JP2022081137A - インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ - Google Patents
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Abstract
【課題】複数のドライバICを備えたインクジェットヘッドにおいて、安全性と小型化とを両立可能とする。【解決手段】インクジェットヘッドは、アクチュエータと、複数のドライバICと、バイパスコンデンサと、複数のヒューズとを備える。アクチュエータは、ノズルからインクを吐出させるためのものである。複数のドライバICは、アクチュエータを駆動するためのものである。バイパスコンデンサは、複数のドライバICへの電源供給ラインに接続される。複数のヒューズは、電源供給ラインのバイパスコンデンサとの接続点よりも複数のドライバICに近い側において、電源供給ラインから複数のドライバICに対してそれぞれ分岐した複数の分岐電源供給ラインのそれぞれに設けられている。【選択図】 図2
Description
本発明の実施形態は、インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタに関する。
インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドと、インクジェットヘッドを制御するためのヘッドコントローラと、を備える。インクジェットヘッドは、インクを吐出するためのアクチュエータと、アクチュエータを駆動するためのドライバICとを備える。ドライバICは、論理回路を含む。論理回路は、ヘッドコントローラからの制御信号に応じて、半導体スイッチをスイッチングするように構成されている。インクジェットヘッドにおいては、半導体スイッチのスイッチングにより、電源供給ラインを通じてアクチュエータが備える電極に電圧が印加される。この電極への電圧印加により、アクチュエータが変形して、ノズルからインクが吐出される。
ドライバICにおいて、論理回路の電源端子が何らかの要因でグランド端子と短絡する等の不具合が発生すると、論理回路に電源電圧が印加されなくなる。このような異常時に電源供給ラインを通じてドライバICに高圧の電源電圧が印加されると、ドライバIC内で、電源供給ラインからグランド端子に貫通電流が流れる場合がある。貫通電流が流れると、ドライバICの温度が急激に上昇する。その結果、ドライバICのパッケージが破損し、封止剤がガス化し、発煙、発火が生じる可能性がある。
そこで、電源供給ラインにヒューズを設けて、貫通電流が流れ続けることを防ぐ技術が知られている。しかし、この技術を採用する際には、ドライバICの通常動作時に電源供給ラインを流れる電流によってヒューズが溶断されることを防ぐために、容量(アンペア数)が大きいヒューズを用いる必要がある。ヒューズのサイズは、容量に比例する。このため、この技術を採用することによって、インクジェットヘッドが大型化するという懸念がある。
その上、近年では、インクジェットヘッドの長尺化又は高解像度化に対応するために、ノズル数が増加傾向にある。ノズル数が増えると、単一のドライバICでは対応できない場合がある。このような場合、1つのインクジェットヘッドに複数のドライバICを設けて対処する。複数のドライバICは、並列に配置される。したがって、ドライバICの通常動作時に電源供給ラインを流れる電流は、ドライバICの数に比例して大きくなる。ただし、ドライバICにおいて上述したような不具合が発生している場合に電源供給ラインを流れる電流は、複数のドライバICの中でインピーダンスが最も小さいドライバICに集中する。つまり、ドライバICが破損に至る電流値は、単一のドライバICを設けた場合と変わらない。このことから、ヒューズで溶断すべき目標の電流値は、ドライバICの数が増えても変わらないと考えられる。しかしながら、ドライバICが増えた分、通常動作時に電源供給ラインを流れる電流の値が大きくなるため、ヒューズを溶断すべき電流値との差が小さくなる。このため、通常動作時でもヒューズが溶断する虞がある。
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、複数のドライバICを備えたインクジェットヘッドにおいて、安全性と小型化とを両立可能な技術を提供しようとするものである。
