JP2022148217A - 電子放出体及び電界放射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】X線の実効焦点の縮小化させてX線による撮影画像の画質の改善を図る。【解決手段】X線管において電子線を受けるターゲットと対向するエミッタ31は、当該電子線を放出する円形の端面60を有する。この端面60は、凹曲面を成す電子放出面61を有する。さらに、この端面60には、エミッタ31がガード電極33と共に真空容器11に組み込まれた際にガード電極33と面接触可能な平坦部62が電子放出面61を隔てて一対に確保される。【選択図】図2
Description
本発明は、電子管、照明装置、X線管等の機器に適用される電子放出体とこれを備えた電界放射装置に関する。
X線管としては熱陰極型または冷陰極型のものが挙げられる。例えば図5に示された熱陰極型のX線管1は電子源としてフィラメント6が適用される。これに対して、図6に例示の冷陰極型のX線管1は、フィラメント6の代わりにエミッタ31が電子源として適用される。この冷陰極型のX線管1は、熱陰極型のものよりも、消費電力が少ないことに加えて小型化が可能であり、また、応答速度が速く、電子が高密度であるので、優位性がある(非特許文献1)。
X線管の焦点サイズの大きさは撮影画像の画質に影響する。例えば、焦点サイズが大きいと撮影画像はぼやけたものとなる一方で焦点サイズが小さいと詳細な画像となる。このことから、X線管においては焦点サイズを小さくする目的で電子源の小型化、収束筒の設置、ターゲットに角度をつける等の手段が採られる(例えば、特許文献1,2)。
高橋大造、深井利眞、錦織祐市、高橋怜那、「冷陰極可動式X線管の開発」、明電時報 通巻360号 2018 No.3
X線管の焦点には2種類ある。電子源から出た電子ビームが細い線束としてターゲットに衝突した場合、ターゲット表面に衝突した領域であって正面から観たものが実焦点と称される。一方、X線射出方向から観たターゲットの衝突領域は実効焦点と称される。一般的に焦点といえば実効焦点を意味する。
図5に示された熱陰極型のX線管1のフィラメント6から放出する電子ビームの実効焦点の領域は、長方形を成す。ターゲットへの電子ビームの衝突により生じるX線の実効焦点は、ターゲットの配置角度により一面が小さく現れる。前記実効焦点はターゲットの配置角度が小さくなるにつれて小さくなる。このことを利用すれば、フィラメントから発生する電子ビームは長方形でも最終的に正方形に近づき、撮影画像のぼやけが抑制され、焦点の縮小化が図られる。
一方、図6に示された冷陰極型のX線管1は、エミッタ31の電子放出面61が円形を成すことが多い。これは、部品の加工の観点から、エミッタ31を保護するガード電極33が円筒体に形成されるからである。このガード電極33の開口部330から露出したエミッタ31の電子放出面61からの電子線L1がターゲット41に衝突して発生したX線の実効焦点は、同図(a)に示したように、楕円を成し、正円に近づけることが困難であるので、鮮明な画像を得ることができない。
エミッタやカバーによる電子ビームの収束さらには実効焦点の縮小化を図るものとして、特許文献1,2に開示の電子放出体があるが、これらも実効焦点の楕円や矩形となることへの対処がなされていない。
本発明は、以上の事情を鑑み、冷陰極型の電子放出体からの電子ビームの実効焦点を長短軸または長短辺を有することなく収束して当該電子ビームによる撮影画像の画質の改善を図ることを課題とする。
そこで、本発明の一態様は、電子ビームを放出する端面を有し、前記端面は、凹曲面を成す電子放出面と、この電子放出面を隔てて配置される一対の平坦部と、を有する電子放出体である。
本発明の一態様は、前記電子放出体において、前記一対の平坦部は、ガード電極と面接触可能である。
本発明の一態様は、上記の電子放出体を有する電界放射装置である。
以上の本発明によれば、X線の実効焦点の縮小化が可能となり、X線による撮影画像の画質の改善が図られる。
