JP2022070372A - 熱間プレス用Al系めっき鋼板および熱間プレス部材の製造方法ならびに熱間プレス部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】昇温特性に優れた熱間プレス用Al系めっき鋼板、および、昇温特性に優れた熱間プレス用Al系めっき鋼板を用いた熱間プレス部材の製造方法ならびに熱間プレス部材を提供することを目的とする。【解決手段】質量%で、Si:0~20%、Bi:0.01%以上を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl系めっき層を有することを特徴とする、熱間プレス用Al系めっき鋼板。【選択図】なし
Description
本発明は、熱間プレス用Al系めっき鋼板および熱間プレス部材の製造方法ならびに熱間プレス部材に関する。特に、昇温特性に優れた熱間プレス用Al系めっき鋼板、および、昇温特性に優れた熱間プレス用Al系めっき鋼板を用いた熱間プレス部材の製造方法ならびに熱間プレス部材に関する。
自動車の軽量化及び衝突安全性の向上を目的とし、自動車用鋼板の高強度化が進んでいる。近年では、引張強度1500MPa級の冷延鋼板が開発され、適用が検討されつつある。
しかし、鋼板の高強度化に伴い、プレスにおける成形不良やスプリングバックなどが寸法精度の課題となる。そこで、鋼板を加熱して成形性を高め、プレスと同時に金型で焼き入れることで強度を高め、且つ寸法精度に優れる熱間プレス技術の適用が拡大している。さらに、熱間プレス時の鉄スケール除去に必要なショットブラスト工程を省略できることから、熱間プレスにおいて、Al系めっき鋼板の適用も増加している。Al系めっき鋼板を適用した技術としては、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1に記載の熱間プレス用Al系めっき鋼板では、熱間プレス工程において長い加熱時間を要するため、生産効率の悪さが課題となる。そのため、昇温速度を上げることで、生産効率の改善が必要と考えられる。特許文献2では、Alめっき鋼板の表面に酸化物微粒子からなる皮膜を形成することにより、昇温特性を向上させることが開示されている。しかし、これには高いコストが掛かってしまう。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、昇温特性に優れた熱間プレス用Al系めっき鋼板、および、昇温特性に優れた熱間プレス用Al系めっき鋼板を用いた熱間プレス部材の製造方法ならびに熱間プレス部材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、Al系めっき層中に、特定量のBiを含有させることにより、低コストで従来にない優れた昇温特性が得られることを見出した。
本発明は上記知見に基づくものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]質量%で、Si:0~20%、Bi:0.01%以上を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl系めっき層を有することを特徴とする、熱間プレス用Al系めっき鋼板。
[2]鋼板表面の放射率が0.15以上であることを特徴とする、[1]に記載の熱間プレス用Al系めっき鋼板。
[3][1]または[2]に記載の熱間プレス用Al系めっき鋼板を、Ac3変態点以上1000℃以下に加熱後、熱間プレスすることを特徴とする、熱間プレス部材の製造方法。
[4]Si:0~20%、Bi:0.01%以上を含有し、残部がFe、Alおよび不可避的不純物からなるめっき層を有することを特徴とする、熱間プレス部材。
[1]質量%で、Si:0~20%、Bi:0.01%以上を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl系めっき層を有することを特徴とする、熱間プレス用Al系めっき鋼板。
[2]鋼板表面の放射率が0.15以上であることを特徴とする、[1]に記載の熱間プレス用Al系めっき鋼板。
[3][1]または[2]に記載の熱間プレス用Al系めっき鋼板を、Ac3変態点以上1000℃以下に加熱後、熱間プレスすることを特徴とする、熱間プレス部材の製造方法。
[4]Si:0~20%、Bi:0.01%以上を含有し、残部がFe、Alおよび不可避的不純物からなるめっき層を有することを特徴とする、熱間プレス部材。