一実施形態において、インクジェットヘッドは、アクチュエータと、複数のドライバICと、バイパスコンデンサと、複数のヒューズとを備える。アクチュエータは、ノズルからインクを吐出させるためのものである。複数のドライバICは、アクチュエータを駆動するためのものである。バイパスコンデンサは、複数のドライバICへの電源供給ラインに接続される。複数のヒューズは、電源供給ラインのバイパスコンデンサとの接続点よりも複数のドライバICに近い側において、電源供給ラインから複数のドライバICに対してそれぞれ分岐した複数の分岐電源供給ラインのそれぞれに設けられている。
以下、一実施形態に係るインクジェットプリンタ及びインクジェットヘッドについて、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
先ず、図1を用いて、インクジェットプリンタ1について説明する。図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ1の要部回路構成を示すブロック図である。
先ず、図1を用いて、インクジェットプリンタ1について説明する。図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ1の要部回路構成を示すブロック図である。
インクジェットプリンタ1は、インクジェット記録装置の一例である。なお、インクジェット記録装置はこれに限らず、複写機のような他の装置であっても良い。
インクジェットプリンタ1は、例えば、記録媒体である印刷媒体を搬送しながら画像形成等の各種処理を行う。インクジェットプリンタ1は、制御部11、ディスプレイ12、操作部13、通信インタフェース14、搬送モータ15、モータ駆動回路16、ポンプ17、ポンプ駆動回路18、インクジェットヘッド19、ヘッドコントローラ20、及び電源回路21を備える。さらに、インクジェットプリンタ1は、図示されない給紙カセット及び排紙トレイを備える。
制御部11は、インクジェットプリンタ1の各種の制御を行う。制御部11は、プロセッサ31とメモリ32とを備える。プロセッサ31は、演算処理を実行する演算素子である。プロセッサ31は、例えば、メモリ32に記憶されているプログラム及びプログラムで用いられるデータに基づいて種々の処理を行う。メモリ32は、プログラム及びプログラムで用いられるデータなどを記憶する。
ディスプレイ12は、プロセッサ31、または図示されないグラフィックコントローラなどの表示制御部から入力される映像信号に応じて画面を表示する表示装置である。
操作部13は、操作に基づいて、操作信号を生成する操作部材を有する。操作部材は、例えば、タッチセンサ、テンキー、電源キー、用紙フィードキー、種々のファンクションキー、またはキーボードなどである。タッチセンサは、例えば、抵抗膜式タッチセンサ、または静電容量式タッチセンサ等である。タッチセンサは、ある領域内において指定された位置を示す情報を取得する。タッチセンサは、上記のディスプレイ12と一体にタッチパネルとして構成されることにより、ディスプレイ12に表示された画面上のタッチされた位置を示す信号を生成する。
通信インタフェース14は、他の機器と通信するインタフェースである。通信インタフェース14は、例えば、インクジェットプリンタ1に印刷データを送信するホストPC2との通信に用いられる。通信インタフェース14は、有線で構成されたネットワークを介して、ホストPC2と通信する。また、通信インタフェース14は、無線で構成されたネットワークを介して、ホストPC2と通信する構成でもよい。
搬送モータ15は、回転することによって、印刷媒体を搬送するための図示されない搬送路の搬送部材を動作させる。搬送部材は、印刷媒体を搬送するベルト、ローラ、及びガイドなどである。搬送モータ15は、印刷媒体を保持するベルトと連動して動作するローラを駆動することによって印刷媒体をガイドに沿って搬送させる。
モータ駆動回路16は、搬送モータ15を駆動する回路である。モータ駆動回路16は、制御部11から入力された搬送制御信号に従って搬送モータ15を駆動する。これにより、給紙カセットの印刷媒体が、インクジェットヘッド19を経由して排紙トレイに搬送される。給紙カセットは、複数の印刷媒体を収容するカセットである。排紙トレイは、インクジェットプリンタ1から排出された印刷媒体を収容するトレイである。
