JP2022099368A - パルスアーク溶接電源 - Google Patents

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Abstract

【課題】異常電圧を除去した溶接電圧に基づいて出力制御するパルスアーク溶接において、アークスタートからの過渡期間中に溶接状態が不安定になることを抑制する方法を提供する。【解決手段】溶接ワイヤ1を送給し、ピーク電流及びベース電流から形成される溶接電流Iwを通電し、溶接電圧Vwを検出し、溶接電圧の検出値Vdを基準電圧波形を中心電圧値とする許容範囲内に制限して電圧制限値Vftを算出する異常電圧除去制御を行い、電圧制限値Vftに基づいて溶接電圧Vwを出力制御するパルスアーク溶接電源において、許容範囲ΔVcを、アークスタート後の初期期間中は定常期間中よりも小さな値に設定する。また、初期期間中に短絡が発生したときは、初期期間中の許容範囲ΔVcを定常期間中よりも小さな値に設定する。【選択図】図5

Description

本発明は、溶接電圧から異常電圧を除去して出力制御するパルスアーク溶接電源に関するものである。
ピーク電流及びベース電流から形成される溶接電流を通電して溶接するパルスアーク溶接電源が広く使用されている。パルスアーク溶接を含む消耗電極式アーク溶接では、溶接ワイヤの先端と母材との最短距離である見かけのアーク長(以下、単にアーク長という)を適正値に維持することが、良好な溶接品質を得るためには重要である。このために、溶接電源はアーク期間中は定電圧制御される。これは、アーク長と溶接電圧とが比例関係にあることを利用して、アーク長を溶接電圧で検出し、この溶接電圧検出値が適正アーク長に相当する電圧設定値と等しくなるように出力制御することでアーク長を適正値に維持するためである。したがって、このアーク長制御の安定化のためには、アーク長を溶接電圧によって高精度に検出する必要がある。
消耗電極式アーク溶接は電極プラス極性EPで行うのが通常であるので、溶接ワイヤ先端部に陽極点が形成され、母材表面に陰極点が形成されて、陽極点と陰極点との間にアークが発生する。陽極点はワイヤ先端部付近に形成された状態でほとんど移動しない。これに対して、陰極点は、母材表面の酸化皮膜のある部分を目指してふらふらと移動する。さらに、陰極点は、母材表面の汚れ、溶融池の運動状態、溶融池からのガス放出等によってもふらつく。短時間に陰極点の形成位置が変化しても見かけのアーク長は変化しない。これは、見かけのアーク長はワイヤ送給速度とワイヤ溶融速度との差によって変化するために、十数ms以下の短時間では微小にしか変化できない。しかし、上述した種々の原因によって陰極点がふらつくと溶接電圧に異常電圧が重畳する。この異常電圧は見かけのアーク長とは何ら比例しない電圧である。このために、この異常電圧が重畳した溶接電圧に基づいて出力制御を行うと、アーク長制御系が不安定になり、溶接品質が悪くなる。溶接電圧検出値から異常電圧を除去して見かけのアーク長と比例関係にある溶接電圧検出値を生成する方法が特許文献1に開示されている。
特許第4263886号公報
溶接電圧には、送給速度の変動、トーチ高さの変動、溶融池状態の変動等に起因するアーク長の変動に伴う電圧変動と、短絡期間、陰極点の移動等に起因する異常電圧とが重畳している。このアーク長の変動に伴う電圧変動は、アーク長制御を行うために正確に検出する必要がある。他方、アーク長の変動とは関係しない異常電圧については、できる限り除去することが、精密なアーク長制御を行うためには望ましい。このために、従来技術では、溶接電圧に重畳する異常電圧を除去する制御が行われている。
アークスタートから定常期間に移行するまでの過渡期間中は、アーク発生状態も過渡状態にあるために、短絡の発生、陰極点のふらつき等に起因する異常電圧が溶接電圧に大きく重畳する。特に、短絡が多数回発生したり、長い時間の短絡が発生したりすると、溶接電圧に大きい異常電圧が重畳することになる。このために、過渡期間中に異常電圧除去制御を行っても、溶接電圧に重畳する異常電圧を十分に除去することができず、アーク長制御が不安定になり、溶接品質が悪くなるという問題がある。
そこで、本発明では、異常電圧を除去した溶接電圧に基づいて出力制御するパルスアーク溶接において、アークスタートからの過渡期間中に溶接状態が不安定になることを抑制することができるパルスアーク溶接電源を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