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1に示されたX線管1は、本発明の電子放出体の一態様が適用された電界放射装置の一例である。X線管1は、筒状の絶縁体2の一端部及び他端部がエミッタユニット3及びターゲットユニット4により各々封止されることで、絶縁体2内に真空室10が確保された真空容器11が構成される。エミッタユニット3とターゲットユニット4との間には、真空室10の横断方向に延在するグリッド電極5が設けられる。
絶縁体2は、セラミック等を素材とする円筒状の同径の絶縁部材21,22から成る。絶縁部材21,22は、エミッタユニット3とターゲットユニット4との間でグリッド電極5を介して直列に配されて蝋付けされることで、真空室10を形成する。
エミッタユニット3は、エミッタ31、エミッタ支持部32及びガード電極33を備える。
エミッタ31は、本発明の電子放出体の一態様であって、カーボンナノチューブ等の炭素素材から成り、円柱状に形成され、真空室10内でターゲットユニット4と対向し、ターゲット41またはグリッド電極5との間での電圧印加により電子ビームとして電子線L1を放出する。
また、電子線L1を放出するエミッタ31の円形の端面60は、一定の曲率半径Rの縦断面円弧状に形成された凹曲面を成す電子放出面61を有する。端面60には、エミッタ31がガード電極33と共に真空容器11に組み込まれた際にガード電極33と面接触可能な平坦部62が電子放出面61を隔てて一対に確保される。この一対の平坦部62は、例えば図3に示したように、端面60において、A-A’断面が略円弧状である一方でB-B’断面が直線状である電子放出面61を介して配置される。尚、同図の一点鎖線bは、電子放出面61と平坦部62との境界を示す。
エミッタ支持部32は、ガード電極33内でエミッタ31を支持する。エミッタ支持部32の端部には、このエミッタ支持部32を操作する操作部34が接続される。操作部34は、例えば図1に示したガード電極33内に挿入可能な円盤状を成すが、エミッタ支持部32を操作できるものでればよいので、エミッタ支持部32の端部に同軸接続される棒状を成すものであってもよい。
ガード電極33は、ステンレス等の材料から成り、エミッタ31及びエミッタ支持部32を収容して真空室10を密閉する。ガード電極33としては、エミッタ31の電子放出面61の外周側に配され、操作部34の可動によりガード電極33にエミッタ31が当接した際にエミッタ31からの電子線L1の分散を抑制できるものであれば、種々の形態を適用できる。
ガード電極33の具体的な態様例としては、エミッタ31を支持したエミッタ支持部32が挿入される異径の円筒体35を成す。ターゲットユニット4と対向する円筒体35の一端部には、エミッタ31の電子放出面61を露出する開口部30が形成されている。また、円筒体35の他端部には、絶縁部材22の端部から真空室10を密閉するフランジ部37が具備されている。さらに、円筒体35内の段差部36にはベローズ38の一端が配置される。ベローズ38は、円筒体35内の段差部36と操作部34との間に気密に介在して操作部34の操作により伸縮する。以上の態様により、ベローズ38の取付作業が容易となると共にその取付構造も安定化する。また、円筒体35が前記他端部から前記一端部に近づくに連れて縮径することで、エミッタ31の電子放出面61は開口部30に向かって案内されながらガード電極33内を移動できる。尚、操作部34が上述の図示省略の棒状に形成された場合、ベローズ38は、エミッタ支持部32の端部とフランジ部37との間に気密に介在して操作部34の操作により伸縮できるように、円筒体35内に配置される。
ターゲットユニット4は、エミッタ31の電子放出面61と対向する円柱状のターゲット41と、絶縁部材21の端部から真空室10を密閉するフランジ部42と、を備える。ターゲット41は、エミッタ31の電子放出面61から放出された電子線L1が衝突して例えばX線L2を放出する。エミッタ31と対向するターゲット41の部位には、電子線L1に対して所定角度で傾斜する傾斜面40が確保される。そして、この傾斜面40に電子線L1が衝突することで、X線L2は、ターゲット41(傾斜面40)に照射された電子線L1の実焦点f1が実効焦点f2に縮小するように収束されて、電子線L1の照射方向から折曲した方向に照射される。尚、ターゲット41は絶縁部材21の全長方向に移動自在に備えてもよい。
