JP2022121269A - モータ制御方法及びモータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022121269000001
【課題】巻線界磁型同期モータで発生するトルクリプルを、正確に抑制可能なモータ制御方法及びモータ制御装置を提供する。
【解決手段】トルク指令値Tm *が演算され、ロータの回転状態を表す電気角θre等の回転情報が取得される。そして、トルク指令値Tm *と回転情報に基づいて、ロータ巻線に流す電流を指令するロータ電流指令値と、ステータ巻線に流す電流を指令するステータ電流指令値と、が算出される。また、ロータ電流指令値とステータ電流指令値に基づいて、巻線界磁型同期モータ内に生じる磁束φ^が推定される。一方、トルク指令値Tm *と回転情報に基づいて、トルクリプルを補償するトルクリプル補償値Tcnが演算される。そして、ロータ電流指令値が維持されつつ、トルクリプル補償値Tcnと磁束φ^とに基づいて、ステータ電流指令値が補正される。
【選択図】図8

Description

本発明は、巻線界磁型電動モータの制御方法及び制御装置に関する。
特許文献1には、同期モータの制御に関し、回転状態の変動に伴って発生するトルクリプルを抑制する技術が記載されている。具体的には、特許文献1のモータ制御では、モータの回転状態に基づいてトルクリプル補償値が算出される。そして、このトルクリプル補償値がトルク指令値にフィードバックされることによって、トルクリプルを抑制したモータ制御が実現される。
また、特許文献2には、巻線界磁型同期モータの制御に関し、トルクリプルを最小にする制御マップを含む複数の制御マップを予め用意し、状況に応じて制御マップを切り替える制御が記載されている。
特許5949929号 特開2008-109759号公報
特許文献2の巻線界磁型同期モータの制御では、トルクリプルを最小にする制御マップが選択されないときには、トルクリプルが抑えられない。このため、状況に応じて適切に巻線界磁型同期モータのトルクリプルを抑制するためには、特許文献1のようにトルクリプル補償値を算出し、これを巻線界磁型同期モータの制御に用いることが望ましい。
一方、巻線界磁型同期モータの制御に特許文献1の制御を適用しようとすると、トルク指令値の変化に応じて、ステータ巻線に流す電流だけでなく、ロータ巻線に流す電流も変化させることになる。しかし、巻線界磁型同期モータでは、ロータ巻線のインダクタンスはステータ巻線のインダクタンスよりも大きい。このため、ロータ巻線に流す電流は、ステータ巻線に流す電流と同等の応答速度で制御することができない。この応答遅れがある結果、巻線界磁型同期モータの制御に特許文献1の制御を単純に適用しても、正確にトルクリプルが補償されないという問題がある。
本発明は、巻線界磁型同期モータで発生するトルクリプルを、正確に抑制可能なモータ制御方法及びモータ制御装置を提供することを目的とする。
本発明のある態様は、ロータ巻線を有するロータと、ステータ巻線を有するステータと、を備える巻線界磁型同期モータを制御するモータ制御方法である。このモータ制御方法では、巻線界磁型同期モータが出力するトルクを指令するトルク指令値が演算され、ロータの回転状態を表す回転情報が取得される。そして、トルク指令値と回転情報に基づいて、ロータ巻線に流す電流を指令するロータ電流指令値と、ステータ巻線に流す電流を指令するステータ電流指令値と、が算出される。また、ロータ電流指令値とステータ電流指令値に基づいて、巻線界磁型同期モータ内に生じる磁束が推定される。一方、トルク指令値と回転情報に基づいて、トルクリプルを補償するトルクリプル補償値が演算される。そして、ロータ電流指令値が維持されつつ、トルクリプル補償値と磁束とに基づいて、ステータ電流指令値が補正される。
本発明によれば、巻線界磁型同期モータで発生するトルクリプルを、正確に抑制できる。
図1は、電動車両の概略構成を示す説明図である。 図2は、アクセル開度-トルクテーブルの例である。 図3は、電動車両100で実行するモータ制御方法の作用を示すフローチャートである。 図4は、トルクリプル抑制処理部の構成を示すブロック図である。 図5は、磁束推定部の構成を示すブロック図である。 図6は、トルクリプル補償値演算部の構成を示すブロック図である。 図7は、電流制御部の構成を示すブロック図である。 図8は、q軸電流制御部の構成を示すブロック図である。 図9は、d軸電流制御部の構成を示すブロック図である。 図10は、f軸電流制御部の構成を示すブロック図である。 図11は、比較例に係るトルクリプル抑制処理の結果を示すグラフである。 図12は、本実施形態に係るトルクリプル抑制処理の結果を示すグラフである。 図13は、第2実施形態に係るトルクリプル抑制処理部の構成を示すブロック図である。 図14は、第2実施形態に係る磁束推定部の構成を示すブロック図である。 図15は、第3実施形態に係る磁束推定部の構成を示すブロック図である。 図16は、第4実施形態に係るトルクリプル抑制処理部の構成を示すブロック図である。 図17は、第4実施形態に係るトルクリプル補償値演算部の構成を示すブロック図である。 図18は、第4実施形態に係るトルクリプル抑制処理の結果を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、電動車両100の概略構成を示す説明図である。電動車両100は、電気自動車またはハイブリッド車両等の自動車である。なお、電動車両100は、本実施形態に係るモータ制御方法によって巻線界磁型同期モータが制御されるシステムの一例である。したがって、電動車両100以外の車両、及び、その他鉄道等のシステムにおいても本実施形態に係るモータ制御方法は好適である。
図1に示すように、電動車両100は、巻線界磁型同期モータ10、バッテリ11、インバータ12、及び、コントローラ13を備える。
巻線界磁型同期モータ10は、周知のように、ロータが永久磁石の代わりに巻線を備える電動機である。すなわち、巻線界磁型同期モータ10は、ロータ巻線を有するロータと、ステータ巻線を有するステータと、を備える(いずれも図示しない)。また、巻線界磁型同期モータ10は三相交流モータである。このため、ステータ巻線は、U相、V相、及び、W相を有する。そして、これらの各相に流す電流を制御することにより、ロータの回転速度及び出力するトルクが制御される。さらに、巻線界磁型同期モータ10では、ロータ巻線に流れる電流を制御することにより、ロータの磁束が変更可能である。ロータ巻線は界磁巻線と称されることがある。また、ステータ巻線は電気子巻線と称されることがある。以下、巻線界磁型同期モータ10を、単にモータ10という。また、以下では、ステータ巻線に流れる電流をステータ電流という。各相に流れる三相交流電流iu,iv,iwはステータ電流である。また、三相交流電流iu,iv,iwは、座標変換により、いわゆるd軸電流id及びq軸電流iqに変換可能である。このため、d軸電流id及びq軸電流iqもステータ電流である。さらに、以下では、ロータ巻線に流れる電流をロータ電流という。ロータ電流は、いわゆる界磁電流あるいはf軸電流ifである。
なお、本実施形態においては、モータ10は電動車両100の駆動源である。したがって、モータ10は、減速機14及びドライブシャフト15を介して駆動輪16に接続する。これにより、モータ10が発生するトルクは駆動輪に伝達され、電動車両100に駆動力を発生させる。また、電動車両100の走行時にモータ10が駆動輪16に連れ回されて回転するときには、回生駆動力を発生させる回生制御をすることで、モータ10は電動車両100の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
バッテリ11は、リチウムイオンバッテリ等の直流電源である。本実施形態においては、バッテリ11は直流電圧Vdcを出力する。バッテリ11は、モータ10に電力を供給する。また、モータ10を回生制御するときには、バッテリ11は、回生電力を充電する。
インバータ12は、ステータ電流を制御するためのステータ用駆動信号に基づいて、バッテリ11の直流電圧Vdcを三相交流電圧(Vu,Vv,Vw)に変換し、ステータ巻線に印加する。これにより、ステータ巻線には、ステータ用駆動信号に応じて、所望の三相交流電流iu,iv,iwが流れる。より具体的には、インバータ12は、ステータ電流の制御用に、各相につき、2対のスイッチング素子を有する。そして、インバータ12は、ステータ用駆動信号に応じてこれらのスイッチング素子をON/OFFすることにより、バッテリ11から供給される直流電圧Vdcを交流に変換する。この結果、モータ10のUVW各相に印加される電圧はそれぞれVu,Vv,Vwである。
また、インバータ12は、ロータ電流を制御するためのロータ用駆動信号に基づいて、バッテリ11からロータ巻線に所望のロータ電流を流す。より具体的には、インバータ12は、ロータ電流の制御用に、ロータ巻線の両端にそれぞれ2対(計4個)のスイッチング素子を接続する。そして、インバータ12は、ロータ用駆動信号に応じてこれらのスイッチング素子をON/OFFすることにより、ロータ電流を制御する。この結果、ロータ巻線に印加される電圧はVfである。なお、ロータ電流の方向が所定の一方向のみであるときには、2対のスイッチング素子のうち、対角に位置する2つのスイッチング素子をダイオードに置き換えてもよい。
なお、インバータ12が備える各スイッチング素子は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等のパワー半導体素子である。