溶接ワイヤを送給し、ピーク電流及びベース電流から形成される溶接電流を通電し、溶接電圧を検出し、前記溶接電圧の検出値を基準電圧波形を中心電圧値とする許容範囲内に制限して電圧制限値を算出する異常電圧除去制御を行い、前記電圧制限値に基づいて前記溶接電圧を出力制御するパルスアーク溶接電源において、
前記許容範囲を、アークスタート後の初期期間中は定常期間中よりも小さな値に設定する、
ことを特徴とするパルスアーク溶接電源である。
請求項2の発明は、
前記初期期間中に短絡が発生したときは、前記初期期間中の前記許容範囲を前記定常期間中よりも小さな値に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接電源である。
請求項3の発明は、
前記初期期間中に基準時間以上の短絡が発生したときは、前記初期期間中の前記許容範囲を前記定常期間中よりも小さな値に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接電源である。
本発明によれば、異常電圧を除去した溶接電圧に基づいて出力制御するパルスアーク溶接において、アークスタートからの過渡期間中に溶接状態が不安定になることを抑制することができる。
実施の形態に係るパルスアーク溶接方法を示す波形図である。 実施の形態に係る、異常電圧を除去するために使用する基準電圧波形Vcの設定方法を示す図である。 実施の形態に係る、短絡解除直後のアーク再点弧に伴う異常電圧発生時の電圧波形図である。 図2で上述した基準電圧波形Vcを自動設定する方法を説明するための電圧制限値Vftの時間変化を示す図である。 実施の形態に係るパルスアーク溶接電源のブロック図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態に係るパルスアーク溶接方法を示す波形図である。同図(A)は溶接電流Iwを示し、同図(B)は溶接電圧Vwを示す。以下、同図を参照して説明する。
同図(A)に示すように、時刻t1~t2のピーク立上り期間Tup中は、ベース電流Ibからピーク電流Ipへと上昇する遷移電流が通電し、続いて時刻t2~t3のピーク期間Tp中は、上記のピーク電流Ipが通電し、続いて時刻t3~t4のピーク立下り期間Tdw中は、上記のピーク電流Ipから上記のベース電流Ibへと下降する遷移電流が通電し、続いて時刻t4~t5のベース期間Tb中は、上記のベース電流Ibが通電する。また、上記の溶接電流Iwの通電に対応して、同図(B)に示すように、上記のピーク立上り期間Tup中は、ベース電圧Vbからピーク電圧Vpへと上昇する遷移電圧が印加し、続いて上記のピーク期間Tp中は、上記のピーク電圧Vpが印加し、続いて上記のピーク立下り期間Tdw中は、上記のピーク電圧Vpから上記のベース電圧Vbへと下降する遷移電圧が印加し、続いて上記のベース期間Tb中は、上記のベース電圧Vbが印加する。時刻t1~t5の期間を1パルス周期Tfとして繰り返して溶接が行われる。上記のパラメータの数値例を記載する。Ip=500A、Ib=50A、Tp=1.2ms、tup=0.5ms、Tdw=0.5ms、Tf=3~10ms
良好な溶接品質を得るためにアーク長を適正値に維持するアーク長制御が行われる。通常、このアーク長制御は、溶接電圧Vwがアーク長と略比例関係にあることを利用して、溶接電圧Vwの平均値が予め定めた電圧設定値と等しくなるようにパルス周期が制御される。このアーク長制御の方式は、周波数変調方式と呼ばれる。この場合、ピーク期間Tp、ピーク電流Ip及びベース電流Ibは所定値に設定され、パルスパラメータとなる。ピーク電流Ipは臨界値以上に設定され、ピーク期間Tpと組み合わせてユニットパルス条件と呼ばれる。このユニットパルス条件は、1パルス周期1溶滴移行になるように設定される。ベース電流Ibは、臨界値未満の数十A程度の小電流値に設定される。ユニットパルス条件及びベース電流Ibは、溶接ワイヤの材質、直径、送給速度等に応じて適正値に設定される。アーク長制御の方式には、上記の周波数変調方式以外にパルス幅変調方式がある。このパルス幅変調方式では、パルス周期Tf、ピーク電流Ip及びベース電流Ibが所定値に設定され、溶接電圧Vwの平均値が予め定めた電圧設定値と等しくなるようにピーク期間Tpが制御される。