本発明によれば、昇温特性に優れた熱間プレス用Al系めっき鋼板が得られる。本発明の熱間プレス用Al系めっき鋼板を用いた熱間プレス部材であれば、自動車分野において、軽量化と優れた生産性を低コストで両立することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な一実施態様を示すものであり、以下の説明によって何ら限定されるものではない。また、鋼成分組成の各元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であり、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
本発明の熱間プレス用Al系めっき鋼板は、質量%で、Si:0~20%、Bi:0.01%以上を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl系めっき層を有することを特徴とする。以下、本発明の熱間プレス用Al系めっき鋼板のAl系めっき層の組成について説明する。
Si:0~20%
本発明の熱間プレス用Al系めっき鋼板は、Al系めっき層中にSiを0~20%含有する。Siはアルミ系めっきの合金層(めっき-鋼板界面に生じる金属間化合物の層)厚みを低減するために有効である。合金層は高硬度で延性が低いため、厚くなるとブランキングなど熱間プレス前の冷間予加工で割れを生じ、熱間プレス後のめっきの剥離などの起点となる。Siは0%でもよいが、合金層薄膜化ならびにそれに伴う冷間加工性の向上のためには、0.1%以上のSiの含有が好ましい。より好ましくは1%以上、さらに好ましくは5%以上とする。一方、Si含有量が20%を超えると、合金層薄膜化効果は飽和するのみならず、めっき層に高硬度の単相Siが過剰に析出するようになるため、冷間加工性はかえって悪化する。冷間加工性の維持のため、Si含有量の上限は20%とし、好ましくは15%とする。
本発明の熱間プレス用Al系めっき鋼板は、Al系めっき層中にSiを0~20%含有する。Siはアルミ系めっきの合金層(めっき-鋼板界面に生じる金属間化合物の層)厚みを低減するために有効である。合金層は高硬度で延性が低いため、厚くなるとブランキングなど熱間プレス前の冷間予加工で割れを生じ、熱間プレス後のめっきの剥離などの起点となる。Siは0%でもよいが、合金層薄膜化ならびにそれに伴う冷間加工性の向上のためには、0.1%以上のSiの含有が好ましい。より好ましくは1%以上、さらに好ましくは5%以上とする。一方、Si含有量が20%を超えると、合金層薄膜化効果は飽和するのみならず、めっき層に高硬度の単相Siが過剰に析出するようになるため、冷間加工性はかえって悪化する。冷間加工性の維持のため、Si含有量の上限は20%とし、好ましくは15%とする。
Bi:0.01%以上
Al系めっき層中に、Alに加えて、Bi:0.01%以上を含有することで、めっき表面の粗さが増すため、表面積が大きくなる。その結果、放射率が増大し、吸熱が速くなる。これにより、本発明で課題とする昇温特性の改善が可能となる。Biが0.01%未満の場合はめっき層の粗面化効果が十分に発現しないために放射率が低く、期待される昇温特性が得られない。また、Biの含有量が増えるにつれ、めっきの凝固が不均一になる。そのため、Biが1.0%を超えるとめっき膜が不均一に被覆し、外観を損なう可能性がある。このため、Biの含有量は1.0%以下とすることが好ましい。
Al系めっき層中に、Alに加えて、Bi:0.01%以上を含有することで、めっき表面の粗さが増すため、表面積が大きくなる。その結果、放射率が増大し、吸熱が速くなる。これにより、本発明で課題とする昇温特性の改善が可能となる。Biが0.01%未満の場合はめっき層の粗面化効果が十分に発現しないために放射率が低く、期待される昇温特性が得られない。また、Biの含有量が増えるにつれ、めっきの凝固が不均一になる。そのため、Biが1.0%を超えるとめっき膜が不均一に被覆し、外観を損なう可能性がある。このため、Biの含有量は1.0%以下とすることが好ましい。
残部はAlおよび不可避的不純物とする。
めっき層の付着量は特に限定されず、任意の量とすることができる。しかし、片面当たりの付着量が10g/m2未満では熱間プレス加熱時のFeスケール生成抑制効果が不十分となる場合があるため、片面当たりの付着量を10g/m2以上とすることが好ましい。一方、片面当たりの付着量が120g/m2を超えると加工性が悪化する場合があるため、片面当たりの付着量を120g/m2以下とすることが好ましい。
本発明の熱間プレス用Al系めっき鋼板は、鋼板表面の放射率が0.15以上であることが好ましい。放射率を0.15以上とすることにより、熱間プレス前の加熱時に熱の吸収が加速し、十分な昇温特性を得られる。なお、放射率は、Al系めっき層中のBi量で適宜制御することができる。