コントローラ13は、モータ10及び電動車両100の各部を統括的に制御する1または複数のコンピュータで構成される。したがって、コントローラ13は、例えば、中央演算装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等から構成される。コントローラ13は、各部の制御を予め定められた所定の制御周期で定期的に実行するようにプログラムされている。本実施形態においては、コントローラ13は、モータ10を駆動するためのPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成し、インバータ12に入力する。これにより、コントローラ13は、モータ10を駆動する。すなわち、コントローラ13は、少なくとも巻線界磁型同期モータであるモータ10を制御するモータ制御装置である。
コントローラ13は、電動車両100の各部から、必要に応じて動作状態等に係る情報(以下、車両情報という)を取得することができる。車両情報は車両変数とも称される。本実施形態においては、コントローラ13は、車両情報として、アクセルの操作量を表すアクセル開度Apo、バッテリ11の直流電圧Vdc、三相交流電流iu,iv,iw、及び、ロータ電流(f軸電流if)を取得する。また、コントローラ13は、モータ10の回転状態を表す情報を取得する。モータ10の回転状態を表す情報とは、例えば、電気角θre[rad]、電気角速度ωre[rad/s]、及び、機械角速度ωrm[rad/s]である。モータ10の機械角速度ωrmは、モータ10の回転数を表す。
アクセル開度Apoは、アクセル開度センサ(図示しない)によって検出できる。バッテリ11の直流電圧Vdcは、直流電源ラインに備え付けられた電圧センサ(図示しない)、または、バッテリコントローラ(図示しない)によって検出される。三相交流電流iu,iv,iw、及び、ロータ電流(f軸電流if)は、電流センサ17によって検出される。モータ10の電気角θreは、レゾルバやエンコーダ等からなる回転センサ19によって検出される。モータ10の電気角速度ωreは、電気角θreの時間変化率である。モータ10の機械角速度ωrmは、電気角速度ωreをモータ10の極対数で除することにより算出できる。このため、モータ10の電気角θreの取得は、実質的に電気角速度ωre及び機械角速度ωrmの取得を兼ねる。なお、本実施形態においては、コントローラ13は、これらの各種車両情報をセンサ等から直接に取得するが、電動車両100がこれらを取得する他のコントローラ等を備えるときには、そのコントローラ等との通信により、これらの車両情報の一部または全部を取得することができる。
コントローラ13は、モータ10の制御において、トルク指令値演算部21、電流指令値演算部22、トルクリプル抑制処理部23、及び、電流制御処理部24として機能する。
トルク指令値演算部21は、アクセル開度Apo及び車速に基づき、モータ10が出力すべきトルクを指令するトルク指令値Tm *を演算する。本実施形態では、トルク指令値演算部21は、アクセル開度Apo及び車速と、トルクと、の関係を表すアクセル開度-トルクテーブルを有する。図2は、アクセル開度-トルクテーブルの例である。また、電動車両100の車速は、例えば、モータ10の機械角速度ωrmに駆動輪16の動半径を乗じ、ファイナルギヤのギヤ比で除することによって算出することができる。したがって、トルク指令値演算部21は、車両情報として取得するアクセル開度Apo及び機械角速度ωrmと、アクセル開度-トルクテーブルを用いて、トルク指令値Tm *を求める。
電流指令値演算部22は、トルク指令値Tm *と、モータ10の機械角速度ωrmと、バッテリ11の直流電圧Vdcと、を用いて電流指令値iq1 *,id1 *,if1 *を演算する(図4参照)。「iq1 *」は、トルク指令値Tm *に応じて、ステータ巻線に流すべきq軸電流を指令するq軸電流指令値である。「id1 *」は、トルク指令値Tm *に応じて、ステータ巻線に流すべきd軸電流を指令するd軸電流指令値である。「if1 *」は、トルク指令値Tm *に応じて、ロータ巻線に流すべきf軸電流ifを指令するf軸電流指令値である。電流指令値演算部22が演算するこれらの電流指令値iq1 *,id1 *,if1 *は、後述するトルクリプル補正処理前の電流指令値であるという意味で、第1の電流指令値である。なお、本実施形態においては、電流指令値演算部22は、例えば、トルク指令値Tm *、機械角速度ωrm、及び、バッテリ11の直流電圧Vdcと、電流指令値iq1 *,id1 *,if1 *と、の関係を予め定めるマップデータ(図示しない)を保有する。このため、電流指令値演算部22は、このマップデータを参照することにより、トルク指令値Tm *、機械角速度ωrm、及び、バッテリ11の直流電圧Vdcに対応する電流指令値iq1 *,id1 *,if1 *を得る。
トルクリプル抑制処理部23は、トルクリプルを抑制するための処理(以下、トルクリプル抑制処理)を施す。トルクリプルとは、モータ10の構成その他の要因により、モータ10が出力するトルクに重畳される周期的または振動的な変動をいう。トルクリプルの抑制とは、トルクリプルを除去または低減することをいう。本実施形態においては、トルクリプル抑制処理部23は、電流指令値演算部22が演算した電流指令値iq1 *,id1 *,if1 *のうち、q軸電流指令値iq1 *をトルク指令値Tm *に応じて補正し、補正q軸電流指令値iq2 *を演算する。すなわち、トルクリプル抑制処理部23は、トルク指令値Tm *と電流指令値iq1 *,id1 *,if1 *の入力を受け、補正q軸電流指令値iq2 *と、d軸電流指令値id1 *及びf軸電流指令値if1 *と、を出力する。トルクリプル抑制処理部23が出力する電流指令値の一部または全部は、トルクリプル補正処理後の電流指令値という意味で、第2の電流指令値である。本実施形態では、上記の通り、q軸電流指令値iq1 *だけが第2の電流指令値(補正q軸電流指令値iq2 *)となり、d軸電流指令値id1 *及びf軸電流指令値if1 *は、第1の電流指令値のまま出力される。トルクリプル抑制処理については、詳細を後述する。
電流制御処理部24は、検出等された三相交流電流iu,iv,iw及びロータ電流(f軸電流if)等の車両情報と、トルクリプル抑制処理が施された電流指令値(iq2 *,id1 *,if1 *)と、に基づいて、モータ10を駆動するPWM信号を生成する。電流制御処理部24は、このPWM信号をインバータ12に出力することで、モータ10にトルク指令値Tm *に応じたトルクを出力させつつ、かつ、トルクリプルを抑制する。なお、電流制御処理部24が実行する処理は、いわゆる電流制御処理である。電流制御処理については、詳細を後述する。
図3は、電動車両100で実行するモータ制御方法の作用を示すフローチャートである。図3に示すように、コントローラ13は、ステップS101において、入力処理を実行する。入力処理は、モータ10の制御に必要な車両情報を、取得または演算する処理である。本実施形態では、入力処理において、アクセル開度Apo等の車両情報が取得される他、トルク指令値Tm *が演算される。
ステップS102においては、コントローラ13は、トルク指令値Tm *と、モータ10の機械角速度ωrmと、バッテリ11の直流電圧Vdcと、を用いて電流指令値iq1 *,id1 *,if1 *を演算する。そして、ステップS103においては、コントローラ13は、トルクリプル抑制処理を実行する。本実施形態では、コントローラ13は、ステップS102で算出したq軸電流指令値iq1 *を、補正q軸電流指令値iq2 *に補正する。その後、ステップS104において、コントローラ13は、トルクリプル抑制処理が施された電流指令値(iq2 *,id1 *,if1 *)を用いてPWM信号を生成し、これをインバータ12に入力する。その結果、モータ10は、モータ10にトルク指令値Tm *に応じたトルクを出力しつつ、かつ、トルクリプルが抑制される。
以下、トルクリプル抑制処理、電流制御処理、及び、本実施形態に係るモータ制御方法によるトルクリプル抑制の作用について詳細に説明する。
<トルクリプル抑制処理>
図4は、トルクリプル抑制処理部23を示すブロック図である。図4に示すように、トルクリプル抑制処理部23は、(1)磁束推定部31、(2)乗算部32、(3)トルクリプル補償値演算部33、(4)q軸補正電流演算部34、及び、(5)加算部35を備える。
(1)磁束推定部31
磁束推定部31は、d軸電流指令値id1 *とf軸電流指令値if1 *に基づいて、モータ10内に生じる磁束φ^を演算する。具体的には、磁束推定部31は以下のように磁束φ^を演算する。
巻線界磁型であるモータ10が出力するトルクTを表すトルク方程式は、d軸電流id、q軸電流iq、及びf軸電流ifを用いて、下記の式(1)によって表される。式(1)において、「Pn」はモータ10の極対数であり、「Mf」は、ステータとロータの間の相互インダクタンスである。また、「Ld」はd軸インダクタンスであり、「Lq」はq軸インダクタンスである。
Figure 2022121269000002
式(1)において第1項及び第2項がともにq軸電流iqに比例することから分かる通り、モータ10の出力するトルクTmにおいては、特にq軸電流iqが支配的である。そして、第1項(Pnffq)のうち、相互インダクタンスMfとf軸電流ifの積(Mff)の部分は、ロータ巻線によって発生する界磁磁束の推定値(以下、界磁磁束φf^という)を表す。また、第2項(Pn(Ld-Lq)idq)は、いわゆるリラクタンストルクを表す。このため、第2項のうち、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差Ld-Lqと、d軸電流idと、の積((Ld-Lq)id)の部分は、リラクタンストルクと等価な磁束の推定値(以下、リラクタンストルク等価磁束φr^という)を表す。そして、界磁磁束φf^とリラクタンストルク等価磁束φr^の総計が、モータ10内に生じる磁束φ^である。このため、本実施形態においては、磁束推定部31は、界磁磁束φf^とリラクタンストルク等価磁束φr^をそれぞれ算出し、これらを加算することによってモータ10内に生じる磁束φ^を算出する。
