JP2022107997A - 鋼矢板の製造方法および鋼矢板 - Google Patents

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一郎 大原
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Abstract

【課題】反りや残留応力を低減可能な鋼矢板の製造方法および鋼矢板を提供する。【解決手段】熱間圧延により、少なくともウェブ部とフランジ部と継手部とを有する鋼矢板の形状に被圧延材を造形した後に、幅方向に切断する鋼矢板の製造方法において、事前に変態開始温度または変態終了温度を予測し、熱間圧延最終パスにおける圧延温度のうち、厚みの異なる隣り合う部位を、事前に予測した変態開始温度または変態終了温度をまたぐ、それぞれ異なる温度域で圧延する方法である。ウェブ部の幅方向両側に、少なくともフランジ部と継手部とを有する鋼矢板であって、一のフランジ部の残留応力と他のフランジ部の残留応力との差、および、ウェブ部の一の側の残留応力と他の側の残留応力との差が40MPa以下のものである。【選択図】図7

Description

本発明は、鋼矢板の製造方法および鋼矢板に関する。より具体的には、本発明は、仕上げ圧延時の温度を特定の条件に管理する鋼矢板の製造方法およびウェブ部を鋸断した際に一の部位と他の部位の形状差が少ない鋼矢板に関する。
熱間圧延によって製造される形鋼は、断面各部の厚み差や冷却条件差による温度差によって、冷却後に反りが発生する。鋼矢板の用途には複数の鋼矢板を継ぎ合わせて、土留め壁として用いるものがある。その際、鋼矢板の反りが大きすぎると継ぎ合わせることができない。また、施工の状況によっては鋼矢板の一部(例えばウェブ部)を鋸断して、溶接し、幅を調整したり、複雑な形状(例えば、異なる形状の鋼矢板を溶接して)の鋼矢板を作ったりすることがある。その際、鋼矢板の残留応力が大きいと、鋸断後に反りが発生して、鋼矢板の矯正工程が必要となる。
特許文献1には、形鋼の拘束冷却方法に関し、熱間圧延中に生じる断面内温度不均一に起因する反りを解消するため、拘束冷却開始時の形鋼温度に基づいて、冷却中の形鋼温度や変態点率等を推測し、これらを基に反りが生じないように拘束冷却条件を選定することが記載されている。
特許文献2には、ハット形鋼矢板の圧延に関し、仕上げ圧延温度の各部位の温度差を一定温度差以内に制御し、もしくは、断面内の温度不均一を特定部位の水冷によって仕上げ圧延温度の各部位の温度差をある一定以内にして、圧延することによって残留応力を低減し、冷却後の反りを低減させる製造方法が記載されている。
特許文献3には、鋼矢板のローラー矯正方法が開示されており、圧延工程を経て冷却された鋼矢板は上下ローラーを用いて、繰り返し曲げ変形を加え、反りを矯正する製造方法が記載されている。
特開平02-15816号公報 特開2019-38035号公報 特開昭55-70418号公報
しかしながら、上記従来の技術には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1や特許文献2に記載されている従来技術は、特定の部位に対する水冷で温度差を小さくすることが記載されており、所定の部位を所定の温度に精度よく冷却する必要があった。一方で、形鋼は複雑な形状を有しているため、精度よく特定部位を冷却することが難しく、製造中の温度バラつきが大きい。結果的に反り量を目標以下に抑えられる温度差を達成できず、反り量が大きくなる問題点があった。
特許文献3に記載の方法では、ある一定の反りに対しては矯正が可能であるが、たとえば、幅方向両端で反り量が異なる反り違いといわれる反りに対しては、幅方向両端それぞれの反り量に対する適正な上下ロールの配置が異なるため、ローラー矯正後も目標の反り量に矯正できないという問題点があった。
