる積層体を得た。
照射光源:高圧水銀灯
照射出力:400W/cm
積算光量:120mJ/cm
酸素濃度:0.1体積%。
(工程4)
積層体の樹脂層側の面に、スロットダイコーターによる連続塗布装置を用い、前述の粒子層用塗料組成物を、乾燥後の膜厚が2μmとなるように、吐出流量を調整して塗布し、粒子層を形成した。
(工程5)
工程1にて形成した塗布層を、下記の条件で乾燥させて、溶媒を除去し、基材A、樹脂フィルム、粒子層からなる積層体を得た。
送風温度:100℃
風速;塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向;塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間:30秒間。
以上の方法により実施例1~32、比較例1~8の積層体および樹脂フィルムを作成した。各実施例、比較例に対応する樹脂フィルム形成用塗料組成物、離型層付き基材、粒子層は、表4に記載した。
Figure 2022151490000027
[樹脂フィルムの評価]
樹脂フィルムについて、次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表に示す。
積層体から基材を剥離して樹脂フィルムの測定サンプルを得た。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
[樹脂フィルムの貯蔵弾性率、損失正接の測定]
測定サンプルを10mm幅の矩形に切り出し試験片とした。
JIS K7244-4(1999)の引張振動-非共振法に基づき(これを動的粘弾性法とする)、セイコーインスツルメンツ株式会社製の動的粘弾性測定装置DMS6100を用いて樹脂フィルムの温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率、損失正接を求めた。
測定モード:引張
チャック間距離:20mm
試験片の幅:10mm
周波数:1Hz
歪振幅:10μm
最小張力:20mN
力振幅初期値:40mN
測定温度:-100℃から200℃まで
昇温速度:5℃/分。
[静的接触角の測定]
静的接触角の測定は、試料を事前に25℃の環境下で、12時間放置後に実施した。協和界面科学株式会社製のDrop Master DM-501を使用し、液滴の作成は、ニードルを這い上がらない範囲で、できるだけ小さい液滴を作成できる条件を選択した。静的接触角は樹脂フィルム表面に着滴してから5秒後に撮影した画像を使用し、θ/2法を用いて、静的接触角を算出した。
[樹脂フィルム表面および基材の平坦部比率の算出]
樹脂フィルム表面および基材の平坦部比率は、レーザー顕微鏡(キーエンス製VK9700)を用い、50倍の対物レンズ、光量100%、Z測定ピッチ0.02μmで観察を行い、解析ソフト(VK viewer)上で観察表面の任意の箇所で100μm分の線粗さデータを取得した。得られた線粗さデータのXYキャリブレーション値(1ピクセル毎のXY方向の距離)から、1μm当たりのピクセル数を計算した。実断面プロファイル(1ピクセル毎のZ方向の高さ)において、1μm当たりのZ方向の高低差(a)となるように、実断面プロファイルの差分を取得した。これらの操作を3回行い、得られたデータ3回分からヒストグラムを取り、100nm以下の頻度を算出した。
[樹脂フィルムの1mm角あたりの表面積の算出]
樹脂フィルムの1mm角あたりの表面積は、具体的には上述の表面の平坦部比率と同様に、レーザー顕微鏡(キーエンス製VK9700)を用い、50倍の対物レンズ、光量100%、Z測定ピッチ0.02μmで観察を行い、解析ソフト(VK viewer)上で観察表面の任意の箇所で100μm分の線粗さデータを取得した。得られた線粗さデータのXYキャリブレーション値(1ピクセル毎のXY方向の距離)から、1μm当たりのピクセル数を計算した。実断面プロファイル(1ピクセル毎のZ方向の高さ)において、1μm当たりのZ方向の高低差(a)となるように、実断面プロファイルの差分を取得した。続いて、1μm毎の表面長さ(L=(1+a)1/2)を算出し、実断面プロファイルデータで総和を取った上で、1mm毎の表面長さ(L)となるように規格化した。この値を2乗することで、1mm角あたりの表面積(S=(L)とした。
[樹脂フィルムのRa、Rq、Rzの算出]
樹脂フィルムのRa、Rq、およびRzは、具体的にはレーザー顕微鏡(キーエンス製VK9700)を用い、50倍の対物レンズ、光量100%、Z測定ピッチ0.02μmで観察を行い、解析ソフト(VK viewer)上で観察表面の任意の箇所で100μm×100μmぶんの面粗さデータを取得した。これらの操作を3回行い、各データのRa、Rq、Rzの値を平均したものを樹脂フィルムのRa、Rq、Rzとした。
[動的接触角の測定方法]