ポンプ17は、例えばインクが保持されているインクタンク(図示せず)とインクジェットヘッド19とを連通するチューブを備える。具体的には、チューブは、インクジェットヘッド19の図示されない共通インク室と連通されている。
ポンプ駆動回路18は、プロセッサ31から入力されたインク供給制御信号に従ってポンプ17を駆動することによって、インクタンク内のインクをインクジェットヘッド19の共通インク室に供給させる。
インクジェットヘッド19は、印刷媒体に画像を形成する画像形成部である。インクジェットヘッド19は、ヘッドコントローラ20から供給される電源電圧及び制御信号に基づき、搬送モータ15及び図示されない保持ローラによって搬送される印刷媒体にインクを吐出することにより、画像を形成する。インクジェットプリンタ1は、例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、及びブラック等の各色にそれぞれ対応した複数のインクジェットヘッド19を備えていてもよい。
ヘッドコントローラ20は、インクジェットヘッド19を制御する回路である。ヘッドコントローラ20は、インクジェットヘッド19を動作させることにより、インクジェットヘッド19からインクを吐出させる。ヘッドコントローラ20は、インクジェットヘッド19に複数の電源電圧を供給する。また、ヘッドコントローラ20は、通信インタフェース14を介して入力された印刷データに基づいて制御信号を生成する。ヘッドコントローラ20は、電源電圧及び制御信号を供給することにより、印刷媒体に対してインクジェットヘッド19により画像を形成させる。
電源回路21は、商用電源から供給された交流電力を直流電力に変換する。電源回路21は、直流電力をインクジェットプリンタ1内の各構成要素に供給する。
図2は、インクジェットヘッド19の詳細な構成を示す模式図である。インクジェットヘッド19は、ヘッドコントローラ20と伝送用のフレキシブルプリント回路(FPC)基板を介して接続される。この接続により、ヘッドコントローラ20は、インクジェットヘッド19に対して電源電圧及び制御信号を供給することができる。
電源電圧は、第1電源電圧VAAと第2電源電圧VDDとを含む。第1電源電圧VAAと第2電源電圧VDDとは、ヘッドコントローラ20において生成される。すなわちヘッドコントローラ20は、電源回路21から供給される直流電圧を用いて、第1電源電圧VAA及び第2電源電圧VDD等を生成するための電源生成回路を備える。
制御信号は、図示しないが、クロック信号、リセット信号、初期化信号、及び印刷データ等を含む。制御信号は、ヘッドコントローラ20において生成される。すなわちヘッドコントローラ20は、通信インタフェース14を介して入力された印刷データに基づいて、各種の制御信号を生成するための制御信号生成回路を備える。
インクジェットヘッド19は、第1電源電圧VAAの端子401と、第2電源電圧VDDの端子402と、グランド電位GNDの端子403とを備える。またインクジェットヘッド19は、アクチュエータ41、2つのドライバIC421,422、及びヘッド基板43を備える。2つのドライバIC421,422、各ドライバIC421,422とアクチュエータ41とを接続する配線、及びヘッド基板43と各ドライバIC421,422とを接続する配線は、COF(Chip On Film)パッケージとして構成される。COFパッケージは、ポリイミドフイルムなどのフィルム状の樹脂素材上に配線が形成され、さらに各ドライバIC421,422が搭載されて構成される。インクジェットヘッド19は、ドライバIC421,422の熱を放出するためのヒートシンク(放熱フィン)をCOFパッケージに備えてもよい。
アクチュエータ41は、インクを吐出する部材である。アクチュエータ41は、インクを吐出するためのノズルを複数配列してなる。アクチュエータ41は、第1の圧電部材、第1の圧電部材に接合された第2の圧電部材、複数の電極、及びノズルプレートを備える。
第1の圧電部材及び第2の圧電部材は、互いに分極方向が対向するように接合される。第1の圧電部材及び第2の圧電部材には、第2の圧電部材側から第1の圧電部材に至る複数の平行な溝が形成されている。また、溝毎に電極が形成されている。2つの溝に形成された2つの電極により挟まれた第1の圧電部材及び第2の圧電部材は、2つの電極の電位差によって変形する。