本発明は上述した問題を有利に解決すべくなされたもので、各部位の厚みの異なる鋼矢板を圧延する際に、圧延温度にバラつきが多少ある中でも反りおよび残留応力を低減可能な鋼矢板の製造方法および鋼矢板を提供することを目的とする。
上記課題を解決し、上記の目的を実現するため開発した本発明にかかる鋼矢板の製造方法は、熱間圧延により、少なくともウェブ部とフランジ部と継手部とを有する鋼矢板の形状に被圧延材を造形した後に、幅方向に切断する鋼矢板の製造方法において、事前に変態開始温度または変態終了温度を予測し、熱間圧延最終パスにおける圧延温度のうち、厚みの異なる隣り合う部位を、事前に予測した前記変態開始温度または前記変態終了温度をまたぐ、それぞれ異なる温度域で圧延することを特徴とする。
なお、本発明にかかる鋼矢板の製造方法については、
(a)前記熱間圧延において、ウェブ部を挟む、対応する部位の温度を測定すること、
(b)前記鋼矢板がハット形鋼矢板であり、前記厚みの異なる隣り合う部位が、ウェブ部とフランジ部、および、フランジ部と腕部であること、
(c)前記鋼矢板がハット形鋼矢板であり、前記厚みの異なる隣り合う部位が、一の腕部と一のフランジ部、一のフランジ部とウェブ部、ウェブ部と他のフランジ部、および、他のフランジ部と他の腕部であること、
(d)前記熱間圧延において、圧延温度を制御するにあたり、前記鋼矢板の所定の部位を冷却可能な水冷装置によって該部位の圧延温度を所定の温度に制御すること、
などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
上記課題を解決し、上記の目的を実現するため開発した本発明にかかる鋼矢板は、ウェブ部の幅方向両側に、少なくともフランジ部と継手部とを有する鋼矢板であって、一のフランジ部の残留応力と他のフランジ部の残留応力との差、および、ウェブ部の一の側の残留応力と他の側の残留応力との差が40MPa以下であることを特徴とする。
なお、本発明にかかる鋼矢板については、上記鋼矢板がハット形鋼矢板であって、さらに、一の腕部の残留応力と他の腕部の残留応力との差が40MPa以下であることがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
本発明にかかる鋼矢板の製造方法によれば、各部位の異なる厚みに応じて温度差が生じても、圧延温度を制御することによって反りおよび残留応力を低減可能となる。
また、本発明にかかる鋼矢板は、対応する部位間の残留応力差を低減したものであるので、加工後の反りを小さくできる。
本発明が対象とする鋼矢板を例示する断面図であって、(a)は、ハット形鋼矢板を表し、(b)は、U形鋼矢板を表す。 有限要素法を用いて、ハット形鋼矢板の伝熱-熱応力の弱連成解析を行って得られたウェブ部とフランジ部との熱収縮量差と圧延後の反り量の関係を示すグラフである。 ハット形鋼矢板の温度と常温までの熱収縮量の関係を模式的に示すグラフである。 本発明の一実施形態に用いる鋼矢板の製造ラインを示す概略平面図である。 上記実施形態における仕上げ圧延機の孔型形状を示す上下ロールの正面図である。 上記実施形態にかかる冷却装置の配置を示す概略模式図であって、(a)は、圧延方向から見た断面図を示し、(b)は、側面図を示す。 ハット形鋼矢板のウェブ部とフランジ部の温度差と圧延後の反り量の関係に与える最終圧延パスでの目標圧延温度管理の適否の影響を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。また、本実施の形態において、被圧延材はウェブがフランジより上方に位置する姿勢(いわゆる逆U姿勢)で圧延されるものとして説明するが、当然本発明の適用範囲はその他の姿勢(たとえばU姿勢)での圧延にも及ぶ。