動的接触角の測定は、試料を事前に25℃の環境下で、12時間放置後に実施した。測定溶剤として富士フイルム和光純薬株式会社製蒸留水、および富士フイルム和光純薬株式会社製和光一級グレードのPGMEAを用い、それぞれの測定溶剤について、協和界面科学株式会社製のDrop Master DM-501を使用し、液滴の作成は、ニードルを這い上がらない範囲で、できるだけ小さい液滴を作成できる条件を選択した。動的接触角は樹脂フィルム表面に着滴してから、シリンジ針先端を指したままの状態で液吐出速度8.5μL/sで連続的に注入と吸引を繰り返し、同液滴の縮小過程の形状を100ミリ秒毎に連続的に撮影しその過程のそれぞれの接触角を求めた。液滴の拡張・収縮過程の接触角は最初、拡張・収縮につれて変化し、次いで一定になる挙動を示す。拡張時の接触角を前進接触角、収縮時の接触角を後退接触角とした。ここで、接触角が一定になったとは、液滴が拡張・収縮していく方向に接触角を並べ、その順に連続した5点を選択したとき、連続した5点の標準偏差が最初に1°以下になった場合とした。前進接触角と後退接触角の差の絶対値を接触角ヒステリシスとした。
[樹脂フィルムの厚みと層数の観察]
樹脂フィルムの厚みと層数の観察は、日本電子株式会社製のSEM JSM-6700Fを用いたフィルムの断面SEM観察により行った。断面SEM観察用の試験片の作製手順は下記の通りで行った。
1.樹脂フィルムをUV硬化性樹脂で包埋した。
2.樹脂フィルムの厚み方向に対する断面が得られるよう日本ミクロトーム株式会社製のロータリーミクロトームRMSを用いて、包埋した樹脂ごと樹脂フィルムを切削した。
3.日本電子株式会社製のオートファインコータJFC-1600を用いて、切削したサンプルの断面に対して、白金を約10μm蒸着(条件:30mA×20秒×2回)し、試験片とした。
断面SEM観察の条件は下記の通りで行った。
・測定モード:LEIモード
・倍率:5000倍
・加速電圧:3kV
・WD(試料距離):8.0mm。
樹脂フィルムの厚みは、得られた断面SEM画像における、前述の包埋樹脂間の垂直方向距離から計算し、その算術平均値を採用した。また、樹脂フィルムの層数は、断面SEM画像における包埋樹脂間の垂直方向の不連続な境界面の数から算出した。
[樹脂フィルムのヘイズの測定方法]
樹脂フィルムのヘイズは、NDH-5000(Nippon Denshoku社)に樹脂フィルムの表面粗さが粗い面を上向きにして測定を3回行い、その平均値をヘイズとした。
[樹脂フィルムの柔軟性の評価]
樹脂フィルムを10mm幅×150mm長の矩形に切り出し試験片とした。なお、それぞれ150mm長の方向を樹脂フィルムの長手方向に合わせた。引張試験機(オリエンテック製“テンシロン”(登録商標)UCT-100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度300mm/minに設定し、測定温度23℃で引張試験を行った。
チャック間距離が、a(mm)のときのサンプルにかかる荷重b(N)を読み取り、以下の式から、ひずみ量x(%)と応力y(N/mm)を算出した。ただし、試験前のサンプル厚みをk(mm)とする。
ひずみ量:x=((a-50)/50)×100
応力:y=b/(k×10)。
なお、長手方向が分からない場合は任意の方向にサンプリングし、その後60度、120度回転させてサンプリングし、合計3サンプルの測定結果の平均値をもって評価した。
[樹脂フィルムの復元性の評価]
樹脂フィルムを10mm幅×150mm長の矩形に切り出し試験片とした。なお、それぞれ150mm長の方向を樹脂フィルムの長手方向に合わせた。引張試験機(オリエンテック製“テンシロン”(登録商標)UCT-100)を用いて、測定温度23℃において、復元性の優劣を見るため、変形速度の異なる2条件で評価を行った。
条件A:初期チャック間距離50mm、引張速度50mm/min 歪み量100%までサンプルを伸長後、サンプルへの引っ張り荷重解放し、測定前に初期試長として印をつけていた距離を測定してLmmとして、以下の式から弾性復元率z(%)を算出した。
弾性復元率z=(1-(L-50)/100)×100 (%)。
条件B:初期チャック間距離50mm、引張速度300mm/min 歪み量100%までサンプルを伸長後、サンプルへの引っ張り荷重を解放し、測定前に初期試長として印をつけていた距離を測定してLmmとして、以下の式から、弾性復元率z%を算出した。
弾性復元率z=(1-(L-50)/100)×100 (%)。
[樹脂フィルムのスクリーン印刷]
小型スクリーン印刷機(LS-150ニューロング精密工業株式会社製)に図5、または、図6に示すパターンを有するスクリーン版(100×100 SUS325-28-C NU-55 乳剤厚5μm 中沼アートスクリーン株式会社製)を装着し、スクリーン版上に印刷ペースト(LS-453-6Bアサヒ化学研究所株式会社製)を乗せた。次いで、印刷機ステージ上に樹脂フィルムを固定し、印刷運転を開始した。その後に、80℃で30分間乾燥させて、樹脂フィルム上に図7、または、図8に示すパターンの印刷層を形成させた。
[樹脂フィルムの印刷版離れ性の評価]
図5に示すスクリーン版で印刷した際のスクリーン版との貼り付きの有無を目視で確認し、以下の3段階で評価した。
○:印刷版/樹脂フィルム間で貼りつかず、印刷後に樹脂フィルムが印刷機ステージ上に乗っている。
△:印刷版/樹脂フィルム間で弱く貼りつくが、印刷運転中に印刷版/樹脂フィルム間で剥がれ、印刷後に樹脂フィルムが印刷機ステージ上に乗っている。