ノズルプレートは、溝を封止する部材である。ノズルプレートには、溝とインクジェットヘッド19の外部とを連通する複数のノズルが溝毎に形成されている。ノズルプレートにより封止された溝は、ポンプ17によりインクが充填されるインク室として機能する。
インク室の壁は、第1の圧電部材及び第2の圧電部材によって構成される。ドライバIC421,422から駆動波形がインク室の溝に形成された電極に入力されると、第1の圧電部材及び第2の圧電部材が変形する。この変形により、インク室の容積が変化する。インク室の容積が変化すると、インク室の圧力が変化する。この圧力変化により、インク室内のインクがノズルから吐出される。よって、インク室は、圧力室とも称される。また、インク室とノズルとの組合せは、チャネルと称される。アクチュエータ41は、溝の数に応じた複数のチャネルを有する。
各ドライバIC421,422は、いずれもアクチュエータ41のチャネル毎に電極の電位を制御することによりアクチュエータ41を駆動して、ノズルからインクを吐出させるものである。例えばドライバIC421は、アクチュエータ41の中央よりも一方の側の複数のチャネル毎に電極の電位を制御することによって、アクチュエータ41を駆動する。ドライバIC422は、アクチュエータ41の中央よりも他方の側の複数のチャネル毎に電極の電位を制御することによって、アクチュエータ41を駆動する。
各ドライバIC421,422は、同一構成である。各ドライバIC421,422は、それぞれ論理回路501,502を含む。各論理回路501,502は同一構成である。そこで以下では、ドライバIC421及びドライバIC421が備える論理回路501について説明する。ドライバIC422及びドライバIC422が備える論理回路502についての説明も同様なので、ここでの説明は省略する。
ドライバIC421は、論理回路501以外に、レベルシフタ、ドライバ等を備える。ドライバは、スイッチング素子を有する。論理回路501は、第2電源電圧VDDにより動作する。論理回路501は、ヘッドコントローラ20から制御信号として入力されるクロック信号、リセット信号、初期化信号、及び印刷データに基づき駆動信号を生成する。駆動信号は、ドライバIC421が備えるドライバのスイッチング素子を制御するための信号である。論理回路501は、駆動信号をレベルシフタに入力する。レベルシフタは、論理回路501から入力された駆動信号の電圧レベルを、第1電源電圧VAAを用いて変換する。レベルシフタは、電圧レベルを変換した駆動信号をドライバに入力する。
ドライバは、例えばp-MOSFETにより構成されたスイッチング素子と、n-MOSFETにより構成されたスイッチング素子とを、アクチュエータ41のチャネル毎に備える。スイッチング素子のゲートは、それぞれレベルシフタの出力端子に接続されている。p-MOSFETのソースは、第1電源電圧VAAに接続されている。また、n-MOSFETのソースは、グランド電位GNDに接続されている。また、2つのスイッチング素子の接続点であるそれぞれのドレインは、チャネルの電極に接続されている。このような構成により、ドライバは、第1電源電圧VAAの信号またはグランド電位GNDの信号を、レベルシフタから入力された駆動信号に応じたタイミングで出力する。すなわちドライバは、アクチュエータ41における各チャネルの電極に駆動波形を入力する。この駆動波形により、各チャネルのインク室を構成する壁が選択的に変形して、インク吐出対象のインク室内の容積が変化する。その結果、容積が変化したインク室内のインクが、そのインク室に連通するノズルから吐出される。
ヘッド基板43は、ヘッドコントローラ20から各ドライバIC421,421への電源電圧及び制御信号の供給を中継する。ヘッド基板43は、第1電源供給ライン61と、第2電源供給ライン62と、グランドライン63とを配線する。第1電源供給ライン61は、ヘッドコントローラ20から端子401を介して入力される第1電源電圧VAAを各ドライバIC421,422に供給するための配線である。第2電源供給ライン62は、ヘッドコントローラ20から端子402を介して入力される第2電源電圧VDDを各ドライバIC421,422の論理回路501,502に供給するための配線である。グランドライン63は、ヘッドコントローラ20から端子403を介して入力されるグランド電位GNDを各ドライバIC421,422に供給するための配線である。