本発明が対象とする鋼矢板1は、少なくとも、ウェブ部と、ウェブ部に傾斜して接続するフランジ部と、他の鋼矢板と嵌合して壁体を構成するための継手部と、を有する鋼矢板である。図1に本発明が対象とする鋼矢板を例示する。図1(a)はハット形鋼矢板1Aの断面形状の全体を示す。ハット形鋼矢板1Aは、ウェブ部2と、ウェブ部2に傾斜して接続する一対のフランジ部31、32と、他の鋼矢板と嵌合して壁体を構成するための一対の継手部41、42とを有し、フランジ部31、32と継手部41、42との間にそれぞれ腕部51、52を有す。一の継手部41の開口部は、逆U字形をなすウェブ部2とは反対位置にあり、開口部が逆U字形をなしている。また、他の継手部42の開口部は、ウェブ部2側にあり、開口部がU字形をなしている。
図1(b)は、U形鋼矢板1Bの断面形状の全体を示す。U形鋼矢板1Bは、ウェブ部2と、ウェブ部2に傾斜して接続する一対のフランジ部31、32と、他の鋼矢板と嵌合して壁体を構成するための一対の継手部41、42とを有す。図1(b)の例では、一の継手部41の開口部および他の継手部42の開口部は、いずれもウェブ部2側に向いている。
発明者らは、開発に当たり、有限要素法(以下、FEM)を用いて、ハット形鋼矢板1Aの熱間圧延について、伝熱-熱応力の弱連成解析を実施した。そこでは、製品形状と最終圧延パスでの温度分布を初期条件として、常温までの伝熱計算を行うとともに、熱応力を計算した。ここで、最終圧延パスとは断面減少率が1%以上あるパスをいい、断面減少率とは、圧延前後の断面積の差を圧延前の断面積で除した百分率である。
計算条件は、長さL=10m、有効幅W=900mm、高さH=230mmおよびウェブ部2厚さtw=10.8mmのハット形鋼矢板(壁幅1m当たりの断面二次モーメントが約10,000×10-8/mの製品であり、以下、10Hと称する。)を対象とする。初期の温度分布は、最終圧延パスで各部位を空冷した場合の温度分布とした。鋼材の相変態は700℃から650℃で発生するものと仮定し、熱膨張係数を相変態に合わせて計算条件にくわえた。
表1に、計算した条件として、ウェブ部2初期温度、フランジ部31、32初期温度、腕部51、52初期温度および最終的な反り量(長さL方向中央部と端部の高さH方向位置差)の計算結果を示す。なお、フランジ部31、32初期温度および腕部51、52初期温度は両側で差をつけずほぼ同じ温度に設定した。表1の結果から、初期温度または特定部位間の温度差と反り量に線形的な関係はなく、相変態を定義した温度の前後で傾向が変化している様子が見られる。
Figure 2022107997000002
上述のFEMを用いて、ハット形鋼矢板1Aの伝熱-熱応力の弱連成解析を行って得られたウェブ部2とフランジ部31、32との熱収縮量差と冷却後の反り量の関係を再整理し、図2に示す。ここで、熱収縮量とは、初期温度と常温での対象部位の長さの差を常温での対象部位の長さで除したものである。その結果、ウェブ部2とフランジ部31、32との熱収縮量差と反り量がほぼ線形の関係にあることが明らかになった。すなわち、重要なのは温度ではなく、熱収縮量である。温度差を限りなく小さくすることによって熱収縮量差を小さくすることは可能である。しかし、従来技術で用いる水冷の場合、自然放冷と比較すると目標とする温度に最終圧延温度、特に温度分布を精度よく制御することは難しい。そのため、操業のばらつきが多くなり、最終的に反り量が大きいものが発生することがあった。しかし、ウェブ部2の厚みtw、フランジ部31、32の厚みtfおよび腕部51、52の厚みtaはそれぞれ異なるため、自然放冷では、各部位に温度差がついてしまう。
