JP2022123648A - イムノクロマトグラフィー用キット、ポリペプチドの定量方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】IgG1とIgG2を簡便に定量することができる新たな手段を提供する。【解決手段】試料中の異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチドを定量することが可能であり、前記異なるサブクラスのIgGの重鎖Fc領域に結合可能なポリクローナル抗体を含み、前記ポリペプチドの重鎖Fc領域と前記ポリクローナル抗体のIgG重鎖Fc領域のアミノ酸配列類似度が77%以下である、イムノクロマトグラフィー用キット【選択図】図2

Description

本発明は、イムノクロマトグラフィー用キットに関する。また、本発明は、ポリペプチドの定量方法に関する。
免疫グロブリン(Ig)は体液性免疫に関与するポリペプチドであり、抗体とも呼ばれる。免疫グロブリンは、その定常領域(Fc)の違いにより、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5つのクラス(アイソタイプ)に分けられる。そのうち、IgGは、生体の血漿中の免疫グロブリンの大部分(例えば、ヒトでは70~75%)を占め、体液性免疫の主要な機能を担う。
IgGはさらにいくつかのサブクラスに分けられる。例えば、ヒトではIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の4つのサブクラスからなり、マウスではIgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3の4つのサブクラスからなる。そして、IgG1及びIgG2がIgGの大多数を占める。例えばヒトでは、IgG1:IgG2:IgG3:IgG4が概ね65:25:7:3であり、マウスではIgG1:IgG2a:IgG2b:IgG3が概ね46:24:27:2である。
近年、例えばBethyl Laboratories社やZeptoMetrix社から、IgGの定量のための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)試薬が市販されている。しかし、これらのキットが各IgGサブクラスをどの程度の感度で認識できるのかは不明であるうえに、ELISAは定量に数時間を要するという課題がある。
また、特許文献1には、ヒトIgGのFcを特異的に認識する2種の抗ヒトモノクローナル抗体と、それらを利用したヒトIgGのFcを含有するポリペプチドの測定方法が開示されている。しかし、当該文献の表8によれば、当該測定方法では、IgGの各サブクラスの検出感度にはバラつきがあり、ヒトと異なる動物種のIgGサブクラス量比の試料におけるIgGの定量精度も不明である。
特開2009-142269号公報
医薬や研究用試薬等に用いられるモノクローナル抗体は、通常は活性化した複数のB細胞の中から、特定の抗原に特異的な抗体を発現するB細胞クローンをスクリーニングして抗体産生に用いる。このとき、抗体の結合活性の測定に加えてIgGの定量ができれば、高い力価(比活性)の抗体を産生するB細胞クローンをスクリーニングすることができる。
しかし、免疫刺激で活性化したB細胞クローンのほとんどはIgGを産生するものの、そのサブクラスは上記のように一定の比率で産生され得る。そのため、サブクラスごとに感度が大きく異なるIgGの定量方法の場合、IgGを精度よく定量するには、そのサブクラスの特定をしたうえで検量線の作成や補正を行う必要があり、測定に時間と手間がかかるという課題があった。
本発明者らは、IgGの中に占める割合が大きいサブクラスであるIgG1及びIgG2を同程度の感度で定量することができれば、多くのB細胞クローンから産生されるIgGの定量を簡易迅速に行うことができると考えた。
そこで、本開示では、IgG1とIgG2を簡便に定量することができる新たな手段を提供することを課題とした。
本開示の実施形態の一つであるイムノクロマトグラフィー用キットは、
異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチドを定量することが可能であり、
前記異なるサブクラスのIgGの重鎖Fc領域に結合可能なポリクローナル抗体を含み、
前記ポリペプチドの重鎖Fc領域と前記ポリクローナル抗体のIgG重鎖Fc領域のアミノ酸配列類似度が77%以下である、ことを特徴とする。
前記キットにおいて、前記異なるサブクラスのIgGが、少なくともIgG1及びIgG2を含んでもよい。
前記キットにおいて、IgG重鎖Fc領域は、例えばネズミ目(Rodentia)生物、より具体的にはマウス又はラットに由来し、かつ、前記ポリクローナル抗体は、鯨偶蹄目(Cetartiodactyla)生物、より具体的にはヤギ、ヒツジ又はウシに由来する。このような構成は、前記ポリクローナル抗体を容易に得ることができる点で好ましい。
前記異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチドは、好ましくは互いに分子量が同程度であるものであり、例えば、異なるサブクラスの2種以上のIgGである。
前記ポリクローナル抗体は、下記の(i)、(ii)のいずれか又はそれらの両方を経ていることを特徴とする:
(i)前記2種以上のポリペプチドの重鎖Fc領域を含むポリペプチドを担体とするアフィニティークロマトグラフィーによる精製、
(ii)血清成分を担体とするアフィニティークロマトグラフィーによる吸収処理。
当該実施形態によれば、前記ポリペプチドの定量性をさらに高めることができる。
前記ポリクローナル抗体は、例えば、標識抗体、抗原捕捉抗体又はそれらの両方の用途でイムノクロマトグラフィーに用いられる。
前記キットは、さらに少なくともイムノクロマトグラフィー試験片を含み、該イムノクロマトグラフィー試験片に前記ポリクローナル抗体が固相化された構成とすることができる。
別の実施形態では、前記ポリクローナル抗体は、例えば乾燥物又は溶液としてキットに含まれ得る。この場合、前記ポリクローナル抗体は、例えばイムノクロマトグラフィー試験片の作製に使用される。