図5は、磁束推定部31の構成を示すブロック図である。図5に示すように、磁束推定部31は、界磁磁束推定部36と、リラクタンストルク等価磁束推定部37と、加算部38と、を備える。
界磁磁束推定部36は、f軸電流指令値if *に基づいて、界磁磁束φf^を算出する。本実施形態では、界磁磁束推定部36は、f軸電流指令値if1 *に相互インダクタンスMfを乗じる乗算部39からなる。界磁磁束推定部36は、相互インダクタンスMfとして、ある代表点における相互インダクタンスの値を使用することができる。但し、実験またはシミュレーション等によって予め定めるマップデータを保有しているときには、界磁磁束推定部36は、そのマップデータを参照することにより、モータ10の動作状態等に応じて動的に相互インダクタンスMfを決定することができる。
リラクタンストルク等価磁束推定部37は、d軸電流指令値id1 *に基づいて、リラクタンストルク等価磁束φr^を算出する。本実施形態においては、リラクタンストルク等価磁束推定部37は、d軸電流指令値id *に、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqの差(Ld-Lq)を乗じる乗算部40からなる。リラクタンストルク等価磁束推定部37は、d軸インダクタンスLd及びq軸インダクタンスLqとして、ある代表点における値を使用することができる。但し、実験またはシミュレーション等によって予め定めるマップデータを保有しているときには、リラクタンストルク等価磁束推定部37は、そのマップデータを参照することにより、モータ10の動作状態等に応じて動的にd軸インダクタンスLd及びq軸インダクタンスLqを決定することができる。また、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差Ld-Lqと、q軸電流iqと、の積((Ld-Lq)iq)をリラクタンストルク等価磁束φr^と定義することもできる。この場合、リラクタンストルク等価磁束推定部37は、d軸電流指令値id1 *の代わりに、q軸電流指令値iq1 *に対して、上記のインダクタンスの差(Ld-Lq)を乗じることにより、リラクタンストルク等価磁束φr^を算出する。
加算部38は、界磁磁束推定部36が推定した界磁磁束φf^と、リラクタンストルク等価磁束推定部37が推定したリラクタンストルク等価磁束φr^と、を加算する。これにより、モータ10内で生じる磁束φ^が算出される。
(2)乗算部32
乗算部32(図4参照)は、上記のように磁束推定部31が推定した磁束φ^に極対数Pnを乗じる。乗算部32の出力は、q軸補正電流演算部34に入力される。
(3)トルクリプル補償値演算部33
トルクリプル補償値演算部33(図4参照)は、モータ10の電気角θre及び電気角速度ωreと、トルク指令値Tm *と、に基づいて、トルクリプル補償値を演算する。トルクリプル補償値とは、第1の電流指令値(iq1 *,id1 *,if1 *)のいずれかまたは全部に対して演算することにより、第1の電流指令値(iq1 *,id1 *,if1 *)に基づいてモータ10を駆動するときに生じるトルクリプルを抑制するため補償値である。
また、トルクリプルは、電気角θreに関して高調波として現れる。モータ10の具体的な構成にも依るが、トルクリプルは例えば6の整数倍次(6次、12次、18次、…)の高調波として表れる。トルクリプル補償値演算部33は、これら各次数のトルクリプルについてそれぞれトルクリプル補償値を演算することができる。本実施形態においては、簡単のため、n次(例えばn=6)のトルクリプルに対するトルクリプル補償値(以下、n次トルクリプル補償値Tcnという)算出する。具体的には、トルクリプル補償値演算部33は、以下のようにn次トルクリプル補償値Tcnを演算する。
図6は、トルクリプル補償値演算部33の構成を示すブロック図である。図6に示すように、トルクリプル補償値演算部33は、振幅算出部41、位相算出部42、位相補正値算出部43、及び、補償値演算部44を備える。
振幅算出部41は、トルク指令値Tm *に基づき、各次数のトルクリプルについて各々の振幅を算出する。具体的には、振幅算出部41は、トルク指令値Tm *と、各次数のトルクリプルの振幅と、を対応付けるマップデータを有する。このため、振幅算出部41は、このマップデータを参照することにより、トルク指令値Tm *に応じたトルクリプルの振幅を得る。本実施形態においては、振幅算出部41は、トルク指令値Tm *を用いてn次トルクリプルの振幅Knを算出する。なお、トルクリプルの振幅を定める上記のマップデータは、設計値によって、もしくは、実験またはシミュレーション等によって、予め定めることもできる。算出されたトルクリプルの振幅は、補償値演算部44に入力される。
位相算出部42は、トルク指令値Tm *に基づき、各次数のトルクリプルについて各々の位相を算出する。具体的には、位相算出部42は、トルク指令値Tm *と、各次数のトルクリプルの位相と、を対応付けるマップデータを有する。このため、位相算出部42は、このマップデータを参照することにより、トルク指令値Tm *に応じたトルクリプルの位相を得る。本実施形態においては、位相算出部42は、トルク指令値Tm *を用いてn次トルクリプルの位相θnを算出する。なお、トルクリプルの位相を定める上記のマップデータは、設計値によって、もしくは、実験またはシミュレーション等によって、予め定められる。算出されたトルクリプルの位相は、補償値演算部44に入力される。
位相補正値算出部43は、位相補正値を算出する。位相補正値は、制御の遅れ時間を考慮した位相の補正量を表す。n次トルクリプルの位相補正値θn′は、電気角θre、電気角速度ωre、及び制御遅れ時間tnを用いて、下記の式(2)によって算出することができる。他の次数のトルクリプルに対する位相補正値も同様である。位相補正値算出部43が算出する位相補正値は、補償値演算部44に入力される。
Figure 2022121269000003
補償値演算部44は、トルクリプルの振幅、位相、及び、位相補正値を用いて、トルクリプル補償値を演算する。本実施形態では、補償値演算部44は、n次トルクリプルの振幅Kn、位相θn、及び、位相補正値θn′を用いて、n次トルクリプル補償値Tcnを演算する。n次トルクリプル補償値Tcnは、下記の式(3)によって算出することができる。他の次数のトルクリプル補償値も同様である。
Figure 2022121269000004
上記のように、トルクリプル補償値演算部33が算出した各次数のトルクリプル補償値は、q軸補正電流演算部34に入力される。本実施形態においては、n次トルクリプル補償値Tcnがq軸補正電流演算部34に入力される。
(4)q軸補正電流演算部34
q軸補正電流演算部34(図4参照)は、各次数のトルクリプル補償値に基づいて、q軸補正電流を演算する。q軸補正電流は、q軸電流指令値iq1 *に対する演算に使用することで、モータ10に流すq軸電流iqを補正するq軸用の電流補正値である。本実施形態では、q軸補正電流演算部34は、q軸電流指令値iq1 *に加算して使用し、n次トルクリプルを補償するq軸補正電流iqcn *を演算する。より具体的には、q軸補正電流iqcn *は、n次トルクリプル補償値Tcn、極対数Pn、及び、磁束φ^を用いて、下記の式(4)によって算出される。他の次数のトルクリプルを補償するときに使用するq軸補正電流も同様に演算される。また、算出されたq軸補正電流iqcn *は、加算部35に入力される。
Figure 2022121269000005
(5)加算部35
加算部35(図4参照)は、q軸電流指令値iq1 *にq軸補正電流iqcn *を加算することにより、補正q軸電流指令値iq2 *を出力する。なお、q軸補正電流iqcn *が、q軸電流指令値iq1 *に対して、減算等、加算以外の方法で使用されるべき値であるときには、加算部35は、減算部その他の適切な演算部に置き換えられる。
以上のように、本実施形態のトルクリプル抑制処理部23は、電流指令値iq1 *,id1 *,if1 *のうち、q軸電流指令値iq1 *については、これをトルクリプル補償値Tcnに基づいて補正する。そして、補正後のq軸電流指令値である補正q軸電流指令値iq2 *が電流制御処理部24に出力される。一方、本実施形態のトルクリプル抑制処理部23は、d軸電流指令値id1 *及びf軸電流指令値if1 *を維持する。このため、d軸電流指令値id1 *及びf軸電流指令値if1 *はそのまま電流制御処理部24に出力される。
<電流制御処理>
図7は、電流制御処理部24の構成を示すブロック図である。図7に示すように、(a)座標変換部51、(b)電流制御部52、(c)非干渉制御部53、(d)電圧指令値演算部54、(e)先読補償部55、(f)座標変換部56、及び、(g)PWM変換部57を備える。
(a)座標変換部51
座標変換部51には、検出等された電気角θreと三相交流電流iu,iv,iwが入力される。座標変換部51は、これらを用いて、三相交流電流iu,iv,iwを、3相交流座標系(UVW座標系)から直交2軸直流座標系(dq軸座標系)に変換する演算を行う。すなわち、座標変換部51は、3相/dq交流座標変換器である。具体的には、座標変換部51は、下記の式(5)によって座標変換を行う。なお、本実施形態では、三相交流電流iu,iv,iwのうち、U相電流iu及びV相電流ivを取得し、W相電流iwは演算により求める。d軸電流id及びq軸電流iqは、電流制御部52に入力される。