被圧延材の初期温度と常温までの熱収縮量の関係を模式的に図3に示す。前述の解析上では高温側から冷却する際、変態が開始する700℃までは熱収縮を起こし、変態開始後は変態終了する650℃まで変態による膨張を起こす。その後、再び冷却による熱収縮を生じる。発明者らは温度差が有っても熱収縮量差が小さくなる変態開始前後および変態終了前後の温度に着目した。ハット形鋼矢板1Aのウェブ部2、フランジ部31、32、腕部51、52はそれぞれ厚みが異なり、自然放冷したときの冷却速度は厚みに応じて異なる。たとえば、フランジ部31、32の厚みtfが他の部位より薄い場合、温度低下は一番速い。本実施形態では、たとえば図3のAの領域では厚みの薄いフランジ部3が相変態開始初期、その他の厚い部位を変態開始直前の温度に制御し、もしくは図3のBの領域では厚みの薄いフランジ部3が変態終了直後、厚みが厚いその他の部位を変態終了直前の温度に制御する。そのことにより、各部位に温度差があっても常温までの熱収縮量差は小さくなり、常温になった時の反り量は小さくなる。すなわち、反り量を少なくするためには、各部位間の熱収縮量差を小さくする必要がある。ある程度温度が各部位で異なる条件下で熱収縮量差を小さくするためには、変態開始温度もしくは変態終了温度をまたいだ温度域に制御し、最終圧延パスを行うことが好ましいことを明らかにした。たとえば変態終了温度が650℃であれば、フランジ部31、32を630℃、ウェブ部2を660℃、腕部51、52を655℃のような温度に制御するものである。
この変態開始温度もしくは変態終了温度をまたぐ温度域で圧延する部位の対象は、接続している部位間で満たすことが特に好ましい。図2では隣り合うウェブ部2とフランジ部31、32の温度差を対象に関係を整理したが、互いに接続するフランジ部31、32と腕部51、52との間でも同様の傾向が得られる。
また、FEMによる熱応力解析で、意図的に初期温度分布を一の腕部51と他の腕部52で変化させて解析を行った。一のフランジ部31と腕部51の温度および他のフランジ部32と腕部52の温度、それぞれの温度関係が変態開始温度または変態終了温度をまたがなかった場合、温度差による常温までの熱収縮量差は顕著になり、幅方向両側で反り量が異なる反り違いが発生した。このように、幅方向両側で反り量が異なる場合にローラー矯正を行っても、幅方向両側それぞれで適正な矯正条件が異なるため、一方の反りが矯正されても、他方の反りが矯正できない場合がある。
しかし、一のフランジ部31と腕部51の温度および他のフランジ部32と腕部52の温度、それぞれの温度関係が変態開始温度または変態終了温度をまたいでいた場合、温度差による常温までの熱収縮量差は小さくなる。たとえ、一の腕部51と他の腕部52で温度差があっても反り量の絶対値が小さいため、大きな反り量差にはつながらず、反り違いは小さくなる。したがって、最終的にローラー矯正を行えば、反り量が小さいハット形鋼矢板1Aを製造することができる。
ところで、前述の方法で反り量を制御するためには、事前に相変態挙動(開始温度と終了温度)の情報を把握し、圧延温度を制御する必要がある。相変態挙動を把握する方法はいくつかある。たとえば、(1)圧延材を製造ラインに設置してある温度計位置で停止させ、温度測定をし、変態発熱による冷却速度の低下もしくは昇温をとらえる方法、(2)加工フォーマスタやフォーマスタといった試験によって温度と収縮膨張の関係より変態挙動を予測する方法、(3)合金組成を変数とした回帰式によって予測する方法、(4)合金組成や圧延条件によって機械学習や統計学的手法を用いて予測する手法などのいずれかで相変態挙動を把握することが好ましい。
次に、鋼矢板1の製造ラインの一例を示した平面図を図4に示す。鋼矢板1の製造ラインは、加熱炉100と複数台の熱間圧延機、すなわち、粗圧延機110、中間圧延機120および仕上げ圧延機130を備える。また、鋼矢板1の製造ラインは、熱間圧延機の仕上げ圧延機130の下流側に、熱間鋸断装置140を備える。図4の例では、中間圧延機120は2台の圧延機をタンデムに配置して構成されている。