この他、ヘッド基板43は、図示しないが、ヘッドコントローラ20から供給されるクロック信号、リセット信号、初期化信号、及び印刷データを各ドライバIC421,422に供給するための複数の信号ラインを配線する。
ヘッド基板43は、第1電源供給ライン61とグランドライン63との間に、バイパスコンデンサ71を接続する。インクジェットヘッド19は、アクチュエータ41を高速に駆動することで、高速印刷が実現される。すなわち高速印刷のためには、ドライバIC421,422に対して瞬時に電流を供給することが可能な大容量のバイパスコンデンサ71が必要となる。バイパスコンデンサ71は、例えば高誘導電率のセラミックコンデンサである。バイパスコンデンサ71は、第1電源供給ライン61に高圧側の端子が接続され、グランドライン63に低圧側の端子が接続される。バイパスコンデンサ71は、第1電源供給ライン61からの第1電源電圧VAAによって充電される。バイパスコンデンサ71は、電界コンデンサであってもよい。
ヘッド基板43は、保護回路72を備える。保護回路72は、ドライバIC421,422の論理回路501,502に第2電源電圧VDDが印加されていない状態で第1電源電圧VAAが印加されたときに、ドライバIC421,422内に貫通電流が流れ続けることを防ぐための回路である。
貫通電流は、第1電源供給ライン61からドライバIC421,422内を通ってグランドライン63へと流れる。第1電源供給ライン61は、バイパスコンデンサ71との接続点よりもドライバIC421,422に近い下流側において、ドライバIC421,422の数だけ分岐する。以下では、1つ目のドライバIC421に対して分岐した第1電源供給ライン61を第1分岐電源供給ライン611と称し、2つ目のドライバIC422に対して分岐した第1電源供給ライン61を第2分岐電源供給ライン612と称する。
ドライバIC421に対する貫通電流は、第1分岐電源供給ライン611からドライバIC421内を通ってグランドライン63へと流れる。ドライバIC422に対する貫通電流は、第2分岐電源供給ライン612からドライバIC422内を通ってグランドライン63へと流れる。そこで保護回路72は、第1分岐電源供給ライン611と第2分岐電源供給ライン612とに、それぞれ第1ヒューズ721と第2ヒューズ722とを設けることによって構成される。
第1ヒューズ721及び第2ヒューズ722は、定格電流の250%以上の電流が5秒間流れた場合に溶断し、回路を開く素子であって、同一仕様のものを採用する。第1ヒューズ721及び第2ヒューズ722は、定格内の電流が流れている場合、導体として機能する。したがって、第1ヒューズ721は、定格内の電流が流れている場合には、第1分岐電源供給ライン611の一部として機能する。第2ヒューズ722は、定格内の電流が流れている場合には、第2分岐電源供給ライン612の一部として機能する。
第1ヒューズ721及び第2ヒューズ722は、電流が流れた際に生じるジュール熱によって溶断する。ジュール熱は、ジュール積分値I^2*T[A^2*sec]によって表される。“I”は、ヒューズを溶断するために流れる電流[A(アンペア)]である。“T”は、電流Iが流れている時間[sec(秒)]である。
そこで次に、インクジェットヘッド19における保護回路72の作用について説明する。はじめに、参考例における保護回路の作用について説明する。
図3は、第1の参考例であるインクジェットヘッド191の要部回路構成を示す模式図であり、図4は、第2の参考例であるインクジェットヘッド192の要部回路構成を示す模式図である。図3及び図4において、本実施形態である図2のインクジェットヘッド19と共通する部分には同一符号を付してあり、その詳しい説明は省略する。
図3は、第1の参考例であるインクジェットヘッド191の要部回路構成を示す模式図であり、図4は、第2の参考例であるインクジェットヘッド192の要部回路構成を示す模式図である。図3及び図4において、本実施形態である図2のインクジェットヘッド19と共通する部分には同一符号を付してあり、その詳しい説明は省略する。
図2と図3とを対比すれば明らかなように、第1の参考例であるインクジェットヘッド191は、保護回路73を構成するヒューズが第1ヒューズ721の1つだけである。第1ヒューズ721は、第1電源供給ライン61のバイパスコンデンサ71との接続点よりもドライバIC421,422から離れた上流側に設けられている。