×:印刷版/樹脂フィルム間で強く貼りつき、印刷後に樹脂フィルムが印刷機ステージ上に乗っていない。
[樹脂フィルムの印刷層密着性の評価]
スクリーン印刷により、樹脂フィルム上に図7に示すようなベタパターンの印刷層を形成させた。JIS K5600-5-6(1999)に記載の付着性(クロスカット法)に従い、印刷層と樹脂フィルムとの付着性評価を行った。
[抵抗値変化率の測定]
抵抗値変化率の測定は、配線パターンの印刷層を形成させた樹脂フィルムを引張試験機で伸張させながら、デジタルマルチメーターで抵抗値を計測する方法で行った。
スクリーン印刷により、樹脂フィルム上に図8に示すような電極部間に幅1mm、長さ50mmの直線部を有した配線パターンの印刷層を形成させた。この配線パターンを中心として、20mm幅×150mm長に切り出し試験片とした。なお、それぞれ150mm長の方向を樹脂フィルムの長手方向に合わせた。この試験片の電極部に30mm角の銅板を接触させ、テープで固定した。この試験片+銅板を、引張試験機(オリエンテック製“テンシロン”(登録商標)UCT-100)に接続した。チャック間距離は50mmとして、チャック間と直線部が一致するように調整した。銅板にクリップを介してデジタルマルチメーター(キーサイト・テクノロジー製“デジタルマルチメーター”34465A)に接続した。デジタルマルチメーターで抵抗値を記録しながら、引張速度100mm/minで、歪み量20%までサンプルを伸長、10秒保持、0%まで復元、10秒保持のサイクルを20回繰り返した。この時の1回目のサイクルにおける抵抗値の最大値P(Ω)および20回目のサイクルにおける抵抗値の最大値Q(Ω)から、抵抗値変化率Q/Pを求めた。
なお、長手方向が分からない場合は任意の方向にサンプルを作製し、その後60度、120度回転させた場合のサンプルを作製し、合計3サンプルの測定結果の平均値をもって評価した。
表5に前述の条件1から条件11の評価結果、表6に樹脂フィルムの化学式1~8の構造およびウレタン結合の含有/非含有、および、樹脂フィルムの層構成を、表7に樹脂フィルムの柔軟性、復元性、印刷版離れ性、印刷層密着性、抵抗値変化率の結果をまとめた。
Figure 2022151490000028
Figure 2022151490000029
Figure 2022151490000030
表6において、化学式1の構造の欄の「含む」の意味は、各々の実施例等が化学式1の構造を含むことを意味し、「含まない」の意味は、各々の実施例等が化学式1の構造を含まないことを意味する。化学式2~8、および、ウレタン結合についても、同様である。
1、4、7、11、21、24:積層体
2、5、8、12、22、25:樹脂フィルム
6、9:基材A
3、10、13:基材B
14、17:スクリーン版
15、18:乳剤
16:メッシュ(ベタパターン)
19:メッシュ(配線パターン電極部)
20:メッシュ(配線パターン直線部)
23:印刷層(ベタパターン)
26:印刷層(配線パターン電極部)
27:印刷層(配線パターン直線部)
本発明の樹脂フィルムは、光学特性、柔軟性、伸縮性、搬送性、外観品位に優れるといった利点を活かし、特に高い柔軟性や伸縮性が求められる用途に好適に用いることができる。
一例を挙げると、メガネ・サングラス、化粧箱、食品容器などのプラスチック成形品、水槽、展示用などのショーケース、スマートフォンの筐体、タッチパネル、カラーフィルター、フラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、フレキシブルデバイス、ウェアラブルデバイス、センサー、回路用材料、電気電子用途、キーボード、テレビ・エアコンのリモコンなどの家電製品、ミラー、窓ガラス、建築物、ダッシュボード、カーナビ・タッチパネル、ルームミラーやウインドウなどの車両部品、および種々の印刷物、医療用フィルム、衛生材料用フィルム、医療用フィルム、農業用フィルム、建材用フィルム等、それぞれの表面材料や内部材料や構成材料や製造工程用材料に好適に用いることができる。

Claims (19)

  1. 以下の条件1から3のすべてを満たす、樹脂フィルム。
    条件1:樹脂フィルムの温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率が0.5MPa以上50MPa以下。
    条件2:樹脂フィルムの25℃における損失正接が0.5以下。
    条件3:レーザー顕微鏡による、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における平坦部比率が70%以下。
  2. 以下の条件4を満たす、請求項1に記載の樹脂フィルム。
    条件4:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における二乗平均平方根粗さRqが400nm以上。
  3. 以下の条件5を満たす、請求項1または2に記載の樹脂フィルム。
    条件5:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面において、動的接触角拡張収縮法で得られる、樹脂フィルムの水に対する接触角ヒステリシスが5°以上。