加熱炉100で素材であるスラブやブルームを所定の温度に加熱し、粗圧延機110、中間圧延機120、仕上げ圧延機130の順に熱間で孔型圧延を行い、たとえば、図1(a)に示すハット形鋼矢板1Aの製品形状に仕上げられる。熱間鋸断装置140は、圧延で延ばされた製品を所定の長さに熱間で切断するものである。
各圧延機には、複数の孔型が刻設されており、たとえば、ハット形鋼矢板1Aの仕上げ圧延機130では、図5に示すように、上圧延ロール1301および下圧延ロール1302に2つの孔型K2、K1が刻設されている。K1孔型が最終圧延を行う孔型であり、爪曲げと成形圧延が同時に行われる。なお、仕上げ圧延は合計3パスのリバース圧延となっており、K2孔型圧延は1パス目の圧延で仕上げ圧延機130の前面(図4の左側)から後面(図4の右側)側に向かって圧延される。K1孔型圧延は2パス目のリバース圧延で行われ、仕上げ圧延機130の後面から前面側に向かって圧延される。仕上げ圧延の3パス目は、仕上げ圧延機130の前面から後面へ向けて被圧延材を通すが、圧下を行わないダミー圧延パスである。すなわち、圧延最終パスとは2パス目のK1孔型圧延を指す。
図6は、圧延機130のK2孔型圧延の後面に設置された後面ガイド1303と、後面ガイド1303内に設置された腕部継手部冷却装置1304およびウェブ部冷却装置1305を示す模式図である。図6(a)は圧延方向から見た断面図であり、図6(b)は側面図である。後面ガイド1303は、ハット形鋼矢板1Aのウェブ部2、フランジ部31、32、および腕部51、52を案内する上ガイド1303aと下ガイド1303bとを有する。上ガイド1303a内には、腕部継手部冷却装置1304およびウェブ部冷却装置1305が、下ガイド1303b内にはウェブ部冷却装置1305が配置されている。腕部継手部冷却装置1304およびウェブ部冷却装置1305からは冷却媒体(たとえば水)が噴射可能となっており、必要に応じてハット形鋼矢板1Aの継手部41、42など各部が冷却される。
仕上げ圧延機130により仕上げ圧延が施されたハット形鋼矢板1Aは、ハット形鋼矢板1Aの搬送方向に沿って配列されたテーブルローラーにより下流側へと送られる。そして、仕上げ圧延機130の下流側に温度計が配置されており、この温度計は、仕上げ圧延後、すなわち、最終孔型K1による圧延が施された後のハット形鋼矢板1Aの温度が測定可能となっている。温度計は幅方向の温度プロフィルを測定した後、各部位の代表温度に演算してもよいし、スポット温度計によって代表的な部位の温度を測定する方法でもよい。たとえば、ウェブ部2、一のフランジ部31、他のブランジ部32、一の継手部41、他の継手部42、一の腕部51、他の腕部52のいずれか一つ以上の部位の温度を測定してもよい。幅方向両側の対応する部位の温度を測定することが好ましい。
圧延の目標温度はあらかじめ、常温までの熱収縮量へ影響を与える変態挙動を予測し、狙いの圧延温度で最終圧延パスをできるように製造することが好ましい。具体的には、たとえば、最終圧延パスより前に鋼材の温度が測定できるように温度計を設置して、狙いの圧延温度より高温の時は、目標の圧延温度になるまで待機させ、自然放冷による冷却を行い、目標の圧延温度になったら仕上げ圧延を行えばよい。また、より生産能率を上げて製造するには、冷却装置を用い、搬送速度や圧延速度、冷却媒体流量を変化させ、最終圧延パスでの目標の圧延温度となるように冷却することも可能である。さらに、ある程度実績に基づき最終圧延パスでの温度が予測できる場合には加熱温度や粗圧延機110や中間圧延機120での圧延温度を管理し、そこからの時間で仕上げ圧延温度を推測し、制御を行ってもよい。