図2と図4とを対比すれば明らかなように、第2の参考例であるインクジェットヘッド191も、保護回路74を構成するヒューズが第1ヒューズ721の1つだけである。第1ヒューズ721は、第1電源供給ライン61のバイパスコンデンサ71との接続点よりもドライバIC421,422に近い下流側であり、かつ、第1分岐電源供給ライン611と第2分岐電源供給ライン612とに分岐する分岐点よりも上流側に設けられている。
ここで、ドライバIC421又はドライバIC422が貫通電流によって破損に至る場合の電流値の下限は、実験により3.5[A]であることが判明している。また、第1電源供給ライン61を通って2つのドライバIC421及びドライバIC422に第1電源電圧VAAを印加するための通常の駆動電流は、0.6[A]であることも判明している。そこで、一例として、3.0[A]以上の電流が所定時間に亙って流れた場合に溶断するヒューズを第1ヒューズ721として採用する。
さて、第1の参考例のように、第1ヒューズ721を第1電源供給ライン61のバイパスコンデンサ71との接続点よりも上流側に設けて保護回路73を構成した場合、駆動電源のオンに伴い第1電源供給ライン61を流れる電流は、バイパスコンデンサ71を充電するための充電電流が大きく、駆動電源のオン、オフの繰り返しのパルス耐性を満足しなければならない。このため、パルス耐性を満足するための大型のヒューズを第1ヒューズ721として選定する必要がある。よって、インクジェットヘッド191の大型化は避けられない。
一方、第2の参考例のように、第1ヒューズ721を第1電源供給ライン61のバイパスコンデンサ71との接続点よりも下流側に設けた場合には、充電電流を無視できる。ただしバイパスコンデンサ71は、ドライバIC421及びドライバIC422に対して瞬時に電流を供給することが可能な大容量のコンデンサである。このため、バイパスコンデンサ71を充電後に、第1電源供給ライン61のバイパスコンデンサ71との接続点よりも上流側を流れる電流の実効電流値は、0.6[A]程度で変化しないが、下流側を流れる電流の実効電流値は、1.6[A]程度まで上昇する場合がある。
図5は、第1ヒューズ721の溶断特性を説明するためのグラフである。グラフの縦軸はジュール積分値I^2*T[A^2*sec]を示しており、横軸は時間T[sec(秒)]を示している。図5において、実線Laは、第1ヒューズ721が溶断する時間T[sec(秒)]とジュール積分値I^2*T[A^2*sec]との対応関係を示すラインである。破線Lbは、実線Laで示されるジュール積分値I^2*T[A^2*sec]に対して25%の値を示すラインである。実線Lcは、実効電流値1.6[A]の電流が第1ヒューズ721に流れた場合の時間T[sec(秒)]とジュール積分値I^2*T[A^2*sec]との対応関係を示すラインである。
一般に、ヒューズが溶断する際のジュール積分値I^2*T[A^2*sec]に対して25%以下の値であれば、保護回路74における第1ヒューズ721として選定できる。図5に示すように、実効電流値1.6[A]の電流が第1ヒューズ721に流れた場合、時間T[sec(秒)]の経過に伴ってジュール積分値I^2*T[A^2*sec]が25%のラインLbを超える。具体的には、100秒を経過した時点で、実線Laで示されるジュール積分値I^2*T[A^2*sec]の32%程度まで上昇する。このため、実効電流値1.6[A]の電流が流れる通常時でも第1ヒューズ721が溶断する可能性がある。したがって、第1ヒューズ721の選定が困難である。
図2を用いて説明したように、本実施形態では、ドライバIC421に対する第1分岐電源供給ライン611に第1ヒューズ721を設け、ドライバIC422に対する第2分岐電源供給ライン612に第2ヒューズ722を設けて、保護回路72を構成している。このような構成により、第1ヒューズ721又は第2ヒューズ722を通常時に流れる電流はドライバIC421,422の1個分となるので、実効電流値は0.8[A]となる。
図6も、図5と同様に、第1ヒューズ721の溶断特性を説明するためのグラフである。グラフの縦軸はジュール積分値I^2*T[A^2*sec]を示しており、横軸は時間T[sec(秒)]を示している。図6において、実線La及び破線Lbは、図5で説明したラインと共通である。実線Ldは、実効電流値0.8[A]の電流が第1ヒューズ721に流れた場合の時間T[sec(秒)]とジュール積分値I^2*T[A^2*sec]との対応関係を示すラインである。