前記キットは、さらに下記の(A)~(C)のいずれか1以上を満たす緩衝液を含むことが好ましい:
(A)0.1質量%以上の非イオン性界面活性剤を含有する;
(B)アルカリ金属イオンの濃度が400mM以下である;
(C)pH緩衝成分の濃度が25mM以上である。
当該緩衝液は(A)~(C)のいずれか2以上を満たすことがより好ましく、(A)~(C)の全てを満たすことが更に好ましい。
また、本開示の実施形態の一つである、試料中の異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を有する2種以上のポリペプチドを定量する方法は、
(a)試料供給部、展開部及び捕捉部を含むイムノクロマトグラフィー試験片に、試料を接触させること;及び
(b)前記イムノクロマトグラフィー試験片の捕捉部の前記ポリペプチドと抗体の複合体のシグナルを検出すること;を含み、
前記抗体が、前記異なるサブクラスのIgGの重鎖Fc領域に結合可能なポリクローナル抗体を含み、
前記ポリペプチドの重鎖Fc領域と前記ポリクローナル抗体のIgG重鎖Fc領域のアミノ酸配列類似度が77%以下であることを特徴とする。
前記方法において、(a)の試料は、以下の(A)~(C)のいずれか1以上を満たす緩衝液で希釈されることが好ましい。
(A)0.1質量%以上の非イオン性界面活性剤を含有する;
(B)アルカリ金属イオンの濃度が400mM以下である;
(C)pH緩衝成分の濃度が25mM以上である。
当該緩衝液は(A)~(C)のいずれか2以上を満たすことがより好ましく、(A)~(C)の全てを満たすことが更に好ましい。
前記(a)の試料を接触させた時点から前記(b)の検出の時点までの時間は、例えば25~45分とすることができる。
本開示の実施形態の一つであるポリクローナル抗体の作製方法は、下記の(I)及び(II)を含む:
(I)動物に、前記異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む組成物を接種して免疫刺激された動物から回収された血清を準備すること;及び
(II)前記血清に対して、(i)前記2種以上のポリペプチドの重鎖Fc領域を含むポリペプチドを担体とするアフィニティークロマトグラフィーによる精製、及び(ii)ウシ又はウマの血清成分を担体とするアフィニティークロマトグラフィーによる吸収処理、のいずれか一方又はそれらの両方を行うこと。
前記ポリクローナル抗体は、例えば、IgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチドの検出又は定量に使用することができる。
前記ポリクローナル抗体は、例えば、イムノクロマトグラフィー、ELISA法、表面プラズモン共鳴法、ラテックス凝集法、免疫拡散法、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、免疫沈降法、免疫電気泳動法又は免疫電気拡散法に使用することができる。
本開示のイムノクロマトグラフィー用キット及び本開示の方法によれば、IgG1重鎖Fc領域を有するポリペプチドとIgG2重鎖Fc領域を有するポリペプチドを同程度の感度で定量することができる。
試験例1のヤギの免疫スケジュールの概略図である。 試験例3において、サブクラスの異なるマウスIgGをイムノクロマトグラフィーで測定して得られた吸光度を比較したグラフである。 試験例3において、マウスIgG1とIgMをイムノクロマトグラフィーで測定して得られた吸光度を比較したグラフである。 試験例3において、マウスIgG1を含有する試料と、マウスIgG1に加えて10%ウシ胎仔血清をさらに含有する試料とをイムノクロマトグラフィーで測定して得られた吸光度を比較したグラフである。 試験例3において、種々の濃度のマウスIgG1を含有する試料を滴下した直後からイムノクロマトグラフィー測定したときの各試料の吸光度の経時変化を表すグラフである。 図5Aのデータを、吸光度が安定化したときの値(ほぼ最大値に相当する)で各試料の吸光度を規格化して比較したグラフである。 試験例3において、種々の濃度のIgG1を含有する試料を3回測定して得られた吸光度の平均値と、測定値から得られた検量線を表すグラフである。
本明細書において、「抗体」とは、抗原に対して非共有結合的そして特異的に抗原に結合することができる免疫グロブリン(Ig)ファミリーのポリペプチドを表す。
本明細書において、「ポリクローナル抗体」は複数の抗体分子種からなる抗体集団を指し、「モノクローナル抗体」は単一の分子種からなる抗体集団を表す。
本明細書において、「IgG」は免疫グロブリンGを表す。IgG分子は2本の重鎖及び2本の軽鎖であってジスルフィド結合によって相互結合されたものからなる、分子量約15万、1~3%の糖鎖を含むポリペプチドである。各重鎖は重鎖可変領域(「VH」と表す)と重鎖定常領域(「CH」と表す)からなる。重鎖定常領域は3つのドメインからなり、それぞれ「CH1」、「CH2」、「CH3」と表す。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「VL」と表す)と軽鎖定常領域(「CL」と表す)からなる。
IgGは重鎖の種類によってサブクラスに分けられる。例えば、ヒトのIgGでは重鎖としてHγ1、Hγ2、Hγ3及びHγ4の4種類があり、それぞれの重鎖を含むIgGサブクラスは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4である。また、マウス及びラットのIgGでは重鎖としてHγ1、Hγ2a、Hγ2b及びHγ3の4種類があり、それぞれの重鎖を含むIgGサブクラスは、IgG1、IgG2a、IgG2b、及びIgG3である。
本明細書において、単純に「IgG2」と表した場合、マウス及びラットにおいては、IgG2aとIgG2bの両方を区別なく表すものとする。
本明細書において、「Fc」又は「Fc領域」とは、免疫グロブリンをタンパク質分解酵素であるパパインで消化して得られる断片のうち、重鎖C末端が含まれる断片又は該断片に相当するポリペプチド鎖上の部分を表す。FcはCH2及びCH3を含む。