また、ハット形鋼矢板の反り量については、たとえばJIS A5528:2012で反り量の上下限が決められている。図2で示したように、反り量と熱収縮量差の関係はほぼ線形の関係がある。この関係を用いて反り量の上下限から目標の常温までの熱収縮量の必要制御範囲が求められる。さらには常温までの熱収縮量は最終圧延パスでの圧延温度によって決まるため、各部位の温度バラつきが所定の温度範囲内に制御する必要があるかを求めることができる。また、図2で示したものはローラー矯正を行わなかった場合の反り量であるため、実際にはさらに、ローラー矯正によって反り量は小さくなる。したがって、目標反り量、さらには、温度管理範囲もローラー矯正の有無に応じて変化させることが好ましい。
また、温度測定及び最終パス圧延温度の制御は、幅方向両側で行うことが好ましい。仮に片側だけ温度管理範囲外にあった場合は、操業条件を変更させる必要がある。たとえば、温度管理範囲外となった部位のみ冷却装置によって冷却媒体を噴射したり、自然放冷を行ったりして、温度管理範囲内になるように待機するなどすることが好ましい。また、低温側に管理温度範囲外となった場合は次材以降、仕上げ圧延機130よりも前の圧延機である粗圧延110や中間圧延機120の圧延速度を速めたり、加熱炉100の温度を上げたりして、仕上げ圧延温度が温度管理範囲内となるように操業条件を調整することが好ましい。
一の腕部の残留応力と他の腕部の残留応力との差、一のフランジ部の残留応力と他のフランジ部の残留応力との差、および、ウェブ部の一の側の残留応力と他の側の残留応力との差のいずれもが40MPa以下であることが好ましい。いずれかの対応する部位の残留応力の差が40MPaを超えている場合には、例えば、ウェブ部を鋸断した場合、一の側と他の側で反りまたは、曲がり量の差が大きく、その後の施工に障害が出て、鋼矢板の矯正を追加で行わなければならない。
また残留応力を保証する場合は、残留応力をX線によって測定してもよいし、ひずみゲージを付けた状態で切断し、歪の値から算出し測定してもよい。
以上、ハット形鋼矢板を例に、本実施形態を説明してきた。しかし、これに限られず、U形鋼矢板やZ形鋼矢板など、少なくともウェブ部と、ウェブ部に接続するフランジ部と、他の鋼矢板と嵌合して壁体を構成するための継手部と、を有する鋼矢板であれば、適用可能である。各部位の厚みが異なる鋼矢板を熱間圧延後冷却するにあたり、反り量を低減し、特に、反り違いを小さく管理することが可能となる。また、一のフランジ部の残留応力と他のフランジ部の残留応力との差、および、ウェブ部の一の側の残留応力と他の側の残留応力との差のいずれもが40MPa以下であることが好ましい。
[実施例1]
図4に示した鋼矢板の圧延製造ラインにて、ウェブ厚twが10.8mm、有効幅Wが900mmであるハット形鋼矢板10Hを製造した。
事前に製造されたハット形鋼矢板10Hより、φ3mm×L10mmの試験片を採取し、フォーマスタ試験による変態挙動調査を実施した。フォーマスタ試験の条件は、1200℃に加熱したサンプルを300秒保持して、空冷相当条件を模擬するため、1℃/秒の一定速度で冷却した。温度と膨張率の関係を整理した結果、相変態は700℃(変態開始温度)から開始し、650℃(変態終了温度)で変態終了していることが分かった。反り量の目標は、矯正前で10m長さあたり±30mm以内と定めた。発明例では、FEM解析結果により、最終圧延パスでの目標とする圧延温度管理範囲として、ウェブ部2および腕部51、52を655~675℃に制御し、フランジ部31、32を570~625℃となるように制御した。このようにして、隣り合う部位の温度が変態終了温度である650℃をまたぐように設定した。また、比較例として、隣り合う部位の温度が変態開始温度および変態終了温度のいずれもまたがないようにした。