パルスアーク溶接においては、アークの陰極点は母材表面の酸化皮膜が存在する位置に形成される性質を有している。アークによって酸化皮膜は除去(クリーニング)されていくので、陰極点は酸化皮膜が残っている個所を求めて周辺部へと移動して形成されるようになる。この結果、アークは常に移動している不安定な状態になるために、短絡が発生しやすくなる。溶接ワイヤと母材とが短絡しその短絡が解除されてアークが再点弧したとき、母材表面の酸化皮膜の不均一に起因するアーク陰極点のふらつき現象が発生したとき等において、異常電圧が溶接電圧Vwに重畳することになる。この異常電圧はアーク長とは比例しない電圧であるので、アーク長を正確に検出するためには溶接電圧Vwに重畳した異常電圧を除去する必要がある。この除去のための方法としては、パルス波形の基準電圧波形Vc及び許容範囲ΔVcを設定し、溶接電圧VwがVc±ΔVcの範囲外になる部分は異常電圧であるとしてカットするようにしている。以下、この異常電圧除去制御について説明する。
図2は、上記の基準電圧波形Vcの設定方法を示す図である。まず、図4で後述するように、基準ピーク電圧値Vpc、基準ベース電圧値Vbc及び許容範囲ΔVcを設定する。そして、同図に示すように、ピーク立上り期間Tupの開始時点を0秒とする経過時間tによって、下式のように基準電圧波形Vcが定義される。
0≦t<Tup
Vc=((Vpc-Vbc)/Tup)・t+Vbc (11)式
Tup≦t<Tup+Tp
Vc=Vpc (12)式
Tup+Tp≦t<Tup+Tp+Tdw
Vc=((Vbc-Vpc)/Tdw)・(t-Tup-Tp)+Vpc (13)式
Tup+Tp+Tdw≦t<Tup+Tp+Tdw+Tb
Vc=Vbc (14)式
例えば、同図に示すように、経過時間t=taにおける溶接電圧検出値がVd1であったとする。経過時間taはTup+Tp≦ta<Tup+Tp+Tdwのときであるので、上記(13)式に代入して、基準電圧波形の中心電圧値Vc1は下式となる。
Vc1=((Vbc-Vpc)/Tdw)・(ta-Tup-Tp)+Vpc
したがって、経過時間taのときの溶接電圧検出値Vd1は、許容範囲Vc1±ΔVc内に制限される。すなわち、Vd1≧Vc1+ΔVcのときには電圧制限値Vft1=Vc1+ΔVcに制限され、Vd1≦Vc1-ΔVcのときにはVft1=Vc1-ΔVcに制限される。このようにして算出された電圧制限値Vftは、異常電圧が略除去されたアーク長に略比例する電圧値となる。
図3は、短絡解除直後のアーク再点弧に伴う異常電圧発生時の電圧波形図である。同図(A)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(B)は基準電圧波形によって異常電圧を除去した後の電圧制限値Vftの時間変化を示す。同図(B)に示すように、溶接電圧Vwは、基準電圧波形を中心電圧値Vcとする許容範囲Vc±ΔVc内に制限される。この結果、時刻t1~t2の短絡期間中の電圧制限値Vft=Vc-ΔVcとなり、時刻t2~t3の陰極点形成に伴う高電圧発生期間中の電圧制限値Vft=Vc+ΔVcとなる。このようにして、短絡期間中の電圧、陰極点形成に伴う高電圧等のアーク長とは関係しない異常電圧を略除去することができる。
図4は、図2で上述した基準電圧波形Vcを自動設定する方法を説明するための電圧制限値Vftの時間変化を示す図である。同図において、現時点は時刻tnであり、第n回目のパルス周期Tf(n)の開始時点である。また、第n-1回目のパルス周期Tf(n-1)におけるピーク期間のみの電圧制限値の平均値がピーク電圧制限値Vpf(n-1)であり、ベース期間のみの電圧制限値の平均値がベース電圧制限値Vbf(n-1)である。同様に、第n-m回目のパルス周期Tf(n-m)におけるピーク期間のみの電圧制限値の平均値がピーク電圧制限値Vpf(n-m)であり、ベース期間のみの電圧制限値の平均値がベース電圧制限値Vbf(n-m)である。ここで、mは2以上の整数であり、nはm+1以上の整数である。
時刻tnにおいて、上記の第(n-1)~第(n-m)回目のピーク電圧制限値Vpfを入力として、下式のようにピーク電圧移動平均値Vpr(n)を算出する。
Vpr(n)=(Vpf(n-1)+…+Vpf(n-m))/m (21)式