図6に示すように、実効電流値0.8[A]の電流が第1ヒューズ721に流れた場合には、時間T[sec(秒)]の経過に拘わらずジュール積分値I^2*T[A^2*sec]が25%のラインLbを超えることはない。具体的には、100秒を経過した時点で、実線Laで示されるジュール積分値I^2*T[A^2*sec]の8%程度までしか上昇しない。このため、通常時に第1ヒューズ721が溶断する可能性がない。第2ヒューズ722についても同様である。したがって、比較的小型のヒューズを、保護回路72の第1ヒューズ721及び第2ヒューズとして選定することができる。
インクジェットヘッド19は、保護回路72を備えることによって、貫通電流によりドライバIC421又はドライバIC422のパッケージが破損する前に、第1ヒューズ721又は第2ヒューズ722が溶断して第1電源電圧VAAの供給を停止させるので、パッケージの破損には至らない。その結果、発煙、発火等が生じる可能性を未然に防ぐことができる。
かくして、2つのドライバIC421,422を備えたインクジェットヘッド19において、安全性と小型化とを両立が可能となる。
[第2の実施形態]
図7は、4つのドライバIC421,422,423,424を備えたインクジェットヘッド193に対する保護回路75を説明するための模式図である。なお、図2と共通する部分には同一符号を付してあり、その詳しい説明は省略する。
図7は、4つのドライバIC421,422,423,424を備えたインクジェットヘッド193に対する保護回路75を説明するための模式図である。なお、図2と共通する部分には同一符号を付してあり、その詳しい説明は省略する。
図7に示すように、4つのドライバIC421,422,423,424を備えたインクジェットヘッド193においては、第1電源供給ライン61は、バイパスコンデンサ71との接続点よりもドライバIC421,422,423,424に近い下流側において、ドライバIC421,422,423,424の数だけ分岐する。以下では、1つ目のドライバIC421に対して分岐した第1電源供給ライン61を第1分岐電源供給ライン611と称し、2つ目のドライバIC422に対して分岐した第1電源供給ライン61を第2分岐電源供給ライン612と称し、3つ目のドライバIC423に対して分岐した第1電源供給ライン61を第3分岐電源供給ライン613と称し、4つ目のドライバIC424に対して分岐した第1電源供給ライン61を第4分岐電源供給ライン614と称する。保護回路75は、第1分岐電源供給ライン611に第1ヒューズ721を設け、第2分岐電源供給ライン612に第2ヒューズ722を設け、第3分岐電源供給ライン613に第3ヒューズ723を設け、第4分岐電源供給ライン614に第4ヒューズ724を設けることによって構成される。
第1電源供給ライン61のバイパスコンデンサ71との接続点よりも下流側でかつ各分岐電源供給ライン611,612,613,614との分岐点よりも上流側を流れる電流の実効電流値は、3.2[A]である。しかし、各分岐電源供給ライン611,612,613,614を流れる電流の実効電流値は、0.8[A]である。したがって、第1ヒューズ721、第2ヒューズ722、第3ヒューズ723及び第4ヒューズ724として小型のヒューズを容易に選定することができる。その結果、4つのドライバIC421,422,423,424を備えたインクジェットヘッド193においても、第1の実施形態と同様に、安全性と小型化とを両立を図ることができる。
前記各実施形態では、2つのドライバIC421,422を備えたインクジェットヘッド19と、4つのドライバIC421,422,423,424を備えたインクジェットヘッド193を例示した。ドライバIC421,422は、2つまたは4つに限定されない。3つ又は5つ以上のドライバICを備えたインクジェットヘッドに対しても、前記各実施形態と同様な構成とすることで、安全性と小型化とを両立を図ることができる。