Figure 2022121269000006
(b)電流制御部52
電流制御部52は、実際のq軸電流iq、d軸電流id、及び、f軸電流ifを、トルクリプル抑制処理部23から入力される電流指令値iq2 *,id1 *,if1 *に、定常偏差なく所望の応答性で追従させる。このために、電流制御部52は、q軸電流制御部61、d軸電流制御部62、及び、f軸電流制御部63を備える。
q軸電流制御部61は、実際のq軸電流iqと、補正後のq軸電流指令値である補正q軸電流指令値iq2 *と、を入力とし、q軸電流規範応答iq_refと、第1のq軸電圧指令値Vq_dshと、を出力する。q軸電流規範応答iq_refは、非干渉制御部53に入力される。また、第1のq軸電圧指令値Vq_dshは、電圧指令値演算部54に入力される。
図8は、q軸電流制御部61の構成を示すブロック図である。図8に示すように、q軸電流制御部61は、伝達特性71に応じて、補正q軸電流指令値iq2 *からq軸電流規範応答iq_refを演算する。q軸電流iqの応答遅れは、非干渉制御部53による非干渉制御の結果、1次遅れとみなせる。このため、伝達特性71は、補正q軸電流指令値iq2 *に対する実際のq軸電流iqの応答遅れを模擬した1次遅れの伝達特性である。図8における「τq」はq軸電流規範応答の時定数である。また、「s」はラプラス演算子であり、これは図9等においても同様である。
また、q軸電流制御部61は、減算部72によって、補正q軸電流指令値iq2 *から実際のq軸電流iqを減算する。補正q軸電流指令値iq2 *とq軸電流iqの差Δiq(図示しない)は、乗算部73に入力され、比例ゲインKpqが乗じられる。また、差Δiqは、乗算部74に入力されることによって積分ゲインKiqが乗じられ、さらに積分器75によって積分される。そして、q軸電流制御部61は、加算部76によってこれらの演算結果を加算することにより、第1のq軸電圧指令値Vq_dshを演算する。
比例ゲインKpq及び積分ゲインKiqは、それぞれ下記の式(6)及び式(7)にしたがって設定される。これにより、補正q軸電流指令値iq2 *からq軸電流iqまでの伝達特性は、下記の式(8)に示す規範応答に一致する。これは、前述の伝達特性71に等しい。なお、「Lq′」はq軸動的インダクタンスであり、「Ra」はステータ巻線の抵抗である。
Figure 2022121269000007
d軸電流制御部62(図7参照)は、実際のd軸電流idと、d軸電流指令値id1 *と、を入力とし、d軸電流規範応答id_ref、d軸電流規範応答id_refの微分値s・id_ref、及び、第1のd軸電圧指令値Vd_dshを出力する。d軸電流規範応答id_refとその微分値s・id_refは、非干渉制御部53に入力される。また、第1のd軸電圧指令値Vd_dshは、電圧指令値演算部54に入力される。
図9は、d軸電流制御部62の構成を示すブロック図である。図9に示すように、d軸電流制御部62は、伝達特性81に応じて、d軸電流指令値id1 *からd軸電流規範応答id_refを演算する。d軸電流idの応答遅れは、非干渉制御部53による非干渉制御の結果、1次遅れとみなせる。このため、伝達特性81は、d軸電流指令値id1 *に対する実際のd軸電流idの応答遅れを模擬した1次遅れの伝達特性である。図9等における「τd」はd軸電流規範応答の時定数である。
また、d軸電流制御部62は、d軸電流指令値id1 *を演算部82に入力する。演算部82は、d軸電流指令値id1 *からd軸電流規範応答id_refの微分値s・id_refを算出する。
さらに、d軸電流制御部62は、減算部83によって、d軸電流指令値id1 *から実際のd軸電流idを減算する。d軸電流指令値id1 *とd軸電流idの差Δid(図示しない)は、乗算部84に入力され、比例ゲインKpdが乗じられる。また、差Δidは、乗算部85に入力されることによって積分ゲインKidが乗じられ、さらに積分器86によって積分される。そして、d軸電流制御部62は、加算部87によってこれらの演算結果を加算することにより、第1のd軸電圧指令値Vd_dshを演算する。
比例ゲインKpd及び積分ゲインKidは、それぞれ下記の式(9)及び式(10)にしたがって設定される。これにより、d軸電流指令値id1 *からd軸電流idまでの伝達特性は、下記の式(11)に示す規範応答に一致する。これは、前述の伝達特性81に等しい。なお、「Ld′」はd軸動的インダクタンスである。
Figure 2022121269000008
f軸電流制御部63(図7参照)は、実際のf軸電流ifと、f軸電流指令値if1 *と、を入力とし、f軸電流規範応答if_ref、f軸電流規範応答if_refの微分値s・if_ref、及び、第1のf軸電圧指令値Vf_dshを出力する。f軸電流規範応答if_refとその微分値s・if_refは、非干渉制御部53に入力される。また、第1のf軸電圧指令値Vf_dshは、電圧指令値演算部54に入力される。f軸電流制御部63がこれらの各パラメータを演算する方法は、d軸電流制御部62と同様である。
図10は、f軸電流制御部63の構成を示すブロック図である。図10に示すように、f軸電流制御部63は、伝達特性91に応じて、f軸電流指令値if1 *からf軸電流規範応答if_refを演算する。f軸電流ifの応答遅れは、非干渉制御部53による非干渉制御の結果、1次遅れとみなせる。このため、伝達特性91は、f軸電流指令値if1 *に対する実際のf軸電流ifの応答遅れを模擬した1次遅れの伝達特性である。図10等における「τf」はf軸電流規範応答の時定数である。
また、f軸電流制御部63は、f軸電流指令値if1 *を演算部92に入力する。演算部92は、f軸電流指令値if1 *からf軸電流規範応答if_refの微分値s・if_refを算出する。
さらに、f軸電流制御部63は、減算部93によって、f軸電流指令値if1 *から実際のf軸電流ifを減算する。f軸電流指令値if1 *とf軸電流ifの差Δif(図示しない)は、乗算部94に入力され、比例ゲインKpfが乗じられる。また、差Δifは、乗算部95に入力されることによって積分ゲインKifが乗じられ、さらに積分器96によって積分される。そして、f軸電流制御部63は、加算部97によってこれらの演算結果を加算することにより、第1のf軸電圧指令値Vf_dshを演算する。
比例ゲインKpf及び積分ゲインKifは、それぞれ下記の式(12)及び式(13)にしたがって設定される。これにより、f軸電流指令値if1 *からf軸電流ifまでの伝達特性は、下記の式(14)に示す規範応答に一致する。これは、前述の伝達特性91に等しい。なお、「Lf′」はf軸動的インダクタンスであり、「Rf」はロータ巻線の抵抗である。
Figure 2022121269000009
(c)非干渉制御部53
非干渉制御部53(図7参照)は、電気角速度ωreと電流制御部52からの各入力を用いて、dqf各軸間の干渉電圧を相殺するために必要な非干渉電圧Vd_dcpl,Vq_dcpl,Vf_dcplを算出する。電流制御部52から非干渉制御部53への入力は、前述の通り、d軸電流規範応答id_refとその微分値s・id_ref、q軸電流規範応答iq_ref、及び、f軸電流規範応答if_refとその微分値s・if_refである。非干渉電圧Vd_dcpl,Vq_dcpl,Vf_dcplは、電圧指令値演算部54に入力される。
モータ10の電圧方程式は、下記の式(15)に示す通りである。「Vd」「Vq」「Vf」は、それぞれd軸電圧、q軸電圧、及び、f軸電圧である。また、「Lf」はf軸インダクタンスであり、「Mf′」はステータ及びロータ間の動的相互インダクタンスである。
Figure 2022121269000010
そして、非干渉制御部53が理想的に機能すれば、上記式(15)の電圧方程式は、下記の式(16)に示すように対角化される。
Figure 2022121269000011
このため、dqf各軸の電圧から電流までの伝達特性は、下記の式(17)、式(18)、及び、式(19)に示すように、一次遅れとなる。
Figure 2022121269000012
(d)電圧指令値演算部54
電圧指令値演算部54(図7参照)は、加算部54qによって、第1のq軸電圧指令値Vq_dshとq軸用の非干渉電圧Vq_dcplを加算することにより、第2のq軸電圧指令値Vq *を演算する。同様に、電圧指令値演算部54は、加算部54dによって、第1のd軸電圧指令値Vd_dshとd軸用の非干渉電圧Vd_dcplを加算することにより、第2のd軸電圧指令値Vd *を演算する。また、電圧指令値演算部54は、加算部54fによって、第1のf軸電圧指令値Vf_dshとf軸用の非干渉電圧Vf_dcplを加算することにより、第2のf軸電圧指令値Vf *を演算する。第2のq軸電圧指令値Vq *及び第2のd軸電圧指令値Vd *は、q軸及びd軸の最終的な電圧指令値として、座標変換部56に入力される。また、第2のf軸電圧指令値Vf *は、f軸の最終的な電圧指令値として、PWM変換部57に入力される。
(e)先読補償部55
先読補償部55(図7参照)は、検出等された電気角θreと電気角速度ωreを用いて、先読み補償された電気角(以下、先読補償後電気角という)θre′を算出する。具体的には、先読補償部55は、電気角速度ωreと本実施形態の制御系が持つむだ時間Tw(図示しない)との乗算値Twωreを、電気角θreに加算することにより、先読補償後電気角をθre′を算出する。先読補償後電気角をθre′は、座標変換部56に入力される。