同様に、時刻tnにおいて、上記の第(n-1)~第(n-m)回目のベース電圧制限値Vbfを入力として、下式のようにベース電圧移動平均値Vbr(n)を算出する。
Vbr(n)=(Vbf(n-1)+…+Vbf(n-m))/m (22)式
そして、上述した(11)~(14)式において、基準ピーク電圧値Vpcに上記のピーク電圧移動平均値Vprを代入し、かつ、基準ベース電圧値Vbcに上記のベース電圧移動平均値Vbrを代入すると、下式のように第n回目のパルス周期Tf(n)期間中の基準電圧波形が自動設定される。
0≦t<Tup
Vc(n)=((Vpr(n)-Vbr(n))/Tup)・t+Vbr(n) (31)式
Tup≦t<Tup+Tp
Vc(n)=Vpr(n) (32)式
Tup+Tp≦t<Tup+Tp+Tdw
Vc(n)=((Vbr(n)-Vpr(n))/Tdw)・(t-Tup-Tp)+Vpr(n) (33)式
Tup+Tp+Tdw≦t<Tup+Tp+Tdw+Tb
Vc(n)=Vbr(n) (34)式
上述したように、パルス周期の開始時点ごとに、上記のピーク電圧移動平均値Vpr及びベース電圧移動平均値Vbrを算出し、上記(31)式~(34)式によって基準電圧波形が自動設定される。上記において、ピーク電圧移動平均値Vprを算出するときに、ピーク電圧制限値Vpfを重み付け移動平均して算出しても良い。同様に、ベース電圧移動平均値Vbrを算出するときに、ベース電圧制限値Vbfを重み付け移動平均して算出しても良い。また、移動平均する期間の長さ(所定期間)は、過去数周期~数十周期程度に設定する。この所定期間は、溶接ワイヤの材質、直径、送給速度、溶接速度、溶接継手等の溶接条件に応じて実験によって適正値に設定される。
アークスタートからm回のパルス周期Tfが経過するまでは、上記のピーク電圧移動平均値Vpr及び上記のベース電圧移動平均値Vbrを(21)式及び(22)式に基づいて算出することができない。そこで、この期間中は、ピーク電圧初期値及びベース電圧初期値を予め設定しておき、ピーク電圧移動平均値Vpr及びベース電圧移動平均値Vbrとして使用するようにする。また、アークスタートからm回のパルス周期Tfが経過するまでは、前回の溶接中に算出された上記のピーク電圧移動平均値Vpr及び上記のベース電圧移動平均値Vbrを使用して基準電圧波形Vcを形成しても良い。
上述したように、溶接電圧Vwには、送給速度の変動、トーチ高さの変動、溶融池状態の変動等に起因するアーク長の変動に伴う電圧変動と、短絡期間、陰極点の移動等に起因する異常電圧とが重畳している。このアーク長の変動に伴う電圧変動は、アーク長制御を行うために正確に検出する必要がある。他方、アーク長の変動とは関係しない異常電圧については、できる限り除去することが、精密なアーク長制御を行うためには望ましい。
図5は、実施の形態に係る図1~4で上述した異常電圧除去制御を搭載したパルスアーク溶接電源のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
電源主回路PMは、3相200V等の商用電源(図示は省略)を入力として、後述する起動指令信号OnがHighレベル(溶接開始)に変化すると、後述する電流誤差増幅信号Eiに従ってインバータ制御等の出力制御を行い、溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する。この電源主回路PMは、図示は省略するが、商用電源を整流する1次整流回路と、整流された直流を平滑するコンデンサと、平滑された直流を高周波交流に変換するインバータ回路と、高周波交流をアーク溶接に適した電圧値に降圧するインバータトランスと、降圧された高周波交流を整流する2次整流回路と、整流された直流を平滑するリアクトルと、後述する電流誤差増幅信号Eiに従ってPWM変調制御を行ないその結果に基づいてインバータ回路を駆動する駆動回路と、を備えている。
溶接ワイヤ1は、送給モータWMに結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を通って送給され、母材2との間にアーク3が発生する。溶接トーチ4内の給電チップ(図示は省略)と母材2との間には溶接電圧Vwが印加され、溶接電流Iwが通電する。溶接トーチ4の先端からはシールドガスが噴出され、アーク3を大気から遮蔽する。