たとえば、ウェブ部2および腕部51、52を625~645℃、フランジ部31、32を540~595℃となるように最終圧延パスの温度を定めた。なお、目標の温度範囲に収まらなかった材料については、水冷装置にて温度調整を行い、所定の温度で圧延できるようにした。発明例、比較例それぞれ30本のハット形鋼矢板10Hを製造した。このように製造したハット形鋼矢板10Hについて、冷却床にて常温まで自然冷却を行ったあと、製品は10m長さに冷間鋸断を行い、この切断面端部の変形量を調査した。ここで、反り量は、長さ方向中央部と長さ方両端部との、高さH方向の位置差とし、いわゆる上反りを正値とし、下反りを負値とした。この結果を図7にまとめて示す。
図7は横軸に仕上げ圧延最終パスのウェブ部温度-フランジ部温度をとり、縦軸に反り量をとっている。ウェブ部温度およびフランジ部温度がいずれも変態終了温度より低い温度で最終圧延パスを行った比較例(〇印プロット)と比較して、変態終了温度をまたぐ形でウェブ部温度とフランジ部温度を管理して圧延した発明例(◇印プロット)は、同じ温度差において、反り量が小さく、目標である±30mm以内を達成した。
[実施例2]
図4に示した鋼矢板の圧延製造ラインにて、ウェブ厚twが10.8mm、有効幅Wが900mmであるハット形鋼矢板10Hを製造した。
事前に製造されたハット形鋼矢板10Hより、φ3mm×L10mmの試験片を採取し、フォーマスタ試験による変態挙動調査を実施した。フォーマスタ試験の条件は、1200℃に加熱したサンプルを300秒保持して、空冷相当条件を模擬するため、1℃/秒の一定速度で冷却した。温度と膨張率の関係を整理した結果、相変態は700℃(変態開始温度)から開始し、650℃(変態終了温度)で変態終了していることが分かった。反り量の目標は、矯正前に幅方向両側で反り量の差が10m長さあたり±20mm以内と定めた。発明例では、FEM結果により、最終圧延パスでの目標圧延温度管理範囲をウェブ部2および腕部51、52を655~675℃、フランジ部31、32を570~625℃となるように隣り合う部位の温度が変態終了温度である650℃をまたぐようになるように設定した。また比較例として、隣り合う部位の温度が変態開始温度および変態終了温度のいずれもまたがないようにウェブ部2および腕部51、52を625~645℃、フランジ部31、32を540~595℃となるように最終圧延パスの温度を定めた。なお、目標の温度範囲に収まらなかった材料については水冷装置にて温度調整を行い、所定の温度で圧延できるようにした。発明例、比較例それぞれ30本のハット形鋼矢板10Hを製造し、このように製造したハット形鋼矢板1について、冷却床にて常温まで自然冷却を行ったあと、製品の10m長さに冷間鋸断を行い、この切断面端部の変形量を調査した。
ウェブ部2温度およびフランジ部31、32温度がいずれも変態終了温度より低い温度で最終圧延パスを行った比較例では幅方向両側で反り量の差が平均で21mmとなった。そして、残留応力をX線によって測定し、一の腕部の残留応力と他の腕部の残留応力との差、一のフランジ部の残留応力と他のフランジ部の残留応力との差、ウェブ部の一の側の残留応力と他の側の残留応力との差を比較した結果いずれか一つ以上の残留応力差が40MPa超えだった。変態終了温度をまたぐ形でウェブ部2温度およびフランジ部31、32温度を管理して圧延した発明例では幅方向両側で反り量の差が平均で9mmとなり、上記基準を満足した。そして、残留応力をX線によって測定し、一の腕部の残留応力と他の腕部の残留応力との差、一のフランジ部の残留応力と他のフランジ部の残留応力との差、ウェブ部の一の側の残留応力と他の側の残留応力との差を比較した結果いずれも残留応力差は40MPa以下だった。