本明細書において、「エピトープ」とは、抗体が特異的に結合する、抗原上の部位を指す。
本明細書において、「連結(conjugation)」又は「連結する(conjugate)」とは、ある分子種又は原子種を、共有結合又は非共有結合(特に限定されないが、例えば、配位結合、疎水結合、水素結合、静電結合など)で一体化することを表す。
本明細書において、標識抗体とは、標識された抗体を指す。また、抗原捕捉抗体とは、固相に固定化され、抗原と結合性のある抗体を指す。
[イムノクロマトグラフィー用キット]
本開示の実施形態の一つであるイムノクロマトグラフィー用キットは、
異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチドを定量することが可能であり、
前記異なるサブクラスのIgGの重鎖Fc領域に結合可能なポリクローナル抗体を含み、
前記ポリペプチドの重鎖Fc領域と前記ポリクローナル抗体のIgG重鎖Fc領域のアミノ酸配列類似度が77%以下である、ことを特徴とする。
(異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチド)
前記イムノクロマトグラフィー用キットは、異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチドの定量に用いられる。当該2種以上のポリペプチドのうちの少なくとも2種は、それぞれ同種由来で互いにサブクラスが異なるFcを含む。当該2種以上のポリペプチドは、本発明の効果を顕著に奏する観点から、互いに分子量が同程度であるものが好ましい。例えば当該2種以上のポリペプチドは、異なるサブクラスの2種以上のIgGであり得る。
本明細書において、IgG重鎖Fc領域を含むポリペプチドとは、IgGのFc領域を少なくとも1以上含有していれば特に限定されず、他の部分とFc領域とが共有結合していてもよいし、疎水結合、配位結合、静電結合等により非共有結合して一体となっていてもよい。このようなIgG重鎖Fc領域を含むポリペプチドとしては、例えばIgG抗体、IgGのFc領域の断片、及びそれらを含むポリペプチド(例えば、ポリペプチド、薬物、標識等が連結した抗体又はFc領域等)が挙げられる。
本明細書において「2種以上のポリペプチドを定量することが可能である」とは、2種以上のポリペプチドを一度に定量することができる場合に限定されず、例えば、別々の試料として同じキット又は方法に供して、それぞれの試料が定量できる場合も包含する。
(ポリクローナル抗体)
本実施形態のポリクローナル抗体は、異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を抗原として認識することを特徴とする。その結果、試料中の異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチドを定量することができる。
前記ポリクローナル抗体は、エピトープとして、例えば、前記2種以上のポリペプチドの重鎖Fc領域の少なくとも一部を認識することができる。
前記ポリクローナル抗体の重鎖Fc領域と前記ポリペプチドの重鎖Fc領域とのアミノ酸配列の類似度は、例えば、77%以下、75%以下、70%以下、65%以下又は60%以下であり得る。また、前記ポリクローナル抗体の重鎖Fc領域と前記ポリペプチドの重鎖Fc領域とのアミノ酸配列の類似度は、例えば、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上又は75%以上であり得る。
本明細書において、アミノ酸配列の類似度は、NCBI BLAST(URL:https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)のblastp suiteのデフォルトの設定で2つの配列のアラインメントを行って得られるpositiveの数値で表される。
前記ポリクローナル抗体の由来は、その重鎖Fc領域が上記のアミノ酸配列類似度を満たす限りにおいて特に限定されない。
例えば、前記2種以上のポリペプチドの重鎖Fc領域がネズミ目(Rodentia)生物に由来する場合、前記ポリクローナル抗体は鯨偶蹄目(Cetartiodactyla)生物に由来するものであり得る。即ち、例えば前記2種以上のポリペプチドの重鎖Fc領域がマウス又はラットに由来する場合、前記ポリクローナル抗体はヤギ、ヒツジ又はウシに由来するものであり得、一実施形態ではヤギに由来するものであり得る。
また、例えば前記2種以上のポリペプチドの重鎖Fc領域が鯨偶蹄目生物に由来する場合、前記ポリクローナル抗体はネズミ目生物に由来するものであり得る。即ち、例えば前記2種以上のポリペプチドの重鎖Fc領域がヤギ、ヒツジ又はウシに由来する場合、前記ポリクローナル抗体はマウス又はラットに由来するものであり得る。
前記ポリクローナル抗体は、例えば、上記の由来となる動物に、前記異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む組成物を抗原として接種して免疫した後の血清から得られる。当該免疫に用いる組成物としては、例えば、特定の生物種の血清から得られるポリクローナル抗体のパパイン消化物、又はその精製物が挙げられる。
例えばヤギを免疫する場合、抗原接種は、例えば1回、2回、3回、4回、5回又は6回以上行うことができる。また、抗原摂取は1~2週間おきに行うことができる。中でも、抗原接種は、第1回目の抗原接種後に2週間おきに4回の計5回行うことが好ましい。免疫刺激には、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、水酸化アルミニウム(ミョウバン)等のアルミニウム塩などのアジュバントを適宜併用することができる。一実施形態では、アジュバントとして、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、又はそれらの両方が使用される。