起動指令回路ONは、溶接を開始するときにHighレベルとなり、溶接を終了するときはLowレベルになる起動指令信号Onを出力する。この起動指令回路ONは、溶接トーチ4に設けられている起動指令スイッチ、ロボット溶接においてはロボット制御装置に内蔵されている回路等が相当する。、
電圧検出回路VDは、上記の溶接電圧Vwを検出して、電圧検出信号Vdを出力する。
電流検出回路IDは、上記の溶接電流Iwを検出して、電流検出信号Idを出力する。
通電判別回路CDは、上記の電流検出信号Idを入力として、この値が通電判別値(10A程度)以上のときは、溶接電流Iwが通電していると判別してHighレベルとなる通電判別信号Cdを出力する。
短絡判別回路SDは、上記の電圧検出信号Vdを入力として、この値が短絡判別値(10V程度)未満のときは短絡期間にあると判別してHighレベルとなり、以上のときはアーク期間にあると判別してLowレベルになる短絡判別信号Sdを出力する。
初期期間回路TIは、上記の通電判別信号Cdを入力として、通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化した時点から予め定めた初期期間中はHighレベルとなる初期期間信号Tiを出力する。アークスタートして溶接電流Iwが通電すると、通電判別信号CdがHighレベルに変化する。初期期間は、アークスタートから定常期間に移行するまでの過渡期間に相当する期間として設定される。例えば、初期期間は0.1~0.7秒程度に設定される。パルス周期は、7ms程度であるので、初期期間中には15~100程度の周期が含まれることになる。
許容範囲制御回路DCは、上記の初期期間信号Ti及び上記の短絡判別信号Sdを入力として、以下に示す1)~3)のいずれか一つを選択して処理を行い、許容範囲制御信号Dcを出力する。
1)初期期間信号TiがHighレベルとなる初期期間中はHighレベルとなる許容範囲制御信号Dcを出力する。
2)初期期間信号TiがHighレベルとなる初期期間中であり、かつ、短絡判別信号SdがHighレベル(短絡)に変化したときはHighレベルとなり、初期期間が終了するとLowレベルになる許容範囲制御信号Dcを出力する。
3)初期期間信号TiがHighレベルとなる初期期間中であり、かつ、短絡判別信号Sdが予め定めた基準時間(5ms程度)以上Highレベル(短絡)になったときはHighレベルとなり、初期期間が終了するとLowレベルになる許容範囲制御信号Dcを出力する。
許容範囲設定回路ΔVCは、上記の許容範囲制御信号Dcを入力として、許容範囲制御信号DcがLowレベルのときは予め定めた通常許容範囲となり、許容範囲制御信号DcがHighレベルのときは上記の通常許容範囲よりも小さな値に予め定めた初期許容範囲となる許容範囲設定信号ΔVcを出力する。例えば、通常許容範囲は±4V程度であり、初期許容範囲は±1V程度である。
電圧制限値算出回路FTは、上記の電圧検出信号Vdを後述する基準電圧波形信号Vc及び上記の許容範囲設定信号ΔVcによって定まる制限範囲Vc±ΔVc内に制限して、電圧制限値信号Vftを出力する。
電圧移動平均値算出回路VRAは、上記の電圧制限値信号Vftを入力として、図4で上述したように、ピーク電圧移動平均値信号Vpr及びベース電圧移動平均値信号Vbrを算出する。これらの算出方法は、上述した(21)式及び(22)式に基づいて行われる。
アークスタートからm回(mは2以上の整数)のパルス周期Tfが経過するまでは、上記のピーク電圧移動平均値Vpr及び上記のベース電圧移動平均値Vbrを算出することができない。そこで、この期間中は、ピーク電圧初期値及びベース電圧初期値を予め設定しておき、ピーク電圧移動平均値Vpr及びベース電圧移動平均値Vbrの値として使用する。また、アークスタートからm回のパルス周期Tfが経過するまでは、前回の溶接中に算出された上記のピーク電圧移動平均値Vpr及び上記のベース電圧移動平均値Vbrを使用するようにしても良い。
基準電圧波形設定回路VCは、上記のピーク電圧移動平均値信号Vpr及び上記のベース電圧移動平均値信号Vbrを入力として、図2で上述したような基準電圧波形信号Vcを出力する。この基準電圧波形信号Vcの設定は、上述した(31)式~(34)式によって行われる。