(f)座標変換部56
座標変換部56(図7参照)は、電気角速度ωreで回転する2軸直流座標系(dq軸座標系)から三相交流座標系(UVW軸座標系)への変換を行う。具体的には、座標変換部56は、第2のd軸電圧指令値Vd *と、第2のq軸電圧指令値Vq *と、先読補償後電気角をθre′と、を用いて、下記の式(20)による座標変換処理を行う。これにより、座標変換部56は、UVW各相の電圧指令値(以下、三相電圧指令値という)Vu *,Vv *,Vw *を算出する。三相電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *は、PWM変換部57に出力される。
Figure 2022121269000013
(g)PWM変換部57
PWM変換部57(図7参照)は、ステータ用のPWM変換器(以下、ステータPWM変換器という)57aと、ロータ用のPWM変換器(以下、ロータPWM変換器という)57bと、を備える。
ステータPWM変換器57aは、三相電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *に基づいて、インバータ12のステータ用スイッチング素子を制御するPWMデューティ駆動信号Duu *,Dul *,Dvu *,Dvl *,Dwu *,Dwl *を生成する。また、ロータPWM変換部57bは、f軸電圧指令値Vf *に基づいて、インバータ12のロータ用スイッチング素子を制御するPWMデューティ駆動信号Dfu *,Dfl *を生成する。インバータ12にこれらのPWMデューティ駆動信号が入力されることにより、モータ10のステータ巻線には補正q軸電流指令値iq2 *及びd軸電流指令値id1 *で指定されるq軸電流iq及びd軸電流idが流れる。同時に、ロータ巻線にはf軸電流指令値if1 *で指定されるf軸電流ifが流れる。その結果、トルク指令値Tm *で指定されたトルクを出力するように、モータ10が駆動される。
<トルクリプル抑制の作用>
以上のように、本実施形態のコントローラ13が実行するモータ制御方法によれば、巻線界磁型であるモータ10を、トルクリプルを抑制して駆動することができる。
図11は、比較例に係るトルクリプル抑制処理の結果を示すグラフである。この比較例では、トルクリプル補償値Tcnをトルク指令値Tm *にフィードバックすることで、モータ10のトルクリプルを抑制する例である。図11(A)は、比較例の制御によってモータ10が出力するトルクの時間変化を表すグラフである。図11(B)~(C)は比較例の制御におけるf軸電流if、q軸電流iq、及びd軸電流idの時間変化を示すグラフである。
なお、図11における細実線はトルクリプル抑制処理を行わないときのトルク及び各軸電流の変化を表している。図11(A)において細実線で示すように、モータ10の制御において、何らトルクリプル抑制処理を行わないときには、所定のトルクリプルが発生する。また、図11(B)~(D)の細実線から分かる通り、図11(A)~(D)の横軸の時間スケールは、トルクリプル抑制処理を行わないときに、各軸の電流がほぼ一定とみなせるスケールである。
図11(B)(C)(D)に太実線で示すように、比較例のトルクリプル抑制処理では、トルク指令値Tm *にトルクリプル補償値Tcnをフィードバックするので、このフィードバックの作用がq軸電流iqとd軸電流idだけでなく、f軸電流ifにも及ぶ。但し、モータ10は巻線界磁型同期モータであって、ロータ巻線は小さい電流で大きな磁束を発生させるために、ロータ巻線のインダクタンス(f軸インダクタンスLf)は、ステータ巻線のインダクタンス(d軸インダクタンスLd及びq軸インダクタンスLq)よりも大きい。したがって、f軸電流ifの変動は、q軸電流iq及びd軸電流idの変動よりも遅れる。
その結果、図11(A)に太実線で示すように、比較例のトルクリプル抑制処理では、トルクリプルが減少するものの、f軸電流ifに応答遅れがあることによってトルクリプルは抑制しきれない。
これに対して、本実施形態のトルクリプル抑制処理では、トルクリプル補償値Tcnをトルク指令値Tm *にフィードバックするのではなく、q軸電流指令値iq1 *の補正に使用する。すなわち、本実施形態のトルクリプル抑制処理は、トルクリプル抑制処理の作用を、q軸電流iqにだけ及ぼし、応答遅れが避けられないf軸電流ifにはトルクリプル抑制処理の作用を及ぼさない。このため、本実施形態のモータ制御方法によれば、比較例よりも適切にモータ10のトルクリプルを抑制することができる。
図12は、本実施形態に係るトルクリプル抑制処理の結果を示すグラフである。図12(A)は、本実施形態のトルクリプル抑制処理によってモータ10が出力するトルクの時間変化を表すグラフである。図12(B)~(C)は本実施形態のトルクリプル抑制処理におけるf軸電流if、q軸電流iq、及びd軸電流idの時間変化を示すグラフである。細実線でトルクリプル抑制処理を行わないときの各時間変化を表していること、及び、これら各グラフの横軸(時間軸)のスケールは図11と同様である。
図12(B)(C)(D)に太実線で示すように、本実施形態のトルクリプル抑制処理では、当該処理の作用が、実質的に応答遅れのないq軸電流iqにだけ及ぶ。そして、この時間スケールにおいてはd軸電流id及びf軸電流ifは一定である。このため、トルクリプル抑制処理において、q軸電流iq及びd軸電流idに対する相対的なf軸電流ifの応答遅れを考慮する必要がない。その結果、図12(A)に示すように、本実施形態のトルクリプル抑制処理によれば、比較例のトルクリプル抑制処理を行うときよりも(図11(A)参照)、モータ10のトルクリプルがより正確に抑制される。
以上のように、本実施形態に係るモータ制御方法は、ロータ巻線を有するロータと、ステータ巻線を有するステータと、を備える巻線界磁型同期モータであるモータ10を制御するモータ制御方法である。そして、このモータ制御方法では、モータ10が出力するトルクを指令するトルク指令値Tm *が演算され、電気角θre、電気角速度ωre、機械角速度ωrm等のロータの回転状態を表す回転情報が取得される。そして、トルク指令値Tm *と電気角θre等の回転情報に基づいて、ロータ巻線に流す電流を指令するロータ電流指令値であるq軸電流指令値iq1 *及びd軸電流指令値id1 *と、ステータ巻線に流す電流を指令するステータ電流指令値であるf軸電流指令値if1 *とが算出される。また、ロータ電流指令値であるq軸電流指令値iq1 *及びd軸電流指令値id1 *とステータ電流指令値であるf軸電流指令値if1 *とに基づいて、モータ10内に生じる磁束φ^が推定される。一方、トルク指令値Tm *と電気角θre等の回転情報に基づいて、トルクリプルを補償するトルクリプル補償値Tcnが演算される。そして、ロータ電流指令値であるf軸電流指令値if1 *を維持しつつ、トルクリプル補償値Tcnと磁束φ^とに基づいて、ステータ電流指令値の1つであるq軸電流指令値iq1 *が補正される。
このように、本実施形態に係るモータ制御方法は、応答遅れが避けられないロータ電流指令値(f軸電流指令値if1 *)を維持し、所望の応答性が得られるステータ電流指令値(q軸電流指令値iq1 *)を補正して、モータ10のトルクリプルを補正する。このため、本実施形態に係るモータ制御方法によれば、巻線界磁型同期モータであるモータ10で発生するトルクリプルを、比較例等と比較して、より良く正確に抑制できる。
本実施形態では簡単のためにn次トルクリプルだけを抑制しているが、本実施形態に係るモータ制御方法では、トルクリプルの次数ごとに振幅及び位相が演算される。そして、トルクリプル補償値の演算及びステータ電流指令値の補正は、次数ごとに演算された振幅及び位相に基づいて、1または複数の次数について行われる。このように、1または複数の次数のトルクリプルを抑制することによって、巻線界磁型同期モータであるモータ10で発生するトルクリプルを、さらに好適に抑制できる。また、トルクリプルの次数ごとに、適切な補償をすることができる。
本実施形態に係るモータ制御方法では、ステータ電流指令値は、d軸電流指令値id1*とq軸電流指令値iq1 *であり、ステータ電流指令値の補正は、q軸電流指令値iq1 *に対して行われる。式(1)から分かる通り、モータ10が出力するトルクTmにおいては、q軸電流iqが支配的である。このため、ステータ電流指令値の補正は、q軸電流指令値iq1 *に対して行うことで、特に良好にトルクリプルを抑制しやすい。
本実施形態に係るモータ制御方法では、モータ10内に生じる磁束として、d軸電流指令値id1 *を用いて、リラクタンストルクと等価な磁束であるリラクタンストルク等価磁束φr^を推定する。また、モータ10内に生じる磁束として、ロータ電流指令値であるf軸電流指令値if1 *を用いて、ロータに発生する磁束である界磁磁束φf^を推定する。そして、ステータ電流指令値(q軸電流指令値iq1 *)の補正は、リラクタンストルク等価磁束φr^及び界磁磁束φf^を用いて行われる。このように、リラクタンストルク等価磁束φr^と界磁磁束φf^を算出することで、モータ10内に生じる磁束φ^を正確に推定することができる。このため、トルクリプル補償値(Tcn等)がより正確になる。その結果、トルクリプルがより良く正確に抑制される。
また、本実施形態に係るモータ制御方法では、リラクタンストルク等価磁束φr^は、d軸電流指令値id1 *またはq軸電流指令値iq1 *に、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqの差(Ld-Lq)を乗じることによって推定される。この推定方法によれば、簡単かつ正確にリラクタンストルク等価磁束φr^が推定される。その結果、モータ10のトルクリプルは、より容易にかつ正確に抑制される。