例えば、抗原接種を行った後で、ポリクローナル抗体が産生されているかどうかを確認するための採血を、最初の抗原接種から、例えば3~12週間後、4~10週間後又は5~8週間後に行ってもよい。一実施形態では、当該採血は、例えば最初の抗原接種から5週間後及び/又は7週間後に行われる。
例えばヤギにポリクローナル抗体を産生させる場合、最初の抗原接種から、例えば5~15週間後、7~12週間後又は8~10週間後に全採血を行ってもよい。一実施形態では、当該採血は、例えば最初の抗原接種から9週間後に行われる。
免疫刺激後に得られるポリクローナル抗体を含有する血清は、そのまま本キットに使用することもできるが、保存安定性及び定量性の向上の観点から、ポリクローナル抗体は精製してキットに使用することが好ましい。精製処理としては、例えば、硫安沈殿、プロテインA若しくはプロテインG又はイオン交換樹脂等によるクロマトグラフィー等を用いた一般的なIg画分の精製;ポリクローナル抗体の抗原である前記2種以上のポリペプチドの重鎖Fc領域部分を含むポリペプチドを担体とするアフィニティークロマトグラフィーによる精製から選ばれる1以上の手段を用いることができる。特定の実施形態では、血清は、プロテインGカラムによる精製を経た後に、前記2種以上のポリペプチドの重鎖Fc領域を含むポリペプチドを担体とするアフィニティークロマトグラフィーによる精製を行う。これにより、より定量性に優れたポリクローナル抗体を得ることができる。
前記ポリクローナル抗体を含む組成物は、さらに非特異反応を除くために、血清成分を担体としたアフィニティークロマトグラフィーによる吸収処理(吸着処理)を行ってもよい。吸収処理に用いる血清成分としては、例えば細胞培地に含まれる血清が挙げられる。より具体的には、吸収処理に用いる血清成分は、例えばウシ又はウマの血清である。これにより、より定量性に優れたポリクローナル抗体を得ることができる。
前記ポリクローナル抗体は、異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチドを検出又は定量する用途で、イムノクロマトグラフィー(ラテラルフローイムノアッセイ、ストリップテスト)法の他に、例えば、ELISA法、表面プラズモン共鳴法、ラテックス凝集法、免疫拡散法、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、免疫沈降法(Ouchterlony法等)、免疫電気泳動法(Mancini法)、免疫電気拡散法(ロケット法)等に用いることができる。これらの分析法では、例えば、前記ポリクローナル抗体は下記の標識抗体の形態で使用される。
(標識抗体、抗原捕捉抗体)
前記ポリクローナル抗体は、イムノクロマトグラフィーにおける標識抗体、抗原捕捉抗体又はそれらの両方に用いることができる。一実施形態では、前記ポリクローナル抗体は、標識抗体及び抗原捕捉抗体の両方に用いられる。
前記ポリクローナル抗体を標識抗体して用いる場合、ポリクローナル抗体は、例えば、微小粒子、蛍光物質、酵素、ビオチン、放射性標識体、磁性粒子等の標識が予め連結されて本キットに含まれてもよく、また本キットによって標識抗体を調製してもよい。
微小粒子としては、抗体の抗原結合性を損なわない限りにおいて特に限定されず、例えば、金コロイドのような金属コロイド粒子、着色ラテックス粒子のような着色粒子等が挙げられる。
蛍光物質としては、抗体又はその機能性断片の抗原結合性を損なわない限りにおいて特に限定されず、例えば、ローダミン系、クマリン系、オキサジン系、カルボピロニン系、シアニン系、ピロメセン系、ナフタレン系、ビフェニル系、アントラセン系、フェナントレン系、ピレン系、カルバゾール系、Cy系、EvoBlue系、フルオレセイン系又はこれらの誘導体等が挙げられる。
酵素としては、抗体又はその機能性断片の抗原結合性を損なわない限りにおいて特に限定されず、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ等が挙げられる。
放射性標識体としては、特に限定されないが、例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I等が挙げられる。
標識抗体がイムノクロマトグラフィーに用いられる態様としては、例えば下記の(a)~(c)のいずれかが挙げられる。
(a)本キットがイムノクロマトグラフィー試験片を含み、該試験片に標識抗体が予め含まれる態様
(b)標識抗体が乾燥物又は溶液としてキットに含まれ、イムノクロマトグラフィー試験片の作製に使用される態様
(c)標識抗体が定量の際に試料溶液に添加されるか、又は試料溶液とともにイムノクロマトグラフィー試験片に滴下されて使用される態様。
前記ポリクローナル抗体が抗原捕捉抗体としてイムノクロマトグラフィーに用いられる態様としては、例えば下記の(a)又は(b)が挙げられる。
(a)本キットがイムノクロマトグラフィー試験片を含み、該試験片に前記ポリクローナル抗体が予め固相化されて含まれる態様
(b)前記ポリクローナル抗体が乾燥物又は溶液としてキットに含まれ、イムノクロマトグラフィー試験片の作製に使用される態様。
(その他構成)
(1.イムノクロマトグラフィー試験片)
本キットは、イムノクロマトグラフィー試験片を含むことが好ましい。当該イムノクロマトグラフィー試験片には、上記の標識抗体、抗原捕捉抗体、又はそれらの両方を含むことが好ましい。
前記試験片が前記ポリクローナル抗体を含む場合、その含有量は、使用するポリクローナル抗体、定量するポリペプチド、測定条件等によって適宜選択し得るが、試験片1枚当たり、例えば標識抗体は5~10μg、抗原捕捉抗体は10~30μgとすることができる。
前記試験片は、例えばテストストリップを含む。当該テストストリップは、第1の開口部と第2の開口部が形成された、例えばプラスチック製のケースの内部に収容され、テストストリップの表面の一部がこれらの開口部から露出している構成とすることができる。例えば、テストストリップの実施形態の一つとして、特に限定されないが、例えば特開2019-158791号公報に記載されたものが挙げられる。下記に、その具体的な実施形態を示す。詳細は当該公報の記載から理解することができる。
<テストストリップの実施形態の例>