電圧積分回路SVは、各パルス周期の開始時点から上記の電圧制限値信号Vftを積分(1/t)∫Vft・dtして、電圧積分値信号Svを出力する。ここで、tは各パルス周期の開始時点からの経過時間(秒)である。したがって、この電圧積分値信号Svの値は、電圧制限値信号Vftの平均値を刻々と算出していることになる。
電圧設定回路VRは、予め定めた電圧設定信号Vrを出力する。比較回路CMは、上記の電圧積分値信号Svと上記の電圧設定信号Vrとを比較して、同じ値になった時点でパルス周期を終了するために短時間Highレベルとなるパルス周期信号Tfを出力する。Sv=Vrとなることは、各パルス周期における電圧制限値信号Vftの平均値が電圧設定信号Vrの値と等しくなったことを意味している。このようにして、上述したアーク長制御が行われる。したがって、パルス周期信号Tfが短時間Highレベルに変化する間隔が各パルス周期の長さとなる。
経過時間測定回路STは、上記のパルス周期信号TfがHighレベルに変化した時点(各パルス周期の開始時点)からの経過時間を測定して、経過時間信号Stを出力する。
ピーク電流設定回路IPRは、予め定めたピーク電流設定信号Iprを出力する。ベース電流設定回路IBRは、予め定めたベース電流設定信号Ibrを出力する。
電流制御設定回路IRCは、上記の経過時間信号St、上記のピーク電流設定信号Ipr及び上記のベース電流設定信号Ibrを入力として、経過時間信号Stが0にリセットされるごとに、予め定めたピーク立上り期間Tup中はベース電流設定信号Ibrの値からピーク電流設定信号Iprの値へと上昇する電流制御設定信号Ircを出力し、その後の予め定めたピーク期間Tp中はピーク電流設定信号Iprの値を電流制御設定信号Ircとして出力し、その後の予め定めたピーク立下り期間Tdw中はピーク電流設定信号Iprの値からベース電流設定信号Ibrの値へと下降する電流制御設定信号Ircを出力し、その後のベース期間Tb中はベース電流設定信号Ibrの値を電流制御設定信号Ircとして出力する。
電流誤差増幅回路EIは、上記の電流制御設定信号Ircと上記の電流検出信号Idとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。
送給制御回路FCは、予め定めた送給速度設定値で溶接ワイヤ1を送給するための送給制御信号Fcを上記の送給モータWMに出力する。
上述した実施の形態の、作用効果について説明する。
1)起動指令信号OnがHighレベルになると、溶接電源は出力を開始すると共に、溶接ワイヤ1の送給を開始する。
2)溶接ワイヤ1が送給されて母材2と接触すると、アークスタートして溶接電流Iwの通電が開始する。
3)電圧制限値算出回路FTは、電圧検出信号Vdを基準電圧波形信号Vc及び許容範囲設定信号ΔVcによって定まる制限範囲Vc±ΔVc内に制限して、電圧制限値信号Vftを出力する。上記の許容範囲設定信号ΔVcの値は、アークスタート後の初期期間中、初期期間中に短絡が発生したとき又は初期期間中に基準時間以上の短絡が発生したときは、予め定めた初期許容範囲となる。その後の定常期間中は通常許容範囲となる。
4)電圧制限値信号Vftの平均値と予め定めた電圧設定信号Vrとが等しくなるように周波数変調制御されて溶接電源の出力が制御される。
上述した実施の形態によれば、許容範囲を、アークスタート後の初期期間中は定常期間中よりも小さな値に設定する。アークスタートから定常期間に移行するまでの過渡期間中は、アーク発生状態も過渡状態にあるために、短絡の発生、陰極点のふらつき等に起因する異常電圧が溶接電圧に大きく重畳する。特に、短絡が多数回発生したり、長い時間の短絡が発生したりすると、溶接電圧に大きい異常電圧が重畳することになる。本実施の形態では、過渡期間に相当する初期期間中は、許容範囲を小さくして異常電圧除去制御を行うことによって、溶接電圧に重畳する異常電圧を十分に除去するようにしている。このときに、アーク長の変動に伴う溶接電圧の変動も少し除去することになるので、アーク長制御の過渡応答性が少し遅くなる。しかし、異常電圧を十分に除去する効果の方が大きい。したがって、定常期間中はアーク長の変動に伴う溶接電圧を除去しないようにするために許容範囲を通常値にしている。この結果、本実施の形態では、異常電圧を除去した溶接電圧に基づいて出力制御するパルスアーク溶接において、アークスタートからの過渡期間中に溶接状態が不安定になることを抑制することができる。