本発明において、熱間プレス用鋼板におけるAl系めっき層の下地鋼板として、例えば、質量%で、C:0.15~0.50%、Si:0.05~2.00%、Mn:0.5~3.0%、P:0.10%以下、S:0.05%以下、Al:0.10%以下、N:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼板を用いることができる。なお、鋼板としては冷延鋼板または熱延鋼板のいずれでも構わない。以下に各成分の限定理由を記載する。
C:0.15~0.50%
Cは、鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス部材の引張強度(以下、TSと称することもある)を980MPa以上にするには、その量を0.15%以上とすることが好ましい。一方、C量が0.50%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性が著しく低下する。したがって、C量は0.15~0.50%が好ましい。
Cは、鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス部材の引張強度(以下、TSと称することもある)を980MPa以上にするには、その量を0.15%以上とすることが好ましい。一方、C量が0.50%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性が著しく低下する。したがって、C量は0.15~0.50%が好ましい。
Si:0.05~2.00%
Siは、Cと同様に、鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス部材のTSを980MPa以上にするには、その量を0.05%以上とすることが好ましい。一方、Si量が2.00%を超えると、熱間圧延時に赤スケールと呼ばれる表面欠陥の発生が著しく増大するとともに、圧延荷重が増大したり、熱延鋼板の延性の劣化を招く。さらに、Si量が2.00%を超えると、ZnやAlを主体としためっき皮膜を鋼板表面に形成するめっき処理を施す際に、めっき処理性に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、Si量は0.05~2.00%が好ましい。
Siは、Cと同様に、鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス部材のTSを980MPa以上にするには、その量を0.05%以上とすることが好ましい。一方、Si量が2.00%を超えると、熱間圧延時に赤スケールと呼ばれる表面欠陥の発生が著しく増大するとともに、圧延荷重が増大したり、熱延鋼板の延性の劣化を招く。さらに、Si量が2.00%を超えると、ZnやAlを主体としためっき皮膜を鋼板表面に形成するめっき処理を施す際に、めっき処理性に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、Si量は0.05~2.00%が好ましい。
Mn:0.5~3.0%
Mnは、フェライト変態を抑制して焼入れ性を向上させるのに効果的な元素である。また、Ac3変態点を低下させるので、熱間プレス前の加熱温度を低下するにも有効な元素である。このような効果の発現のためには、その量を0.5%以上とすることが好ましい。一方、Mn量が3.0%を超えると、偏析して素材の鋼板および熱間プレス部材の特性の均一性が低下する。したがって、Mn量は0.5~3.0%が好ましい。
Mnは、フェライト変態を抑制して焼入れ性を向上させるのに効果的な元素である。また、Ac3変態点を低下させるので、熱間プレス前の加熱温度を低下するにも有効な元素である。このような効果の発現のためには、その量を0.5%以上とすることが好ましい。一方、Mn量が3.0%を超えると、偏析して素材の鋼板および熱間プレス部材の特性の均一性が低下する。したがって、Mn量は0.5~3.0%が好ましい。
P:0.10%以下
P量が0.10%を超えると、偏析して素材である鋼板および熱間プレス部材の特性の均一性が低下するとともに、靭性も著しく低下する。したがって、P量は0.10%以下が好ましい。
P量が0.10%を超えると、偏析して素材である鋼板および熱間プレス部材の特性の均一性が低下するとともに、靭性も著しく低下する。したがって、P量は0.10%以下が好ましい。
S:0.05%以下
S量が0.05%を超えると、熱間プレス部材の靭性が低下する。したがって、S量は0.05%以下が好ましい。
S量が0.05%を超えると、熱間プレス部材の靭性が低下する。したがって、S量は0.05%以下が好ましい。
Al:0.10%以下
Al量が0.10%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、Al量は0.10%以下が好ましい。