また、本実施形態に係るモータ制御方法では、界磁磁束φf^は、ロータ電流指令値(f軸電流指令値if1 *)に、ロータとステータの相互インダクタンスMfを乗じることによって推定される。この推定方法によれば、簡単かつ正確に界磁磁束φf^が推定される。その結果、モータ10のトルクリプルは、より容易にかつ正確に抑制される。
[第2実施形態]
上記第1実施形態においては、トルク指令値Tm *が概ね一定とみなせる時間的範囲におけるトルクリプル抑制処理ついて説明しているが、トルク指令値Tm *は電動車両100の走行状態等に応じて変化する。そして、トルク指令値Tm *が変化するときには、d軸電流id及びq軸電流iqも含めて、モータ10に流れる電流に応答遅れが発生する。このため、トルク指令値Tm *が変化するときには、この応答遅れを考慮して、より正確なトルクリプル補償値を算出することが好ましい。本第2実施形態においては、トルク指令値Tm *が変化するときに生じる各電流の応答遅れを考慮して、より正確なトルクリプル補償値を算出する例を説明する。なお、第2実施形態においては、トルクリプル抑制処理部23の構成が第1実施形態と異なる。それ以外の構成は第1実施形態と同様である。
図13は、第2実施形態に係るトルクリプル抑制処理部23の構成を示すブロック図である。図13に示すように、第2実施形態のトルクリプル抑制処理部23は、磁束推定部201、トルク推定部202、トルクリプル補償値演算部203、及び、第2電流指令値演算部204を備える。
磁束推定部201は、第1実施形態と同様に構成される。すなわち、磁束推定部201は、第1実施形態と同様に、d軸電流指令値id1 *とf軸電流指令値if1 *に基づいて、界磁磁束φf^とリラクタンストルク等価磁束φr^を算出する。そして、これらを加算することにより、モータ10内に生じる磁束φ^が演算される。但し、第2実施形態においては、磁束推定部201によって推定された磁束φ^は、トルク推定部202と第2電流指令値演算部204に入力される。また、磁束推定部201は、界磁磁束推定部36とリラクタンストルク等価磁束推定部37の構成が第1実施形態の磁束推定部31と異なる。
図14は、第2実施形態に係る磁束推定部201の構成を示すブロック図である。図14に示すように、第2実施形態の界磁磁束推定部205は、相互インダクタンスMfを乗じる乗算部39の前段に、演算部206を備える。演算部206は、ロータ巻線に流れる電流の応答を模擬した伝達特性に基づいて、ロータ電流指令値であるf軸電流指令値if1 *を補正する。なお、トルクリプル補償値を用いたステータ電流指令値の「補正」と区別するため、演算部206の演算による補正を、以下では「調整」という。すなわち、このため、界磁磁束推定部205は、演算部206によって調整されたf軸電流指令値if1 *を用いて界磁磁束φf^を推定する。
演算部206が模擬する伝達特性は、f軸電流応答遅れを模擬した1次遅れの伝達特性に対して、q軸電流応答の進みを補償した伝達特性である。界磁磁束推定部205は、演算部206によってf軸電流応答の遅れに対するq軸電流応答の進みを補正することにより、第1実施形態の界磁磁束推定部36よりもさらに正確に界磁磁束φf^を推定することができる。
また、第2実施形態のリラクタンストルク等価磁束推定部207は、インダクタンスの差(Ld-Lq)を乗じる乗算部40の前段に、演算部208を備える。演算部208は、d軸電流応答を模擬した伝達特性に基づいて、d軸電流指令値id1 *を補正する。なお、トルクリプル補償値を用いたステータ電流指令値の「補正」と区別するため、演算部208の演算による補正を、以下では「調整」という。すなわち、リラクタンストルク等価磁束推定部207は、演算部208によって調整されたd軸電流指令値id1 *を用いてリラクタンストルク等価磁束φr^を推定する。
演算部208が模擬する伝達特性は、d軸電流応答遅れを模擬した1次遅れの伝達特性に対して、q軸電流応答の進みを補償した伝達特性である。リラクタンストルク等価磁束推定部207は、演算部208によってd軸電流応答の遅れに対するq軸電流応答の進みを補正することにより、第1実施形態のリラクタンストルク等価磁束推定部37よりもさらに正確にリラクタンストルク等価磁束φr^を推定することができる。
なお、以下では、演算部206,208の各伝達特性を区別するために、リラクタンストルク等価磁束推定部207の演算部208が模擬する伝達特性を第1伝達特性といい、界磁磁束推定部205の演算部206が模擬する伝達特性を第2伝達特性という場合がある。
トルク推定部202(図13参照)は、下記の式(21)にしたがってトルク推定値Tm^を演算する。トルク推定値Tm^は、補正前のq軸電流指令値iq1 *と、d軸電流指令値id1 *及びf軸電流指令値if1 *と、によってモータ10を制御するときに、モータ10が出力するトルクTmの推定値である。トルク推定値Tm^は、トルクリプル補償値演算部203と第2電流指令値演算部204に入力される。
Figure 2022121269000014
トルクリプル補償値演算部203は、トルク指令値Tm *の代わりに、トルク推定値Tm^を入力とする他は、第1実施形態のトルクリプル補償値演算部33と同様である。すなわち、トルクリプル補償値演算部203は、モータ10の電気角θre及び電気角速度ωreと、トルク推定値Tm^と、に基づいて、トルクリプル補償値を演算する。ここでは、トルクリプル補償値演算部203は、n次トルクリプル補償値Tcnを演算する。n次トルクリプル補償値Tcnは、第2電流指令値演算部204に入力される。
第2電流指令値演算部204は、下記の式(22)にしたがって、補正q軸電流指令値iq2 *を演算する。トルクリプル補償値演算部203が他の次数のトルクリプル補償値を演算するときも同様である。
Figure 2022121269000015
以上のように、第2実施形態のトルクリプル抑制処理部23は、トルク推定値Tm^を算出し、これを用いてq軸電流指令値iq1 *をより正確に補正する。このため、トルク指令値Tm *が変化するシーンにおいても、トルクリプルを正確に抑制することができる。このように、上記のトルク推定値Tm^を用いることでq軸電流指令値iq1 *がより正確に補正されるのは、トルク推定値Tm^が応答遅れを考慮して算出された磁束φ^に基づいて算出されるからである。
より具体的には、第2実施形態のモータ制御方法では、d軸電流応答を模擬した演算部208の第1伝達特性に基づいて調整されたd軸電流指令値id1 *を用いて、リラクタンストルク等価磁束φr^が推定される。このため、トルク指令値Tm *が変化するシーンにおいてもリラクタンストルク等価磁束φr^が正確に推定される。そして、q軸電流指令値iq1 *は、トルク推定値Tm^を介して、この正確なリラクタンストルク等価磁束φr^に基づいて補正される。したがって、第2実施形態に係るモータ制御方法によれば、トルク指令値Tm *が変化するシーンにおいても、モータ10のトルクリプルが正確に抑制される。
また、第2実施形態のモータ制御方法では、ロータ巻線に流れる電流(f軸電流if)の応答を模擬した演算部206の第2伝達特性に基づいて調整されたロータ電流指令値(f軸電流指令値if1 *)を用いて、界磁磁束φf^が推定される。このため、トルク指令値Tm *が変化するシーンにおいても界磁磁束φf^が正確に推定される。そして、q軸電流指令値iq1 *は、トルク推定値Tm^を介して、この正確な界磁磁束φf^に基づいて補正される。したがって、第2実施形態に係るモータ制御方法によれば、トルク指令値Tm *が変化するシーンにおいても、モータ10のトルクリプルが正確に抑制される。
[第3実施形態]
上記の通り、第2実施形態においては、トルク指令値Tm *が変化するシーンにおいて正確にトルクリプルを抑制する。しかし、トルク指令値Tm *が急峻に変化するときにはf軸電流ifが急峻に立ち上がることになる。このため、こうした急峻な変化の過程においては、界磁電圧(f軸電圧Vf)が、過渡的に、バッテリ11の直流電圧Vdcによって制限されることがある。このとき、実際に発生するトルクTmの応答遅れは非線形な特性となるので、トルクリプル抑制処理においてもこの非線形な応答遅れの特性を考慮することが好ましい。したがって、本第3実施形態では、トルク指令値Tm *が急峻に変化することによって発生する非線形なトルク応答遅れを考慮したトルクリプル抑制処理について説明する。なお、第3実施形態においては、磁束推定部の構成が第1実施形態及び第2実施形態と異なる。それ以外の構成は、第1実施形態または第2実施形態と同様である。
図15は、第3実施形態に係る磁束推定部301の構成を示すブロック図である。図15に示すように、第3実施形態における磁束推定部301は、界磁磁束推定部302と、リラクタンストルク等価磁束推定部303と、を備える。
界磁磁束推定部302は、第1実施形態等と同様の乗算部39の他に、乗算部311、加算部312、リミット処理部313、演算部314、及び、演算部315を備える。界磁磁束推定部302は、これらにより、電流フィードバック系を構成する。
乗算部311は、f軸電流指令値if1 *にゲインGafを乗算する。これにより、乗算部311は、f軸電流指令値if1 *を電圧指令値の次元に変換する。ゲインGafは、下記の式(23)にしたがって設定される。これは、f軸電圧Vfが飽和しない範囲でトルク指令値Tm *が変動するときに、f軸電流応答を1次遅れの伝達特性に一致させるためである。ゲインGafを乗じたf軸電流指令値if1 *は、加算部312に入力される。