テストストリップは、例えば、試料滴下部と、展開部と、捕捉部とを備える。テストストリップは、全体として、例えば濾紙などの多孔質支持体で構成される。
試料滴下部は、試料が滴下される部分であり、例えばフィルタペーパによって構成される。試料滴下部は、第1の開口部に露出する。
試料は、第1の開口部から試料滴下部に滴下される。試料滴下部に滴下された検体は、多孔質支持体に吸収され、毛細管現象によって展開部へと向かう。
展開部は、検体をクロマト展開させる部分であり、例えばニトロセルロースメンブレンで構成される。
捕捉部は、使用時には抗原捕捉抗体が、例えば線状又は帯状に固相化される。補足部は、第2の開口部に露出しており、第2の開口部を介して捕捉部上の前記ポリペプチドと抗体の複合体のシグナルを検出によるシグナルを検出することができる。
テストストリップは、試料滴下部から展開部までの間に、さらに標識抗体を保持する標識保持部を備えてもよい。標識試薬が定量の際に試料溶液に添加する態様、又は試料溶液とともにイムノクロマトグラフィー試験片に滴下される態様においては、テストストリップは、標識保持部を備えていなくてもよい。
前記テストストリップは、さらに吸収部を備えてもよい。吸収部は例えばフィルタペーパによって構成され、試料溶液を吸い上げることで、試料滴下部から標識保持部へスムーズに導くことができる。
前記試験片には、例えばQRコード(登録商標)などの二次元コードがさらに記載されてもよい。当該二次元コードに含まれる情報は、例えば分析項目、有効期限、ロット番号などの試験片の基本情報、及び、例えば反応時間、検量線などの試験片に固有の呈色反応に関連する情報などである。
(2.試薬、器具等)
本キットは、さらにpH緩衝成分、界面活性剤、塩類及びブロッキング剤からなる群より選ばれる1種単独又は2種以上の組み合わせを含むことが好ましい。
pH緩衝成分としては、特に限定されないが、例えば、リン酸、ホウ酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、カコジル酸等の酸又はこれらの塩;グリシン等のアミノ酸;トリスヒドロキシアミノメタン(Tris);HEPES、MES等のグッドバッファー等から選ばれる1種の成分単独又は2種以上の成分の組み合わせが挙げられる。
界面活性剤としては、特に限定されないが、非イオン性界面活性剤が好ましく、エステルエーテル型、エステル型、エーテル型のいずれも用いることができる。より具体的にはTween20、Tween40、Tween80、Triton-X100、ポリオキシエチレン(60)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(65)ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ノニデットP-40及びCHAPSからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
塩類としては、例えばアルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム、カルシウム等)、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンの塩が挙げられ、少なくともアルカリ金属塩を含むことが好ましい。一実施形態では、本キットは、塩類として塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上を含む。
ブロッキング剤としては、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、スキムミルク及び血清からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
上記のpH緩衝成分、界面活性剤、塩類及びブロッキング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種以上は、緩衝液として本キットに含まれていても良い。当該緩衝液は、例えば、イムノクロマトグラフィー試料の希釈に用いられる。
イムノクロマトグラフィー試料の希釈用緩衝液は、例えば以下の(A)~(C)のうち少なくとも1以上を満たし、好ましくは2以上、より好ましくは3つ全てを満たす。
(A)0.1質量%以上の非イオン性界面活性剤を含有する;
(B)アルカリ金属イオンの濃度が400mM以下である;
(C)pH緩衝成分の濃度が25mM以上である。
(A)の非イオン性界面活性剤は、例えばTween20が挙げられる。
(A)の非イオン性界面活性剤の含有量は、バックグラウンドシグナルを抑える観点から、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、例えば0.8質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下又は0.3質量%以下とすることができる。
(B)のアルカリ金属イオンは、例えばナトリウムイオンが挙げられる。
(B)のアルカリ金属イオンの含有量は、バックグラウンドシグナルを抑える観点から、例えば400mM以下、200mM以下、100mM以下又は50mM以下、好ましくは1mM以下であり、アルカリ金属イオンを実質的に含まないことがより好ましい。ここで実質的に含まないとは、例えば公知の定量分析法によりアルカリ金属イオンの定量分析を行った場合に、0.1mM以下となることを表す。
(C)のpH緩衝成分は、例えばTris-HClが挙げられる。
(C)のpH緩衝成分の含有量は、バックグラウンドシグナルを抑える観点から、例えば25mM以上、50mM以上又は100mM以上、好ましくは200mM以上、より好ましくは400mM以上である。また、(C)のpH緩衝成分は、例えば1M以下、800mM以下又は500mM以下であり得る。
希釈用緩衝液はブロッキング剤を含んでもよいが、バックグラウンドシグナルを抑える観点から、ブロッキング剤の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%であり、ブロッキング剤を実質的に含まないことが更に好ましい。