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、発明の範囲に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…インクジェットプリンタ、2…ホストPC、11…制御部、12…ディスプレイ、13…操作部、14…通信インタフェース、15…搬送モータ、16…モータ駆動回路、17…ポンプ、18…ポンプ駆動回路、19,191,192,193…インクジェットヘッド、20…ヘッドコントローラ、21…電源回路、31…プロセッサ、32…メモリ、41…アクチュエータ、43…ヘッド基板、61…第1電源供給ライン、611…第1分岐電源供給ライン、612…第2分岐電源供給ライン、613…第3分岐電源供給ライン、614…第4分岐電源供給ライン、62…第2電源供給ライン、71…バイパスコンデンサ、72,73,74,75…保護回路、421,422,423,424…ドライバIC、501,502,503,504…論理回路、721,722,723,724…ヒューズ。
Claims (5)
- ノズルからインクを吐出させるためのアクチュエータと、
前記アクチュエータを駆動する複数のドライバICと、
前記複数のドライバICへの電源供給ラインに接続されるバイパスコンデンサと、
前記電源供給ラインの前記バイパスコンデンサとの接続点よりも前記複数のドライバICに近い側において、前記電源供給ラインから前記複数のドライバICに対してそれぞれ分岐した複数の分岐電源供給ラインのそれぞれに設けた複数のヒューズと、
を具備するインクジェットヘッド。 - 前記ドライバICは、それぞれ論理回路を含み、
前記電源供給ラインとは別に、前記論理回路への電源供給ラインをさらに具備する、請求項1記載のインクジェットヘッド。 - 前記分岐電源供給ラインを流れる電流に対する前記ヒューズのジュール積分値は、当該ヒューズの溶断特性であるジュール積分値の25%以下である、請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
- 印刷媒体を搬送する搬送モータと、
前記搬送モータにより搬送される前記印刷媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに電源電圧を供給するヘッドコントローラと、
を具備し、
前記インクジェットヘッドは、
ノズルからインクを吐出させるためのアクチュエータと、
前記アクチュエータを駆動する複数のドライバICと、
前記ヘッドコントローラから前記複数のドライバICに対して電源電圧を供給するための電源供給ラインに接続されるバイパスコンデンサと、
前記電源供給ラインの前記バイパスコンデンサとの接続点よりも前記複数のドライバICに近い側において、前記電源供給ラインから前記複数のドライバICに対してそれぞれ分岐した複数の分岐電源供給ラインのそれぞれに設けた複数のヒューズと、
を具備するインクジェットプリンタ。 - 前記ドライバICは、それぞれ論理回路を含み、
前記インクジェットヘッドは、
前記電源供給ラインとは別に、前記ヘッドコントローラから前記論理回路への電源供給ラインをさらに具備する、請求項4記載のインクジェットプリンタ。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2020192490A JP2022081137A (ja) | 2020-11-19 | 2020-11-19 | インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ |
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JP2020192490A JP2022081137A (ja) | 2020-11-19 | 2020-11-19 | インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ |
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JP2020192490A Pending JP2022081137A (ja) | 2020-11-19 | 2020-11-19 | インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ |
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2020
- 2020-11-19 JP JP2020192490A patent/JP2022081137A/ja active Pending
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