Al量が0.10%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、Al量は0.10%以下が好ましい。
N:0.010%以下
N量が0.010%を超えると、熱間圧延時や熱間プレス加工前の加熱時にAlNの窒化物が形成され、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、N量は0.010%以下が好ましい。
N量が0.010%を超えると、熱間圧延時や熱間プレス加工前の加熱時にAlNの窒化物が形成され、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、N量は0.010%以下が好ましい。
残部はFeおよび不可避的不純物である。さらに上記成分組成に加え、以下の理由により、Cr:0.01~1.0%、Ti:0.01~0.20%、B:0.0005~0.0800%のうちから選ばれた少なくとも一種や、Sb:0.003~0.030%が、個別にあるいは同時に含有されることが好ましい。
Cr:0.01~1.0%
Crは、鋼を強化するとともに、焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。こうした効果の発現のためには、Cr量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Cr量が1.0%を超えると、著しいコスト高を招くため、その上限は1.0%とすることが好ましい。
Crは、鋼を強化するとともに、焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。こうした効果の発現のためには、Cr量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Cr量が1.0%を超えると、著しいコスト高を招くため、その上限は1.0%とすることが好ましい。
Ti:0.01~0.20%
Tiは、鋼を強化するとともに、細粒化により靭性を向上させるのに有効な元素である。また、次に述べるBよりも優先して窒化物を形成して、固溶Bによる焼入れ性の向上効果を発揮させるのに有効な元素でもある。よって、Ti量は0.01%以上とすることが好ましい。しかし、Ti量が0.20%を超えると、熱間圧延時の圧延荷重が極端に増大し、また、熱間プレス部材の靭性が低下するので、その上限は0.20%とすることが好ましい。
Tiは、鋼を強化するとともに、細粒化により靭性を向上させるのに有効な元素である。また、次に述べるBよりも優先して窒化物を形成して、固溶Bによる焼入れ性の向上効果を発揮させるのに有効な元素でもある。よって、Ti量は0.01%以上とすることが好ましい。しかし、Ti量が0.20%を超えると、熱間圧延時の圧延荷重が極端に増大し、また、熱間プレス部材の靭性が低下するので、その上限は0.20%とすることが好ましい。
B:0.0005~0.0800%
Bは、熱間プレス時の焼入れ性や熱間プレス後の靭性向上に有効な元素である。こうした効果の発現のためには、B量を0.0005%以上とすることが好ましい。一方、B量が0.0800%を超えると、熱間圧延時の圧延荷重が極端に増大し、また、熱間圧延後にマルテンサイト相やベイナイト相が生じて鋼板の割れなどが生じるので、その上限は0.0800%とすることが好ましい。
Bは、熱間プレス時の焼入れ性や熱間プレス後の靭性向上に有効な元素である。こうした効果の発現のためには、B量を0.0005%以上とすることが好ましい。一方、B量が0.0800%を超えると、熱間圧延時の圧延荷重が極端に増大し、また、熱間圧延後にマルテンサイト相やベイナイト相が生じて鋼板の割れなどが生じるので、その上限は0.0800%とすることが好ましい。
Sb:0.003~0.030%
Sbは、亜鉛系めっき鋼板を加熱してから熱間プレス加工、冷却をするまでの間に鋼板表層部に生じる脱炭層を抑制する効果を有する。このような効果の発現のためにはその量を0.003%以上とすることが好ましい。一方、Sb量が0.030%を超えると、圧延荷重の増大を招き、生産性を低下させる。したがって、Sb量は0.003~0.030%とすることが好ましい。
Sbは、亜鉛系めっき鋼板を加熱してから熱間プレス加工、冷却をするまでの間に鋼板表層部に生じる脱炭層を抑制する効果を有する。このような効果の発現のためにはその量を0.003%以上とすることが好ましい。一方、Sb量が0.030%を超えると、圧延荷重の増大を招き、生産性を低下させる。したがって、Sb量は0.003~0.030%とすることが好ましい。