上記の緩衝液中の成分の含有量は、試料を希釈する際の濃度であって、本キット中に含まれる緩衝液はその濃縮物(例えば、上記成分の各濃度の整数倍の濃度の濃縮物)であってもよい。
本キットには、前記異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域と同じサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む1種以上のポリペプチドをさらに含んでもよい。当該ポリペプチドは、陽性対照として、あるいは、例えば、定量の際の検量線の作成、検量線の補正等の標準試料として用いることができる。例えば、当該ポリペプチドは、サブクラスの特定されていないIgG、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4からなる群より選ばれる1種以上であり得る。
本発明のキットには、その他の試薬又は器具として、さらに水(MilliQ水、脱イオン水、蒸留水等)、発色又は蛍光検出用基質、スポイト、シリンジ、チップ、プラスチックチューブからなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。
(用途)
本キットは、異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチドを定量することが可能であるが、当該定量の用途に限定されない。例えば、本キットは、異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチドを検出する用途に使用することができる。
本明細書において、「検出」とは、物質の有無の定性的な判別を表す。
本キットは、少なくともIgG1重鎖Fc領域を含むポリペプチドと、IgG2重鎖Fc領域を含むポリペプチドを定量することができる。本キットは、これらのポリペプチドを同程度の感度で定量することができるため、個別に検量線の作成や補正を行う必要がなく、簡易迅速に定量が可能である。よって、本キットは、例えばIgG抗体やその産生細胞のスクリーニング等において、サブクラスが特定されていない試料のIgGの定量に適している。
定量又は検出の対象となる前記2種以上のポリペプチドを含む試料は、イムノクロマトグラフィーが可能な液状物であれば特に限定されない。例えば、本キットの試料は、血液、尿、唾液、鼻汁、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、リンパ液、髄液、腹膜液、***、膣液、涙液、眼内液、硝子体液、糞便、汗若しくは他の体液、又はそれらの分離物若しくは抽出物(血清等)などの生体試料;細胞培養培地上清(例えば、ハイブリドーマ培養上清);細胞又は組織の抽出物、などが挙げられる。
[異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を有する2種以上のポリペプチドを定量する方法]
本開示の実施形態の一つである、試料中の異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を有する2種以上のポリペプチドを定量する方法は、
(a)試料供給部、展開部及び捕捉部を含むイムノクロマトグラフィー試験片に、試料を接触させること;及び
(b)前記イムノクロマトグラフィー試験片の捕捉部の前記ポリペプチドと抗体の複合体のシグナルを検出すること;を含み、
前記抗体が、前記異なるサブクラスのIgGの重鎖Fc領域に結合可能なポリクローナル抗体を含み、
前記ポリペプチドの重鎖Fc領域と前記ポリクローナル抗体のIgG重鎖Fc領域のアミノ酸配列類似度が77%以下である、
ことを特徴とする。
本方法の前記イムノクロマトグラフィー試験片は、例えば、上記の[イムノクロマトグラフィー用キット]の項に記載されたイムノクロマトグラフィー試験片を用いることができる。
前記ポリペプチドと抗体の複合体において、当該抗体は、例えば標識抗体及び抗原捕捉抗体を含む。当該抗体の全てが前記ポリクローナル抗体であってもよいし、別の抗体を標識抗体、抗原捕捉抗体等として含んでもよい。
前記ポリクローナル抗体は、標識抗体、抗原捕捉抗体又はそれらの両方であり、特定の実施形態では、標識抗体及び抗原捕捉抗体の両方である。
前記ポリペプチドと抗体の複合体のシグナルの発生には、例えば標識抗体の標識物質自体から、又は標識物質が集合することが関与する。シグナルの測定は当該標識物質の種類によって適宜選択することができ、例えば標識物質に由来する吸光度、反射光、蛍光、磁気、電磁波(可視光線、X線等)、粒子線(α線、β線等)等の測定が挙げられる。
例えば、前記標識抗体の標識が金コロイドである場合、前記シグナルは、例えば捕捉部の赤色の着色、又は500nm~600nm(好ましくは520~540nmであり、例えば525nm)の波長の光を照射した場合の吸光度の変化である。
本方法において、IgGの定量におけるバックグラウンドシグナルを抑える観点から、(a)の試料は、以下の(A)~(C)のいずれか1以上を満たす緩衝液で希釈されることが好ましい。
(A)0.1質量%以上の非イオン性界面活性剤を含有する;
(B)アルカリ金属イオンの濃度が400mM以下である;
(C)pH緩衝成分の濃度が25mM以上である。
当該緩衝液は、例えば、上記の[イムノクロマトグラフィー用キット]の項に記載された希釈用緩衝液を用いることができる。
前記(a)の試料を当該緩衝液で希釈する際の希釈倍率は、例えば、5倍以上、10倍以上、20倍以上、30倍以上又は40倍以上である。さらに、試料の夾雑物による定量への影響を抑制する観点から、希釈倍率は、好ましくは50倍以上であり、例えば100倍以上、150倍以上、200倍以上、250倍以上又は300倍以上であってもよい。
また、(a)の試料に動物の血清(例えば、ウシ血清、ウマ血清等)を含有する場合は、試料の夾雑物による定量への影響が抑制する観点から、試料中の動物の血清の濃度が10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下又は0.1質量%以下となるように試料を希釈することが好ましい。