Figure 2022121269000016
加算部312は、乗算部311の出力と、演算部315の出力と、を加算する。乗算部311の出力は、前述のようにf軸電流指令値if1 *にゲインGafを乗じることによって算出された電圧指令値である。また、演算部315の出力は、後述するように、f軸電流規範応答if_refにゲインGbfを乗算して、電圧指令値に変換したものである。したがって、加算部312は、実質的に、f軸電流指令値if1 *に対してf軸電流規範応答if_refをフィードバックする。以下、加算部312の出力をf軸電圧指令値Vfc(図示しない)という。f軸電圧指令値Vfcは、リミット処理部313に入力される。
リミット処理部313は、加算部312から入力されるf軸電圧指令値Vfcの上限値及び/または下限値を制限するリミット処理を実行する。これにより、リミット処理部313は、f軸電圧Vfの飽和特性を模擬する飽和モデルによって構成される。f軸電圧Vfの飽和特性とは、トルク指令値Tm *が急峻に変化するときに、f軸電圧Vfの上限及び/または下限がバッテリ11の直流電圧Vdcによって制限され、実質的にf軸電圧Vfが飽和した状態になる非線形な電圧の変化特性をいう。リミット処理部313は、リミット処理後のf軸電圧指令値Vfc_limを、演算部314に出力する。
演算部314は、f軸電圧Vfからf軸電流ifまでの伝達特性をモデル化した規範応答モデル(以下、f軸モデルという)によって、リミット処理後のf軸電圧指令値Vfc_limからf軸電流規範応答if_refを演算する。また、f軸モデルは、q軸電流応答の進みを補償する。このため、f軸モデルは、図15に示す通り、(τqs+1)/(Lf′s+Rf)で表される。演算部314が出力するf軸電流規範応答if_refは、乗算部39で相互インダクタンスMfが乗じられることにより、界磁磁束φf^として出力される。
演算部315は、演算部314が出力するf軸電流規範応答if_refを取得し、これにゲインGbfを乗じて、加算部312に出力する。すなわち、演算部315は、演算部314が出力するf軸電流規範応答if_refを電圧指令値に変換してフィードバックする。ゲインGbfは、下記の式(24)にしたがって設定される。これは、f軸電圧Vfが飽和しない範囲でトルク指令値Tm *が変動するとき、f軸電流応答を1次遅れの伝達特性に一致させるためである。なお、演算部315が実行するフィードバックの演算モデル(以下、フィードバックモデルという)は、図15に示す通り、Gbf/(τqs+1)で表される。これは、演算部314がq軸電流応答の進みを補償することに対応する。
Figure 2022121269000017
リラクタンストルク等価磁束推定部303は、原則として第2実施形態のリラクタンストルク等価磁束推定部207(図14参照)と同様に構成される。但し、本実施形態においては、d軸電流応答とq軸電流応答は実質的に等しく、その結果、d軸電流応答の時定数τdとq軸電流応答の時定数τqが等しいとする。この場合、第2実施形態にリラクタンストルク等価磁束推定部207が含む演算部208が表す伝達特性は「1」であるため、実質的に第1実施形態のリラクタンストルク等価磁束推定部37と同様の簡素化した構成となっている。すなわち、リラクタンストルク等価磁束推定部303は、乗算部40によって、d軸とq軸のリラクタンスの差(Ld-Lq)をd軸電流指令値id1 *に乗じることにより、リラクタンストルク等価磁束φr^を推定する。
以上のように、第3実施形態は、第2実施形態の界磁磁束推定部205に導入した伝達特性(第2伝達特性)を、演算部314の規範応答モデル(f軸モデル)と、この規範応答モデルの出力をフィードバックする演算部315のフィードバックモデルと、リミット処理部313の飽和モデルと、によって形成するように拡張したものである。
このように、第3実施形態では、界磁磁束推定部302に、f軸電圧Vfの飽和を模擬するリミット処理部313の飽和モデルを導入したことにより、トルク指令値Tm *が急峻に変化し、非線形なトルク応答遅れが生じるときでも、この非線形なトルク応答遅れに対応した界磁磁束φf^が演算される。その結果、第3実施形態のモータ制御方法によれば、トルク指令値Tm *が急峻に変化するときにも、正確にトルクリプルを抑制することができる。また、界磁磁束推定部302にはフィードバックモデルを含む電流フィードバック系が設けられているので、f軸電圧Vfが飽和しない範囲で緩慢にトルク指令値Tm *が変化するときには、第2実施形態と同様に機能する。
[第4実施形態]
上記第1~第3実施形態においては、ステータ電流の1つであるq軸電流iqを用いてトルクリプルを抑制しているが、他のステータ電流であるd軸電流idもトルクリプルの抑制に利用できる。本第4実施形態では、q軸電流iqとd軸電流idの両方を用いてモータ10のトルクリプルを抑制する例を説明する。なお、本第4実施形態においては、トルクリプル抑制処理部の構成が第1~第3実施形態と異なる。それ以外の構成は第1~第3実施形態と同様である。また、q軸電流iqを用いる代わりに、d軸電流idを用いてトルクリプルを抑制することもできるが、これは第1~第3実施形態と同様であるから、説明を省略する。
図16は、第4実施形態に係るトルクリプル抑制処理部401の構成を示すブロック図である。図16に示すように、第4実施形態のトルクリプル抑制処理部401は、電流指令値演算部22から入力される各軸の電流指令値iq1 *,id1 *,if1 *のうち、q軸電流指令値iq1 *とd軸電流指令値id1 *を補正し、それぞれ補正q軸電流指令値iq2 *及び補正d軸電流指令値id2 *として出力する。したがって、第4実施形態では、電流制御処理部24は、補正後の補正q軸電流指令値iq2 *及び補正d軸電流指令値id2 *と、補正しないf軸電流指令値if1 *と、を用いて、第1~第3実施形態と同様の電流制御処理を実行する。
また、図16に示すように、第4実施形態のトルクリプル抑制処理部401は、トルクリプル補償値演算部402を備える。
トルクリプル補償値演算部402は、n次トルクリプル補償値Tcnの他、これとは異なる次数のトルクリプル補償値であるm次トルクリプル補償値Tcmをそれぞれ演算する。ここでは、m>nであるとする。本実施形態では、一例として、n次トルクリプル補償値Tcnはq軸電流iqの補正に使用し、m次トルクリプル補償値Tcmはd軸電流idの補正に使用する。このため、n次トルクリプル補償値Tcnはq軸補正電流演算部405に入力され、m次トルクリプル補償値Tcmはd軸補正電流演算部409に入力される。
<トルクリプル補償値演算部>
図17は、第4実施形態に係るトルクリプル補償値演算部402の構成を示すブロック図である。図17に示すように、トルクリプル補償値演算部402は、振幅算出部411、位相算出部412、位相補正値算出部413、及び、補償値演算部414を備える。
振幅算出部411は、第1実施形態の振幅算出部41と同様に、トルク指令値Tm *に基づき、各次数のトルクリプルについて各々の振幅を算出する。但し、本実施形態では、振幅算出部411は、n次トルクリプルの振幅Knとm次トルクリプルの振幅Kmをそれぞれ算出し、これらを補償値演算部414に入力する。
位相算出部412は、第1実施形態の位相算出部42と同様に、各次数のトルクリプルについて各々の位相を算出する。但し、本実施形態では、位相算出部412は、n次トルクリプルの位相θnとm次トルクリプルの位相θmをそれぞれ算出し、これらを補償値演算部414に入力する。
位相補正値算出部413は、第1実施形態の位相補正値算出部43と同様に、位相補正値を算出する。但し、本実施形態では、位相補正値算出部413は、n次トルクリプルの位相補正値θn′とm次トルクリプルの位相補正値θm′をそれぞれ算出し、これらを補償値演算部414に入力する。
補償値演算部414は、n次補償値演算部415とm次補償値演算部416を含む。n次補償値演算部415は、第1実施形態の補償値演算部44と同様に、n次トルクリプルの振幅Kn、位相θn、及び、位相補正値θn′を用いて、n次トルクリプル補償値Tcnを演算する。n次トルクリプル補償値Tcnはq軸補正電流演算部405に入力される(図16参照)。m次補償値演算部416は、第1実施形態の補償値演算部44と同様に、m次トルクリプルの振幅Km、位相θm、及び、位相補正値θm′を用いて、m次トルクリプル補償値Tcmを演算する。m次トルクリプル補償値Tcmはd軸補正電流演算部409に入力される(図16参照)。
<q軸電流を補正する構成>
上記のトルクリプル補償値演算部402の他、トルクリプル抑制処理部401は、q軸電流iqの補正のために、界磁磁束推定部403、乗算部404、q軸補正電流演算部405、加算部406を備える(図16参照)。
界磁磁束推定部403は、f軸電流指令値if1 *に基づいて界磁磁束φf^を演算する。推定された界磁磁束φf^は乗算部404に入力される。本実施形態においては、界磁磁束推定部403は、第1実施形態と同様に乗算部39によって形成される。但し、界磁磁束推定部403は、第2実施形態または第3実施形態のように構成されてもよい。
乗算部404は、界磁磁束φf^にモータ10の極対数Pnを乗算し、その結果をq軸補正電流演算部405に入力する。
q軸補正電流演算部405は、n次トルクリプル補償値Tcnと、乗算部404の出力であるPn・φf^と、を用いて、下記の式(25)にしたがってq軸補正電流iqcn *を演算する。すなわち、第1実施形態では全体の磁束φ^に基づいてq軸補正電流iqcn *を算出するのに対し、本実施形態では界磁磁束φf^に基づいてq軸補正電流iqcn *を算出する。q軸補正電流iqcn *は、加算部406に入力される。