本発明の熱間プレス用鋼板の製造方法について、下地鋼板の製造方法については特に限定されず常法により製造すればよい。下地鋼板に対してAl系めっき層を成膜するめっき方法についても特に限定されるものではなく、溶融めっき法、電気めっき法、蒸着めっき法等、任意の方法を用いることができる。また、めっき処理後に合金化処理を施してもよい。
次に、本発明の熱間プレス部材の製造方法について説明する。本発明では、上述した、本発明の熱間プレス用Al系めっき鋼板を、Ac3変態点以上1000℃以下に加熱後、熱間プレスすることを特徴とする。
熱間プレス用Al系めっき鋼板の加熱温度の範囲をAc3変態点以上1000℃以下とすることにより、当該鋼板の組織をオーステナイト化し、熱間プレス時の急冷でマルテンサイト相などの硬質相を形成し、熱間プレス部材を高強度化することができる。加熱温度がAc3変態点より低いと、加熱された鋼板におけるオーステナイト分率が低下するため、熱間プレス後にマルテンサイトの体積率が不十分となり、十分な引張強度を確保することができない。加熱温度が1000℃超えであると、結晶粒径が過度に粗大となるため、曲げ圧潰性が低下する。なお、Ac3変態点は、下記(1)式により求めることができる。
Ac3変態点(℃)=881-206C+53Si-15Mn-20Ni-1Cr-27Cu+41Mo…(1)
ただし、(1)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。含有されていない元素の含有量は0として計算する。
Ac3変態点(℃)=881-206C+53Si-15Mn-20Ni-1Cr-27Cu+41Mo…(1)
ただし、(1)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。含有されていない元素の含有量は0として計算する。
また、熱間プレス用鋼板を加熱する方法は何ら限定されるものでなく、電気炉やガス炉による炉加熱、通電加熱、誘導加熱、高周波加熱、火炎加熱などが例示される。
加熱に次いで、熱間プレス加工を行い、加工と同時または直後に金型や水などの冷媒を用いて冷却を行うことにより熱間プレス部材が製造される。本発明においては、熱間プレス条件は特に限定されないが、一般的な熱間プレス温度範囲である600~800℃でプレスを行う事が出来る。
本発明の熱間プレス部材の製造方法により得られる熱間プレス部材は、Si:0~20%、Bi:0.01%以上を含有し、残部がFe、Alおよび不可避的不純物からなるめっき層を有することを特徴とする。Siを0~20%とすることにより、優れた加工性を有する。Biを0.01%以上とすることにより、熱間プレス前の加熱時間が短縮され、低コストでの生産が可能な熱間プレス部材となる。
なお、本発明の熱間プレス用鋼板は、Si、Biを含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるめっき層を有するものであるが、熱間プレス部材を製造する際の加熱工程において、下地鋼板の主成分であるFeがめっき層に拡散する。このため、本発明の熱間プレス部材の製造方法により得られる熱間プレス部材は、Si、Biを含有し、残部がFe、Alおよび不可避的不純物からなるめっき層を有するものとなる。
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
板厚1.4mmの熱間プレス用冷延鋼板(質量%で、C:0.24%、Si:0.25%、Mn:1.3%、P:0.01%、S:0.002%、Al:0.03%、N:0.005%、Cr:0.16%、Ti:0.03%、B:0.002%、Sb:0.008%を下地鋼板として用い、連続式溶融アルミめっき設備によって、めっき浴の浴温を660℃、Alめっき付着量を片面あたり60g/m2、すなわち両面で120g/m2の条件で熱間プレス用Al系めっき鋼板を製造した。
得られた熱間プレス用Al系めっき鋼板について、以下の評価を行った。
(1)放射率
熱間プレス用Al系めっき鋼板について、めっき鋼板表面の放射率測定を行った。放射率の測定は、京都電子工業製のD and S AERD放射率計を用い、測定波長3~30μm、測定温度23℃の条件で測定した。下記の基準で放射率を評価した。◎および〇を合格とした。
◎:0.23以上
〇:0.15以上0.23未満
×:0.15未満
(2)めっきの外観品位
熱間プレス用Al系めっき鋼板について、片面あたり60g/m2付着量を有するめっき鋼板表面の膜厚測定を行った。膜厚測定は、ケツト科学研究所製の電磁膜厚計LE-373を用いて、めっき鋼板表面の任意の45点について、膜厚を測定した。膜厚の標本標準偏差を算出し、下記の基準で外観品位を評価した。◎、〇および△を合格とした。
◎:0μm以上5μm未満
〇:5μm以上10μm未満
△:10μm以上15μm未満
×:15μm以上
(3)冷間加工性