前記(a)の試料を接触させた時点から前記(b)の検出の時点までの時間は、温度、湿度、使用する抗体、試料、緩衝液等によって適宜選択し得る。当該時間は、例えば室温(約25℃)においては、例えば1分以上、5分以上、10分以上、又は15分以上とすることができ、シグナルの安定性(定量性)を向上させる観点から、好ましくは20分以上、より好ましくは25分以上である。また、当該時間は、例えば24時間以下、12時間以下、6時間以下、2時間以下、60分以下又は45分以下とすることができる。
本方法のその他の具体的な態様については、上記の[イムノクロマトグラフィー用キット]の項の、用途の項の記載に準じる。
以下、本発明に関し、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[試験例1.イムノクロマトグラフィー試験片の調製]
(IgGのFc領域に結合可能なポリクローナル抗体の調製)
以下の手順でマウスIgGのFc領域に結合可能な、ヤギ由来のポリクローナル抗体を調製した。免疫刺激から血清の分離までは、イワキ株式会社に委託して実施した。
(1)ヤギ(若齢成獣)にマウスIgGのFc領域を抗原として接種した。
使用した抗原は、マウス血清のIgGの精製物をパパイン消化して断片化したものであり、マウスIgGの4種類のサブクラスのFc領域全てを含む。
接種は委託先の63日の標準免疫スケジュール(図1)に沿って実施した。即ち、第1回目の抗原接種後に2週間おきに4回抗原接種を行った。1回につき当該抗原を2mg/頭で、アジュバントとともに接種した。アジュバントは、初回は完全フロイントアジュバント(FCA)、2回目以降は不完全フロイントアジュバント(FIA)を使用した。
(2)抗原刺激後63日目にヤギから血液を採取した。
(3)血液から血清を遠心分離した。そして、プロテインGカラムを用いて血清から免疫グロブリン画分を分離した。
(4)次に、(1)の抗原に用いたFc領域をアガロースビーズに固定した担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、(3)で得られた免疫グロブリン画分からFc領域に結合可能な抗体の画分を分離した。
(5)さらに、得られた抗体画分をウシ血清及びウマ血清を固定化した担体に接触させる吸収処理を行い、これらの血清に対する交差性を抑えたポリクローナル抗体画分を調製した。
(イムノクロマトグラフィー試験片の作製)
以下の手順で、抗原捕捉抗体として上記ヤギ由来ポリクローナル抗体、標識抗体として当該ポリクローナル抗体の金コロイド標識体を含む、イムノクロマトグラフィー試験片を作製した。
(1)上記のヤギ由来ポリクローナル抗体の一部を、物理吸着により金コロイド標識して、標識抗体を調製した。
(2)(1)で調製した標識抗体5μgを幅8mm×長さ5mmのグラスファイバー製のパッド(ミリポア社製)に浸み込ませて乾燥させることにより、試料滴下部かつ標識保持部であるコンジュゲートパッドを調製した。
(3)特開第2019-158791号公報の図4の捕捉部のように、幅25mm×長さ5mmのニトロセルロースメンブレンの第1の端から10mmの位置に、抗体塗布機を用いて0.8μL/cmの塗布量で、上記のヤギ由来ポリクローナル抗体(抗原捕捉抗体)を含む溶液を線状に塗布した。次に塗布後のメンブレンを55℃、30分乾燥させて、抗原捕捉抗体を固相化した。
(4)上記のメンブレンの第1の端に、さらにコンジュゲートパッドの上に試料をしみこませるためのグラスファイバー製のサンプルパッド(幅5mm×長さ20mm、ミリポア社製)を重層した。これらを特開第2019-158791号公報の図2に示されるような2つの開口部が設けられたケースに挟み込んでイムノクロマトグラフィー試験片を作製した。このとき、第1の開口部(試料注入口)に試料滴下部が、もう一方の第2の開口部(観察窓)に捕捉部が露出するように配置した。
[試験例2.試料用緩衝液の検討]
10μg/mL又は0μg/mLのマウスIgG1を含むハイブリドーマ培養液を、表1の種々の組成の緩衝液で50倍に希釈したものを調製した。
上記の試験例1のイムノクロマトグラフィー試験片の試料注入口に、試料100μLを滴下し、室温(25℃)で所定の時間イムノクロマト展開した30分後にポイントリーダー(登録商標、ウシオ電機株式会社製)を用いて、標識抗体の金コロイドの凝集により吸収される波長525nmの光を観察窓に露出する捕捉部に照射し、吸光度を測定した。
表1に測定結果を示した。10μg/mL IgGを含有する場合の吸光度A1は、いずれの緩衝液でも測定に適した十分大きい値を示した。そこで、それぞれの緩衝液のIgGを含有しない場合の吸光度A2が小さいほどバックグラウンドシグナルが小さく良好であると考えて、緩衝液の組成の最適化を検討した。No.3~6及び9の比較から、Tris-HCl濃度が高いほどA2が小さくなることが示される。また、No.1~3の比較及びNo.7~9の比較から、NaClの濃度が低いほどA2が小さくなることが示される。No.7とNo.10の比較及びNo.2とNo.11、12との比較から、Tween20が0.2質量%で最適であることが示される。さらに、No.2とNo.13の比較から、BSA濃度が低いほどA2が小さくなることが示される。
Figure 2022123648000002
[試験例3.イムノクロマトグラフィー法によるIgGの定量試験]
本試験例は、試験例1のイムノクロマトグラフィー試験片に試料を滴下し、所定の時間イムノクロマト展開した後に試験例2に記載の方法で、ポイントリーダーで吸光度測定を行った。希釈液として、400mM Tris-HCl(pH9.3)、200mM NaCl、及び0.2質量% Tween20を含有する水溶液を使用した。
(IgGサブクラス間の反応性の比較)