    ここで、接触角ヒステリシスとは、前進接触角と、後退接触角の差の絶対値を指す。
  4. 以下の条件6を満たす、請求項1から3のいずれかに記載の樹脂フィルム。
    条件6:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における算術平均粗さRaが430nm以上。
  5. 以下の条件7を満たす、請求項1から4のいずれかに記載の樹脂フィルム。
    条件7:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における最大高さRzが8μm以上。
  6. 以下の条件8を満たす、請求項1から5のいずれかに記載の樹脂フィルム。
    条件8:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面において、表面自由エネルギーが30mN/m以上。
  7. 以下の条件9を満たす、請求項1から6のいずれかに記載の樹脂フィルム。
    条件9:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面において、樹脂フィルム1mm角あたりの表面積が1.3mm以上。
  8. 以下の条件10を満たす、請求項1から7のいずれかに記載の樹脂フィルム。
    条件10:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面において、動的接触角拡張収縮法で得られる、樹脂フィルムのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角ヒステリシスが5°以上。
    ここで、接触角ヒステリシスとは、前進接触角と、後退接触角の差の絶対値を指す。
  9. 以下の条件11を満たす、請求項1から8のいずれかに記載の樹脂フィルム。
    条件11:樹脂フィルムのヘイズが30%以上70%以下
  10. 化学式1の構造およびウレタン結合を含む、請求項1から9のいずれかに記載の樹脂フィルム。
    Figure 2022151490000031
    なお、化学式1のRは、水素またはメチル基を指す。
  11. 化学式2のセグメントを含み、さらに化学式3のセグメントまたは化学式4のセグメントのいずれかを含む、請求項1から10のいずれかに記載の樹脂フィルム。
    Figure 2022151490000032
    Figure 2022151490000033
    Figure 2022151490000034
    pは1以上の整数である。
    rは1以上の整数である。
    sは1以上の整数である。
  12. 化学式5のセグメント、化学式6のセグメント、化学式7のセグメント、化学式8のセグメント、およびそれらの水添体のセグメントからなる群より選ばれる少なくとも1つのセグメントを含む、請求項1から11のいずれかに記載の樹脂フィルム。
    Figure 2022151490000035
    Figure 2022151490000036
    Figure 2022151490000037
    Figure 2022151490000038
  13. 単層である、請求項1から12のいずれかに記載の樹脂フィルム。
  14. 請求項1~13のいずれかに記載の樹脂フィルムの少なくとも一方に、基材を含む積層体。
  15. 工程1、2、3、および4をこの順に行う、請求項14に記載の積層体の製造方法。
    工程1:条件12を満たす基材Aの上に、化学式9のセグメントを含む樹脂前駆体と溶媒を含む塗料組成物を塗布し、塗布層を形成する工程。
    条件12:レーザー顕微鏡による、基材A表面の少なくとも一方の表面における平坦部比率が70%以下。
    Figure 2022151490000039
    工程2:前記塗布層から溶媒を除去する工程。
    工程3:活性エネルギー線を照射して、前記樹脂前駆体を架橋させる工程。
    工程4:前記塗布層の基材A反対面に基材Bを貼り付けた後に、基材Aを剥離する工程。
  16. 請求項1から13のいずれかに記載の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルム上に形成された導体回路を含む、電気回路体。
  17. 請求項1から13のいずれかに記載の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルム上に形成された導体回路を含む、ヘルスケアセンサー。
  18. 請求項1から13のいずれかに記載の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルム上に形成された導体回路を含む、ウエアラブルセンサー。
  19. 請求項1から13のいずれかに記載の樹脂フィルムをスクリーン印刷で加工する工程を備える、樹脂フィルム加工品の製造方法。
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