熱間プレス用Al系めっき鋼板について、それぞれ30mm×230mmのサイズに剪断後、ドロービード金型(丸型ビード:凸R4mm-肩R0.5mm、材質:SKD11)間を押さえ荷重500kg、引抜速度200mm/minの条件で引抜加工した。加工後、ビード通過部のめっき剥離量を下記の基準で評価した。◎および〇を合格とした。
◎:5.0g/m2未満
〇:5.0g/m2以上10.0g/m2未満
×:10.0g/m2以上
(4)昇温特性
熱間プレス用Al系めっき鋼板について、電気炉で加熱し、各鋼板温度が常温(25℃)から900℃に到達するまでの昇温速度を測定した。電気炉は、Al:残部、Si:10%のめっきを施したサンプルにおいて、鋼板温度が900℃に到達するまでの加熱時間が210sになるように設定した。Al:残部、Si:10%のめっきを施したサンプルにおける昇温速度を1.0としたときの、各熱間プレス用Al系めっき鋼板の昇温速度比(各熱間プレス用Al系めっき鋼板の昇温速度/Al:残部、Si:10%のめっきを施したサンプルの昇温速度)を評価した。◎および〇を合格とした。
◎:1.10以上
〇:1.00超え1.10未満
×:1.00以下
評価結果を表1に示す。
熱間プレス用Al系めっき鋼板について、めっき鋼板表面の放射率測定を行った。放射率の測定は、京都電子工業製のD and S AERD放射率計を用い、測定波長3~30μm、測定温度23℃の条件で測定した。下記の基準で放射率を評価した。◎および〇を合格とした。
◎:0.23以上
〇:0.15以上0.23未満
×:0.15未満
(2)めっきの外観品位
熱間プレス用Al系めっき鋼板について、片面あたり60g/m2付着量を有するめっき鋼板表面の膜厚測定を行った。膜厚測定は、ケツト科学研究所製の電磁膜厚計LE-373を用いて、めっき鋼板表面の任意の45点について、膜厚を測定した。膜厚の標本標準偏差を算出し、下記の基準で外観品位を評価した。◎、〇および△を合格とした。
◎:0μm以上5μm未満
〇:5μm以上10μm未満
△:10μm以上15μm未満
×:15μm以上
(3)冷間加工性
熱間プレス用Al系めっき鋼板について、それぞれ30mm×230mmのサイズに剪断後、ドロービード金型(丸型ビード:凸R4mm-肩R0.5mm、材質:SKD11)間を押さえ荷重500kg、引抜速度200mm/minの条件で引抜加工した。加工後、ビード通過部のめっき剥離量を下記の基準で評価した。◎および〇を合格とした。
◎:5.0g/m2未満
〇:5.0g/m2以上10.0g/m2未満
×:10.0g/m2以上
(4)昇温特性
熱間プレス用Al系めっき鋼板について、電気炉で加熱し、各鋼板温度が常温(25℃)から900℃に到達するまでの昇温速度を測定した。電気炉は、Al:残部、Si:10%のめっきを施したサンプルにおいて、鋼板温度が900℃に到達するまでの加熱時間が210sになるように設定した。Al:残部、Si:10%のめっきを施したサンプルにおける昇温速度を1.0としたときの、各熱間プレス用Al系めっき鋼板の昇温速度比(各熱間プレス用Al系めっき鋼板の昇温速度/Al:残部、Si:10%のめっきを施したサンプルの昇温速度)を評価した。◎および〇を合格とした。
◎:1.10以上
〇:1.00超え1.10未満
×:1.00以下
評価結果を表1に示す。
表1より、本発明例では、比較例とは異なり、昇温特性に優れた溶融Al系めっき鋼板が得られることがわかる。したがって、本発明の熱間プレス用鋼板を用いて熱間プレス部材を製造すれば、低コストで生産性を向上させることができる。また、本発明例は、めっき層中のBi含有量をそれぞれ適切な範囲に制御することで、昇温特性に加えて、優れためっき外観が得られることがわかる。さらに、本発明例は、めっき層中のSi含有量を適切な範囲に制御することで、優れた冷間加工性が得られることがわかる。
Claims (4)
- 質量%で、Si:0~20%、Bi:0.01%以上を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl系めっき層を有することを特徴とする、熱間プレス用Al系めっき鋼板。
- 鋼板表面の放射率が0.15以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱間プレス用Al系めっき鋼板。
- 請求項1または2に記載の熱間プレス用Al系めっき鋼板を、Ac3変態点以上1000℃以下に加熱後、熱間プレスすることを特徴とする、熱間プレス部材の製造方法。
- Si:0~20%、Bi:0.01%以上を含有し、残部がFe、Alおよび不可避的不純物からなるめっき層を有することを特徴とする、熱間プレス部材。
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