Figure 2022121269000018
加算部406は、q軸電流指令値iq1 *に上記のq軸補正電流iqcn *を加算することにより、q軸電流指令値iq1 *を補正q軸電流指令値iq2 *に補正する。
<d軸電流を補正する構成>
また、トルクリプル抑制処理部401は、d軸電流idの補正のために、リラクタンストルク等価磁束推定部407、乗算部408、d軸補正電流演算部409、及び、加算部410を備える(図16参照)。
リラクタンストルク等価磁束推定部407は、q軸電流指令値iq1 *に基づいて、リラクタンストルク等価磁束φr^を算出する。本実施形態では、第1実施形態と同様に乗算部40によって形成される。但し、リラクタンストルク等価磁束推定部407は、第2実施形態または第3実施形態のように構成されてもよい。リラクタンストルク等価磁束推定部407によって推定されたリラクタンストルク等価磁束φr^は、乗算部408に入力される。
なお、第1~第3実施形態においては、リラクタンストルク等価磁束φr^をd軸電流指令値id1 *に基づいて算出しているが、本実施形態では、q軸電流指令値iq1 *に基づいてリラクタンストルク等価磁束φr^を算出する。したがって、本実施形態におけるリラクタンストルク等価磁束φr^は、式(1)の第2項における(Ld-Lq)iqの部分に相当する。
乗算部408は、リラクタンストルク等価磁束φr^にモータ10の極対数Pnを乗算し、その結果をd軸補正電流演算部409に入力する。
d軸補正電流演算部409は、m次トルクリプル補償値Tcmと、乗算部408の出力であるPn・φr^と、を用いて、下記の式(26)にしたがって、m次トルクリプルを補償するd軸補正電流idcm *を演算する。d軸補正電流idcm *は、加算部410に入力される。
加算部410は、d軸電流指令値id1 *に上記のd軸補正電流idcm *を加算することにより、d軸電流指令値id1 *を補正d軸電流指令値id2 *に補正する。
以上のように、第4実施形態では、ステータ電流指令値は、d軸電流指令値id1 *とq軸電流指令値iq1 *であり、ステータ電流指令値の補正は、d軸電流指令値id1 *とq軸電流指令値iq1 *の両方に対して行う。この場合も、第1~第3実施形態と同様に、f軸電流応答の遅れがあっても、正確にトルクリプルを抑制することができる。
図18は、第4実施形態に係るトルクリプル抑制処理の結果を示すグラフである。図18(A)は、本実施形態のトルクリプル抑制処理によってモータ10が出力するトルクの時間変化を表すグラフである。図18(B)~(C)は本実施形態のトルクリプル抑制処理におけるf軸電流if、q軸電流iq、及びd軸電流idの時間変化を示すグラフである。細実線でトルクリプル抑制処理を行わないときの各時間変化を表していること、及び、これら各グラフの横軸(時間軸)のスケールは図11及び図12と同様である。
図18(B)(C)(D)に太実線で示すように、本実施形態のトルクリプル抑制処理では、当該処理の作用が、実質的に応答遅れのないq軸電流iq及びd軸電流idだけ及び、f軸電流ifは一定である。このため、q軸電流iq及びd軸電流idに対する相対的なf軸電流ifの応答遅れを考慮する必要がない。その結果、図18(A)に示すように、本実施形態のトルクリプル抑制処理によれば、第1~第3実施形態と同様に、比較例のトルクリプル抑制処理を行うときよりも(図11(A)参照)、モータ10のトルクリプルがより正確に抑制される。
なお、上記第4実施形態においては、n次トルクリプルをq軸電流指令値iq1 *の補正によって抑制するが、d軸電流指令値id1 *の補正で抑制する次数のトルクリプルを除き、n次とその他の次数のトルクリプルをq軸電流指令値iq1 *の補正によって抑制することができる。同様に、上記第4実施形態においては、m次トルクリプルをd軸電流指令値id1*の補正によって抑制するが、q軸電流指令値iq1 *の補正で抑制する次数のトルクリプルを除き、m次とその他の次数のトルクリプルをd軸電流指令値id1 *の補正によって抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態及び各変形例で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
10 :巻線界磁型同期モータ
11 :バッテリ
12 :インバータ
13 :コントローラ
21 :トルク指令値演算部
22 :電流指令値演算部
23 :トルクリプル抑制処理部
24 :電流制御処理部
31 :磁束推定部
33 :トルクリプル補償値演算部
34 :q軸補正電流演算部
36 :界磁磁束推定部
37 :リラクタンス等価磁束推定部
41 :振幅算出部
42 :位相算出部
43 :位相補正値算出部
44 :補償値演算部

Claims (11)

  1. ロータ巻線を有するロータと、ステータ巻線を有するステータと、を備える巻線界磁型同期モータを制御するモータ制御方法であって、
    前記巻線界磁型同期モータが出力するトルクを指令するトルク指令値を演算し、
    前記ロータの回転状態を表す回転情報を取得し、
    前記トルク指令値と前記回転情報に基づいて、前記ロータ巻線に流す電流を指令するロータ電流指令値と、前記ステータ巻線に流す電流を指令するステータ電流指令値と、を算出し、
    前記ロータ電流指令値と前記ステータ電流指令値に基づいて、前記巻線界磁型同期モータ内に生じる磁束を推定し、
    前記トルク指令値と前記回転情報に基づいて、トルクリプルを補償するトルクリプル補償値を演算し、
    前記ロータ電流指令値を維持しつつ、前記トルクリプル補償値と前記磁束とに基づいて、前記ステータ電流指令値を補正する、
    モータ制御方法。
  2. 請求項1に記載のモータ制御方法であって、
    前記トルクリプルの次数ごとに振幅及び位相を演算し、
    前記トルクリプル補償値の演算及び前記ステータ電流指令値の補正は、次数ごとに演算された前記振幅及び前記位相に基づいて、1または複数の次数について行う、
    モータ制御方法。
  3. 請求項1または2に記載のモータ制御方法であって、
    前記ステータ電流指令値は、d軸電流指令値とq軸電流指令値であり、
    前記ステータ電流指令値の補正は、前記q軸電流指令値に対して行う、
    モータ制御方法。
  4. 請求項1または2に記載のモータ制御方法であって、
    前記ステータ電流指令値は、d軸電流指令値とq軸電流指令値であり、
    前記ステータ電流指令値の補正は、前記d軸電流指令値と前記q軸電流指令値の両方に対して行う、
    モータ制御方法。
  5. 請求項3または4に記載のモータ制御方法であって、
    前記磁束として、前記d軸電流指令値を用いて、リラクタンストルクと等価なリラクタンストルク等価磁束を推定し、
    前記磁束として、前記ロータ電流指令値を用いて、前記ロータに発生する界磁磁束を推定し、
    前記ステータ電流指令値の補正は、前記リラクタンストルク等価磁束及び前記界磁磁束を用いて行う、
    モータ制御方法。
  6. 請求項5に記載のモータ制御方法であって、
    前記リラクタンストルク等価磁束は、前記d軸電流指令値または前記q軸電流指令値に、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスの差を乗じることによって推定する、
    モータ制御方法。
  7. 請求項6に記載のモータ制御方法であって、
    d軸電流応答を模擬した第1伝達特性に基づいて調整された前記d軸電流指令値を用いて前記リラクタンストルク等価磁束を推定する、
    モータ制御方法。
  8. 請求項5~7のいずれか1項に記載のモータ制御方法であって、
    前記界磁磁束は、前記ロータ電流指令値に、前記ロータと前記ステータの相互インダクタンスを乗じることによって推定する、
    モータ制御方法。
  9. 請求項8に記載のモータ制御方法であって、
    前記ロータ巻線に流れる電流の応答を模擬した第2伝達特性に基づいて調整された前記ロータ電流指令値を用いて前記界磁磁束を推定する、
    モータ制御方法。
  10. 請求項9に記載のモータ制御方法であって、
    前記第2伝達特性は、電圧の印可から電流が流れるまでの伝達特性をモデル化した規範応答モデルと、前記規範応答モデルの出力をフィードバックするフィードバックモデルと、前記電圧の飽和特性を模擬する飽和モデルと、によって形成される、
    モータ制御方法。
  11. ロータ巻線を有するロータと、ステータ巻線を有するステータと、を有する巻線界磁型同期モータを制御するモータ制御装置であって、
    前記巻線界磁型同期モータが出力するトルクを指令するトルク指令値を演算し、
    前記ロータの回転状態を表す回転情報を取得し、
    前記トルク指令値と前記回転情報に基づいて、前記ロータ巻線に流す電流を指令するロータ電流指令値と、前記ステータ巻線に流す電流を指令するステータ電流指令値と、を算出し、
    前記ロータ電流指令値と前記ステータ電流指令値に基づいて、前記巻線界磁型同期モータ内に生じる磁束を推定し、
    前記トルク指令値と前記回転情報に基づいて、トルクリプルを補償するトルクリプル補償値を演算し、
    前記ロータ電流指令値を維持しつつ、前記トルクリプル補償値と前記磁束とに基づいて、前記ステータ電流指令値を補正する、
    モータ制御装置。
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