10m長さに製造した残留応力差が40MPa超えの部位を有する比較例の鋼矢板と残留応力差がすべて40MPa以下の発明例の鋼矢板をそれぞれ半分の長手位置で鋸断し、5m長さにした。
結果、残留応力差が40MPa超えの部位を持つ比較例の鋼矢板は鋸断により、残留応力が開放しJIS:A5528の規定値を超える幅曲がり、もしくは、反りが30本中22本発生し、一方で、発明例で製造した鋼矢板においては鋸断後もJIS:A5528の規定値を超える変形が起こらず、その後の施工の阻害にならなかった。
すなわち、ハット形鋼矢板の製造において、本発明を適用することにより、一の腕部の残留応力と他の腕部の残留応力の差、一のフランジ部の残留応力と他のフランジ部の残留応力の差、ウェブ部の一の側の残留応力と他の側の残留応力の差を測定した結果いずれの残留応力差も40MPa以下に抑えることができ、製造された鋼矢板は鋸断後も変形を小さく抑えられ、能率を下げることなく施工することが可能となった。
本発明にかかるハット形鋼矢板の製造方法は、いわゆる、反り違いが問題となる形鋼に適用して、製品の品質の向上に寄与し、産業上有益な効果がもたらされる。
1 鋼矢板
1A ハット形鋼矢板
1B U形鋼矢板
2 ウェブ部
31、32 フランジ部
41、42 継手部
51、52 腕部
100 加熱炉
110 粗圧延機
120 中間圧延機
130 仕上げ圧延機
140 熱間鋸断機
1301 仕上げ圧延機上ロール
1302 仕上げ圧延機下ロール
1303 後面ガイド
1303a 上ガイド
1303b 下ガイド
1304 腕部継手部冷却装置
1305 ウェブ部冷却装置

Claims (7)

  1. 熱間圧延により、少なくともウェブ部とフランジ部と継手部とを有する鋼矢板の形状に被圧延材を造形した後に、幅方向に切断する鋼矢板の製造方法において、事前に変態開始温度または変態終了温度を予測し、熱間圧延最終パスにおける圧延温度のうち、厚みの異なる隣り合う部位を、事前に予測した前記変態開始温度または前記変態終了温度をまたぐ、それぞれ異なる温度域で圧延することを特徴とする鋼矢板の製造方法。
  2. 前記熱間圧延において、ウェブ部を挟む、対応する部位の温度を測定することを特徴とする請求項1に記載の鋼矢板の製造方法。
  3. 前記鋼矢板がハット形鋼矢板であり、
    前記厚みの異なる隣り合う部位が、ウェブ部とフランジ部、および、フランジ部と腕部であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼矢板の製造方法。
  4. 前記鋼矢板がハット形鋼矢板であり、
    前記厚みの異なる隣り合う部位が、一の腕部と一のフランジ部、一のフランジ部とウェブ部、ウェブ部と他のフランジ部、および、他のフランジ部と他の腕部であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼矢板の製造方法。
  5. 前記熱間圧延において、圧延温度を制御するにあたり、前記鋼矢板の所定の部位を冷却可能な水冷装置によって該部位の圧延温度を所定の温度に制御することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の鋼矢板の製造方法。
  6. ウェブ部の幅方向両側に、少なくともフランジ部と継手部とを有する鋼矢板であって、
    一のフランジ部の残留応力と他のフランジ部の残留応力との差、および、ウェブ部の一の側の残留応力と他の側の残留応力との差が40MPa以下であることを特徴とする鋼矢板。
  7. 前記鋼矢板がハット形鋼矢板であって、
    さらに、一の腕部の残留応力と他の腕部の残留応力との差が40MPa以下であることを特徴とする請求項6に記載の鋼矢板。
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