グリッド電極5は、エミッタユニット3とターゲットユニット4との間に介在し、エミッタユニット3の電子放出面61から放出された電子線L1を適宜制御する。グリッド電極5は、真空室10の横断方向に延在して配置され、電子線L1が通過する通過孔50が形成された電極部51と、この電極部51に接続されて絶縁部材21,22の間から引き出される引出端子52と、を備える。
以下、本態様のX線管1の作用効果について説明する。
図6(a)に示された従来の冷陰極型のX線管1は、エミッタ31の端面60の縁部が均等であること以外は、図1のX線管1の態様と同様である。このエミッタ31からターゲット41に至る電子線L1の実効焦点f2の幅は、ターゲット41における傾斜面40の配置角度の恩恵を受けないため、図6(b)に示されたエミッタ31のみにより収束された電子線L1の実焦点f1の幅と略同等となる。そして、ターゲット41に衝突した電子線L1はX線L2を発生させる。このとき、X線L2の実効焦点f2は、同図(a)に示したように、ターゲット41の配置角度の効果により実焦点f1よりも縮小するため、楕円形となる。
これに対して、図1に示された本実施形態のX線管1は、図2に示されたエミッタ31の電子放出面61及び平坦部62の配置とターゲット41の傾斜面40とにより、図4に示された電子線L1はターゲット41における傾斜面40の配置角度の恩恵を受けない長辺となる実焦点f1よりも縮小化された実効焦点f2の円形に近づく。これにより、X線L2の実効焦点f2が、楕円(または長方形)でなく真円(または正方形)に縮小するように収束する。
したがって、以上のX線管1によれば、エミッタ31から放出された電子線L1の実焦点f1から長短軸(または長短辺)を有さないX線L2の実効焦点f2が得られるので、冷陰極型の電子放出体からの電子ビームを利用した撮影画像の画質の改善が図られる。
特に、真空容器11内にエミッタ31とガード電極33が組み込まれた際にガード電極33に対してエミッタ31が接触することでエミッタ31の電子放出面61の傾きが抑制されるので、所望のX線の実効焦点が安定的に得られる。尚、本発明の平坦部は、エミッタ31が真空容器11に組み込まれた際に図示省略のガード電極と面接触すればよいので、図示の平坦部62の態様や配置に限定されない。
本発明の電子放出体が適用されたX線発生機構は、さらに、従来の電子ビームを収束させる技術(カバー形状、グリッド電極形状、エミッタ・グリッド電極、ターゲット配置等)と組み合わせたX線放出装置の態様とするよい。本態様によれば、X線の実効焦点のさらなる縮小化が可能となり、撮影画像の画質の改善をさらに図ることができる。
1…X線管
3…エミッタユニット、31…エミッタ、32…エミッタ支持部、33…ガード電極、60…端面、61…電子放出面、62…平坦部
4…ターゲットユニット、40…傾斜面、41…ターゲット
3…エミッタユニット、31…エミッタ、32…エミッタ支持部、33…ガード電極、60…端面、61…電子放出面、62…平坦部
4…ターゲットユニット、40…傾斜面、41…ターゲット
Claims (3)
- 電子ビームを放出する端面を有し、
前記端面は、
凹曲面を成す電子放出面と、
この電子放出面を隔てて配置される一対の平坦部と、
を有することを特徴とする電子放出体。 - 前記一対の平坦部は、ガード電極と面接触可能であることを特徴とする請求項1に記載の電子放出体。
- 請求項1または2に記載の電子放出体を有する電界放射装置。
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2021
- 2021-03-24 JP JP2021049812A patent/JP2022148217A/ja active Pending
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