さらに、本実施の形態によれば、初期期間中に短絡が発生したときは、初期期間中の許容範囲を定常期間中よりも小さな値に設定することが好ましい。初期期間中に異常電圧が発生する要因は、アーク発生状態が過渡状態にあるために、短絡が多数回発生することが多いためである。そこで、初期期間中に短絡が発生したときは、初期期間中の許容範囲を小さくすることによって、異常電圧を十分に除去している。このようにすると、初期期間中に短絡が発生しなかったときは、許容範囲は通常値のままであるので、アーク長制御の過渡応答性を損なうことがない。この結果、本実施の形態では、過渡期間中の溶接状態をより安定にすることができる。
さらに、本実施の形態によれば、初期期間中に基準時間以上の短絡が発生したときは、初期期間中の許容範囲を定常期間中よりも小さな値に設定することが好ましい。初期期間中に異常電圧が発生する要因は、アーク発生状態が過渡状態にあるために、基準時間以上の長期の短絡が発生することが多いためである。そこで、初期期間中に基準時間以上の短絡が発生したときは、初期期間中の許容範囲を小さくすることによって、異常電圧を十分に除去している。このようにすると、初期期間中に長期の短絡が発生しなかったときは、許容範囲は通常値のままであるので、アーク長制御の過渡応答性を損なうことがない。この結果、本実施の形態では、過渡期間中の溶接状態をより安定にすることができる。
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
CD 通電判別回路
Cd 通電判別信号
CM 比較回路
DC 許容範囲制御回路
Dc 許容範囲制御信号
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
FC 送給制御回路
Fc 送給制御信号
FT 電圧制限値算出回路
Ib ベース電流
IBR ベース電流設定回路
Ibr ベース電流設定信号
ID 電流検出回路
Id 電流検出信号
Ip ピーク電流
IPR ピーク電流設定回路
Ipr ピーク電流設定信号
IRC 電流制御設定回路
Irc 電流制御設定信号
Iw 溶接電流
ON 起動指令回路
On 起動指令信号
PM 電源主回路
SD 短絡判別回路
Sd 短絡判別信号
ST 経過時間測定回路
St 経過時間信号
SV 電圧積分回路
Sv 電圧積分値信号
t 経過時間
ta 経過時間
Tb ベース期間
Tdw ピーク立下り期間
Tf パルス周期(信号)
TI 初期期間回路
Ti 初期期間信号
Tp ピーク期間
Tup ピーク立上り期間
Vb ベース電圧
Vbc 基準ベース電圧値
Vbf ベース電圧制限値
Vbr ベース電圧移動平均値(信号)
VC 基準電圧波形設定回路
Vc 基準電圧波形(信号)
VD 電圧検出回路
Vd 電圧検出信号
Vft 電圧制限値(信号)
Vp ピーク電圧
Vpc 基準ピーク電圧値
Vpf ピーク電圧制限値
Vpr ピーク電圧移動平均値(信号)
VR 電圧設定回路
Vr 電圧設定信号
VRA 電圧移動平均値算出回路
Vw 溶接電圧
WM 送給モータ
ΔVC 許容範囲設定回路
ΔVc 許容範囲(設定信号)

Claims (3)

  1. 溶接ワイヤを送給し、ピーク電流及びベース電流から形成される溶接電流を通電し、溶接電圧を検出し、前記溶接電圧の検出値を基準電圧波形を中心電圧値とする許容範囲内に制限して電圧制限値を算出する異常電圧除去制御を行い、前記電圧制限値に基づいて前記溶接電圧を出力制御するパルスアーク溶接電源において、
    前記許容範囲を、アークスタート後の初期期間中は定常期間中よりも小さな値に設定する、
    ことを特徴とするパルスアーク溶接電源。
  2. 前記初期期間中に短絡が発生したときは、前記初期期間中の前記許容範囲を前記定常期間中よりも小さな値に設定する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接電源。
  3. 前記初期期間中に基準時間以上の短絡が発生したときは、前記初期期間中の前記許容範囲を前記定常期間中よりも小さな値に設定する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接電源。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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