マウスIgG1、IgG2a又はIgG2bを0、2.5、5.0又は10μg/mL含有し、さらに10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するハイブリドーマ用培地(Hybridoma-SFM、Gibco社製)を調製した。これらの溶液を上記の希釈液で50倍に希釈した溶液を試料として滴下し、30分間イムノクロマト展開してから吸光度測定した。結果を図2に示した。IgG1、IgG2a及びIgG2bは各濃度に対して同等の吸光度を示していることから、試験例1の試験片は、サブクラス間の反応性の差が少ないことが明らかとなった。
(交差反応性の検証)
マウスIgMを0、2.5若しくは12.5μg/mL含有する、又はIgG1を0、2.5若しくは12.5μg/mL含有する、10%ウシ胎仔血清含有ハイブリドーマ用培地を調製した。これらの溶液を上記の希釈液で50倍に希釈した溶液を試料として試験片に滴下し、30分間イムノクロマト展開してから吸光度を測定した。結果を図3に示した。試験例1の試験片はマウスのIgMに反応しないことが示された。
(a)5.0μg/mLとなるようにマウスIgGを加えたハイブリドーマ用培地と、(b)5.0μg/mLとなるようにマウスIgGを加えた10%ウシ胎仔血清含有ハイブリドーマ用培地、のそれぞれを希釈液で50倍に希釈したものを試料として試験片に滴下し、30分イムノクロマト展開してから吸光度を測定した。結果を図4に示した。(a)と(b)の試料の吸光度に差がないことから、試験例1の試験片を用いたIgGの定量において、ウシ胎仔血清による妨害を受けないことが示された。
(試料を滴下した後、測定するまでのイムノクロマト展開時間の検討)
0.5、1.5、3.0、4.5、6.0、7.0、8.0、9.0及び12.0μg/mLのマウスIgG1を含有するハイブリドーマ用培地を調製した。これらの溶液を上記の希釈液で50倍に希釈したものを試料として試験片に滴下し、すぐに吸光度測定を開始して、0から90分間までの吸光度の経時変化を測定した。得られた各試料の吸光度の経時変化を表すグラフを図5Aに示した。また、図5Bは、図5Aで得られたデータについて、各濃度のIgG1を含有する試料の吸光度を、吸光度が安定したときの値で規格化して表したグラフである。これらのグラフから、試料中のIgG濃度に関係なく、試料滴下後20~60分、より好ましくは25~45分室温でインキュベートすることによって、安定した高いシグナル強度が得られることが判明した。
(検量線の作成)
表2に示す実濃度のマウスIgG1を含有する緩衝液を試料として試験片に滴下して30分後に吸光度測定を行った。測定は同じ実濃度の試料について3回実施した。得られたデータから作成された検量線を図6に示した。また、測定された吸光度から当該検量線を用いて計算される測定濃度の平均値、標準偏差及び変動係数を表2に示した。いずれの濃度においても測定濃度は実濃度にほぼ一致しており、変動係数(CV%)が20%以下と定量性が良好な検量線が得られた。
Figure 2022123648000003

Claims (9)

  1. 異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチドを定量することが可能であり、
    前記異なるサブクラスのIgGの重鎖Fc領域に結合可能なポリクローナル抗体を含み、
    前記ポリペプチドの重鎖Fc領域と前記ポリクローナル抗体のIgG重鎖Fc領域のアミノ酸配列類似度が77%以下である、イムノクロマトグラフィー用キット。
  2. 前記異なるサブクラスのIgGが、少なくともIgG1及びIgG2を含む、請求項1に記載のイムノクロマトグラフィー用キット。
  3. 前記ポリペプチドのIgG重鎖Fc領域が、ネズミ目(Rodentia)生物に由来し、前記ポリクローナル抗体が鯨偶蹄目(Cetartiodactyla)生物に由来する、請求項1又は2に記載のイムノクロマトグラフィー用キット。
  4. 前記ポリクローナル抗体は、下記の(i)、(ii)のいずれか又はそれらの両方を経ていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のイムノクロマトグラフィー用キット
    (i)前記2種以上のポリペプチドの重鎖Fc領域を含むポリペプチドを担体とするアフィニティークロマトグラフィーによる精製、
    (ii)血清成分を担体とするアフィニティークロマトグラフィーによる吸収処理。
  5. さらに少なくともイムノクロマトグラフィー試験片を含み、該イムノクロマトグラフィー試験片に前記ポリクローナル抗体が固相化される、請求項1~4のいずれか一項に記載のイムノクロマトグラフィー用キット。
  6. 下記の(A)~(C)のいずれか1以上を満たす緩衝液を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のイムノクロマトグラフィー用キット:
    (A)0.1質量%以上の非イオン性界面活性剤を含有する;
    (B)アルカリ金属イオンの濃度が400mM以下である;
    (C)pH緩衝成分の濃度が25mM以上である。
  7. 異なるサブクラスのIgG重鎖Fc領域を含む2種以上のポリペプチドを定量する方法であって、
    (a)試料供給部、展開部及び捕捉部を含むイムノクロマトグラフィー試験片に、試料を接触させること;及び
    (b)前記イムノクロマトグラフィー試験片の捕捉部の前記ポリペプチドと抗体の複合体のシグナルを検出すること;を含み、
    前記抗体が、前記異なるサブクラスのIgGの重鎖Fc領域に結合可能なポリクローナル抗体を含み、
    前記ポリペプチドの重鎖Fc領域と前記ポリクローナル抗体のIgG重鎖Fc領域のアミノ酸配列類似度が77%以下である、方法。
  8. 前記(a)の試料が、以下の(A)~(C)のいずれか1以上を満たす緩衝液で希釈されることを含む、請求項6に記載の方法:
    (A)0.1質量%以上の非イオン性界面活性剤を含有する;
    (B)アルカリ金属イオンの濃度が400mM以下である;
    (C)pH緩衝成分の濃度が25mM以上である。
  9. 前記(a)の試料を接触させた時点から前記(b)の検出の時点までの時間が25分~45分間である、請求項7又は8に記載の方法。
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